説明

特定小電力無線テレメータシステム

【課題】無線端末間の縁組方法を改善し、多段化された無線テレメータシステムの導入や改変を容易にする無線テレメータシステムを提供する。
【解決手段】子機又は中継機のような無線端末は、縁組作業時に相手端末が上流側か下流側かを記憶し、縁組作業の終了後に、最下流となった無線端末から順次、最上流の無線親機への経路開通を促す電文を発信する。この電文では、処理種別で開通を促す電文であることが特定され、配下の端末段数と、配下の無線端末の種類とID及び識別符号とのデータが含まれる。新たな無線端末が割り込み追加される場合にも、縁組作業での作業が、上下関係にある無線端末間で遣り取りする情報に限定されて簡素化され、縁組作業後に自動的に経路開通を促す電文で通信経路が確定されるので、縁組から経路開通までの作業性が向上し、多段化された無線テレメータシステムの導入が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は標準規格RCR STD−T67に準ずる無線テレメータシステムに関し、特に、親機や子機又は中継機のような無線端末間の無線通信を可能とする情報交換作業としての縁組作業の効率化を図った無線テレメータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線テレメータシステムにおいては、無線親機からマイコンメータまでの無線通信区間の距離を伸ばすため、通信経路上に複数の中継機を介在させて通信経路を多段化することが行われている。多段化された無線テレメータシステムでは、無線親機は通信経路上の端末情報を管理する機能を担っている。そのため、下流の無線端末(機器)と上流の無線端末(機器)との間で無線通信を可能とする情報交換作業としての縁組作業を繰り返し、下流の無線端末の端末情報を上流側の無線端末へ順次移行させて、最終的には最上流の無線端末となる無線親機に端末情報を集約させている。
【0003】
従来の無線テレメータシステムのシステム図が図12に示されている。図12に示すように無線テレメータシステムは、ホストコンピュータ1と、これに接続されたセンタ網制御装置2と、電話回線3を介してセンタ網制御装置2に接続された端末網制御装置4と、端末網制御装置4に接続された無線親機5(以下、「親機5」と略す)と、無線子機6(以下、「子機6」と略す)又は中継機7に接続された電気、ガス、水道等のメータ8から構成され、親機5と子機6又は中継機7間は無線でデータ通信を行うものである。
【0004】
図13は、図12に示された無線テレメータシステムにおける親機5と子機6又は中継機7のブッロク図であり、識別符号等のデータ登録用として不揮発性メモリ17又は27が使用されている。また、CPU12と22は時計やタイマー機能を有している。親機5においては、CPU12には、アンテナ10に接続された無線通信ユニット11、端末網制御装置とのインターフェース13、ROM14、RAM15及び不揮発性メモリ17がそれぞれ接続されている。親機5は、更に、電池16、スイッチ18及び表示装置19を備えている。子機6においては、CPU22には、アンテナ20に接続された無線通信ユニット21、メータ・センサとのインターフェース23、ROM24、RAM25及び不揮発性メモリ27がそれぞれ接続されている。子機6は、更に、電池26、スイッチ28及び表示装置29を備えている。
【0005】
無線端末間で行われる縁組作業について、まず、当該縁組に関して交換される一般的な2種類の情報について説明する。一つ目の情報は、使用する無線チャンネルやチャンネル数、目的の相手端末のみを呼び出す際に使用する各無線端末固有の識別符号やIDなどの無線通信に必要な基本情報である。
【0006】
二つ目の情報は、多段化された無線テレメータシステム特有であるが、目的の相手端末に到達するための経路情報である。経路情報とは、図3に示す一般的な無線テレメータシステムの電文を受信した無線端末が、電文中のID情報をもとに目的端末への経路を選択するために用いられる情報である。
【0007】
従来の多段化された無線テレメータシステムでは、前記の2種類の情報を一度の作業で取得できるようにするため経路に従った手順で行う必要がある。その詳細な手順の一例について、図12の中継機7(A)を通る経路の場合を例として、図15に示すシーケンス図に基づいて説明する。なお、親機5から子機6(α)を介するメータまでの経路設計は、図12に示す通り、中継機7(A)を通る経路での設計が済んでいるものとする。
【0008】
