説明

現場で目標物を検出するための方法及び装置

現場内で目標物を検出する方法が記載され、1つまたは複数のデータセットを採取するステップを含み、各データセットが、複数の正規化されたデータ要素を含み、それぞれの正規化データ要素は、現場の同じ部分に関する基準反射に正規化される現場の部分からの反射に対応する。本方法は、次に、前記1つまたは複数のデータセットそれぞれの正規化データ要素の少なくとも1つを閾値化すること16を含む。閾値化ステップ16は、各正規化データ要素を、少なくとも第1の閾値および第2の閾値に比較することを含み、第1の閾値は第2の閾値より大きい。1つまたは複数の確認走査18を閾値ステップと組み合わせて使用することも記載される。空港滑走路等の表面での異物残骸(FOD)を検出する方法を使用するレーダシステムも記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場で目標物を検出するための一定誤警報率(CFAR)処理方法に関する。さらに詳細には、本発明は、空港滑走路等における異物残骸(Foreign Object Debris)(FOD)の検出の改善を可能にするレーダ反射を処理するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
滑走路上での異物残骸(FOD)を検出するために、周波数変調連続波(FMCW)ミリ波レーダを使用することは知られている。理想的には、FOD検出レーダは、さまざまなサイズの物体(例えば、航空機エンジン筐体からナットまたはボルトまでのサイズに渡る物体)を、空港の機能に対する混乱を回避するために、最小の誤警報率で検出できなければならない。この検出要件は、通常空港環境で見られる高レベルのレーダクラッタによって大幅に複雑化されている。幅広い気象条件で、及び容認できるほど低い誤警報率(例えば、1日に、または1週間に1回の誤警報)で、クラッタ上で滑走路上の任意のFODを確実に検出できるように、レーダデータを処理する際には多大な困難がある可能性があることもよく知られている。
【0003】
レーダデータの一定誤警報率(CFAR)処理も知られており、以前には高クラッタ環境において動作するように設計されるレーダシステムで使用されてきた。CFAR処理技術は、通常、誤警報確率(PFA)曲線の知識を必要とする。次に、所望の誤警報率(例えば、1日につき1回の誤警報)を提供する閾値レベルは、PFA曲線から計算できる。動作中、レーダによって獲得される走査は、単一の平均値または障害物がない現場クラッタマップによって正規化されてもよく、範囲方位角セルごとの正規化された反射は、以前に決定された閾値レベルに比較されてもよい。正規化された反射が閾値レベルを超える場合、レーダは目標物が存在することを示す。CFAR技術は、誤警報率の制御を可能にするが、低い誤警報率がさらに高い検出閾値を必要とし、それによりレーダ感度を低減することは避けられない結果である。したがって、当業者は、CFAR技術を高い検出感度と低い誤警報率の両方を提供する能力がないと見なす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、レーダデータを処理するための改善された方法、及びこのような方法を実現するための装置を提供することである。さらに、本発明の追加の目的は、レーダデータを処理し、空港滑走路等の表面上での異物残骸の存在の警報を提供することである。本発明のさらに追加の目的は、改善されたCFAR処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様に従って、現場で目標物を検出する方法は、(a)1つまたは複数のデータセットを採取するステップであって、各データセットが、複数の正規化データ要素を含み、各正規化されたデータ要素が、現場の同じ部分に関する基準反射に正規化された現場の部分からの反射に対応する、データセットを採取するステップと、(b)前記1つまたは複数のデータセットそれぞれの正規化されたデータ要素の少なくとも1つを閾値化する閾値化ステップとを含み、閾値化ステップ(b)が、各正規化データ要素を、少なくとも第1の閾値および第2の閾値に比較するステップを含み、第1の閾値が第2の閾値より大きいことを特徴とする。
【0006】
したがって、1つまたは複数のデータセットの正規化データ要素がそれぞれ、2つ以上の異なる閾値と比較される、現場からデータを分析するための方法が提供される。正規化データ要素は、例えば、現場のクラッタマップに関して正規化される、現場内の多くの範囲方位角セルからのレーダ反射を含むことができる。
【0007】
したがって、本発明の方法は、現場からの「大きな」正規化された目標物反射(つまり、最初の大きな閾値を超える正規化データ要素)、及び現場からの「中位の」正規化された目標物反射(第1の閾値を下回る、第2の中位の閾値を超える正規化データ要素)を分離する便利な方法を提供する。さらに、閾値化ステップは、好ましくは、各正規化データ要素を、少なくとも第1の閾値、第2の閾値、および第3の閾値に比較することを含み、前記第3の閾値は、前記第2の閾値より低い。また、第3の閾値を提供すると、「小さい」正規化された目標物反射(つまり、第3の小さな閾値より大きく、第2の閾値未満である値を有する正規化データ要素)を検出できるようになる。強度が小さくなる追加の閾値(例えば、第4の閾値、第5の閾値、第6の閾値等)も必要に応じて提供できる。
【0008】
複数の閾値を本発明に従って提供すると、さらに小さい(つまり、さらに低いレーダ交差)目標物の存在も示す可能性がある、あらゆるさらに低い強度の反射が廃棄されないことを保証しながら、「大きな」目標物を特定できる。これは、ただ1つの閾値だけが設定され、ただ1つの閾値を下回るあらゆる正規化された反射が廃棄される、従来技術の誤警報確率(PFA)技術に優る重要な利点である。詳しく後述されるように、複数の閾値の使用は、高い方の(つまり第1の)閾値を超えることなく、低い方の(つまり、第2のまたは以降の)閾値を超える正規化データ要素のための1つまたは複数の「確認」走査と組み合わされると、特に有利である。このようにして、本発明の方法が、誤警報率を上昇させることなく、検出感度をどのようにして高めるのかという問題を克服することが分かる。
【0009】
本発明は、有利なことに、現場に関して前に計算された誤警報確率(PFA)データから、少なくとも第1の閾値および第2の閾値を引き出すステップを含む。このステップは、例えば、誤警報確率曲線の使用を必要とすることがある。さらに、有利なことに、このようなPFAデータを生成する初期ステップが実行されてもよく、前記PFAデータ生成ステップは、前記現場からの複数の追加の障害物がない現場反射を採取する(例えば獲得する)ステップを含む。
【0010】
PFAデータ生成ステップは、それぞれの障害物がない現場走査が、現場の異なる部分(例えば、異なる範囲方位角セル)に相当する複数のレーダ反射を含む、複数の(例えば10回の)障害物がない現場走査を採取することを必要とする可能性がある。その結果、現場の各部に関する複数の障害物がない現場走査からの反射を平均することによって、障害物がない現場クラッタマップを作成できる。追加の障害物がない現場走査(例えば、10回以上の走査)が、獲得されかつ障害物がない現場クラッタマップに正規化されることができ、それによって所望の誤警報率を提供するために必要とされる検出閾値を決定するために使用できる、誤警報確率データを生成できる。PFAデータ生成、および閾値を設定するためにPFAデータを使用できる方法についての詳細が、後述される。
