現像装置および画像形成装置
【課題】現像剤担持体からの現像剤の剥離を容易に行えるようにして現像剤の回収を確実に行える構成を備えた現像装置を提供する。
【解決手段】現像剤担持体81の内部には、現像剤を穂立ちさせて搬送させる磁極を備えた回転可能な磁界発生手段82が配置され、前記磁界発生手段82は、前記現像剤担持体81の断面中心Pに対して前記像担持体1に対して接近する向きに自らの断面中心P’を偏心させて配置され、該偏心により前記磁界発生手段82における前記像担持体1と対向する側と反対側および前記現像剤担持体内部の間に存在する隙間空間Uには該磁界発生手段82の一部を覆うことができる磁気遮蔽部材85が配置されていることを特徴としている。
【解決手段】現像剤担持体81の内部には、現像剤を穂立ちさせて搬送させる磁極を備えた回転可能な磁界発生手段82が配置され、前記磁界発生手段82は、前記現像剤担持体81の断面中心Pに対して前記像担持体1に対して接近する向きに自らの断面中心P’を偏心させて配置され、該偏心により前記磁界発生手段82における前記像担持体1と対向する側と反対側および前記現像剤担持体内部の間に存在する隙間空間Uには該磁界発生手段82の一部を覆うことができる磁気遮蔽部材85が配置されていることを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置および画像形成装置に関し、特に、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤を使用対象とした現像機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタあるいはファクシミリ装置や印刷機などの画像形成装置においては、潜像担持体である感光体上に形成された静電潜像を現像装置により可視像処理し、可視像をシートなどに転写することにより記録出力を得ることができる。
【0003】
現像に用いられる現像剤には、磁性あるいは非磁性トナーのみの一成分系現像剤の他にトナーとキャリアとを混合した二成分系現像剤がある。
【0004】
二成分系現像剤は、トナーとこれを担持するキャリアとで構成され、攪拌混合時に生起される摩擦帯電作用によりトナーを帯電させて感光体上の静電潜像に対して静電吸着できる状態とされる。
【0005】
現像装置には、磁力により周面に現像剤を穂立ちさせて感光体上の静電潜像に向け現像剤を供給する現像剤担持体としての現像スリーブと、現像スリーブに対して撹拌混合した現像剤を供給するスクリューオーガ等の撹拌部材とを備えた構成が知られている。現像スリーブに担持された現像剤は、ドクターブレードなどの規制部材により担持量(層厚)を規定された上で感光体上の静電潜像に供給される。
【0006】
二成分系現像剤を用いる現像装置の構成には、図18に示す構成がある(例えば、特許文献1)。
【0007】
図18に示す構成では、現像剤担持体としての現像スリーブ5が配置されている位置の下方に現像剤供給用のオーガ401が配置され、水平方向において現像剤供給用オーガ401の軸線に平行する攪拌用のオーガ402が配置されている。供給用および攪拌用の各オーガ401,402は軸方向端部でこれらオーガが配置されている空間同士が連通している。
【0008】
図18に示す構成においては、各スクリューオーガが相反する方向に現像剤を移送することにより、現像剤を各オーガが配置されているスペース間で循環させる。これにより、供給用オーガ401から現像スリーブ5に対して現像剤の汲み上げと現像後の現像スリーブ5に担持されている現像剤の回収とを行うようになっている。
【0009】
上述した現像剤の供給および回収を行うための構成として、現像スリーブ5の内部には周方向に沿って、現像スリーブ5に対向して磁気ブラシを穂立ちさせる現像主極および現像スリーブ上で現像剤を移動される搬送磁極そして現像後のスリーブ周面から現像剤を剥離するための反撥磁界を形成可能な剥離磁極が設けられており、反撥磁極を設けることにより奇数極、具体的には7極の磁石が用いられている。
【0010】
反撥磁極により現像スリーブ5の周面から剥離されて回収される現像剤は、一点鎖線の矢印F1で示すように、一旦、搬送路401Pを通過して供給用オーガ401に回収されるが、再度、搬送磁極による汲み上げられて現像スリーブ5の周面に供給されることになる。これにより、現像剤は、同じ位置に存在する供給用の搬送路および回収用の搬送路間を循環しながらオーガの軸方向に搬送され、その過程で現像スリーブ側の磁極と多数回対向しながら移動する。現像剤は、磁極と対向した際に穂立ち状態とされ、磁極から離れると穂立ちが崩れて凝縮するという過程を繰り返すことによりキャリアとトナーとの摩擦接触が行われてトナーの摩擦帯電が行われる。
【0011】
穂立ち状態および穂立ちが崩れて凝縮することによる摩擦接触が繰り返される現像剤は、例えば、オーガの軸方向に搬送されることから、その方向での搬送過程においてトナーの消費量が多くなると搬送方向下流側でのトナーの濃度が低下する。
【0012】
例えば、画像面積が大きい画像を現像するような場合、オーガの軸方向でのトナーの消費は、供給される側で大量に消費されてしまう可能性が高く、搬送方向下流側では現像剤の含まれるトナー量が少なくなる。このため、現像スリーブの軸方向で一様なトナーの濃度を維持することができないことがある。トナーの濃度不足は画像品質の低下に繋がる。
【0013】
上述した不具合は、現像剤の供給搬送路と回収用搬送路とが共通して用いられることに原因がある。つまり、回収された現像剤はトナーが不足しており、このような現像剤を供給搬送路に再度搬送してしまうと、供給される現像剤内でのキャリアの含有比率が高くなってしまい、供給される現像剤中のキャリアとトナーとの比率が所定比率と異なることになる。
【0014】
そこで、図18に示した構成の一部を変更して、現像剤の供給搬送路と回収搬送路とを区別して供給搬送路内に回収された現像剤が混入しないようにした構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0015】
図19には、特許文献1に開示されている現像装置の要部が示されており、同図において、現像装置4のハウジング内には、仕切り壁403によって上下方向で仕切られて第1のオーガ401,第2のオーガ402をそれぞれ収容する攪拌室401P、402Pが設けられている。
【0016】
一方、特許文献1に開示されているように、オーガを収容する攪拌室を仕切り壁により仕切るようにした構成に関する別の例として、特許文献2に開示された構成がある。
【0017】
図20は、特許文献2に開示された構成を示す図であり、同図において、現像装置4のハウジング内には、現像スリーブ5に対して現像剤を供給するため供給用オーガ401および現像剤の攪拌用オーガ402に加えて現像領域を通過した現像スリーブ5上の現像剤を回収する回収用オーガ404が設けられ、供給用オーガ401が位置する供給搬送路401P’と回収用オーガ404が位置する回収用搬送路404Pとは仕切り壁405によって仕切られ、攪拌用オーガ402が位置する攪拌搬送路402P’と回収用搬送路404Pとは仕切り壁406によって仕切られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献1に開示されている構成では、回収された現像剤が攪拌用のオーガ402によって軸方向に搬送されてそのまま供給用のオーガ401に向け搬送されることから、新たなトナーが補給された場合でも攪拌用のオーガ402による攪拌が不十分となりがちであり、トナーの帯電不足による画像濃度の不均一や濃度低下を来す虞がある。特に、回収される現像剤のトナー濃度が低下しやすい高印字率の画像形成時には顕著となる。
【0019】
一方、特許文献2に開示されている構成では、現像スリーブから回収される現像剤が回収用搬送路404Pに搬送され、供給用搬送路401P’に混入することがなく、さらには、回収された現像剤がそのまま攪拌用搬送路402P’内に入り込むこともなく、攪拌されたうえで供給用搬送路401P’に向け搬送されることから、図18に示した構成で生じる不具合を解消することが期待できる。
【0020】
しかし、これら特許文献に開示されている構成に用いられる現像剤担持体である現像スリーブの構成には、次のような問題がある。
【0021】
各特許文献に開示されている現像スリーブは、内部に磁気ブラシ形成用、つまり現像剤を穂立ちさせる磁極を備えているが、その磁極数が、特許文献1においては、図示されているように5極とされ、そして特許文献2においては、図示されていないものの、現像部を通過した現像済みの現像剤を回収する回収スクリューに向け現像剤が移動することが記載されていることから、図18に示した場合あるいは特許文献1と同様に、5又は7極程度であることが予想できる。
【0022】
一方、特許文献1に開示されている構成においては、図18に示した場合と違って、供給搬送路と回収搬送路とが共通していないで独立した構成となっていることからして、現像剤は、供給・回収搬送路間での循環作用が得られない。
【0023】
このため、回収される現像剤は、上述した磁極を通過する回数が5〜7回程度しかない状態のままで回収されることになり、穂立ち・穂立ちの崩れを繰り返す際の摩擦接触がきわめて低い状態が得られてしまう。この結果、摩擦接触の機会が要因となる摩擦帯電が不十分となり、トナーの帯電に長い時間が必要となるという問題が生じる。
【0024】
特許文献2に開示されている構成では、攪拌搬送路が独立して設けられていることから、回収された現像剤を対象とした攪拌効率の向上が望めるが、現像剤交換後や長時間の放置時にはトナーの帯電量も失われがちであることから、キャリアへの付着力低下を生じて飛散しやすくなり、結果として、装置内汚染を招く虞がある。
【0025】
ところで、この種、現像装置においては、現像領域を通過した現像スリーブ5上に残存する現像剤が回収された後、新たな現像剤の供給を受けることで現像剤スリーブ5上に担持される現像剤の濃度を一定に維持することが必要とされる。
【0026】
しかし、現像領域を通過した現像スリーブ5上から現像剤の回収が良好に行えないと、現像スリーブに担持される現像剤濃度が変化し、所定濃度の画像が得られないという問題が生じる。つまり、現像スリーブ5上に残存したままの現像剤濃度はトナーの消費により濃度が低下しており、このまま現像処理に供されると、濃度低下を起こしたゴースト画像が得られるなどの不具合が生じる。
【0027】
本発明は、上記従来の現像装置における問題に鑑み、現像剤担持体からの現像剤の剥離を容易に行えるようにして現像剤の回収を確実に行える構成を備えた現像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
この目的を達成するため、本発明は次の構成よりなる。
(1)像担持体に形成されている静電潜像に対してトナーとキャリアとを含む二成分系現像剤を供給する現像剤担持体を備えた現像装置であって、
前記現像剤担持体の内部には、現像剤を穂立ちさせて搬送させる磁極を備えた回転可能な磁界発生手段が配置され、
前記磁界発生手段は、前記現像剤担持体の断面中心に対して前記像担持体に対して接近する向きに自らの断面中心を偏心させて配置され、
該偏心により前記磁界発生手段における前記像担持体と対向する側と反対側および前記現像剤担持体内部の間に存在する隙間空間には該磁界発生手段の一部を覆うことができる磁気遮蔽部材が配置されていることを特徴とする現像装置。
(2)前記磁界発生手段には、その回転方向に沿って偶数極の磁極が配置されていることを特徴とする(1)に記載の現像装置。
(3)前記磁気遮蔽部材は、前記磁界発生手段に設けられている磁極間の角度よりも大きい遮蔽角度を持たせて設けられていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の現像装置。
(4)前記磁気遮蔽部材は、前記磁界発生手段の回転方向に沿った端縁が該磁界発生手段に設けられている磁極と平行しない形態とされていることを特徴とする(1)乃至(3)の何れかに記載の現像装置。
(5)前記磁気遮蔽部材は、前記磁界発生手段の長手方向に沿って複数の磁極を配置して構成されていることを特徴とする(1)乃至(4)の何れかに記載の現像装置。
(6)前記磁気遮蔽部材に設けられている複数の磁極は、前記磁界発生手段に設けられている磁極からの磁力による該遮蔽部材の長手方向に沿った撓み振動を抑制することができる極性を設定されていることを特徴とする(5)に記載の現像装置。
(7)前記磁気遮蔽部材には、複数の磁極を有する磁性シートが貼り付けられて構成されていることを特徴とする(5)又は(6)に記載の現像装置。
(8)前記磁気遮蔽部材は、板状部材が用いられ、該板状部材は長手方向における厚を異ならせて構成されていることを特徴とする(1)乃至(4)の何れかに記載の現像装置。
(9)前記磁気遮蔽部材は、前記像担持体に偏る側と反対側御の磁界発生手段表面と前記現像剤担持体内面との間の隙間空間において該磁界発生手段よりも前記現像剤担持体内面側に近寄らせて配置されていることを特徴とする(1)乃至(8)の何れかに記載の現像装置。
(10)前記磁界発生手段は、前記現像剤担持体と同方向あるいは相対方向に回転可能であり、同方向に回転する場合には相対速度差が設定されて回転することを特徴とする(1)に記載の現像装置。
(11)(1)乃至(10)の何れかに記載の現像装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
(12)少なくとも前記現像装置および像担持体が纏めて収容されるプロセスカートリッジを備えたことを特徴とする(11)に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、現像剤担持体内で回転可能に設けられ、かつ、現像剤担持体の断面中心に対して潜像担持体に対し接近する向きに偏心させてある磁界発生手段を備え、その磁界発生手段の偏心により形成される現像剤担持体内での隙間空間に磁界発生手段の一部を覆うことができる磁気遮蔽部材が設けられているので、像剤担持体表面への磁力を及びにくくして現像剤の剥離を容易化することができる。特に、剥離のしやすさによる現像剤の回収を容易化するに際して、偏心により得られる隙間空間内に磁気遮蔽部材を設けるだけの簡単な構成で済むことにより装置の大型化や現像剤を掻き取る構造などを要することなく確実に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明実施例による現像装置が用いられる画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した画像形成装置に用いられる現像装置の構成及び作用を説明するための模式図である。
【図3】図2に示した現像装置の要部外観を示す斜視図である。
【図4】図2に示した現像装置内での現像剤の流れを説明するための模式図である。
【図5】図3において矢印Jで示す方向からみた断面を示す模式図である。
【図6】図2に示した現像装置内での現像剤の流れに関する別例を説明するための模式図である。
【図7】図2に示した現像装置におけるトナー補給部の構成を説明するための要部斜視図である。
【図8】図3に示した現像装置における一部の部材を取り除いた状態を示す要部斜視図である。
【図9】図2に示した現像装置における特徴部を説明するための側面視的な模式である。
【図10】図9に示した特徴部に用いられる現像剤担持体の構成を説明するための斜視図である。
【図11】図9に示した現像剤担持体とこれに内包される磁界発生手段との支持構造を説明するための腰部断面図である。
【図12】図9に示した特徴部による現像剤と磁界発生手段の磁極との通過回数に関する実験に結果を示す表図である。
【図13】図9に示した特徴部に用いられる磁気遮蔽部材の一構成を説明するための斜視図である。
【図14】図13に示した構成による不具合を説明するための磁気遮蔽部材と磁界発生手段との対向関係を示す作用図である。
【図15】図13に示した磁気遮蔽部材による不具合を解消した構成を説明するための図13相当の斜視図である。
【図16】図15に示した磁気遮蔽部材の要部変形例を示す図13相当の斜視図である。
【図17】図13に示した構成による生じる不具合を解消するための別の例を説明するための磁気遮蔽部材と磁気発生手段との対向関係を説明するための模式図である。
【図18】現像装置における現像剤供給機構の従来例を説明するための模式図である。
【図19】図18に示した従来例における不具合を解消するために従来知られている一構成を説明するための模式図である。
【図20】図19とは別の例を説明するための模式図である。
【図21】図13に示した磁気遮蔽部材を用いる参考例の構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面により本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による現像装置を用いる画像形成装置を示しており、同図に示す画像形成装置は、タンデム方式によるフルカラープリンタであるが、本発明は、これに限らず、複写機やファクシミリ装置などにも適用することができる。
【0032】
図1は、本実施形態に係るフルカラープリンタ(以下、便宜上、複写機という)500の概略構成図である。
複写機500は、プリンタ部100,これを搭載する給紙装置200,プリンタ部100の上に固定されるスキャナ300などを備えている。また、スキャナ300の上には原稿自動給送装置400が固定されている。
【0033】
プリンタ部100は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の画像を形成するための4組のプロセスカートリッジ18Y,M,C,Kからなる画像形成ユニット20を備えている。
【0034】
各符号の数字の後に付されたY,M,C,Kは、イエロー、シアン、マゼンダ、ブラック用の部材であることを示している(以下同様)。プロセスカートリッジ18Y,M,C,Kの他には、光書込ユニット21、中間転写ユニット17、二次転写装置22、レジストローラ対49、ベルト定着方式の定着装置25などが配設されている。
【0035】
光書込ユニット21は、図示しない光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラーなどを有し、画像データに基づいて後述の感光体の表面にレーザ光を照射する。
プロセスカートリッジ18Y,M,C,Kは、ドラム状の感光体1、帯電器、現像装置4、ドラムクリーニング装置、除電器などを有している。
【0036】
以下、イエロー用のプロセスカートリッジ18について説明する。
帯電手段たる帯電器によって、感光体1Yの表面は一様帯電される。
帯電処理が施された感光体1Yの表面には、光書込ユニット21によって変調及び偏向されたレーザ光が照射される。これにより、照射部(露光部)の感光体1Yの表面の電位が減衰する。この表面の電位の減衰により、感光体1Y表面にY用の静電潜像が形成される。形成されたY用の静電潜像は現像手段たる現像装置4Yによって現像されてYトナー像となる。
【0037】
Y用の感光体1Y上に形成されたYトナー像は、後述の中間転写ベルト110に一次転写される。一次転写後の感光体1Yの表面は、ドラムクリーニング装置によって転写残トナーがクリーニングされる。
【0038】
Y用のプロセスカートリッジ18Yにおいて、ドラムクリーニング装置によってクリーニングされた感光体1Yは、除電器によって除電される。そして、帯電器によって一様帯電せしめられて、初期状態に戻る。以上のような一連のプロセスは、他のプロセスカートリッジ18M,C,Kについても同様である。
【0039】
次に、中間転写ユニット17について説明する。
中間転写ユニット17は、中間転写ベルト110やベルトクリーニング装置90などを有している。また、張架ローラ14、駆動ローラ15、二次転写バックアップローラ16、4つの一次転写バイアスローラ62Y,M,C,Kなども有している。
中間転写ベルト110は、張架ローラ14を含む複数のローラによってテンション張架されている。そして、図示しないベルト駆動モータによって駆動される駆動ローラ15の回転によって図中時計回りに無端移動せしめられる。
4つの一次転写バイアスローラ62Y,M,C,Kは、それぞれ中間転写ベルト110の内周面側に接触するように配設され、図示しない電源から一次転写バイアスの印加を受ける。また、中間転写ベルト110をその内周面側から感光体1Y,M,C,Kに向けて押圧してそれぞれ一次転写ニップを形成する。各一次転写ニップには、一次転写バイアスの影響により、感光体1と一次転写バイアスローラ62との間に一次転写電界が形成される。
Y用の感光体1Y上に形成された上述のYトナー像は、この一次転写電界やニップ圧の影響によって中間転写ベルト110上に一次転写される。このYトナー像の上には、M,C,K用の感光体1M,C,K上に形成されたM,C,Kトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト110上には多重トナー像たる4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
中間転写ベルト110上に重ね合わせ転写された4色トナー像は、後述の二次転写ニップで図示しない記録体たる転写紙に二次転写される。二次転写ニップ通過後の中間転写ベルト110の表面に残留する転写残トナーは、図中左側の駆動ローラ15との間にベルトを挟み込むベルトクリーニング装置90によってクリーニングされる。
【0040】
次に、二次転写装置22について説明する。
中間転写ユニット17の図中下方には、2本の張架ローラ23によって紙搬送ベルト24を張架している二次転写装置22が配設されている。紙搬送ベルト24は、少なくとも何れか一方の張架ローラ23の回転駆動に伴って、図中反時計回りに無端移動せしめられる。2本の張架ローラ23のうち、図中右側に配設された一方のローラは、中間転写ユニット17の二次転写バックアップローラ16との間に、中間転写ベルト110及び紙搬送ベルト24を挟み込んでいる。この挟み込みにより、中間転写ユニット17の中間転写ベルト110と、二次転写装置22の紙搬送ベルト24とが接触する二次転写ニップが形成されている。そして、この一方の張架ローラ23には、トナーと逆極性の二次転写バイアスが図示しない電源によって印加される。
