説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】従来よりも画像に濃度ムラ等の画像不良を生じにくくすることができる現像装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置10は、静電潜像を保持する感光体28と、感光体28に供給する現像剤を保持し、表面に複数の溝74が形成された現像スリーブ68と、現像スリーブ68に連結され、現像スリーブ68に駆動を伝達する歯車78とを有している。現像スリーブ68は、形成される溝74の数が94であり、溝74の数は、歯車78の歯数である20の非整数倍となっている。現像スリーブ68は、溝74が形成されている以外の表面粗さがRa0.3μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤を用いて潜像を現像する現像装置及びこの現像装置を有する複写機、ファクシミリ装置、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現像装置及び画像形成装置に関する技術であって、溝が形成されたロールを用いる技術が知られている。例えば、特許文献1には、潜像担持体の潜像にトナーを付着させて該潜像を現像すべく、溝が形成された表面にトナーと磁性キャリアとを含有する二成分現像剤を担持する現像剤担持体において、上記溝の内面を他の表面部分よりも粗面化せしめた現像剤担持体、この現像剤担持体を備えた現像装置、及びこの現像装置を備えた画像形成装置が開示されている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−109873
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来よりも画像に濃度ムラ等の画像不良を生じにくくすることができる現像装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の特徴とするところは、潜像に供給する現像剤を保持し、表面で軸方向に溝が形成されたロールと、このロールに駆動力を伝達する歯車と、を有し、前記ロールに形成された溝の数が、前記歯車の歯数の非整数倍である現像装置にある。
【0006】
好適には、前記ロールは、溝が形成された以外の部分の算術平均粗さRaが0.3μm以下である。
【0007】
また、好適には、トナーと、形状係数が120以下のキャリアとからなる現像剤を用いる。
【0008】
また、本発明の第2の特徴とするところは、潜像を保持する潜像保持体と、この潜像保持体に供給する現像剤を保持し、表面で軸方向に溝が形成されたロールと、このロールに駆動力を伝達する歯車と、を有し、前記ロールに形成された溝の数が、前記歯車の歯数の非整数倍である画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来よりも画像に濃度ムラ等の画像不良を生じにくくすることができる現像装置及び画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の実施形態に係る画像形成装置10の概要が示されている。画像形成装置10は、画像形成装置本体12を有し、この画像形成装置本体12の上部にシートが排出される排出部16が設けられている。また、画像形成装置本体12内に画像形成手段14と、例えば2段のシート供給装置18、18とが搭載されている。
【0011】
画像形成手段14は電子写真方式のもので、潜像保持体として用いられるドラム形状の感光体28と、感光体28を一様帯電する帯電装置30と、帯電装置30により帯電された感光体28に光により潜像を書き込む光書き込み装置32と、光書き込み装置32により感光体28の表面に形成された潜像を現像剤により可視化する現像装置34と、この現像装置34により形成された現像剤像をシートに転写する、例えば転写ロールからなる転写装置36と、例えばクリーニングブレード等を備え、感光体28に残存する現像剤をクリーニングするクリーニング装置38と、転写装置36により転写されたシート上の現像剤像をシートに定着させる定着装置40とから構成されている。光書き込み装置32は例えば走査型のレーザ露光装置からなり、感光体28に潜像を形成する。尚、光書き込み装置32は、他の実施形態としてLEDや面発光レーザ等を用いることができる。
【0012】
画像形成手段14を構成する部材の一部又は全部をカートリッジとして一体化して良い。例えば、感光体28、帯電装置30、現像装置34及びクリーニング装置38を、プロセスカートリッジとして一体化し、一体として画像形成装置本体12内に着脱できるようにしても良い。
【0013】
シート供給装置18、18は、例えば給紙カセットからなるシート収納部19、19と、シート収納部に収納された最上位のシートをピックアップするピックアップロール20、20と、ピックアップロール20、20によりピックアップされたシートを搬送するフィードロール21、21とをそれぞれ有し、シート収納部19、19に積層された状態で収納されているシートを、それぞれ前述の画像形成手段14へと供給する。
【0014】
フィードロール21のシート搬送方向下流にはレジストロール22が設けられ、このレジストロール22の下流側には、前述の転写装置36と感光体28とが設けられ、さらに下流側には前述の定着装置40が設けられている。
【0015】
図2には、現像装置34が示されている。現像装置34は、非磁性トナーと磁性キャリアとからなる二成分現像剤を使用するものであり、磁性キャリアとしては、形状係数が120以下のものが用いられる。ここで、形状係数は、SF1で表され、光学顕微鏡(例えばミクロフォトFXA:ニコン社製)で得た磁性キャリアの拡大写真を、イメージアナライザー(例えば、Luzex III:NIRECO社製)により画像解析を行って、下記式(1)により算出される。形状係数は、磁性キャリアの投影面積と、それに外接する円の面積との比で表しており、真球の場合に100となり、形状が崩れるにつれ増加する。