図15において、まず、最下流の子機6(α)とその上流端末に経路設計された中継機7(B)間で最初の縁組作業が行われる。次に、中継機7(B)と中継機7(A)が縁組されるが、このとき無線通信に必要な基本情報だけでなく中継機7(B)の経路情報として、配下端末の子機6(α)の情報も中継機7(A)に伝えられる。よって、中継機7(A)は、直下流に中継機7(B)が存在し、中継機7(B)の更に下流には子機6(α)が存在することを知ることになる。そして中継機7(A)と子機6(a〜n)まで順次縁組作業が行われ、最後に中継機7(A)と親機5との縁組作業が行われる。
【0009】
前記の手順で縁組作業を行うことで親機5には、直下流の中継機7(A)の情報だけでなく、中継機7(A)の配下端末の子機6(a〜n)、中継機7(B)、子機6(α)の経路情報と基本情報が集約されることになる。即ち、親機5は、図14に示す電文で目的端末のIDが子機6(α)である電文を受信しても子機6(α)が中継機7(A)の配下にあることを知っているため、まず中継機7(A)に図14に示す電文を転送すればよいことを知り、中継機7(A)に受信電文を転送する。中継機7(A)でも同様の理由から中継機7(B)へ電文が転送され、そこでも同様な動作が繰り返され、最後に目的端末である子機6(α)まで電文が到達される。つまり、経路を選択するための情報とは、直下流の端末情報とその配下の端末情報を有することと同等であることから、経路の下流から順に配下情報を上流端末へ伝送することで経路情報が各端末で構築できる。
【0010】
従来方法では、こうした端末情報の親機への集約のため、目的のマイコンメータまで何段必要であるか、どの端末が最下流となるのかなどの詳細な経路設計が事前に必要であった。即ち、縁組作業の手順と通信経路とが強く関連付けされているため、詳細な経路設計を事前に済ます必要がある。また、更に詳細な経路設計を行うためには、各中継機の設置場所や電波の到達エリアを事前に確認しておくための現地調査が必要とされる場合が多々発生する。更に、急な経路変更、例えば、中継機7(B)と子機6(α)間で通信安定性が無いなどの理由から中継機7(B)と子機6(α)間の中継機7(C)(図示せず)を仲介させる場合、変更区間のみの縁組作業では、経路情報を中継機7(A)や親機5に伝達できないため、再度、最下流となった子機6(α)から、もう一度縁組作業を順にやり直すという膨大な作業が必要となる。
【0011】
このように、事前の詳細な経路設計や現地調査の必要性は、多段化された無線テレメータの導入に対する阻害要因となっており、しかも無線テレメータシステムの縁組作業では、環境変化による急な経路変更に対応しにくいという問題点がある。こうした事情を考慮して、導入されるシステムでは、段数が一段又は二段の多段化システムに限られていた。しかしながら、市場の動向としては、無線親機の台数削減がシステムの導入コストや管理コストの削減などに結びつくとして、さらなる多くの多段化が求められている。
【0012】
センタ装置に経路情報等のデータベースを備えることなく、子機に対する複数の通信経路により送受信を可能とした通信システム及び通信方法が提案されている(特許文献1参照)。これによれば、登録子機が新規設置された場合のテスト処理において、通信可能な複数の経路を取得する。その各経路に従って、自己端末IDが付加された登録要求電文を送信する。登録要求を受信した子機は自己の経路情報(端末ID、電界強度等)を付加して送信し、親機が登録要求を受信して、登録子機の経路情報を登録する。センタ装置では、登録する登録子機の端末IDと共に親機の端末IDを関連付けて登録する。
【特許文献1】特開2007−274068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、無線テレメータシステムにおいては、縁組作業において上下関係にある無線端末間で遣り取りする情報を限定しても、通信経路の確定を容易に行う点で解決すべき課題がある。
