説明

現像ローラの塗布液塗布方法、塗布装置

【課題】塗布液を収納する塗布液槽の内側に配置された筒型形状をなすマスキング部材に挿入した現像ローラ芯金を移動させ、現像ローラ芯金の前記マスキング部材の端部から順次露呈する部分に、前記塗布液槽に収納した塗布液を接触させて塗布する現像ローラの塗布液塗布方法において、形成した塗布層にスジ故障やムラの発生させない現像ローラ塗布液塗布方法、および、前記現像ローラ塗布液塗布方法を実施可能な塗布装置を提供すること。
【解決手段】マスキング部材の内壁を、前記現像ローラ芯金の外周の全周にわたり接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子写真方式の画像形成装置に使用される現像ローラの製造に際し、現像ローラ芯金の外周面に塗布液を塗布して所望の層を形成する現像ローラの塗布液塗布方法および塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置、例えば複写機やプリンターに使用される現像ローラは、現像剤をその表面に担持させるために、表面を粗面にすることが行われる。
【0003】
表面の粗面化を行うに際し、現像ローラの素材となる現像ローラ芯金の外周にベースゴム層を形成し、その外周面を研磨する方法や、現像ローラ芯金の外周に、粗さ付与粒子を分散させた塗布液を塗布して、粗面化された表面を得る技術が提案されている(特許文献1)。粗さ付与粒子を分散させた塗布液を塗布する方法は、均一に粗面化された表面を得るに好ましい方法である。
【0004】
ところで、現像ローラ芯金のような、軸体をなす被塗布体に塗布液を塗布する方法には、浸漬塗布方法やリング塗布方法等、種々の塗布方法がある。
【0005】
浸漬塗布方法は、塗布液が収容された塗布液収容槽に被塗布体を浸漬して、塗布液に被塗布体を接触させて被塗布体の表面に塗布液を付着させて塗布する塗布方法である。
【0006】
浸漬塗布方法は、複雑な形状の被塗布体の表面に塗布を行うに適した塗布方法であるが、塗布液中に被塗布体を一定時間浸漬しておく必要があるので、被塗布体が塗布液と接触する時間が長くなり、被塗布体の表面が膨潤したり、溶解したりする危険がある。また、大量の塗布液を必要とするので少量生産には適さない。
【0007】
また、スリットを介して塗布液を被塗布体の周囲から供給して塗布するリング塗布方法は、被塗布体が塗布液と接触する時間が短いので、被塗布体の表面を膨潤させたり、溶解したりする危険はないが、粗さ粒子を分散させた塗布液を塗布するときスリットに目詰まりが発生する危険がある。
【0008】
このような、浸漬塗布方法やリング塗布方法の不具合を回避できる塗布方法として、被塗布体を、塗布液を収納する塗布液槽の内側に配置された筒型形状をなすマスキング部材に挿入するとともに移動させ、被塗布体のマスキング部材の端部から順次露呈する部分に塗布液槽に収納した塗布液を接触させて塗布する塗布方法が提案されている(特許文献2)。
【0009】
図8は、特許文献2に開示された塗布方法が適用可能な塗布装置の構成の一例を説明する模式図である。図8においては、塗布装置は断面にて示されている。
【0010】
図8に示される塗布装置は、内壁でもあるマスキング部材112を環囲する外壁113と、外壁113とマスキング部材112とを底部で連結する底面部材111とにより形成された空間を、塗布液Pを収容する塗布液槽110となす。図示されるように、マスキング部材112は塗布液槽110を鉛直方向に貫通する形態に配置される。そして、マスキング部材112の上端は、外壁113の上端よりも低く構成されている。
【0011】
塗布液槽110は、底面部材111に連結された塗布液送給パイプ410を介して、ポンプ300、タンク200に連結している。
【0012】
タンク200は塗布液Pを収容しており、ポンプ300を動作させることにより、タンク200に収容されている塗布液を、塗布液送給パイプ410を経由して、塗布液槽110に送給することができる。また、420は回収パイプであり、外壁113の上端を越えて流出した塗布液Pをタンク200に導く。
