説明

現像剤供給ロール、現像装置および画像形成装置

【課題】現像ロールへの現像剤の供給性能および現像ロールからの現像剤の剥製性能の両者が安定した現像剤供給ロールを実現する。
【解決手段】導電性基材13aと、その表面に塗布された接着剤13cと、当該接着剤13cに静電植毛された複数のブラシ毛13dとを備えた現像剤供給ロールにおいて、ブラシ毛13dの電気抵抗率は接着剤13cの電気抵抗率よりも低く、一部のブラシ毛13dが導電性基材13aと非接触であり、全てのブラシ毛13dの先端部と短絡するような導電性部材を設けたときに当該導電性部材と導電性基材13aとの間の電気抵抗値Rが、10≦R/R≦1010 を満たす。ただし、Rは、上記ブラシ毛の単位長さ当りの電気抵抗値をr、上記ブラシ毛の長さをL、上記ブラシ部のブラシ毛の本数をMとしたとき、R=r×L/M で示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体上の静電潜像を、トナーを有する現像剤を用いて現像するプリンタ、複写機、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置における現像装置の現像ロールに現像剤を供給する現像剤供給ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンター、複写機、ファクシミリ等の電子写真方式を採用する画像形成装置の現像装置として、例えば、特許文献1に開示された現像装置がある。
【0003】
この特許文献1に開示された現像装置100には、図7に示すように、現像剤容器101内に貯留される非磁性一成分系トナー等の現像剤を現像ロール103まで供給する現像剤供給ロール104が設けられている。特許文献1に開示された現像剤供給ロール104は、芯金111の周囲に植毛部112が形成されてなっている。上記植毛部112には径方向に延びるようにファイバが植毛され、ファイバ間の間隙で現像剤を搬送する。
【0004】
また、現像剤供給ロール104の芯材およびファイバが導電性または半導電性であるため、現像ロール103との間に安定した電界を形成することができ、現像剤の移行量を安定化させることができる。
【0005】
この結果、植毛部112では、従来の導電性スポンジ層よりも容易かつ安価に製造することができ、長寿命化を図ることができると共に、現像剤の帯電量を安定に保ちながら現像ロール103に安定に現像剤を供給することができる等の効果があるとしている。
【特許文献1】特開平10−123821号公報(平成10年5月15日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、現像剤供給ロールから現像ロールへの現像剤の安定した供給、ならびに、現像剤の帯電量の安定化を実現することができる。しかしながら、現像剤供給ロールに要求される性能は、現像ロールへの安定した現像剤の供給だけではない。現像ロールは、現像剤供給ロールから供給された現像剤の全てを感光体ドラムに付着させるわけではなく、画像に応じた量だけ感光体ドラムに付着させる。そのため、現像ロール上において、現像に使用されなかった現像剤(以下、残現像剤という)は再び供給ロールの位置まで到達する。このとき、供給ロールは、このような残現像剤を現像ロールから剥離させ一旦回収する必要がある。そうでなければ、残現像剤が現像ロールに残った状態となり、それに加えて現像剤供給ロールが現像剤を現像ロールに供給してしまうため、現像ロール上の現像剤の量が不安定となる。
【0007】
上記特許文献1には、現像剤供給ロールによる現像ロールからの残現像剤の剥離性能について考慮されていない。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、現像ロールへの現像剤の供給性能および現像ロールからの現像剤の剥製性能の両者が安定した現像剤供給ロールを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る現像剤供給ロールは、上記課題を解決するために、静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像剤を用いて現像する現像ロールに対して現像剤を供給する現像剤供給ロールであって、導電性を有し、現像剤を現像ロールへ供給するための現像剤供給用電圧が印加される導電性基材と、上記導電性基材の表面に塗布された接着剤と、上記接着剤に静電植毛された複数のブラシ毛からなるブラシ部とを備え、上記ブラシ毛の電気抵抗率は上記接着剤の電気抵抗率よりも低く、上記ブラシ部の中の一部のブラシ毛が上記導電性基材と非接触であり、上記ブラシ部の全てのブラシ毛の先端部と短絡するような導電性部材を設けたときに当該導電性部材と上記導電性基材との間の電気抵抗値Rが以下の式(1)を満たすことを特徴とする。
