説明

環状第4級アンモニウム塩、それを用いた電解質組成物、及び該電解質組成物を用いた電気化学デバイス

【課題】約100℃以下で液状を示し、不揮発性、不燃性、高熱安定性、高イオン導電性、耐電気分解性(耐久性)などを有し、有機溶媒を使用することなくそのまま電解質としても使用できる新規第4級アンモニウム塩、それを用いてなる電解質組成物及び電気化学デバイスを提供する。
【解決手段】下記一般式(1)


(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシメチル基又は炭素数1〜4のアルコキシエチル基を示し、また、RとRとが環を形成していてもよい。mは、1又は2を表す。Xは、アニオンを示す。)で表わされる3位に置換基を有する環状第四級アンモニウム塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、約100℃以下で液状を示す新規な環状第4級アンモニウム塩、それを用いた電解質組成物、及びその電解質組成物を用いた電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バッテリー及びキャパシタをはじめとする電気化学デバイスの出力密度、エネルギー密度向上の要求が高まり、耐電圧性の観点から、水系電解液よりも有機系電解液が多用されつつある。
【0003】
有機系電解液としては、例えば、アルカリ金属塩(電解質)をプロピレンカーボネート等の有機溶剤に溶解させた電解液、固体アンモニウム塩(電解質)をプロピレンカーボネート等の有機溶剤に溶解させた電解液等が知られている。しかし、有機系電解液は、水系電解液に比べ、電気伝導性が劣っており、電気伝導性向上のために有機溶剤及び電解質に関する研究が多数行われている。例えば、特許文献1には、電気二重層キャパシタ用電解液の電解質として非対称型アンモニウム塩が開示されている。
【0004】
さらに特許文献2にはスピロ型の第4級アンモニウム塩(以下SBPと略称)を電気二重層キャパシタ用電解液の電解質として利用する方法が開示されており、このスピロ型第4級アンモニウム塩を電気二重層キャパシタ用電解液の電解質に用いると長時間安定した性能が得られるとされている。
【0005】
しかし、前記電解質はいずれも固体であり、しかもこれら電解質の有機溶剤に対する溶解性は低い。例えば、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートのプロピレンカーボネートに対する溶解度は、室温で22g/100mL程度に過ぎない。それ故、このような電解液を−10℃程度の低温環境下で使用すると電解質が析出し、電解液中の解離イオン濃度が低下し、その結果電気伝導性が大きく低下する等の電解液の性能が低下する問題が生ずる。これは、特許文献2のスピロ型の第4級アンモニウムでも同様である。
【0006】
一方、電気化学デバイスの電解液として、最近、イオン液体の使用が検討されている。イオン液体は、室温付近で液体状態を示す塩であり、不揮発性、不燃性、高熱安定性、高イオン導電性、耐電気分解性などを有することが知られている。イオン液体は、通常の有機溶媒よりも耐酸化性に優れ、溶媒への溶解性も結晶性の第四級アンモニウム塩と比べ特に低温でも優れる。さらにイオン液体は溶媒を用いることなくそれ自身そのまま電解液として使用することもできるので、電解質濃度を高濃度にすることができる。このため、イオン液体を電気化学デバイスの電解液として用いた場合、通常の有機溶媒に電解質を溶解させた電解液を用いた場合と比べて電気化学デバイスの出力性能や耐久性の向上が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平03−58526号公報
【特許文献2】特開2008−210871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、約100℃以下で液状を示し、不揮発性、不燃性、高熱安定性、高イオン導電性、耐電気分解性(耐久性)などを有し、有機溶媒を使用することなくそのまま電解液としても使用できる新規第4級アンモニウム塩、それを用いてなる電解質組成物及び電気化学デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決できる新規第4級アンモニウム塩を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表される3位に置換基を有する環状第4級アンモニウム塩が約100℃以下で液状を示し、かつ不揮発性、不燃性、高熱安定性、高イオン導電性、耐電気分解性(耐久性)などを有し、有機溶媒を使用することなくそのまま電解液としても使用できるものであることから、電気二重層キャパシタ、リチウム電池(リチウムイオン電池及びリチウム金属電池)、光電変換装置等の電気化学デバイスの電解質として好適であることを見出した。本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。
【0010】
本発明は、以下の内容を含むものである。
項1. 下記一般式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシメチル基又は炭素数1〜4のアルコキシエチル基を示し、また、RとRとが環を形成していてもよい。mは、1又は2を表す。Xは、アニオンを示す。)で表わされる3位に置換基を有する環状第四級アンモニウム塩。
項2. 前記一般式(1)で表わされる化合物が、RとRとにより形成される環と、3位に置換基を有する環とから形成されるスピロ構造を有する下記一般式(2)
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。m及びnは、同一又は異なって、1又は2を示す。X-は、アニオンを示す。)で表わされる化合物であることを特徴とする項1に記載の環状第四級アンモニウム塩。
項3. nが1であることを特徴とする項2に記載の環状第四級アンモニウム塩。
項4. mが1であることを特徴とする項2又は3に記載の環状第四級アンモニウム塩。
項5. nが1であり、mが1であり、且つRが水素原子であることを特徴とする項2〜4のいずれか一項に記載の環状第四級アンモニウム塩。
項6. nが1であり、mが1であり、且つRが炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基であることを特徴とする項2〜4のいずれか一項に記載の環状第四級アンモニウム塩。
項7. Rが、メチル基又はエチル基であることを特徴とする項2〜4及び6のいずれか一項に記載の環状第四級アンモニウム塩。
項8. 環状第四級アンモニウム塩が、一般式(1)においてRがメチル基であり、Rがエチル基であり、且つmが1である3−アルコキシピロリジニウム塩である項1に記載の環状第四級アンモニウム塩。
項9. Xが、BF、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF又はN(CN)である項1〜8のいずれか一項に記載の環状第四級アンモニウム塩。
項10. 項1〜9のいずれか一項に記載の環状アンモニウム塩を含有する電解質組成物。
項11. 電気化学デバイスに用いられるものである項10に記載の電解質組成物。
項12. 項11に記載の電解質組成物を用いた電気二重層キャパシタ。
項13. 項11に記載の電解質組成物を用いたリチウムイオン電池又はリチウム金属電池。
項14. 項11に記載の電解質組成物を用いた光電変換装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、約100℃以下で液状を示し、不揮発性、不燃性、高熱安定性、高イオン導電性、耐電気分解性(耐久性)などを有し、有機溶媒を使用することなくそのまま電解液としても使用できる新規第4級アンモニウム塩を提供することができる。このような第4級アンモニウム塩を含有する電解質組成物は、不揮発性、不燃性、高熱安定性、高イオン導電性、耐電気分解性(耐久性)などを有し、電気二重層キャパシタ、リチウム電池(リチウムイオン電池及びリチウム金属電池)、光電変換装置等の電気化学デバイスの電解液等として好適に使用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一例であるラミネート型電気二重層キャパシタを示す正面図である。
【図2】図2は、本発明の一例であるラミネート型電気二重層キャパシタを示す内部構成図である。
【図3】図3は、本発明の一例であるラミネート型のリチウムイオン電池の構成を模式的に表す図である。