【0013】
図9は、特許文献2に開示された塗布方法による塗布液の塗布を説明する模式図である。
【0014】
塗布を開始するにあたり、先ず、非図示の被塗布体移動手段により被塗布体Wをマスキング部材112の中空部に挿入し、マスキング部材112の上端部から一部を露出させた状態に配置する。この状態が図9(a)である。次いで、ポンプ300を動作させて、タンク200に収容された塗布液Pを、液面が塗布液槽110のマスキング部材112の上端部を越えるに至るまで送給する。この状態が図9(b)である。図示されるように、塗布液槽110にマスキング部材112の上端部を越える液面に至った塗布液Pは、被塗布体Wに接触(接液)する。
【0015】
次いで、被塗布体Wを一定の速度で上昇させることにより、マスキング部材112の上端から順次塗布液槽110に露出する被塗布体Wの外周面に、塗布液Pが接触し、塗布液槽110から引き上げられた被塗布体Wの表面に順次塗布液Pが付着した塗布液層Pが形成される。この状態が図9(c)である。このように、液面から図示矢印方向に引き上げられた被塗布体Wの表面には塗布液Pが付着した塗布液層Pが形成される、すなわち、塗布液Pが塗布される。
【0016】
塗布液槽110内の塗布液Pは、ポンプ300により、常に、液面が外壁113の上端を越えるまで供給される。外壁113の上端を越えるまで供給された塗布液Pは、一部が外壁113の上端を越えて流出し、塗布液回収パイプ420を経由してタンク200に戻る。したがって、塗布液槽110に供給された塗布液Pの液面は、ほぼ、一定の高さに保たれ、マスキング部材112の上端と、外壁113の上端と高さの差の幅にて被塗布体Wに接触(接液)する。マスキング部材112の上端と、外壁113の上端と高さの差の幅にて塗布液Pを被塗布体Wに接触(接液)させつつ、被塗布体Wを一定速度で上方に引き上げることにより、被塗布体Wの表面には所望の厚さに塗布液Pを付着させることができ、乾燥工程を経て所望の厚さの塗布層を形成することができる。
【0017】
以上説明した特許文献2に開示された塗布方法は、被塗布体Wと塗布液Pとの接触時間が短いので、浸漬塗布方法における不具合(表面が膨潤、溶解の危険、大量の処理液を必要、)を発生させることがなく、また、リング塗布方法のようなスリットを必要としないので、粗さ粒子を分散させた塗布液を塗布するにも目詰まり等を発生させることがない好ましい塗布方法である。
【0018】
このように、特許文献2に開示された塗布方法は、被塗布体に所定の粒径の粒子を分散した塗布液を塗布するのにも好ましい塗布方法であり、現像ローラ芯金の外周に所定の粒径の粒子を分散した塗布液を塗布して所望の表面粗さの塗膜層を得る塗布方法として好ましいものである。
【0019】
ところで、特許文献2に開示された塗布方法においては、被塗布部材の移動を円滑に行うために、マスキング部材112と、被塗布体Wとは、間隙を介して対向させる必要がある。
【0020】
図10は特許文献2に開示された塗布方法におけるマスキング部材112と、被塗布体Wとの間隙部分の拡大図である。
【0021】
図示するように塗布液Pは、間隙で空気に接触する。塗布液Pは、有機溶剤に溶媒である樹脂を所定の比率にて溶解させたものであるので、空気に接触すると溶剤分が蒸発し、塗布液の組成は変化する。したがって、間隙部分で空気に接触した塗布液は、組成が変化してしまう。
【0022】
粗さ付与粒子が分散されている塗布液の場合は、空気接触部分にて溶剤分が蒸発すると、空気接触部分近傍の粗さ付与粒子の分散密度が高くなる。特に、間隙部分付近の塗布液の粗さ付与粒子の分散密度が高くなると粒子同士が凝集して粒子塊となり、被塗布部材への塗布液の接触を妨害して形成した塗布層にスジ故障を発生させたり、粗さ付与粒子の分散密度が高くなった塗布液が着接して塗布ムラ等の異常が発生させたりする原因となる。
【0023】
