説明

特定の担体を有する触媒を利用する選択的水素化法

【課題】ガソリンに含まれる多価不飽和化合物の一価不飽和化合物への選択的水素化と、不飽和化合物との反応により軽質硫黄含有化合物のより重質な化合物への変換とを一緒行う方法を提供する。
【解決手段】硫化された形態で用いられ、MAlタイプの金属アルミナートを含む特定の担体上に担持される第VIB族からの少なくとも1種の金属と、第VIII族からの少なくとも1種の非貴金属と含む担持触媒を用い、金属Mは、ニッケルおよびコバルトによって構成される群から選択される。80〜220℃の温度、1〜10h−1の液空間速度および0.5〜5MPaの圧力で供給材料を触媒と接触させることからなる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
新しい環境規格を満足するガソリンを製造するには、一般的には50ppmを超えない、好ましくは10ppm未満である値に至る硫黄含有量の大幅な低減が要求される。
【0002】
転化ガソリン、より特定的には、接触分解からのもの(これは、ガソリンプールの30〜50%を示し得る)のオレフィンおよび硫黄の含有量が高いことも知られている。
【0003】
このため、ガソリン中に存在する硫黄のほぼ90%が接触分解法からのガソリン(以降では、FCC(fluid catalytic cracking:流動接触分解)ガソリンと称する)に起因すると考えることができる。FCCガソリンは、それ故に、本発明の方法の好ましい供給材料を構成する。
【0004】
より一般的には、本発明の方法は、所定比率のジオレフィンを含有し、C3およびC4留分からのいくつかのより軽質な化合物をも含んでよいあらゆるガソリン留分に適用可能である。
【0005】
クラッキング装置からのガソリンは、一般的に、オレフィンおよび硫黄に富んでいるが、ジオレフィンも、接触分解からのガソリンについて、1〜5重量%の量で含んでいる。ジオレフィンは、容易にポリマー化する不安定な化合物であり、一般的には、ガソリン中の硫黄の量に関する規格を満足させることを目的とする水素化脱硫処理を用いる等によってこれらのガソリンを加工処理する前に除去されなければならない。しかしながら、当該水素化は、オレフィンの水素化を制限するようにおよび水素の消費およびガソリンのオクタン価の喪失を制限するようにジオレフィンに選択的に適用されなければならない。さらに、EP−A1−1 077 247に記載されるように、飽和軽質硫黄含有化合物(これは、チオフェンの沸点より低い沸点を有する硫黄含有化合物、例えば、メタンチオール、エタンチオールまたはジメチルジスルフィドである)を、より重質な化合物に変換し、その後に、脱硫工程を行うことが有利である。このようにすれば、簡単な蒸留により、オクタン価を喪失することなく5個の炭素原子を含有するオレフィンから主としてなる脱硫ガソリンフラクションを製造することができるからである。選択的水素化および軽質硫黄含有化合物のより重質な化合物への変換後に原料油中の硫黄含有量は改変されるわけではなく、軽質硫黄含有化合物のより重質な化合物への変換に起因して硫黄の性質が改変されるだけである。
【0006】
さらに、処理されるべき供給材料中に存在するジエン化合物は不安定であり、ポリマー化することによりガム状物を形成する傾向がある。このようなガム状物形成によって、選択的水素化触媒が徐々に不活性化するか、または、徐々に反応器が閉塞する。それ故に、工業的な適用のために、ポリマーの形成を制限する触媒、すなわち、供給材料の炭化水素によるポリマーまたはガム状物前駆体の連続的な抽出を促進するように酸性度が低いかまたは多孔度が最適化された触媒を用いて、触媒の最大耐用期間を確実にすることが重要である。
【0007】
本発明は、多価不飽和化合物、より詳細にはジオレフィンの水素化と、軽質硫黄含有化合物、より詳細には、チオールのより重質な化合物への変換とを一緒に行うことができる方法における新規触媒の使用を提案する。
【0008】
本発明の一つの利点は、チオールをより重質な化合物に変換してより容易にそれらが分離されるようにし、それ故にそれらが続く水素化脱硫工程において除去されるようにすることによって硫黄除去を促進することである。
【0009】
本発明の別の利点は、オクタン価が高いガソリンを製造することである。
【0010】
本発明の第3の利点は、ポリマー形成の点に関して触媒のより良好な安定化、ジオレフィン水素化の点に関して良好な選択性およびチオールおよび他の軽質硫黄含有化合物の転化における良好な活性を確実に行うように触媒形成が調節される事実にある。
【背景技術】
【0011】
文献には、ジオレフィンをオレフィンに選択的に水素化するか、チオールをより重質な化合物に変換するか、あるいは、これら2つのタイプの反応を1または2工程で行うことができる触媒形成または方法が記載されている。
【0012】
少なくとも1種の貴金属を含有する触媒の使用が知られている。多くの特許により、パラジウムを含有する選択的水素化のための触媒が提案されている。パラジウムは、その水素化活性のために知られており、選択的水素化法において広く用いられている。しかしながら、パラジウムは被毒し易く、特に、硫黄の存在下において被毒し易い。本発明は、本発明の触媒がパラジウムを含有せず、より広くは、貴金属を含有しない点でそれらの触媒とは異なる。
【0013】
特許文献1には、0.1〜1重量%のパラジウムを含有する触媒に基づいてジオレフィンを水素化し、かつ、接触分解ガソリンのチオール含有量を低減させる方法が提案されている。
【0014】
特許文献2には、少なくとも1種の第VIII族金属(好ましくは、白金、パラジウムおよびニッケルから選択される)と、少なくとも1種の追加金属M(好ましくは、ゲルマニウム、スズ、鉛、チタン、鉄、モリブデン、タングステンおよびレニウムによって形成される群から選択される)とを含む触媒が提案されている。触媒は、金属Mを導入する前に反応器内で還元することによって第VIII族金属が活性化されることを特徴とする。本発明の触媒は、調製期間の間に還元を経ない点でこの特許とは異なる。
【0015】
以下の特許および特許出願には、ジオレフィンを選択的に水素化するための解決方法が提案されている;硫黄含有化合物に影響を及ぼすかもしれない反応(もしそれらが存在する場合)は言及されていない。
【0016】
特許文献3は、アルミナをベースとする担体上にニッケルおよびモリブデンを含有する触媒上でジオレフィンを選択的に水素化する方法に関する。この方法は、ニッケルおよびモリブデン金属が酸化物の形態で用いられることを特徴とする。本発明は、酸化物ではなく金属スルフィドの形態で金属が用いられる点で従来技術とは異なる。
