環境認識装置および環境認識方法
【課題】処理負荷を軽減すると共にメモリの記憶領域を低減することで、対象物の特定効率の向上を図る。
【解決手段】環境認識装置130は、特定物の形状に関する情報である形状情報を予め保持しておき、検出領域内を分割した複数の対象部位の輝度を取得して、エッジを有する対象部位を抽出し、エッジを有する対象部位の相対距離を取得し、相対距離に応じた形状情報に基づいてエッジを有する対象部位にハフ変換を施し、形状情報で示される特定物を決定する。
【解決手段】環境認識装置130は、特定物の形状に関する情報である形状情報を予め保持しておき、検出領域内を分割した複数の対象部位の輝度を取得して、エッジを有する対象部位を抽出し、エッジを有する対象部位の相対距離を取得し、相対距離に応じた形状情報に基づいてエッジを有する対象部位にハフ変換を施し、形状情報で示される特定物を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出領域における対象物の輝度に基づいて、その対象物を認識する環境認識装置および環境認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の前方に位置する車両や信号機等の障害物といった対象物を検出し、検出した対象物との衝突を回避したり、先行車両との車間距離を安全な距離に保つように制御する技術が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
また、このような技術では、対象物を一律に物として特定するのみならず、さらに高精度な制御を行うため、対象物が自車両と同速度で走行している先行車両であるのか、移動を伴わない固定された物であるのか等を判定する技術も存在する。ここで、対象物を、検出領域の撮像を通じて検出する場合、対象物が何であるかを特定する前に、撮像された画像から対象物自体を抽出(切り出し)しなければならない。
【0004】
かかる対象物を抽出する方法としては、画像内における輝度が等しい画素同士をグループ化して対象物とする方法も考えられるが、撮像状況によっては、環境光の影響を受けたり、対象物自体の経時変化(色褪せ)により、対象物の本来の輝度を取得できない場合がある。そこで、画素間の輝度の差により生じるエッジを抽出し、そのエッジで形成される形状を通じて対象物を特定する方法も採用されている。
【0005】
例えば、撮像された画像から、隣接する画素間の微分値によってエッジを有する画素(エッジ画素)を抽出し、画像の水平方向および垂直方向におけるエッジ画素のヒストグラム(距離分布)を導出して、そのピークに相当する領域を対象物の端部と推定する技術が知られている。また、ヒストグラムに基づく融合パターンが、予め格納されている辞書パターンと比較され、対象物が車両であるか否か判定する技術も開示されている(例えば、特許文献3)。
【0006】
さらに、エッジ画像を含む画像から円や直線などの幾何学的な形状を検出する、所謂ハフ変換を用い、幾何学形状の一部が欠けているものから完全な幾何学形状の対象物を抽出する技術も公開されている。かかる技術によると、例えば、円の形状をした道路標識を抽出するために、検出領域から抽出されたエッジ画像を含む複数段階の大きさの円を想定してハフ変換を施し、その複数段階の大きさの円から最も適した1の大きさの円を道路標識として抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3349060号
【特許文献2】特開平10−283461号公報
【特許文献3】特開2003−99762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述したハフ変換を用いて最も適した1の大きさの円を抽出する技術では、1のエッジ画像に対し、可能性のある複数段階の大きさの円を想定し、その複数段階の大きさの円(投票テーブル)毎にハフ変換を施すので、処理負荷が重く、メモリの記憶領域を多大に占有することとなる。さらに、このような処理を画像内の全てのエッジに対して実行しているので、処理負荷やメモリの記憶領域が膨大になるといった問題があった。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、処理負荷を軽減すると共にメモリの記憶領域を低減することで、対象物の特定効率の向上を図ることが可能な、環境認識装置および環境認識方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の環境認識装置は、特定物の形状に関する情報である形状情報を保持するデータ保持部と、検出領域内を分割した複数の対象部位の輝度を取得して、エッジを有する対象部位を抽出するエッジ抽出部と、エッジを有する対象部位の相対距離を取得する位置情報取得部と、相対距離に応じた形状情報に基づいてエッジを有する対象部位にハフ変換を施し、形状情報で示される特定物を決定する特定物決定部と、を備えることを特徴とする。特定物の形状は円であってもよい。
【0011】
特定物決定部は、エッジを有する対象部位を一部とする円の中心が存在する位置を、対象部位のエッジが延伸する方向に垂直な所定範囲に絞って特定してもよい。
【0012】
位置情報取得部はエッジを有する対象部位の路面からの高さも取得し、特定物決定部は、相対距離および路面からの高さに基づく所定の部分検索領域に含まれる対象部位のみを対象として、形状情報で示される特定物を決定してもよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の環境認識方法は、特定物の形状に関する情報である形状情報を予め保持しておき、検出領域内を分割した複数の対象部位の輝度を取得して、エッジを有する対象部位を抽出し、エッジを有する対象部位の相対距離を取得し、相対距離に応じた形状情報に基づいてエッジを有する対象部位にハフ変換を施し、形状情報で示される特定物を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ハフ変換の適用処理を工夫することで、処理負荷を軽減すると共にメモリの記憶領域を低減し対象物の特定効率の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】環境認識システムの接続関係を示したブロック図である。
【図2】輝度画像を説明するための説明図である。
【図3】環境認識装置の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【図4】エッジ抽出部の動作を説明するための説明図である。
【図5】位置情報取得部による三次元の位置情報への変換を説明するための説明図である。
【図6】ハフ変換を説明するための説明図である。
【図7】特定物決定部による対象領域の制限処理を説明するための説明図である。
【図8】本実施形態におけるハフ変換処理を説明するための説明図である。
【図9】特定物決定部による他の投票処理を示した説明図である。
【図10】環境認識方法の全体的な流れを示したフローチャートである。
【図11】投票処理の流れを示したフローチャートである。
【図12】特定物決定処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
(環境認識システム100)
図1は、環境認識システム100の接続関係を示したブロック図である。環境認識システム100は、車両1内に設けられた、撮像装置110と、画像処理装置120と、環境認識装置130と、車両制御装置140とを含んで構成される。
【0018】
撮像装置110は、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子を含んで構成され、カラー画像、即ち、画素単位で3つの色相(赤、緑、青)の輝度を取得することができる。ここでは、撮像装置110で撮像されたカラーの画像を輝度画像と呼び、後述する距離画像と区別する。また、撮像装置110は、車両1の進行方向側において2つの撮像装置110それぞれの光軸が略平行になるように、略水平方向に離隔して配置される。撮像装置110は、車両1の前方の検出領域に存在する対象物を撮像した画像データを、例えば1/60秒毎(60fps)に連続して生成する。ここで、対象物は、車両、信号機、道路、ガードレールといった独立して存在する立体物のみならず、道路標識、テールランプやウィンカー、信号機の各点灯部分等、立体物の部分として特定できる物も含む。以下の実施形態における各機能部は、このような画像データの更新を契機として各処理を遂行する。
【0019】
画像処理装置120は、2つの撮像装置110それぞれから画像データを取得し、2つの画像データに基づいて、画像中の任意のブロック(所定数の画素を集めたもの)の視差、および、任意のブロックの画面中の位置を示す画面位置を含む視差情報を導出する。画像処理装置120は、一方の画像データから任意に抽出したブロック(例えば水平4画素×垂直4画素の配列)に対応するブロックを他方の画像データから検索する、所謂パターンマッチングを用いて視差を導き出す。ここで、水平は、撮像した画像の画面横方向を示し、実空間上の水平に相当する。また、垂直は、撮像した画像の画面縦方向を示し、実空間上の鉛直方向に相当する。
【0020】
このパターンマッチングとしては、2つの画像データ間において、任意の画像位置を示すブロック単位で輝度値(Y色差信号)を比較することが考えられる。例えば、輝度値の差分をとるSAD(Sum of Absolute Difference)、差分を2乗して用いるSSD(Sum of Squared intensity Difference)や、各画素の輝度値から平均値を引いた分散値の類似度をとるNCC(Normalized Cross Correlation)等の手法がある。画像処理装置120は、このようなブロック単位の視差導出処理を検出領域(例えば600画素×200画素)に映し出されている全てのブロックについて行う。ここでは、ブロックを4画素×4画素としているが、ブロック内の画素数は任意に設定することができる。
【0021】
ただし、画像処理装置120では、検出分解能単位であるブロック毎に視差を導出することはできるが、そのブロックがどのような対象物の一部であるかを認識できない。したがって、視差情報は、対象物単位ではなく、検出領域における検出分解能単位(例えばブロック単位)で独立して導出されることとなる。ここでは、このようにして導出された視差情報(後述する相対距離に相当)を画像データに対応付けた画像を距離画像という。
【0022】
図2は、輝度画像124と距離画像126を説明するための説明図である。例えば、2つの撮像装置110を通じ、検出領域122について図2(a)のような輝度画像(画像データ)124が生成されたとする。ただし、ここでは、理解を容易にするため、2つの輝度画像124の一方のみを模式的に示している。画像処理装置120は、このような輝度画像124からブロック毎の視差を求め、図2(b)のような距離画像126を形成する。距離画像126における各ブロックには、そのブロックの視差が関連付けられている。ここでは、説明の便宜上、視差が導出されたブロックを黒のドットで表している。
