説明

物質決定装置

本発明は、流体中の物質を決定する物質決定装置に関するものである。物質に連結された粒子は、結合面30に結合する。検知ユニット33は、i)結合面30に結合した粒子と結合面30との距離及びii)結合面に結合した粒子の面内位置の少なくとも1つを示す検知信号を生成する。結合識別ユニット34は、生成された検知信号に依存して結合面30に結合した粒子の異なる種類の結合を識別する。結合識別ユニット34は、好ましくは、特異的結合粒子に起因する検知信号の部分を決定し、この決定された検知信号の部分に基づいて物質を決定するユニットである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中の物質を決定する物質決定装置及び物質決定方法に関する。本発明は、更に、流体中の物質を決定するために協働する結合デバイス及び分析デバイスと、流体中の物質を決定するために協働する結合方法及び分析方法と、流体中の物質を決定する分析コンピュータプログラムとに関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願公開WO2009/098623A1号公報には、電磁場で作動する磁気ビーズを使用する磁気バイオセンサが開示されている。上記磁気ビーズは、試料中の特定の検体分子を結合する抗体とともに機能化される。ビーズはセンサの表面に引き付けられ、センサの表面において結合するビーズの数は、試料中に存在する検体分子の量に直接的又は間接的に関係している。ビーズは、その後、漏れ全反射(frustrated total internal reflection)(FTIR)に基づく技術により検出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
低い検体濃度を測定する際、感度は、一般に、低い濃度に関して得られる信号及び検体を含まないブランク測定に関して得られる信号により決定される。ブランク測定に関して得られる信号は、機器のノイズによって決定されるだけではなく、追加の信号が、検体の存在とは無関係に表面に結合するビーズによって生成される、すなわち、追加の信号が非特異的な結合によって生成されることが分かっている。この非特異的な結合が生じるので、非特異的結合についての信号も増大してしまうと、ビーズ当たりの機器の信号の増大によって全体の感度が高くならない。
【0004】
本発明の目的は、物質を決定する感度の上昇を可能にする流体中の物質を決定する物質決定装置及び物質決定方法を提供することにある。本発明の更なる目的は、流体中の物質を決定するために協働する対応する結合デバイス及び分析デバイスと、流体中の物質を決定するために協働する対応する結合方法及び分析方法と、流体中の物質を決定する分析コンピュータプログラムとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の観点では、流体中の物質を決定する物質決定装置であって、
流体中の物質に連結される粒子と、
上記粒子が上記物質に連結された場合に、上記粒子を結合する結合面と、
上記結合面上の上記粒子を検知する検知ユニットであって、i)上記結合面に結合した上記粒子と上記結合面との距離及びii)上記結合面に結合した上記粒子の面内位置の少なくとも1つを示す検知信号を生成する当該検知ユニットと、
生成された上記検知信号に依存して上記結合面に結合した上記粒子の異なる種類の結合を識別する結合識別ユニットと
を有する当該物質決定装置が与えられる。
【0006】
結合の種類は、i)結合面までの距離及びii)結合面上の面内位置の少なくとも1つの点で通常異なるので、少なくともi)結合面までの距離及びii)結合面上の面内位置を示す検知信号を生成することにより、結合の種類を示す、すなわち、特に非特異的結合及び特異的結合を示す信号が決定される。従って、この信号は、結合面に結合した粒子の異なる種類の結合を識別するため、例えば、第1の結合の種類によって結合した粒子の量又は濃度と第2の結合の種類によって結合した粒子の量又は濃度とを識別するために用いられる。よって、上記物質決定装置は、或る結合の種類によって結合面に結合した粒子の識別を可能にする。従って、これは、或る結合の種類によって結合面に結合した粒子についての物質決定装置の感度を改善する。
【0007】
特に、非特異的結合と特異的結合とは、一般に、結合面までの距離及び/又は面内位置が異なるので、結合面までの距離及び/又は面内位置を示す検知信号を生成することによって、非特異的結合及び特異的結合を示す信号が決定される。従って、この信号は、非特異的結合と特異的結合とを識別し、特異的に結合された、すなわち、物質に連結している結合面上の粒子を決定する、例えば、これらの粒子及び従って物質の量又は濃度を決定するために用いられる。この決定された量又は濃度は非特異的結合に影響を及ぼされないので、物質を決定する感度が高められる。
【0008】
上記結合面に結合した粒子の面内位置は、好ましくは、結合面によって定義される、特に、結合面と平行な平面内における粒子の位置である。
【0009】
上記結合識別ユニットは、好ましくは、生成された検知信号に依存して、或る結合の種類に起因する検知信号の部分を決定する、特に、特異的結合粒子に起因する検知信号の部分を決定するユニットである。この結合識別ユニットは、好ましくは、更に、決定された或る種類の結合に起因する検知信号の部分、特に、決定された特異的結合粒子に起因する検知信号の部分に依存する流体中の物質の量又は濃度を決定する。
【0010】
上記物質決定装置は、好ましくは、磁気バイオセンサであり、上記粒子は物質を標識化する磁気ビーズ、すなわちナノ粒子である。磁気ビーズは、好ましくは、例えば、特定の検定分子である物質に連結される連結要素とともに機能化される。連結要素は、例えば、抗体、タンパク質、DNA、アプタマ等である。
【0011】
上記物質決定装置は、好ましくは、磁気ビーズを結合面に引き付ける及び/又は磁気ビーズを結合面から引き離す磁気ユニットを有している。
【0012】
上記検知ユニットは、結合面からの粒子の距離に依存する検知信号の生成を可能にする技術を用いる任意のユニットである。
【0013】
上記結合識別ユニットは、好ましくは、流体中の物質を決定する特異的結合決定ユニットであり、この特異的結合決定ユニットは、上記生成された検知信号に依存して、上記物質に連結された上記結合面に結合した粒子である特異的結合粒子を決定する。
【0014】
特異的結合は、好ましくは、物質の存在に依存する結合である。すなわち、特異的結合は、粒子が物質に連結され、結合面に結合した結合を表す。一方、非特異的結合は、好ましくは、物質の存在に依存しない結合である。すなわち、非特異的結合は、好ましくは、粒子が物質に連結されていない結合面の粒子の存在を表す。
【0015】
上記物質決定装置は、好ましくは、バイオセンサ、特に、サンドイッチ免疫測定を行うバイオセンサである。
【0016】
上記特異的結合決定ユニットは、好ましくは、結合面上の特異的結合粒子の量を決定する。
【0017】
上記検知ユニットは、エバネセント場を生成するために結合面に向けられる放射線を発する光源と、エバネセント場に対する粒子の影響を示す結合面からの光を検出する光検出器とを有し、検出された光に基づいて検知信号を生成することが好ましい。
【0018】
結合面におけるエバネセント場は、結合面までの距離の増加とともに減衰し、従って、結合面からの粒子の距離に依存する検知信号を生成するために用いられ、検知信号は、粒子と結合面との距離の小さな変化に感度が高い。特に、検知信号は、100nm以下、更に好ましくは50nm以下、更により好ましくは1nmの距離の変化に感度が高い。
【0019】
結合面までの粒子の距離に対して感度が高い他の技術に基づいた他の検知ユニットを用いることも可能である。例えば、巨大磁気抵抗(GMR)技術又は蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)技術が、検知ユニットによって用いられ得る。
【0020】
上記検知ユニットが、i)上記結合面に結合した上記粒子と上記結合面との距離、ii)上記結合面に結合した上記粒子の面内位置及びiii)上記結合面に結合した上記粒子と上記結合面との距離に対する上記検知信号の依存性を示す当該検知ユニットの距離感度の少なくとも1つを変更し、i)上記結合面に結合した上記粒子と上記結合面との第1の距離、ii)上記結合面に結合した上記粒子の第1の面内位置及びiii)第1の距離感度の少なくとも1つに依存する第1の検知信号を生成し、i)上記結合面に結合した上記粒子と上記結合面との第2の距離、ii)上記結合面に結合した上記粒子の第2の面内位置及びiii)第2の距離感度の少なくとも1つに依存する第2の検知信号を生成し、上記結合識別ユニットが、上記第1の検知信号及び上記第2の検知信号に依存して異なる種類の結合を識別するとともに、上記第1の検知信号と上記第2の検知信号との比に依存して異なる種類の結合を識別することが更に好ましい。
【0021】
好ましくは、上記結合決定ユニットは、第1の検知信号及び第2の検知信号に依存して特異的に結合した粒子を決定する特異的結合決定ユニットである。
【0022】
特に、上記検知ユニットは、エバネセント場を生成するために上記結合面に向けられる放射線を発する光源と、エバネセント場に対する上記粒子の影響を示す上記結合面からの光を検出する光検出器とを有し、検出された上記光に基づいて検知信号を生成し、上記エバネセント場と上記結合面に結合した上記粒子との第1の空間関係に依存する上記第1の検知信号を生成するため及び上記エバネセント場と上記結合面に結合した上記粒子との第2の空間関係に依存する上記第2の検知信号を生成するために、i)上記結合面に結合した上記粒子と上記結合面との間の距離、ii)上記結合面に結合した上記粒子の面内位置及びiii)上記距離感度の少なくとも1つを変更することにより、上記エバネセント場と上記結合面に結合した上記粒子との空間関係を変更する。
【0023】
上記距離感度は、好ましくは、それぞれの粒子が結合面まで或る距離に存在する場合に検知信号の強度を定義する。従って、第1の距離感度で第1の測定が行われ、第2の測定が第1の距離感度とは異なる第2の距離感度で行われる場合、結合面に結合したそれぞれの粒子が結合面まで同じ距離にあれば、第1の測定の結果である第1の検知信号と第2の測定の結果である第2の検知信号とは異なる。上記距離感度は、例えば、エバネセント場を変更する、特に、エバネセント場の高さを変更することにより変更される。
【0024】
上記エバネセント場と結合面に結合した粒子との空間関係は、好ましくは、結合面に対して直交する方向における空間関係である。従って、上記空間関係は、好ましくは、エバネセント場の高さと結合面までの粒子の距離との関係である。表面から距離zにおけるエバネセント場の強度I(z)は、I(z)〜exp(−z/ζ)として表される。ここで、エバネセント場の減衰長ζは、光の波長であるλ、物質及び試料液体それぞれの屈折率であるn及びn、エバネセント場を生成するために用いられる光ビームのカートリッジ表面の垂線に対する入口角であるθを用いて