【0017】
特許文献4には、アルミナに担持されたニッケルをベースとする触媒を必要とする選択的に水素化する方法が提案されている。この触媒はまた、好ましくは、1〜10%のモリブデンを含んでもよい。この触媒はまた、総細孔容積が0.4cm/g超であり、当該容積の40〜80%が0.05ミクロン超の直径を有する細孔に相当し、0.05〜1ミクロンの直径を有する細孔が細孔容積の20%超を示すような細孔分布によって特徴付けられる。この特許にはまた、それらの部分的な硫化の前に金属を還元することが好ましいことが教示されている。本発明の触媒は、主として10重量%を超えるモリブデンの量の点および酸化物の状態にある金属について行われる硫化工程の点でこの従来技術とは異なる。
【0018】
次の特許および特許出願には、チオエステル化反応によりチオールをより重質の化合物に変換し、場合によっては、ジオエレフィンを選択的に水素化するための解決方法が提案されている。
【0019】
特許文献5には、第1工程において、第VIII族金属(好ましくはニッケル)を酸化物の形態で含む触媒を用いてチオールをジオレフィンに付加することによってこれをスルフィドに変換することができ、次いで第2工程において、水素の存在下に反応蒸留塔においてジオレフィンを選択的に水素化する方法が提案されている。本発明は、選択的水素化および硫黄含有化合物をより重質の化合物に変換する工程が、スルフィドの形態で用いられる同一の触媒を用いて一緒に行われる点でこの特許とは異なる。
【0020】
特許文献6には、軽質化合物およびチオエステルを別々に回収し得る2つの分別帯域を含む蒸留装置によって特徴付けられるC3−C5留分の選択的水素化およびチオエステル化方法が記載されている。記載される触媒は、第VIII族金属をベースとする触媒または金属を含有する樹脂のいずれかである。15〜35%のニッケルを含有する触媒が好ましい。水素化金属が第VIB族金属であり、ニッケル含有量が15重量%未満であるので、本発明の触媒はこの特許の触媒とは異なる。
【特許文献1】欧州特許出願公開第10685552号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第10623387号明細書
【特許文献3】米国特許第6469223号明細書
【特許文献4】米国特許第3472763号明細書
【特許文献5】米国特許第5807477号明細書
【特許文献6】米国特許第5851383号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
文献に記載された解決方法に照らすと、本発明により、多価不飽和化合物、より詳細には、ジオレフィンの水素化および軽質硫黄含有化合物、より詳細にはチオールのより重質な化合物への変換を一緒に行うことができる特定の担体を有する触媒を用いる方法が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明により、多価不飽和化合物、より詳細には、ジオレフィンの選択的水素化と、飽和軽質硫黄含有化合物、より詳細にはチオールのより重質な化合物への変換とを一緒に行うことができる方法であって、該方法は、第VIB族からの少なくとも1種の金属と、第VIII族からの少なくとも1種の非貴金属とを多孔質担体上に担持されて含有し、該多孔質担体は、MAlタイプの金属アルミナートを含み、金属Mは、ニッケルおよびコバルトによって構成される群から選択され、担体と強く相互作用する金属Mの量は、全触媒重量に対する金属酸化物の重量で0.5〜10%になるようにされ、ここで、
・第VIB族元素の酸化物の重量による量は、全触媒重量に対する重量で厳格に12%超であり;
・第VIII族元素の酸化物の重量による量は、全触媒重量に対して15重量%未満であり;
・前記触媒の構成金属の硫化度は少なくとも60%であり;
・直径が0.05ミクロン超である細孔の容積は総細孔容積の10〜40%である、方法が記載される。
【0023】
本方法は、処理されるべきガソリンおよび水素によって構成される混合物を触媒上に通過させる工程からなる。
【0024】
水素は、一般的に、ジオレフィンを水素化するのに必要な化学量論量(1モルのジオレフィン当たり水素1モル)に対してわずかに過剰から5モル/モルまでで導入される。
【0025】
ガソリンおよび水素によって構成される混合物が触媒と接触させられる際の圧力は0.5〜5MPaであり、その際の温度は80〜220℃であり、液空間速度(liquid hourly space velocity:LHSV)は1〜10h−1である(液空間速度は、1時間当たりかつ触媒1リットル当たりの供給材料リットル(l/l/h)で表される)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、あらゆるタイプの化学的な族、特に、ジオレフィン、オレフィン、およびチオールおよび軽質スルフィドの形態の硫黄含有化合物を含むガソリンの処理方法に関する。本発明は、転化ガソリン、特に、接触分解、流動床接触分解(FCC)、コーキング法、ビスブレーキング法または熱分解法からのガソリンの変換において特に適用性がある。本発明が適用可能である供給材料の沸点は、0〜280℃、より精密には30〜250℃である。供給材料はまた、3または4個の炭素原子を含有する炭化水素を含んでもよい。
【0027】
例えば、接触分解装置(FCC)からのガソリンは、平均して、0.5〜5重量%のジオレフィン、20〜50重量%のオレフィン、10重量ppm〜0.5重量%の硫黄(一般的には、300重量ppm未満のチオールを含む)を含有する。チオールは、一般的には、軽質ガソリンフラクション、より精密には、沸点が120℃未満であるフラクション中に濃縮される。
【0028】
本方法に記載されたガソリンの処理は、主として、
・ジオレフィンをオレフィンに選択的に水素化すること
・オレフィンとの反応によりより軽質飽和硫黄含有化合物、主としてチオールを重質のスルフィドまたはチオールに変換すること
からなる。
【0029】
ジオレフィンのオレフィンへの水素化は、水素の付加による1,3−ペンタジエン(容易にポリマー化する不安定な化合物である)のペンタ−2−エンへの変換によって下記のように説明される。しかしながら、二次的なオレフィンの水素化反応は制限されなければならない。下記例において示されるように、モノオレフィンの水素化反応により、n−ペンタンが形成されるからである。
【0030】
【化1】