この発明の目的は、無線端末間の縁組方法を改善し、多段化された無線テレメータシステムの導入や改変を容易にする無線テレメータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明における無線テレメータシステムは、センタ網制御装置に電話網を介して接続された端末網制御装置と、前記端末網制御装置に有線接続された無線親機と、前記無線親機と直接に又は無線データを中継する中継機を介して通信を行う無線子機と、前記無線子機又は前記中継機に有線接続されたガス、水道等のマイコンメータとを備え、前記無線親機、前記無線子機及び前記中継機から成る無線端末相互の間で特定小電力無線方式の無線通信を行う無線テレメータシステムであって、直近上下の前記無線端末間での無線通信を可能とするために行われる縁組作業において、交換すべき互いの端末情報として、前記無線通信に必要な基本情報と縁組相手が自身に対して上流側又は下流側かの上下関係情報のみの情報交換を行い、前記縁組作業の終了後に、最下流となった前記無線端末から順次、前記無線親機まで、当該無線端末の経路情報を含み経路開通を促す開通促し電文を上流側の前記無線端末に対して発信することで前記無線通信の通信経路を確定することを特徴としている。
【0015】
この無線テレメータシステムによれば、子機又は中継機のような無線端末は、縁組作業時に相手端末が上流側か下流側かを記憶し、縁組作業の終了後に、最下流となった無線端末から順次、最上流の無線親機への経路開通を促す電文を発信する。新たな無線端末が割り込み追加される場合にも、縁組作業での作業が簡素化され、縁組作業後に自動的に経路開通を促す電文で通信経路が確定されるので、縁組から経路開通までの作業性が向上し、多段化された無線テレメータシステムの導入が容易になる。
【0016】
この無線テレメータシステムにおいて、前記縁組作業を行う前記無線子機又は前記中継機は、前記縁組相手が自身に対して上流側の無線端末か下流側の無線端末であるかを識別する専用の切替えスイッチを備えているので、縁組相手が自身に対して上流側か下流側かをスイッチ操作のみで知らせることができ、縁組作業時の情報設定が簡単に行える。
【0017】
また、この無線テレメータシステムにおいて、前記無線端末は、下流側の前記無線端末からの前記開通促し電文を受信したことに応じて、自身が持つ前記経路情報を前記開通促し電文に加えることで前記経路情報を更新し、更新された当該開通促し電文を更に上流側の前記無線端末へ送信することができる。この無線テレメータシステムによれば、下流端末から経路開通を促す電文を受信すると自身が有する情報を付加して、さらに上流端末へ送信するので、経路情報の情報伝達を親機にまで容易に行うことができる。
【0018】
また、この無線テレメータシステムにおいて、前記開通促し電文を受信した前記無線親機は、当該開通促し電文中に含まれる前記経路情報をもとに配下の前記無線子機又は前記中継機についての情報更新を行うと共に、前記通信経路の確定を促す確定促し電文を前記開通促し電文を発信した前記無線端末に向けて返信し、返信経路上の前記各無線端末は、前記確定促し電文を受信することに応じて自身の前記経路情報を更新すると共に、自身が前記開通促し電文の発信端末でない場合には下流側の前記無線端末へ転送し、自身が当該発信端末である場合には経路の開通処理が正常に行えたことを表示することができる。この無線テレメータシステムによれば、無線親機は、経路開通の電文を受信したとき、電文中の情報をもとに端末情報を更新し、経路確定を示す応答電文を返信するので、経路の最下流端末から無線親機まで経路情報の更新が正しく行えたことを、当該経路上の各無線端末が容易に知ることができる。
【0019】
また、この無線テレメータシステムにおいて、無線親機からの返信電文である確定促し電文を受信した経路上の無線子機や中継機も経路情報の更新し、自身が経路開通を促す開通促し電文を発信していなければ、この開通促し電文を送信してきた下流端末が存在しているので当該開通促し電文を送信した下流端末に返信電文を転送するが、自身が発信端末であった場合には、経路開通処理が正しく行えたと判断できる表示手段を有する。したがって、下流端末が存在の有無の錯誤に基づく作業者の初歩的なミスが排除される。
【0020】
加えて、この無線テレメータシステムにおける無線子機又は中継機は、経路開通を促す電文の発信処理として、更に下流端末との縁組情報があるかを確認する手段と、縁組作業後から時間を計測する手段を有している。予め定めた時間内に下流側に無線端末の登録が無い場合には、自身が最下流の前記無線端末であると判断することができる。即ち、作業者が作業を忘れた場合でも、予め定めた時間経過後、自動的に経路開通の処理がされるため、さらなる作業の信頼性が向上された多段化された無線テレメータシステムの提供が可能となる。
【0021】
