説明

琥珀抽出物を含有する化粧用組成物

【課題】支持タンパク質が減少し、酵素分解系が過剰に活性化し、皮膚密度が減少する老化のプロセスを媒介する構成要素に作用しうる、新規な有効成分の提供。
【解決手段】有効成分として、琥珀抽出物を含む第1の有効成分、及び、バーソレシア・エクセルサ抽出物、ポテンティラ・エレクタ抽出物、アスパラギン酸マグネシウム、筋肉の収縮に作用するペプチド(特にアセチルヘキサペプチド−3)、脂肪酸(特にC16脂肪酸)がグラフト結合したペプチド若しくはその誘導体、又はかかるペプチドの組み合わせ(コラーゲンの合成を促進、特にパルミトイルオリゴペプチドペンタペプチド−3又はパルミトイルテトラペプチド−7)、大豆粉加水分解物、及び植物の糖脂質(好適には穀物のスフィンゴ糖脂質、より好適には小麦のスフィンゴ糖脂質)からなる群から選択される1つ以上の更なる有効成分を含んでなる化粧用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広義には、琥珀抽出物を含む化粧用組成物に関する。本発明は更に、特にスキンファーミング(肌の引き締め)効果を改善するための化粧料としての、かかる抽出物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧用組成物の開発担当者は通常、その化粧用組成物に補助的な効果を付与するために組み合わせる有効成分を探索し、この組成物の効果を最大限にしようとする。
【0003】
したがって、かかる化粧用組成物中には通常、この組成物に補助的効果(例えば皮膚の保湿性及びアンチリンクル効果)をもたらす有効成分が含有されている。
【0004】
また、例えばスキンファーミングなどの特定の目的のために、そのような活性を有する有効成分、又はそれと類似の活性を有するが異なるメカニズムで機能することが知られている異なる有効成分を探索し、組み合わせ、最善の結果を得ることも通常行われる。
【特許文献1】特願平09−227334号
【特許文献2】中国特許出願第1245052号
【特許文献3】中国特許出願第1325678号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
真皮はコラーゲンタンパク質により基本的に構成され、それは線維芽細胞により合成され、水和した細胞外マトリックス内に浸漬し、線維芽細胞により張力が維持されている。しわの形成及び皮膚のはりの喪失は、その真皮におけるトラブルに由来するとして一般に知られている。老化のプロセスでは支持タンパク質が減少し、酵素分解系が過剰に活性化し、皮膚密度が減少する。ゆえに、これらを媒介する構成要素に作用しうる、新規な有効成分を見出すことが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らによる鋭意研究の結果、上記の様々な媒介要素に非常に有効に作用しうる活性成分を見出すに至った。本発明は、皮膚の状態を改善する1つ以上の有効成分を含む化粧用組成物、さらに詳細には、以下からなる群から選択される1つ以上の有効成分を含んでなる化粧用組成物の提供に関する。
− バーソレシア・エクセルサ(Bertholletia excelsa)の抽出物、特にその果皮の抽出物(コラーゲンの合成を促進することが公知)、
− ポテンティラ・エレクタ(Potentilla erecta)、別名トルメンティラ(tormentille)の抽出物(コラーゲンの合成に作用することが公知)、
− アスパラギン酸マグネシウム(真皮と表皮の間の接着に作用することが公知)、
− アセチルヘキサペプチド−3(神経伝達物質の放出を減少させ、筋肉の収縮を促進することが公知のペプチド、特に商標名アルジルリン(登録商標)として公知)、
− 脂肪酸(特にC16脂肪酸)がグラフト結合したペプチド若しくはその誘導体、又はかかるペプチドの組み合わせ(コラーゲンの合成を促進、特にパルミトイルオリゴペプチドペンタペプチド−3又はパルミトイルテトラペプチド−7)、
− 糖タンパク質リッチな大豆加水分解物(I型コラーゲンの合成に作用することが公知)、及び
− 植物糖ペプチド、特に小麦のスフィンゴ糖脂質(角質層を強化することが公知)。
【0007】
皮膚のスキンファーミングを改善するという視点から、上記の1つ以上の有効成分を含む化粧用組成物の効果を上げる方法を探索する過程において、本発明の発明者らは琥珀抽出物が特に重要な候補物質であることを見出した。
【0008】