【0031】
変換されるべき硫黄含有化合物は、主としてチオールおよびスルフィドである。主たるチオール変換反応は、チオールによるオレフィンのチオエステル化からなる。この反応は、プロパン−2−チオールのペンタ−2−エンへの付加により、プロピルペンチルスルフィドが形成されることによって下記のように説明される。
【0032】
【化2】

【0033】
水素の存在下に、硫黄含有化合物の変換は、HSの中間的な形成、次いで、これの供給材料中存在する不飽和化合物への付加によって行われてもよい。しかしながら、これは、好ましい反応条件の下のマイナーな経路である。
【0034】
チオールに加えて、より重質な化合物に変換され得る化合物は、スルフィド、主としてジメチルスルフィド、メチルエチルスルフィドおよびジエチルスルフィド、CS、COS、チオフェンおよびメチルチオフェンである。
【0035】
所定の場合には、軽質窒素含有化合物、主として、ニトリル、ピロールおよびその誘導体をより重質な化合物に変換するための反応を観察することも可能である。
【0036】
本発明において記載される方法は、処理されるべき原料油を水素の流れと混合し、これを第VIB族(新周期律表表記法における第6族:Handbook of Chemistry and Physics,第76版,1995−1996)からの少なくとも1種の金属と、少なくとも1種の第VIII族非貴金属(前記分類の第8、9および10族)とを多孔質担体に担持されて含有する触媒と接触させることからなり、該担体は、MAlタイプの金属アルミナートを含み、金属Mは、ニッケルおよびコバルトによって構成される群から選択され、担体と強く相互作用する金属Mの量は、全触媒重量に対して0.5〜10重量%、好ましくは0.7〜8重量%、より好ましくは1〜5重量%になるようにされる。
【0037】
担体と強く相互作用している金属Mの量を測定するため、プログラム化された温度還元法(temperature reduction method:TRM)が用いられる。
【0038】
TRMは、Constructeur Micromeritics Autochem 2920タイプの装置を用いること、300〜500ミクロン断片に粉状にされた0.5gの触媒を石英セルに導入すること、5%のHおよび95%のAr(アルゴンは基準ガスである)からなるガス混合物を20ml/分の流速で通すことおよび徐々に昇温させることからなる。昇温条件は次の通りである:
・温度立ち上げ:1000℃まで5℃/分;そして、
・1時間にわたる1000℃での一定の温度段階。
【0039】
形成される水(HO)は、例えばゼオライトタイプのモレキュラー・シーブを用いてトラップされる。
【0040】
図1は、ニッケル酸化物およびニッケルアルミナート(AlNi)を含む担体のPTRを示す。曲線a)は、時間(分)の関数としての温度T(℃)の変化を示し、曲線b)は、TCD(thermo conductivity detector:熱伝導型検出器)を備えたクロマトグラフを用いたクロマトグラフィーによって測定された時間(分)の関数としての水素消費量を示す。
【0041】
プログラム化された温度還元の結果は、AlNi担体について図1に示されている。図面上に2つの帯域が区別され得る:
・帯域1は、低温で還元され得る、すなわち、低温でアルミナと弱く相互作用しているニッケルの還元部分に相当する;この部分は、上記の条件下に500℃未満の温度で還元されることが可能である;このため、それは、担体に組み込まれないフリーなニッケル酸化物である;
・帯域2は、高温で還元され得る、すなわち、アルミナと強く相互作用しているニッケルの部分、すなわち、アルミナと強く相互作用し、かつ、上記条件下に500〜750℃の温度で還元され得るニッケル酸化物粒子またはスピネルタイプのニッケルアルミナート構造(NiAl)中に拘束されるニッケル酸化物(上記条件下に750℃超の温度で還元されることが可能である)のいずれかに相当する。
【0042】
帯域1および2においてピークより下の領域を積分すると、各ピークの領域は、消費される水素の量に比例しており、アルミナと弱くまたは強く相互作用するニッケル酸化物の量の推定値を提供する。
【0043】
図1において、帯域1および2の帯域は次の通りである:
帯域1(弱い相互作用)の領域:24%;
帯域2(強い相互作用)の領域:76%。
【0044】
次いで、触媒は、下記に記載されるように調製される。
【0045】
触媒が下記の特徴と有する場合に触媒性能が改善されることが確立された。
【0046】
酸化物の形態にある第VIB族元素の酸化物の重量による量は、厳格に12重量%超、好ましくは厳格に14重量%超である。第VIB族金属は、好ましくは、モリブデンおよびタングステンから選択される。より好ましくは、第VIB族金属はモリブデンである。
【0047】
触媒はまた、好ましくは、ニッケル、コバルトおよび鉄から選択される第VIII族非貴金属を含有する。より好ましくは、第VIII族非貴金属は、ニッケルによって構成される。酸化物形態で表される第VIII族非貴金属の量は、全触媒重量に対して15重量%未満、より好ましくは1〜10重量%である。
【0048】
第VIII族非貴金属と第VIB族金属との間のモル比は、好ましくは0.2〜0.5mol/mol、より好ましくは0.25〜0.45mol/molである。用いられる第VIII族非貴金属がNiまたはCoである場合、計算されるモル比は、担体の調製の間に拘束されるNiまたはCoを考慮に入れない。
【0049】
水銀多孔度測定法によって測定される総細孔容積が、好ましくは0.3〜0.7cm/g、非常に好ましくは0.35〜0.65cm/gである触媒が用いられる。水銀多孔度測定法は、140°のぬれ角を有するASTM D4284−92標準を用いて、MicromeriticsからのAutopore IIIモデルにより行われる。
【0050】
触媒の比表面積は、好ましくは250m/g未満、より好ましくは30〜150m/gである。
【0051】
さらに、直径が0.05ミクロン超である細孔の水銀多孔度測定法によって測定される触媒の細孔容積は、総細孔容積の10〜40%、好ましくは15〜35%である。
【0052】
直径が0.1ミクロン超である触媒の細孔の容積は、総細孔容積の好ましくは5〜35%、より好ましくは10〜30%である。本発明者らは、この細孔分布が触媒中のガム状物形成を制限することを観察した。
【0053】
直径が0.004〜0.009ミクロンである触媒の細孔の容積は、総細孔容積の好ましくは5〜12%、より好ましくは8〜10%を示す。
