説明

現像装置、画像形成装置

【課題】現像装置内のトナーの帯電状態をできる限り適切な状態に設定することができる技術を提供する。
【解決手段】トナーボックス41の内壁面適所には、帯電する材料からなる導電シート8を貼り付けるとともに、攪拌部材44を、導電性を有する材質で構成した。さらに、現像部4に、画像形成装置1(現像部4)の環境(温度及び湿度)を検出する環境検出部12と、前記攪拌部材44及び前記導電シート8に所定の電位を供給する電位供給部10と、環境検出部12により検出される画像形成装置1の環境(温度や湿度など)に応じて、電位供給部10により供給する電位を制御する電位制御部11とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナや複写機などの画像形成装置に備えられる現像装置及び該現像装置を備える画像形成装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
現像装置内におけるトナーの帯電状態に着目して画像濃度低下などによる画像不良等を防止することを目的とする技術が種々提案されている。その1つとして下記特許文献1に記載のものがある。
【0003】
下記特許文献1には、トナー収納部の内壁底面及び攪拌部材の先端に、トナーの極性と逆極性に帯電する材料からなるシートを貼付した現像器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−318528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トナーは、例えば現像装置(画像形成装置)の環境(温度や湿度)に応じて帯電のし易さが変化する。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1のように、トナー収納部の内壁底面及び攪拌部材の先端に、トナーの極性と逆極性に帯電する材料からなるシートを貼付しただけでは、トナーの帯電のし易さが変化してもその変化に合わせてトナーの帯電状態をコントロールすることはできず、依然として、トナー収納部内のトナーの帯電量が均一にならなかったりトナー収納部内のトナーの電位分布にバラツキが生じたりする場合があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みて為された発明であり、現像装置内のトナーの帯電状態をできる限り適切な状態に設定することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、感光体ドラムに供給するためのトナーを収納するトナー収納部と、前記トナー収納部に収納されているトナーに接触するように予め定められた位置に設置された導電体と、前記導電体に電位を供給する電位供給部と、前記電位供給部により供給する電位を制御する電位制御部とを備える現像装置である。
【0009】
この発明によれば、前記導電体に電位を供給し、且つ、電位供給部により供給する電位を制御できるようにしたので、何らかの要因でトナーの帯電のし易さが変化した場合であっても、その変化に合わせてトナーの帯電状態をコントロールすることが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の現像装置において、当該現像装置の環境を検出する環境検出部を更に備え、前記電位制御部は、前記環境検出部により検出される環境に応じて、前記電位供給部により供給する電位を制御するものである。
【0011】
この発明によれば、現像装置の環境変化に因りトナーの帯電のし易さが変化した場合であっても、その変化に合わせてトナーの帯電状態をコントロールすることができる。
【0012】
前記環境検出部としては、請求項3に記載の発明のように、当該現像装置の周辺温度を検出するものや、請求項4に記載の発明のように、当該現像装置の周辺湿度を検出するものが想定される。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一項に記載の現像装置において、前記導電体は、前記トナー収納部に収納されているトナーを攪拌する攪拌部材であり、該攪拌部材は、少なくとも表面が導電性を有する材料により構成されているものである。
【0014】
この発明によれば、従前から現像装置に設置されている攪拌部材を前記導電体として利用し、該攪拌部材の少なくとも表面を、導電性を有する材料で構成したので、前記導電体として新たな部材を設ける場合に比して、コストアップや現像装置のサイズアップを回避することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明の攪拌部材に代えて、又は該攪拌部材に加えて、請求項6に記載の発明のように、導電性シートを前記導電体として前記トナー収納部の内壁に設けるようにしてもよい。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の何れか一項に記載の現像装置と、該現像装置から供給されるトナーにより静電潜像がトナー像に顕像化され、該トナー像を次段の像担持体に提供する感光体ドラムとを有する画像形成装置である。
【0017】
この発明によれば、画像形成装置において、請求項1乃至6の何れか一項に記載の発明の効果が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、何らかの要因でトナーの帯電のし易さが変化した場合であっても、その変化に合わせてトナーの帯電状態をコントロールすることが可能となるため、できる限り現像装置内のトナーの帯電状態を適切な状態に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る現像装置を搭載した画像形成装置の主要部の構成例を示す図である。
