説明

現像装置

【課題】 層厚規制部材の近傍から現像剤が漏出する現象を抑制すると同時に、下流現像剤担持体の両端部から現像剤が漏出する現象を抑制することができる現像装置を提供する。
【解決手段】 感光体ドラム1の回転方向の上流側で感光体ドラム1に対向して配置され、現像剤の層厚を規制する規制ブレード21によって現像剤の層厚が規制され、端部から中央部への搬送能力が得られるような粗面化処理が両端部に施されていない上流現像スリーブ26と、感光体ドラム1の回転方向の下流側で感光体ドラム1に対向して配置され、端部から中央部への搬送能力が得られるような粗面化処理が両端部に施されている下流現像スリーブ28と、を備え、上流現像スリーブ26及び下流現像スリーブ28は、同一方向に回転可能で、感光体ドラム1の表面の静電像を現像する現像装置4を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体の表面に形成される静電像を現像する現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、像担持体の表面に形成された静電像を現像する現像装置に関する発明が存在する。現像装置は、現像スリーブと、現像スリーブの表面の現像剤層の層厚を規制する規制ブレードと、を備える。現像スリーブは、両端部を軸受で回転自在に支持される。現像装置の内部の現像剤は、現像容器の内部を循環し、現像スリーブに担持されて搬送される中で、現像スリーブの表面に沿って軸受の方向へと移動することがある。そうすると、現像剤は、軸受を通過して現像容器の外部へと漏出又は飛散したり、軸受の内部に溜まって軸受の機能を阻害したりする。その結果、現像スリーブの円滑な回転が不可能になる懸念があった。
【0003】
こうした現像スリーブの両端部からの現像剤の漏れ又は飛散を抑制するために、現像スリーブの両端部に弾性シール部材を取り付ける構成が提案されている。ただし、弾性シール部材が現像スリーブの外周面を圧接するために、現像スリーブへの負荷が大きく、弾性シール部材の劣化によってシール性が低下するという問題もある。そのため、現像装置の寿命が長く長期間の耐久が要求される場合には不適である。こうした状況の中、特許文献1に記載されるような発明が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の発明は、磁気吸着するトナー又は磁性キャリアを使用する現像装置であって、現像スリーブに対向する位置に磁石を配置し、磁石及び現像スリーブの間に磁気穂(磁気ブラシ)を形成してシールする現像装置に関する発明である。現像スリーブの両端部の表面と所定間隔を維持して非接触で磁石が対向すれば、磁石と現像スリーブの内部のマグネットローラの間に磁力線が生じ、磁石と現像スリーブの間に磁気穂が形成される。この磁気穂によるシール構成は、磁石と現像スリーブとが非接触であるために、現像スリーブの回転負荷を小さくし、また摩耗等による劣化を生じないために長寿命となる利点がある。
【0005】
また、現像スリーブの表面の現像剤が中央部から両端部の方へと移動して現像スリーブの両端部からの現像剤が漏出又は飛散するのを抑制するために、特許文献2に記載されるような発明が開示される。
【0006】
特許文献2に記載の発明は、現像スリーブの両端部に漏出してきた現像剤を徐々に中央側へと押し戻す現像装置に関する発明である。ここでは、現像スリーブの表面には複数本の溝が形成されており、これらの溝は現像スリーブの両端部において一定角度で傾斜して形成されている。こうした溝によって、現像スリーブが回転すると、現像スリーブの両端部の現像剤が積極的に中央部に戻っていくようにする。その結果、現像スリーブの両端部からの現像剤の漏出又は飛散が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−262171号公報
【特許文献2】特開2006−343542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、現像スリーブの両端部からの現像剤の漏出又は飛散に対して一定の効果が得られるが、完全ではない。現像スリーブの内部のマグネットローラと磁石の間で磁力が生じて現像スリーブ及び磁石の間に磁気穂が形成される場合には、磁気穂が現像スリーブ及び磁石の間をシールできる。但し、現像スリーブの内部のマグネットローラが磁石に対向する位置にまで長くない等の構成では、現像スリーブの内部のマグネットローラと磁石の間で磁力が生じなくて現像スリーブ及び磁石の間に磁気穂が形成されず、磁気穂によるシールが不十分となる。このときに、現像剤は磁石で拘束されるが、磁石で拘束できる現像剤量には限度がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の発明では、現像スリーブの両端部に溝が形成されているが、こうした溝は、現像スリーブが回転すると現像剤を現像スリーブの搬送方向に搬送する搬送能力を発揮して、新たな現像剤の漏出又は飛散を誘発する可能性がある。すなわち、現像スリーブが搬送能力を持っていると、磁気穂の一部が搬送されてしまい、ひどい場合には現像剤の漏出が発生する場合がある。この問題は、特に規制ブレード(層厚規制部材)の近傍で懸念される。
【0010】
