説明

現像方法、現像装置及び電子写真画像形成装置

【課題】現像ローラ上の非磁性一成分現像剤量を十分に確保し、かつ濃度ムラが発生しない現像方法。
【解決手段】非磁性一成分現像剤101を収容している現像剤容器102と、静電潜像を担持する像担持体に対向し該現像剤容器の開口部に延在し回動する、弾性層と表面層を有する現像ローラ106と、該現像ローラの回転方向に対してカウンター方向に当接し、搬送された現像剤の層を規制する現像剤規制ブレード105とを有する現像装置を用いた現像方法であって、該現像ローラ106への当接圧によって、該現像剤規制ブレード105の該現像ローラへの当接部よりも該現像ローラの回転方向上流側の該現像ローラ表面に、該現像ローラの軸方向に延びる、該非磁性一成分現像剤を保持可能なしわ状の凹部を生じさせ、該しわ状の凹部に該非磁性一成分現像剤を担持させて該非磁性一成分現像剤を現像領域に搬送する工程を有することを特徴とする現像方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は現像方法、現像装置及び電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真装置において、接触現像するための現像装置は、電子写真感光体に対向して配置された現像ローラと、当該現像ローラと当接し、該現像ローラに向けて現像剤容器内の現像剤を供給するための現像剤供給ローラとを有している(特許文献1)。かかる現像装置における現像剤供給ローラの役割は、現像ローラの表面に向けて安定的に所定量の現像剤を供給することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−278264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者等は、電子写真画像形成装置の更なる小型化及びコストダウンのために上記現像剤供給ローラを省略することについて検討を重ねてきた。しかしながら、単に現像剤供給ローラを省略しただけでは、現像ローラへの現像剤の供給量が不安定化し、高品位な画像を得られないことがあった。
【0005】
そこで、本発明は、現像剤供給ローラを用いなくても、高品位な電子写真画像を形成し得る新たな現像方法とそれに用いる現像装置及び当該現像装置を用いた電子写真画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る現像方法は、非磁性一成分現像剤を収容している現像剤容器と、静電潜像を担持する像担持体に対向し、該現像剤容器の開口部に延在し回動する、弾性層と表面層を有する現像ローラと、該現像ローラの回転方向に対してカウンター方向に当接し、搬送された現像剤の層を規制する現像剤規制ブレードとを有する現像装置を用いた現像方法であって、該現像ローラへの該現像剤規制ブレードの当接圧によって、該現像剤規制ブレードの該現像ローラへの当接部よりも該現像ローラの回転方向上流側の該現像ローラ表面に、該現像ローラの軸方向に延びる、該非磁性一成分現像剤を保持可能なしわ状の凹部を生じさせ、該しわ状の凹部に該非磁性一成分現像剤を担持させて該非磁性一成分現像剤を現像領域に搬送する工程を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る現像装置は、非磁性一成分現像剤を収容している現像剤容器と、静電潜像を担持する像担持体に対向し該現像剤容器の開口部に延在し回動する、弾性層と表面層を有する現像ローラと、該現像ローラの回転方向に対してカウンター方向に当接し、搬送された現像剤の層を規制する現像剤規制ブレードとを有し、該現像ローラは、該現像ローラを回転させたときに、該現像ローラへの該現像剤規制ブレードの当接圧によって、該現像剤規制ブレードの該現像ローラへの当接部よりも該現像ローラの回転方向上流側の該現像ローラ表面に、該現像ローラの軸方向に延びる、該非磁性一成分現像剤を保持可能なしわ状の凹部が生じる表面を有していることを特徴とする。
更に、本発明に係る電子写真画像形成装置は、静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、一次帯電された像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と、該静電潜像を現像剤により現像して現像剤画像を形成するための現像装置と、該現像剤画像を転写材に転写するための転写装置とを有する電子写真画像形成装置において、該現像装置が上記の現像装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の現像方法によれば、上記のような現像剤供給ローラを具備しない場合においても、現像ローラ上の非磁性一成分現像剤量を十分に確保し、かつ濃度ムラが発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の電子写真画像形成装置の概略を示す断面図である。