更に、この無線テレメータシステムにおいて、前記開通促し電文を受信した前記無線親機は、登録済みデータに同系列の前記経路情報があるか否かを確認し、前記経路情報データがある場合にはそのデータから前記通信経路上に登録されている前記無線端末の総数を算出するとともに、受信した電文内容の端末数と比較し、前記端末数が多いデータを最新情報として更新することができる。即ち、無線親機では、受信した経路開通を促す電文と同系列の経路情報が既に登録されているかを確認し、端末数を比較する手段を有することで、多段化された無線テレメータシステムの縁組作業を容易することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明による無線テレメータシステムによれば、縁組作業において上下関係にある無線端末間で遣り取りする情報が限定されているので、中継機の追加などの事態に対して、親機からの経路の順に縁組作業を行う必要がないため、詳細な経路設計を事前に行うことなく、通信経路の確定を容易に行うことができ、その結果、無線端末間の縁組作業が改善され、多段化された無線テレメータシステムの導入や改変を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図面を参照して、この発明による無線テレメータシステムの実施形態を説明する。図1〜図3は、それぞれ本発明による無線テレメータシステムの実施形態に関わる経路開通の電文例である。なお、この発明である無線テレメータシステムのハード構成については、図12〜図15に示す従来の無線テレメータシステムの構成と同等であってよく、ここでは再度の説明を省略する。
【0024】
本発明による無線テレメータシステムの実施形態においては、まず、縁組作業によって交換される情報は、無線通信に使用する無線チャンネルやチャンネル数などの無線通信に必要な基本情報と、縁組相手が自身に対して上流側の無線端末であるのか、あるいは下流側の無線端末であるかの上下関係情報との二つのみとなる。従来方法の例と同じく図12の中継機7(A)を通る経路で縁組作業を行う場合、本発明では、親機5からの経路順に関係する必要がないので、最初に中継機7(A)と子機6(a〜n)の縁組作業を行っても問題を生じない。
【0025】
また、本発明では、縁組作業の作業手順として、中継機7(A)と中継機7(B)、更に中継機7(B)と子機6(α)、最後に中継機6(A)と親機5の縁組作業を行うなど、通信経路順に縁組作業を進める必要がない。そのため、前例と同じく中継機7(B)と子機6(α)間において中継機7(C)(図示せず)を仲介させるような経路変更が急に生じたとしても、変更された区間である中継機7(B)と中継機7(C)との間、及び中継機7(C)と子機6(α)間でのみ縁組作業を行えばよいことになる。
【0026】
無線通信経路上のすべての無線端末で縁組作業を終了した結果、最下流(メータを除く)となった子機6(α)に設けられた専用スイッチなどを作業者が操作すると、子機6(α)は、その縁組作業で入手した情報をもとに上流側の無線端末である中継機7(B)に対して図1に示すような経路開通の電文を発信する。専用スイッチは、中継機7(B)に対して子機6(α)自身が下流側の無線端末であることを識別するスイッチである。ここで、図1の電文フォーマットを説明すると、『RRQ』は、当該電文が処理種別として経路開通を促す電文(開通促し電文)であること示し、データのうち、端末数データ『001』は、子機6(α)のみの1台分(即ち、子機6(α)が最下流端末)であることを示す。また、子機6(α)のデータは、IDと識別符号データで構成されるものである(本例ではIDを『211』、識別符号を『000000000211』とする)。
【0027】
一方、縁組相手が自身に対して上流・下流のどちらに相当する端末であるかの上下関係情報は、上記した専用の切替えスイッチから入手され、そのスイッチは作業者により設定される。例えば、図12において、中継機7(A)と中継機7(B)が縁組作業をするときには、中継機7(A)では縁組相手が下流端末を示す側にスイッチ設定され、中継機7(B)では縁組相手が上流端末を示す側にスイッチ設定された状態で縁組作業が行われる。そのため、自己が縁組相手に対して上・下流端末のいずれになるかという上下関係情報も容易に記憶可能となる。
【0028】
