説明

現像装置および画像形成装置

【課題】必要な量の現像剤を安定して汲み上げることができ、磁気ローラ上に安定した現像剤層を形成して、安定した画像を得ることができる現像装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像装置1は、現像剤を撹拌するためのスクリュー2,4と、スクリュー2から現像剤を汲み上げるための供給ローラ8と、供給ローラ8によって汲み上げられた現像剤を搬送するための第1磁気ローラ10と、第1磁気ローラ10と同方向に回転し、第1磁気ローラ10から引き渡された現像剤を感光体ドラム40に接触させて現像するための第2磁気ローラ12と、規制ブレード14とを、現像装置筐体30内に備えている。現像装置4は、供給ローラ8の回転速度や磁極位置を調整して、現像剤の汲み上げ量を増減させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ、ファクシミリなどの現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、現像装置として特許文献1に記載のものが知られている。この現像装置は、図9に示すように、内部にスクリュー55,56、磁気ローラ(現像ローラ)54、搬送ローラ57(供給ローラ)を備えている。磁気ローラ54や搬送ローラ57(供給ローラ)は、内部に固定のマグネットローラ58を有し、その外周をスリーブ59が矢印方向に回転する構成となっている。そして、磁力により現像剤を吸着し、スリーブ59の回転により搬送するようになっている。
【0003】
現像時には、スクリュー55,56により循環、混合、撹拌されている現像剤を、搬送ローラ57(供給ローラ)により汲み上げて搬送し、対向する部位Dで磁気ローラ(現像ローラ)54に引き渡す。さらに、現像剤を磁気ローラ(現像ローラ)54の回転により搬送し、規制ブレード60でその厚さを規制した後、感光体ドラム51に接触させて現像し、再び現像装置内に搬送し、磁力が比較的弱い部位Eで重力や遠心力等によりスクリュー55,56上へ落下させる。
【0004】
【特許文献1】特開平9−274386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の現像装置は、現像剤の汲み上げ量が大きく変化してしまい、磁気ローラ(現像ローラ)54上に安定した現像剤層を形成することができなくなり、安定した画像を得ることができない場合があった。現像剤の汲み上げ量が変化してしまう理由としては、経時変化あるいは環境変化による現像剤の流動性変化、あるいは、経時変化を原因による現像剤の劣化、あるいは、印字率変化による現像剤消費量の増減などがあげられる。
【0006】
それゆえに、本発明の主たる目的は、必要な量の現像剤を安定して汲み上げることができ、磁気ローラ上に安定した現像剤層を形成して、安定した画像を得ることができる現像装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、現像剤を攪拌するためのスクリューと、スクリューから現像剤を汲み上げるための供給ローラと、供給ローラによって汲み上げられた現像剤を搬送するための磁気ローラとを備え、供給ローラは、スクリューと対向する部位に第1磁極を設け、磁気ローラと対向する部位に第2磁極を設け、かつ第2磁極の供給ローラの回転方向下流の部位に第3磁極を設け、供給ローラの調整に基づいて、現像剤の汲み上げ量が増減自在となっていることを特徴とする、現像装置である。
【0008】
請求項1の発明では、供給ローラは、スクリューと対向する第1磁極によって現像剤を汲み上げ、磁気ローラによる現像剤の汲み上げの補助を行い、磁気ローラと対向する第2磁極によって現像剤を磁気ローラに引き渡し、供給ローラの回転方向下流に設けた第3磁極によって規制ブレード付近に滞留した余分な現像剤を引き付けて回収し、スクリューに戻して循環させることができる。そして、供給ローラを調整して、必要なだけの現像剤の汲み上げ量を確保することにより、常に安定した画像が得られる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明に従属する発明であって、供給ローラの回転速度を調整して、現像剤の汲み上げ量を増減させていることを特徴とする、現像装置である。
【0010】
請求項2の発明では、供給ローラの回転速度を調整するだけで、現像剤の汲み上げ量を容易に増減させることができる
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明に従属する発明であって、現像剤の劣化、使用環境、もしくは印字率のいずれか一つによって、供給ローラの回転速度を調整し、現像剤の汲み上げ量を増減させていることを特徴とする、現像装置である。
