現像剤担持体、現像装置および画像形成装置
【課題】現像剤担持体への現像剤の付着を防止し、画像品質を向上する。
【解決手段】現像ローラ(現像剤担持体)15は、潜像担持体(感光体ドラム)11に現像剤を供給するものであり、基材52と、基材52の表面に形成された処理層53とを有している。処理層53は、アクリル樹脂、または、アクリル樹脂およびウレタン樹脂を含み、アクリル樹脂の含有量は50〜100重量%である。基材52の表面に形成された状態での処理層53のアスカーC硬度は、基材52のアスカーC硬度より高く、68度〜80度である。
【解決手段】現像ローラ(現像剤担持体)15は、潜像担持体(感光体ドラム)11に現像剤を供給するものであり、基材52と、基材52の表面に形成された処理層53とを有している。処理層53は、アクリル樹脂、または、アクリル樹脂およびウレタン樹脂を含み、アクリル樹脂の含有量は50〜100重量%である。基材52の表面に形成された状態での処理層53のアスカーC硬度は、基材52のアスカーC硬度より高く、68度〜80度である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法においてトナー等の現像剤を担持する現像剤担持体、並びに、現像剤担持体を備えた現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カラー画像を形成する画像形成装置として、複数の画像形成ユニットを一列に配列したタンデム型の画像形成装置が知られている。画像形成ユニットでは、静電潜像担持体(感光体ドラム)の表面を露光ヘッドで露光して静電潜像を形成し、現像剤担持体(現像ローラ)により静電潜像を現像して現像剤像(トナー像)を形成する。
【0003】
ここで、上記のような現像動作が繰り返されると、現像剤担持体の表面に、現像剤を構成する成分が付着または融着する場合がある。そこで、現像剤担持体の表面層の成分や耐摩耗性を調整することで、現像剤の現像剤担持体への付着および融着を抑制することが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1では、アクリル樹脂とウレタン樹脂のブレンドポリマー層を有する現像剤担持体の硬度、膜厚などを規定することにより、現像剤(またはその成分)の付着および融着を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−175372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、印刷速度の高速化や画像解像度の向上の要請から、現像剤担持体が、特許文献1に記載された周速130.2mm/秒よりも速い速度域で使用される場合がある。そのような場合には、現像剤担持体と、これに当接している部材との摩擦が増加して、現像剤担持体の表面への現像剤成分の付着が生じ、その結果、現像剤担持体の帯電能力および現像剤搬送能力の低下を招き、画像濃度の低下やカスレが生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、現像剤担持体への現像剤の付着を防止し、画像品質を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る現像剤担持体は、基材と、基材の表面に形成された処理層とを有する現像剤担持体であって、処理層は、アクリル樹脂、または、アクリル樹脂およびウレタン樹脂を含み、処理層のアクリル樹脂の含有量は、50〜100重量%であり、基材の表面に形成された状態での処理層のアスカーC硬度は、基材のアスカーC硬度より高く、68度〜80度であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る現像装置は、静電潜像担持体に形成された静電潜像を現像する現像装置であって、上記の現像剤担持体を有することを特徴とする。また、本発明に係る画像形成装置は、上記の現像装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、現像剤担持体への現像剤の付着を防止し、画像品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置のイメージドラムユニットの構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の他の構成例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における現像ローラ(現像剤担持体)の断面図である。
【図5】十点平均粗さRz(A)と凹凸の平均間隔Sm(B)の印刷枚数に対する変化をそれぞれ示すグラフである。
【図6】印刷試験に用いた2by2パターンを示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における現像ローラのアクリル樹脂の含有量と、抵抗値差と、硬度との関係を示すグラフである。
【図8】現像ローラの摩擦係数の測定方法を示す概略図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態における現像ローラに関し、処理層のアクリル樹脂の含有量、摩擦係数およびアスカーC硬度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の実施の形態.
まず、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の基本構成を示す図である。画像形成装置は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンに対応する4つのイメージドラムユニット(画像形成部とも称する)10B,10Y,10M,10Cを有している。イメージドラムユニット10B,10Y,10M,10Cは、媒体Pの搬送路に沿って一列に配列されている。
【0012】
画像形成装置は、さらに、記録媒体(例えば印刷用紙)Pを積載して保持する給紙カセット20と、給紙カセット20に保持された媒体Pを一枚ずつ搬送路に送り出す給紙ローラ21と、給紙ローラ21により送り出された媒体Pをイメージドラムユニット10B,10Y,10M,10Cに向けて搬送する搬送ローラ22とを有している。
【0013】
イメージドラムユニット10B,10Y,10M,10Cに対向するように、媒体Pを保持して搬送する転写ベルト23が配設されている。転写ベルト23は、駆動ローラ24aと従動ローラ24bに張架されており、駆動ローラ24aの回転によって矢印Aで示す方向に移動する。転写ベルト23の下側には、この転写ベルト23の外周面に接するように、転写ベルト23の外周面に残る現像剤を除去するクリーニングプレード28が配置されている。
【0014】
画像形成装置は、さらに、各イメージドラムユニット10B,10Y,10M,10Cにより媒体Pに転写された現像剤像を媒体Pに定着する定着装置25と、定着装置25により現像剤像が定着された媒体Pを装置外部に排出する排出ローラ26と、排出された媒体Pを積載するスタッカ部27とを備えている。
【0015】
図2は、媒体Pの搬送方向においてイメージドラムユニット10B,10Y,10M,10Cの最も下流側に位置するイメージドラムユニット10Cと定着装置25とを拡大して示す図である。イメージドラムユニット10Cは、表面に静電潜像が形成される円筒状の感光体ドラム(静電潜像担持体)11を有している。感光体ドラム11は、例えば、導電性支持体の表面に感光層を設けて構成され、図示しないモータの駆動力により一方向(ここでは時計回り)に回転する。
【0016】
感光体ドラム11に周囲には、帯電ローラ(帯電装置)12と、露光ヘッド(露光装置)13と、現像ローラ(現像剤担持体)15とが配列されている。帯電ローラ12は、例えば、金属製のシャフトに半導電性ゴム層を形成したものであり、図示しない電源部から所定のバイアス電圧を付与され、感光体ドラム11の回転に伴って従動回転し、感光体ドラム11の表面を均一に帯電する。
【0017】
露光ヘッド13は、主走査方向(感光体ドラム11の回転軸方向)に配列された複数の発光素子(例えばLED)とレンズアレイとを有し、画像データに応じて感光体ドラム11の表面を露光して、静電潜像を形成する。
【0018】
現像ローラ15は、例えば、金属製のシャフトに樹脂層を形成したものである(詳細については後述する)。現像ローラ15は、図示しない電源部から所定のバイアス電圧を付与され、感光体ドラム11の表面に接触しながら同一方向に回転し、感光体ドラム11の表面の静電潜像に現像剤(トナー)を付着させて現像する。
【0019】
また、現像ローラ15に隣接して、供給ローラ14(現像剤供給部材)と現像ブレード16(現像剤規制部材)が配置されている。供給ローラ14は、例えば、金属製のシャフトに発泡ウレタンゴム層を形成したものである。供給ローラ14は、図示しない電源部から所定のバイアス電圧を付与され、現像ローラ15に接触しながら同一方向に回転し、現像ローラ15の表面に現像剤(図2に符号Tで示す)を供給する。
【0020】
現像ブレード16は、例えば、現像ローラ15の軸方向に長い長尺状の板状部材を屈曲させて形成したものであり、屈曲部の曲面が現像ローラ15の表面に押圧されるように配置され、この押圧力により現像剤層(トナー層)の厚さを規制する。
【0021】
なお、イメージドラムユニットにおいて、静電潜像の現像に寄与する部分(現像ローラ15、供給ローラ14および現像ブレード16を含む部分)を、「現像装置」と称する。
【0022】
感光体ドラム11との間で媒体Pの搬送路を挟み込むように、転写ローラ(転写部材)17が配置されている。転写ローラ17は、図示しない電源部から所定のバイアス電圧を付与され、感光体ドラム11に形成された現像剤像(トナー像)を媒体Pに転写する。
【0023】
転写ローラ17に対して、感光体ドラム11の回転方向下流側には、クリーニング部材18が設けられている。クリーニング部材19は、例えばポリウレタンゴムからなるローラまたはブレードであり、転写後に感光体ドラム11の表面に残存する現像剤を除去する。
【0024】
イメージドラムユニット10B,10Y,10Mは、使用する現像剤の種類を除き、イメージドラムユニット10Cと同様の構成を有している。なお、以下では、これらイメージドラムユニット10B,10Y,10M,10Cを総称して、「イメージドラムユニット10」として説明する。
【0025】