このような背景から、粗さ付与粒子が分散されている塗布液に適応し、目詰まりを起こすことなく、被塗布体の表面を膨潤させたり、溶解したりする危険や、スジ故障や塗布ムラ等を発生させない塗布膜形成方法が待望されている。
【特許文献1】特開2002−357949号公報
【特許文献2】特開2001−276701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
塗布液を収納する塗布液槽の内側に配置された筒型形状をなすマスキング部材に挿入した現像ローラ芯金を移動させ、前記現像ローラ芯金の前記マスキング部材の端部から順次露呈する部分に、前記塗布液槽に収納した塗布液を接触させて塗布する現像ローラの塗布液塗布方法において、
形成した塗布層にスジ故障やムラを発生させることのない現像ローラ塗布液塗布方法、および、前記現像ローラ塗布液塗布方法を実施可能な塗布装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記課題は、以下の手段により解決される。
(1)塗布液を収納する塗布液槽の内側に配置された筒型形状をなすマスキング部材に挿入した現像ローラ芯金を移動させ、前記現像ローラ芯金の前記マスキング部材の端部から順次露呈する部分に、前記塗布液槽に収納した塗布液を接触させて塗布する現像ローラの塗布液塗布方法において、
前記マスキング部材の内壁は、前記現像ローラ芯金の外周の全周にわたり接触していることを特徴とする現像ローラの塗布液塗布方法。
(2)前記塗布液は樹脂粒子を分散させたものであることを特徴とする前記(1)に記載の現像ローラの塗布液塗布方法。
(3)塗布液を収納する塗布液槽と、前記塗布液槽の内側に配置された、現像ローラ芯金を挿入可能な筒型形状をなすマスキング部材と、を有し、
現像ローラ芯金を、前記マスキング部材に挿入するとともに移動させ、前記現像ローラ芯金の前記マスキング部材の端部から順次露呈する部分に前記塗布液槽に収納された塗布液を接触させて塗布する塗布装置において、
前記マスキング部材は、前記現像ローラ芯金の外周の全周にわたり接触するものである
ことを特徴とする塗布装置。
(4)前記マスキング部材は、最小内径寸法dが、前記現像ローラ芯金の外径寸法をdとしたとき、0.7d≦d≦1.0dであることを特徴とする前記(3)に記載の塗布装置。
(5)前記マスキング部材は、フッ素系樹脂、あるいは、パーフロロエラストマーにて形成されたものであることを特徴とする前記(3)または前記(4)に記載の塗布装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、塗布液を収納する塗布液槽の内側に配置された筒型形状をなすマスキング部材に挿入した現像ローラ芯金を移動させ、前記現像ローラ芯金の前記マスキング部材の端部から順次露呈する部分に、前記塗布液槽に収納した塗布液を接触させて塗布する現像ローラの塗布液塗布方法において、
特に樹脂粒子を分散させた塗布液を塗布するときに、形成した塗布層にスジ故障やムラを発生させることのない現像ローラの塗布液塗布方法および塗布装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の現像ローラの塗布液塗布方法を適用可能な塗布装置を、以下、説明する。
【0028】
図1は、本発明の現像ローラの塗布液塗布方法を適用可能な塗布装置の模式図である。
【0029】
図1に示される塗布装置100は、塗布液槽110、回収槽120、タンク200、ポンプ300と、塗布液送給パイプ410、塗布液回収パイプ420を有する。
【0030】
塗布液槽110は、中心に開口111Hを有する底面部材111と、開口111Hを環囲して配置された円筒形態をなすマスキング部材112と、前記マスキング部材112を環囲する外壁113を有する円環状の容器体である。マスキング部材112は塗布液槽110を鉛直方向に貫通して配置されている。円筒形態をなす外壁113の上端の高さは、マスキング部材112の上端の高さよりも高く構成されている。
【0031】
