説明

牽引用ベッド装置

【課題】極めて簡単な構造で、患者が牽引用ベッドから容易に乗り降りできるようにする。
【解決手段】牽引用ベッド1に取付けられる左右一対の脇装着具10が、患者Kの脇に装着される本体部11と、本体部11を牽引用ベッド1に連結するアーム部12とを有する。アーム部12の基端部が、上下方向軸線α回りに回動可能として、牽引用ベッド1のうち長手方向略中間部に対して連結される。脇装着具10は、上下方向軸線α回りの回動に応じて、本体部11が牽引用ベッド1の側方に位置される待避位置と、本体部11が待避位置よりも幅方向内方側に移動された使用位置とを選択的にとり得る。アーム部12の中間部が、牽引用ベッド1の上面1bよりも十分に高い位置に設定されて、待避位置のときに牽引用ベッド1に乗り降りする患者Kの手すりとして使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰痛治療等に用いる牽引用ベッド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腰痛治療等のために、牽引用ベッド上で例えば仰向け姿勢となった患者の腰部に牽引用ベルトを巻回して、この牽引用ベルトをワイヤ等を介して牽引機によって牽引することが行われている。この牽引の際、患者の脇に装着される左右一対の脇装着具によって、患者が牽引方向となる足下側に向けて不用意に移動されないようにすることも行われている(特許文献1参照)。この脇装着具は、一般的に、患者の脇に位置される本体部と、この本体部と牽引用ベッドとを連結するアーム部とを有している。そして、アーム部の牽引用ベッドへの取付部位を上下方向軸線回りに回動可能とすることにより、本体部を、牽引用ベッドへの患者の乗り降りの際に邪魔にならない待避位置と患者の脇に位置される使用位置との間で選択的に移動可能としている。
【0003】
牽引用ベッドを利用する患者は、例えば腰痛のために動きが制約されているのが実情であり、牽引用ベッドへの乗り降りにかなりの苦痛を伴うことになる。すな、牽引用ベッドに乗ろうとする患者は、牽引用ベッドの側方から一旦牽引用ベッドに腰掛け、その後牽引用ベッド上に横たわるように姿勢変更しており、牽引用ベッドから降りるときは上記とは逆の順で姿勢変更を行うが、このような牽引用ベッドへの乗り降りがかなり大変なものとなり、付き添いが必要な場合すら生じる。このため、牽引用ベッドを全体的にその長手方向略中間部を中心に水平方向軸線回りに揺動可能として、牽引用ベッドへの乗り降りの際には牽引用ベッドを略上下方向に伸びる姿勢状態とし、あたかも椅子に着座あるいは離座するようにして牽引用ベッドに乗り降りできるようにすることも提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−19561号公報
【特許文献2】特開2006−87853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、牽引用ベッドに乗り降りするのに、牽引用ベッドを全体的に水平方向軸線回りに揺動駆動するのは、装置全体としてかなり大がかりなものとなり、構造の複雑化やコストの大幅アップとなる。
【0005】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、極めて簡単な構造で、牽引用ベッドへの患者の乗り降りを補助できるようにした牽引用ベッド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
牽引用ベッド上の患者が足下方向からの牽引力を受けて移動するのを規制するための左右一対の脇装着具を備えた牽引用ベッド装置において、
前記各脇装着具が、基端部が牽引用ベッドに保持されたアーム部と、該アーム部の先端部に取付けられて患者の脇に位置される本体部とを有し、
前記各アーム部の前記基端部は、牽引用ベッドの長手方向略中間部でかつ幅方向端部付近において、上下方向軸線回りに回動可能として牽引用ベッドに保持されており、
前記各脇装着具は、前記上下方向軸線回りの回動に応じて、平面視において、前記本体部が前記基端部よりも患者の頭部側寄りとなる位置において牽引用ベッドの幅方向端部付近に待避した待避位置と、該本体部が該待避位置よりも牽引用ベッドの幅方向内方側へ位置された使用位置とを選択的にとり得るようにされており、
前記待避位置において、前記各アーム部の中間部分が、牽引用ベッドに乗り降りする患者の手すり部となるように、牽引用ベッドの上面よりも十分に高い位置となるように設定されている、
ようにしてある。上記解決手法によれば、牽引用ベッドから乗り降りしようとする患者は、待避位置にあるときの脇装着具におけるアーム部を手すりとして利用して、容易に乗り降りすることができる。