【図2】(a)は、現像部の一実施形態を示す分解斜視図、(b)は、(a)に示す現像部の組み立て斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて、本発明に係る現像装置を備えた画像形成装置の実施形態について説明する。図1は、本発明に係る現像装置を搭載した画像形成装置の主要部の構成例を示す図である。
【0021】
図1に示すように、画像形成装置1は、像担持ドラムとして周面が例えばアモルファスシリコンからなる円柱状の感光体ドラム2を有し、その感光体ドラム2の周囲に、帯電器3、現像部4、転写体の一例としての転写ローラ5及びクリーニングユニット6が感光体ドラム2の回転方向に沿って配置されている。また、画像形成装置1は、感光体ドラム2の周面のうち帯電器3と現像部4との間の部位に向けて、画像データに基づくレーザ光を照射する露光部7を有する。
【0022】
この画像形成装置1による画像形成動作は、以下のように行われる。帯電器3によって感光体ドラム2の周面を所定電位に均一に帯電した後、感光体ドラム2の周面に、画像データに応じてレーザ光9を照射することによる露光を露光部7により行い、これにより感光体ドラム2上に静電潜像が形成される。その後、現像部4によって感光体ドラム2上の静電潜像が現像されてトナー像とされる。
【0023】
一方、転写材、例えば用紙Pは、図略の用紙カセットから繰り出されて搬送路上を搬送され、感光体ドラム2と転写ローラ5との間に送られ、ここで転写ローラ5によって感光体ドラム2上のトナー像が転写され、その後、図略の定着ユニットを経て排紙トレイ(図示せず)に排紙される。
【0024】
搬送路の転写ローラ5よりも上流側の適所には、図略のレジストローラ対が設けられていて、このレジストローラ対に用紙Pが突き当たって一旦停止され、感光体ドラム2への画像形成とタイミングを合わせてレジストローラ対が再び駆動され、用紙Pを感光体ドラム2と転写ローラ5との間のニップ部に向けて送り出す。
【0025】
そして、感光体ドラム2の表面に形成されたトナー像は、転写ローラ5によって用紙Pに転写される。転写後に感光体ドラム2上に残留したトナーは、クリーニングユニット6内のブレード61により除去される。その後、感光体ドラム2上の残留電位が図略の除電器によって消去される。そして、再び帯電器3によって帯電されて、以上の画像形成処理が繰り返される。
【0026】
図2は、現像部4の一例を示す斜視図である。なお、図2においては、内部の構成を示すため、上面を破断した状態を示している。また、図2においては、現像スリーブ42の図示を省略している。
【0027】
図1,図2に示すように、現像部4は、感光体ドラム2に供給するためのトナーを収納するトナーボックス41と、トナーボックス41内のトナーを感光体ドラム2へ供給する現像スリーブ42と、現像スリーブ42に現像バイアス電圧を印加する現像バイアス印加部43と、トナーボックス41内のトナーを攪拌するスパイラル形状の攪拌部材44とを備える。
【0028】
前記トナーボックス41は、一方の側面に現像スリーブ42を内部に収容するための開口を有する長尺の筐体であり、前記攪拌部材44は、トナーボックス41の前板81と後板82との間に架設された攪拌軸441と、この攪拌軸441に同心で固定されたスパイラルフィン442と、攪拌軸441の後端側に同心で設けられたカップリング部材83とを備えている。
【0029】
攪拌部材44は、トナーボックス41の略全体を横切るように延びている。前記カップリング部材83は、画像形成装置1の装置本体側に設けられた図略のカップリング部材に連結される。装置本体側のカップリング部材には、装置本体側に設けられた駆動モータ(図示せず)の駆動力がギヤなどの動力伝達機構を介して伝達される。
【0030】
これにより、駆動モータMの駆動力は、前記カップリング部材83に伝達され、スパイラルフィン442が攪拌軸441と一体回転する。このスパイラルフィン442の回転によって現像部4内のトナーが攪拌されつつ一端側へ向かって搬送され、図略のトナー補給口を介して現像スリーブ42に補給されることになる。
【0031】
現像スリーブ42は、表面がトナーの電位より所定電位高く設定されている。これにより、トナーボックス41内のトナーが静電気力により現像スリーブ42の表面に付着する。このとき、現像スリーブ42の表面に付着したトナーは、該現像スリーブ42の表面から電荷を受け取って帯電する。現像スリーブ42の表面に付着したトナーの層は、層厚規制部材45によりその層厚が規制されている。
【0032】
現像バイアス印加部43は、所定の直流電圧VDCを供給する直流電圧供給部431と、矩形波、三角波或いは正弦波の交流電圧VACを供給する交流電圧供給部432とが直列に接続されており、直流電圧VDCに交流電圧VACを重畳したものを現像バイアス電圧として現像スリーブ42に供給する。
【0033】
この現像バイアス電圧により、感光体ドラム2と現像スリーブ42との間には、現像バイアス電圧に応じた交番電界が発生し、現像スリーブ42に担持されたトナーが感光体ドラム2の露光部分(静電潜像部分)に移動し、これにより、感光体ドラム2の表面に形成された静電潜像がトナー像に顕像化される。一方、現像スリーブ42の表面には、一部のトナーが残留し、この残留トナーがクリーニングユニット6を介してトナーボックス41に戻される。
【0034】
