説明

特にアルミニウムを有する銅ベースの金属フレークとその製造方法

【課題】
本発明の目的は、上で述べた本物の金の代わりの製品の欠点を有しない、金色光沢の非常に明るい金属効果顔料を開発することである。
【解決手段】
本発明は、非常に金色光沢の金属効果顔料に関する。この顔料は、銅ベースの合金と別な金属合金成分(好ましくはアルミニウム)を有し、真空で析出した金属薄膜を剥がし、粉砕することにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
金属効果顔料は、平らな方向付けられた粒子に対して正反射を示す顔料である(DIN55944)。金のような製品は非常に美しい質を有し、このようなコーティングされ、インプリントされ又は着色された材料に高価な外観を与えるので、金色光沢の効果顔料への興味は、特に印刷、ラッカー、ペイント塗料、プラスチィック着色、化粧品及びガラス着色を使用する分野で大きい。早期に、装飾の分野における費用のかかる本物の金のフレークをよりコストの効果的な代替物に取り替えることが始められた。
【背景技術】
【0002】
最もよく知られた本物の金のフレークの代わりの顔料は主に銅/亜鉛合金で構成されたいわゆるゴールドブロンズパウダーであり、それらの組成によっては、レッドゴールドからリッチゴールドまでの色の異なる色調を有する(非特許文献1)。ゴールドブロンズ顔料は溶けた銅/亜鉛合金の微粒子化と、次の、微粒子化により製造された顆粒の製粉化により製造される。製粉プロセスでは、合金粒子はフレークのように変形され、粉砕される。実際、ゴールドブロンズ顔料は主に乾燥製粉される。冷間溶接を避けるために、ステアリン酸のような潤滑剤が利用される顆粒に加えられる。特別なボールミルでのブラッシングや緩やかなミルによる粉砕物の後処理は金属顔料の光沢を改善する働きをし、研磨と言われる。金属フレークの表面の凸凹は光沢を減少させる効果を有する。製粉プロセスの間にフレーク表面の構造における凸凹と様々なフレークの厚みが生じることは避けられないので、このようにして製造されるゴールドブロンズ顔料は、合金の反射率から計算される光沢を示さない。さらに、製粉プロセスによって製造される実質的にすべてのゴールドブロンズ顔料がリーフィング効果を示す。すなわち、それらは媒体に浮く。これは製粉プロセスの間に加えられた潤滑剤に起因する。リーフィング効果のないゴールドブロンズ顔料の製造には費用のかかる潤滑剤の除去が必要である。
【0003】
酸化鉄コーティングしたマイカ顔料(非特許文献2)又は酸化鉄コーティングしたアルミニウム顔料(非特許文献3)によって、本物の金フレークを置換する試みは、必要とされる輝度に関してそれらの目的を達成できない。干渉効果によってレッドゴールドからグリーンゴールドまでの色の興味深い色調を作ることができる一方、高い光沢を決定する金属の反射値は酸化物の反射面によっては実現されないことが示されている。
【0004】
特許文献1から、金属がキャリアシートに析出され、剥離と粉砕の後に顔料が得られることが知られている。
【0005】
金属被覆された層を製造するための方法として、通常の蒸着法(電子ビームテクノロジー、抵抗放射加熱プロセス)が用いられる。これらは、例えば非特許文献4で詳しく記述されている。
【0006】
2以上の成分で構成された合金の場合、異なる蒸気圧のために分割(分別)が生じる。様々な蒸着法(フラッシュ蒸発、同時法又はジャンピングビーム法)がある。所望な組成の均質な合金層を作ることができる(非特許文献4)。
【0007】
【特許文献1】US 4321087
【非特許文献1】Pigment Handbook, Vol.1, Second Edition, p.805 ff, Wiley
【非特許文献2】G. Pfaff and R. Maisch, Farbe+Lack, Vol.2, 1995, p.89-93
【非特許文献3】W. Ostertag, N. Mronga and P. Hauser, Farbe+Lack, Vol.12, 1987, p.973-976
【非特許文献4】G. Kienel(editor) “Vakuumbeschichtung Vol.1-5”, VDI-Verlag 1995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上で述べた本物の金の代わりの製品の欠点を有しない、金色光沢の非常に明るい金属効果顔料を開発することである。
【0009】
特に、面の平行な表面と低い一様な粒子の厚みを有する金色光沢の金属効果顔料を手に入れ、それで顔料がグラフィック産業の全ての領域、特にオフセット印刷においても使用できるようにすることが目的である。
【0010】
本発明の別な目的は、レッドゴールドからグリーンゴールドまでの色の様々な色調の金色光沢の金属効果顔料を手に入れることである。