【0007】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記待避位置において、前記各アーム部の中間部分が、平面視において牽引用ベッドのほぼ長手方向に沿ってほぼ直線状に延びるように設定されている、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、患者の体格の相違や牽引用ベッドの長手方向における患者の乗り降り位置の相違等に幅広く対応して、アーム部を手すりとして有効に利用することができる。
【0008】
前記本体部が、上下方向に伸びる略円柱状に形成され、
前記アーム部の前記先端部が、前記本体部に対して、該本体部の上端面から延出されるようにして連結されている、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、アーム部を、本体部付近から手すりとして有効に利用できる中間部を構成する上で好ましいものとなる。
【0009】
前記アーム部の前記中間部が、前記基端部から徐々に高くなって前記本体部の上面よりも高い位置にまでほぼ直線状に傾斜して伸びるように設定されている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、アーム部のうち患者の好みの高さ位置を把持させるようにする上で好ましいものとなる。
【0010】
前記アーム部の前記中間部が、牽引用ベッドの上面とほぼ平行に直線状に長く伸びる水平部を有するように設定されている、ようにしてある(請求項5対応)。この場合、手すりとなる部分を同一の高さ位置に設定しつつ、手すりとなる部分の長さを極力長く確保して、牽引用ベッドの長手方向において患者が乗り降りしようとする位置の相違等に対応する上で好ましいものとなる。
【0011】
前記本体部が前記待避位置よりも牽引用ベッドの幅方向外方側へさらに移動するのを規制するストッパが設けられている、ようにしてある(請求項6対応)。この場合、アーム部が手すりとして利用されている場合に、本体部が牽引用ベッドの幅方向外方側へ移動するようにアーム部が不用意に揺動してしまう事態を防止する上で好ましいものとなる。
【0012】
前記使用位置の状態において、前記左右一対の本体部が所定以上さらに接近する方向へ移動するのを規制するストッパが設けられている、ようにしてある(請求項7対応)。この場合、牽引力を受けて左右一対の本体部が不必要に接近し過ぎてしまう事態を防止する上で好ましいものとなる。また、アーム部を手すりとして利用しているときに、アーム部が大きく牽引用ベッドの幅方向内方側へと移動してしまう事態を防止する上でも好ましいものとなる。
【0013】
牽引用ベッドのフレームが、長手方向に伸びる左右一対の前後フレーム部と、幅方向に伸びて該左右一対の前後フレーム同士を連結する幅方向フレーム部とを有し、
前記幅方向フレーム部のうち特定の幅方向フレーム部が、左右一対の前記アーム部における左右一対の前記基端部間に位置されている、
ようにしてある(請求項8対応)。この場合、幅方向に伸びる幅方向フレーム部を有効に利用して、アーム部の取付強度を確保する上で好ましいものとなる。
【0014】
前記特定の幅方向フレーム部が、前記左右一対の長手方向フレーム部の下面に接合されており、
前記アーム部の前記基端部が、少なくとも前記長手方向フレーム部の幅方向端面に固定された取付ブラケットを介して牽引用ベッドに連結されており、
前記取付ブラケットは、前記長手方向フレーム部の下面よりも下方へ伸びる延長雄部を有し、
前記特定の幅方向フレーム部の幅方向端が、前記延長部に当接されているかあるいは該延長部の直近に位置されている、
ようにしてある(請求項9対応)。この場合、手すりとして利用されたときにアーム部に作用する上方からの外力を、取付ブラケットを会して特定の幅方向フレーム部によって効果的に受け止めて、アーム部の取付強度確保等の上で好ましいものとなる。
【0015】
前記アーム部の前記基端部が、前記長手方向フレーム部および前記特定の幅方向フレームに対してそれぞれ固定された取付ブラケットを介して、牽引用ベッドに保持されている、ようにしてある(請求項10対応)。この場合、アーム部を牽引用ベッドに対して極めて強固に取付けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、脇装着具を、牽引用ベッドに対して患者が乗り降りするときに使用する手すりとして兼用できるようにしたので、極めて簡単な構造でもって牽引用ベッドからの患者の乗り降りの補助を行うことができる。。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1、図2において、1は牽引用ベッド、2は牽引機であり、牽引機2は、牽引用ベッド1の足下側の端部付近に設置される。すなわち、患者Kが例えば仰向け姿勢で横たわる牽引用ベッド1は、その長手方向のうち牽引機2側に患者Kの足下が位置され、牽引機2とは反対側の長手方向端部側に患者Kの頭部が位置されるようになっている。牽引用ベッド1は、その4隅に設けた脚部1aによって、その上面4bが床面から所定高さ位置(例えば40cm前後)となるように設定されている。