さらに、特許文献2に記載の発明では、現像スリーブの回転方向で現像スリーブの上流側の部分は、規制ブレードによって規制された現像剤が剤溜まりを形成しているのが一般的である。現像剤がある程度の圧がかかった状態で剤溜まりを形成した上で、規制ブレードに規制されると、現像剤は行き場を失って現像スリーブの両端部から漏出し易くなる。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑み、層厚規制部材の近傍から現像剤が漏出する現象を抑制すると同時に、下流現像剤担持体の両端部から現像剤が漏出する現象を抑制することができる現像装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の現像装置は、像担持体の回転方向の上流側で前記像担持体に対向して配置され、現像剤の層厚を規制する層厚規制部材によって現像剤の層厚が規制され、端部から中央部への搬送能力が得られるような粗面化処理が両端部に施されていない上流現像剤担持体と、前記上流現像剤担持体よりも前記像担持体の回転方向の下流側で前記像担持体に対向して配置され、端部から中央部への搬送能力が得られるような粗面化処理が両端部に施されている下流現像剤担持体と、を備え、前記上流現像剤担持体及び前記下流現像剤担持体は、同一方向に回転可能で、前記像担持体の表面の静電像を現像する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上流現像剤担持体の両端部は粗面化処理されないために現像剤が層厚規制部材の近傍から漏出する現象は抑制される。同時に、下流現像剤担持体の両端部は現像剤が端部から中央部に向かうように粗面化処理されているために下流現像剤担持体の両端部から現像剤が漏出する現象は抑制される。その結果、層厚規制部材の近傍から現像剤が漏出する現象を抑制すると同時に、下流現像剤担持体の両端部から現像剤が漏出する現象を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係る現像装置を備える画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図2】現像装置の構成を示す断面図である。
【図3】現像剤の流れを説明するために上流現像スリーブ及び下流現像スリーブの付近の構成を示す拡大断面図である。
【図4】上流現像スリーブ及び下流現像スリーブの端部の構成を示す拡大断面図である。
【図5】現像装置の内部に配置される上流現像スリーブ及び下流現像スリーブの構成を示す断面図等である。
【図6】下流現像スリーブの端部に形成される溝の傾斜を示す概念図等である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態を実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるから、特に特定的な記載が無い限りは、発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の実施例1に係る現像装置4を備える画像形成装置100の構成を示す断面図である。画像形成装置100は、電子写真画像形成プロセスを利用した画像形成装置である。図1に示されるように、画像形成装置100は画像形成装置本体(以下、単に『装置本体』という)100Aを有し、この装置本体100Aの内部には、画像を形成する画像形成部Pa〜Pdが設けられる。画像形成部Pa〜Pdは、『像担持体』である感光体ドラム1、『転写装置』である転写ローラ6等を含む。少なくとも感光体ドラム1については、プロセスカートリッジに含まれ、プロセスカートリッジとして装置本体100Aに組み込まれる構成としても良い。
【0017】
以下に詳述するが、実施例では、現像スリーブが複数本設けられた構成であり、上流現像スリーブの両端部には、溝等の粗面化処理が施されない。そして、下流現像スリーブの両端部には、現像スリーブの回転を利用しながら両端部の現像剤を積極的に中央部に戻そうとする構成が施されている。こうした構成の一部又は全部は、その代替的な構成に置き換えた別の実施例でも実施できる。
【0018】
従って、画像形成装置であれば、タンデム型/1ドラム型、中間転写型/直接転写型の区別無く実施でき、さらに、二成分現像剤/一成分現像剤の区別も無く実施できる。本実施例では、トナー像の形成に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
【0019】
図1に示すように、画像形成装置100は、中間転写ベルト5に沿って各色の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを配列したタンデム型の中間転写方式のフルカラープリンタである。中間的な転写媒体に沿って無彩色の画像形成部とともに有彩色の画像形成部を複数配置している。画像形成部Paでは、感光体ドラム1aにイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト5に1次転写される。画像形成部Pbでは、感光体ドラム1bにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト5のイエロートナー像に重ねて1次転写される。画像形成部Pc、Pdでは、それぞれ感光体ドラム1c、1dにシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて同様に中間転写ベルト5に順次重ねて1次転写される。
【0020】
中間転写ベルト5に1次転写された四色のトナー像は、2次転写部へ搬送されて記録材Pへ一括して2次転写される。四色のトナー像を2次転写された記録材Pは、定着装置8で加熱加圧を受けて表面にトナー像を定着された後に、積載トレイ9へ排出される。
【0021】
画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、静電像の現像に用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外は、ほぼ同一に構成される。以下では、画像形成部Paについて説明し、他の画像形成部Pb、Pc、Pdについては、説明中の符号末尾のaを、b、c、dに読み替えて説明されるものとする。