10≦R/R≦1010 ・・・ (1)
ただし、Rは、上記ブラシ毛の単位長さ当りの電気抵抗値をr、上記ブラシ毛の長さをL、上記ブラシ部のブラシ毛の本数をMとしたとき、R=r×L/M で示される。
【0010】
全てのブラシ毛が導電性基材と接触している場合、RはRと同じになる。しかしながら、上記の構成によれば、ブラシ毛の電気抵抗率が接着剤の電気抵抗率よりも低く、ブラシ部の中の一部のブラシ毛が導電性基材と非接触であるために、RはRよりも大きくなっている。
【0011】
ここで、導電性基材に現像剤供給用電圧が印加されると、当該導電性基材に接触しているブラシ毛にも、当該現像剤供給用電圧が印加されることとなる。その結果、導電性基材と接触しているブラシ毛は、現像剤を現像ロールに供給する性能が高くなる。一方、導電性基材と非接触のブラシ毛は、導電性基材との導通が弱いために、現像剤供給用電圧が印加されにくくなる。その結果、導電性基材と非接触のブラシ毛は、現像に使用されなかった現像ロール上の残現像剤を当該現像ロールから剥離する性能が高くなる。
【0012】
そして、上記の構成によれば、Rは、10≦R/R≦1010 を満たす。ここで、R/Rは、導電性基材と非接触のブラシ毛の量の割合と関係する値である。R/Rが10以上であれば、導電性基材と非接触のブラシ毛の量が、現像ロール上の残現像剤を当該現像ロールから剥離するのに十分な量となることが確認できている。また、R/Rが1010以下であれば、導電性基材と接触するブラシ毛の量が、現像剤を現像ロールに供給するのに十分な量となることが確認できている。
【0013】
このように、上記の構成によれば、供給性能の良い、導電性基材と接触しているブラシ毛と、剥離性能の良い、導電性基材と非接触のブラシ毛との両方を合わせもつ。これにより、現像ロールへの現像剤の供給性能および現像ロールからの現像剤の剥製性能の両者が安定した現像剤供給ロールを実現することができる。
【0014】
さらに、上記接着剤の厚みは、100μm以上300μm以下であることが好ましい。これにより、上記式(1)を満たすブラシ部を容易に作製することができる。
【0015】
さらに、上記ブラシ毛は、10(Ω/cm・フィラメント)以上1012(Ω/cm・フィラメント)以下であることが好ましい。これにより、現像剤の帯電量を安定化することができる。
【0016】
さらに、上記接着剤の抵抗率は10Ω・cm以上であることが好ましい。これにより、Rが10≦R/R≦1010 を容易に満たすことができる。
【0017】
また、本発明の現像装置は、上記の現像剤供給ロールと、当該現像剤供給ロールから供給された現像剤を用いて、静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像する現像ロールとを備えることを特徴とする。
【0018】
これにより、現像剤供給ロールによる、現像ロールへの現像剤の供給性能および現像ロールからの現像剤の剥製性能の両者が安定した現像装置を実現できる。
【0019】
また、本発明の画像形成装置は、上記の現像装置を備えたことを特徴とする。
【0020】
これにより、現像ロール上の現像剤の量が安定するため、良好な画像を形成することができる画像形成装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る現像剤供給ロールは、静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像剤を用いて現像する現像ロールに対して現像剤を供給する現像剤供給ロールであって、導電性を有し、現像剤を現像ロールへ供給するための現像剤供給用電圧が印加される導電性基材と、上記導電性基材の表面に塗布された接着剤と、上記接着剤に静電植毛された複数のブラシ毛からなるブラシ部とを備え、上記ブラシ毛の電気抵抗率は上記接着剤の電気抵抗率よりも低く、上記ブラシ部の中の一部のブラシ毛が上記導電性基材と非接触であり、上記ブラシ部の全てのブラシ毛の先端部と短絡するような導電性部材を設けたときに当該導電性部材と上記導電性基材との間の電気抵抗値Rが以下の式(1)を満たす。
10≦R/R≦1010 ・・・ (1)
ただし、Rは、上記ブラシ毛の単位長さ当りの電気抵抗値をr、上記ブラシ毛の長さをL、上記ブラシ部のブラシ毛の本数をMとしたとき、R=r×L/M で示される。
【0022】
これにより、現像ロールへの現像剤の供給性能および現像ロールからの現像剤の剥製性能の両者が安定した現像剤供給ロールを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の一実施形態について図1ないし図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0024】
