説明

球面モータ

【課題】本発明は、マグネットの破損や磨耗が回避され、且つ、生産を行い易い構造を備えた球面モータを提供することを目的とする。
【解決手段】球面モータのロータ110を構成する内球部111に陥没形状部114が形成され、そこに感圧接着剤によりロータマグネット112が取り付けられている。内球部111に取り付けられたロータマグネットの外側を覆って、カバー部を構成する外殻部113が取り付けられている。この外殻部113の外面にステータ側に配置された接触部のベアリングボールが接触し、ロータ110が回転可能な構造とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータとロータの対向面の構造に特徴のある球面モータに関する。
【背景技術】
【0002】
内部が中空の球体状の構造(球殻構造)を有するステータと、その内側に配置された回転自在な球体状のロータを備えた球面モータが知られている(例えば、特許文献1参照)。球面モータは、球殻構造のステータの内側で球状のロータが3自由度以上に回転可能な構造を有している。この構造の球面モータは、球殻構造のステータの内面に、球の中心方向に向かって延在する極歯が複数設けられ、この極歯にステータコイル(マグネットワイヤ)が巻かれている。他方で、ロータは、球体の表面に複数のマグネットが埋め込まれている。
【0003】
以下、球面モータの原理を簡単に説明する。まず、球面モータの中心を通る面で切断した切断面を考える。この場合、ロータの回転位置に応じて複数のステータコイルに流す励磁電流の向きを適宜切り替えることで、ロータ側のマグネットとステータ側の磁極との間で生じる磁力の向きが切り替わり、ロータが上記切断面に垂直な方向を軸として回転する。これは、1軸自由度のブラシレスモータと同じ原理である。磁極が球殻構造のステータの内面において均等な位置に配置されていれば、上記の切断断面は任意の位置で考えることができ、ロータは任意の方向を軸として回転可能となる。言い換えると、回転軸の方向を変更しての回転が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−60011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した球面モータでは、外側のステータの内面でロータが回転可能な状態で保持される構造が必要とされる。他方で、ロータ表面には、マグネットを配する必要があるが、ロータの回転時にマグネットがステータ内面側と接触する構造は、マグネットの破損や磨耗を招くので好ましくない。特許文献1には、マグネットがロータの表面近くに埋め込まれた構造が開示されているが、具体的にどのような構造により、そのような構成を実現しているかは明確にされていない。このような背景において、本発明は、マグネットの破損や磨耗が回避され、且つ、生産を行い易い構造を備えた球面モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、略球状の殻構造を有した外側部分と、前記外側部分の内側に配置され、前記外側部分に対して相対的に回転可能な略球状の外面構造を有した内側部分と、前記外側部分の内側または前記内側部分の外側の少なくとも一部を覆う平滑面を有する略球状の殻構造を有するカバー部と、前記外側部分の内面または前記内側部分の外面に設けられ、前記カバー部の前記平滑面に相対的に移動な可能な状態で接触する複数の接触部とを備え、前記外側部分および前記内側部分は互いに対向する面を有し、前記対向する面の一方には、複数のマグネットが配置され、前記対向する面の他方は、マグネットワイヤが巻かれた磁極部材が配置されていることを特徴とする球面モータである。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、カバー部が接触部と接触することで、外側部分と内側部分とが相対的に回転する状態が確保される。このため、接触部(例えばセラミック製ベアリングボール)に対する接触によりマグネットの破損や磨耗が生じることがない構造とできる。また、カバー部を配置することで、回転に必要な平滑面が確保され、研磨等によって改めて平滑面を形成する工程を必要としない。このため、高い生産性を有した球面モータを得ることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記内側部分は、軟磁性材料により構成されると共に前記複数のマグネットを配置するための陥没した形状を有する複数の陥没形状部を備え、前記複数の陥没形状部のそれぞれには、前記複数のマグネットのそれぞれが嵌め込まれた状態で固定され、前記カバー部は、前記複数のマグネットに接触した状態でその外側を覆い、前記複数の接触部は、前記外側部分の内面に配置され、前記カバー部の外面に接触することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、略球状を有する内側部分の外面にマグネットを嵌め込む陥没形状部を設け、そこにマグネットを嵌め込む構造とするので、マグネットの位置決めが容易で、また取り付けが行い易い構造とできる。また、外側のカバー部によって内側部分に配置されたマグネットが保持され、且つ、保護されるので、マグネットが遠心力によって内側部分から脱落し難い構造とできる。特にカバー部の外面が接触部に接触する走行面となるので、マグネットに無理な力が加わることがない構造とでき、例えばセラミック製ベアリングボールとの接触によるマグネットの破損、割れ、磨耗といった不都合が生じない構造とできる。
【0010】