によって与えられる。この場合、距離zにおける表面に結合した粒子により散乱する及び/又は吸収される光の強度は、

により与えられる。ここで、σpart(d,λ)は、波長λにおける直径dの粒子の散乱/吸収断面積である。エバネセント場の減衰長ζは、エバネセント場の高さとみなされる。しかしながら、エバネセント場は、結合面までの距離の増加に従って指数関数的に減衰する、すなわち、数学的に、結合面までの各距離においてエバネセント場は依然として存在することに注意されたい。
【0025】
上記検知ユニットは、エバネセント場と結合面に結合した粒子との2つよりも多い異なる空間関係に依存して2つよりも多い検知信号を生成し、上記特異的結合決定ユニットは、2つよりも多い信号である生成された異なる検知信号のみに依存して特異的結合粒子を決定する。
【0026】
上記検知ユニットは、2つよりも多い検知信号を生成するために、2つよりも多いエバネセント場を生成する。
【0027】
上記検知ユニットは、上記結合面に向けられる上記放射線の波長を変更することにより上記エバネセント場と上記結合面に結合した上記粒子との関係を変更することが更に好ましい。
【0028】
一形態では、上記光源は、結合面に向けられる第1の波長を有し、第1のエバネセント場を生成する第1の放射線を発するとともに、結合面に向けられる第2の波長を有し、第2のエバネセント場を生成する第2の放射線を発し、上記光検出器は、結合面から反射又は散乱した後の第1の放射線及び第2の放射線を検出し、検出された第1の放射線に依存する第1の検知信号を生成するとともに、検出された第2の放射線に依存する第2の検知信号を生成する。
【0029】
これは、単に2つの異なる波長を用いることによって第1のエバネセント場及び第2のエバネセント場の生成を可能にする。更に、異なる波長が用いられるので、第1の検知信号及び第2の検知信号は、結合面から光検出器によって第1の波長を有する第1の放射線及び第2の波長を有する第2の放射線を測定することにより容易に生成される。上記光検出器は、好ましくは、第1の波長と第2の波長とを識別する。代替又は追加として、上記検知ユニットは、最初に第1の放射線で結合面を照射し、次いで、第2の放射線で結合面を照射するか、又は、最初に第2の放射線で結合面を照射し、次いで、第1の放射線で結合面を照射するように構成され得る。このケースでは、光検出器は、第1の波長と第2の波長とを識別する必要がない。
【0030】
2つのエバネセント場は、結合面からの距離に対して異なる依存性を有するので、結合面上の粒子による異なるエバネセント場の作用は、結合面まで異なる距離に位置する粒子を示す。異なる結合、特に特異的結合と非特異的結合とは、結合面までの距離に関して異なるので、異なる種類の結合を識別するため、特に、特異的結合粒子を決定するために第1の検知信号及び第2の検知信号が用いられ得る。
【0031】
上記光源は、好ましくは、異なる波長を生成する2つの発光ダイオード(LED)を有している。特に、上記光源は、好ましくは、赤色LED及び青色LEDを有している。しかしながら、上記光源は、エバネセント場を励起させる赤色レーザ及び青色レーザも有し得る。
【0032】
上記検知ユニットは、放射線が結合面と交わる角度を変更することによってエバネセント場と結合面に結合した粒子との関係を変更することが更に好ましい。
【0033】
一形態では、上記光源は、第1のエバネセント場を生成する第1の角度の下で結合面に向けられる第1の放射線と、第2のエバネセント場を生成する第2の角度の下で結合面に向けられる第2の放射線とを生成し、上記光検出器は、結合面において反射又は散乱した後の第1の放射線及び第2の放射線を検出し、上記検知ユニットは、検出された第1の放射線に依存する第1の検知信号を生成するとともに、検出された第2の放射線に依存する第2の検知信号を生成する。
【0034】
これは、単に第1の放射線及び第2の放射線がそれぞれ結合面と交わる2つの異なる角度を用いることによって2つのエバネセント場を生成することを可能にする。更に、反射した第1の放射線及び反射した第2の放射線は、異なる方向に入射するので、FTIR技術を用いる場合、異なる空間位置でこれらの放射線を検出することにより互いに容易に分離される。
【0035】
2つよりも多い波長及び/又は2つよりも多い放射線が結合面に向けられる角度もまた用いられ得る。更に、異なる波長を有し、異なる角度の下で結合面に向けられる放射線が用いられ得る。
【0036】
上記検知ユニットは、例えば流体を他の流体に交換することにより、流体の屈折率を変化させるようにも構成され、それによって、エバネセント場、特に、エバネセント場の高さ、距離感度及び従って結合面に結合した粒子とエバネセント場の高さとの空間関係が変更される。
【0037】
上記光検出器は、結合面から反射した光を検出することが更に好ましい。上記検知ユニットは、好ましくは、漏れ全反射(FTIR)に基づく検知信号を生成する。
【0038】
上記光検出器は、結合面上の結合した粒子から散乱した光を検出することが更に好ましい。
【0039】
上記検知ユニットは、好ましくは、結合面上の結合した粒子により散乱したエバネセント場の光を収集する対物レンズを有しており、収集された散乱光は、画像化レンズのような画像化ユニットによってCCD又はCMOSカメラのような二次元の光検出器に画像化される。これは、検知信号を生成するために暗視野顕微鏡(DFM)を使用することを可能にする。特に、DFMにより生成される検知信号は、単一のビーズが結合面に特異的又は非特異的に結合されたかどうかを決定するために用いられる。
【0040】
好ましくはバイオセンサである上記物質決定装置は、光学素子を有しており、好ましくは、更に、異なる波長の使用に起因する色消し(achromatic)作用を補正する手段を有している。この手段は、例えば光検出器がCCD検出器であれば、例えば、色消しレンズ又は異なる波長により生成される光検出器上の結合面の画像間のシフトを補正するソフトウェアツールである。
【0041】
上記検知ユニットは、上記結合面に結合した上記粒子に力を加える加力ユニットを有し、上記結合面に結合した上記粒子に加えられる力を変更することにより、i)上記結合面に結合した上記粒子と上記結合面との距離及びii)上記結合面に結合した上記粒子の面内位置の少なくとも1つを変更することが更に好ましい。
【0042】
面内位置の変更は、粒子が結合面上に直接位置する必要があることを意味していないことに注意されたい。上記結合した粒子は、勿論、結合面まで距離を有して位置していてもよい。上記面内位置は、結合面に直角に、すなわち、結合面に対して直交して投影される粒子の位置として定義される。
【0043】
上記加力ユニットは、上記結合面の方に上記粒子を移動させたり、上記結合面から離れる方向に上記粒子を移動させるように構成され、上記検知ユニットは、上記結合面に結合した上記粒子が上記結合面の方に移動した場合に第1の検知信号を生成し、上記結合面に結合した上記粒子が上記結合面から離れる方向に移動した場合に第2の検知信号を生成することが更に好ましい。
【0044】
異なる種類の結合は、一般に、異なる結合長を有する。特に、非特異的結合粒子は、一般に、特異的結合粒子とは異なる結合長を有する。粒子が結合面まで移動する場合、異なる種類の結合間の距離の差は、かなり小さいか又は全く存在しない。粒子が結合面から結合面から離れる方向に移動する場合には、異なる結合をしている粒子の距離の差は大きくなり、特に最大になる。従って、第1の検知信号と第2の検知信号とのずれも大きくなり、特に最大になり、よって、これは異なる種類の結合を識別する質を向上させるため、特に、特異的結合粒子を決定する質を向上させるために用いられる。
【0045】
上記検知ユニットは、上記結合面に結合した上記粒子が上記結合面から離れる方向に移動する間、経時的に幾つかの検知信号を生成し、上記結合識別ユニットは、経時的に生成された上記幾つかの検知信号に依存する異なる種類の結合を識別することが更に好ましい。
【0046】
特に、上記結合識別ユニットは、好ましくは、経時的に生成された幾つかの検知信号に依存する特異的結合粒子を決定する特異的結合決定ユニットである。
【0047】
異なる結合長及び/又は結合強度を持つ幾つかの種類の非特異的結合が存在する場合、及び/又は、異なる結合長及び/又は結合強度を持つ異なる種類の特異的結合が存在する場合、異なる結合長及び/又は結合強度を持つ異なる種類の粒子が、異なる時間に結合面から最大の可動域に達する。この或る種類の粒子に関して結合面から最大の可動域に達することは、単一の時間依存性の検知信号ともみなされる経時的に測定される幾つかの検知信号に現れる。従って、上記経時的に測定される幾つかの検知信号は、異なる種類の特異的及び/又は非特異的結合粒子を識別するために用いられる。
【0048】
検知信号、特に、FTIR検知信号からの全応答は、全粒子が結合面に引き付けられると最小値で始まり、粒子が結合面から遠くに移動すると大きくなる。この増大は、より多くの粒子がそれぞれの結合長により与えられる結合面に対して最大の高さに達するので離散ステップにおいてフラットになる。上記離散ステップは、異なる種類の結合の、特に、特異的及び非特異的結合粒子の母集団を示す。従って、経時的に測定される上記検知信号、特に、検知信号における離散ステップは、或る種類の結合によって結合している粒子の母集団、特に量又は濃度を示す。従って、上記結合識別ユニットは、好ましくは、異なる種類の結合を識別する。特に、経時的に測定された検知信号に依存して、特に、経時的に測定された検知信号における離散ステップに依存して特異的結合粒子を決定する。
【0049】
幾つかの検知信号が経時的に生成される間、粒子の高さは徐々に変化するので、これらの経時的に生成される幾つかの検知信号は、幾つかの第1及び第2の検知信号をみなされる。
【0050】
上記加力ユニットは、好ましくは、結合面に結合した粒子に磁力を加える磁気ユニットである。上記粒子は、好ましくは、磁場から力を受ける粒子である。上記磁気ユニットは、粒子が結合面の方に引き付けられる又は結合面から引き離されるように構成されている。上記磁気ユニットは、また、結合した粒子の面内位置を変更する。すなわち、結合面に対して平行な横方向において粒子を移動させる。更に、上記磁気ユニットは、好ましくは磁性粒子である粒子の配向が変更されるように構成されている。上記配向は、好ましくは、結合面に結合した粒子と結合面との距離が変更されるように変化する。
【0051】
追加又は代替として、上記加力ユニットは、結合面に結合した粒子と結合面との距離及び/又は結合面上の結合した粒子の面内位置を変更するために粒子に他の力を加える。例えば、加力ユニットは、結合面に結合した粒子に流体力、静電気力、音波力等を加える。特に、流体のイオン含有量は、結合面に結合した粒子と結合面との距離を変更するために変更される。
【0052】
上記結合識別ユニットは、第1の検知信号と第2の検知信号との比に依存して異なる種類の結合を識別することが更に好ましい。特に、上記結合識別ユニットは、第1の検知信号と第2の検知信号との比に依存して特異的結合粒子を決定する特異的結合決定ユニットである。
【0053】
上記第1の信号及び第2の信号は、結合面上の粒子数に同じように依存するが、エベネセント場と結合面に結合した粒子との空間関係には異なるように依存するので、これらの信号の比は、この空間関係、従って距離、従って特異的及び非特異的結合を示す。
【0054】
上記物質決定装置は、更に、
i)第1の検知信号及び第2の検知信号のうちの一方と、ii)第1の検知信号及び第2の検知信号のうちの他方との比であり、結合面上の粒子の特異的結合を示す特異的比率を与える特異的比率供給ユニット40と、
i)第1の検知信号及び第2の検知信号のうちの一方と、ii)第1の検知信号及び第2の検知信号のうちの他方との比であり、結合面上の粒子の非特異的結合を示す非特異的比率を与える非特異的比率供給ユニット41と
を有し、上記特異的結合決定ユニットは、
a)i)第1の検知信号及び第2の検知信号のうちの一方と、ii)非特異的比率と第1の検知信号及び第2の検知信号のうちの他方との積との差と、
b)i)1と、ii)非特異的比率と特異的比率との比との差と
の比として特異的結合粒子の量を決定する。
【0055】
上記特異的比率供給ユニット及び非特異的比率供給ユニットは、好ましくは、特異的比率及び非特異的比率が記憶され、これらの比率が検索される記憶ユニットである。上記特異的比率は、流体中に非常に高い物質の濃度、すなわち、好ましくは結合面が飽和する、すなわち完全に占有される濃度が存在する間に、例えば、第1の検知信号及び第2の信号を生成することにより決定される。また、上記非特異的比率は、流体中に当該物質が存在しない間に第1の検知信号及び第2の検知信号を生成することにより決定される。
【0056】
これは、高い感度で特異的に結合した結合面上の粒子の量を決定することを可能にする。
【0057】
上記物質決定装置は、好ましくは、粒子及び結合面を含み、流体を受け入れる結合デバイス、特にカートリッジと、読取器とみなされ、検知ユニット及び特異的結合決定ユニットを含む分析デバイスとを有している。
【0058】
上記結合デバイスは、好ましくは使い捨て可能なデバイスであり、上記分析デバイスは、好ましくは再利用可能なデバイスである。従って、機能性を結合デバイス及び分析デバイスに分散させることによって、物質決定装置の一部は使い捨て可能なデバイスとして用いられ、他の部分は再利用可能なデバイスとして用いられる。好ましくは血液、唾液又は尿のような体液の試料である流体は結合デバイスに導入されるので及び結合デバイスは使い捨て可能なデバイスであるので、結合デバイスは、廃棄される前に1回のみ使用される。すなわち、特異的結合粒子の決定は、以前の測定の不純物に影響を及ぼされない。