定着装置25は、熱源hを内蔵した定着ローラ25aと、加圧ローラ25bとを有する。定着ローラ25aと加圧ローラ25bは、これらの間で媒体Pを挟み込んで熱および圧力を加え、現像剤像を媒体Pに定着させるものである。なお、図2に示した定着装置の他、例えば、ベルト方式の定着装置を用いてもよい。
【0026】
ここでは、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの現像剤を用いるイメージドラムユニット10B,10Y,10M,10Cを備えた例について説明するが、5つ以上の画像形成装置を備えてもよく、また、3つ以下の画像形成装置を備えてもよい。
【0027】
また、例えば、図3(A)に示すように、転写ベルト23を使用しない単色の画像形成装置であってもよい。この場合、イメージドラムユニット10を一つ備え、媒体Pが搬送ローラ22を経て転写ローラ17により搬送される際に、感光体ドラム11から媒体Pに現像剤像が転写される。
【0028】
あるいは、図3(B)に示すように、現像剤像を直接担持する中間転写ベルト24を有する画像形成装置であってもよい。この場合、イメージドラムユニット10B,10Y,10M,10Cの各感光ドラム11上に形成された現像剤像が、各転写ローラ17により中間転写ベルト24に一次転写され、さらに二次転写部31において媒体Pに二次転写される。
【0029】
次に、本実施の形態における現像ローラ15(現像剤担持体)について説明する。
図4は、現像ローラ15の断面構造を示す図である。現像ローラ15は、例えばステンレス鋼(SUS)からなる導電性のシャフト51の表面に基材52を形成し、その表面に、現像剤を帯電させるための処理層53を形成したものである。
【0030】
基材52は、例えばウレタン樹脂(より具体的には、ポリエーテル系ウレタン樹脂)で構成され、電子導電剤であるカーボンブラック、炭酸カルシウムまたはシリカ等の絶縁性無機微粒子が配合されている。基材52は、アスカーC硬度が約65度であり、JIS−1994による十点平均粗さRzが約10μmであることが好ましい。なお、基材52のアスカーC硬度は、アスカーC硬度計(高分子計器株式会社製)の押針を、基材52の表面(外周面)に押し当てて測定したものである。また、十点平均粗さRzは、微細形状測定器「サーフコーダSEF3500」(株式会社小坂研究所製)を用いて測定したものである。
【0031】
処理層53は、アクリル樹脂、または、アクリル樹脂とウレタン樹脂との混合物で構成されている。処理層53は、例えば、所定の溶媒にアクリル樹脂とウレタン樹脂とを溶解させた溶液を、弾性層52の表面に塗布し、その後、加熱乾燥により溶媒を揮発させることにより形成する。処理層53を構成するウレタン樹脂としては、熱可塑性のポリエーテル系ウレタン樹脂やポリエステル系ウレタン樹脂を使用することができる。また、処理層53には、半導電性を付与するため、カーボンブラックが適量配合されている。なお、処理層53の好ましい硬度(アスカーC硬度)および膜厚については、後述する。
【0032】
ポリエーテル系ウレタン樹脂を構成する成分について説明する。ウレタン樹脂は、架橋点分子であるイソシアネートと架橋点間分子であるジオールまたはトリオールなどから構成される。イソシアネートとしては、ポリエーテル系ウレタン樹脂の合成に使用可能な種類であれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、または、これらの異性体等を用いることができる。特に、耐摩耗性に優れたポリウレタンが得られる点で、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、または、その異性体が好ましい。上記イソシアネートは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、架橋点間分子は低分子量ジオールと低分子量トリオールとの混合物が好ましく用いられる。上記低分子量ジオールとしては、通常、ポリウレタンの形成に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−へキサンジオール、またはネオペンチルグリコール等を用いることができる。上記低分子量トリオールとしては、通常、ポリウレタンの形成に用いられるものであれば特に限定されず、トリメチローラプロパン、またはトリイソプロパノールアミン等を用いることができる。
【0033】
一方、処理層53に含有されるアクリル樹脂は、現像ローラ15が、感光体ドラム11、供給ローラ14および規制ブレード16(接触部材と称する)と接触する際に、摩擦を低減させるものであればよく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等の硬度の大きいポリマーが好ましいが、ホモポリマーに限定するものではない。そのため、例えばアクリル系樹脂としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジブチルフマル酸エステル、またはジメチルフマル酸エステルなどの1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
次に、本実施の形態における画像形成装置の動作について説明する。
画像形成装置の図示しない制御部は、パーソナルコンピュータ等の上位装置から印刷指示を受けて画像形成工程を開始する。制御部は、図示しないモータを駆動して給紙ローラ21を回転させ、給紙カセット20から媒体Pを一枚ずつ搬送路に送り出す。制御部は、また、搬送ローラ22と、転写ベルト23を駆動するための駆動ローラ24aの回転を開始する。搬送路に送り出された媒体Pは、搬送ローラ22を経て転写ベルト23に吸着保持され、転写ベルト23によって搬送される。
【0035】
また、制御部は、図示しないモータを駆動して、各イメージドラムユニット10の感光体ドラム11、現像ローラ15および供給ローラ14の回転を開始し、また、図示しない電源部から、帯電ローラ12、現像ローラ15および転写ローラ17にそれぞれバイアス電圧を印加する。帯電ローラ12は、感光体ドラム11の回転に従動して回転し、感光体ドラム11の表面を一様に帯電させる。
【0036】
さらに、制御部は、露光ヘッド13を駆動し、入力された印刷情報に応じて感光体ドラム11の表面を露光し、静電潜像を形成する。現像ローラ15は、その表面に、供給ローラ14から供給された現像剤を保持して回転する。現像剤は、感光体ドラム11と現像ローラ15との接触部において、両者の電位差により、現像ローラ15の表面から感光体ドラム11の表面に静電潜像に付着する。これにより、感光体ドラム11の表面の静電潜像は現像され、現像剤像(トナー像)となる。現像剤像は、感光体ドラム11と転写ローラ17との接触部に達すると、両者の電位差により、感光体ドラム11から媒体Pの表面に転写される。
【0037】
各イメージドラムユニット10で現像剤像が転写された媒体Pは、転写ベルト23により搬送されて定着装置25に達する。定着装置25の定着ローラ25aは、制御部の指示により加熱されて所定の温度に達しており、加圧ローラ25bとの間で媒体Pを挟み込んで熱および圧力を加え、これにより現像剤像が媒体Pに定着する。定着装置25において現像剤像が定着された媒体Pは、排出ローラ26により排出され、スタッカ部27に積載される。
【0038】
次に、上記現像ローラ15(現像剤担持体)の諸特性について説明する。
<印刷試験>
本実施の形態の現像ローラ15を組み込んだイメージドラムユニット10を画像形成装置に装着して印刷試験を行った。なお、本願明細書で説明する印刷試験では、特に記載がない限り、全て同じ印刷画像を用い、同じ印刷条件で行うものとする。具体的には、A4用紙(媒体P)の印刷可能領域の全面に亘って、画像密度(カバレッジ:書き込み可能ドット数に対する書き込みドット数の比率)が1%の画像を印刷する。印刷枚数は、20,000枚とする。試験環境は、気温が25±1℃、湿度が55±5%の範囲とする。
【0039】
また、現像ローラ15のバイアス電圧を−190Vとし、供給ローラ14のバイアス電圧を−270Vとし、帯電ローラ12のバイアス電圧を−1000Vとする。感光体ドラム11の外径を約30mmとし、現像ローラ15の外径を約15.9mmとする。現像ローラ15の周速は、239.8mm/secとする。なお、「周速」とは、ローラまたはドラムの外周面での接線方向の速度を意味する。
【0040】
<現像ローラの粗さ測定>
現像ローラ15の粗さの測定は、非接触で行った。非接触での測定を採用した理由は、ローラ表面にフィルミングが生じた場合に、接触式の粗さ測定器ではローラ表面を走査する探針が汚染されて正確な測定値が得られないためである。非接触の粗さ測定器としては、レーザーマイクロ顕微鏡(キーエンス株式会社製:VK−8500、倍率2000)を用い、現像ローラ15の無作為に選択した観察面を観察した。観察した画像領域の任意の場所の線粗さから、JIS−1994に準拠する十点平均粗さRz(μm)と、凹凸の平均間隔Sm(μm)を算出した。
【0041】
なお、ここでは、現像ローラ15の表面から通常の現像剤(フィルミングにより付着した現像剤以外の現像剤)を除去し、現像ローラ15の表面にフィルミングによる現像剤だけを付着させた状態で、上記の観察を行うが、その方法については、後述する。
【0042】
現像ローラ15としては、処理層53(アクリル樹脂、または、アクリル樹脂とウレタン樹脂との混合物)のアクリル樹脂とウレタン樹脂との混合比率を変化させた複数のサンプルを作成した。現像ローラ15の処理層53におけるアクリル樹脂の含有量、すなわち、処理層53の全重量に対するアクリル樹脂の重量の割合(重量%)をAと表すと、現像ローラ15(サンプル)の各条件は以下のとおりである。
【0043】
条件a:A=100重量%
条件b:A= 50重量%
条件c:A= 20重量%
条件d:A= 0重量%
【0044】
表1には、条件a〜dの現像ローラ15における、処理層53のアクリル樹脂の含有量(重量%)と、アスカーC硬度と、厚さ(μm)と、カーボンブラックの含有量(重量%:CB)とを示す。
【0045】
【表1】
【0046】
<表面粗さと印刷枚数との関係>
各条件の現像ローラ15を組み込んだイメージドラムユニット10を画像形成装置に装着して印刷試験を行い、印刷枚数0枚、100枚、1,000枚、10,000枚、20,000枚において、現像ローラ15の表面の十点平均粗さRz(μm)と、凹凸の平均間隔Sm(μm)とを上記の方法で測定した。測定結果を、表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
