説明

特定メディアデータの破棄を制御する送信装置及び送信プログラム

【課題】 一方のメディアデータの伝送における遅延変動に影響を与えない程度に、他方のメディアデータの伝送を制御する送信装置及び送信プログラムを提供する。
【解決手段】 音声データを一時的に蓄積する第1のバッファと、映像データを一時的に蓄積する第2のバッファと、第1のバッファから出力された音声データと、第2のバッファから出力された映像データとを1系統の信号線に出力するための多重化手段と、第1のバッファの第1のバッファ蓄積量を監視し、該第1のバッファ蓄積量が第1の閾値を越えた際に、映像データを破棄するように第2のバッファへ指示する送信バッファ監視手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定メディアデータの破棄を制御する送信装置及び送信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
異なるメディアデータの送信が可能な送信装置は、同時に発生するメディアデータ毎に
符号化し、所定サイズのフレームに構成し、そのフレームをネットワークへ送信する。一方、受信装置は、受信したフレーム単位で、異なるメディアデコーダを用いてメディアデータを復号する。メディアデータ毎に、所定サイズをどのように決定するかが、マルチメディアデータの多重化においては重要である。
【0003】
図1は、異なるメディアデータを送信する送信装置の機能構成図である。
【0004】
送信装置1は、映像データ及び音声データをリアルタイムで符号化して送信する。送信装置1は、映像信号を出力するカメラ4と、音声信号を出力するマイク5とに接続され、IP(Internet Protocol)ネットワーク3を介して受信装置2と通信する。
【0005】
送信装置1は、映像データについて、フォーマット変換部101と、映像エンコーダ部102と、映像データ用バッファ103と、RTP(Real-time Transport Protocol)ヘッダ付加部104とを有する。また、音声データについて、増幅器110と、音声エンコーダ部108と、音声データ用バッファ107と、RTPヘッダ付加部106とを有する。更に、各々のUDPポート番号が割り当てられた複数のメディアデータを多重化してIPネットワーク3に出力するUDP(User Datagram Protocol)/IPプロトコルスタック部105を有する。
【0006】
カメラ4から出力された映像信号は、フォーマット変換部101によって圧縮符号化に適した映像フォーマットに変換され、映像エンコーダ部102によって圧縮符号化される。その方式は、1フレーム(1画面)を単位として符号化データを生成するものであって、例えばISO/IEC(International Organization for Standardization/International Electrotechnical Commission) MPEG−4(Moving Picture Experts Group-4)ビジュアルがある。低ビットレートのMPEG−4によれば、1フレームは、例えば100m秒間隔(毎秒10フレーム)となる。生成されたビットストリームデータは、映像データ用バッファ103に入力される。RTPヘッダ付加部104は、バッファ103から取り出した映像データのフレーム毎にRTPヘッダを付加する。そのRTPパケットは、UDP/IPプロトコルスタック部105によってUDP及びIPヘッダが付加され、IPネットワーク3へ送信される。
【0007】
一方、マイク5から出力された音声信号は、増幅器110によって増幅され、A/D(Analog/Digital)変換部109によって伝送可能なビット列に変換される。次に、その音声データは、音声エンコーダ部108によって圧縮符号化される。その方式は、予め決められた時間長を1フレームとして符号化データを生成するものであって、例えば3GPP(3rd Generation Partnership Project) AMR(Adaptive Multi Rate)がある。AMR方式においては、1フレームは20m秒となる。生成されたビットストリームは、音声データ用バッファ107に入力される。RTPヘッダ付加部106は、バッファ107から取り出した映像データのフレーム毎にRTPヘッダを付加する。そのRTPパケットは、UDP/IPプロトコルスタック部105によってUDP及びIPヘッダが付加され、IPネットワーク3へ送信される。
【0008】
受信装置2は、データパケットを受信するためにIPネットワーク3に接続され、受信したデータパケットのメディアデータに応じて復号する。
【0009】
表1は、従来技術におけるパケット多重化フレームのデータ構造である。
【表1】

【0010】
従来技術によれば、音声データのフレームと、映像データのフレームとは別々に必要となる。これは、フレーム毎に、そのメディアデータに応じたデコーダによって復号させるためである。
【0011】
前述したような従来技術によれば、生成されるRTPパケットは以下のようになる。ここで、符号化パラメータとして、低い伝送レート(64kbit/秒)における一般的な値を想定する。
映像の符号化ビットレート:32kbit/秒、フレームレート:10枚/秒
音声の符号化ビットレート:6800bit/秒、フレーム長:20m秒
RTPヘッダサイズ:12byte
UDPヘッダ:8byte
IPヘッダ:20byte
【0012】
映像データについては、以下のようになる。
映像の符号化ビットレート:32kbit/秒÷8bit = 4kbyte/秒
秒当たりの伝送フレーム数:10フレーム/秒
映像データパケットの伝送間隔:1秒/10フレーム = 100m秒
フレームレート:4kbyte/秒÷10フレーム/秒 = 400byte/フレーム
映像の1パケット:400byte+12byte+8byte+20byte = 440byte
映像1パケットの伝送時間:440byte×8bit÷64kbit/秒 = 55m秒
【0013】
音声データについては、以下のようになる。
音声の符号化ビットレート:6800bit/秒÷8bit = 850byte/秒
秒当たりの伝送フレーム数:50フレーム/秒
音声データパケットの伝送間隔:1秒/50フレーム = 20m秒
1フレーム当たりのバイト数:850byte/秒×20m秒 = 17byte/フレーム
音声の1パケット:17byte+12byte+8byte+20byte = 57byte
音声1パケットの伝送時間:57byte×8bit÷64kbit/秒 = 7.125m秒
【0014】
音声データパケットは20m秒間隔で送信され、映像データパケットは100m秒間隔で送信されるので、音声データパケットの送信の5回に1回の割合で、映像データパケットの送信が割り込むこととなる。
【0015】
図2は、従来技術におけるフレームの伝送シーケンス図である。
【0016】
音声データパケットは20m秒毎に送信され、映像データパケットは100m秒毎に送信される。音声データパケットは、40byteのヘッダ(IP、UDP、RTP)とデータ部分とからなる。データ部分が17byteとすると、伝送に7.125m秒を要する。映像データパケットは、40byteのヘッダとデータ部分とからなる。データ部分が400byteとすると、伝送に55m秒を要する。
【0017】
