説明

現像剤、現像剤収容体、現像装置及び画像形成装置

【課題】異なる2つの粒子を混合した現像剤において、第1の粒子に対し、第2の粒子が帯電量の絶対値が小さいか、又は、逆帯電にすることによって、媒体上の非印字部にかぶりが発生することを防止することができ、良好な画像を形成することができるようにする。
【解決手段】異なる2つの粒子を混合した現像剤であって、第1の粒子に対し、第2の粒子は帯電量の絶対値が小さいか、又は、逆帯電である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤、現像剤収容体、現像装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式のプリンタ、複写機、ファクシミリ機等の画像形成装置においては、帯電装置によって感光体ドラムの表面を均一に帯電させ、帯電した感光体ドラムの表面を露光装置によって露光して静電潜像を形成し、現像装置によって静電潜像にトナーを付着させて現像し、トナー像を形成する。この場合、前記現像装置内に収容されたトナーを摩擦帯電させて静電潜像に付着させている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平08−194421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の画像形成装置においては、トナーを摩擦帯電させる際、特に、トナーが非磁性1成分トナーである場合、すべてのトナーの帯電極性が必ずしも一定にならない。例えば、電子写真方式の画像形成プロセスにおいて、負極性に帯電したトナーを使用する場合、負極性に帯電されず、正極性に帯電したトナー、すなわち、逆帯電トナーが微量ではあるが混在している。
【0004】
このように、逆帯電トナーが混在していると、現像工程において負極性に帯電したトナーとともに感光体ドラムの表面に付着した逆帯電トナーが、転写工程において非印字部の記録媒体に転写されて発生する白地かぶりや、前記逆帯電トナーが感光体ドラムの表面に多く残ってしまい、露光又は現像に悪影響を及ぼし、印刷品位を劣化させるという問題が発生する。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点を解決して、異なる2つの粒子を混合した現像剤において、第1の粒子に対し、第2の粒子が帯電量の絶対値が小さいか、又は、逆帯電にすることによって、媒体上の非印字部にかぶりが発生することを防止することができ、良好な画像を形成することができる現像剤、現像剤収容体、現像装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために、本発明の現像剤においては、異なる2つの粒子を混合した現像剤であって、第1の粒子に対し、第2の粒子は帯電量の絶対値が小さいか、又は、逆帯電である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、現像剤は、異なる2つの粒子を混合したものであって、第1の粒子に対し、第2の粒子が帯電量の絶対値が小さいか、又は、逆帯電である。これにより、媒体上の非印字部にかぶりが発生することを防止することができ、良好な画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
図2は本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の概略構成図である。
【0010】
図において、10は画像形成装置であり、例えば、電子写真方式のプリンタ、複写機、ファクシミリ機、プリンタ、ファクシミリ機及び複写機の機能を併せ持つ複合機(MFP:Multi Function Printer)等であるが、いかなる種類の画像形成装置であってもよい。なお、本実施の形態においては、前記画像形成装置10がいわゆるタンデム方式のカラー電子写真式プリンタである場合について説明する。
【0011】
そして、画像形成装置10内には、BK(ブラック)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)及びC(シアン)の4色に各々対応する現像装置20BK、20Y、20M及び20Cが媒体21の搬送路に沿って、搬送方向(図における左方向)に順次並ぶように配列されている。なお、現像装置20BK、20Y、20M及び20Cの構成は同一であり、現像剤として収納されている後述されるトナー16の色が異なる。そして、現像装置20BK、20Y、20M及び20Cを統合的に説明する場合には、現像装置20として説明する。また、各現像装置20は、着脱可能な独立したユニットとして画像形成装置10内に装着され、搬送路に沿って搬送される媒体21上に画像を形成するようになっている。