【図4】図4は、図3に示す巻回電極体(20)のII−II線に沿った断面の一例を示す図である。
【図5】図5は、本発明の一例である光電変換素子及び光化学電池の構造の一例を示す図である。
【図6】図6は、実施例で製造した化合物を用いた電気二重層キャパシタの容量変化率の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.第4級アンモニウム塩
本発明の3位に置換基を有する環状第四級アンモニウム塩(以下、単に環状第四級アンモニウム塩ともいう)は、下記一般式(1)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシメチル基又は炭素数1〜4のアルコキシエチル基を示し、また、RとRとが環を形成していてもよい。mは、1又は2を表す。Xは、アニオンを示す。)で表わされる化合物である。
【0020】
本発明における3位の置換基は、一般式(1)においてR−O−で表わされる基である。
で示される炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。Rは、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0021】
とRで示される炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基としては、前記と同じである。炭素数1〜4のアルコキシメチル基として、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基等が挙げられる。炭素数1〜4のアルコキシエチル基として、例えば、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基等が挙げられる。Rは、好ましくは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基であり、より好ましくは、エチル基又はメチル基であり、さらに好ましくは、メチル基である。Rは、好ましくは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基であり、より好ましくは、エチル基又はメチル基であり、さらに好ましくは、エチル基である。
mは、好ましくは1である。
【0022】
前記一般式(1)においては、Rがメチル基であり、Rがエチル基であり、且つmが1であることが好ましい。一般式(1)において、Rがメチル基であり、Rがエチル基であり、且つmが1である3−アルコキシピロリジニウム塩は、本発明の環状第四級アンモニウム塩の好ましい態様の1つである。
【0023】
本発明においては、一般式(1)において、RとRとが環を形成していることも好ましい。RとRとが環を形成する場合、本発明の環状第4級アンモニウム塩は、RとRとにより形成される環と、3位に置換基を有する環とから形成されるスピロ構造を有する。このようなスピロ構造を有する第4級アンモニウム塩は、本発明の好ましい態様の1つである。RとRとにより形成される環は、5〜7員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましく、5員環がさらに好ましい。
【0024】
一般式(1)で表わされる化合物が、スピロ環構造を有する第4級アンモニウム塩である場合、該化合物は、RとRとにより形成される環と、3位に置換基を有する環とから形成されるスピロ構造を有する下記一般式(2)
【0025】
【化4】

【0026】
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。m及びnは、同一又は異なって、1又は2を示す。X-は、アニオンを示す。)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0027】
前記一般式(2)で表わされる環状第四級アンモニウム塩においては、nが1であることが好ましい。すなわち、一般式(1)におけるRとRとにより形成される環が、ピロリジン環(一般式(2)においてn=1)であることが好ましい。RとRとにより形成されるピロリジン環と、3位に置換基を有する環とから形成されるスピロ構造を有する環状第四級アンモニウム塩は、本発明の好ましい態様の1つである。
【0028】
前記一般式(2)で表わされる環状第四級アンモニウム塩においては、mが1であることが好ましい。すなわち一般式(1)における3位に置換基を有する環がピロリジン環であることが好ましい。
【0029】
前記一般式(2)においては、nが1であり、且つmが1であることがより好ましい。すなわち一般式(1)におけるRとRとにより形成される環が、ピロリジン環(一般式(2)においてn=1)であり、かつ3位に置換基を有する環がピロリジン環(一般式(2)においてm=1)であることが好ましい。RとRとにより形成されるピロリジン環と、3位に置換基を有するピロリジン環とから形成されるスピロ構造を有する環状第四級アンモニウム塩は、本発明のより好ましい態様の1つである。
【0030】
前記一般式(2)においては、nが1であり、mが1であり、且つRが水素原子であることがさらに好ましい。すなわち一般式(1)におけるRとRとにより形成される環が、ピロリジン環(一般式(2)においてn=1)であり、3位に置換基を有する環がピロリジン環(一般式(2)においてm=1)であり、且つ該環の3位の置換基がヒドロキシ基(水酸基)であることが好ましい。RとRとにより形成されるピロリジン環と、3位に置換基を有するピロリジン環とから形成されるスピロ構造を有し、且つ該3位の置換基がヒドロキシ基である環状第四級アンモニウム塩は、本発明の好ましい態様の1つである。
【0031】
前記一般式(2)において、Rは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは、メチル基又はエチル基である。
前記一般式(2)においては、nが1であり、mが1であり、且つRが炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基であることが特に好ましい。すなわち一般式(1)におけるRとRとにより形成される環が、ピロリジン環(一般式(2)においてn=1)であり、3位に置換基を有する環がピロリジン環(一般式(2)においてm=1)であり、且つ該環の3位の置換基が炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましい。RとRとにより形成されるピロリジン環と、3位に置換基を有するピロリジン環とから形成されるスピロ構造を有し、且つ該3位の置換基が炭素数1〜4のアルコキシ基である環状第四級アンモニウム塩は、本発明の好ましい態様の1つである。炭素数1〜4のアルコキシ基は、より好ましくは、メトキシ基である。
【0032】
本発明の環状第4級アンモニウム塩は、第4級アンモニウムカチオンとアニオンとから構成される。
前記第4級アンモニウムカチオンの具体例としては、3−メトキシ−1,1’−スピロ−ビス(ピロリジニウム)カチオン、3−エトキシ−1,1’−スピロ−ビス(ピロリジニウム)カチオン、3−プロピルオキシ(又はプロポキシ)−1,1’−スピロ−ビス(ピロリジニウム)カチオン、3−ブチルオキシ(又はブトキシ)−1,1’−スピロ−ビス(ピロリジニウム)カチオン、3−メトキシ−1,1’−スピロ−ビス(ピペリジニウム)カチオン、3−エトキシ−1,1’−スピロ−ビス(ピペリジニウム)カチオン、3−プロピルオキシ(又はプロポキシ)−1,1’−スピロ−ビス(ピペリジニウム)カチオン、3−ブチルオキシ(又はブトキシ)−1,1’−スピロ−ビス(ピペリジニウム)カチオン、3’−メトキシ−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムカチオン、3’−エトキシ−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムカチオン、3’−プロピルオキシ(又はプロポキシ)−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムカチオン、3’−ブチルオキシ(又はブトキシ)−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムカチオン、3−ヒドロキシ−1,1’−スピロ−ビス(ピロリジニウム)カチオン、3’−ヒドロキシ−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムカチオン、3−メトキシ−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムカチオン、3−エトキシ−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムカチオン、3−プロピルオキシ(又はプロポキシ)−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムカチオン、3−ブチルオキシ(又はブトキシ)−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムカチオン、3−ヒドロキシ−1,1’−スピロ−ビス(ピロリジニウム)カチオン、3’−ヒドロキシ−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムカチオン、3−ヒドロキシ−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチル−3−メトキシピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチル−3−エトキシピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチル−3−プロピルオキシ(又はプロポキシ)ピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチル−3−ブチルオキシ(又はブトキシ)ピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチル−3−ヒドロキシピロリジニウムカチオンなどが好ましく挙げられる。
【0033】
中でも、3−メトキシ−1,1’−スピロ−ビス(ピロリジニウム)カチオン、3−ヒドロキシ−1,1’−スピロ−ビス(ピロリジニウム)カチオン、1−エチル−1−メチル−3−メトキシピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチル−3−ヒドロキシピロリジニウムカチオン等がより好ましい。中でも、3−メトキシ−1,1’−スピロ−ビス(ピロリジニウム)カチオン、1−エチル−1−メチル−3−メトキシピロリジニウムカチオン等がさらに好ましい。
【0034】
前記アニオンの具体例としては、BF、Cl(塩素イオン)、Br(臭素イオン)、I(沃素イオン)、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、N(CN)等が好ましく挙げられる。中でも、BF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、N(CN)、CFBF等がより好ましい。
【0035】
本発明における好ましい環状第4級アンモニウム塩として、具体的には、以下のもの等が挙げられる。
3−メトキシ−1,1’−スピロ−ビス(ピロリジニウム)テトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3−エトキシ−1,1’−スピロ−ビス(ピロリジニウム)テトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3−プロピルオキシ(又はプロポキシ)−1,1’−スピロ−ビス(ピロリジニウム)テトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3−ブチルオキシ(又はブトキシ)−1,1’−スピロ−ビス(ピロリジニウム)テトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3−メトキシ−1,1’−スピロ−ビス(ピペリジニウム)テトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3−エトキシ−1,1’−スピロ−ビス(ピペリジニウム)テトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3−プロピルオキシ(又はプロポキシ)−1,1’−スピロ−ビス(ピペリジニウム)テトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3−ブチルオキシ(又はブトキシ)−1,1’−スピロ−ビス(ピペリジニウム)テトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3’−メトキシ−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムテトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3’−エトキシ−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムテトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3’−プロピルオキシ(又はプロポキシ)−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムテトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3’−ブチルオキシ(又はブトキシ)−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムテトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3−ヒドロキシ−1,1’−スピロ−ビス(ピロリジニウム)テトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3’−ヒドロキシ−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムテトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3−メトキシ−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムテトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3−エトキシ−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムテトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3−プロピルオキシ(又はプロポキシ)−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムテトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3−ブチルオキシ(又はブトキシ)−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムテトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3−ヒドロキシ−1,1’−スピロ−ビス(ピロリジニウム)テトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3’−ヒドロキシ−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムテトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
3−ヒドロキシ−1−ピペリジン−スピロ−1’−ピロリジニウムテトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
1−エチル−1−メチル−3−メトキシピロリジニウムテトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
1−エチル−1−メチル−3−エトキシピロリジニウムテトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
1−エチル−1−メチル−3−プロピルオキシ(又はプロポキシ)ピロリジニウムテトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
1−エチル−1−メチル−3−ブチルオキシ(又はブトキシ)ピロリジニウムテトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩;