【0011】
有利なことに、1つまたは複数のデータセットを採取するステップ(a)は、複数のデータセットを採取するステップを含み、閾値化ステップ(b)は、次に前記複数のデータセットそれぞれに適用される。このように、複数のデータセット(例えば、複数の走査からの正規化された反射)は、連続して閾値化される。有利なことに、閾値化ステップ(b)は、異なるデータセットに異なる閾値を適用するステップを含む。
【0012】
有利なことに、連続データセットの複数の正規化データ要素は、連続期間の間に獲得される現場からの反射から引き出される。このような場合では、データセットの正規化データ要素は、第1の期間の間に(例えば、第1のレーダ走査中に)獲得された現場についての情報を含む。次に、第2の連続データセットのすべての正規化データ要素は、第1の期間の後に発生しかつ第1の期間と重複しない、第2の期間(例えば、第2の走査中)の現場に対応する。したがって、各データセットは、例えばレーダ走査から引き出される正規化データ要素を含んでもよく、連続レーダ走査からの反射は、適切な正規化の後に連続データセットを形成してもよい。
【0013】
便利なことに、少なくとも第1の閾値および第2の閾値は、連続データセットに対する閾値化ステップの各適用の間で調整される。したがって、前記少なくとも第1の閾値および第2の閾値を調整するステップは、有利なことに、現場の変化から引き出される補正係数で、この閾値を拡大縮小することを含んでもよい。補正係数は、第1の期間中の現場からの反射の平均値に対する、第2の期間中の現場からの反射の平均値の比から引き出されてもよく、第1の期間は、第2の期間に先行する。
【0014】
第1の期間および第2の期間の平均反射は、現場内の目標物からのあらゆる反射を除外するように便宜的に構成されてもよい。例えば、目標物確認ステップ(下記参照)によって確認済み目標物検出として指定される正規化データ要素を提供する反射は、補正係数計算時に除外されてもよい。このような補正係数を使用して閾値を拡大縮小すると、現場からの全体的な反射が経時的に変化しても、誤警報率を所望のレベルに維持できる。例えば、現場からの反射の平均値が、現場が濡れているときには大幅に大きいことが判明した。したがって補正係数を使用することは、雨が降り始めたときにも誤警報率を維持するように、適切に閾値を上昇させることを可能にする。補正係数は、現場がいつ大幅に変化したのかを示すために使用されてもよい。例えば、それは、雨が降り始めたことを示すために使用できる。
【0015】
有利なことに、本方法は、目標物確認ステップをさらに含み、前記目標物確認ステップは、前記複数のデータセットの正規化データ要素が第1の閾値を超えると、確認された目標物検出出力を提供する。言い換えると、確認された目標物検出出力は、第1の閾値を超えるあらゆるデータ要素の目標物確認ステップによって提供される。このようにして、このような確認された目標物検出出力が、「大きな」目標物の存在を示す。
【0016】
さらに、便利なことに目標物確認ステップは、現場の同じ部分に対応する正規化データ要素が、少なくとも2つの連続データセットにおいて、第2の閾値を超えかつ第1の閾値を下回ると、確認された目標物検出出力を提供してもよい。目標物確認ステップからのこのような確認された目標物検出出力は、このようにして「中位の」目標物の存在を示す。言い換えると、第1の閾値と第2の閾値との間の値を有するあらゆる正規化データ要素は、正規化データ要素の値が、少なくとも1つの追加データセットで確認されると、確認された「中位の」目標物検出出力としてだけ分類される。したがってこのような確認走査を使用すると、「中位の」目標物が誤警報である確率が減少する。
【0017】
加えて、目標物確認ステップは、有利なことに、現場の同じ部分に対応する正規化データ要素が、少なくとも3つの連続データセットにおいて、第3の閾値を超えかつ第2の閾値を下回ると、確認済み目標物検出出力を提供してもよい。このような確認済み目標物検出出力は、「小さな」目標物の存在を示す。つまり、第2の閾値と第3の閾値との間の値を有するあらゆる正規化されたデータ要素は、正規化データ要素の値が、少なくとも2つの追加データセットで確認されると、確認済みの「小さな」目標物検出出力としてだけ分類される。少なくとも2つの確認走査を使用することは、「小さい」目標物が本物であり、本方法が弱い反射だけしか提供しない目標物を検出できるようにする信頼性をさらに高める。
【0018】
あるいは、誤警報に対する性能の改善のために、目標物確認ステップは、少なくとも2回の検出を必要とするように構成されてもよく、現場の同じ部分に対応する正規化データ要素は、少なくとも2つの連続データセットの第1の閾値を超えている。
【0019】
用語「大きな」目標物、「中位の」目標物、及び「小さな」目標物は、現場の目標物の空間的な寸法を参照しないことに留意する必要がある。これらの用語は、正規化データ要素が引き出される現場の部分からの反射の強さを示すために本明細書で使用されている。当業者は、目標物からのレーダ反射の強度が、目標物反射率、向き、および位置等によって決定される、そのレーダ断面によって決定付けられることを理解する。
【0020】
上記に注記されたように、閾値化ステップで使用するための適切な閾値は、現場に関して獲得される誤警報確率データを使用して決定できる。しかしながら、特定の閾値と関連する誤警報確率は、その閾値と使用される確認走査数に応じる。簡単に言えば、固定された誤警報確率を維持する一方で、確認走査の数がさらに高いと、関連する閾値を減少できる。言い換えると、特定の閾値と関連する誤警報率は、確認走査数を増すことによって減少できる。
【0021】
ゼロ回の確認走査、1回の確認走査、または2回の確認走査に関する誤警報確率データを別々に計算することが可能である。これは、第1の閾値、第2の閾値、及び第3の閾値を設定し、所望のPFA率(例えば、1日につき1回の誤警報)を提供するために使用できる、3つの別々のPFA曲線を提供する。しかしながら、このような技術は、特に、低い方の閾値に関するPFAデータが十分に正確であることを保証するために、多数の走査を必要とする。あるいは、本方法は、有利なことに、現場に関して前に計算された誤警報確率(PFA)データから、前記少なくとも第1の閾値と第2の閾値を引き出す初期ステップを含んでもよく、少なくとも第1の閾値と第2の閾値は、第1の閾値を計算するために使用されるPFAデータから初期に引き出される。言い換えると、ゼロ回の確認走査に関するPFAデータは、第2の閾値と第3の閾値を、例えば1回の確認走査と2回の確認走査をそれぞれ使用するときに決定できるようにするために外挿できる。PFAデータを使用して閾値を設定することは、さらに詳しく後述される。
【0022】