【0012】
請求項3の発明では、現像剤の汲み上げ量に大きな影響を与える現像剤の劣化、使用環境、もしくは印字率のいずれか一つによって、供給ローラの回転速度を調整しているため、効率良く必要な量の現像剤を安定して汲み上げることができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明に従属する発明であって、供給ローラの磁極位置を調整して、現像剤の汲み上げ量を増減させていることを特徴とする、現像装置である。
【0014】
請求項4の発明では、供給ローラの磁極位置を調整するだけで、現像剤の汲み上げ量を容易に増減させることができる。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明に従属する発明であって、現像剤の劣化、使用環境、もしくは印字率のいずれか一つによって、供給ローラの磁極位置を調整し、現像剤の汲み上げ量を増減させていることを特徴とする、現像装置である。
【0016】
請求項5の発明では、現像剤の汲み上げ量に大きな影響を与える現像剤の劣化、使用環境、もしくは印字率のいずれか一つによって、供給ローラの磁極位置を調整しているため、効率良く必要な量の現像剤を安定して汲み上げることができる。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の現像装置を備えていることを特徴とする、画像形成装置である。
【0018】
請求項6の発明では、必要な量の現像剤を安定して汲み上げることができ、磁気ローラ上に安定した現像剤層を形成して、安定した画像を得ることができる現像装置を備えた画像形成装置が得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、供給ローラは、スクリューと対向する部位に第1磁極を設け、磁気ローラと対向する部位に第2磁極を設け、かつ第2磁極の供給ローラの回転方向下流の部位に第3磁極を設け、供給ローラの調整に基づいて、現像剤の汲み上げ量が増減自在となっているので、必要な量の現像剤を安定して汲み上げることができ、磁気ローラ上に安定した現像剤層を形成して、安定した画像を得ることができる現像装置および画像形成装置を得ることができる。
【0020】
本発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための最良の形態の説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(現像装置)
図1は本発明に係る現像装置1の一例を示す概略構成図である。この現像装置1は、現像剤Tを撹拌するためのスクリュー2,4と、スクリュー2から現像剤Tを汲み上げるための供給ローラ8と、供給ローラ8によって汲み上げられた現像剤Tを搬送するための第1磁気ローラ10と、第1磁気ローラ10と同方向に回転し、第1磁気ローラ10から引き渡された現像剤Tを感光体ドラム40に接触させて現像するための第2磁気ローラ12(現像ローラ)と、規制ブレード14とを、現像装置筐体30内に備えている。スクリュー4の近傍の現像装置筐体30の上壁には、現像剤(トナー)補給口30aが形成されている。第2磁気ローラ(現像ローラ)12の近傍の現像装置筐体30の側壁には、感光体ドラム40開口部30bが形成されている。
【0022】
第1磁気ローラ10,第2磁気ローラ12(現像ローラ)や供給ローラ8は、内部に固定のマグネットローラ20を有し、その外周をスリーブ21が矢印方向に回転する構成となっている。そして、磁力により現像剤Tを吸着し、スリーブ21の回転により搬送するようになっている。
【0023】
図2に示すように、供給ローラ8は三つの磁極を有しており、スクリュー2と対向する部位に200G(ガウス)の第1磁極(S極)を設け、第1磁極によってスクリュー2から現像剤Tを汲み上げ、磁気ローラ10による現像剤Tの汲み上げの補助を行っている。さらに、第1磁気ローラ10と対向する部位に300Gの第2磁極(N極)を設け、第2磁極によって現像剤Tを第1磁気ローラ10に引き渡す。さらに、第2磁極の供給ローラ8の回転方向下流の部位に700Gの第3磁極(S極)を設け、第3磁極によって規制ブレード14の裏付近に滞留した余分な現像剤Tを引き剥す。
【0024】
同様に、第1磁気ローラ10も三つの磁極を有しており、供給ローラ8と対向する部位に700G(ガウス)の第1磁極(S極)を設け、第1磁極によって供給ローラ8から現像剤Tを引き受ける。さらに、第1磁極の第1磁気ローラ10の回転方向下流の部位に、順に400Gの第2磁極(N極)、400Gの第3磁極(S極)を設けている。