(画像形成装置の構成)
図2は、本実施の形態の現像装置を備えた画像形成装置における画像形成部の構造を模式的に示す正面図である。
【0025】
尚、画像形成装置は、画像形成装置が備えるスキャナにて読み込まれたデータや、画像形成装置に接続された外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ等の画像処理装置)からのデータを画像として出力するものである。
【0026】
図2に示すように、画像形成部30は、感光体ドラム1と、帯電ブラシ2と、露光装置3と、現像装置10と、転写ブラシ4と、搬送ベルト5と、クリーニング装置20と、図示しない除電手段とを備えており、感光体ドラム1の周囲に、回転方向に沿って、帯電ブラシ2、露光装置3、現像装置10、転写ブラシ4及び搬送ベルト5、クリーニング装置20、及び除電手段をこの順序で配置した構成となっている。
【0027】
感光体ドラム1は、画像形成装置における本発明の静電潜像担持体及び現像剤担持体となるものであり、円柱形状を有している。
【0028】
帯電ブラシ2は、感光体ドラム1と物理的に接触して、感光体ドラム1の表面を一様に所定の電位まで帯電させるためのものである。帯電ブラシ2は、感光体ドラム1と互いの回転軸を平行にして隣接対向して設置されている。
【0029】
露光装置3は、帯電ブラシ2によって帯電された感光体ドラム1の表面を、例えばパーソナルコンピュータ等の画像処理装置からのデータに基づき、レーザ光等により露光して、感光体ドラム1の表面に静電潜像を形成させるためのものである。露光装置3として、例えば半導体レーザや発光ダイオードを用いることができる。
【0030】
現像装置10は、感光体ドラム1の表面に現像剤を供給し、感光体ドラム1の表面に形成された静電潜像を現像剤像として顕像化するつまり現像するためのものである。この現像装置10については、後で詳述する。
【0031】
搬送ベルト5は、感光体ドラム1の表面に現像剤像が形成された後に、PPC(Plain Paper Copy)用紙等の記録媒体6を感光体ドラム1に運搬するためのものである。
【0032】
転写ブラシ4は、感光体ドラム1の表面の現像剤像を、記録媒体6に転写するためのものである。転写ブラシ4は、板金に、板金と接する面を底面とした見かけ上直方体のブラシ体を貼り付けた固定型ブラシである。転写ブラシ4は、例えば、パイル織り生地からなり、板金の上にブラシ毛を板金の面方向に垂直な方向に起毛したものである。転写ブラシ4は、板金の面方向と記録媒体6の面方向とを平行にして、搬送ベルト5を間に挟んで感光体ドラム1と隣接対向するように設置されている。
【0033】
クリーニング装置20は、クリーニングブラシ21と、固体潤滑剤供給装置22と、クリーニングブレード23とを備えており、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を除去するためのものである。
【0034】
クリーニングブラシ21は、感光体ドラム1と物理的に接触して、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を除去するためのものである。また、クリーニングブラシ21は、例えば、固体潤滑剤塗布ブラシとしての機能を兼ねており、固体潤滑剤供給装置22から供給される固体潤滑剤を、感光体ドラム1の表面に塗布するためのものである。クリーニングブラシ21は、円柱形状の基材にブラシ毛を起毛したロール型ブラシであり、感光体ドラム1の回転軸方向と円柱形状の基材の軸方向とを互いに平行にして、感光体ドラム1に隣接対向するように設置されている。
【0035】
クリーニングブレード23は、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を物理的に掻き落とすためのものである。クリーニングブレード23は、感光体ドラム1の回転方向に沿って、クリーニングブラシ21の後側に備えられ、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を均一に除去するために、感光体ドラム1の法線方向に対して鋭角に摺接している。
【0036】
固体潤滑剤供給装置22は、クリーニングブラシ21及びクリーニングブレード23によるクリーニング効率を高くするためのものである。固体潤滑剤供給装置22は、固体潤滑剤を、クリーニングブラシ21を介して、感光体ドラム1の表面に塗布する。また、固体潤滑剤供給装置22は、クリーニングブラシ21に固体潤滑剤が均一に塗布されるように、クリーニングブラシ21のシャフトの軸方向に広がった略四角柱の形状を有している。固体潤滑剤供給装置22は、クリーニングブラシ21の表面全体に固体潤滑剤が行き渡るように、クリーニングブラシ21と隣接対向して設置されている。使用する固体潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0037】