図2によれば、例えば、映像データパケットV1の送信の直後に、音声データパケットA3が送信されたとする。映像データパケットV1は、送信装置から送信されてから55m秒後に、受信装置に到着する。一方、音声データパケットA3は、更に7.125m秒後、即ち送信装置から送信されてから62.125m秒後に、受信装置に到着する。このために、映像データパケットによって割り込まれた音声データパケットは、送信装置の送出間隔20m秒に対し、受信装置に受信された時は62m秒後ということになる。その後、音声データパケットA4,A5,A6,A7が連続して、受信装置に到着する。音声データパケットの伝送に要する時間7m秒は、送出間隔20m秒に比べて十分小さいため、受信装置における到着間隔はやがて元に戻ることとなるが、その後、再度、映像データパケットが音声データパケットの間に割り込むため、到着遅延の変動が生じる。
【0018】
音声データは、アナログ信号に戻して再生する際に、連続的でなければならない。この点において、映像データのようなフレーム単位の離散的データと異なる。このため、受信装置は、音声データパケットの最大到着遅延量に合わせて、予めバッファに蓄積してから再生する。このような音声データパケットの遅延変動は、受信側に大きなバッファ蓄積を要求することとなり、伝送遅延全体を増大させるものとなる。
【0019】
更に、従来技術によれば、RTP、UDP、IPのヘッダを、映像データパケット及び音声データパケットそれぞれ独立に付加する必要がある。従って、
(12byte+8byte+20byte)×8bit×(50音声フレーム+10映像フレーム)
= 19.2kbit/秒
ものヘッダによるオーバヘッドを要する。
【0020】
また、音声データパケットの遅延変動を抑えるために、映像データパケットを分割し、映像データパケットと音声データパケットとを交互に送信するという方法もある。この場合、両パケットが等間隔で送信されるため、音声データパケットの到着時間ゆらぎを回避することは可能となる。しかしながら、この方法によれば、ヘッダによるオーバヘッドは、更に大きくなり、伝送効率が極めて低下する。
(12byte+8byte+20byte)×8bit×(50音声フレーム+50映像フレーム)
= 32kbit/秒
【0021】
先行公知文献としては、RTPについて規定したIETF RFC3550(非特許文献1参照)、MPEG−4をRTPに乗せたフォーマットを規定したIETF RFC3016(非特許文献2参照)、AMRをRTPに乗せたフォーマットを規定したIETF RFC3267(非特許文献3参照)がある。
【0022】
【非特許文献1】IETF(Internet Engineering Task Force) RFC(Request For Comment)3550
【非特許文献2】IETF RFC3016
【非特許文献3】IETF RFC3267
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
多重化フレームのビットレートよりも、伝送路のビットレートの方が低い場合、多重化バッファに蓄積される多重化フレームの数が時間と共に増大する。帯域保証のないインターネットや、無線環境が変化しやすいモバイルネットワークにおいては、伝送路のビットレートの変動が著しい。リアルタイム通信における音声データについては、音声データが所望の時間間隔で到着しないことによる音途切れが発生する。また、映像データについては、フレーム間隔のゆらぎ及び表示遅延として、利用者に知覚されることとなる。このように、従来技術によれば、一方のメディアデータの伝送が、他方のメディアデータの伝送における遅延変動に影響を与えることとなる。
【0024】
特に、IPテレビ電話等のリアルタイム通信においては、会話成立のために、少なくとも音声データは遅滞なく伝送される必要がある。このため、伝送路のビットレートが変動するような環境下においては、音声データを確実に伝送するための制御が必要となる。
【0025】
従って、本発明は、一方のメディアデータの伝送における遅延変動に影響を与えない程度に、他方のメディアデータの伝送を制御する送信装置及び送信プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の送信装置によれば、
送信すべき第1のメディアデータを一時的に蓄積する第1のバッファと、
送信すべき第2のメディアデータを一時的に蓄積する第2のバッファと、
第1のバッファから出力された第1のメディアデータと、第2のバッファから出力された第2のメディアデータとを1系統の信号線に出力するための多重化手段と、
第1のバッファの第1のバッファ蓄積量を監視し、該第1のバッファ蓄積量が第1の閾値を越えた際に、第2のメディアデータを破棄するように第2のバッファへ指示する送信バッファ監視手段と
を有することを特徴とする。
【0027】
本発明の送信装置における他の実施形態によれば、
第1のバッファ蓄積量が第1の閾値を越えた後、第1のバッファ蓄積量が第2の閾値以下となる状態が所定時間TMだけ経過した際に、伝送路レートの測定を開始する伝送レート測定手段を更に有し、
送信バッファ監視手段は、伝送路レートが所定レート以上に回復したとき、第2のメディアデータの破棄を停止するように第2のバッファに指示することも好ましい。
【0028】
本発明の送信装置によれば、
送信すべき第2のメディアデータを一時的に蓄積する第2のバッファと
第1のメディアデータと、第2のバッファから出力された第2のメディアデータとを1系統の信号線に出力するための多重化手段と、
多重化手段から出力されたフレームを一時的に蓄積する第3のバッファと、
第3のバッファの第3のバッファ蓄積量を監視し、該第3のバッファ蓄積量が送信可能最大サイズよりも少ない場合、その差分サイズ分の第2のメディアデータが転送されるように第2のバッファを制御する多重化サイズ決定手段と
を有することを特徴とする。
【0029】
本発明の送信装置における他の実施形態によれば、
第3のバッファから出力されるフレームをネットワークへ送信するネットワークインタフェース手段と、
ネットワークインタフェース手段から得られる伝送路状態パラメータに基づいて送信可能最大サイズを算出し、該送信可能最大サイズを多重化サイズ決定手段へ出力する伝送路レート推定手段と
を更に有することも好ましい。
【0030】
また、本発明の送信装置における他の実施形態によれば、
第2のバッファの第2のバッファ蓄積量を監視し、該第2のバッファ蓄積量が第2の閾値を越えた場合、第2のメディアデータを破棄するように第2のバッファに指示する第2のバッファ監視手段を更に有することも好ましい。
【0031】
更に、本発明の送信装置における他の実施形態によれば、
第3のバッファの第3のバッファ蓄積量を監視し、該第3のバッファ蓄積量が第3の閾値以下となった場合、リセット信号を第2のバッファ監視手段へ出力する多重化バッファ監視手段を更に有し、
第2のバッファ監視手段は、リセット信号を入力した際に、第2のメディアデータの破棄を停止するように第2のバッファへ指示することも好ましい。
【0032】
更に、本発明の送信装置における他の実施形態によれば、
第2のバッファは、アクセスユニット単位で配列に構成されており、
第2のバッファは、第2のバッファ内のデータを破棄する際、最も古いアクセスユニット情報はバッファに残し、その後に続くアクセスユニットを破棄することも好ましい。
【0033】
更に、本発明の送信装置における他の実施形態によれば、