発明者らはまた、琥珀抽出物のこれらの特に有用な特性と、当該琥珀抽出物が、単層で培養されたヒト真皮線維芽細胞の遺伝子発現プロファイルに対する顕著な調節活性を有し、その活性が同時に幾つかのレベルで作用するという全く予想外の試験結果とが相互に関連することを解明するに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
琥珀の語源は、アラビア語のaribarである。琥珀は古代の樹木が化石となった樹脂であり、学名はPinus succiniferaで、「琥珀の森」として知られていた場所で産生されたものである。約4,500万年前、中央ヨーロッパ地域全体は森に覆われていたと言われている。琥珀の形成が、いずれの木に由来するかは不明であるが、一般の常識に反するが、琥珀は恐らく、特に急激な気候変動が生じた時代に浸出した松の樹液ではなく、木の維管束組織から形成されたものと考えられる。琥珀の組成に関して記載されている刊行物が幾つか存在する(特にC.W.Beck,The chemistry of amber,Est.Mus.Cienc.nat.de Alava,1999,num.espec.2,33−48、及びJ.S.Mills,The chemical composition of Baltic amber,Chemical geology,1984,47,15−39を参照)。
【0010】
世界の琥珀資源の90%は、バルト海の北部に位置する、ポーランドとリトアニアに囲まれた、ロシアの飛び領地に集中している。特に本発明で使用するものはこの地域原産の琥珀の抽出物であり、以下「バルチックアンバー抽出物」と称する。
【0011】
化粧用組成物としての琥珀又は琥珀抽出物の使用については、本特許出願以前に既に幾つか開示がなされている。
【0012】
例えば特許文献1には、有機溶媒で抽出した琥珀抽出物の、抗菌性、抗酸化作用及び脱臭効果を目的とした使用に関する記載が存在する。
【0013】
特許文献2には、アンチリンクル効果を目的とする琥珀粉の使用に関する記載が存在する。
【0014】
特許文献3には、皮膚において形成される防御シールドを強化するための、また皮膚内の微小循環を改善するための、アルコールによる琥珀抽出物の使用に関する記載が存在する。
【0015】
すなわち、これらの様々な特許文献の存在により、本発明以前にも、化粧用組成物への琥珀粉又は琥珀抽出物の使用が公知であったことが明らかである。しかし、これらの特許文献のいずれにも、本発明の発明者らにより明示された真皮の構成要素に作用する特別な活性に関して、又はその、本発明の主要部を形成する特定の組み合わせによる有効性との因果関係に関しては何ら記載されてはいない。前記有効性は、本特許出願の発明者らにより立証された、自明ではない、多くの特性に起因するものである。
【0016】
すなわち、その基本的な一態様では、本発明は有効成分として以下のうちのいずれかを含んでなる化粧用組成物に関する:
− 琥珀抽出物を含む第1の有効成分、及び
− バーソレシア・エクセルサ(Bertholletia excelsa)の抽出物、
− ポテンティラ・エレクタ(Potentilla erecta)の抽出物、
− アスパラギン酸マグネシウム、筋肉の収縮に作用するペプチド(特にアセチルヘキサペプチド−3)、
− 脂肪酸(特にC16脂肪酸)がグラフト結合したペプチド若しくはその誘導体、又はかかるペプチドの組み合わせ(コラーゲンの合成を促進、特にパルミトイルオリゴペプチドペンタペプチド−3又はパルミトイルテトラペプチド−7)、
− 大豆粉加水分解物、及び
− 植物の糖脂質(好適には穀物のスフィンゴ糖脂質、より好適には小麦のスフィンゴ糖脂質)
からなる群から選択される1つ以上の更なる有効成分。
【0017】
別の基本的な一態様では、本発明は更に化粧料としての琥珀抽出物、特にバルチックアンバー抽出物の使用に関する。当該琥珀抽出物は真皮の支持タンパク質、及び/又は真皮のタンパク質を分解する酵素システム、及び/又は細胞外マトリックスのグリカンタイプの基本成分(特にプロテオグリカン)に作用して皮膚の基本的な生体の機械的特性(すなわち皮膚のはり(firmness)及び弾力性)を改善するものであり、化粧用組成物、特にバーソレシア・エクセルサ(Bertholletia excelsa)の抽出物、ポテンティラ・エレクタ(Potentilla erecta)の抽出物、アスパラギン酸マグネシウム、筋肉の収縮に作用するペプチド(特にアセチルヘキサペプチド−3)、脂肪酸(特にC16脂肪酸)がグラフト結合したペプチド若しくはその誘導体、又はかかるペプチドの組み合わせ(コラーゲンの合成を促進、特にパルミトイルオリゴペプチドペンタペプチド−3又はパルミトイルテトラペプチド−7)、植物の糖脂質(好適には穀物のスフィンゴ糖脂質、より好適には小麦のスフィンゴ糖脂質)からなる群から選択される1つ以上の更なる有効成分を含んでなる化粧用組成物の調製の際に添加される。