請求項3に記載は、請求項2に記載の発明において、前記複数の陥没形状部のそれぞれにおいて、前記複数のマグネットのそれぞれが感圧接着剤によって接着されていることを特徴とする。請求項3に記載の発明によれば、球状の外面を有する内側部分へのマグネットの固定において、マグネットと軟磁性材料により構成される内側部分との間に作用する磁気吸引力によって感圧接着剤の接着力を発現させ、陥没形状部へのマグネットの固定が行われる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、前記外側部分に対して前記内側部分が相対的に回転した際に、前記外側部分と前記内側部分との間に発生する動圧により、前記外側部分と前記内側部分とが非接触な状態となることを特徴とする。請求項4に記載の発明によれば、内側部分に対する外側部分の相対的な回転において、両者の間に動圧が発生し、両者が接触しない状態での回転が行われる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、マグネットの破損や磨耗が回避され、且つ、生産を行い易い構造を備えた球面モータが提供される。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、マグネットの取り付けが行い易く、またその位置決めが正確に行われる構造とできる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、マグネットの取り付け作業を容易にできる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、ロータとステータとが接触した状態で回転する場合に比較して、動作音の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態の球面モータの外観図(A)とステータの内部構造図(B)である。
【図2】実施形態の球面モータのロータの分解図(A)、内部構造図(B)、分解図(C)、外観図(D)である。
【図3】実施形態の球面モータのステータの内部構造図(A)と外観図(B)である。
【図4】実施形態における磁極部材の分解図(A)と外観図(B)である。
【図5】実施形態の球面モータのステータの外観図(A)および(B)である。
【図6】実施形態における磁極部材の分解図である。
【図7】実施形態における磁極部材の分解図である。
【図8】実施形態の球面モータのステータの分解図である。
【図9】実施形態の球面モータの磁極部分の断面図である。
【図10】実施形態における磁極部材の分解断面図(A)と分解斜視図(B)である。
【図11】実施形態における磁極部材の分解斜視図である。
【図12】実施形態における磁極部材の分解断面図(A)と分解斜視図(B)である。
【図13】実施形態における磁極部材の分解斜視図である。
【図14】実施形態の球面モータの外観図である。
【図15】実施形態の球面モータのステータの外観図(A)と球面モータの断面図(B)、軸受機構の詳細図(C)である。
【図16】実施形態の球面モータのロータの分解斜視図(A)と外観図(B)である。
【図17】実施形態の球面モータのロータの外観図(A)、ステータの分解斜視図(B)および軸受機構の詳細図(C)である。
【図18】実施形態の分解斜視図(A)とステータの分解斜視図(B)である。
【図19】実施形態の分解斜視図(A)とロータの分解斜視図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1. 第1の実施形態
(構成)
まず、本発明を利用した球面モータの基本的な構造について説明する。ここでは、外側の球状の殻構造体がステータで、その内側に球状のロータが格納された構造であり、ステータ側の内面に磁極部材(突極(極歯ともいう))が球の中心の方向に突出している形態の球面モータの一例を説明する。図1(A)には、球面モータ100の外観が、図1(B)には、球面モータ100の内部構造が示されている。球面モータ100は、ステータ101を備えている。ステータ101は、軟磁性材料により構成される球状の殻構造(球殻構造)を有している。ステータ101には、複数の磁極部材102が配置されている。
【0018】
磁極部材102は、軟磁性材料により構成されており、コイルコア部103、突極面104、重畳部105を備えている。コイルコア部103は、ステータ101の内面から球構造の中心に向かって延在する円柱状の構造を有し、外周にマグネットワイヤが巻かれることで、コイルのコアとして機能する。突極面104は、コイルコア部103の球中心の方向の先端の部分に設けられ、傘状に開いた構造を有している。突極面104は、後述する図2のロータに隙間を隔てて対向した位置に配置される。突極面104のロータに対向する面は、球状のロータの外面の形状に沿った球面の一部を構成する形状とされている。突極面104は、通常(円筒1軸型)のインナーロータ型ブラシレスモータにおけるロータ側突極の先端部分に相当する。
【0019】
重畳部105は、コイルコア部103の根本の部分であり、球殻構造のステータ101と球面モータ100におけるラジアル方向(球中心を基点とする放射方向)において重なる面状の構造を有している。この例では、ステータ101の重畳部105と重なる部分が磁極配置部となる。
【0020】
図2には、図1のステータ101の内側に回転自在な状態で納められるロータの一例が示されている。図2には、ロータ110が示されている。ロータ110は、ステータ101の内側に納められ、ステータ101から隙間を隔てた状態で回転自在な状態とされる。ロータ110は、軟磁性材料で構成された内球部111、内球部111の表面に埋め込まれた複数のロータマグネット112により構成されている。また、ロータ110の外面は、セラミックス等の非磁性材料により構成された外側を覆う中空形状の外殻部113により覆われている。
【0021】
内球部111は、ロータコア(バックヨーク)として機能するもので、軟磁性材料により構成された球状構造を有している。内球部111は、重量の軽減を図るために、バックヨークとして機能する程度の厚みを有する中空球構造とされている。勿論、中空でない構造とすることも可能である。内球部111の外面には、ロータマグネット112を取り付けるための陥没した窪んだ形状を有する陥没形状部114が設けられている。この陥没形状部114の窪んだ部分にロータマグネット112が嵌め込まれ、感圧接着剤によって固定されている。ロータマグネット112は、マグネットであり、上述したステータ側の磁極と対となるロータ側の磁極を構成する。
【0022】
以下、陥没形状部114にロータマグネット112を取り付ける工程の一例を説明する。まずロータマグネット112の陥没形状部114に接触する部分に感圧接着剤を配置する。感圧接着剤は、圧力を加えると接着力を発現する接着剤であり、例えば両面テープに添付されている感圧接着剤「3M社スコッチライト(登録商標)8850」を用いることができる。なお、感圧接着剤は、陥没形状部114の陥没した内側に配置、あるいはロータマグネット112と陥没形状部114の両方に配置してもよい。
【0023】
ロータマグネット112に感圧接着剤を配置したら、ロータマグネット112を陥没形状部114に取り付ける。この際、軟磁性材料である内球部111とロータマグネット112との間で磁気吸引力が生じ、この磁気吸引力によって接着部分が加圧される。加圧により、感圧接着剤の接着力が発現し、陥没形状部114にロータマグネット112が固定される。こうして図2(B)に示すロータコアとマグネットの固着状態となる。
【0024】
外殻部113は、カバー部を構成するもので、その表面は、後述するステータ側のベアリングボールと接触し、外側のステータに対するロータ110の回転に際する走行面として機能する。この機能を得るために、外殻部113の表面は、上記ベアリングボールとの接触が滑らかになるように、平滑化されている。この外殻部113の外側表面を平滑化する方法としては、成形や鍛金による方法が挙げられる。また、外殻部113の表面には、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜が成膜されており、ステータ側のベアリングボールとの接触に対する耐摩耗性および潤滑性が確保されている。なお、外殻部113を構成する材料としては、セラミックスの他に樹脂や非磁性の金属材料を用いることも可能である。
【0025】
図2(C)に示すように、外殻部113は、取り付け前の状態において、2分割されている。図2(C)→図2(D)に示す段階を経て、ロータ110への外殻部113の取り付けが行われるが、この際、外殻部113の内面がロータマグネット112に接触する構造とされる。つまり、外殻部113によって外側が覆われた構造において、外殻部113の内面によってロータマグネット112が外側から押さえつけられた構造とされている。なお、この例では、ロータ110への外殻部113の固定は、接着剤によって行われている。
【0026】
(動作)
以下、球面モータ100の基本的な動作の一例を簡単に説明する。例えば、図1のX軸方向を回転軸として、ロータ110を回転させる場合を説明する。まず、図1の符号115の線で切断した断面を考える。この場合、この切断面に含まれるステータ101側の磁極のコイルに通常のブラシレスモータと同様の励磁電流が流される。この際、該当するステータ101の磁極の切り替わりに応じて、これら磁極とロータ110側のロータマグネット112との間で磁気吸引力および磁気反発力が切り替わり、球状のロータ111がX軸を回転軸として回転する。そして、ステータ101で利用する磁極の組み合わせを変えることで、同様の原理により、X軸とは異なる任意の方向の軸を回転軸として、ロータ110を回転させることができる。また、利用するステータ101側の磁極の組み合わせを切り替えつつ、ロータ110を回転させることで、回転軸の方向を変えながら、ロータ110の回転を行うような制御も可能となる。
【0027】
(その他)
図1、図2に示す球面モータ100では、ステータ101の内側でロータ110を回転自在な状態で保持する構造については図示省略されている。ステータ101の内側でロータ110を回転自在な状態で保持する構造は、後述する軸受機構を利用することができる。
【0028】
なお、球面モータ100では、ロータ110の回転を外部に出力する構成が示されていない。ロータ110の回転を外部に出力する構成としては、例えば、ステータ101に開口を設け、この開口からロータ110に固定した出力軸を外部に突出させる構成が挙げられる。この場合、この開口の設けられた範囲において、出力軸が自在に動き、この出力軸が回転する構成が得られる。以下、この一例を説明する。
【0029】
図14には、球面モータ700が示されている。球面モータ700は、外側の球殻構造を有したステータ701、内側の円球状のロータ702、ロータ702の回転軸703を備えている。ステータ701には、円形状に切り取られた開口704が設けられ、そこから回転軸703が外部に出ている構造とされている。ロータ702が3自由度以上に回転することで、回転軸703は、この開口704が設けられた範囲(つまり円錐705の範囲)で動かすことができる。また、この範囲において、回転軸703を回転させることもできる。この球面モータは、例えば、ロボットの関節部分の駆動機構や3自由度以上に回転が必要とされる非接触センサの回転駆動に利用することができる。
【0030】
また、球面モータ100の用途としては、回転軸の向きを変えることが可能なスタビライザーのような形態を考えることもできる。この場合、出力軸をステータ101の外側に出す必要はない。ここで述べた球面モータに関する応用例は、以下に述べる全ての実施形態に適用が可能である。
【0031】
図3(A)には、球面モータ200の内部構造が示され、図3(B)には、球面モータ200のステータ201の外観が示されている。球面モータ200は、軟磁性材料により構成された略球状の殻構造を有するステータ201を有する。ステータ201は、その外周面に磁極配置部となる平坦部202が設けられている。そしてこの平坦部202の部分に開口203が設けられ、この開口203を利用してステータ側の磁極を構成する磁極部材204が取り付けられている。
【0032】
図4(A)には、磁極部材204が分解された状態が示され、図4(B)には、磁極部材204の外観が示されている。磁極部材204は、軟磁性材料により構成されており、突極面206と一体化された円筒形状のコイルコア部205を備えている。また、磁極部材204は、差込軸部208と一体化され、平たい円板形状を有する重畳部207を備えている。突極面206は、図1の突極面104と同じ構造を有している。コイルコア部205の中心には、孔部が設けられ、そこに差込軸部208を差し込むことで、コイルコア部205と重畳部207とが結合される。
【0033】
この例では、図示省略されているが、図3(B)に示すステータ201は、半分に割ることができる構造(必ずしも2等分割でなくてもよい、また、2分割に限らず3分割以上であってもよい)とされている。そして、ステータ201を半分に割った状態で、図4(A)の状態にあるコイルコア部205を、ステータ201の内側から開口203に差し込む。そして、ステータ201の外側から図4(A)の状態にある重畳部207の差込軸部208を、開口203から露出したコイルコア部205の孔部に差し込み、重畳部207とコイルコア部205とを結合する。この際、接着剤を配置し、重畳部207とコイルコア部205を互いに固定し、一体化する。こうして、図3(A)に示すようにステータ201に磁極部材204を取り付けた状態を得る。
【0034】