図1に示した電文を受信した無線端末が更に上流側の無線端末に送信する経路開通の電文が図2に示されている。経路開通を促す電文(図1)を受信した中継機7(B)は、処理種別『RRQ』から開通促し電文であること知り、図2に示すように自身の情報を追加更新するため、端末数を『002』(即ち、自己と子機6(α)との合計二つの端末)と変えて、中継機7(B)の上流端末である中継機7(A)へ送信する。データには、中継機7(B)と子機6(α)のそれぞれについてIDと識別符号とが含まれる。中継機7(B)については、IDを『210』、識別符号を『000000000210』とする。 同様に、図2に示す電文を受信した中継機7(A)は、当該電文が経路開通を促す電文であることを知り、図3に示すように自身(中継機7(A))の情報と、自身の配下端末(子機6(a),…,子機6(n)、中継機7(B)、子機(6(α))の情報とを付加して更新した上で親機5へ送信する。中継機7(A)のIDを『110』、識別符号を『000000000110』とする。また、子機( a)のIDを『111』、識別符号を『000000000111』、等々とする。親機5では、中継機7(A)とその配下端末情報を知ることが可能となるため、中継機7(A)に関連する経路選択に必要な全情報を収集することができたことになる。
【0029】
次に、親機5は、図4に示す応答電文、即ち、通信経路の確定を促す確定促し電文を中継機7(A)に対して返信する。ここで、図4に示す電文フォーマットで処理種別『RET』は経路確定の種別であることを示し、ホップ数は親機5からの中継数(段数)を表す。即ち、中継機7(A)に対しては親機5からのホップ数は『001』となり、親機5のデータは親機5のIDと識別符号(本例では、001と000000000001)となる。
【0030】
親機5からの応答電文(確定促し電文)を受信した中継機7(A)は、経路確定したことを知り、中継機7(B)とその配下端末情報を登録すると共に、自身の親機5からのホップ数を『001』であることを記録する。その後、受信した図4に示す電文のホップ数に1を加えた『002』として、図5に示すように更新された確定促し電文を中継機7(B)へ返信する。
【0031】
中継機7(B)が図5に示す確定促し電文を受信すると、前記と同様の処理がされ、図5に示す電文をもとにホップ数に1を加えた図6に示す更新された確定促し電文を子機6(α)へ返信する。図6に示す確定促し電文を受信した子機6(α)も同様の処理を行う。更に、正常に経路開通ができたことを示す表示(例えば経路開通の状況を示すLEDで10秒点灯させる)を行うとすれば、経路開通を行った作業者に結果が反映され、作業の信頼性が向上することになる。
【0032】
経路開通を促す専用電文(図1に示す電文(開通促し電文)のこと)の発信をさせるため、作業者が誤って最下流の端末ではない中継機7(B)の専用スイッチを操作した場合について説明する。開通促し電文は、最下流端末から専用スイッチを操作して発信するのが正しい操舵であるので、最下流端末以外の上流側端末から開通促し電文を操作発信することは誤った操作になる。この場合には、本発明によると、中継機7(B)は、その下流端末として子機6(α)が存在していることを知っているため、経路開通の状況を表すLEDを点滅させることで操作にエラーのあることを作業者に通知すると共に、経路開通を促す電文の発信動作を行わない。中継機7(B)のこの動作によって、縁組作業の信頼性を一層向上させることができる。
【0033】
図7には、本発明による無線テレメータシステムの処理内容がフローとして示されている。図7に示すフロー図によれば、子機6又は中継機7は、縁組がされているかを確認しており(ステップ1)、縁組がされると時間計測用タイマーをスタートさせる(ステップ2)。次に、予め定めた時間、本例では2時間としてタイマースタートからの経過時間を確認している(ステップ3)。2時間を経過していない場合は、縁組情報から下流側の無線端末の存在を確認する(ステップ6)。下流側の無線端末が存在するとわかった場合には、通信待機処理に移行される(ステップ5)。一方で下流側の無線端末の存在がない場合には、改めて経過時間の確認をする(ステップ3)。縁組が確認されてから予め定めた2時間を経過してもなお下流側の無線端末の登録の確認がされないとき(ステップ6で否の判定、ステップ3で是と判定)、自身が最下流の無線端末であると判断し、経路開通を促す電文(開通促し電文)の発信処理を行う(ステップ4)。このような処理を行うことにより、作業者が経路開通の作業を忘れていたとしても、経路開通作業が自動的に実施されることから、システムの信頼性の向上が期待できる。
【0034】