また、回収槽120は、外壁113よりもさらに高さが高い円筒形態をなす最外壁121を塗布液槽110の外壁113を環囲して底面部材111に配した円環状の平面をなす容器体である。
【0032】
塗布液槽110における底面部材111には塗布液送給パイプ410の一端が接続されている。塗布液送給パイプ410の他端はタンク200に接続されており、塗布液槽110とタンク200とは塗布液送給パイプ410を通して連通している。ポンプ300は塗布液送給パイプ410の中途に配されている。そして、タンク200は塗布液Pを貯留しており、タンク200に貯留されている塗布液Pは、ポンプ300により塗布液送給パイプ410を通して塗布液槽110に送給される。
【0033】
回収槽120の外壁121には塗布液回収パイプが420接続されており、回収槽120とタンク200とは塗布液回収パイプ420を通して連通している。そして、回収槽120内の塗布液Pは、塗布液回収パイプ420を通してタンク200に戻るようになっている。
【0034】
塗布液槽110と回収槽120とを隔てる外壁113には、塗布液槽110と回収槽120とを連通させる連通孔113Hが配されている。開閉板113Bは、不図示の開閉板移動手段により連通孔113Hを開放する位置と閉鎖する位置とに配置可能な部材である。
【0035】
開閉板113Bが連通孔113Hを開放する位置に配置されたときには、塗布液槽110および回収槽120内の塗布液Pは、連通孔113Hを通して自在に移動できる。そして、開閉板113Bが連通孔113Hを閉鎖する位置に配置されたときには、塗布液槽110および回収槽120内の塗布液Pの、連通孔113Hを通しての移動は遮断される。
【0036】
図2は、マスキング部材112を説明する図である。
【0037】
図2に示すように、マスキング部材112は、上端と下端に円形の開口を有する筒体であり、上端部の内壁の内径寸法がd、下端部の内径寸法がd(d>d)である。そして、上端部に接続する円錐部分は均等な厚さの薄肉に形成されている。また、内径寸法dは塗布装置100における底面部材111の開口と同一寸法に設定されている。
【0038】
マスキング部材112は、その中心軸を底面部材111の開口の中心に一致させて不図示の締結手段により、下端部を底面部材111に固定される。
【0039】
マスキング部材112は、弾性を有する素材、例えば、フッ素系樹脂、あるいは、パーフロロエラストマーにて形成される。ここで、「弾性を有する」とは、外力が加えられるときは加えられた外力に応じて変形し、外力が除かれたときは元の形状に復元する性状を有することをいう。
【0040】
マスキング部材112の上端は最小内径部であり、その内壁の内径寸法dが特許請求の範囲に記したマスキング部材の最小内径寸法dである。内径寸法dは、被塗布体の外形寸法をdとしたとき、0.7d≦d≦1.0dの範囲に構成される。
【0041】
マスキング部材112が、フッ素系樹脂、あるいは、パーフロロエラストマー等の弾性を有する素材にて、内径寸法dが0.7d≦d≦1.0dの範囲に構成されることにより、マスキング部材112の内径部に被塗布体が挿入されたとき、マスキング部材112の上端の開口は被塗布体により押し広げられとともに、開口部の内壁が被塗布体の外周面の全周にわたり接触する。そして被塗布体は、上端開口部の内壁に全周にわたり接触されつつ、円滑にその中心軸方向に移動させることができる。
【0042】
塗布装置100を使用することにより、本発明の現像ローラ塗布液塗布方法を実行することができる。
【0043】
以下、図3〜図6を参照して、本発明の現像ローラの塗布方法を説明する。
【0044】
本発明の塗布方法は、以下の工程を経てなされる。
【0045】
第1工程:現像ローラ芯金Rの挿入
図3は、現像ローラ芯金Rをマスキング部材112に挿入した状態を示す図である。図3に示すように、開閉板113Bを、連通孔113Hを閉鎖する位置に配置した状態で、被塗布体としての現像ローラ芯金Rをマスキング部材112に挿入する。なお、被塗布体としての現像ローラ芯金Rは、金属素材のままであっても、金属素材の上に予め他の層を形成したものであってもよい。