映像バッファ監視手段が第2のバッファに対して映像データの破棄を指示し、破棄の継続時間が所定閾値時間を越えた場合、その状態を外部に出力する経過時間判定手段を更に有することも好ましい。
【0034】
本発明の送信装置によれば、
送信すべき第1のメディアデータを一時的に蓄積する第1のバッファと、
送信すべき第2のメディアデータを一時的に蓄積する第2のバッファと
UDPヘッダに続いて、シリアル番号部と、第1のメディアデータサイズ部と、該サイズ部に格納された長さの第1のメディアデータと、第2のメディアデータとを含むデータ構造を有する、異なるメディアデータのパケット多重化フレームを生成する多重化手段と、
多重化手段によって生成されたフレームを一時的に蓄積する第3のバッファと、
第3のバッファに蓄積されたフレームから、シリアル番号部と、第1のメディアデータサイズ部と、該サイズ部に格納された長さの第1のメディアデータと、第2のメディアデータとに分離し、分離された第2のメディアデータを破棄するパケット分離手段と、
分離されたシリアル番号部と、第1のメディアデータサイズ部と、該サイズ部に格納された長さの第1のメディアデータとを含むデータ構造を有するフレームを再度生成し、該フレームを第3のバッファに入力する再多重化手段と、
第3のバッファとパケット分離手段との間に接続されたスイッチと、
第3のバッファに対する第1の閾値を蓄積し、第3のバッファに蓄積されたフレーム数を監視し、該フレーム数が第1の閾値を越えた際に、第2のメディアデータの転送を停止するべく第2のバッファへ指示し、スイッチをONにして第3のバッファに蓄積されたフレームをパケット分離手段へ入力するように制御する送信バッファ監視手段と
を有することを特徴とする。
【0035】
本発明の送信装置における他の実施形態によれば、
第3のバッファに蓄積されたフレーム数が第1の閾値を越えた後、第3のバッファに蓄積されたフレーム数が第2の閾値以下となる状態が所定時間TMだけ経過した際に、伝送路レートの測定を開始する伝送レート測定手段と、
送信バッファ監視手段は、伝送路レートが所定レート以上に回復したとき、第3のバッファに蓄積されたフレームの破棄を停止するべく、第2のメディアデータの転送を再開するように第2のバッファへ指示し、スイッチをOFFにして第3のバッファに蓄積されたフレームを送信するように制御することも好ましい。
【0036】
また、本発明の送信装置における他の実施形態によれば、
多重化手段は、
シリアル番号を送出する加算手段と、
第1のメディアデータを一時的に蓄積する第1のメモリと、
第2のメディアデータを一時的に蓄積する第2のメモリと、
加算手段から出力されたシリアル番号を、フレームのシリアル番号部に含め、次に、第1のメモリから出力された第1のメディアデータサイズを、フレームの第1のメディアデータサイズ部に含め、次に、第1のメモリから出力された、第1のメディアデータサイズ部に格納された長さの第1のメディアデータを含め、次に、第2のメモリから出力された第2のメディアデータを含めるようにした多重化パケットの生成を繰り返す多重パケット生成手段と
を有することも好ましい。
【0037】
更に、本発明の送信装置における他の実施形態によれば、第1のメディアデータは音声データであって、第2のメディアデータは映像データであってもよい。
【0038】
本発明の送信プログラムによれば、
送信すべき第1のメディアデータを一時的に蓄積する第1のバッファと、
送信すべき第2のメディアデータを一時的に蓄積する第2のバッファと、
第1のバッファから出力された第1のメディアデータと、第2のバッファから出力された第2のメディアデータとを1系統の信号線に出力するための多重化手段と、
第1のバッファの第1のバッファ蓄積量を監視し、該第1のバッファ蓄積量が第1の閾値を越えた際に、第2のメディアデータを破棄するように第2のバッファへ指示する送信バッファ監視手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0039】
本発明の送信プログラムによれば、
送信すべき第2のメディアデータを一時的に蓄積する第2のバッファと
第1のメディアデータと、第2のバッファから出力された第2のメディアデータとを1系統の信号線に出力するための多重化手段と、
多重化手段から出力されたフレームを一時的に蓄積する第3のバッファと、
第3のバッファの第3のバッファ蓄積量を監視し、該第3のバッファ蓄積量が送信可能最大サイズよりも少ない場合、その差分サイズ分の第2のメディアデータが転送されるように第2のバッファを制御する多重化サイズ決定手段と
としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0040】
本発明の送信プログラムによれば、
送信すべき第1のメディアデータを一時的に蓄積する第1のバッファと、
送信すべき第2のメディアデータを一時的に蓄積する第2のバッファと
UDPヘッダに続いて、シリアル番号部と、第1のメディアデータサイズ部と、該サイズ部に格納された長さの第1のメディアデータと、第2のメディアデータとを含むデータ構造を有する、異なるメディアデータのパケット多重化フレームを生成する多重化手段と、
多重化手段によって生成されたフレームを一時的に蓄積する第3のバッファと、
第3のバッファに蓄積されたフレームから、シリアル番号部と、第1のメディアデータサイズ部と、該サイズ部に格納された長さの第1のメディアデータと、第2のメディアデータとに分離し、分離された第2のメディアデータを破棄するパケット分離手段と、
分離されたシリアル番号部と、第1のメディアデータサイズ部と、該サイズ部に格納された長さの第1のメディアデータとを含むデータ構造を有するフレームを再度生成し、該フレームを第3のバッファに入力する再多重化手段と、
第3のバッファとパケット分離手段との間に接続されたスイッチと、
第3のバッファに対する第1の閾値を蓄積し、第3のバッファに蓄積されたフレーム数を監視し、該フレーム数が第1の閾値を越えた際に、第2のメディアデータの転送を停止するべく第2のバッファへ指示し、スイッチをONにして第3のバッファに蓄積されたフレームをパケット分離手段へ入力するように制御する送信バッファ監視手段と
としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0041】
伝送路レートが低下することによりバッファからの抜き取り速度が低下し、バッファレベルは徐々に高くなる。このような状況下で音声会話を優先させる場合に、既に映像用データバッファに蓄積された映像データを破棄することにより、ビットレートの低い音声データのみを伝送する。一般に、音声データのビットレートは、映像データのビットレートと比較して十分に小さい。従って、伝送路レートが低下している状態においてもデータが過剰に生成されることなく、安定した音声会話が実現される。
【0042】
また、本発明によれば、時々刻々と変化するネットワークシステムにおいても、送出可能なデータサイズに対して過不足のない多重化データの生成が可能となる。これにより、ネットワークの利用効率を最大限に保つと共に、多重化データ生成が過剰に生成されることによる遅延の蓄積を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下では、図面を用いて、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0044】
図3は、本発明における送信装置の第1の機能構成図である。
【0045】