1−エチル−1−メチル−3−ヒドロキシピロリジニウムテトラフルオロボレート及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩。
【0036】
中でも好ましい環状第4級アンモニウム塩として、以下のもの等が挙げられる。
3−メトキシ−1,1’−スピロ−ビス(ピロリジニウム)テトラフルオロボレート、3−ヒドロキシ−1,1’−スピロ−ビス(ピロリジニウム)テトラフルオロボレート、1−エチル−1−メチル−3−メトキシピロリジニウムテトラフルオロボレート、1−エチル−1−メチル−3−ヒドロキシピロリジニウムテトラフルオロボレート、及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩。
【0037】
中でも、特に好ましい環状第4級アンモニウム塩として、以下のもの等が挙げられる。
3−メトキシ−1,1’−スピロ−ビス(ピロリジニウム)テトラフルオロボレート、1−エチル−1−メチル−3−メトキシピロリジニウムテトラフルオロボレート、及び該化合物においてアニオンが塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)であるそれぞれの塩。
【0038】
本発明の3位に置換基を有する環状第4級アンモニウム塩は、例えば、下記一般式(4)
【0039】
【化5】

【0040】
(式中、Rは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、Rは、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシメチル基、又は炭素数1〜4のアルコキシエチル基を示し、mは1又は2を表す。)で表わされる3位に置換基を有する環状アミン(以下、3−置換環状アミンともいう)等を出発原料とし、これをハロゲン化アルキル等のアルキル化剤で4級化することにより製造することができる。
【0041】
出発原料として用いられる前記3−置換環状アミンは、公知の方法、例えば特開平2−229155号公報、Journal of Medicinal Chemistry10巻(1967年)p.1015〜1021等に記載された方法などに準じて製造することができる。
【0042】
前記3−置換環状アミンとしては、3−ピロリジノール、3−ヒドロキシピペリジン、3−メトキシピロリジン、3−エトキシピロリジン、3−メトキシピペリジン、3−エトキシピペリジン、3−ヒドロキシ―N−メチルピロリジン、3−ヒドロキシ―N−エチルピロリジン、3−ヒドロキシ―N−メチルピペリジン、3−ヒドロキシ―N−エチルピペリジン、3−メトキシ―N−メチルピロリジン、3−メトキシ―N−エチルピロリジン、3−メトキシ―N−メチルピペリジン、メトキシ―N−エチルピペリジン、3−エトキシ―N−メチルピロリジン、3−エトキシ―N−エチルピロリジン、3−エトキシ―N−メチルピペリジン、3−エトキシ―N−エチルピペリジン等が挙げられる。中でも、3−ピロリジノール、3−ヒドロキシ―N−メチルピロリジン、3−メトキシピロリジン、3−ヒドロキシピペリジン、3−メトキシピペリジン、3−メトキシ―N−メチルピロリジン、3−メトキシ―N−メチルピペリジン等が好ましく、3−ピロリジノール、3−メトキシピロリジン、3−メトキシ―N−メチルピロリジン等がより好ましい。
【0043】
前記3−置換環状アミンとアルキル化剤との反応は、適当な溶媒中で行われる。該溶媒としては、本発明の効果を妨げない限り、公知のものを広く使用できる。例えば、水;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環族炭化水素等が挙げられる。特に、2−プロパノール等の低級アルコール、トルエン等の芳香族系炭化水素等が好ましい。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上混合して使用できる。
【0044】
ハロゲン化アルキルの使用量は、前記3−置換環状アミン1モルに対し、約0.5〜5モルが好ましく、約0.9モル〜2モルがより好ましい。
前記3−置換環状アミンとアルキル化剤との反応温度は、約−30℃〜150℃が好ましく、約0℃〜100℃がより好ましい。反応時間は、数時間〜48時間程度が好ましい。
【0045】
また、前記3−置換環状アミンとアルキル化剤との反応には、触媒として塩基を用いることができる。該塩基としては、本発明の効果を妨げない限り、公知の物を広く使用できる。例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;トリエチルアミン等の三級アミン、ピリジン等の芳香族アミン;アニオン交換樹脂等が挙げられる。特に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩が好ましい。これらの触媒は、1種単独で又は2種以上混合して使用できる。
【0046】
前記3−置換環状アミンとアルキル化剤との反応によって得られる第4級アンモニウム塩は、下記一般式(1a)で表わされる化合物である。この一般式(1a)で表わされる化合物と一般式(5)で表わされる化合物との通常のアニオン交換反応により、下記一般式(1b)で表わされる化合物を製造できる。
【0047】
【化6】

【0048】
(式中、R、R、R及びmは、前記と同義である。Xは、塩素、臭素又はヨウ素を表す。)
【0049】
【化7】

【0050】
(式中、R、R、R及びmは、前記と同義である。Xは、アニオンを示す。)
前記一般式(1b)において、Xは、好ましくは、BF、Cl(塩素イオン)、Br(臭素イオン)、I(沃素イオン)、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF、又はN(CN)を表す。
【0051】
(5)
(式中、Mは、水素又は金属原子を表し、Xは、前記に同じ。)
Mで表わされる金属原子は、通常、Na、K、Li等のアルカリ金属原子、又はCa、Mg、Ba等のアルカリ土類金属原子である。好ましくはNa又はKである。
【0052】
前記一般式(1a)で表わされる化合物と一般式(5)で表わされる化合物とのアニオン交換反応は、通常、適当な溶媒中で行われる。該溶媒としては、公知のものを広く使用でき、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が好ましく挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上混合して使用できる。
【0053】
前記一般式(1a)で表わされる第4級アンモニウム塩と一般式(5)で表わされる化合物との使用割合としては、該第4級アンモニウム塩1モルに対して一般式(5)で表わされる化合物約1〜5モルが好ましく、該第4級アンモニウム塩1モルに対して一般式(5)で表わされる化合物約1〜1.5モルがさらに好ましい。
【0054】
前記一般式(1a)で表わされる4級アンモニウム塩と一般式(5)で表わされる化合物との反応は、速やかに進行するので、例えば、両者を溶媒に溶解した溶液を室温付近で1分〜24時間程度、好ましくは10分〜3時間程度攪拌放置することによって反応が行われる。また、必要に応じて、常圧下で、又は減圧下で溶媒を溜去・濃縮しながら反応を行ってもよい。
【0055】
前記各反応で得られる目的化合物は、通常の分離手段、例えば、洗浄、有機溶媒抽出、濃縮、クロマトグラフィー、再結晶等の公知の単離及び精製手段を適宜選択することにより、反応混合物から容易に単離、精製される。
【0056】
前記一般式(1a)で表わされる第4級アンモニウム塩から、例えばXがBFを示す一般式(1b)で表わされる第4級アンモニウム塩は、例えば次のように製造することができる。一般式(1a)で表わされる第4級アンモニウム塩を前記低級アルコールに溶解し、この溶液に所定量のフッ化硼素酸、フッ化硼素酸銀等のフッ化硼素塩を添加し、室温付近で30分程度放置する。反応により生成するハロゲン化水素を留去し、又はハロゲン化銀等のハロゲン化物を濾別し、濾液を減圧濃縮し、乾燥することにより、目的化合物を単離することができる。尚、ハロゲン化水素の留去には、公知の方法、例えば、Nバブリングによる留去、減圧による留去等を適用できる。
【0057】