また、図5(A)および(B)は、表2の測定結果をグラフに表したものであり、図5(A)は十点平均粗さRzの変化を示し、図5(B)は凹凸の平均間隔Smの変化を示す。
【0049】
図5(A)および(B)の試験結果より、どの条件の現像ローラ15においても、印刷開始から印刷枚数が約1,000枚に達するまでの期間は、粗さ(Rz,Sm)の変化が大きく、その後、印刷枚数が20,000枚に達するまでの期間は、粗さの変化が小さく緩慢になっていることが分かる。
【0050】
また、処理層53におけるアクリル樹脂の含有量によって、十点平均粗さRzと凹凸の平均間隔Smの変化の傾向が異なっていることが分かる。すなわち、アクリル樹脂の含有量が0重量%と20重量%の場合(条件d,c)には、十点平均粗さRzは減少し、凹凸の平均間隔Smは増加している。一方、アクリル樹脂の含有量が50重量%と100重量%の場合(条件b,a)には、十点平均粗さRzは増加し、凹凸の平均間隔Snは減少している。
【0051】
アクリル樹脂の含有量Aが0重量%と20重量%の場合(条件d,c)に十点平均粗さRzが減少した理由は、現像ローラ15の表面の処理層53があまり磨耗せず、その結果、接触部材(感光体ドラム11等)との接触により現像剤成分が摩擦や圧着により現像ローラ15の表面に(フィルミングにより)付着したためと考えられる。
【0052】
一方、アクリル樹脂の含有量Aが50重量%と100重量%の場合(条件b,a)に十点平均粗さRzが増加した理由は、現像ローラ15の処理層53が、接触部材との摺擦によって徐々に磨耗したためと考えられる。
【0053】
<現像ローラの抵抗変化>
現像ローラ15の抵抗は、イメージドラムユニット1から取り外した現像ローラ15を60rpmの速度で回転させ、外周面(ローラ表面)とシャフトとの間に−100Vの電圧をかけて測定した。
【0054】
表3に、現像ローラ14の抵抗値を、印刷試験前(0枚印刷時)と印刷試験後(20,000枚印刷時)とで比較した結果を示す。
【0055】
【表3】
【0056】
アクリル樹脂の含有量が少ない場合(条件c,d)には、現像ローラ15の抵抗値が大きく増加し、アクリル樹脂の含有量が多い場合(条件a,b)には、現像ローラ15の抵抗値の変化はあまりなかった。これは、アクリル樹脂の含有量が少ない場合には、上述したように処理層53の表面に現像剤成分がフィルミングにより付着したことにより、現像ローラ15の抵抗が増加したためと考えられる。
【0057】
なお、フィルミングに影響を与える要因としては、処理層53の下の基材52の表面粗さも考えられるが、各条件とも処理層53の厚みを同じに設定しており、また、現像ローラ15の初期の十点平均粗さRzが大きい場合(条件a)と小さい(条件b)のどちらにおいてもフィルミングを抑制できていることから、基材の52の表面粗さの影響は少なく、処理層53のアクリル樹脂の含有量の調整によってフィルミングを抑制できていると考えられる。
【0058】
<フィルミングの発生と処理層の硬度との関係>
処理層53におけるアクリル樹脂の含有量により、(弾性力の高いウレタンを主成分とする)基材52よりも処理層53の硬度が高くなるが、硬度の高低によっては、現像剤搬送能力の低下や、フィルミングの発生が生じることが予想される。そこで、処理層53のアクリル含有量と、処理層53の硬度(現像ローラ15の硬度)と、フィルミングの発生との関係を調べた。
【0059】
処理層53の硬度は、配合する有機高分子の分子量や、微量添加する架橋材によって変化させることができる。そこで、この実施形態では、現像ローラ15作成時の処理液(所定の溶媒にアクリル樹脂とウレタン樹脂とを溶解させた溶液)に対して架橋材を0.1重量%〜0.5重量%の割合で添加している。
【0060】
アスカーC硬度が約65度となるように調製された基材52の表面に、処理層53を形成して現像ローラ15を作成し、その表面を、上述したアスカーC硬度計(高分子計器株式会社製)の押針を押し当てて測定した。また、処理層53の厚みを約3μmと一定にし、アスカーC硬度を65度、68度、70度、75度、80度、83度と変化させたサンプルを用意した。
【0061】
また、フィルミングの有無を評価するため、現像ローラ15の表面から、フィルミングにより付着したものでない現像剤を除去したのち、現像ローラ15の表面を上述したレーザー顕微鏡で観察し、観察面積(0.375mm2)において現像剤が占有している面積の割合、すなわち「現像剤占有面積」を計算した。現像剤占有面積が大きいほど、現像ローラ15の表面に多くの現像剤が(フィルミングにより)付着していることになる。
【0062】
ここで、現像ローラ15の表面から、フィルミングにより付着したものでない現像剤を除去する方法について、より詳細に説明する。まず、イメージドラムユニット10から、供給ローラ14や現像ブレード16などを取り外し、イメージドラムユニット10の外枠と、感光体ドラム11と、現像ローラ15と、これらのギアを残す。このイメージドラムユニット10を画像形成装置に組み込み、図示しないモータを駆動すると、モータの回転が感光体ドラム11に伝達され、さらに現像ローラ15にも伝達されるため、感光体ドラム11と現像ローラ15とが接触しながら回転する。また、帯電ローラ12、現像ローラ15および転写ローラ17に、所定のバイアス電圧を付与する。
【0063】
これにより、現像ローラ15に付着している通常の現像剤(フィルミングにより付着したもの以外)は、電位差により感光体ドラム11に転写され、さらに転写ベルト23に転写され、現像ローラ15から除去される。ここでは、現像ローラ15の表面の現像剤を機械的に除去してはいないため、フィルミングにより現像ローラ15の表面に付着した現像剤は、(付着力が強いため)現像ローラ15の表面に残る。このように、現像ローラ15の表面から、フィルミングにより付着した現像剤以外の現像剤を除去したのち、イメージドラム1から現像ローラ15を取り外し、上記の観察を行った。
【0064】
このようにして測定した、現像ローラ15の表面の現像剤占有面積を、以下のようにレベル分けした。
レベル4: 現像剤占有面積が0%以上11%未満
レベル3: 現像剤占有面積が11%以上31%未満
レベル2: 現像剤占有面積が31%以上51%未満
レベル1: 現像剤占有面積が51%以上
【0065】
また、各現像ローラ15を用いて、単色ベタ画像、ハーフトーン画像(2by2パターン:濃度25%)、ハーフトーン画像(印刷可能領域の全域に濃度50%で印刷)、およびテキスト画像を印刷した。印刷画像を目視観察して白抜けや白抜けの有無を判断し、また、分光色彩濃度計X−Rite528(日本平版機材株式会社製)を用いてO.D.(Optical density)値を測定した。
【0066】
なお、2by2パターンは、図6に示すように、縦方向4ドットおよび横方向4ドットで形成される16マスのうち、縦方向2ドットおよび横方向2ドットで形成される4マスのドットを形成するものである。
【0067】
その結果、レベル4の現像ローラ15を用いた場合には、印刷画像にフィルミングに起因する白抜けや白筋は発生しなかった(◎)。レベル3の現像ローラ15を用いた場合には、単色ベタ画像ではフィルミングに起因する白抜けや白筋は見られるが、O.D.値は0.4未満であり、ハーフトーン(2by2:濃度25%)ではフィルミングに起因する白抜けや白筋は見られなかった(○)。
【0068】
また、レベル2の現像ローラ15を用いた場合には、ハーフトーン画像(濃度50%)でフィルミングに起因する白抜けや白筋が見られ、O.D.値は0.4〜0.7であったが、テキスト印刷ではフィルミングに起因する白抜けや白筋は見られなかった(△)。一方、レベル1の現像ローラ15を用いた場合には、テキスト印刷でもフィルミングに起因する文字欠損が見られた(×)。
【0069】
表4に、上記の各現像ローラ15のアクリル樹脂の含有量A(重量%)と、抵抗値logΩと、フィルミングの評価結果とを示す。また、抵抗値については、印刷試験初期の抵抗値と、20,000枚印刷後の抵抗値と、その差(抵抗値差:ΔlogΩ)とを示す。
【0070】
【表4】
【0071】
図7は、現像ローラ15のアクリル樹脂の含有量A(重量%)と、抵抗値差ΔlogΩと、アスカーC硬度との関係を示すグラフである。
【0072】
表4および図7から、アクリル樹脂の含有量Aが50重量%〜100重量%で、アスカーC硬度が68度〜80度であるときに、現像剤占有面積が抑制され(レベル3または4)、フィルミングの発生が抑制される(◎または○)という結果が得られた。なお、アスカーC硬度が65度でアクリル樹脂の含有量Aが100重量%の場合には、抵抗値差ΔlogΩは小さいものの、現像ローラ15の摩耗によって処理層53が薄くなることから、フィルミングの評価結果は△(現像剤占有面積はレベル2)であった。
【0073】
上記の評価結果から、アクリル樹脂の含有量A(配合比率)が多く、またアスカーC硬度が高いほど、フィルミングが抑制されるという結果が得られた。ここで、アスカーC硬度が68度の場合には、65度の場合と比較して、全てのアクリル樹脂含有量Aで抵抗値差(ΔlogΩ)が小さいが、70度の場合と比較して現像剤占有面積が大きいため、この値(68度)をアスカーC硬度の下限とした。また、現像ローラ15の硬度が高くなると、アクリル樹脂の含有量Aが多い場合に処理層53が摩耗し、露出した基材52の表面に現像剤が付着することから、アスカーC硬度が83度の場合には、80度の場合と比較して抵抗値差が大きくなった。そこで、アスカーC硬度の上限を80度とした。
【0074】
このように、本実施の形態によれば、現像ローラ15(現像剤担持体)の処理層53(アクリル樹脂、または、アクリル樹脂とウレタン樹脂との混合物)におけるアクリル樹脂の含有量を50重量%〜100重量%とし、基材52の表面に形成された状態での処理層53のアスカーC硬度を、基材52の硬度より高く且つ68度〜80度とすることにより、接触部材(感光体ドラム11、供給ローラ14および現像ブレード16)との接触による処理層53の摩耗を抑制し、現像剤成分の付着や融着を抑制することができる。また、現像ローラ15の抵抗増加および現像剤の搬送能力の低下が抑制されるため、濃度低下やカスレなどの画像不良を抑制し、画像品質を向上することができる。
【0075】
第2の実施の形態.