【0018】
牽引用ベッド1には、左右一対の脇装着具10が保持されている。この脇装着具10は、上下方向に伸びる本体部11と、本体部11と牽引用ベッド1とを連結するアーム部12とを有する。アーム部12は、その基端部が、取付ブラケット20を介して、後述のように上下方向軸線回りに回動可能として取付けられている。取付ブラケット20の位置、つまりアーム部12の位置は、牽引用ベッド1の長手方向略中間部で、かつ牽引用ベッド1の幅方向端部付近(より具体的には牽引用ベッド1の幅方向端から若干幅方向外方側に寄った位置)とされている。
【0019】
本体部11は、既存のように、その外形が略円柱状とされて、弾性体によって形成されている。アーム部12は、後述するように手すりとしても機能される関係上、十分な強度を有するように形成されて、例えば鉄やアルミニウム合金等の金属あるいは繊維強化プラスチック等によってパイプ状に形成されている。
【0020】
アーム部12は、取付ブラケット20から短く上方へ伸びた後、本体部11のよりも高い位置に向けて徐々に高くなるように傾斜しつつ直線状に伸び、本体部11の上方において下方に向けて湾曲されて、本体部11に連結されている。アーム12は、本体部11内では例えば上下方向に直線状に伸びている(本体部11がアーム部12の先端部を取り巻くようにしてアーム部12の先端部に連結されている)。このように、アーム部12は、本体部11付近では、本体部11の上面から延出された構造となっている。このように、アーム部12を本体部11の上面から延出させる構造とすることにより、例えば、アーム部12を本体部11の下面から延出させる場合に比して、本体部11の上下方向長さ分だけアーム部12の全長を短くすることが可能になっている。
【0021】
アーム部12は、上下方向軸線回りの回動に応じて、図2,図3一点鎖線で示す使用位置と、図1,図3実線で示す待避位置とを選択的にとり得るようになっている。使用位置では、左右一対の本体部11が、牽引用ベッド1の幅方向内方側寄りの位置とされて、例えば仰向け姿勢で牽引用ベッド1上にある患者Kの脇に位置される。患者Kの腰部に装着されたベルト30を、図示を略すワイヤ等を介して牽引機2によって牽引することにより、患者Kの腰を伸ばす手法での治療が行われる。
【0022】
前記待避位置においては、本体部11は、牽引用ベッド1の幅方向端部よりも若干幅方向外方側に位置される。そして、待避位置では、アーム部12は、平面視において、牽引用ベッド1の長手方向の側端縁部に沿ってほぼ直線状に伸びるようにされる。つまり、待避位置にあるアーム部12は、平面視において、取付ブロック20と本体部11とを結ぶ仮想軌跡上に位置される。
【0023】
次に、図4〜図8を参照しつつ、上下方向軸線α回りに揺動(回動)可能としてアーム部12の牽引用ベッド1への取付ける場合の一例について説明する。まず、アーム部12の牽引用ベッド1への取付部位には、取付ブラケット20が固定される。この取付ブラケット20は、牽引用ベッド1のフレーム30に固定される。すなわち、図4、図5に示すように、牽引用ベッド1は、そのフレーム30として、前後方向(長手方向)に伸びる左右一対の長手方向フレーム部31と、牽引用ベッド1の幅方向に伸びて左右一対の長手方向フレーム部31同士を連結する複数の幅方向フレーム部32を有する。この複数の幅方向フレーム部32のうち、特定の1つの幅方向フレーム部32Aが、後述するように取付ブラケット20の取付部位を補強するようになっている。この特定の幅方向フレーム部32Aは、十分な強度(剛性)を有するように、例えば鉄板を加工する等によって、大きな閉断面を有するように形成されている。
【0024】
取付ブラケット20は、例えば鉄やアルミニウム合金等の金属によって、全体的に略L字状に形成されて、それぞれ厚肉とされた略90度の関係を有する第1部分21と第2部分22とを有する。第1部分21は、長手方向フレーム部31の側面に着座された状態で、ボルト等の固定具51によって長手方向フレーム部31に固定されている。第1部分21は、長手方向フレーム部31の下面よりもさらに下方へ延長された延長部21aを有し、この延長部21a部分から、上記第2部分22が牽引用ベッド1の幅方向外方側に向けて水平に伸びている。そして、前記特定の幅方向フレーム部32Aの幅方向端面が、延長部21aに当接されている(延長部21aの直近に位置させるようにしてもよい)。なお、図5において、特定の幅方向フレーム部32Aと長手方向フレーム部31とのボルトや溶接等による接合部位が符合βで示される)。