【0023】
視差は、画像のエッジ部分(隣り合う画素間で明暗の差分が大きい部分)で特定され易いので、距離画像126において黒のドットが付されている、視差が導出されたブロックは、輝度画像124においてもエッジとなっていることが多い。したがって、図2(a)に示す輝度画像124と図2(b)に示す距離画像126とは各対象物の輪郭について似たものとなる。
【0024】
環境認識装置130は、画像処理装置120から輝度画像124を取得し、輝度画像124における輝度のエッジに基づいて検出領域122における所定の形状を有する特定物を特定する。また、環境認識装置130は、画像処理装置120から距離画像126を取得し、距離画像126における、検出領域122内のブロック毎の視差情報を、所謂ステレオ法を用いて、相対距離を含む三次元の位置情報に変換する。かかる相対距離は上記特定物の特定に用いられる。ここで、ステレオ法は、三角測量法を用いることで、対象物の視差からその対象物の撮像装置110に対する相対距離を導出する方法である。かかる環境認識装置130に関しては、後ほど詳述する。
【0025】
車両制御装置140は、環境認識装置130で特定された対象物との衝突を回避したり、先行車両との車間距離を安全な距離に保つ制御を実行する。具体的に、車両制御装置140は、操舵の角度を検出する舵角センサ142や車両1の速度を検出する車速センサ144等を通じて現在の車両1の走行状態を取得し、アクチュエータ146を制御して先行車両との車間距離を安全な距離に保つ。ここで、アクチュエータ146は、ブレーキ、スロットルバルブ、舵角等を制御するために用いられる車両制御用のアクチュエータである。また、車両制御装置140は、対象物との衝突が想定される場合、運転者の前方に設置されたディスプレイ148にその旨警告表示(報知)を行うと共に、アクチュエータ146を制御して車両1を自動的に制動する。かかる車両制御装置140は、環境認識装置130と一体的に形成することもできる。
【0026】
(環境認識装置130)
図3は、環境認識装置130の概略的な機能を示した機能ブロック図である。図3に示すように、環境認識装置130は、I/F部150と、データ保持部152と、中央制御部154とを含んで構成される。
【0027】
I/F部150は、画像処理装置120や車両制御装置140との双方向の情報交換を行うためのインターフェースである。データ保持部152は、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、特定物テーブルや、以下に示す各機能部の処理に必要な様々な情報を保持し、また、画像処理装置120から受信した輝度画像124を一時的に保持する。ここで、特定物テーブルには、特定物の形状に関する情報である形状情報が特定物に関連付けられている。かかる形状情報は、特定物の形状を特定可能な情報であり、例えば、特定物が円形状であった場合、実空間上での特定物の半径(例えば30cm)等が保持されている。
【0028】
中央制御部154は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成され、システムバス156を通じて、I/F部150やデータ保持部152を制御する。また、本実施形態において、中央制御部154は、エッジ抽出部160、位置情報取得部162、特定物決定部164としても機能する。
【0029】
エッジ抽出部160は、受信した輝度画像124から、画素単位で輝度(画素単位で3つの色相(赤、緑、青)の輝度)を取得し、検出領域内を分割した複数の対象部位における画素間の輝度の差分によりエッジの有無を判断して、エッジを有する対象部位を抽出する。また、このとき、後述する特定物決定部164で利用するエッジが延伸する方向(以下、単にエッジ延伸方向という。)も併せて導出する。
【0030】
具体的に、エッジ抽出部160は、対象部位(ここでは2×2画素のブロック)を垂直方向に対して2分割した上下それぞれの領域における輝度の合計値の差分(以下、単に水平方向成分という。)と、対象部位を水平方向に対して2分割した左右それぞれの領域における輝度の合計値の差分(以下、単に垂直方向成分という。)とに基づいてエッジ方向を導出する。
【0031】
図4は、エッジ抽出部160の動作を説明するための説明図である。ここでは、仮に、輝度画像124の一部に、図4(a)に示すような道路標識210が映し出されたとする。そして、道路標識210に相当する画像中の任意の対象部位220aを拡大すると、図4(b)のような輝度分布になり、他の任意の対象部位220bを拡大すると、図4(c)のような輝度分布になっていたとする。
【0032】
また、輝度の範囲を0〜255とし、図4(b)中、仮に、白色の塗りつぶしを輝度「200」、黒色の塗りつぶしを輝度「0」とする。ここでは、仮に、対象部位220の図中左上画素の輝度をA、右上画素の輝度をB、左下画素の輝度をC、右下画素の輝度をDとし、エッジ方向の水平方向成分を(A+B)−(C+D)、エッジ方向の垂直方向成分を(A+C)−(B+D)と定義する。そして、エッジ抽出部160は、水平方向成分または垂直方向成分のいずれかで、その計算結果の絶対値が所定値(例えば、100)以上であると、その対象部位220をエッジであると判断する。
【0033】
図4(b)に示す対象部位220aのエッジ方向の水平方向成分は、(A+B)−(C+D)=(200+0)―(200+0)=0となり、エッジ方向の垂直方向成分は、(A+C)−(B+D)=(200+200)−(0+0)=+400となる。ここでは垂直方向成分の絶対値が100以上なので、当該対象部位220aはエッジと判断される。また、水平方向成分「0」、垂直方向成分「+400」なので、エッジ延伸方向は、図4(d)の如く垂直方向となる。ただし、エッジ延伸方向は、エッジの延伸線分が画像に対してどの程度傾いているかを把握できれば足り、厳密な方向、例えば、垂直上向きか下向きかを要さない。
【0034】
同様に、図4(c)に示す対象部位220bのエッジ方向の水平方向成分は、(A+B)−(C+D)=(0+0)―(200+200)=−400となり、エッジ方向の垂直方向成分は、(A+C)−(B+D)=(0+200)−(0+200)=0となる。ここでは水平方向成分の絶対値が100以上なので、当該対象部位220bはエッジと判断される。また、水平方向成分「−400」、垂直方向成分「0」なので、エッジ延伸方向は、図4(e)の如く水平方向となる。
【0035】
このように、対象部位220内の半分の領域から他の半分の領域を減算する構成により、対象部位220内全体に含まれる輝度のオフセットやノイズを取り除くことができ、エッジを適切に抽出することが可能となる。また、加減算のみの単純計算でエッジ延伸方向を導出できるので処理負荷が軽い。
【0036】
本実施形態では、後述する特定物決定部164において、このように導出されたエッジ延伸方向に基づき、ハフ変換における投票する範囲を制限することもある。ここで、導出した上記水平方向成分や垂直方向成分をそのまま用いて単純にエッジ延伸方向としてしまうと、そのエッジ延伸方向のバリエーションが無限に存在することとなる。そうすると、その無限のバリエーションに対して投票する範囲を設定しなければならない。
【0037】
そこで、本実施形態では、水平方向成分および垂直方向成分のいずれも単位長さで定義し、エッジ延伸方向のバリエーションを単純化する。即ち、水平方向成分および垂直方向成分のいずれも−1、0、+1のいずれかとみなすこととする。そうすると、エッジ延伸方向は、図4(f)のようにそれぞれ45度ずつの角度をなす4つの方向に限定することができる。こうすることで、以下に示す特定物決定部164の処理負荷を大幅に軽減することが可能となる。
【0038】
位置情報取得部162は、受信した距離画像126における検出領域122内の対象部位220毎の視差情報を、ステレオ法を用いて、水平距離x、路面からの高さyおよび相対距離zを含む三次元の位置情報に変換する。ここで、視差情報が、距離画像126における各対象部位220の視差を示すのに対し、三次元の位置情報は、実空間における各対象部位220の相対距離の情報を示す。また、視差情報が画素単位ではなくブロック単位、即ち複数の画素単位で導出されている場合、その視差情報はブロックに属する全ての画素の視差情報とみなして、画素単位の計算を実行することができる。
【0039】
図5は、位置情報取得部162による三次元の位置情報への変換を説明するための説明図である。位置情報取得部162は、まず、距離画像126を図5の如く画素単位の座標系として認識する。ここでは、図5中、左下隅を原点(0,0)とし、横方向をi座標軸、縦方向をj座標軸とする。したがって、視差dpを有する画素は、画素位置i、jと視差dpによって(i,j,dp)のように表すことができる。
【0040】
本実施形態における実空間上の三次元座標系を、車両1を中心とした相対座標系で考える。ここでは、車両1の進行方向右側方をX軸の正方向、車両1の上方をY軸の正方向、車両1の進行方向(前方)をZ軸の正方向、2つの撮像装置110の中央を通る鉛直線と道路表面との交点を原点(0,0,0)とする。このとき、道路を平面と仮定すると、道路表面がX−Z平面(y=0)と一致することとなる。位置情報取得部162は、以下の(数式1)〜(数式3)によって距離画像126上のブロック(i,j,dp)を、実空間上の三次元の点(x,y,z)に座標変換する。
x=CD/2+z・PW・(i−IV) …(数式1)
y=CH+z・PW・(j−JV) …(数式2)
z=KS/dp …(数式3)
ここで、CDは撮像装置110同士の間隔(基線長)であり、PWは1画素当たりの視野角であり、CHは撮像装置110の道路表面からの配置高さであり、IV、JVは車両1の真正面における無限遠点の画像上の座標(画素)であり、KSは距離係数(KS=CD/PW)である。
【0041】
したがって、位置情報取得部162は、対象部位220の相対距離と、対象部位220と同相対距離にある道路表面上の点と対象部位220との距離画像126上の検出距離とに基づいて、道路表面(路面)からの高さを導出していることとなる。
【0042】
本実施形態では、エッジ抽出部160が抽出したエッジを有する対象部位220と、位置情報取得部162が取得した相対距離zに基づいてハフ変換を行う。ここでは、まず、前提となるハフ変換について簡単に説明する。
【0043】
図6は、ハフ変換を説明するための説明図である。ここでは、輝度画像124から図6(a)の如くエッジを有する3つの対象部位220c、220d、220eを抽出したとする。かかる3つの対象部位220c、220d、220eは、本来、道路標識等、円形状の特定物222の一部であるが、ここでは、輝度画像124から明確に円形状であることが把握できないとする。