【0022】
画像形成部Paは、感光体ドラム1aの周囲に、コロナ帯電器2a、露光装置3a、現像装置4a、1次転写ローラ6a、クリーニング装置7aを配置している。
【0023】
感光体ドラム1aは、アルミニウムシリンダの外周面に負極性の帯電極性を持たせた感光層が形成され、273mm/secのプロセススピードで矢印方向に回転する。コロナ帯電器2aは、コロナ放電に伴う荷電粒子を感光体ドラム1aに照射して、感光体ドラム1aの表面を一様な負極性の電位に帯電する。露光装置3aは、イエローの分解色画像を展開した走査線画像データに応じてON−OFF変調したレーザービームを回転ミラーで走査して、帯電した感光体ドラム1aの表面に画像の静電像を書き込む。
【0024】
現像装置4aは、磁性キャリアと非磁性トナーとを主成分とする二成分現像剤を撹拌して、磁性キャリアを正極性に、非磁性トナーを負極性にそれぞれ帯電させる。帯電した二成分現像剤は、固定磁極の周囲で回転する現像スリーブ(26、28)(図2参照)に担持されて感光体ドラム1aを摺擦する。負極性の直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧が現像スリーブ(26、28)へ印加されることによって、負極性に帯電したトナーが、現像スリーブ(26、28)よりも相対的に正極性になった感光体ドラム1aの静電像へ移転して静電像が反転現像される。
【0025】
1次転写ローラ6aは、中間転写ベルト5を押圧して、感光体ドラム1aと中間転写ベルト5との間に1次転写部を形成する。正極性の直流電圧が1次転写ローラ6aに印加されることによって、感光体ドラム1aに担持された負極性のトナー像が、1次転写部を通過する中間転写ベルト5へ1次転写される。
【0026】
クリーニング装置7aは、感光体ドラム1aにクリーニングブレードを摺擦させて、中間転写ベルト5への1次転写を逃れて感光体ドラム1aに残った転写残トナーを回収する。転写ベルトクリーニング装置10は記録材Pへの2次転写を逃れて中間転写ベルト5に残った転写残トナーを回収する。
【0027】
図2は、現像装置4の構成を示す断面図である。図2に示されるように、現像装置4は、上流現像スリーブ26及び下流現像スリーブ28といった複数本の現像スリーブを備える。現像装置4は現像剤容器22を備え、その内部は隔壁23によって現像室R1と撹拌室R2に区画される。一方、現像室R1および撹拌室R2内には、トナーと磁性キャリアが混合された現像剤が収容されている。本発明で用いる磁気キャリアはフェライトキャリアやバインダ樹脂と磁性金属酸化物及び非磁性金属酸化物からなる樹脂磁性キャリア等を用いればよい。
【0028】
現像室R1内にはスクリュー24が収容されており、回転駆動により現像剤を、現像スリーブ(26、28)の長手方向に沿って搬送する。撹拌室R2内に収容されたスクリュー25による現像剤搬送方向はスクリュー24によるそれとは反対方向である。
【0029】
隔壁23には手前側と奥側に開口が設けられており、スクリュー24で搬送された現像剤がこの開口の1つからスクリュー25に受渡され、スクリュー25で搬送された現像剤が、上記の開口の他の1つからスクリュー24に受渡される。
【0030】
そして、現像剤容器22の感光体ドラム1に近接する部位には開口部が設けられ、その表面に適度な凹凸を有する上流現像スリーブ26および下流現像スリーブ28といった2本の現像スリーブが設けられている。すなわち、現像剤容器22は、上流現像スリーブ26及び下流現像スリーブ28を回転自在に支持すると共に、現像剤を収容可能となっている。なお、この2本の現像スリーブ(26、28)はそれぞれ厚さが1mm、外径が30mm、スラスト方向の長さが350mmである。この上流現像スリーブ26及び下流現像スリーブ28は、同一方向に回転可能で、感光体ドラム1の表面の静電像を現像するようになっている。上流現像スリーブ26は、下流現像スリーブ28よりも上方に配置される。
【0031】
『上流現像剤担持体』である『第1現像剤担持体』としての上流現像スリーブ26は、感光体ドラム1の回転方向の上流側で感光体ドラム1に対向して配置される。また、上流現像スリーブ26は、現像剤の層厚を規制する『層厚規制部材』である規制ブレード21によって現像剤の層厚が規制され、端部から中央部への搬送能力が得られるように両端部に粗面化処理が施されていない。
【0032】
『下流現像剤担持体』である『第2現像剤担持体』としての下流現像スリーブ28は、上流現像スリーブ26よりも感光体ドラム1の回転方向の下流側で感光体ドラム1に対向して配置される。また、下流現像スリーブ28は、端部から中央部への搬送能力が得られるように両端部に粗面化処理が施されている。
【0033】
上流現像スリーブ26の内部には、ローラ状の『第1磁石』であるマグローラ27が固定配置されている。上流現像スリーブ26は、矢印Jの方向(感光体ドラム1の回転方向とは逆方向)に回転し、現像剤を担持しつつ搬送する。上流現像スリーブ26の上部に対向するように規制ブレード21が配置されている。マグローラ27における規制ブレード21の近傍には磁極N1が配置されている。磁極N1の磁力に拘束されて溜った現像剤は、規制ブレード21にて適正な層厚に規制された後、第1現像領域A1に担持搬送される。
【0034】
このマグローラ27は、第1現像領域A1に対向する現像磁極S2を有している。現像磁極S2が、第1現像領域A1に形成する現像磁界により現像剤の磁気ブラシが形成され、この磁気ブラシが第1現像領域A1で矢印a方向に回転する感光体ドラム1に接触して静電像をこの第1現像領域A1で現像する。その際、磁気ブラシに付着しているトナーと、上流現像スリーブ26の表面に付着しているトナーも、静電像の画像領域に転移して現像する。本実施例では、マグローラ27は、前述の磁極N1、S2の他に、磁極S1、N2、N3を有しており、このうち磁極N1と磁極N3は同極で隣り合っており反撥磁界が形成されるため、現像剤に対してバリアが形成されている。