この二次転写バイアスの印加により、二次転写ニップには中間転写ユニット17の中間転写ベルト110上の4色トナー像をベルト側からこの一方の張架ローラ23側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。後述のレジストローラ対49によって中間転写ベルト110上の4色トナー像に同期するように二次転写ニップに送り込まれた転写紙には、この二次転写電界やニップ圧の影響を受けた4色トナー像が二次転写せしめられる。なお、このように一方の張架ローラ23に二次転写バイアスを印加する二次転写方式に代えて、転写紙を非接触でチャージさせるチャージャを設けてもよい。
【0041】
複写機500本体の下部に設けられた給紙装置200には、内部に複数の転写紙を紙束の状態で複数枚重ねて収容可能な給紙カセット44が、鉛直方向に複数重なるように配設されている。それぞれの給紙カセット44は、紙束の一番上の転写紙に給紙ローラ42を押し当てている。そして、給紙ローラ42を回転させることにより、一番上の転写紙を給紙路48に向けて送り出される。
【0042】
給紙カセット44から送り出された転写紙を受け入れる給紙路48は、複数の搬送ローラ対47と、給紙路46内の末端付近に設けられたレジストローラ対49とを有している。そして、転写紙をレジストローラ対49に向けて搬送する。レジストローラ対49に向けて搬送された転写紙は、レジストローラ対49のローラ間に挟まれる。一方、中間転写ユニット17において、中間転写ベルト110上に形成された4色トナー像は、ベルトの無端移動に伴って二次転写ニップに進入する。レジストローラ対49は、ローラ間に挟み込んだ転写紙を二次転写ニップにて4色トナー像に密着させ得るタイミングで送り出す。
【0043】
これにより、二次転写ニップでは、中間転写ベルト110上の4色トナー像が転写紙に密着する。そして、転写紙上に二次転写されて、白色の転写紙上でフルカラー画像となる。このようにしてフルカラー画像が形成された転写紙は、紙搬送ベルト24の無端移動に伴って二次転写ニップを出た後、紙搬送ベルト24上から定着装置25に送られる。
【0044】
定着装置25は、定着ベルト26を2本のローラによって張架しながら無端移動せしめるベルトユニットと、このベルトユニットの一方のローラに向けて押圧される加圧ローラ27とを備えている。これら定着ベルト26と加圧ローラ27とは互いに当接して定着ニップを形成しており、紙搬送ベルト24から受け取った転写紙をここに挟み込む。ベルトユニットにおける2本のローラのうち、加圧ローラ27から押圧される方のローラは、内部に図示しない熱源を有しており、これの発熱によって定着ベルト26を加熱する。加熱された定着ベルト26は、定着ニップに挟み込まれた転写紙を加熱する。この加熱やニップ圧の影響により、フルカラー画像が転写紙に定着される。
【0045】
定着装置25内で定着処理が施された転写紙は、プリンタ筐体の図中左側板の外側に設けたスタック部57上にスタックされるか、もう一方の面にもトナー像を形成するために上述の二次転写ニップに戻されるかの何れかの搬送形態が選択される。
【0046】
図示しない原稿のコピーがとられる際には、例えばシート原稿の束が原稿自動搬送装置400の原稿台30上セットされる。但し、その原稿が本状に閉じられている片綴じ原稿である場合には、コンタクトガラス32上にセットされる。このセットに先立ち、複写機本体に対して原稿自動搬送装置400が開かれ、スキャナ300のコンタクトガラス32が露出される。この後、閉じられた原稿自動搬送装置400によって片綴じ原稿が押さえられる。
【0047】
このようにして原稿がセットされた後、図示しないコピースタートスイッチが押下されると、スキャナ300による原稿読取動作がスタートする。但し、原稿自動搬送装置400にシート原稿がセットされた場合には、この原稿読取動作に先立って、原稿自動搬送装置400がシート原稿をコンタクトガラス32まで自動移動させる。原稿読取動作では、まず、第1走行体33と第2走行体34とがともに走行を開始し、第1走行体33に設けられた光源から光が発射される。そして、原稿面からの反射光が第2走行体34内に設けられたミラーによって反射せしめられ、結像レンズ35を通過した後、読取センサ36に入射される。読取センサ36は、入射光に基づいて画像情報を構築する。
【0048】
このような原稿読取動作と並行して、各プロセスカートリッジ18Y,M,C,K内の各機器や、中間転写ユニット17、二次転写装置22、定着装置25がそれぞれ駆動を開始する。そして、読取センサ36によって構築された画像情報に基づいて、光書込ユニット21が駆動制御されて、各感光体1Y,M,C,K上に、Y,M,C,Kトナー像が形成される。これらトナー像は、中間転写ベルト110上に重ね合わせ転写された4色トナー像となる。
【0049】
また、原稿読取動作の開始とほぼ同時に、給紙装置200内では給紙動作が開始される。この給紙動作では、給紙ローラ42の1つが選択回転せしめられ、ペーパーバンク43内に多段に収容される給紙カセット44の1つから転写紙が送り出される。送り出された転写紙は、分離ローラ45で1枚ずつ分離されて反転給紙路46に進入した後、搬送ローラ対47によって二次転写ニップに向けて搬送される。このような給紙カセット44からの給紙に代えて、手差しトレイ51からの給紙が行われる場合もある。この場合、手差し給紙ローラ50が選択回転せしめられて手差しトレイ51上の転写紙を送り出した後、分離ローラ52が転写紙を1枚ずつ分離してプリンタ部100の手差し給紙路53に給紙する。
【0050】
複写機500は、2色以上のトナーからなる多色画像を形成する場合には、中間転写ベルト110をその上部張架面がほぼ水平になる姿勢で張架して、上部張架面に全ての感光体1Y,M,C,Kを接触させる。これに対し、Kトナーのみからなるモノクロ画像を形成する場合には、図示しない機構により、中間転写ベルト110を図中左下に傾けるような姿勢にして、その上部張架面をY,M,C用の感光体1Y,M,Cから離間させる。そして、4つの感光体1Y,M,C,Kのうち、K用の感光体1Kだけを図中反時計回りに回転させて、Kトナー像だけを作像する。この際、Y,M,Cについては、感光体1だけでなく、現像装置4も駆動を停止させて、感光体1や現像装置4の各部材及び現像装置4内の現像剤の不要な消耗を防止する。
【0051】
複写機500は、複写機500内の各機器の制御を司るCPU等から構成される図示しない制御部と、液晶ディスプレイや各種キーボタン等などから構成される図示しない操作表示部とを備えている。操作者は、この操作表示部に対するキー入力操作により、制御部に対して命令を送ることで、転写紙の片面だけに画像を形成するモードである片面プリントモードについて、3つのモードの中から1つを選択することができる。この3つの片面プリントモードとは、ダイレクト排出モードと、反転排出モードと、反転デカール排出モードとからなる。
【0052】
図2は、4つプロセスカートリッジ18Y,M,C,Kにそれぞれ装備されている現像装置4及び感光体1を示す拡大構成図である。
【0053】
4つのプロセスカートリッジ18Y,M,C,Kは、それぞれ扱うトナーの色が異なる点以外はほぼ同様の構成になっているので、同図では「4」に付すY,M,C,Kという添字を省略している。
【0054】
図2に示すように感光体1は図中矢印G方向に回転しながら、その表面を不図示の帯電装置により帯電される。帯電された感光体1の表面は不図示の露光装置より照射されたレーザ光により静電潜像を形成された潜像に現像装置4からトナーを供給され、トナー像を形成する。
【0055】
現像装置4は、図中矢印I方向に現像剤を搬送しながら感光体1の表面の潜像にトナーを供給し、現像する現像剤担持体としての現像ローラ5を有している。
【0056】
現像ローラ5は回転可能な現像スリーブ81を備え、複数の磁極からなり図中矢印J方向に回転可能な磁気発生手段としての磁石ローラ82を内包している。現像ローラ5は本発明の特徴部であり詳細は後述する。
【0057】
また、現像ローラ5に現像剤を供給しながら現像ローラ5の軸線方向に沿って図2を示す紙面の手前側(以下、便宜上、図中手前側あるいは図2中手前側と称する場合もある)に向けて現像剤を搬送する供給搬送部材としての供給スクリュー8を有している。
【0058】
現像ローラ5の供給スクリュー8との対向部から現像剤搬送方向下流側には、現像ローラ5に供給された現像剤を現像に適した厚さに規制する現像剤規制手段としてのドクタブレード12を備えている。
【0059】
現像ローラ5の感光体1Yとの対向部である現像領域よりも現像剤搬送方向下流側では、現像領域を通過し、現像ローラ5の表面から離脱した現像済みの現像剤を回収する回収搬送路7が現像ローラ5と対向する。
【0060】
回収搬送路7は、回収した回収現像剤を現像ローラ5の軸線方向に沿って供給スクリュー8と同方向に搬送する回収搬送部材として、軸線方向に平行に配置された螺旋状の回収スクリュー6を備えている。供給スクリュー8を備えた供給搬送路9は現像ローラ5の横方向に、そして回収スクリュー6を備えた回収搬送路7は現像ローラ5の下方に並設されている。
【0061】
現像装置4は、供給搬送路9の下方で回収搬送路7に並列して攪拌搬送路10を設けている。
【0062】
攪拌搬送路10は、現像ローラ5の軸線方向に沿って現像剤を攪拌しながら供給スクリュー8とは逆方向である、図2を示す紙面の奥側(以下、便宜上、図中奥側と称する場合もある)に向けて搬送する攪拌搬送部材として、軸線方向に平行に配置された、螺旋状の攪拌スクリュー11を備えている。
【0063】
供給搬送路9と攪拌搬送路10とは仕切り壁としての第一仕切り壁133によって仕切られている。第一仕切り壁133の供給搬送路9と攪拌搬送路10とは、図中手前側と奥側との両端が開口部となっており、供給搬送路9と攪拌搬送路10とが連通している。
【0064】
なお、供給搬送路9と回収搬送路7との間も第一仕切り壁133によって仕切られているが、第一仕切り壁133における供給搬送路9と回収搬送路7とを仕切る箇所には開口部が設けられていない。
【0065】
また、攪拌搬送路10と回収搬送路7との2つの現像剤搬送路は仕切り部材としての第二仕切り壁134によって仕切られている。第二仕切り壁134は、図中手前側が開口部となっており、攪拌搬送路10と回収搬送路7とが連通している。
【0066】
現像剤搬送部材である供給スクリュー8、回収スクリュー6及び攪拌スクリュー11は、樹脂もしくは金属のスクリューからなっており各スクリュー径は全てφ22(mm)でスクリューピッチは供給スクリューが50(mm)の2条巻き、回収スクリュー6及び攪拌スクリュー11が25(mm)の1条巻き、回転数は全て約600(rpm)に設定されている。
【0067】
現像ローラ5上に担持された現像剤は、ステンレスからなるドクタブレード12によって薄層化されたうえで感光体1との対向部である現像領域まで搬送されて現像が行われる。
【0068】
現像ローラ5の直径はφ25(mm)、ドクタブレード12及び感光体1とのギャップは0.3(mm)程度となっている。
【0069】
現像後の現像剤は回収搬送路7にて回収が行われ、図2中手前側に搬送され、非画像領域部に設けられた第二仕切り壁134の開口部で、攪拌搬送路10へ現像剤が移送される。なお、攪拌搬送路10における現像剤搬送方向上流側の第二仕切り壁134の開口部の付近で攪拌搬送路10の上側には、図7に示すように、後述するトナー補給口95から攪拌搬送路10にトナーが供給される。
【0070】
次に、3つの現像剤搬送路内での現像剤の循環について説明する。
図3は現像剤搬送路内の現像剤の流れを説明する現像装置4の斜視断面図である。図中の各矢印は現像剤の移動方向を示している。
【0071】
また、図4は、現像装置4内の現像剤の流れの模式図であり、図3と同様、図中の各矢印は現像剤の移動方向を示している。
【0072】
攪拌搬送路10から現像剤の供給を受けた供給搬送路9では、現像剤が移動しながら現像ローラ5に接触して供給される。
【0073】
そして、現像ローラ5に供給されずに供給搬送路9の搬送方向下流端まで移動した余剰現像剤は第一仕切り壁133の余剰開口部92より攪拌搬送路10に供給される(図4中矢印E)。
【0074】
一方、現像ローラ5に供給された現像剤は現像領域で現像に用いられた後、現像ローラ5から分離・離脱して、回収搬送路7に受け渡される。現像ローラ5から回収搬送路7に受け渡され、回収スクリュー6によって回収搬送路7の搬送方向下流端まで搬送された回収現像剤は第二仕切り壁134の回収開口部93より攪拌搬送路10に供給される(図4中矢印F)。
【0075】
そして、攪拌搬送路10では、供給搬送路9から供給された余剰現像剤と回収搬送路7に回収された回収現像剤と後述するトナー補給口95(図7参照)から補給されたトナーとが攪拌され、これら攪拌された現像剤は、攪拌スクリュー11の搬送方向下流側で、かつ、供給スクリュー8の搬送方向上流側に搬送され、第一仕切り壁133の供給開口部91より供給搬送路9に供給される(図4中矢印D)。
【0076】
なお、攪拌搬送路10の下方には、透磁率センサからなるトナー濃度センサ13(図2参照)が設けられ、センサ出力により不図示のトナー補給制御装置を作動し、不図示のトナー収容部からトナー補給を行っている。
【0077】
図4に示す現像装置4では、供給搬送路9と回収搬送路7とを備え、現像剤の供給と回収とを異なる現像剤搬送路で行うので、現像済みの現像剤が供給搬送路9に混入することがない。このため、供給搬送路9の搬送方向下流側ほど現像ローラ5に供給される現像剤のトナー濃度が低下することを抑制することができる。また、回収搬送路7と攪拌搬送路10とを備え、現像剤の回収と攪拌とを異なる現像剤搬送路で行うので、現像済みの現像剤が攪拌の途中に落ちることがない。これにより、十分に攪拌がなされた現像剤が供給搬送路9に供給されるため、供給搬送路9に供給される現像剤が攪拌不足となることを抑制することができる。このように、供給搬送路9内の現像剤のトナー濃度が低下することを抑制し、供給搬送路9内の現像剤が攪拌不足となることを抑制することができるので現像時の画像濃度を一定にすることができる。
【0078】
なお、図4に示すように、現像装置4の下部から上部への現像剤の移動は矢印Dのみである。矢印Dで示す現像剤の移動は、攪拌スクリュー11の回転で攪拌搬送路10の下流側に現像剤を押し込むことによって、現像剤を盛り上がらせて供給搬送路9に現像剤を供給するものである。
【0079】
このような現像剤の移動は、現像剤に対してストレスを与えることになり、現像剤の寿命低下の一因となる。
【0080】
このように、現像剤を下方から上方に持ち上げる際に現像剤にストレスがかかり現像剤中のキャリアの膜削れやトナーのスペント化がその個所で発生し、それに伴い画像品質の安定性が保たれなくなってしまう。
【0081】
よって、矢印Dで示す現像剤の移動における現像剤のストレスを軽減することで現像剤の長寿命化を図ることができる。現像剤の長寿命化を図ることにより、現像剤の劣化を抑制して常に画像濃度ムラの無い画像品質の安定した現像装置を提供することができる。
【0082】
本実施形態の現像装置4では、図2に示すように、供給搬送路9を攪拌搬送路10の斜め上方になるように配置している。斜め上方に配置することにより、供給搬送路9を攪拌搬送路10の垂直上方に設け現像剤を持ち上げるものに比べて、矢印Dで示す現像剤の移動における現像剤のストレスを軽減することができる。
【0083】
さらに、現像装置4では、供給搬送路9と攪拌搬送路10とを斜めに配置することで、図2に示すように、攪拌搬送路10の上部壁面が供給搬送路9の下部壁面よりも高い位置となるように配置している。換言すれば、攪拌搬送路10を構成する空間の一部が上下方向において供給搬送路9を構成する空間の一部に進出している。
【0084】
供給搬送路9を攪拌搬送路10に対して垂直上方に持ち上げることは、重力に逆らって現像剤を攪拌スクリュー11の圧力によって持ち上げるので現像剤にストレスがかかる。
【0085】
一方、攪拌搬送路10の上部壁面が供給搬送路9の下部壁面よりも高い位置となるように配置することで、攪拌搬送路10の最高点に存在する現像剤が供給搬送路9の最下点に向けて重力に逆らわず流れ込むことができるので、現像剤にかかるストレスを低減することができる。
【0086】
なお、図5に示すように、攪拌搬送路10の現像剤搬送路下流側の、攪拌搬送路10と供給搬送路9とが連通している部分の攪拌スクリュー11の軸にフィン部材を設けても良い。このフィン部材は攪拌スクリュー11の軸方向に平行な辺と、攪拌スクリューの軸方向に直交する辺とから構成される板状の部材である。このフィン部材で現像剤を掻き上げることにより、攪拌搬送路10から供給搬送路9に対して、より効率的な現像剤の受渡しを行うことができる。
【0087】
また、現像装置4では、現像ローラ5と供給搬送路9との中心間距離が、現像ローラ5と攪拌搬送路10との中心間距離よりも短くなるように、供給搬送路9と攪拌搬送路10とを配置している。これにより供給搬送路9から現像ローラ5に現像剤を無理なく供給することができ、装置の小型化を図ることもできる。
【0088】
また、攪拌スクリュー11は、図2中の手前側から見て時計回り方向(図中矢印C方向)に回転しており、現像剤は攪拌スクリュー11の形状に沿って現像剤を持ち上げて供給搬送路9に移送させている。これにより、現像剤を効率良く持ち上げることが可能となり現像剤にかかるストレスもより低減することができる。
【0089】
図5は、現像装置4の供給スクリュー8の回転中心における断面を図3中の矢印J方向から見た断面説明図である。図中Hは、現像剤担持体である現像ローラ5が、潜像担持体である感光体1にトナーを供給する現像領域を示している。この現像領域Hの現像ローラ5の回転軸の軸線方向の幅が現像領域幅αである。
【0090】
図5に示すように、現像装置4は攪拌搬送路10から供給搬送路9に現像剤を持ち上げる箇所である供給開口部91と、供給搬送路9から攪拌搬送路10に現像剤を落下させる余剰開口部92とがともに現像領域幅α内に設けられている。
【0091】
図6は、図4とは異なる構成の現像装置4内の現像剤の流れの模式図である。
図6に示す現像装置4は、供給開口部91と余剰開口部92とを現像領域幅αの外側に設けている。供給開口部91を現像領域幅αの外側に設けているため、供給搬送路9の搬送方向上流側は現像ローラ5よりも供給搬送路上流側領域β分長くなっている。また、余剰開口部92を現像領域幅αの外側に設けているため、供給搬送路9の搬送方向下流側は現像ローラ5よりも供給搬送路下流側領域γ分長くなっている。
【0092】
一方、図4に示す構成の現像装置4では、供給開口部91を現像領域幅α内に設けているため、供給搬送路9の搬送方向上流側は図6の現像装置4よりも供給搬送路上流側領域β分短くすることができる。また、余剰開口部92を現像領域幅α内に設けているため、供給搬送路9の搬送方向下流側は図6の現像装置4よりも供給搬送路下流側領域γ分短くすることができる。
【0093】
このように、図4の現像装置4は供給開口部91と余剰開口部92とを現像領域幅α内に設けているため、図6に示す現像装置4に比べて、現像装置4の上部の省スペース化を図ることができる。
【0094】
次に、現像装置4の供給搬送路9、攪拌搬送路10及び回収搬送路7からなる現像剤搬送路へのトナーを補給する位置について説明する。図7は、現像装置4の外観斜視図である。
【0095】
図7に示すように、トナーを補給するトナー補給口95は、攪拌スクリュー11を備える攪拌搬送路10の搬送方向上流端部の上方に設けてられている。このトナー補給口95は現像ローラ5の幅方向端部よりも外側に設けてあるので、現像領域幅αよりも外側となっている。
【0096】
トナー補給口95を設けた箇所は供給搬送路9の搬送方向の延長線上であり、図6における供給搬送路下流側領域γの空いたスペースに該当する。余剰開口部92を現像領域幅α内に設けることで空いたスペースにトナー補給口95を設けることにより、現像装置4の小型化を図ることができる。
【0097】
また、トナー補給口95としては、攪拌搬送路10の搬送方向上流端部の上方に限らず、回収搬送路7の下流端部の上方に設けても良い。
【0098】
さらに、回収搬送路7から攪拌搬送路10へ現像剤の受渡しを行う箇所である回収開口部93(図4参照)の真上にトナー補給口95を設けるようにしても良い。回収開口部93の真上のスペースも余剰開口部92を現像領域幅α内に設けることで空いたスペースであるので、この位置にトナー補給口95を設けることにより、現像装置4の小型化を図ることができる。さらに、受渡し部である回収開口部93では現像剤が混ざりやすいため、この位置で補給を行うことによってより効率よく現像剤の攪拌を行うことができる。
【0099】
図4を用いて説明した現像装置4においては、上述したように、攪拌搬送路10の搬送方向下流端から供給搬送路9の搬送方向上流端に現像剤を受け渡す供給開口部91と、供給搬送路9の下流端から攪拌搬送路10の搬送方向上流端に現像剤を受け渡す余剰開口部92とを現像領域幅α内に設けているため、従来の現像装置4に比べて、現像装置4の上部の省スペース化を図ることが出来、現像装置4全体の省スペース化を図ることができる。
【0100】
また、余剰開口部92を現像領域幅α内に設けることで空いたスペースにトナー補給口95を設けることにより、現像装置4の小型化を図ることができる。
【0101】
また、回収搬送路7から攪拌搬送路10への現像剤の受渡し部である回収開口部93の上方からトナー補給を行うことにより効率よく現像剤の攪拌を行うことができる。
【0102】
また、画像形成装置としての複写機のプリンタ部100の現像手段として、現像装置4を備えることにより、装置全体の省スペース化を図ることができる。
【0103】
現像剤補給手段である不図示のトナー補給制御装置は、不図示のトナー収容部内のトナーをトナー補給口95から現像装置4に補給する。本実施形態の現像装置4では、現像装置4のトナー補給口95からトナーとキャリアとを含む現像剤が補給される。以降、現像装置4に補給されるトナーとキャリアとが混合された現像剤をプレミックストナーと称する。このような補給現像剤に関しては、例えば、本出願人の先願である特開2008−203814号公報等に開示されている。
【0104】
図8は、現像装置4から、排出搬送部材である排出スクリュー2a、攪拌スクリュー11、回収スクリュー6、及び、ドクタブレード12を取り外した状態の手前側端部近傍の斜視説明図である。