【0012】
ここで、22は、記録用紙等の媒体21を収容する給紙カセットであり、23a〜23xは給紙カセット22から給紙された媒体21を搬送するための搬送ローラであり、24は転写ベルトであり、26aはアイドルローラ、26bは図示されない駆動手段によって回転されることで、前記転写ベルト24を駆動するドライブローラであり、27a及び27bは搬送された媒体21をガイドする可動式の媒体走行ガイドである。
【0013】
そして、媒体21は、図において点線の矢印で示されるように搬送される。なお、該点線の矢印のうち、(m)〜(q)の部分は、両面印刷の場合の媒体21の搬送路を示している。一方、実線の矢印は、転写ベルト24の走行方向を示している。
【0014】
また、28は、前記転写ベルト24の表面に付着した不要なトナー16や異物を除去するための転写ベルトクリーニングブレードであり、29は該転写ベルトクリーニングブレード28が転写ベルト24の表面から除去した不要なトナーや異物を回収して収容するための廃棄現像剤タンクである。
【0015】
さらに、31は前記媒体21に転写されたトナー画像を媒体21に熱及び圧力によって定着するための定着器としての定着ユニットであり、発熱ローラ31a及び加圧ローラ31bを備える。なお、前記発熱ローラ31a及び加圧ローラ31bは、アルミニウムから成る中空円筒状の芯(しん)金の周囲にシリコーンゴムの耐熱弾性層が被覆され、更にその上に、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブが被覆されている。また、前記発熱ローラ31aはその芯金内に図示されないハロゲンランプ等から成る加熱ヒータが配設されている。そして、前記発熱ローラ31aと加圧ローラ31bとの間には、圧接部が形成される。さらに、前記発熱ローラ31aの表面温度検出手段としての図示されないサーミスタが、発熱ローラ31aの近傍に該発熱ローラ31aと非接触で配設されている。
【0016】
また、25BK、25Y、25M及び25Cは、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色のトナー粉体画像、すなわち、トナー像を形成する現像装置20BK、20Y、20M及び20Cに対向して配設された転写ローラであり、金属シャフトにウレタンスポンジ層を被覆したローラである。なお、転写ローラ25BK、25Y、25M及び25Cを統合的に説明する場合は、転写ローラ25として説明する。
【0017】
次に、前記現像装置20の構成について詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の第1の実施の形態における現像装置の構成を示す図である。
【0019】
図において、11は、像担持体としての感光体ドラムであって、アルミニウムの金属パイプから成る導電性支持体と、電荷発生層及び電荷輸送層を順次積層した有機系感光体である光導電層とを備え、駆動用の図示されないギアが配設されている。また、12は、帯電装置としての帯電ローラであって、金属シャフトに半導電性エピクロロヒドリンゴム層を被覆したものである。さらに、13は、露光装置としてのLED(Light Emitting Diode)ヘッドであって、感光体ドラム11に対向して配設されている。
【0020】
そして、14は現像剤担持体としての現像ローラであって、金属シャフトに半導電性ウレタンゴム層を被覆したものであり、駆動用の図示されないギアが配設されている。また、15は現像剤供給回転体としてのトナー供給ローラであって、金属シャフトに半導電性発泡シリコンスポンジ層を被覆したものである。
【0021】
さらに、17は現像剤規制部材としてのステンレス製の現像ブレードである。そして、18は現像剤回収装置としてのウレタンゴム製のクリーニングブレードであり、19はトナー16を収容する現像剤収容体としてのトナーカートリッジである。
【0022】
ここで、現像剤としてのトナー16は、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いたものであり、内部添加剤として帯電制御剤、離型剤、着色剤等を含み、また、外部添加剤としてのシリカ等を含むものである。
【0023】
なお、前記感光体ドラム11、帯電ローラ12、現像ローラ14、トナー供給ローラ15及び転写ローラ25は、図において矢印(a)〜(d)及び(g)で示される方向に回転し、これにより、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像が、転写ベルト24によって矢印(h)で示される方向に搬送される媒体21上に転写される。