図3の送信装置は、図1の送信装置と比較して、送信バッファ監視部117と、伝送路レート測定部126とを更に有する。また、映像データ用バッファ103は、映像データを転送するか、又は蓄積された映像データを破棄するように制御される。映像データ用バッファ103が、破棄を指示されると、UDP/IPプロトコルヘッダスタック部105には、音声データしか入力されない。
【0046】
送信バッファ監視部117は、コンパレータ1171と、閾値記憶部1172と、フリップフロップ1173とを有する。閾値記憶部1172は、音声データ用バッファ107に対するバッファ蓄積量の閾値Th1を記憶する。コンパレータ1171は、音声データ用バッファ107のバッファ蓄積量と、閾値Th1とを比較する。バッファ蓄積量が、閾値Th1を越えた際に、映像データ用バッファ103へ破棄が指示される。
【0047】
伝送路レート測定部126は、音声データ用バッファ107のバッファ蓄積量が閾値Th2以下となる状態が所定時間TMだけ経過した際に、伝送路レートの測定を開始する。測定された伝送路レートが所定レート以上に回復した場合、リセット信号を送信バッファ監視部117へ送信する。伝送路レートの具体的な測定方法としては、例えば同一出願人による特願2003−080134号がある。この方法は、サイズの異なる2種類のレポートパケットを送信装置及び受信装置の間で交換することによる往復遅延時間に基づいて、伝送路レートを測定する。
【0048】
送信バッファ監視部117は、伝送路レート測定部126からリセット信号が入力されると、そのフリップフロップ1173がリセットされる。これにより、送信バッファ監視部117は、映像データの転送再開を映像データ用バッファ103へ指示する。
【0049】
尚、送信バッファ監視部117は、映像データ用バッファ103のみを監視するものであってもよい。この場合、音声データ用バッファ107が、音声データを転送するか、又は蓄積された音声データを破棄するように制御される。送信バッファ監視部117は、映像データ用バッファ103に対する閾値Th1を記憶し、映像データ用バッファ103のバッファ蓄積量を監視する。コンパレータ1171は、映像データ用バッファ103のバッファ蓄積量が閾値Th1を越えた際に、フリップフロップ1173にセット信号を入力し、音声データの破棄を音声データ用バッファ107へ指示する。
【0050】
図4は、音声データ用バッファのバッファ蓄積量における時間変動を表すグラフである。縦軸は現在時刻のバッファ蓄積量を表し、横軸は時刻を表す。
【0051】
音声データ用バッファ107に蓄積されたバッファ蓄積量が、閾値Th1を越えた際に、映像データ用バッファ103に蓄積された映像データの破棄が開始される。その後、音声データ用バッファ107のバッファ蓄積量が減少していき、そのバッファ蓄積量が閾値Th2以下となり、且つ、所定時間TMを経過した場合、伝送路レートの測定が行われる。測定された伝送路レートが所定レート以上であったならば、伝送路レートが回復したものとして、映像データの破棄を停止する。
【0052】
図5は、本発明における送信装置の第2の機能構成図である。
【0053】
送信装置1の映像データ用バッファ103は、映像データを指定サイズだけ転送するか、映像データの転送を停止するか、又は蓄積された映像データを破棄するように制御される。図5の送信装置1は、図1の送信装置と比較して、多重化バッファ130と、ネットワークインタフェース部131と、映像多重化サイズ決定部132と、伝送路レート推定部133と、多重化バッファ監視部134と、映像バッファ監視部135と、経過時間判定部136とを更に有する。
【0054】
音声データ用バッファ107に蓄積された音声データは、所定の単位でRTPヘッダ付加部106によってRTPヘッダが付加され、UDP/IPプロトコルスタック部105へ転送される。RTPヘッダが付加される所定の単位とは、AMR符号化方式の場合、1フレームが20msとなる。勿論、1フレーム単位を所定の単位としてもよいし、複数フレームをまとめて所定の単位としてもよい。
【0055】
映像データ用バッファ103は、映像多重化サイズ決定部132からの制御により、指定サイズ転送/転送停止、及び、映像バッファ監視部135からの指示により、破棄/破棄停止の制御がなされる。映像データ用バッファ103から転送された映像データは、RTPヘッダ付加部104によってRTPヘッダが付加され、UDP/IPプロトコルスタック部105へ転送される。
【0056】
UDP/IPプロトコルスタック部105は、RTPフレームをIPフレームに構成し、そのフレームを多重化バッファ130へ転送する。多重化バッファ130は、UDP/IPプロトコルスタック部105から転送されたフレームをバッファする。
【0057】
ネットワークインタフェース部131は、多重化バッファ130からフレームを取り出して、IPネットワーク3へ送信する。ネットワークインタフェース部131は、システムで規定された伝送路レート(所定の時間間隔)でフレームをIPネットワークへ送信する。送出間隔及び1回の送信データサイズは、システムに依存する。また、ネットワークインタフェース部131は、例えば、直前送出サイズ、輻輳状態及び最大サイズ制限値のような伝送状態パラメータを、伝送路レート推定部133へ出力する。
【0058】
例えば、第3世代携帯電話システムcdma2000-1xEV−DOでは、以下のように規定されている。
【表2】

【0059】
伝送路レート推定部133は、現在の伝送路状態を考慮して、伝送路レートを推定する。伝送路レート推定部133は、ネットワークインタフェース部131から伝送路状態パラメータを取得する。伝送路状態パラメータに基づいて、次回送出可能最大サイズが算出される。次回送出サイズは、映像多重化サイズ決定部132へ出力される。伝送路状態パラメータは、例えば以下のようなものである。
(1)直前の送出サイズ
(2)輻輳状態フラグ
(3)最大サイズ制限値
【0060】
伝送路レート推定部133は、例えば、以下の4つの条件を考慮して、5種類の送出サイズのいずれかを選択する。
(1)第1のサイズは、多重化バッファ130に蓄積されたフレームを送信するために十分な大きさのサイズとする。
(2)第2のサイズは、ネットワークインタフェース部131によって得られる輻輳状態フラグが非輻輳状態である場合、直前の送出サイズより1段階だけ大きいサイズとし、輻輳状態フラグが輻輳状態である場合、直前の送出サイズより1段階だけ小さいサイズとする。
(3)第3のサイズは、ネットワークインタフェース部131によって最大サイズの制限値が決定されている場合、その最大サイズ以下のサイズとする。
第1のサイズから第3のサイズのうち、最も小さいサイズを、次回送出サイズとして決定する。
【0061】
例えば、
直前の送出サイズ=1024bits
輻輳状態フラグ=なし
最大サイズ制限値=なし
の場合、次回送出可能最大サイズは、2048bitsとなる。
また、別の例として、
直前の送出サイズ=2048bits
輻輳状態フラグ=あり
最大サイズ制限値=なし
の場合、次回送出可能最大サイズは、1024bitsとなる。
【0062】
映像多重化サイズ決定部132は、映像データ用バッファ103から転送されるべきデータサイズを決定する。そして、映像多重化サイズ決定部132は、指定サイズ分の映像データを転送するべく映像データ用バッファ103へ指示する。
【0063】
映像多重化サイズ決定部132は、以下の3つの情報を取得する。
Sf:伝送路レート推定部133によって推定された次回送信可能最大サイズ
