特定の粒径、形状、形態および組成を有するポリマー粒子の製造方法
本発明は、予め設計された粒径、形状、形態および組成を有するポリマー粒子を製造するための方法および装置を提供し、詳細には本発明は、それを製造する上でマイクロ流体重合リアクターを用いる。本明細書に開示の本発明は、予め選択された形状のポリマー粒子を製造する方法を提供する。その方法には、制御された流量で重合性構成成分を含む第1の流体をマイクロ流体流路に注入する段階および第2の流体を制御された流量でマイクロ流体流路に注入する段階を有し、前記第2の流体は第1の流体と混合され、第2の流体は第1の流体と非混和性であることから、第1の流体はマイクロ流体流路中で液滴を形成する。マイクロ流体流路は予め選択された寸法を有することで、予め選択された粒径、形態および形状の液滴を与える。マイクロ流体流路は十分長いために、液滴は流路中で十分長い滞留時間を有することから、それらは重合その他の形で硬化して、予め選択された粒径および形状の液滴となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子を形成する方法、装置およびシステムに関するものであり、ある種の態様では、実質的に単分散およびポリマーに基づく粒子を形成するシステムおよび方法に関するものである。場合により本発明は、概して、所定の形状、粒径、形態および/または組成を有する粒子の製造方法に関するものであり、場合によって本発明は、それを製造できるマイクロ流体リアクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
5〜1000μmの範囲の寸法を有するポリマーコロイドが、イオン交換およびクロマトグラフィーカラムで、各種生物用途および医学用途において、較正標準、トナー、コーティングおよび触媒担体として広く用いられている。これら用途のうちの多くにおいて、粒子径および粒径分布が、非常に重要なものである。所定の表面およびバルク特性を有する単分散でサブミクロンの粒径のポリマービーズの製造は、確立された方法である。対照的に、狭い粒径分布を有する大きい粒子の合成は、合成上困難なものである。それは材料特有のものであったり、時間を要するものであり(すなわち、いくつかの段階が必要である)、あるいは得られる粒子の粒径分布が十分狭いものにならない。さらに、従来の重合反応におけるマイクロビーズ形状の制御は、球形粒子の製造に限られている。
【0003】
新たなマイクロ加工技術および微量反応技術の開発における最近の進歩により、反応工学において新たな機会が提供されるようになった。マイクロリアクターは、高い熱および物質移動速度、安全かつ迅速な合成、そして従来のリアクターでは非常に困難な新たな反応経路の開発の可能性を提供するものである。
【0004】
代表的には、マイクロ流体法を活用したポリマー粒子の製造が、2段階プロセスで行われてきた。第1段階では、モノマーまたは液体ポリマーを乳化させて、狭い粒径分布を有する液滴を得た。次の段階では、得られた液滴を、バッチ(すなわち、不連続の)プロセスで硬化させた。
【0005】
いくつか例を挙げると、液体搬送、製品製造、分析を目的とした所望の形態を有する流体、分散液などを形成するための流体操作には、確立された歴史がある。例えば、100マイクロメートル未満の単分散ガスの泡の形成が、毛細管流動集束と称される技術を用いて行われてきた。この技術では、ガスが毛細管から液体浴中に押し出され、その管は小オリフィスより上に位置しており、このオリフィスを通る外部液体流の収縮によって、ガスを集束させて細い噴流とし、次にその噴流が毛細管の不安定性によって壊れて気泡となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マイクロ流体工学は、非常に小さいスケールでの流体の制御が関与する分野である。代表的には、マイクロ流体装置には、流体が内部を流れる非常に小さい流路があり、それらを枝分かれその他の形態で配置することで、流体を互いに合わせたり、流体を異なる位置の方へ方向転換させたり、流体間に層流を発生させたり、流体を希釈する等のことができるようにすることが可能である。「ラボ・オン・チップ」マイクロ流体技術についてかなりの研究が行われており、研究者らは、「チップ」またはマイクロ流体装置での非常に小さいスケールで既知の化学反応もしくは生体反応を行おうとしている。さらに、マクロ規模では必ずしも知られていない新たな技術が、マイクロ流体工学を用いて開発されつつある。マイクロ流体スケールで研究または開発されている技術の例としては、高スループットスクリーニング、医薬送達、化学反応速度測定、ならびに物理、化学および工学の分野における根本的問題の研究などがある。
【0007】
マイクロ流体リアクターは、コンビナトリアル・ケミストリー(化学反応、化学親和力もしくは微細構造形成の迅速な試験が望まれる)、生化学合成および有機化学合成、触媒の迅速なスクリーニング、そして無機粒子(例:シリカまたは半導体量子ドット)の合成での利用において有望であることを示している。急速な熱および物質移動、高い収率および再現性により、既存の化学反応の効率が高まり、従来のリアクターでは困難であると考えられる新たな反応経路を探求することができる。
【0008】
予め設計された粒径、形状、形態および組成を有するポリマー粒子を製造する方法を提供することは、非常に有利であると考えられる。そのような粒子は、いくつか言及すれば、医薬送達、細胞研究、フローサイトメトリー、クロマトグラフィーカラム、触媒および較正標準からの多くの利用分野で用いることが可能であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、所定の粒径および/または形状および/または形態のポリマー粒子の製造方法であって、
a)マイクロ流体流路中に、硬化することができる構成成分を含む第1の流体を注入する段階;
b)少なくとも第2の流体を前記マイクロ流体流路中に注入することで、少なくとも第2の流体内で第1の流体から流体液滴を形成させて、前記マイクロ流体流路を通って該流体液滴を流動させる段階(前記マイクロ流体流路は、前記流体液滴が、前記流路を通って流れている間に硬化して、所定の粒径および/または形状の粒子となるように十分に長いものである。);および
c)所定の粒径および/または形状の前記硬化粒子を前記マイクロ流体流路から回収する段階
を有する前記方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、所定の粒径および/または形状を有するポリマー粒子を製造するための装置において、
1以上の流体注入口、投入口およびマイクロ流体流路を含む投入端部を有するマイクロリアクターを有し、前記マイクロ流体流路は、前記マイクロ流体流路に位置している流体液滴が、前記マイクロ流体流路内で重合する上で十分な滞留時間を有するように十分に長いものであり、
前記マイクロリアクターが、重合性構成成分を含む流体をマイクロリアクター中に注入した時に、該流体が前記マイクロ流体流路内で液滴となるような適切な材料で製造されている前記装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に従って製造されるマイクロ流体リアクターについて、ほんの一例として、添付の図面を参照しながら説明する。
【0012】
定義
本明細書で使用される場合、「ラボ・オン・チップ」という表現は、マイクロリアクターを含み、各種化合物の効率的な高収率合成を行うことが可能な微小装置を意味する。
【0013】
本明細書で使用される場合、「マイクロリアクター」という表現は、少なくとも部分的に、マイクロ技術および精密工学の方法を用いることで作製される微小反応システムを意味する。流体流路などのマイクロリアクターの内部構造の特徴的寸法は、サブミクロンからミリメートル未満の範囲である。
【0014】
本発明の一部の態様は、流体液滴および/または粒子を形成するのに用いることができる1以上のマイクロ流体成分、例えば1以上のマイクロ流体流路を含む装置に関するものである。本明細書で使用される場合、「マイクロ流体」とは、1mm未満の断面寸法を有し、流路の長さ:最大断面寸法が少なくとも10:1である少なくとも1個の流体流路を有する装置を指すことから、本明細書で使用される「マイクロ流体流路」は、これらの基準を満足する流路である。流路の「断面寸法」は、流路内の流体流動の方向に対して垂直に測定される。
【0015】
本明細書で使用される場合、「流路」という用語は、少なくとも部分的に流体流動の方向を決定する基材上もしくは基材内の形状部分を意味する。流路は、いかなる断面形状(円形、楕円形、三角形、不定形、正方形もしくは矩形など)も有することができ、少なくとも部分的に覆われていても良い。流路は、少なくとも約10:1のアスペクト比(長さ:平均断面寸法)を有することもできる。
【0016】
「単分散」という用語を用いる場合、それは以下の意味を有する。分布のうちの少なくとも90%がメジアン粒径の5%以内にある場合、粒子分布は、単分散であると見なすことができる(Particle Size Characterization, Special Publication 960-961, January 2001)。
【0017】
マイクロ流体リアクターは、マイクロリアクターの流路に沿って移動する液体媒体を用いる。
【0018】
本発明は、予め指定された粒径、形状、形態および組成を有する「ラボ・オン・チップ」を用いるポリマー粒子合成の多用途な戦略を開示するものである。この新たなアプローチの固有の特徴は、マイクロチャンネルの制約された幾何形状中でおよび/または介在する媒体の流動の作用によって得られた液滴の高度に非平衡性の形状および形態を固体状態で捕捉することができる点である。本発明者らは、球形、楕円ビーズ、半球、中空粒子、多孔質ビーズ、コア・シェル粒子、円板およびロッドなどの各種形状、形態および構造を有する単分散性の高いポリマーミクロスフィアの合成による多くの方法を示している。
【0019】
本明細書に開示の本発明は、予め選択された形状および/または粒径を有するポリマー粒子を製造する方法を提供する。その方法には、制御された流量の重合性構成成分を含む第1の流体をマイクロ流体流路に注入する段階および制御された流量の第2の流体をマイクロ流体流路に注入する段階を有し、第2の流体は第1の流体と非混和性であることから、第1の流体がマイクロ流体流路中で液滴となる。マイクロ流体流路は、予め選択された寸法を有することで、予め選択された粒径および形状の液滴が得られる。第1の流体の液滴の第2の流体中の混合物を、十分に長い長手方向通路の第1の投入端部に注入することで、液滴は長手方向通路で十分に長い滞留時間を有することから、それらは重合して、予め選択された粒径および形状の粒子となる。予め選択された粒径および形状の重合した液滴を、長手方向流路の第2の排出端部で回収する。
【0020】
本発明の方法において、重合性構成成分は、モノマー、オリゴマーまたは液体ポリマーである。あるいは、第1の流体はガスであることができ、重合性構成成分はモノマー、オリゴマーまたは液体ポリマーである。
【0021】
上記の方法を用い、本発明者らは、蛍光色素で修飾され、無機ナノ粒子(磁気ナノ粒子、金属ナノ粒子または半導体量子ドット)がドープされ、液晶と混合されたポリマーおよびコポリマーマイクロビーズを合成した。得られた粒子は、それ自体で用いることができるか(例えば、生体標識または生体分離において)、または周期的な構造、組成および機能を有する複合材料の作製における構成単位として用いることができる。
【0022】
図1aについて説明すると、所定の形状および/または粒径のポリマー粒子を製造する装置を120で示してあり、それには3つの別個の投入口126、128および130を含む投入端部124ならびに長い管138を有するマイクロ流体流路136の投入口134につながった排出端部分132を有するマイクロリアクター122がある。管138には排出端部140がある。管138の長さは十分長いことから、マイクロ流体流路136内にある流体液滴は、マイクロ流体流路内で重合することができる。
【0023】
流路の高さは、10〜200μmとし、オリフィス幅は15〜100μmとした。2個のデジタル制御されたシリンジポンプ(Harvard Apparatus PhD2000)を用いて、界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム、SDS、2重量%)の水溶液150を外側流路126および130に導入し、液体モノマー152を内側流路128に導入した。いずれかの流動パラメータを変えた後は、系を少なくとも3分間平衡化させた。水溶液150および液体モノマー152によって、オリフィスにおける上流に界面が形成された。モノマー細流の先端がオリフィスでバラバラになり、モノマー液滴が放出された(図1b)。下流流路に続く波形のマイクロ流体流路138で、モノマー液滴が重合した(図1a)。高速度カメラであるフォトメトリクス・クールSNAR ES(Photometrics CoolSNAR ES; Roper Scientific)を搭載したオリンパスBX51光学顕微鏡を用いて画像をキャプチャーし、オリンパス画像解析ソフトウェアでモノマー液滴およびポリマー粒子の寸法を測定した。
【0024】
いくつかの非極性モノマーであるジアクリル酸トリプロピレングリコール(TPGDA)、ジアクリル酸エチレングリコール(EGDMA)、ジメタアクリレートオキシプロピルジメチルシロキサン(MAOP−DMS)、トリアクリル酸ペンタエリスリトール(PETA−3)、テトラアクリル酸ペンタエリスリトール、ジビニルベンゼン(DVB)ならびに他のモノマーもしくは各種添加物とのそれらの混合物を、ポリウレタンマイクロ流体リアクターでの液滴形成に用いた。
【0025】
図1bに、マイクロ流体装置で形成された単分散の高いDVB液滴を示している。図1cに、TPGDA、MAOP−DMSおよびDVBモノマーについて水溶液/モノマー相の流量比の上昇に伴う液滴体積の低下を示してある。液滴の形状は、流量比によっても決まる。流量が50〜60を超えなかった場合、円板状液滴が形成され(すなわち、その直径がマイクロ流体流路の高さを超える)(図1cにおける白丸)、高流量比では、球形液滴が得られた(黒丸)。円板の体積は、モノマーの巨視的性質(粘度およびモノマーの水相との界面張力)によって決まる。しかしながら、流量比が高いと、この差はあまり重要でなくなった。いくつかの液滴形成位置が認められ、そこでは各種粒径および多分散性を有する液滴が形成された。すなわち、オリフィス内(中等度の液体流量、中等度の粒径の液滴形成)、オリフィス背後でそれに近い箇所(低流量、「ドリップ」状態で大きい液滴がゆっくり形成)およびオリフィス背後でそれから遠い箇所(「噴流」状態、小さい液滴の急速な形成)である。
【0026】
この例では、モノマー相流量範囲0.01mL/h〜0.35mL/hで、単分散性の高い液滴が形成された。これらの結果に基づくと、マイクロ流体装置の特定の幾何形状(流路の幅および形状、オリフィスの高さおよび幅)について、特定の粒径および単分散性を有する形成モノマー液滴の表面エネルギーを得ることができた。
【0027】
モノマー液滴のUV開始重合(UVAPRINT 40C/CE, Dr. K. Hoenle GmbH UV-Technologie, Germany、λ=330〜380nm、400W)。UV−開始剤である光開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを、濃度(3.5±0.5重量%)でモノマー中に導入した。波形マイクロチャンネル(図1a)のみに、UV照射を行った。重合時間は、液滴流量によって制御した。代表的には、それは3〜800秒であり、粒子形成速度は粒子250個/秒であった。寸法が15〜200μmであるマイクロビーズを、出口で水溶液で回収した(ミクロスフィアの寸法は、マイクロチャンネル幾何形状を変えることでさらに低下させることができた)。モノマー変換率は、100%に近かった。
【0028】
in situ重合によって、液滴の合体が防止され、単分散固体ビーズの製造ができた。ミクロスフィアの多分散度(標準偏差σを平均粒子直径Dで割った値と定義される)は、3%を超えなかった(多分散指数は1.005未満)。
【0029】
図2a〜2dには、各種形状を有する液滴を製造するためのマイクロ流体リアクターの模式図を示してある。変形していない液滴の直径(d)とオリフィス背後の流路(図1でのもの)の寸法との間の関係が、液滴の形状を決定する。非球形状の液滴は、dの値が、流路寸法のうちの少なくとも一つの値より大きい時に形成される。図2aでは、w>dおよびh>d(wおよびhは、それぞれ流路幅および流路高さである。)の場合、液滴は球形状を取る。連続相の流量が大きいと、球形液滴は、楕円体形状を取る(図2b)。w<dおよびh>dの場合、液滴は円板形状を取り(図2c)、w<d、h<dの場合、液滴はロッド形状を取った(図2d)。そのような非球形液滴におけるアスペクト比は簡便には、液滴体積とマイクロ流体流動集束装置の寸法との間の比を変えることで変動させることができた。
【0030】
図2の模式図について説明すると、図3(a、c〜e)は、各種形状(球形、ロッド状、円板および楕円体)を有する粒子の代表的なSEM画像を示している。液滴の形状が、マイクロ流体リアクターの蛇行流路で固体状態で捕捉された(図1a)。ミクロスフィア、円板およびロッド状は、単分散性が高かった(図1d〜f)。ポリマーミクロスフィアの単分散性が高いことで、コロイド結晶の形成が可能であった(図3(b))。粒子の体積は、相当する液滴の体積よりわずかに小さく(約5〜7%)、それによって蛇行流路中での粒子の目詰まりが防止された。
【0031】
マイクロ流体流路中での液滴の相対流量が、粒子形状を制御する第2の因子であった。例えば、水相流量0.96cm/s(流量比8.3)では、球形液滴が楕円体に変わり、得られたマイクロビーズが「卵のような」構造を有していた(図3b)。同様に、円板は楕円板に変えることができた。
【0032】
図4には、マイクロ流体リアクターで重合した各種組成を有する球形ポリTPGDAミクロスフィアの代表的なSEM画像を示してある。ポリマー粒子の直径は15〜200μmであり、それはさらに、マイクロリアクター設計および/または液滴形成の流体力学条件を変えることで変えることができた。色素標識ポリマー粒子を、UV可視光もしくは近IR色素で標識したモノマーをホストモノマーと共重合させることで合成した(Pham, H.; Gourevich, I.; Oh, J.K.; Jonkman, J.E.N.; Kumacheva, E.; A Multidye Nanostructured Material for Optical Data Storage and Security Data Encryption. Advanced Materials 16, 516-520 (2004))。図2bには、0.01%蛍光色素標識モノマーメタクリル酸4−アミノ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールメチル(NBD−MMA)とTPGDA(Kalinina, O.; Kumacheva, E.; A "Core-Shell" Approach to Producing 3D Polymer Nanocomposites. Macromolecules 32, 4122-4129 (1999))との共重合によって製造したミクロスフィアの光学蛍光顕微鏡画像を示した。さらに、半導体、金属もしくは磁気ナノ粒子と混合したTPGDAを重合させることで、ハイブリッドポリマー−無機マイクロビーズを得た。図4cには、トリ−n−オクチルホスフィンおよびトリ−n−オクチルホスフィンオキサイドの混合物(Murray, C B., D J Norris, M G Bawendi, J. Am. Chem. Soc. 1993, 115, 8706)でキャッピングされた0.3ppmの4.0nm粒径CdSe量子ドットがドープされたミクロスフィアの光学蛍光顕微鏡画像を示してある。4−シアノ−4′−ペンチルビフェニル(5〜20重量%)と混合したTPGDAを重合させることで、液晶(LC)−ポリマー複合マイクロビーズを合成した。図4dには、LC−ポリマービーズの偏光顕微鏡画像を示してある。重合が急速であった場合、低分子結晶をポリTPGDAと均一に混合したが、重合(もしくは液滴流量)が遅い場合は、LCが分離してミクロスフィアコアとなり、ポリマーがシェルを形成した(図4d、挿入図)。TEM画像は、ナノ粒子がポリマービーズで良好に分離されたままであり、より重要な点として、図4cに示したように、ポリマー基材でそれらの蛍光を維持していた。フタル酸ジオクチル(DOP)をTPGDA(1/4重量比)と混合し、TPGDAを重合させ、DOPをアセトンで除去することで、多孔質ミクロスフィアを合成した。図4eでは、ミクロスフィアにおける孔径は約0.90μmであった。
【0033】
各種モノマーの共重合によって、コポリマー粒子を合成した。例えば、TPGDAをそれぞれアクリル酸(AA)またはアミノアクリル酸エステルと共重合させることで、カルボキシル基またはアミノ基(さらなる生体接合に重要)を有するミクロスフィアを得た。図4fには、5重量%のAAと混合したTPGDAの光重合によって合成したポリ(TPGDA−AA)ミクロスフィアを示してある。ビーズの多分散度は2%以下であった。アクリル酸の表面濃度は、12.3モル%であった。
【0034】
コポリマーマイクロビーズの表面上のカルボキシル基の量は、生体分子の免役感作を行うには十分であった。マイクロ流体リアクターで合成されたポリ(TPGDA−AA)粒子の生体接合を、フルオレセインイソチオシアネート(FITC−BSA)で共有結合的に標識したウシ血清アルブミンについて示した。生体接合は、最初にpH=6.0のリン酸緩衝液中30℃で1時間にわたり、ポリマー粒子にFITC−BSAを結合させることで行った。この段階後、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を、FITC−BSAを有するポリ(TPGDA/AA)マイクロビーズの分散液に加えた。次に、その系を30℃で1時間混合した。得られたマイクロビーズの超音波処理および沈降後、それを脱イオン水に再懸濁させた。一連の対照実験を行って、FITC−BSAがマイクロビーズ表面に付着したことを確認した。マイクロビーズを(i)FITC−BSA、(ii)EDC、ならびに(iii)EDCおよびFITC−BSAとともに加熱した。蛍光FITC−BSAのマイクロビーズ表面への付着は、ケース(iii)でのみ起こった。図4gには、マイクロ流体リアクターを用いて合成し、FITC−ウシ血清アルブミンと接合したコポリマーマイクロビーズの代表的な蛍光顕微鏡画像を示してある。
【0035】
無機顔料などの他の無機化学物質を、重合性液体流体に組み込むことで、それらを最終粒子に組み込むことができる。その流体は、予め選択された磁気特性を有する無機粒子、または予め選択された電気的および/または半導体的特性を有する無機粒子、または所望の導電特性を有する無機粒子を含むことで、これらの種類の粒子を予め選択された粒径、組成、形態および形状のポリマー粒子に組み込むこともできる。
【0036】
最終粒子は、それに組み込まれたカーボンナノチューブを有することもできる。さらに、重合性流体中に組み込まれた非重合性液体を有するポリマー粒子を製造して、液体を粒子中に組み込むことができる。例えば、非重合性液体は液晶であることができる。
【0037】
重合性流体中に組み込まれたデンプン、3−ヒドロキシブチラートおよびその誘導体を含むポリマー、3−ヒドロキシバレラートおよびその誘導体を含むポリマー、タンパク質、核酸(DNA、RNA)、アミノ酸、ペプチド、リポソーム、ホスフェート、多糖類、医薬およびその誘導体のような生体適合性製品を含む粒子を製造することができる。
【0038】
マイクロ流体装置中の液滴に外部場を印加することで、液滴の形状および組成を変えることができる。その外部場は、磁場、電場、光または何らかの他の液体の照射であることができる。
【0039】