除電手段は、感光体ドラム1の表面を除電するためのものである。除電手段としては、例えば除電ブラシ等が挙げられる。
【0038】
上記構成の画像形成装置において、画像を形成する動作を、図2に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0039】
感光体ドラム1の表面は、帯電ブラシ2と接触することにより、均一に帯電する。表面が帯電された感光体ドラム1は、露光装置3によって、データに基づき露光され、感光体ドラム1の表面に静電潜像が形成される。そして、現像装置10の現像ロール12により、感光体ドラム1の表面に現像剤が供給され、感光体ドラム1の表面の静電潜像が、現像されて顕像化される。続いて、搬送ベルト5によって記録媒体6が感光体ドラム1へ運搬され、転写ブラシ4によって、感光体ドラム1の表面の現像剤像が、記録媒体6に転写される。転写後の感光体ドラム1は、固体潤滑剤が表面に塗布されたクリーニングブラシ21によって、表面に固体潤滑剤が塗布され、残留した現像剤や紙粉等が、クリーニングブラシ21及びクリーニングブレード23によって除去される。最後に図示しない除電手段により、感光体ドラム1の表面が除電される。このようなサイクルで画像形成は行われる。
【0040】
(現像装置の構成)
次に、本実施の形態の現像装置10の詳細について、図3に基づいて以下に説明する。
【0041】
まず、本実施の形態の現像装置10では、例えば非磁性1成分トナーからなる現像剤が使用されており、いわゆる非磁性1成分現像方式を採用している。この現像方式は、磁性1成分トナーに対して透明性の高い非磁性1成分トナーが使用できるのでフルカラーの現像に適していると共に、現像ロール12に磁石を用いない点で画像形成装置の小型軽量化に対して非常に有利である。特に、近年開発が盛んになっている小型のパーソナル用複写機、プリンタ、及び普通紙ファックス、並びにフルカラー複写機、フルカラープリンタに対してはこの現像方法を用いる例が多くなってきている。尚、本説明では、現像剤は、非磁性1成分トナーからなっているが、本発明では、必ずしもこれに限らず、例えば、磁性1成分トナーであってもよい。
【0042】
図3に示すように、現像装置10は、現像剤容器11内に、現像ロール12と現像剤供給ロール13と現像剤規制ブレード14とを備えており、感光体ドラム1の表面に現像剤Tを供給し、感光体ドラム1の表面に形成された静電潜像を現像剤像として顕像化するつまり現像する。
【0043】
上記現像ロール12は、感光体ドラム1と物理的に接触して、現像剤供給ロール13から供給される現像剤Tを感光体ドラム1の表面に供給するためのものである。現像ロール12は、円柱形状を有しており、感光体ドラム1と互いの回転軸を平行にして隣接対向するように設置されている。
【0044】
上記現像剤供給ロール13は、現像ロール12と物理的に接触して、現像ロール12に現像剤Tを供給するためのものであり、現像剤Tを保持すると共に、現像剤Tを現像ロール12の表面に供給する。現像剤供給ロール13は、例えば、少なくとも表面が高い導電性を有する円柱形状の導電性基材13aと、当該導電性基材13aの表面に植毛されてブラシ毛群からなるブラシ部13bとから構成されるロール型ブラシである。現像剤供給ロール13は、現像ロール12の回転軸方向と円柱形状の導電性基材13aの軸方向とを互いに平行にして、現像ロール12に隣接対向するように設置されている。
【0045】
現像剤供給ロール13には、現像剤Tを現像ロール12に付着させるような電界を現像ロール12との間で形成するように、電源17により電圧(以下、現像剤供給用電圧という)が印加される。例えば、現像剤Tが負帯電しており、現像ロール12に−250Vの電圧が印加されている場合、現像剤供給ロール13には−350Vの現像剤供給用電圧が印加される。これにより、負に帯電している現像剤Tは現像剤供給ロール13から現像ロール12に供給されることとなる。
【0046】
上記現像剤規制ブレード14は、現像ロール12に当接して現像ロール12上に供給された現像剤Tの均一薄層を形成する。
【0047】
上記構成の現像装置10では、送り羽根16によって現像ロール12近傍に送り込まれた現像剤Tは、現像剤供給ロール13で現像ロール12に塗布され、現像剤規制ブレード14で薄層化された後に、感光体ドラム1との接触部分で感光体ドラム1の潜像の現像に用いられる。そして、現像残りの現像剤(残現像剤)Tは再度現像装置10内に戻り、現像剤供給ロール13によって現像ロール12から剥離されて現像装置10内の現像剤Tと混合される。