現場の単一の目標物は、少なくとも第1の閾値および第2の閾値を超える1つまたは複数のデータセットの中に、複数の正規化データ要素を生じさせてもよい。言い換えると、現場の各目標物は、多数の確認済み目標物検出出力を生じさせてもよい。また、レーダの場合では、強力に反射する目標物は、空間的に分離された副ローブ反射も生じさせてもよいことも、留意されなければならない。したがって、本方法は、クラスタ化ステップを便宜的に含み、クラスタ化ステップは、目標物確認ステップからの確認済み目標物検出出力をグループ化し、現場内の目標物ごとに1つの物体検出出力を提供するように構成される。言い換えると、クラスタ化ステップは、すべての確認済み目標物検出を採取し、目標物ごとに物体検出出力を生成する。物体検出出力は、目標物の物理的な寸法(つまりサイズ)を便宜的に示してもよく、かつ/または現場内の物体の位置を示してもよい。
【0023】
また本方法は、有利なことに目標物警報ステップも含み、目標物警報ステップは、所定範囲内のサイズを有する現場内の物体の存在が、クラスタ化ステップによって示されると、目標物検出警報を提供する。このようにして、特定のサイズの目標物、あるいはサイズの特定の範囲内の目標物の存在に、フラグを付けることができる。このようにして目標物警報ステップは、例えば特定のサイズより大きい目標物を無視できるようにする。本方法が、FOD監視レーダからのデータに適用されると、航空機反射は、目標物警報ステップによって無視され、FODの存在だけが警報をトリガする。
【0024】
有利なことに、本方法は、1つまたは複数のデータセットそれぞれの複数の正規化データ要素を計算するための正規化ステップを含み、正規化ステップは、現場から獲得される複数の反射を採取するステップと、現場のクラッタマップを使用して前記反射を正規化するステップとを含む。前述された正規化ステップは、本発明の必須部分ではないことも留意されなければならない。本方法は、前に正規化されたデータセットに容易に適用できる。
【0025】
正規化ステップで使用されるクラッタマップは、初期的には、複数の障害物がない現場反射から形成されてもよく、それぞれの障害物がない現場反射は、目標物が現場に存在しないときの現場の部分からの反射に対応する。適切な場合、正規化ステップで使用される初期のクラッタマップは、少なくとも第1の閾値および第2の閾値が決定されるPFAデータを生成するために使用される、障害物がない現場クラッタマップであってもよい。
【0026】
本方法が、連続期間中に獲得される一連のデータセットに適用される場合、正規化ステップで使用されるクラッタマップは、周期的に更新されてもよい。これは、クラッタマップが、障害物がない現場から予想される反射の良好な表示を絶えず提供することを保証する。クラッタマップを周期的に更新すると、現場からの背景反射の大きな変化(例えば、雨が降る場合)が、誤警報をトリガしたり、または検出感度を低減しないことを保証する。
【0027】
有利なことに、各更新されたクラッタマップは、複数の前記1つまたは複数のデータセットの正規化データ要素を生成するためにも使用される、現場からの反射を使用して形成される。言い換えると、現場からの測定された反射(つまり、正規化ステップの適用前の反射)も、更新されたクラッタマップを生成するために使用できる。このようにして、更新されたクラッタマップは、例えば、現場の10回の連続走査のセットの反射を平均化することによって作成できる。このようにして、クラッタマップは必要なときに、障害物がない現場反射を獲得しなくても更新できる。
【0028】
クラッタマップの継続的な更新が必要とされる場合は、正規化ステップと平行して更新されたクラッタマップを生成することができる。例えば、複数の(例えば10回の)反射のセットが、第1のクラッタマップを使用して正規化され、閾値化され、目標物確認ステップは、確認済み目標物検出出力を提供できる。同じ10セットの反射は、正規化ステップと平行して、更新されたクラッタマップを形成するために平均化できる。更新されたクラッタは、次の10セットの反射を正規化するために使用できる。このようにして、クラッタマップは動作中継続的に更新される。
【0029】
クラッタマップを形成するために障害物がある現場(つまり、目標物を含む可能性のある現場)からの反射を使用することは、このような目標物に起因する更新済みのクラッタマップからのあらゆる反射を排除することも、通常必要であることを意味する。目標物確認ステップが確認済みの目標物検出出力を示した現場の部分に対応する反射は、このようにして、更新されたクラッタマップから排除される。代りに、現場のそれらの部分に関する前のクラッタマップ値は、適切なクラッタマップ補正係数が適用された後に、更新クラッタマップで使用される。クラッタマップ補正係数は、更新されたクラッタマップ内に含まれる値の平均に対する、前のクラッタに含まれる値の平均の比に関連する。クラッタマップをこのようにして更新するさらに詳細な説明は後述される。
【0030】
有利なことに、少なくとも1つのデータセットの各正規化データ要素は、現場内の範囲方位角セルからの正規化された反射強度に対応する。好ましくは、各正規化データ要素が引き出される現場からの反射は、ビーム内統合(WBI)範囲方位角データを含む。レーダ装置の未処理データ出力からこのようなWBI範囲方位角データを形成することは、知られており、さらに詳しく後述されている。
【0031】
好ましくは、本方法は、マスキングステップも含み、マスキングステップは、現場内の所定の領域外の反射から引き出される1つまたは複数のデータセットのそれぞれから、正規化データ要素を取り除くように構成される。このようにして、本方法は、現場の所定部分内の目標物だけを検出する。マスキングステップは、例えば、本方法が現場内の滑走路上に位置する目標物だけを検出することを保証するために、滑走路マスクを画定することを必要とする場合がある。したがって、滑走路から離れて位置する物体は無視される。
【0032】
有利なことに、少なくとも1つのデータセットを採取するステップ(a)は、データ記憶手段から前記少なくとも1つのデータセットを読み取ることを含む。言い換えると、データのオフライン処理が可能である。あるいは、少なくとも1つのデータセットを採取するステップ(a)は、レーダ装置から現場の部分からの反射を取得するステップを含む。本発明の方法を使用するオンラインデータ処理は、このようにして実現されてもよい。
【0033】
好ましくは、現場は滑走路の少なくとも一部を含む。言い換えると、本方法は、滑走路上のFODの存在を検出するために使用できる。
【0034】
本発明の第2の態様に従って、本発明の第1の態様の方法を実行するようにプログラミングされるコンピュータが提供される。
【0035】
本発明の第3の態様に従って、本発明の第1の態様の方法を実現できるコンピュータプログラムが提供される。前記コンピュータプログラムを含む適切なキャリヤも、提供されてもよい。
【0036】
本発明の第4の態様に従って、本発明の第1の態様の方法を実現するように構成されるレーダ装置が提供される。
【0037】
本発明の第5の態様に従って、レーダ装置は、プロセッサを備え、プロセッサは、(a)1つまたは複数のデータセットを採取するように構成され、各データセットが、複数の正規化データ要素を含み、各正規化データ要素が、現場の同じ部分に関する基準反射に正規化される現場の部分からの反射に対応し、プロセッサはさらに、(b)前記1つまたは複数のデータセットそれぞれの正規化データ要素の少なくとも1つを閾値化するように構成され、閾値化ステップ(b)が、各正規化データ要素を、少なくとも第1の閾値および第2の閾値に比較するステップを含み、第1の閾値が第2の閾値よりも大きいことを特徴とする。