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態における画像形成装置、およびそのイメージドラムユニット(画像形成部)の構成は、以下で説明する現像ローラ15の処理層53の構成を除き、第1の実施の形態において説明したとおりである。
【0076】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態において説明した現像ローラ15(現像剤担持体)の処理層53に、摩擦軽減部材としてフッ素化合物を配合している。ここで用いるフッ素化合物は、アクリル樹脂およびウレタン樹脂の性質を損なわないオレフィン樹脂を主構造とする化合物であり、表面層をコートする利便性から溶剤可溶性のフッ素含有オレフィン樹脂が好ましい。溶剤可溶性のフッ素含有オレフィン樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、へキサフロロプロピレン、フッ化ビニルエーテル等を用いることができる。好ましくは、アクリル系樹脂との優れた相溶性や柔軟性を有する点で、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。ここでは、処理層53におけるフッ素含有オレフィン樹脂の含有量を、アクリル樹脂・ウレタン樹脂の固形分に対して5重量%および15重量%の2通りに設定している。
【0077】
第2の実施の形態における画像形成装置、およびそのイメージドラムユニット(画像形成部)の動作は、第1の実施の形態において説明したとおりである。
【0078】
アクリル樹脂の含有量が多い場合には、接触部材(感光体ドラム11、供給ローラ14および現像ブレード16)との摩擦による処理層53の磨耗量が増加する傾向にある。すなわち、第1の実施の形態で説明したように、処理層53のアスカーC硬度が高く、且つアクリル樹脂の配合量が多いほど、処理層53の磨耗量が多く、基材52が露出してフィルミングが生じている。そこで、第2の実施の形態では、処理層53にフッ素化合物を適量添加し、処理層53の摩擦係数を低下させて磨耗量の低減を図る。処理層53の膜厚は、約3μmに調製した。
【0079】
このように処理層53を調整した現像ローラの摩擦係数と、アスカーC硬度との関係を調べた。現像ローラの摩擦係数の測定は、図8に示すように、軸方向が水平になるように配置した現像ローラ15の外周面に、A4サイズの媒体シート61(株式会社沖データ製「A4エクセレントホワイト」)を載せ、この媒体シート61の一端に5〜15gfの重り62を取り付け、媒体シート61の他端を引っ張りゲージ63(プッシュプルゲージ)に取り付けて1.5mm/secの速度Vで引き、引張りゲージ63の表示値の平均から摩擦係数を求めた(オイラーのベルト法)。引張りゲージ63としては、ここでは、デジタルフォースゲージZP−50N(株式会社イマダ製)を用いた。
【0080】
また、現像ローラ15を組み込んだイメージドラムユニット10を画像形成装置に装着し、印刷試験を行った。A4用紙の印刷可能領域の全面に、カバレッジ1%の濃度で2000枚の印刷を行い、その後、カバレッジ100%のベタ画像を印刷して画像濃度を評価した。
【0081】
図9は、アクリル樹脂の含有量Aを50重量%および100重量%とし、フッ素化合物の含有量Fを5重量%および15重量%としたときの、処理層53のアスカーC硬度と摩擦係数との関係を示すグラフである。図9には、第1の実施の形態で説明した現像ローラ(フッ素化合物を配合していない)のアスカーC硬度と摩擦係数も併せて示す。
【0082】
図9から、第1の実施の形態の現像ローラ15の処理層53(F=0%の曲線)の摩擦係数と比較して、フッ素化合物を配合した第2の実施の形態の現像ローラ15の処理層53(F=5%,15%の曲線)の摩擦係数は、低下していることが分かる。
【0083】
但し、摩擦係数が約0.6より小さい場合には、印刷試験において十分な画像濃度を得ることができなかった。また、摩擦係数が約1.2より高い場合には、印刷試験後の現像ローラ15の表面を、第1の実施の形態で説明したレーザー顕微鏡にて観察したところ、磨耗が多く見られた。この結果から、現像ローラ15の処理層53の摩擦係数は、0.6〜1.2が好ましいことが分かる。
【0084】
このように、フッ素化合物の配合により処理層53の摩擦係数を低下させ、摩耗を抑制できることが分かったが、さらに、フィルミングの発生を抑制することができる処理層53の膜厚を調べた。ここでは、現像ローラ15の処理層53を、アクリル含有量が100重量%、アスカーC硬度が68度および80度、摩擦係数が約1.1μm、膜厚が2,3,4,6,8μmとなるように調整し、第1の実施の形態で説明したように印刷試験を行った。
【0085】
また、印刷試験を行った現像ローラ15の表面を、上記レーザー顕微鏡で観察し、観察面積(0.375mm2)における現像剤占有面積を計算し、第1の実施の形態で説明したようにレベル分けを行った。表5に、現像剤占有面積の測定結果(すなわち、フィルミングの評価結果)を示す。
【0086】
【表5】
【0087】
表5に示すように、処理層53のアスカーC硬度が68度の場合には、処理層53の磨耗は概ね少なく、フィルミングの少ない結果(レベル3(○)またはレベル4(◎))が得られた。
【0088】
一方、処理層53のアスカーC硬度が80度の場合には、処理層53の摩耗量が増加し、膜厚2μmのときにはレベル1(×)であったが、膜厚が3μm以上のときにはフィルミングの少ない結果(レベル3(○)またはレベル4(◎))が得られた。すなわち、処理層53の膜厚が3μm以上であれば、アスカーC硬度が68度、80度のいずれの場合にも良好な結果が得られた。
【0089】
なお、アクリル樹脂の含有量Aが100重量%の場合、膜厚が薄いほど、汚れ(現像剤の付着)が生じやすい傾向があり、バイアス電圧の変更幅が小さい(印加可能なバイアス電圧の範囲が限られる)ことが知られている。膜厚を2μmとした場合には、硬度68度でフィルミングの少ない結果(表5)が得られているが、汚れが発生し易く使用に適さないため、この膜厚(2μm)は、処理層53の膜厚の好ましい範囲から除外する。従って、処理層53の膜厚の好ましい範囲は、3μm〜6μmとする。
【0090】
また、上記の印刷試験の結果、処理層53の膜厚が8μmのときには、アスカーC硬度が68度、80度の場合ともに、印刷試験で画像不良(カスレ)が生じた。これは処理層53の膜厚が厚いため、現像ローラ15の表面粗さが小さくなり、現像剤搬送能力(現像剤を感光体ドラム11まで搬送する能力)が低下したためと考えられる。
【0091】
以上の結果から、処理層53のアスカーC硬度が68度〜80度であり、なお且つ、膜厚が3μm〜6μmであれば、フィルミングの発生を抑制し、画像不良の発生を抑制できることが分かる。
【0092】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態によれば、現像ローラ15(現像剤担持体)の処理層53に磨耗軽減効果のあるフッ素含有オレフィン樹脂化合物を配合し、現像ローラ15の表面(処理層53)の摩擦係数を0.6〜1.2とすることにより、現像ローラ15の表面の磨耗の進行を遅らせ、これにより基材52の露出等を抑制することができ、処理層53の膜厚を3μm〜6μmとすることにより、フィルミングによる現像剤の付着・融着を抑制し、濃度低下やカスレなどの画像不良を抑制することができる。
【0093】
本発明は、例えば、電子写真プリンタ等の現像剤を用いる画像形成装置、およびその現像装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0094】
10B,10Y,10M,10C イメージドラムユニット、 11 感光体ドラム(静電潜像担持体)、 12 帯電ローラ、 13 露光装置、 14 供給ローラ、 15 現像ローラ(現像剤担持体)、 16 現像ブレード、 17 転写ローラ、 18 クリーニング部材、 20 給紙カセット、 23 転写ベルト、 25 定着装置、 51 シャフト、 52 基材、 53 処理層、 P 媒体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法においてトナー等の現像剤を担持する現像剤担持体、並びに、現像剤担持体を備えた現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カラー画像を形成する画像形成装置として、複数の画像形成ユニットを一列に配列したタンデム型の画像形成装置が知られている。画像形成ユニットでは、静電潜像担持体(感光体ドラム)の表面を露光ヘッドで露光して静電潜像を形成し、現像剤担持体(現像ローラ)により静電潜像を現像して現像剤像(トナー像)を形成する。
【0003】
ここで、上記のような現像動作が繰り返されると、現像剤担持体の表面に、現像剤を構成する成分が付着または融着する場合がある。そこで、現像剤担持体の表面層の成分や耐摩耗性を調整することで、現像剤の現像剤担持体への付着および融着を抑制することが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1では、アクリル樹脂とウレタン樹脂のブレンドポリマー層を有する現像剤担持体の硬度、膜厚などを規定することにより、現像剤(またはその成分)の付着および融着を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−175372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、印刷速度の高速化や画像解像度の向上の要請から、現像剤担持体が、特許文献1に記載された周速130.2mm/秒よりも速い速度域で使用される場合がある。そのような場合には、現像剤担持体と、これに当接している部材との摩擦が増加して、現像剤担持体の表面への現像剤成分の付着が生じ、その結果、現像剤担持体の帯電能力および現像剤搬送能力の低下を招き、画像濃度の低下やカスレが生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、現像剤担持体への現像剤の付着を防止し、画像品質を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る現像剤担持体は、基材と、基材の表面に形成された処理層とを有する現像剤担持体であって、処理層は、アクリル樹脂、または、アクリル樹脂およびウレタン樹脂を含み、処理層のアクリル樹脂の含有量は、50〜100重量%であり、基材の表面に形成された状態での処理層のアスカーC硬度は、基材のアスカーC硬度より高く、68度〜80度であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る現像装置は、静電潜像担持体に形成された静電潜像を現像する現像装置であって、上記の現像剤担持体を有することを特徴とする。また、本発明に係る画像形成装置は、上記の現像装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、現像剤担持体への現像剤の付着を防止し、画像品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置のイメージドラムユニットの構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の他の構成例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における現像ローラ(現像剤担持体)の断面図である。
【図5】十点平均粗さRz(A)と凹凸の平均間隔Sm(B)の印刷枚数に対する変化をそれぞれ示すグラフである。
【図6】印刷試験に用いた2by2パターンを示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における現像ローラのアクリル樹脂の含有量と、抵抗値差と、硬度との関係を示すグラフである。
【図8】現像ローラの摩擦係数の測定方法を示す概略図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態における現像ローラに関し、処理層のアクリル樹脂の含有量、摩擦係数およびアスカーC硬度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の実施の形態.