【0035】
また、上流現像スリーブ26の下方には、上流現像スリーブ26及び感光体ドラム1の双方に略対向した領域には、下流現像スリーブ28が矢印K方向(上流現像スリーブとは同一方向)に回転可能に配設されている。この下流現像スリーブ28は上流現像スリーブ26と同様に非磁性材料で構成され、その内部には磁界発生手段であるローラ状の『第2磁石』であるマグローラ29が非回転状態で設置されている。このマグローラ29は磁極S3、N4、S4、N5、S5の5極を有している。このうち、N4極上の磁気ブラシは第2の現像領域A2で感光体ドラム1に接触しており、第1現像領域A1を通過後の感光体ドラム1に対し、更に2度目の現像を行う。
【0036】
また、磁極S3と磁極S5は同極であり磁極S3と磁極S5の間には反発磁界が形成され、現像剤に対してバリアが形成されている。このうちS3極は上流現像スリーブ26に内包されたマグローラ27のN3極に、両スリーブが最も接近している位置の近傍で対向している。
【0037】
図3は、現像剤の流れを説明するために上流現像スリーブ26及び下流現像スリーブ28の付近の構成を示す拡大断面図である。上流現像スリーブ26の磁極N3と磁極N1の間には反発磁界が形成されている。また、下流現像スリーブ28の磁極S3と磁極S5間にも反発磁界が形成されている。そのため、上流現像スリーブ26上を搬送され現像領域を通過してきた現像剤は磁極N3へ至り、反発磁界によって両スリーブの最近接位置を通過することができない。そして、矢印dのように磁極N3から磁極S3方向へのびる磁力線に従って下流現像スリーブ28側へ移動し、下流現像スリーブ28上を撹拌室R2内のスクリュー25まで搬送される。
【0038】
本実施例では上流現像スリーブ26の下に下流現像スリーブ28を設ける。このことで、現像剤は、上流現像スリーブ26をN1→S1→N2→S2→N3と搬送される。その後に、上流現像スリーブ26上の現像剤は、両スリーブの反発磁界によりブロックされ、下流現像スリーブ28へと移動し、下流現像スリーブ28上をS3→N4→S4→N5→S5と搬送される。そして、現像剤は、S5極で反発磁界にブロックされ撹拌室R2へと現像剤が剥ぎ落とされる。
【0039】
なお、受渡極である磁極N3と磁極S3は完全に対向している必要はない。完全に対向している状態から45°のズレの範囲内で略対向していれば、現像剤の受渡はスムーズに行うことが可能である。
【0040】
図4は、現像スリーブ(26、28)の端部の構成を示す拡大断面図である。特に、図4は、現像剤のシールの構成を表している。この図4は、図2のL−L線に沿う上流現像スリーブ26及び下流現像スリーブ28の近傍の構成を示す概略断面図にも相当する。現像装置4は、上流現像スリーブ26の両端部に、上流現像スリーブ26と非接触に包囲するように、板状の『磁気シール部材』である磁性板32を有している。この構成により、上流現像スリーブ26の内部のマグローラ27と磁性板32とで作る磁力によって、上流現像スリーブ26及び磁性板32の間には磁気穂が形成されて隙間が塞がれる。その結果、上流現像スリーブ26の軸方向の隙間から現像剤が漏出又は飛散することを抑制することができる。
【0041】
同様に、現像装置4は、下流現像スリーブ28の両端部に、下流現像スリーブ28と非接触に包囲するように、板状の『磁気シール部材』である磁性板33を有している。この構成により、下流現像スリーブ28の内部のマグローラ29と磁性板33とで作る磁力によって、下流現像スリーブ28及び磁性板33の間には磁気穂が形成されて隙間が塞がれる。その結果、下流現像スリーブ28の軸方向の隙間から現像剤が漏出又は飛散することを抑制することができる。
【0042】
現像装置4は、上流現像スリーブ26の両端部で上流現像スリーブ26の軸方向の更に外側で現像剤容器22に貼付された磁石シート30を有する。マグローラ27に周方向の一部に磁力が弱い領域が存在すると、磁力線が疎となり、磁気穂があまり形成されず、現像剤の漏れの懸念がある。本実施例のマグローラ27のように、同極同士が隣接して存在する(N1とN3の関係)と、同極同士には磁力線が発生しないので、その領域の磁力線が疎となり、現像剤の漏れの懸念がある。磁石シート30があると、磁石シート30と上流現像スリーブ26の間に磁力を発揮し、磁気穂が形成され、隙間が塞がれる。また、磁石シート30は、漏出した現像剤を捕獲する。その結果、上流現像スリーブ26の端部からの現像剤の漏出が更に抑制される。
【0043】
同様に、現像装置4は、下流現像スリーブ28の両端部で下流現像スリーブ28の軸方向の更に外側で現像剤容器22に貼付された磁石シート31を有する。マグローラ29に周方向の一部に磁力が弱い領域が存在すると、磁力線が疎となり、磁気穂があまり形成されず、現像剤の漏れの懸念がある。本実施例のマグローラ29のように、同極同士が隣接して存在する(S3とS5の関係)と、同極同士には磁力線が発生しないので、その領域の磁力線が疎となり、現像剤の漏れの懸念がある。磁石シート31があると、磁石シート31と磁性板33の間に磁力線が生じ、磁気穂が形成され、隙間が塞がれる。また、磁石シート31は、漏出した現像剤を捕獲する。その結果、下流現像スリーブ28の端部からの現像剤の漏出が更に抑制される。
【0044】