また、経路開通の電文(開通促し電文)を自動発信する無線端末として、本例では子機6(a〜n)と子機6(α)の複数端末から当該電文が発信される場合が考えられる。本発明による無線テレメータシステムにおいては、親機5が最初に、子機6(a)の情報を含む中継機7(A)からの図8に示す電文を受信し、その後に、子機6(α)の情報を含む中継機7(B)からの図3に示す電文を受信した場合の動作を、図9に示すフロー図に従って説明する。親機5は、最初に図8に示された子機6(a)の情報を含む電文を受信すると、ID及び識別符号のデータ列で先頭にある端末データ(本例では中継機7(A)のデータとなる)に注目(ステップ11)する。ここで、IDと識別符号のデータ列で先頭データに注目することは、親機5を除く経路上での最上流端末に注目することであり、同系列の経路の無線端末からの電文であるかを容易に判別するためである。
【0035】
次に、注目したデータが自身の経路情報で既に登録済みかを確認し(ステップ12)、登録されていなければ、電文内容に基づき新規登録し(ステップ15)、登録したことを示す図4に示す応答電文(確定促し電文)を返信する(ステップ16)。その後、子機6(α)から図3に示す電文(開通促し電文)を受信した親機5は、やはりIDと識別符号のデータ列で先頭にある端末データ(本例では中継機7(A)のデータとなる)に注目し(ステップ11)し、自身の経路情報で既に登録済みかを確認する(ステップ12)。このとき、既に登録済みとなっているため、注目したデータ、即ち中継機7(A)に関係する経路の端末数を確認すると、図8に示す電文(開通促し電文)の情報が登録されているため、『2』であることを知る(ステップ13)。即ち、最初に子機(a)から開通促し電文が発信されているので、『子機(a)→中継機(A)→親機』の経路で親機まで開通促し電文が伝達され、中継機(A)が親機に送信する開通促し電文内の端末数は、『自身+子機(a)=2台』となっている。
【0036】
その後の子機6(α)からの図3に示す受信電文中の端末数データと既に登録されている端末数とを比較すると(ステップ14)、受信電文中の端末数『4』は既に登録済みの端末数『2』よりも大きな値となっていることが確認される。即ち、子機(α)から開通促し電文が発信されると、図10に示すように、『子機(α)→中継機(B)→中継機(A)→親機』の経路で親機まで伝達される。ここで、電文内の端末数は、子機(α)から中継機(B)までの電文では『自身(子機(α))=1台』、中継機(B)から中継機(A)への電文では『自身(中継機(B))+子機(α))=2台』、中継機(A)から親機への電文では『自身(中継機(A))+中継機(B)+子機(α)+子機(a))=4台』として通知される。このため、受信電文である図3に示す情報で登録データを更新する(ステップ15)と共に、登録したことを示す図4に示す電文(確定促し電文)を返信する。
【0037】
一方で前記例と逆の順で受信されたときも考える。即ち、子機6(α)から図3の電文(開通促し電文)を受信した後に、子機6(a)から図8に示す電文(開通促し電文)を受信した場合においては、ステップ14にて登録済みデータの端末数のほうが多いため、図11の電文(確定促し電文)を返信する(ステップ17)とともに電文内容は破棄されることになる。ここで、図11の電文(確定促し電文)を受信した中継機7や子機6もデータ更新はしないとすれば、同一経路上の別の無線端末が経路開通電文を自動発信した場合においても正しい経路登録ができることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態にかかわる経路開通の電文例である。
【図2】本発明の実施形態にかかわる経路開通の電文例である。
【図3】本発明の実施形態にかかわる経路開通の電文例である。
【図4】本発明の実施形態にかかわる経路開通の電文に対する応答電文例である。
【図5】本発明の実施形態にかかわる経路開通の電文に対する応答電文例である。
【図6】本発明の実施形態にかかわる経路開通の電文に対する応答電文例である。
【図7】本発明の実施形態の自動的に経路開通電文を発信するときのフロー図である。
【図8】本発明の実施形態にかかわる経路開通の電文例である。
【図9】本発明の実施形態の親機が経路開通電文を受信した際の処理フロー図ある。
【図10】本発明の実施形態にかかわる子機と中継機の間、中継機間及び中継機と親機との間の経路開通の電文例である。
【図11】本発明の実施形態にかかわる経路開通の電文に対する応答電文例である。
【図12】従来の無線テレメータシステムのシステム図である。
【図13】従来の親機と子機及び中継機のブロック図である。
【図14】一般的なセンタからの電文フォーマット図である。
【図15】従来の縁組作業の手順を示したシーケンス図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ホストコンピュータ 2 センタ網制御装置