【0011】
本発明の別の目的は、金色光沢の、腐食に対して安定した金属効果顔料を手に入れ、それで製品の通常の適用分野で光沢及び色調が損なわれないようにすることである。
【0012】
さらに、それは経済的に負担できるコストで作られなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的は、面に平行な反射面を有する1層のフレーク状の金属顔料によって達成できる。それは気相からの凝縮によって析出した銅ベースの合金から成る。好ましい適切な合金のパートナーはアルミニウムであるが、銀、パラジウム及びケイ素のそれぞれか組み合わせでもよい。新規な金色光沢の顔料の色彩は、主に銅と無色の合金成分の比で決定される。銅の割合が高ければ高いほど、フレークは益々レッドゴールドになる。ケイ素はフレークの色の深みを増加させる。レッドゴールドからイエローゴールド又はグリーンゴールドの光沢を有するフレークの典型的な組成は、銅に加えて、1〜49%のアルミニウムとオプションとして0.1〜6%のケイ素を有する。フレークの厚みは10〜100nm、好ましくは20〜60nmであり、容易に変更できる。非常に薄いフレークは一部透明である。
【0014】
金色光沢の顔料の1つの独特な特徴はそれらの完全な面に平行な表面、妨害のない構造の組成及びそれらの一様なフレークの厚みであり、最高の反射値を可能にする。
【0015】
製造プロセスの最も重要なステップは、剥離剤をキャリアに塗布すること、合金を剥離剤に薄膜として凝縮すること、金属薄膜を剥がすこと、薄膜を粉砕すること及びオプションとして顔料の粒子の選別をすることである。真空での金属の蒸発は、既製の合金又はそれぞれの金属を用いる公知の方法によって行われる。
【0016】
本発明の顔料は最高程度の輝度を示し、多数の使用の分野で十分に腐食に対して安定している。腐食に対する特別な安定性が必要ならば、表面コーティングによって非常に光沢のある顔料の安定性を改善することができる。表面コーティングは一般的に十分薄く、金属フレークの光沢挙動に実質的に影響を及ぼさない。腐食挙動を改善するための表面コーティングは金属薄膜析出の間に、例えば、金属薄膜の両面におけるSiOの蒸着を介して、又は薄膜の粉砕の間又はその後にウエットケミカル法を介して、真空室で塗布される。要件しだいで、SiO、Al、リン酸塩、リン酸エステル、ホスフィン酸、シラン又はこれら化合物の組み合わせの保護コーティングが効果的であることが分かった。
【0017】
金色光沢の金属フレークは、ラッカー、ペイント、染料、プリンターのインク、プラスチックの着色、化粧品、ガラス及びセラミックに用いられる。
【0018】
以下は詳細な説明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は合金で構成される新規な効果顔料に関する。ここで、合金は2つ以上の金属の固溶体を意味すると理解される。驚くことに、真空で気相から色彩に関して適切な合金を析出することが可能である。合金から構成され、金属蒸気の同時の凝縮により作られる顔料はこれまで知られていない。
【0020】
PVD法による明るい本物の金の代わりの顔料の開発に適切な合金は銅ベースであり、別な合金成分として、例えばアルミニウム及び/又は銀、パラジウム及びケイ素を含む。これらの列挙した金属の中で、アルミニウムはその優れた反射率と低い特有の重量のために好ましい銅の合金のパートナーである。析出した合金における銀及びパラジウムの割合は金色光沢の金属フレークの腐食に対する安定性を増加させ、ケイ素は色彩に影響を及ぼす。金属はそれぞれに又は先に溶けた合金として蒸発させられる。
【0021】
色彩に関してレッドゴールド、淡いゴールド及びグリーンゴールドの間の広い範囲が、析出した合金の組成により作られる。色を付与する銅がこの状況では主要な役割を果たす。例えば、90重量%の銅を有する顔料の表面はレッドゴールドの光沢を有するのに対し、60重量%だけの銅を有するそれは淡い黄色に見える。ケイ素は明るさを減少させる効果を有し、金色光沢のフレークの色の深みがよりはっきり目に見える。
【0022】
色彩に関して興味深い組成は、例えば90〜99%の銅、10〜1%のアルミニウムにある。非常に薄いフレークがある場合、それらは部分的な透明性を示す。干渉効果は上で述べた色彩にわずかな影響を有する。
【0023】
金色光沢の金属フレークの厚みは調節でき、金属の蒸発速度とベルト速度によって容易に制御できる。経済的な理由のため、ベルト速度は一般的に2〜5m/secに選択される。10〜100nmの金属薄膜の厚みは所望にプロセスで選択される。金色光沢の金属フレークの製造のために、20〜60nmの厚みが特に興味深い。粒径は、金属薄膜がキャリアシートから剥がされた後、薄膜破片の機械による粉砕によって調節される。粉砕は、適切な撹拌機、ポンプ又は溶媒に懸濁された薄膜破片の超音波ユニットを用いて行われる。一般的に、3〜150μmの粒径、好ましくは5〜50μmの粒径が興味深い。全ての効果顔料について、光学的な外観は選別により、すなわち異なる平均直径を有する狭い粒径分布を設定することにより変更できる。例えば、選別はデカンターで実行される。