連続した相/マトリクスの流体は、水、無機化学物質もしくは界面活性剤またはポリマーその他の有機化学物質の水溶液、または非極性オイル液体(例:オイルまたは界面活性剤もしくはポリマーのオイル溶液)であることができる。モノマーまたはオリゴマーは、1以上のビニル基を有するビニル含有モノマー、1以上のアクリル酸基を有するアクリル酸含有モノマー、1以上のアミド基を有するアミド含有モノマーであることができる。その流体は、2つの流体間の界面で反応を生じる反応性化学物質を含むことができる。管中の流体の重合は、化学反応、UVまたはプラズマ照射によって、または電場印加によって行うことができる。
【0040】
図5には、ポリマーカプセルまたはコア/シェル構造および非対称形状を有する粒子の製造に用いられるマイクロ流体リアクターの別の実施形態の一部の模式図155を示してある。図6には、一部を図5に示したマイクロ流体リアクター全体の光学顕微鏡検査写真を示してある。図5において、3種類の液体A、BおよびCがマイクロ流体流動集束装置に供給される。隣接する液体同士は非混和性であり、それらのうちの少なくとも1種類(例えば液体B)が重合性構成成分を含むことが重要である。使用される液体の代表例は、水、モノマーおよびオイル液体であった。代表的には、ドデシル硫酸ナトリウムの2重量%水溶液(液体C)162を2つの外側通路156に注入し、モノマー相(液体B)166およびオイル(液体A)164を内側流路に注入する。
【0041】
マイクロ流体装置155の長軸169方向に作用する圧力勾配が3種類の液体を狭いオリフィス168に押し入れると、水相162のPUエラストマーに対する相対的に高い親和力および加速性の高い外部相の強い収縮のために、モノマー流164がPU形成物の頂部壁および底部壁から引き離される。従って、連続水相がモノマー−オイル細流を囲んで、それが円形断面を取る。同軸オイル−モノマー噴流が下流の流路に進み、小さい粒に分かれる。界面張力の作用下で、これらの小粒は球形状を取り、コア・シェル液滴を形成する(図7)。これら液滴中のモノマー区画は、それを波形マイクロ流体流路でUV照射することで重合する(図6)。
【0042】
この例では、レーリー−プラトー流体力学的不安定性のために、液体円柱形噴流からの液滴形成が生じた。界面張力の作用下で、噴流は不安定となって波長が周囲より大きい摂動状態となり、小滴への細分化によって表面積が低下し、その小滴は球形形状を取った。平衡領域での同軸噴流の平均直径dを、d=[(4/□)(Qdrop/vx,cont)]1/2(1)[式中、vx,contは流路中心での連続相の速度であり、vx,cont=1.5Qcont/Achannelであり、QdropおよびQcontはそれぞれ液滴および連続相の流量であり、Achannelは下流流路の断面積である]としての連続方程式を用いて計算した。噴流の細分化によって形成された液滴の直径d0を、d0=(1.5λbreakupd2)1/3(2)として界面キャピラリー波長□breakupの値[界面キャピラリー波長は、細分化して液滴となる前の同軸噴流内の最後の波の長さである]によって求めた。図8に、連続水相の流量増加に伴う(モノマーおよびオイル相の流量は一定とした)噴流直径およびコア・シェル液滴直径の変化を示してある。同軸噴流の平均直径は10〜80μmで変動し、式(1)で計算したdの値と一致していた(図8、上図)。コア・シェル液滴の平均直径は、20〜150μmで変動し(図8、下図)、式(2)から得られた値に近かった。
【0043】
液滴とコア・シェル液滴の両方のコアとも、非常に高い単分散性を有していた(図9)。コアの大きさ、シェルの厚さおよびコア・シェル粒子の粒径は、他の2つの液体流量を変動させずに一つの液体の流量の流量を変えることで正確に制御することができた(図10)。
【0044】
図11には、複数コアを有する液滴へのアプローチの模式図を示している。液滴当たりのコア数は、液体の相対的流量を変えることで制御した。界面キャピラリー波長λmおよびλ0の値を変動させ、互いに関してキャピラリー波の相を変えた(波動)。このようにして、コア数nが異なるコア・シェル液滴を形成した。モノマー細流およびオイル細流それぞれの界面キャピラリー波長λmおよびλ029の値が近く、位相がそろっている場合、同軸噴流の細分化によって、液滴中心に局在する単一のオイルコアを有する液滴が形成された。そのコアは、キャピラリー波長が「位相がそろってシフト」した場合に、液滴中心に関して非対称に配列した。この構造は、光重合時に緩和しなかった。
【0045】
図12には、図11に示した方法で製造したオイルコア数が異なる単離されたモノマー液滴の代表的な光学顕微鏡画像および同軸噴流の液滴当たり2個のコアを有するコア・シェル液滴への細分化を示している。その流体コアは、モノマーシェルに囲まれたときに合体しなかった。
【0046】
流体力学的条件の三角「相」図を、各種形態を有するコア・シェル液滴の製造に用いた。図13における三角図の必要条件(すなわち、3つの変数の合計が一定であって、1に等しい)を満足するため、各軸上に、3種類の液体の合計流量に対する特定の液体(水、オイルもしくはモノマー相)の流量の比率をプロットした。Q′0=240Q0、Q′m=120Qm、Qtotal=Q′0+Q′m+Qw[Q0、QmおよびQwは、オイル、モノマーおよび水相の流量である]を用いることで、同じ図上で全流量比範囲を網羅した。
【0047】
モノマー液滴発生の初期段階(およびオイル液滴形成完了間近の後)で、噴流の細分化によって、オイル液滴の表面近くに小さいモノマー内包物を有する液滴が形成された(領域A)。モノマー液滴形成のそれより以降の段階では、モノマー内包物の大きさが徐々に大きくなった(領域B)。最終的に、従来のコア・シェル形態を有する単一コア液滴が、液体流量比の広い範囲で発生した(領域D)。オイル液滴発生の初期段階で、噴流の細分化によって、表面モノマー液滴に隣接する小さいオイル内包物を有する液滴が形成された(領域C)。液滴の形態は、流量比Q′0/Qtotalを低くすることによっても制御された。これらの条件下で、コア・シェル液滴中のオイルコアは、液滴中心に関して整列しなかった(領域E)。複数コアを有する液滴が、状態F〜Iで得られた。
【0048】
コア・シェル液滴中でモノマーをin situで光重合させ、いくつかの条件下でシリコーンオイルをアセトンで除去することによって、各種形状および形態を有するポリマー粒子を得た。重合時間は代表的には、2〜800秒であった。モノマーのポリマーへの変換率は、100%に近かった。重合後、粒子の寸法は、相当する液滴と比較して約5〜7%減少した。波形流路では、ポリマー粒子の目詰まりは起こらなかった。マイクロ流体工学リアクターの生産性は、200〜1000s−1であった。粒子の多分散度は2.5%を超えず、相当する液滴の多分散度に近かった。
【0049】
図14(a〜f)に、ポリTPGDA粒子の代表的なSEM画像を示してある。端部切断ミクロスフィア、半球、「穴」を有する粒子および球形カプセル(図14(a〜e))を、図13の三角図のそれぞれ領域A、B、CおよびDで得られた液滴から得た。領域Iで得られた液滴を重合させることで、コア3個を有するミクロスフィア(図14f)を得た。本発明者らの研究では、液滴形態の熱力学主導制御とは対照的に、液体の巨視的特性(例えば、それらの粘度および界面張力)を変えることなく各種形状および形態を有する粒子が得られた。
【0050】
ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートのポリマーヒドロゲルが、図1におけるマイクロ流体リアクターで得られた。この場合には非極性モノマーとは対照的に、マイクロ流体リアクターは、PDMSで作製されたものである。界面活性剤Span−80のシリコーンオイル溶液(粘度5cSt)を外側流路に導入し、界面活性剤セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートおよびヒ光開始剤である2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンの水溶液を、中央の流路に供給した。これらの液体がオリフィスを通過した後、液滴が生成した。次に、波形流路を通って流れる液滴にUV照射することで、液滴中のポリ(エチレングリコール)ジアクリレートを光架橋させた。そのミクロゲル粒子は、2%以下の多分散度を有していた(図15)。
【0051】
本発明には、イオン会合を用いることによるマイクロ流体リアクターの別の実施形態における高単分散性ヒドロゲルビーズの迅速な製造が含まれる。そのヒドロゲルビーズは、粒径範囲10〜1000マイクロメートルのものである。ヒドロゲル粒子の粒径は、溶液の濃度、液体の流量および流量比、ならびにマイクロ流体装置の設計を変えることで容易に操作することができる。
【0052】
ヒドロゲルビーズの製造で用いられる材料の例としては、アルギナートおよびキトサンなどのタンパク質および多糖類のような生体ポリマーがある。図16には、171でのマイクロ流体リアクターの一部の模式図を示してある。モノマー、オリゴマーもしくはポリマーまたはそれらの溶液からなる流体(液体A)190を、中央流路176に供給する。代表的なポリマーには、アルギナートまたはキトサンなどがある。架橋剤溶液(液体B、代表的にはCaCl2の溶液)188を、流路190のいずれかの横にある中間流路に供給する。連続相(液体C、代表的には鉱油)186を、外側流路172に供給する。相当する流路182および176からの出口では、液体AおよびBが混合して溶液が形成され、その溶液が178を通過する時に、その溶液は流路180から出てくる液体Cによって剪断されることから、混合溶液が細分化されて液滴となる。下流流路184では、これらの液滴がゲル化して、ミクロゲルビーズを形成する。
【0053】
図17には、下流流路184でのミクロゲルビーズの形成を示してある。そのミクロゲル粒子は、約2〜3%の多分散度を有しており、図18に示したリアクターの出口で回収した時には安定であった。ミクロゲル粒子の粒径は、連続オイル相の流量を変えることで制御した。図19には、粒子径と連続オイル相流量のプロットを示してある。代表的には、ミクロゲル粒子の直径は、約15〜約250μmであった。
【0054】
図20は、二重オリフィスマイクロ流体装置201の模式図である。流体は、マイクロ流体装置の方向に従って左から右に流れる。2種類の非混和性液体A198およびB196はそれぞれ、マイクロ流体装置の中央および流路194および192に供給される。オリフィス202を通過させられると、液体A198の細流が、図1aの場合と同様にして、液体B中に分散した液滴を形成する。液体Bと非混和性である液体C208は、流路206を通ってマイクロ流体装置の両側から供給される。液体Cは、液体Aと異なっていても同一であっても良い。液体A、BおよびCが第2のオリフィス212からマイクロ流体流路214中に送り込まれると、液体Cが液体B中に分散した液滴を形成するか、または液体Cが連続相となって、液体Bは液体Aの液滴を取り込むか、または液体AおよびBがヤヌス液滴を形成する。ヤヌス液滴または粒子は、球体を形成するよう結合した2つの別個の半球から作られるものである。
【0055】
図21aおよび21bは、図1のマイクロ流体リアクター120を用いた2つの異なる機能による液滴の形成を模式的に示す図である。非混和性液体L1およびL2(例:油相および水相)が狭いオリフィス中に送り込まれる。図21aには、中央の流路に供給された液体からの流動集束機構による液滴形成のダイヤグラム表示を示してある。この機構では、外側流路に供給される連続相は、マイクロ流体装置の材料を濡らす能力が分散剤相より高い。図21bは、外側流路に供給される液体からオリフィスの角部で剪断機構によって起こる液滴の形成の模式図である。この機構では、分散剤相は、マイクロ流体装置の材料を濡らす能力が連続相より高い。
【0056】
図22aおよび22bは、図20におけるマイクロ流体リアクター201の実施形態での液滴の形成を示す図である。図22aにおいて、液体L3は、液体L2と同一であっても異なっていても良く、液体L1と異なっていなければならない。液体L1およびL2は非混和性であり、中等度の界面張力を有する。液体L1およびL2が第1のオリフィス202を通過すると、液体L1の連続相中の液体L2の液滴が形成される。液体L3の注入後、液体L1が液体L2を取り込んでコア・シェル液滴を形成し、液体L3は連続相となる。図22bでは、液滴発生のプロセスは、図22aの場合と同様であるが、液体L1およびL2は非混和性であり、高い界面張力を有する。液体L3は、液体L1およびL2のいずれとも異なっている。この条件下では、液体L2およびL3が、液体L2およびL3の部分からなるヤヌス球形液滴を形成する。
【0057】
図23には、図20の装置201を用いる2つの液滴群230および232の形成の模式を示してあり、その液滴は、選択される処理条件に応じて、粒径および/または組成において異なっていても同様であっても良く、または粒径および組成の両方において全く異なっていても良い。第1の液滴群232は、2種類の非混和性液体L1およびL2を第1のオリフィス202に通過させることで発生する。中央流路(L2)に供給された液体194が、マイクロ流体装置の材料の濡れ性において、中間流路192に供給される連続相液体L1より低い場合、それはL1中に分散する液滴を形成する。次に、この分散液を第2のオリフィス212に送る。同時に、液体L3を、外側流路208からマイクロ流体装置に送る。液体L3がマイクロ流体装置の材料の濡れ性に関してL2より低い場合、それはL1中で分散した第2の液滴群を形成する。それらの液滴は、L2から形成される液滴と同じもしくは異なる粒径および組成を有することができる。
【0058】
図24には、ジメタクリレート・オキシプロピル・ジメチルシロキサン(MAOP−DMS)の液滴の二次元格子の光学顕微鏡検査およびSEM画像を示している。濃度2重量%のドデシル硫酸ナトリウム水溶液およびMAOP−DMSを3.5±0.5重量%の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと混合したものを、それぞれ流量0.0030mL/時および0.1000mL/時でポリウレタン製のマイクロ流体装置(図1)に導入した。2つの液体をオリフィスに通したら、MAOP−DMSが液滴を形成した。液滴の流量は連続相の流量より低く、それらは高度の秩序および対称性で二次元映進格子に充填され始めた。代表的には、マイクロ流体装置の壁に平行に配列された列の数字は、20以下であった。図24aには、MAOP−DMS液滴の格子の例を示してある(図24(a))。その格子にUV照射を30〜60秒間行って、MAOP−DMSを重合させた。固化後、液滴は約5〜7%収縮し、図24(b)に示した形状を取った。円板の体積率は、99.5%から92.4%に低下した。図24(c)には、アスペクト比3.50を有するポリ(MAOP−DMS)円板の代表的SEM画像を示してある。液滴の2D格子の非常に周期的構造が、固体状態で保存されていた。図25には、図20で示した二重オリフィスマイクロ流体装置で形成された二元格子の光学顕微鏡画像を示してある。
【0059】
二元格子は、図23の模式図後に、図20に示した設計を有するマイクロ流体装置で形成された。図25には、シリコーンオイルおよびヘキサン液滴から得られる格子の例を示してある。95〜400μmの範囲の未変形直径を有するヘキサン液滴は、蛍光色素を含んでおり、暗い色に見える。90〜250μmの範囲の未変形直径を有するシリコーンオイルの液滴は、より明るい液滴に見える。連続相(L3)は、ドデシル硫酸ナトリウム水溶液によって形成される。3種類の液体の流量を変えることで、格子の構造を注意深く変えることができた。液体の流量は、3重の役割を果たした。すなわちそれらは、液滴の粒径を制御し、液滴形成の頻度を決定し、下流流路での異なる液滴群の充填能力を決定した。
【0060】
図26には、図20におけるマイクロ流体装置201の実施形態でのコア・シェル液滴の形成を示してある。濃度1〜5重量%を有するTiO2の水系分散液が、2重量%SDSまたは0.1重量%CTAB溶液で得られた。この分散液を中央流路に供給した(液体A)。モノマーTPGDAは、横の流路に供給した(液体B)。液体AおよびBを第1のオリフィスに通した後に、TiO2粒子を取り込んだ水の液滴が形成された。外側流路からの濃度2重量%でのSDSの水溶液(液体C)の注入ならびに液体A、BおよびCのオリフィス通過によって、SDS水溶液中に分散したTiO2粒子を封入したTPGDA液滴が形成された。
【0061】
マイクロ流体リアクター作製に用いた2種類の材料は、Sylgard184PDMS(Dow Corning、代表的にはソフトリソグラフィーで用いられる)および弾性ポリウレタンコポリマーであった。弾性ポリウレタンコポリマーの代表的組成は、(PU−5、重量比: Airthane R PET60D/ポリ(エチレングリコール)、Mn=400/グリセリン100/20.70/2.07)である。このポリマーは、Sylgard184PDMS(Dow Corning、代表的にはソフトリソグラフィーで用いられる)と同様の透明性を有しており、引張強度および引き裂き抵抗を改善した。ポリウレタン形成物の機械的特性および透明度は、PDMSのものに近かった。しかしながら、PDMS表面で測定した場合での接触角100°とは対照的に、SDS溶液の形成物表面との接触角は85°であった。
【0062】
親水性モノマー液滴を製造し、ポリ(ジメチルシロキサン)で作製した疎水性マイクロ流体リアクターで重合させる。非極性モノマー液滴を製造し、ポリウレタンマイクロ流体リアクターで重合させた。マイクロ流体リアクターを作製するためのポリウレタンポリマーは、数平均分子量が300〜30000ダルトンである1以上のポリオールを2個以上の官能基を有する1以上のイソシアネートならびに少なくとも1種類の架橋剤および少なくとも1種類の触媒を含む添加剤と混合することで製造される。
【0063】
そのポリオールは、直鎖もしくは分岐のポリエーテル、すなわち少なくとも2個の水酸基を有するプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキサイド、エピクロルヒドリンもしくはスチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの重付加によって製造されるポリアルキレンオキサイドであることができると考えられる。ポリウレタンは、少なくとも2個の官能性水酸基を有する直鎖もしくは分岐のポリエステル、多官能性カルボン酸およびヒドロキシル化合物の重縮合によって得られる生成物、またはシクロエステルの開環重合を介して得られる生成物である1個のポリオールを有することができる。
【0064】
ポリウレタンは、1種類のポリオールを有することができ、それは少なくとも2個の官能性水酸基を有する直鎖もしくは分岐のポリカーボネートであり、それらは1,4−ブタンジオールおよび/または1,6−ヘキサンジオールなどのジオールを、例えば炭酸ジフェニルなどの炭酸ジアリール、炭酸ジメチルなどの炭酸ジアルキルまたはホスゲンと反応させることで製造することができ、数平均分子量は800〜5000ダルトンである。ポリウレタンは、少なくとも2個の官能性水酸基を有するポリジエンポリオールを有することができ、ポリジエンはポリブタジエンおよびポリイソプレンポリジエンである。ポリオールは、少なくとも2個の官能性水酸基を有する水素化ポリジエンポリオールであることができ、ポリジエンはポリブタジエンおよびポリイソプレンまたはそれらの誘導体である。
【0065】
前記ポリオールは、少なくとも2個の官能性水酸基を有するポリオレフィンポリオールであることができ、ポリオレフィンはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリヘキセン、ポリオクテンおよびそれらのコポリマーである。ポリオールは、少なくとも2個の官能性水酸基を有するポリシクロオレフィンポリオールであることができる。ポリオールは、少なくとも2個の官能性水酸基を有するポリシロキサンポリオール、すなわちカルビノール(ヒドロキシル)終端ポリシロキサンであることができ、そのポリシロキサンは、シロキサン単位を含むホモポリマーまたはコポリマーである。ポリオールは、少なくとも2個の官能性水酸基を有するフッ素、塩素、臭素などのハロゲンを含む脂肪族ポリオール、すなわちカルビノール(ヒドロキシル)終端フルオロケミカルポリオールであることができ、それはフルオロケミカル単位を含むホモポリマーまたはコポリマーである。ポリオールは、窒素、ホスフェート、ケイ素、硫黄、ホウ素、金属元素を含むことができ、少なくとも2個の官能性水酸基を有しており、すなわちカルビノール(ヒドロキシル)終端ポリオールである。
【0066】
上記のように、マイクロ流体リアクターを製造するためのポリウレタンポリマーは、数平均分子量が300〜30000ダルトンである1以上のポリオールまたは1以上のイソシアネートを混合することで製造される。そのイソシアネートは、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であることができる。分子骨格は、芳香族、脂肪族または脂環式であることができる。
【0067】
イソシアネートは、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、フェニレンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサンジイソシアネート(HDI)、テトラメチレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート(メチレンビス(シクロヘキシル−4−イソシアネート)(HMDI)、シクロへキシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、メチルペンタメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン、トリス−(4−イソシアナトフェニル)−チオホスフェート、ポリマー性イソシアネートであることができる。イソシアネートは、少なくとも2個のイソシアネート基を有するプレポリマーであることができ、それは、非化学量論比での上記および下記のポリオールまたは下記のポリアミンと上記のイソシアネートから製造される。
【0068】
架橋剤/鎖延長剤は、分子量が70〜500であり、少なくとも2個の水酸基を有する脂肪族または芳香族ポリオールであることができる。ポリオールには、グリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメタノールプロパン、アンヒドロソルビトール、ヒマシ油およびその誘導体、大豆油およびその誘導体、ヒドロキノン、ビス(ヒドロキシエチル)ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
架橋剤/鎖延長剤は、分子量70〜500で、少なくとも2個のアミノ基ならびにヒドラジンもしくはヒドラジン水和物を有する脂肪族もしくは芳香族ポリアミンであることができる。そのポリアミンには、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレン−ジアミン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノ−ジフェニルメタン(MBOCA)、3,5−ジアミノ−4−クロロ−安息香酸エステル、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、1,2−エタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン)、ピペラジン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、アジピン酸ジヒドラジドまたはジエチレントリアミン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸などがあり得る。
【0070】
触媒には、アミン類、弱酸の塩などの求核性触媒および有機金属化合物などの親電子性触媒ならびにカルボン酸化合物、金属キレート、水素化物、ホスフィン類、4級アンモニウム、アルコラートなどの他の触媒などがあり得る。他の添加剤には、充填剤、難燃剤、抗エージング剤、着色剤、可塑剤、酸化防止剤、UV吸収剤などがある。
【0071】
マイクロ流路で使用されるポリウレタンは、放射線または光硬化ポリウレタンオリゴマー/樹脂であることができる。マイクロ流路は、UV硬化樹脂の露光または圧縮成型である基材(ウェハおよびガラス)上への所定のマスターのプロタイピング法を用いて製造することができる。ポリシロキサンまたはポリウレタンマイクロ流路は、鋳造とそれに続く凝縮による後硬化によって、またはUV架橋によって形成することができる。好適な基板は、シリコン(ウェハ)、ガラスおよびプラスチック(例:RIM(=反応射出成形)またはRRIM(=強化RIM)プロセスによって製造されるASA(アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル)またはASA混合物、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、ABSポリカーボネートABS混合物、ポリカーボネート(PC)およびPC/PBTP(ポリブチレンテレフタレート)、PA(ポリアミド)/ABSおよびポリウレタンなどのスチレンコポリマー)製であることができる。
【0072】
ポリシロキサンまたはポリウレタンの表面を修飾して、ポリマーと基材との間の接着を改善することができる。表面処理を、化学薬剤、プラズマ、放射線、光によって行う。
【0073】
モノマー、ポリマーおよびオリゴマーなどの重合性構成成分を含む流体ならびに流体液滴が重合することを用いて本発明について説明したが、非ポリマー系材料を用いることが可能であることは明らかであろう。そのような場合、マイクロ流体流路を通って通過中に液体は硬化する。流体がポリマー性またはモノマー性構成成分を含む場合、この硬化は、重合または物理的架橋によって起こる。物理的架橋プロセスには、例えばイオン架橋、水素結合、キレート形成または錯体形成などがあり得る。イオン架橋の例を、図16でアルギナートミクロゲルについて示してあり、そのような液体はアルギナートまたはキトサンであることができる。
【0074】
そのプロセスで、マイクロ流体流路中に3種類以上の液体を注入する場合には、球形、ロッド状、円板状および楕円体以外の各種形状を有する粒子を製造することができる。例えば図14に示したように、板状、端部切断球体、半球およびボウル形などの他の形状の粒子を、本明細書で開示の方法によって得ることができる。
【0075】
粒子は、可逆的ゲル化を受けるポリマー液体を液滴相として導入することで得ることができる。この液体は、オリフィス中に送り込まれた時に剪断薄化(すなわち、粘度の低下)を受けるが、液滴形成後にはそれらはゲル化し、ミクロゲル粒子を形成する。
【0076】
マイクロ流体リアクター中での粒子形成のプロセスは、マイクロ流体流路の下流部分での一連の連続ステップで起こり得る。液滴が複数の重合性成分を含む場合、それらのうちの一つがUV照射によって硬化することができ(すなわち、重合することができる)、他のものは化学的プロセス(触媒を用いても用いなくても良い)によって、または異なる種類の光照射を用いることで、または電気化学的プロセスによって硬化することができる。
【0077】
本発明の方法によって、相互貫入ネットワークを有する粒子を製造することも可能である。その化学プロセス(前記の請求範囲のもの)は、第2のプロセスであるUV照射を開始するまでは起こらないものと考えられる。光吸収および発熱反応によって、液滴における温度が上昇し、前記化学反応が生じる。従って、2つの重合が同時に起こり、相互貫入ポリマーネットワークが得られる。各反応の速度によって、粒子形態を制御することができる。
【0078】
本発明の方法は、連続プロセスとして構成することができる。すなわち、連続マイクロ流体リアクター中での連続スループットプロセスで、粒子の製造を行う。あるいは、粒子がマイクロ流体装置を出た後に重合を行うことができる。
【0079】
本発明の方法は、図24および25に示したように、単一の液滴群または粒径および/または組成が異なる二元もしくは多元液滴群から格子を製造する方法を提供する。これらの格子は、図24cに示したようにこれらの液滴または連続相を重合させることで硬化させることができる。
【0080】
本発明の方法によって、特定の構成成分の封入を行うことが可能となる。例えば、生体細胞をミクロゲル(例:アルギナート)ビーズに封入することができ、1個のビーズ中に入る細胞数を制御することができる。
【0081】
コア/シェル構造に関して、コアは例えばポリマー粒子などの固体粒子であることができ、または液体コアであることでコア/シェル構造が実質的にカプセルとなるようにすることができるか、これらのコア・シェル粒子のコアおよび/またはシェル中に他の粒子を封入した固体もしくは液体コア(例えば、図26に示したもの)であることができる。
【実施例】
【0082】
(実施例1)
高さ92μm、オリフィス幅60μmおよび波形流路幅160μmを有する設計図1aのマイクロ流体リアクターで、ポリ[トリ(ジアクリル酸プロピレングリコール]微粒子を得た。2重量%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を、流量2.0mL/時で外側流路に注入した。4重量%の光開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(HCPK)を含むモノマーであるジアクリル酸トリ(プロピレングリコール)を、中央流路に流量0.12mL/時で注入した。液滴形成後、UV照射することでモノマーを重合させた。粒子の平均粒径は76μmであり、多分散度は3%であった。
【0083】
(実施例2)
高さ92μm、オリフィス幅60μmおよび波形流路幅160μmの図1aに示した設計を有するマイクロ流体リアクターで、ポリマーであるポリTPGDAマイクロロッドを得た。2重量%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を、流量1.0mL/時で外側流路に注入した。4重量%の光開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(HCPK)を含むモノマーであるジアクリル酸トリ(プロピレングリコール)を、中央流路に流量0.40mL/時で注入した。液滴形成後、UV照射することでモノマーを重合させた。ロッドの平均長さは745μm、平均幅は150μmであった。
【0084】
(実施例3)
図16に示した設計を有するマイクロ流体リアクターで、アルギナートミクロゲルを得た。外側流路および中間流路の幅Wcは145μmであり、中央流路の幅Wmは50μmである。オリフィス幅Woは50μmからであった。下流流路幅Wdは、600μmから変動させた。幅WL1およびWL2は50μmである。濃度0.1重量%からのアルギナート水溶液を、中央マイクロチャンネルに導入した(流体A、図16)。濃度0.0.08重量%からの架橋剤塩化カルシウムの水溶液を、2つの中間流路に導入した(流体B、図16)。鉱油を、2つの外側流路に導入した(流体C、図16)。アルギナート溶液の流量は0.4mL/時、CaCl2の流量は0.2mL/時であり、鉱油の流量は2.2mL/時であった。生体ポリマーの溶液と架橋剤の溶液を、内側流路および中間流路の出口で混合し、鉱油によって剪断して、オリフィス通過後に液滴を形成した。その液滴において、アルギナートは、Ca2+イオンとイオン的に架橋して、直径25μmおよび多分散度1.2%のミクロゲル粒子を形成している。ミクロゲル粒子の分散液を、下流流路の出口で回収する。
【0085】
(実施例4)
シリコーンオイル(粘度50.0cP)またはジメタアクリレートオキシプロピルジメチルシロキサン(粘度20cP)を、図1aに示したマイクロ流体装置の外側流路に供給した。2重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液を、図1aに示したマイクロ流体装置の中央流路に供給した。オリフィスの幅は30μmであり、下流マイクロチャンネルの高さおよび幅はそれぞれ87±1.0および1000μmであった。水相の流量は、0.010〜0.170mL/時であり、油相の流量は0.02mL/時であった。この乳化プロセスは、液滴相に加えられた剪断応力によって支配されていた。液滴の体積は、毛細管数Ca=μv/γ[vは水相の特性速度であり、γはオイルと水系流体との間の界面張力値であり、γ=約2.71mN/mであり13、μはオイルまたはモノマーの粘度である]が多くなるにつれて低下した。液滴の体積は、Ca値が1×10−4から5×10−4に上昇したら、11×10−6から2×10−6mLに変化した。10.6×10−6mL以下の体積を有する液滴は、3.0%以下の粒径分布(液滴直径dでの標準偏差を平均直径で割った値と定義)を有していた。MFFDの下流流路での液滴の速度は、連続相での速度より遅かった。Ca=1.6×10−4以下では、円板状液滴が集まって、下流マイクロチャンネルの全体積を満たす二次元最密格子となった。図24には、シリコーンオイル液滴の格子の代表的な光学顕微鏡画像を示している。
【0086】
(実施例5)
3.5±0.5重量%の光開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと混合したジメタクリレートオキシプロピルジメチルシロキサンの液滴(粘度20cP)を、実施例4に記載の方法に従って形成した。ジメタクリレートオキシプロピルジメチルシロキサン流量0.0030mL/時および水相流量0.1000mL/時下で、ジメタクリレートオキシプロピルジメチルシロキサンの円板状液滴の格子が形成された。液滴の列を30〜180秒間UV照射(UVランプ、波長330〜380nmで出力400WのUVAPRINT40C/CE(Dr. K. Hoenle GmbH UV-Technologie))することで光重合させた。図24(a)および(b)に、それぞれ重合の前後の円板状円板の格子を示してある。図24(c)には、モノマー重合後のアスペクト比3.50のポリ(ジメタクリレートオキシプロピルジメチルシロキサン)円板の代表的な走査型顕微鏡画像格子を示している。重合後、円板の体積率は、99.5%から92.4%に低下した。
【0087】
(実施例7)
図20に示した設計を有するマイクロ流体装置で、二元格子を形成した。マイクロ流体装置の高さは、95〜100μmであった。第1のオリフィスの幅は40μmであり、第2のオリフィスの幅は50μmであった。第1の出口の幅は出口であり、下流流路は170μmであり、第2の下流流路の幅は430μmであった。
【0088】
シリコーンオイル(粘度10cP)を中央流路に挿入し、ドデシル硫酸ナトリウム水溶液を外側流路に供給した。2つの液体を第1のオリフィスに通すと、シリコーンオイルの細流が、図21aの模式図に示した機構に従って液滴に細分化された。直径が115〜220μmであるシリコーンオイルの液滴が形成され、水系連続相中に分散した。この分散液を第2のオリフィスに送り、同時に横の流路から第1の出口にヘキサンを加えた。3種類の液体が第2のオリフィスを通過すると、図21cに模式的に示した機構に従って、ヘキサン細流が液滴に細分化された。ヘキサン液滴の直径は95〜400μmであった。第2の下流流路では、シリコーンオイルおよびヘキサンの液滴が、高度の秩序および対称性で二元格子に充填された。図25に、シリコーンオイルおよびヘキサン液滴から得られた格子の例を示してある。水相/ヘキサン/シリコーンオイルの流量は、0.6/0.4/0.4(図25a)、0.1/0.1/0.2mL/時(図25b)、0.4/0.6/0.4mL/時(図25c)、および0.1/0.1/0.01mL/時(図25d)である。
【0089】
(実施例8)
ポリ[(エチレングリコール)フェニルエーテルアクリレート−ペンタエリスリトールトリアクリレート]の生体適合性ポリマー粒子を、高さ92μmおよびオリフィス幅60μmを有する図1に示したマイクロ流体リアクターで得た。2重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液を、流量4.0mL/時で外側流路に注入した。4重量%の光開始剤2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンを含むエチレングリコールフェニルエーテルアクリレートおよびペンタエリスリトールトリアクリレートの混合物(重量比9/1)を、中央流路に流量0.10mL/時で注入した。液滴形成後、UV照射することでモノマーを重合させた。ミクロスフィアの粒径は70μmであり、粒子の多分散度は1.5%であった。
【0090】
(実施例9)
本発明者らは、図5におけるマイクロ流体流動集束装置を用いて、単一コアを有するポリTPGDAカプセルを得た。断面が矩形のオリフィスを、5つの同軸液体注入口流のHf=400μm下流の距離に置いた。オリフィスの幅は、D=60μmであった。上流流路の全幅は、Wu=1300μmであった。下流流路の幅は、Wd=650μmであった。中央流路の幅は、Wo=100μmであり、2つの中間流路の幅はWm=150μmである。2つの外側流路の幅は、Ww=150μmである。流路の均一な深さは、200μmである。
【0091】
3種類の非混和性液体である0.2重量%の界面活性剤ソルビタンモノオレエートSPAN80と混合したシリコンオイル(SO、粘度10cSt)、4重量%の光開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(HCPK)を含むジアクリル酸トリプロピレングリコール(TPGDA)および2重量%のドデシル硫酸ナトリウム水溶液を、マイクロ流体装置のそれぞれ中央、中間および外側の流路に供給した。油相の流量は0.045mL/時であった。モノマー相の流量は0.30mL/時であった。水相の流量は、52.0mL/時であった。
【0092】
これらの条件下で、単一コアを有するモノマー液滴が形成された。重合時に、単一のオイルコアを有するポリTPGDAカプセルを得た(図14e)。カプセルの直径は60μmであり、多分散度は1.8%であった。
【0093】
(実施例10)
本発明者らは、図5でのマイクロ流体流動集束装置を用いて、複数のコアを有するポリTPGDAカプセルを得た。マイクロ流体リアクター、液体および実験の構成は、実施例9と同様とした。油層の流量は、0.52mL/時であった。モノマー相の流量は、Qm=0.11mL/時であった。水相の流量は、24mL/時であった。
【0094】
外側流路中シリコーンオイル流量0.05mL/時、モノマー流量0.32mL/時および2重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液流量24.0mL/時で得られた同軸TPGDA/オイル噴流を細分化することで、複数のオイルコアを有するTPGDAカプセルを得た。
【0095】
液滴をUV照射することで、TPGDA/シリコーンオイルカプセル中のモノマーを重合させた。代表的には、粒子直径は40〜70μmであり、多分散度は2.3%以下であった。
【0096】
(実施例11)
図5に示した設計を有するマイクロ流体装置で、ポリTPGDAプレートを得た。マイクロ流体リアクター、液体および実験の構成は、実施例9に記載の通りであった。0.2重量%スパン−80と混合したシリコーンオイル(粘度10cSt)を流量0.2mL/時で注入し、4重量%の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと混合したジアクリル酸トリ(プロピレングリコール)は総流量0.05mL/時を有しており、2重量%のドデシル硫酸ナトリウム水溶液は総流量12.0mL/時を有していた。シリコーンオイルによって形成された液滴およびTPGDA相をUV照射し、モノマーを重合させた。次に、シリコーンオイルをアセトンで除去した。図14aには、ポリTPGDAプレートの代表的なSEM画像を示してある。プレートの高さは35μmであり、直径は135μmであった。
【0097】
(実施例12)
図20に示した設計を有するマイクロ流体リアクターで、多様な数のTiO2粒子を封入した水コアを有するTPGDA液滴を得た。2つのオリフィスの幅およびマイクロ流体リアクターの高さは、それぞれ40.0μmおよび65.3μmであった。リアクターは、ポリウレタンエラストマーで作製した。0.1重量%セチルトリメチルアンモニウムブロマイド溶液中の濃度5%のTiO2分散液を、流量0.01mL/時で中央流路に供給した。TPGDAを、流量0.10mL/時で外側流路に供給した。水系液体およびモノマー液体を狭いオリフィスに入れた時、TiO2粒子を含む単分散水系液滴が形成された。2重量%ドデシル硫酸ナトリウム溶液を流量4.00mL/時で注入し、3種類の液体を第2のオリフィスに通過させた後、2重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液によって形成された連続相中に分散されたTiO2粒子およびTPGDAシェルを有する水系コアを有するコア・シェル液滴が形成された。
【0098】
要約すると、本発明は、各種の寸法、組成、形状および構造を有するポリマー粒子を製造する新たな道筋を開く方法を提供するものである。最初に、本明細書で開示のように、従来のポリマー合成では容易に再現良く製造することができない形状を有する粒子を合成することが可能であることが明らかになった。マイクロ流体流路の代表的な面積は約2×5cmであることから、大きさが8×5cmであるガラスプレートは、4個までのマイクロ流体リアクターを収容することができ、重合の効率が高くなるか、マイクロ流体リアクターを用いる粒子合成でコンビナトリアルアプローチを用いる可能性が高くなって、その方法の収率が高くなり、粒子合成でのコンビナトリアルアプローチ使用の可能性が高くなる。
【0099】
本明細書で用いる場合、「含む」、「包含」、「含有」および「含有する」という用語は、包括的であって、両端がなく、排他的ではないと解釈すべきである。具体的には、特許請求の範囲を含む本明細書で使用される場合、「含む」、「包含」、「含有」および「含有する」という用語ならびにそれらの変形表現は、指定された特徴、段階または構成要素が含まれることを意味する。これらの用語は、他の特徴、段階または構成要素の存在を排除するものと解釈すべきではない。
【0100】
本発明の好ましい実施形態についての上記の説明は、本発明の原理を説明するために提供されたものであり、本発明を示された特定の実施形態に限定するものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲内の全ての実施形態およびそれらの均等物によって定義されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1a】マイクロ流体リアクターの顕微鏡写真を示す図である。
【図1b】オリフィスにおけるモノマー(液体2)の自己集束およびモノマー液滴形成を示す図である。介在する水相は、色素を含む。
【図1c】水相およびモノマー相の流量の比に対するモノマー液滴(スチレン、メチルアクリレートオキシプロピルジメチルシロキサン、(MAOP−DMS)およびトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)の体積変化を示す図である。モノマー相の流量は、0.04mL/hである。白丸は円板状液滴に相当し、黒丸は球形液滴に相当する。
【図1d−f】図1dは、マイクロ流体リアクターにおけるモノマー液滴のUV開始重合によって得られる球形ポリマー粒子の粒径分布を示す図である。図1eは、マイクロ流体リアクターにおけるモノマー液滴のUV開始重合によって得られる円板状ポリマー粒子の分布を示す図である。図1fは、マイクロ流体リアクターにおけるモノマー液滴のUV開始重合によって得られるロッド状ポリマー粒子の分布を示す図である。
【図2】マイクロ流体リアクターにおいてUV開始重合によって各種形状を有するポリマー粒子を製造するアプローチを示す模式図である。(a)は、ポリマーミクロスフィア製造の模式図である。(b)は、ポリマー楕円体製造の模式図である。(c)は、ポリマー円板製造の模式図である。(d)は、ポリマーロッド製造の模式図である。
【図3】(a)は、マイクロ流体リアクターにおいてUV開始重合によって得られる球形ポリTPGDA粒子の走査型電子顕微鏡画像を示す図である。(b)は、マイクロ流体リアクターにおいてUV開始重合によって得られる球形ポリTPGDA粒子から得られる代表的なコロイド結晶配列を示す図である。(c)は、マイクロ流体リアクターにおいてUV開始重合によって得られるロッド状ポリTPGDA粒子を示す図である。(d)は、マイクロ流体リアクターにおいてUV開始重合によって得られる円板状ポリTPGDA粒子を示す図である。(e)は、マイクロ流体リアクターにおいてUV開始重合によって得られる楕円体ポリTPGDA粒子を示す図である。
【図4】各種組成を有する粒子の代表的な画像を示す図である。(a)は、ポリTPGDA粒子の走査型電子顕微鏡画像である。(b)は、4−アミノ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(NBD)蛍光色素(λexc=488nm)で標識したポリTPGDA粒子の光学蛍光顕微鏡画像である。(c)は、CdSe量子ドット(λexc=454nm)と混合したポリTPGDA粒子の光学蛍光顕微鏡画像である。(d)は、液晶4−シアノ−4′−ペンチルビフェニル(5CB)と混合したポリTPGDAを含むミクロスフィアの偏光顕微鏡画像である。挿入図は、コア・シェル形態を有するポリマー−液晶系マイクロビーズを示す図である。(e)は、多孔質ポリTPGDA粒子の走査型電子顕微鏡画像である。図4fは、カルボキシル化ポリTPGDA−アクリル酸粒子の走査型電子顕微鏡画像を示す図である。図4gは、生体結合ポリTPGDA−アクリル酸粒子の光学蛍光顕微鏡画像を示す図である。
【図5】コア・シェルまたはマルチコア粒子および各種形状を有する粒子を製造するのに使用されるマイクロ流体装置の一部分を示す図である。
【図6】コア・シェルまたはマルチコア粒子および各種形状を有する粒子を製造するのに用いられるマイクロ流体リアクターの光学顕微鏡画像を示す図である。
【図7】コア・シェル液滴の形成の光学顕微鏡画像を示す図である。
【図8】図8aは、連続相の流量の関数としてプロットした同軸オイル−モノマー噴流の平均直径変化の実験値(○)および計算値(□)を示す図である。図8bは、連続相の流量の関数としてプロットしたコア・シェル液滴の平均直径の実験値(○)および計算値(□)を示す図である。
【図9】マイクロ流体流動集束装置で得られる液滴およびコア・シェル液滴のコアの粒径分布を示す図である。
【図10】(a)は、水流量の関数としてのコア(○)、コア・シェル液滴(□)の直径およびシェル厚さ(△)の変化を示す図である。(b)は、モノマー流量の関数としてのコア(○)、コア・シェル液滴(□)の直径およびシェル厚さ(△)変化を示す図である。(c)は、オイル流量の関数としてのコア(○)、コア・シェル液滴(□)の直径およびシェル厚さ(△)の変化を示す図である。
【図11】制御されたコア数を有するコア・シェル液滴形成の模式図である。
【図12】制御されたコア数を有するコア・シェル液滴の光学顕微鏡画像を示す図である。(a)は、コア2個を有するコア・シェル液滴を示す図である。(b)は、コア3個を有するコア・シェル液滴を示す図である。(c)は、コア4個を有するコア・シェル液滴を示す図である。(d)は、多数のコアを有するコア・シェル液滴を示す図である。(e)は、マイクロ流体装置の下流流路を流れるコア2個を有するコア・シェル液滴を示す図である。(f)は、同軸噴流からのコア・シェル液滴の安定な形成を示す図である。
【図13】多数のコアを有するコア・シェル液滴および各種形態を有する液滴の形成の相様図(phase-like diagram)である。