前記一般式(1a)で表わされる第4級アンモニウム塩から、Xが例えばN(CFSOを示す一般式(1b)で表わされる第4級アンモニウム塩は、例えば、次のように製造することができる。一般式(1a)で表わされる第4級アンモニウム塩を水に溶解し、この溶液に所定量のビストリフルオロメタンスルホンイミドのアルカリ金属塩(ビストリフルオロメタンスルホンイミドのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)を添加し、約0〜25℃で30分程度放置する。生成する目的化合物を適当な溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル等)で抽出し、抽出液を水で洗浄した後、減圧濃縮し、乾燥することにより、目的化合物を単離することができる。
【0058】
前記一般式(1a)で表わされる第4級アンモニウム塩から、Xが例えばCFCOを示す一般式(1b)で表わされる第4級アンモニウム塩は、例えば、次のように製造することができる。一般式(1a)で表わされる第4級アンモニウム塩を冷水に溶解し、酸化銀を加え30分〜24時間程度攪拌したのち、不溶物をろ過し、得られた溶液に、所定量のトリフルオロ酢酸を添加し、約5℃で30分程度放置する。生成する目的化合物を減圧濃縮し、乾燥することにより、目的化合物を単離することができる。
【0059】
前記一般式(1)で表わされる3位に置換基を有する環状第4級アンモニウム塩は、約100℃以下で液状を示し、不揮発性、不燃性、高熱安定性、高イオン導電性、耐電気分解性(耐久性)などを有し、例えば、電気化学デバイス用の電解質として好適に使用することができるものである。
前記一般式(1)で表わされる3位に置換基を有する環状第4級アンモニウム塩は、公知の電気化学デバイスに使用されている電解質と同じように使用できる。本発明の環状第4級アンモニウム塩は、約100℃以下で液状を示す溶融塩であり、該塩そのものを電解液として使用することもできる。
【0060】
2.電解質組成物
前記一般式(1)で表わされる3位に置換基を有する環状第4級アンモニウム塩を含有する電解質組成物も、本発明に包含される。一般式(1)で表わされる環状第4級アンモニウム塩は、1種又は2種以上を使用することができる。電解質組成物は、液状の組成物(電解液)であってもよく、後述するようにゲル状であってもよい。好ましくは、液状の電解質組成物(電解液)である。
【0061】
前記環状第4級アンモニウム塩は、該塩そのものを電解質として使用できる。電解質組成物は、前記環状第4級アンモニウム塩のみからなるものであってもよいが、必要に応じて、環状第4級アンモニウム塩に有機溶媒、水等の溶媒を混合することができる。溶媒を使用する場合には、溶媒に環状第4級アンモニウム塩を溶解させることが好ましい。電解質組成物は、必要に応じて、本発明の効果を奏することになる限り、後述するリチウム塩等の任意の成分を含有してもよい。
【0062】
有機溶媒としては、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、リン酸エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、ラクトン化合物、鎖状エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン化合物等を挙げることができる。特に、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、ニトリル化合物、スルホン化合物が好ましく用いられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上混合して使用できる。
【0063】
前記有機溶媒媒としては、例えば、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
環状炭酸エステルとしては、エチレンカーボネート(炭酸エチレン)、プロピレンカーボネート(炭酸プロピレン)、ブチレンカーボネート(炭酸ブチレン)、ビニレンカーボネート等が好ましく挙げられ、プロピレンカーボネートがより好ましい。鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート(炭酸ジメチル)、エチルメチルカーボネート(炭酸エチルメチル)、メチル−n−プロピルカーボネート、メチル−iso−プロピルカーボネート、n−ブチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(炭酸ジエチル)、エチル−n−プロピルカーボネート、エチル−iso−プロピルカーボネート、n−ブチルエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジ−iso−プロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート等が好ましく挙げられ、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートがより好ましい。
【0064】
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル等;環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等;鎖状エーテルとしては、1,2−ジメトキシエタン等;ラクトン化合物としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等;鎖状エステルとしては、メチルプロピオネート、メチルアセテート、エチルアセテート、エチルプロピオネート、メチルホルメート等;ニトリル化合物としては、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等;アミド化合物としては、ジメチルホルムアミド等;スルホン化合物としては、スルホラン、メチルスルホラン等が好ましく挙げられる。また、これら以外に、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ化合物;N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等も使用できる。
【0065】
前記のように、これらの溶媒は1種類でも2種類以上を混合してもよく、混合有機溶媒としては、例えば、環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステル、鎖状炭酸カーボネート同士、スルホラン化合物同士を挙げることができる。環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルとしては、例えば、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネート等が好ましく挙げられる。鎖状炭酸カーボネート同士としては、例えば、ジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート等が好ましく挙げられる。スルホラン化合物同士としては、例えば、スルホランとメチルスルホラン等が好ましく挙げられる。特に、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート等がより好ましく用いられる。
【0066】
前記環状第4級アンモニウム塩に有機溶媒等の溶媒を混合した液状の電解質組成物を、電気化学デバイス用電解液として使用する場合、電解質として使用される環状第4級アンモニウム塩濃度は、用途等に応じて適宜設定すればよい。例えば、通常0.1〜5mol/Lであり、より好ましくは約0.5〜2mol/Lである。
【0067】
本発明の電解質組成物は、電気エネルギー又は光エネルギーを物理的な作用又は化学的な作用により蓄積できる電気化学デバイスの電解質又は電解液として好適に使用できる。電気化学デバイスとしては、例えば、電気二重層キャパシタ、リチウム電池(リチウムイオン電池及びリチウム金属電池)等の非水電解質電池、光電変換装置(光電変換素子、光化学電池等)、エレクトロクロミック素子、コンデンサ等に好適に使用できる。中でも特に、電気二重層キャパシタ、リチウム電池(好ましくはリチウム二次電池)、光電変換装置用の電解質又は電解液として好適である。
【0068】
3.電気二重層キャパシタ
(電気二重層キャパシタ用電解質組成物)
前記一般式(1)で表わされる環状第4級アンモニウム塩を含有する電解質組成物を用いて、電気二重層キャパシタ用電解液を好適に調製することができる。前記電解質組成物を用いた電気二重層キャパシタ用電解液及び電気二重層キャパシタも、本発明に包含される。
【0069】