【0046】
現像ローラ芯金Rの外形寸法はdであり、マスキング部材112の上端開口部の内壁の内径寸法dは、0.7d≦d≦1.0dである。底面部材111の開口117Hから現像ローラ芯金Rが挿入されると、弾性を有する素材にて形成されているマスキング部材112の上端開口部は現像ローラ芯金Rにより押し広げられとともに、内壁が現像ローラ芯金Rの外周面の全周にわたり接触する。
【0047】
第2工程:塗布液Pの送給
次いで、タンク200内に収容された塗布液Pを、塗布液送給パイプ410を経由して塗布液槽110に送給する。
【0048】
開閉板113Bは、連通孔113Hを閉鎖する位置に配置されているので、塗布液槽110に送給された塗布液Pの、連通孔113Hを通しての回収槽120への移動は遮断されるので、塗布液槽110に送給された塗布液Pの液面が上昇する。
【0049】
塗布液Pが塗布液槽110に供給されることにより上昇した液面はマスキング部材112の上端を越え、外壁113の上端を越えるに至る。
【0050】
外壁113の上端を越えた塗布液は回収槽120に流入する。
【0051】
図4は、塗布液槽110に供給された塗布液Pの液面がマスキング部材112の上端を越え、さらに外壁113の上端を越えるに至った状態を示す図である。
【0052】
液面が外壁113の上端を越えるに至った塗布液槽110の塗布液Pは、外壁113の上端を越えて回収槽120に流出するので、塗布液槽110における塗布液Pの液面は、外壁113の上端にほぼ等しい高さに保たれる。マスキング部材112の上端から露出した現像ローラ芯金Rの外周面は塗布液槽110にて、外壁113の上端にほぼ等しい高さの液面に保たれた塗布液Pに接触する。
【0053】
マスキング部材112の上端開口部の内壁は現像ローラ芯金Rの外周面の全周にわたって接触しているので、塗布液Pが、マスキング部材112の内径部に滲入することがなく、また、接触部には間隙がないので、接触部にて空気に接触することはない。
【0054】
第3工程:塗布液Pの塗布
塗布液槽110に送給される塗布液Pの液面が、マスキング部材112の上端を越えるに至ったとき、現像ローラ芯金Rを、図示しない被塗布体移動手段により、上方に一定速度で移動させる。
【0055】
現像ローラ芯金Rを所定の速度で上方に移動させると、マスキング部材112の上端から順次露呈する現像ローラ芯金Rが接触し、現像ローラ芯金Rは、外周面に塗布液Pが付着した状態で塗布液槽110から上方に引き上げられる。
【0056】
図5は、現像ローラ芯金Rが塗布液槽110から上方に引き上げられる状態を示す図である。
【0057】
塗布液槽110から上方(矢印方向)に引き上げられた現像ローラ芯金Rの表面には、塗布液Pが付着した塗布層Pが形成されている。
【0058】
なお、塗布液槽110の外壁113の上端を越えて回収槽120に流入した塗布液Pは、戻し塗布液回収パイプ420を通してタンク200に戻り、再び塗布液槽110に送給され、現像ローラ芯金Rの塗布に供される。
【0059】
第4工程:塗布液Pの供給停止と塗布液槽110からの排出
現像ローラ芯金Rの所望の範囲に塗布液Pの塗布がなされると、現像ローラ芯金Rの移動を停止するとともに、塗布液槽110への塗布液Pの供給を停止し、さらに、開閉板113Bを、連通孔113Hを開放する位置に配置して塗布液槽110内の塗布液Pを排出したのち、現像ローラ芯金Rをマスキング部材112の上端開口より抜去する。
【0060】
図6は、塗布液槽110内の塗布液Pが排出された状態を示す。
【0061】
第5工程:現像ローラ芯金Rの抜去
塗布液槽110内の塗布液Pが排出された状態で現像ローラ芯金Rをマスキング部材112から抜去する。この状態で現像ローラ芯金Rをマスキング部材112より抜去しても、塗布液Pがマスキング部材112の上端開口から塗布液槽110の底面側に流出することはない。
【0062】
以上、第1工程〜第5工程により現像ローラ芯金Rに塗布液Pが塗布され、現像ローラ芯金Rの外周に塗布液層Pを形成することができる。