【0059】
本発明の第1の観点では、流体中の物質を決定する分析デバイスと協働する結合デバイスであって、
流体中の物質に連結される粒子と、
上記粒子が上記物質に連結された場合に上記粒子を結合する結合面と
を有し、上記分析デバイスは、
上記結合面上の上記粒子を検知する検知ユニットであって、i)上記結合面に結合した上記粒子と上記結合面との距離及びii)上記結合面に結合した上記粒子の面内位置の少なくとも1つを示す検知信号を生成する当該検知ユニットと、
生成された上記検知信号に依存して上記結合面に結合した粒子の異なる種類の結合を識別する結合識別ユニットと
を有する当該結合デバイスが与えられる。
【0060】
本発明の更なる観点では、流体中の物質を決定する結合デバイスと協働する分析デバイスであって、上記結合デバイスは、
流体中の物質に連結される粒子と、
上記粒子が上記物質に連結された場合に上記粒子を結合する結合面と
を有し、当該分析デバイスは、
上記結合面上の上記粒子を検知する検知ユニットであって、i)上記結合面に結合した粒子と上記結合面との距離及びii)上記結合面に結合した上記粒子の面内位置の少なくとも1つを示す検知信号を生成する当該検知ユニットと、
生成された上記検知信号に依存して上記結合面に結合した粒子の異なる種類の結合を識別する結合識別ユニットと
を有する当該分析デバイスが与えられる。
【0061】
上記分析デバイスは、好ましくは、好ましくは磁性である粒子を結合面に引き付ける磁気ユニットを有している。
【0062】
他の例では、上記磁気ユニットは、例えば、国際特許出願公開WO2009/037636−A1号公報又は国際特許出願公開WO2010/026551A1号公報に述べられているように、粒子に力を加える回転磁場を生成するように設計される。
【0063】
本発明の更なる観点では、流体中の物質を決定する物質決定方法であって、
流体中の物質に粒子を連結するステップと、
上記粒子が上記物質に連結された場合に上記粒子を結合面に結合するステップと、
上記結合面上の上記粒子を検知するステップであって、i)上記結合面に結合した上記粒子と上記結合面との距離及びii)上記結合面に結合した上記粒子の面内位置の少なくとも1つを示す検知信号が生成される当該ステップと、
生成された上記検知信号に依存して上記結合面上の結合した上記粒子の異なる種類の結合を識別するステップと
を有する当該物質決定方法が与えられる。
【0064】
本発明の更なる観点では、流体中の物質を決定する分析方法と協働する結合方法であって、
流体中の物質に粒子を連結するステップと、
上記粒子が上記物質に連結された場合に上記粒子を結合面に結合するステップと
を有し、上記分析方法は、
上記結合面上の上記粒子を検知するステップであって、i)上記結合面に結合した上記粒子と上記結合面との距離及びii)上記結合面に結合した上記粒子の面内位置の少なくとも1つを示す検知信号が生成される当該ステップと、
生成された上記検知信号に依存して上記結合面上の結合した上記粒子の異なる種類の結合を識別するステップ、特に、生成された検知信号に依存して、上記物質に連結された上記結合面に結合した粒子である特異的結合粒子を決定するステップと
を有する当該結合方法が与えられる。
【0065】
本発明の更なる観点では、流体中の物質を決定する結合方法と協働する分析方法であって、上記結合方法は、
流体中の物質に粒子を連結するステップと、
上記粒子が上記物質に連結された場合に上記粒子を結合面に結合するステップと
を有し、当該分析方法は、
上記結合面上の上記粒子を検知するステップであって、i)上記結合面に結合した上記粒子と上記結合面との距離及びii)上記結合面に結合した上記粒子の面内位置の少なくとも1つを示す検知信号が生成される当該ステップと、
生成された上記検知信号に依存して上記結合面上の結合した上記粒子の異なる種類の結合を識別するステップ、特に、生成された検知信号に依存して、上記物質に連結された上記結合面に結合した粒子である特異的結合粒子を決定するステップと
を有する当該分析方法が与えられる。
【0066】
本発明の更なる観点では、流体中の物質を決定する分析コンピュータプログラムであって、請求項12記載の分析デバイスを制御するコンピュータ上で実行される際に、請求項12記載の分析デバイスに請求項13記載の方法のステップを実行させるプログラムコード手段を有する当該分析コンピュータプログラムが与えられる。
【0067】
請求項1記載の物質決定装置、請求項8記載の結合デバイス、請求項12記載の分析デバイス、請求項13記載の物質決定方法、上述した結合方法、上述した分析方法及び請求項14記載の分析コンピュータプログラムは、従属請求項に定義されているような類似した及び/又は同一の好ましい形態を有することを理解されたい。
【0068】
本発明の好ましい形態は、各独立請求項に関連する従属請求項の任意の組み合わせでもあり得ることを理解されたい。
【0069】
本発明のこれらの観点及び他の観点は、以下に説明される実施の形態から明らかであり、以下に説明される実施の形態を参照して理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】結合装置の断面図を模式的及び例示的に示している。
【図2】結合装置の毛管構造体を模式的及び例示的に示している。
【図3】結合装置の平面図を模式的及び例示的に示している。
【図4】結合デバイス及び分析デバイスを有する物質決定装置を模式的及び例示的に示している。
【図5】結合面への異なる種類の結合を模式的及び例示的に示している。
【図6】結合面に結合した粒子に加えられる力の影響を模式的及び例示的に示している。
【図7】結合面に結合した粒子に加えられる力の影響を模式的及び例示的に示している。
【図8】結合面に結合した粒子に加えられる力の影響を模式的及び例示的に示している。
【図9】結合面に結合した粒子に加えられる力の影響を模式的及び例示的に示している。
【図10】結合面に結合した粒子に加えられる力の影響を模式的及び例示的に示している。
【図11】結合面に結合した粒子に加えられる力の影響を模式的及び例示的に示している。
【図12】結合面に結合した粒子の種々の向きを模式的及び例示的に示している。
【図13】結合面に結合した粒子の種々の向きを模式的及び例示的に示している。
【図14】配向角に対する結合面に結合した粒子の距離の依存性を模式的及び例示的に示している。
【図15】粒子の向きが変更されるように粒子に磁力を加える加力ユニットを模式的及び例示的に示している。
【図16】分析デバイスに導入された結合装置を模式的及び例示的に示している。
【図17】流体中の物質を決定する物質決定方法を模式的に表した流れ図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0071】
図1は、流体3中の決定される必要がある物質を結合する結合デバイス1を模式的及び例示的に示している。結合デバイス1は、流体3を濾過するフィルタ素子2及び毛管力を生成する毛管構造体5を有している。毛管構造体5は、好ましくは接着剤を用いることによりフィルタ素子2に取り付けられている。毛管構造体5は、この実施の形態では、両側で接着力のある両面テープより成っている。
【0072】
結合デバイス1は、フィルタが位置する濾過部6と、流体3中の物質が検出可能である検出部7とを有しており、毛管構造体5は、濾過された流体3が毛管力により濾過部6から検知部7に誘導されるように形成されている。
【0073】
毛管構造体5は、濾過部6を検知部7と接続する収集チャネルと、濾過部6に位置する誘導チャネル9とを有しており、誘導チャネル9は収集チャネル8の端部10から伸びている。この実施の形態では、誘導チャネル9は、収集チャネル8の端部から放射状に広がっている。図2に、毛管構造体5がより詳細に模式的及び例示的に示されている。図3は、図1の断面図に示されている結合デバイス1についての平面図を模式的及び例示的に示している。
【0074】
結合デバイス1は、検知部7に位置する検出空洞部14を有しており、この検出空洞部14内において流体3の物質が検出可能である。この検出空洞部14は、結合デバイス1の第1の部分15及び第2の部分16並びに毛管構造体5により形成されている。また、第1の部分15及び第2の部分16は、毛管構造体5とともに接続チャネル8を形成している。第1の部分15と第2の部分16とは、好ましくは、接着剤、特に毛管構造体5を形成する両面テープを介して互いに連結している。第1の部分15及び第2の部分16は、射出成形され、好ましくは可視光に対して透明であるプラスチック基板である。第1の部分15は、結合デバイス1の上部基板、クロージング素子又は被覆素子とみなされ、第2の部分16は、結合デバイス1の下部基板又はベース素子とみなされ得る。第1の部分15は、ガスが毛管構造体5から出ることを可能にする通気口39を有している。
【0075】
この実施の形態では、フィルタ素子2は血液分離フィルタであり、結合デバイス1は好ましくは使い捨て可能であるカートリッジを形成している。結合デバイス1は、好ましくは、ポイント・オブ・ケア診断に用いられる。結合デバイス1は、好ましくは、全血液試料中における、特に、例えば25μlの指先の試料中における低濃度のバイオマーカを検出する。検知部7は、好ましくは、免疫学的測定部を有している。特に、検知部7は、流体3中の物質に連結される粒子群17を有しており、この粒子群は流体3と混ぜ合わさり、流体3が検知部7に存在する場合、粒子は流体3中の物質に連結する。粒子群17は、検知部7と濾過部6との間にも配置され得る。
【0076】
図4は、結合デバイス1と分析デバイス18とを有する物質決定装置19を模式的及び例示的に示している。結合デバイス1は、分析デバイス18に組み込まれている。分析デバイス18は、結合面30上の粒子を検知する検知ユニット33を有しており、検知ユニット33は、結合面30に結合した粒子と結合面30との距離を示す検知信号を生成する。分析デバイス18は、更に、生成される検知信号に依存して結合面30に結合した粒子の異なる種類の結合を識別する結合識別ユニット34を有している。この実施の形態では、結合識別ユニット34は、生成される検知信号に依存して物質に連結された結合面30に結合した粒子である特異的結合粒子を決定する特異的結合決定ユニット34である。物質決定装置19は磁気バイオセンサであり、上記粒子は、物質に連結されることにより物質を標識化する磁気ビーズ、すなわち、ナノ粒子である。物質を連結するために、磁気ビーズは、例えば特定の検体分子である物質に連結され得る連結要素とともに機能化される。この実施の形態では、連結要素は抗体である。しかしながら、連結要素は、タンパク質、DNA、アプタマ等でもあり得る。
【0077】
分析デバイス18は、磁性粒子を結合面30に引き付ける及び磁性粒子を結合面30から引き離す磁気ユニット23,24を有している。この磁気ユニットは、結合デバイスが分析デバイスに組み込まれている場合には、好ましくは結合デバイス1の一面に平面配置の状態で存在するU字形磁石23を有するとともに、結合デバイスが分析デバイスに組み込まれている場合には、結合デバイス1の対向面に設けられた第2の磁石24を有している。磁気ユニット23,24は、結合面30に結合した粒子に力を加える加力ユニットである。
【0078】
検知ユニット33は、更に、例えば、結合面30にエバネセント場を生成するために結合面30に向けられる放射線を発する発光ダイオード又はレーザである光源20を有している。
【0079】
上記結合面30のエバネセント場は、結合面30に結合した粒子に影響を及ぼされ、それにより、カートリッジ表面において全反射する光を有する反射光ビーム31及び結合面30に結合した粒子により散乱するエバネセント場の光を有する散乱光ビーム29に影響を及ぼす。反射光31は、対物レンズ25により好ましくはCCDカメラである第1の光検出器21上に結像される。散乱放射は、顕微鏡対物レンズ32により集光され、結像レンズ26により第2の検出器27上に結像される。第1の検出器21及び第2の検出器27は、特異的結合決定ユニット34に与えられる検知信号を生成し、特異的結合決定ユニット34は、生成された検知信号に依存して、物質に連結されている結合面30に結合した粒子である特異的結合粒子を決定する。第1の検出器21の検知信号はFTIRに基づいており、第2の検出器27により生成される検知信号はDFMに基づいている。特異的結合決定ユニット34は、好ましくは、結合面30上の特異的結合粒子の量を決定する。
【0080】
以下に、FTIR検知信号の生成について簡潔に説明する。より高い屈折率を持つ媒体、例えば第2の部分16とより低い屈折率を持つ媒体、例えば流体との界面で光のビームが反射すると、それ以上の入射角では全反射(TIR)の状態である或る臨界入射角が存在する。図4に示されている(屈折率及び入射角に関する)検出形態は、入射ビームの全反射が存在するようになっている。光はそのような状態において全反射するが、低い屈折率を持つ媒体の非常に薄い層に依然として光の滲み出し(penetration)が存在する。これは、エバネセント場と呼ばれ、その強度は、光の波長のオーダーの特徴的な滲み出し深さで低屈折率の媒体において指数関数的に減衰する。従って、実際には、滲み出し深さは、好ましくは0.5マイクロメートルよりも小さい。磁性粒子が結合面30に結合されると、好ましくは約0.5マイクロメートルのこの非常に薄い第1の流体層の光学的特性は変化し、反射光ビームの強度の低減を引き起こす。これは、エバネセント光の吸収及び散乱(FTIR;漏れ全反射)に起因する。その結果、検出器21における光の強度及び従って信号が減少するのに対し、検出器27における光の強度及び従って信号は増大する。
【0081】