【図2】電子写真プロセスカートリッジの概略を示す断面図である。
【図3】本発明の現像装置の概略を示す断面図である。
【図4】本発明に用いる現像ローラの電気抵抗測定方法の説明図である。
【図5】本発明に係る現像装置の現像剤規制ブレードと現像ローラとの当接部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者等は、現像ローラの表面硬度を十分に小さくし、この現像ローラの回転方向に対してカウンター方向に当接する現像剤規制ブレードの当接圧を高く設定した現像装置について検討した。かかる検討の過程で、現像ローラと現像剤規制ブレードの当接部よりも現像ローラの回転方向上流側の現像ローラ表面に、当該現像ローラの幅方向に延びるしわ状の凹部が生じることを知見した。
かかる知見に鑑み、本発明者等は、当該しわ状の凹部に現像剤を担持させ、現像剤を現像領域まで搬送させることを試みたところ、現像剤供給ローラを有しない現像装置であっても、充分な量の現像剤を現像領域まで搬送できることを認識した。本発明はこのような認識に基づきなされたものである。
【0011】
すなわち、本発明にかかる現像装置は、
非磁性一成分現像剤を収容している現像剤容器と、
静電潜像を担持する像担持体に対向し該現像剤容器の開口部に延在し回動する、弾性層と表面層を有する現像ローラと、
該現像ローラの回転方向に対してカウンター方向に当接し、搬送された現像剤の層を規制する現像剤規制ブレードとを有する。
また、上記の現像ローラは、それを回転させたときには、現像剤規制ブレードの当接圧によって、現像剤規制ブレードの現像ローラへの当接部よりも現像ローラの回転方向上流側の該現像ローラ表面に、該現像ローラの軸方向に延びるしわ状の凹部が生じるものである。
【0012】
そして、本発明に係る現像方法では上記の現像装置を用いる。そして、該現像剤規制ブレードの該現像ローラへの当接部よりも該現像ローラの回転方向上流側の該現像ローラ表面に生じた、該現像ローラの軸方向に延びるしわ状の凹部に非磁性一成分現像剤を担持させて該非磁性一成分現像剤を現像領域に搬送する。
そして、上記した現像装置を構成するには、下記の条件を調整することが重要となる。
(1)現像ローラの弾性層の硬度。
(2)現像ローラの弾性層の表面を被覆している表面層の厚さ、及び表面層と弾性層との硬度差。
(3)現像ローラに対する現像剤規制ブレードの当接圧。
【0013】
上記の条件の調整が、本発明に係る現像装置を得る上で重要な理由を以下に説明する。まず、現像ローラを回転させると、回転方向に対してカウンター方向に当接する現像剤規制ブレードの当接圧により、現像ローラの表面には、現像ローラの回転方向とは逆方向の力がかかる。現像ローラの表面層が薄い場合、前記逆方向の力が現像ローラの弾性層にも作用する。その結果、現像ローラの弾性層が柔軟であると、前記逆方向の力によって、現像剤規制ブレードとの当接位置より回転方向上流側の現像ローラの弾性層が変形し、弾性層よりも硬い表面層は、弾性層の変形に追従できない。このとき、表面層は座屈変形し、現像ローラの表面に、軸方向に延びるしわ状の凹部が生じる。
【0014】
図5は、本発明に係る現像装置における現像剤規制ブレード105と現像ローラ106との当接部の拡大図である。当該当接部よりも現像ローラの回転方向上流側に、現像ローラの幅方向に延びる、しわ状の凹部107が生じる。そして、この凹部は、当該当接部を通過し、当該当接部よりも回転方向下流側に移動すると、現像剤規制ブレードによる前記逆方向の力を受けなくなるので、弾性層の変形が復元し、それに伴って表面層の変形状態も解消される。その結果、現像領域においては、現像ローラ表面のしわ状の凹部107は消失する。これによって、現像剤供給ローラを有しない現像装置であっても、静電潜像の安定した現像を行なうことができる。
【0015】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示し、詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0016】
(電子写真画像形成装置)