【0044】
ハフ変換は、複数の点から円や直線などの幾何学的な形状を検出する手法であり、任意の対象部位220を通り、かつ、半径がNを満たす円の中心は、その任意の対象部位220を中心とした半径Nの円上に存在するという理論に基づいている。例えば、図6(a)の3つの対象部位220c、220d、220eを通る円の中心は、3つの対象部位220c、220d、220eそれぞれを中心とした円上にある。しかし、エッジのみの情報では、その半径Nを特定できないため、相異なる複数段階の半径Nを準備して、3つの対象部位220c、220d、220eを中心とした複数段階の半径Nの円上の画素に投票し、その投票数が予め定められた所定値以上となれば半径Nと中心とを特定物として決定する。
【0045】
例えば、図6(b)、図6(c)、図6(d)のように、3つの対象部位220c、220d、220eを中心にして、相異なる半径N=4、5、6の円を形成し、その円の軌跡に含まれる画素に投票する(単位指標を関連付ける)。すると、図6(b)では、2つの画素224で投票数が2となる(単位指標が2つ関連付けられる)。また、図6(c)では、3つの画素224で投票数が2となり、1つの画素226で投票数が3となる。同様に、図6(d)では、6つの画素224で投票数が2となる。
【0046】
このとき、投票数が3(所定値以上)となるのは画素226のみとなり、その画素226を3つの対象部位220c、220d、220eを通る円の中心とし、その画素226を導出した際の半径N=5を円の半径と特定することができる。こうして、図6(e)のように、3つの対象部位220c、220d、220eを通る円228が特定される。
【0047】
本実施形態では、上述したようなエッジを有するという情報のみならず、対象部位220の相対距離zも用いてハフ変換を行う。そうすることで事前に特定物の半径Nを特定することができる。以下、かかる処理を実現する特定物決定部164を説明する。
【0048】
特定物決定部164は、エッジを有する対象部位220にハフ変換を施す前に、まず、当該ハフ変換の対象とする対象部位220を制限する。
【0049】
図7は、特定物決定部164による対象領域の制限処理を説明するための説明図である。特定物決定部164は、特定対象である特定物が走行車線外にしか存在しない道路標識等である場合、道路標識が存在し得ない図7中ハッチングで示した領域を除く部分検索領域230に含まれる対象部位220のみをハフ変換の対象とする。かかる部分検索領域230は、位置情報取得部162が取得した相対距離zおよび路面からの高さyに基づいており、例えば、路側帯に相当する位置の相対距離z≦100m、1.0m≦路面からの高さy≦5.0mといった範囲となる。したがって、輝度画像124上、部分検索領域230は、無限遠232から自車両1に向かって、放射状に広がるような形状で表される。このように、特定物が存在しない領域を除外し、対象部位220の無駄なハフ変換を回避することで、処理負荷の軽減を図ると共に、本来存在しない領域において特定物が出現するといった誤検出を未然に防止することが可能となる。
【0050】
続いて、特定物決定部164は、データ保持部152に保持された特定物テーブルを参照し、対象とする特定物の形状情報を取得し、その形状情報を相対距離zに適合する。例えば、特定物が道路標識であった場合、形状情報として、円形状であることと、その円の半径が30cmであることが示される。特定物決定部164は相対距離zに当該道路標識が位置していた場合、輝度画像124にどの程度の半径(画素数)で表示されるか、上記数式(1)〜(3)の逆関数を用いて導出する。
【0051】
かかる道路標識のように、特定物の種類によっては、大きさが法律や規則で定まっているものもある。また、本実施形態のように相対距離zを導出していれば、輝度画像124上で特定物がどのような大きさで出現するかを予測することができる。
【0052】
次に、特定物決定部164は、導出した半径の円を用いてエッジを有する対象部位220にハフ変換を施す。
【0053】
図8は、本実施形態におけるハフ変換処理を説明するための説明図である。特に、図8(a)は、輝度画像124を示し、図8(b)は、ハフ変換による投票を行うための投票テーブル240、図8(c)は、投票された画素に投票時の半径Nを関連付けた半径保持テーブル242を示し、図8(d)は、最終的に抽出された特定物の形状を示す。また、各図における点線は、図7の走行車線に対応している。
【0054】
例えば、図8(a)の輝度画像124において、エッジを有する対象部位220f、220g、220h、220i、220j、220kを抽出したとする。ここでは、説明の便宜のため、当該6つの対象部位220に着目して説明する。特定物決定部164は、図8(a)に示す対象部位220f、220g、220h、220i、220j、220kそれぞれの相対距離zを取得し、その相対距離zに基づいてハフ変換を施すべき円の半径Nを求める。ここでは、対象部位220f、220g、220hの半径Nが30画素であり、対象部位220i、220j、220kの半径Nが23画素であったとする。
【0055】
特定物決定部164は、図8(b)の投票テーブル240において、対象部位220f、220g、220h、220i、220j、220kを中心に、対象部位220それぞれに関して求められた半径Nの円を形成し、その半径Nの円上の画素全てに投票する。したがって、図8(b)に示す円に対応する画素には、投票が為された旨を示す単位指標が関連付けられている。このとき、投票した画素に対応する半径保持テーブル242の各画素には、図8(c)に数値で示したように、投票時の半径Nが関連付けられる。ただし、図8(c)中の半径Nは、イメージを示しており、実際の画素数と半径Nとの関係と異なっている。
【0056】
本実施形態では、対象部位220を一部に含む円の半径を特定できるため、従来のように投票テーブルを複数段階の円の大きさ(半径)毎に設ける必要がない。したがって、無駄なハフ変換処理を回避でき、処理負荷の軽減を図ることができる。ただし、上述したように投票テーブル240を1つに纏めると、投票時の半径Nの情報が失われてしまう。そこで、投票テーブル240に対応する半径保持テーブル242を補完的に設けることで、特定物を適切に特定することが可能となる。
【0057】
続いて、特定物決定部164は、投票テーブル240の投票数を検出し、投票数が所定値(例えば、20)以上となる画素が検出されると、その画素に対応する半径保持テーブル242の画素に関連付けられた半径N(ここでは「30」と「23」)を読み出す。そして、図8(d)のように、所定値以上となった画素244を中心に読み出した半径Nの円246を形成し、それを特定物として決定する。
【0058】
ここで、1の画素が複数の特定物の円の中心候補となる場合がある。即ち、半径保持テーブル242の任意の画素に複数の半径Nが関連付けられている場合である。本実施形態では、画像で認識できる特定物は1つあれば足りる。したがって、複数の半径Nのうち、1つの半径Nを採用すればよい。ここでは、画像上手前に存在するであろう特定物を採用する。通常、同一の大きさの道路標識であれば、手前に位置する方が画像上大きく表示される。したがって、投票数も多くなるはずである。そこで、特定物決定部164は、半径保持テーブル242の任意の画素に複数の半径Nが関連付けられている場合、その数の比率が大きい半径Nを採用することで、手前に位置するであろう特定物を抽出することができる。
【0059】
また、中心が異なってはいるものの、特定物を示す円の一部が重なる場合もある。ここでも、画像上、手前に存在するであろう特定物を採用する。通常、同一の大きさの道路標識であれば、手前に位置する方が画像上大きくなると共に、その中心は画像の比較的下に位置することとなる。そこで、特定物決定部164は、投票数を検出する際、画像下側から検出を開始することとし、画像の下側に位置する特定物を先に決定することによって、それより奥まっている特定物を無視することとする。本実施形態では、車両制御装置140によって適切な制御を行うため、手前に位置する特定物を優先的に抽出しなければならない。したがって、このように重複している特定物のうち、奥まっている特定物を無視したとしても制御にはほとんど影響することがない。
【0060】
ここで、ハフ変換のさらなる効率化を検討する。本実施形態のように特定物が円形状である場合、円の接線は接点と円の中心を結ぶ線分と垂直となることが知られている。また、円の接線は対象部位220におけるエッジ延伸方向に相当する。したがって、特定物決定部164は、エッジを有する対象部位220を一部とする円の中心が存在する位置を、対象部位220のエッジ延伸方向に垂直な所定範囲に絞る。ここで所定範囲は、その対象部位220を中心にして、垂直方向に放射状に広がる角度範囲をいう。ここでは、その角度範囲を仮に45度とする。
【0061】
図9は、特定物決定部164による他の投票処理を示した説明図である。例えば、対象部位220に関してハフ変換を行うと、図9(a)に示すように、対象部位220を中心とした破線で示す円246に投票することとなる。しかし、ここでは、対象部位220のエッジ延伸方向250が把握できているので、特定物の円の中心は、対象部位220のエッジ延伸方向250に垂直な方向にしか出現しない。したがって、特定物決定部164は、対象部位220のエッジ延伸方向250に垂直な方向に絞って特定物の円の中心を特定する。
【0062】
ただし、対象部位220は特定物に対して小さいため、エッジ延伸方向が必ずしも特定物の円の接線と等しくなるとは限らない。そこで、特定物決定部164は、所定角度のずれを許容すべく対象部位220のエッジ延伸方向250に垂直な方向のみならず、所定範囲分の部分円252を特定物の円の中心候補として特定する。
【0063】
また、図4(f)に示したように、エッジ延伸方向250はそれぞれ45度ずつの角度を成す4つの方向で表される。したがって、図9(b)〜図9(d)に示すように、エッジ延伸方向250の4つの方向に対して、4つの部分円252の特定パターンがあることになる。ここでは、投票する円246を部分円252に絞ることで、処理負荷を軽減でき、特定効率を向上することが可能となる。また、その部分円252を特定するパターンを例えば4つに限定することで、それを求めるための処理負荷も低減でき、さらなる特定効率の向上を図ることができる。
【0064】
さらに、特定物の円の中心が存在しない範囲への投票が回避されるので、本来特定物の円の中心が存在しない画素に不本意な投票が行われ、特定物の円の中心が誤検出される事態を回避することが可能となる。このようにして、特定物決定部164は、形状情報で示される特定物を決定する。
【0065】
(環境認識方法)