【0024】
次に、前記トナー16について詳細に説明する。
【0025】
図3は本発明の第1の実施の形態におけるトナーの性質を示す図である。
【0026】
本実施の形態においては、現像剤としてのトナー16を得るために、結着樹脂(ポリエステル樹脂、数平均分子量Mn=3700、ガラス転移温度Tg=62〔℃〕)を100重量部として、図3に示される比率によって混合した。
【0027】
この場合、離型剤としてカルナウバワックス(加藤洋行社製、カルナウバワックス1号粉末)を使用し、着色剤としてピグメント・ブルー15.3「ECB−301」(大日製化社製)を使用し、負帯電の帯電制御剤Iとしてサリチル酸錯体「ボントロンE−84」(オリエント化学工業社製)を使用し、正帯電の帯電制御剤IIとして4級アンモニウム塩化合物「ボントロンP−51」(オリエント化学工業社製)を使用した。
【0028】
これらをヘンシェルミキサー(三井三池化工機製)を用いて混合した後、二軸押出機によって溶融混練して冷却し、直径2〔mm〕のスクリーンを有するカッターミルによって粗粉砕化した後、衝突式粉砕機「ディスパージョンセパレータ」(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて粉砕し、さらに、風力分級機を用いて分級を行い、母粒子となる粉体を得た。
【0029】
次に、外添工程として、得られた粉体100重量部に疎水性シリカR972(日本アエロジル社製、平均一次粒径16〔nm〕)を2.5重量部添加し、100リットル容のヘンシェルミキサーによって3200(回転/分)の回転速度で5分間撹拌(かくはん)し、そのまま冷却した後、さらに、ヘンシェルミキサーによって3200(回転/分)の回転速度で5分間撹拌し冷却した。この動作を繰り返して5回(回転時の総撹拌時間は25分)行うことによって、図3に示される有色現像剤としての第1の粒子である第1トナーと、無色透明現像剤としての第2の粒子である第2トナーA〜Kを得ることができた。
【0030】
このようにして製造した第1トナー及び第2トナーA〜Kのそれぞれの平均帯電量は、各トナーを0.6〔g〕、及び、シリコンコートフェライトキャリア「FL961−1025」(パウダーテック社製)を19.4〔g〕をボールミルによって10分間撹拌し、吸引式帯電量測定装置「Model210HS−2A」(TRek社製)を用いて帯電量を測定することにより求めることができた。
【0031】
また、第1トナー及び第2トナーA〜Kのそれぞれの体積平均粒径、すなわち、平均径については、細胞計数分析装置「コールターマルチサイザー3」(ベックマンコールター社製)を用い、アパチャー径を100〔μm〕として30000カウント測定することによって求めた。
【0032】
さらに、ガラス転移温度であるTgは、示差走査カロリーメータ「DSC−7」(パーキンエルマー社製)の昇温速度を80〔℃〕/分に設定し、10〔mg〕の各トナーを加熱して測定することによって求めた。
【0033】
これにより、図3に示されるように、製造した第1トナー及び第2トナーA〜Kのそれぞれの各測定値を得ることができた。
【0034】
次に、前記構成の画像形成装置10の動作について説明する。
【0035】
図示されない駆動用モータの回転が駆動用ギアを介して感光体ドラム11に伝達され、該感光体ドラム11は、図1において矢印(a)で示される方向に回転させられる。すると、感光体ドラム11に接触している帯電ローラ12は、矢印(d)で示される方向に回転させられる。そして、LEDヘッド13は、前記帯電ローラ12によって帯電させられ、かつ、回転する感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成する。なお、前記LEDヘッド13に換えてレーザー露光装置等を使用することもできる。
【0036】
また、現像ローラ14は、前記感光体ドラム11に接触して配設され、かつ、図示されない駆動用モータの回転が駆動用ギアを介して伝達され、感光体ドラム11に対して相対速度が速くなるよう矢印(b)で示される方向に回転させられる。これにより、現像ローラ14は、トナーカートリッジ19に収容されているトナー16を現像領域に運び、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像にトナー16を付着させ、静電潜像を可視像化してトナー像を形成する。なお、前記現像ローラ14は、感光体ドラム11との相対速度の大きさ及び回転方向を、適宜変更することもできる。