【0105】
本実施形態の現像装置4では、供給搬送路9の搬送方向下流端に到達した余剰現像剤を供給搬送路9の搬送方向上流端に搬送する循環搬送路は攪拌搬送路10である。また、循環搬送路である攪拌搬送路10内の現像剤に対して搬送力を付与する循環搬送部材は攪拌スクリュー11である。さらに、供給搬送路9の搬送方向下流端近傍に設けられ、通過した現像剤が循環搬送路である攪拌搬送路10に受け渡される循環開口部は余剰開口部92である。また、現像装置4は、通過した現像剤が現像装置4の装置外に排出される現像剤排出手段としての現像剤排出口94を供給搬送路9に備える。現像剤排出口94を通過した現像剤は排出現像剤として排出搬送路2に受け渡され、排出スクリュー2aが回転することによって供給搬送路9の搬送方向(図2及び図8中の手前側に向かう方向)とは逆方向(図2及び図8中の奥側に向かう方向)に搬送される。
【0106】
排出搬送路2は、供給搬送路9の搬送方向下流側で排出仕切り壁135を挟んで供給搬送路9と隣り合うように配置され、現像剤排出口94は供給搬送路9と排出搬送路2とを連通するように排出仕切り壁135に設けられた開口である。
【0107】
また、現像装置4は、供給搬送路9の搬送方向下流端近傍に到達し、循環開口部である余剰開口部92に入らなかった現像剤を余剰開口部92の近傍で滞留させる現像剤滞留手段としての供給下流端壁面80(図4,6参照)を備えている。さらに、図4,6において、排出開口部である現像剤排出口94は、余剰開口部92よりも上方で、且つ、供給下流端壁面80によって滞留した滞留現像剤のうち、現像剤排出口94の位置に達した現像剤を通過させるように設けられている。言い換えると、供給搬送路9の搬送方向下流端近傍に到達した現像剤で、余剰開口部92に入ることができず、余剰開口部92から溢れ出た余剰現像剤が供給下流端壁面80によって塞き止められ滞留現像剤となる。そして、この滞留現像剤の嵩が増加したときに、余剰開口部92よりも上方に設けられた現像剤排出口94に到達した現像剤が現像剤排出口94を通って排出搬送路2に排出される。
【0108】
次に、上述した構成を対象として本実施形態の特徴部である現像ローラ5の要部にについて図9において説明する。
【0109】
現像ローラ5は、現像剤を担持する円筒状の現像スリーブ81と現像スリーブ81に内包され磁気力により現像剤を吸着する磁界発生手段としての磁石ローラ82からなる。
【0110】
現像スリーブ81はアルミ、オーステナイト系ステンレス、マグネシウム等の非磁性かつ導電材料からなる。
【0111】
表面は平滑でも構わないが高速機では現像剤のスリップを抑制するために下記の粗し処理・加工を施しても良い。
【0112】
(A)V溝またはU溝等の溝押し出し加工・各種凹形状の機械加工またはレーザ加工またはエッジング加工
(B)ブラスト処理
(C)金属またはセラミック等の溶射処理
磁石ローラ82は現像剤の搬送方向Pとは反対の矢印J方向に回転可能に設けられており、偶数個の磁石83を等間隔に配置し(図9に示す実施形態の構成では10個の磁石を配置)、その極性は隣り合う磁石間で引き合うように互いに反対向きとする。
【0113】
本実施形態では、磁石ローラ82と現像スリーブ81との駆動関係として、同方向および相対方向の何れかの回転方向が選択できるようになっており、その回転関係は、現像スリーブ81の表面に担持される現像剤と磁石ローラ82側の磁石83との対向回数が多くなることを条件として設定されるようになっている。
【0114】
上述した駆動関係の設定による得られる、磁石ローラ82の磁石に対する現像剤の対向回数の増加によって、現像剤が磁極と対向したときに穂立ちが形成され、磁極から離れた際に穂立ちが崩されるという現象を繰り返す回数が増加し、これによるトナーとキャリアと摩擦接触機会の増加によりトナーの帯電特性を向上させることができる。
【0115】
この場合の対向回数の増加は、上述したように、磁石ローラ83と現像スリーブ81との回転方向の設定や速度差の設定などによって得られる。つまり、両者が同じ方向に回転する場合には、両者間に速度差を設定することで磁石83に対する現像剤の対向回数を増加させることができ、また、速度差を設定しないで相反する方向とした場合も同様に磁石83に対する現像剤の対向回数を増加させることができる。
【0116】
このような回転方向あるいは速度差による実験結果については、図12において説明する。
【0117】
上述した磁石83に関しては、従来の廉価なフェライト磁石が使用可能であるが、小型化や高速化のためにはより強力なサマリウムコバルト磁石やネオジウム磁石等の希土類磁石の使用も可能である。磁石83は磁石ホルダ84に接着により支持し、その外周を図示しない熱収縮チューブ等で保護しても良い。
【0118】
磁石ホルダ84は磁性材料とすると磁石83の磁気力を若干向上可能である。但しコスト高であり一般に鉄を主成分とする磁性材料は高比重のため高速回転時は慣性モーメントが増大し駆動部の耐久性に問題が生じる場合がある。そのため磁石83の磁気力は若干低くなるが、非磁性かつ軽比重のアルミニウムやマグネシウムを材料としても良い。
【0119】
図9において、本実施形態における磁石ローラ82の回転中心P’は現像スリーブ81の回転中心Pより距離(T)だけ離れた位置に偏心させて位置決めされている。
【0120】
偏心の方向は、現像ローラ5の表面に担持された現像剤が感光体1に移行する前の位置で現像ローラ81の内面に最も接近することができる向きに設定され、上記符号Tで示した距離に相当する偏心量は、現像領域においてキャリアが感光体1に移行するのを磁極からの磁力によって抑制することができる量とされている。これにより、感光体1に移行する現像剤は、感光体との接触に際して穂立ちを確保された状態で接触できると共に、接近した磁極からの磁力によりキャリアの移行が阻止されてトナーのみを感光体の潜像に供給するように移動することになる。
【0121】
一方、偏心方向と反対側では磁気力を低く抑えることができる。このため、現像スリーブ5表面に担持されている現像剤の剥離を容易にすることができる。
【0122】
このような偏心構造を設けるだけで、現像剤の剥離が外部からの機械的な外力を用いることなく容易に行えることになる。
【0123】
また、磁石ローラ82を偏心させることにより現像スリーブ81と磁石ローラ82の間には隙間空間Uが構成され、この空間Uには、磁気遮蔽部材に相当する磁気シールド板85が配置されている。
【0124】
磁気シールド板85は比透磁率が100〜100000程度の強磁性体でかつ保持力が100以下の軟磁性体が好適であり、鉄、ケイ素鋼、パーマロイ、センダスト、フェライト、アモルファス等の材質が選択可能である。更には、ポリカーボネート、ABS、ポリスチレン、ナイロン等の樹脂材料に前記軟磁性体を分散し溶解・成形した材質も使用可能である。
【0125】
磁気シールド板85はその磁気特性から磁石ローラ82からの吸引力に晒される。後述するように両端2箇所の支持のため吸引力が強く強度が弱い場合は中央部が撓み、磁石ローラ82に接触する懸念がある。吸引力を低減するために現像スリーブ81に接触しない範囲で磁石ローラ82より離間して配置するのが良い。また、その厚さは0.2mm〜2mm程度が使用可能であるが強度的観点から1mm程度が好適である。
【0126】
ところで、磁気シールド板85は、上述したように、磁石ローラ82の回転時に磁極と対向する毎に撓みを起こし、いわゆる、長手方向で振動を生起することになる。そこで、本実施形態では、上述したように撓みによる磁石ローラ82との接触を避けると共に、撓み振動を抑える構成も採用している、この構成については、図13以降の図を用いて後で説明する。
【0127】
現像スリーブ内において磁石ローラとの間に磁気シールド部材を設ける構成に関しては、例えば、参考特許文献1(実開昭60−39053号公報)において提案されている。
【0128】
しかし、この構成においては、磁石ローラからの磁力を現像スリーブ表面に及ぼさせる場合と及ぼさせない場合とを選択することが主眼となっている。
【0129】
具体的には、複数の現像ローラのうちで、使用状況にある現像ローラに対しては磁気シールド部材を現像領域から離脱させて磁力を作用できるようにし、不使用状況にある場合には上述した場合と逆に磁気シールド部材を現像領域に対向させて磁力が及ばないようにしている。
【0130】
このため、磁石ローラの回転は行われず、単に現像スリーブの回転においてその表面での磁気ブラシの穂立ちおよび穂立ちの解消が意図されているに過ぎず、磁極に対する現像剤の対向回数に関する構成は何もなく、現像剤中でのキャリアに対するトナーの帯電付着を促す過程で現像剤の剥離を容易化する考えはないものである。
【0131】
一方、磁石ローラが回転しない現像装置においては、図18や図19に示した従来構成のように磁極数を奇数とすることで同極による反発磁界を形成して現像剤を剥離することは公知であり、容易に実行可能である。
【0132】
しかし、本実施形態においては、磁石ローラを回転させることが前提となっており、しかも、上述したように、奇数個の磁極を設けた場合の反撥磁界を利用する場合と違って、図9に示すように、磁極数は偶数個である。このため、奇数個の磁極を用いた場合の同極による反撥磁界を形成して現像剤を剥離することができない。
【0133】
そこで、偶数個の磁極を用いた場合に現像剤を剥離するには、現像スリーブ81に対して可撓性を有するスクレーパを当接させて現像剤を剥ぎ取る方式が考えられるが、本実施形態では、現像剤の剥離位置に対向する磁極を現像スリーブ81の内面から離すように磁石ローラ82を偏心させている。これにより、スクレーパを用いた場合のように、機械的な耐久性に問題が生じるのを防ぐことができる。
【0134】
ところで、現像剤の剥離作用を磁力の強さの違いにより得るようにした構成としては、参考特許文献2(特開昭57−190974号公報)、参考特許文献3(特公平04−65379号公報)において提案されている。
【0135】
しかし、このような磁石ローラの偏心構造を用いて現像剤剥離を完全に行うためには現像スリーブ81を大径化し偏心量を大きくする必要があり装置の大型化になってしまう虞がある。
【0136】
本実施形態では、現像スリーブの大型化を招かないように、現像スリーブに対して偏心した回転する磁石ローラ近傍に磁気シールド板85を固定配置したものである。
【0137】
従って、上記参考特許文を併せた場合と違って、回転による磁極と現像剤との対向回数の増加および偶数極数を設定した場合を対象として現像剤の剥離を行う反撥磁界が形成されない状況下において磁力の作用を偏心により抑制することに限らず、磁気シールド板を設けることで現像剤の磁気的吸引をほとんどなくすようにしている点に特徴を持つものである。
【0138】
次に、図9において本実施形態での現像剤の移送について説明する。
供給スクリュー8により現像ローラ5に供給された現像剤は磁石ローラ82の磁気力により現像スリーブ81上に吸着され磁力線に沿って配列される。つまり磁石83上では、符号B1で示すように磁気穂が発生し、磁石83間では、符号B2で示すように磁気穂は転倒する。
【0139】
磁石ローラ82の回転方向を符号Jで示すように、現像スリーブ81の回転方向(I)に対して相反する方向とした場合、磁石ローラ82が回転する間、磁気穂は、所謂フリップフラップ状に自転し、磁石ローラ82の回転方向である矢印Jで示す方向と反対の矢印F方向に進行する。この際、現像スリーブ81は補助的に矢印I方向に比較的低速で回転させても良い。
【0140】
現像剤はドクタ12により磁気穂高さを一定に規制され、余剰の現像剤は矢印Mの流れで供給スクリュー8に戻され軸方向に搬送されながら再び現像ローラ5へと供給される。
【0141】
現像ドクタ12を通過した現像剤は引き続き自転進行するに従い磁石ローラ82の偏心により次第に現像剤スリーブ81への吸着力を増大しキャリアが感光体ドラムに移行するのを抑制する。磁石ローラ82が高回転なほど感光体ドラム1の対向部において現像剤は活発に撹拌されるため潜像に応じて効率良くトナーを転移できる。
【0142】
現像剤は引き続き自転進行するに従い磁石ローラ82の偏心により次第に現像剤スリーブ81への吸着力を減少させ供給搬送路7にて自重により現像スリーブ81より離脱するが、僅かに残留する吸着力により現像スリーブ81に残留する現像剤もある。
【0143】
磁気シールド板85近傍において磁石83から発せられる磁力線は、より透磁率の高い磁気シールド板85内を通過し現像スリーブ81外部への漏れ磁界はなくなる。
【0144】
ここで残留した現像剤は全て落下し、現像スリーブ81は次の現像剤搬送の準備を完了する。これにより一度現像に使用された現像剤が再び現像領域に向けてそのまま搬送されることがないので、現像剤のトナー濃度が低下するという問題を抑制することができる。
【0145】
ところで、磁気シールド板85の幅、つまり、磁石ローラ82の周方向に沿った幅が小さい時、磁石ローラ82の回転に伴い振動が発生するという問題が予測される。
【0146】
磁気シールド板85に作用する磁石83が単極となってしまい、磁石83が磁気シールド板85の周方向に沿った幅内で回転方向上流側に位置する場合と回転方向下流側に位置する場合で磁気シールド板85に働く吸引力の方向が入れ替わるためである。振動は現像装置に伝播し横縞状の異常画像や騒音となった。
【0147】
そこで、本実施形態では、磁気シールド板85の上述した周方向での幅に対応する設置角度(R°)と、磁極83の配置角度(Q°)との関係を次の関係に設定している。
【0148】
R°> Q°
ただし、R°:磁石ローラ82の回転中心から磁気シールド板85の周方向での各端部
を結ぶ線で形成される角度
Q°:磁石ローラ82の回転中心から二つの磁石の中心を結ぶ線で形成される
角度
これにより磁気シールド板85には常に複数の磁石83から吸引力が発生しその力は平均化され振動を抑制することが可能となった。
【0149】
本実施形態は以上のような構成であるので、装置の小型化が図れる。つまり本発明の特徴である、磁気シールド板を用いないで、本実施形態による作用と同様に、現像剤を現像スリーブ81から完全に剥離するには、内包されている磁石ローラ82の偏心量を大きくして、磁力が及ぶのを抑制しなければならない。
【0150】
しかし、磁石ローラ82は、現像剤搬送という機能を発揮させるためには小径化することに限界があり、これに代えて、現像スリーブ81を大径化する必要がある。
【0151】
磁石ローラ83の径は、本実施形態の場合、φ17.6mm程度であるが、磁気シールド板85を設けない場合には、現像スリーブ81の径がφ28〜30mm程度必要となる。
【0152】
これに対して、磁気シールド板85を設けた場合には、現像スリーブ81の径をφ25mmとすることができ、これによって、現像装置の小型化が可能となり、特に、図1に示すようにタンデム方式のカラーレーザ複写機の場合、複写機全体の小型化が可能となる結果が得られる。
【0153】
次に、本実施形態に用いられる現像ローラ5の長手方向の構成について図10により説明すると次の通りである。
【0154】
図10において、右下が画像形成装置の奥側に相当する、回転可能な現像スリーブ81の両端にフランジ86を圧入し、現像スリーブ81とフランジ86は一体的に回転が可能である。手前側のフランジ86にはバイアス印可ブラシ88を押圧し現像バイアスを現像スリーブ81へと印可する。
【0155】
奥側のフランジ86には従動ギヤ89を固定し、図示しない駆動ギヤから現像スリーブ81へ駆動を伝達する。さらに両端にはサポータ87を備え、サポータ87が現像装置4に固定支持される。
【0156】
次に、本実施形態に用いられる現像ローラ5の奥側の長手断面構造について図11により説明すると次の通りである。なお、手前側断面についてもほぼ同様の構成なので説明は省略する。
【0157】
図11において、フランジ86には玉軸受91の外輪を圧入し、玉軸受91の内輪にはサポータ87が圧入されることで現像スリーブ81が回転可能に支持される。
【0158】
一方、サポータ87の中心付近で玉軸受91と偏心した位置に玉軸受92と93の外輪を圧入し、磁石ローラ82に圧入したシャフト90を支持する。シャフト90の先端には図示しないカップリングまたはギヤを装着して駆動を磁石ローラへ伝達する。なお、玉軸受91と92は長手方向での位置をずらし現像ローラの小径化を図っている。磁気シールド板85には図示しないサポータ87から突出したピンを挿入することで固定支持する。
【0159】
以上のような構成の現像装置4を用いて、連続プリント枚数が60〜70(枚/分)の高速複写機により、現像剤の磁極対向回数について実験したところ、図12に示す結果を得た。なお、図12において(A)に示す結果は、図9に示したように、現像スリーブ81と磁石ローラ83とが相反する方向に回転する場合が対象となっている。なお、この回転方向に関しては、両者が同一方向であってもよく、この場合には、両者間で速度差を設けることにより現像剤と磁極との対向回数を増やすようにすることが望ましい。後者の場合の実験結果は、図12(B)に示されている。図12(B)において、実施例4は、相反する方向に回転する場合を示し、実施例5は、同じ回転方向とした場合(速度差が設定されている)を示している。
また、比較例(図12において従来例と表示)として、図20に示した構成の現像装置を対象として用いた。図20に示す構成においては、磁石ローラが固定されている。
【0160】
図12(A)において、従来の現像装置においては固定配置された磁石ローラは5極の磁極を有しており、上述した連続プリント枚数である、60〜70(枚/分)に設定した場合を対象として、その複写速度を得るためには現像スリーブを400rpmで回転させる必要があった。この際、供給搬送路から回収搬送路へ至る経路での磁極の通過回数は5回しかなく、現像剤交換後や高湿環境放置後はトナー飛散の不具合があった。
【0161】
一方で、実施例1の現像装置においては、磁極数を10極として磁石ローラを600rpmで回転させた際、現像スリーブは300rpmで従来例と同等の画像濃度が得られ、供給搬送路から回収搬送路へ至る経路での磁極の通過回数は15回程度得られ、現像剤交換後や高湿環境放置後でもトナー飛散の不具合がなかった。
【0162】
実施例2の現像装置においては、磁極数は同じ10極として磁石ローラを1200rpmで回転させた際、現像スリーブは180rpmで従来例と同等の画像濃度が得られ、供給搬送路から回収搬送路へ至る経路での磁極の通過回数は30回程度得られ、現像剤交換後や長期間の高湿環境放置後でもトナー飛散の不具合がなかった。
【0163】
実施例3の現像装置においては、磁極数は同じ10極として磁石ローラを2000rpmで回転させた際、現像スリーブは固定でも従来例と同等の画像濃度が得られ、供給搬送路から回収搬送路へ至る経路での磁極の通過回数は50回程度得られ、現像剤交換後や更に長期間の高湿環境放置後でもトナー飛散の不具合がなかったが、磁石ローラの高速回転の騒音が発生した。
【0164】
一方、図12(B)においては、相反する方向に回転させた場合、同じ回転数であっても、図12(A)における従来例よりも対向回数が多く得られ、また、同一方向の回転においても、速度差に応じて対向回数を増加させることができることが判る。
【0165】
以上の説明から、適切な回転数条件は複数存在し、適宜設定すれば良いことがわかる。また、複写速度が異なる場合や現像スリーブ径が異なる場合等においても好適な条件は随時設定可能である。さらに、回転方向に関しても同様である。
【0166】
また、以上の実施形態は、図20に示した構成における、供給搬送路と回収搬送路と撹拌搬送路とを有する現像装置に本発明を適用した場合が対象となっているが、図19に示した構成である、供給搬送路と回収搬送路のみからなる現像装置についても適用することができる。
【0167】
適用した場合には、回収搬送路に送られた現像剤をそのまま供給搬送路に供給した場合に発生する不具合である、攪拌時間が不足することによるトナーの帯電不足を解消して画像濃度の不均一や濃度低下を防止することが可能となる。
【0168】
ところで、本実施形態においては、前述したように、現像スリーブ81の断面中心に対する偏心により形成される磁石ローラ67と現像スリーブ81内面との間の隙間空間Uに配置されている磁気遮蔽部材である磁気シールド板85は、磁石ローラ82側からの磁気的吸引力を繰り返し受けることで撓み振動を生じる。
【0169】
そこで、本実施形態では、前述したように、撓み変形を起こした場合でも磁石ローラ82の内面に接触しない範囲で配置すること、そして、磁石ローラの回転方向に沿った磁気シールド板85の占有範囲が角度において、上述したように、R°>Q°の関係とすることが選択されている。
【0170】
しかし、長尺の磁気シールド板とした場合には、その支持位置間のスパンも大きくなり、曲げモーメントの影響を受けやすくなり、これにより撓み振動も顕著となる。
【0171】
本実施形態では、このような現象を抑えることを可能にしている、以下にその構成について説明する。
【0172】
図13は、本実施形態における振動抑制対策を用いない場合の磁石ローラ67側の磁石に対する磁気シールド板85の配置構成を示す図である。
【0173】
同図において磁気シールド板85は、磁石ローラ82(図9参照)の回転方向端縁が長尺方向において磁石83の長手方向に平行した状態で位置している。
【0174】
このため、図14に示すように、磁気シールド板85は両端支持状態の梁構造と同じ状態となり、長手方向では磁石側からの磁気的吸引力によって長手方向中央が最も撓みやすい状態となる。この撓みと元形状への復帰とは磁石が対向するたびに発生し、この繰り返しによって振動が発生する。
【0175】
本実施形態では、磁石ローラ82の回転方向に沿った端縁が磁石ローラ82側の磁石83と平行しないように形成されている。
【0176】
図15は、磁石ローラ82の回転方向に沿った磁気シールド板(便宜上、符号85’で示す)の端縁を長手方向に沿って捻ることで磁石ローラ82の磁石83の延長方向と平行させない構成が示されている。
【0177】
この構成においては、磁気シールド板85’の端縁に対する磁石ローラ82側の磁石83からの磁気的吸引力が作用する周期が磁気シールド板85’の長手方向で異なることとなり、長手方向で一様な周期、換言すれば、長手方向で吸引周期が一致して作用する場合と違って、磁気シールド板85’の端縁の撓み変形周期も異なることになる。これにより、一様な周期による磁気的吸引力が作用した場合のような磁気シールド板の長手方向中央で集中的に曲げモーメントが発生することがなく、曲げモーメントが集中する場合に発生する振動が抑制されることにある。