まず、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の基本構成を示す図である。画像形成装置は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンに対応する4つのイメージドラムユニット(画像形成部とも称する)10B,10Y,10M,10Cを有している。イメージドラムユニット10B,10Y,10M,10Cは、媒体Pの搬送路に沿って一列に配列されている。
【0012】
画像形成装置は、さらに、記録媒体(例えば印刷用紙)Pを積載して保持する給紙カセット20と、給紙カセット20に保持された媒体Pを一枚ずつ搬送路に送り出す給紙ローラ21と、給紙ローラ21により送り出された媒体Pをイメージドラムユニット10B,10Y,10M,10Cに向けて搬送する搬送ローラ22とを有している。
【0013】
イメージドラムユニット10B,10Y,10M,10Cに対向するように、媒体Pを保持して搬送する転写ベルト23が配設されている。転写ベルト23は、駆動ローラ24aと従動ローラ24bに張架されており、駆動ローラ24aの回転によって矢印Aで示す方向に移動する。転写ベルト23の下側には、この転写ベルト23の外周面に接するように、転写ベルト23の外周面に残る現像剤を除去するクリーニングプレード28が配置されている。
【0014】
画像形成装置は、さらに、各イメージドラムユニット10B,10Y,10M,10Cにより媒体Pに転写された現像剤像を媒体Pに定着する定着装置25と、定着装置25により現像剤像が定着された媒体Pを装置外部に排出する排出ローラ26と、排出された媒体Pを積載するスタッカ部27とを備えている。
【0015】
図2は、媒体Pの搬送方向においてイメージドラムユニット10B,10Y,10M,10Cの最も下流側に位置するイメージドラムユニット10Cと定着装置25とを拡大して示す図である。イメージドラムユニット10Cは、表面に静電潜像が形成される円筒状の感光体ドラム(静電潜像担持体)11を有している。感光体ドラム11は、例えば、導電性支持体の表面に感光層を設けて構成され、図示しないモータの駆動力により一方向(ここでは時計回り)に回転する。
【0016】
感光体ドラム11に周囲には、帯電ローラ(帯電装置)12と、露光ヘッド(露光装置)13と、現像ローラ(現像剤担持体)15とが配列されている。帯電ローラ12は、例えば、金属製のシャフトに半導電性ゴム層を形成したものであり、図示しない電源部から所定のバイアス電圧を付与され、感光体ドラム11の回転に伴って従動回転し、感光体ドラム11の表面を均一に帯電する。
【0017】
露光ヘッド13は、主走査方向(感光体ドラム11の回転軸方向)に配列された複数の発光素子(例えばLED)とレンズアレイとを有し、画像データに応じて感光体ドラム11の表面を露光して、静電潜像を形成する。
【0018】
現像ローラ15は、例えば、金属製のシャフトに樹脂層を形成したものである(詳細については後述する)。現像ローラ15は、図示しない電源部から所定のバイアス電圧を付与され、感光体ドラム11の表面に接触しながら同一方向に回転し、感光体ドラム11の表面の静電潜像に現像剤(トナー)を付着させて現像する。
【0019】
また、現像ローラ15に隣接して、供給ローラ14(現像剤供給部材)と現像ブレード16(現像剤規制部材)が配置されている。供給ローラ14は、例えば、金属製のシャフトに発泡ウレタンゴム層を形成したものである。供給ローラ14は、図示しない電源部から所定のバイアス電圧を付与され、現像ローラ15に接触しながら同一方向に回転し、現像ローラ15の表面に現像剤(図2に符号Tで示す)を供給する。
【0020】
現像ブレード16は、例えば、現像ローラ15の軸方向に長い長尺状の板状部材を屈曲させて形成したものであり、屈曲部の曲面が現像ローラ15の表面に押圧されるように配置され、この押圧力により現像剤層(トナー層)の厚さを規制する。
【0021】
なお、イメージドラムユニットにおいて、静電潜像の現像に寄与する部分(現像ローラ15、供給ローラ14および現像ブレード16を含む部分)を、「現像装置」と称する。
【0022】
感光体ドラム11との間で媒体Pの搬送路を挟み込むように、転写ローラ(転写部材)17が配置されている。転写ローラ17は、図示しない電源部から所定のバイアス電圧を付与され、感光体ドラム11に形成された現像剤像(トナー像)を媒体Pに転写する。
【0023】
転写ローラ17に対して、感光体ドラム11の回転方向下流側には、クリーニング部材18が設けられている。クリーニング部材19は、例えばポリウレタンゴムからなるローラまたはブレードであり、転写後に感光体ドラム11の表面に残存する現像剤を除去する。
【0024】
イメージドラムユニット10B,10Y,10Mは、使用する現像剤の種類を除き、イメージドラムユニット10Cと同様の構成を有している。なお、以下では、これらイメージドラムユニット10B,10Y,10M,10Cを総称して、「イメージドラムユニット10」として説明する。
【0025】
定着装置25は、熱源hを内蔵した定着ローラ25aと、加圧ローラ25bとを有する。定着ローラ25aと加圧ローラ25bは、これらの間で媒体Pを挟み込んで熱および圧力を加え、現像剤像を媒体Pに定着させるものである。なお、図2に示した定着装置の他、例えば、ベルト方式の定着装置を用いてもよい。
【0026】
ここでは、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの現像剤を用いるイメージドラムユニット10B,10Y,10M,10Cを備えた例について説明するが、5つ以上の画像形成装置を備えてもよく、また、3つ以下の画像形成装置を備えてもよい。
【0027】
また、例えば、図3(A)に示すように、転写ベルト23を使用しない単色の画像形成装置であってもよい。この場合、イメージドラムユニット10を一つ備え、媒体Pが搬送ローラ22を経て転写ローラ17により搬送される際に、感光体ドラム11から媒体Pに現像剤像が転写される。
【0028】
あるいは、図3(B)に示すように、現像剤像を直接担持する中間転写ベルト24を有する画像形成装置であってもよい。この場合、イメージドラムユニット10B,10Y,10M,10Cの各感光ドラム11上に形成された現像剤像が、各転写ローラ17により中間転写ベルト24に一次転写され、さらに二次転写部31において媒体Pに二次転写される。
【0029】
次に、本実施の形態における現像ローラ15(現像剤担持体)について説明する。
図4は、現像ローラ15の断面構造を示す図である。現像ローラ15は、例えばステンレス鋼(SUS)からなる導電性のシャフト51の表面に基材52を形成し、その表面に、現像剤を帯電させるための処理層53を形成したものである。
【0030】
基材52は、例えばウレタン樹脂(より具体的には、ポリエーテル系ウレタン樹脂)で構成され、電子導電剤であるカーボンブラック、炭酸カルシウムまたはシリカ等の絶縁性無機微粒子が配合されている。基材52は、アスカーC硬度が約65度であり、JIS−1994による十点平均粗さRzが約10μmであることが好ましい。なお、基材52のアスカーC硬度は、アスカーC硬度計(高分子計器株式会社製)の押針を、基材52の表面(外周面)に押し当てて測定したものである。また、十点平均粗さRzは、微細形状測定器「サーフコーダSEF3500」(株式会社小坂研究所製)を用いて測定したものである。
【0031】
処理層53は、アクリル樹脂、または、アクリル樹脂とウレタン樹脂との混合物で構成されている。処理層53は、例えば、所定の溶媒にアクリル樹脂とウレタン樹脂とを溶解させた溶液を、弾性層52の表面に塗布し、その後、加熱乾燥により溶媒を揮発させることにより形成する。処理層53を構成するウレタン樹脂としては、熱可塑性のポリエーテル系ウレタン樹脂やポリエステル系ウレタン樹脂を使用することができる。また、処理層53には、半導電性を付与するため、カーボンブラックが適量配合されている。なお、処理層53の好ましい硬度(アスカーC硬度)および膜厚については、後述する。
【0032】