【0048】
(現像剤供給ロールの構成)
次に、本実施の形態の特徴である現像剤供給ロール13について、図1、図3および図4に基づいて以下に説明する。
【0049】
本実施の形態の現像剤供給ブラシ12は、図4に示すように、芯材となるアルミ管等の、少なくとも表面が高い導電性を有する導電性基材13aと、当該導電性基材13の表面に塗布された接着剤13cと、この接着剤13cに静電植毛されたブラシ毛13d群で構成されるブラシ部13bとからなっている。そして、図3に示されるように、上記の現像剤供給用電圧は、導電性基材13aに印加される。
【0050】
尚、静電植毛の方法としては、例えば特許文献1に記載の方法など従来知られた方法を用いればよい。
【0051】
本実施の形態の現像剤供給ロール13では、ブラシ毛13dを接着剤13cに静電植毛させる際に、一部のブラシ毛13dについては、その一端が導電性基材13aに到達させないようにしている。図1は、現像剤供給ロール13の表面部分の拡大図である。図1の一点鎖線Bで囲んだ箇所に示されるように、ブラシ毛13dの一部については、その一端が導電性基材13aに到達して当該導電性基材13aと接触することで、導電性基材13aと電気的に直接接続している。一方、図1の破線Aで囲んだ箇所に示されるように、残りのブラシ毛13dについては、導電性基材13aに接触しておらず、接着剤13cを介して導電性基材13aと電気的に接続している。
【0052】
本実施の形態の現像剤供給ロール13では、ブラシ毛13dの抵抗率が接着剤13cの抵抗率よりも低くなるように、ブラシ毛13dおよび接着剤13cの材料を選定している。そのため、導電性基材13aと接触しているブラシ毛13dは当該導電性基材13aと導通することとなるが、導電性基材13aと非接触のブラシ毛13dは当該導電性基材13aとの導通性が弱くなる。なお、接着剤13cの抵抗率は10Ω・cm以上であることが好ましい。
【0053】
上述したように現像剤供給用電圧は導電性基材13aに印加される。そのため、導電性基材13aと接触しているブラシ毛13dにも、当該現像剤供給用電圧が印加されることとなる。その結果、導電性基材13aと接触しているブラシ毛13dは、現像剤Tを現像ロール12に供給する性能(供給性能)が優れている。一方、導電性基材13aと非接触のブラシ毛13dは、導電性基材13aとの導通が弱いために、現像剤供給用電圧が印加されにくくなる。その結果、残現像剤を現像ロール12から剥離する性能(剥離性能)が優れている。
【0054】
このように、本実施の形態の現像剤供給ロール13は、供給性能の良い、導電性基材13aと接触しているブラシ毛13dと、剥離性能の良い、導電性基材13aと非接触のブラシ毛13dとの両方を合わせもつ。これにより、良好な供給性能および剥離性能の両方を実現することができる。
【0055】
なお、導電性基材13aまで到達しないブラシ毛13dの量の割合は、接着剤13cの厚みを変更することで制御できる。
【0056】
また、導電性基材13aまで到達していないブラシ毛13dの割合は、導電性基材13aとブラシ部13bの表面全体(つまり、全ブラシ毛13dの先端部全体)との間の電気抵抗値により示すことができる。すなわち、全てのブラシ毛13dが導電性基材と接触している場合、導電性基材13aとブラシ部13bの表面全体との間の電気抵抗値R(Ω)は、ブラシ毛13dの1フィラメントの単位長さ(1cm)当りの抵抗値をr(Ω/cm・フィラメント)、ブラシ毛13dの長さをL(cm)、全ブラシ毛13dの本数をMとしたとき、R=r×L/M で表される。一方、一部のブラシ毛13dが導電性基材13aと非接触の場合、導電性基材13aとブラシ部13bの表面全体との間の電気抵抗値Rは、Rよりも大きくなる。ここで、R/Rは、導電性基材13aと非接触のブラシ毛13dの割合に依存する値である。そのため、R/Rを求めることで、導電性基材13aまで到達していないブラシ毛13dの割合を量ることができる。
【0057】
導電性基材13aとブラシ部13bの表面全体との間の電気抵抗値は、円筒状に曲げた導電性部材である金属板(例えば銅板)を全てのブラシ毛13dの先端部と短絡させ、当該金属板と導電性基材との間の抵抗値を測定することで求めることができる。
【0058】
なお、静電植毛では、導電性基材13aの表面の全ての領域において、同じ状態で植毛される。そのため、ブラシ部13bの一部の領域の表面と導電性基材13aとの間の抵抗値R’と、当該領域に含まれるブラシ毛13dの本数M’から計算されるR’=r×L/M’ との比であるR’/R’は、R/Rと等しくなる。よって、ブラシ部13bの一部の領域の表面と導電性基材13aとの間の抵抗値R’を測定することで、R/Rを求めてもよい。