以下、環境認識装置130の具体的な処理を図10〜図12のフローチャートに基づいて説明する。図10は、画像処理装置120から輝度画像124が送信された場合の割込処理に関する全体的な流れを示し、図11、12は、その中の個別のサブルーチンを示している。また、ここでは、対象部位220として2×2画素のブロックを挙げており、600×200画素の輝度画像124の左下隅を原点とし、画像水平方向に1〜300ブロック、垂直方向に1〜100ブロックの範囲で当該環境認識方法による処理を遂行する。
【0066】
図10に示すように、輝度画像124の受信を契機に当該環境認識方法による割込が発生すると、画像処理装置120から取得した輝度画像124が参照されて、エッジを有する対象部位220に関してハフ変換が施され、投票テーブル240および半径保持テーブル242に投票が為される(S300)。そして、その投票後の投票テーブル240が参照され特定物が決定される(S302)。以下、上記の処理を具体的に説明する。
【0067】
(投票処理S300)
図11を参照すると、エッジ抽出部160は、相対距離zおよび路面からの高さyに基づく所定の部分検索領域230を読み出す(S350)。また、エッジ抽出部160は、対象部位220を特定するための垂直変数jを初期化(「0」を代入)する(S352)。続いて、エッジ抽出部160は、垂直変数jに「1」を加算(インクリメント)すると共に水平変数iを初期化(「0」を代入)する(S354)。次に、エッジ抽出部160は、水平変数iに「1」を加算する(S356)。ここで、水平変数iや垂直変数jを設けているのは、300×100の対象部位220全てに対して当該投票処理を実行するためである。
【0068】
エッジ抽出部160は、輝度画像124から対象部位(i,j)内の2×2画素の輝度を取得する(S358)。そして、エッジ抽出部160は、式(A+B)−(C+D)に基づいて水平方向成分を導出し(S360)、式(A+C)−(B+D)に基づいて垂直方向成分を導出する(S362)。次に、水平方向成分および垂直方向成分を単純化してエッジ延伸方向を特定し、エッジ延伸方向を示すエッジ延伸方向識別子d(例えば、図4(f)に示す番号)を対象部位220に関連付けて、対象部位(i,j,d)とする(S364)。
【0069】
続いて、特定物決定部164は、ステップS350で読み出した部分検索領域230を参照し、当該対象部位220が部分検索領域230に含まれるか否か判定する(366)。部分検索領域230に含まれていないと判定されると(S366におけるNO)、ステップS376の水平変数判定処理に処理を移行する。また、当該対象部位220が部分検索領域230に含まれていれば(S366におけるYES)、特定物決定部164は、位置情報取得部162に当該対象部位220の相対距離zを取得させる(S368)。また、データ保持部152に保持された特定物テーブルから特定物の形状情報を取得し、相対距離zに応じて形状情報を加工する(S370)。具体的には、相対距離zに基づいてハフ変換を施すべき円の半径Nを求める。
【0070】
そして、特定物決定部164は、投票テーブル240におけるエッジ延伸方向識別子dによって特定される所定範囲(対象部位220のエッジ延伸方向250に垂直な所定範囲)の半径Nの部分円252の座標(m,n)の画素(m,n,t)の投票数tに「1」を加算(投票)する(S372)。このとき、投票した画素(m,n,t)に対応する半径保持テーブル242の各画素(m,n,N…)に、投票時の半径Nが関連付けられる(S374)。
【0071】
次に、水平変数iが水平ブロックの最大値(ここでは300)を超えたか否か判定し(S376)、水平変数iが最大値を超えていなければ(S376におけるNO)、ステップS356の水平変数iのインクリメント処理からを繰り返す。また、水平変数iが最大値を超えていれば(S376におけるYES)、特定物決定部164は、垂直変数jが垂直ブロックの最大値(ここでは100)を超えたか否か判定する(S378)。そして、垂直変数jが最大値を超えていなければ(S378におけるNO)、ステップS354の垂直変数jのインクリメント処理からを繰り返す。また、垂直変数jが最大値を超えていれば(S378におけるYES)、当該投票処理を終了する。こうして各対象部位220に関するハフ変換を通じた投票が完了する。
【0072】
(特定物決定処理S302)
図12を参照すると、特定物決定部164は、画素を特定するための垂直変数nを初期化(「0」を代入)する(S400)。続いて、特定物決定部164は、垂直変数nに「1」を加算すると共に水平変数mを初期化(「0」を代入)する(S402)。次に、特定物決定部164は、水平変数mに「1」を加算する(S404)。
【0073】
続いて、特定物決定部164は、投票テーブル240と半径保持テーブル242から画素(m,n,t)と画素(m,n,N…)を抽出し(S406)、1または複数の半径Nから最も数の比率の高い半径Nを抽出する(S408)。そして、特定物決定部164は、抽出した半径Nの投票数tが所定値以上であるか否か判定し(S410)、所定値未満であれば(S410におけるNO)、ステップS414の水平変数判定処理に移行する。また、投票数tが所定値以上であれば(S410におけるYES)、その画素の座標(m,n)を中心とする半径Nの円を特定物として特定する(S412)。
【0074】
続いて、特定物決定部164は、水平変数mが水平画素の最大値(ここでは600)を超えたか否か判定し(S414)、水平変数mが最大値を超えていなければ(S414におけるNO)、ステップS404の水平変数mのインクリメント処理からを繰り返す。また、水平変数mが最大値を超えていれば(S414にけるYES)、特定物決定部164は、垂直変数nが垂直画素の最大値(ここでは200)を超えたか否か判定する(S416)。そして、垂直変数nが最大値を超えていなければ(S416におけるNO)、ステップS402の垂直変数nのインクリメント処理からを繰り返す。また、垂直変数nが最大値を超えていれば(S416におけるYES)、当該特定物決定処理を終了する。こうして特定物が特定される。
【0075】
以上、説明したように、環境認識装置130によれば、ハフ変換の適用処理を工夫することで、処理負荷を軽減すると共にメモリの記憶領域を低減し対象物の特定効率の向上を図ることが可能となる。具体的に、ハフ変換に相対距離zの概念を含め、対象部位220を一部に含む円の半径Nを一意に推定することで、他の半径Nによる無駄なハフ変換処理を回避することができる。また、そのときに、投票テーブル240および半径保持テーブル242のみを用いるとすることで、メモリ容量の大幅な低減を図ることも可能となる。
【0076】
また、ハフ変換の対象とする対象部位220を部分検索領域230に絞ることでも無駄なハフ変換処理を排除でき、さらに、投票対象を部分円252に絞ることでも処理負荷を大幅に低減することが可能となる。
【0077】
また、コンピュータを、環境認識装置130として機能させるプログラムや当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0079】
また、上述した実施形態においては、対象物の三次元位置を複数の撮像装置110を用い画像データ間の視差に基づいて導出しているが、かかる場合に限られず、例えば、レーザレーダ測距装置等、既知の様々な距離測定装置を用いることができる。ここで、レーザレーダ測距装置は、検出領域122にレーザビームを投射し、このレーザビームが物体に当たって反射してくる光を受光し、この所要時間から物体までの距離を測定するものである。
【0080】
また、上述した実施形態においては、撮像装置110がカラー画像を取得することを前提としているが、かかる場合に限られず、モノクロ画像を取得することでも本実施形態を遂行することができる。
【0081】
また、上述した実施形態では、位置情報取得部162が、画像処理装置120から距離画像(視差情報)126を受けて三次元の位置情報を生成している例を挙げている。しかし、かかる場合に限られず、画像処理装置120において予め三次元の位置情報を生成し、位置情報取得部162は、その生成された三次元の位置情報を取得するとしてもよい。このようにして、機能分散を図り、環境認識装置130の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0082】
また、上述した実施形態においては、エッジ抽出部160、位置情報取得部162、特定物決定部164は中央制御部154によってソフトウェアで動作するように構成している。しかし、上記の機能部をハードウェアによって構成することも可能である。
【0083】
なお、本明細書の環境認識方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、検出領域における対象物の輝度に基づいて、その対象物を認識する環境認識装置および環境認識方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 …車両
122 …検出領域
124 …輝度画像
126 …距離画像
130 …環境認識装置
160 …エッジ抽出部
162 …位置情報取得部
164 …特定物決定部
240 …投票テーブル
242 …半径保持テーブル
250 …エッジ延伸方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出領域における対象物の輝度に基づいて、その対象物を認識する環境認識装置および環境認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の前方に位置する車両や信号機等の障害物といった対象物を検出し、検出した対象物との衝突を回避したり、先行車両との車間距離を安全な距離に保つように制御する技術が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
また、このような技術では、対象物を一律に物として特定するのみならず、さらに高精度な制御を行うため、対象物が自車両と同速度で走行している先行車両であるのか、移動を伴わない固定された物であるのか等を判定する技術も存在する。ここで、対象物を、検出領域の撮像を通じて検出する場合、対象物が何であるかを特定する前に、撮像された画像から対象物自体を抽出(切り出し)しなければならない。
【0004】
かかる対象物を抽出する方法としては、画像内における輝度が等しい画素同士をグループ化して対象物とする方法も考えられるが、撮像状況によっては、環境光の影響を受けたり、対象物自体の経時変化(色褪せ)により、対象物の本来の輝度を取得できない場合がある。そこで、画素間の輝度の差により生じるエッジを抽出し、そのエッジで形成される形状を通じて対象物を特定する方法も採用されている。
【0005】