現像スリーブ42に残留したトナーがトナーボックス41に戻されると、トナーボックス41内には、現像スリーブ42から電荷を受け取って帯電したトナーと、現像スリーブ42に未だ供給されていないトナーとが混在する。攪拌部材44は、このように帯電状態が異なるトナーをトナーボックス41内で攪拌しつつ、トナーを現像スリーブ42に供給(搬送)する。
【0035】
図1,図2に示すように、トナーボックス41の内壁面適所には、帯電する材料からなる導電シート8が貼り付けられている。また、攪拌部材44は、導電性を有する材質で構成されている。これらにより、トナーが導電シート8や攪拌部材44に接触したときに、或るトナー粒子が持つ電荷が、導電シート8や攪拌部材44を介し、電荷が少ない別のトナー粒子に移動する。その結果、導電シート8や攪拌部材44に接触したトナーの電位を同一にすることができる。
【0036】
さらに、本実施形態の現像部4は、画像形成装置1(現像部4)の環境(温度及び湿度)を検出する環境検出部12と、前記攪拌部材44及び前記導電シート8に所定の電位を供給する電位供給部10と、電位供給部10により供給する電位を制御する電位制御部11とを有する。
【0037】
電位供給部10は、前記攪拌部材44及び前記導電シート8に供給する電位が可変となっており、電位制御部11は、前記環境検出部12により検出される画像形成装置1の環境(温度や湿度など)に応じて、電位供給部10により供給する電位を制御する。なお、温度や湿度の環境変数に対し電位供給部10により供給する電位をどのように制御するかは画像形成装置1の機種毎に異なるため、当該画像形成装置1の機種の特性に合わせて、電位供給部10により供給する制御を行えばよい。
【0038】
以上のように、本実施形態では、前記攪拌部材44及び前記導電シート8に所定の電位を供給するとともに、この供給する電位を制御するようにしたので、帯電状態が異なるトナーが混在していても、トナーボックス41内のトナーの帯電状態をできる限り均一に適切な状態にすることができ、画像濃度低下などによる画像不良等を防止又は抑制することができる。
【0039】
また、トナーボックス41内で何度も攪拌され帯電された古いトナーも、前述の電位制御によって再び使用できる状態に再生されることとなるから、古くなったトナーの廃棄量を減らすことができ、トナーをできるだけ有効利用することができる。
【0040】
本件は、前記実施形態に代えて、或いは前記実施形態に加えて、次のような変形形態も採用可能である。
【0041】
(1)攪拌部材44は、スパイラル形状に限定されるものではなく、他の形状や構成を有するものであってもよい。また、前記実施形態では、攪拌部材44全体を導電性の材質で構成したが、攪拌部材44の形態はこれに限定されるものではなく、所定の材質で構成された基材の全体又は一部分に導電シートを巻きつけて構成したもの等でもよい。
【0042】
(2)前記実施形態では、トナー粒子相互間の電位を同一にするための部材として、導電シート8と攪拌部材44との両方を備えたが、何れか一方でもよいし、或いは、導電シート8及び攪拌部材44以外の部材を採用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 画像形成装置
2 感光体ドラム
3 帯電器
4 現像部
41 トナーボックス
42 現像スリーブ
43 現像バイアス印加部
431 直流電圧供給部
432 交流電圧供給部
44 攪拌部材
45 層厚規制部材
8 導電シート
10 電位供給部
11 電位制御部
12 環境検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムに供給するためのトナーを収納するトナー収納部と、
前記トナー収納部に収納されているトナーに接触するように予め定められた位置に設置された導電体と、
前記導電体に電位を供給する電位供給部と、
前記電位供給部により供給する電位を制御する電位制御部と
を備える現像装置。
【請求項2】
当該現像装置の環境を検出する環境検出部を更に備え、
前記電位制御部は、前記環境検出部により検出される環境に応じて、前記電位供給部により供給する電位を制御する請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記環境検出部は、当該現像装置の周辺温度を検出するものである請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記環境検出部は、当該現像装置の周辺湿度を検出するものである請求項2に記載の現像装置。
【請求項5】
前記導電体は、前記トナー収納部に収納されているトナーを攪拌する攪拌部材であり、該攪拌部材は、少なくとも表面が導電性を有する材料により構成されている請求項1乃至4のいずれかに記載の現像装置。
【請求項6】
前記導電体は、前記トナー収納部の内壁に設けられた導電性シートである請求項1乃至5の何れか一項に記載の現像装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の現像装置と、
該現像装置から供給されるトナーにより静電潜像がトナー像に顕像化され、該トナー像を次段の像担持体に提供する感光体ドラムと
を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−47973(P2011−47973A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193923(P2009−193923)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】