【0024】
金色金属フレークの特徴的な特性は、それらの高い反射性と使用の際の顔料の非常に高い着色力である。高い反射性は鏡のように滑らかで妨害のない表面と、フレークの一様な厚みに基づく。ポテンシャルの散乱中心が最小まで減少する。顔料の高い着色力はそれぞれの粒子の低い厚みに基づいており、それで比較的少量の顔料を用いて十分な程度の被覆度が得られる。
【0025】
本発明の顔料は、キャリアシート、例えばPET薄膜又は連続的な金属ベルトがオプションとして剥離剤で被覆されるように製造される。可溶性樹脂又はワックスを用いたキャリアシートのコーティングが、浸漬又はインプリント法によって実行される。
【0026】
次いで、適切な金属が、例えば高真空中で1つ又は複数の蒸発器においてそれぞれに又は予め溶かされた合金として蒸発させられ、キャリアシートに凝縮する。
【0027】
次いで、金属薄膜は剥がされ、また高いせん断力を発揮する適切な撹拌機又はポンプを用いて、イソプロパノール、イソプロピルアセテート、エチルアセテート又はグリコールエーテルのような応用技術に適切な溶剤で顔料の粒径に粉砕される。加えて又はもう1つの選択肢として、超音波粉砕が用いられる。オプションとして、顔料の粒子も選別される。
【0028】
本発明の顔料の金属表面を腐食から保護するために、別なステップにおいてそれらに防錆層を備えることが可能である。これらの層は薄く、低く屈折しているので、それらは顔料の光学的性質に実質的に影響を及ぼさない。原則として、一方で蒸気プロセスの間に二重保護層の蒸着によって、他方で薄膜破片の粉砕の間又はその後、不動態化層の沈殿によって防錆層を塗布する二つの方法が可能である。蒸気プロセスの間、保護層の蒸着は連続保護層、合金薄膜、保護層において実施される。このために、SiOやMgFのような、低い可溶性だが容易に蒸発する材料が一般的に選択される。不動態化層の沈殿がウエットケミカル反応として実行される。シランの加水分解とその後のシラノール処理を介するゾルゲル法を適切に介する、薄いSiO層の沈殿が、さらに酸化アルミニウム、酸化ケイ素、リン酸塩、リン酸、リン酸エステル、ホスフィン酸、シラン、又は有機的に変更したケイ酸塩、チタン酸塩、ジルコン酸塩又はメタアクリル酸塩ベースのポリマー層、又はこれら化合物の組み合わせの沈殿が適当であることが分かった。
【0029】
本発明は好ましい実施形態に基づいて以下により詳細に説明される。
【0030】
(例1)
ライボルトヘレウス(Leybold Heraeus)によって販売されたロールコーターでは、剥離剤でコーティングされた48μmのPETキャリア薄膜は、高真空の下で銅/アルミニウム合金でコーティングされる。剥離剤はアセトン可溶のメチルメタクリレート樹脂で構成され、先に別個の処理ステップでプリントされる。真空は5×10−4mbarに調節される。
【0031】
キャリアシートが解かれる速度は4m/sである。92%の銅含量を有する銅/アルミニウム合金は、動いているキャリアシートに40nmの金属薄膜の厚みをもたらす速度で抵抗加熱によってボートにおいて蒸発させられる。コーティングの完了後、ロールコーターは窒素で満たされ、金属被覆されたPETロールは取り除かれ、剥離ステーションにおいてアセトンで処理される。剥離剤を溶かすことにより、金属薄膜はキャリアシートから分離される。金属薄膜破片は遠心分離機で凝縮され、アセトン溶液を含む剥離剤から分離される。次いで、フィルターケーキがイソプロパノール溶液に入れられる。ここで、薄膜は20分間粉砕される。金属フレークがある懸濁液は12%の懸濁液である。
【0032】
得られた顔料懸濁液は、最高の輝度を有する金色光沢の顔料粒子を示す。フレークの平均粒径は10μmである(Cilas)。化学分析が、顔料が92%の銅と8%のアルミニウムを含むことを示す。X線解析により、元素が均質な合金形状にあることが判明している。
【0033】
(例2)
例1で述べたセットアップでは、銅−アルミニウム−ケイ素薄膜が析出する。これは例1と同様に実行されるが、銅/アルミニウムのための蒸発源に加えて、ケイ素のための別な蒸発源が取り付けられるという違いがある。蒸発のために利用される銅/アルミニウム合金は94%の銅を含む。気相から沈殿する薄膜の厚みは45nmに設定される。薄膜の剥離と薄膜破片の顔料のサイズへの粉砕は例1のように行われる。
【0034】
懸濁液において得られる顔料は深いレッドゴールドの光沢を有する。それは2%のケイ素を含む。Cilas測定によれば、平均の粒径は11μmである。