【0037】
そして、トナー供給ローラ15は、前記現像ローラ14に接触又は非接触に配設され、かつ、駆動用モータの回転が駆動用ギアを介して伝達され、これにより、矢印(c)で示される方向に回転させられ、トナー16を現像ローラ14に供給する。また、現像ブレード17は、前記トナー供給ローラ15によって前記現像ローラ14に供給されたトナー16を薄層化する。
【0038】
さらに、転写ローラ25は、前記感光体ドラム11に接触して配設され、かつ、図示されない駆動用モータの回転が駆動用ギアを介して伝達され、矢印(g)で示される方向に回転させられる。そして、前記転写ローラ25には、図示されない電源によって電圧が印加され、これにより、感光体ドラム11の表面上のトナー像を、矢印(h)で示される方向に搬送される用紙、OHPシ一ト等の媒体21に転写する。
【0039】
また、クリーニングブレード18は、転写工程が終了して媒体21にトナー像が転写された後に、感光体ドラム11上に残留したトナー16を除去する。
【0040】
そして、定着ユニット31は、転写されたトナー像を媒体21に定着させる。この場合、前記定着ユニット31内の発熱ローラ31aと加圧ローラ31bとが回転し、図示されない電源からの電力が加熱ヒータに供給されることによって発熱ローラ31aの表面が加熱され、前記媒体21上に転写されたトナー像のトナー16を加熱する。そして、溶融させられたトナー16は、発熱ローラ31aと加圧ローラ31bとによって媒体21に押し付けられる。
【0041】
なお、前記定着ユニット31としては、本実施の形態におけるローラ方式の装置に限定される必要はなく、ベルトを使用したベルト方式、フィルムを使用したフィルム方式、発光エネルギーを利用するフラッシュ方式等の装置を使用することもできる。前記ローラ方式又はベルト方式の装置においては、オイル供給ローラ、オイル補給シート、オイルタンク等のオイル補給機構を備えたオイル補給定着方式によって、加熱ローラ、ベルトナー等にオイルを補給し、積極的にホットオフセット現象が発生するのを防止する。また、前記オイルとしては、特定の材料である必要はないが、一般に、シリコーンオイル、鉱物オイル等のうち比較的粘度の低いものが使用される。
【0042】
さらに、本実施の形態に示されるように、オイルを補給することなく、オイルレス定着方式によってホットオフセット現象が発生するのを防止することもできる。
【0043】
次に、本実施の形態における実験例について説明する。
【0044】
図4は本発明の第1の実施の形態における印刷パターンを示す図、図5は本発明の第1の実施の形態における実験結果を示す第1の図、図6は本発明の第1の実施の形態における実験結果を示す第2の図、図7は本発明の第1の実施の形態における実験結果を示す第3の図である。
【0045】
本発明の発明者は、第1トナーに第2トナーAを加え100(重量部)になるよう第1トナーと第2トナーAとの混合の割合を変化させ、評価を行った。なお、前記第1トナーと第2トナーAとの混合には、前記ヘンシェルミキサーを使用した。
【0046】
混合は、回転速度1000〔rpm〕で90秒(sec)間行なった。続いて、作成した第1トナーと第2トナーAとを混合したトナー16を、トナーカートリッジ19に150〔g〕充填(てん)し、画像形成装置10に装着して印刷を行った。
【0047】
この場合、画像形成装置10の印刷速度(=感光体ドラム線速=通紙速度)を200〔mm/s〕に設定し、媒体21であるA4標準紙(例えばOKIエクセレントホワイト紙、坪量=80〔g/m2 〕)紙を横方向送り(4辺のうち長い2辺が先端と後端)で、5〔%〕duty(A4用紙1枚の印刷可能範囲に全面ベタ印刷時の面積率100〔%〕印刷のことを100〔%〕dutyと表記)にして、図4に示されるような印刷パターンを印刷した。このとき、混合したトナー16が感光体ドラム11上で0.6〔mg/cm2 〕の層になるよう、図示されない電源によって電圧を変化させて調整を行った。
【0048】
評価は、媒体21に印刷された画像濃度、及び、非印字部へのかぶりを用いて行った。なお、画像濃度は、印刷した画像を分光濃度計「X−Rite528」(X−Rite社製、C光源、視野角2〔℃〕、レスポンスEモード)によって測定した。
【0049】
また、かぶりについては、A4標準紙で白紙を印刷し、つまり、無地の印刷データを画像形成装置10に送信してA4標準紙に無地の印刷データの印刷動作を行い、媒体21が感光体ドラム11を通過中に画像形成装置10の電源を切り、強制的に装置を停止させるた。この状態で、感光体ドラム11上に残存したトナー16を「スコッチテープ」(住友3M社製)で剥(はく)離し、トナー16が付着したスコッチテープと未使用のスコッチテープとを同一紙上に貼(は)り付け、貼り付けたスコッチテープを対象として、分光測色計「CM−2600d」(コニカミノルタ社製)を用い、L*a*b*表色系での色差ΔE*abを測定した。