図3に示す構造では、ステータ201の平坦部202と重畳部207とがラジアル方向において重なる。この際、両者が重なって接触する部分が平面同士となる。このため、重畳部207の加工がより容易となるのに加えて、重畳部207とステータ201表面の平坦部202との接触状態を隙間のない良好な状態とできる。仮に、重畳部207とステータ201との間に隙間が生じると、その部分の磁気抵抗が増大するので、重畳部207を重ねることによる重畳構造としても、磁極部材204背後の磁路の磁気抵抗を下げる機能が低下する。図3に示す構造では、加工が容易であることに加えて、確実に磁極部材204背後の磁路の磁気抵抗を下げることができ、磁気飽和が生じ難い構造が得られる。
【0035】
図5(A)には、球面モータ300のステータ301の外観が示されている。図5(B)には、図5(A)に示す状態において、ステータ301に電極端子が付いた磁極部材320を取り付けた状態が示されている。なお、図示されていないが、ロータは図2に示すものが用いられる。
【0036】
ステータ301は、図3のステータ201に電極端子部を通すための開口を設けた構造を有している。図5には、ステータ301が示されている。ステータ301は、円形の平坦部302を有し、その中心に磁極部材320を通すための開口303が設けられている。そして平坦部302の縁の部分に、磁極部材320と一体化された電極端子部304を内側から通すための矩形の開口305が設けられている。
【0037】
図6には、磁極部材320を分解した状態が示されている。磁極部材320は、コイルコア部307、コイルボビン310、重畳部316を備えている。コイルコア部307は、軟磁性材料により構成され、同じく軟磁性材料により構成された突極面306と一体化されている。突極面306の反対側には、重畳部316と結合するための差込孔308が設けられている。
【0038】
コイルボビン310は、樹脂等の非磁性な材料で構成され、コイル309が巻かれている。コイルボビン310の中央には、コイルコア部307が貫通する上下に貫通する開口311が設けられている。また、コイルボビン310には、コイル309の巻線の両端が接続された2本の電極端子313を支持する電極基部312が取り付けられている。なお、符号314が、後付される電極端子板である。重畳部316は、軟磁性材料により構成される平板形状の円板であり、差込孔308に差し込まれる差込軸部315と一体化されている。
【0039】
以下、ステータ301に磁極部材320を取り付ける工程を説明する。なお、ステータ301は半分に割ることができる構造であるとする。まず、コイルボビン310にコイル309を巻き、巻線の両端を電極端子313に絡げ、半田付けにより固定する。次に、コイルコア部307にコイルボビン310を装着し、2分割した状態のステータ301の開口303の内側からコイルコア部307をステータ301に取り付ける。この際、コイルコア部307の差込孔308の部分が開口303から外側に露出し、更に電極端子313が開口305から外側に突出する。そして、ステータ301の外側から差込軸部315をコイルコア部307の差込孔308に差し込み、重畳部316をステータ301の平坦部302に押し付ける。そしてこの状態を接着剤によって固定する。
【0040】
また、ステータコア301の外側に突出した電極端子部304に電極端子板314を取り付ける。これを全ての磁極部材において行い、さらに半割にされていたステータ301の内部に、図示しないロータを収める。そして、2分割されたステータ301を結合し、球体とする。こうして、図5(B)に示す状態を得る。
【0041】
この態様によれば、磁極部材をステータに組み付けることで、コイルの取り付け、更にコイルへの配線を行うための端子も同時に取り付けられる。勿論、図3に示す態様と同様に重畳部の働きにより、磁気抵抗が下がり磁気飽和が生じ難い構造も得られる。
【0042】
図7には、図6に示す磁極部材の結合構造の変形例が示されている。この例では、螺子により磁極部材の結合を行う。なお、ここで説明する構成は、螺子に接着剤を併用する方法や螺子を仮止め用とし、更に接着剤によって固定を行う方法に利用することもできる。
【0043】
図7には、ステータの一部401が示されている。符号401によって示される部分は、図5に示すステータ301の一部である。ステータの一部401には、平坦部402が設けられている。平坦部402の中央には、開口403が設けられている。開口403の縁には、螺子を通すガイド404が設けられている。また、平坦部402の端の部分には、電極端子422が通る開口405が設けられている。
【0044】
磁極部材400は、突極面411と挿入部412を備えたコイルコア部410、コイル421が巻かれ、電極端子422を備えたコイルボビン420、重畳部として機能する結合部材430から構成されている。ここで、コイルコア部410と結合部材430は、軟磁性材料により構成されている。結合部材430には、挿入部412が挿入される開口431と螺子孔432が設けられている。
【0045】
以下、組み立て手順の一例を説明する。まず、コイル421を巻いたコイルボビン420を用意し、それをコイルコア部412に装着する。次に、挿入部412を開口403に内側から通し、開口403の外側に挿入部412を突出させる。この状態で、コイルコア部410の縁(端部)の段差部分が平坦部402に接触する。
【0046】
そして、開口403から外側に突出した挿入部412に、結合部材430の開口431を合わせ、開口431の内側に挿入部412を収容した状態とする。その後、螺子440を螺子孔432およびガイド404に通し、突極面411に設けられた雌螺子部413にねじ込み固定する。こうして、コイルコア部410端部の段差部分と結合部材430の端面との間にステータの一部である平坦部402が挟み込まれた状態で、螺子440によってコイルコア部410と結合部材430とが結合された状態が得られる。
【0047】
(球面モータに搭載した軸受機構に係る構成の一例)
図8には、実施形態の球面モータのステータの一例が示されている。図8に示すステータは、図5に示すステータに軸受機構(球面軸受)を加えた構成である。また、図8には、ステータ301が半割され、半割ステータ301aと301bに分離された状態が示されている。なお、図8には、ロータは記載されていない。ロータは、図2に示すものが利用されている。以下、図5と同じ部分については説明を省略し、図5と異なる部分について説明する。また、図15には、軸受機構の部分の構造を把握し易くするために、図8に示すステータ301において、軸受機構の部分のみを記載し、他の部分の記載を省略した状態が示されている。