ポリエーテル系ウレタン樹脂を構成する成分について説明する。ウレタン樹脂は、架橋点分子であるイソシアネートと架橋点間分子であるジオールまたはトリオールなどから構成される。イソシアネートとしては、ポリエーテル系ウレタン樹脂の合成に使用可能な種類であれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、または、これらの異性体等を用いることができる。特に、耐摩耗性に優れたポリウレタンが得られる点で、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、または、その異性体が好ましい。上記イソシアネートは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、架橋点間分子は低分子量ジオールと低分子量トリオールとの混合物が好ましく用いられる。上記低分子量ジオールとしては、通常、ポリウレタンの形成に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−へキサンジオール、またはネオペンチルグリコール等を用いることができる。上記低分子量トリオールとしては、通常、ポリウレタンの形成に用いられるものであれば特に限定されず、トリメチローラプロパン、またはトリイソプロパノールアミン等を用いることができる。
【0033】
一方、処理層53に含有されるアクリル樹脂は、現像ローラ15が、感光体ドラム11、供給ローラ14および規制ブレード16(接触部材と称する)と接触する際に、摩擦を低減させるものであればよく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等の硬度の大きいポリマーが好ましいが、ホモポリマーに限定するものではない。そのため、例えばアクリル系樹脂としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジブチルフマル酸エステル、またはジメチルフマル酸エステルなどの1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
次に、本実施の形態における画像形成装置の動作について説明する。
画像形成装置の図示しない制御部は、パーソナルコンピュータ等の上位装置から印刷指示を受けて画像形成工程を開始する。制御部は、図示しないモータを駆動して給紙ローラ21を回転させ、給紙カセット20から媒体Pを一枚ずつ搬送路に送り出す。制御部は、また、搬送ローラ22と、転写ベルト23を駆動するための駆動ローラ24aの回転を開始する。搬送路に送り出された媒体Pは、搬送ローラ22を経て転写ベルト23に吸着保持され、転写ベルト23によって搬送される。
【0035】
また、制御部は、図示しないモータを駆動して、各イメージドラムユニット10の感光体ドラム11、現像ローラ15および供給ローラ14の回転を開始し、また、図示しない電源部から、帯電ローラ12、現像ローラ15および転写ローラ17にそれぞれバイアス電圧を印加する。帯電ローラ12は、感光体ドラム11の回転に従動して回転し、感光体ドラム11の表面を一様に帯電させる。
【0036】
さらに、制御部は、露光ヘッド13を駆動し、入力された印刷情報に応じて感光体ドラム11の表面を露光し、静電潜像を形成する。現像ローラ15は、その表面に、供給ローラ14から供給された現像剤を保持して回転する。現像剤は、感光体ドラム11と現像ローラ15との接触部において、両者の電位差により、現像ローラ15の表面から感光体ドラム11の表面に静電潜像に付着する。これにより、感光体ドラム11の表面の静電潜像は現像され、現像剤像(トナー像)となる。現像剤像は、感光体ドラム11と転写ローラ17との接触部に達すると、両者の電位差により、感光体ドラム11から媒体Pの表面に転写される。
【0037】
各イメージドラムユニット10で現像剤像が転写された媒体Pは、転写ベルト23により搬送されて定着装置25に達する。定着装置25の定着ローラ25aは、制御部の指示により加熱されて所定の温度に達しており、加圧ローラ25bとの間で媒体Pを挟み込んで熱および圧力を加え、これにより現像剤像が媒体Pに定着する。定着装置25において現像剤像が定着された媒体Pは、排出ローラ26により排出され、スタッカ部27に積載される。
【0038】
次に、上記現像ローラ15(現像剤担持体)の諸特性について説明する。
<印刷試験>
本実施の形態の現像ローラ15を組み込んだイメージドラムユニット10を画像形成装置に装着して印刷試験を行った。なお、本願明細書で説明する印刷試験では、特に記載がない限り、全て同じ印刷画像を用い、同じ印刷条件で行うものとする。具体的には、A4用紙(媒体P)の印刷可能領域の全面に亘って、画像密度(カバレッジ:書き込み可能ドット数に対する書き込みドット数の比率)が1%の画像を印刷する。印刷枚数は、20,000枚とする。試験環境は、気温が25±1℃、湿度が55±5%の範囲とする。
【0039】
また、現像ローラ15のバイアス電圧を−190Vとし、供給ローラ14のバイアス電圧を−270Vとし、帯電ローラ12のバイアス電圧を−1000Vとする。感光体ドラム11の外径を約30mmとし、現像ローラ15の外径を約15.9mmとする。現像ローラ15の周速は、239.8mm/secとする。なお、「周速」とは、ローラまたはドラムの外周面での接線方向の速度を意味する。
【0040】
<現像ローラの粗さ測定>
現像ローラ15の粗さの測定は、非接触で行った。非接触での測定を採用した理由は、ローラ表面にフィルミングが生じた場合に、接触式の粗さ測定器ではローラ表面を走査する探針が汚染されて正確な測定値が得られないためである。非接触の粗さ測定器としては、レーザーマイクロ顕微鏡(キーエンス株式会社製:VK−8500、倍率2000)を用い、現像ローラ15の無作為に選択した観察面を観察した。観察した画像領域の任意の場所の線粗さから、JIS−1994に準拠する十点平均粗さRz(μm)と、凹凸の平均間隔Sm(μm)を算出した。
【0041】
なお、ここでは、現像ローラ15の表面から通常の現像剤(フィルミングにより付着した現像剤以外の現像剤)を除去し、現像ローラ15の表面にフィルミングによる現像剤だけを付着させた状態で、上記の観察を行うが、その方法については、後述する。
【0042】
現像ローラ15としては、処理層53(アクリル樹脂、または、アクリル樹脂とウレタン樹脂との混合物)のアクリル樹脂とウレタン樹脂との混合比率を変化させた複数のサンプルを作成した。現像ローラ15の処理層53におけるアクリル樹脂の含有量、すなわち、処理層53の全重量に対するアクリル樹脂の重量の割合(重量%)をAと表すと、現像ローラ15(サンプル)の各条件は以下のとおりである。
【0043】
条件a:A=100重量%
条件b:A= 50重量%
条件c:A= 20重量%
条件d:A= 0重量%
【0044】
表1には、条件a〜dの現像ローラ15における、処理層53のアクリル樹脂の含有量(重量%)と、アスカーC硬度と、厚さ(μm)と、カーボンブラックの含有量(重量%:CB)とを示す。
【0045】
【表1】
【0046】
<表面粗さと印刷枚数との関係>
各条件の現像ローラ15を組み込んだイメージドラムユニット10を画像形成装置に装着して印刷試験を行い、印刷枚数0枚、100枚、1,000枚、10,000枚、20,000枚において、現像ローラ15の表面の十点平均粗さRz(μm)と、凹凸の平均間隔Sm(μm)とを上記の方法で測定した。測定結果を、表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
また、図5(A)および(B)は、表2の測定結果をグラフに表したものであり、図5(A)は十点平均粗さRzの変化を示し、図5(B)は凹凸の平均間隔Smの変化を示す。
【0049】
図5(A)および(B)の試験結果より、どの条件の現像ローラ15においても、印刷開始から印刷枚数が約1,000枚に達するまでの期間は、粗さ(Rz,Sm)の変化が大きく、その後、印刷枚数が20,000枚に達するまでの期間は、粗さの変化が小さく緩慢になっていることが分かる。
【0050】
また、処理層53におけるアクリル樹脂の含有量によって、十点平均粗さRzと凹凸の平均間隔Smの変化の傾向が異なっていることが分かる。すなわち、アクリル樹脂の含有量が0重量%と20重量%の場合(条件d,c)には、十点平均粗さRzは減少し、凹凸の平均間隔Smは増加している。一方、アクリル樹脂の含有量が50重量%と100重量%の場合(条件b,a)には、十点平均粗さRzは増加し、凹凸の平均間隔Snは減少している。
【0051】
アクリル樹脂の含有量Aが0重量%と20重量%の場合(条件d,c)に十点平均粗さRzが減少した理由は、現像ローラ15の表面の処理層53があまり磨耗せず、その結果、接触部材(感光体ドラム11等)との接触により現像剤成分が摩擦や圧着により現像ローラ15の表面に(フィルミングにより)付着したためと考えられる。
【0052】
一方、アクリル樹脂の含有量Aが50重量%と100重量%の場合(条件b,a)に十点平均粗さRzが増加した理由は、現像ローラ15の処理層53が、接触部材との摺擦によって徐々に磨耗したためと考えられる。
【0053】