【図14】シリコーンオイルを除去した後に、図13でそれぞれ状態A、B、C、Dで得られた液滴中のTPGDAを重合することで得られたポリマーマイクロビーズの走査型電子顕微鏡画像を示す図である。挿入図は、コア・シェル粒子の断面図である。(f)は、コア3個を有するコア・シェル液滴を重合させることで得られた、コア3個を有するポリTPGDA粒子の断面図である(図6における状態I)。その粒子は、エポキシ系接着剤に包埋されている。スケールバーは、40μmである。
【図15】図1に示した設計を有するマイクロ流体装置でのUV開始重合によって合成されたポリ(エチレングリコール)ジアクリレートヒドロゲル粒子の光学顕微鏡画像を示す図である。
【図16】アルギナートゲル粒子の製造に使用されるマイクロ流体装置の光学顕微鏡画像の一部分を示す光学兼顕微鏡画像である。
【図17】図16に示したマイクロ流体装置でのアルギナートゲル粒子形成の光学顕微鏡画像を示す図である。
【図18】図16に示したマイクロ流体装置で得られたアルギナートゲル粒子の光学顕微鏡画像を示す図である。
【図19】図18で示したアルギナートゲル粒子の粒径変化を示す図である。
【図20】二重オリフィスマイクロ流体装置の模式図である。
【図21】マイクロ流体流動集束装置での液滴形成の2つの異なる機構を示す模式図である。(a)は、流動集束マイクロ流体装置の一部の模式図である。(b)は、オリフィスでの2本の液体細流の流動集束による液滴形成の模式図である。(c)は、オリフィスで剪断することによる連続相からの液滴形成の模式図である。
【図22】二重オリフィスマイクロ流体流動集束装置でのコア・シェル液滴およびヤヌス液滴の形成の模式図である。(a)は、二重オリフィスマイクロ流体流動集束装置でのコア・シェル液滴の形成の模式図である。(b)は、二重オリフィスマイクロ流体流動集束装置でのヤヌス液滴の形成の模式図である。
【図23】二重オリフィスマイクロ流体流動集束装置での異なる液滴群の形成の模式図である。
【図24】重合前後における二重オリフィスマイクロ流体装置で得られたモノマー円板状液滴の最密格子の光学顕微鏡画像を示す図である。(a)は、二重オリフィスマイクロ流体装置で得られたモノマー円板状液滴の二次元格子の光学顕微鏡画像を示す図である。(b)は、図24(a)における液滴の光重合によって得られた円板状粒子の二次元格子の光学顕微鏡画像を示す図である。(c)は、図24(a)における液滴の光重合によって得られた円板状粒子の二次元格子のSEM画像を示す図である。
【図25】図20における二重オリフィスマイクロ流体装置で製造された2種類の液滴群から得られた映進二次元格子の光学顕微鏡画像を示す図である。
【図26】水相に分散された、モノマー液体内に包み込まれた水系TiO2粒子の光学顕微鏡画像(a)〜(c)を示す図である。
【符号の説明】
【0102】
120 装置
122 マイクロリアクター
124 投入端部
126 外側流路
128 内側流路
130 外側流路
136 マイクロ流体流路
138 管
140 排出端部
150 水溶液
152 液体モノマー
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子を形成する方法、装置およびシステムに関するものであり、ある種の態様では、実質的に単分散およびポリマーに基づく粒子を形成するシステムおよび方法に関するものである。場合により本発明は、概して、所定の形状、粒径、形態および/または組成を有する粒子の製造方法に関するものであり、場合によって本発明は、それを製造できるマイクロ流体リアクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
5〜1000μmの範囲の寸法を有するポリマーコロイドが、イオン交換およびクロマトグラフィーカラムで、各種生物用途および医学用途において、較正標準、トナー、コーティングおよび触媒担体として広く用いられている。これら用途のうちの多くにおいて、粒子径および粒径分布が、非常に重要なものである。所定の表面およびバルク特性を有する単分散でサブミクロンの粒径のポリマービーズの製造は、確立された方法である。対照的に、狭い粒径分布を有する大きい粒子の合成は、合成上困難なものである。それは材料特有のものであったり、時間を要するものであり(すなわち、いくつかの段階が必要である)、あるいは得られる粒子の粒径分布が十分狭いものにならない。さらに、従来の重合反応におけるマイクロビーズ形状の制御は、球形粒子の製造に限られている。
【0003】
新たなマイクロ加工技術および微量反応技術の開発における最近の進歩により、反応工学において新たな機会が提供されるようになった。マイクロリアクターは、高い熱および物質移動速度、安全かつ迅速な合成、そして従来のリアクターでは非常に困難な新たな反応経路の開発の可能性を提供するものである。
【0004】
代表的には、マイクロ流体法を活用したポリマー粒子の製造が、2段階プロセスで行われてきた。第1段階では、モノマーまたは液体ポリマーを乳化させて、狭い粒径分布を有する液滴を得た。次の段階では、得られた液滴を、バッチ(すなわち、不連続の)プロセスで硬化させた。
【0005】
いくつか例を挙げると、液体搬送、製品製造、分析を目的とした所望の形態を有する流体、分散液などを形成するための流体操作には、確立された歴史がある。例えば、100マイクロメートル未満の単分散ガスの泡の形成が、毛細管流動集束と称される技術を用いて行われてきた。この技術では、ガスが毛細管から液体浴中に押し出され、その管は小オリフィスより上に位置しており、このオリフィスを通る外部液体流の収縮によって、ガスを集束させて細い噴流とし、次にその噴流が毛細管の不安定性によって壊れて気泡となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マイクロ流体工学は、非常に小さいスケールでの流体の制御が関与する分野である。代表的には、マイクロ流体装置には、流体が内部を流れる非常に小さい流路があり、それらを枝分かれその他の形態で配置することで、流体を互いに合わせたり、流体を異なる位置の方へ方向転換させたり、流体間に層流を発生させたり、流体を希釈する等のことができるようにすることが可能である。「ラボ・オン・チップ」マイクロ流体技術についてかなりの研究が行われており、研究者らは、「チップ」またはマイクロ流体装置での非常に小さいスケールで既知の化学反応もしくは生体反応を行おうとしている。さらに、マクロ規模では必ずしも知られていない新たな技術が、マイクロ流体工学を用いて開発されつつある。マイクロ流体スケールで研究または開発されている技術の例としては、高スループットスクリーニング、医薬送達、化学反応速度測定、ならびに物理、化学および工学の分野における根本的問題の研究などがある。
【0007】
マイクロ流体リアクターは、コンビナトリアル・ケミストリー(化学反応、化学親和力もしくは微細構造形成の迅速な試験が望まれる)、生化学合成および有機化学合成、触媒の迅速なスクリーニング、そして無機粒子(例:シリカまたは半導体量子ドット)の合成での利用において有望であることを示している。急速な熱および物質移動、高い収率および再現性により、既存の化学反応の効率が高まり、従来のリアクターでは困難であると考えられる新たな反応経路を探求することができる。
【0008】
予め設計された粒径、形状、形態および組成を有するポリマー粒子を製造する方法を提供することは、非常に有利であると考えられる。そのような粒子は、いくつか言及すれば、医薬送達、細胞研究、フローサイトメトリー、クロマトグラフィーカラム、触媒および較正標準からの多くの利用分野で用いることが可能であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、所定の粒径および/または形状および/または形態のポリマー粒子の製造方法であって、
a)マイクロ流体流路中に、硬化することができる構成成分を含む第1の流体を注入する段階;
b)少なくとも第2の流体を前記マイクロ流体流路中に注入することで、少なくとも第2の流体内で第1の流体から流体液滴を形成させて、前記マイクロ流体流路を通って該流体液滴を流動させる段階(前記マイクロ流体流路は、前記流体液滴が、前記流路を通って流れている間に硬化して、所定の粒径および/または形状の粒子となるように十分に長いものである。);および
c)所定の粒径および/または形状の前記硬化粒子を前記マイクロ流体流路から回収する段階
を有する前記方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、所定の粒径および/または形状を有するポリマー粒子を製造するための装置において、
1以上の流体注入口、投入口およびマイクロ流体流路を含む投入端部を有するマイクロリアクターを有し、前記マイクロ流体流路は、前記マイクロ流体流路に位置している流体液滴が、前記マイクロ流体流路内で重合する上で十分な滞留時間を有するように十分に長いものであり、
前記マイクロリアクターが、重合性構成成分を含む流体をマイクロリアクター中に注入した時に、該流体が前記マイクロ流体流路内で液滴となるような適切な材料で製造されている前記装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に従って製造されるマイクロ流体リアクターについて、ほんの一例として、添付の図面を参照しながら説明する。
【0012】
定義
本明細書で使用される場合、「ラボ・オン・チップ」という表現は、マイクロリアクターを含み、各種化合物の効率的な高収率合成を行うことが可能な微小装置を意味する。
【0013】
本明細書で使用される場合、「マイクロリアクター」という表現は、少なくとも部分的に、マイクロ技術および精密工学の方法を用いることで作製される微小反応システムを意味する。流体流路などのマイクロリアクターの内部構造の特徴的寸法は、サブミクロンからミリメートル未満の範囲である。
【0014】
本発明の一部の態様は、流体液滴および/または粒子を形成するのに用いることができる1以上のマイクロ流体成分、例えば1以上のマイクロ流体流路を含む装置に関するものである。本明細書で使用される場合、「マイクロ流体」とは、1mm未満の断面寸法を有し、流路の長さ:最大断面寸法が少なくとも10:1である少なくとも1個の流体流路を有する装置を指すことから、本明細書で使用される「マイクロ流体流路」は、これらの基準を満足する流路である。流路の「断面寸法」は、流路内の流体流動の方向に対して垂直に測定される。
【0015】
本明細書で使用される場合、「流路」という用語は、少なくとも部分的に流体流動の方向を決定する基材上もしくは基材内の形状部分を意味する。流路は、いかなる断面形状(円形、楕円形、三角形、不定形、正方形もしくは矩形など)も有することができ、少なくとも部分的に覆われていても良い。流路は、少なくとも約10:1のアスペクト比(長さ:平均断面寸法)を有することもできる。
【0016】
「単分散」という用語を用いる場合、それは以下の意味を有する。分布のうちの少なくとも90%がメジアン粒径の5%以内にある場合、粒子分布は、単分散であると見なすことができる(Particle Size Characterization, Special Publication 960-961, January 2001)。
【0017】
マイクロ流体リアクターは、マイクロリアクターの流路に沿って移動する液体媒体を用いる。
【0018】
本発明は、予め指定された粒径、形状、形態および組成を有する「ラボ・オン・チップ」を用いるポリマー粒子合成の多用途な戦略を開示するものである。この新たなアプローチの固有の特徴は、マイクロチャンネルの制約された幾何形状中でおよび/または介在する媒体の流動の作用によって得られた液滴の高度に非平衡性の形状および形態を固体状態で捕捉することができる点である。本発明者らは、球形、楕円ビーズ、半球、中空粒子、多孔質ビーズ、コア・シェル粒子、円板およびロッドなどの各種形状、形態および構造を有する単分散性の高いポリマーミクロスフィアの合成による多くの方法を示している。
【0019】
本明細書に開示の本発明は、予め選択された形状および/または粒径を有するポリマー粒子を製造する方法を提供する。その方法には、制御された流量の重合性構成成分を含む第1の流体をマイクロ流体流路に注入する段階および制御された流量の第2の流体をマイクロ流体流路に注入する段階を有し、第2の流体は第1の流体と非混和性であることから、第1の流体がマイクロ流体流路中で液滴となる。マイクロ流体流路は、予め選択された寸法を有することで、予め選択された粒径および形状の液滴が得られる。第1の流体の液滴の第2の流体中の混合物を、十分に長い長手方向通路の第1の投入端部に注入することで、液滴は長手方向通路で十分に長い滞留時間を有することから、それらは重合して、予め選択された粒径および形状の粒子となる。予め選択された粒径および形状の重合した液滴を、長手方向流路の第2の排出端部で回収する。
【0020】
本発明の方法において、重合性構成成分は、モノマー、オリゴマーまたは液体ポリマーである。あるいは、第1の流体はガスであることができ、重合性構成成分はモノマー、オリゴマーまたは液体ポリマーである。
【0021】
上記の方法を用い、本発明者らは、蛍光色素で修飾され、無機ナノ粒子(磁気ナノ粒子、金属ナノ粒子または半導体量子ドット)がドープされ、液晶と混合されたポリマーおよびコポリマーマイクロビーズを合成した。得られた粒子は、それ自体で用いることができるか(例えば、生体標識または生体分離において)、または周期的な構造、組成および機能を有する複合材料の作製における構成単位として用いることができる。
【0022】
図1aについて説明すると、所定の形状および/または粒径のポリマー粒子を製造する装置を120で示してあり、それには3つの別個の投入口126、128および130を含む投入端部124ならびに長い管138を有するマイクロ流体流路136の投入口134につながった排出端部分132を有するマイクロリアクター122がある。管138には排出端部140がある。管138の長さは十分長いことから、マイクロ流体流路136内にある流体液滴は、マイクロ流体流路内で重合することができる。
【0023】
流路の高さは、10〜200μmとし、オリフィス幅は15〜100μmとした。2個のデジタル制御されたシリンジポンプ(Harvard Apparatus PhD2000)を用いて、界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム、SDS、2重量%)の水溶液150を外側流路126および130に導入し、液体モノマー152を内側流路128に導入した。いずれかの流動パラメータを変えた後は、系を少なくとも3分間平衡化させた。水溶液150および液体モノマー152によって、オリフィスにおける上流に界面が形成された。モノマー細流の先端がオリフィスでバラバラになり、モノマー液滴が放出された(図1b)。下流流路に続く波形のマイクロ流体流路138で、モノマー液滴が重合した(図1a)。高速度カメラであるフォトメトリクス・クールSNAR ES(Photometrics CoolSNAR ES; Roper Scientific)を搭載したオリンパスBX51光学顕微鏡を用いて画像をキャプチャーし、オリンパス画像解析ソフトウェアでモノマー液滴およびポリマー粒子の寸法を測定した。
【0024】
いくつかの非極性モノマーであるジアクリル酸トリプロピレングリコール(TPGDA)、ジアクリル酸エチレングリコール(EGDMA)、ジメタアクリレートオキシプロピルジメチルシロキサン(MAOP−DMS)、トリアクリル酸ペンタエリスリトール(PETA−3)、テトラアクリル酸ペンタエリスリトール、ジビニルベンゼン(DVB)ならびに他のモノマーもしくは各種添加物とのそれらの混合物を、ポリウレタンマイクロ流体リアクターでの液滴形成に用いた。
【0025】
図1bに、マイクロ流体装置で形成された単分散の高いDVB液滴を示している。図1cに、TPGDA、MAOP−DMSおよびDVBモノマーについて水溶液/モノマー相の流量比の上昇に伴う液滴体積の低下を示してある。液滴の形状は、流量比によっても決まる。流量が50〜60を超えなかった場合、円板状液滴が形成され(すなわち、その直径がマイクロ流体流路の高さを超える)(図1cにおける白丸)、高流量比では、球形液滴が得られた(黒丸)。円板の体積は、モノマーの巨視的性質(粘度およびモノマーの水相との界面張力)によって決まる。しかしながら、流量比が高いと、この差はあまり重要でなくなった。いくつかの液滴形成位置が認められ、そこでは各種粒径および多分散性を有する液滴が形成された。すなわち、オリフィス内(中等度の液体流量、中等度の粒径の液滴形成)、オリフィス背後でそれに近い箇所(低流量、「ドリップ」状態で大きい液滴がゆっくり形成)およびオリフィス背後でそれから遠い箇所(「噴流」状態、小さい液滴の急速な形成)である。
【0026】
この例では、モノマー相流量範囲0.01mL/h〜0.35mL/hで、単分散性の高い液滴が形成された。これらの結果に基づくと、マイクロ流体装置の特定の幾何形状(流路の幅および形状、オリフィスの高さおよび幅)について、特定の粒径および単分散性を有する形成モノマー液滴の表面エネルギーを得ることができた。
【0027】
モノマー液滴のUV開始重合(UVAPRINT 40C/CE, Dr. K. Hoenle GmbH UV-Technologie, Germany、λ=330〜380nm、400W)。UV−開始剤である光開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを、濃度(3.5±0.5重量%)でモノマー中に導入した。波形マイクロチャンネル(図1a)のみに、UV照射を行った。重合時間は、液滴流量によって制御した。代表的には、それは3〜800秒であり、粒子形成速度は粒子250個/秒であった。寸法が15〜200μmであるマイクロビーズを、出口で水溶液で回収した(ミクロスフィアの寸法は、マイクロチャンネル幾何形状を変えることでさらに低下させることができた)。モノマー変換率は、100%に近かった。
【0028】
in situ重合によって、液滴の合体が防止され、単分散固体ビーズの製造ができた。ミクロスフィアの多分散度(標準偏差σを平均粒子直径Dで割った値と定義される)は、3%を超えなかった(多分散指数は1.005未満)。
【0029】
図2a〜2dには、各種形状を有する液滴を製造するためのマイクロ流体リアクターの模式図を示してある。変形していない液滴の直径(d)とオリフィス背後の流路(図1でのもの)の寸法との間の関係が、液滴の形状を決定する。非球形状の液滴は、dの値が、流路寸法のうちの少なくとも一つの値より大きい時に形成される。図2aでは、w>dおよびh>d(wおよびhは、それぞれ流路幅および流路高さである。)の場合、液滴は球形状を取る。連続相の流量が大きいと、球形液滴は、楕円体形状を取る(図2b)。w<dおよびh>dの場合、液滴は円板形状を取り(図2c)、w<d、h<dの場合、液滴はロッド形状を取った(図2d)。そのような非球形液滴におけるアスペクト比は簡便には、液滴体積とマイクロ流体流動集束装置の寸法との間の比を変えることで変動させることができた。
【0030】
図2の模式図について説明すると、図3(a、c〜e)は、各種形状(球形、ロッド状、円板および楕円体)を有する粒子の代表的なSEM画像を示している。液滴の形状が、マイクロ流体リアクターの蛇行流路で固体状態で捕捉された(図1a)。ミクロスフィア、円板およびロッド状は、単分散性が高かった(図1d〜f)。ポリマーミクロスフィアの単分散性が高いことで、コロイド結晶の形成が可能であった(図3(b))。粒子の体積は、相当する液滴の体積よりわずかに小さく(約5〜7%)、それによって蛇行流路中での粒子の目詰まりが防止された。
【0031】
マイクロ流体流路中での液滴の相対流量が、粒子形状を制御する第2の因子であった。例えば、水相流量0.96cm/s(流量比8.3)では、球形液滴が楕円体に変わり、得られたマイクロビーズが「卵のような」構造を有していた(図3b)。同様に、円板は楕円板に変えることができた。
【0032】
図4には、マイクロ流体リアクターで重合した各種組成を有する球形ポリTPGDAミクロスフィアの代表的なSEM画像を示してある。ポリマー粒子の直径は15〜200μmであり、それはさらに、マイクロリアクター設計および/または液滴形成の流体力学条件を変えることで変えることができた。色素標識ポリマー粒子を、UV可視光もしくは近IR色素で標識したモノマーをホストモノマーと共重合させることで合成した(Pham, H.; Gourevich, I.; Oh, J.K.; Jonkman, J.E.N.; Kumacheva, E.; A Multidye Nanostructured Material for Optical Data Storage and Security Data Encryption. Advanced Materials 16, 516-520 (2004))。図2bには、0.01%蛍光色素標識モノマーメタクリル酸4−アミノ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールメチル(NBD−MMA)とTPGDA(Kalinina, O.; Kumacheva, E.; A "Core-Shell" Approach to Producing 3D Polymer Nanocomposites. Macromolecules 32, 4122-4129 (1999))との共重合によって製造したミクロスフィアの光学蛍光顕微鏡画像を示した。さらに、半導体、金属もしくは磁気ナノ粒子と混合したTPGDAを重合させることで、ハイブリッドポリマー−無機マイクロビーズを得た。図4cには、トリ−n−オクチルホスフィンおよびトリ−n−オクチルホスフィンオキサイドの混合物(Murray, C B., D J Norris, M G Bawendi, J. Am. Chem. Soc. 1993, 115, 8706)でキャッピングされた0.3ppmの4.0nm粒径CdSe量子ドットがドープされたミクロスフィアの光学蛍光顕微鏡画像を示してある。4−シアノ−4′−ペンチルビフェニル(5〜20重量%)と混合したTPGDAを重合させることで、液晶(LC)−ポリマー複合マイクロビーズを合成した。図4dには、LC−ポリマービーズの偏光顕微鏡画像を示してある。重合が急速であった場合、低分子結晶をポリTPGDAと均一に混合したが、重合(もしくは液滴流量)が遅い場合は、LCが分離してミクロスフィアコアとなり、ポリマーがシェルを形成した(図4d、挿入図)。TEM画像は、ナノ粒子がポリマービーズで良好に分離されたままであり、より重要な点として、図4cに示したように、ポリマー基材でそれらの蛍光を維持していた。フタル酸ジオクチル(DOP)をTPGDA(1/4重量比)と混合し、TPGDAを重合させ、DOPをアセトンで除去することで、多孔質ミクロスフィアを合成した。図4eでは、ミクロスフィアにおける孔径は約0.90μmであった。
【0033】
各種モノマーの共重合によって、コポリマー粒子を合成した。例えば、TPGDAをそれぞれアクリル酸(AA)またはアミノアクリル酸エステルと共重合させることで、カルボキシル基またはアミノ基(さらなる生体接合に重要)を有するミクロスフィアを得た。図4fには、5重量%のAAと混合したTPGDAの光重合によって合成したポリ(TPGDA−AA)ミクロスフィアを示してある。ビーズの多分散度は2%以下であった。アクリル酸の表面濃度は、12.3モル%であった。
【0034】