例えば、撮像された画像から、隣接する画素間の微分値によってエッジを有する画素(エッジ画素)を抽出し、画像の水平方向および垂直方向におけるエッジ画素のヒストグラム(距離分布)を導出して、そのピークに相当する領域を対象物の端部と推定する技術が知られている。また、ヒストグラムに基づく融合パターンが、予め格納されている辞書パターンと比較され、対象物が車両であるか否か判定する技術も開示されている(例えば、特許文献3)。
【0006】
さらに、エッジ画像を含む画像から円や直線などの幾何学的な形状を検出する、所謂ハフ変換を用い、幾何学形状の一部が欠けているものから完全な幾何学形状の対象物を抽出する技術も公開されている。かかる技術によると、例えば、円の形状をした道路標識を抽出するために、検出領域から抽出されたエッジ画像を含む複数段階の大きさの円を想定してハフ変換を施し、その複数段階の大きさの円から最も適した1の大きさの円を道路標識として抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3349060号
【特許文献2】特開平10−283461号公報
【特許文献3】特開2003−99762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述したハフ変換を用いて最も適した1の大きさの円を抽出する技術では、1のエッジ画像に対し、可能性のある複数段階の大きさの円を想定し、その複数段階の大きさの円(投票テーブル)毎にハフ変換を施すので、処理負荷が重く、メモリの記憶領域を多大に占有することとなる。さらに、このような処理を画像内の全てのエッジに対して実行しているので、処理負荷やメモリの記憶領域が膨大になるといった問題があった。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、処理負荷を軽減すると共にメモリの記憶領域を低減することで、対象物の特定効率の向上を図ることが可能な、環境認識装置および環境認識方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の環境認識装置は、特定物の形状に関する情報である形状情報を保持するデータ保持部と、検出領域内を分割した複数の対象部位の輝度を取得して、エッジを有する対象部位を抽出するエッジ抽出部と、エッジを有する対象部位の相対距離を取得する位置情報取得部と、相対距離に応じた形状情報に基づいてエッジを有する対象部位にハフ変換を施し、形状情報で示される特定物を決定する特定物決定部と、を備えることを特徴とする。特定物の形状は円であってもよい。
【0011】
特定物決定部は、エッジを有する対象部位を一部とする円の中心が存在する位置を、対象部位のエッジが延伸する方向に垂直な所定範囲に絞って特定してもよい。
【0012】
位置情報取得部はエッジを有する対象部位の路面からの高さも取得し、特定物決定部は、相対距離および路面からの高さに基づく所定の部分検索領域に含まれる対象部位のみを対象として、形状情報で示される特定物を決定してもよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の環境認識方法は、特定物の形状に関する情報である形状情報を予め保持しておき、検出領域内を分割した複数の対象部位の輝度を取得して、エッジを有する対象部位を抽出し、エッジを有する対象部位の相対距離を取得し、相対距離に応じた形状情報に基づいてエッジを有する対象部位にハフ変換を施し、形状情報で示される特定物を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ハフ変換の適用処理を工夫することで、処理負荷を軽減すると共にメモリの記憶領域を低減し対象物の特定効率の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】環境認識システムの接続関係を示したブロック図である。
【図2】輝度画像を説明するための説明図である。
【図3】環境認識装置の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【図4】エッジ抽出部の動作を説明するための説明図である。
【図5】位置情報取得部による三次元の位置情報への変換を説明するための説明図である。
【図6】ハフ変換を説明するための説明図である。
【図7】特定物決定部による対象領域の制限処理を説明するための説明図である。
【図8】本実施形態におけるハフ変換処理を説明するための説明図である。
【図9】特定物決定部による他の投票処理を示した説明図である。
【図10】環境認識方法の全体的な流れを示したフローチャートである。
【図11】投票処理の流れを示したフローチャートである。
【図12】特定物決定処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
(環境認識システム100)
図1は、環境認識システム100の接続関係を示したブロック図である。環境認識システム100は、車両1内に設けられた、撮像装置110と、画像処理装置120と、環境認識装置130と、車両制御装置140とを含んで構成される。
【0018】
撮像装置110は、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子を含んで構成され、カラー画像、即ち、画素単位で3つの色相(赤、緑、青)の輝度を取得することができる。ここでは、撮像装置110で撮像されたカラーの画像を輝度画像と呼び、後述する距離画像と区別する。また、撮像装置110は、車両1の進行方向側において2つの撮像装置110それぞれの光軸が略平行になるように、略水平方向に離隔して配置される。撮像装置110は、車両1の前方の検出領域に存在する対象物を撮像した画像データを、例えば1/60秒毎(60fps)に連続して生成する。ここで、対象物は、車両、信号機、道路、ガードレールといった独立して存在する立体物のみならず、道路標識、テールランプやウィンカー、信号機の各点灯部分等、立体物の部分として特定できる物も含む。以下の実施形態における各機能部は、このような画像データの更新を契機として各処理を遂行する。
【0019】
画像処理装置120は、2つの撮像装置110それぞれから画像データを取得し、2つの画像データに基づいて、画像中の任意のブロック(所定数の画素を集めたもの)の視差、および、任意のブロックの画面中の位置を示す画面位置を含む視差情報を導出する。画像処理装置120は、一方の画像データから任意に抽出したブロック(例えば水平4画素×垂直4画素の配列)に対応するブロックを他方の画像データから検索する、所謂パターンマッチングを用いて視差を導き出す。ここで、水平は、撮像した画像の画面横方向を示し、実空間上の水平に相当する。また、垂直は、撮像した画像の画面縦方向を示し、実空間上の鉛直方向に相当する。
【0020】
このパターンマッチングとしては、2つの画像データ間において、任意の画像位置を示すブロック単位で輝度値(Y色差信号)を比較することが考えられる。例えば、輝度値の差分をとるSAD(Sum of Absolute Difference)、差分を2乗して用いるSSD(Sum of Squared intensity Difference)や、各画素の輝度値から平均値を引いた分散値の類似度をとるNCC(Normalized Cross Correlation)等の手法がある。画像処理装置120は、このようなブロック単位の視差導出処理を検出領域(例えば600画素×200画素)に映し出されている全てのブロックについて行う。ここでは、ブロックを4画素×4画素としているが、ブロック内の画素数は任意に設定することができる。
【0021】
ただし、画像処理装置120では、検出分解能単位であるブロック毎に視差を導出することはできるが、そのブロックがどのような対象物の一部であるかを認識できない。したがって、視差情報は、対象物単位ではなく、検出領域における検出分解能単位(例えばブロック単位)で独立して導出されることとなる。ここでは、このようにして導出された視差情報(後述する相対距離に相当)を画像データに対応付けた画像を距離画像という。
【0022】
図2は、輝度画像124と距離画像126を説明するための説明図である。例えば、2つの撮像装置110を通じ、検出領域122について図2(a)のような輝度画像(画像データ)124が生成されたとする。ただし、ここでは、理解を容易にするため、2つの輝度画像124の一方のみを模式的に示している。画像処理装置120は、このような輝度画像124からブロック毎の視差を求め、図2(b)のような距離画像126を形成する。距離画像126における各ブロックには、そのブロックの視差が関連付けられている。ここでは、説明の便宜上、視差が導出されたブロックを黒のドットで表している。
【0023】
視差は、画像のエッジ部分(隣り合う画素間で明暗の差分が大きい部分)で特定され易いので、距離画像126において黒のドットが付されている、視差が導出されたブロックは、輝度画像124においてもエッジとなっていることが多い。したがって、図2(a)に示す輝度画像124と図2(b)に示す距離画像126とは各対象物の輪郭について似たものとなる。
【0024】
環境認識装置130は、画像処理装置120から輝度画像124を取得し、輝度画像124における輝度のエッジに基づいて検出領域122における所定の形状を有する特定物を特定する。また、環境認識装置130は、画像処理装置120から距離画像126を取得し、距離画像126における、検出領域122内のブロック毎の視差情報を、所謂ステレオ法を用いて、相対距離を含む三次元の位置情報に変換する。かかる相対距離は上記特定物の特定に用いられる。ここで、ステレオ法は、三角測量法を用いることで、対象物の視差からその対象物の撮像装置110に対する相対距離を導出する方法である。かかる環境認識装置130に関しては、後ほど詳述する。
【0025】
車両制御装置140は、環境認識装置130で特定された対象物との衝突を回避したり、先行車両との車間距離を安全な距離に保つ制御を実行する。具体的に、車両制御装置140は、操舵の角度を検出する舵角センサ142や車両1の速度を検出する車速センサ144等を通じて現在の車両1の走行状態を取得し、アクチュエータ146を制御して先行車両との車間距離を安全な距離に保つ。ここで、アクチュエータ146は、ブレーキ、スロットルバルブ、舵角等を制御するために用いられる車両制御用のアクチュエータである。また、車両制御装置140は、対象物との衝突が想定される場合、運転者の前方に設置されたディスプレイ148にその旨警告表示(報知)を行うと共に、アクチュエータ146を制御して車両1を自動的に制動する。かかる車両制御装置140は、環境認識装置130と一体的に形成することもできる。
【0026】
(環境認識装置130)