【0054】
触媒担体は、MAlタイプの金属アルミナートを含む。ここで、Mは、ニッケルおよびコバルトによって構成される群から選択されるが、Mは好ましくはニッケルである。
【0055】
好ましくは、水銀多孔度測定法によって測定される総細孔容積が0.3〜0.7cm/g、好ましくは0.35〜0.65cm/gである担体が用いられる。
【0056】
さらに、直径が0.05ミクロン超である細孔の水銀多孔度測定法によって測定される担体の細孔容積は、総細孔容積の好ましくは5〜50%、より好ましくは10〜40%である。
【0057】
直径が0.1ミクロン超である担体の細孔の容積は、総細孔容積の好ましくは5〜35%、より好ましくは5〜30%である。
【0058】
担体の比表面積は、好ましくは250m/g未満、より好ましくは30〜150m/gである。
【0059】
本発明の好ましい実施形態は、全触媒重量に対して1〜10%の量のニッケル酸化物、全触媒重量に対して12%超の量のモリブデン酸化物を含有し、ニッケル/モリブデンのモル比が0.25〜0.45であり、これら金属がニッケルアルミナートを含む担体上に担持され、担体と強く相互作用する金属Mの量が全触媒重量に対して金属酸化物の重量で1〜5%であり、触媒を構成する金属の硫化度が80%超であり、直径が0.05ミクロン超である前記触媒の細孔の容積が15〜35%である触媒を用いることに対応する。
【0060】
好ましくは、本発明の触媒は、ハロゲン、特にフッ素を全く含有していない。
【0061】
好ましくは、酸化物の形態であり、触媒試験前の本発明の触媒は、炭素を全く含有していない。
【0062】
(調製方法)
(工程1:担体の合成)
本発明の担体は、アルミナ、例えば、高い比表面積を有するアルミナを含む。担体はまた、アルミナと、当業者に知られている任意の他の酸化物、例えばシリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等との混合物によって構成されてもよい。用いられるアルミナは、ニッケル、コバルト等の金属Mを組み込み得るアルミナの群から選択される。特に、それは、ガンマアルミナ、デルタアルミナまたはアルミナであるが、好ましくはガンマアルミナである。このアルミナは、適切な量の硝酸金属、例えば、硝酸ニッケル、硝酸コバルト等を含有する水溶液を乾式含浸させられる。本発明によると、硝酸金属の量は、固体上で全触媒重量に対して0.5〜10重量%、好ましくは0.7〜8重量%、より好ましくは1〜5重量%の金属含有量(酸化物MO等価量;Mはニッケルおよびコバルトによって構成される群から選択される)である。含浸後、固体は熟成のため室温で12時間にわたり放置され、120℃で12時間にわたり乾燥させられる。最後に、固体は、750℃で2時間にわたりマッフル炉中でか焼される:この固体は、以降では、AlNiまたはAlCoと表される。好ましくは、担体の合成のためのこの工程において用いられる金属Mの量の最大40%、好ましくは最大30%、より好ましくは最大25%は、前記担体と弱く相互作用する。
【0063】
(工程2:触媒の調製)
本発明の触媒は、当業者に知られているあらゆる技術を用いて調製され得るが、特に、第VIII族および第VIB族からの元素を選択された担体上に含浸させることが用いられる。前記含浸は、可及的に正確に担体の多孔度を満たすために、例えば、乾式含浸のような、所望量の元素が選択された溶媒(例えば脱塩水)に可溶な塩の形態で正確に導入される当業者に知られた技術を用いて行われてよい。その後溶液で満たされた担体は、好ましくは乾燥させられる。好ましい担体はアルミナであり、これは、当業者に知られたあらゆるタイプの前駆体および形状化ツールから調製され得る。
【0064】
第VIII族および第VIB族元素を導入した後、それは活性化処理を経る。この処理は、一般的には、元素の分子状態の前駆体を酸化物相に変換することを目的とする。この場合、それは酸化処理であるが、触媒の単純な乾燥も行われてよい。か焼とも呼ばれる酸化処理の場合、これは、一般的に、空気中または希酸素中で行われ、処理温度は、一般的には200〜550℃、好ましくは300〜500℃である。触媒調製法において用いられ得る第VIB族および第VIII族金属の塩の例は、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、七モリブデン酸六アンモニウムおよびメタタングステン酸アンモニウムである。十分な溶解性を有し、かつ、活性化処理の間に分解し得る当業者に知られる任意の他の塩も用いられてよい。
【0065】
(工程3:触媒の硫化)
か焼後、担体上に担持された金属は酸化物の形態にある。ニッケルおよびモリブデンの場合、金属は、主として、MoOおよびNiOの形態にある。処理されるべき供給材料と接触させる前に、触媒は、硫化工程を経る。硫化は、好ましくは、硫化還元媒体(sulphoreducing medium)中、すなわち、HSおよび水素の存在下に行われ、金属酸化物がスルフィド、例えば、MoSおよびNiに変換される。硫化は、HSおよび水素を含有する流れまたは触媒の存在下にHSに分解し得る硫黄含有化合物および水素を触媒上に注入することによって行われる。ジメチルジスルフィド等のポリスルフィドは、触媒を硫化するために日常的に用いられるHS前駆体である。温度は、HSが金属酸化物と反応して金属スルフィドが形成されるように調整される。前記硫化は、水素化脱硫反応器に対して現場または現場外(反応器の内側または外側)で行われてよく、その際の温度は200〜600℃、より好ましくは300〜500℃である。活性であるようにするために、金属は十分に硫化される必要がある。触媒上に存在する硫黄(S)と前記元素とのモル比が考慮中の元素の全硫化に相当する理論モル比の少なくとも60%:
(S/元素)触媒≧0.6×(S/元素)理論
である場合に、元素は「十分に」硫化されたと考えられる
ここで:
(S/元素)触媒は、触媒上に存在する硫黄(S)と元素との間のモル比であるが、担体の調製の間に用いられた金属(NiまたはCo)は除かれている;
(S/元素)理論は、元素のスルフィドへの全硫化に相当する硫黄と元素との間のモル比である。
【0066】
この理論モル比は、考慮中の元素によって決まる:
(S/Fe)理論=1
(S/Co)理論=8/9
(S/Ni)理論=2/3
(S/Mo)理論=2/1
(S/W)理論=2/1。
【0067】
触媒が複数種の金属を含む場合、触媒上に存在するSと合計元素との間のモル比も、各元素のスルフィドへの全硫化に相当する理論モル比の少なくとも60%でなければならない。この計算は、各元素の相対的なモル割合について比例配分して行われるが、担体の調製の間に拘束された金属(NiまたはCo)は除かれる。