【0059】
本実施の形態の現像剤供給ロール13は、R/Rの値が10〜1010 であることが好ましい。これにより、良好な供給性能および剥離性能を両立させることができる。
【0060】
また、導電性基材13aと接触しているブラシ毛13dの現像剤の供給性能ならびに現像剤の荷電安定性をより良くするために、ブラシ毛13aの1フィラメントの単位長さ(1cm)当りの抵抗値は、10〜1012(Ω/cm・フィラメント)であることが好ましい。
【0061】
また、ブラシ毛の長さは、0.3〜3.5mmが好ましい。
【0062】
接着剤13cの材質としては、酢酸ビニル、塩化ビニル、酢酸ビニル塩化ビニル共重合、酢酸ビニルアクリル共重合、エチレン酢酸ビニル、合成ゴム、天然ゴム、ウレタン、メラミン、尿素、アルキド、フェノール、エポキシなどを用いることができる。
【実施例】
【0063】
本実施の形態の現像剤供給ロール13を用いた場合における供給性能と剥離性能を確認するために、導電性基材13aまで到達していないブラシ毛13dの量の割合と関係するパラメータである上記R/Rについて各種の実験を行った。
【0064】
このパラメータを評価するに際しての実験方法については以下のようにして行った。
【0065】
まず、供給性能については、ベタ印字後(現像後の残現像剤が無く、現像剤供給ロール13が現像剤Tの供給のみを行う状態)での、現像ロール12上における、単位面積当りの現像剤Tの付着量により評価した。この付着量は、現像剤供給ロール13から現像ロール12への供給量を示している。この供給量が小さいということは、供給性能が悪いことになる。
【0066】
次に、剥離性能については、図5(a)に示すように、白地印字後(現像後の残現像剤が多く、現像剤供給ロール13が現像剤Tの剥離及び供給の双方を行う必要が有る状態)と、図5(b)に示すように、ベタ印字後(現像後の残現像剤が無く、現像剤供給ロール13が現像剤Tの供給のみを行う状態)とでの現像ロール12上における現像剤Tの付着量の差により評価した。この場合、現像ロール12上における現像剤Tの付着量の差が小さいということは、剥離性能が高いということになる。
【0067】
また、評価条件は、使用トナーとして非磁性1成分トナーであるポリエステル系/負帯電トナーを使用し、印加電圧は、現像ロール12が−250V、現像剤供給ロール13が−350Vとした。
【0068】
実験を行った現像剤供給ロール13では、ブラシ毛13dとして、繊度6.6デシテックス(T)、長さ1.5mm、単位長さ当りの抵抗値107.5(Ω/cm・フィラメント)(抵抗率103.5Ω・cm)の導電性ナイロンを材料とするものを用いた。
【0069】
また、接着剤13cとして抵抗率10Ω・cmのものを用いた。さらに、接着剤13cの厚みを、50μmから500μmまで変化させることで、上記のR/Rが異なる現像剤供給ロールを作製し、上記供給性能および剥離性能を評価した。
【0070】
図6は、パラメータR/Rを変化させたときの、現像剤供給ロール13による現像ロール12への現像剤の供給量m/S(mg/cm)と、現像剤供給ロール13による現像ロール12からの現像剤の剥離量を表す、白地印刷後とベタ印刷後の付着量の差Δm/S(mg/cm)を示すグラフである。
【0071】
図6に示されるように、R/Rが10未満である場合、つまり、ブラシ毛13dのほとんどが導電性基材13aと接触している場合、供給性能については問題ないが、現像ロール12からの残現像剤の剥離量が小さく剥離性能が悪いことが確認された。これは、ほとんどのブラシ毛13dに現像剤供給用電圧が印加されるため、残現像剤がブラシ毛に付着しにくいからである。R/Rが10以上である場合、導電性基材13aと非接触のブラシ毛13dの割合が増え、当該ブラシ毛13dにより残現像剤を剥離することができ、高い剥離性能を有することが確認できた。
【0072】
また、R/Rが1010より大きい場合、つまり、ブラシ毛13dのほとんどが導電性基材13aと非接触である場合、剥離性能については問題ないが、現像ロール12への現像剤の供給量が低下し供給性能が悪いことが確認された。これは、ほとんどのブラシ毛13dに対して現像剤供給用電圧を十分に印加することができず、ブラシ部13bと現像ロール12との間で、現像剤を現像ロール12に供給するために必要な電位差が生じないためである。R/Rが1010以下である場合、導電性基材13aと接触するブラシ毛13dの割合が増え、当該ブラシ毛13dにより現像剤を現像ロール12に十分に供給することができ、安定した供給性能を実現できることが確認できた。
【0073】