完全を期すために、以下に、光学的方法の例、例えば、カートリッジ1と第2の検出器27との間の反射光ビーム31路に追加として設けられる第2の検出器27における空間フィルタリング部(図示せず)を伴う暗視野検出が開示される。FTIR検出法の明らかな利点は、結合面30を照射し、反射後に第2の検出器27に達する良好にコリメートされた平行入射ビームの使用である。検出の分岐の第2の検出器27において結像(収束)レンズを用いると、反射光ビーム31の実質的に全ての全反射光が、レンズの焦点面を通って進み、(レンズの開口数及び光の波長に依存して)結像レンズの焦点面(フーリエ面)の非常に小さい領域に集結する。一例では、光は、第2の検出器27に達し、そこで結合面30の明視野画像を生成する結像面に向かって更に伝播する。しかしながら、異なる例によれば、空間フィルタ(障害物マスク、図示せず)が、集束点よりもわずかに大きい結像レンズのフーリエ面に配される。これは、全反射から生じる全ての光が上記障害物により遮断され、この光は検出器27に達しないという効果があり、これは、結合面30において散乱が起こらないときゼロの光信号(すなわち、暗画像)をもたらす。
【0082】
結合面30において標的粒子の結合が起こると、光の散乱は、主な反射出射光ビーム31の方向以外のランダムな方向に散乱する光をもたらす。その結果、これらの散乱した光線は、レンズの軸外のフーリエ面を通過し、暗視野画像化のためのフィルタの軸上の障害物によって遮断されず、これは、第2の検出器27に幾らかの光をもたらす。散乱光は依然として第2の検出器27上に結像されるので、測定される信号は、ここでは結合した標的粒子の量に比例する散乱の量に正比例する。このやり方では、高いSN比を持つ上述したデバイスにより更に処理され得る光学的「x信号」が得られる。
【0083】
図5は、結合面30における種々の結合の種類を模式的及び例示的に示している。図5において、破線35は、エバネセント場の減衰長ζとして定義されるエバネセント場の高さを模式的及び例示的に示している。エバネセント場は、結合面30への距離が増加するに従って指数関数的に減少するので、結合面により近い粒子は、結合面30からより離れている粒子よりもエバネセント場に大きい影響を及ぼす。Aによって示されている粒子は、連結要素39、物質36及び結合要素38を介して結合面30に特異的に結合している。粒子Bは、粒子Aのように標準のサンドイッチ部を形成せず、連結要素39及び結合要素38を介して、すなわち、サンドイッチされる物質を伴わずに結合面30に結合している。
【0084】
粒子Cは、連結要素39、決定される物質ではない、すなわち検体ではない要素37及び結合要素38を介して結合面30に結合している。粒子Dは、連結要素39を介して結合面30の露出領域に直接結合している。これは、結合面30が粒子Aに関して図5に示されているような標準のサンドイッチ部を形成するために結合要素38を有していることを意味する。これらの結合要素38は、図5に示されている例では、粒子B、C及びEも結合している。しかしながら、粒子Dは、連結要素39を介して結合面30に直接結合している。
【0085】
粒子Eの露出領域は、結合要素38を介して直接結合面30に結合している。すなわち、粒子Eは、物質を連結する連結要素39を有しており、粒子A、B、C、Dはそれぞれの粒子の連結要素39を介して結合面30に結合している。しかしながら、粒子Eは、連結要素39を介して結合面30に結合されておらず、粒子Eの露出領域が結合要素38を介して結合面30に連結している。
【0086】
図5では、粒子Aのみが標準のサンドイッチ部を形成している。従って、粒子Aは、結合面30に特異的に結合している。他の粒子B、C、D、Eは、標準のサンドイッチ部を形成せず、従って、結合面30に非特異的に結合している。図5において分かるように、特異的結合粒子Aの結合面30までの距離は、非特異的結合粒子B、C、D、Eの結合面30までの距離と異なる。
【0087】
非特異的な結合は、好ましくは、物質の存在、すなわち、試料流体中において検出されるべき特定の検体の存在に依存しない任意の結合である。図5は、サンドイッチ免疫測定についての特異的結合と非特異的結合との違いを示している。しかしながら、他の種類の検定も特異的結合及び非特異的結合を有しており、物質決定装置19は、流体中の物質を決定するために他の検定が選択される場合に特異的結合粒子を決定するためにも用いられ得る。
【0088】
検知ユニット33は、エバネセント場と結合面30に結合した粒子との第1の空間関係に依存する第1の検知信号を生成するとともに、エバネセント場と結合面30に結合した粒子との第2の空間関係に依存する第2の検知信号を生成するために、エバネセント場と結合面30に結合する粒子との空間関係を変更するように構成されている。特異的結合決定ユニット34は、上記第1の検知信号及び第2の検知信号に基づいて特異的結合粒子を決定する。上記第1の検知信号及び第2の検知信号は、第1の検出器21によって生成されるFTIR信号である。しかしながら、上記第1の検知信号及び第2の検知信号は、第2の検出器27によって生成されるDFM信号でもあり得る。また、特異的結合決定ユニット34は、第1の検出器21によって生成される第1及び第2のFTIR信号と第2の検出器27によって生成される第1及び第2のDFM信号とに基づいても特異的結合粒子を決定することが可能である。
【0089】
好ましくは、検知ユニット33は、結合面30からの距離に対して第1の依存性を有する第1のエバネセント場及び結合面30からの距離に対して第2の依存性を有する第2のエバネセント場を生成することによって結合面30上の粒子を検知し、粒子による第1のエバネセント場への影響に依存する第1の信号及び粒子による第2のエバネセント場への影響に依存する第2の信号を生成するように構成されている。
【0090】
上記2つのエバネセント場は、結合面30からの距離に対して異なる依存性を有しているので、結合面30上の粒子による異なるエバネセント場の影響は、結合面30までの種々の距離に位置する粒子を示している。特異的結合と非特異的結合とは、一般に、結合面30までの距離に関して異なるので、上記第1の検知信号及び第2の検知信号は、特異的結合粒子を決定するために用いられ得る。
【0091】
この実施の形態では、検知ユニット33は、結合面30に向けられる放射線28の波長を変更することによってエバネセント場と結合面30に結合する粒子との空間関係を変更する。特に、光源20は、結合面30に向けられる第1の波長を有する第1のエバネセント場を生成する第1の放射線と、結合面30に向けられる第2の波長を有する第2のエバネセント場を生成する第2の放射線とを生成し、光検出器21,27は、結合面においてそれぞれ反射及び散乱した後の第1の放射線及び第2の放射線を検出し、検出された第1の放射線に依存する第1の検知信号を生成するとともに、検出された第2の放射線に依存する第2の検知信号を生成する。
【0092】
光検出器21,27は、好ましくは、上記第1の波長と第2の波長とを識別する。代替又は追加として、検知ユニット33は、最初に第1の放射線を用い、その後、第2の放射線を用いて結合面を照射するか、又は、最初に第2の放射線を用い、その後、第1の放射線を用いて結合面を照射する。このケースでは、光検出器21,27は、第1の波長と第2の波長とを識別する必要がない。
【0093】
光源20は、異なる波長を生成する2つの発光ダイオード又は2つのレーザを有している。特に、光源20は、好ましくは、赤色発光ダイオード及び青色発光ダイオードを有している。他の実施の形態では、第1のエバネセント場及び第2のエバネセント場は、放射線が結合面30と交わる角度を変更することによって生成される。
【0094】
図5において分かるように、結合面30と粒子との距離は、非特異的結合の場合には特異的結合の場合と同じではないことが多い。例えば、非特異的結合粒子Cの結合面30までの距離だけが、特異的結合粒子Aの結合面30までの距離に近い。他の非特異的結合粒子B,D,Eについては、結合面30までの距離に関する差がより顕著である。特異的結合と非特異的結合とは、一般に、結合面までの距離が異なるので及び検知ユニット33は結合面30に結合した粒子と結合面30との距離を示す検知信号を生成するので、特異的結合決定ユニット34は、生成された検知信号に基づいて特異的結合粒子を決定することができる。
【0095】
上記検知信号は、好ましくは、結合面上の粒子数に依存する信号変化及び以下の式、すなわち、
S=Ns (1)
に従う粒子当たりの信号変化である。ここで、Sは信号変化、すなわち検知信号を示し、Nは結合面30上の粒子数を示し、sは粒子当たりの信号変化を示している。上記粒子当たりの信号変化は、結合面30からの粒子の距離に依存するものである。2つのレベルが存在すると仮定すると、信号変化は、
S=N+N (2)
と定義される。ここで、Nは結合面30におけるエバネセント場内の特異的結合粒子の数を示し、sは特異的結合粒子当たりの信号変化を示し、Nは結合面30におけるエバネセント場内の非特異的結合粒子の数を示し、sは非特異的結合粒子当たりの信号変化を示している。
【0096】
第1の検知信号が生成されており、第1のエバネセント場が存在した場合、及び第2の検知信号が生成されており、第2のエバネセント場が存在した場合、第1の検知信号及び第2の検知信号は、対象とする同じ領域内の粒子数に同じように依存するが、結合面30からの粒子の距離には異なって依存する。従って、第1の検知信号と第2の検知信号との比は、結合面30からの粒子の距離を示す。
【0097】
特に、結合面までの距離が同じ粒子は、結合面30における粒子の量が異なっていても第1の検知信号と第2の検知信号との同じ比をもたらす。従って、特異的結合決定ユニット34は、第1の検知信号と第2の検知信号との比に基づいて特異的結合粒子を決定する。
【0098】
第1の検知信号S及び第2の検知信号Sは、以下の式、すなわち、
=N+N (3)
及び
=N+N (4)
によって定義される。ここで、添字及びは、第1の検知信号を生成するための測定と第2の検知信号を生成するための測定とについての検知信号、すなわち信号変化及び粒子当たりの信号変化を区別するため、特に、赤色光及び青色光によってそれぞれ行われる又は入口角θ1及びθ2によってそれぞれ行われる2つの測定値を区別するために用いられている。
【0099】
特異的結合決定ユニット34は、好ましくは、N又はNを決定する。すなわち、特異的結合決定ユニット34は、好ましくは、検知信号から非特異的結合の寄与を差し引く。その場合、結果は、特異的結合粒子のみによって生じた検知信号、特に信号変化である。この信号は、例えば、結合面30上の特異的結合粒子の量を決定するために直接的に用いられ得る。例えば、物質決定装置19は、非特異的結合の寄与が差し引かれた検知信号を決定することにより較正され、一方では、既知の量の特異的結合粒子が結合面に存在する。
【0100】
一実施の形態では、検知ユニット33は、単一の粒子によって生じた検知信号、すなわち信号変化が、顕微鏡対物レンズ32により集光され、結像レンズ26により第2の光検出器27に結像される散乱光29を用いて識別されるように構成されている。この実施の形態では、第2の光検出器27は、好ましくは、二次元の検出面を有しており、上記二次元の検出面上の種々の場所は、結合面30上の種々の粒子の検知信号に対応する。従って、結合面30に結合した単一の粒子に関して、第1及び第2の検知信号が生成され得る。各粒子に関して、第1の検知信号と第2の検知信号との比が決定され、それぞれの粒子が結合面に特異的又は非特異的に結合した場合に、この比が各単一の粒子について決定するために特異的結合決定ユニット34により用いられる。
【0101】
また、第2の光検出器27により検出される画像も、単に結合面30に結合した粒子数を計算するために用いられ得る。更に、第1のFTIR検知信号及び第2のFTIR検知信号が、第1の光検出器21によって生成される。上記第1の検知信号は、例えば第1の波長を用いる第1の測定の間の信号変化であり、上記第2の検知信号は、例えば第2の波長を用いる第2の測定の間の信号変化である。信号変化及び粒子数が測定されたので、粒子当たりの信号変化S,S,S,Sが決定され、式(3)及び(4)を解くために用いられる。このやり方では、特異的結合決定ユニットは、特異的結合粒子の数N及び非特異的結合粒子の数Nを決定する。
【0102】
図4に模式的及び例示的に示されている物質決定装置19の実施の形態は、好ましくは、第1の検知信号と第2の検知信号との比であり結合面30上の粒子の特異的結合を示す特異的比率を与える特異的比率供給ユニット40と、第1の検知信号と第2の検知信号との比であり結合面30上の粒子の非特異的結合を示す非特異的比率を与える非特異的比率供給ユニット41とを更に有している。この実施の形態では、特異的比率供給ユニット40及び非特異的比率供給ユニット41は、特異的比率及び非特異的比率が記憶され、これらの比率が検索される記憶ユニットである。上記特異的比率は、流体中に非常に高い物質の濃度、すなわち、好ましくは結合面30が飽和する、すなわち完全に占有される濃度が存在する間に、例えば、第1の検知信号及び第2の検知信号を生成することにより決定される。従って、この特異的比率は、特異的結合粒子のみに起因する第1の検知信号と第2の検知信号との比である。上記非特異的比率は、流体中に当該物質が全く存在しない間に第1の検知信号及び第2の検知信号を生成することにより決定される。従って、この非特異的比率は、特異的結合粒子によって生成されたものではなく、実質的に非特異的結合粒子のみによって生じた第1の検知信号と第2の検知信号との比である。特異的比率Q及び非特異的比率Qは、特異的又は非特異的結合粒子の数に依存するものではなく、以下の式、すなわち、