<現像ローラの抵抗変化>
現像ローラ15の抵抗は、イメージドラムユニット1から取り外した現像ローラ15を60rpmの速度で回転させ、外周面(ローラ表面)とシャフトとの間に−100Vの電圧をかけて測定した。
【0054】
表3に、現像ローラ14の抵抗値を、印刷試験前(0枚印刷時)と印刷試験後(20,000枚印刷時)とで比較した結果を示す。
【0055】
【表3】
【0056】
アクリル樹脂の含有量が少ない場合(条件c,d)には、現像ローラ15の抵抗値が大きく増加し、アクリル樹脂の含有量が多い場合(条件a,b)には、現像ローラ15の抵抗値の変化はあまりなかった。これは、アクリル樹脂の含有量が少ない場合には、上述したように処理層53の表面に現像剤成分がフィルミングにより付着したことにより、現像ローラ15の抵抗が増加したためと考えられる。
【0057】
なお、フィルミングに影響を与える要因としては、処理層53の下の基材52の表面粗さも考えられるが、各条件とも処理層53の厚みを同じに設定しており、また、現像ローラ15の初期の十点平均粗さRzが大きい場合(条件a)と小さい(条件b)のどちらにおいてもフィルミングを抑制できていることから、基材の52の表面粗さの影響は少なく、処理層53のアクリル樹脂の含有量の調整によってフィルミングを抑制できていると考えられる。
【0058】
<フィルミングの発生と処理層の硬度との関係>
処理層53におけるアクリル樹脂の含有量により、(弾性力の高いウレタンを主成分とする)基材52よりも処理層53の硬度が高くなるが、硬度の高低によっては、現像剤搬送能力の低下や、フィルミングの発生が生じることが予想される。そこで、処理層53のアクリル含有量と、処理層53の硬度(現像ローラ15の硬度)と、フィルミングの発生との関係を調べた。
【0059】
処理層53の硬度は、配合する有機高分子の分子量や、微量添加する架橋材によって変化させることができる。そこで、この実施形態では、現像ローラ15作成時の処理液(所定の溶媒にアクリル樹脂とウレタン樹脂とを溶解させた溶液)に対して架橋材を0.1重量%〜0.5重量%の割合で添加している。
【0060】
アスカーC硬度が約65度となるように調製された基材52の表面に、処理層53を形成して現像ローラ15を作成し、その表面を、上述したアスカーC硬度計(高分子計器株式会社製)の押針を押し当てて測定した。また、処理層53の厚みを約3μmと一定にし、アスカーC硬度を65度、68度、70度、75度、80度、83度と変化させたサンプルを用意した。
【0061】
また、フィルミングの有無を評価するため、現像ローラ15の表面から、フィルミングにより付着したものでない現像剤を除去したのち、現像ローラ15の表面を上述したレーザー顕微鏡で観察し、観察面積(0.375mm2)において現像剤が占有している面積の割合、すなわち「現像剤占有面積」を計算した。現像剤占有面積が大きいほど、現像ローラ15の表面に多くの現像剤が(フィルミングにより)付着していることになる。
【0062】
ここで、現像ローラ15の表面から、フィルミングにより付着したものでない現像剤を除去する方法について、より詳細に説明する。まず、イメージドラムユニット10から、供給ローラ14や現像ブレード16などを取り外し、イメージドラムユニット10の外枠と、感光体ドラム11と、現像ローラ15と、これらのギアを残す。このイメージドラムユニット10を画像形成装置に組み込み、図示しないモータを駆動すると、モータの回転が感光体ドラム11に伝達され、さらに現像ローラ15にも伝達されるため、感光体ドラム11と現像ローラ15とが接触しながら回転する。また、帯電ローラ12、現像ローラ15および転写ローラ17に、所定のバイアス電圧を付与する。
【0063】
これにより、現像ローラ15に付着している通常の現像剤(フィルミングにより付着したもの以外)は、電位差により感光体ドラム11に転写され、さらに転写ベルト23に転写され、現像ローラ15から除去される。ここでは、現像ローラ15の表面の現像剤を機械的に除去してはいないため、フィルミングにより現像ローラ15の表面に付着した現像剤は、(付着力が強いため)現像ローラ15の表面に残る。このように、現像ローラ15の表面から、フィルミングにより付着した現像剤以外の現像剤を除去したのち、イメージドラム1から現像ローラ15を取り外し、上記の観察を行った。
【0064】
このようにして測定した、現像ローラ15の表面の現像剤占有面積を、以下のようにレベル分けした。
レベル4: 現像剤占有面積が0%以上11%未満
レベル3: 現像剤占有面積が11%以上31%未満
レベル2: 現像剤占有面積が31%以上51%未満
レベル1: 現像剤占有面積が51%以上
【0065】
また、各現像ローラ15を用いて、単色ベタ画像、ハーフトーン画像(2by2パターン:濃度25%)、ハーフトーン画像(印刷可能領域の全域に濃度50%で印刷)、およびテキスト画像を印刷した。印刷画像を目視観察して白抜けや白抜けの有無を判断し、また、分光色彩濃度計X−Rite528(日本平版機材株式会社製)を用いてO.D.(Optical density)値を測定した。
【0066】
なお、2by2パターンは、図6に示すように、縦方向4ドットおよび横方向4ドットで形成される16マスのうち、縦方向2ドットおよび横方向2ドットで形成される4マスのドットを形成するものである。
【0067】
その結果、レベル4の現像ローラ15を用いた場合には、印刷画像にフィルミングに起因する白抜けや白筋は発生しなかった(◎)。レベル3の現像ローラ15を用いた場合には、単色ベタ画像ではフィルミングに起因する白抜けや白筋は見られるが、O.D.値は0.4未満であり、ハーフトーン(2by2:濃度25%)ではフィルミングに起因する白抜けや白筋は見られなかった(○)。
【0068】
また、レベル2の現像ローラ15を用いた場合には、ハーフトーン画像(濃度50%)でフィルミングに起因する白抜けや白筋が見られ、O.D.値は0.4〜0.7であったが、テキスト印刷ではフィルミングに起因する白抜けや白筋は見られなかった(△)。一方、レベル1の現像ローラ15を用いた場合には、テキスト印刷でもフィルミングに起因する文字欠損が見られた(×)。
【0069】
表4に、上記の各現像ローラ15のアクリル樹脂の含有量A(重量%)と、抵抗値logΩと、フィルミングの評価結果とを示す。また、抵抗値については、印刷試験初期の抵抗値と、20,000枚印刷後の抵抗値と、その差(抵抗値差:ΔlogΩ)とを示す。
【0070】
【表4】
【0071】
図7は、現像ローラ15のアクリル樹脂の含有量A(重量%)と、抵抗値差ΔlogΩと、アスカーC硬度との関係を示すグラフである。
【0072】
表4および図7から、アクリル樹脂の含有量Aが50重量%〜100重量%で、アスカーC硬度が68度〜80度であるときに、現像剤占有面積が抑制され(レベル3または4)、フィルミングの発生が抑制される(◎または○)という結果が得られた。なお、アスカーC硬度が65度でアクリル樹脂の含有量Aが100重量%の場合には、抵抗値差ΔlogΩは小さいものの、現像ローラ15の摩耗によって処理層53が薄くなることから、フィルミングの評価結果は△(現像剤占有面積はレベル2)であった。
【0073】
上記の評価結果から、アクリル樹脂の含有量A(配合比率)が多く、またアスカーC硬度が高いほど、フィルミングが抑制されるという結果が得られた。ここで、アスカーC硬度が68度の場合には、65度の場合と比較して、全てのアクリル樹脂含有量Aで抵抗値差(ΔlogΩ)が小さいが、70度の場合と比較して現像剤占有面積が大きいため、この値(68度)をアスカーC硬度の下限とした。また、現像ローラ15の硬度が高くなると、アクリル樹脂の含有量Aが多い場合に処理層53が摩耗し、露出した基材52の表面に現像剤が付着することから、アスカーC硬度が83度の場合には、80度の場合と比較して抵抗値差が大きくなった。そこで、アスカーC硬度の上限を80度とした。
【0074】
このように、本実施の形態によれば、現像ローラ15(現像剤担持体)の処理層53(アクリル樹脂、または、アクリル樹脂とウレタン樹脂との混合物)におけるアクリル樹脂の含有量を50重量%〜100重量%とし、基材52の表面に形成された状態での処理層53のアスカーC硬度を、基材52の硬度より高く且つ68度〜80度とすることにより、接触部材(感光体ドラム11、供給ローラ14および現像ブレード16)との接触による処理層53の摩耗を抑制し、現像剤成分の付着や融着を抑制することができる。また、現像ローラ15の抵抗増加および現像剤の搬送能力の低下が抑制されるため、濃度低下やカスレなどの画像不良を抑制し、画像品質を向上することができる。
【0075】
第2の実施の形態.