【0178】
このような長手方向に沿った端縁での磁気的吸引力の作用周期を異ならせる構成としては、図15に示した直線状の端縁を捻ることに限らず、図16に示すように端縁形状を凹凸や鋸波状あるいはジグザグ状などに形成することも可能である。また、磁気シールド板85’が長尺方向(長手方向)両端を支持する構成を対象とした場合には、支持位置側から中央に向けて厚さを異ならせ、具体的には支持位置側が最も厚くなるようにして断面剛性を高めるようにしても良い。
【0179】
上述した実施形態においては、磁気シールド板85’の端縁部の形状構成を工夫することで磁石ローラ67からの磁気的吸引力による撓み振動の発生を抑制するようにしているが、磁気的吸引力そのものを中和させるようにしても良い。
【0180】
図17は、この場合の構成を示している。同図において、磁気シールド板における磁石ローラ82(図9参照)側の磁石83と対向する側の面には長尺方向に沿って複数の磁極(N,Sで示す)が設けられている。
【0181】
複数の磁極を設ける構成としては、磁気シールド板85の表面に磁石シート96を貼り付けるようにした構成が採用されている。磁石シート96はゴム等の弾性材料にフェライト磁石や希土類磁石の粉末を混合し薄いシート状に成型したものが可撓性に優れており、粘着テープにより磁気シールド板85に貼り付けする。
【0182】
着磁は片面多極着磁(図17)または両面多極着磁等で着磁ピッチは2〜8mm程度、着磁の方向は磁石83の進行方向と平行にすることで振動の発生は防止できる。図17は磁石シート96に磁石83のN極が対向している状態であるが、磁石シート96のS極は図14に示した構成と同様に吸引される一方、N極では反発力が発生する。
この結果、吸引力と反発力の相殺により磁気シールド板85に作用する力を小さくすることができる。
なお、磁気シールド板85側の磁石配列としては、上述したように、長尺方向に沿って複数の磁石を配列させることに限らず、例えば、磁石ローラ82の回転方向に沿って配列させることも可能である、要は、磁石ローラ82側からの磁気的吸引力を緩和させて磁気シールド板85での撓み変形を生じさせない配列構成であればよい。
【0183】
ところで、本実施形態の構成である、隙間空間Uに磁気シールド板85を配置した構成に近似した構成として参考特許文献4(特開平09−211992号公報)に開示された構成がある。
【0184】
この文献には、図21に示すように、現像スリーブ133の内部で回転する磁石ローラ132aにおける像担持体と対向する側で、現像スリーブ133と磁石ローラ132aとの間の空間に磁気シールド板134を配置した構成が開示されている。
【0185】
しかし、この構成には、磁石ローラ132aを現像スリーブ133に対して偏心させて配置した構成に相当するものがなく、また、参考特許文献2,3と同様に現像スリーブ133と磁石ローラ132aとが同じ方向に回転するようになっている。このため、同じ方向に回転させた場合での磁石ローラに対する現像剤の対向回数はさほど多くないといえる。特に、参考特許文献4においては、穂立ちした状態の現像剤をその穂立ち状態のままで現像領域に向けて移動させることが主眼となっているだけであることから、現像剤の自転運動(転動)による現像剤の移動は行われないために、現像スリーブと磁石ローラとが同一速度で回転しており、かような構成においては現像剤と磁石ローラ側の磁極との対向回数がほとんどないといえる。このため、本実施形態で得ようとする現像剤と磁石との対向回数を増加させて摩擦接触機会を増やす考えがないといえる。
【0186】
従って、現像スリーブと磁石ローラとの回転速度に差を設けることによって現像剤と磁石ローラ側の磁極との対向回数の増加によるトナーとキャリアとの摩擦接触回数を増やす作用効果を参考特許文献4から期待することはできないといえる。
【0187】
以上のような実施形態においては、単に現像スリーブと磁石ローラとの間の空間に現像スリーブ表面への磁力を及ぼさないように磁気シールド板を設ける構成を用いた場合でも、現像スリーブ上の現像剤と磁石ローラ側の磁極との対向回数を増加させることができるので、現像剤に含まれるキャリアとトナーとの摩擦接触回数を増やしてトナーの帯電量を確保することができ、これによりトナーの飛散を防止することができる。しかも、磁石ローラに偶数極の磁極を設けて反撥磁極を設けない場合でも現像スリーブ上からの現像剤の剥離を容易化することができる。さらには、現像剤の剥離に用いられる磁気シールド板が磁石ローラの磁極に対向した場合の振動をも防いで騒音の発生などがない現像装置を得ることができる。
【0188】
なお、本実施形態に用いられる現像剤は、次の構成が用いられている。
【0189】
本実施形態に用いられるトナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤を含有し、必要に応じて離型剤や帯電制御剤、その他の成分が含有される。また、添加剤として上述のもの以外に、必要に応じて流動性向上剤やその他の成分が添加される。これら材料に関しては、公知のものがすべて可能である。
結着樹脂としては、例えば、スチレン、パラクロレスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)タクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリロニトリル酸、(メタ)アクリアミド、(メタ)アクリル酸、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル。ビニルメチルケトン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、ブタジエン等の単量体の重量体、又は、これらの単量体の2種類以上からなる共重合体、あるいはそれらの混合物が挙げられる。その他、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ロジン、変性ロジン、テルベン樹脂、フェノール樹脂、水添石油樹脂、アイオノマー樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂等が単独あるいは混合して使用できる。
【0190】
着色剤としては公知の染料及び顔料がすべて使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレトVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。使用量は一般にバインダー樹脂100重量部に対し0.1〜50重量部である。
【0191】
帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む。)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。
荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくは結着樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、2〜5重量部の範囲がよい。0.1重量部未満では、トナーの負帯電が不足し実用的でない。10重量部を越える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、キャリアとの静電的吸引力の増大のため、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。
【0192】
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等の低分子量ポリオレフィンワックスやフィッシャー・トロプシュワックス等の合成炭化水素系ワックスや密ロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、モンタンワックス、等の天然ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックス類、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、等の高級脂肪酸及び高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸アミド等及びこれらの各種変性ワックスが挙げられる。
【0193】
これらは1種または2種以上を併用して用いることができるが、融点が70〜125℃の範囲のものを使用するのが好ましい。融点が70℃以上とすることにより転写性、耐久性が優れたトナーとすることができ、融点を125℃以下とすることにより定着時に速やかに溶融し、確実な離型効果を発揮できる。これらの離型剤の使用量は、トナーに対して1〜15重量%が好適である。1重量%より少ない場合にはオフセット防止効果が不充分であり、15重量%以上では転写性、耐久性が低下する。
【0194】
添加剤(外添剤)としては、少なくとも体積平均粒径50〜500nm、嵩密度0.3g/cm3以上の微粒子を添加する。外添量としては、トナー母体に対して0.2〜3重量%が好ましい。この範囲より少ないとトナー間やトナーとその他との間に適度な空隙を形成する効果が発現されない。逆に多いと、流動性を阻害したり、脱離量が多くなることにより外添剤の凝集体ができ、画像品質を低下させる。
上述の添加剤と合わせて、この範囲以外の添加剤を添加することも可能であり、流動性向上を目的として体積平均粒径が小さい微粒子を添加することが好ましい。
【0195】
本実施形態での添加剤において、無機化合物としては、SiO2 、TiO2 、Al2O3 、MgO、CuO、ZnO、SnO2 、CeO2 、Fe2O3 、BaO、CaO、K2O、Na2O、ZrO2 、CaO・SiO2 、K2O(TiO2)n、Al2O3・2SO2 、CaCO3、MgCO3、BaSO4、MgSO4、SrTiO3等を例示することができ、好ましくは、SiO2 、TiO2 、Al2O3 があげられる。特にこれら無機化合物は各種のカップリング剤、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジクロロシラン、オクチルトリメトキシシラン等で疎水化処理が施されていてもよい。
また、有機化合物の添加剤としては、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよく、例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂微粒子としては、上記の樹脂を2種以上併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用が好ましい。
【0196】
ビニル系樹脂の具体的な例としては、ビニル系モノマーを単独重合又は共重合したポリマーで、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0197】
本実施形態における添加剤(微粒子)は、現像装置内の現像剤用のトナーとしても優れている。すなわち、トナー粒子、感光体ドラム、帯電付与部材との接触面積が非常に小さく、均等に接触するので付着力低減効果が大きく、現像・転写効率の向上に有効である。さらに、コロの役割を果たすため、感光体ドラムを摩耗又は損傷させることなく、クリーニングブレードと感光体ドラムとの高ストレス(高荷重、高速度等)下でのクリーニングの際も、トナー粒子に埋没し難く、あるいは少々埋没しても離脱、復帰が可能であるので、長期間にわたって安定した特性を得ることができる。さらに、トナーの表面から適度に脱離し、クリーニングブレードの先端部に蓄積し、いわゆるダム効果によって、ブレードからトナーが通過する現象を防止する効果がある。
【0198】
本実施形態におけるトナーの製造方法としては、トナー構成材料を溶融混練後、粉砕分級して得る方法が従来の方法として一般的であるが、この方法に限らず、重合法等も含めてさまざまな方法が可能である。
【0199】
重合法としては懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法などが可能であり、重合法とは異なるが溶解懸濁法、ポリマー懸濁法等の他、伸長反応法等が使用可能である。
【0200】
先に説明した粒径範囲や円形度のトナーを容易に得られる点では、従来の方法以外が好ましい。また、粉砕分級後のトナーを加熱処理することにより円形度を調整しても良い。
【0201】
本実施形態における添加剤の添加方法は特に制限されず、トナー母体粒子と添加剤とを各種の公知の混合装置を用いて、機械的に混合して付着させる方法や、液相中でトナー母体粒子と添加剤とを界面活性剤等で均一に分散させ、付着処理後、乾燥させる方法等がある。
【0202】
先に説明したトナーの粒径分布は、コールターカウンター法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置を用いて測定することができる。これら装置として、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)があげられる。以下に測定方法について述べる。
【0203】
まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理をおこない、上述の測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの重量、個数を測定して、重量分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)を求めることができる。
【0204】
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0205】
先に説明したトナーの円形度は、次式により得られた値である。
円形度=(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
この円形度はトナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
【0206】
円形度は東亜医用電子製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて測定することができる。具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、さらに測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理をおこない、分散液濃度を3000〜10000個/μlとして上述の装置によりトナーの形状を測定する。
【0207】
以下、本実施形態に用いられるキャリアについて補足的に説明する。
本実施形態で用いられるキャリアは、重量平均粒径が20〜60μm(好ましくは、20〜45μmである。)になるように形成されている。この粒径範囲は、現像装置内の現像剤用のキャリアとしても優れている。
【0208】
キャリアの平均粒径が20μm未満であると、キャリア粒子の分布において微粉が多くなり、1粒子当たりの磁化が低くなってキャリア飛散を生じることがある。これに対してキャリアの平均粒径が45μmを超えると、現像工程時のキャリアの穂立ちが粗くなって、ベタやハーフトーンの均一性が劣る場合がある(特に、平均粒径が60μmを超えると顕著になる。)。また比表面積が低下するため、小粒径トナーではトナーの飛散が生じることがある。
【0209】
キャリアとしては、粒径以外に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と芯材を被覆する樹脂層とを有するものが好ましい。
【0210】
芯材の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、50〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料等が好ましく、画像濃度の確保の点では、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75〜120emu/g)等の高磁化材料が好ましい。また、トナーが穂立ち状態となっている感光体ドラムへの当りを弱くでき高画質化に有利である点で、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30〜80emu/g)等の弱磁化材料が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0211】
キャリアの樹脂層の材料としては、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0212】
樹脂層には、必要に応じて導電粉等を含有させてもよく、その導電粉としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの導電粉の平均粒子径としては、1μm以下が好ましい。平均粒子径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
【0213】
キャリアの樹脂層は、例えば、前記シリコーン樹脂等を溶剤に溶解させて塗布溶液を調製した後、該塗布溶液を前記芯材の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼付をおこなうことにより形成することができる。塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法等が挙げられる。
【0214】
キャリアにおける樹脂層の量としては、0.01〜5.0質量%が好ましい。樹脂層の量が、0.01質量%未満であると、芯材の表面に均一な樹脂層を形成することができないことがあり、5.0質量%を超えると、樹脂層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生し、均一なキャリア粒子が得られないことがある。
【0215】
本実施形態で用いられる現像剤(プレミックストナー)は、上述したトナーとキャリアとを混合したものである。トナーとキャリアとは混合により摩擦帯電する。混合は公知の混合機を使用しておこなうことができる。
【0216】
また、現像装置内に予め収容される現像剤(初期剤)も、上述したトナーとキャリアとを混合したものである。現像剤におけるキャリアの含有量(キャリア濃度)としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、90〜98質量%が好ましく、93〜97質量%がより好ましい。
【符号の説明】
【0217】
1 感光体ドラム
4 現像装置
81 現像スリーブ
82 磁石ローラ
85,85’ 磁気シールド板
96 磁性シート
T 偏心量
U 現像スリーブと磁石ローラとの間の隙間空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0218】
【特許文献1】特許第3127594号公報
【特許文献2】特開2007−101797号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置および画像形成装置に関し、特に、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤を使用対象とした現像機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタあるいはファクシミリ装置や印刷機などの画像形成装置においては、潜像担持体である感光体上に形成された静電潜像を現像装置により可視像処理し、可視像をシートなどに転写することにより記録出力を得ることができる。
【0003】
現像に用いられる現像剤には、磁性あるいは非磁性トナーのみの一成分系現像剤の他にトナーとキャリアとを混合した二成分系現像剤がある。
【0004】
二成分系現像剤は、トナーとこれを担持するキャリアとで構成され、攪拌混合時に生起される摩擦帯電作用によりトナーを帯電させて感光体上の静電潜像に対して静電吸着できる状態とされる。
【0005】
現像装置には、磁力により周面に現像剤を穂立ちさせて感光体上の静電潜像に向け現像剤を供給する現像剤担持体としての現像スリーブと、現像スリーブに対して撹拌混合した現像剤を供給するスクリューオーガ等の撹拌部材とを備えた構成が知られている。現像スリーブに担持された現像剤は、ドクターブレードなどの規制部材により担持量(層厚)を規定された上で感光体上の静電潜像に供給される。
【0006】
二成分系現像剤を用いる現像装置の構成には、図18に示す構成がある(例えば、特許文献1)。
【0007】
図18に示す構成では、現像剤担持体としての現像スリーブ5が配置されている位置の下方に現像剤供給用のオーガ401が配置され、水平方向において現像剤供給用オーガ401の軸線に平行する攪拌用のオーガ402が配置されている。供給用および攪拌用の各オーガ401,402は軸方向端部でこれらオーガが配置されている空間同士が連通している。
【0008】
図18に示す構成においては、各スクリューオーガが相反する方向に現像剤を移送することにより、現像剤を各オーガが配置されているスペース間で循環させる。これにより、供給用オーガ401から現像スリーブ5に対して現像剤の汲み上げと現像後の現像スリーブ5に担持されている現像剤の回収とを行うようになっている。
【0009】
上述した現像剤の供給および回収を行うための構成として、現像スリーブ5の内部には周方向に沿って、現像スリーブ5に対向して磁気ブラシを穂立ちさせる現像主極および現像スリーブ上で現像剤を移動される搬送磁極そして現像後のスリーブ周面から現像剤を剥離するための反撥磁界を形成可能な剥離磁極が設けられており、反撥磁極を設けることにより奇数極、具体的には7極の磁石が用いられている。
【0010】