なお、磁性板32、33は、自ら磁力を有するものではなく(N極、S極が決まっていない)、例えば鉄板のようなものであって、マグローラ27、29の磁力を受けてマグローラ27、29との間で磁力線を形成するようなものである。これに対して、磁石シート30、31は、自ら磁力を有するものである(N極、S極が決まっている)。磁性板32及び磁石シート30は、上流現像スリーブ26の反発磁界を形成する磁極N1及び磁極N3の間の領域に配置される。磁性板33及び磁石シート31は、下流現像スリーブ28の反発磁界を形成する磁極S3及び磁極S5の間の領域に配置される。磁性板32、33で現像剤をブロックし、それでも漏出する現像剤を磁石シート30、31でブロックする。
【0045】
ただし、これらの磁性板32、33及び磁石シート30、31を用いても、拘束できる現像剤量には限りがあるため、長く耐久を続ける中で現像剤の漏れ又は飛散の発生を完全に防止することはできない。また、磁気穂によるシールはそもそも完全密閉ではなく、また、長期間使用する中で磁石シート30、31への磁気的引力以上の力で押されることがあれば、磁気穂を形成する現像剤は、磁石シート30、31から剥がれて漏れの原因となってしまう。
【0046】
この問題を解決するために、前述の特許文献2では、現像スリーブの表面の中央部から両端部に亘る溝が形成され、溝の両端部は中央部に対して傾斜して構成されている。こうした構成によって、現像スリーブの両端部に漏れ出してきた現像剤が、徐々に現像スリーブの中央部に押し戻される。ただし、現像スリーブの両端部に溝等の粗面化処理を施した場合に、特に、規制ブレードの近傍で新たな漏れが懸念される。
【0047】
本実施例では、特許文献2のように、1本の現像スリーブではなく、複数本(ここでは2本を例示)の現像スリーブを備える構成にしている。そして、各々の現像スリーブの両端部の構成を調整することで、前述の課題が解決した。1本の現像スリーブでは、上記問題を解決することは難しいが、複数本の現像スリーブでは、上記問題を解決することは容易になる。以下詳述する。
【0048】
図5(a)は、現像装置4の内部に配置される上流現像スリーブ26及び下流現像スリーブ28の構成を示す断面図である。図5(a)に示されるように、現像装置4は、2本の現像スリーブ(26、28)を備える。下流現像スリーブ28の両端部には、漏れ出してきた現像剤を徐々に押し戻すために粗面化処理が施されている。この粗面化処理は、下流現像スリーブ28の表面に、軸方向に対して傾斜して周方向に連続して形成される溝28xを形成する処理である。前述したように、下流現像スリーブ28の表面に対向して配置される磁性板33が設けられるが、溝28xは、下流現像スリーブ28の軸方向で磁性板33と対向する位置から外側に形成される。
【0049】
この一方で、上流現像スリーブ26の両端部には、溝26xが形成されてない。特に、上流現像スリーブ26における磁性板32と対向する位置から外側に、溝26xが形成されていない。
【0050】
図5(b)は、比較例1に係る現像装置の内部に配置される上流現像スリーブ126及び下流現像スリーブ128の構成を示す断面図である。比較例1の構成は、上流現像スリーブ126、下流現像スリーブ128は、共に両端部に溝26x、28xが設けられない点に特徴がある。図5(c)は、比較例2に係る現像装置の内部に配置される上流現像スリーブ226及び下流現像スリーブ228の構成を示す断面図である。比較例2の構成は、上流現像スリーブ226、下流現像スリーブ228は、共に両端部に溝26x、28xが設けられた点に特徴がある。
【0051】
図5(d)は、比較例3に係る現像装置の内部に配置される上流現像スリーブ326及び下流現像スリーブ328の構成を示す断面図である。比較例3の構成は、上流現像スリーブ326の端部には溝26xが設けられ、下流現像スリーブ328の端部には溝28xが設けられない点に特徴がある。これらの実施例1及び比較例1〜3の構成に関して、端部からの現像剤の漏れの観点で比較検討を行った。
【0052】
現像装置4からの現像剤の漏出の有無を試験するにあたって、20万枚通紙相当の耐久試験を行った。現像剤の漏れを観察するにあたって、現像剤が現像スリーブの端部から漏出したのか、現像剤が規制ブレードの近傍から漏出したのか、を区別した。現像剤が現像スリーブの端部から漏出する場合とは、磁性板や磁石が現像スリーブとの間に形成する隙間から現像剤が漏出する場合を指す。現像剤が規制ブレードの近傍から漏出する場合とは、以下の2通りを含む。すなわち、磁性板や磁石が現像スリーブとの間に形成する隙間から現像剤が漏出し、その結果、現像剤が規制ブレード及び現像スリーブの間から漏出する場合を含む。また、規制ブレードで規制されて溜まった現像剤が規制ブレード及び現像スリーブの間から直接的に漏出する場合を含む。その結果を、下の[表1]に示した。
【0053】
【表1】

【0054】
比較例1では、上流現像スリーブ126及び下流現像スリーブ128は、共に両端部に溝26x、28xが設けられない構成である。そして、規制ブレード21からの現像剤の漏れは発生しなかったが、耐久後半に下流現像スリーブ28の端部からの現像剤の漏れが徐々に発生した。
【0055】
比較例2では、上流現像スリーブ226及び下流現像スリーブ228は、共に両端部に溝26x、28xが設けられた構成である。そして、現像スリーブ(226、228)の端部からの現像剤の漏れは無かったが、耐久の比較的早い段階から規制ブレード21からの現像剤の漏れが発生した。比較例2では、比較例1で生じていた現像剤が現像スリーブ(126、128)の端部から漏出する現像が抑制された。これは、現像スリーブ(226、228)の両端部の溝26x、28xが、漏れ出してきた現像剤を両端部から中央部の方向に押し戻したためと考えられる。
【0056】