【0063】
前述のように、本発明の塗布液塗布方法においては、塗布液槽110内のマスキング部材112の上端開口部の内壁は現像ローラ芯金Rに全周にわたりに接触しているので、マスキング部材112と現像ローラ芯金Rの接触部には間隙が存在しない。よって、従来の塗布方法のように間隙にて塗布液Pが空気と接触することにより、塗布液Pの溶剤分が蒸発し、塗布液Pの組成を変化させるようなことはない。また、塗布液Pが粗さ付与粒子を分散させたものであるときにおいても、従来の塗布方法のように間隙にて溶剤分が蒸発して、粗さ付与粒子の分散密度を高くしてしまうことがない。したがって、粒子同士の凝集により掲載された粒子塊が、被塗布部材への塗布液の接触を妨害して塗布層にスジ故障を発生させたり、塗布ムラ等の異常が発生させたりすることがない。
【0064】
複数の現像ローラ芯金Rに塗布するときは、第1工程〜第5工程を繰り返すことにより、複数の被塗布体に塗布液Pを塗布することができる。
【0065】
前述の塗布方法、塗布装置は、現像ローラ芯金を1本ずつ投入して塗布層を形成するものであった。複数の現像ローラ芯金Rを塗布するときは、1個の現像ローラ芯金Rを、挿入、抜去する都度、塗布液槽110への塗布液Pの供給、排出、を繰り返す必要があるが、現像ローラ芯金を連結した芯金連結体を被塗布体とすることにより、効率的な塗布を行うことができる。以下説明する。
【0066】
図7は、現像ローラ芯金を連結した芯金連結体RCnを説明する図である。
【0067】
図7(a)は現像ローラ芯金Rを、図7(b)は連結部材Cを示す。
【0068】
現像ローラ芯金Rは金属素材のもの、あるいは、金属素材の外周面上に異なる材質の層が形成されたものでも良い。現像ローラ芯金Rの外周部の外径はdである。現像ローラ芯金Rは、両端に突出部Rを有する。突出部Rは、現像ローラ芯金Rが現像ローラとして画像形成装置に組み込まれる際には、現像ローラの回転軸として機能する部位である。
【0069】
図7(b)に断面図にて示される連結部材Cは、外径寸法が現像ローラ芯金Rの外周部と同一のdの円筒形をなす。そして、その軸方向の両端部には現像ローラ芯金Rの突出部Rにそれぞれの中心軸を共有して嵌合する嵌合部Cを有する。
【0070】
連結部材Cは、その素材としては、塗布液Pの溶剤に溶解されることのない材料、例えば、パーフロロエラストマー、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド系樹脂、POMのいずれかを用いて形成されることが好ましい。
【0071】
芯金連結体は、現像ローラ芯金Rと、連結部材Cとを交互に連結したものである。
【0072】
図7(c)は1個の現像ローラ芯金Rと1個の連結部材Cとで形成された単位芯金連結体RC1を説明する図である。
【0073】
前述のように、連結部材Cの外周部Caの外径寸法は、現像ローラ芯金Rの外周部と同一のdであり、現像ローラ芯金Rと連結部材Cとを、それぞれの突出部Rbと嵌合部Cbとを連結することにより、現像ローラ芯金Rと連結部材Cとは外径dの単位芯金連結体RC1を形成できる。
【0074】
単位芯金連結体RC1は別の単位芯金連結体RC1と接続して、芯金連結体RCnとすることができる。符号RCnに付された記号nは、接続された単位芯金連結体RC1の数を意味する。
【0075】
図7(d)は、2個の単位芯金連結体RC1を接続して形成された芯金連結体RC2を示す図である。図示されるように、芯金連結体RC2は、2個の単位芯金連結体RC1を連結して形成したものであるが、さらに、単位芯金連結体RC1を、次々と連結させることができる。
【0076】
塗布装置100は、前述した現像ローラ芯金Rへの塗布液塗布方法における第1工程〜第5工程と同様の工程を経て芯金連結体RCnの外周面へ塗布液Pを塗布することができる。
【0077】
塗布装置100による芯金連結体RCnへの塗布液Pの塗布は、前述した現像ローラ芯金Rへの塗布液塗布方法における第1工程〜第5工程に記載の「現像ローラ芯金R」を「芯金連結体RCn」に置き換えれば良く、新たな説明は省略する。