【0068】
例えば、モリブデンおよびニッケルをそれぞれモルの割合で0.7および0.3で含む触媒については、最小モル比(S/Mo+Ni)は、関係式:
(S/Mo+Ni)触媒=0.6×{(0.7×2)+(0.3×(2/3))
によって与えられる。
【0069】
非常に好ましくは、金属の硫化度は80%超である。
【0070】
硫化は、従前の金属還元工程を行うことなく、酸化物の形態にある金属につい行われる。還元金属を硫化することは、酸化物の形態にある金属を硫化するよりも困難であることが知られている。
【0071】
本発明の選択的水素化法では、処理されるべき供給材料は、水素と混合された後に、触媒と接触させられる。注入される水素の量は、水素と水素化されるべきジオレフィンとの間のモル比が1(化学量論)超かつ10未満、好ましくは1〜5mol/molであるようにされる。水素が過剰過ぎると、オレフィンが水素化され過ぎて、その結果、ガソリンのオクタン価が低減する可能性がある。供給材料全体は、一般的に、反応器の入口に注入される。しかしながら、場合によっては、反応器内に置かれた2つの連続する触媒床の間に供給材料の一部または全部を注入することが有利であり得る。この実施形態によると、反応器への入口が供給材料中に存在するポリマー、粒子またはガム状物の堆積物により閉塞されても反応器が操作し続けることを可能にし得る。
【0072】
ガソリンおよび水素によって構成される混合物が触媒と接触させられる際の温度は、80〜220℃、好ましくは90〜200℃であり、液空間速度(LHSV)は1〜10h−1である。圧力は、反応混合物が反応器内において主として液体状であるように調整される。圧力は、0.5〜5MPa、好ましくは1〜4MPaである。
【0073】
上記に説明された条件下に処理されるガソリンのジオレフィンおよびチオールの含有量は低減させられる。製造されたガソリンは、一般的には1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満のジオレフィンを含有する。一般的に転化されるチオフェンの沸点(84℃)より低い沸点を有する軽質硫黄含有化合物の量は50%超である。このため、蒸留によってガソリンの軽質フラクションを分離することおよび補完的処理を行うことなくこのフラクションを直接的にガソリンプールに送ることが可能である。ガソリンの軽質フラクションは、一般的には120℃未満、好ましくは100℃未満、より好ましくは80℃未満の終留点を有する。
【0074】
この新規な触媒は、欧州特許EP−A−1 077 247に記載された方法における使用に特に適している。
【0075】
(実施例1:触媒A、B、CおよびD(本発明に合致しない)および触媒EおよびF(本発明に合致する)の調製)
(担体の合成)
ニッケルの場合、Axensによって供給された高比表面積アルミナ(Al−1)が用いられた。このアルミナは、適切な量の硝酸ニッケルを含有する水溶液を乾式含浸させられた。硝酸ニッケルの量は、固体上の4重量%のニッケル含有量(酸化物等価量,NiO)に対応していた。含浸後、固体は、室温で12時間にわたり熟成のため放置され、次いで、120℃で12時間にわたり乾燥させられた。最後に、固体は、750℃で2時間にわたりマッフル炉内においてか焼された。この固体は、以降の記載では、AlNiと記される。
【0076】
コバルトの場合、Axensによって供給された同じAl−1アルミナ担体が用いられた。このアルミナは、Co含有量(酸化物等価量,CoO)が4重量%になるように適切な量の硝酸コバルトを含有する水溶液を乾式含浸させられた。含浸後、固体は、室温で12時間にわたり熟成のため放置され、次いで、120℃で12時間にわたり乾燥させられた。最後に、固体は、750℃で2時間にわたりマッフル炉においてか焼された。この固体は、以降では、AlCo−1と記される。Axensによって供給され、直径が0.1ミクロン超の細孔の容積比率を有する別のアルミナAl−2も硝酸Coを含浸させられ、次いで、AlCo−1と同じ方法を用いてか焼された。得られた担体は、AlCo−2と記される。
【0077】
アルミナ担体およびNiまたはCoがドーピングされた担体の特性が下記表1に示される。AlNiおよびAlCo−1とは対照的に、高い(0.1ミクロン)容積割合に起因してAlCo−2は本発明に合致していないことが理解されることになる。
【0078】
【表1】

【0079】
(触媒A、B、C、D(本発明に合致しない)および触媒E、F(本発明に合致する)の合成)
触媒A、B、C、D、EおよびFは、乾式含浸法によりAlNi担体を用いて調製された。合成プロトコールは、七モリブデン酸六アンモニウムおよび硝酸ニッケルの溶液の乾式含浸を行うことからなっていた。金属前駆体を含有する水溶液の容積は、含浸させられるべき担体の質量に対応する水の吸い上げ容積に等しい。溶液中の前駆体の濃度は、金属酸化物の重量で所望量を担体上に担持するように調整された。次いで、固体は、室温で12時間にわたり熟成のため放置され、120℃で12時間にわたり乾燥させられた。最後に、固体は、500℃で2時間にわたり、空気流(1リットル/g・h)の中でか焼された。調製された触媒の特徴は、下記表2に示される。調製された触媒は、それらの活性相含有量によって区別された。
【0080】
【表2】

【0081】
多孔度、比表面積、MoOの量およびNi/Moモル比基準(AlNi担体中に拘束されたニッケルを除外する)により、触媒E、Fは、それ故に、本発明に合致する。対照的に、触媒A、B、CおよびD(最低モリブデン含有量)は、本発明に合致しない。
【0082】
(触媒の評価)
触媒A、B、C、D(本発明に合致しない)および触媒E、F(本発明に合致する)の活性は、攪拌型の500mLのオートクレーブ反応器において行われるモデル分子の混合物の選択的水素化についての試験を用いて評価された。典型的には、2〜6gの触媒が、大気圧で硫化装置において、15容積%のHSで構成されたHS/H混合物中で、1時間当たりかつ触媒1g当たり混合物1lとして、400℃で2時間にわたり(5℃/分の立ち上げ)硫化され、次いで、200℃での高純度水素中2時間の一定温度段階が行われた。このプロトコールにより、本発明の触媒の全てについて80%超の硫化度が引き出された。硫化された触媒は反応器に移され、空気から密閉され、次いで、1.5MPaの全圧、160℃の温度で250mLのモデル供給材料と接触させられた。圧力は、水素を加えることにより試験の間一定に維持された。活性試験のために用いられた供給材料は、以下の組成を有していた:n−ヘプタン中、3−メチルチオフェンの形態にある硫黄 1000重量ppm、プロパン−2−チオールの形態にある硫黄 100重量ppm、1−ヘキセン形態にあるオレフィン 10重量%。