反対に、比較例2では、比較例1で生じなかった現像剤が規制ブレード21から漏出する現象が発生した。この比較例2で、現像剤が規制ブレード21から漏出するのは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、規制ブレード21の近傍では、規制された現像剤がある程度の圧がかかった状態で剤溜まりを形成している。規制ブレード21に規制されて行き場を失った現像剤は、現像スリーブ(226、228)の両端部の方向にも移動し易い状態にある。ただし、この現像剤は、両端部に移動しても、磁性板32や磁石シート30に捕獲され、すぐに現像スリーブ(226、228)の端部から漏出することはない。
【0057】
磁性板32及び磁石シート30で捕獲された現像剤は、磁力線に沿って磁気穂を形成し、この磁気穂が現像スリーブ(226、228)との隙間を塞ぐ。そのために、現像スリーブ(226、228)の端部から漏れ出そうとする現像剤は磁気穂でブロックされ、現像剤の漏出又は飛散が抑制される。このときに、比較例1のように現像スリーブ(126、128)の両端部に溝26x、28xが形成されていない構成では、磁気穂が現像スリーブ(126、128)で搬送されることはない。そのために、磁気穂の一部が剥がれて入れ替わることはあまりなく、磁気穂は漏れ出そうとする現像剤をブロックし続ける。そのため、比較例1では規制ブレード21の近傍からの現像剤の漏れは発生しなかった。
【0058】
一方、比較例2の場合のように上流現像スリーブ226の端部に溝26xが形成された状態では、上流現像スリーブ226の端部に現像剤を現像スリーブ回転方向に搬送する力が発生する。そのため、磁性板32および磁石シート30に拘束された磁気穂の一部が搬送されてしまうことがある。特にマグローラ27の規制ブレード21近傍には、上流現像スリーブ226上の現像剤のコートを安定させるために、規制ブレード21に対向する対向極(規制極)(本実施例ではN1極)を設けられているのが一般的である。
【0059】
そのため、上流現像スリーブ226の端部の規制ブレード21の近傍においては、上流現像スリーブ226の内部のマグローラ27の対向極(磁極N1)と磁性板32および磁石シート30との間に磁力線が生じる。そのため、磁気穂が磁性板32および磁石シート30から上流現像スリーブ26に向かって形成されている。そのため、磁気穂は上流現像スリーブ226の回転による搬送力の影響を受けやすく、磁気穂の一部が上流現像スリーブ226の回転に伴って搬送されやすい。
【0060】
この磁気穂から外れてしまった現像剤は、上流現像スリーブ226の回転に伴い搬送され、規制ブレード21と上流現像スリーブ226の隙間から外部に漏れ出すこととなる。現像剤の一部を失った磁気穂には、規制ブレード21の近傍においては規制ブレード21によって規制されて行き場を失った現像剤がすぐに移動してきて、失われた分を補充する形で磁気穂を形成する。しかし、これら磁気穂の一部は上流現像スリーブ226の回転に伴い再び搬送されてしまい、漏れの原因となる。このように、端部の現像剤の一部が搬送される度に、補充される状態が繰り返されるため、規制ブレード21の近傍からの漏れが断続的に繰り返し続くこととなる。
【0061】
本来、上流現像スリーブ226の端部の溝226xは現像剤を徐々に中央部に押し戻すために設けられているが、特に規制ブレード21の近傍は行き場を失った現像剤が圧を受けながら次から次に端部に供給される。そのため、その効果がうまく発揮されず、断続的に漏れが発生することとなる。
【0062】
比較例3では、上流現像スリーブ326の端部に溝26xが設けられ、下流現像スリーブ328の端部に溝28xが設けられない構成である。そして、耐久の比較的早い段階から規制ブレード21からの現像剤の漏れが発生すると共に、耐久後半に下流現像スリーブ328の端部からの現像剤の漏れが徐々に発生した。
【0063】
規制ブレード21から現像剤の漏れが発生した理由は、規制ブレード21の近傍の現像剤が、回転する上流現像スリーブ326の溝326xによって搬送されてしまうからである。下流現像スリーブ328の端部から現像剤の漏れが発生した理由は、下流現像スリーブ28に現像剤を中央部方向に戻す溝28xがない。そのため、徐々に両端部に運ばれてきた現像剤が磁性板33及び磁石シート31の近傍に徐々に蓄積し、許容量を超えて溢れが生じたからである。
【0064】
これらに対して、本実施例では、規制ブレード21に対向する上流現像スリーブ26の両端部には溝26xが形成されず、下流現像スリーブ28の両端部には溝28xが形成される。こうした構成では、規制ブレード21からの漏れも、下流現像スリーブ28の端部からの漏れも発生しなかった。
【0065】
下流現像スリーブ28に関しては、両端部に形成された溝28xは、下流現像スリーブ28の回転に伴って現像剤を徐々に両端部から中央部に移動させるため、現像剤が下流現像スリーブ28の端部から漏れる現象が発生し難いと予想できる。また、下流現像スリーブ28に対向する位置には、上流現像スリーブ26に対向するような規制ブレード21がない。そのため、比較例2の上流現像スリーブ226における規制ブレード21の近傍の場合のように、現像剤が圧を受けながら次から次に下流現像スリーブ28の端部に供給されて断続的な漏れが発生するということがない。
【0066】
上流現像スリーブ26に関しては、両端部に粗面化処理がされていないため、比較例2のように、現像剤が規制ブレード21の近傍から断続的に漏れ出すことはない。一方、両端部に粗面化処理を行っていないため、溝26xを形成していた場合のような現像剤が徐々に中央部に戻す効果も期待できなくなってしまっている。したがって、両端部からの漏れに関しては多少懸念が残る。これに関しては以下のように構成することで対応している。
【0067】