反撥磁極により現像スリーブ5の周面から剥離されて回収される現像剤は、一点鎖線の矢印F1で示すように、一旦、搬送路401Pを通過して供給用オーガ401に回収されるが、再度、搬送磁極による汲み上げられて現像スリーブ5の周面に供給されることになる。これにより、現像剤は、同じ位置に存在する供給用の搬送路および回収用の搬送路間を循環しながらオーガの軸方向に搬送され、その過程で現像スリーブ側の磁極と多数回対向しながら移動する。現像剤は、磁極と対向した際に穂立ち状態とされ、磁極から離れると穂立ちが崩れて凝縮するという過程を繰り返すことによりキャリアとトナーとの摩擦接触が行われてトナーの摩擦帯電が行われる。
【0011】
穂立ち状態および穂立ちが崩れて凝縮することによる摩擦接触が繰り返される現像剤は、例えば、オーガの軸方向に搬送されることから、その方向での搬送過程においてトナーの消費量が多くなると搬送方向下流側でのトナーの濃度が低下する。
【0012】
例えば、画像面積が大きい画像を現像するような場合、オーガの軸方向でのトナーの消費は、供給される側で大量に消費されてしまう可能性が高く、搬送方向下流側では現像剤の含まれるトナー量が少なくなる。このため、現像スリーブの軸方向で一様なトナーの濃度を維持することができないことがある。トナーの濃度不足は画像品質の低下に繋がる。
【0013】
上述した不具合は、現像剤の供給搬送路と回収用搬送路とが共通して用いられることに原因がある。つまり、回収された現像剤はトナーが不足しており、このような現像剤を供給搬送路に再度搬送してしまうと、供給される現像剤内でのキャリアの含有比率が高くなってしまい、供給される現像剤中のキャリアとトナーとの比率が所定比率と異なることになる。
【0014】
そこで、図18に示した構成の一部を変更して、現像剤の供給搬送路と回収搬送路とを区別して供給搬送路内に回収された現像剤が混入しないようにした構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0015】
図19には、特許文献1に開示されている現像装置の要部が示されており、同図において、現像装置4のハウジング内には、仕切り壁403によって上下方向で仕切られて第1のオーガ401,第2のオーガ402をそれぞれ収容する攪拌室401P、402Pが設けられている。
【0016】
一方、特許文献1に開示されているように、オーガを収容する攪拌室を仕切り壁により仕切るようにした構成に関する別の例として、特許文献2に開示された構成がある。
【0017】
図20は、特許文献2に開示された構成を示す図であり、同図において、現像装置4のハウジング内には、現像スリーブ5に対して現像剤を供給するため供給用オーガ401および現像剤の攪拌用オーガ402に加えて現像領域を通過した現像スリーブ5上の現像剤を回収する回収用オーガ404が設けられ、供給用オーガ401が位置する供給搬送路401P’と回収用オーガ404が位置する回収用搬送路404Pとは仕切り壁405によって仕切られ、攪拌用オーガ402が位置する攪拌搬送路402P’と回収用搬送路404Pとは仕切り壁406によって仕切られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献1に開示されている構成では、回収された現像剤が攪拌用のオーガ402によって軸方向に搬送されてそのまま供給用のオーガ401に向け搬送されることから、新たなトナーが補給された場合でも攪拌用のオーガ402による攪拌が不十分となりがちであり、トナーの帯電不足による画像濃度の不均一や濃度低下を来す虞がある。特に、回収される現像剤のトナー濃度が低下しやすい高印字率の画像形成時には顕著となる。
【0019】
一方、特許文献2に開示されている構成では、現像スリーブから回収される現像剤が回収用搬送路404Pに搬送され、供給用搬送路401P’に混入することがなく、さらには、回収された現像剤がそのまま攪拌用搬送路402P’内に入り込むこともなく、攪拌されたうえで供給用搬送路401P’に向け搬送されることから、図18に示した構成で生じる不具合を解消することが期待できる。
【0020】
しかし、これら特許文献に開示されている構成に用いられる現像剤担持体である現像スリーブの構成には、次のような問題がある。
【0021】
各特許文献に開示されている現像スリーブは、内部に磁気ブラシ形成用、つまり現像剤を穂立ちさせる磁極を備えているが、その磁極数が、特許文献1においては、図示されているように5極とされ、そして特許文献2においては、図示されていないものの、現像部を通過した現像済みの現像剤を回収する回収スクリューに向け現像剤が移動することが記載されていることから、図18に示した場合あるいは特許文献1と同様に、5又は7極程度であることが予想できる。
【0022】
一方、特許文献1に開示されている構成においては、図18に示した場合と違って、供給搬送路と回収搬送路とが共通していないで独立した構成となっていることからして、現像剤は、供給・回収搬送路間での循環作用が得られない。
【0023】
このため、回収される現像剤は、上述した磁極を通過する回数が5〜7回程度しかない状態のままで回収されることになり、穂立ち・穂立ちの崩れを繰り返す際の摩擦接触がきわめて低い状態が得られてしまう。この結果、摩擦接触の機会が要因となる摩擦帯電が不十分となり、トナーの帯電に長い時間が必要となるという問題が生じる。
【0024】
特許文献2に開示されている構成では、攪拌搬送路が独立して設けられていることから、回収された現像剤を対象とした攪拌効率の向上が望めるが、現像剤交換後や長時間の放置時にはトナーの帯電量も失われがちであることから、キャリアへの付着力低下を生じて飛散しやすくなり、結果として、装置内汚染を招く虞がある。
【0025】
ところで、この種、現像装置においては、現像領域を通過した現像スリーブ5上に残存する現像剤が回収された後、新たな現像剤の供給を受けることで現像剤スリーブ5上に担持される現像剤の濃度を一定に維持することが必要とされる。
【0026】
しかし、現像領域を通過した現像スリーブ5上から現像剤の回収が良好に行えないと、現像スリーブに担持される現像剤濃度が変化し、所定濃度の画像が得られないという問題が生じる。つまり、現像スリーブ5上に残存したままの現像剤濃度はトナーの消費により濃度が低下しており、このまま現像処理に供されると、濃度低下を起こしたゴースト画像が得られるなどの不具合が生じる。
【0027】
本発明は、上記従来の現像装置における問題に鑑み、現像剤担持体からの現像剤の剥離を容易に行えるようにして現像剤の回収を確実に行える構成を備えた現像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
この目的を達成するため、本発明は次の構成よりなる。
(1)像担持体に形成されている静電潜像に対してトナーとキャリアとを含む二成分系現像剤を供給する現像剤担持体を備えた現像装置であって、
前記現像剤担持体の内部には、現像剤を穂立ちさせて搬送させる磁極を備えた回転可能な磁界発生手段が配置され、
前記磁界発生手段は、前記現像剤担持体の断面中心に対して前記像担持体に対して接近する向きに自らの断面中心を偏心させて配置され、
該偏心により前記磁界発生手段における前記像担持体と対向する側と反対側および前記現像剤担持体内部の間に存在する隙間空間には該磁界発生手段の一部を覆うことができる磁気遮蔽部材が配置されていることを特徴とする現像装置。
(2)前記磁界発生手段には、その回転方向に沿って偶数極の磁極が配置されていることを特徴とする(1)に記載の現像装置。
(3)前記磁気遮蔽部材は、前記磁界発生手段に設けられている磁極間の角度よりも大きい遮蔽角度を持たせて設けられていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の現像装置。
(4)前記磁気遮蔽部材は、前記磁界発生手段の回転方向に沿った端縁が該磁界発生手段に設けられている磁極と平行しない形態とされていることを特徴とする(1)乃至(3)の何れかに記載の現像装置。
(5)前記磁気遮蔽部材は、前記磁界発生手段の長手方向に沿って複数の磁極を配置して構成されていることを特徴とする(1)乃至(4)の何れかに記載の現像装置。
(6)前記磁気遮蔽部材に設けられている複数の磁極は、前記磁界発生手段に設けられている磁極からの磁力による該遮蔽部材の長手方向に沿った撓み振動を抑制することができる極性を設定されていることを特徴とする(5)に記載の現像装置。
(7)前記磁気遮蔽部材には、複数の磁極を有する磁性シートが貼り付けられて構成されていることを特徴とする(5)又は(6)に記載の現像装置。
(8)前記磁気遮蔽部材は、板状部材が用いられ、該板状部材は長手方向における厚を異ならせて構成されていることを特徴とする(1)乃至(4)の何れかに記載の現像装置。
(9)前記磁気遮蔽部材は、前記像担持体に偏る側と反対側御の磁界発生手段表面と前記現像剤担持体内面との間の隙間空間において該磁界発生手段よりも前記現像剤担持体内面側に近寄らせて配置されていることを特徴とする(1)乃至(8)の何れかに記載の現像装置。
(10)前記磁界発生手段は、前記現像剤担持体と同方向あるいは相対方向に回転可能であり、同方向に回転する場合には相対速度差が設定されて回転することを特徴とする(1)に記載の現像装置。
(11)(1)乃至(10)の何れかに記載の現像装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
(12)少なくとも前記現像装置および像担持体が纏めて収容されるプロセスカートリッジを備えたことを特徴とする(11)に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、現像剤担持体内で回転可能に設けられ、かつ、現像剤担持体の断面中心に対して潜像担持体に対し接近する向きに偏心させてある磁界発生手段を備え、その磁界発生手段の偏心により形成される現像剤担持体内での隙間空間に磁界発生手段の一部を覆うことができる磁気遮蔽部材が設けられているので、像剤担持体表面への磁力を及びにくくして現像剤の剥離を容易化することができる。特に、剥離のしやすさによる現像剤の回収を容易化するに際して、偏心により得られる隙間空間内に磁気遮蔽部材を設けるだけの簡単な構成で済むことにより装置の大型化や現像剤を掻き取る構造などを要することなく確実に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明実施例による現像装置が用いられる画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した画像形成装置に用いられる現像装置の構成及び作用を説明するための模式図である。
【図3】図2に示した現像装置の要部外観を示す斜視図である。
【図4】図2に示した現像装置内での現像剤の流れを説明するための模式図である。
【図5】図3において矢印Jで示す方向からみた断面を示す模式図である。
【図6】図2に示した現像装置内での現像剤の流れに関する別例を説明するための模式図である。
【図7】図2に示した現像装置におけるトナー補給部の構成を説明するための要部斜視図である。
【図8】図3に示した現像装置における一部の部材を取り除いた状態を示す要部斜視図である。
【図9】図2に示した現像装置における特徴部を説明するための側面視的な模式である。
【図10】図9に示した特徴部に用いられる現像剤担持体の構成を説明するための斜視図である。
【図11】図9に示した現像剤担持体とこれに内包される磁界発生手段との支持構造を説明するための腰部断面図である。
【図12】図9に示した特徴部による現像剤と磁界発生手段の磁極との通過回数に関する実験に結果を示す表図である。
【図13】図9に示した特徴部に用いられる磁気遮蔽部材の一構成を説明するための斜視図である。
【図14】図13に示した構成による不具合を説明するための磁気遮蔽部材と磁界発生手段との対向関係を示す作用図である。
【図15】図13に示した磁気遮蔽部材による不具合を解消した構成を説明するための図13相当の斜視図である。
【図16】図15に示した磁気遮蔽部材の要部変形例を示す図13相当の斜視図である。
【図17】図13に示した構成による生じる不具合を解消するための別の例を説明するための磁気遮蔽部材と磁気発生手段との対向関係を説明するための模式図である。
【図18】現像装置における現像剤供給機構の従来例を説明するための模式図である。
【図19】図18に示した従来例における不具合を解消するために従来知られている一構成を説明するための模式図である。
【図20】図19とは別の例を説明するための模式図である。
【図21】図13に示した磁気遮蔽部材を用いる参考例の構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面により本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による現像装置を用いる画像形成装置を示しており、同図に示す画像形成装置は、タンデム方式によるフルカラープリンタであるが、本発明は、これに限らず、複写機やファクシミリ装置などにも適用することができる。
【0032】
図1は、本実施形態に係るフルカラープリンタ(以下、便宜上、複写機という)500の概略構成図である。
複写機500は、プリンタ部100,これを搭載する給紙装置200,プリンタ部100の上に固定されるスキャナ300などを備えている。また、スキャナ300の上には原稿自動給送装置400が固定されている。
【0033】
プリンタ部100は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の画像を形成するための4組のプロセスカートリッジ18Y,M,C,Kからなる画像形成ユニット20を備えている。
【0034】
各符号の数字の後に付されたY,M,C,Kは、イエロー、シアン、マゼンダ、ブラック用の部材であることを示している(以下同様)。プロセスカートリッジ18Y,M,C,Kの他には、光書込ユニット21、中間転写ユニット17、二次転写装置22、レジストローラ対49、ベルト定着方式の定着装置25などが配設されている。
【0035】
光書込ユニット21は、図示しない光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラーなどを有し、画像データに基づいて後述の感光体の表面にレーザ光を照射する。
プロセスカートリッジ18Y,M,C,Kは、ドラム状の感光体1、帯電器、現像装置4、ドラムクリーニング装置、除電器などを有している。
【0036】
以下、イエロー用のプロセスカートリッジ18について説明する。
帯電手段たる帯電器によって、感光体1Yの表面は一様帯電される。
帯電処理が施された感光体1Yの表面には、光書込ユニット21によって変調及び偏向されたレーザ光が照射される。これにより、照射部(露光部)の感光体1Yの表面の電位が減衰する。この表面の電位の減衰により、感光体1Y表面にY用の静電潜像が形成される。形成されたY用の静電潜像は現像手段たる現像装置4Yによって現像されてYトナー像となる。
【0037】
Y用の感光体1Y上に形成されたYトナー像は、後述の中間転写ベルト110に一次転写される。一次転写後の感光体1Yの表面は、ドラムクリーニング装置によって転写残トナーがクリーニングされる。
【0038】
Y用のプロセスカートリッジ18Yにおいて、ドラムクリーニング装置によってクリーニングされた感光体1Yは、除電器によって除電される。そして、帯電器によって一様帯電せしめられて、初期状態に戻る。以上のような一連のプロセスは、他のプロセスカートリッジ18M,C,Kについても同様である。
【0039】
次に、中間転写ユニット17について説明する。
中間転写ユニット17は、中間転写ベルト110やベルトクリーニング装置90などを有している。また、張架ローラ14、駆動ローラ15、二次転写バックアップローラ16、4つの一次転写バイアスローラ62Y,M,C,Kなども有している。
中間転写ベルト110は、張架ローラ14を含む複数のローラによってテンション張架されている。そして、図示しないベルト駆動モータによって駆動される駆動ローラ15の回転によって図中時計回りに無端移動せしめられる。
4つの一次転写バイアスローラ62Y,M,C,Kは、それぞれ中間転写ベルト110の内周面側に接触するように配設され、図示しない電源から一次転写バイアスの印加を受ける。また、中間転写ベルト110をその内周面側から感光体1Y,M,C,Kに向けて押圧してそれぞれ一次転写ニップを形成する。各一次転写ニップには、一次転写バイアスの影響により、感光体1と一次転写バイアスローラ62との間に一次転写電界が形成される。
Y用の感光体1Y上に形成された上述のYトナー像は、この一次転写電界やニップ圧の影響によって中間転写ベルト110上に一次転写される。このYトナー像の上には、M,C,K用の感光体1M,C,K上に形成されたM,C,Kトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト110上には多重トナー像たる4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
中間転写ベルト110上に重ね合わせ転写された4色トナー像は、後述の二次転写ニップで図示しない記録体たる転写紙に二次転写される。二次転写ニップ通過後の中間転写ベルト110の表面に残留する転写残トナーは、図中左側の駆動ローラ15との間にベルトを挟み込むベルトクリーニング装置90によってクリーニングされる。
【0040】
次に、二次転写装置22について説明する。
中間転写ユニット17の図中下方には、2本の張架ローラ23によって紙搬送ベルト24を張架している二次転写装置22が配設されている。紙搬送ベルト24は、少なくとも何れか一方の張架ローラ23の回転駆動に伴って、図中反時計回りに無端移動せしめられる。2本の張架ローラ23のうち、図中右側に配設された一方のローラは、中間転写ユニット17の二次転写バックアップローラ16との間に、中間転写ベルト110及び紙搬送ベルト24を挟み込んでいる。この挟み込みにより、中間転写ユニット17の中間転写ベルト110と、二次転写装置22の紙搬送ベルト24とが接触する二次転写ニップが形成されている。そして、この一方の張架ローラ23には、トナーと逆極性の二次転写バイアスが図示しない電源によって印加される。
この二次転写バイアスの印加により、二次転写ニップには中間転写ユニット17の中間転写ベルト110上の4色トナー像をベルト側からこの一方の張架ローラ23側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。後述のレジストローラ対49によって中間転写ベルト110上の4色トナー像に同期するように二次転写ニップに送り込まれた転写紙には、この二次転写電界やニップ圧の影響を受けた4色トナー像が二次転写せしめられる。なお、このように一方の張架ローラ23に二次転写バイアスを印加する二次転写方式に代えて、転写紙を非接触でチャージさせるチャージャを設けてもよい。
【0041】
複写機500本体の下部に設けられた給紙装置200には、内部に複数の転写紙を紙束の状態で複数枚重ねて収容可能な給紙カセット44が、鉛直方向に複数重なるように配設されている。それぞれの給紙カセット44は、紙束の一番上の転写紙に給紙ローラ42を押し当てている。そして、給紙ローラ42を回転させることにより、一番上の転写紙を給紙路48に向けて送り出される。
【0042】
給紙カセット44から送り出された転写紙を受け入れる給紙路48は、複数の搬送ローラ対47と、給紙路46内の末端付近に設けられたレジストローラ対49とを有している。そして、転写紙をレジストローラ対49に向けて搬送する。レジストローラ対49に向けて搬送された転写紙は、レジストローラ対49のローラ間に挟まれる。一方、中間転写ユニット17において、中間転写ベルト110上に形成された4色トナー像は、ベルトの無端移動に伴って二次転写ニップに進入する。レジストローラ対49は、ローラ間に挟み込んだ転写紙を二次転写ニップにて4色トナー像に密着させ得るタイミングで送り出す。
【0043】
これにより、二次転写ニップでは、中間転写ベルト110上の4色トナー像が転写紙に密着する。そして、転写紙上に二次転写されて、白色の転写紙上でフルカラー画像となる。このようにしてフルカラー画像が形成された転写紙は、紙搬送ベルト24の無端移動に伴って二次転写ニップを出た後、紙搬送ベルト24上から定着装置25に送られる。
【0044】
定着装置25は、定着ベルト26を2本のローラによって張架しながら無端移動せしめるベルトユニットと、このベルトユニットの一方のローラに向けて押圧される加圧ローラ27とを備えている。これら定着ベルト26と加圧ローラ27とは互いに当接して定着ニップを形成しており、紙搬送ベルト24から受け取った転写紙をここに挟み込む。ベルトユニットにおける2本のローラのうち、加圧ローラ27から押圧される方のローラは、内部に図示しない熱源を有しており、これの発熱によって定着ベルト26を加熱する。加熱された定着ベルト26は、定着ニップに挟み込まれた転写紙を加熱する。この加熱やニップ圧の影響により、フルカラー画像が転写紙に定着される。
【0045】
定着装置25内で定着処理が施された転写紙は、プリンタ筐体の図中左側板の外側に設けたスタック部57上にスタックされるか、もう一方の面にもトナー像を形成するために上述の二次転写ニップに戻されるかの何れかの搬送形態が選択される。
【0046】
図示しない原稿のコピーがとられる際には、例えばシート原稿の束が原稿自動搬送装置400の原稿台30上セットされる。但し、その原稿が本状に閉じられている片綴じ原稿である場合には、コンタクトガラス32上にセットされる。このセットに先立ち、複写機本体に対して原稿自動搬送装置400が開かれ、スキャナ300のコンタクトガラス32が露出される。この後、閉じられた原稿自動搬送装置400によって片綴じ原稿が押さえられる。
【0047】
このようにして原稿がセットされた後、図示しないコピースタートスイッチが押下されると、スキャナ300による原稿読取動作がスタートする。但し、原稿自動搬送装置400にシート原稿がセットされた場合には、この原稿読取動作に先立って、原稿自動搬送装置400がシート原稿をコンタクトガラス32まで自動移動させる。原稿読取動作では、まず、第1走行体33と第2走行体34とがともに走行を開始し、第1走行体33に設けられた光源から光が発射される。そして、原稿面からの反射光が第2走行体34内に設けられたミラーによって反射せしめられ、結像レンズ35を通過した後、読取センサ36に入射される。読取センサ36は、入射光に基づいて画像情報を構築する。
【0048】