【0050】
なお、判定基準は、画像濃度の良好な範囲として1.2以上であり、かぶりについては、0.5以下を良好であるとした。
【0051】
図5には、実験例1〜14についての実験結果が示されている。
【0052】
図5に示されるように、第lトナーに対して低い帯電量である第2トナーAを混合した場合、該第2トナーAを少量添加すると、かぶりに改善が見られた。また、第2トナーAを15(重量部)以上の割合で混合することによって、非常に良好な画像品質を得ることができた。しかし、第2トナーAを45(重量部)より多くの割合で混合した場合には、全トナー16中の第1トナーの割合が小さくなり、画像濃度が低下してしまうといった副作用も生じた。
【0053】
このように、第1トナーと第2トナーとの混合割合を適当な値に調整することによって、かぶりを改善し、良好な画像を得ることができた。
【0054】
次に、平均径を変化させた第1トナー及び第2トナーA〜Eを使用し評価を行った。この場合、混合比(第1トナー:第2トナー)は、図5に示される実験例の評価において判定が△から○となった境界上である実験例4(第2トナーA〜Eを15(重量部))、及び、実験例8(第2トナーA〜Eを45(重量部))の混合比と同一にした。
【0055】
図6には、前記実験例4及び8並びに実験例15〜22についての実験結果が示されている。
【0056】
図6に示されるように、第2トナーA〜Eが15(重量部)又は45(重量部)のどちらの場合においても、第2トナーA〜Eの平均径が大きくなるにつれ、画像濃度の増加が見られ、かぶりに改善が見られなくなった。これは、第1トナーと第2トナーA〜Eとの接触機会が小さくなることによって、第1トナーが適度な帯電を得ることができていないことに起因する。
【0057】
また、第2トナーA〜Eの平均径が小さくなった場合、第1トナーとの接触機会は大きくなるが、平均径の小さい第2トナーA〜Eの方が現像ブレード17を通過しやすくなることによって、画像濃度が低下した。したがって、第1トナーに対してほぼ同じ平均径の第2トナーを混合することが望ましい。
【0058】
さらに、第2トナーの帯電量を変化させ、同様の評価を行った。この場合、混合比は、図6に示される実験例と同様に、第2トナーが15(重量部)又は45(重量部)である。評価に使用したのは、第1トナー並びに第2トナーA及びF〜Kである。
【0059】
図7には、前記実験例4及び8並びに実験例23〜34についての実験結果が示されている。
【0060】
図7に示されるように、第2トナーが15(重量部)又は45(重量部)のどちらの場合においても、第1トナーと第2トナーとの帯電量の差の絶対値|Δ|が10〔μC/g〕未満のときには、かぶりに大きな改善が見られなかった。これは、粒子の帯電傾向が近傍にあるため、第2トナーがかぶりトナーになる割合が小さくなるからであると考えられる。そのため、|Δ|としては10〔μC/g〕以上であることが望ましい。
【0061】
このように、本実施の形態においては、第1の粒子である有色現像剤としての第1トナーと、有色である第1トナーに対して、帯電量の絶対値が小さい、又は、逆帯電である第2の粒子である無色透明現像剤としての第2トナーの粒子とを適当な割合で混合することによって、非印字部におけるかぶりが画像上に現れず、良好な画像を得ることができた。
【0062】
なお、本実施の形態においては、第2の粒子を無色透明としたが、画像形成装置10が印刷する媒体21の色が判明している場合は、第2の粒子を媒体21の色とほぼ同じにすることで、媒体21上の非印字部でのかぶりの発生を防止することができる。
【0063】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0064】
図8は本発明の第2の実施の形態におけるトナーの性質を示す第1の図、図9は本発明の第2の実施の形態におけるトナーの性質を示す第2の図である。
【0065】
前記第1の実施の形態において、第2トナーは印刷品質に悪影響を与える形で現れていないが、実際には、第2トナーが記録媒体上に数多く存在している。そこで、本実施の形態では、かぶりとして存在する第2トナーを積極的に利用する。
【0066】