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態における画像形成装置、およびそのイメージドラムユニット(画像形成部)の構成は、以下で説明する現像ローラ15の処理層53の構成を除き、第1の実施の形態において説明したとおりである。
【0076】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態において説明した現像ローラ15(現像剤担持体)の処理層53に、摩擦軽減部材としてフッ素化合物を配合している。ここで用いるフッ素化合物は、アクリル樹脂およびウレタン樹脂の性質を損なわないオレフィン樹脂を主構造とする化合物であり、表面層をコートする利便性から溶剤可溶性のフッ素含有オレフィン樹脂が好ましい。溶剤可溶性のフッ素含有オレフィン樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、へキサフロロプロピレン、フッ化ビニルエーテル等を用いることができる。好ましくは、アクリル系樹脂との優れた相溶性や柔軟性を有する点で、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。ここでは、処理層53におけるフッ素含有オレフィン樹脂の含有量を、アクリル樹脂・ウレタン樹脂の固形分に対して5重量%および15重量%の2通りに設定している。
【0077】
第2の実施の形態における画像形成装置、およびそのイメージドラムユニット(画像形成部)の動作は、第1の実施の形態において説明したとおりである。
【0078】
アクリル樹脂の含有量が多い場合には、接触部材(感光体ドラム11、供給ローラ14および現像ブレード16)との摩擦による処理層53の磨耗量が増加する傾向にある。すなわち、第1の実施の形態で説明したように、処理層53のアスカーC硬度が高く、且つアクリル樹脂の配合量が多いほど、処理層53の磨耗量が多く、基材52が露出してフィルミングが生じている。そこで、第2の実施の形態では、処理層53にフッ素化合物を適量添加し、処理層53の摩擦係数を低下させて磨耗量の低減を図る。処理層53の膜厚は、約3μmに調製した。
【0079】
このように処理層53を調整した現像ローラの摩擦係数と、アスカーC硬度との関係を調べた。現像ローラの摩擦係数の測定は、図8に示すように、軸方向が水平になるように配置した現像ローラ15の外周面に、A4サイズの媒体シート61(株式会社沖データ製「A4エクセレントホワイト」)を載せ、この媒体シート61の一端に5〜15gfの重り62を取り付け、媒体シート61の他端を引っ張りゲージ63(プッシュプルゲージ)に取り付けて1.5mm/secの速度Vで引き、引張りゲージ63の表示値の平均から摩擦係数を求めた(オイラーのベルト法)。引張りゲージ63としては、ここでは、デジタルフォースゲージZP−50N(株式会社イマダ製)を用いた。
【0080】
また、現像ローラ15を組み込んだイメージドラムユニット10を画像形成装置に装着し、印刷試験を行った。A4用紙の印刷可能領域の全面に、カバレッジ1%の濃度で2000枚の印刷を行い、その後、カバレッジ100%のベタ画像を印刷して画像濃度を評価した。
【0081】
図9は、アクリル樹脂の含有量Aを50重量%および100重量%とし、フッ素化合物の含有量Fを5重量%および15重量%としたときの、処理層53のアスカーC硬度と摩擦係数との関係を示すグラフである。図9には、第1の実施の形態で説明した現像ローラ(フッ素化合物を配合していない)のアスカーC硬度と摩擦係数も併せて示す。
【0082】
図9から、第1の実施の形態の現像ローラ15の処理層53(F=0%の曲線)の摩擦係数と比較して、フッ素化合物を配合した第2の実施の形態の現像ローラ15の処理層53(F=5%,15%の曲線)の摩擦係数は、低下していることが分かる。
【0083】
但し、摩擦係数が約0.6より小さい場合には、印刷試験において十分な画像濃度を得ることができなかった。また、摩擦係数が約1.2より高い場合には、印刷試験後の現像ローラ15の表面を、第1の実施の形態で説明したレーザー顕微鏡にて観察したところ、磨耗が多く見られた。この結果から、現像ローラ15の処理層53の摩擦係数は、0.6〜1.2が好ましいことが分かる。
【0084】
このように、フッ素化合物の配合により処理層53の摩擦係数を低下させ、摩耗を抑制できることが分かったが、さらに、フィルミングの発生を抑制することができる処理層53の膜厚を調べた。ここでは、現像ローラ15の処理層53を、アクリル含有量が100重量%、アスカーC硬度が68度および80度、摩擦係数が約1.1μm、膜厚が2,3,4,6,8μmとなるように調整し、第1の実施の形態で説明したように印刷試験を行った。
【0085】
また、印刷試験を行った現像ローラ15の表面を、上記レーザー顕微鏡で観察し、観察面積(0.375mm2)における現像剤占有面積を計算し、第1の実施の形態で説明したようにレベル分けを行った。表5に、現像剤占有面積の測定結果(すなわち、フィルミングの評価結果)を示す。
【0086】
【表5】
【0087】
表5に示すように、処理層53のアスカーC硬度が68度の場合には、処理層53の磨耗は概ね少なく、フィルミングの少ない結果(レベル3(○)またはレベル4(◎))が得られた。
【0088】
一方、処理層53のアスカーC硬度が80度の場合には、処理層53の摩耗量が増加し、膜厚2μmのときにはレベル1(×)であったが、膜厚が3μm以上のときにはフィルミングの少ない結果(レベル3(○)またはレベル4(◎))が得られた。すなわち、処理層53の膜厚が3μm以上であれば、アスカーC硬度が68度、80度のいずれの場合にも良好な結果が得られた。
【0089】
なお、アクリル樹脂の含有量Aが100重量%の場合、膜厚が薄いほど、汚れ(現像剤の付着)が生じやすい傾向があり、バイアス電圧の変更幅が小さい(印加可能なバイアス電圧の範囲が限られる)ことが知られている。膜厚を2μmとした場合には、硬度68度でフィルミングの少ない結果(表5)が得られているが、汚れが発生し易く使用に適さないため、この膜厚(2μm)は、処理層53の膜厚の好ましい範囲から除外する。従って、処理層53の膜厚の好ましい範囲は、3μm〜6μmとする。
【0090】
また、上記の印刷試験の結果、処理層53の膜厚が8μmのときには、アスカーC硬度が68度、80度の場合ともに、印刷試験で画像不良(カスレ)が生じた。これは処理層53の膜厚が厚いため、現像ローラ15の表面粗さが小さくなり、現像剤搬送能力(現像剤を感光体ドラム11まで搬送する能力)が低下したためと考えられる。
【0091】
以上の結果から、処理層53のアスカーC硬度が68度〜80度であり、なお且つ、膜厚が3μm〜6μmであれば、フィルミングの発生を抑制し、画像不良の発生を抑制できることが分かる。
【0092】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態によれば、現像ローラ15(現像剤担持体)の処理層53に磨耗軽減効果のあるフッ素含有オレフィン樹脂化合物を配合し、現像ローラ15の表面(処理層53)の摩擦係数を0.6〜1.2とすることにより、現像ローラ15の表面の磨耗の進行を遅らせ、これにより基材52の露出等を抑制することができ、処理層53の膜厚を3μm〜6μmとすることにより、フィルミングによる現像剤の付着・融着を抑制し、濃度低下やカスレなどの画像不良を抑制することができる。
【0093】
本発明は、例えば、電子写真プリンタ等の現像剤を用いる画像形成装置、およびその現像装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0094】
10B,10Y,10M,10C イメージドラムユニット、 11 感光体ドラム(静電潜像担持体)、 12 帯電ローラ、 13 露光装置、 14 供給ローラ、 15 現像ローラ(現像剤担持体)、 16 現像ブレード、 17 転写ローラ、 18 クリーニング部材、 20 給紙カセット、 23 転写ベルト、 25 定着装置、 51 シャフト、 52 基材、 53 処理層、 P 媒体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面に形成された処理層とを有する現像剤担持体であって、
前記処理層は、アクリル樹脂、または、アクリル樹脂およびウレタン樹脂を含み、
前記処理層の前記アクリル樹脂の含有量は、50〜100重量%であり、
前記基材の表面に形成された状態での前記処理層のアスカーC硬度は、前記基材のアスカーC硬度より高く、68度〜80度であることを特徴とする現像剤担持体。
【請求項2】
前記処理層は、さらに、フッ素化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の現像剤担持体。
【請求項3】
前記処理層の膜厚は、3μm〜6μmであることを特徴とする請求項2に記載の現像剤担持体。
【請求項4】
前記処理層の摩擦係数は、0.6〜1.2であることを特徴とする請求項2または3に記載の現像剤担持体。
【請求項5】
前記基材は、ウレタン樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の現像剤担持体。
【請求項6】
前記現像剤担持体は、現像ローラであって、
金属製のシャフトの表面に前記基材が形成され、当該基材の表面に前記処理層が形成されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の現像剤担持体。
【請求項7】
静電潜像担持体に形成された静電潜像を現像する現像装置であって、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の現像剤担持体を有すること
を特徴とする現像装置。
【請求項8】
請求項7に記載された現像装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
基材と、前記基材の表面に形成された処理層とを有する現像剤担持体であって、
前記処理層は、アクリル樹脂、または、アクリル樹脂およびウレタン樹脂を含み、
前記処理層の前記アクリル樹脂の含有量は、50〜100重量%であり、
前記基材の表面に形成された状態での前記処理層のアスカーC硬度は、前記基材のアスカーC硬度より高く、68度〜80度であることを特徴とする現像剤担持体。
【請求項2】
前記処理層は、さらに、フッ素化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の現像剤担持体。
【請求項3】
前記処理層の膜厚は、3μm〜6μmであることを特徴とする請求項2に記載の現像剤担持体。
【請求項4】
前記処理層の摩擦係数は、0.6〜1.2であることを特徴とする請求項2または3に記載の現像剤担持体。
【請求項5】
前記基材は、ウレタン樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の現像剤担持体。
【請求項6】
前記現像剤担持体は、現像ローラであって、
金属製のシャフトの表面に前記基材が形成され、当該基材の表面に前記処理層が形成されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の現像剤担持体。
【請求項7】
静電潜像担持体に形成された静電潜像を現像する現像装置であって、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の現像剤担持体を有すること
を特徴とする現像装置。
【請求項8】
請求項7に記載された現像装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−127990(P2012−127990A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276652(P2010−276652)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】
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