【0018】
これらの2つの態様において使用する琥珀抽出物は、好適にはバルチックアンバー抽出物である。
【0019】
特に好適な一変形態様では、1つ以上のC〜Cモノアルコール、及び/又は1つ以上のC〜Cグリコールを含んでなるアルコール性抽出溶媒若しくはアルコール水溶液を含んでなる抽出溶媒を用いて当該琥珀抽出物を調製する。
【0020】
そのような抽出溶媒は、好適にはエタノール、ブチレングリコール、エタノール/水、ブチレングリコール/水、ブチレングリコール/エタノール/水の混合液、望ましくはエタノール含量40〜80%のエタノール/水の混合液、ブチレングリコール、50/50のブチレングリコール/水の混合液、又は80/20〜60/40のブチレングリコール/エタノールの混合液からなる群から選択される。
【0021】
本発明の枠内で使用する琥珀抽出物は、アルコール性抽出溶媒の使用により良好に得られ、その抽出物を乾燥させ、更に化粧用組成物として使用可能なグリコール溶媒、特にブチレングリコールと混合する。
【0022】
前記アルコール抽出物の調製方法は以下のとおりである:
琥珀、特に黄色のバルチックアンバーを粉末状にし、C〜Cアルコール、又は水とC〜Cアルコール(特にエタノール)との混合液、更に詳細にはエタノール含量が40〜80体積%のエタノールと水の混合液で抽出する。この操作は、アルコール/水混合液に琥珀粉を添加し、冷所で数時間(例えば約5時間)静置することにより行われる。次いで、数時間(例えば約8時間)その混合液を加熱する。次いで、例えば遠心分離、より好適には濾過して固形残渣を除去し、抽出液を回収する。次いで、好適には真空下で溶媒を蒸発させて除去し、粉末状のアルコール抽出物と呼ばれるものを得る。次いで、化粧品用途に使用できる溶媒(特にグリコール、好適にはブチレングリコール、又は界面活性剤の混合物)中にこの微細粉を溶解若しくは分散させる。
【0023】
別の変形態様では、いわゆるグリコール抽出物を調製する。かかる抽出物の調製法は以下のとおりである:
琥珀、望ましくは黄色のバルチックアンバーを粉末状にし、次いで、冷所で約48時間、望ましくは撹拌しながらグリコール性溶媒に浸漬する。次いで、好適には約6時間にわたり熱抽出を行う。次いで、好適には遠心分離により固液分離を行い、その後上澄みを回収し、濾過し、液中に懸濁している可能性のある微粒子を除去する。以上より本発明に係る好適な抽出物が調製される。
【0024】
使用する当該グリコール溶媒は、ブチレングリコール、体積比率50/50のブチレングリコール/水の混合液、又は体積比率80/20〜60/40のブチレングリコール/アルコールの混合液が望ましい。
【0025】
上記のように、本発明の組成物の調製において琥珀抽出物が選択されたのは、それらが皮膚のスキンファーミング効果という特徴的な利用価値を有するためである。前記価値は、これらの抽出物がヒト真皮線維芽細胞の遺伝子発現に影響を及ぼすことを示す生物学的試験により確認されている。すなわちこのことは実施例に開示されており、そこではこの抽出物が、
− コラゲナーゼ又はMMP1と呼ばれるメタロプロテイナーゼ−1、
− 真皮内の主要なコラーゲン(特に1型、3型及び5型コラーゲン、より具体的には5型コラーゲン)の比率(真皮の線維の配向に作用)、
− デルマトポンチン(真皮内のタンパク質/細胞外マトリックスの相互作用を制御することが公知)、及び
− 小型ロイシンリッチプロテオグリカン(SLRP)(特にビグリカン及びバーシカン。皮膚の生体機械的特性の維持において主要な役割を果たす線維の形成に関与するプロテオグリカン。)
に対して影響を及ぼすことが開示されている。
【0026】
上記の琥珀抽出物とは別に、本発明の組成物は、以下からなる群から選択される少なくとも他の1つの有効成分を含んでなる:
バーソレシア・エクセルサ(Bertholletia excelsa)の抽出物、
ポテンティラ・エレクタ(Potentilla erecta)の抽出物、
アスパラギン酸マグネシウム、
筋肉の収縮に作用するペプチド(特にアセチルヘキサペプチド−3)、