前記環状第4級アンモニウム塩を使用すると、不揮発性、不燃性、高熱安定性、高イオン導電性を示す電解質組成物とすることができる。また、該電解質組成物を使用すると、驚くべきことに、エネルギー密度が高く、耐電気分解性(耐久性)に優れた電気二重層キャパシタを得ることができる。
【0070】
前記一般式(1)で表わされる環状第4級アンモニウム塩は、塩自体が液体の場合はそれ自体、電気二重層用電解液として使用できるが、上述した有機溶媒等と混合して使用してもよい。電気二重層キャパシタに用いられる電解質組成物は、前記環状第4級アンモニウム塩のみからなるものであってもよいが、前記環状第4級アンモニウム塩及び有機溶媒を含有していることが好ましい。好ましい有機溶媒は、前述した環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、ニトリル化合物等である。電気二重層キャパシタ用電解液は、本発明の効果を奏する限り、前記一般式(1)で表わされる環状第4級アンモニウム塩及び有機溶媒以外の成分を含んでもよい。
【0071】
電気二重層キャパシタ用電解液における一般式(1)で表わされる環状第4級アンモニウム塩の含有量は、通常、該電解液に対して約0.1〜5mol/Lであることが好ましく、約0.5〜2mol/Lであることがより好ましい。このような範囲であると、本発明の効果をより充分に奏することができるため好ましい。
【0072】
(電気二重層キャパシタの作製)
電気二重層キャパシタとしては、缶体中に電極を積層して収納されてなる積層(ラミネート)型、捲回して収納されてなる捲回型、又は絶縁性のガスケットにより電気的に絶縁された金属製缶からなるコイン型と称されるもののいずれにも使用できる。またこれらの形状に限定されるものではない。以下、一例としてラミネート型電気二重層キャパシタの構造について説明する。
【0073】
図1及び図2は、ラミネート型電気二重層キャパシタを示す図面である。電極3とアルミタブ1が接着されていて、セパレータ4を介して対向配置され、ラミネート容器体2に収納されている。電極は、活性炭等の炭素材料からなる分極性電極部分と、集電体部分とからなる。ラミネート容器体2は、熱圧着により密封し、容器外部からの水分や空気が侵入しないようになっている。
【0074】
分極性電極材料は、比表面積が大きく、電気伝導性が高い材料であることが好ましく、また使用する印加電圧の範囲内で電解液に対して電気化学的に安定であることが必要である。このような材料としては、例えば、炭素材料、金属酸化物材料、導電性高分子材料等を挙げることができる。コストを考慮すると、分極性電極材料は、炭素材料であるのが好ましい。
【0075】
炭素材料としては、活性炭材料が好ましく、具体的には、おがくず活性炭、やしがら活性炭、ピッチ・コークス系活性炭、フェノール樹脂系活性炭、ポリアクリロニトリル系活性炭、セルロース系活性炭等を挙げることができる。
【0076】
金属酸化物系材料としては、例えば、酸化ルテニウム、酸化マンガン、酸化コバルト等を挙げることができる。導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン膜、ポリピロール膜、ポリチオフェン膜、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)膜等を挙げることができる。
【0077】
電極は、前記分極性電極材料をPTFE等の結着剤と共に混練し、加圧成型したものを導電性接着剤でアルミニウム箔等の集電体に結着させるか、又は前記分極性電極材料を結着剤と共にCMC等の増粘剤もしくは、ピロリドン等の有機溶剤に混合し、ペースト状にしたものをアルミニウム箔等の集電体に塗工後、乾燥して得ることができる。
【0078】
セパレータとしては、電子絶縁性が高く、電解液の濡れ性に優れイオン透過性が高いものが好ましく、また、印加電圧範囲内において電気化学的に安定である必要がある。セパレータの材質は、特に限定は無いが、レーヨンやマニラ麻等からなる抄紙、ポリオレフィン系多孔質フィルム、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布等が好適に用いられる。
【0079】
4.非水電解質電池
前記第4級アンモニウム塩を含有する電解質組成物は、非水電解質電池の電解質又は電解液として好適に用いられる、例えは、リチウム塩を含有することにより、リチウムイオン電池、及びリチウム金属電池(一次電池及び二次電池)等の非水電解質電池の電解質組成物として好適なものとなる。前記電解質組成物を用いたリチウムイオン電池用電解質組成物、及びリチウム金属電池用電解質組成物も、本発明に包含される。前記電解質組成物を用いたリチウムイオン電池及びリチウム金属電池も、本発明に包含される。
【0080】
4.1 リチウムイオン電池
(リチウムイオン電池用電解質組成物)
リチウムイオン電池及びリチウム金属電池に用いられる電解質組成物は、前記環状第4級アンモニウム塩と共に、有機溶媒及びリチウム塩を含有していることが好ましい。また、電解質組成物は、液状の電解質組成物(電解液)であることが好ましい。
【0081】
有機溶媒としては、上述した有機溶媒等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して用いることができる。中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ブチレン、γ−ブチロラクトン等が好ましい。
【0082】
リチウムイオン電池用電解質組成物における一般式(1)で表わされる環状第4級アンモニウム塩の含有量は、通常、液状の電解質組成物に対して約0.1〜5mol/Lであることが好ましく、約0.5〜2mol/Lであることがより好ましい。このような範囲であると、本発明の効果をより充分に奏することができるため好ましい。
【0083】
リチウム塩としては、例えば、LiAsF、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(FSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiB(C、LiCHSO、LiCFSO、LiC(CFSO、LiAlCl、LiSiF、LiCl、LiBr等が挙げられる。リチウム塩は、いずれか1種又は2種以上を混合して用いてもよい。中でも、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(FSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO等が好ましい。
【0084】
電解質組成物におけるリチウム塩の含有量は、該電解質組成物に対して約0.5mol/L以上3mol/L以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、高いイオン伝導度を維持でき、十分な電池特性が得られる。より好ましくは、リチウム塩の含有量は、電解質組成物に対して約0.5mol/L以上1.5mol/L以下である。前記リチウム塩の添加量は、通常、液状の電解質組成物(電解液)に対する量である。
【0085】
前記環状第4級アンモニウム塩を電解質として使用する場合、液状の電解質組成物(電解液)に高分子化合物(ポリマー)添加、オイルゲル化剤添加、多官能モノマー類の重合、ポリマーの架橋反応等の手法によりゲル化(固体化)させて使用してもよい。このため電解質組成物は、高分子化合物、オイルゲル化剤、多官能モノマー等の重合性化合物、重合開始剤等を含んでいてもよい。
【0086】
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンの共重合体(例えば、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネート等が挙げられる。特に、電気化学的安定性の点からは、高い電池特性を得ることができるため、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンの共重合体またはポリエチレンオキサイドの構造を持つ高分子化合物を用いることが好ましい。中でも、ポリフッ化ビニリデン、又はフッ化ビニリデンの共重合体が好ましく、その共重合体モノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン等が、高い電池特性を得ることができるので好ましく、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体が特に好ましい。