【0038】
好ましくは、装置は、周波数変調連続波(FMCW)レーダ装置を備える。有利なことに、FMCWレーダ装置は、35GHzより大きい周波数を有する放射を伝達するように構成される。
【0039】
本発明は、ここで以下の図面に関して、例証としてのみ説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1を参照すると、本発明の処理方法を示す流れ図が示されている。本方法は、データ獲得ステップ2と、データ前処理ステップ4と、初期検出ステップ6と、検出区別ステップ8と、残骸位置出力ステップ10とを含む。
【0041】
データ獲得ステップ2は、レーダ装置により生成される未処理データを獲得すること、あるいはレーダ装置により生成される前に獲得された未処理データを取り出すことを含む。この例では、未処理データは、ミリメートル波周波数で動作している、掃引された周波数変調連続波(FMCW)レーダによって獲得される同相の直交位相(IQ)周波数領域データを含む。しかしながら、技術は、現場から画像を取り込む任意の装置(アクティブまたはパッシブ)によって生成されるデータに適用できることが留意されなければならない。
【0042】
データ前処理ステップ4は、レーダによって生成される未処理IQ周波数領域データを採取し、それを強度範囲プロファイルに変換する。次に強度範囲プロファイルのセットが、重みを付けられ、ビーム内統合(WBI)範囲プロファイルを生成するために統合される。WBIステップは、レーダのアナログ/デジタル変換器(ADC)から出力される未処理の時間領域データを、強度範囲プロファイルに変換する。これを達成するために、いくつかの強度範囲プロファイルの重みを付けられた平均が、方位ビンごとに生成される。これは、二方向の方位角アンテナビームパターンを、強度範囲プロファイルで近似する、フィルタ重みを畳み込むことに同等である。
【0043】
初期検出ステップ6は、本方法の主要な検出エンジンであり、ビーム内統合範囲プロファイルを二進確認済み検出データに変換する。初期検出ステップ6の間、WBI範囲プロファイルは、短期クラッタマップに関して正規化され、初期検出を与えるために閾値化される。潜在的な目標物(つまり、検出)は、3つの別々の検出閾値を規定することによって、それらの信号対クラッタ比(SCR)に従って分離される。最高の閾値を通る強力な信号対クラッタ比(SCR)を含むセルは、「大きな目標物」として分類され、SCRが、最低閾値を上回りかつ最高閾値を下回るセルは、「中位目標物」であり、最低の閾値だけを通る弱いSCRを有するセルは、「小さい目標物」と見なされる。このステップで使用される3つの閾値は、障害物がない現場クラッタマップから引き出され、動作中に動的に更新される。
【0044】
初期検出ステップ6は、「確認済み」検出のリストも提供する。大きな目標物は、すぐに確認済みの検出として分類される。媒体目標物は、それらが以後の走査で「確認される」場合にだけ、すなわち、2つの媒体目標物が、連続走査で同じ範囲方位角セルで発生する場合にだけ、確認済み検出として分類される。小さな目標物は、2回のその後の走査で「確認される」場合に確認済み検出として見なされるにすぎない。複数の閾値の提供、及び低い方のSCRバンド内の目標物に関する追加確認走査のための要件が、誤警報率を上昇させることなく低い強度の目標物を検出するためのレーダの能力を高める。初期検出ステップ6についての詳細は、図2から図5に関して後述される。
【0045】
検出区別ステップ8は、初期検出ステップ6の確認済みの検出出力からFOD位置データを生成する。特に、検出区別ステップ8は、初期検出ステップにより生じる二進検出出力を、未処理二進検出をクラスタ化しかつセントロイドすることによって対象の目標物の位置に変換し、その結果、目標物につきただ1回の最終検出がある。特定数の検出ピクセルを上回り、したがって所定のサイズを超える目標物は、残骸よりむしろ航空機であると見なされ、報告されない。検出区別ステップの間に決定された航空機及び残骸(FOD)目標物の位置及び範囲も、初期検出ステップ6の間にWBIデータを正規化するために使用される短期クラスタマップから除外される。検出区別ステップ8のさらに詳細な説明が、以下の図6に関して示される。
【0046】
最後に、残骸位置警報ステップ10は、検出区別ステップ8によって生成されるFOD位置データを採取し、ユーザ警報出力を提供する。残骸位置警報ステップ10は、単に警報を鳴らすことを必要としてもよい、あるいはFODがどこに位置しているのかのさらに詳細な表示を提供してもよい。
【0047】
ここで図2を参照すると、図1の初期検出ステップ6は、詳細に説明されている。初期検出ステップ6は、正規化ステップ12と、マスキングステップ14と、閾値化ステップ16と、確認ステップ18とを含む。
【0048】
正規化ステップ12は、それぞれの方位角ビンθから、WBI範囲プロファイルを採取することと、完了された短期クラッタマップの中の方位角ビンθから、対応するプロファイルでその中に含まれている各値を除算することを含む。したがって、現在の走査と短期クラッタマップとの間に大きな差異がない場合には、正規化されたデータの平均値は約1となる。正規化ステップで使用される短期クラッタマップは、継続的に更新されることが留意されなければならない。短期クラッタマップ形成は、以下の図3及び図4に関してさらに詳細に説明される。
【0049】
正規化ステップの後、正規化ステップ12によって生成される正規化WBI範囲プロファイルが、二進滑走路マスクによって乗算されるマスキングステップ14が実行される。滑走路マスクは、システム初期化時に規定され、対象の領域(例えば滑走路)からの範囲方位角セルのための1と、それ以外の場所の0からなる。したがって、結果として生じるマスキングされた正規化WBI範囲プロファイルが、対象のセルの中に正規化されたWBI値、及び他の場所でゼロを含むマスキングステップ14によって生成される。
【0050】
上記に留意されたように、マスキングステップ14で使用されるマスクは、システム初期化で作成される。滑走路FOD検出の場合、マスクは、滑走路上の範囲方位角セルの中に1を含み、他の場所に0を含む。加えて、滑走路マスクは、好ましくは、実際には滑走路表面から範囲方位角セルだけを含む必要があり、マスク内に芝生または滑走路以外の表面の異質なセルを有することは、滑走路統計に不利な影響を及ぼすことがある。マスクは、エンジニアによって手動で生成されてもよく、あるいは自動マスク作成技術が使用されてもよい。マスクの形成が好ましいが、マスキングステップ14は、低複雑度状況では方位角ごとに範囲セルの選択が規定されるステップで置換できる。
【0051】
閾値化ステップ16は、マスキングされた正規化WBI範囲プロファイルを採取し、各範囲方位角セルを、「小さい」閾値、「中位の」閾値、及び「大きな」閾値に比較する。範囲方位角セル内の値が、大きな閾値を超えるまたは等しい場合には、そのセルの範囲方位角座標は、大きな検出リストに追加される。値が、中位の閾値を超えるまたは等しいが、大きな閾値未満である場合には、座標は、中位の検出リストに追加される。値が、小さい閾値より大きいまたは等しいが、中位の(及び大きな)閾値未満である場合には、座標は、小さい検出リストに追加される。このようにして目標物サイズアレイは、小さい検出リスト、中位の検出リスト、及び大きな検出リストから生成される。