脂肪酸(特にC16脂肪酸)がグラフト結合したペプチド若しくはその誘導体、又はかかるペプチドの組み合わせ(コラーゲンの合成を促進、特にパルミトイルオリゴペプチドペンタペプチド−3又はパルミトイルテトラペプチド−7)、
植物の糖脂質(好適には穀物のスフィンゴ糖脂質、より好適には小麦のスフィンゴ糖脂質)。
【0027】
本発明の組成物に含まれる他の「有効成分」が各々有する特有の効果及び好適な含有比率を以下に示す。
1)バーソレシア・エクセルサ(Bertholletia excelsa)の抽出物:
特にその果皮の抽出物が望ましい。当該抽出物の作用機構及び効果に関しては、国際公開第96/25143号及びフランス特許出願第2752527号に記載されている。これらの2つの特許出願において、当該抽出物がコラーゲン合成の促進活性及び抗フリーラジカル活性を有し、その結果、真皮の老化が抑制され、しわの発生が予防され若しくはしわの深度が減少し、又はスキンファーミング効果が得られることが開示されている。当該抽出物は、本発明の組成物中に0.1〜2重量%の濃度で使用するのが好適である。
2)ポテンティラ・エレクタ(Potentilla erecta)の抽出物:
当該抽出物は、特に欧州特許第0946138号に記載されている。この特許文献において、当該抽出物の使用により、真皮−表皮接合部の強化により真皮−表皮間の接着が促進され、VII型コラーゲンの形成が刺激され、これらの2つの作用の組合せにより、スキンファーミング効果が得られ、皮膚の老化の兆候の表面化が予防若しくは遅延され、しわの発生が遅延されるか若しくはしわの震度が減少することが開示されている。ポテンティラ・エレクタ(Potentillaer ecta)のグリコール抽出物は、本発明の組成物中に0.1〜2重量%の濃度で使用するのが好適である。
3)アスパラギン酸マグネシウム:
本発明の組成物中に、好適には0.01〜0.5重量%の濃度、特に好適には0.02〜0.1重量%の濃度で使用する。
4)神経伝達物質の放出を減少させ、筋肉の収縮を促進するペプチド:
特にリポテック社(Lipotech SA)製のアルジルリン(登録商標)として公知のアセチルヘキサペプチド−3。組成物に対して0.1〜1重量%の濃度で使用するのが好適である。
5)脂肪酸(特にC16脂肪酸)がグラフト結合したペプチド若しくはその誘導体、又はかかるペプチドの組み合わせ:
コラーゲン合成を促進。特に、パルミトイルオリゴペプチドペンタペプチド−3又はパルミトイルテトラペプチド−7。組成物の総重量に対して好適には0.1〜5重量%の濃度、より好適には1〜3重量%の濃度で使用する。
6)糖タンパク質リッチな大豆加水分解物:
かかる加水分解物は市販されており、特にシラブ社(Silab)により市販され、I型コラーゲン、フィブリリン1、及びフィブロネクチンの合成を増加させるとされているラフェルミン(登録商標)が挙げられる。かかる加水分解物は、化粧用組成物の重量に対して、好適には0.1〜5重量%の濃度、特に好適には1〜3.5重量%の濃度で使用する。
7)植物の糖脂質(特に穀物のスフンゴ糖脂質、好適には小麦のスフィンゴ糖脂質):
かかる糖脂質(特に小麦のスフンゴ糖脂質)は、組成物中の第2の有効成分として使用される望ましい成分を構成する。組成物に最適な効果(表皮細胞への作用)が付与される。好適には0.01〜5重量%の濃度、特に好適には0.05〜0.8重量%の濃度で使用する。
【0028】
本発明の化粧用組成物は、好適には約2重量%の琥珀のグリコール抽出物、及び約0.1重量%のスフィンゴ糖脂質(特に小麦から抽出したスフィンゴ糖脂質)を含んでなる。
【0029】
使用するスフィンゴ糖脂質を含む抽出物は、グルコシルセラミド、ジラクトシルジグリセリド、トリグリセリド、及びホスホリン脂質を含有する抽出物であるのが好適である。これらの抽出物は、好適には約50重量%のグルコシルセラミド、40%のジガラクトシルジグリセリド、0〜5%のトリグリセリド、及び5〜10%のホスホリン脂質を含有する。
【0030】
好適には、約50〜65%のリノール酸、15〜20%のパルミチン酸及び10〜15%のオレイン酸の構成比率で脂肪酸を含有するスフィンゴ糖脂質の混合物を使用する。
【0031】
本発明の組成物はまた、他の有効成分、特に以下に列挙する成分を含有してもよい:
− ミトコンドリア、特にミトコンドリアDNAの保護剤:例えばヘキサペチド−11(通常0.1〜5重量%の濃度、好適には0.5〜2重量%の濃度で使用)、又はゲンチジン酸トコフェロール(通常0.01〜2重量%の濃度で使用)。
− トコトリエノール及びその誘導体(通常0.01〜5重量%、好適には0.02〜0.5重量%の濃度で使用)。