前記電解質組成物に対する高分子化合物の添加量は両者の相溶性によっても異なるが、通常、液状の電解質組成物の約5質量%〜50質量%に相当する高分子化合物を添加することが好ましい。
【0087】
多官能モノマー類としては、重合反応により上述した高分子化合物を形成できる化合物であればよく、特に限定されない。多官能モノマー類は、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物であることが好ましく、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
ゲル状の電解質組成物は前記多官能モノマー類の他に単官能モノマーを含む混合物の重合によって形成してもよい。単官能モノマーとしては、アクリル酸若しくはα−アルキルアクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等)又はそれらのエステル若しくはアミド(メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、3−ペンチルアクリレート、t−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2,2−ジメチルブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、4−メチル−2−プロピルペンチルアクリレート、セチルアクリレート、n−オクタデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、ベンジルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−メトキシエトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、2−メチル−2−ニトロプロピルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、t−ペンチルメタクリレート、n−オクタデシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−メトキシエトキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、エチレングリコールエチルカーボネートメタクリレート、2−イソボルニルメタクリレート、2−ノルボルニルメチルメタクリレート、5−ノルボルネン−2−イルメチルメタクリレート、3−メチル−2−ノルボニルメチルメタクリレート、アクリルアミド、N−i−プロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル等)、マレイン酸若しくはフマル酸又はそれらから誘導されるエステル類(マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル等)、p−スチレンスルホン酸のナトリウム塩、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジエン類(ブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン等)、芳香族ビニル化合物(スチレン、p−クロロスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等)、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、メタクリルスルホン酸ナトリウム、ビニリデンフルオライド、ビニリデンクロライド、ビニルアルキルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン、N−フェニルマレイミド等が使用可能である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
モノマー総量に占める多官能モノマーの質量組成は、好ましくは約0.5〜70質量%、より好ましくは約1〜50質量%である。
【0090】
多官能モノマー類の重合によって電解質組成物をゲル化してゲル電解質とする場合、前述のモノマーは、通常、一般的な高分子合成法であるラジカル重合によって重合することができる。本発明で使用するゲル状の電解質組成物用モノマーは、通常、加熱、光又は電子線によって、又は電気化学的にラジカル重合させることができるものである。重合方法は、本発明の効果を奏することになる限り特に限定されない。重合開始剤は、通常使用されるものを用いることができる。
【0091】
ゲル電解質に占めるモノマーの質量組成範囲は、好ましくは約0.5〜70質量%、より好ましくは約1〜50質量%である。
【0092】
ポリマーの架橋反応により電解質組成物をゲル化させる場合は、通常、電解質組成物に架橋可能な反応性基を有するポリマー及び架橋剤を添加して架橋反応を行う。好ましい反応性基は、ピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環等の含窒素複素環である。好ましい架橋剤は、窒素原子が求核攻撃できる官能基を2つ以上有する化合物(求電子剤)であり、例えば2官能以上のハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、スルホン酸エステル、酸無水物、酸クロライド、イソシアネート等である。
【0093】
(リチウムイオン電池の作製)
本発明におけるリチウムイオン電池は、負極の容量が電極反応物質であるリチウムの吸蔵及び放出による容量成分により表わされる二次電池であり、通常、フィルム状の外装部材の内部に正極及び負極と共に前記非水電解質を備えたものである。本発明のリチウムイオン電池として、例えば、正極リード及び負極リードが取り付けられた巻回電極体をフィルム状の外装部材の内部に収納した構成を有しているものが挙げられる。
【0094】
図3は、本発明の一例であるラミネート型のリチウムイオン電池の構成を模式的に表す図である。
正極リード(11)及び負極リード(12)は、それぞれ例えば短冊状であり、外装部材(31)の内部から外部に向かい例えば同一方向にそれぞれ導出されている。正極リード(11)は、例えばアルミニウム(Al)等の金属材料により構成されており、負極リード(12)は、例えばニッケル(Ni)等の金属材料により構成されている。
【0095】
外装部材(31)は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔及びポリプロピレンフィルムをこの順に張り合わせた矩形状のラミネートフィルムにより構成されていることが好ましい。外装部材(31)は、例えば、ポリプロピレンフィルム側と巻回電極体(20)とが対向するように配設されており、通常各外縁部が融着又は接着剤により互いに密着されている。
【0096】
外装部材(31)と正極リード(11)及び負極リード(12)との間には、正極リード及び負極リードと、外装部材の内側との密着性を向上させ、外気の侵入を防止するための密着フィルム(32)が挿入されていることが好ましい。密着フィルム(32)は、通常、正極リード(11)及び負極リード(12)に対して密着性を有する材料により構成され、例えば、正極リード及び負極リードが上述した金属材料により構成される場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレン又は変性ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂により構成されることが好ましい。
【0097】
図3に示した巻回電極体(20)のII−II線に沿った断面構造の一例を、図4に示す。
巻回電極体(20)は、正極(21)と負極(22)とをセパレータ(23)を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は、通常保護テープ(24)により保護されている。
【0098】
正極(21)は、例えば、正極集電体(21A)と、この正極集電体(21A)の両面又は片面に設けられた正極活物質層(21B)とを有していることが好ましい。正極集電体(21A)には、例えば長手方向における一方の端部に正極活物質層(21B)が設けらず露出している部分があり、通常、この露出部分に正極リード(11)が取り付けられている。
正極集電体(21A)は、例えば、アルミニウム等の金属材料により構成されていることが好ましい。
【0099】