【0016】
SF1=(トナー径の絶対最大長)2/(トナー粒子の投影面積)×(π/4)×100・・・式(1)
【0017】
現像装置34は、現像装置本体52を有し、現像装置本体52には、二成分現像剤を収容する収容部として用いられる収容室54と、感光体28に対向して開設される現像用開口部56が形成された現像室58とが設けられている。
【0018】
収容室54にはオーガ60が、現像室58にはオーガ62及びロールとして用いられる現像ロール64が設けられている。オーガ60、62は、現像剤を撹拌し、撹拌した現像剤を現像ロール64へと搬送するために用いられる。また、現像室58に層厚規制手段として用いられるトリミング部材66が設けられている。トリミング部材66は、現像ロール64の表面に保持される二成分現像剤の層厚が一定になるように規制する。
【0019】
現像ロール64は、現像剤保持体として用いられる現像スリーブ68と、現像スリーブ68の内部に位置し、現像装置本体52に対して固定して設置されたマグネットロール70とからなる。マグネットロール70は、永久磁石からなる複数のS磁極、N磁極が適宜配置されていて、マグネットロール70から発生される磁力によって、現像スリーブ68表面に磁気ブラシが保持されるようになっている。
【0020】
図3には、現像スリーブ68と、現像スリーブ68を回転駆動させる駆動機構72とが示されている。現像スリーブ68は、円筒形状を有し、例えばアルミニウム等からなる。現像スリーブ68の外径は18mmであり、表面には長手方向(後述する軸76の軸方向)に溝74が略一定間隔で形成されている。溝74は、現像スリーブ68の表面全域に渡り94本が形成されている。
【0021】
駆動機構72は、現像スリーブ68に軸76を介して連結された歯車78と、歯車78に噛み合う歯車80と、歯車80に連結され、歯車80に駆動を伝達する例えばモータ等からなる駆動源82とを有している。駆動源82からの回転駆動が歯車80、歯車78、及び軸76を介して現像スリーブ68へと伝達されて、現像スリーブ68が回転する。現像スリーブの周速は200(mm/s)であり、現像スリーブ68には、感光体28との間で形成される現像領域に現像電界を形成するための現像バイアス電圧が図示しないバイアス電源から印加されている。現像スリーブの周速は200(mm/s)であるのに対して、感光体周速度は100(mm/s)である。
【0022】
歯車78としては、歯数が20である歯車が用いられる。歯車78及び歯車80としては、斜歯歯車を用いることが望ましい。
【0023】
図4には、現像スリーブ68の表面の状態が示されている。溝74は、V字形状で底部の開き角は約90度であり、溝74深さは約100μmである。現像スリーブ68の溝の無い部分は、算術平均粗さRaが0.3以下である。尚、表面粗さの測定は、JIS B0601−1994に準拠して測定した。
【0024】
以上のように構成された画像形成装置10では、帯電装置30が感光体28の表面を均一に帯電し、均一に帯電された感光体28に表面に光書き込み装置32が書き込みを行うことで、感光体28の表面に潜像が形勢され、この潜像を現像装置34が現像することで感光体28の表面に現像剤像が形成され、この現像剤像を転写装置36がシート供給装置18、18のいずれかから供給されたシートに転写し、シートに転写された現像剤像が定着装置40によりシートへと転写され、現像剤像が転写されたシートが排出部16へと排出される。
【0025】
現像装置34においては、オーガ60、62により二成分現像剤が撹拌されて、摩擦帯電されつつ現像ロール64に向けて搬送される。現像ロール64へ向けて搬送された現像剤は、その一部が現像ロール64近傍を通過する際に、マグネットロール70の磁力によって、現像スリーブ68の表面に吸引される。現像動作中における現像スリーブ68表面に吸引される現像剤の量は、約400(g/m2)である。現像スリーブ68の表面に吸引された現像剤は、現像バイアスにより感光体28表面へと移動し、感光体28表面に形成された静電潜像を現像する。
【0026】
現像スリーブ68においては、磁気ブラシは溝74のある部分に集中して存在する傾向があり、現像ロール64と感光体28との間に位置する現像位置90を磁気ブラシが通過する場合に、現像位置90において、溝74が形成された部分と溝74の無い部分との現像剤搬送量の変化を少なくすることが望ましい。そこで、先述のように現像スリーブ68の溝74以外の部分のRaを0.3以下と滑らかにして、溝74以外の部分に磁気ブラシの穂立ちが存在しにくく、溝74の部分に磁気ブラシの穂立ちが多く存在するようにして、現像位置90で磁気ブラシが押し狭められ、現像スリーブ68の溝74のある部分、無い部分にかかわらず現像剤が高密度に存在するという状態で現像が行われるようにしている。
【0027】
現像位置90の終了部側においては、磁気ブラシが溝74の部分を基点として再形成され、溝74のある部分と、溝74の無い部分とでは磁気ブラシの密度が大きく異なる状態となる。このため、この現像位置90の終了部側における磁気ブラシの状態の差の影響により、感光体28の表面に形成される現像剤像に濃度ムラが生じてしまう恐れがある。そこで、この画像形成装置10では、先述のように現像スリーブ68に94本との十分な数の溝74を形成することにより、現像スリーブ68に溝74が形成されることにより生じる濃度ムラの発生を目視では判別できない程度まで抑制しようとしている。
【0028】