【0052】
閾値化ステップ16で使用される3つの閾値レベルは、最初に、現場にあらゆる目標物が無いことを保証されるときに、周期的に(例えば、毎朝または毎晩)獲得される障害物がない現場クラッタマップから引き出される。障害物がない現場クラッタマップの獲得に続き、初期の小さい閾値、中位の閾値、及び大きな閾値が引き出される、誤警報確率(PFA)曲線が生成される。閾値は、システムのために必要とされる誤警報率(例えば、1日につき1回の誤警報)を提供するように設定される。初期閾値選択、及びPFA曲線を生成するためのプロセスは、図5に関してさらに詳しく後述される。
【0053】
正規化ステップ12で使用される短期クラッタマップが、どのようにして周期的に新たにされるのかも、図3及び図4に関して後述されている。特に、新しい短期クラッタマップは、前の短期クラッタマップが正規化ステップで使用されている間に、N(例えば10)回の連続走査から構築される。最新のクラッタマップ更新以来発生した可能性がある、外部状態(例えば雨)のあらゆる変化を考慮するため、閾値化ステップ16は、初期閾値調整ステップを含む。初期閾値調整ステップは、補正つまりいわゆる「滑走路率」で既存の閾値を拡大縮小することを含む。滑走路率は、現在の正規化されたWBIデータの平均セル強度にすぎないが、中位の検出または大きな検出を含むとして特定されるそれらのセルを除外する。しかしながら、閾値調整ステップから生じる閾値が、障害物がない現場クラッタマップから計算される元の閾値を下回らない、つまり障害物がない現場クラッタマップが、障害物がない乾燥した現場に獲得されることを保証することが好ましい。いったん閾値が、滑走路比を使用して更新されると、マスキングされた正規化WBI範囲プロファイルの値が、更新された大きな閾値、中位の閾値、及び小さい閾値に再比較される。
【0054】
確認ステップ18は、小さい検出、中位の検出、及び大きな検出のリストを含む閾値化ステップ16の間に生成される目標物サイズアレイを採取する。すべての大きな検出は、確認済み検出リストに即座に追加される。中位検出が、現在の走査及び過去の走査において同じ範囲方位角セルで発生する場合には、それらの媒体検出の位置も、確認済み検出リストに追加される。小さな検出が、現在の走査及び2つの直前の走査で発生する場合には、それらの小さな検出の位置も、確認済み検出リストに追加される。確認ステップ18は、このようにして、1回の確認走査と2回の確認走査をそれぞれ実行することによって、中位の検出及び小さい検出が誤警報である確率を減少する。確認ステップ18は、このようにして、閾値化ステップ16によって生成される検出リストから確認済み検出リストを作成する。
【0055】
ここで図3及び図4を参照すると、初期検出ステップ6の正規化ステップ12内での使用のための短期クラッタマップの形成が説明される。要するに、短期クラッタマップが、知られている目標物からの反射が除外されたN回のレーダ走査から構築される。短期クラッタマップは、あらゆる範囲方位角セルで障害物がない現場値の現在の推定を提供することを目的とする。
【0056】
図3は、クラッタマップ形成の基本的な原理を示す。レーダによって獲得される各WBI範囲プロファイル40は、クラッタマップバッファ44の適切な方位角ビンの位置42aから42nにロードされる。いったんN(例えば10)回の完全な走査が、クラッタマップバッファ42にロードされると、クラッタマップ内の各範囲方位角セルは、このようにしてN個のビーム内統合反射の合計を含む。クラッタマップバッファの各範囲方位角セルは、次にNで除算され、その結果各範囲方位角セルは、N回の反射の平均を含む。平均化されたデータは、次にクラッタマップバッファ44から出力され、短期クラッタマップ46を形成する。このようにして、短期クラッタマップは、新しいクラッタマップが構築されている間に、正規化ステップ12での使用のために使用できる。
【0057】
短期クラッタマップは、正規化の目的で障害物がない現場基準を提供することを目的とする。その結果、新しい短期クラッタマップアレイが構築されている間に、現場内に存在するあらゆる目標物は、そのクラッタマップに追加されてはならない。
【0058】
図4は、新しい短期クラッタマップを構築するプロセスの間に、目標物反射を削除するための技術を示す。図3に関して説明されるように、クラッタマップバッファ44には、複数の方位角ビンに関するWBI範囲プロファイルがロードされる。目標物が現場内に存在する場合、クラッタマップバッファ44の部分50は、その目標物からのレーダ反射を含む。図1に関して上記に概略されたように、現場内のあらゆる確認済み目標物が、検出区別ステップ8によって特定される。したがって、目標物に対応するクラッタマップバッファ44の任意の部分50を、(つまり、確認済み検出リストを使用して)特定し、このような目標物反射をクラッタマップから除外することが可能である。目標物反射が削除された領域54を有する修正されたクラッタマップバッファ52は、このようにして作成される。
【0059】
短期クラッタマップは、すべての反射されるレーダデータを正規化するために使用され、したがって修正されたクラッタマップ52の中の穴は、既存の(つまり、完成した)短期クラッタマップ46からのデータを使用して充填される。これは、修正されたクラッタマップバッファ52の領域54の範囲方位角セルに対応する短期クラッタマップ46から、データ56を採取することによって達成される。発生した可能性のあるあらゆる変化(例えば雨)を説明するため、短期クラッタマップ46からのデータ56は、拡大縮小されたデータ58を形成するために、クラッタマップ倍率を使用して拡大縮小される。次に、拡大縮小済みのデータ58は、修正されたクラッタマップ52と結合され、再構築されたクラッタマップ60を形成する。それから、以後の短期クラッタマップに関するデータが収集される一方、再構築されたクラッタマップ60は、短期クラッタマップとして使用される。
【0060】
拡大縮小されたデータ58を生成するために使用されるクラッタマップ倍率は、前の(完成した)クラッタマップの平均強度に対する、未成熟なクラッタマップ(未成熟なクラッタマップが含む走査の不完全な数を説明するために適切に正規化された)の平均強度の比である。クラッタマップの平均強度は、対象のすべての範囲方位角セル(例えば、すべてのマスクされていないセル)の平均値にすぎない。通常の条件下では、クラッタマップ倍率は、1に非常に近くなければならない。しかしながら、雨が降り始めると、構築中のマップの滑走路平均は上昇し、したがってクラッタマップ倍率も上昇する。実際に、滑走路平均が、小雨でも10の倍率で上昇することがあることが、試験中に判明した。
【0061】
クラッタマップ倍率は、多くの他の目的のために使用されてもよいことが留意されなければならない。例えば、雨の存在は、あらゆる確認済み目標物が削除された状態での、現在の走査の滑走路平均の値から推定されてもよい。滑走路平均が、特定の所定の値を超える場合(例えば、平均が、乾燥した状態で測定された滑走路平均値を6dB超えて上昇した場合)には、雨フラグをセットできる。レーダに対する多くの変更は、このような雨フラグがセットされると、実現できる。例えば、システムの偏波は、交差から共偏波に切り替わり得る。