Sm:多重化バッファ130のバッファ蓄積量
Sv:映像データ用バッファ103に蓄積された最も古い配列要素のデータサイズ
尚、以下のパラメータも規定する。
Sh:付加されるプロトコルヘッダのサイズ
Sx:映像データ用バッファ103へ指示する指定サイズ
【0064】
映像多重化サイズ決定部132は、次回送出タイミングの直前に、以下の手順によってSxを決定する。
(1)Sf−Sm<Shの場合、Sx=0とする。
多重化バッファ内に十分データがある場合、映像データ用バッファ103は映像データを転送しない。
【0065】
(2)Sf−Sm≧Shの場合、以下のように分けて判断する。
映像データ用バッファ103は、以下で与えられるSxに基づいて映像データを転送する。
(2−1)(Sf−Sm−Sh)<Svの場合、Sx=Sf−Sm−Shとする。
映像データ用バッファ103に十分な量の映像データが蓄積されている。
(2−2)(Sf−Sm−Sh)≧Svのとき、Sx=Svとする。
映像データ用バッファ103に十分な量の映像データが無いため、全ての映像データを転送する。
【0066】
映像データ用バッファ103は、図5の下段に表されているように、復号・再生の単位であるアクセスユニット毎に配列で蓄積されている。映像データ用バッファ103からのデータの抜き取りは、アクセスユニットの先頭からなされる。また、データの抜き取りの最中にアクセスユニットの最後に到達した場合は、前記決定されたSxの値にかかわらず、抜き取りを一旦完了する。従って、映像フレーム先頭のヘッダ(例えば、MPEG−4の場合、VOPヘッダ)は、IPパケットのペイロードの先頭に置かれることとなる。
【0067】
映像バッファ監視部135は、映像データ用バッファ103のバッファ蓄積量に基づいて、映像データの破棄/停止を映像データ用バッファ103へ指示する。例えば伝送路レートが低下することにより、映像データ用バッファ103のバッファ蓄積量が、所定の閾値Th4より高くなったとする。このとき、送信バッファ監視部135は、比較器の出力がONになり、フリップフロップをセットし、破棄を映像データ用バッファ103へ出力する。そして、その破棄状態が継続される。
【0068】
映像データ用バッファ103は、破棄が指示された場合、そのバッファ内に存在している最も古いアクセスユニット以外のデータを破棄する。その後、映像データ用バッファ103への入力データも破棄し続け、映像データが蓄積されなくなる。
【0069】
多重化バッファ監視部134は、多重化バッファ130のバッファ蓄積量を監視する。多重化バッファ130のバッファ蓄積量が、別の所定の閾値Th5を下回った場合、Hレベルの信号を映像バッファ監視部135へ入力する。その信号は、送信バッファ監視部135のフリップフロップのリセット信号として動作する。
【0070】
映像データ用バッファ103の映像データを破棄し続けている間に、多重化バッファ監視部134からH信号を受け取ったとき、映像バッファ監視部135のフリップフロップはリセットされる。これにより、映像バッファ監視部135は、映像データ用バッファ103へ破棄動作の解除を指示する。
【0071】
経過時間判定部136は、映像バッファ監視部135の出力信号の経過時間を判定する。映像バッファ監視部135の出力信号が映像データの破棄を示すH状態であって、時間の閾値Th6以上続いた場合を検出する。この伝送路状態では、これ以上映像及び音声の双方を同時に使用した通信が行えない状態を意味する。この場合、通信アプリケーションを終了させる信号が外部に出力される。
【0072】
図6は、映像データ用バッファ103のバッファ蓄積量の遷移図である。
【0073】
伝送路レートが、送信すべきデータ(音声データ及び映像データ)のビットレートよりも高い場合、音声データ用バッファ107のバッファ蓄積量は低くなる。一方、伝送路レートが、送信すべきデータのビットレートよりも低い場合、バッファ107への入力量よりも出力量が小さくなり、バッファ107のバッファ蓄積量が高くなる。
【0074】
図6の遷移図は、横軸を経過時間とし、縦軸を映像バッファレベルとする。遷移図は、太線及び細線によって時間経過に対する映像バッファ蓄積量を表している。太線は、伝送路レートが低下した場合に映像データを破棄した場合のバッファ遷移を表す。細線は、伝送路レートが低下した場合に単に映像データ用バッファへ転送を止めた場合のバッファ遷移を表す。
【0075】
通常動作時、映像エンコーダからのデータ出力に伴って、フレーム毎にバッファレベルは、垂直に立ち上がる。次フレーム符号化完了までの間、バッファからのデータ抜き取りが行われるため、右下がりとなり、これが繰り返されて鋸形状となる。途中、伝送路レートが低下すると、この抜き取り速度が低下するため、バッファレベルは徐々に上昇していく。ここで、映像データ用バッファ103のバッファ蓄積量が閾値Th4を上回った際、第2の実施形態によって映像データ用バッファ103内の映像データを破棄する場合(図中太線)と、破棄をせずに従来一般に行われている単に映像バッファへのデータ転送を停止するだけの場合(図中細線)とで、動作が異なる。
【0076】
単に映像バッファへのデータ転送を停止するだけの場合は、伝送路レートが復帰した時に、以前より蓄積されていた映像データが滞留している。そのために、その後に映像データを抜き取ると、多重化バッファ130のバッファレベルは、高い位置からの再開となる。一方、第2の実施形態によれば、映像データ用バッファレベルが閾値Th4を上回った直後に、バッファ内データを破棄し、その後バッファにデータを蓄積しないようにしているため、伝送路の速度が復帰した際にバッファレベルの低い状態から符号化データの伝送を再開できる。これは、伝送速度復帰後の映像データの伝送遅延を大幅に改善できることを意味する。
【0077】
更に、異なるメディアデータを1つのフレームに構成する第3の実施形態について説明する。
【0078】
表3は、本発明によって用いられるパケット多重化フレームのデータ構造である。
【表3】

【0079】
表3によれば、本発明におけるフレームのデータ構造は、UDPヘッダに続いて、1byteのシリアル番号部と、1byteの音声データサイズ部と、そのサイズ部に格納された長さの音声データと、映像データとを含む。従って、表2のデータ構造は、表1のものと比較して、RTPヘッダを必要としない。シリアル番号部は、符号なし整数であって、0〜255の巡回値である。音声データサイズ部は1byteであり、音声データのサイズは0〜255byteである。
【0080】
図7は、本発明におけるパケット多重化フレームのメディア分割構成図である。
【0081】
図7の上段には、映像データを等サイズに分割したパケット多重化フレームが表されている。常に、映像データを所定バイト数で分割するために、実装が容易となる。しかしながら、一方の映像フレームから他方の映像フレームに跨って分割される場合がある。この場合、映像フレームに跨った映像データを含むパケットが伝送中に損失されると、前後2つのフレーム対して影響を及ぼす。
【0082】
図7の下段には、MPEG4で規定された再同期のためのResyncマーカを映像フレームに挿入したものが表されている。Resyncマーカは、可変長符号語の切れ目を示す特定パターンのビット列である。Resyncマーカは、符号化時に、マクロブロック境界に挿入される。フレーム損失の発生時に、そのResyncマーカから復号を再開することにより、ストリームの途中からの再生が可能となる。このResyncマーカを実質的に等サイズ間隔で挿入し、Resyncマーカ間の映像データを多重化フレームに含める。これにより、映像フレームに跨って映像データが分割されることがなくなる。即ち、1つの多重化フレームの損失が、2つの映像フレームに影響を及ぼすことがなくなる。