(5)
及び

(6)
によって表される。
【0103】
式(5)及び(6)を用いて、式(4)は

(7)
と書き直すことができ、これは

(8)
と置き換えることができる。
【0104】
式(8)は、式(3)と組み合わされて

(9)
をもたらし、これは、

(10)
と置き換えることができる。
【0105】
式(10)に従って、上記特異的結合決定ユニットは、
a)i)第1の検知信号と、ii)非特異的比率と第2の検知信号との積との差と、
b)i)1と、ii)非特異的比率と特異的比率との比との差と
の比として、特異的結合粒子に起因する検知信号の部分を決定する。
【0106】
既に上述したように、特異的結合決定ユニット34は、N又はNに依存する特異的に結合した粒子の量を決定することができる。特異的結合決定ユニット34は、好ましくは、第1の光検出器21により生成される第1及び第2のFTIR検知信号から式(10)に基づいて特異的結合粒子を決定する。しかしながら、特異的結合決定ユニット34は、式(10)並びに第2の光検出器27により生成される第1及び第2のDFM検知信号に基づいて特異的に結合した粒子の量を決定することもできる。
【0107】
第1の検知信号が、i)結合面に結合した粒子と結合面との第1の距離、ii)結合面上の結合した粒子の第1の面内位置及びiii)第1の距離感度のうちの少なくとも1つに依存して生成され、第2の検知信号が、i)結合面に結合した粒子と結合面との第2の距離、ii)結合面上の結合した粒子の第2の面内位置及びiii)第2の距離感度のうちの少なくとも1つに依存して生成され、第1の検知信号の生成と第2の検知信号の生成との間に、i)結合面に結合した粒子と結合面との距離、ii)結合面上の結合した粒子の面内位置及びiii)検知ユニットの距離感度のうちの少なくとも1つが変更されていれば、式(1)ないし(10)を参照して上述した特異的結合粒子、特に、特異的結合粒子によって生じた検知信号の部分の決定は、第1の検知信号及び第2の検知信号が他のやり方で決定される場合にも用いられ得る。例えば、結合面に結合した粒子が結合面に向かって及び/又は第1の横方向に移動した間に第1の検知信号が生成され、結合面に結合した粒子が結合面から離れた及び/又は第2の横方向に移動した間に第2の検知信号が生成される。
【0108】
式(1)ないし(10)を参照して上述した特異的結合粒子、特に、特異的結合粒子によって生じた検知信号の部分の決定は、結合面まで同じ距離にある粒子は同じ第1の検知信号と第2の検知信号との比をもたらすという仮定に基づくものである。この仮定は、粒子径があまり大きくない場合、非常によく満たされる。粒子径が考慮される場合、第1の信号が第1の波長を用いることにより生成され、第2の信号が第1の波長とは異なる第2の波長を用いる間に生成されれば、以下の式、すなわち、

(11)
及び

(12)
が上述した比を表す。ここで、dは第1の粒子の径を示し、Rは第1の粒子の第1の検知信号と第2の検知信号との比を示し、dは第2の粒子の径を示し、Rは第2の粒子の第1の検知信号と第2の検知信号との比を示し、λ、λは第1及び第2の波長をそれぞれ示し、zは結合面までの粒子の距離を示し、ζはエバネセント場の減衰長を示し、σは断面積を示している。
【0109】
上記第1の検知信号及び第2の検知信号が、波長多重ではなく、異なる入射角θ、θを用いて生成される場合、第1の粒子及び第2の粒子についての第1の検知信号と第2の検知信号との比は、以下の式、すなわち、

(13)
及び

(14)
によって定義される。
【0110】
従って、入射角の多重が用いられる場合、上記比は粒子の径とは無関係である。よって、単一又は複数の波長及び複数の入射角θの使用を組み合わせることは、データ処理を容易にするのに役立つ。例えば、断面積σは、θ依存性を有していないので、異なる入射角であるが、固定された波長を用いて2つの測定値を比較する場合には式から外れる。従って、式(1)ないし(10)を参照して上述した決定は、波長多重ではなく、入射角の多重が用いられる場合も、高精度で用いられ得る。
【0111】
例示的な実施の形態として、以下に、好ましい検知信号の分析がより詳細に説明される。
【0112】
波長λ及び光学的界面、すなわち結合面よりも上側の高さzにおいて直径dの単一のビーズにより散乱する及び吸収される光子の量は、S、すなわち、

(15)
に等しいFTIR信号の減少をもたらす。ここで、σ(λ,d)は波長λにおいて直径dのビーズの全(4πで積分された)散乱/吸収断面積であり、ζはエバネセント場の指数関数的減衰定数である。

(16)
【0113】
FTIR検知信号の場合、全FTIR信号(FTIR信号の減少)は、或るビーズ径及び高さの分布を有する表面に結合したビーズ、すなわち粒子の全集合(full ensemble)にわたって積分された信号Sである。ビーズ径の分布は、原理的には、所与の一群の超常磁性ビーズについての既知の関数であり、

(17)
を用いてf(d)として表される。
【0114】
以下において、平均ビーズ高さzaveを持つ非特異的結合ビーズとzaveを持つ特異的結合ビーズとが識別される。また、ビーズ高さの分布とビーズ径との相関は存在しない、すなわち、各ビーズ径に関して、特異的(又は非特異的)結合ビーズのビーズ高さの分布は同じであると仮定する。その場合、これらの分布は、

(18)
及び

(19)
を用いてg(z)及びg(x)により与えられる。
【0115】
この場合、ビーズの全体にわたって積分される波長λにおける全FTIR信号は、

(20)
として表される。
【0116】
単一の明確なビーズ径d(すなわち、f(x)=δ(d))及び表面高さzs(a)であるNs(a)個の(非)特異的結合ビーズの全体について、この式は、

(21)
に単純化される。
【0117】
或る一群のビーズに関して断面積σ(λ,d)が既知であると仮定される場合、基本的には、4つの未知数N、N、z及びzが決定されなければならない。指数関数的に得られる量は、

(22)
として定義される。ここで、ηは、種々の波長における種々の検出効率を説明している。FTIR信号Stotλが4つの異なる波長で測定される場合、

(23)
の形の4つの式が、(断面積σ(λ,d)は既知であると仮定して)基本的には4つの未知数を用いて生成される。その結果、これらの4つの測定から、非特異的ビーズに対する特異的ビーズの比が決定される。
【0118】
例示的な実施の形態として、以下に、単一のビーズの検出の使用による高さの識別のための幾つかの式がより詳細に説明される。
【0119】
単一のビーズの場合、画像化する単一の結合事象は個々に解決され、検出される信号Sは専ら単一のビーズjに対応する。
【0120】

(24)
【0121】
単一のビーズは、画像化され、処理される。基本的には、各ビーズに関して2つの未知数、すなわち、直径d及び高さzが存在する。ここで、2つの異なる波長λにおけるビーズjからの信号Sが測定される場合、各ビーズについてのビーズの高さ及び径に関する情報は、以下の2つの式のセット、すなわち、

(25)
を解くことにより個々に得られる。
【0122】
これらの式を解くために、散乱/吸収断面積は、波長及びビーズ径の関数として知られているべきである。理想的なケースでは、この断面積が

(26)
のような積として表されると、ビーズ径は上記式から外れ、ビーズの高さは、(例えば励起ビーム強度により決定される)オフセット値、特定の波長の組み合わせに関する定数であり、二本立ての波長測定の間に検出される全てのビーズについて同一であるCを用いて直接的に計算される。