【0025】
図7に示すように、上記第2部分22の上面には、上方に向けて伸びる支軸23が、ボルト等の固定具53によって固定されている。この支軸23の軸線が、上下方向軸線αを構成するものであり、支軸23の外周には、中間部材24が回動可能に嵌合されている。そして、支軸23に対する中間部材24の抜け止めが、支軸23の径方向外方側から取付けられるボルトを利用した固定具54によって行われている。この固定具54の先端部は、中間部材24を貫通して支軸23に螺合されている。この固定具54は、中間部材24が支軸23回りに所定角度範囲を超えて回動するのを規制するストッパとして機能するようになっている。すなわち、図8に示すように、中間部材24には、固定具54が貫通する部分に周方向に伸びる切欠24aが形成されて、この切欠24aの周方向一端側と他端側とが固定具54に当接されるストッパ面24b、24cとされて、切欠24aの角度範囲内でのみ中間部材24が回動可能となっている。
【0026】
脇装着具10が待避位置にあるときに、固定具54が上記ストッパ面24bに当接されて、脇装着具10がそれ移乗牽引用ベッド1の幅方向外方側へ回動するのが規制される(本体部11が待避位置の状態からさらに牽引用ベッド1の幅方向外方側へ移動することの規制)。また、固定具54が上記ストッパ面24cに当接した位置が、図3一点鎖線で示す使用位置方向への限界位置を決定する(図3は、本体部11が牽引用ベッド1の幅方向内方側へもっとも移動した位置を示してある)。
【0027】
前述した中間部材24は、待避位置において牽引用ベッド1の幅方向外方側へ向けて短く伸びる延長部24dを一体に有する。そして、この延長部24dの先端部上面に、ボルト等の固定具55によって、アーム部12の基端部が固定されている。これにより、アーム部12は、支軸23回りに回動されて、前述した待避位置と使用位置とを選択的にとり得るようになっている。上記延長部24dを設けることにより、アーム部12の基端部が、牽引用ベッド1と干渉することなく、牽引用ベッド1の幅方向端部付近において上下方向軸線回りに回動可能とされる。なお、図7中、25は、中間部材24の上面に固定される飾り板である。
【0028】
図7の分解状態から、組み立てが完了された後の状態が、図6に示される。図6の組立完了状態でもって、取付ブラケット20をフレーム30(長手方向フレーム部31)に固定することによって、脇装着具10の牽引用ベッド1への取付けが行われる。なお、支軸23があらかじめ取付けられた状態での取付ブラケット20をフレーム30へ固定した後に、支軸23に中間部材24やアーム部12の取付け作業を行う等のこともでき、このような組立手順は適宜変更できるものである。
【0029】
移乗のような構成において、待避位置にあるアーム部12は、その基端部と先端部との間の中間部分12aが、傾斜して伸びる手すり部として機能される。すなわち、図1に示すように、牽引用ベッド1に移乗しようとする患者Kは、牽引用ベッド1の端部に腰掛けた後、アーム部12の中間部12aを手指で把持して、自らの体重の一部あるいは殆どをアーム部12で支承させつつ、牽引用ベッド1上にあお向け姿勢となる。逆に、牽引用ベッド1から降りようとする患者Kは、あを向け姿勢の状態から、アーム部12の中間部12aを把持しつつ、図1に示すように牽引用ベッド1の端部に横向きで腰掛けた姿勢をとるように姿勢変更すればよい。このように、牽引用ベッド1への患者Kの乗り降りの際に、アーム12の中間部12aが手すりとしてりようすることにより、患者Kは牽引用ベッド1に対して容易に乗り降りできることになる。中間部12aは傾斜されているので、患者Kは、中間部12aのうち所望の高さ位置を把持して、手すりとして利用することが可能となる。このように、本発明では、既存の脇装着具10をそのまま有効に利用して手すりを構成するので、例えば別途専用の手すりを設けたり、あるいは牽引用ベッド1を全体的に起倒可能とする場合に比して、構造が簡単で部品点数も少なくてするものである。
【0030】
また、使用位置において、本体部11は牽引力によって患者Kの足下側への外力を受けるが、本体部11に作用する足下側への外力は、本体部11を待避位置から使用位置へ向かう方向への外力、つまり左右一対の本体部11同士を互いに接近させる方向への外力として作用するので、本体部11は確実に患者Kの脇に装着された状態が維持されることになる。このことは、患者K自身の力によって、左右一対の本体部11が互いに離間する(脇から外れる)のを阻止しようとする必要がなくなり、安定して牽引の治療を受けさせることが可能となる。