【0083】
図8は、本発明によって用いられる送信装置の機能構成図である。以下では、送信装置の機能について説明する。但し、各機能はプログラムによっても実装できる。そのプログラムがコンピュータによって実行されることによって、各機能が実現される。
【0084】
図8によれば、送信装置1は、図1のRTPヘッダ付加部104及び106に代わって、多重化部111を備えている。多重化部111は、多重パケット生成部111と、映像データを一時的に蓄積するメモリ1112と、音声データを一時的に蓄積するメモリ1113と、シリアル番号を生成する加算器1114と、遅延回路1115とを有する。音声データ用メモリ1112は、音声データサイズ(書き込みポインタと読み出しポインタとの差分)を、0〜255byteで表して出力する。
【0085】
音声データがメモリ113に蓄積され及び/又は映像データがメモリ112に蓄積された際、多重パケット生成部111は、表3に表したフレームを構成する。多重パケット生成部111は、4入力1出力のスイッチを有し、シリアル番号、音声データサイズ、音声データ、映像データの順に切り替える。その1巡によって、1つのフレームが構成される。シリアル番号は、遅延回路115を通じて加算器1114に入力される。加算器1114は、そのシリアル番号を1増分(1加算)した新たなシリアル番号を出力する。
【0086】
映像データ及び音声データは、同じタイミングでバッファ103及び107から抜き取られ、1つのフレームに多重化される。これにより、映像データ及び音声データの到着遅延が一定となる。また、受信装置において、音声データの到着ゆらぎが回避される。
【0087】
更に、従来技術によれば、映像データパケット及び音声データパケットそれぞれに、RTPヘッダの12byteを必要とする。これに対し、本発明によれば、映像データ及び音声データが統合され、RTPに相当するヘッダが2byteとなる。従って、ヘッダサイズが軽減される。
【0088】
例えば、パケット送出間隔を20m秒とした場合、従来技術のオーバヘッドは、32kbit/秒である。これに対し、本発明によれば、12kbit/秒である。
(2byte+8byte+20byte)×8bit×50 = 12kbit/秒
【0089】
本発明によれば20kbit/秒ものオーバヘッドを削減することができる。削減されたオーバヘッドのbit数を、映像データ又は音声データの符号化ビットレートに割り当てることにより、符号化品質が向上する。
【0090】
図9は、図8の送信装置におけるフレームの伝送シーケンス図である。以下では、受信装置の機能について説明するが、各機能はプログラムによっても実現できる。
【0091】
図9は、従来技術である図2のS200の部分を表している。本発明によれば、異なるメディアデータを1つの多重化フレームとするデータ構造を採用する。音声データパケットの送信間隔である20m秒毎に多重パケットを送信した場合、図2の映像データパケットよりも短い長さの映像データを送信することになる。図9によれば、17byteの音声データと80byteの映像データとからなるフレームは、15.8m秒で受信装置によって受信される。即ち、映像データV1(400byte)の受信終了時点は、音声データA1〜A4(17byte×4個)の受信終了時点と一致する。
【0092】
例えば、AMR方式の音声データサイズは、パケット送出間隔が20m秒である場合、以下のようなバイト数になる。ここでは、代表的な3モードについて列記する。
4.75kbit/秒モード: 14byte
※6.70kbit/秒モード: 19byte
12.2kbit/秒モード: 33byte
【0093】
映像データサイズは、単純に「ビットレート×時間」で表される。1パケットが20m秒間隔の場合、以下のようなバイト数となる。
32kbit/秒: 32kbit/8bit×20m秒 = 80byte
【0094】
AMRが6.70kbit/秒モードの場合、多重化フレームは、シリアル番号1byte、音声データサイズ1byte、音声データ19byte及び映像データ80byteからなる合計101byteを要する。
【0095】
映像データ及び音声データは、同じタイミングでバッファから抜き取られ、1つのフレームに多重化されて伝送される。これにより、映像データ及び音声データの到着遅延が一定となり、受信装置において音声データの到着ゆらぎを回避することができる。また、多重パケットの生成に際し、RTPによって映像データパケット及び音声データパケットそれぞれに12byteを要していたのに対し、本発明によれば、これら異なるメディアデータのパケットが統合され、且つRTPに相当する部分のヘッダが2byteとなるため、ヘッダサイズをかなり軽減することができ、伝送効率を高めることができる。
【0096】
図10は、本発明における送信装置の第3の機能構成図である。
【0097】
図10の送信装置1は、図8と比較して、スイッチ120と、多重化バッファ121と、多重分離部118と、再多重化部119とを更に有する。また、送信バッファ監視部117は、多重化バッファ121に蓄積された多重パケットの数を監視しており、スイッチ120を制御することができる。また、送信バッファ監視部117は、多重化バッファ121に対する多重パケット数の閾値を保持する。多重化バッファ121に蓄積された多重パケット数が閾値を越えた場合、送信バッファ監視部117は、映像データ用バッファ103からの映像データの転送を停止する。これにより、多重化部111への映像データの入力を止め、スイッチ120をON制御することによって多重化バッファ121の多重化パケットを多重分離部118に入力する。
【0098】
多重分離部118は、多重化バッファ121に蓄積された全ての多重化パケットについて、多重分離するものである。そのうち、分離された映像データは破棄される。再多重化部119は、分離されたシリアル番号、音声データサイズ及び音声データについて再度多重化し、その多重化パケットは多重化バッファ121へ再入力される。
【0099】
図11は、本発明における多重分離部及び再多重化部の機能構成図である。本発明における表2に表したフレームのデータ構造によれば、以下のような多重分離及び再多重を容易に実現することができる。
【0100】
多重分離部118は、メモリ1181と、パケット分離部1182とを有する。メモリ1181は、多重化バッファ121から入力された多重化パケットを一時的に蓄積する。パケット分離部1182は、メモリ1181から取り出した多重化パケットから、1byteのシリアル番号部と、1byteの音声データサイズ部と、該サイズ部に格納された長さの音声メディアデータと、映像メディアデータとに分離する。このとき、分離された映像メディアデータは破棄される。そして、シリアル番号、音声メディアデータサイズ及び音声メディアデータは、再多重化部119に入力される。
【0101】
再多重化部119は、メモリ1191と、パケット多重部1192とを有する。メモリ1191は、多重分離部118から受信した音声メディアデータを一時的に蓄積する。パケット多重部1192は、多重分離部118から入力された、1byteのシリアル番号部と、1byteの音声データサイズ部と、メモリ1191からの音声データとを多重化する。