本発明に係る電子写真画像形成装置は、静電潜像を担持するための像担持体と、像担持体を一次帯電するための帯電装置と、一次帯電された像担持体に静電潜像を形成するための露光装置とを有する。また、電子写真画像形成装置は、さらに、静電潜像を現像剤により現像して現像剤画像を形成するための現像装置と、現像剤画像を転写材に転写するための転写装置とを有する。図1は、電子写真画像形成装置1の概略を示す断面図である。図2は、図1の画像形成装置に装着される電子写真プロセスカートリッジ2の拡大断面図である。この電子写真プロセスカートリッジ2は、像担持体4と、帯電ローラ5と、現像ローラ106を具備する現像装置100と、クリーニングブレード6aを具備するクリーニング装置6とを内蔵している。そして、図1の電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されている。
【0017】
像担持体4は、不図示のバイアス電源に接続された帯電ローラ5によって一様に帯電される。この時の帯電電位は−400Vから−800V程度である。次に、像担持体4は、静電潜像を書き込むための露光装置11により、その表面に静電潜像が形成される。露光装置11には、LED光、レーザー光のいずれも使用することができる。露光された部分の像担持体4の表面電位は−100Vから−200V程度である。
【0018】
次に、画像形成装置本体に対し着脱可能に構成されている電子写真プロセスカートリッジ2に内蔵された現像ローラ106によって、負極性に帯電した非磁性一成分現像剤101が静電潜像に付与(現像)され、静電潜像が可視像に変換される。このとき、現像ローラ106には不図示のバイアス電源によって−300Vから−500V程度の電圧が印加される。なお、現像ローラ106は、像担持体4と0.5mm以上4mm以下のニップ幅をもって接触している。
【0019】
像担持体4上で現像された現像剤像は、中間転写ベルト7に1次転写される。中間ベルト7の裏面には1次転写部材8が当接しており、1次転写部材8に+100Vから+1500V程度の電圧を印加することで、負極性の現像剤像を像担持体4から中間転写ベルト7に1次転写する。1次転写部材8はローラ形状であってもブレード形状であっても良い。
【0020】
電子写真画像形成装置1がフルカラー画像形成装置である場合、帯電、露光、現像、1次転写工程を、イエロー色、シアン色、マゼンタ色、ブラック色の各色に対して行う。図1に示す電子写真画像形成装置1では、前記各色の現像剤101を内蔵したプロセスカートリッジ2が各色1個、合計4個、画像形成装置本体に対し着脱可能な状態で装着されている。そして、帯電、露光、現像、1次転写工程は、所定の時間差をもって順次実行され、中間転写ベルト7上に、4色の現像剤像が重ね合わされた状態が作り出される。
【0021】
中間転写ベルト7上の現像剤像は、中間転写ベルト7の回転に伴って、2次転写部材9と対向する位置に搬送される。中間転写ベルト7と2次転写部材9との間には、所定のタイミングで記録材3が搬送されてきており、2次転写部材9に2次転写バイアスを印加することにより、中間転写ベルト7上の現像剤像を記録材3に転写する。2次転写部材9に印加されるバイアス電圧は、+1000Vから+4000V程度である。2次転写部材9によって現像剤像が転写された記録材3は、定着装置10に搬送され、記録材3上の現像剤像を溶融させて記録材3上に定着させた後、記録材3を画像形成装置本体の外に排出する。以上で一つの画像形成プロセスが完了する。連続して画像形成する場合は、上記のプロセスが順次繰り返される。
【0022】
なお、像担持体4から中間転写ベルト7に転写されることなく、像担持体4上に残存した現像剤101は、像担持体4の表面をクリーニングするためのクリーニングブレード6aにより掻き取られ、現像剤回収容器6bに回収される。
【0023】
(現像装置)
本発明で用いる現像装置は、非磁性一成分現像剤を収容している現像剤容器と、静電潜像を担持する像担持体に対向し、現像剤容器の開口部に延在し回動する、弾性層と表面層を有する現像ローラとを具備する。また、現像装置は、現像ローラの回転方向に対してカウンター方向に当接し、搬送された現像剤の層を規制する現像剤規制ブレードをも有する。図3に現像装置100の断面概略図を示す。本現像装置100は、像担持体4に対向して設置される現像ローラ106を現像剤容器102内に備えている。
【0024】
本発明では現像ローラ106の回転に伴い、現像ローラ106と現像剤規制ブレード105との当接部よりも回転方向上流側の現像ローラ106の表面に、現像ローラの軸方向に延びるしわ状の凹部107を生じさせることが必要である。このしわ状の凹部107により、現像剤101を保持し、現像位置での十分な現像剤量を確保することができる。
【0025】