− ルメックス・クリスプス(Rumex crispus)の抽出物(通常0.1〜5重量%、好適には0.5〜2重量%の濃度で使用)。
− グリシリザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)の根茎の抽出物(通常0.01〜1重量%の濃度で使用)。
− センテラ・アジアチカ(Centella asiatica)から抽出した、グリコシル化若しくは非グリコシル化トリテルペンの誘導体(特にマデカッソシド、アジアチコシド、アジア酸又はマデカッソ酸(各々単独若しくはそれらの組み合わせ)、通常0.1〜5重量%の濃度で使用)。
− トコフェロール及びその誘導体(特にリン酸トコフェロール又は酢酸トコフェロール、0.1〜0.5重量%の濃度で使用)。
− アスコルビン酸又はビタミンC。特にエラスチン合成を促進することが公知。エラスチン合成に関してはフランス特許第2737971号に記載されている。好適には0.1〜5重量%の濃度で、特に好適には1〜2重量%の濃度でアスコロビン酸を本発明にかかる組成物に添加する。
− ヒアルロン酸又はそのナトリウム塩(好適には0.1〜5重量%の濃度で使用)。
− D−キシロース(その使用に関して欧州特許第1028705号に記載されている。本発明の組成物に対し、好適には0.1〜1重量%の濃度で使用。)。
− グリコール(特にブチレングリコール)及びグリセロール(1〜5重量%の濃度で使用)。
− レチノイン酸(0.01〜1重量%の濃度)、又はレチノール若しくはそのエステル(例えばプロピオン酸レチノール。通常1500〜2500IUの濃度)。
− DNA加水分解物(特に魚の精液抽出物の処理により調製)0.01〜1重量%、
− 植物由来のエクジステロイド(0.1%〜2重量%の濃度)。
− オキサゾリドン(特に4−デシルオキサゾリジン−2−オン、好適には0.1%〜5重量%の濃度で使用)。
− 植物性タンパク質又は植物タンパク質加水分解物(特に小麦タンパク質及び/又はオーツ麦タンパク質、皮膚表面の引き締め効果を有する。当該タンパク質を0.1%〜5重量%の濃度で、本発明の組成物中に用いるのが好適である)。
【0032】
これらの全ての組成物中に、琥珀抽出物を0.01%〜5重量%の濃度で添加するのが好ましい。アルコール抽出物の場合には、当該琥珀抽出物の濃度は好適には0.01〜0.1重量%であり、上記のグリコール抽出物の場合には0.5〜5重量%、好適には1〜2.5重量%の濃度である。
【0033】
上記の補助的な有効成分のうち、以下を選択するのが好適である:
ルメックス・クリスプス(Rumex crispus)の抽出物、
グリシリザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)の根茎の抽出物、
グリコシル化された又は非グリコシル化トリテルペンの誘導体、
センテラ・アジアチカ(Centellaasiatica)の抽出物(特にマデカッソシド、アジアチコシド、アジア酸又はマデカッソ酸の各々単独若しくはそれらの組み合わせ)、
DNA加水分解物(特に魚の精液抽出物から調製したもの)、及び
オキサゾリドン(特に4−デシルオキサゾリジン−2−オン)。
これらの様々な物質を、好適には上記の割合で、より好適には当該化粧料の第2の有効成分としての小麦スフィンゴ脂質含有抽出物を含む組成物中で使用する。
【0034】
好適な一変形態様では、当該琥珀抽出物を、プログラム化された有効成分の放出を可能にするベクターシステム中、特にリポソーム型のラメラ小胞中に封入する。
【0035】
本発明の組成物の効果は、以下の実施例により更に明確に理解される。
【0036】
<実施例1>:琥珀のエタノール抽出物の調製
黄色のバルチックアンバーを粉末状にし、冷所で5時間、60体積%エタノール/水の混合液(比率:1:10v/v、琥珀ベース)に浸漬し、その後8時間加熱して抽出した。混合液を遠心分離し、抽出液を回収し、濾過して微小な粒子を除去した。得られた抽出物を次の実施例に用いた。
【0037】
<実施例2>:
実施例1の操作の後、当該アルコール抽出物を真空乾燥し、微粉末化し、グリコール又は界面活性剤などの、化粧品用途に使用可能な溶媒に溶解若しくは分散させる。本実施例では、当該乾燥抽出物を0.5重量%でブチレングリコールと混合し、全体としては最終組成物の2重量%の調製物を得た。
【0038】
<実施例3>:バルチックアンバーのグリコール抽出物の調製