このような原稿読取動作と並行して、各プロセスカートリッジ18Y,M,C,K内の各機器や、中間転写ユニット17、二次転写装置22、定着装置25がそれぞれ駆動を開始する。そして、読取センサ36によって構築された画像情報に基づいて、光書込ユニット21が駆動制御されて、各感光体1Y,M,C,K上に、Y,M,C,Kトナー像が形成される。これらトナー像は、中間転写ベルト110上に重ね合わせ転写された4色トナー像となる。
【0049】
また、原稿読取動作の開始とほぼ同時に、給紙装置200内では給紙動作が開始される。この給紙動作では、給紙ローラ42の1つが選択回転せしめられ、ペーパーバンク43内に多段に収容される給紙カセット44の1つから転写紙が送り出される。送り出された転写紙は、分離ローラ45で1枚ずつ分離されて反転給紙路46に進入した後、搬送ローラ対47によって二次転写ニップに向けて搬送される。このような給紙カセット44からの給紙に代えて、手差しトレイ51からの給紙が行われる場合もある。この場合、手差し給紙ローラ50が選択回転せしめられて手差しトレイ51上の転写紙を送り出した後、分離ローラ52が転写紙を1枚ずつ分離してプリンタ部100の手差し給紙路53に給紙する。
【0050】
複写機500は、2色以上のトナーからなる多色画像を形成する場合には、中間転写ベルト110をその上部張架面がほぼ水平になる姿勢で張架して、上部張架面に全ての感光体1Y,M,C,Kを接触させる。これに対し、Kトナーのみからなるモノクロ画像を形成する場合には、図示しない機構により、中間転写ベルト110を図中左下に傾けるような姿勢にして、その上部張架面をY,M,C用の感光体1Y,M,Cから離間させる。そして、4つの感光体1Y,M,C,Kのうち、K用の感光体1Kだけを図中反時計回りに回転させて、Kトナー像だけを作像する。この際、Y,M,Cについては、感光体1だけでなく、現像装置4も駆動を停止させて、感光体1や現像装置4の各部材及び現像装置4内の現像剤の不要な消耗を防止する。
【0051】
複写機500は、複写機500内の各機器の制御を司るCPU等から構成される図示しない制御部と、液晶ディスプレイや各種キーボタン等などから構成される図示しない操作表示部とを備えている。操作者は、この操作表示部に対するキー入力操作により、制御部に対して命令を送ることで、転写紙の片面だけに画像を形成するモードである片面プリントモードについて、3つのモードの中から1つを選択することができる。この3つの片面プリントモードとは、ダイレクト排出モードと、反転排出モードと、反転デカール排出モードとからなる。
【0052】
図2は、4つプロセスカートリッジ18Y,M,C,Kにそれぞれ装備されている現像装置4及び感光体1を示す拡大構成図である。
【0053】
4つのプロセスカートリッジ18Y,M,C,Kは、それぞれ扱うトナーの色が異なる点以外はほぼ同様の構成になっているので、同図では「4」に付すY,M,C,Kという添字を省略している。
【0054】
図2に示すように感光体1は図中矢印G方向に回転しながら、その表面を不図示の帯電装置により帯電される。帯電された感光体1の表面は不図示の露光装置より照射されたレーザ光により静電潜像を形成された潜像に現像装置4からトナーを供給され、トナー像を形成する。
【0055】
現像装置4は、図中矢印I方向に現像剤を搬送しながら感光体1の表面の潜像にトナーを供給し、現像する現像剤担持体としての現像ローラ5を有している。
【0056】
現像ローラ5は回転可能な現像スリーブ81を備え、複数の磁極からなり図中矢印J方向に回転可能な磁気発生手段としての磁石ローラ82を内包している。現像ローラ5は本発明の特徴部であり詳細は後述する。
【0057】
また、現像ローラ5に現像剤を供給しながら現像ローラ5の軸線方向に沿って図2を示す紙面の手前側(以下、便宜上、図中手前側あるいは図2中手前側と称する場合もある)に向けて現像剤を搬送する供給搬送部材としての供給スクリュー8を有している。
【0058】
現像ローラ5の供給スクリュー8との対向部から現像剤搬送方向下流側には、現像ローラ5に供給された現像剤を現像に適した厚さに規制する現像剤規制手段としてのドクタブレード12を備えている。
【0059】
現像ローラ5の感光体1Yとの対向部である現像領域よりも現像剤搬送方向下流側では、現像領域を通過し、現像ローラ5の表面から離脱した現像済みの現像剤を回収する回収搬送路7が現像ローラ5と対向する。
【0060】
回収搬送路7は、回収した回収現像剤を現像ローラ5の軸線方向に沿って供給スクリュー8と同方向に搬送する回収搬送部材として、軸線方向に平行に配置された螺旋状の回収スクリュー6を備えている。供給スクリュー8を備えた供給搬送路9は現像ローラ5の横方向に、そして回収スクリュー6を備えた回収搬送路7は現像ローラ5の下方に並設されている。
【0061】
現像装置4は、供給搬送路9の下方で回収搬送路7に並列して攪拌搬送路10を設けている。
【0062】
攪拌搬送路10は、現像ローラ5の軸線方向に沿って現像剤を攪拌しながら供給スクリュー8とは逆方向である、図2を示す紙面の奥側(以下、便宜上、図中奥側と称する場合もある)に向けて搬送する攪拌搬送部材として、軸線方向に平行に配置された、螺旋状の攪拌スクリュー11を備えている。
【0063】
供給搬送路9と攪拌搬送路10とは仕切り壁としての第一仕切り壁133によって仕切られている。第一仕切り壁133の供給搬送路9と攪拌搬送路10とは、図中手前側と奥側との両端が開口部となっており、供給搬送路9と攪拌搬送路10とが連通している。
【0064】
なお、供給搬送路9と回収搬送路7との間も第一仕切り壁133によって仕切られているが、第一仕切り壁133における供給搬送路9と回収搬送路7とを仕切る箇所には開口部が設けられていない。
【0065】
また、攪拌搬送路10と回収搬送路7との2つの現像剤搬送路は仕切り部材としての第二仕切り壁134によって仕切られている。第二仕切り壁134は、図中手前側が開口部となっており、攪拌搬送路10と回収搬送路7とが連通している。
【0066】
現像剤搬送部材である供給スクリュー8、回収スクリュー6及び攪拌スクリュー11は、樹脂もしくは金属のスクリューからなっており各スクリュー径は全てφ22(mm)でスクリューピッチは供給スクリューが50(mm)の2条巻き、回収スクリュー6及び攪拌スクリュー11が25(mm)の1条巻き、回転数は全て約600(rpm)に設定されている。
【0067】
現像ローラ5上に担持された現像剤は、ステンレスからなるドクタブレード12によって薄層化されたうえで感光体1との対向部である現像領域まで搬送されて現像が行われる。
【0068】
現像ローラ5の直径はφ25(mm)、ドクタブレード12及び感光体1とのギャップは0.3(mm)程度となっている。
【0069】
現像後の現像剤は回収搬送路7にて回収が行われ、図2中手前側に搬送され、非画像領域部に設けられた第二仕切り壁134の開口部で、攪拌搬送路10へ現像剤が移送される。なお、攪拌搬送路10における現像剤搬送方向上流側の第二仕切り壁134の開口部の付近で攪拌搬送路10の上側には、図7に示すように、後述するトナー補給口95から攪拌搬送路10にトナーが供給される。
【0070】
次に、3つの現像剤搬送路内での現像剤の循環について説明する。
図3は現像剤搬送路内の現像剤の流れを説明する現像装置4の斜視断面図である。図中の各矢印は現像剤の移動方向を示している。
【0071】
また、図4は、現像装置4内の現像剤の流れの模式図であり、図3と同様、図中の各矢印は現像剤の移動方向を示している。
【0072】
攪拌搬送路10から現像剤の供給を受けた供給搬送路9では、現像剤が移動しながら現像ローラ5に接触して供給される。
【0073】
そして、現像ローラ5に供給されずに供給搬送路9の搬送方向下流端まで移動した余剰現像剤は第一仕切り壁133の余剰開口部92より攪拌搬送路10に供給される(図4中矢印E)。
【0074】
一方、現像ローラ5に供給された現像剤は現像領域で現像に用いられた後、現像ローラ5から分離・離脱して、回収搬送路7に受け渡される。現像ローラ5から回収搬送路7に受け渡され、回収スクリュー6によって回収搬送路7の搬送方向下流端まで搬送された回収現像剤は第二仕切り壁134の回収開口部93より攪拌搬送路10に供給される(図4中矢印F)。
【0075】
そして、攪拌搬送路10では、供給搬送路9から供給された余剰現像剤と回収搬送路7に回収された回収現像剤と後述するトナー補給口95(図7参照)から補給されたトナーとが攪拌され、これら攪拌された現像剤は、攪拌スクリュー11の搬送方向下流側で、かつ、供給スクリュー8の搬送方向上流側に搬送され、第一仕切り壁133の供給開口部91より供給搬送路9に供給される(図4中矢印D)。
【0076】
なお、攪拌搬送路10の下方には、透磁率センサからなるトナー濃度センサ13(図2参照)が設けられ、センサ出力により不図示のトナー補給制御装置を作動し、不図示のトナー収容部からトナー補給を行っている。
【0077】
図4に示す現像装置4では、供給搬送路9と回収搬送路7とを備え、現像剤の供給と回収とを異なる現像剤搬送路で行うので、現像済みの現像剤が供給搬送路9に混入することがない。このため、供給搬送路9の搬送方向下流側ほど現像ローラ5に供給される現像剤のトナー濃度が低下することを抑制することができる。また、回収搬送路7と攪拌搬送路10とを備え、現像剤の回収と攪拌とを異なる現像剤搬送路で行うので、現像済みの現像剤が攪拌の途中に落ちることがない。これにより、十分に攪拌がなされた現像剤が供給搬送路9に供給されるため、供給搬送路9に供給される現像剤が攪拌不足となることを抑制することができる。このように、供給搬送路9内の現像剤のトナー濃度が低下することを抑制し、供給搬送路9内の現像剤が攪拌不足となることを抑制することができるので現像時の画像濃度を一定にすることができる。
【0078】
なお、図4に示すように、現像装置4の下部から上部への現像剤の移動は矢印Dのみである。矢印Dで示す現像剤の移動は、攪拌スクリュー11の回転で攪拌搬送路10の下流側に現像剤を押し込むことによって、現像剤を盛り上がらせて供給搬送路9に現像剤を供給するものである。
【0079】
このような現像剤の移動は、現像剤に対してストレスを与えることになり、現像剤の寿命低下の一因となる。
【0080】
このように、現像剤を下方から上方に持ち上げる際に現像剤にストレスがかかり現像剤中のキャリアの膜削れやトナーのスペント化がその個所で発生し、それに伴い画像品質の安定性が保たれなくなってしまう。
【0081】
よって、矢印Dで示す現像剤の移動における現像剤のストレスを軽減することで現像剤の長寿命化を図ることができる。現像剤の長寿命化を図ることにより、現像剤の劣化を抑制して常に画像濃度ムラの無い画像品質の安定した現像装置を提供することができる。
【0082】
本実施形態の現像装置4では、図2に示すように、供給搬送路9を攪拌搬送路10の斜め上方になるように配置している。斜め上方に配置することにより、供給搬送路9を攪拌搬送路10の垂直上方に設け現像剤を持ち上げるものに比べて、矢印Dで示す現像剤の移動における現像剤のストレスを軽減することができる。
【0083】
さらに、現像装置4では、供給搬送路9と攪拌搬送路10とを斜めに配置することで、図2に示すように、攪拌搬送路10の上部壁面が供給搬送路9の下部壁面よりも高い位置となるように配置している。換言すれば、攪拌搬送路10を構成する空間の一部が上下方向において供給搬送路9を構成する空間の一部に進出している。
【0084】
供給搬送路9を攪拌搬送路10に対して垂直上方に持ち上げることは、重力に逆らって現像剤を攪拌スクリュー11の圧力によって持ち上げるので現像剤にストレスがかかる。
【0085】
一方、攪拌搬送路10の上部壁面が供給搬送路9の下部壁面よりも高い位置となるように配置することで、攪拌搬送路10の最高点に存在する現像剤が供給搬送路9の最下点に向けて重力に逆らわず流れ込むことができるので、現像剤にかかるストレスを低減することができる。
【0086】
なお、図5に示すように、攪拌搬送路10の現像剤搬送路下流側の、攪拌搬送路10と供給搬送路9とが連通している部分の攪拌スクリュー11の軸にフィン部材を設けても良い。このフィン部材は攪拌スクリュー11の軸方向に平行な辺と、攪拌スクリューの軸方向に直交する辺とから構成される板状の部材である。このフィン部材で現像剤を掻き上げることにより、攪拌搬送路10から供給搬送路9に対して、より効率的な現像剤の受渡しを行うことができる。
【0087】
また、現像装置4では、現像ローラ5と供給搬送路9との中心間距離が、現像ローラ5と攪拌搬送路10との中心間距離よりも短くなるように、供給搬送路9と攪拌搬送路10とを配置している。これにより供給搬送路9から現像ローラ5に現像剤を無理なく供給することができ、装置の小型化を図ることもできる。
【0088】
また、攪拌スクリュー11は、図2中の手前側から見て時計回り方向(図中矢印C方向)に回転しており、現像剤は攪拌スクリュー11の形状に沿って現像剤を持ち上げて供給搬送路9に移送させている。これにより、現像剤を効率良く持ち上げることが可能となり現像剤にかかるストレスもより低減することができる。
【0089】
図5は、現像装置4の供給スクリュー8の回転中心における断面を図3中の矢印J方向から見た断面説明図である。図中Hは、現像剤担持体である現像ローラ5が、潜像担持体である感光体1にトナーを供給する現像領域を示している。この現像領域Hの現像ローラ5の回転軸の軸線方向の幅が現像領域幅αである。
【0090】
図5に示すように、現像装置4は攪拌搬送路10から供給搬送路9に現像剤を持ち上げる箇所である供給開口部91と、供給搬送路9から攪拌搬送路10に現像剤を落下させる余剰開口部92とがともに現像領域幅α内に設けられている。
【0091】
図6は、図4とは異なる構成の現像装置4内の現像剤の流れの模式図である。
図6に示す現像装置4は、供給開口部91と余剰開口部92とを現像領域幅αの外側に設けている。供給開口部91を現像領域幅αの外側に設けているため、供給搬送路9の搬送方向上流側は現像ローラ5よりも供給搬送路上流側領域β分長くなっている。また、余剰開口部92を現像領域幅αの外側に設けているため、供給搬送路9の搬送方向下流側は現像ローラ5よりも供給搬送路下流側領域γ分長くなっている。
【0092】
一方、図4に示す構成の現像装置4では、供給開口部91を現像領域幅α内に設けているため、供給搬送路9の搬送方向上流側は図6の現像装置4よりも供給搬送路上流側領域β分短くすることができる。また、余剰開口部92を現像領域幅α内に設けているため、供給搬送路9の搬送方向下流側は図6の現像装置4よりも供給搬送路下流側領域γ分短くすることができる。
【0093】
このように、図4の現像装置4は供給開口部91と余剰開口部92とを現像領域幅α内に設けているため、図6に示す現像装置4に比べて、現像装置4の上部の省スペース化を図ることができる。
【0094】
次に、現像装置4の供給搬送路9、攪拌搬送路10及び回収搬送路7からなる現像剤搬送路へのトナーを補給する位置について説明する。図7は、現像装置4の外観斜視図である。
【0095】
図7に示すように、トナーを補給するトナー補給口95は、攪拌スクリュー11を備える攪拌搬送路10の搬送方向上流端部の上方に設けてられている。このトナー補給口95は現像ローラ5の幅方向端部よりも外側に設けてあるので、現像領域幅αよりも外側となっている。
【0096】
トナー補給口95を設けた箇所は供給搬送路9の搬送方向の延長線上であり、図6における供給搬送路下流側領域γの空いたスペースに該当する。余剰開口部92を現像領域幅α内に設けることで空いたスペースにトナー補給口95を設けることにより、現像装置4の小型化を図ることができる。
【0097】
また、トナー補給口95としては、攪拌搬送路10の搬送方向上流端部の上方に限らず、回収搬送路7の下流端部の上方に設けても良い。
【0098】
さらに、回収搬送路7から攪拌搬送路10へ現像剤の受渡しを行う箇所である回収開口部93(図4参照)の真上にトナー補給口95を設けるようにしても良い。回収開口部93の真上のスペースも余剰開口部92を現像領域幅α内に設けることで空いたスペースであるので、この位置にトナー補給口95を設けることにより、現像装置4の小型化を図ることができる。さらに、受渡し部である回収開口部93では現像剤が混ざりやすいため、この位置で補給を行うことによってより効率よく現像剤の攪拌を行うことができる。
【0099】
図4を用いて説明した現像装置4においては、上述したように、攪拌搬送路10の搬送方向下流端から供給搬送路9の搬送方向上流端に現像剤を受け渡す供給開口部91と、供給搬送路9の下流端から攪拌搬送路10の搬送方向上流端に現像剤を受け渡す余剰開口部92とを現像領域幅α内に設けているため、従来の現像装置4に比べて、現像装置4の上部の省スペース化を図ることが出来、現像装置4全体の省スペース化を図ることができる。
【0100】
また、余剰開口部92を現像領域幅α内に設けることで空いたスペースにトナー補給口95を設けることにより、現像装置4の小型化を図ることができる。
【0101】
また、回収搬送路7から攪拌搬送路10への現像剤の受渡し部である回収開口部93の上方からトナー補給を行うことにより効率よく現像剤の攪拌を行うことができる。
【0102】
また、画像形成装置としての複写機のプリンタ部100の現像手段として、現像装置4を備えることにより、装置全体の省スペース化を図ることができる。
【0103】
現像剤補給手段である不図示のトナー補給制御装置は、不図示のトナー収容部内のトナーをトナー補給口95から現像装置4に補給する。本実施形態の現像装置4では、現像装置4のトナー補給口95からトナーとキャリアとを含む現像剤が補給される。以降、現像装置4に補給されるトナーとキャリアとが混合された現像剤をプレミックストナーと称する。このような補給現像剤に関しては、例えば、本出願人の先願である特開2008−203814号公報等に開示されている。
【0104】
図8は、現像装置4から、排出搬送部材である排出スクリュー2a、攪拌スクリュー11、回収スクリュー6、及び、ドクタブレード12を取り外した状態の手前側端部近傍の斜視説明図である。
【0105】
本実施形態の現像装置4では、供給搬送路9の搬送方向下流端に到達した余剰現像剤を供給搬送路9の搬送方向上流端に搬送する循環搬送路は攪拌搬送路10である。また、循環搬送路である攪拌搬送路10内の現像剤に対して搬送力を付与する循環搬送部材は攪拌スクリュー11である。さらに、供給搬送路9の搬送方向下流端近傍に設けられ、通過した現像剤が循環搬送路である攪拌搬送路10に受け渡される循環開口部は余剰開口部92である。また、現像装置4は、通過した現像剤が現像装置4の装置外に排出される現像剤排出手段としての現像剤排出口94を供給搬送路9に備える。現像剤排出口94を通過した現像剤は排出現像剤として排出搬送路2に受け渡され、排出スクリュー2aが回転することによって供給搬送路9の搬送方向(図2及び図8中の手前側に向かう方向)とは逆方向(図2及び図8中の奥側に向かう方向)に搬送される。
【0106】
排出搬送路2は、供給搬送路9の搬送方向下流側で排出仕切り壁135を挟んで供給搬送路9と隣り合うように配置され、現像剤排出口94は供給搬送路9と排出搬送路2とを連通するように排出仕切り壁135に設けられた開口である。
【0107】
また、現像装置4は、供給搬送路9の搬送方向下流端近傍に到達し、循環開口部である余剰開口部92に入らなかった現像剤を余剰開口部92の近傍で滞留させる現像剤滞留手段としての供給下流端壁面80(図4,6参照)を備えている。さらに、図4,6において、排出開口部である現像剤排出口94は、余剰開口部92よりも上方で、且つ、供給下流端壁面80によって滞留した滞留現像剤のうち、現像剤排出口94の位置に達した現像剤を通過させるように設けられている。言い換えると、供給搬送路9の搬送方向下流端近傍に到達した現像剤で、余剰開口部92に入ることができず、余剰開口部92から溢れ出た余剰現像剤が供給下流端壁面80によって塞き止められ滞留現像剤となる。そして、この滞留現像剤の嵩が増加したときに、余剰開口部92よりも上方に設けられた現像剤排出口94に到達した現像剤が現像剤排出口94を通って排出搬送路2に排出される。
【0108】
次に、上述した構成を対象として本実施形態の特徴部である現像ローラ5の要部にについて図9において説明する。
【0109】
現像ローラ5は、現像剤を担持する円筒状の現像スリーブ81と現像スリーブ81に内包され磁気力により現像剤を吸着する磁界発生手段としての磁石ローラ82からなる。
【0110】
現像スリーブ81はアルミ、オーステナイト系ステンレス、マグネシウム等の非磁性かつ導電材料からなる。
【0111】
表面は平滑でも構わないが高速機では現像剤のスリップを抑制するために下記の粗し処理・加工を施しても良い。
【0112】
(A)V溝またはU溝等の溝押し出し加工・各種凹形状の機械加工またはレーザ加工またはエッジング加工
(B)ブラスト処理
(C)金属またはセラミック等の溶射処理
磁石ローラ82は現像剤の搬送方向Pとは反対の矢印J方向に回転可能に設けられており、偶数個の磁石83を等間隔に配置し(図9に示す実施形態の構成では10個の磁石を配置)、その極性は隣り合う磁石間で引き合うように互いに反対向きとする。
【0113】
本実施形態では、磁石ローラ82と現像スリーブ81との駆動関係として、同方向および相対方向の何れかの回転方向が選択できるようになっており、その回転関係は、現像スリーブ81の表面に担持される現像剤と磁石ローラ82側の磁石83との対向回数が多くなることを条件として設定されるようになっている。
【0114】
上述した駆動関係の設定による得られる、磁石ローラ82の磁石に対する現像剤の対向回数の増加によって、現像剤が磁極と対向したときに穂立ちが形成され、磁極から離れた際に穂立ちが崩されるという現象を繰り返す回数が増加し、これによるトナーとキャリアと摩擦接触機会の増加によりトナーの帯電特性を向上させることができる。
【0115】
この場合の対向回数の増加は、上述したように、磁石ローラ83と現像スリーブ81との回転方向の設定や速度差の設定などによって得られる。つまり、両者が同じ方向に回転する場合には、両者間に速度差を設定することで磁石83に対する現像剤の対向回数を増加させることができ、また、速度差を設定しないで相反する方向とした場合も同様に磁石83に対する現像剤の対向回数を増加させることができる。
【0116】