現像部に搬送される現像剤101の層厚を規制する現像剤規制ブレード105は、先端に向うほど重力方向に下がるような姿勢で、現像ローラ106の上部外周面に該ローラの回転方向に対しカウンター方向に当接されている。現像ローラに対する現像剤規制ブレードの当接圧(線圧)を200N/m〜400N/mの範囲内に調整すると、しわ状の凹部107の谷底と該凹部の隣に位置する凸部の頂上との高低差(以降、単に高低差とする)の大きなしわ状の凹部を発生させやすい。なお、ここでいう線圧は以下の測定によって得られた値を指す。
【0026】
まず、長さ100mm、幅15mm、厚さ30μmの第1のステンレス板(SUS304 表面粗さRa=0.01μm)と、長さ190mm、幅30mm、厚さ30μmの第2のステンレス板(SUS304 表面粗さRa=0.01μm)を準備する。そして、第2のステンレス板を半分に折り曲げて、長さを95mmにする。折り曲げた第2のステンレス板の間に、第1のステンレス板を挟んだ状態で、第1のステンレス板と第2のテンレス板を現像ローラと現像剤規制ブレードとの間に挿入する。そして、バネばかり等で第1のステンレス板を現像剤規制ブレードと略平行方向に引き抜いて、第1のステンレス板が第2のステンレス板の間を滑り出すときの荷重を測定する。得られた荷重を第1のステンレス板の幅で除算した値を、線圧とした。
【0027】
また、現像ローラと像担持体とが現像領域において同方向に移動するよう回転(ウィズ回転)させ、現像ローラの表面移動速度が像担持体の表面移動速度に対して110%以上になるようにしてもよい。この場合には、軸方向に延びたしわ状の凹部によって生じる、現像ローラ周方向の現像剤搬送量のごくわずかなムラを目立たせることなく現像することができる。
【0028】
また、この現像ローラ106の表面に形成する軸方向に延びるしわ状の凹部の高低差が30μm以上、より好ましくは40μm以上であると、現像剤の搬送力が格段に高まって、充分な画像濃度を得ることができる。また、現像ローラの表面に形成する軸方向に延びるしわ状の凹部の高低差が150μm以下、より好ましくは100μm以下となるようにすると、しわ状の凹部に保持された現像剤が、現像ローラや現像剤規制ブレードと接触する機会を充分に提供できる。その結果、現像剤を確実に摩擦帯電させることができる。現像剤規制ブレード105は、厚さ0.05mm〜1.0mmの、ステンレス鋼、リン青銅等の金属性薄板からなる。現像剤規制ブレード105の表面は、JIS B0601に基づいて測定した十点平均粗さRzが2μm以下が好ましい。現像剤規制ブレード105には不図示の電源からブレードバイアスを印加することもできる。
【0029】
また、現像剤に対する安定した規制力とトナーへの安定した帯電付与性を得るために、現像剤規制ブレード105の表面をポリアミドエストラマーなどの樹脂で被覆してもよい。現像剤規制ブレード105は板金に支持され、該現像剤規制ブレード105の側面のうち、自由端側の先端近傍が現像ローラ106の外周面に当接するように設けられている。
【0030】
現像ローラ106の回転に伴い、現像剤101が現像剤規制ブレード105と現像ローラ106との当接部に侵入し、現像ローラ106の表面と現像剤規制ブレード105により摺擦されて、十分に摩擦帯電を受ける。
【0031】
摩擦帯電された現像剤101は、現像剤規制ブレードと現像ローラとの当接部を通過した後、現像ローラ106上で薄層となって、現像領域へと搬送される。このとき、現像ローラ106と前記現像剤規制ブレード105の接触部の回転方向下流側では、前記現像ローラ106の表面に形成された軸方向に延びるしわ状の凹部が消失するので、現像領域にてより均一な現像が可能となる。
【0032】
そして、現像ローラ106に不図示の電源から現像バイアス電圧を印加することにより、現像領域に於いて現像ローラ106上の現像剤101が像担持体4の静電潜像に対応して移転し、前記静電潜像を現像剤像として現像する。
【0033】
現像領域において現像されないで現像ローラ106上に残存した現像剤101は、現像ローラ106の回転に伴って現像剤容器102内に回収される。この現像剤容器102の現像剤回収部分にはシール部材104が設けられている。シール部材104は、現像ローラ106上に残存する現像剤101が現像剤容器102内を通過することを許容するとともに、現像剤容器102内の現像剤101が現像剤容器102の下部から漏出するのを防止する。
【0034】
以下現像ローラ106について詳しく説明する。現像ローラ106は、軸芯体(中実、中空を問わない)の上に弾性のある材料からなる弾性層を設け、さらに表面層を積層した構成をとる。
【0035】