【0083】
試験の時間t=0は、触媒と供給材料を接触させることに対応していた。試験の継続時間は45分に固定され、得られた液体流出物のガスクロマトグラフィー分析は、イソプレンの水素化(メチルブテンの形成)、1−ヘキセンの水素化(n−ヘキサンの形成)および軽質チオールのより重質な化合物への変換(プロパン−2−チオールに関連するクロマトグラフィーピークの消失)についての種々の触媒の活性の評価が行われることを可能にした。各反応についての触媒の活性は、各反応について得られる速度定数に対して規定され、触媒1グラムに規格化された。速度定数は、反応が一次であると考慮することによって計算された:
A(X)=k(X)/m
ここで、A(X)=反応Xについての触媒の活性(分−1/触媒のg);
k=考慮中の反応についての速度定数(分−1)。
【0084】
(kは式:
k(X)=(1/45)*ln(100/(100−conv(X)))
を用いて計算される。
【0085】
ここで、45=試験の継続時間(分);
conv(X)(化合物Xの転化);X=イソプレンまたはプロパン−2−チオールまたは1−ヘキサンである)
m=試験において用いられた触媒の質量(酸化物の形態);
X:考慮中の反応
X=イソプレン:イソプレンの水素化
X=1−ヘキセン:1−ヘキセンの水素化
X=プロパン−2−チオール:プロパン−2−チオールの転化。
【0086】
イソプレン水素化の方への触媒の選択性は、イソプレンおよび1−ヘキセンの水素化における触媒の活性の比:A(イソプレン)/A(1−ヘキセン)に等しい。
【0087】
種々の触媒についての得られた結果は、下記表3に示される。
【0088】
【表3】

【0089】
ジオレフィンの水素化反応に関しては全触媒の選択性が高いことが理解され得る。それ故に、これらの触媒は、1−ヘキセンを著しく水素化することなくイソプレンを十分に水素化することができた。
【0090】
試験条件下に、活性相が少ない触媒A以外の全触媒について軽質チオールの転化が完了することも理解され得る。
【0091】
触媒B、C、D、EおよびFの場合、無限大の活性は、プロパン−2−チオールの完全な転化を意味する。
【0092】
対照的に、本発明の触媒EおよびFのみが、最大のイソプレン水素化活性を有していた。
【0093】
それ故に、本発明の触媒は、ジオレフィンの選択的水素化と軽質チオールの転化とを同時に行うことが可能であるようである。
【0094】
(実施例2:硫化度の影響)
上記触媒Eは、同一のモデル分子試験で評価されたが、従前の硫化工程が行われなかった。したがって、固体の硫化度はゼロであった。硫化ベンチ上での触媒硫化プロトコールの間のHS/H混合物による一定温度段階の温度の低減(400から典型的には100〜150℃)も、触媒Eに中間的な硫化度を引き出し得た。表4は、前記触媒について得られた、硫化度に応じた触媒の結果を記録している。触媒の従前の硫化が、イソプレンの水素化およびプロパン−2−チオールの転化における触媒の活性並びにその選択性に関して有用性の大きい効果を有することが理解され得る。
【0095】
【表4】

【0096】
(実施例3:Ni/Moモル比の影響)
本実施例では、実施例1において記載された操作プロトコールを用いて触媒GおよびHが調製された。これらの触媒が触媒Eと実質的に異なっているのは、それらのニッケル含有量、それ故にNi/Moモル比(表5)においてのみである。このため、それらは、本発明に合致していない。
【0097】
【表5】

【0098】
前述と同様に、触媒GおよびHは、同一の分子モデル試験において評価された。これらの触媒について、採用された硫化プロトコールは、80%超の硫化度を引き出し得た。これらの触媒は、好ましい範囲に入る0.40のNi/Moモル比を有する触媒Eと比較された(表6)。
【0099】
【表6】

【0100】
触媒G(Ni/Mo比:0.14)が、本発明の触媒Eより低いイソプレン水素化活性およびプロパン−2−チオール転化率を有することが観察されるだろう。触媒Eと比較したニッケル含有量の大きな増加(触媒H,Ni/Mo比:1.39)が、ジオレフィン水素化の不利益点であるモノオレフィンの水素化の活性のわずかな増加をもたらし、A(イソプレン)/A(1−ヘキセン)の選択性が降下することも観察されるだろう。対照的に、イソプレンの水素化活性は、ニッケル含有量の増加によって大きくは影響されない。
【0101】
(実施例4:総細孔容積の10〜40%のマクロ孔容積の影響)
触媒調製法の工程2を用い、Axensによって供給された、性質が下記表7に示された異なるアルミナ担体Al−3、Al−4およびAl−5を用いて触媒I、JおよびKは調製された。
【0102】
【表7】

【0103】
触媒LおよびMは、実施例1において記載されたプロトコールを用い、特性が表1に示されたアルミナ担体Al−3、Al−4およびAl−5を用いて調製された。
【0104】
これらの触媒の特徴および触媒Eの特徴は、下記表8に示されている。
【0105】
NiMo/AlCo触媒L(本発明に合致する)は、実施例1において記載されたプロトコールを用い、AlCo−1担体を用いて調製された。
【0106】
NiMo/AlCo触媒M(本発明に合致しない)は、実施例1において記載されたプロトコールを用い、AlCo−2担体を用いて調製された。
【0107】
Al−3アルミナ担体が前もってニッケルによって不動態化されていなかった(アルミナと強く相互作用するニッケル酸化物なし)ので、触媒Iは本発明に合致していなかった。同様に、Al−4およびAl−5アルミナ担体が前もってニッケルによって不動態化されておらず、それらのマクロ孔容積が、それぞれ、あまりに高くおよびあまりに低いので、触媒JおよびKは本発明に合致していなかった。
【0108】
【表8A】

【0109】