このような回転方向あるいは速度差による実験結果については、図12において説明する。
【0117】
上述した磁石83に関しては、従来の廉価なフェライト磁石が使用可能であるが、小型化や高速化のためにはより強力なサマリウムコバルト磁石やネオジウム磁石等の希土類磁石の使用も可能である。磁石83は磁石ホルダ84に接着により支持し、その外周を図示しない熱収縮チューブ等で保護しても良い。
【0118】
磁石ホルダ84は磁性材料とすると磁石83の磁気力を若干向上可能である。但しコスト高であり一般に鉄を主成分とする磁性材料は高比重のため高速回転時は慣性モーメントが増大し駆動部の耐久性に問題が生じる場合がある。そのため磁石83の磁気力は若干低くなるが、非磁性かつ軽比重のアルミニウムやマグネシウムを材料としても良い。
【0119】
図9において、本実施形態における磁石ローラ82の回転中心P’は現像スリーブ81の回転中心Pより距離(T)だけ離れた位置に偏心させて位置決めされている。
【0120】
偏心の方向は、現像ローラ5の表面に担持された現像剤が感光体1に移行する前の位置で現像ローラ81の内面に最も接近することができる向きに設定され、上記符号Tで示した距離に相当する偏心量は、現像領域においてキャリアが感光体1に移行するのを磁極からの磁力によって抑制することができる量とされている。これにより、感光体1に移行する現像剤は、感光体との接触に際して穂立ちを確保された状態で接触できると共に、接近した磁極からの磁力によりキャリアの移行が阻止されてトナーのみを感光体の潜像に供給するように移動することになる。
【0121】
一方、偏心方向と反対側では磁気力を低く抑えることができる。このため、現像スリーブ5表面に担持されている現像剤の剥離を容易にすることができる。
【0122】
このような偏心構造を設けるだけで、現像剤の剥離が外部からの機械的な外力を用いることなく容易に行えることになる。
【0123】
また、磁石ローラ82を偏心させることにより現像スリーブ81と磁石ローラ82の間には隙間空間Uが構成され、この空間Uには、磁気遮蔽部材に相当する磁気シールド板85が配置されている。
【0124】
磁気シールド板85は比透磁率が100〜100000程度の強磁性体でかつ保持力が100以下の軟磁性体が好適であり、鉄、ケイ素鋼、パーマロイ、センダスト、フェライト、アモルファス等の材質が選択可能である。更には、ポリカーボネート、ABS、ポリスチレン、ナイロン等の樹脂材料に前記軟磁性体を分散し溶解・成形した材質も使用可能である。
【0125】
磁気シールド板85はその磁気特性から磁石ローラ82からの吸引力に晒される。後述するように両端2箇所の支持のため吸引力が強く強度が弱い場合は中央部が撓み、磁石ローラ82に接触する懸念がある。吸引力を低減するために現像スリーブ81に接触しない範囲で磁石ローラ82より離間して配置するのが良い。また、その厚さは0.2mm〜2mm程度が使用可能であるが強度的観点から1mm程度が好適である。
【0126】
ところで、磁気シールド板85は、上述したように、磁石ローラ82の回転時に磁極と対向する毎に撓みを起こし、いわゆる、長手方向で振動を生起することになる。そこで、本実施形態では、上述したように撓みによる磁石ローラ82との接触を避けると共に、撓み振動を抑える構成も採用している、この構成については、図13以降の図を用いて後で説明する。
【0127】
現像スリーブ内において磁石ローラとの間に磁気シールド部材を設ける構成に関しては、例えば、参考特許文献1(実開昭60−39053号公報)において提案されている。
【0128】
しかし、この構成においては、磁石ローラからの磁力を現像スリーブ表面に及ぼさせる場合と及ぼさせない場合とを選択することが主眼となっている。
【0129】
具体的には、複数の現像ローラのうちで、使用状況にある現像ローラに対しては磁気シールド部材を現像領域から離脱させて磁力を作用できるようにし、不使用状況にある場合には上述した場合と逆に磁気シールド部材を現像領域に対向させて磁力が及ばないようにしている。
【0130】
このため、磁石ローラの回転は行われず、単に現像スリーブの回転においてその表面での磁気ブラシの穂立ちおよび穂立ちの解消が意図されているに過ぎず、磁極に対する現像剤の対向回数に関する構成は何もなく、現像剤中でのキャリアに対するトナーの帯電付着を促す過程で現像剤の剥離を容易化する考えはないものである。
【0131】
一方、磁石ローラが回転しない現像装置においては、図18や図19に示した従来構成のように磁極数を奇数とすることで同極による反発磁界を形成して現像剤を剥離することは公知であり、容易に実行可能である。
【0132】
しかし、本実施形態においては、磁石ローラを回転させることが前提となっており、しかも、上述したように、奇数個の磁極を設けた場合の反撥磁界を利用する場合と違って、図9に示すように、磁極数は偶数個である。このため、奇数個の磁極を用いた場合の同極による反撥磁界を形成して現像剤を剥離することができない。
【0133】
そこで、偶数個の磁極を用いた場合に現像剤を剥離するには、現像スリーブ81に対して可撓性を有するスクレーパを当接させて現像剤を剥ぎ取る方式が考えられるが、本実施形態では、現像剤の剥離位置に対向する磁極を現像スリーブ81の内面から離すように磁石ローラ82を偏心させている。これにより、スクレーパを用いた場合のように、機械的な耐久性に問題が生じるのを防ぐことができる。
【0134】
ところで、現像剤の剥離作用を磁力の強さの違いにより得るようにした構成としては、参考特許文献2(特開昭57−190974号公報)、参考特許文献3(特公平04−65379号公報)において提案されている。
【0135】
しかし、このような磁石ローラの偏心構造を用いて現像剤剥離を完全に行うためには現像スリーブ81を大径化し偏心量を大きくする必要があり装置の大型化になってしまう虞がある。
【0136】
本実施形態では、現像スリーブの大型化を招かないように、現像スリーブに対して偏心した回転する磁石ローラ近傍に磁気シールド板85を固定配置したものである。
【0137】
従って、上記参考特許文を併せた場合と違って、回転による磁極と現像剤との対向回数の増加および偶数極数を設定した場合を対象として現像剤の剥離を行う反撥磁界が形成されない状況下において磁力の作用を偏心により抑制することに限らず、磁気シールド板を設けることで現像剤の磁気的吸引をほとんどなくすようにしている点に特徴を持つものである。
【0138】
次に、図9において本実施形態での現像剤の移送について説明する。
供給スクリュー8により現像ローラ5に供給された現像剤は磁石ローラ82の磁気力により現像スリーブ81上に吸着され磁力線に沿って配列される。つまり磁石83上では、符号B1で示すように磁気穂が発生し、磁石83間では、符号B2で示すように磁気穂は転倒する。
【0139】
磁石ローラ82の回転方向を符号Jで示すように、現像スリーブ81の回転方向(I)に対して相反する方向とした場合、磁石ローラ82が回転する間、磁気穂は、所謂フリップフラップ状に自転し、磁石ローラ82の回転方向である矢印Jで示す方向と反対の矢印F方向に進行する。この際、現像スリーブ81は補助的に矢印I方向に比較的低速で回転させても良い。
【0140】
現像剤はドクタ12により磁気穂高さを一定に規制され、余剰の現像剤は矢印Mの流れで供給スクリュー8に戻され軸方向に搬送されながら再び現像ローラ5へと供給される。
【0141】
現像ドクタ12を通過した現像剤は引き続き自転進行するに従い磁石ローラ82の偏心により次第に現像剤スリーブ81への吸着力を増大しキャリアが感光体ドラムに移行するのを抑制する。磁石ローラ82が高回転なほど感光体ドラム1の対向部において現像剤は活発に撹拌されるため潜像に応じて効率良くトナーを転移できる。
【0142】
現像剤は引き続き自転進行するに従い磁石ローラ82の偏心により次第に現像剤スリーブ81への吸着力を減少させ供給搬送路7にて自重により現像スリーブ81より離脱するが、僅かに残留する吸着力により現像スリーブ81に残留する現像剤もある。
【0143】
磁気シールド板85近傍において磁石83から発せられる磁力線は、より透磁率の高い磁気シールド板85内を通過し現像スリーブ81外部への漏れ磁界はなくなる。
【0144】
ここで残留した現像剤は全て落下し、現像スリーブ81は次の現像剤搬送の準備を完了する。これにより一度現像に使用された現像剤が再び現像領域に向けてそのまま搬送されることがないので、現像剤のトナー濃度が低下するという問題を抑制することができる。
【0145】
ところで、磁気シールド板85の幅、つまり、磁石ローラ82の周方向に沿った幅が小さい時、磁石ローラ82の回転に伴い振動が発生するという問題が予測される。
【0146】
磁気シールド板85に作用する磁石83が単極となってしまい、磁石83が磁気シールド板85の周方向に沿った幅内で回転方向上流側に位置する場合と回転方向下流側に位置する場合で磁気シールド板85に働く吸引力の方向が入れ替わるためである。振動は現像装置に伝播し横縞状の異常画像や騒音となった。
【0147】
そこで、本実施形態では、磁気シールド板85の上述した周方向での幅に対応する設置角度(R°)と、磁極83の配置角度(Q°)との関係を次の関係に設定している。
【0148】
R°> Q°
ただし、R°:磁石ローラ82の回転中心から磁気シールド板85の周方向での各端部
を結ぶ線で形成される角度
Q°:磁石ローラ82の回転中心から二つの磁石の中心を結ぶ線で形成される
角度
これにより磁気シールド板85には常に複数の磁石83から吸引力が発生しその力は平均化され振動を抑制することが可能となった。
【0149】
本実施形態は以上のような構成であるので、装置の小型化が図れる。つまり本発明の特徴である、磁気シールド板を用いないで、本実施形態による作用と同様に、現像剤を現像スリーブ81から完全に剥離するには、内包されている磁石ローラ82の偏心量を大きくして、磁力が及ぶのを抑制しなければならない。
【0150】
しかし、磁石ローラ82は、現像剤搬送という機能を発揮させるためには小径化することに限界があり、これに代えて、現像スリーブ81を大径化する必要がある。
【0151】
磁石ローラ83の径は、本実施形態の場合、φ17.6mm程度であるが、磁気シールド板85を設けない場合には、現像スリーブ81の径がφ28〜30mm程度必要となる。
【0152】
これに対して、磁気シールド板85を設けた場合には、現像スリーブ81の径をφ25mmとすることができ、これによって、現像装置の小型化が可能となり、特に、図1に示すようにタンデム方式のカラーレーザ複写機の場合、複写機全体の小型化が可能となる結果が得られる。
【0153】
次に、本実施形態に用いられる現像ローラ5の長手方向の構成について図10により説明すると次の通りである。
【0154】
図10において、右下が画像形成装置の奥側に相当する、回転可能な現像スリーブ81の両端にフランジ86を圧入し、現像スリーブ81とフランジ86は一体的に回転が可能である。手前側のフランジ86にはバイアス印可ブラシ88を押圧し現像バイアスを現像スリーブ81へと印可する。
【0155】
奥側のフランジ86には従動ギヤ89を固定し、図示しない駆動ギヤから現像スリーブ81へ駆動を伝達する。さらに両端にはサポータ87を備え、サポータ87が現像装置4に固定支持される。
【0156】
次に、本実施形態に用いられる現像ローラ5の奥側の長手断面構造について図11により説明すると次の通りである。なお、手前側断面についてもほぼ同様の構成なので説明は省略する。
【0157】
図11において、フランジ86には玉軸受91の外輪を圧入し、玉軸受91の内輪にはサポータ87が圧入されることで現像スリーブ81が回転可能に支持される。
【0158】
一方、サポータ87の中心付近で玉軸受91と偏心した位置に玉軸受92と93の外輪を圧入し、磁石ローラ82に圧入したシャフト90を支持する。シャフト90の先端には図示しないカップリングまたはギヤを装着して駆動を磁石ローラへ伝達する。なお、玉軸受91と92は長手方向での位置をずらし現像ローラの小径化を図っている。磁気シールド板85には図示しないサポータ87から突出したピンを挿入することで固定支持する。
【0159】
以上のような構成の現像装置4を用いて、連続プリント枚数が60〜70(枚/分)の高速複写機により、現像剤の磁極対向回数について実験したところ、図12に示す結果を得た。なお、図12において(A)に示す結果は、図9に示したように、現像スリーブ81と磁石ローラ83とが相反する方向に回転する場合が対象となっている。なお、この回転方向に関しては、両者が同一方向であってもよく、この場合には、両者間で速度差を設けることにより現像剤と磁極との対向回数を増やすようにすることが望ましい。後者の場合の実験結果は、図12(B)に示されている。図12(B)において、実施例4は、相反する方向に回転する場合を示し、実施例5は、同じ回転方向とした場合(速度差が設定されている)を示している。
また、比較例(図12において従来例と表示)として、図20に示した構成の現像装置を対象として用いた。図20に示す構成においては、磁石ローラが固定されている。
【0160】
図12(A)において、従来の現像装置においては固定配置された磁石ローラは5極の磁極を有しており、上述した連続プリント枚数である、60〜70(枚/分)に設定した場合を対象として、その複写速度を得るためには現像スリーブを400rpmで回転させる必要があった。この際、供給搬送路から回収搬送路へ至る経路での磁極の通過回数は5回しかなく、現像剤交換後や高湿環境放置後はトナー飛散の不具合があった。
【0161】
一方で、実施例1の現像装置においては、磁極数を10極として磁石ローラを600rpmで回転させた際、現像スリーブは300rpmで従来例と同等の画像濃度が得られ、供給搬送路から回収搬送路へ至る経路での磁極の通過回数は15回程度得られ、現像剤交換後や高湿環境放置後でもトナー飛散の不具合がなかった。
【0162】
実施例2の現像装置においては、磁極数は同じ10極として磁石ローラを1200rpmで回転させた際、現像スリーブは180rpmで従来例と同等の画像濃度が得られ、供給搬送路から回収搬送路へ至る経路での磁極の通過回数は30回程度得られ、現像剤交換後や長期間の高湿環境放置後でもトナー飛散の不具合がなかった。
【0163】
実施例3の現像装置においては、磁極数は同じ10極として磁石ローラを2000rpmで回転させた際、現像スリーブは固定でも従来例と同等の画像濃度が得られ、供給搬送路から回収搬送路へ至る経路での磁極の通過回数は50回程度得られ、現像剤交換後や更に長期間の高湿環境放置後でもトナー飛散の不具合がなかったが、磁石ローラの高速回転の騒音が発生した。
【0164】
一方、図12(B)においては、相反する方向に回転させた場合、同じ回転数であっても、図12(A)における従来例よりも対向回数が多く得られ、また、同一方向の回転においても、速度差に応じて対向回数を増加させることができることが判る。
【0165】
以上の説明から、適切な回転数条件は複数存在し、適宜設定すれば良いことがわかる。また、複写速度が異なる場合や現像スリーブ径が異なる場合等においても好適な条件は随時設定可能である。さらに、回転方向に関しても同様である。
【0166】
また、以上の実施形態は、図20に示した構成における、供給搬送路と回収搬送路と撹拌搬送路とを有する現像装置に本発明を適用した場合が対象となっているが、図19に示した構成である、供給搬送路と回収搬送路のみからなる現像装置についても適用することができる。
【0167】
適用した場合には、回収搬送路に送られた現像剤をそのまま供給搬送路に供給した場合に発生する不具合である、攪拌時間が不足することによるトナーの帯電不足を解消して画像濃度の不均一や濃度低下を防止することが可能となる。
【0168】
ところで、本実施形態においては、前述したように、現像スリーブ81の断面中心に対する偏心により形成される磁石ローラ67と現像スリーブ81内面との間の隙間空間Uに配置されている磁気遮蔽部材である磁気シールド板85は、磁石ローラ82側からの磁気的吸引力を繰り返し受けることで撓み振動を生じる。
【0169】
そこで、本実施形態では、前述したように、撓み変形を起こした場合でも磁石ローラ82の内面に接触しない範囲で配置すること、そして、磁石ローラの回転方向に沿った磁気シールド板85の占有範囲が角度において、上述したように、R°>Q°の関係とすることが選択されている。
【0170】
しかし、長尺の磁気シールド板とした場合には、その支持位置間のスパンも大きくなり、曲げモーメントの影響を受けやすくなり、これにより撓み振動も顕著となる。
【0171】
本実施形態では、このような現象を抑えることを可能にしている、以下にその構成について説明する。
【0172】
図13は、本実施形態における振動抑制対策を用いない場合の磁石ローラ67側の磁石に対する磁気シールド板85の配置構成を示す図である。
【0173】
同図において磁気シールド板85は、磁石ローラ82(図9参照)の回転方向端縁が長尺方向において磁石83の長手方向に平行した状態で位置している。
【0174】
このため、図14に示すように、磁気シールド板85は両端支持状態の梁構造と同じ状態となり、長手方向では磁石側からの磁気的吸引力によって長手方向中央が最も撓みやすい状態となる。この撓みと元形状への復帰とは磁石が対向するたびに発生し、この繰り返しによって振動が発生する。
【0175】
本実施形態では、磁石ローラ82の回転方向に沿った端縁が磁石ローラ82側の磁石83と平行しないように形成されている。
【0176】
図15は、磁石ローラ82の回転方向に沿った磁気シールド板(便宜上、符号85’で示す)の端縁を長手方向に沿って捻ることで磁石ローラ82の磁石83の延長方向と平行させない構成が示されている。
【0177】
この構成においては、磁気シールド板85’の端縁に対する磁石ローラ82側の磁石83からの磁気的吸引力が作用する周期が磁気シールド板85’の長手方向で異なることとなり、長手方向で一様な周期、換言すれば、長手方向で吸引周期が一致して作用する場合と違って、磁気シールド板85’の端縁の撓み変形周期も異なることになる。これにより、一様な周期による磁気的吸引力が作用した場合のような磁気シールド板の長手方向中央で集中的に曲げモーメントが発生することがなく、曲げモーメントが集中する場合に発生する振動が抑制されることにある。
【0178】
このような長手方向に沿った端縁での磁気的吸引力の作用周期を異ならせる構成としては、図15に示した直線状の端縁を捻ることに限らず、図16に示すように端縁形状を凹凸や鋸波状あるいはジグザグ状などに形成することも可能である。また、磁気シールド板85’が長尺方向(長手方向)両端を支持する構成を対象とした場合には、支持位置側から中央に向けて厚さを異ならせ、具体的には支持位置側が最も厚くなるようにして断面剛性を高めるようにしても良い。
【0179】
上述した実施形態においては、磁気シールド板85’の端縁部の形状構成を工夫することで磁石ローラ67からの磁気的吸引力による撓み振動の発生を抑制するようにしているが、磁気的吸引力そのものを中和させるようにしても良い。
【0180】
図17は、この場合の構成を示している。同図において、磁気シールド板における磁石ローラ82(図9参照)側の磁石83と対向する側の面には長尺方向に沿って複数の磁極(N,Sで示す)が設けられている。
【0181】
複数の磁極を設ける構成としては、磁気シールド板85の表面に磁石シート96を貼り付けるようにした構成が採用されている。磁石シート96はゴム等の弾性材料にフェライト磁石や希土類磁石の粉末を混合し薄いシート状に成型したものが可撓性に優れており、粘着テープにより磁気シールド板85に貼り付けする。
【0182】
着磁は片面多極着磁(図17)または両面多極着磁等で着磁ピッチは2〜8mm程度、着磁の方向は磁石83の進行方向と平行にすることで振動の発生は防止できる。図17は磁石シート96に磁石83のN極が対向している状態であるが、磁石シート96のS極は図14に示した構成と同様に吸引される一方、N極では反発力が発生する。
この結果、吸引力と反発力の相殺により磁気シールド板85に作用する力を小さくすることができる。
なお、磁気シールド板85側の磁石配列としては、上述したように、長尺方向に沿って複数の磁石を配列させることに限らず、例えば、磁石ローラ82の回転方向に沿って配列させることも可能である、要は、磁石ローラ82側からの磁気的吸引力を緩和させて磁気シールド板85での撓み変形を生じさせない配列構成であればよい。
【0183】
ところで、本実施形態の構成である、隙間空間Uに磁気シールド板85を配置した構成に近似した構成として参考特許文献4(特開平09−211992号公報)に開示された構成がある。
【0184】
この文献には、図21に示すように、現像スリーブ133の内部で回転する磁石ローラ132aにおける像担持体と対向する側で、現像スリーブ133と磁石ローラ132aとの間の空間に磁気シールド板134を配置した構成が開示されている。
【0185】
しかし、この構成には、磁石ローラ132aを現像スリーブ133に対して偏心させて配置した構成に相当するものがなく、また、参考特許文献2,3と同様に現像スリーブ133と磁石ローラ132aとが同じ方向に回転するようになっている。このため、同じ方向に回転させた場合での磁石ローラに対する現像剤の対向回数はさほど多くないといえる。特に、参考特許文献4においては、穂立ちした状態の現像剤をその穂立ち状態のままで現像領域に向けて移動させることが主眼となっているだけであることから、現像剤の自転運動(転動)による現像剤の移動は行われないために、現像スリーブと磁石ローラとが同一速度で回転しており、かような構成においては現像剤と磁石ローラ側の磁極との対向回数がほとんどないといえる。このため、本実施形態で得ようとする現像剤と磁石との対向回数を増加させて摩擦接触機会を増やす考えがないといえる。
【0186】
従って、現像スリーブと磁石ローラとの回転速度に差を設けることによって現像剤と磁石ローラ側の磁極との対向回数の増加によるトナーとキャリアとの摩擦接触回数を増やす作用効果を参考特許文献4から期待することはできないといえる。
【0187】