【0025】
現像時には、新規現像剤Tは、現像装置筐体30の現像剤補給口30aを通って現像装置内に送り込まれる。スクリュー4は補給される新規現像剤Tを攪拌してスクリュー2の上流部に送り込む。スクリュー2はスクリュー4に対して平行配置され、スクリュー2から送り込まれた現像剤Tを攪拌して供給ローラ8に送り込む。スクリュー2,4は、スパイラルスクリュー形状の部材であり、回転軸方向に現像剤Tを搬送させるとともに、回転軸のほぼ直角方向に現像剤Tを放出させる。
【0026】
供給ローラ8はスクリュー2から送り込まれた現像剤Tを第1磁気ローラ10に引き渡す。第1磁気ローラ10は、回転により供給ローラ8から汲み上げられた現像剤Tを第2磁気ローラ(現像ローラ)12に送り込む。第2磁気ローラ(現像ローラ)12は、静電潜像を表面に形成する感光体ドラム40に対向して配置され、第1磁気ローラ10によって供給された現像剤Tを感光体ドラム40表面上に付着させる。第1磁気ローラ10,第2磁気ローラ(現像ローラ)12は、中心軸周りに回転可能に保持されている。なお、規制ブレード14は第1磁気ローラ10の外周面に近接して、第1磁気ローラ10の表面に付着する現像剤Tの量を適切かつ均一にする。
【0027】
規制ブレード14の裏付近に滞留した余分な現像剤Tは、重力によって落下するとともに、供給ローラ8の第3磁極によって強制的に引き剥される。引き剥がされた現像剤Tは、スクリュー2の上流側に落下し、現像装置1内の現像剤Tと混合して循環する。このように、現像装置1は現像剤Tの循環において、汲み上げ機能と引き剥し機能を明確に分離させていることを特徴とする。
【0028】
(回転速度による調整)
そして、現像装置4は、供給ローラ8の回転速度を調整することによって、現像剤Tの汲み上げ量を増減させている。具体的には例えば図3に示すように、現像剤Tの劣化(現像駆動時間の経過)に伴って供給ローラ8の回転速度(線速)を加減速調整し、現像剤Tの汲み上げ量を増減させている。この場合、現像駆動時間が1000minを超えると、現像剤Tの劣化が生じるため、供給ローラ8の線速を速くして現像剤Tの汲み上げ量を増加させ、安定した画像を得ている。
【0029】
あるいは、図4に示すように、使用環境(絶対湿度)によって供給ローラ8の回転速度(線速)を加減速調整し、現像剤Tの汲み上げ量を増減させてもよい。この場合、絶対湿度が0〜30%および75〜100%の領域では、湿度が高くなるにつれて現像剤Tの流動性が低下するため、供給ローラ8の線速を遅くして現像剤Tの汲み上げ量を抑え、安定した画像を得ている。
【0030】
あるいは、図5に示すように、印字率によって供給ローラ8の回転速度(線速)を加減速調整し、現像剤Tの汲み上げ量を増減させてもよい。この場合、印字率が50%を超えると、現像剤Tの消費量が多くなるため、供給ローラ8の線速を速くして現像剤Tの汲み上げ量を増加させ、安定した画像を得ている。
【0031】
このように、現像剤Tの汲み上げ量に大きな影響を与える現像剤Tの劣化、使用環境、もしくは印字率のいずれか一つによって、供給ローラ8の回転速度を調整するだけで、現像剤Tの汲み上げ量を容易に増減させ、効率良く必要な量の現像剤Tを安定して汲み上げることができる。
【0032】
(磁極位置による調整)
また、現像装置4は、供給ローラ8の磁極位置を調整して、現像剤Tの汲み上げ量および引き剥し量を増減させてもよい。磁極位置の調整には、供給ローラ8をステッピングモータあるいはソレノイドを用いて駆動することにより行う。好ましくはステッピングモータによって回転角度を正確に制御する。具体的には例えば図6に示すように、現像剤Tの劣化(現像駆動時間の経過)に伴って供給ローラ8の磁極位置をずらし、現像剤Tの汲み上げ量を増減させている。この場合、現像駆動時間が1000minを超えると、現像剤Tの劣化が生じるため、供給ローラ8の磁極位置を供給ローラ8の回転方向上流側(マイナス側)に移動して現像剤Tの汲み上げ量を増加させ、安定した画像を得ている。
【0033】
なお、図6において、グラフの縦軸の供給ローラ磁極位置の基準「0度」は、供給ローラ8と第1磁気ローラ10の最近接位置から供給ローラ8回転方向下流側に5度の位置である。すなわち、供給ローラ8の300Gの第2磁極(N極)は供給ローラ8回転方向下流側に5度(+側に5度)の位置であり、第1磁気ローラ10の700GのS極は第1磁気ローラ10の回転方向下流側に5度(+側に5度)の位置である。以下、図7および図8のグラフにおいても同様である。
【0034】