軸芯体としては、良好な導電性を有するものであれば、いずれのものも使用し得る。通常はアルミニウムや鉄、SUSの如き材料で形成された外径4〜10mmの金属製円筒体が用いられる。軸芯体の外周に形成する弾性層の基材としては、軸方向に延びるしわ状の凹部が形成されやすいように柔軟な材料を用いることが好適である。具体的にはシリコーンゴムやウレタンゴムなどが柔軟かつ圧縮永久変形が小さいために好適である。目的とするレベルの高低差を有するしわ状の凹部を得るためには、現像ローラの弾性層のアスカーC硬度を35度以下にする必要がある。好ましくは30度以下にすると、弾性層が変形しやすくなり、高低差の大きなしわ状の凹部が発生する。
【0036】
また、現像剤規制ブレードとの当接部を通過した後、シワを素早く回復させるために、現像ローラの弾性層のアスカーC硬度を10度以上にする必要がある。好ましくは15度以上である。
【0037】
弾性層の厚みを1mm以上にすると、目的とするレベルの高低差を有するしわ状の凹部を生じさせ易い。また、弾性層の厚みを10mm以下にすると、弾性層の成形性が良い。
【0038】
アスカーC硬度の測定は、ゴム材硬度の測定法に従った。具体的には、基準規格アスカーC型SRIS(日本ゴム協会規格)0101に従って別途作製した試験片を用いて、アスカーゴム硬度計(高分子計器(株)製)により温度20℃/湿度50%RHの環境で測定した。
【0039】
弾性層の上に表面層として積層する基材としては、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、イミド樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、及びこれらの混合物が用いられる。耐磨耗性などが良好な点から特にウレタン樹脂が好ましい。
【0040】
現像ローラの表面層の厚さを好ましくは100μm以下、より好ましくは30μm以下にすると、現像ローラの回転方向とは逆方向の力が現像ローラの弾性層にまで作用し、弾性層が変形しやすくなって、高低差の大きなしわ状の凹部を発生させやすい。また、現像ローラの表面層の厚さを好ましくは0.5μm以上、より好ましくは3μm以上とすると、現像剤規制ブレードとの摺擦力に耐えるだけの機械強度をもった現像ローラが得られる。
【0041】
次に、現像ローラの表面層と弾性層との硬度差について説明する。現像ローラの表面層が座屈するように変形するためには、現像ローラの表面層が、現像ローラの弾性層よりも硬い材質からなる必要がある。ただし、現像ローラの表面層が座屈するように変形するか否かは、表面層の硬さだけでなく、表面層の厚みにも影響される。表面層の硬さと厚さの双方を含んだ指標として、表面層形成後のMD1硬度と表面層形成前の弾性層のMD1硬度の差(表面層形成後のMD1硬度から表面層形成前の弾性層のMD1硬度を引いた値)を挙げることができる。このMD1硬度の差をもって、本発明における現像ローラの表面層と弾性層との硬度差を表すものとする。MD1硬度の差を30度以下にすると、前記逆方向の力が現像ローラの弾性層にまで作用し、弾性層が変形しやすくなる。それと共に、表面層が硬すぎないので、表面層が座屈するように変形しやすくなるため、高低差の大きなしわ状の凹部を発生させやすい。また、前記MD1硬度の差を3度以上にすると、弾性層の変形に表面層が追従しにくくなるため、表面層が座屈するように変形しやすくなって、高低差の大きなしわ状の凹部を発生させやすい。
【0042】
なお、ここでいうMD1硬度とは、マイクロゴム硬度計(商品名:MD−1capa、高分子計器社製)にて、直径0.16mmの押針を用い、温度25℃、湿度50%RHの環境下で現像ローラの弾性層又は表面層の10点を測定したときの相加平均値をいう。
【0043】
本発明について弾性層又は表面層の厚さは、現像ローラの断面を切り取り、断面をビデオマイクロスコープ(倍率5〜3000倍)で9点測定したときの、その値の相加平均値をいう。
【0044】
上記弾性層や表面層の基材に、電子導電性物質やイオン導電性物質のような導電性付与剤を配合し、現像ローラの適切な電気抵抗領域を好ましくは10〜1011Ω、より好ましくは10〜1010Ωに調整する。
【0045】
現像ローラ106の電気抵抗は、図4に示す電気抵抗測定機を用いて測定した。現像ローラ106の芯金両端部に4.9Nずつ荷重を施し(図中、矢印)、直径30mmの金属ドラム200に押し当てる。そして、金属ドラムを回転数1rpsにて回転させ、現像ローラ106を従動させながら、電源201より50Vの電圧を印加する。このとき電圧計202に示される、抵抗203(10kΩ)にかかる電圧を30秒間読み取り、その平均値から回路に流れる電流値を求め、そこから現像ローラの電気抵抗値を求める。
【0046】