溝74のピッチを十分小さくしても、現像スリーブ68に駆動を伝達する歯車78の影響を受けて、濃度ムラが大きくなってしまうとの弊害が生じることがある。すなわち、歯車78と、歯車78に駆動を伝達する歯車80との接触によって振動が発生し、現像位置90における現像スリーブ68と感光体28との間隔が変化することにより、濃淡ムラが増大してしまうことがある。具体的には、図5に示されるように、現像スリーブ68の特定の溝74に着目した場合に、その溝74と歯車78における溝74に最も近い歯79とが、現像スリーブ68及び歯車78の回転軸と垂直な面において、回転中心Oを中心としてなす角度θ(以下、位相差とする)がゼロとなる位置で、歯車78の振動を原因とする濃度差と、溝74が位置することによる濃度差とが重畳し、像度ムラが増大してしまうことがある。そこで、この画像形成装置10では、歯車78の影響による濃度ムラを抑制するために独自の工夫をこらしている。尚、図5においては、説明の便宜上、溝74を拡大して示すとともに、溝74のピッチを広く示している。
【0029】
現像装置34では、現像スリーブ68に形成される溝74の数を歯車78の歯数の非整数倍とすることで、歯車78の影響のよる濃度ムラの発生を抑制している。すなわち、現像スリーブ68に形成される溝74の数は94本であり、歯車78の歯数は20であり、94/20=4.7と、現像スリーブ68に形成される溝74の数を歯車78の歯数の非整数倍としている。溝74の数を歯車78の非整数倍とすると、直近の歯79と位相差がゼロ又はゼロに近い値となる溝を少なくすることができ、形成される画像の濃度ムラを抑制することができる。また、溝74との位相差がゼロ又はゼロに近い値となる歯を少なくするために、歯車78の歯数は、より少なくすることが望ましい。
【0030】
図6には、この実施形態に係る現像スリーブ68に形成された94本の溝74について、直近の歯79との位相差を計算した結果が示されている。図6に示されるように、位相が一致する(位相差がゼロとなる)溝74が十分に少なく、且つ位相差がゼロとなる溝74の分布も等間隔でないため、濃度ムラが抑制され、濃度ムラが目立ちにくい。
【0031】
図7には、比較例に係る画像形成装置10において、現像スリーブ68に形成された溝74について、直近の歯79との位相差を計算した結果が示されている。この比較例においては、先述の実施形態と同様に歯車78の歯数は20である。一方、現像スリーブ68に形成された溝74の数については、先述の実施形態では94であったのに対して、この比較例では100となっている。すなわち、溝74の数は、100/20=5と歯数の整数倍となっている。この比較例においては、歯車78の歯1個について5本の溝74が対応するため、一箇所で位相差がゼロ又はゼロに近い値となると、5個の歯ごとに、位相差がゼロ又はゼロに近い値となり、等間隔の濃度ムラが発生しやすい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上述べたように、本発明は、現像剤を保持する現像剤ロールを備えた現像装置及びこの現像装置を備え、例えば複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概要を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置に用いられる現像装置を側面から示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像形成装置に用いられる現像スリーブと、現像スリーブを駆動させる機構とを示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る画像形成装置に用いられる現像スリーブの表面の状態を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態に用いられる現像スリーブの表面に形成された溝と、溝の直近に位置する歯車の歯との位置関係を説明する説明図である。
【図6】本発明の実施形態に用いられる現像スリーブの表面に形成された溝と、溝の直近に位置する歯車の歯とのなす角度の分布を示すグラフである。
【図7】本発明の比較例に用いられる現像スリーブの表面に形成された溝と、溝の直近に位置する歯車の歯とのなす角度の分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0034】
10 画像形成装置
14 画像形成手段
28 感光体
34 現像装置
64 現像ロール
68 現像スリーブ
72 駆動機構
72 歯車
74 溝
78 歯車
79 歯
80 歯車
82 駆動源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像に供給する現像剤を保持し、表面で軸方向に溝が形成されたロールと、
このロールに駆動力を伝達する歯車と、
を有し、
前記ロールに形成された溝の数が、前記歯車の歯数の非整数倍である現像装置。
【請求項2】
前記ロールは、溝が形成された以外の部分の算術平均粗さRaが0.3μm以下である請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
トナーと、形状係数が120以下のキャリアとからなる現像剤を用いる請求項1又は2記載の現像装置。
【請求項4】
潜像を保持する潜像保持体と、
この潜像保持体に供給する現像剤を保持し、表面で軸方向に溝が形成されたロールと、
このロールに駆動力を伝達する歯車と、
を有し、
前記ロールに形成された溝の数が、前記歯車の歯数の非整数倍である画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−83472(P2008−83472A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264318(P2006−264318)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】