【0048】
この例で示す軸受機構は、球殻構造のステータがその内側において、球体状のロータを回転自在な状態で保持する機能を有する。図8および図15には、軸受機構を構成する軸受機構部330が示されている。軸受機構部330は、球殻構造のステータ301の内周面に複数が配置されており、球中心の方向に突出した円筒部材331を備えている。円筒部材331の先端部分には、ベアリングボール332が保持されている。ベアリングボール332は、一部が僅かに突出し、回転自在な状態であり、且つ、球中心の方向にコイルバネ336により付勢された状態とされている。
【0049】
符号333は、軸受機構部330の外側の構造部分であり、螺子334によって固定された蓋部335を備えている。蓋部335を外すと、開口部337が現れ、その内部に押圧部材338を介してベアリングボール332を押すコイルバネ336が収められ、その先にベアリングボール332が収められている。軸受機構部330は、複数配置されており、複数の部分におけるベアリングボール332とロータ110の外殻部113との点接触により、ステータ301の内側で球体状のロータ110(図2参照)を3自由度以上の回転自在な状態で保持する構造が得られている。
【0050】
以下、ステータの磁極の部分を軸受機構部として兼用する構造の一例を説明する。図9には、図5に示すステータ301に適用した磁極兼軸受機構部500が示されている。図10(A)には、磁極兼軸受機構部500を分解した断面図が示され、図10(B)には、磁極兼軸受機構部500を分解した斜視図が示されている。また、図11には、磁極兼軸受機構部500を分解した状態を別の角度から見た斜視図が示されている。
【0051】
磁極兼軸受機構部500は、ステータ側の磁極としての機能と軸受機構としての機能を備えている。以下、磁極兼軸受機構部500について説明する。図10、図11には、コイルコア部501が示されている。コイルコア部501は、ロータ側に傘型に開き、ロータ側の面がロータの球面に合った曲面とされている突極面502を備えている。また、コイルコア部501の突極面502と反対側には、円筒形状の差込部503が設けられている。突極面502の中央には、円形の開口506が設けられている。開口506は、ベアリングボール505よりも径が小さく、突極面502からロータ側にベアリングボール505が僅かに突出することが可能な構造とされている。
【0052】
コイルコア部501の内側は、開口504とされている。開口504は、開口506に繋がっている。開口504の内側には、非磁性材料により構成された押圧部材507が収められる。押圧部材507は、円錐内面構造を有する窪み508を備え、この窪み508に一部が外側に突出した形でベアリングボール505が収まる。ベアリングボール505は、磁極が生成する磁束に影響を与えないように非磁性で、且つ、硬度と強度を有する材料により構成されている。このような材質としては、セラミックス・樹脂・非磁性金属等の非磁性材料が挙げられる。
【0053】
押圧部材507は、後述する止めピン540のピン541が挿入される挿入部509が設けられている。押圧部材507のベアリングボール505を保持する部分以外の部分は、縮径されており、その部分の外周にコイルバネ511が装着されている。コイルバネ511の端部は、相対的に外径が拡径した部分の段差部510に接触している。コイルバネ511が装着された状態の押圧部材507は、開口504に収められる。
【0054】
符号522は、コイルボビンである。コイルボビン522には、コイル522が巻かれている。また、コイルボビン522は、コイルコア部501を内側に納めるための開口523を有している。
【0055】
符号540は、押圧部材507を球中心の方向に向かって押さえるための押ピンである。押ピン540は、挿入部509に挿入されるピン541、コイルバネ511を押さえるフランジ部542を備えている。なお、フランジ部542は、開口504に収容される構造とされている。符号530は、コイルコア部501と結合され、磁路を形成するための重畳部として機能する結合部材である。結合部材530もコイルコア部501と同様に軟磁性材料により構成されている。結合部材530は、コイルコア部501の差込部503を収容する凹部531を備えている。
【0056】
以下、磁極兼軸受機構部500の部分を組み立てる手順の一例を説明する。まず、コイルバネ511を装着し、窪み508にベアリングボール505を保持した状態とした押圧部材507を、コイルコア部501の開口504に収める。次に、コイルコア部501の外側に、コイル521を巻いたコイルボビン522を装着する。この状態で差込部503をステータ301の内側から開口303(図5参照)に挿入し、開口303から外側に差込部503が突出した状態とする。この状態で、押しピン540のピン541を挿入部509に挿入し、更にフランジ部542によってコイルバネ511の端部を押さえる。そして、結合部材530の凹部531の内側に、コイルコア部501の差込部503が収容されるように、結合部材530をステータ301の外側から装着し、その状態を接着剤によって固定する。固定の方法としては、嵌入による方法も可能である。
【0057】
こうして図9に示す状態を得る。図9に示す状態において、コイルコア部501の段差部501aと結合部材530との間にステータ301の平坦部302が挟まれ、ステータ301に磁極兼軸受機構部500が取り付けられた状態とされている。この構造では、結合部材530が重畳部として機能し、結合部材530と平坦部302が重なる部分で磁路の断面積が確保され、その部分での磁気飽和が生じ難い状態が得られる。また、磁極の中心から内側に突出したベアリングボール505は、コイルバネ511によって、ロータ110の方向(球の中心方向)に弾性力によって付勢されている。これにより、ステータ101内におけるロータ110の弾性的な保持が行われている。なお、図9に示す構成において、コイルコア部501の段差部501aと結合部材530との結合を、図7に示すような螺子によって行う構成も可能である。
【0058】