現像ローラの表面粗さは、適時表面に露出してくる層を研磨するか、表面層に樹脂粒子などを添加することにより調整することができる。現像ローラの表面粗さは、JIS B0601:2001によるRzが1μm以上25μm以下になるように調整することが好適である。なお、本発明における現像ローラのRzの測定には、接触式表面粗さ計(商品名:サーフコーダーSE3500 小坂研究所製)を用いることができる。測定条件として、カットオフ値を0.8mm、測定長さを2.5mm、送りスピードを0.1mm/秒、倍率を5000倍とする。現像ローラ1本あたり任意の9ヶ所の表面粗さRzを測定し、得られた測定値の相加平均値を現像ローラのRzとする。
【実施例】
【0047】
(現像ローラの作製)
(現像ローラ1)
SUS304からなる外径6mmの軸芯体を、内径11.5mmの円筒状金型内に該金型と同心となるように設置した。そして、弾性層を形成する材料として液状導電性シリコーンゴム(信越化学工業社製、アスカーC硬度15度、体積抵抗率1×10Ω・cm品)を注型した。注型後、温度130℃のオーブンに入れ20分間加熱し、脱型後、温度200℃のオーブンで4時間2次加硫を行い、厚み2.75mmの弾性層を形成した。
【0048】
次に、下記の材料を混合しボールミルで攪拌分散して塗料を調製した。
・ポリオール(商品名:タケラックE553、三井武田ポリウレタン社製)100質量部、
・イソシアネート(商品名:タケネートD140N、三井武田ポリウレタン社製)30質量部、
・カーボンブラック(商品名:MA100、三菱化学社製)25質量部、
・アクリル樹脂粒子(商品名:MX−1000、綜研化学社製)30質量部、
・メチルエチルケトン100質量部。
得られた塗料を、先に成型した弾性層の上にディッピングにより塗布し、温度120℃のオーブンで1時間焼成し、表面層(膜厚15μm)を形成し、現像ローラ1を得た。なお、表面層形成前の弾性層のMD1硬度は13.2、表面層形成後のMD1硬度は34.4(表面層形成後のMD1硬度から表面層形成前の弾性層のMD1硬度を引いた値Δ=21.2)であった。また、ローラのRzは7.8μmであった。
【0049】
(現像ローラ2)
弾性層を形成する材料を、液状導電性シリコーンゴム(信越化学工業社製、アスカーC硬度35度、体積抵抗率1×106Ω・cm品)を用いた以外は現像ローラ1と同様にして現像ローラ2を得た。なお、表面層形成前の弾性層のMD1硬度は21.0、表面層形成後のMD1硬度は51.0(表面層形成後のMD1硬度から表面層形成前の弾性層のMD1硬度を引いた値Δ=30.0)であった。また、ローラのRzは7.9μmであった。
【0050】
(現像ローラ3)
弾性層を形成する材料を、液状導電性シリコーンゴム(信越化学工業社製、アスカーC硬度30度、体積抵抗率1×106Ω・cm品)を用い、表面層の膜厚を1μmにした以外は現像ローラ1と同様にして現像ローラ3を得た。なお、表面層形成前の弾性層のMD1硬度は17.8、表面層形成後のMD1硬度は20.8(表面層形成後のMD1硬度から表面層形成前の弾性層のMD1硬度を引いた値Δ=3.0)であった。また、ローラのRzは11.2μmであった。
【0051】
(現像ローラ4)
弾性層を形成する材料を、液状導電性シリコーンゴム(信越化学工業社製、アスカーC硬度10度、体積抵抗率1×106Ω・cm品)を用いた以外は現像ローラ1と同様にして現像ローラ4を得た。なお、表面層形成前の弾性層のMD1硬度は8.1、表面層形成後のMD1硬度は30(表面層形成後のMD1硬度から表面層形成前の弾性層のMD1硬度を引いた値Δ=21.9)であった。また、ローラのRzは7.5μmであった。
【0052】
(現像ローラ5)
弾性層を形成する材料を、液状導電性シリコーンゴム(信越化学工業社製、アスカーC硬度45度、体積抵抗率1×106Ω・cm品)を用いた以外は現像ローラ1と同様にして現像ローラ5を得た。なお、表面層形成前の弾性層のMD1硬度は27.4、表面層形成後のMD1硬度は52.6(表面層形成後のMD1硬度から表面層形成前の弾性層のMD1硬度を引いた値Δ=25.2)であった。また、ローラのRzは7.8μmであった。
【0053】
(現像ローラ6)
弾性層を形成する材料を、液状導電性シリコーンゴム(信越化学工業社製、アスカーC硬度45度、体積抵抗率1×106Ω・cm品)を用いた以外は現像ローラ1と同様にして弾性層を成型した。次に、下記の材料を混合しボールミルで攪拌分散し、塗料を調製した。
・ポリオール(商品名:タケラックE553、三井武田ポリウレタン社製)100質量部、
・イソシアネート(商品名:タケネートD140N、三井武田ポリウレタン社製)30質量部、
・カーボンブラック(商品名:MA100、三菱化学社製)25質量部、