【0102】
図12は、本発明における第3の実施形態におけるフローチャートである。
【0103】
(S801)音声データ用バッファ107に蓄積されたバッファ蓄積量BAが、閾値Th1よりも大きいか否かを判定する。
(S807)BAがTh1よりも大きいならば、映像データ用バッファ103からの転送を停止し、多重化部111への入力を止め、スイッチ120をONにしてバッファ121に蓄積されたフレームを多重分離部118へ入力するように制御する。
(S802)BAがTh1以下ならば、音声データ用バッファ107に蓄積されたバッファ蓄積量BAが、閾値Th2よりも小さいか否かを判定する。BAがTh2以下でないならば、時刻変数tに現在時刻nowを代入して(S809)、処理を終了する。
(S803)BAがTh2よりも小さいならば、現在時刻nowから過去時刻tを差し引いた時間間隔が、所定の時間間隔TMよりも長いか否かを判定する。TMよりも短かいならば、処理を終了する。時間間隔TMは、伝送路レートの回復判定時間である。例えば実際の伝送路レートが80kbps程度であれば、時間間隔TMはおよそ5秒程度に設定される。
(S804)所定の時間間隔TMよりも長いならば、安定状態にあると判断し、伝送路レート測定処理を行う。
(S805)伝送レート測定処理によって測定された伝送路レートTRは、伝送路が回復したとして判断できる一定レートよりも大きいか否か判定される。TRが一定レート以下であれば、処理を終了する。
(S806)伝送路レートTRが一定レートよりも大きいならば、映像データの転送の再開を映像データ用バッファ103へ指示する。これにより、多重化部111への入力を再開し、スイッチ120をOFFにしてバッファ121に蓄積されたフレームを送信するように制御する。
【0104】
前述した本発明における送信装置及び送信プログラムの種々の実施形態によれば、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略を、当業者は容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】従来技術によるパケット多重化のための送信装置の機能構成図である。
【図2】従来技術におけるデータパケットの伝送のシーケンス図である。
【図3】本発明における送信装置の第1の機能構成図である。
【図4】音声データ用バッファのバッファ蓄積量における時間変動を表すグラフである
【図5】本発明における送信装置の第2の機能構成図である。
【図6】映像データ用バッファ103のバッファ蓄積量の遷移図である。
【図7】本発明におけるパケット多重化フレームのメディア分割構成図である。
【図8】本発明によって用いられる送信装置の機能構成図である。
【図9】図8の送信装置におけるフレームの伝送シーケンス図である。
【図10】本発明における送信装置の第3の機能構成図である。
【図11】本発明における多重分離部及び再多重化部の機能構成図である。
【図12】本発明における第3の実施形態におけるフローチャートである。
【符号の説明】
【0106】
1 送信装置
101 フォーマット変換部
102 映像エンコーダ部
103 映像データ用バッファ
104、106 RTPヘッダ付加部
105 UDP/IPプロトコルスタック部
107 音声データ用バッファ
108 音声エンコーダ部
109 A/D変換部
110 増幅器
111 多重化部
1111 多重パケット生成部
1112 映像データ用メモリ
1113 音声データ用メモリ
1114 加算器
1115 遅延回路
117 送信バッファ監視部
1171 コンパレータ
1172 閾値記憶部
1173 フリップフロップ
118 多重分離部
1181 メモリ
1182 パケット分離部
119 再多重化部
1191 メモリ
1192 パケット多重化部
120 スイッチ
121 多重化バッファ
126 伝送路レート測定部
130 多重化バッファ
131 ネットワークインタフェース部
132 映像多重化サイズ決定部
133 伝送路レート推定部
134 多重化バッファ監視部
135 映像バッファ監視部
136 経過時間判定部
2 受信装置
201 ディスプレイ制御部
202 映像データ用バッファ
203 映像デコーダ
204、206 RTPヘッダ除去部
205 UDP/IPプロトコルスタック部
207 音声デコーダ
208 音声データ用バッファ
209 D/A変換部
210 増幅器
3 IPネットワーク
4 カメラ
5 マイク
6 ディスプレイ
7 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信すべき第1のメディアデータを一時的に蓄積する第1のバッファと、
送信すべき第2のメディアデータを一時的に蓄積する第2のバッファと、
前記第1のバッファから出力された前記第1のメディアデータと、前記第2のバッファから出力された前記第2のメディアデータとを1系統の信号線に出力するための多重化手段と、
前記第1のバッファの第1のバッファ蓄積量を監視し、該第1のバッファ蓄積量が第1の閾値を越えた際に、前記第2のメディアデータを破棄するように前記第2のバッファへ指示する送信バッファ監視手段と
を有することを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記第1のバッファ蓄積量が前記第1の閾値を越えた後、前記第1のバッファ蓄積量が第2の閾値以下となる状態が所定時間TMだけ経過した際に、伝送路レートの測定を開始する伝送レート測定手段を更に有し、
前記送信バッファ監視手段は、前記伝送路レートが所定レート以上に回復したとき、前記第2のメディアデータの破棄を停止するように前記第2のバッファに指示することを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
送信すべき第2のメディアデータを一時的に蓄積する第2のバッファと
第1のメディアデータと、前記第2のバッファから出力された前記第2のメディアデータとを1系統の信号線に出力するための多重化手段と、
前記多重化手段から出力されたフレームを一時的に蓄積する第3のバッファと、
前記第3のバッファの第3のバッファ蓄積量を監視し、該第3のバッファ蓄積量が送信可能最大サイズよりも少ない場合、その差分サイズ分の第2のメディアデータが転送されるように前記第2のバッファを制御する多重化サイズ決定手段と
を有することを特徴とする送信装置。
【請求項4】
前記第3のバッファから出力されるフレームをネットワークへ送信するネットワークインタフェース手段と、
前記ネットワークインタフェース手段から得られる伝送路状態パラメータに基づいて前記送信可能最大サイズを算出し、該送信可能最大サイズを前記多重化サイズ決定手段へ出力する伝送路レート推定手段と
を更に有することを特徴とする請求項3に記載の送信装置。
【請求項5】
前記第2のバッファの第2のバッファ蓄積量を監視し、該第2のバッファ蓄積量が第2の閾値を越えた場合、前記第2のメディアデータを破棄するように前記第2のバッファに指示する第2のバッファ監視手段を更に有することを特徴とする請求項3又は4に記載の送信装置。
【請求項6】
前記第3のバッファの第3のバッファ蓄積量を監視し、該第3のバッファ蓄積量が第3の閾値以下となった場合、リセット信号を前記第2のバッファ監視手段へ出力する多重化バッファ監視手段を更に有し、