【0062】
ここで図5を参照すると、初期の小さい閾値、中位の閾値、および大きな閾値が作成されるPFA曲線の形成が説明されている。
【0063】
上記に留意されたように、障害物がない現場クラッタマップは、現場が、目標物が無いことが保証されるとき(例えば、空港が閉鎖されているとき)に取得され、好ましくはエンジニアによって開始される。障害物がない現場クラッタマップは、WBIデータのN回の走査の平均である。10というNの値は、通常十分である。好ましくは、障害物がない現場クラッタマップが、短期クラッタマップを形成するために使用される少なくとも同数の走査から生成される。障害物がない現場クラッタマップは、当日のまさに最初の短期クラッタマップとして使用できることも留意されなければならない。
【0064】
誤警報確率(PFA)曲線は、障害物がない現場クラッタマップに関して正規化される、M(この場合、Mは例えば10である)回の走査分の追加の障害物がない現場マスクWBIプロファイルから生成される。追加の障害物がない現場データの少なくとも同数の走査が、中期クラッタマップを生成するために使用された数として、PFA曲線を生成するために使用されなければならない。
【0065】
その結果、閾値Tのための誤警報確率(PFA)は以下のように規定できる。
【数1】

【0066】
この場合p(x)は、正規化された強度の確率密度関数であり、以下である。
【数2】

【0067】
次に、障害物がない現場マスク正規化WBIデータに関する離散確率密度関数(P(T))が、データのヒストグラムを形成することによって生成される。
【0068】
いったん必要とされる数の走査分のデータが処理されると、すべてのビンの和(つまり総計)が1となるように、ヒストグラムが正規化される。このような正規化されたヒストグラムは、離散確率密度関数を表す。その結果、離散誤警報確率曲線(PFA(T))は、累積確率密度関数を計算し、それを1から差し引くことによって、離散確率密度関数から生成される。
【数3】

【数4】

PFA(T)=1−C(T) (3c)
【0069】
当業者は、離散PFA曲線が、多くの代わりの方法で計算できると理解する。例えば、閾値Tより大きいまたは等しいデータ値の部分を計算することが可能である。
【0070】
いったん誤警報確率曲線が生成されると、所望の誤警報率を達成するために必要とされる閾値を抽出できる。しかしながら、生成されたPFA曲線が、例えば1日に1回と同じである誤警報率を提供する閾値を測定するためには、理想的には、少なくとも1日分のデータが必要とされることが理解されなければならない。大部分の状況では、丸1日分のデータの獲得は実用的ではなく、したがって、さらに少ない走査を使用して計算されるPFA曲線が、外挿されることができる。言い換えると、誤警報確率曲線は、低い方の誤警報確率(例えば1日につき1回)に対応する閾値を検出できるように外挿される。
【0071】
図5は、上記技術を使用して計算されたPFA曲線60を示している。Log(PFA)曲線の尾部が、ほぼ線形であることが分かる。線62は、Log(PFA)曲線の尾部に対する線形最良適合である。つまり、尾部は、約10−4の尾部開始と最低の測定可能な正確なlog(PFA)に対応する尾部終了との間のlog(PFA)曲線の部分である。
【0072】
180°という走査角度の範囲に渡る典型的な滑走路マスクは、通常約600,000個の範囲方位角セルを含む。180°のための走査時間が72秒であると、1日につき約7.2×10の範囲方位角セルと同じである、1日につき約1,200回の走査となる。1日につき1回という所望の全体的な誤警報率を考えると、獲得された範囲方位角セルごとの必要とされる誤警報確率は、約−8.8573という対数PFAと同じである、約1.389×10−9となる。したがって、確認走査がない場合では、必要とされる検出閾値は、外挿された曲線62から、約100であることが分かる、log(PFA)=−8.8573での閾値となる。
【0073】
log(PFA)=−8.8573という要件によって設定される閾値は、厳密に単一走査検出だけに適用可能である。1回または2回の確認走査を使用する検出(例えば、小さい検出及び中位の検出)の場合、誤警報確率の計算は、このような確認後の最終的な誤警報確率を考慮に入れる必要がある。これは、さらに低い閾値、したがってさらに大きな誤警報確率は、データが1回または2回以上の確認走査を使用して前述された方法で閾値化されるときに設定できることを意味する。
【0074】
言うまでもなく、本発明の他の実施形態は、確認走査に関する代替の構成を有してもよい。例えば、代替の実施形態は、すべての検出のための確認走査を、それらが小さくても、中位でも、あるいは大きくても実施するように構成されてもよい。PFAは、前述されたように追加の走査を説明するために相応して調整されてもよい。
【0075】
1回または2回の確認走査の後の実際の誤警報確率曲線は、直接的に計算できる。しかしながら、これは、計算コストが高く、多数の障害物がない現場データ走査が獲得されることを必要とする。前述されたタイプの未確認PFA曲線から確認PFA曲線を確実に近似することが可能であることが判明した。
【0076】
特に、走査ごとに相互関連していない誤警報の場合、誤警報をN(q)の内、M回得る確率は、以下の2項係数で示される。
【数5】

【0077】
この場合pは、単一走査で誤警報を得る確率である。
【0078】
このようにして、N=2回の走査(つまり1回の走査と1回の確認走査)からM=2回、誤警報を得る確率は以下である。
【数6】

【0079】
同様に、N=3回の走査(つまり1回の走査と2回の確認走査)からM=3回、誤警報を得る確率は以下である。
=p (6)
【0080】
その結果として、誤警報が無相関であった場合には、1回の確認走査(q)の最終PFA曲線は、未確認走査PFA(p)曲線を二乗することによって近似されてもよい。同様に、最終的な2回の確認走査PFA曲線(q)は、未確認走査PFA曲線(p)を三乗することによって近似されてもよい。
【0081】
実際には、誤警報は、走査ごとに相互に関連付けられる傾向がある。これを説明するために、未確認走査PFA曲線は、トライアルデータの分析から決定できるわずかに小さな乗に累乗できる。
【0082】
Q(例えば1日につき1回に相当する)の所望のPFAの場合、単一走査で必要とされるPFAは、1回または2回の確認走査も実行されると仮定するとPであり、この場合、
=Q (6a)
log(P)=log(Q)/N (6b)
である。
【0083】
本例では、したがってLog(P)は以下に等しい。
(i)未確認走査に関して−8.86(つまりlog(Q))
(ii)1回の確認走査に関して−5.3
(iii)2回の確認走査に関して−3.89
【0084】
log(P)の上記値を採取すると、初期の小さい、中位の、及び大きな(信号対クラッタ)検出閾値を設定し、所望の誤警報率を提供することができる。これらの閾値は、図3に関して前述される閾値化ステップ16で使用される。
【0085】