前記第1の実施の形態で説明したトナー16の製造過程において第2トナーのガラス転移温度Tgを変化させるために、離型剤としてのカルナウバワックスを減量した第2トナーL〜Nを製造した。また、離型剤Iとしてカルナウバワックス、離型剤IIとしてパラフィンワックス「パラフィンワックス130」(日本精鑞社製、融点:55〔℃〕)を混合し、前記第1の実施の形態と同様に、第2トナーO〜Sを製造した。
【0067】
さらに、第2トナーの代わりに、離型剤III であるポリプロピレン「NP−056」(三井化学社製、以下「PP」と略す)を溶融し、その後、第1トナーと略同径になるよう、粉砕及び分級を行い、第2トナーの代替、すなわち、第2粒子として用意した。
【0068】
図8には、製造した第2トナーL〜S、第2粒子の平均径〔μm〕、平均帯電量〔μC/g〕、ガラス転移温度Tg〔℃〕及び融点Tm〔℃〕の測定結果が示されている。
【0069】
さらに、粒子の融点Tmを変化させるために、結着樹脂(ポリエステル樹脂、数平均分子量Mn=4000、ガラス転移温度Tg=62〔℃〕)として第3、第4及び第5トナーを製造した。このようにして製造したトナーの平均径、平均帯電量、ガラス転移温度Tg及び融点Tmの測定結果は、図9に示されている。離型剤Iの添加量を増加させると、結着樹脂と離型剤Iとの相溶性によって、樹脂の融点が低下するので、トナーの融点Tmが低下する。
【0070】
次に、本実施の形態における実験例について説明する。
【0071】
図10は本発明の第2の実施の形態における実験結果を示す第1の図、図11は本発明の第2の実施の形態における実験結果を示す第2の図である。
【0072】
まず、本実施の形態における評価方法について詳細に説明する。
【0073】
評価は、トナー16を高温高湿下に放置した際、トナー16が溶融して固着してしまうのかどうか、すなわち、保存性について、画像形成装置10内の定着ユニット31の温度を変化させ、媒体21に定着するかどうか、すなわち、定着性について、及び、印刷画像の光の反射率、すなわち、光沢度について行った。
【0074】
保存性の評価では、内径φ30〔mm〕のアルミニウム製の円筒にトナー16を10〔g〕充填し、上部から20〔g〕の荷重を掛け、温度50〔℃〕、湿度55〔%〕の高温高湿下において48時間放置した。その後、円筒をゆっくりと取り外し、トナー16が円筒状に固まっていたならば不良として×、固まっていなかったならば良好として○とした。
【0075】
また、定着性の評価では、次の式(1)で定義する定着率〔%〕を用いた。
定着率〔%〕=(剥離後濃度/剥離前濃度)×100・・・式(1)
ここで、剥離前濃度とは、画像印刷部をX−Rite528によって測定した値である。また、剥離後濃度とは、画像印刷部にスコッチテープを貼り、その上に50〔g/cm2 〕の荷重を掛け、10〔mm/sec〕の速度で1往復させた後、30〔mm/sec〕の速度でスコッチテープを剥(は)がした際に、画像印刷部上に残っている画像濃度のことである。
【0076】
この場合の評価基準は、定着率が95〔%〕以上のときを◎、90〔%〕以上95〔%〕未満のときを○、それ未満のときを×とした。なお、本実施の形態において、光沢度については、MURAKAMI COLOR RESEARCH LABORATORY GLOSS METER(Type GM−26D、視野角75度)を使用して画像印刷部の測定を行い、光沢度5〔%〕以上の場合に良好とした。また、実験に使用した画像形成装置10は、MICROLINE9800(沖データ社製)である。
【0077】
図10には、実験例35〜54についての実験結果が示され、また、図11には、実験例55〜64についての実験結果が示されている。
【0078】
図10及び11に示されるように、第1トナーと第2トナーのTgの差が3〔℃〕以上の場合には、非常に良好な定着性を得ることができた。このことから、第1トナーと第2トナーのTgの差を3〔℃〕以上にすることが、第2トナーに定着性向上の機能を持たせるためには望ましいことが分かる。また、第2粒子としてポリプロピレンを混合したトナー16においても良好な定着性を得ることできた。さらに、第2粒子として、図9に示される第3〜7トナーを使用した場合、第2粒子の融点が110〜140〔℃〕であると、保存性及び光沢度ともに良好なトナーを得ることができ、混合比を変えることによって、光沢度を変化させることができる。
【0079】
ここでは、第1粒子と第2粒子との混合比によって光沢度を可変としたが、感光体ドラム11、現像ローラ14、供給ローラ15及び現像ブレード17に印加する電圧を制御し、第2粒子のかぶりの量を制御することによっても光沢度を可変とすることができる。
【0080】
このように、本実施の形態においては、第2トナー及び第2粒子に離型作用を付加することによって、低温定着特性を向上させ、良好なトナー16を得ることができた。