【0078】
なお、塗布装置に投入される芯金連結体RCnは、別ラインで形成されたものであっても、塗布装置の動作と連動してオンライン動作にて形成されるものでもよい。
【0079】
塗布液槽110から引き上げられた芯金連結体Rは、塗布層Pが形成された現像ローラ芯金Rと連結部材Cとに分離される。分離された連結部材Cは外周部Caの塗布層を除去した後に再利用される。
【0080】
塗布装置に被塗布体として連結被塗布体を投入することにより、複数の現像ローラ芯金Rを1個ずつ塗布するときのように、1個の現像ローラ芯金Rを、挿入、抜去する都度、塗布液槽110への塗布液Pの供給、排出、を繰り返す必要がなく、芯金連結体RCnを挿入、抜去するときに、塗布液槽110への塗布液Pの供給、排出、を行えば良いので、大量の現像ローラ芯金Rの塗布層形成を効率良く実行することができる。特に、芯金連結体RCnが、塗布装置の動作と連動してオンライン動作にて形成されるときには、複数の単位芯金連結体RC1をエンドレスに接続して形成できるので、大量の現像ローラ芯金Rへの塗布層形成を連続して行うことができるので好ましい。
【0081】
そして、芯金連結体RCの塗布を行う場合も、塗布液槽110内のマスキング部材112の上端開口部の内壁は芯金連結体RCnの外周の全周にわたり接触しているので、マスキング部材112と芯金連結体RCnとの当接部には間隙は存在せず、間隙にての塗布液Pと空気との接触により、塗布液Pの溶剤分が蒸発し、塗布液Pの組成を変化させるようなことはない。そして、塗布液に粗さ付与粒子として樹脂粒子が分散されている場合においても、粒子同士の凝集により掲載された粒子塊が、芯金連結体RCnへの塗布液の接触を妨害して塗布層にスジ故障を発生させたり、塗布ムラ等の異常が発生させたりすることがない。
【0082】
本発明に係る現像ローラ塗布液塗布方法は、粒径が0.5μm〜20μmの樹脂粒子を分散した塗布液Pが好ましく適用できる。
【0083】
以下、本発明を適用して現像ローラ芯金に塗布液を塗布した結果を述べる。
【0084】
1.現像ローラ芯金R:外径寸法(=d)16.0mmのSUS303製シャフト。
【0085】
2.塗布液P:メチルエチルケトン(MEK)400質量部中に、ウレタン樹脂(日本ポリウレタン社製ニッポラン5120)を100質量部、ファーネスブラックを30質量部、平均粒径10μmの架橋アクリル樹脂粒子を20質量部、混合分散させて作製。
【0086】
3.塗布装置:図1に示す塗布装置100を使用。マスキング部材112は、パーフロロエラストマーを素材にして、上端の開口寸法dが異なる以下の3種類を作製した。
【0087】
マスキング部材(a):d1a=11.2mm
マスキング部材(b):d1b=12.8mm
マスキング部材(c):d1c=16.0mm
マスキング部材(a)における上端の開口寸法d1aと、現像ローラ芯金の外径寸法d(=16.0mm)との関係は、d1a=0.7dである。同様に、マスキング部材(b)における上端の開口寸法d1bと、現像ローラ芯金の外径寸法dとの関係は、d1b=0.8d、マスキング部材(c)における上端の開口寸法d1cと、現像ローラ芯金の外径寸法dとの関係は、d1c=1.0dである。
【0088】
マスキング部材(a)、(b)、(c)それぞれの上端の開口寸法d1a、d1b、d1cが、現像ローラ芯金Rの外径寸法dに対して、それぞれ、0.7d、0.8d、1.0dに設定されているので、マスキング部材(a)、(b)、(c)は、そのいずれもが、現像ローラ芯金Rが挿入されたとき上端の開口の内壁が現像ローラ芯金Rの全周にわたり接触する。
【0089】
4.塗布液Pの塗布:上記マスキング部材(a)、(b)、(c)を組み込んだ塗布装置100のそれぞれに、上記現像ローラ芯金Rを1本ずつ合計100本供給して、その周面に上記塗布液Pを塗布し、塗布層を形成した。
【0090】