図6を参照すると、図1に関して概略される検出区別ステップ8が、さらに詳しく説明されている。特に、検出区別ステップ8が、セントロイディングステップ70と航空機拒絶ステップ72を含むことが分かる。
【0086】
目標物は、たとえ空間的に小さい目標物であっても、初期検出ステップ6の間に2回以上の確認済みの検出を生じさせ得る。これら複数の確認済みの検出は、重複する方位角ビンまたは明るい副ローブから生じる可能性がある。検出のクラスタを単一目標物レポートに変換するために、セントロイディングステップ70が、クラスタのセントロイドを計算する。目標物のいくつかの領域(または、さらに高い確実性で、関連する目標物副ローブを加えた目標物)が、確認済み検出を生じさせるほど十分に明るくない可能性があることが留意されなければならない。これは、切断された目標物ブロブを生じさせることがある。この影響を無効にするため、確認済み検出が、クラスタ化の前に広げられる。範囲および方位角で広げるピクセル数(拡張マスク)は、通常システム初期化時に固定され、レーダ設置サイト間で大幅に変動しない。
【0087】
セントロイディングステップ70に続き、航空機拒絶ステップ72が実行される。航空機拒絶ステップ72は、クラスタ化された目標物のいずれかが、「航空機閾値」により大きいまたは等しい多くの確認済み検出ピクセルを含むかどうかを判断する。言い換えると、特定数を超えるピクセルを含む現場の目標物は、航空機であると仮定され、したがって検出済みFODのリストから排除される。有利なことに、目標の空間的なサイズは、クラスタ内の確認済み検出ピクセルの数に関連付けることができる。航空機閾値を超えるクラスタ化目標物を拒絶することは、滑走路が使用中であるときにFOD検出レーダが動作できるようにする。加えて、拒絶された目標物の方位角範囲内で発生するあらゆる最終的なセントロイドされた検出位置も拒絶できる。この拒絶は、航空機のような大きな目標物が、範囲プロファイル全体に広がる可能性のある大きな副ローブ(「閃光」)を引き起こし、追加目標物として誤って解釈される可能性があるためである。
【0088】
航空機閾値は、特定の設置のために、必要に応じて選択し得、あるいは、使用中に必要に応じて変動し得る。航空機閾値の適切な選択により、システムは、大型航空機が着陸するときではないが、荷物運搬車、消防車等が滑走路上にあるときに警報を鳴らすことができる。正確な閾値は、このようにして特定の要件のために設定される。航空機閾値は範囲に応じることができる。例えば、それを超えると目標物が航空機であると想定される閾値は、さらに遠い目標物から、低減された信号レベル、したがって検出ピクセルの低減された数を考慮するために、目標物の検出される範囲とともに減少するように構成されてもよい。
【0089】
セントロイディングステップ70の間に決定された排除が、それらが生成中の短期クラッタマップから排除できるように、初期検出モジュールにフィードバックされることも記憶に留められる必要がある。特に、これらの排除が、航空機拒絶ステップ72の適用以前に初期検出モジュールに提供されることが留意されなければならない。
【0090】
ここで図7を参照すると、前述された方法を実現するためのレーダが示されている。レーダは、アンテナ80と、レーダ電子回路82と、プロセッサ84とを備える。レーダ電子回路82は、アンテナ80によって現場に送信されるFMCW信号を生成し、プロセッサ84に送られる、同相の及び直交位相帰還信号も発生させる。パソコン等であってもよいプロセッサ84は、図1から図6に関して前述された方法を実現するように構成される。
【0091】
当業者は、アンテナ、レーダ電子回路、及びプロセッサが、同一場所に配置されてもよく、あるいは異なる場所に設けられてもよいことを理解する。例えば、レーダによって生成されたIQ帰還信号は、管制室のような遠隔場所に位置するプロセッサ84に、標準的なリンク(例えば、有線ネットワークリンクまたは無線ネットワークリンクで)送信されてもよい。
【0092】
上記例は、滑走路上でのFODの検出に向けられている。当業者は、上記方法が、多数の代替レーダ応用例に、及びレーダではない装置にも適用されてもよいことを理解する。例えば、本方法は、物体の存在のための表面または空間の領域を監視することを必要とする任意の技術に適用できる。技術の他の用途及び利点も、当業者にはすぐに明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の方法の概要を示す。
【図2】図1に概略される方法の初期検出ステップの間に実現される方法を示す。
【図3】クラッタマップ形成のための技術を示す。
【図4】クラッタマップ形成の間にどのようにして目標物反射を除去できるのかを示す。
【図5】誤警報確率(PFA)曲線、及びPFA曲線の末尾の線形外挿を示す。
【図6】図1に関して概略された方法の検出区別ステップの間に実現される方法を示す。
【図7】本発明の方法を実現するためのレーダを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現場で目標物を検出する方法であって、
(a)1つまたは複数のデータセットを採取するステップであって、各データセットが、複数の正規化データ要素を含み、各正規化データ要素が、現場の同じ場所に対する基準反射に正規化された現場の部分からの反射に対応する、前記データセットを採取するステップと、
(b)前記1つまたは複数のデータセットそれぞれの正規化データ要素の少なくとも1つを閾値化する閾値化ステップとを含み、
閾値化ステップ(b)が、各正規化データ要素を、少なくとも第1の閾値および第2の閾値に比較するステップを含み、第1の閾値が第2の閾値より大きいことを特徴とする、現場で目標物を検出する方法。
【請求項2】
前記閾値化ステップが、各正規化データ要素を、少なくとも第1の閾値、第2の閾値、および第3の閾値に比較することを含み、前記第3の閾値が前記第2の閾値よりも低い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
現場に関して前に計算された誤警報確率(PFA)データから、前記少なくとも第1の閾値および第2の閾値を引き出すステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記PFAデータを生成する初期ステップをさらに含み、前記PFAデータを生成するステップが、前記現場から複数の追加の障害物がない現場反射を採取するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1つまたは複数のデータセットを採取するステップ(a)が、複数のデータセットを採取するステップを含み、閾値化ステップ(b)が、次に前記複数のデータセットそれぞれに適用される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
閾値化ステップ(b)が、異なるデータセットに異なる閾値を適用するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