・アクリル樹脂粒子(商品名:アートパールC200、根上工業社製)50質量部、
・メチルエチルケトン100質量部。
得られた塗料を、先に成型した弾性層の上にディッピングにより塗布し、温度120℃のオーブンで1時間焼成し、表面層(膜厚10μm)を形成し、現像ローラ6を得た。
なお、表面層形成前の弾性層のMD1硬度は27.4、表面層形成後のMD1硬度は52.5(表面層形成後のMD1硬度から表面層形成前の弾性層のMD1硬度を引いた値Δ=25.1)であった。また、ローラのRzは21.5μmであった。
【0054】
(現像ローラ7)
SUS304からなる外径6mmの軸芯体を、内径11.5mmの円筒状金型内に該金型と同心となるように設置した。そして、弾性層を形成する材料として液状導電性シリコーンゴム(信越化学工業社製、アスカーC硬度15度、体積抵抗率1×106Ω・cm品)を注型した。注型後、温度130℃のオーブンに入れ20分間加熱し、脱型後、温度200℃のオーブンで4時間2次加硫を行い、厚み2.75mmの弾性層を形成した。この弾性層を#1000のサンドペーパーにより表面を研磨し、現像ローラ7を得た。なお、弾性層のMD1硬度は13.2であった。また、ローラのRzは18.1μmであった。
【0055】
(実施例1)
カラーLBP(商品名:HP Color LaserJet CP2025dn、ヒューレットパッカード社製)のプロセスカートリッジ(CRG)から、現像剤供給ローラを除去したCRGを用意した。次に、このCRGの現像剤規制ブレードの装着位置を変更できるように加工して、現像ローラと現像剤規制ブレードの当接圧を調整した。
【0056】
厚さ300μmのSUS平板を用いて、現像剤規制ブレードを作成し、上記作成した現像ローラ1と共にCRGに組み込み、画だしサンプリングを行った。その時の現像ローラと現像剤規制ブレードの当接圧は前述方法にて測定を行った。また、作成したCRGの現像ローラを回転させ、回転を停止した直後において、現像ローラ上に形成されているしわ状の凹部の高低差をレーザー顕微鏡(商品名:VK−8700、キーエンス社製)で測定した。撮影倍率は、しわ状の各凹部が複数観察できる倍率とし、凹部の谷底と、該凹部の隣に位置する凸部の頂上との高低差を現像ローラ上の画像領域にある任意の10点について測定し、その相加平均値をしわ状の凹部の高低差とした。測定結果を表1に示す。
【0057】
(画像濃度ムラの測定)
上記CRGをカラーLBP本体(商品名:HP Color LaserJet CP2025dn、ヒューレットパッカード社製)に装着し、温度20℃/湿度50%RHの環境下にてベタ黒画像を出力した。現像剤はCRGに充填されている非磁性一成分現像剤(シアン)を用いた。記録材にはキヤノン社製のCLC(カラーレーザーコピア)用紙(A4サイズ、坪量=81.4g/m)を用いた。ベタ黒画像1枚につき10点(ベタ黒画像を2等分割する排紙方向に平行な画像中央の線上であり、その線を11等分割する10点)の画像濃度を、反射濃度計(マクベス社製、RD918)を用いて測定した。その濃度差(最大値−最小値)を算出して以下のように評価した。評価結果を表1に示す。
(評価基準)
A:濃度差が0.05以下であり、画像上問題の無いもの
B:濃度差が0.05を超え0.10以下であり、画像上問題ないレベルにあるもの
C:濃度差が0.10を超え、画像上問題が生じる場合があるもの
【0058】
(現像ローラ上の現像剤量(M/S)の測定)
上記CRGをカラーLBP本体(商品名:HP Color LaserJet CP2025dn、ヒューレットパッカード社製)に装着した。次いで、LBP本体とCRGと記録用紙とを、温度20℃/湿度50%RHの環境に24時間以上放置してから、その環境で以下の評価を行なった。現像剤はCRGに充填されている非磁性一成分現像剤(シアン)を用いた。まず、ベタ黒画像を3枚出力し、3枚目のベタ黒画像の現像途中で本体の電源を落とし、画像形成プロセスを強制的に終了させる。次に、本体からCRGを取り出し、現像ローラと像担持体とのニップ直前の位置において、現像ローラ上の現像剤を吸引捕集し、その質量(M)を測定した。次に、吸引捕集した部分の面積(S)を求めて、現像ローラ上の単位面積あたりの現像剤量M/S(mg/cm)を算出した。測定結果を表1に示す。
(評価基準)
A:0.30<M/S 安定した濃度が確保できる。
B:0.20≦M/S≦0.30 実用上問題ない濃度が確保できる。
C:0.20>M/S 濃度が薄くなる場合がある。
【0059】
(実施例2〜5)