図12および図13に、図10および図11の変形例を示す。図12(A)には、磁極兼軸受機構部600を分解した断面図が示され、図12(B)には、磁極兼軸受機構部600を分解した斜視図が示されている。また、図13には、磁極兼軸受機構部600を分解した状態を別の角度から見た斜視図が示されている。磁極兼軸受機構部600における磁極兼軸受機構部500と同じ符号の部分は、磁極兼軸受機構部500に関連して説明した部分と同じである。以下、磁極兼軸受機構部600における磁極兼軸受機構部500と異なる部分について説明する。
【0059】
図12および図13に示す磁極兼軸受機構部600が、図10および図11に示す磁極兼軸受機構部500と異なるのは、コイルコア部の構造である。図12および図13には、コイルコア部601が示されている。コイルコア部601は、ロータ側に傘型に開き、そのロータ側の面がロータの球面に合った曲面とされている突極面602を備えている。また、コイルコア部601の突極面602と反対側には、円筒形状の差込部603を備えている。また、差込部603から突極面602の中央に貫通する開口604が設けられている。この開口604には、円筒形状の筒部605が収納される。筒部605は、外側の端面が開放され、球中心側の端面に円形の開口606が設けられている。開口606は、ベアリングボール505よりも径が小さく、突極面602からロータ側にベアリングボール505が僅かに突出することが可能な構造とされている。この構造では、内側に押圧部材507を収納した筒部605が開口604内に収められ、コイルコア部601に筒部605が固定される。機能および他の構造は、磁極兼軸受機構部600と同じである。
【0060】
(実施形態の優位性)
図8に示す構造において、ステータ301の内側に図2に示すロータ100が保持される。この構造では、ベアリングボール332と図2の外殻部113の外面が点接触し、ロータ110がステータ301に対して自在に回転できる。この際、ロータマグネット112(図2参照)は外殻部113の内側に位置し、ベアリングボール332と接触しないので、ベアリングボール332との接触によるロータマグネット112の破損が防止される。また、ベアリングボール332が接触するロータ110側の外面すなわち外殻部113の外面は、段差等のない滑らかな面(平滑面)とすることが容易であるので、ロータ110のスムーズな回転が確保される構造とできる。
【0061】
また、外殻部113によって、ロータマグネット112が外側から押さえ込まれる構造となるので、遠心力によるロータマグネット112の内球部111からの脱落や緩みが防止され、安定性の高い構造が得られる。
【0062】
また、図2に示すように、陥没形状部114に嵌め込む形でロータマグネット112の内球部111への取り付けが行われるので、取り付け作業時におけるロータマグネット112の位置決めが容易となる。このため、ロータマグネット112の内球部111への取り付け作業時の作業性が高くなり、また製造後におけるロータマグネット112の位置決め精度を高くできる。また、通常は、軟磁性材料である内球部111へのロータマグネットの取り付けには、位置決め作業に専用の治具を用いる等の手間がかかるが、図2の構造によれば、この手間が軽減される。
【0063】
また、陥没形状部114へのロータマグネット112の固定を行う際に、感圧接着剤を用い、内球部111とロータマグネット112との間で作用する磁気吸引力を利用して、接着効果を発揮させるので、内球部111へのロータマグネット112の取り付け作業が通常の接着剤を用いた場合に比較して容易となる。
【0064】
(その他の態様)
図16には、図2に示すロータ110とは構成が異なるロータの例が示されている。図16には、ロータ610が示されている。ロータ610の外側は、カバー部として機能する外殻部611により覆われている。外殻部611は、半割り構造の外殻部構成部材611aと611bとにより構成されている。外殻部611の内側には、ロータ610が納められている。ロータ610は、軟磁性材料により構成され、半割り構造とされたロータ構成部材612aおよび612bにより構成されている。
【0065】
ロータ構成部材612aには、円環部613および陥没形状部614が設けられている。円環部613は、外殻部構成部材611aの内周に接触し、外殻部611に対するロータ610の位置決めを行うと共に、両者の密着性を確保し、その一体性を確保する役割を果たす。陥没形状部614は、ロータマグネット615が取り付けられる窪みである。また、ロータ構成部材612aは、突起部616を備えている。突起部616は、外殻構成部材611aに設けられた位置決め用開口部617に嵌り、外殻部611に対するロータ610の位置を決める機能を有する。ここで、ロータ構成部材612aについて説明したが、同様な構造は、ロータ構成部材612bにおいても同じである。また、図示されていないが、外殻部構成部材611bにもロータ610が備える突起部が嵌る位置決め用開口部が設けられている。
【0066】
図16に示すロータの構造によれば、組立時において、カバー部となる外殻部611とその内側のロータ610との位置関係の精度を確保することが容易であり、またガタのない構造とすることができる。このため、回転時の重量バランスの崩れや、それに起因する振動の発生が抑えられた球面モータを得ることができる。
【0067】
図17には、図1及び図2に示す基本構造を有する球面モータにおいて、内側のロータ側に軸受機構を構成するベアリングボールを配置した構造の一例が示されている。図17(A)には、ロータ620が示されている。ロータ620は、軟磁性材料により構成されるロータコアとなる内球部621を備えている。内球部621には、図2に示す陥没形状部が設けられ、それを利用して感圧接着剤を用いた方法によりロータマグネット622が取り付けられている。また、内球部621は、その外面に複数の軸受機構部623を備えている。
【0068】
図17(C)には、軸受機構部623を内球部621から取り外した状態の詳細が示されている。軸受機構部623は、円筒形状の外筒部624、その内側に納められ、押圧部材626を介してベアリングボール627を外方向(後述する半球殻部630により構成される球殻構造を有したカバー部の内面の方向)に押すコイルバネ625を備えている。なお、内球部621は、内部が中空の殻構造を有し、半分に分割することが可能な構造とされている。そして、殻構造の内球部621に螺子628によって軸受機構部623が取り付けられている。
【0069】