(27)
【0123】
多数のビーズに関して式(27)を解くことから、分布関数g(z)及びg(z)が得られ、これらから、比N/Nが導き出される。
【0124】
図4を参照して上述したように、物質決定装置19は、加力ユニットである磁気ユニット23,24を有している。好ましくは、検知ユニット33は、結合面30に結合した粒子に加えられる力を変更することによりエバネセント場と結合面30に結合した粒子との関係を変更するように構成されている。特に、検知ユニット33は、好ましくは、結合面に結合した粒子が結合面に向かって引き付けられる場合に第1の検知信号を生成し、結合面に結合した粒子が結合面から離れる方向に引っ張られる場合に第2の検知信号を生成する。
【0125】
検知ユニット33は、好ましくは、FTIR検知信号に基づいて平均表面粒子密度及び平均結合長を決定し、粒子が結合面30に引き付けられている間に第1の検知信号が生成され、粒子が結合面30から引き離されている間に第2の検知信号が生成される。結合面30への粒子の引き付けは、横方向に配向した磁場によってもたらされ、粒子は結合面30の方に反転することに注意されたい。
【0126】
上述した全ての実施の形態において好ましく行われるように、粒子が流体中の物質を連結させことを可能にするために流体が粒子と混ぜ合わさった後、粒子が結合面に結合することを可能にするために粒子は結合面に引き付けられる。その後、結合面に結合していない粒子は、結合面から引き離される。最後のステップは、洗浄ステップとみなされる。
【0127】
この実施の形態では、洗浄ステップの後、粒子は、磁気ユニットを用いて結合面30の方へ引き付けられる。結合した粒子が結合面30の方に引き付けられる間に測定されるFTIR検知信号は、表面粒子密度を示すものである。
【0128】
図6は、粒子51,52が矢印53により示されている力によって結合面30に引き付けられる時の状態を模式的及び例示的に示している。粒子51は特異的に結合し、粒子52は非特異的に結合している。参照符号hは、結合面30に対する平均の粒子の高さを示している。
【0129】
次のステップにおいて、粒子51,52を結合面30に対して上方に引き付けることにより結合部が穏やかに引き伸ばされる。これは、図7に模式的及び例示的に示されている。図7では、矢印54により示されている磁力を加えることによって粒子51,52を結合面30から引っ張ることにより、粒子51,52の結合部が引き伸ばされている。粒子が結合面から引き離されるので、平均のビーズの高さhは増加する。
【0130】
粒子51,52の結合部が引き伸ばされた間に光学的励起状態を変化させることによって、例えば、2つの波長で又は光が結合面30と交わる2つの異なる角度でFTIR検知信号を測定することによって、平均の結合長が決定される。粒子が結合面に引き付けられる間に行われる測定の結果と粒子が結合面から引き離される間に行われる測定の結果とを組み合わせることは、非特異的結合の部分を計算することを可能にするとともに、FTIR検知信号を適宜修正することを可能にする。
【0131】
検知ユニット33は、好ましくは、更に、経時的に、すなわち種々の時点で幾つかの検知信号、検知信号又は時間依存性の検知信号を生成し、結合面に結合した粒子は結合面から離れる方向に引っ張られ、特異的結合決定ユニット34は、上記経時的に生成された幾つかの検知信号に依存する特異的結合粒子を決定する。以下に、時間依存性の検知信号の生成について、図8ないし12を参照して例示的に説明する。
【0132】
上記洗浄ステップの後、粒子は結合面30の方に引き付けられる。この状態において生成される検知信号は、粒子ビーズ密度を示すものである。
【0133】
その後、図8に例示的に示されているように、粒子51,52,55は、結合面30の方に、すなわち、矢印53により示されている方向に引き付けられる。この例では、粒子51は特異的に結合し、粒子52及び55は非特異的に結合しており、粒子52及び55の非特異的結合部は異なっている。次のステップでは、粒子は結合面30から穏やかに引き離される。これは、図9に模式的及び例示的に示されている。測定される検知信号は、平均の結合長が大きくなるに従って徐々に増加する。図10に示されているように、或る時点において、最短の結合長を持つ粒子55の結合部が結合面30から最大の可動域に達する。図10では、粒子51,52の結合部は完全には引き伸ばされていないが、粒子55の結合部は完全に引き伸ばされている。
【0134】
引張力が粒子に更に加えられると、次の時点において、粒子52が最大長に達し、検知信号が更に増加する。この状態は、図11に模式的及び例示的に示されている。
【0135】
引張力が更に加えられると、最終的に全ての結合部が完全に引き伸ばされる。検知信号は最大値に達し、平均結合長hは最大になる。この状態は、図12に模式的及び例示的に示されている。
【0136】
結合面30から離れる粒子の動きの一定速度を仮定することにより、検知信号のプロファイルは時間とともに結合の長さの分布を反映する。この種の結合の長さの分布の決定は、DFM検知信号を用いることによっても行われ得ることに注意されたい。
【0137】
結合面の方へ又は結合面から粒子を移動させるために好ましくは磁性粒子である結合面に結合した粒子に力を加えることに次いで、粒子の配向を変えるためにも力が加えられる。これは、理想的な超常磁性粒子の磁気モーメントは常に場に一致し、従って配向の変化の誘発を不可能にするという理由で非理想的な磁性のためである。非理想的な磁性は、例えば、小さい永久モーメント、かなり長い緩和時間を持つ磁性粒子又は磁気異方性である。従って、上記加力ユニットは、結合面に結合した磁性粒子に配向の変化を与えることも可能である。加力ユニットは、好ましくは、結合した粒子の高さ、すなわち、結合した粒子の結合面までの距離が調節されるように結合面に配向の変化を与える。従って、結合した粒子に配向の変化を与えることによって、結合面に結合した粒子と結合面との距離が調節される。粒子は、500nmから1000nmの径を持つ磁性粒子であり、ポリスチレンと磁性材料との組み合わせにより構成され得る。
【0138】
結合した粒子は、一般に、傾斜又は回転するためのブラウン運動、結合の柔軟性の程度及び結合の自由度によるさまざまな高さをサンプリングすることができる。結合面にできる限り近い状態及び結合面からできる限り離れた状態の両方において結合した粒子を測定することが好ましい。これは、外力を用いることによって、例えば、上述したように結合面の方へ又は結合面から粒子を移動させるために磁力を加えることによって、特に、磁場勾配を与えることによって実現される。しかしながら、非理想的な磁性粒子の場合、制御されない磁気の配向が引張力を支配し、従って、予想される高さとは異なる高さをもたらし、特に、予想される検知信号とは異なる結合した粒子と結合面との距離に依存する検知信号をもたらしてしまう。従って、上記加力ユニットは、磁場の方向を制御することにより粒子の磁気の配向を制御する。粒子の配向に関して所望の場の配向が達成されるように加力ユニットを設計することにより、粒子の特異的な挙動が引き起こされる。
【0139】
粒子の配向は、2つの状況に利用される。第1の状況では、粒子は標的分子、すなわち物質を介してランダムな磁気の配向で結合面に結合する。これは、例えば、結合中に磁場を使用することのない1ステップの検定の場合に予想される状況である。所望の磁気の配向の効果を得るために、様々な場の配向がサンプリングされる必要がある。第2の状況では、粒子は制御された磁気の配向で結合する。これは、好ましい2ステップの検定又は1ステップの検定において磁場の利用下で粒子を標的分子、すなわち物質を介して結合面に結合させることにより行われる。このケースでは、所望の磁気の配向の効果を得るために単一の磁場の方向が用いられる。
【0140】
図12は、粒子の高さ、すなわち、結合面までの粒子の距離が、磁気の配向を用いてどのように影響を及ぼされるかを模式的及び例示的に示している。文字Aにより示されている例では、磁場は粒子70に加えられず、粒子の動きは実質的に結合部71によって結合面30にのみ制限される。文字Bにより図12に示されている例では、粒子70に磁場73が加えられており、それにより、磁性粒子70の磁気の配向72が磁場73と一致し、粒子70は動いて結合面30から離れる。磁場73は、矢印76により示されている方向に粒子70の向きを変え、結合部71を引き伸ばす。文字Cにより図12に示されている状態では、磁場74が結合面30と平行に向けられ、粒子70は結合面30に向かって矢印77により示されている方向に向きを変える。従って、粒子70は結合面30の方へ移動し、それにより、粒子の高さが最小になる。文字Dにより図12に示されている状態では、磁場75は結合面30の方へ向けられており、対応する磁場75との磁気の配向72の一致は、結合面30により妨げられる。この一致の妨げは、回転モーメントを引き起こし、結合部71にてこの引張力79をもたらす。
【0141】
上記磁気の配向を効果は、2つのいずれか一方の効果を高めるために勾配力と組み合わせられ得る。その場合、例えば、依然としてわずかに柔軟性のある結合部がより引き伸ばされる。
【0142】
粒子が磁場中で配向する際、結合した粒子と結合面との距離の変化、すなわち、粒子の高さの変化は、粒子の大きさ及び結合特性に依存する。図13は、粒子が磁場中で磁気的に配向する際に変化する粒子の高さについての2つの極端な可能性を示している。文字Eにより示されている図13の左側の部分は、結合部71の長さl及び粒子70の半径rのような種々の変数を説明するためにのみ用いられる。磁場は74で示されており、磁気モーメントは72で示されている。
【0143】
文字Fにより図13に示されている配向の状態では、粒子の高さは、以下の式、すなわち、
=cosα(l+r)−r (28)
によって定義される。
【0144】
文字Gにより図13に示されている配向の状態では、粒子の高さは、以下の式、すなわち、
=l−r(1−cosα) (29)

によって定義される。
【0145】
角度αは、結合面への結合部の連結点の周りの回転角である。文字Fにより示されている状態では、結合部71及び粒子72は共に回転するが、Gにより示されている状態では、粒子が結合部と粒子との連結点の周りを同じ角度αで回転する。
【0146】
図14は、回転角αに対する粒子の高さhの依存性を模式的及び例示的に示している。
【0147】
図14では、ライン80は30nmの結合長の場合の高さhを示し、ライン81は30nmの結合長の場合の高さhを示し、ライン82は90nmの結合長の場合の高さhを示し、ライン83は90nmの結合長の場合の高さhを示している。小さい回転角に関して著しい高さの変化が生じることが分かる。図14に例示的に示されている曲線は、250nmの粒子の半径に基づいている。
【0148】
図15は、磁性粒子の向きが変更され、それにより結合面30に結合した磁性粒子88の高さが変更されるように磁性粒子88に磁力を加える加力ユニット89を模式的及び例示的に示している。加力ユニット89は、磁性粒子88に所望の方向の磁場を与える4つの電磁石84,85,86,87を有している。
【0149】
加力ユニット89は、高さの変更のために、この実施の形態では非理想的な超常磁性粒子である磁性粒子88を磁気的に配向する。面外回転とみなされる磁場中における回転をする結合した粒子は、結合面よりも上側の高さを変更する。上記検知ユニットは、好ましくは、結合面に結合した粒子と結合面との第1の距離に依存する第1の検知信号を生成するとともに、結合面に結合した粒子と結合面との第2の距離に依存する第2の検知信号を生成する。上記第1の距離と第2の距離とは異なり、特に、加力ユニットにより引き起こされる磁性粒子の異なる磁気の配向のために異なる。上記特異的結合決定ユニットは、好ましくは、第1の検知信号及び第2の検知信号に基づいて特異的結合粒子を決定する。
【0150】
図15に示されている加力ユニット89は、流体中の物質を決定する結合デバイス1、すなわちカートリッジ1と協働する分析デバイスの一部であることに注意されたい。従って、図15に示されている加力ユニット89は、図4を参照して上述した物質決定装置における磁気ユニット23,24の代わりに又は磁気ユニット23,24に加えて用いられ得る。
【0151】
上記の実施の形態では、力は、磁力によって結合面に結合した粒子に加えられたが、他の実施の形態では、追加又は代替として、上記加力ユニットは、結合面に結合した粒子に他の種類の力を加える。例えば、加力ユニットは、結合面に結合した粒子に流体力又は静電気力を加える。
【0152】
一実施の形態では、加力ユニットは、結合面に結合した粒子を結合面から遠ざけるために静電気力を使用する。これは、粒子が結合面に結合したままで、流体洗浄ステップにおいて流体バッファを交換することにより行われる。
【0153】
粒子及び結合面の両方が、流体からのイオンの吸着又は表面における表面群の解離のために流体中において静電表面電荷を有している。典型的には、バイオセンサの環境では、表面電荷は粒子及び結合面の両方に関して負であり、これは、粒子と結合面との自然の反発力を引き起こす。流体中のイオンは、両方の表面の電荷を遮蔽し、それにより反発力は低下する。
【0154】
遮蔽が起こる層は二重層と呼ばれる。デバイ−ヒュッケル長λと相関がある反転二重層の厚さκ(λ=κ−1)は、

(30)
により与えられる。ここで、eは電気素量であり、Nはアボガドロ数であり、Iは流体のイオン強度であり、εは自由空間の誘電体誘電率であり、εは流体の比誘電率であり、kTは熱エネルギーである。
【0155】
粒子と表面との間の静電相互作用エネルギーは、反転二重層の厚さに依存し、粒子の半径R、粒子(底部)と表面との距離h及び

(32)
により与えられるZを用いて

(31)
により与えられる。
【0156】
ここで、zは電解質の価数であり、Ψparticle及びΨsurfaceはそれぞれ粒子及び表面の表面電位である。従って、結合面に結合した粒子と結合面との間の静電気力は、バッファのイオン強度に依存し、流体中のイオン濃度を低下させることにより大きくなる。よって、流体中のイオン濃度を変更することにより、結合面に結合した粒子と結合面との距離が変更される。従って、上記加力ユニットは、流体中のイオン濃度が変更され得るように構成される。イオン濃度は、例えば、新たな流体が結合面上に存在するように結合デバイスに新たな流体を入れることにより変化する。例えば、上記分析デバイスは、血液のようなオリジナルの流体を結合面に移動させるために用いられているやり方と同じやり方に従って好ましくはカートリッジである結合デバイスに新たな流体を満たす。
【0157】
一般に、結合面に結合した粒子と結合面との間には、ファンデルワールス相互作用も存在する。ファンデルワールス相互作用は、材料3よりなる流体中の材料2の表面における材料1の粒子のハマカー(Hamaker)定数A132を用いて以下の式、すなわち、

(33)
によって表される。ハマカー定数の値は、通常、約kTの数倍であり、正(引き合う)又はわずかに負(反発、主に表面にタンパク質が存在するため)である。結合面に結合した粒子と結合面との間の力は、各相互作用の項の負の勾配、すなわち、Ees及びEvdwの負の勾配である。
【0158】
ハマカー定数を変化させる、例えば、流体を交換することにより、結合した粒子と結合面とのファンデルワールス相互作用及び従って結合した粒子と結合面との距離が変更される。
【0159】
デバイ長λについての幾つかの典型的な値が下記の表に示されている。静電エネルギーがエネルギーの最小値から3kT大きくなる距離(粒子がこの距離に達する可能性は5%よりも低い。)も計算されている。典型的な値は、Ψparticle及びΨsurfaceの両方に関して−35mV、水の比誘電率に関して80、電解質の価数についてはz=1をとっている。最後の2つの欄は、3番目の欄と同じ計算を示しているが、引き合う又は反発するファンデルワールスエネルギーも考慮に入れている。

【0160】
従って、これらの計算は、バッファを希釈すると、大きい静電反発力が実現されることを示している。例えば、100nmの結合長で結合している粒子は、0.1/256=0.4mMのイオン濃度において約80nmの最小の高さを有しており、かなり引き伸ばされていると考えられる。
【0161】
このモデルでは、実現され得る静電反発力は、例えば、