沈降詰込密度(settled packing density:SPD)は、所与の容積における触媒の最大量に相当し、立方センチメートル当たりの触媒のグラムに規格化される。これは、RETSCH AS 200コントロールバイブレータと、既知容積および生成物の粒度分布に適合された直径(測定シリンダの直径は、粒子の直径の10倍でなければならない)の測定シリンダとを用いて評価された。較正後、容積Vを有する測定シリンダは、バイブレータ上に試験生成物により満たされた。振動は、3分にわたり0.03インチの振幅に維持され、生成物を加えることによりその高さが一定に維持された。沈降終了時に、生成物の表面はサンプルの上部ですくい取られた高さであり、充満した測定シリンダの質量が計量された。次いで、SPDは、触媒の強熱減量について修正された質量を、測定シリンダの容積で除算することによって得られた。一般に、触媒の多孔度が低くなる程、装填密度は大きくなるだろう。これらの触媒は、特徴が下記表8に与えられた接触分解ガソリン全体について試験された。共役ジオレフィン含有量は、ディールス・アルダー反応による共役ジエンの無水マレイン酸との反応に基づいて測定された。MAV(maleic anhydride value:無水マレイン酸値)は、存在するジオレフィンの量に比例しており、標準IFP法:method9407を用いて測定された。MAVは、サンプル1グラム当たりの反応した無水マレイン酸のミリグラムで表された。IFP9407法は、標準化326−82UOP法に類似している。該方法は、DV(diene value:ジエン値)を与え、2つの値は、関係式MAV=3.86DVによって関連付けられる。供給材料および流出物中の芳香族およびオレフィンの量は、クロマトグラフィーによって定量化された。供給材料および流出物の軽質チオールは、クロマトグラフィーによって定量化された。用いられた設備は、特異検出器であるa 355(Sievers Inc.,Boulder,CO,米国)と結合したHP5890シリーズII(Agilent Technologies)クロマトグラフであった。用いられたカラムは、非極性PONA(50m,0.2mm,0.20ミクロン)カラムであった。操作条件は、ASTM D 5623標準法に由来しており、硫黄含有化合
物は、基準硫黄含有化合物の保持時間との比較によって識別された。
【0110】
【表8B】

【0111】
実際の供給材料についての触媒を評価するために下記のプロトコールが用いられた。50cmの触媒が、n−ヘプタンと4%DMDS(dimethyldisulphide:ジメチルジスルフィド)/Hの混合物中で硫化され、H/硫化供給材料の容積比は500標準リットル/リットル(供給材料)(Nl/l)であり、硫化供給材料のHSVは2h−1(1時間当たりかつ触媒容積当たりの硫化供給材料の容積)であった。温度の立ち上げは、350℃の一定温度段階まで1℃/分であった。一定温度段階は4時間持続した。次いで、温度は、120℃に降下させられ、硫化供給材料は、4時間にわたり高純度n−ヘプタンにより置換され、次いで、FCCガソリンが注入され、操作条件は、所望の値に調整された。試験操作条件は、次の通りであった:全圧=2.5MPa、H/供給材料の比=6Nl/l、HSV=3h−1。触媒は、140℃および160℃で評価され、各一定温度段階の継続時間は、触媒の安定化期間に応じて調整され、流出物のMAVの規則的な分析によって評価された。
【0112】
触媒E、I、JおよびKについての時間に応じた流出物の残留MAVの変化が図2に示される。
【0113】
得られた残留MAVが最も低いことから、本発明に合致する触媒Eが140℃および160℃で最も効率的にジオレフィンを除去したことが理解され得る。細孔容積が高すぎることを特徴とする触媒Jは、大幅な水素化活性の不足を有していた。触媒Kは、最初は、触媒Iに匹敵する活性を有していたが、より低い圧搾抵抗性を有し、それ故に、大きく不活性化された。トルエンによる抽出後の使用済み触媒の残留炭素分析は、触媒Kの炭素含有量が触媒Eの炭素含有量の約2倍の高さであることを示した。触媒のセットについて、選択された操作条件の下で、オレフィンの水素化は、不十分なままであり、2%より低い。
【0114】
触媒LおよびMは、触媒E、I、JおよびKについて用いたのと同一の供給材料を用い、同一の操作条件下で評価された。図3は、触媒LおよびMについての時間に応じたMAVの変化を示す。
【0115】
本発明に合致しない触媒Mが、本発明に合致する触媒Lと比較してより低い活性を有することが理解され得る。さらに、触媒Lの活性に関して、これも本発明に合致する触媒Eに非常に類似していた。この試験についても、オレフィンの水素化は、不十分なままであり、2%より低い。
【0116】
表9は、触媒安定化(各段階の最後の部分)後の各温度における6種の触媒についての軽質チオールの転化率の変化を示す。選択された操作条件下に、触媒の全てが、大部分の供給材料の軽質チオールを転化し、前記転化は、160℃において触媒E、I、LおよびMについて完全であることが理解され得る。対照的に、本発明に合致する触媒EおよびLが140℃で軽質チオールを除去することにおいてより効果的であることが理解され得る。
【0117】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は、ニッケル酸化物およびニッケルアルミナート(AlNi)を含む担体のPTRを示す。
【図2】図1は、触媒E,I、JおよびKについての時間に応じた流出物のMAVの変化を示す。
【図3】図3は、触媒LおよびMについての時間に応じたMAVの変化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価不飽和化合物を一価不飽和化合物に選択的に水素化すると共に、ガソリンに含まれる不飽和化合物との反応により飽和軽質硫黄含有化合物をより重質の化合物に変換し得る方法であって、
該方法は、第VIB族からの少なくとも1種の金属と、第VIII族からの少なくとも1種の非貴金属とを担体上に担持されて含有する触媒を用い、該担体は、MAlタイプの金属アルミナートを含み、金属Mは、ニッケルおよびコバルトによって構成される群から選択され、担体と強く相互作用する金属Mの量は、酸化物等価体の重量で0.5〜10%になるようにされ、
・第VIB族元素の酸化物の重量による量は、全触媒重量に対して厳格に12重量%超であり;
・第VIII族元素の酸化物重量による量は、全触媒重量に対して15重量%未満であり;
・前記触媒の構成金属の硫化度は、少なくとも60%であり;
・直径が0.05ミクロン超である細孔の容積は、総細孔容積の10〜40%である、方法。
【請求項2】
触媒は、モリブデンおよびタングステンから選択される第VIB族からの金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第VIB族金属はモリブデンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