図17(B)には、外側のステータの下半分を構成する半割ステータ629が図示されている。半割ステータ629は、図8に示す半割ステータ301bにおいて、軸受機構部330および軸受機構部の外側の構造部分333を供えていない構造を有している。半割ステータ629の内側には、カバー部を構成する半球殻部630が配置される。半球殻部630は、非磁性材料(セラミックス・樹脂・非磁性金属等)によって構成され、その内側にロータ620が納められる。図示されていないが、カバー部は、2つの半球殻部(その一つが符号630により示されている)により構成され、内面がベアリングボール627の走行面となる球殻構造を有している。
【0070】
半球殻部630の内側にロータ620が納められた状態において、ロータ620側に配置されたベアリングボール627が半球殻部630の内面に接触する。これにより、ステータ側に取り付けられた半球殻部630内におけるロータ620の3自由度以上回転が可能な構造が得られる。なお、図17では図示省略されているが、半割ステータ629と組となる上側の半割ステータが、半割ステータ629と組み合わされてステータが構成される。この上側の半割ステータは、図8に示す半割ステータ301aにおいて、軸受機構部330および軸受機構部330の外側の構造部分333を供えていない構造を有している。
【0071】
図18には、球面モータ640が示されている。球面モータ640は、図17に示す構成において、ステータ側に配置されたカバー部にステータ側の突極面が露出する開口部を設け、突極面によりカバー部の内面の一部を構成した構造を有している。球面モータ640は、外側のステータを構成する半割ステータ641と642、その内側に収められる図17のロータ620を備えている。半割ステータ641は、図8に示す半割ステータ301aにおいて、軸受機構部330および軸受機構部の外側の構造部分333を供えていない構造を有している。また、半割ステータ642は、図8に示す半割ステータ301bにおいて、軸受機構部330および軸受機構部の外側の構造部分333を供えていない構造を有している。
【0072】
図18(B)には、半割ステータ642に磁極部644が取り付けられた状態が示されている。磁極部644は、図10に示す構造において、ベアリングボール505およびそれに関連する構成を備えていない構造を有している。半割ステータ642の内側には、カバー部として機能する半球殻部643が配置されている。半球殻部643は、磁極部500の突極面645がその内面の一部を構成するように、開口が設けられ、そこに突極面645が嵌る構造を有している。なお、図示省略されているが、半割ステータ641も半割ステータ642と同様にカバー部として機能する半球殻部を備えている。
【0073】
図18の示す構造によれば、ロータ620のロータマグネット622に突極面645をより近付けることができる。
【0074】
例えば、図1および図2に示す構造において、ロータとされているマグネットが配された内側の球体(内側部分)をステータとし、それに対して外側の球殻構造体(外側部分)が回転する形態も可能である。この場合、外側の球殻構造体への配線、および内側の球体を固定する構造が必要とされるため、回転する角度範囲が限定されるが、限定された角度範囲で3自由度以上の角度変位を行うモータとして機能させることができる。
【0075】
外側をステータ、内側をロータとした球面モータにおいて、両方に電磁石を配置した構造も可能である。例えば、図8に示すステータの構造は、内側に配置されるロータとして、その表面にマグネットを配置した構造(図2参照)のものを採用する場合の例として説明したが、図8に示すステータの構造で、内側に配置するロータとして、表面に電磁石を配置した構造のものを採用することも可能である。以下、この一例を説明する。
【0076】
図19には、球面モータ740が示されている。球面モータ740は、ステータ710の内側にロータ741を3自由度以上に回転自在な状態で保持した構造を有している。ステータ710は、半割ステータ710aおよび710b、その内側に配置されるカバー部として機能する半球殻部720により構成されている。なお、図示されていないが、半割ステータ710aの内側にも半球殻部720と組となる半球殻部が配置されている。半割ステータ710aおよび710bは、図8に示す半割ステータ301aおよび301bにおいて、軸受機構部330を取り除いた構造を有している。半球殻部720は、非磁性材料により構成された殻構造を有する球体であり、その内側の面が、ロータ741側の軸受機構を構成するベアリングボール744に接触する。これにより、ロータ741が半球殻部720の内側で3自由度以上に回転可能な状態で保持される。
【0077】
ロータ741は、ロータ本体750とロータカバー742により構成されている。ロータ本体750は、中心の球殻構造を有するロータヨーク746と、そこから外方向に延在し、先端が傘型に開いた構造の複数の磁極743を備えている。各磁極743は、本発明の重畳構造を有し、ロータコイル745が巻かれ、ロータコイル745からの引き出し線の端部が接続された給電用端子部747を備えている。また、各磁極743のステータへの対向面の中心には、図9〜図11において説明した磁極兼軸受機構を利用した軸受機構が配置されている。図には、この軸受機構を構成するベアリングボール744が示されている。また、ステータカバー742には、磁極743のロータ側の対向面を露出するために開口748が設けられている。なお、説明は省略するが、ロータ741への電力の供給は、配線による方法、電池による方法、電磁誘導による方法が可能である。
【0078】
この構成では、ステータおよびロータの両方の磁極が電磁石を用いているので、電磁石が生成する磁力の出力に応じて、モータ出力を調整できる。このため、永久磁石搭載では困難とされていた低出力条件から高出力条件まで、高効率動作を実現できる。
【0079】
図17に示す例では、外側(外側部分)をステータ、内側(内側部分)をロータとした球面モータの例を説明したが、同様な磁極の構造において、外側をロータ、内側をステータとした球面モータも可能である。
【0080】
2.第2の実施形態
図17に示す構成において、半球殻部630およびこの半球殻部630と対となる図示しないもう一つの半球殻部とで構成される球殻状のカバー部の内側にオイル、空気、磁性流体等の流体を満たした構造とする。また、ベアリングボール627の位置を調整し、ロータ620の中心とカバー部(その半分の部分が半球殻部630により示されている)の中心とを一致させた際に、ベアリングボール627がカバー部の内面から離れる位置関係となるようにされている。また、カバー部の内面に、動圧の発生を促す動圧溝の形成や粗面化を行う加工が施されている。