図6に示す結果から、R/Rは、10以上1010以下であることが好ましいことが確認できた。また、R/Rを10以上1010以下の範囲にするためには、接着剤13cの厚みは、100μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0074】
なお、上記の実施例では、単位長さ当りの抵抗値107.5(Ω/cm・フィラメント)のブラシ毛13dを用いた現像剤供給ロール13について説明したが、単位長さ当りの抵抗値10(Ω/cm・フィラメント)以上1012(Ω/cm・フィラメント)以下の範囲のブラシ毛13dであっても、R/Rが10以上1010以下の範囲において、良好な供給性能と剥離性能とを実現できる。
【0075】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の現像剤供給ロール、現像装置、及び画像形成装置は、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の電子写真方式の装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明における現像剤供給ロールの実施の一形態を示すものであり、その表面部分の構成を示す断面図である。
【図2】上記現像剤供給ロールを備えた画像形成装置の画像形成部を示す全体構成図である。
【図3】上記現像剤供給ロールを備えた現像装置の構成を示す断面図である。
【図4】上記現像剤供給ロールの構成を示す断面図である。
【図5】(a)(b)は、現像剤供給ロールにおける実験条件の具体的評価方法を示す断面図である。
【図6】現像剤供給ロールによる現像剤の供給性能および剥離性能の実験結果を示すグラフである。
【図7】従来の現像装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 感光体ドラム(静電潜像担持体)
10 現像装置
12 現像ロール
13 現像剤供給ロール
13a 導電性基材
13b ブラシ部
13c 接着剤
13d ブラシ毛
T 現像剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像剤を用いて現像する現像ロールに対して現像剤を供給する現像剤供給ロールであって、
導電性を有し、現像剤を現像ロールへ供給するための現像剤供給用電圧が印加される導電性基材と、
上記導電性基材の表面に塗布された接着剤と、
上記接着剤に静電植毛された複数のブラシ毛からなるブラシ部とを備え、
上記ブラシ毛の電気抵抗率は上記接着剤の電気抵抗率よりも低く、
上記ブラシ部の中の一部のブラシ毛が上記導電性基材と非接触であり、
上記ブラシ部の全てのブラシ毛の先端部と短絡するような導電性部材を設けたときに当該導電性部材と上記導電性基材との間の電気抵抗値Rが以下の式(1)を満たすことを特徴とする現像剤供給ロール。
10≦R/R≦1010 ・・・ (1)
(ただし、Rは、上記ブラシ毛の単位長さ当りの電気抵抗値をr、上記ブラシ毛の長さをL、上記ブラシ部のブラシ毛の本数をMとしたとき、R=r×L/M で示される。)
【請求項2】
上記接着剤の厚みは、100μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の現像剤供給ロール。
【請求項3】
上記ブラシ毛は、10(Ω/cm・フィラメント)以上1012(Ω/cm・フィラメント)以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の現像剤供給ロール。
【請求項4】
上記接着剤の抵抗率が10Ω・cm以上であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の現像剤供給ロール。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の現像剤供給ロールと、
当該現像剤供給ロールから供給された現像剤を用いて、静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像する現像ロールとを備えることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項5に記載の現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−288721(P2009−288721A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143868(P2008−143868)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(390026147)東英産業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】