黄色のバルチックアンバーを粉末状にし、冷所で48時間、撹拌しながらブチレングリコール中に浸漬させ、次に6時間加熱して抽出した。遠心分離により固液分離し、ポンプで液体抽出物を回収し、濾過し、微小粒子を除去し、本発明に係るグリコール抽出物を回収した。
【0039】
<実施例4>:単層培養したヒト真皮線維芽細胞の遺伝子発現プロフィールに対する、琥珀抽出物の作用
1)材料と方法
a)細胞培養
正常ヒト線維芽細胞(NHF)を融解し、次いで75cmのプレートに、10%(v/v)のウシ胎仔血清(FCS)を含有するDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)中、プレート当り10細胞の細胞密度で撒種した。コンフルエンスに達した時、細胞をトリプシン溶液で処理し、8個のプレートに再度撒種した。コンフルエンスに達した時に、NHFをリン酸緩衝液(リン酸緩衝生食塩水、PBS)で3回洗浄し、次いでFCSを含まないDMEMで18時間培養した。
【0040】
b)琥珀による処理
無血清の条件で18時間培養した後、細胞を以下の異なる条件下で処理した:
− 実施例1の琥珀抽出物 2%(v/v)
− 溶媒(ブチレングリコール) 2%(v/v)
− DMEM単独(陽性コントロール)4時間培養後、全RNAを抽出した。
【0041】
c)全RNAの抽出
培養後、培地を廃棄し、細胞を洗浄せずに直接氷上に置いた。ケミカルフード下で細胞を掻き取り、1mlのRNAplus(Qbiogene社製)に溶解させ、1.5mlのエッペンドルフチューブに全て回収した。次いで全RNAをAgirent 2100バイオアナライザーで分析した。
【0042】
d)RNAの増幅及び標識
ハイブリダイゼーションの前に、RNAの増幅を、Eberwineによるプロトコールに従って実施した(Eberwine,(1996).Amplification of mRNA populations using a RNA generated from immobilized oligo(dT)−T7 primed cDNA. Biotechniques,20,584−591)。次いで、RNA増幅した各サンプル(以下aRNAsと称する)を分光光度測定した(Agilent 2001バイオアナライザーを使用)。未処理サンプル及び琥珀抽出物で処理したサンプルから得た1μgのaRNAsを、それぞれ蛍光色素Cy5及びCy3を用いて逆転写反応により標識した。次いで、これらの標識された相補的DNA(以下acDNAという)サンプルを、皮膚特異的に発現する遺伝子解析用のバイオチップにハイブリダイズさせ、琥珀抽出物の添加によりレベル変化した遺伝子を解析した。本実施例では、PIQOR(登録商標) Microarraysバイオチップ(番号:160−000−681)を用いた。
【0043】
e)ハイブリダイゼーション及びデータ分析
ハイブリダイゼーションステーションで16時間ハイブリダイゼーション反応を行なわせ、その後Bosioらの方法に従いデータを分析した(Bosio,A.,Knorr,C.,Janssen,U.,Gebel,S.,Haussmann,H.J.and Muller,T.(2002).Kinetics of gene expression profiling in Swiss 3T3 cells exposed to aqueous extracts of cigarette smoke.Carcinogenesis 23,741−748)。簡単には、蛍光シグナルの画像キャプチャと数値化を、ScanArrayLite装置(Packard Bioscience社製,Billerica,MA,USA)及びImaGene 4.1ソフトウエア(BioDiscovery社製,Los Angeles,CA,USA)を用いて実施した。部位的バックグラウンドノイズをシグナルから除去し、正味の強度を得、Cy5/Cy3の比率を測定した。acDNAに対して同時に4つのスポットの蛍光の平均値を算出し、次いで線形回帰法(LOWESS標準化法)により標準化した。更に、バックグラウンドノイズに対して2倍の正味強度を示す遺伝子のみを後の分析用に残した。
【0044】
2)結果
各バイオチップにおける分析結果から、琥珀抽出物が、皮膚のNHFで発現する遺伝子のうちの一部において、有意な発現量変化をもたらすことが明らかになった。実際、バイオチップを用いた分析により、琥珀抽出物処理による以下のような有意差が確認された:
− コラゲナーゼ−1又はMMP−1の発現:実際、NHFにおけるコラゲナーゼの発現の阻害効果が確認され、コントロール群と比較して発現量は60%であった(コントロール群を100%として比較した場合)。