図3は、環境認識装置130の概略的な機能を示した機能ブロック図である。図3に示すように、環境認識装置130は、I/F部150と、データ保持部152と、中央制御部154とを含んで構成される。
【0027】
I/F部150は、画像処理装置120や車両制御装置140との双方向の情報交換を行うためのインターフェースである。データ保持部152は、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、特定物テーブルや、以下に示す各機能部の処理に必要な様々な情報を保持し、また、画像処理装置120から受信した輝度画像124を一時的に保持する。ここで、特定物テーブルには、特定物の形状に関する情報である形状情報が特定物に関連付けられている。かかる形状情報は、特定物の形状を特定可能な情報であり、例えば、特定物が円形状であった場合、実空間上での特定物の半径(例えば30cm)等が保持されている。
【0028】
中央制御部154は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成され、システムバス156を通じて、I/F部150やデータ保持部152を制御する。また、本実施形態において、中央制御部154は、エッジ抽出部160、位置情報取得部162、特定物決定部164としても機能する。
【0029】
エッジ抽出部160は、受信した輝度画像124から、画素単位で輝度(画素単位で3つの色相(赤、緑、青)の輝度)を取得し、検出領域内を分割した複数の対象部位における画素間の輝度の差分によりエッジの有無を判断して、エッジを有する対象部位を抽出する。また、このとき、後述する特定物決定部164で利用するエッジが延伸する方向(以下、単にエッジ延伸方向という。)も併せて導出する。
【0030】
具体的に、エッジ抽出部160は、対象部位(ここでは2×2画素のブロック)を垂直方向に対して2分割した上下それぞれの領域における輝度の合計値の差分(以下、単に水平方向成分という。)と、対象部位を水平方向に対して2分割した左右それぞれの領域における輝度の合計値の差分(以下、単に垂直方向成分という。)とに基づいてエッジ方向を導出する。
【0031】
図4は、エッジ抽出部160の動作を説明するための説明図である。ここでは、仮に、輝度画像124の一部に、図4(a)に示すような道路標識210が映し出されたとする。そして、道路標識210に相当する画像中の任意の対象部位220aを拡大すると、図4(b)のような輝度分布になり、他の任意の対象部位220bを拡大すると、図4(c)のような輝度分布になっていたとする。
【0032】
また、輝度の範囲を0〜255とし、図4(b)中、仮に、白色の塗りつぶしを輝度「200」、黒色の塗りつぶしを輝度「0」とする。ここでは、仮に、対象部位220の図中左上画素の輝度をA、右上画素の輝度をB、左下画素の輝度をC、右下画素の輝度をDとし、エッジ方向の水平方向成分を(A+B)−(C+D)、エッジ方向の垂直方向成分を(A+C)−(B+D)と定義する。そして、エッジ抽出部160は、水平方向成分または垂直方向成分のいずれかで、その計算結果の絶対値が所定値(例えば、100)以上であると、その対象部位220をエッジであると判断する。
【0033】
図4(b)に示す対象部位220aのエッジ方向の水平方向成分は、(A+B)−(C+D)=(200+0)―(200+0)=0となり、エッジ方向の垂直方向成分は、(A+C)−(B+D)=(200+200)−(0+0)=+400となる。ここでは垂直方向成分の絶対値が100以上なので、当該対象部位220aはエッジと判断される。また、水平方向成分「0」、垂直方向成分「+400」なので、エッジ延伸方向は、図4(d)の如く垂直方向となる。ただし、エッジ延伸方向は、エッジの延伸線分が画像に対してどの程度傾いているかを把握できれば足り、厳密な方向、例えば、垂直上向きか下向きかを要さない。
【0034】
同様に、図4(c)に示す対象部位220bのエッジ方向の水平方向成分は、(A+B)−(C+D)=(0+0)―(200+200)=−400となり、エッジ方向の垂直方向成分は、(A+C)−(B+D)=(0+200)−(0+200)=0となる。ここでは水平方向成分の絶対値が100以上なので、当該対象部位220bはエッジと判断される。また、水平方向成分「−400」、垂直方向成分「0」なので、エッジ延伸方向は、図4(e)の如く水平方向となる。
【0035】
このように、対象部位220内の半分の領域から他の半分の領域を減算する構成により、対象部位220内全体に含まれる輝度のオフセットやノイズを取り除くことができ、エッジを適切に抽出することが可能となる。また、加減算のみの単純計算でエッジ延伸方向を導出できるので処理負荷が軽い。
【0036】
本実施形態では、後述する特定物決定部164において、このように導出されたエッジ延伸方向に基づき、ハフ変換における投票する範囲を制限することもある。ここで、導出した上記水平方向成分や垂直方向成分をそのまま用いて単純にエッジ延伸方向としてしまうと、そのエッジ延伸方向のバリエーションが無限に存在することとなる。そうすると、その無限のバリエーションに対して投票する範囲を設定しなければならない。
【0037】
そこで、本実施形態では、水平方向成分および垂直方向成分のいずれも単位長さで定義し、エッジ延伸方向のバリエーションを単純化する。即ち、水平方向成分および垂直方向成分のいずれも−1、0、+1のいずれかとみなすこととする。そうすると、エッジ延伸方向は、図4(f)のようにそれぞれ45度ずつの角度をなす4つの方向に限定することができる。こうすることで、以下に示す特定物決定部164の処理負荷を大幅に軽減することが可能となる。
【0038】
位置情報取得部162は、受信した距離画像126における検出領域122内の対象部位220毎の視差情報を、ステレオ法を用いて、水平距離x、路面からの高さyおよび相対距離zを含む三次元の位置情報に変換する。ここで、視差情報が、距離画像126における各対象部位220の視差を示すのに対し、三次元の位置情報は、実空間における各対象部位220の相対距離の情報を示す。また、視差情報が画素単位ではなくブロック単位、即ち複数の画素単位で導出されている場合、その視差情報はブロックに属する全ての画素の視差情報とみなして、画素単位の計算を実行することができる。
【0039】
図5は、位置情報取得部162による三次元の位置情報への変換を説明するための説明図である。位置情報取得部162は、まず、距離画像126を図5の如く画素単位の座標系として認識する。ここでは、図5中、左下隅を原点(0,0)とし、横方向をi座標軸、縦方向をj座標軸とする。したがって、視差dpを有する画素は、画素位置i、jと視差dpによって(i,j,dp)のように表すことができる。
【0040】
本実施形態における実空間上の三次元座標系を、車両1を中心とした相対座標系で考える。ここでは、車両1の進行方向右側方をX軸の正方向、車両1の上方をY軸の正方向、車両1の進行方向(前方)をZ軸の正方向、2つの撮像装置110の中央を通る鉛直線と道路表面との交点を原点(0,0,0)とする。このとき、道路を平面と仮定すると、道路表面がX−Z平面(y=0)と一致することとなる。位置情報取得部162は、以下の(数式1)〜(数式3)によって距離画像126上のブロック(i,j,dp)を、実空間上の三次元の点(x,y,z)に座標変換する。
x=CD/2+z・PW・(i−IV) …(数式1)
y=CH+z・PW・(j−JV) …(数式2)
z=KS/dp …(数式3)
ここで、CDは撮像装置110同士の間隔(基線長)であり、PWは1画素当たりの視野角であり、CHは撮像装置110の道路表面からの配置高さであり、IV、JVは車両1の真正面における無限遠点の画像上の座標(画素)であり、KSは距離係数(KS=CD/PW)である。
【0041】
したがって、位置情報取得部162は、対象部位220の相対距離と、対象部位220と同相対距離にある道路表面上の点と対象部位220との距離画像126上の検出距離とに基づいて、道路表面(路面)からの高さを導出していることとなる。
【0042】
本実施形態では、エッジ抽出部160が抽出したエッジを有する対象部位220と、位置情報取得部162が取得した相対距離zに基づいてハフ変換を行う。ここでは、まず、前提となるハフ変換について簡単に説明する。
【0043】
図6は、ハフ変換を説明するための説明図である。ここでは、輝度画像124から図6(a)の如くエッジを有する3つの対象部位220c、220d、220eを抽出したとする。かかる3つの対象部位220c、220d、220eは、本来、道路標識等、円形状の特定物222の一部であるが、ここでは、輝度画像124から明確に円形状であることが把握できないとする。
【0044】
ハフ変換は、複数の点から円や直線などの幾何学的な形状を検出する手法であり、任意の対象部位220を通り、かつ、半径がNを満たす円の中心は、その任意の対象部位220を中心とした半径Nの円上に存在するという理論に基づいている。例えば、図6(a)の3つの対象部位220c、220d、220eを通る円の中心は、3つの対象部位220c、220d、220eそれぞれを中心とした円上にある。しかし、エッジのみの情報では、その半径Nを特定できないため、相異なる複数段階の半径Nを準備して、3つの対象部位220c、220d、220eを中心とした複数段階の半径Nの円上の画素に投票し、その投票数が予め定められた所定値以上となれば半径Nと中心とを特定物として決定する。
【0045】
例えば、図6(b)、図6(c)、図6(d)のように、3つの対象部位220c、220d、220eを中心にして、相異なる半径N=4、5、6の円を形成し、その円の軌跡に含まれる画素に投票する(単位指標を関連付ける)。すると、図6(b)では、2つの画素224で投票数が2となる(単位指標が2つ関連付けられる)。また、図6(c)では、3つの画素224で投票数が2となり、1つの画素226で投票数が3となる。同様に、図6(d)では、6つの画素224で投票数が2となる。
【0046】
このとき、投票数が3(所定値以上)となるのは画素226のみとなり、その画素226を3つの対象部位220c、220d、220eを通る円の中心とし、その画素226を導出した際の半径N=5を円の半径と特定することができる。こうして、図6(e)のように、3つの対象部位220c、220d、220eを通る円228が特定される。
【0047】
本実施形態では、上述したようなエッジを有するという情報のみならず、対象部位220の相対距離zも用いてハフ変換を行う。そうすることで事前に特定物の半径Nを特定することができる。以下、かかる処理を実現する特定物決定部164を説明する。
【0048】
特定物決定部164は、エッジを有する対象部位220にハフ変換を施す前に、まず、当該ハフ変換の対象とする対象部位220を制限する。
【0049】