である。
【0162】
上の表では、1番目の欄は0.1Mのバッファの種々の希釈を与えており、例えば、0.1/16は、16倍希釈され、その結果6ミリモルのモル濃度になっている。2番目の欄は、どの距離においてどの磁力が作られるかを例示的に示している。この例では、50pNの力が及ぼされたことが分かる。粒子が結合面に結合する力も、典型的にはこの範囲内であるので、静電反発力は粒子の高さを変更するのに十分大きい。他の実施の形態では、粒子の高さを変更するためにより大きい又はより小さい静電反発力が生成され得ることに注意されたい。
【0163】
これらの計算は、粒子間の相互作用の効果が非常に小さいことも示している。静電相互作用の指数関数的な減衰のため及び典型的なデバイ長が小さい(1ないし16nm)ために、静電粒子間相互作用は、100nmよりも大きい距離では無視できるようになる。磁気相互作用に関しては、エネルギーは、1/3乗の依存性であり、それほど強力に減衰せず、従って、マイクロメートルの距離を超えても高い磁気双極子力をもたらす。よって、バッファの交換による粒子の高さの変更は、強力な単一の粒子の接近を与える。
【0164】
従って、上記加力ユニットは、結合した粒子を結合面から引き離すために静電気力を用いるように構成され得る。これは、流体の洗浄ステップにおいて粒子が結合面に結合されたままでの流体バッファの交換により行われる。よって、第1の検知信号は第1の流体バッファが結合面に存在する間に生成され、第2の検知信号は第2の流体バッファが結合面に存在する間に生成され、第1の流体バッファ及び第2の流体バッファは、第2の流体バッファが用いられている間の結合した粒子と結合面との距離と比較して、第1の流体バッファが用いられている間の結合した粒子の結合面までの距離が異なるように選択される。上記特異的結合決定ユニットは、生成された第1及び第2の検知信号に基づいて、特異的結合粒子、特に、特異的結合粒子に起因する生成された第1又は第2の検知信号の部分を決定する。
【0165】
再度図4を参照すると、物質決定装置19は、結合デバイス1及び分析デバイス18から構成されている。結合デバイス1は、この実施の形態では、粒子及び結合面を含むカートリッジであり、流体3を受け入れるように構成されている。分析デバイス18は読取器とみなされ、検知ユニット33及び特異的結合決定ユニット34を含んでいる。結合デバイス1は使い捨て可能なデバイスであり、分析デバイス18は再利用可能なデバイスである。
【0166】
分析デバイス18は、更に、流体中の物質の量又は濃度を示す値を出力する出力ユニット60を有している。出力ユニット60は、好ましくはディスプレイである。分析デバイス18は、更に、検知ユニット33、特異的結合決定ユニット34及び出力ユニット60を制御する制御ユニット61を有している。
【0167】
特異的結合決定ユニット34は、好ましくは、感知信号に対する特異的結合粒子の寄与を決定することにより特異的結合粒子を決定する。特異的結合決定ユニット34は、好ましくは、更に、生成された検知信号への決定された特異的結合粒子の寄与に基づいて流体中の物質の濃度を決定する。好ましくは、特異的結合決定ユニット34は、生成された検知信号への決定された特異的結合粒子の寄与と流体中の物質の濃度との割り当てを有する。これらの割り当ては、好ましくは、キャブレーションによって生成され、表形式で又は関数として特異的結合決定ユニット34に記憶される。
【0168】
既に上述したように、結合デバイス1は、好ましくは、血液、唾液又は尿のような流体を受け入れ、流体を濾過し、濾過された流体をカートリッジの検知部に送るカートリッジである。このカートリッジは、使い捨て可能であり、一回のみの使用に適している。分析デバイス18は、異なるカートリッジとともに数回使用される。従って、血液、唾液又は尿のような流体3は、結合デバイス1のフィルタ素子2上に置かれ、流体3は濾過され、濾過された流体は検知部7に送られる。結合デバイス1、すなわち、この実施の形態ではカートリッジは分析デバイス18内に設けられ、検知部における流体3中の物質は分析デバイス18によって分析される。結合デバイス1は、用いられた後、好ましくは廃棄され、一方、分析デバイス18は、次の分析手続きのために用いられる。
【0169】
分析デバイス18の幾つかのユニットは、好ましくはケーシング64内に設けられ、これは、図16に模式的及び例示的に示されており、ユーザが分析デバイス18を手に持つことを可能にし、流体中の物質を分析するグリップ部63を有している。ケーシング64は、結合デバイス1を受け入れる受け入れ部62を有している。他の実施の形態では、ケーシング64は、他の形状を有している。
【0170】
以下に、流体中の物質を決定する物質決定方法を、図17に示されている流れ図を参照して例示的に説明する。
【0171】
ステップ101において、流体試料、特に血液試料がフィルタ素子2上に配される。
【0172】
ステップ102において、流体がフィルタ素子2によって濾過され、ステップ103では、濾過された流体が、毛管構造体の接続チャネル及び誘導チャネルにより生成される毛管力によって検知部7に送られる。
【0173】
ステップ101ないしステップ103を行う前、間又は行った後、結合デバイス1は分析デバイス18内に導入される。検知部7には、流体中に存在する標的分子に連結する特異的抗体によりコーティングされた磁性粒子が位置している。ステップ104において、上記磁性粒子は、濾過された流体と混ざり合い、特異的抗体を伴う磁性粒子は流体中の標的分子に連結する。
【0174】
ステップ105では、検知部の磁性粒子が結合面上に追いやられるように上記磁気ユニットが制御される。連結した標的分子を伴う磁性粒子は結合面に結合し、ステップ106において、結合した磁性粒子のみが結合面に連結したままであるように、磁気ユニットは、磁力が結合面に結合していない磁性粒子を1つ又は幾つかの検知部位から引き離すよう制御される。結合した粒子は、特異的結合粒子及び非特異的結合粒子である。
【0175】
ステップ107では、結合面上の粒子が検知され、結合面に結合した粒子と結合面との距離を示す検知信号が生成される。この検知ステップは、上述した実施の形態において説明された検知信号を生成する。例えば、第1及び第2のFTIR検知信号が種々のエバネセント場で測定される及び/又は第1及び第2のDFM検知信号が種々のエバネセント場で測定される。更に、結合した粒子に種々の力が加えられる間、例えば、粒子が結合面の方に引き付けられる間及び粒子が結合面から引き離される間に種々の検知信号が生成される。
【0176】
ステップ108では、物質に連結されている結合面に結合した粒子である特異的結合粒子が、生成された検知信号に基づいて決定される。特に、特異的結合粒子に起因する検知信号の部分が決定され、この部分は、特異的結合粒子に起因する検知信号の部分と特異的結合粒子の量及び/又は流体中の物質の濃度それぞれとの割り当てを用いることにより特異的結合粒子の量及び/又は流体中の物質の濃度に関係がある。
【0177】
ステップ109では、決定された特異的結合粒子の量及び/又は流体中の物質の濃度がユーザに表示される。
【0178】
ステップ101ないし106は結合方法のステップとみなされ、ステップ107ないし109は分析方法のステップとみなされ得る。
【0179】
上記物質決定装置は、好ましくは、特に非特異的結合を補正するために結合面よりも上側の結合した粒子の高さを決定するために用いられる磁気バイオセンサである。上記物質決定装置は、好ましくは、電磁場で作動するナノ粒子を使用する。ナノ粒子は、好ましくは、特定の検体分子を結合する抗体とともに機能化される磁気ビーズである。上記ビーズは結合面に引き付けられ、結合面における結合したビーズの数は流体試料中に存在する検体分子の正比例又は反比例する。その後、ビーズは、好ましくは、結合面からより遠くのビーズよりも結合面に近いビーズに対してより感度が高い技術を用いて検出される。物質決定装置は、好ましくは、上述したFTIR技術及び/又はDFM技術を用いる。これらの技術を用いると、ナノ粒子に対する感度は、表面からの距離の増加に従って指数関数的に減少する。一般に、粒子と結合面との距離がより大きいと、対応する検知信号はより小さい。しかしながら、検知信号は、結合面に近い粒子が結合面からより遠くの粒子よりも小さい信号を生成するようにも定義され得る。
【0180】
バイオセンサで行われる検定の感度を高めるために、ビーズ当たり得られる信号を増加させる多くの取り組みがなされる。しかしながら、非常に低い検体の濃度を測定する際、感度は、最終的には、低い濃度に関して得られる信号及び検体を含まないブランク測定に関して得られる信号によって決定される。ブランクについての信号は機器のノイズによって決定されるだけではなく、追加の信号が検体の存在とは無関係に、表面に結合するビーズ(非特異的結合)によって生成されることが分かっている。この特異的結合が生じる場合(これは典型的には生じる。)、特異的結合に関する信号も増加するので、ビーズ当たりの信号の増加によって感度が高くならない。
【0181】
試料流体中の添加物又はセンサ表面材料のアクセス可能な部分に結合するビーズ/タンパク質を妨げる不活性タンパク質による表面の「遮断」が、非特異的結合を抑制するために用いられ得る。しかしながら、これは、試行錯誤の困難で高価なプロセスである。
【0182】
本発明に係る物質決定装置は、困難で高価なプロセスを用いることなく特異的結合と非特異的結合とを区別することを可能にする。
【0183】
DFM検知信号は、好ましくは、個々の粒子ベースでの結合長及び/又は結合強度の測定を可能にし、それにより、特異的結合粒子と非特異的結合粒子との識別を可能にする。
【0184】
500nmの径の磁気ビーズは、十分な倍率及び解像度の顕微鏡下で目に見える。従って、ビーズの表面密度は、視野内の個々のビーズの数を数えることによって決定される。例えば、視野が1mmの面積である場合、最も低い測定可能な表面密度は、1ビーズ/1mm又は1ビーズ/10μmである。1ビーズ/200μmの最小検出可能表面密度に関して、そのような計数方法は、5000倍の感度の増加をもたらす。これは、対象とする領域内の最小検出可能標的濃度(例えば、1fM)をもたらす。単一のビーズの検出は、少なくとも2又は3桁の大きさだけ感度の増大を与える。ビーズは「デジタル的に」検出されるので、上記方法はドリフトに対して感度が低い。
【0185】
表面照射源又は裏面照射源が用いられる標準的な顕微鏡では、表面よりも上側のビーズの高さについての正確な情報が得られない又はほとんど得られない。FTIR機構では、ビーズがおおよそ指数関数的に減衰するエバネセント場に位置するので、高さの情報は信号内に存在する。エバネセント場の減衰長は、50ないし150nmのオーダーである。従って、数ナノメートルのオーダーの高さの位置の変化は、このシステムによって検出可能である。高さ及び/又は高さの変化は、ビーズの結合状態についての重要な情報を与える。
【0186】
図4は、カートリッジの一方の側に全て配置されたFTIR測定部、FTIR照明による単一のビーズの光学的検出部及び磁気作動部をまとめた(手持ち式又は卓上用の)構成を提案している。このやり方では、感度の増加が得られ、同時に、個々のビーズの結合状態についての情報が収集され、特異的結合ビーズからの信号と非特異的結合ビーズからの信号とのより優れた識別を可能にする。カートリッジの他方の(上)側は、十分に利用可能であり、(第2の)洗浄磁石(washing magnet)、温度制御用のヒーター又は他のデバイスの配置を可能にする。
【0187】
上記結合デバイスは、好ましくは、光ラベル、好ましくは拡散及び/又は蛍光により光学コントラストを与える微視的超常磁性ラベルである粒子を有する生物検定のキャリアである光カートリッジである。
【0188】
上述した実施の形態では、エバネセント場を引き起こすために全反射が用いられたが、他の実施の形態では、エバネセント場を引き起こすため他の技術、例えば、格子結合又は導波路結合が用いられ得る。
【0189】
図4を参照して上述した実施の形態では、顕微鏡対物レンズ32が用いられたが、他の実施の形態では、光子を収集及び画像化する他の対物レンズが用いられ得る。この対物レンズは、U字形作動磁石23の下部の結合デバイスの底部側に配される。光ラベルからの光子は、対物レンズによって捕獲される前に、2つのU字形磁石23の間の空隙を通って伝送される。対物レンズは、個々の光ラベルを例えばCCDカメラである第2の光検出器27に画像化することを可能にする開口数を有する。
【0190】
上記物質決定装置は、好ましくは、各個々の粒子に関して粒子が特異的又は非特異的結合粒子であるかどうかを決定する又は粒子の集合から非特異的結合粒子の割合を決定することを可能にする。
【0191】
上述した実施の形態では、粒子は磁性粒子であるが、他の実施の形態では、蛍光粒子のような他の粒子が用いられ得る。
【0192】
或るリンカー分子が図6を参照して上記に説明されたが、例えば、ポリペプチド配列が組み換え抗体に加えられた場合、リンカー分子は、抗体又は他の結合分子の必須部分であってもよい。
【0193】
上述した実施の形態では、物質決定装置は、FTIR検知信号及びDFM検知信号を生成する手段を有しているが、他の実施の形態では、物質決定装置は、これらの手段の1つのみ、すなわち、FTIR検知信号生成する手段又はDFM検知信号を生成する手段を有するように構成され得る。
【0194】
説明された実施の形態では、分析デバイスは手持ち式のデバイスであるが、他の実施の形態では、分析デバイスは、例えばテーブル上に配されることになるスタンドアロン形式であってもよい。
【0195】