【0081】
この構成によれば、ロータ620が回転していない状態では、ロータ620の下面側のベアリングボールがカバー部(この場合は、主に半球殻部630)の内面に接触する。そして、ロータ620が回転すると、カバー部との間で動圧が発生し、ロータ620がカバー部から離れ、カバー部の内側で浮いた状態となり、カバー部に対して非接触な状態で回転する。この構成によれば、ロータ620の回転時にベアリングボール627とカバー部とが接触しないので、摩擦音が発生せず動作音が静かになる。
【0082】
この動圧を用いて、動作時にロータとステータとを非接触状態とする構成は、図8に示す構成、図15に示す構成、図18に示す構成、図19に示す構成に適用することもできる。
【0083】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、球面モータに利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
100…球面モータ、101…ステータ、102…磁極部材、103…コイルコア部、104…突極面、105…重畳部、110…ロータ、111…内球部、112…ロータマグネット、113…外殻部、114…陥没形状部、200…球面モータ、201…ステータ、202…平坦部、203…開口、204…磁極部材、205…コイルコア部、206…突極面、207…重畳部、208…差込軸部、300…球面モータ、301…ステータ、301a…半割ステータ、301b…半割ステータ、302…平坦部、303…開口、304…電極端子部、305…開口、306…突極面、307…コイルコア部、308…差込孔、309…コイル、310…コイルボビン、311…開口、312…電極基部、313…電極端子、314…電極端子板、315…差込軸部、316…重畳部、320…磁極部材、330…軸受機構部、331…円筒部材、332…ベアリングボール、333…軸受機構部の外側の構造部分、334…螺子、335…蓋部、336…コイルバネ、337…開口部、338…押圧部材、340…内側ステータカバー部、400…磁極部材、401…ステータの一部、402…平坦部、403…開口、404…ガイド、405…開口、410…コイルコア部、411…突極面、412…挿入部、413…雌螺子部、420…コイルボビン、421…コイル、422…電極端子、430…結合部材、431…開口、432…螺子孔、440…螺子、500…磁極兼軸受機構部、501…コイルコア部、501a…段差部、502…突極面、503…差込部、504…開口、505…ベアリングボール、506…開口、507…押圧部材、508…窪み、509…挿入部、510…段差部、511…コイルバネ、521…コイル、522…コイルボビン、523…開口、530…結合部材、531…凹部、540…押ピン、541…ピン、542…フランジ部、601…コイルコア部、602…突極面、603…差込部、604…開口、605…筒部、606…開口、610…ロータ、611…外殻部、611a、611b…外殻部構成部材、612a、612b…ロータ構成部材、613…円環部、614…陥没形状部、615…ロータマグネット、616…突起部、617…位置決め用開口部、620…ロータ、621…内球部、622…ロータマグネット、623…軸受機構部、624…外筒部、625…コイルバネ、626…押圧部材、627…ベアリングボール、628…螺子、629…半割ステータ、630…半球殻部、640…球面モータ、641…半割ステータ、642…半割ステータ、643…半球殻部、700…球面モータ、701…ステータ、702…ロータ、703…回転軸、704…開口、705…回転軸703が動く範囲、740…球面モータ、710…ステータ、710a、710b…半割ステータ、720…半球殻部、741…ロータ、742…ロータカバー、743…磁極、744…ベアリングボール、745…ロータコイル、746…ロータヨーク、747…給電用端子部、748…開口、750…ロータ本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略球状の殻構造を有した外側部分と、
前記外側部分の内側に配置され、前記外側部分に対して相対的に回転可能な略球状の外面構造を有した内側部分と、
前記外側部分の内側または前記内側部分の外側の少なくとも一部を覆う平滑面を有する略球状の殻構造を有するカバー部と、
前記外側部分の内面または前記内側部分の外面に設けられ、前記カバー部の前記平滑面に相対的に移動な可能な状態で接触する複数の接触部と
を備え、
前記外側部分および前記内側部分は互いに対向する面を有し、
前記対向する面の一方には、複数のマグネットが配置され、
前記対向する面の他方は、マグネットワイヤが巻かれた磁極部材が配置されていることを特徴とする球面モータ。
【請求項2】
前記内側部分は、軟磁性材料により構成されると共に前記複数のマグネットを配置するための陥没した形状を有する複数の陥没形状部を備え、
前記複数の陥没形状部のそれぞれには、前記複数のマグネットのそれぞれが嵌め込まれた状態で固定され、
前記カバー部は、前記複数のマグネットに接触した状態でその外側を覆い、
前記複数の接触部は、前記外側部分の内面に配置され、前記カバー部の外面に接触することを特徴とする請求項1に記載の球面モータ。
【請求項3】
前記複数の陥没形状部のそれぞれにおいて、前記複数のマグネットのそれぞれが感圧接着剤によって接着されていることを特徴とする請求項2に記載の球面モータ。
【請求項4】
前記外側部分に対して前記内側部分が相対的に回転した際に、前記外側部分と前記内側部分との間に発生する動圧により、前記外側部分と前記内側部分とが非接触な状態となることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の球面モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−70524(P2012−70524A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212596(P2010−212596)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】