【0031】
図9は、本発明の第2の実施形態を示すものである。本実施形態では、アーム部12の中間部12d(前記実施形態の中間部12aに対応)を、牽引用ベッド1の上面1bよりも十分高い位置(例えば上面1bから20〜30cm程度の高さ)において、水平方向に長く伸びるようにしたものである。このため、アーム部12は、取付ブラケット20から中間部12dの一端部まで上下方向に長く伸びる部分上下部分12d2を有し、この上下部分12dをも手すりとして利用することも可能となっている。水平に伸びる恥部12dを高い位置とする関係上、中間部12dの他端部から伸びて本体部11の上面から延出する部分も、前記実施形態の場合に比して上下方向に長く伸びるように設定されている。本実施形態の場合は、アーム部12のうち手すりとして機能される中間部12dを水平方向に極力長く確保するようになっているので、牽引用ベッド1から乗り降りしようとする患者Kの長手方向位置の相違に対応する上で好ましいものとなる。
【0032】
図10は、本発明の第3の実施形態を示すもので、アーム部12における中間部12eを、基端部側から傾斜して伸びる第1部分12e1と、水平方向に長く伸びる12e2との2つの部分で構成して、第1部分12e1でもって患者Kによる把持位置の高さの相違に対応し、第2部分12e2でもって把持位置の牽引用ベッド1の長手方向位置の相違に対応するようになっている。
【0033】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。アーム部12の基端部を、例えば支軸23に対して直接連結する等により、上下方向軸線α回りにオフセットさせないような設定としてもよい。アーム部12が待避位置からそれ以上牽引用ベッド1の幅方向外方側へ回動しないようにするストッパ機構は、適宜の構造のものを採択し得るものであり、例えば、取付ブラケット20の第2部分から上方へ伸びて、待避位置においてアーム部12に対して牽引用ベッド1の幅方向外方側から当接されるピン状のストッパ部材を採択する等のことができる。同様に、脇装着具10(アーム部12)が所定以上使用位置側へさらに牽引用ベッド1の幅方向内方側へ移動するのを規制するストッパも、上記ピン状のストッパ部材を利用して構成する等、適宜の構造のものを採択することができる。待避位置において、節度感を持たせるために、脇装着具10(アーム部12)が待避位置にきたときに作動されるクリック機構を設けておくことができる。取付ブラケット20のフレーム30に対する取付強度向上のために、例えば、特定の幅方向フレーム部32に対して取付ブラケット20をボルト等の固定具や溶接等によって固定するようにしてもよい(この固定部分を図5において符合γで示す)。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、牽引用ベッドに患者が乗り降りする途中の状態を示す斜視図。
【図2】患者の脇に脇装着具が位置された状態で、牽引の治療を受けようとしている状態を示す斜視図。
【図3】脇装着具の使用位置と待避位置とを示す平面図。
【図4】取付ブラケット、長手方向フレーム部、幅方向フレーム部等を示すもので、牽引用ベッドの下面の状態を示す斜視図。
【図5】取付ブラケットと長手方向フレーム部と幅方向フレーム部との関係を示すもので、図3のX5−X5線相当断面図。
【図6】取付ブラケットと脇装着具との組立完了状態を示す斜視図。
【図7】図6の分解斜視図。
【図8】支軸と中間部材との嵌合関係を示す要部断面図。
【図9】本発明の第2の実施形態を示すもので、アーム部における中間部の形状を変更した場合を示す要部側面図。
【図10】本発明の第3の実施形態を示すもので、アーム部における中間部の形状を変更した場合を示す要部側面図。
【符号の説明】
【0035】
K:患者
α:上下方向軸線
1:牽引用ベッド
1b:牽引用ベッドの上面
2:牽引機
10:脇装着具
11:本体部
12:アーム部
12a:中間部(手すり部分)
12d:中間部(手すり部分)
12d2:中間部(手すり部分)
12e1、12e2:中間部(手すり部分)
20:取付ブラケット
23:支軸
24:中間部材
24a:切欠
24b:ストッパ面(待避位置用)
24c:ストッパ面(使用位置用)
30:フレーム
31:長手方向フレーム部
32:幅方向フレーム部
32A:特定の幅方向フレーム部
54:固定具(所定以上の回動を規制するストッパ)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引用ベッド上の患者が足下方向からの牽引力を受けて移動するのを規制するための左右一対の脇装着具を備えた牽引用ベッド装置において、