マスキング部材(a)を組み込んだ塗布装置100にて塗布を行った現像ローラ芯金を実施例1、マスキング部材(b)を組み込んだ塗布装置100にて塗布を行った現像ローラ芯金を実施例2、マスキング部材(c)を組み込んだ塗布装置100にて塗布を行った現像ローラ芯金を実施例3、とした。
【0091】
5.塗布層の評価:実施例1〜3、それぞれ100本の塗布層を目視にて確認し、スジ故障やムラの有無を確認した。
【0092】
6.評価結果:実施例1〜3、それぞれ100本の塗布層のいずれにも、スジ故障やムラは認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の現像ローラの塗布液塗布方法を適用可能な塗布装置の模式図である。
【図2】マスキング部材112を説明する図である。
【図3】現像ローラ芯金Rをマスキング部材112に挿入した状態を示す図である。
【図4】塗布液槽110に供給された塗布液Pの液面がマスキング部材112の上端を越え、さらに外壁113の上端を越えるに至った状態を示す図である。
【図5】現像ローラ芯金Rが塗布液槽110から上方に引き上げられる状態を示す図である。
【図6】塗布液槽110内の塗布液Pが排出された状態を示す。
【図7】現像ローラ芯金を連結した芯金連結体RCnを説明する図である。
【図8】特許文献2に開示された塗布方法が適用可能な塗布装置の構成の一例を説明する模式図である。
【図9】特許文献2に開示された塗布方法による塗布液の塗布を説明する模式図である。
【図10】特許文献2に開示された塗布方法におけるマスキング部材112と、被塗布体Wとの間隙部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0094】
100 塗布装置
110 塗布液槽
111 底面部材
112 マスキング部材
113 外壁
113B 開閉板
113H 連通孔
120 回収槽
121 最外壁
200 タンク
300 ポンプ
410 塗布液送給パイプ
420 塗布液回収パイプ
R 現像ローラ芯金
C 連結部材
Cn 芯金連結体
W 被塗布体
P 塗布液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を収納する塗布液槽の内側に配置された筒型形状をなすマスキング部材に挿入した現像ローラ芯金を移動させ、前記現像ローラ芯金の前記マスキング部材の端部から順次露呈する部分に、前記塗布液槽に収納した塗布液を接触させて塗布する現像ローラの塗布液塗布方法において、
前記マスキング部材の内壁は、前記現像ローラ芯金の外周の全周にわたり接触していることを特徴とする現像ローラの塗布液塗布方法。
【請求項2】
前記塗布液は樹脂粒子を分散させたものであることを特徴とする請求項1に記載の現像ローラの塗布液塗布方法。
【請求項3】
塗布液を収納する塗布液槽と、前記塗布液槽の内側に配置された、現像ローラ芯金を挿入可能な筒型形状をなすマスキング部材と、を有し、
現像ローラ芯金を、前記マスキング部材に挿入するとともに移動させ、前記現像ローラ芯金の前記マスキング部材の端部から順次露呈する部分に前記塗布液槽に収納された塗布液を接触させて塗布する塗布装置において、
前記マスキング部材は、前記現像ローラ芯金の外周の全周にわたり接触するものである
ことを特徴とする塗布装置。
【請求項4】
前記マスキング部材は、最小内径寸法dが、前記現像ローラ芯金の外径寸法をdとしたとき、0.7d≦d≦1.0dであることを特徴とする請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記マスキング部材は、フッ素系樹脂、あるいは、パーフロロエラストマーにて形成されたものであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−58001(P2010−58001A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223198(P2008−223198)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】