以上のような実施形態においては、単に現像スリーブと磁石ローラとの間の空間に現像スリーブ表面への磁力を及ぼさないように磁気シールド板を設ける構成を用いた場合でも、現像スリーブ上の現像剤と磁石ローラ側の磁極との対向回数を増加させることができるので、現像剤に含まれるキャリアとトナーとの摩擦接触回数を増やしてトナーの帯電量を確保することができ、これによりトナーの飛散を防止することができる。しかも、磁石ローラに偶数極の磁極を設けて反撥磁極を設けない場合でも現像スリーブ上からの現像剤の剥離を容易化することができる。さらには、現像剤の剥離に用いられる磁気シールド板が磁石ローラの磁極に対向した場合の振動をも防いで騒音の発生などがない現像装置を得ることができる。
【0188】
なお、本実施形態に用いられる現像剤は、次の構成が用いられている。
【0189】
本実施形態に用いられるトナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤を含有し、必要に応じて離型剤や帯電制御剤、その他の成分が含有される。また、添加剤として上述のもの以外に、必要に応じて流動性向上剤やその他の成分が添加される。これら材料に関しては、公知のものがすべて可能である。
結着樹脂としては、例えば、スチレン、パラクロレスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)タクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリロニトリル酸、(メタ)アクリアミド、(メタ)アクリル酸、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル。ビニルメチルケトン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、ブタジエン等の単量体の重量体、又は、これらの単量体の2種類以上からなる共重合体、あるいはそれらの混合物が挙げられる。その他、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ロジン、変性ロジン、テルベン樹脂、フェノール樹脂、水添石油樹脂、アイオノマー樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂等が単独あるいは混合して使用できる。
【0190】
着色剤としては公知の染料及び顔料がすべて使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレトVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。使用量は一般にバインダー樹脂100重量部に対し0.1〜50重量部である。
【0191】
帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む。)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。
荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくは結着樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、2〜5重量部の範囲がよい。0.1重量部未満では、トナーの負帯電が不足し実用的でない。10重量部を越える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、キャリアとの静電的吸引力の増大のため、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。
【0192】
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等の低分子量ポリオレフィンワックスやフィッシャー・トロプシュワックス等の合成炭化水素系ワックスや密ロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、モンタンワックス、等の天然ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックス類、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、等の高級脂肪酸及び高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸アミド等及びこれらの各種変性ワックスが挙げられる。
【0193】
これらは1種または2種以上を併用して用いることができるが、融点が70〜125℃の範囲のものを使用するのが好ましい。融点が70℃以上とすることにより転写性、耐久性が優れたトナーとすることができ、融点を125℃以下とすることにより定着時に速やかに溶融し、確実な離型効果を発揮できる。これらの離型剤の使用量は、トナーに対して1〜15重量%が好適である。1重量%より少ない場合にはオフセット防止効果が不充分であり、15重量%以上では転写性、耐久性が低下する。
【0194】
添加剤(外添剤)としては、少なくとも体積平均粒径50〜500nm、嵩密度0.3g/cm3以上の微粒子を添加する。外添量としては、トナー母体に対して0.2〜3重量%が好ましい。この範囲より少ないとトナー間やトナーとその他との間に適度な空隙を形成する効果が発現されない。逆に多いと、流動性を阻害したり、脱離量が多くなることにより外添剤の凝集体ができ、画像品質を低下させる。
上述の添加剤と合わせて、この範囲以外の添加剤を添加することも可能であり、流動性向上を目的として体積平均粒径が小さい微粒子を添加することが好ましい。
【0195】
本実施形態での添加剤において、無機化合物としては、SiO2 、TiO2 、Al2O3 、MgO、CuO、ZnO、SnO2 、CeO2 、Fe2O3 、BaO、CaO、K2O、Na2O、ZrO2 、CaO・SiO2 、K2O(TiO2)n、Al2O3・2SO2 、CaCO3、MgCO3、BaSO4、MgSO4、SrTiO3等を例示することができ、好ましくは、SiO2 、TiO2 、Al2O3 があげられる。特にこれら無機化合物は各種のカップリング剤、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジクロロシラン、オクチルトリメトキシシラン等で疎水化処理が施されていてもよい。
また、有機化合物の添加剤としては、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよく、例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂微粒子としては、上記の樹脂を2種以上併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用が好ましい。
【0196】
ビニル系樹脂の具体的な例としては、ビニル系モノマーを単独重合又は共重合したポリマーで、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0197】
本実施形態における添加剤(微粒子)は、現像装置内の現像剤用のトナーとしても優れている。すなわち、トナー粒子、感光体ドラム、帯電付与部材との接触面積が非常に小さく、均等に接触するので付着力低減効果が大きく、現像・転写効率の向上に有効である。さらに、コロの役割を果たすため、感光体ドラムを摩耗又は損傷させることなく、クリーニングブレードと感光体ドラムとの高ストレス(高荷重、高速度等)下でのクリーニングの際も、トナー粒子に埋没し難く、あるいは少々埋没しても離脱、復帰が可能であるので、長期間にわたって安定した特性を得ることができる。さらに、トナーの表面から適度に脱離し、クリーニングブレードの先端部に蓄積し、いわゆるダム効果によって、ブレードからトナーが通過する現象を防止する効果がある。
【0198】
本実施形態におけるトナーの製造方法としては、トナー構成材料を溶融混練後、粉砕分級して得る方法が従来の方法として一般的であるが、この方法に限らず、重合法等も含めてさまざまな方法が可能である。
【0199】
重合法としては懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法などが可能であり、重合法とは異なるが溶解懸濁法、ポリマー懸濁法等の他、伸長反応法等が使用可能である。
【0200】
先に説明した粒径範囲や円形度のトナーを容易に得られる点では、従来の方法以外が好ましい。また、粉砕分級後のトナーを加熱処理することにより円形度を調整しても良い。
【0201】
本実施形態における添加剤の添加方法は特に制限されず、トナー母体粒子と添加剤とを各種の公知の混合装置を用いて、機械的に混合して付着させる方法や、液相中でトナー母体粒子と添加剤とを界面活性剤等で均一に分散させ、付着処理後、乾燥させる方法等がある。
【0202】
先に説明したトナーの粒径分布は、コールターカウンター法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置を用いて測定することができる。これら装置として、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)があげられる。以下に測定方法について述べる。
【0203】
まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理をおこない、上述の測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの重量、個数を測定して、重量分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)を求めることができる。
【0204】
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0205】
先に説明したトナーの円形度は、次式により得られた値である。
円形度=(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
この円形度はトナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
【0206】
円形度は東亜医用電子製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて測定することができる。具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、さらに測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理をおこない、分散液濃度を3000〜10000個/μlとして上述の装置によりトナーの形状を測定する。
【0207】
以下、本実施形態に用いられるキャリアについて補足的に説明する。
本実施形態で用いられるキャリアは、重量平均粒径が20〜60μm(好ましくは、20〜45μmである。)になるように形成されている。この粒径範囲は、現像装置内の現像剤用のキャリアとしても優れている。
【0208】
キャリアの平均粒径が20μm未満であると、キャリア粒子の分布において微粉が多くなり、1粒子当たりの磁化が低くなってキャリア飛散を生じることがある。これに対してキャリアの平均粒径が45μmを超えると、現像工程時のキャリアの穂立ちが粗くなって、ベタやハーフトーンの均一性が劣る場合がある(特に、平均粒径が60μmを超えると顕著になる。)。また比表面積が低下するため、小粒径トナーではトナーの飛散が生じることがある。
【0209】
キャリアとしては、粒径以外に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と芯材を被覆する樹脂層とを有するものが好ましい。
【0210】
芯材の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、50〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料等が好ましく、画像濃度の確保の点では、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75〜120emu/g)等の高磁化材料が好ましい。また、トナーが穂立ち状態となっている感光体ドラムへの当りを弱くでき高画質化に有利である点で、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30〜80emu/g)等の弱磁化材料が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0211】
キャリアの樹脂層の材料としては、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0212】
樹脂層には、必要に応じて導電粉等を含有させてもよく、その導電粉としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの導電粉の平均粒子径としては、1μm以下が好ましい。平均粒子径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
【0213】
キャリアの樹脂層は、例えば、前記シリコーン樹脂等を溶剤に溶解させて塗布溶液を調製した後、該塗布溶液を前記芯材の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼付をおこなうことにより形成することができる。塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法等が挙げられる。
【0214】
キャリアにおける樹脂層の量としては、0.01〜5.0質量%が好ましい。樹脂層の量が、0.01質量%未満であると、芯材の表面に均一な樹脂層を形成することができないことがあり、5.0質量%を超えると、樹脂層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生し、均一なキャリア粒子が得られないことがある。
【0215】
本実施形態で用いられる現像剤(プレミックストナー)は、上述したトナーとキャリアとを混合したものである。トナーとキャリアとは混合により摩擦帯電する。混合は公知の混合機を使用しておこなうことができる。
【0216】
また、現像装置内に予め収容される現像剤(初期剤)も、上述したトナーとキャリアとを混合したものである。現像剤におけるキャリアの含有量(キャリア濃度)としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、90〜98質量%が好ましく、93〜97質量%がより好ましい。
【符号の説明】
【0217】
1 感光体ドラム
4 現像装置
81 現像スリーブ
82 磁石ローラ
85,85’ 磁気シールド板
96 磁性シート
T 偏心量
U 現像スリーブと磁石ローラとの間の隙間空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0218】
【特許文献1】特許第3127594号公報
【特許文献2】特開2007−101797号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に形成されている静電潜像に対してトナーとキャリアとを含む二成分系現像剤を供給する現像剤担持体を備えた現像装置であって、
前記現像剤担持体の内部には、現像剤を穂立ちさせて搬送させる磁極を備えた回転可能な磁界発生手段が配置され、
前記磁界発生手段は、前記現像剤担持体の断面中心に対して前記像担持体に対して接近する向きに自らの断面中心を偏心させて配置され、
該偏心により前記磁界発生手段における前記像担持体と対向する側と反対側および前記現像剤担持体内部の間に存在する隙間空間には該磁界発生手段の一部を覆うことができる磁気遮蔽部材が配置されていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記磁界発生手段には、その回転方向に沿って偶数極の磁極が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記磁気遮蔽部材は、前記磁界発生手段に設けられている磁極間の角度よりも大きい遮蔽角度を持たせて設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記磁気遮蔽部材は、前記磁界発生手段の回転方向に沿った端縁が該磁界発生手段に設けられている磁極と平行しない形態とされていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の現像装置。
【請求項5】
前記磁気遮蔽部材は、前記磁界発生手段の長手方向に沿って複数の磁極を配置して構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の現像装置。
【請求項6】
前記磁気遮蔽部材に設けられている複数の磁極は、前記磁界発生手段に設けられている磁極からの磁力による該遮蔽部材の長手方向に沿った撓み振動を抑制することができる極性を設定されていることを特徴とする請求項5に記載の現像装置。
【請求項7】
前記磁気遮蔽部材には、複数の磁極を有する磁性シートが貼り付けられて構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の現像装置。
【請求項8】
前記磁気遮蔽部材は、板状部材が用いられ、該板状部材は長手方向における厚を異ならせて構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の現像装置。
【請求項9】
前記磁気遮蔽部材は、前記像担持体に偏る側と反対側御の磁界発生手段表面と前記現像剤担持体内面との間の隙間空間において該磁界発生手段よりも前記現像剤担持体内面側に近寄らせて配置されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の現像装置。
【請求項10】
前記磁界発生手段は、前記現像剤担持体と同方向あるいは相対方向に回転可能であり、同方向に回転する場合には相対速度差が設定されて回転することを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかに記載の現像装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
少なくとも前記現像装置および像担持体が纏めて収容されるプロセスカートリッジを備えたことを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項1】
像担持体に形成されている静電潜像に対してトナーとキャリアとを含む二成分系現像剤を供給する現像剤担持体を備えた現像装置であって、
前記現像剤担持体の内部には、現像剤を穂立ちさせて搬送させる磁極を備えた回転可能な磁界発生手段が配置され、
前記磁界発生手段は、前記現像剤担持体の断面中心に対して前記像担持体に対して接近する向きに自らの断面中心を偏心させて配置され、
該偏心により前記磁界発生手段における前記像担持体と対向する側と反対側および前記現像剤担持体内部の間に存在する隙間空間には該磁界発生手段の一部を覆うことができる磁気遮蔽部材が配置されていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記磁界発生手段には、その回転方向に沿って偶数極の磁極が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記磁気遮蔽部材は、前記磁界発生手段に設けられている磁極間の角度よりも大きい遮蔽角度を持たせて設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記磁気遮蔽部材は、前記磁界発生手段の回転方向に沿った端縁が該磁界発生手段に設けられている磁極と平行しない形態とされていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の現像装置。
【請求項5】
前記磁気遮蔽部材は、前記磁界発生手段の長手方向に沿って複数の磁極を配置して構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の現像装置。
【請求項6】
前記磁気遮蔽部材に設けられている複数の磁極は、前記磁界発生手段に設けられている磁極からの磁力による該遮蔽部材の長手方向に沿った撓み振動を抑制することができる極性を設定されていることを特徴とする請求項5に記載の現像装置。
【請求項7】
前記磁気遮蔽部材には、複数の磁極を有する磁性シートが貼り付けられて構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の現像装置。
【請求項8】
前記磁気遮蔽部材は、板状部材が用いられ、該板状部材は長手方向における厚を異ならせて構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の現像装置。
【請求項9】
前記磁気遮蔽部材は、前記像担持体に偏る側と反対側御の磁界発生手段表面と前記現像剤担持体内面との間の隙間空間において該磁界発生手段よりも前記現像剤担持体内面側に近寄らせて配置されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の現像装置。
【請求項10】
前記磁界発生手段は、前記現像剤担持体と同方向あるいは相対方向に回転可能であり、同方向に回転する場合には相対速度差が設定されて回転することを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかに記載の現像装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
少なくとも前記現像装置および像担持体が纏めて収容されるプロセスカートリッジを備えたことを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−282065(P2010−282065A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136052(P2009−136052)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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