現像ローラを表1に示すように替え、また、現像ローラと現像剤規制ブレードの当接圧を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様にして画だしサンプリングを行った。現像ローラ上に形成されたしわ状の凹部の高低差、画像濃度ムラ、現像ローラ上の現像剤量(M/S)について測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
(比較例1〜5)
現像ローラを表1に示すように替え、また、現像ローラと現像剤規制ブレードの当接圧を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様にして画だしサンプリングを行った。現像ローラ上にはしわ状の凹部が形成されなかった。画像濃度ムラ及び現像ローラ上の現像剤量について測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
本発明の現像方法は、現像剤規制ブレードと現像ローラの当接部よりも現像ローラの回転方向上流側の現像ローラ表面にしわ状の凹部を生じさせ、そのしわ状の凹部に非磁性一成分現像剤を担持させて、非磁性一成分現像剤を現像領域に搬送する工程を有する。しわ状の凹部は現像ローラの軸方向に延びており、非磁性一成分現像剤を保持することができる。本発明によれば、表1に示す実施例1〜5の結果から明らかなように、現像ローラ上の非磁性一成分現像剤量を十分に確保し、かつ濃度ムラが発生しない。
【符号の説明】
【0063】
1 電子写真画像形成装置
2 プロセスカートリッジ
3 記録材
4 像担持体
5 帯電ローラ
6 クリーニング装置
6a クリーニングブレード
6b 現像剤回収容器
7 中間転写ベルト
8 1次転写部材
9 2次転写部材
10 定着装置
11 露光装置
100 現像装置
101 現像剤
102 現像剤容器
103 攪拌シート
104 シール部材
105 現像剤規制ブレード
106 現像ローラ
200 金属ドラム
201 電源
202 電圧計
203 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性一成分現像剤を収容している現像剤容器と、
静電潜像を担持する像担持体に対向し該現像剤容器の開口部に延在し回動する、弾性層と表面層を有する現像ローラと、
該現像ローラの回転方向に対してカウンター方向に当接し、搬送された現像剤の層を規制する現像剤規制ブレードとを有する現像装置を用いた現像方法であって、
該現像ローラへの該現像剤規制ブレードの当接圧によって、該現像剤規制ブレードの該現像ローラへの当接部よりも該現像ローラの回転方向上流側の該現像ローラ表面に、該現像ローラの軸方向に延びる、該非磁性一成分現像剤を保持可能なしわ状の凹部を生じさせ、
該凹部に該非磁性一成分現像剤を担持させて該非磁性一成分現像剤を現像領域に搬送する工程を有することを特徴とする現像方法。
【請求項2】
前記現像ローラと前記現像剤規制ブレードの当接部よりも該現像ローラの回転方向下流側においては前記凹部を消失させる工程をさらに有する請求項1に記載の現像方法。
【請求項3】
非磁性一成分現像剤を収容している現像剤容器と、
静電潜像を担持する像担持体に対向し該現像剤容器の開口部に延在し回動する、弾性層と表面層を有する現像ローラと、
該現像ローラの回転方向に対してカウンター方向に当接し、搬送された現像剤の層を規制する現像剤規制ブレードとを有し、
該現像ローラは、該現像ローラを回転させたときに、該現像ローラへの該現像剤規制ブレードの当接圧によって、該現像剤規制ブレードの該現像ローラへの当接部よりも該現像ローラの回転方向上流側の該現像ローラ表面に、該現像ローラの軸方向に延びる、該非磁性一成分現像剤を保持可能なしわ状の凹部が生じる表面を有していることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、一次帯電された像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と、該静電潜像を現像剤により現像して現像剤画像を形成するための現像装置と、該現像剤画像を転写材に転写するための転写装置とを有する電子写真画像形成装置において、該現像装置が請求項3に記載の現像装置であることを特徴とする電子写真画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−128334(P2012−128334A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281694(P2010−281694)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】