コポリマーマイクロビーズの表面上のカルボキシル基の量は、生体分子の免役感作を行うには十分であった。マイクロ流体リアクターで合成されたポリ(TPGDA−AA)粒子の生体接合を、フルオレセインイソチオシアネート(FITC−BSA)で共有結合的に標識したウシ血清アルブミンについて示した。生体接合は、最初にpH=6.0のリン酸緩衝液中30℃で1時間にわたり、ポリマー粒子にFITC−BSAを結合させることで行った。この段階後、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を、FITC−BSAを有するポリ(TPGDA/AA)マイクロビーズの分散液に加えた。次に、その系を30℃で1時間混合した。得られたマイクロビーズの超音波処理および沈降後、それを脱イオン水に再懸濁させた。一連の対照実験を行って、FITC−BSAがマイクロビーズ表面に付着したことを確認した。マイクロビーズを(i)FITC−BSA、(ii)EDC、ならびに(iii)EDCおよびFITC−BSAとともに加熱した。蛍光FITC−BSAのマイクロビーズ表面への付着は、ケース(iii)でのみ起こった。図4gには、マイクロ流体リアクターを用いて合成し、FITC−ウシ血清アルブミンと接合したコポリマーマイクロビーズの代表的な蛍光顕微鏡画像を示してある。
【0035】
無機顔料などの他の無機化学物質を、重合性液体流体に組み込むことで、それらを最終粒子に組み込むことができる。その流体は、予め選択された磁気特性を有する無機粒子、または予め選択された電気的および/または半導体的特性を有する無機粒子、または所望の導電特性を有する無機粒子を含むことで、これらの種類の粒子を予め選択された粒径、組成、形態および形状のポリマー粒子に組み込むこともできる。
【0036】
最終粒子は、それに組み込まれたカーボンナノチューブを有することもできる。さらに、重合性流体中に組み込まれた非重合性液体を有するポリマー粒子を製造して、液体を粒子中に組み込むことができる。例えば、非重合性液体は液晶であることができる。
【0037】
重合性流体中に組み込まれたデンプン、3−ヒドロキシブチラートおよびその誘導体を含むポリマー、3−ヒドロキシバレラートおよびその誘導体を含むポリマー、タンパク質、核酸(DNA、RNA)、アミノ酸、ペプチド、リポソーム、ホスフェート、多糖類、医薬およびその誘導体のような生体適合性製品を含む粒子を製造することができる。
【0038】
マイクロ流体装置中の液滴に外部場を印加することで、液滴の形状および組成を変えることができる。その外部場は、磁場、電場、光または何らかの他の液体の照射であることができる。
【0039】
連続した相/マトリクスの流体は、水、無機化学物質もしくは界面活性剤またはポリマーその他の有機化学物質の水溶液、または非極性オイル液体(例:オイルまたは界面活性剤もしくはポリマーのオイル溶液)であることができる。モノマーまたはオリゴマーは、1以上のビニル基を有するビニル含有モノマー、1以上のアクリル酸基を有するアクリル酸含有モノマー、1以上のアミド基を有するアミド含有モノマーであることができる。その流体は、2つの流体間の界面で反応を生じる反応性化学物質を含むことができる。管中の流体の重合は、化学反応、UVまたはプラズマ照射によって、または電場印加によって行うことができる。
【0040】
図5には、ポリマーカプセルまたはコア/シェル構造および非対称形状を有する粒子の製造に用いられるマイクロ流体リアクターの別の実施形態の一部の模式図155を示してある。図6には、一部を図5に示したマイクロ流体リアクター全体の光学顕微鏡検査写真を示してある。図5において、3種類の液体A、BおよびCがマイクロ流体流動集束装置に供給される。隣接する液体同士は非混和性であり、それらのうちの少なくとも1種類(例えば液体B)が重合性構成成分を含むことが重要である。使用される液体の代表例は、水、モノマーおよびオイル液体であった。代表的には、ドデシル硫酸ナトリウムの2重量%水溶液(液体C)162を2つの外側通路156に注入し、モノマー相(液体B)166およびオイル(液体A)164を内側流路に注入する。
【0041】
マイクロ流体装置155の長軸169方向に作用する圧力勾配が3種類の液体を狭いオリフィス168に押し入れると、水相162のPUエラストマーに対する相対的に高い親和力および加速性の高い外部相の強い収縮のために、モノマー流164がPU形成物の頂部壁および底部壁から引き離される。従って、連続水相がモノマー−オイル細流を囲んで、それが円形断面を取る。同軸オイル−モノマー噴流が下流の流路に進み、小さい粒に分かれる。界面張力の作用下で、これらの小粒は球形状を取り、コア・シェル液滴を形成する(図7)。これら液滴中のモノマー区画は、それを波形マイクロ流体流路でUV照射することで重合する(図6)。
【0042】
この例では、レーリー−プラトー流体力学的不安定性のために、液体円柱形噴流からの液滴形成が生じた。界面張力の作用下で、噴流は不安定となって波長が周囲より大きい摂動状態となり、小滴への細分化によって表面積が低下し、その小滴は球形形状を取った。平衡領域での同軸噴流の平均直径dを、d=[(4/□)(Qdrop/vx,cont)]1/2(1)[式中、vx,contは流路中心での連続相の速度であり、vx,cont=1.5Qcont/Achannelであり、QdropおよびQcontはそれぞれ液滴および連続相の流量であり、Achannelは下流流路の断面積である]としての連続方程式を用いて計算した。噴流の細分化によって形成された液滴の直径d0を、d0=(1.5λbreakupd2)1/3(2)として界面キャピラリー波長□breakupの値[界面キャピラリー波長は、細分化して液滴となる前の同軸噴流内の最後の波の長さである]によって求めた。図8に、連続水相の流量増加に伴う(モノマーおよびオイル相の流量は一定とした)噴流直径およびコア・シェル液滴直径の変化を示してある。同軸噴流の平均直径は10〜80μmで変動し、式(1)で計算したdの値と一致していた(図8、上図)。コア・シェル液滴の平均直径は、20〜150μmで変動し(図8、下図)、式(2)から得られた値に近かった。
【0043】
液滴とコア・シェル液滴の両方のコアとも、非常に高い単分散性を有していた(図9)。コアの大きさ、シェルの厚さおよびコア・シェル粒子の粒径は、他の2つの液体流量を変動させずに一つの液体の流量の流量を変えることで正確に制御することができた(図10)。
【0044】
図11には、複数コアを有する液滴へのアプローチの模式図を示している。液滴当たりのコア数は、液体の相対的流量を変えることで制御した。界面キャピラリー波長λmおよびλ0の値を変動させ、互いに関してキャピラリー波の相を変えた(波動)。このようにして、コア数nが異なるコア・シェル液滴を形成した。モノマー細流およびオイル細流それぞれの界面キャピラリー波長λmおよびλ029の値が近く、位相がそろっている場合、同軸噴流の細分化によって、液滴中心に局在する単一のオイルコアを有する液滴が形成された。そのコアは、キャピラリー波長が「位相がそろってシフト」した場合に、液滴中心に関して非対称に配列した。この構造は、光重合時に緩和しなかった。
【0045】
図12には、図11に示した方法で製造したオイルコア数が異なる単離されたモノマー液滴の代表的な光学顕微鏡画像および同軸噴流の液滴当たり2個のコアを有するコア・シェル液滴への細分化を示している。その流体コアは、モノマーシェルに囲まれたときに合体しなかった。
【0046】
流体力学的条件の三角「相」図を、各種形態を有するコア・シェル液滴の製造に用いた。図13における三角図の必要条件(すなわち、3つの変数の合計が一定であって、1に等しい)を満足するため、各軸上に、3種類の液体の合計流量に対する特定の液体(水、オイルもしくはモノマー相)の流量の比率をプロットした。Q′0=240Q0、Q′m=120Qm、Qtotal=Q′0+Q′m+Qw[Q0、QmおよびQwは、オイル、モノマーおよび水相の流量である]を用いることで、同じ図上で全流量比範囲を網羅した。
【0047】
モノマー液滴発生の初期段階(およびオイル液滴形成完了間近の後)で、噴流の細分化によって、オイル液滴の表面近くに小さいモノマー内包物を有する液滴が形成された(領域A)。モノマー液滴形成のそれより以降の段階では、モノマー内包物の大きさが徐々に大きくなった(領域B)。最終的に、従来のコア・シェル形態を有する単一コア液滴が、液体流量比の広い範囲で発生した(領域D)。オイル液滴発生の初期段階で、噴流の細分化によって、表面モノマー液滴に隣接する小さいオイル内包物を有する液滴が形成された(領域C)。液滴の形態は、流量比Q′0/Qtotalを低くすることによっても制御された。これらの条件下で、コア・シェル液滴中のオイルコアは、液滴中心に関して整列しなかった(領域E)。複数コアを有する液滴が、状態F〜Iで得られた。
【0048】
コア・シェル液滴中でモノマーをin situで光重合させ、いくつかの条件下でシリコーンオイルをアセトンで除去することによって、各種形状および形態を有するポリマー粒子を得た。重合時間は代表的には、2〜800秒であった。モノマーのポリマーへの変換率は、100%に近かった。重合後、粒子の寸法は、相当する液滴と比較して約5〜7%減少した。波形流路では、ポリマー粒子の目詰まりは起こらなかった。マイクロ流体工学リアクターの生産性は、200〜1000s−1であった。粒子の多分散度は2.5%を超えず、相当する液滴の多分散度に近かった。
【0049】
図14(a〜f)に、ポリTPGDA粒子の代表的なSEM画像を示してある。端部切断ミクロスフィア、半球、「穴」を有する粒子および球形カプセル(図14(a〜e))を、図13の三角図のそれぞれ領域A、B、CおよびDで得られた液滴から得た。領域Iで得られた液滴を重合させることで、コア3個を有するミクロスフィア(図14f)を得た。本発明者らの研究では、液滴形態の熱力学主導制御とは対照的に、液体の巨視的特性(例えば、それらの粘度および界面張力)を変えることなく各種形状および形態を有する粒子が得られた。
【0050】
ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートのポリマーヒドロゲルが、図1におけるマイクロ流体リアクターで得られた。この場合には非極性モノマーとは対照的に、マイクロ流体リアクターは、PDMSで作製されたものである。界面活性剤Span−80のシリコーンオイル溶液(粘度5cSt)を外側流路に導入し、界面活性剤セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートおよびヒ光開始剤である2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンの水溶液を、中央の流路に供給した。これらの液体がオリフィスを通過した後、液滴が生成した。次に、波形流路を通って流れる液滴にUV照射することで、液滴中のポリ(エチレングリコール)ジアクリレートを光架橋させた。そのミクロゲル粒子は、2%以下の多分散度を有していた(図15)。
【0051】
本発明には、イオン会合を用いることによるマイクロ流体リアクターの別の実施形態における高単分散性ヒドロゲルビーズの迅速な製造が含まれる。そのヒドロゲルビーズは、粒径範囲10〜1000マイクロメートルのものである。ヒドロゲル粒子の粒径は、溶液の濃度、液体の流量および流量比、ならびにマイクロ流体装置の設計を変えることで容易に操作することができる。
【0052】
ヒドロゲルビーズの製造で用いられる材料の例としては、アルギナートおよびキトサンなどのタンパク質および多糖類のような生体ポリマーがある。図16には、171でのマイクロ流体リアクターの一部の模式図を示してある。モノマー、オリゴマーもしくはポリマーまたはそれらの溶液からなる流体(液体A)190を、中央流路176に供給する。代表的なポリマーには、アルギナートまたはキトサンなどがある。架橋剤溶液(液体B、代表的にはCaCl2の溶液)188を、流路190のいずれかの横にある中間流路に供給する。連続相(液体C、代表的には鉱油)186を、外側流路172に供給する。相当する流路182および176からの出口では、液体AおよびBが混合して溶液が形成され、その溶液が178を通過する時に、その溶液は流路180から出てくる液体Cによって剪断されることから、混合溶液が細分化されて液滴となる。下流流路184では、これらの液滴がゲル化して、ミクロゲルビーズを形成する。
【0053】
図17には、下流流路184でのミクロゲルビーズの形成を示してある。そのミクロゲル粒子は、約2〜3%の多分散度を有しており、図18に示したリアクターの出口で回収した時には安定であった。ミクロゲル粒子の粒径は、連続オイル相の流量を変えることで制御した。図19には、粒子径と連続オイル相流量のプロットを示してある。代表的には、ミクロゲル粒子の直径は、約15〜約250μmであった。
【0054】
図20は、二重オリフィスマイクロ流体装置201の模式図である。流体は、マイクロ流体装置の方向に従って左から右に流れる。2種類の非混和性液体A198およびB196はそれぞれ、マイクロ流体装置の中央および流路194および192に供給される。オリフィス202を通過させられると、液体A198の細流が、図1aの場合と同様にして、液体B中に分散した液滴を形成する。液体Bと非混和性である液体C208は、流路206を通ってマイクロ流体装置の両側から供給される。液体Cは、液体Aと異なっていても同一であっても良い。液体A、BおよびCが第2のオリフィス212からマイクロ流体流路214中に送り込まれると、液体Cが液体B中に分散した液滴を形成するか、または液体Cが連続相となって、液体Bは液体Aの液滴を取り込むか、または液体AおよびBがヤヌス液滴を形成する。ヤヌス液滴または粒子は、球体を形成するよう結合した2つの別個の半球から作られるものである。
【0055】
図21aおよび21bは、図1のマイクロ流体リアクター120を用いた2つの異なる機能による液滴の形成を模式的に示す図である。非混和性液体L1およびL2(例:油相および水相)が狭いオリフィス中に送り込まれる。図21aには、中央の流路に供給された液体からの流動集束機構による液滴形成のダイヤグラム表示を示してある。この機構では、外側流路に供給される連続相は、マイクロ流体装置の材料を濡らす能力が分散剤相より高い。図21bは、外側流路に供給される液体からオリフィスの角部で剪断機構によって起こる液滴の形成の模式図である。この機構では、分散剤相は、マイクロ流体装置の材料を濡らす能力が連続相より高い。
【0056】
図22aおよび22bは、図20におけるマイクロ流体リアクター201の実施形態での液滴の形成を示す図である。図22aにおいて、液体L3は、液体L2と同一であっても異なっていても良く、液体L1と異なっていなければならない。液体L1およびL2は非混和性であり、中等度の界面張力を有する。液体L1およびL2が第1のオリフィス202を通過すると、液体L1の連続相中の液体L2の液滴が形成される。液体L3の注入後、液体L1が液体L2を取り込んでコア・シェル液滴を形成し、液体L3は連続相となる。図22bでは、液滴発生のプロセスは、図22aの場合と同様であるが、液体L1およびL2は非混和性であり、高い界面張力を有する。液体L3は、液体L1およびL2のいずれとも異なっている。この条件下では、液体L2およびL3が、液体L2およびL3の部分からなるヤヌス球形液滴を形成する。
【0057】
図23には、図20の装置201を用いる2つの液滴群230および232の形成の模式を示してあり、その液滴は、選択される処理条件に応じて、粒径および/または組成において異なっていても同様であっても良く、または粒径および組成の両方において全く異なっていても良い。第1の液滴群232は、2種類の非混和性液体L1およびL2を第1のオリフィス202に通過させることで発生する。中央流路(L2)に供給された液体194が、マイクロ流体装置の材料の濡れ性において、中間流路192に供給される連続相液体L1より低い場合、それはL1中に分散する液滴を形成する。次に、この分散液を第2のオリフィス212に送る。同時に、液体L3を、外側流路208からマイクロ流体装置に送る。液体L3がマイクロ流体装置の材料の濡れ性に関してL2より低い場合、それはL1中で分散した第2の液滴群を形成する。それらの液滴は、L2から形成される液滴と同じもしくは異なる粒径および組成を有することができる。
【0058】
図24には、ジメタクリレート・オキシプロピル・ジメチルシロキサン(MAOP−DMS)の液滴の二次元格子の光学顕微鏡検査およびSEM画像を示している。濃度2重量%のドデシル硫酸ナトリウム水溶液およびMAOP−DMSを3.5±0.5重量%の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと混合したものを、それぞれ流量0.0030mL/時および0.1000mL/時でポリウレタン製のマイクロ流体装置(図1)に導入した。2つの液体をオリフィスに通したら、MAOP−DMSが液滴を形成した。液滴の流量は連続相の流量より低く、それらは高度の秩序および対称性で二次元映進格子に充填され始めた。代表的には、マイクロ流体装置の壁に平行に配列された列の数字は、20以下であった。図24aには、MAOP−DMS液滴の格子の例を示してある(図24(a))。その格子にUV照射を30〜60秒間行って、MAOP−DMSを重合させた。固化後、液滴は約5〜7%収縮し、図24(b)に示した形状を取った。円板の体積率は、99.5%から92.4%に低下した。図24(c)には、アスペクト比3.50を有するポリ(MAOP−DMS)円板の代表的SEM画像を示してある。液滴の2D格子の非常に周期的構造が、固体状態で保存されていた。図25には、図20で示した二重オリフィスマイクロ流体装置で形成された二元格子の光学顕微鏡画像を示してある。
【0059】
二元格子は、図23の模式図後に、図20に示した設計を有するマイクロ流体装置で形成された。図25には、シリコーンオイルおよびヘキサン液滴から得られる格子の例を示してある。95〜400μmの範囲の未変形直径を有するヘキサン液滴は、蛍光色素を含んでおり、暗い色に見える。90〜250μmの範囲の未変形直径を有するシリコーンオイルの液滴は、より明るい液滴に見える。連続相(L3)は、ドデシル硫酸ナトリウム水溶液によって形成される。3種類の液体の流量を変えることで、格子の構造を注意深く変えることができた。液体の流量は、3重の役割を果たした。すなわちそれらは、液滴の粒径を制御し、液滴形成の頻度を決定し、下流流路での異なる液滴群の充填能力を決定した。
【0060】
図26には、図20におけるマイクロ流体装置201の実施形態でのコア・シェル液滴の形成を示してある。濃度1〜5重量%を有するTiO2の水系分散液が、2重量%SDSまたは0.1重量%CTAB溶液で得られた。この分散液を中央流路に供給した(液体A)。モノマーTPGDAは、横の流路に供給した(液体B)。液体AおよびBを第1のオリフィスに通した後に、TiO2粒子を取り込んだ水の液滴が形成された。外側流路からの濃度2重量%でのSDSの水溶液(液体C)の注入ならびに液体A、BおよびCのオリフィス通過によって、SDS水溶液中に分散したTiO2粒子を封入したTPGDA液滴が形成された。
【0061】
マイクロ流体リアクター作製に用いた2種類の材料は、Sylgard184PDMS(Dow Corning、代表的にはソフトリソグラフィーで用いられる)および弾性ポリウレタンコポリマーであった。弾性ポリウレタンコポリマーの代表的組成は、(PU−5、重量比: Airthane R PET60D/ポリ(エチレングリコール)、Mn=400/グリセリン100/20.70/2.07)である。このポリマーは、Sylgard184PDMS(Dow Corning、代表的にはソフトリソグラフィーで用いられる)と同様の透明性を有しており、引張強度および引き裂き抵抗を改善した。ポリウレタン形成物の機械的特性および透明度は、PDMSのものに近かった。しかしながら、PDMS表面で測定した場合での接触角100°とは対照的に、SDS溶液の形成物表面との接触角は85°であった。
【0062】
親水性モノマー液滴を製造し、ポリ(ジメチルシロキサン)で作製した疎水性マイクロ流体リアクターで重合させる。非極性モノマー液滴を製造し、ポリウレタンマイクロ流体リアクターで重合させた。マイクロ流体リアクターを作製するためのポリウレタンポリマーは、数平均分子量が300〜30000ダルトンである1以上のポリオールを2個以上の官能基を有する1以上のイソシアネートならびに少なくとも1種類の架橋剤および少なくとも1種類の触媒を含む添加剤と混合することで製造される。
【0063】
そのポリオールは、直鎖もしくは分岐のポリエーテル、すなわち少なくとも2個の水酸基を有するプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキサイド、エピクロルヒドリンもしくはスチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの重付加によって製造されるポリアルキレンオキサイドであることができると考えられる。ポリウレタンは、少なくとも2個の官能性水酸基を有する直鎖もしくは分岐のポリエステル、多官能性カルボン酸およびヒドロキシル化合物の重縮合によって得られる生成物、またはシクロエステルの開環重合を介して得られる生成物である1個のポリオールを有することができる。
【0064】
ポリウレタンは、1種類のポリオールを有することができ、それは少なくとも2個の官能性水酸基を有する直鎖もしくは分岐のポリカーボネートであり、それらは1,4−ブタンジオールおよび/または1,6−ヘキサンジオールなどのジオールを、例えば炭酸ジフェニルなどの炭酸ジアリール、炭酸ジメチルなどの炭酸ジアルキルまたはホスゲンと反応させることで製造することができ、数平均分子量は800〜5000ダルトンである。ポリウレタンは、少なくとも2個の官能性水酸基を有するポリジエンポリオールを有することができ、ポリジエンはポリブタジエンおよびポリイソプレンポリジエンである。ポリオールは、少なくとも2個の官能性水酸基を有する水素化ポリジエンポリオールであることができ、ポリジエンはポリブタジエンおよびポリイソプレンまたはそれらの誘導体である。
【0065】
前記ポリオールは、少なくとも2個の官能性水酸基を有するポリオレフィンポリオールであることができ、ポリオレフィンはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリヘキセン、ポリオクテンおよびそれらのコポリマーである。ポリオールは、少なくとも2個の官能性水酸基を有するポリシクロオレフィンポリオールであることができる。ポリオールは、少なくとも2個の官能性水酸基を有するポリシロキサンポリオール、すなわちカルビノール(ヒドロキシル)終端ポリシロキサンであることができ、そのポリシロキサンは、シロキサン単位を含むホモポリマーまたはコポリマーである。ポリオールは、少なくとも2個の官能性水酸基を有するフッ素、塩素、臭素などのハロゲンを含む脂肪族ポリオール、すなわちカルビノール(ヒドロキシル)終端フルオロケミカルポリオールであることができ、それはフルオロケミカル単位を含むホモポリマーまたはコポリマーである。ポリオールは、窒素、ホスフェート、ケイ素、硫黄、ホウ素、金属元素を含むことができ、少なくとも2個の官能性水酸基を有しており、すなわちカルビノール(ヒドロキシル)終端ポリオールである。
【0066】
上記のように、マイクロ流体リアクターを製造するためのポリウレタンポリマーは、数平均分子量が300〜30000ダルトンである1以上のポリオールまたは1以上のイソシアネートを混合することで製造される。そのイソシアネートは、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であることができる。分子骨格は、芳香族、脂肪族または脂環式であることができる。
【0067】
イソシアネートは、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、フェニレンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサンジイソシアネート(HDI)、テトラメチレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート(メチレンビス(シクロヘキシル−4−イソシアネート)(HMDI)、シクロへキシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、メチルペンタメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン、トリス−(4−イソシアナトフェニル)−チオホスフェート、ポリマー性イソシアネートであることができる。イソシアネートは、少なくとも2個のイソシアネート基を有するプレポリマーであることができ、それは、非化学量論比での上記および下記のポリオールまたは下記のポリアミンと上記のイソシアネートから製造される。