本実施例において、上流現像スリーブ26上を搬送されてきた現像剤も、下流現像スリーブ28上を搬送されてきた現像剤も、ともに撹拌室R2に回収される。この時、現像剤の回収される撹拌室R2に対する位置関係は、下流現像スリーブ28の方が撹拌室R2に近く、上流現像スリーブ26の方が撹拌室R2より遠くて上方に配置されている。その結果、現像剤が現像スリーブの端部から漏れる現象は、下流現像スリーブ28よりも、上流現像スリーブ26の方が、発生し難い。これは、以下のように考えられる。
【0068】
現像剤が現像スリーブ(26、28)の両端部の磁性板32、33や磁石シート30、31のある位置に存在すると、長く使用する中で徐々に漏れ出すと考えられる。逆にいえば、漏れ出し易さは、現像スリーブ(26、28)の両端部の磁性板32、33や磁石シート30、31の位置にいる現像剤の量に大きく依存すると考えられる。したがって、磁性板32、33や磁石シート30、31の位置に現像剤があまり存在しなければ、その分、漏れも発生しづらくなる。
【0069】
本実施例のように、現像剤の回収される撹拌室R2に対する位置関係で、上流現像スリーブ26が撹拌室R2からより離れた位置に配置されていると、以下のようになる。すなわち、上流現像スリーブ26の両端部の磁性板32や磁石シート30に現像剤が溜まりにくく、上流現像スリーブ26の端部からの漏れは発生しづらくなる。上流現像スリーブ26を下流現像スリーブ28よりも上方に配置することで、上記構成とすることが可能である。
【0070】
発明者らの検討によれば、撹拌室R2の現像剤面よりも上方に上流現像スリーブ26を配置すれば、漏れは発生しなかった。発生しない理由は、上流現像スリーブ26が現像剤面より上方に配置されているため、上流現像スリーブ26の両端部の磁性板32や磁石シート30の近傍に現像剤があまり付着せず、新たに現像剤が供給されることもあまりないためである。
【0071】
本実施例では、2本の現像スリーブ(26、28)を備え、下流現像スリーブ28の両端部には、漏れ出してきた現像剤を徐々に押し戻すための溝28xが形成されるが、規制ブレード21に対向する上流現像スリーブ26の両端部には、溝が形成されない。こうした構成によれば、現像剤が現像スリーブの端部から漏れる現象、及び、現像剤が規制ブレード21から漏れる現象は、共に抑制される。
【0072】
ここで、現像スリーブ(26、28)の構成と、その加工方法について説明する。現像スリーブ(26、28)は、アルミニウムの素管に複数本の溝が連続するように形成されている。上流現像スリーブ26は中央部のみに溝26yが形成されているが、下流現像スリーブ28は中央部の溝28yのみだけでなく両端部にも溝28xが形成されている。
【0073】
下流現像スリーブ28の両端部の溝28xは、下流現像スリーブ28の軸方向に対して一定角度で傾斜して形成されている。傾斜して形成すると、下流現像スリーブ28の回転に伴って、下流現像スリーブ28の端部から漏れ出しそうな現像剤を中央部の方向へと戻す効果が生じる。上流現像スリーブ26の中央部の溝26y、及び、下流現像スリーブ28の中央部の溝28yは、下流現像スリーブ28の端部の溝28xのように軸方向の一方方向に搬送されてしまうのでは、現像剤の分布に片寄りが生じてしまうので、好ましくない。本実施例においては、溝26y及び溝28yは、互いに交差するように形成されることで、現像剤の搬送に片寄りが生じないようにしている。
【0074】
なお、本実施例では、中央部の溝26y、28yと両端部の溝28xは、軸方向の傾斜がほぼ同じに形成されている。なぜなら、中央部の溝28yと両端部の溝28xの傾斜角度が同じ場合には、傾斜角度が異なる場合と比べると、現像スリーブの両端部から中央部へと現像剤が戻る流れがスムーズになるからである。傾斜角度が異なると、中央部の溝28yと両端部の溝28xとの境界部分で溝が折れ曲がる部分に現像剤が滞留し易い。そのために、傾斜角度の差は、20°以内、好ましくは、10°以内とするのがよい。
【0075】
また、以上のような構成は、中央部の溝26y、28y、及び、端部の溝26x、28xを同時に加工できる利点も有する。本発明と異なって端部に溝26x、28xがない現像スリーブがあるとして、その中央部にアヤメ状の溝26x、28xを形成する場合には、右斜め上方に向かって複数の傾斜溝を形成する工程と、左斜め上方に向かって複数の傾斜溝を形成する工程が必要となる。本実施例では、この2つの工程を利用して、最初に、下流現像スリーブ28では、右斜め上方に向かう左端部の溝28x及び中央部の溝28yを同時に形成し、次に、左斜め上方に向かう右端部の溝28x及び中央部の溝28yを同時に形成する。これにより加工手番や加工時間を短縮可能である。
【0076】
本発明の効果を得るためには、下流現像スリーブ28の両端部に、下流現像スリーブ28の回転を利用しながら、現像剤を積極的に両端部から中央部に戻そうとする構成が施されていれば良い。また、この際に、規制ブレード21と対向する上流現像スリーブ26の両端部が現像剤を上流現像スリーブ26の回転方向に搬送する搬送力を持つと、規制ブレード21の近傍の現像剤が規制ブレード21との隙間から漏れ出す懸念がある。そのために、上流現像スリーブ26の両端部は、上流現像スリーブ26の回転に伴う搬送能力を持たないように、溝26xの形成やブラスト処理等の表面化処理を施さないようにする。
【0077】
下流現像スリーブ28の両端部の溝28xが下流現像スリーブ28の軸方向となす傾斜角度θに関しては、基本的に傾斜していれば現像剤が両端部から中央部に戻そうとする力が生じるので、本発明の効果が得られる。しかし、中央部へ戻そうとする力を十分に得つつ、回転方向への搬送力が高すぎることによる漏れの懸念を回避するため、溝28xが下流現像スリーブ28の軸方向に対して有する傾斜角度は、45°〜67°の角度にすることが好ましい。この点について次に述べる。
【0078】