3 電話回線 4 端末網制御装置
5 親機 6 子機
7 中継機 8 メータ
10 アンテナ 11 無線通信ユニット
12 CPU 13 端末網制御装置と接続のためのI/F
14 ROM 15 RAM
16 電池 17 データ登録用の不揮発性メモリ
18 スイッチ 19 表示装置
20 アンテナ 21 無線通信ユニット
22 CPU 23 メ−タやセンサーと接続のためのI/F
24 ROM 25 RAM
26 電池 27 データ登録用不揮発メモリ
28 スイッチ 29 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センタ網制御装置に電話網を介して接続された端末網制御装置と、前記端末網制御装置に有線接続された無線親機と、前記無線親機と直接に又は無線データを中継する中継機を介して通信を行う無線子機と、前記無線子機又は前記中継機に有線接続されたガス、水道等のマイコンメータとを備え、前記無線親機、前記無線子機及び前記中継機から成る無線端末相互の間で特定小電力無線方式の無線通信を行う無線テレメータシステムであって、直近上下の前記無線端末間での無線通信を可能とするために行われる縁組作業において、交換すべき互いの端末情報として、前記無線通信に必要な基本情報と縁組相手が自身に対して上流側又は下流側かの上下関係情報のみの情報交換を行い、
前記縁組作業の終了後に、最下流となった前記無線端末から順次、前記無線親機まで、当該無線端末の経路情報を含み経路開通を促す開通促し電文を上流側の前記無線端末に対して発信することで前記無線通信の通信経路を確定することを特徴とする無線テレメータシステム。
【請求項2】
前記縁組作業を行う前記無線子機又は前記中継機は、前記縁組相手が自身に対して上流側の無線端末か下流側の無線端末であるかを識別する専用の切替えスイッチを備えていることを特徴とする請求項1記載の無線テレメータシステム。
【請求項3】
前記無線端末は、下流側の前記無線端末からの前記開通促し電文を受信したことに応じて、自身が持つ前記経路情報を前記開通促し電文に加えることで前記経路情報を更新し、更新された当該開通促し電文を更に上流側の前記無線端末へ送信することを特徴とする請求項1又は2記載の無線テレメータシステム。
【請求項4】
前記開通促し電文を受信した前記無線親機は、当該開通促し電文中に含まれる前記経路情報をもとに配下の前記無線子機又は前記中継機についての情報更新を行うと共に、前記通信経路の確定を促す確定促し電文を前記開通促し電文を発信した前記無線端末に向けて返信し、返信経路上の前記各無線端末は、前記確定促し電文を受信することに応じて自身の前記経路情報を更新すると共に、自身が前記開通促し電文の発信端末でない場合には下流側の前記無線端末へ転送し、自身が当該発信端末である場合には経路の開通処理が正常に行えたことを表示することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の無線テレメータシステム。
【請求項5】
前記縁組作業を行った前記無線子機又は前記中継機は、前記開通促し電文で発信処理の際に、更に下流側に前記無線端末の登録があった場合には発信処理を取りやめ、下流側の前記無線端末の存在を通知する表示を行うことを特徴とする請求項1記載の無線テレメータシステム。
【請求項6】
前記縁組作業を行った前記無線子機又は前記中継機は、予め定めた時間内に下流側に無線端末の登録が無い場合には、自身が最下流の前記無線端末であると判断し、自動的に前記開通促し電文を発信することを特徴とする請求項1記載の無線テレメータシステム。
【請求項7】
前記開通促し電文を受信した前記無線親機は、登録済みデータに同系列の前記経路情報があるか否かを確認し、前記経路情報データがある場合にはそのデータから前記通信経路上に登録されている前記無線端末の総数を算出するとともに、受信した電文内容の端末数と比較し、前記端末数が多いデータを最新情報として更新することを特徴とした請求項1〜6のいずれか1項記載の無線テレメータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−21653(P2010−21653A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178321(P2008−178321)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】