【0068】
架橋剤/鎖延長剤は、分子量が70〜500であり、少なくとも2個の水酸基を有する脂肪族または芳香族ポリオールであることができる。ポリオールには、グリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメタノールプロパン、アンヒドロソルビトール、ヒマシ油およびその誘導体、大豆油およびその誘導体、ヒドロキノン、ビス(ヒドロキシエチル)ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
架橋剤/鎖延長剤は、分子量70〜500で、少なくとも2個のアミノ基ならびにヒドラジンもしくはヒドラジン水和物を有する脂肪族もしくは芳香族ポリアミンであることができる。そのポリアミンには、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレン−ジアミン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノ−ジフェニルメタン(MBOCA)、3,5−ジアミノ−4−クロロ−安息香酸エステル、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、1,2−エタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン)、ピペラジン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、アジピン酸ジヒドラジドまたはジエチレントリアミン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸などがあり得る。
【0070】
触媒には、アミン類、弱酸の塩などの求核性触媒および有機金属化合物などの親電子性触媒ならびにカルボン酸化合物、金属キレート、水素化物、ホスフィン類、4級アンモニウム、アルコラートなどの他の触媒などがあり得る。他の添加剤には、充填剤、難燃剤、抗エージング剤、着色剤、可塑剤、酸化防止剤、UV吸収剤などがある。
【0071】
マイクロ流路で使用されるポリウレタンは、放射線または光硬化ポリウレタンオリゴマー/樹脂であることができる。マイクロ流路は、UV硬化樹脂の露光または圧縮成型である基材(ウェハおよびガラス)上への所定のマスターのプロタイピング法を用いて製造することができる。ポリシロキサンまたはポリウレタンマイクロ流路は、鋳造とそれに続く凝縮による後硬化によって、またはUV架橋によって形成することができる。好適な基板は、シリコン(ウェハ)、ガラスおよびプラスチック(例:RIM(=反応射出成形)またはRRIM(=強化RIM)プロセスによって製造されるASA(アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル)またはASA混合物、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、ABSポリカーボネートABS混合物、ポリカーボネート(PC)およびPC/PBTP(ポリブチレンテレフタレート)、PA(ポリアミド)/ABSおよびポリウレタンなどのスチレンコポリマー)製であることができる。
【0072】
ポリシロキサンまたはポリウレタンの表面を修飾して、ポリマーと基材との間の接着を改善することができる。表面処理を、化学薬剤、プラズマ、放射線、光によって行う。
【0073】
モノマー、ポリマーおよびオリゴマーなどの重合性構成成分を含む流体ならびに流体液滴が重合することを用いて本発明について説明したが、非ポリマー系材料を用いることが可能であることは明らかであろう。そのような場合、マイクロ流体流路を通って通過中に液体は硬化する。流体がポリマー性またはモノマー性構成成分を含む場合、この硬化は、重合または物理的架橋によって起こる。物理的架橋プロセスには、例えばイオン架橋、水素結合、キレート形成または錯体形成などがあり得る。イオン架橋の例を、図16でアルギナートミクロゲルについて示してあり、そのような液体はアルギナートまたはキトサンであることができる。
【0074】
そのプロセスで、マイクロ流体流路中に3種類以上の液体を注入する場合には、球形、ロッド状、円板状および楕円体以外の各種形状を有する粒子を製造することができる。例えば図14に示したように、板状、端部切断球体、半球およびボウル形などの他の形状の粒子を、本明細書で開示の方法によって得ることができる。
【0075】
粒子は、可逆的ゲル化を受けるポリマー液体を液滴相として導入することで得ることができる。この液体は、オリフィス中に送り込まれた時に剪断薄化(すなわち、粘度の低下)を受けるが、液滴形成後にはそれらはゲル化し、ミクロゲル粒子を形成する。
【0076】
マイクロ流体リアクター中での粒子形成のプロセスは、マイクロ流体流路の下流部分での一連の連続ステップで起こり得る。液滴が複数の重合性成分を含む場合、それらのうちの一つがUV照射によって硬化することができ(すなわち、重合することができる)、他のものは化学的プロセス(触媒を用いても用いなくても良い)によって、または異なる種類の光照射を用いることで、または電気化学的プロセスによって硬化することができる。
【0077】
本発明の方法によって、相互貫入ネットワークを有する粒子を製造することも可能である。その化学プロセス(前記の請求範囲のもの)は、第2のプロセスであるUV照射を開始するまでは起こらないものと考えられる。光吸収および発熱反応によって、液滴における温度が上昇し、前記化学反応が生じる。従って、2つの重合が同時に起こり、相互貫入ポリマーネットワークが得られる。各反応の速度によって、粒子形態を制御することができる。
【0078】
本発明の方法は、連続プロセスとして構成することができる。すなわち、連続マイクロ流体リアクター中での連続スループットプロセスで、粒子の製造を行う。あるいは、粒子がマイクロ流体装置を出た後に重合を行うことができる。
【0079】
本発明の方法は、図24および25に示したように、単一の液滴群または粒径および/または組成が異なる二元もしくは多元液滴群から格子を製造する方法を提供する。これらの格子は、図24cに示したようにこれらの液滴または連続相を重合させることで硬化させることができる。
【0080】
本発明の方法によって、特定の構成成分の封入を行うことが可能となる。例えば、生体細胞をミクロゲル(例:アルギナート)ビーズに封入することができ、1個のビーズ中に入る細胞数を制御することができる。
【0081】
コア/シェル構造に関して、コアは例えばポリマー粒子などの固体粒子であることができ、または液体コアであることでコア/シェル構造が実質的にカプセルとなるようにすることができるか、これらのコア・シェル粒子のコアおよび/またはシェル中に他の粒子を封入した固体もしくは液体コア(例えば、図26に示したもの)であることができる。
【実施例】
【0082】
(実施例1)
高さ92μm、オリフィス幅60μmおよび波形流路幅160μmを有する設計図1aのマイクロ流体リアクターで、ポリ[トリ(ジアクリル酸プロピレングリコール]微粒子を得た。2重量%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を、流量2.0mL/時で外側流路に注入した。4重量%の光開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(HCPK)を含むモノマーであるジアクリル酸トリ(プロピレングリコール)を、中央流路に流量0.12mL/時で注入した。液滴形成後、UV照射することでモノマーを重合させた。粒子の平均粒径は76μmであり、多分散度は3%であった。
【0083】
(実施例2)
高さ92μm、オリフィス幅60μmおよび波形流路幅160μmの図1aに示した設計を有するマイクロ流体リアクターで、ポリマーであるポリTPGDAマイクロロッドを得た。2重量%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を、流量1.0mL/時で外側流路に注入した。4重量%の光開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(HCPK)を含むモノマーであるジアクリル酸トリ(プロピレングリコール)を、中央流路に流量0.40mL/時で注入した。液滴形成後、UV照射することでモノマーを重合させた。ロッドの平均長さは745μm、平均幅は150μmであった。
【0084】
(実施例3)
図16に示した設計を有するマイクロ流体リアクターで、アルギナートミクロゲルを得た。外側流路および中間流路の幅Wcは145μmであり、中央流路の幅Wmは50μmである。オリフィス幅Woは50μmからであった。下流流路幅Wdは、600μmから変動させた。幅WL1およびWL2は50μmである。濃度0.1重量%からのアルギナート水溶液を、中央マイクロチャンネルに導入した(流体A、図16)。濃度0.0.08重量%からの架橋剤塩化カルシウムの水溶液を、2つの中間流路に導入した(流体B、図16)。鉱油を、2つの外側流路に導入した(流体C、図16)。アルギナート溶液の流量は0.4mL/時、CaCl2の流量は0.2mL/時であり、鉱油の流量は2.2mL/時であった。生体ポリマーの溶液と架橋剤の溶液を、内側流路および中間流路の出口で混合し、鉱油によって剪断して、オリフィス通過後に液滴を形成した。その液滴において、アルギナートは、Ca2+イオンとイオン的に架橋して、直径25μmおよび多分散度1.2%のミクロゲル粒子を形成している。ミクロゲル粒子の分散液を、下流流路の出口で回収する。
【0085】
(実施例4)
シリコーンオイル(粘度50.0cP)またはジメタアクリレートオキシプロピルジメチルシロキサン(粘度20cP)を、図1aに示したマイクロ流体装置の外側流路に供給した。2重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液を、図1aに示したマイクロ流体装置の中央流路に供給した。オリフィスの幅は30μmであり、下流マイクロチャンネルの高さおよび幅はそれぞれ87±1.0および1000μmであった。水相の流量は、0.010〜0.170mL/時であり、油相の流量は0.02mL/時であった。この乳化プロセスは、液滴相に加えられた剪断応力によって支配されていた。液滴の体積は、毛細管数Ca=μv/γ[vは水相の特性速度であり、γはオイルと水系流体との間の界面張力値であり、γ=約2.71mN/mであり13、μはオイルまたはモノマーの粘度である]が多くなるにつれて低下した。液滴の体積は、Ca値が1×10−4から5×10−4に上昇したら、11×10−6から2×10−6mLに変化した。10.6×10−6mL以下の体積を有する液滴は、3.0%以下の粒径分布(液滴直径dでの標準偏差を平均直径で割った値と定義)を有していた。MFFDの下流流路での液滴の速度は、連続相での速度より遅かった。Ca=1.6×10−4以下では、円板状液滴が集まって、下流マイクロチャンネルの全体積を満たす二次元最密格子となった。図24には、シリコーンオイル液滴の格子の代表的な光学顕微鏡画像を示している。
【0086】
(実施例5)
3.5±0.5重量%の光開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと混合したジメタクリレートオキシプロピルジメチルシロキサンの液滴(粘度20cP)を、実施例4に記載の方法に従って形成した。ジメタクリレートオキシプロピルジメチルシロキサン流量0.0030mL/時および水相流量0.1000mL/時下で、ジメタクリレートオキシプロピルジメチルシロキサンの円板状液滴の格子が形成された。液滴の列を30〜180秒間UV照射(UVランプ、波長330〜380nmで出力400WのUVAPRINT40C/CE(Dr. K. Hoenle GmbH UV-Technologie))することで光重合させた。図24(a)および(b)に、それぞれ重合の前後の円板状円板の格子を示してある。図24(c)には、モノマー重合後のアスペクト比3.50のポリ(ジメタクリレートオキシプロピルジメチルシロキサン)円板の代表的な走査型顕微鏡画像格子を示している。重合後、円板の体積率は、99.5%から92.4%に低下した。
【0087】
(実施例7)
図20に示した設計を有するマイクロ流体装置で、二元格子を形成した。マイクロ流体装置の高さは、95〜100μmであった。第1のオリフィスの幅は40μmであり、第2のオリフィスの幅は50μmであった。第1の出口の幅は出口であり、下流流路は170μmであり、第2の下流流路の幅は430μmであった。
【0088】
シリコーンオイル(粘度10cP)を中央流路に挿入し、ドデシル硫酸ナトリウム水溶液を外側流路に供給した。2つの液体を第1のオリフィスに通すと、シリコーンオイルの細流が、図21aの模式図に示した機構に従って液滴に細分化された。直径が115〜220μmであるシリコーンオイルの液滴が形成され、水系連続相中に分散した。この分散液を第2のオリフィスに送り、同時に横の流路から第1の出口にヘキサンを加えた。3種類の液体が第2のオリフィスを通過すると、図21cに模式的に示した機構に従って、ヘキサン細流が液滴に細分化された。ヘキサン液滴の直径は95〜400μmであった。第2の下流流路では、シリコーンオイルおよびヘキサンの液滴が、高度の秩序および対称性で二元格子に充填された。図25に、シリコーンオイルおよびヘキサン液滴から得られた格子の例を示してある。水相/ヘキサン/シリコーンオイルの流量は、0.6/0.4/0.4(図25a)、0.1/0.1/0.2mL/時(図25b)、0.4/0.6/0.4mL/時(図25c)、および0.1/0.1/0.01mL/時(図25d)である。
【0089】
(実施例8)
ポリ[(エチレングリコール)フェニルエーテルアクリレート−ペンタエリスリトールトリアクリレート]の生体適合性ポリマー粒子を、高さ92μmおよびオリフィス幅60μmを有する図1に示したマイクロ流体リアクターで得た。2重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液を、流量4.0mL/時で外側流路に注入した。4重量%の光開始剤2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンを含むエチレングリコールフェニルエーテルアクリレートおよびペンタエリスリトールトリアクリレートの混合物(重量比9/1)を、中央流路に流量0.10mL/時で注入した。液滴形成後、UV照射することでモノマーを重合させた。ミクロスフィアの粒径は70μmであり、粒子の多分散度は1.5%であった。
【0090】
(実施例9)
本発明者らは、図5におけるマイクロ流体流動集束装置を用いて、単一コアを有するポリTPGDAカプセルを得た。断面が矩形のオリフィスを、5つの同軸液体注入口流のHf=400μm下流の距離に置いた。オリフィスの幅は、D=60μmであった。上流流路の全幅は、Wu=1300μmであった。下流流路の幅は、Wd=650μmであった。中央流路の幅は、Wo=100μmであり、2つの中間流路の幅はWm=150μmである。2つの外側流路の幅は、Ww=150μmである。流路の均一な深さは、200μmである。
【0091】
3種類の非混和性液体である0.2重量%の界面活性剤ソルビタンモノオレエートSPAN80と混合したシリコンオイル(SO、粘度10cSt)、4重量%の光開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(HCPK)を含むジアクリル酸トリプロピレングリコール(TPGDA)および2重量%のドデシル硫酸ナトリウム水溶液を、マイクロ流体装置のそれぞれ中央、中間および外側の流路に供給した。油相の流量は0.045mL/時であった。モノマー相の流量は0.30mL/時であった。水相の流量は、52.0mL/時であった。
【0092】
これらの条件下で、単一コアを有するモノマー液滴が形成された。重合時に、単一のオイルコアを有するポリTPGDAカプセルを得た(図14e)。カプセルの直径は60μmであり、多分散度は1.8%であった。
【0093】
(実施例10)
本発明者らは、図5でのマイクロ流体流動集束装置を用いて、複数のコアを有するポリTPGDAカプセルを得た。マイクロ流体リアクター、液体および実験の構成は、実施例9と同様とした。油層の流量は、0.52mL/時であった。モノマー相の流量は、Qm=0.11mL/時であった。水相の流量は、24mL/時であった。
【0094】
外側流路中シリコーンオイル流量0.05mL/時、モノマー流量0.32mL/時および2重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液流量24.0mL/時で得られた同軸TPGDA/オイル噴流を細分化することで、複数のオイルコアを有するTPGDAカプセルを得た。
【0095】
液滴をUV照射することで、TPGDA/シリコーンオイルカプセル中のモノマーを重合させた。代表的には、粒子直径は40〜70μmであり、多分散度は2.3%以下であった。
【0096】
(実施例11)
図5に示した設計を有するマイクロ流体装置で、ポリTPGDAプレートを得た。マイクロ流体リアクター、液体および実験の構成は、実施例9に記載の通りであった。0.2重量%スパン−80と混合したシリコーンオイル(粘度10cSt)を流量0.2mL/時で注入し、4重量%の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと混合したジアクリル酸トリ(プロピレングリコール)は総流量0.05mL/時を有しており、2重量%のドデシル硫酸ナトリウム水溶液は総流量12.0mL/時を有していた。シリコーンオイルによって形成された液滴およびTPGDA相をUV照射し、モノマーを重合させた。次に、シリコーンオイルをアセトンで除去した。図14aには、ポリTPGDAプレートの代表的なSEM画像を示してある。プレートの高さは35μmであり、直径は135μmであった。
【0097】
(実施例12)
図20に示した設計を有するマイクロ流体リアクターで、多様な数のTiO2粒子を封入した水コアを有するTPGDA液滴を得た。2つのオリフィスの幅およびマイクロ流体リアクターの高さは、それぞれ40.0μmおよび65.3μmであった。リアクターは、ポリウレタンエラストマーで作製した。0.1重量%セチルトリメチルアンモニウムブロマイド溶液中の濃度5%のTiO2分散液を、流量0.01mL/時で中央流路に供給した。TPGDAを、流量0.10mL/時で外側流路に供給した。水系液体およびモノマー液体を狭いオリフィスに入れた時、TiO2粒子を含む単分散水系液滴が形成された。2重量%ドデシル硫酸ナトリウム溶液を流量4.00mL/時で注入し、3種類の液体を第2のオリフィスに通過させた後、2重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液によって形成された連続相中に分散されたTiO2粒子およびTPGDAシェルを有する水系コアを有するコア・シェル液滴が形成された。
【0098】
要約すると、本発明は、各種の寸法、組成、形状および構造を有するポリマー粒子を製造する新たな道筋を開く方法を提供するものである。最初に、本明細書で開示のように、従来のポリマー合成では容易に再現良く製造することができない形状を有する粒子を合成することが可能であることが明らかになった。マイクロ流体流路の代表的な面積は約2×5cmであることから、大きさが8×5cmであるガラスプレートは、4個までのマイクロ流体リアクターを収容することができ、重合の効率が高くなるか、マイクロ流体リアクターを用いる粒子合成でコンビナトリアルアプローチを用いる可能性が高くなって、その方法の収率が高くなり、粒子合成でのコンビナトリアルアプローチ使用の可能性が高くなる。
【0099】
本明細書で用いる場合、「含む」、「包含」、「含有」および「含有する」という用語は、包括的であって、両端がなく、排他的ではないと解釈すべきである。具体的には、特許請求の範囲を含む本明細書で使用される場合、「含む」、「包含」、「含有」および「含有する」という用語ならびにそれらの変形表現は、指定された特徴、段階または構成要素が含まれることを意味する。これらの用語は、他の特徴、段階または構成要素の存在を排除するものと解釈すべきではない。
【0100】
本発明の好ましい実施形態についての上記の説明は、本発明の原理を説明するために提供されたものであり、本発明を示された特定の実施形態に限定するものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲内の全ての実施形態およびそれらの均等物によって定義されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1a】マイクロ流体リアクターの顕微鏡写真を示す図である。
【図1b】オリフィスにおけるモノマー(液体2)の自己集束およびモノマー液滴形成を示す図である。介在する水相は、色素を含む。
【図1c】水相およびモノマー相の流量の比に対するモノマー液滴(スチレン、メチルアクリレートオキシプロピルジメチルシロキサン、(MAOP−DMS)およびトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)の体積変化を示す図である。モノマー相の流量は、0.04mL/hである。白丸は円板状液滴に相当し、黒丸は球形液滴に相当する。
【図1d−f】図1dは、マイクロ流体リアクターにおけるモノマー液滴のUV開始重合によって得られる球形ポリマー粒子の粒径分布を示す図である。図1eは、マイクロ流体リアクターにおけるモノマー液滴のUV開始重合によって得られる円板状ポリマー粒子の分布を示す図である。図1fは、マイクロ流体リアクターにおけるモノマー液滴のUV開始重合によって得られるロッド状ポリマー粒子の分布を示す図である。
【図2】マイクロ流体リアクターにおいてUV開始重合によって各種形状を有するポリマー粒子を製造するアプローチを示す模式図である。(a)は、ポリマーミクロスフィア製造の模式図である。(b)は、ポリマー楕円体製造の模式図である。(c)は、ポリマー円板製造の模式図である。(d)は、ポリマーロッド製造の模式図である。
【図3】(a)は、マイクロ流体リアクターにおいてUV開始重合によって得られる球形ポリTPGDA粒子の走査型電子顕微鏡画像を示す図である。(b)は、マイクロ流体リアクターにおいてUV開始重合によって得られる球形ポリTPGDA粒子から得られる代表的なコロイド結晶配列を示す図である。(c)は、マイクロ流体リアクターにおいてUV開始重合によって得られるロッド状ポリTPGDA粒子を示す図である。(d)は、マイクロ流体リアクターにおいてUV開始重合によって得られる円板状ポリTPGDA粒子を示す図である。(e)は、マイクロ流体リアクターにおいてUV開始重合によって得られる楕円体ポリTPGDA粒子を示す図である。
【図4】各種組成を有する粒子の代表的な画像を示す図である。(a)は、ポリTPGDA粒子の走査型電子顕微鏡画像である。(b)は、4−アミノ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(NBD)蛍光色素(λexc=488nm)で標識したポリTPGDA粒子の光学蛍光顕微鏡画像である。(c)は、CdSe量子ドット(λexc=454nm)と混合したポリTPGDA粒子の光学蛍光顕微鏡画像である。(d)は、液晶4−シアノ−4′−ペンチルビフェニル(5CB)と混合したポリTPGDAを含むミクロスフィアの偏光顕微鏡画像である。挿入図は、コア・シェル形態を有するポリマー−液晶系マイクロビーズを示す図である。(e)は、多孔質ポリTPGDA粒子の走査型電子顕微鏡画像である。図4fは、カルボキシル化ポリTPGDA−アクリル酸粒子の走査型電子顕微鏡画像を示す図である。図4gは、生体結合ポリTPGDA−アクリル酸粒子の光学蛍光顕微鏡画像を示す図である。