前記各脇装着具が、基端部が牽引用ベッドに保持されたアーム部と、該アーム部の先端部に取付けられて患者の脇に位置される本体部とを有し、
前記各アーム部の前記基端部は、牽引用ベッドの長手方向略中間部でかつ幅方向端部付近において、上下方向軸線回りに回動可能として牽引用ベッドに保持されており、
前記各脇装着具は、前記上下方向軸線回りの回動に応じて、平面視において、前記本体部が前記基端部よりも患者の頭部側寄りとなる位置において牽引用ベッドの幅方向端部付近に待避した待避位置と、該本体部が該待避位置よりも牽引用ベッドの幅方向内方側へ位置された使用位置とを選択的にとり得るようにされており、
前記待避位置において、前記各アーム部の中間部分が、牽引用ベッドに乗り降りする患者の手すり部となるように、牽引用ベッドの上面よりも十分に高い位置となるように設定されている、
ことを特徴とする牽引用ベッド装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記待避位置において、前記各アーム部の中間部分が、平面視において牽引用ベッドのほぼ長手方向に沿ってほぼ直線状に延びるように設定されている、ことを特徴とする牽引用ベッド装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記本体部が、上下方向に伸びる略円柱状に形成され、
前記アーム部の前記先端部が、前記本体部に対して、該本体部の上端面から延出されるようにして連結されている、ことを特徴とする牽引用ベッド装置。
ことを特徴とする牽引用ベッド装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記アーム部の前記中間部が、前記基端部から徐々に高くなって前記本体部の上面よりも高い位置にまでほぼ直線状に傾斜して伸びるように設定されている、ことを特徴とする牽引用ベッド装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記アーム部の前記中間部が、牽引用ベッドの上面とほぼ平行に直線状に長く伸びる水平部を有するように設定されている、ことを特徴とする牽引用ベッド装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記本体部が前記待避位置よりも牽引用ベッドの幅方向外方側へさらに移動するのを規制するストッパが設けられている、ことを特徴とする牽引用ベッド装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
前記使用位置の状態において、前記左右一対の本体部が所定以上さらに接近する方向へ移動するのを規制するストッパが設けられている、ことを特徴とする牽引用ベッド装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、
牽引用ベッドのフレームが、長手方向に伸びる左右一対の前後フレーム部と、幅方向に伸びて該左右一対の前後フレーム同士を連結する幅方向フレーム部とを有し、
前記幅方向フレーム部のうち特定の幅方向フレーム部が、左右一対の前記アーム部における左右一対の前記基端部間に位置されている、
ことを特徴とする牽引用ベッド装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記特定の幅方向フレーム部が、前記左右一対の長手方向フレーム部の下面に接合されており、
前記アーム部の前記基端部が、少なくとも前記長手方向フレーム部の幅方向端面に固定された取付ブラケットを介して牽引用ベッドに連結されており、
前記取付ブラケットは、前記長手方向フレーム部の下面よりも下方へ伸びる延長雄部を有し、
前記特定の幅方向フレーム部の幅方向端が、前記延長部に当接されているかあるいは該延長部の直近に位置されている、
ことを特徴とする牽引用ベッド装置。
【請求項10】
請求項8において、
前記アーム部の前記基端部が、前記長手方向フレーム部および前記特定の幅方向フレームに対してそれぞれ固定された取付ブラケットを介して、牽引用ベッドに保持されている、ことを特徴とする牽引用ベッド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−43486(P2008−43486A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220977(P2006−220977)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【出願人】(000153041)株式会社日本メディックス (28)
【Fターム(参考)】