− I型、III型及びV型コラーゲンの合成:詳細には、コントロール群(100%)を比較して以下のような活性化が観察された:
− I型コラーゲン−α1鎖:175%、
− I型コラーゲン−α2鎖:250%、
− III型コラーゲン:コントロール群と比較して221%、
− V型コラーゲン−α1鎖:コントロール群と比較して200%の活性化、
− V型コラーゲン−α2鎖:コントロール群と比較して220%の活性化。
− デルモポンチンの発現:コントロール群と比較して210%のオーダーで活性化する効果が観察された。
− ビグリカン及びバーシカンの発現:コントロール群と比較して、それぞれ200%及び300%で活性化が観察された。
【0045】
<実施例5>本発明の組成物
以下に組成物を例証する。琥珀抽出物の含量を重量%で示す。
【0046】
a)引き締め用ゲル:
琥珀抽出物(実施例3のブチレングリコール中液):4
小麦のスフィンゴ糖脂質(E.P.I.France社製、小麦セラゾーム):0.2
グリセロール:2
防腐剤及び香料:0.3
賦形剤:(全量100となるまで)
【0047】
b)引き締め用ローション
琥珀抽出物(実施例1のエタノール中):0.1
小麦のスフィンゴ糖脂質:0.15(E.P.I.France社製、小麦セラソーム)
防腐剤及び香料:0.3
賦形剤:(全量100となるまで)
【0048】
c)引き締め用クリーム
琥珀抽出物(実施例3のブチレングリコール中液):2
バーソレシア抽出物:1
ポテンティラ・エレクタのグリコール抽出物:0.5
パルミトイルオリゴペプチドペンタペプチド−3:3
小麦のスフィンゴ糖脂質:0.2(E.P.I.France社製、小麦セラソーム)
酢酸トコフェロール:0.2
グリセロール:2
4−デシルオキサゾリジン−2−オン:1
防腐剤及び香料:0.3
賦形剤:(全量100となるまで)
この乳液を1日に1、2回顔に塗布した結果、次第に肌のしわが引き締まった。
【0049】
d)顔の下半分及び首の引き締め用セラム(美容液):
琥珀抽出物(実施例3のブチレングリコール中液):3
バーソレシア(Bertholletia)の抽出物:1
ポテンティラ・エレクタ(Potentilla erecta)のグリコール抽出物:0.5
オーツ麦タンパク質:2
パルミトイルオリゴペプチドペンタペプチド−3:3
スフィンゴ糖脂質:0.2
グリシリザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)の抽出物:0.1
酢酸トコフェロール:0.2
微粒子状酸化チタン:0.5
4−デシルオキサゾリジン−2−オン:1
防腐剤及び香料:0.3
賦形剤:(全量100となるまで)
この肌を引き締めるセラムを、毎朝肌に塗布した結果、基礎化粧品の効果とあいまって直ちに効果を発揮した。
【0050】
e)フィルムパッチ
琥珀抽出物(実施例3のブチレングリコール中液):1.5
バーソレシア(Bertholletia)の抽出物:1
アスパラギン酸マグネシウム:0.1
ポテンティラ・エレクタ(Potentilla erecta)のグリコール抽出物:0.5
パルミトイルオリゴペプチドペンタペプチド−3:3
スフィンゴ糖脂質:0.2
グリシリザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)の抽出物:0.1
ポリマー:2
酢酸トコフェロール:0.2
グリセロール:1
4−デシルオキサゾリジン−2−オン:0.8
防腐剤:0.2
芳香添加剤:(全量100となるまで)
このフィルムパッチは、夜、就寝時に顔の下半分及び首に貼る。
【0051】
f)ケア用アンプル
琥珀抽出物(実施例3のブチレングリコール中液):5
バーソレシア(Bertholletia)の抽出物:1
ポテンティラ・エレクタ(Potentilla erecta)のグリコール抽出物:0.5
スフィンゴ糖脂質:0.2
安定化アスコルビン酸ヒアルロン酸溶液:2
タンパク質加水分解物:1
可溶化システム:1.5
アンプル形態のケア用品を用いて21日にわたりトリートメントし、その結果、肌の深部にまで浸透し、組織の引き締め効果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、
琥珀抽出物を含む第1の有効成分、並びに