【図5】コア・シェルまたはマルチコア粒子および各種形状を有する粒子を製造するのに使用されるマイクロ流体装置の一部分を示す図である。
【図6】コア・シェルまたはマルチコア粒子および各種形状を有する粒子を製造するのに用いられるマイクロ流体リアクターの光学顕微鏡画像を示す図である。
【図7】コア・シェル液滴の形成の光学顕微鏡画像を示す図である。
【図8】図8aは、連続相の流量の関数としてプロットした同軸オイル−モノマー噴流の平均直径変化の実験値(○)および計算値(□)を示す図である。図8bは、連続相の流量の関数としてプロットしたコア・シェル液滴の平均直径の実験値(○)および計算値(□)を示す図である。
【図9】マイクロ流体流動集束装置で得られる液滴およびコア・シェル液滴のコアの粒径分布を示す図である。
【図10】(a)は、水流量の関数としてのコア(○)、コア・シェル液滴(□)の直径およびシェル厚さ(△)の変化を示す図である。(b)は、モノマー流量の関数としてのコア(○)、コア・シェル液滴(□)の直径およびシェル厚さ(△)変化を示す図である。(c)は、オイル流量の関数としてのコア(○)、コア・シェル液滴(□)の直径およびシェル厚さ(△)の変化を示す図である。
【図11】制御されたコア数を有するコア・シェル液滴形成の模式図である。
【図12】制御されたコア数を有するコア・シェル液滴の光学顕微鏡画像を示す図である。(a)は、コア2個を有するコア・シェル液滴を示す図である。(b)は、コア3個を有するコア・シェル液滴を示す図である。(c)は、コア4個を有するコア・シェル液滴を示す図である。(d)は、多数のコアを有するコア・シェル液滴を示す図である。(e)は、マイクロ流体装置の下流流路を流れるコア2個を有するコア・シェル液滴を示す図である。(f)は、同軸噴流からのコア・シェル液滴の安定な形成を示す図である。
【図13】多数のコアを有するコア・シェル液滴および各種形態を有する液滴の形成の相様図(phase-like diagram)である。
【図14】シリコーンオイルを除去した後に、図13でそれぞれ状態A、B、C、Dで得られた液滴中のTPGDAを重合することで得られたポリマーマイクロビーズの走査型電子顕微鏡画像を示す図である。挿入図は、コア・シェル粒子の断面図である。(f)は、コア3個を有するコア・シェル液滴を重合させることで得られた、コア3個を有するポリTPGDA粒子の断面図である(図6における状態I)。その粒子は、エポキシ系接着剤に包埋されている。スケールバーは、40μmである。
【図15】図1に示した設計を有するマイクロ流体装置でのUV開始重合によって合成されたポリ(エチレングリコール)ジアクリレートヒドロゲル粒子の光学顕微鏡画像を示す図である。
【図16】アルギナートゲル粒子の製造に使用されるマイクロ流体装置の光学顕微鏡画像の一部分を示す光学兼顕微鏡画像である。
【図17】図16に示したマイクロ流体装置でのアルギナートゲル粒子形成の光学顕微鏡画像を示す図である。
【図18】図16に示したマイクロ流体装置で得られたアルギナートゲル粒子の光学顕微鏡画像を示す図である。
【図19】図18で示したアルギナートゲル粒子の粒径変化を示す図である。
【図20】二重オリフィスマイクロ流体装置の模式図である。
【図21】マイクロ流体流動集束装置での液滴形成の2つの異なる機構を示す模式図である。(a)は、流動集束マイクロ流体装置の一部の模式図である。(b)は、オリフィスでの2本の液体細流の流動集束による液滴形成の模式図である。(c)は、オリフィスで剪断することによる連続相からの液滴形成の模式図である。
【図22】二重オリフィスマイクロ流体流動集束装置でのコア・シェル液滴およびヤヌス液滴の形成の模式図である。(a)は、二重オリフィスマイクロ流体流動集束装置でのコア・シェル液滴の形成の模式図である。(b)は、二重オリフィスマイクロ流体流動集束装置でのヤヌス液滴の形成の模式図である。
【図23】二重オリフィスマイクロ流体流動集束装置での異なる液滴群の形成の模式図である。
【図24】重合前後における二重オリフィスマイクロ流体装置で得られたモノマー円板状液滴の最密格子の光学顕微鏡画像を示す図である。(a)は、二重オリフィスマイクロ流体装置で得られたモノマー円板状液滴の二次元格子の光学顕微鏡画像を示す図である。(b)は、図24(a)における液滴の光重合によって得られた円板状粒子の二次元格子の光学顕微鏡画像を示す図である。(c)は、図24(a)における液滴の光重合によって得られた円板状粒子の二次元格子のSEM画像を示す図である。
【図25】図20における二重オリフィスマイクロ流体装置で製造された2種類の液滴群から得られた映進二次元格子の光学顕微鏡画像を示す図である。
【図26】水相に分散された、モノマー液体内に包み込まれた水系TiO2粒子の光学顕微鏡画像(a)〜(c)を示す図である。
【符号の説明】
【0102】
120 装置
122 マイクロリアクター
124 投入端部
126 外側流路
128 内側流路
130 外側流路
136 マイクロ流体流路
138 管
140 排出端部
150 水溶液
152 液体モノマー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の粒径および/または形状および/または形態のポリマー粒子の製造方法であって、
a)マイクロ流体流路中に、硬化することができる構成成分を含む第1の流体を注入する段階;
b)少なくとも第2の流体を前記マイクロ流体流路中に注入することで、少なくとも第2の流体内で第1の流体から流体液滴を形成させて、前記マイクロ流体流路と通って該流体液滴を流動させる段階(前記マイクロ流体流路は、前記流体液滴が、前記流路を通って流れている間に硬化して、所定の粒径および/または形状の粒子となる上で十分な長さのものである);および
c)所定の粒径および/または形状の前記硬化粒子を前記マイクロ流体流路から回収する段階
を有する前記方法。
【請求項2】
前記流体液滴がイオン架橋、水素結合、キレート形成、錯体形成およびそれらの組み合わせのいずれかによって硬化する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の流体が重合性構成成分を含み、前記流体液滴が重合により硬化してポリマー粒子になる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロ流体流路が、予め選択された粒径および/または形状を有する流体液滴を製造するよう構築および構成されている請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロ流体流路が、円形、楕円形、三角形、不定形、正方形および矩形のうちのいずれかである断面形状を有する請求項1、2、3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロ流体流路が少なくとも約10:1のアスペクト比(長さ:平均断面寸法)を有する請求項1、2、3、4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のおよび第2の流体がそれぞれ、制御された流量で前記マイクロ流体流路中に注入される請求項1、2、3、4または6に記載の方法。
【請求項8】
段階b)で形成された前記流体液滴の直径が、前記第1のおよび第2の流体の流量および流量比を制御することによって、前記マイクロ流体流路の寸法、粘度などの前記第1および第2の流体の特性および前記第1の流体と第2の流体の間の界面張力を制御することによって、前記重合性構成成分の特性を制御することによって制御され;前記マイクロ流体流路が予め選択された断面形状および寸法を有して構築された部分を有することで、前記流体流路の前記部分を通っての前記流体液滴の移動時に前記流体液滴に所望の形状を与える請求項1、2、3、4、5、6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記流体液滴が直径dを有し、前記マイクロ流体流路の前記部分が、dが前記マイクロ流体流路の寸法のうちの少なくとも一つより大きくなるように選択された予め選択された断面形状および寸法を有して構築されていることで、予め選択された断面形状および寸法を有する前記マイクロ流体流路の前記部分を通っての移動時に非球形形状を有する流体液滴が形成され、前記回収されるポリマー粒子が非球形形状となる請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記非球形液滴のアスペクト比を、流体液滴体積と前記マイクロ流体流路の寸法との間の比を変えることで変動させる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記流体液滴が直径dを有し、前記マイクロ流体流路の前記部分が幅wおよび高さhを有し、前記マイクロ流体流路の前記部分がw>dおよびh>dとなるように構築され、前記マイクロ流体流路を通る前記流体液滴の流量を十分に低く選択して、前記流体液滴が球形形状を維持することで前記回収されるポリマー粒子が球形形状を有するようにする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記流体液滴が直径dを有し、前記マイクロ流体流路の前記部分が幅wおよび高さhを有し、前記マイクロ流体流路の前記部分がw>dおよびh>dとなるように構築され、前記マイクロ流体流路を通る前記流体液滴の流量を十分に高く選択して、前記流体液滴が楕円体形状を獲得することで前記回収されるポリマー粒子が楕円体形状を有するようにする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記流体液滴が直径dを有し、前記マイクロ流体流路の前記部分が幅wおよび高さhを有し、前記マイクロ流体流路の前記部分がw<dおよびh>dとなるように構築された時に、前記液滴が円板状形状を獲得することで前記回収されるポリマー粒子が円板状形状を有するようにする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記流体液滴が直径dを有し、前記マイクロ流体流路の前記部分が幅wおよび高さhを有し、前記マイクロ流体流路の前記部分がw<dおよびh<dとなるように構築された時に、前記液滴がロッド形状を獲得することで前記回収されるポリマー粒子がロッド形状を有するようにする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも第2の流体が少なくとも2種類の非混和性流体を含み、前記2種類の非混和性流体および前記第1の流体を隣り合うマイクロ流体流路注入口に注入し、前記2種類の非混和性流体のうちの一方が、他方の非混和性流体と混合された前記第1の流体を封入することで同軸流を形成し、それが前記マイクロ流体流路を通過時に細分化して小滴となり、前記小滴が、シェルによって包み込まれた球形流体コアを形成し、それがコア/シェル粒子を形成する請求項1〜8、および11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記第1の流体および前記少なくとも2種類の非混和性流体のそれぞれの流量を調節して、前記コアの粒径、シェルの厚さおよびコア・シェル粒子の粒径および粒子当たりのコア数を選択的に制御する段階を有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
中央のマイクロ流体流路注入口、2つの内側マイクロ流体流路(前記中央のマイクロ流体流路注入口は前記2つの内側マイクロ流体流路注入口の間に配置されている)および2つの外側マイクロ流体流路注入口(一方の外側マイクロ流体流路注入口は前記内側マイクロ流体流路注入口の一方に隣接して配置されており、他方の外側マイクロ流体流路注入口は他方の内側マイクロ流体流路注入口に隣接して配置されている)を含む少なくとも5つの隣接するマイクロ流体流路注入口があり、前記第1の流体を前記中央のマイクロ流体流路注入口に注入し、前記少なくとも2種類の非混和性流体のうちの一つを前記2つの内側マイクロ流体流路注入口に注入し、前記少なくとも2種類の非混和性流体のうちの他方を前記2つの外側マイクロ流体流路注入口に注入する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記2つの内側マイクロ流体流路注入口に注入される前記非混和性流体がオイルであり、前記2つの外側マイクロ流体流路注入口に注入される前記非混和性流体が水系流体である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記同軸流が不安定となって、前記同軸流の外周より長い波長を有する摂動を生じ、それによって前記同軸流が細分化されて小滴となる請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の流体および前記少なくとも2種類の流体の相対的流量を調節し、界面キャピラリー波長λmおよびλo(λmは、前記モノマーの界面キャピラリー波長であり、λoは、前記第2の流体の界面キャピラリー波長である)を変動させることで流体液滴当たりのコア数を制御する段階を有する請求項16、17、18または19に記載の方法。
【請求項21】
硬化し得る前記構成成分が、2種類以上のモノマー、オリゴマー、液体ポリマーまたはそれらの組み合わせの混合物を含む重合性構成成分であることで、前記ポリマー粒子がコポリマー粒子となる請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
硬化し得る前記構成成分が、モノマーまたはオリゴマーまたは液体ポリマーを含む重合性構成成分である請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記第2の流体が前記第1の流体と非混和性であることで、前記第1の流体が流体液滴を形成する請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
予め選択された粒径および/または形状および/または形態を有する前記回収された硬化粒子を、製品に形成する請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記マイクロ流体流路がマイクロリアクター中で形成される請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記マイクロリアクターが疎水性材料からなり、前記第1および第2の流体が異なる疎水性度を示し、前記第1および第2の流体のうちの疎水性の低いものが、他方の中で前記流体液滴を形成する請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記マイクロリアクターが親水性材料からなり、前記第1および第2の流体が異なる親水性度を示し、前記第1および第2の流体のうちの親水性の低いものが、他方の中で前記流体液滴を形成する請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記マイクロリアクターが中等度に疎水性の材料からなる請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の流体が、1以上の有機色素、発色団、非線形光学化合物、蛍光色素、無機化学物質、無機粒子、無機顔料、蛍光無機粒子、半導体ナノ粒子(量子ドット)、予め選択された磁気特性を有する無機粒子、予め選択された耐磁特性を有する無機粒子、予め選択された導電性および/または半導体特性を有する無機粒子、カーボンナノチューブ、液晶などの液体を含み、それらが前記硬化粒子中に組み込まれ、該硬化粒子が複合硬化粒子となる請求項1〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
所定の粒径および/または形状および/または形態の前記硬化粒子が単分散性である請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記硬化粒子の約5%以下が、平均寸法の約5%より大きい寸法を有する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記硬化粒子の約3%以下が、平均寸法の約10%より大きい寸法を有する請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記硬化粒子が約100マイクロメートル未満の平均寸法を有する請求項1〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記硬化粒子が、球形、円板、ロッド、卵形、楕円体、プレート、端部切断球形、半球およびボウルからなる群から選択される形状を有する請求項1〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記硬化粒子が中空である請求項1〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記硬化粒子が制御された数のコアを有するコア/シェル構造を有する請求項1〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記第1の流体がカーボンまたはカーボンウォールナノチューブを含有する重合性構成成分を含むことで、前記硬化粒子がカーボンまたはカーボンウォールナノチューブが組み込まれたポリマー粒子となる請求項1〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記第1および第2の流体とともに前記マイクロ流体流路中に非重合性液体を注入する段階を有し、前記非重合性液体の一部が前記ポリマー粒子に組み込まれる請求項1〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記第1の流体が、非重合性液体を含有する重合性構成成分を含み、前記非重合性液体の一部により、非重合性液体が前記ポリマー粒子中に組み込まれたポリマー粒子が製造される請求項1〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記非重合性液体が液晶、ポロゲン、無機または有機粒子の分散液のいずれかである請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
前記第1および第2の流体とともに前記マイクロ流体流路中に非重合性流体を注入する段階を有し、前記硬化粒子が、前記ポリマー粒子中に組み込まれた非重合性流体を有して、多孔質ポリマー粒子が製造される請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の流体が2種類以上のモノマーを含み、前記ポリマー粒子が、前記2種類以上のポリマーのうちの1種類の重合によって形成されたコア、および前記2種類以上のポリマーのうちの他方の少なくとも1種類の重合によって形成された、前記コアを封入するシェルを有する請求項1〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記第1の流体が2種類以上のモノマーを含み、前記ポリマー粒子が、前記ポリマーのうちの1種類以上の重合によって形成された1以上のポリマーコアおよび前記2種類以上のポリマーの他のもののうちの少なくとも1種類の重合によって形成された前記コアを封入するシェルを有する請求項25に記載の方法。
【請求項44】
前記第1の流体が、前記硬化粒子中に組み込まれたデンプン、誘導体、3−ヒドロキシブチラートおよびその誘導体を含むポリマー、3−ヒドロキシバレラートおよびその誘導体を含むポリマー、タンパク質、核酸(DNA、RNA)、アミノ酸(ペプチド)、リポソーム、アガロースおよびその誘導体、キトサンおよびその誘導体、アルギナートおよびその誘導体、ペクチンおよびその誘導体、セルロース誘導体、医薬およびその誘導体の1つ以上を含有する生体適合性製品を含み、前記硬化粒子が複合粒子である請求項1〜43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記マイクロ流体流路中の前記流体液滴を重合剤に曝露することで、前記流体液滴を重合させる請求項1〜43のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記重合剤が、熱、紫外線(UV)、プラズマ、放射線のうちの一つである請求項45に記載の方法。
【請求項47】
磁場、電場、光または他の形態の照射のうちのいずれか1つ以上を含む外部場に、前記マイクロ流体流路中の前記流体液滴を曝露する段階を有する請求項1〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記第1の流体が、化学的または物理的架橋で硬化するゲル前駆体材料を含むことで、硬化時に前記流体液滴がゲル化してミクロゲル粒子を形成する請求項1〜47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記第1の流体が生体細胞を含むことで、前記硬化粒子が生体細胞を含む請求項1〜48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
前記第1の流体が2種類以上のモノマー、ポリマーまたはオリゴマー構成成分を含み、予め選択された順序で前記マイクロ流体流路に沿った異なる位置で少なくとも重合剤に前記マイクロ流体液滴を曝露することで、異なる時点で前記異なる構成成分を連続的に重合させる段階を含む段階的方式で、前記マイクロ流体液滴が硬化する請求項1〜49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
硬化粒子の製造を、連続スループットプロセスで行う請求項1〜50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記コアが固体である請求項15〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記コアが前記シェルによって封入された液体である請求項15〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
前記マイクロ流体流路から所定の粒径および/または形状の前記硬化粒子を回収する前記段階c)が、前記硬化粒子を有する格子構造の形成を含む請求項1〜53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
前記硬化粒子が、所定の粒径および/または形状および/または形態を有する2以上の単分散硬化粒子群を含み、各群が他の群と異なる粒径を有する請求項1〜43のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記2以上の単分散硬化粒子群を回収する前記段階c)が、前記2以上の単分散硬化粒子群を有する格子構造の形成を含む請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記硬化粒子が多孔質である請求項1〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
前記第1の流体がゲル材料を含み、前記マイクロ流体流路中の前記第1および第2の流体の流動条件を制御することで、前記第1の流体が前記第2の流体によって剪断されて剪断薄化を受け、液化し、液滴に細分化し、その液滴が前記マイクロ流体流路中で硬化してミクロゲル粒子を形成する段階を有する請求項1〜57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記マイクロ流体流路がポリウレタン材料製のマイクロ流体リアクター中に形成され、前記ポリウレタン材料が、有機金属および/またはアミン含有触媒を用いてポリオールまたはポリオールの組合せおよびポリイソシアネートまたはポリイソシアネートの組合せから合成される請求項1〜58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