触媒は、ニッケル、コバルトおよび鉄から選択される第VIII族からの非貴金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第VIII族非貴金属はニッケルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
触媒は、第VIII族元素の酸化物を、触媒重量に対して1〜10重量%の量で含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
触媒の構成金属の硫化度は80%超である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
触媒のNi/Moモル比は0.2〜0.5である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
Ni/Moモル比は0.25〜0.45である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
触媒の総細孔容積は0.3〜0.7cm/gである、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
触媒の総細孔容積は0.35〜0.65cm/gである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
直径が0.1ミクロン超である触媒の細孔の容積は総細孔容積の5〜35%である請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
直径が0.1ミクロン超である触媒の細孔の容積は、総細孔容積の10〜30%である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
直径が0.05ミクロン超である触媒の細孔の容積は、総細孔容積の15〜35%を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
触媒の比表面積は、250m/g未満、好ましくは30〜150m/gである、請求項1〜14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
担体は、MAlタイプの金属アルミナートを含み、Mはニッケルである、請求項1〜15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
担体と強く相互作用する金属Mの量は、酸化物等価体重量で0.7〜8%である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
担体と強く相互作用する金属Mの量は、酸化物等価体重量で1〜5%である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
担体を合成する工程において用いられた金属の量の最大40%が前記担体と弱く相互作用している、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
担体を合成する工程において用いられた金属の量の最大30%が前記担体と弱く相互作用している、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
担体を合成する工程において用いられた金属の量の最大25%が前記担体と弱く相互作用している、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
触媒担体の細孔容積は0.3〜0.7cm/gである、請求項16〜21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
触媒担体の細孔容積は0.35〜0.65cm/gである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
直径が0.1ミクロン超である担体の細孔の容積は、総細孔容積の5〜35%を示す、請求項16〜23のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
直径が0.1ミクロン超である担体の細孔の容積は、総細孔容積の5〜30%を示す、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
直径が0.05ミクロン超である担体の細孔の容積は、総細孔容積の5〜50%を示す、請求項16〜25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
直径が0.05ミクロン超である担体の細孔の容積は、総細孔容積の10〜40%を示す、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
触媒は、全触媒重量に対して1〜10重量%の含有量のニッケル酸化物と、全触媒重量に対して12重量%超の含有量のモリブデン酸化物とを含有し、ニッケル/モリブデンのモル比は0.25〜0.45であり、これら金属は、ニッケルアルミナートを含む担体上に担持され、担体と強く相互作用している金属Mの量は、全触媒重量に対する金属酸化物の重量で1〜5%であり、触媒を構成する金属の硫化度は80%超であり、直径が0.05ミクロン超である前記触媒の細孔の容積は15〜35%である、請求項1〜27のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
供給材料は、80〜220℃の温度、1〜10h−1の液空間速度および0.5〜5MPaの圧力で触媒と接触させられる、請求項1〜28のいずれか1つに記載の選択的水素化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−182567(P2007−182567A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−345142(P2006−345142)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(591007826)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (261)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT FRANCAIS DU PETROL
【Fターム(参考)】