【0035】
(安定化)
上で作られたイソプロパノールの12%の顔料懸濁液1000gが沸点まで加熱され、11gのテトラエトキシシランと10gの水が加えられる。その後、pHが8に達するまで、Dosimatを用いて10%の水溶液DMEAが加えられる。pHを維持する一方で、混合物は2時間撹拌される。次いで、12gのイソプロパノールに溶けた1.4gのジフェニルジメトキシシランが4時間にわたって一様に与えられ、撹拌される。その後、0.5gの3−アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasilan AMMO)が加えられ、混合物は10時間冷却され、撹拌される。
【0036】
これにより、腐食に対して安定した金属顔料が手に入る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅に加えて少なくとも1つの別な金属合金成分を含み、かつ、金属薄膜をキャリアシートに蒸着し、キャリアシートから薄膜を剥がし、次に薄膜を粉砕することにより製造される、光沢のある銅ベースの金属フレーク。
【請求項2】
フレークが少なくとも51%の銅と1〜49%のアルミニウムを含むことを特徴とする、請求項1に記載の光沢のある銅ベースの金属フレーク。
【請求項3】
フレークが別な合金成分としてケイ素を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の光沢のある銅ベースの金属フレーク。
【請求項4】
フレーク形状の効果顔料が面に平行な表面と、10〜100nm、好ましくは20〜60nmの厚みを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光沢のある銅ベースの金属フレーク。
【請求項5】
顔料粒子の表面が防錆層でコーティングされていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光沢のある銅ベースの金属フレーク。
【請求項6】
防錆層が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、リン酸塩、リン酸、リン酸エステル、ホスフィン酸、シラン、又は有機的に変更したケイ酸塩、チタン酸塩、ジルコン酸塩又はメタアクリル酸塩ベースのポリマー層、又はこれら化合物の組み合わせを含むことを特徴とする、請求項5に記載の光沢のある銅ベースの金属フレーク。
【請求項7】
(a)オプションとして剥離剤をキャリアシートに塗布すること、
(b)金属薄膜を剥離剤又はキャリアシートに塗布すること、
(c)金属薄膜を剥がすこと、
(d)顔料粒子に粉砕すること
の各プロセスステップを有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光沢のある銅ベースの金属フレークを製造するための方法。
【請求項8】
金属薄膜の塗布が合金成分の蒸発によって行われることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
金属薄膜の塗布が合金成分の別個の蒸発によって行われることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
金属薄膜の塗布が、合金と1つ又は複数の別な成分の別個の蒸発によって行われることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
金属薄膜の塗布が、電子ビーム、抵抗加熱又は放射加熱によって行われることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
金属薄膜の塗布が、フラッシュ蒸発、同時蒸発又はジャンピングビーム蒸発によって行われることを特徴とする、請求項7〜11のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2006−510800(P2006−510800A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−536927(P2004−536927)
【出願日】平成15年8月7日(2003.8.7)
【国際出願番号】PCT/EP2003/008730
【国際公開番号】WO2004/026972
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(502099902)エッカルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (48)
【出願人】(505061724)シュタイナー ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (1)
【Fターム(参考)】