所定の粒径および/または形状を有するポリマー粒子を製造するための装置であって、
1以上の流体注入口、投入口およびマイクロ流体流路を含む投入端部を有するマイクロリアクターを有し、前記マイクロ流体流路は、前記マイクロ流体流路中に位置している流体液滴が、前記マイクロ流体流路内で重合する上で十分な滞留時間を有するように十分に長いものであり、
前記マイクロリアクターが、重合性構成成分を含む流体をマイクロリアクター中に注入した時に、該流体が前記マイクロ流体流路内で液滴となるような適切な材料で製造されている装置。
【請求項61】
前記マイクロリアクターがソフトリソグラフィーによって製造される請求項60に記載の装置。
【請求項62】
前記適切な材料が疎水性材料であり、親水性重合性構成成分を前記装置中に注入することで液滴が形成され、それが重合する請求項60または61に記載の装置。
【請求項63】
前記適切な材料が疎水性材料であり、親水性重合性構成成分を前記装置中に注入することで液滴が形成され、それが重合する請求項60、61または62に記載の装置。
【請求項64】
前記疎水性材料が、ポリシロキサンおよびポリウレタンのうちの一方である請求項63に記載の装置。
【請求項65】
前記ポリウレタン材料が、有機金属および/またはアミン含有触媒を用いてポリオールまたはポリオールの組合せおよびポリイソシアネートまたはポリイソシアネートの組合せから合成される請求項64に記載の装置。
【請求項66】
有機金属および/またはアミン含有触媒を用いてポリオールまたはポリオールの組合せおよびポリイソシアネートまたはポリイソシアネートの組合せから合成されるポリウレタン材料。
【請求項1】
所定の粒径および/または形状および/または形態のポリマー粒子の製造方法であって、
a)マイクロ流体流路中に、硬化することができる構成成分を含む第1の流体を注入する段階;
b)少なくとも第2の流体を前記マイクロ流体流路中に注入することで、少なくとも第2の流体内で第1の流体から流体液滴を形成させて、前記マイクロ流体流路と通って該流体液滴を流動させる段階(前記マイクロ流体流路は、前記流体液滴が、前記流路を通って流れている間に硬化して、所定の粒径および/または形状の粒子となる上で十分な長さのものである);および
c)所定の粒径および/または形状の前記硬化粒子を前記マイクロ流体流路から回収する段階
を有する前記方法。
【請求項2】
前記流体液滴がイオン架橋、水素結合、キレート形成、錯体形成およびそれらの組み合わせのいずれかによって硬化する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の流体が重合性構成成分を含み、前記流体液滴が重合により硬化してポリマー粒子になる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロ流体流路が、予め選択された粒径および/または形状を有する流体液滴を製造するよう構築および構成されている請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロ流体流路が、円形、楕円形、三角形、不定形、正方形および矩形のうちのいずれかである断面形状を有する請求項1、2、3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロ流体流路が少なくとも約10:1のアスペクト比(長さ:平均断面寸法)を有する請求項1、2、3、4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のおよび第2の流体がそれぞれ、制御された流量で前記マイクロ流体流路中に注入される請求項1、2、3、4または6に記載の方法。
【請求項8】
段階b)で形成された前記流体液滴の直径が、前記第1のおよび第2の流体の流量および流量比を制御することによって、前記マイクロ流体流路の寸法、粘度などの前記第1および第2の流体の特性および前記第1の流体と第2の流体の間の界面張力を制御することによって、前記重合性構成成分の特性を制御することによって制御され;前記マイクロ流体流路が予め選択された断面形状および寸法を有して構築された部分を有することで、前記流体流路の前記部分を通っての前記流体液滴の移動時に前記流体液滴に所望の形状を与える請求項1、2、3、4、5、6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記流体液滴が直径dを有し、前記マイクロ流体流路の前記部分が、dが前記マイクロ流体流路の寸法のうちの少なくとも一つより大きくなるように選択された予め選択された断面形状および寸法を有して構築されていることで、予め選択された断面形状および寸法を有する前記マイクロ流体流路の前記部分を通っての移動時に非球形形状を有する流体液滴が形成され、前記回収されるポリマー粒子が非球形形状となる請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記非球形液滴のアスペクト比を、流体液滴体積と前記マイクロ流体流路の寸法との間の比を変えることで変動させる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記流体液滴が直径dを有し、前記マイクロ流体流路の前記部分が幅wおよび高さhを有し、前記マイクロ流体流路の前記部分がw>dおよびh>dとなるように構築され、前記マイクロ流体流路を通る前記流体液滴の流量を十分に低く選択して、前記流体液滴が球形形状を維持することで前記回収されるポリマー粒子が球形形状を有するようにする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記流体液滴が直径dを有し、前記マイクロ流体流路の前記部分が幅wおよび高さhを有し、前記マイクロ流体流路の前記部分がw>dおよびh>dとなるように構築され、前記マイクロ流体流路を通る前記流体液滴の流量を十分に高く選択して、前記流体液滴が楕円体形状を獲得することで前記回収されるポリマー粒子が楕円体形状を有するようにする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記流体液滴が直径dを有し、前記マイクロ流体流路の前記部分が幅wおよび高さhを有し、前記マイクロ流体流路の前記部分がw<dおよびh>dとなるように構築された時に、前記液滴が円板状形状を獲得することで前記回収されるポリマー粒子が円板状形状を有するようにする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記流体液滴が直径dを有し、前記マイクロ流体流路の前記部分が幅wおよび高さhを有し、前記マイクロ流体流路の前記部分がw<dおよびh<dとなるように構築された時に、前記液滴がロッド形状を獲得することで前記回収されるポリマー粒子がロッド形状を有するようにする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも第2の流体が少なくとも2種類の非混和性流体を含み、前記2種類の非混和性流体および前記第1の流体を隣り合うマイクロ流体流路注入口に注入し、前記2種類の非混和性流体のうちの一方が、他方の非混和性流体と混合された前記第1の流体を封入することで同軸流を形成し、それが前記マイクロ流体流路を通過時に細分化して小滴となり、前記小滴が、シェルによって包み込まれた球形流体コアを形成し、それがコア/シェル粒子を形成する請求項1〜8、および11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記第1の流体および前記少なくとも2種類の非混和性流体のそれぞれの流量を調節して、前記コアの粒径、シェルの厚さおよびコア・シェル粒子の粒径および粒子当たりのコア数を選択的に制御する段階を有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
中央のマイクロ流体流路注入口、2つの内側マイクロ流体流路(前記中央のマイクロ流体流路注入口は前記2つの内側マイクロ流体流路注入口の間に配置されている)および2つの外側マイクロ流体流路注入口(一方の外側マイクロ流体流路注入口は前記内側マイクロ流体流路注入口の一方に隣接して配置されており、他方の外側マイクロ流体流路注入口は他方の内側マイクロ流体流路注入口に隣接して配置されている)を含む少なくとも5つの隣接するマイクロ流体流路注入口があり、前記第1の流体を前記中央のマイクロ流体流路注入口に注入し、前記少なくとも2種類の非混和性流体のうちの一つを前記2つの内側マイクロ流体流路注入口に注入し、前記少なくとも2種類の非混和性流体のうちの他方を前記2つの外側マイクロ流体流路注入口に注入する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記2つの内側マイクロ流体流路注入口に注入される前記非混和性流体がオイルであり、前記2つの外側マイクロ流体流路注入口に注入される前記非混和性流体が水系流体である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記同軸流が不安定となって、前記同軸流の外周より長い波長を有する摂動を生じ、それによって前記同軸流が細分化されて小滴となる請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の流体および前記少なくとも2種類の流体の相対的流量を調節し、界面キャピラリー波長λmおよびλo(λmは、前記モノマーの界面キャピラリー波長であり、λoは、前記第2の流体の界面キャピラリー波長である)を変動させることで流体液滴当たりのコア数を制御する段階を有する請求項16、17、18または19に記載の方法。
【請求項21】
硬化し得る前記構成成分が、2種類以上のモノマー、オリゴマー、液体ポリマーまたはそれらの組み合わせの混合物を含む重合性構成成分であることで、前記ポリマー粒子がコポリマー粒子となる請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
硬化し得る前記構成成分が、モノマーまたはオリゴマーまたは液体ポリマーを含む重合性構成成分である請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記第2の流体が前記第1の流体と非混和性であることで、前記第1の流体が流体液滴を形成する請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
予め選択された粒径および/または形状および/または形態を有する前記回収された硬化粒子を、製品に形成する請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記マイクロ流体流路がマイクロリアクター中で形成される請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記マイクロリアクターが疎水性材料からなり、前記第1および第2の流体が異なる疎水性度を示し、前記第1および第2の流体のうちの疎水性の低いものが、他方の中で前記流体液滴を形成する請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記マイクロリアクターが親水性材料からなり、前記第1および第2の流体が異なる親水性度を示し、前記第1および第2の流体のうちの親水性の低いものが、他方の中で前記流体液滴を形成する請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記マイクロリアクターが中等度に疎水性の材料からなる請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の流体が、1以上の有機色素、発色団、非線形光学化合物、蛍光色素、無機化学物質、無機粒子、無機顔料、蛍光無機粒子、半導体ナノ粒子(量子ドット)、予め選択された磁気特性を有する無機粒子、予め選択された耐磁特性を有する無機粒子、予め選択された導電性および/または半導体特性を有する無機粒子、カーボンナノチューブ、液晶などの液体を含み、それらが前記硬化粒子中に組み込まれ、該硬化粒子が複合硬化粒子となる請求項1〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
所定の粒径および/または形状および/または形態の前記硬化粒子が単分散性である請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記硬化粒子の約5%以下が、平均寸法の約5%より大きい寸法を有する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記硬化粒子の約3%以下が、平均寸法の約10%より大きい寸法を有する請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記硬化粒子が約100マイクロメートル未満の平均寸法を有する請求項1〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記硬化粒子が、球形、円板、ロッド、卵形、楕円体、プレート、端部切断球形、半球およびボウルからなる群から選択される形状を有する請求項1〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記硬化粒子が中空である請求項1〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記硬化粒子が制御された数のコアを有するコア/シェル構造を有する請求項1〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記第1の流体がカーボンまたはカーボンウォールナノチューブを含有する重合性構成成分を含むことで、前記硬化粒子がカーボンまたはカーボンウォールナノチューブが組み込まれたポリマー粒子となる請求項1〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記第1および第2の流体とともに前記マイクロ流体流路中に非重合性液体を注入する段階を有し、前記非重合性液体の一部が前記ポリマー粒子に組み込まれる請求項1〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記第1の流体が、非重合性液体を含有する重合性構成成分を含み、前記非重合性液体の一部により、非重合性液体が前記ポリマー粒子中に組み込まれたポリマー粒子が製造される請求項1〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記非重合性液体が液晶、ポロゲン、無機または有機粒子の分散液のいずれかである請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
前記第1および第2の流体とともに前記マイクロ流体流路中に非重合性流体を注入する段階を有し、前記硬化粒子が、前記ポリマー粒子中に組み込まれた非重合性流体を有して、多孔質ポリマー粒子が製造される請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の流体が2種類以上のモノマーを含み、前記ポリマー粒子が、前記2種類以上のポリマーのうちの1種類の重合によって形成されたコア、および前記2種類以上のポリマーのうちの他方の少なくとも1種類の重合によって形成された、前記コアを封入するシェルを有する請求項1〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記第1の流体が2種類以上のモノマーを含み、前記ポリマー粒子が、前記ポリマーのうちの1種類以上の重合によって形成された1以上のポリマーコアおよび前記2種類以上のポリマーの他のもののうちの少なくとも1種類の重合によって形成された前記コアを封入するシェルを有する請求項25に記載の方法。
【請求項44】
前記第1の流体が、前記硬化粒子中に組み込まれたデンプン、誘導体、3−ヒドロキシブチラートおよびその誘導体を含むポリマー、3−ヒドロキシバレラートおよびその誘導体を含むポリマー、タンパク質、核酸(DNA、RNA)、アミノ酸(ペプチド)、リポソーム、アガロースおよびその誘導体、キトサンおよびその誘導体、アルギナートおよびその誘導体、ペクチンおよびその誘導体、セルロース誘導体、医薬およびその誘導体の1つ以上を含有する生体適合性製品を含み、前記硬化粒子が複合粒子である請求項1〜43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記マイクロ流体流路中の前記流体液滴を重合剤に曝露することで、前記流体液滴を重合させる請求項1〜43のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記重合剤が、熱、紫外線(UV)、プラズマ、放射線のうちの一つである請求項45に記載の方法。
【請求項47】
磁場、電場、光または他の形態の照射のうちのいずれか1つ以上を含む外部場に、前記マイクロ流体流路中の前記流体液滴を曝露する段階を有する請求項1〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記第1の流体が、化学的または物理的架橋で硬化するゲル前駆体材料を含むことで、硬化時に前記流体液滴がゲル化してミクロゲル粒子を形成する請求項1〜47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記第1の流体が生体細胞を含むことで、前記硬化粒子が生体細胞を含む請求項1〜48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
前記第1の流体が2種類以上のモノマー、ポリマーまたはオリゴマー構成成分を含み、予め選択された順序で前記マイクロ流体流路に沿った異なる位置で少なくとも重合剤に前記マイクロ流体液滴を曝露することで、異なる時点で前記異なる構成成分を連続的に重合させる段階を含む段階的方式で、前記マイクロ流体液滴が硬化する請求項1〜49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
硬化粒子の製造を、連続スループットプロセスで行う請求項1〜50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記コアが固体である請求項15〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記コアが前記シェルによって封入された液体である請求項15〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
前記マイクロ流体流路から所定の粒径および/または形状の前記硬化粒子を回収する前記段階c)が、前記硬化粒子を有する格子構造の形成を含む請求項1〜53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
前記硬化粒子が、所定の粒径および/または形状および/または形態を有する2以上の単分散硬化粒子群を含み、各群が他の群と異なる粒径を有する請求項1〜43のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記2以上の単分散硬化粒子群を回収する前記段階c)が、前記2以上の単分散硬化粒子群を有する格子構造の形成を含む請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記硬化粒子が多孔質である請求項1〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
前記第1の流体がゲル材料を含み、前記マイクロ流体流路中の前記第1および第2の流体の流動条件を制御することで、前記第1の流体が前記第2の流体によって剪断されて剪断薄化を受け、液化し、液滴に細分化し、その液滴が前記マイクロ流体流路中で硬化してミクロゲル粒子を形成する段階を有する請求項1〜57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記マイクロ流体流路がポリウレタン材料製のマイクロ流体リアクター中に形成され、前記ポリウレタン材料が、有機金属および/またはアミン含有触媒を用いてポリオールまたはポリオールの組合せおよびポリイソシアネートまたはポリイソシアネートの組合せから合成される請求項1〜58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
所定の粒径および/または形状を有するポリマー粒子を製造するための装置であって、
1以上の流体注入口、投入口およびマイクロ流体流路を含む投入端部を有するマイクロリアクターを有し、前記マイクロ流体流路は、前記マイクロ流体流路中に位置している流体液滴が、前記マイクロ流体流路内で重合する上で十分な滞留時間を有するように十分に長いものであり、
前記マイクロリアクターが、重合性構成成分を含む流体をマイクロリアクター中に注入した時に、該流体が前記マイクロ流体流路内で液滴となるような適切な材料で製造されている装置。
【請求項61】
前記マイクロリアクターがソフトリソグラフィーによって製造される請求項60に記載の装置。
【請求項62】
前記適切な材料が疎水性材料であり、親水性重合性構成成分を前記装置中に注入することで液滴が形成され、それが重合する請求項60または61に記載の装置。
【請求項63】
前記適切な材料が疎水性材料であり、親水性重合性構成成分を前記装置中に注入することで液滴が形成され、それが重合する請求項60、61または62に記載の装置。
【請求項64】
前記疎水性材料が、ポリシロキサンおよびポリウレタンのうちの一方である請求項63に記載の装置。
【請求項65】
前記ポリウレタン材料が、有機金属および/またはアミン含有触媒を用いてポリオールまたはポリオールの組合せおよびポリイソシアネートまたはポリイソシアネートの組合せから合成される請求項64に記載の装置。
【請求項66】
有機金属および/またはアミン含有触媒を用いてポリオールまたはポリオールの組合せおよびポリイソシアネートまたはポリイソシアネートの組合せから合成されるポリウレタン材料。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d−f】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図1b】
【図1c】
【図1d−f】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公表番号】特表2007−533798(P2007−533798A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508702(P2007−508702)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000627
【国際公開番号】WO2005/103106
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(501468529)
【出願人】(506353459)
【出願人】(506353460)
【出願人】(506353471)
【出願人】(506353482)
【出願人】(506353493)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000627
【国際公開番号】WO2005/103106
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(501468529)
【出願人】(506353459)
【出願人】(506353460)
【出願人】(506353471)
【出願人】(506353482)
【出願人】(506353493)
【Fターム(参考)】
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