図7は、特定物決定部164による対象領域の制限処理を説明するための説明図である。特定物決定部164は、特定対象である特定物が走行車線外にしか存在しない道路標識等である場合、道路標識が存在し得ない図7中ハッチングで示した領域を除く部分検索領域230に含まれる対象部位220のみをハフ変換の対象とする。かかる部分検索領域230は、位置情報取得部162が取得した相対距離zおよび路面からの高さyに基づいており、例えば、路側帯に相当する位置の相対距離z≦100m、1.0m≦路面からの高さy≦5.0mといった範囲となる。したがって、輝度画像124上、部分検索領域230は、無限遠232から自車両1に向かって、放射状に広がるような形状で表される。このように、特定物が存在しない領域を除外し、対象部位220の無駄なハフ変換を回避することで、処理負荷の軽減を図ると共に、本来存在しない領域において特定物が出現するといった誤検出を未然に防止することが可能となる。
【0050】
続いて、特定物決定部164は、データ保持部152に保持された特定物テーブルを参照し、対象とする特定物の形状情報を取得し、その形状情報を相対距離zに適合する。例えば、特定物が道路標識であった場合、形状情報として、円形状であることと、その円の半径が30cmであることが示される。特定物決定部164は相対距離zに当該道路標識が位置していた場合、輝度画像124にどの程度の半径(画素数)で表示されるか、上記数式(1)〜(3)の逆関数を用いて導出する。
【0051】
かかる道路標識のように、特定物の種類によっては、大きさが法律や規則で定まっているものもある。また、本実施形態のように相対距離zを導出していれば、輝度画像124上で特定物がどのような大きさで出現するかを予測することができる。
【0052】
次に、特定物決定部164は、導出した半径の円を用いてエッジを有する対象部位220にハフ変換を施す。
【0053】
図8は、本実施形態におけるハフ変換処理を説明するための説明図である。特に、図8(a)は、輝度画像124を示し、図8(b)は、ハフ変換による投票を行うための投票テーブル240、図8(c)は、投票された画素に投票時の半径Nを関連付けた半径保持テーブル242を示し、図8(d)は、最終的に抽出された特定物の形状を示す。また、各図における点線は、図7の走行車線に対応している。
【0054】
例えば、図8(a)の輝度画像124において、エッジを有する対象部位220f、220g、220h、220i、220j、220kを抽出したとする。ここでは、説明の便宜のため、当該6つの対象部位220に着目して説明する。特定物決定部164は、図8(a)に示す対象部位220f、220g、220h、220i、220j、220kそれぞれの相対距離zを取得し、その相対距離zに基づいてハフ変換を施すべき円の半径Nを求める。ここでは、対象部位220f、220g、220hの半径Nが30画素であり、対象部位220i、220j、220kの半径Nが23画素であったとする。
【0055】
特定物決定部164は、図8(b)の投票テーブル240において、対象部位220f、220g、220h、220i、220j、220kを中心に、対象部位220それぞれに関して求められた半径Nの円を形成し、その半径Nの円上の画素全てに投票する。したがって、図8(b)に示す円に対応する画素には、投票が為された旨を示す単位指標が関連付けられている。このとき、投票した画素に対応する半径保持テーブル242の各画素には、図8(c)に数値で示したように、投票時の半径Nが関連付けられる。ただし、図8(c)中の半径Nは、イメージを示しており、実際の画素数と半径Nとの関係と異なっている。
【0056】
本実施形態では、対象部位220を一部に含む円の半径を特定できるため、従来のように投票テーブルを複数段階の円の大きさ(半径)毎に設ける必要がない。したがって、無駄なハフ変換処理を回避でき、処理負荷の軽減を図ることができる。ただし、上述したように投票テーブル240を1つに纏めると、投票時の半径Nの情報が失われてしまう。そこで、投票テーブル240に対応する半径保持テーブル242を補完的に設けることで、特定物を適切に特定することが可能となる。
【0057】
続いて、特定物決定部164は、投票テーブル240の投票数を検出し、投票数が所定値(例えば、20)以上となる画素が検出されると、その画素に対応する半径保持テーブル242の画素に関連付けられた半径N(ここでは「30」と「23」)を読み出す。そして、図8(d)のように、所定値以上となった画素244を中心に読み出した半径Nの円246を形成し、それを特定物として決定する。
【0058】
ここで、1の画素が複数の特定物の円の中心候補となる場合がある。即ち、半径保持テーブル242の任意の画素に複数の半径Nが関連付けられている場合である。本実施形態では、画像で認識できる特定物は1つあれば足りる。したがって、複数の半径Nのうち、1つの半径Nを採用すればよい。ここでは、画像上手前に存在するであろう特定物を採用する。通常、同一の大きさの道路標識であれば、手前に位置する方が画像上大きく表示される。したがって、投票数も多くなるはずである。そこで、特定物決定部164は、半径保持テーブル242の任意の画素に複数の半径Nが関連付けられている場合、その数の比率が大きい半径Nを採用することで、手前に位置するであろう特定物を抽出することができる。
【0059】
また、中心が異なってはいるものの、特定物を示す円の一部が重なる場合もある。ここでも、画像上、手前に存在するであろう特定物を採用する。通常、同一の大きさの道路標識であれば、手前に位置する方が画像上大きくなると共に、その中心は画像の比較的下に位置することとなる。そこで、特定物決定部164は、投票数を検出する際、画像下側から検出を開始することとし、画像の下側に位置する特定物を先に決定することによって、それより奥まっている特定物を無視することとする。本実施形態では、車両制御装置140によって適切な制御を行うため、手前に位置する特定物を優先的に抽出しなければならない。したがって、このように重複している特定物のうち、奥まっている特定物を無視したとしても制御にはほとんど影響することがない。
【0060】
ここで、ハフ変換のさらなる効率化を検討する。本実施形態のように特定物が円形状である場合、円の接線は接点と円の中心を結ぶ線分と垂直となることが知られている。また、円の接線は対象部位220におけるエッジ延伸方向に相当する。したがって、特定物決定部164は、エッジを有する対象部位220を一部とする円の中心が存在する位置を、対象部位220のエッジ延伸方向に垂直な所定範囲に絞る。ここで所定範囲は、その対象部位220を中心にして、垂直方向に放射状に広がる角度範囲をいう。ここでは、その角度範囲を仮に45度とする。
【0061】
図9は、特定物決定部164による他の投票処理を示した説明図である。例えば、対象部位220に関してハフ変換を行うと、図9(a)に示すように、対象部位220を中心とした破線で示す円246に投票することとなる。しかし、ここでは、対象部位220のエッジ延伸方向250が把握できているので、特定物の円の中心は、対象部位220のエッジ延伸方向250に垂直な方向にしか出現しない。したがって、特定物決定部164は、対象部位220のエッジ延伸方向250に垂直な方向に絞って特定物の円の中心を特定する。
【0062】
ただし、対象部位220は特定物に対して小さいため、エッジ延伸方向が必ずしも特定物の円の接線と等しくなるとは限らない。そこで、特定物決定部164は、所定角度のずれを許容すべく対象部位220のエッジ延伸方向250に垂直な方向のみならず、所定範囲分の部分円252を特定物の円の中心候補として特定する。
【0063】
また、図4(f)に示したように、エッジ延伸方向250はそれぞれ45度ずつの角度を成す4つの方向で表される。したがって、図9(b)〜図9(d)に示すように、エッジ延伸方向250の4つの方向に対して、4つの部分円252の特定パターンがあることになる。ここでは、投票する円246を部分円252に絞ることで、処理負荷を軽減でき、特定効率を向上することが可能となる。また、その部分円252を特定するパターンを例えば4つに限定することで、それを求めるための処理負荷も低減でき、さらなる特定効率の向上を図ることができる。
【0064】
さらに、特定物の円の中心が存在しない範囲への投票が回避されるので、本来特定物の円の中心が存在しない画素に不本意な投票が行われ、特定物の円の中心が誤検出される事態を回避することが可能となる。このようにして、特定物決定部164は、形状情報で示される特定物を決定する。
【0065】
(環境認識方法)
以下、環境認識装置130の具体的な処理を図10〜図12のフローチャートに基づいて説明する。図10は、画像処理装置120から輝度画像124が送信された場合の割込処理に関する全体的な流れを示し、図11、12は、その中の個別のサブルーチンを示している。また、ここでは、対象部位220として2×2画素のブロックを挙げており、600×200画素の輝度画像124の左下隅を原点とし、画像水平方向に1〜300ブロック、垂直方向に1〜100ブロックの範囲で当該環境認識方法による処理を遂行する。
【0066】
図10に示すように、輝度画像124の受信を契機に当該環境認識方法による割込が発生すると、画像処理装置120から取得した輝度画像124が参照されて、エッジを有する対象部位220に関してハフ変換が施され、投票テーブル240および半径保持テーブル242に投票が為される(S300)。そして、その投票後の投票テーブル240が参照され特定物が決定される(S302)。以下、上記の処理を具体的に説明する。
【0067】
(投票処理S300)
図11を参照すると、エッジ抽出部160は、相対距離zおよび路面からの高さyに基づく所定の部分検索領域230を読み出す(S350)。また、エッジ抽出部160は、対象部位220を特定するための垂直変数jを初期化(「0」を代入)する(S352)。続いて、エッジ抽出部160は、垂直変数jに「1」を加算(インクリメント)すると共に水平変数iを初期化(「0」を代入)する(S354)。次に、エッジ抽出部160は、水平変数iに「1」を加算する(S356)。ここで、水平変数iや垂直変数jを設けているのは、300×100の対象部位220全てに対して当該投票処理を実行するためである。
【0068】
エッジ抽出部160は、輝度画像124から対象部位(i,j)内の2×2画素の輝度を取得する(S358)。そして、エッジ抽出部160は、式(A+B)−(C+D)に基づいて水平方向成分を導出し(S360)、式(A+C)−(B+D)に基づいて垂直方向成分を導出する(S362)。次に、水平方向成分および垂直方向成分を単純化してエッジ延伸方向を特定し、エッジ延伸方向を示すエッジ延伸方向識別子d(例えば、図4(f)に示す番号)を対象部位220に関連付けて、対象部位(i,j,d)とする(S364)。
【0069】