バーソレシア・エクセルサの抽出物、ポテンティラ・エレクタの抽出物、アスパラギン酸マグネシウム、筋肉の収縮に作用するペプチド(特にアセチルヘキサペプチド−3)、脂肪酸(特にC16脂肪酸)がグラフト結合したペプチド若しくはその誘導体、又はかかるペプチドの組み合わせ(コラーゲンの合成を促進、特にパルミトイルオリゴペプチドペンタペプチド−3又はパルミトイルテトラペプチド−7)、大豆粉加水分解物、及び植物の糖脂質(好適には穀物のスフィンゴ糖脂質、より好適には小麦のスフィンゴ糖脂質)
からなる群から選択される1つ以上の更なる有効成分を含んでなる化粧用組成物。
【請求項2】
前記琥珀抽出物が琥珀、好適にはバルチックアンバーからの、1つ以上のC〜Cモノアルコール、及び/又は1つ以上のC〜Cグリコールを含んでなるアルコール性抽出溶媒若しくはアルコール水溶液を含んでなる抽出溶媒を用いる抽出により得られる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記抽出溶媒が、エタノール、ブチレングリコール、エタノール/水、ブチレングリコール/水、ブチレングリコール/エタノール/水の混合液、望ましくはエタノール含量40〜80%のエタノール/水の混合液、ブチレングリコール、50/50のブチレングリコール/水の混合液、又は80/20〜60/40のブチレングリコール/エタノールの混合液からなる群から選択される、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記琥珀抽出物を0.01〜5重量%の濃度で含んでなる、請求項1から3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
琥珀抽出物と、少なくともスフィンゴ糖脂質、好適には小麦スフィンゴ糖脂質を含有する、請求項1から4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
0.01〜5重量%の濃度、好適には0.05〜0.8重量%の濃度でスフィンゴ糖脂質、好適には小麦スフィンゴ糖脂質を含有する、請求項1から5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
更に、ルメックス・クリスプス抽出物、グリシリザ・グラブラの根茎抽出物、グリコシル化若しくは非グリコシル化トリテルペン誘導体、センテラ・アジアチカ抽出物(特にマデカッソシド、アジアチコシド、アジア酸又はマデカッソ酸の各々単独若しくはそれらの組み合わせ)、DNA加水分解物(特に魚の精液抽出物から調製したもの)、及びオキサゾリドン(特に4−デシルオキサゾリジン−2−オン)からなる群から選択される1つ以上の成分を含んでなる、請求項1から6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
前記琥珀抽出物が、プログラム化された有効成分の放出を可能にするベクターシステム中、特にリポソーム型のラメラ小胞中に封入されている、請求項1から7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
化粧料としての琥珀抽出物、特にバルチックアンバー抽出物の使用であって、
当該抽出物が、真皮の支持タンパク質、及び/又は真皮のタンパク質を分解する酵素システム、及び/又は細胞外マトリックスのグリカンタイプの基本成分(特にプロテオグリカン)に作用して皮膚の基本的な生体の機械的特性(すなわち皮膚のはり及び弾力性)を改善するものであって、
化粧用組成物、特にバーソレシア・エクセルサ抽出物、ポテンティラ・エレクタ抽出物、アスパラギン酸マグネシウム、筋肉の収縮に作用するペプチド(好適にはアセチルヘキサペプチド−3)、脂肪酸(好適にはC16脂肪酸)がグラフト結合したペプチド若しくはその誘導体、又はかかるペプチドの組み合わせ(コラーゲンの合成を促進、特にパルミトイルオリゴペプチドペンタペプチド−3又はパルミトイルテトラペプチド−7)、植物の糖脂質(好適には穀物のスフィンゴ糖脂質、より好適には小麦のスフィンゴ糖脂質)からなる群から選択される1つ以上の更なる有効成分を含んでなる化粧用組成物の調製の際に添加される、前記使用。

【公開番号】特開2008−189669(P2008−189669A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−17584(P2008−17584)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(502189579)エルブイエムエイチ レシェルシェ (68)
【Fターム(参考)】