連続データセットの複数の正規化データ要素が、連続期間中に獲得される現場からの反射から引き出される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも第1の閾値および第2の閾値が、連続データセットに対する閾値化ステップの各適用の間に調整される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも第1の閾値および第2の閾値を調整するステップが、補正係数で前記閾値を拡大縮小することを含み、補正係数が、目標物を含むとして特定された正規化データ要素を除く正規化データ要素の平均値から引き出される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
目標物確認ステップをさらに含み、前記目標物確認ステップが、前記複数のデータセットの1つの正規化データ要素が第1の閾値を超えるときに、確認済み目標物検出出力を提供する、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
目標物確認ステップをさらに含み、該目標物確認ステップが、現場の同じ部分に対応する正規化データ要素が、少なくとも2つの連続データセットにおいて第2の閾値を超え、かつ第1の閾値を下回るときに、確認済み目標物検出出力を提供する、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
目標物確認ステップをさらに含み、該目標物確認ステップが、現場の同じ部分に対応する正規化データ要素が、少なくとも3つの連続データセットにおいて第3の閾値を超え、かつ第2の閾値を下回るときに、確認済み目標物検出出力を提供する、請求項2に直接的にまたは間接的に従属するときの請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
クラスタ化ステップを含み、該クラスタ化ステップが、目標物確認ステップからの確認済み目標物検出出力をグループ化し、かつ現場の目標物ごとに1つの物体検出出力を提供するように構成される、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
各オブジェクション検出出力が、関連する目標物の空間的な寸法を示す、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
目標物警報ステップをさらに含み、該目標物警報ステップが、所定の範囲内のサイズを有する現場内での目標物の存在が、クラスタ化ステップにより示されるときに、目標物検出警報を提供する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
1つまたは複数のデータセットそれぞれの複数の正規化データ要素を計算するための正規化ステップをさらに含み、正規化ステップが、現場から獲得された複数の反射を採取するステップと、現場のクラッタマップを使用して前記反射を正規化するステップとを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記クラッタマップが、複数の障害物がない現場反射から初期的に形成され、各障害物がない現場反射が、目標物が現場に存在しないときに現場の部分からの反射に対応する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
正規化ステップで使用されるクラッタマップが周期的に更新される、請求項7に直接的にまたは間接的に従属するときの請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
各更新済みのクラッタマップが、複数の前記1つまたは複数のデータセットの正規化データ要素を生成するために使用される現場からの反射を使用して形成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つのデータセットの各正規化データ要素が、現場内の範囲方位角セルからの正規化反射強度に対応する、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
各正規化データ要素が引き出される現場からの反射が、ビーム内統合(WBI)範囲方位角データを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
マスキングステップを含み、該マスキングステップが、現場内の所定の領域外の反射から引き出される1つまたは複数のデータセットそれぞれから正規化データ要素を取り除くように構成される、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つのデータセットを採取するステップ(a)が、データ記憶手段から前記少なくとも1つのデータセットを読み取ることを含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つのデータセットを採取するステップ(a)が、レーダ装置から現場の部分からの反射を取得するステップを含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
現場が滑走路の少なくとも一部を含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか一項に記載の方法を実行するように適切にプログラミングされるコンピュータ。
【請求項27】
請求項1から24のいずれか一項に記載の方法を実現するためのコンピュータプログラム。
【請求項28】
請求項1から24のいずれか一項に記載の方法を実現するように構成される、レーダ装置。
【請求項29】
プロセッサを備えるレーダ装置であって、プロセッサが、
(a)1つまたは複数のデータセットを採取するように構成され、各データセットが、複数の正規化データ要素を含み、各正規化されたデータ要素が、現場の同じ部分に関する基準反射に正規化される現場の部分からの反射に対応し、前記プロセッサがさらに、(b)前記1つまたは複数のデータセットそれぞれの正規化データ要素の少なくとも1つを閾値化するように構成され、
閾値化するステップ(b)が、各正規化データ要素を、少なくとも第1の閾値および第2の閾値に比較するステップを含み、第1の閾値が第2の閾値より大きいことを特徴とする、レーダ装置。
【請求項30】
周波数変調連続波(FMCW)レーダ装置を備える、請求項28または29に記載の装置。
【請求項31】
FMCWレーダ装置が、35GHzより大きい周波数を有する放射を伝達するように構成される、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
図7に関して実質的に以上に説明される、レーダ装置。
【請求項33】
図1から図6に関して実質的に以上に説明される、処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−501313(P2009−501313A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505960(P2008−505960)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001357
【国際公開番号】WO2006/109074
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(501352882)キネテイツク・リミテツド (93)
【Fターム(参考)】