【0081】
なお、前記第1及び第2の実施の形態においては、画像形成装置10がプリンタである例について説明したが、本発明は、MFP、ファクシミリ機及び複写機にも適用することができる。
【0082】
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施の形態における現像装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるトナーの性質を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における印刷パターンを示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における実験結果を示す第1の図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における実験結果を示す第2の図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における実験結果を示す第3の図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態におけるトナーの性質を示す第1の図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態におけるトナーの性質を示す第2の図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における実験結果を示す第1の図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態における実験結果を示す第2の図である。
【符号の説明】
【0084】
10 画像形成装置
16 トナー
19 トナーカートリッジ
20 現像装置
21 媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる2つの粒子を混合した現像剤であって、
第1の粒子に対し、第2の粒子は帯電量の絶対値が小さいか、又は、逆帯電であることを特徴とする現像剤。
【請求項2】
前記異なる2つの粒子は、第1の粒子が有色であり、第2の粒子が無色である請求項1に記載の現像剤。
【請求項3】
前記異なる2つの粒子は、第1の粒子が有色であり、第2の粒子が媒体と略同色である請求項1に記載の現像剤。
【請求項4】
前記第1の粒子と第2の粒子との混合割合が85:15〜55:45である請求項1〜3のいずれか1項に記載の現像剤。
【請求項5】
前記第1の粒子と第2の粒子との帯電量の差の絶対値が10〔μC/g〕以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像剤。
【請求項6】
前記第lの粒子と第2の粒子との粒子径が略同径である請求項1〜5のいずれか1項に記載の現像剤。
【請求項7】
前記第1の粒子に対し、第2の粒子のガラス転移温度が低い請求項1〜6のいずれか1項に記載の現像剤。
【請求項8】
前記第1及び第2の粒子のガラス転移温度が60〜70〔℃〕であり、前記第1の粒子と第2の粒子とのガラス転移温度の差が3〔℃〕以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載の現像剤。
【請求項9】
前記第1の粒子に対し、第2の粒子の融点が高い請求項1〜8のいずれか1項に記載の現像剤。
【請求項10】
前記第1及び第2の粒子の融点が110〜140〔℃〕である請求項1〜9のいずれか1項に記載の現像剤。
【請求項11】
前記第2の粒子が離型剤である請求項1〜10のいずれか1項に記載の現像剤。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の現像剤を収納することを特徴とする現像剤収容体。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の現像剤と、請求項12に記載の現像剤収容体とを有することを特微とする現像装置。
【請求項14】
請求項13に記載する現像装置を有し、該現像装置により媒体に画像を形成することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−8519(P2010−8519A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165196(P2008−165196)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】