続いて、特定物決定部164は、ステップS350で読み出した部分検索領域230を参照し、当該対象部位220が部分検索領域230に含まれるか否か判定する(366)。部分検索領域230に含まれていないと判定されると(S366におけるNO)、ステップS376の水平変数判定処理に処理を移行する。また、当該対象部位220が部分検索領域230に含まれていれば(S366におけるYES)、特定物決定部164は、位置情報取得部162に当該対象部位220の相対距離zを取得させる(S368)。また、データ保持部152に保持された特定物テーブルから特定物の形状情報を取得し、相対距離zに応じて形状情報を加工する(S370)。具体的には、相対距離zに基づいてハフ変換を施すべき円の半径Nを求める。
【0070】
そして、特定物決定部164は、投票テーブル240におけるエッジ延伸方向識別子dによって特定される所定範囲(対象部位220のエッジ延伸方向250に垂直な所定範囲)の半径Nの部分円252の座標(m,n)の画素(m,n,t)の投票数tに「1」を加算(投票)する(S372)。このとき、投票した画素(m,n,t)に対応する半径保持テーブル242の各画素(m,n,N…)に、投票時の半径Nが関連付けられる(S374)。
【0071】
次に、水平変数iが水平ブロックの最大値(ここでは300)を超えたか否か判定し(S376)、水平変数iが最大値を超えていなければ(S376におけるNO)、ステップS356の水平変数iのインクリメント処理からを繰り返す。また、水平変数iが最大値を超えていれば(S376におけるYES)、特定物決定部164は、垂直変数jが垂直ブロックの最大値(ここでは100)を超えたか否か判定する(S378)。そして、垂直変数jが最大値を超えていなければ(S378におけるNO)、ステップS354の垂直変数jのインクリメント処理からを繰り返す。また、垂直変数jが最大値を超えていれば(S378におけるYES)、当該投票処理を終了する。こうして各対象部位220に関するハフ変換を通じた投票が完了する。
【0072】
(特定物決定処理S302)
図12を参照すると、特定物決定部164は、画素を特定するための垂直変数nを初期化(「0」を代入)する(S400)。続いて、特定物決定部164は、垂直変数nに「1」を加算すると共に水平変数mを初期化(「0」を代入)する(S402)。次に、特定物決定部164は、水平変数mに「1」を加算する(S404)。
【0073】
続いて、特定物決定部164は、投票テーブル240と半径保持テーブル242から画素(m,n,t)と画素(m,n,N…)を抽出し(S406)、1または複数の半径Nから最も数の比率の高い半径Nを抽出する(S408)。そして、特定物決定部164は、抽出した半径Nの投票数tが所定値以上であるか否か判定し(S410)、所定値未満であれば(S410におけるNO)、ステップS414の水平変数判定処理に移行する。また、投票数tが所定値以上であれば(S410におけるYES)、その画素の座標(m,n)を中心とする半径Nの円を特定物として特定する(S412)。
【0074】
続いて、特定物決定部164は、水平変数mが水平画素の最大値(ここでは600)を超えたか否か判定し(S414)、水平変数mが最大値を超えていなければ(S414におけるNO)、ステップS404の水平変数mのインクリメント処理からを繰り返す。また、水平変数mが最大値を超えていれば(S414にけるYES)、特定物決定部164は、垂直変数nが垂直画素の最大値(ここでは200)を超えたか否か判定する(S416)。そして、垂直変数nが最大値を超えていなければ(S416におけるNO)、ステップS402の垂直変数nのインクリメント処理からを繰り返す。また、垂直変数nが最大値を超えていれば(S416におけるYES)、当該特定物決定処理を終了する。こうして特定物が特定される。
【0075】
以上、説明したように、環境認識装置130によれば、ハフ変換の適用処理を工夫することで、処理負荷を軽減すると共にメモリの記憶領域を低減し対象物の特定効率の向上を図ることが可能となる。具体的に、ハフ変換に相対距離zの概念を含め、対象部位220を一部に含む円の半径Nを一意に推定することで、他の半径Nによる無駄なハフ変換処理を回避することができる。また、そのときに、投票テーブル240および半径保持テーブル242のみを用いるとすることで、メモリ容量の大幅な低減を図ることも可能となる。
【0076】
また、ハフ変換の対象とする対象部位220を部分検索領域230に絞ることでも無駄なハフ変換処理を排除でき、さらに、投票対象を部分円252に絞ることでも処理負荷を大幅に低減することが可能となる。
【0077】
また、コンピュータを、環境認識装置130として機能させるプログラムや当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0079】
また、上述した実施形態においては、対象物の三次元位置を複数の撮像装置110を用い画像データ間の視差に基づいて導出しているが、かかる場合に限られず、例えば、レーザレーダ測距装置等、既知の様々な距離測定装置を用いることができる。ここで、レーザレーダ測距装置は、検出領域122にレーザビームを投射し、このレーザビームが物体に当たって反射してくる光を受光し、この所要時間から物体までの距離を測定するものである。
【0080】
また、上述した実施形態においては、撮像装置110がカラー画像を取得することを前提としているが、かかる場合に限られず、モノクロ画像を取得することでも本実施形態を遂行することができる。
【0081】
また、上述した実施形態では、位置情報取得部162が、画像処理装置120から距離画像(視差情報)126を受けて三次元の位置情報を生成している例を挙げている。しかし、かかる場合に限られず、画像処理装置120において予め三次元の位置情報を生成し、位置情報取得部162は、その生成された三次元の位置情報を取得するとしてもよい。このようにして、機能分散を図り、環境認識装置130の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0082】
また、上述した実施形態においては、エッジ抽出部160、位置情報取得部162、特定物決定部164は中央制御部154によってソフトウェアで動作するように構成している。しかし、上記の機能部をハードウェアによって構成することも可能である。
【0083】
なお、本明細書の環境認識方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、検出領域における対象物の輝度に基づいて、その対象物を認識する環境認識装置および環境認識方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 …車両
122 …検出領域
124 …輝度画像
126 …距離画像
130 …環境認識装置
160 …エッジ抽出部
162 …位置情報取得部
164 …特定物決定部
240 …投票テーブル
242 …半径保持テーブル
250 …エッジ延伸方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定物の形状に関する情報である形状情報を保持するデータ保持部と、
検出領域内を分割した複数の対象部位の輝度を取得して、エッジを有する対象部位を抽出するエッジ抽出部と、
前記エッジを有する対象部位の相対距離を取得する位置情報取得部と、
前記相対距離に応じた前記形状情報に基づいて前記エッジを有する対象部位にハフ変換を施し、該形状情報で示される特定物を決定する特定物決定部と、
を備えることを特徴とする環境認識装置。
【請求項2】
前記特定物の形状は円であることを特徴とする請求項1に記載の環境認識装置。
【請求項3】
前記特定物決定部は、前記エッジを有する対象部位を一部とする円の中心が存在する位置を、該対象部位のエッジが延伸する方向に垂直な所定範囲に絞って特定することを特徴とする請求項2に記載の環境認識装置。
【請求項4】
前記位置情報取得部は前記エッジを有する対象部位の路面からの高さも取得し、
前記特定物決定部は、前記相対距離および前記路面からの高さに基づく所定の部分検索領域に含まれる対象部位のみを対象として、前記形状情報で示される特定物を決定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の環境認識装置。
【請求項5】
特定物の形状に関する情報である形状情報を予め保持しておき、
検出領域内を分割した複数の対象部位の輝度を取得して、エッジを有する対象部位を抽出し、
前記エッジを有する対象部位の相対距離を取得し、
前記相対距離に応じた前記形状情報に基づいて前記エッジを有する対象部位にハフ変換を施し、該形状情報で示される特定物を決定することを特徴とする環境認識方法。
【請求項1】
特定物の形状に関する情報である形状情報を保持するデータ保持部と、
検出領域内を分割した複数の対象部位の輝度を取得して、エッジを有する対象部位を抽出するエッジ抽出部と、
前記エッジを有する対象部位の相対距離を取得する位置情報取得部と、
前記相対距離に応じた前記形状情報に基づいて前記エッジを有する対象部位にハフ変換を施し、該形状情報で示される特定物を決定する特定物決定部と、
を備えることを特徴とする環境認識装置。
【請求項2】
前記特定物の形状は円であることを特徴とする請求項1に記載の環境認識装置。
【請求項3】
前記特定物決定部は、前記エッジを有する対象部位を一部とする円の中心が存在する位置を、該対象部位のエッジが延伸する方向に垂直な所定範囲に絞って特定することを特徴とする請求項2に記載の環境認識装置。
【請求項4】
前記位置情報取得部は前記エッジを有する対象部位の路面からの高さも取得し、
前記特定物決定部は、前記相対距離および前記路面からの高さに基づく所定の部分検索領域に含まれる対象部位のみを対象として、前記形状情報で示される特定物を決定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の環境認識装置。
【請求項5】
特定物の形状に関する情報である形状情報を予め保持しておき、
検出領域内を分割した複数の対象部位の輝度を取得して、エッジを有する対象部位を抽出し、
前記エッジを有する対象部位の相対距離を取得し、
前記相対距離に応じた前記形状情報に基づいて前記エッジを有する対象部位にハフ変換を施し、該形状情報で示される特定物を決定することを特徴とする環境認識方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−243051(P2012−243051A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112006(P2011−112006)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
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