また、図7に示すように、使用環境(絶対湿度)によって供給ローラ8の磁極位置をずらし、現像剤Tの汲み上げ量を増減させてもよい。この場合、絶対湿度が30〜75%の領域では供給ローラ8の磁極位置を初期設定の状態とし、絶対湿度が0〜30%および75〜100%の領域では、湿度が高くなるにつれて現像剤Tの流動性が低下するため、供給ローラ8の磁極位置を供給ローラ8の回転方向下流側(プラス側)に移動して現像剤Tの汲み上げ量を抑え、安定した画像を得ている。
【0035】
さらに、図8に示すように、印字率によって供給ローラ8の磁極位置をずらし、現像剤Tの汲み上げ量を増減させてもよい。この場合、印字率が50%を超えると、現像剤Tの消費量が多くなるため、供給ローラ8の回転方向上流側(マイナス側)に移動して現像剤Tの汲み上げ量を増加させ、安定した画像を得ている。
【0036】
このように、現像剤Tの汲み上げ量に大きな影響を与える現像剤Tの劣化、使用環境、もしくは印字率のいずれか一つによって、供給ローラ8の磁極位置を調整するだけで、現像剤Tの汲み上げ量を容易に増減させ、効率良く必要な量の現像剤Tを安定して汲み上げることができる。
【0037】
(画像形成装置)
また、前記現像装置1を備えた画像形成装置は、必要な量の現像剤Tを安定して汲み上げることができ、第1磁気ローラ10および第2磁気ローラ(現像ローラ)12上に安定した現像剤層を形成して、安定した画像を得ることができる。
【0038】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る現像装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】図1に示した現像装置の要部を示す概略構成図である。
【図3】現像駆動時間と供給ローラ線速との関係を示すグラフである。
【図4】絶対湿度と供給ローラ線速との関係を示すグラフである。
【図5】印字率と供給ローラ線速との関係を示すグラフである。
【図6】現像駆動時間と供給ローラ磁極位置との関係を示すグラフである。
【図7】絶対湿度と供給ローラ磁極位置との関係を示すグラフである。
【図8】印字率と供給ローラ磁極位置との関係を示すグラフである。
【図9】従来の現像装置を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 現像装置
2,4 スクリュー
8 供給ローラ
10 第1磁気ローラ
12 第2磁気ローラ(現像ローラ)
40 感光体ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を攪拌するためのスクリューと、
前記スクリューから現像剤を汲み上げるための供給ローラと、
前記供給ローラによって汲み上げられた現像剤を搬送するための磁気ローラとを備え、
前記供給ローラは、前記スクリューと対向する部位に第1磁極を設け、前記磁気ローラと対向する部位に第2磁極を設け、かつ、前記第2磁極の供給ローラの回転方向下流の部位に第3磁極を設け、
前記供給ローラの調整に基づいて、前記現像剤の汲み上げ量が増減自在となっていることを特徴とする、現像装置。
【請求項2】
前記供給ローラの回転速度を調整して、前記現像剤の汲み上げ量を増減させていることを特徴とする、請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像剤の劣化、使用環境、もしくは印字率のいずれか一つによって、前記供給ローラの回転速度を調整し、前記現像剤の汲み上げ量を増減させていることを特徴とする、請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記供給ローラの磁極位置を調整して、前記現像剤の汲み上げ量を増減させていることを特徴とする、請求項1に記載の現像装置。
【請求項5】
前記現像剤の劣化、使用環境、もしくは印字率のいずれか一つによって、前記供給ローラの磁極位置を調整し、前記現像剤の汲み上げ量を増減させていることを特徴とする、請求項4に記載の現像装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の現像装置を備えたことを特徴とする、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−258190(P2009−258190A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104205(P2008−104205)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】