上述した実施の形態では、特異的結合粒子が決定されたが、特に、特異的結合粒子及び非特異的結合粒子を識別するために測定される検知信号が用いられることが説明されたが、物質決定装置、特に、結合識別ユニットは、異なる種類の結合を識別するためにも用いられ得る。要は、結合識別ユニットは、或る結合部を介して結合面に結合した粒子の量又は濃度を決定するために用いられ得る。
【0196】
上述した実施の形態では、粒子が結合面から遠くに移動する間に第1の検知信号が生成され、粒子が結合面の方へ移動する間に第2の検知信号が生成されることが説明されたが、他の実施の形態では、第1及び第2の検知信号は、他の状態において生成され得る。例えば、第1の検知信号は、粒子が第1の横方向に移動する間に生成され、第2の検知信号は、粒子が第1の横方向に移動せず、第1の横方向とは異なる第2の横方向に移動する間に生成される。
【0197】
上述した実施の形態では、流体は、好ましくは血液であった。他の実施の形態では、流体は、任意の他の流体、特に、唾液又は尿のような他の体液であり得る。上記結合デバイス及び分析デバイスの好ましい用途は、心臓マーカー検出アプリケーションのような特に指先の血液試料を使用するポイント・オブ・ケア診断の分野である。しかしながら、上述したように、結合デバイスは、薬物乱用検査のための尿のような他の流体とともに用いられ得る。
【0198】
上述した実施の形態では、分析デバイス装置は、表面上の磁気ビーズの量を決定するためにエバネセント技術を用いている。他の実施の形態では、これらのビーズを決定するために他の技術が用いられ得る。例えば、磁気法、音波検出、電気的検出及び従ってこれらの組み合わせが用いられ得る。更に、分析デバイスは、センサ表面上又はその付近におけるビーズの磁気特性の検出を用いる任意のセンサを有していてもよい。分析デバイスは、分子標的を検出し、より大きい部分、例えば、細胞、ウイルス、細胞の一部又はウイルスの一部、組織抽出物等の濃度及び/又は存在を検出することが多い。磁気ビーズは、上記検知方法によって直接的に検出される。また、粒子は、検出される前に更に処理され得る。更なる処理の一例は、検出を容易にするために材料が加えられる又は磁気ラベルの化学的、生化学的若しくは物理的特性が変更されることである。上記分析デバイスは、幾つかのタイプの生化学測定、例えば、結合/非結合測定、サンドイッチ測定、競合測定、酵素測定等とともに機能する。上記結合デバイス及び分析デバイスは、センサ多重、すなわち、異なるセンサ及びセンサ表面の併用、ラベル多重、すなわち、異なるタイプのラベルの併用及びチャンバ多重、すなわち、異なる反応チャンバの併用用に構成され得る。結合デバイス及び分析デバイスは、少ないサンプル量に対してポイント・オブ・ケア用バイオセンサを用いるために、迅速、頑丈かつ容易に用いられる。上記検知空洞部は、好ましくは、1つ又はそれ以上の磁場生成手段、すなわち磁気ユニット及び1つ又はそれ以上の検出手段を有する分析デバイスとともに用いられることとなる使い捨て可能なカートリッジの一部である。上記結合デバイス及び分析デバイスは、好ましくは、自動ハイスループット試験に用いるのに適している。
【0199】
粒子は、好ましくは、3nmから5000nmまで、好ましくは10nmから3000nmまで、より好ましくは50nmから1000nmまでの範囲内の少なくとも一次元を有するナノ粒子である磁気ビーズである。
【0200】
上述した実施の形態では、或る特定の結合デバイス及び或る特定の分析デバイスが説明されたが、他の実施の形態では、結合デバイス及び分析デバイスは、他の構造を有し得る。例えば、結合デバイスは、単に結合面を有するだけであってもよい。また、他のフィルタの種類が用いられてもよいし、濾過された流体を濾過部から検知部に移動させる他のチャネル構造が用いられてもよい。
【0201】
上述した実施の形態では、物質決定装置は、結合デバイスと分析デバイスとにより構成されているが、他の実施の形態では、物質決定装置は、少なくとも粒子、結合面、検知ユニット及び特異的結合決定ユニットを有する一体化された装置である。
【0202】
開示された実施の形態に対する他の変形例は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求された発明を実践する際に当業者によって理解され、もたらされ得る。
【0203】
特許請求の範囲において、「有する」という語は他の構成要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を排除するものではない。
【0204】
単一のユニット又はデバイスが、特許請求の範囲において列挙されている幾つかの要素の機能を果たし得る。互いに異なる従属請求項において或る方策が列挙されているという単なる事実は、これらの方策の組み合わせが有利に用いられることができないことを示してはいない。
【0205】
物質決定方法に従う、特に分析方法に従う物質決定装置、特に分析デバイスの制御は、コンピュータプログラムのプログラムコード手段として及び/又は専用ハードウェアとして実現され得る。
【0206】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアとともに又は他のハードウェアの一部として与えられる光記憶媒体又はソリッドステート媒体のような適切な媒体に記憶/配布され得るが、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介してのような他の形態でも配信され得る。
【0207】
特許請求の範囲におけるいかなる参照符号もが、範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【0208】
本発明は、流体中の物質を決定する物質決定装置に関するものである。物質に連結された粒子は、結合面に結合する。検知ユニットは、i)結合面に結合した粒子と結合面との距離及びii)結合面に結合した粒子の面内位置の少なくとも1つを示す検知信号を生成する。結合識別ユニットは、生成された検知信号に依存して結合面に結合した粒子の異なる種類の結合を識別する。この結合識別ユニットは、好ましくは、特異的結合粒子に起因する検知信号の部分を決定し、この決定された検知信号の部分に基づいて物質を決定するユニットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中の物質を決定する物質決定装置であって、
流体中の物質に連結される粒子と、
前記粒子が前記物質に連結された場合に、前記粒子を結合する結合面と、
前記結合面上の前記粒子を検知する検知ユニットであって、i)前記結合面に結合した前記粒子と前記結合面との距離及びii)前記結合面に結合した前記粒子の面内位置の少なくとも1つを示す検知信号を生成する当該検知ユニットと、
生成された前記検知信号に依存して前記結合面に結合した前記粒子の異なる種類の結合を識別する結合識別ユニットと
を有する、当該物質決定装置。
【請求項2】
前記結合識別ユニットが、前記生成された検知信号に依存して、前記物質に連結された前記結合面に結合した粒子である特異的結合粒子を決定する特異的結合決定ユニットである、請求項1記載の流体中の物質を決定する物質決定装置。
【請求項3】
前記検知ユニットが、i)前記結合面に結合した前記粒子と前記結合面との距離、ii)前記結合面に結合した前記粒子の面内位置及びiii)前記結合面に結合した前記粒子と前記結合面との距離に対する前記検知信号の依存性を示す当該検知ユニットの距離感度の少なくとも1つを変更し、i)前記結合面に結合した前記粒子と前記結合面との第1の距離、ii)前記結合面に結合した前記粒子の第1の面内位置及びiii)第1の距離感度の少なくとも1つに依存する第1の検知信号を生成し、i)前記結合面に結合した前記粒子と前記結合面との第2の距離、ii)前記結合面に結合した前記粒子の第2の面内位置及びiii)第2の距離感度の少なくとも1つに依存する第2の検知信号を生成し、前記結合識別ユニットが、前記第1の検知信号及び前記第2の検知信号に依存して異なる種類の結合を識別するとともに、前記第1の検知信号と前記第2の検知信号との比に依存して異なる種類の結合を識別する、請求項1記載の物質決定装置。
【請求項4】
前記検知ユニットは、エバネセント場を生成するために前記結合面に向けられる放射線を生成する光源と、エバネセント場に対する前記粒子の影響を示す前記結合面からの光を検出する光検出器とを有し、検出された光に基づいて検知信号を生成し、前記エバネセント場と前記結合面に結合した前記粒子との第1の空間関係に依存する前記第1の検知信号を生成するため及び前記エバネセント場と前記結合面に結合した前記粒子との第2の空間関係に依存する前記第2の検知信号を生成するために、i)前記結合面に結合した前記粒子と前記結合面との間の距離、ii)前記結合面に結合した前記粒子の面内位置及びiii)前記距離感度の少なくとも1つを変更することにより、前記エバネセント場と前記結合面に結合した前記粒子との空間関係を変更し、前記光検出器は、前記結合面に結合した前記粒子から散乱した光を検出する、請求項3記載の物質決定装置。
【請求項5】
前記検知ユニットが、前記結合面に向けられる放射線の波長を変更することにより前記エバネセント場と前記結合面に結合した前記粒子との関係を変更し、前記光検出器が、前記結合面に結合した前記粒子から散乱した光を検出する、請求項4記載の物質決定装置。
【請求項6】
前記検知ユニットは、前記結合面に結合した前記粒子に力を加える加力ユニットを有し、前記結合面に結合した前記粒子に加えられる力を変更することにより、i)前記結合面に結合した前記粒子と前記結合面との距離及びii)前記結合面に結合した前記粒子の面内位置の少なくとも1つを変更する、請求項3記載の物質決定装置。
【請求項7】
前記加力ユニットは、前記結合面の方に前記粒子を移動させたり、前記結合面から離れる方向に前記粒子を移動させ、前記検知ユニットは、前記結合面に結合した前記粒子が前記結合面の方に移動した場合に第1の検知信号を生成し、前記結合面に結合した前記粒子が前記結合面から離れる方向に移動した場合に第2の検知信号を生成し、前記検知ユニットは、前記結合面に結合した前記粒子が前記結合面から離れる方向に移動する間、経時的に幾つかの検知信号を生成し、前記結合識別ユニットは、経時的に生成された前記幾つかの検知信号に依存して異なる種類の結合を識別する、請求項6記載の物質決定装置。
【請求項8】
流体中の物質を決定する分析デバイスと協働する結合デバイスであって、
流体中の物質に連結される粒子と、
前記粒子が前記物質に連結された場合に前記粒子を結合する結合面と
を有し、前記分析デバイスは、
前記結合面上の前記粒子を検知する検知ユニットであって、i)前記結合面に結合した前記粒子と前記結合面との距離及びii)前記結合面に結合した前記粒子の面内位置の少なくとも1つを示す検知信号を生成する当該検知ユニットと、
生成された前記検知信号に依存して前記結合面に結合した粒子の異なる種類の結合を識別する結合識別ユニットと
を有する、当該結合デバイス。
【請求項9】
前記加力ユニットが、流体洗浄ステップにおいて流体バッファを交換することにより前記結合面に結合した粒子を前記結合面から遠ざけるために静電気力を用いる、請求項6記載の物質決定装置。
【請求項10】
磁気ユニットが、前記粒子に力を加えるための回転磁場を生成するように設計された、請求項1記載の物質決定装置。
【請求項11】
前記磁気ユニットは、前記粒子が前記結合面の方に引き付けられる又は前記結合面から引き離されるように構成された、請求項10記載の物質決定装置。
【請求項12】
流体中の物質を決定する結合デバイスと協働する分析デバイスであって、前記結合デバイスは、
流体中の物質に連結される粒子と、
前記粒子が前記物質に連結された場合に前記粒子を結合する結合面と
を有し、当該分析デバイスは、
前記結合面上の前記粒子を検知する検知ユニットであって、i)前記結合面に結合した粒子と前記結合面との距離及びii)前記結合面に結合した前記粒子の面内位置の少なくとも1つを示す検知信号を生成する当該検知ユニットと、
生成された前記検知信号に依存して前記結合面に結合した粒子の異なる種類の結合を識別する結合識別ユニットと
を有する、当該分析デバイス。
【請求項13】
流体中の物質を決定する物質決定方法であって、
流体中の物質に粒子を連結するステップと、
前記粒子が前記物質に連結された場合に前記粒子を結合面に結合するステップと、
前記結合面上の前記粒子を検知するステップであって、i)前記結合面に結合した前記粒子と前記結合面との距離及びii)前記結合面に結合した前記粒子の面内位置の少なくとも1つを示す検知信号が生成される当該ステップと、
生成された前記検知信号に依存して前記結合面上の結合した前記粒子の異なる種類の結合を識別するステップと
を有する当該物質決定方法。
【請求項14】
流体中の物質を決定する分析コンピュータプログラムであって、請求項12記載の分析デバイスを制御するコンピュータ上で実行される際に、請求項12記載の分析デバイスに請求項13記載の方法のステップを実行させるプログラムコード手段を有する、当該分析コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2013−506125(P2013−506125A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530399(P2012−530399)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054304
【国際公開番号】WO2011/036638
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】