前記第2のバッファ監視手段は、前記リセット信号を入力した際に、前記第2のメディアデータの破棄を停止するように前記第2のバッファへ指示することを特徴とする請求項5に記載の送信装置。
【請求項7】
前記第2のバッファは、アクセスユニット単位で配列に構成されており、
前記第2のバッファは、前記第2のバッファ内のデータを破棄する際、最も古いアクセスユニット情報はバッファに残し、その後に続くアクセスユニットを破棄することを特徴とする請求項5又は6に記載の送信装置。
【請求項8】
前記第2のバッファ監視手段が前記第2のバッファに対して映像データの破棄を指示し、破棄の継続時間が所定閾値時間を越えた場合、その状態を外部に出力する経過時間判定手段を更に有することを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の送信装置。
【請求項9】
送信すべき第1のメディアデータを一時的に蓄積する第1のバッファと、
送信すべき第2のメディアデータを一時的に蓄積する第2のバッファと
UDPヘッダに続いて、シリアル番号部と、第1のメディアデータサイズ部と、該サイズ部に格納された長さの第1のメディアデータと、第2のメディアデータとを含むデータ構造を有する、異なるメディアデータのパケット多重化フレームを生成する多重化手段と、
前記多重化手段によって生成された前記フレームを一時的に蓄積する第3のバッファと、
前記第3のバッファに蓄積された前記フレームから、シリアル番号部と、第1のメディアデータサイズ部と、該サイズ部に格納された長さの第1のメディアデータと、第2のメディアデータとに分離し、分離された前記第2のメディアデータを破棄するパケット分離手段と、
分離された前記シリアル番号部と、前記第1のメディアデータサイズ部と、該サイズ部に格納された長さの前記第1のメディアデータとを含むデータ構造を有するフレームを再度生成し、該フレームを前記第3のバッファに入力する再多重化手段と、
前記第3のバッファと前記パケット分離手段との間に接続されたスイッチと、
前記第3のバッファに対する第1の閾値を蓄積し、前記第3のバッファに蓄積されたフレーム数を監視し、該フレーム数が前記第1の閾値を越えた際に、前記第2のメディアデータの転送を停止するべく前記第2のバッファへ指示し、前記スイッチをONにして前記第3のバッファに蓄積されたフレームを前記パケット分離手段へ入力するように制御する送信バッファ監視手段と
を有することを特徴とする送信装置。
【請求項10】
前記第3のバッファに蓄積された前記フレーム数が前記第1の閾値を越えた後、前記第3のバッファに蓄積されたフレーム数が第2の閾値以下となる状態が所定時間TMだけ経過した際に、伝送路レートの測定を開始する伝送レート測定手段と、
前記送信バッファ監視手段は、前記伝送路レートが所定レート以上に回復したとき、前記第3のバッファに蓄積されたフレームの破棄を停止するべく、前記第2のメディアデータの転送を再開するように前記第2のバッファへ指示し、前記スイッチをOFFにして前記第3のバッファに蓄積されたフレームを送信するように制御することを特徴とする請求項9に記載の送信装置。
【請求項11】
前記多重化手段は、
前記シリアル番号を送出する加算手段と、
前記第1のメディアデータを一時的に蓄積する第1のメモリと、
前記第2のメディアデータを一時的に蓄積する第2のメモリと、
前記加算手段から出力された前記シリアル番号を、前記フレームの前記シリアル番号部に含め、次に、前記第1のメモリから出力された第1のメディアデータサイズを、前記フレームの前記第1のメディアデータサイズ部に含め、次に、前記第1のメモリから出力された、前記第1のメディアデータサイズ部に格納された長さの前記第1のメディアデータを含め、次に、前記第2のメモリから出力された第2のメディアデータを含めるようにした多重化パケットの生成を繰り返す多重パケット生成手段と
を有することを特徴とする請求項9又は10のいずれか1項に記載の送信装置。
【請求項12】
前記第1のメディアデータは音声データであって、前記第2のメディアデータは映像データであることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の送信装置。
【請求項13】
送信すべき第1のメディアデータを一時的に蓄積する第1のバッファと、
送信すべき第2のメディアデータを一時的に蓄積する第2のバッファと、
前記第1のバッファから出力された前記第1のメディアデータと、前記第2のバッファから出力された前記第2のメディアデータとを1系統の信号線に出力するための多重化手段と、
前記第1のバッファの第1のバッファ蓄積量を監視し、該第1のバッファ蓄積量が第1の閾値を越えた際に、前記第2のメディアデータを破棄するように前記第2のバッファへ指示する送信バッファ監視手段
としてコンピュータを機能させることを特徴とする送信プログラム。
【請求項14】
送信すべき第2のメディアデータを一時的に蓄積する第2のバッファと
第1のメディアデータと、前記第2のバッファから出力された前記第2のメディアデータとを1系統の信号線に出力するための多重化手段と、
前記多重化手段から出力されたフレームを一時的に蓄積する第3のバッファと、
前記第3のバッファの第3のバッファ蓄積量を監視し、該第3のバッファ蓄積量が送信可能最大サイズよりも少ない場合、その差分サイズ分の第2のメディアデータが転送されるように前記第2のバッファを制御する多重化サイズ決定手段
としてコンピュータを機能させることを特徴とする送信プログラム。
【請求項15】
送信すべき第1のメディアデータを一時的に蓄積する第1のバッファと、
送信すべき第2のメディアデータを一時的に蓄積する第2のバッファと
UDPヘッダに続いて、シリアル番号部と、第1のメディアデータサイズ部と、該サイズ部に格納された長さの第1のメディアデータと、第2のメディアデータとを含むデータ構造を有する、異なるメディアデータのパケット多重化フレームを生成する多重化手段と、
前記多重化手段によって生成された前記フレームを一時的に蓄積する第3のバッファと、
前記第3のバッファに蓄積された前記フレームから、シリアル番号部と、第1のメディアデータサイズ部と、該サイズ部に格納された長さの第1のメディアデータと、第2のメディアデータとに分離し、分離された前記第2のメディアデータを破棄するパケット分離手段と、
分離された前記シリアル番号部と、前記第1のメディアデータサイズ部と、該サイズ部に格納された長さの前記第1のメディアデータとを含むデータ構造を有するフレームを再度生成し、該フレームを前記第3のバッファに入力する再多重化手段と、
前記第3のバッファと前記パケット分離手段との間に接続されたスイッチと、
前記第3のバッファに対する第1の閾値を蓄積し、前記第3のバッファに蓄積されたフレーム数を監視し、該フレーム数が前記第1の閾値を越えた際に、前記第2のメディアデータの転送を停止するべく前記第2のバッファへ指示し、前記スイッチをONにして前記第3のバッファに蓄積されたフレームを前記パケット分離手段へ入力するように制御する送信バッファ監視手段
としてコンピュータを機能させることを特徴とする送信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−140984(P2006−140984A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165371(P2005−165371)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】