図6(a)は、下流現像スリーブ28の端部に形成される溝28xの傾斜を示す概念図である。図6(a)に示されるように、下流現像スリーブ28の端部に溝28xが形成されると、下流現像スリーブ28が回転するに伴って、現像剤を端部から中央部に戻そうとする力が生じる。ただし、この溝28xの傾斜が緩すぎたり急すぎたりすると、現像剤を中央部に戻そうとする力が弱まる。また、角度によっては中央部へ戻す力以上に回転方向への搬送力の方が大きくなる懸念がある。
【0079】
下流現像スリーブ28の回転に伴って、両端部に形成された溝28xによって得られる搬送力をFとする。この場合には、溝が軸方向に対してなす角度がθの場合(図6(a)参照)、中央部に戻そうとする力は、F*sinθcosθ=F*(1/2)sin2θと見積もることができる。また、回転方向への搬送力は、F*sinθsinθ=F*{(1/2)+(1/2)cos2θ}と見積もることができる。
【0080】
図6(b)は、下流現像スリーブ28の端部の搬送能力、及び、溝28xの傾斜角の関係を示すグラフである。特に、回転方向の搬送力、及び、長手中央方向の搬送力の各々に関してグラフ化している。図6(b)に示される長手中央方向の搬送力のグラフから、下流現像スリーブ28の回転に伴って現像剤を中央部に戻そうとする力が最も効率よく得られるのは、45°付近の角度ということが分る。これは、傾斜がゆるすぎたり(0°付近)、急すぎたり(90°付近)すると現像剤を中央部に戻そうとする力が弱まるという実際の感覚ともよく一致する。従って、中央部へ戻そうとする力を効率よく得るためには45°程度、概ね23°〜67°の角度が好ましい。
【0081】
一方、図6(b)のグラフからも分るように、溝28xの角度が45°以下では、現像剤を中央部へ戻す力以上に回転方向への搬送力の方が大きくなる。中央部へ戻す力以上に回転方向への搬送力が大きくなると、現像剤が中央部に戻る前に回転方向への搬送力によって磁性板33や磁石シート31に形成された磁気穂の一部が遊離してしまって漏れに繋がる懸念が生まれやすい。従って、上記懸念を回避するには、溝28xの傾斜角度は、45°〜90°の角度に設定するのがよい。
【0082】
以上より、回転方向への搬送力が高すぎることによる漏れの懸念を回避するためには45°〜90°の角度がよく、さらに中央部へ戻そうとする力を効率的に得るためには23°〜67°がよい。従って両者を併せると45°〜67°に設定することが好ましい。
【0083】
本実施例では、深さが100μm、幅が200μmの溝で、溝と溝の間隔が200μmで連続して形成した。その際、溝が現像スリーブの軸となす角度は50°とした。
【0084】
実施例の構成によれば、上流現像スリーブ26の両端部は粗面化処理されないために現像剤が規制ブレード21の近傍から漏出する現象は抑制される。同時に、下流現像スリーブ28の両端部は現像剤が端部から中央部に向かうように粗面化処理されているために下流現像スリーブ28の両端部から現像剤が漏出する現象は抑制される。
【0085】
なお、本実施例は現像スリーブが2本の場合について述べたが、3本以上でもよい。その場合も、規制ブレード21の先端と対向する現像スリーブの両端部は粗面化処理を行わず、それ以外の現像スリーブは現像剤を中央部に搬送するように粗面化処理を行えば、本発明の効果が得られる。
【0086】
また、本実施例は非磁性トナーと磁性キャリアからなる二成分現像剤を用いた場合について述べたが、磁性トナーからなる一成分現像剤を用いた場合についても同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0087】
1 感光体ドラム(像担持体)
4 現像装置
21 規制ブレード(層厚規制部材)
26 上流現像スリーブ(上流現像剤担持体)
28 下流現像スリーブ(下流現像剤担持体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体の回転方向の上流側で前記像担持体に対向して配置され、現像剤の層厚を規制する層厚規制部材によって現像剤の層厚が規制され、端部から中央部への搬送能力が得られるような粗面化処理が両端部に施されていない上流現像剤担持体と、
前記上流現像剤担持体よりも前記像担持体の回転方向の下流側で前記像担持体に対向して配置され、端部から中央部への搬送能力が得られるような粗面化処理が両端部に施されている下流現像剤担持体と、を備え、
前記上流現像剤担持体及び前記下流現像剤担持体は、同一方向に回転可能で、前記像担持体の表面の静電像を現像する現像装置。
【請求項2】
前記下流現像剤担持体の両端部の粗面化処理は、前記下流現像剤担持体の表面に、軸方向に対して傾斜して周方向に連続して形成される溝を形成する処理であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記下流現像剤担持体の表面に対向して配置される磁性板を備え、
前記溝は、前記下流現像剤担持体の軸方向で前記磁性板と対向する位置から外側に形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記上流現像剤担持体及び前記下流現像剤担持体を回転自在に支持すると共に、現像剤を収容可能な現像剤容器を備え、
前記上流現像剤担持体は、前記下流現像剤担持体よりも上方に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−15702(P2013−15702A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148944(P2011−148944)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】