正極活物質層(21B)は、例えば、正極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵及び放出することが可能な正極材料の1種又は2種以上を含んで構成されていることが好ましい。リチウムを吸蔵及び放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物、リチウムを含む層間化合物等のリチウム含有化合物が好適であり、2種以上を混合して用いてもよい。特に、エネルギー密度を高くするには、一般式LiMIO又はLiMIIPOで表されるリチウム複合酸化物又はリチウムリン酸化物が好ましい。なお、式中、MI及びMIIは1種類以上の遷移金属を表し、例えば、コバルト(Co)、ニッケル、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、アルミニウム、バナジウム(V)、チタン(Ti)及びジルコニウム(Zr)のうちの少なくとも1種であることが好ましい。x及びyの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.1、0.05≦y≦1.1の範囲内の値である。LiMIOで表されるリチウム複合酸化物の具体例としては、LiCoO、LiNiO、LiNi0.5Co0.5、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、又はスピネル型結晶構造を有するLiMn等が挙げられる。また、LiMIIPOで表されるリチウムリン酸化物の具体例としては、LiFePO、LiFe0.5Mn0.5PO等が挙げられる。
【0100】
正極活物質層(21B)は、また、例えば導電剤を含んでおり、必要に応じて更に結着剤を含んでいてもよい。導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、ケッチェンブラック等の炭素材料が挙げられ、1種又は2種以上が混合して用いられる。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料又は導電性高分子材料等を用いてもよい。結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等の合成ゴム;ポリフッ化ビニリデン等の高分子材料が好適であり、1種又は2種以上が混合して用いられる。
【0101】
負極(22)は、例えば、正極(21)と同様に、負極集電体(22A)と、この負極集電体(22A)の両面あるいは片面に設けられた負極活物質層(22B)とを有していることが好ましい。負極集電体(22A)には、例えば長手方向における一方の端部に負極活物質層(22B)が設けられず露出している部分があり、通常、この露出部分に負極リード(12)が取り付けられている。負極集電体(22A)は、例えば、銅(Cu)等の金属材料により構成されていることが好ましい。
【0102】
負極活物質層(22B)は、例えば、負極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料のいずれか1種又は2種以上を含んで構成されていることが好ましく、必要に応じて、例えば正極活物質層(21B)と同様の結着剤を含んでいてもよい。
【0103】
リチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料としては、例えば、黒鉛、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素等の炭素材料が好適である。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好な充放電サイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、質量あたりの容量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。
【0104】
リチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料としては、また、リチウムを吸蔵及び放出することが可能であり、金属元素及び半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができる。この負極材料は、金属元素又は半金属元素の単体、合金及び化合物のいずれであってもよく、またこれらの1種又は2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもあってもよい。なお、本発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物又はそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0105】
この負極材料を構成する金属元素又は半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成可能なマグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)又は白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0106】
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素又は半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましくはケイ素及びスズの少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素及びスズは、リチウムを吸蔵及び放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるため好ましい。
【0107】
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン(Sb)及びクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン及びクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0108】
スズの化合物又はケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)又は炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ又はケイ素に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0109】
リチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料としては、更に、他の金属化合物又は高分子材料も挙げられる。他の金属化合物としては、酸化鉄、酸化ルテニウム又は酸化モリブデン等の酸化物、又はLiN等が挙げられる。高分子材料としてはポリアセチレン等が挙げられる。
【0110】
また、負極(22)には、前述したようなリチウムを吸蔵及び放出することが可能な材料の他に、金属リチウムを用いてもよい。具体的には、例えば金属リチウムを集電体に圧着して負極としてもよい。
【0111】
セパレータ(23)は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂製の多孔質膜、又はセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜はショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、約100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れているので、セパレータを構成する材料として好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であればポリエチレン又はポリプロピレンと共重合させたり、又はブレンド化することで用いることができる。
【0112】
本発明におけるリチウムイオン電池(二次電池)は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、例えば、正極活物質と結着剤と導電剤とを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させることにより正極合剤スラリーを作製する。次いで、この正極合剤スラリーを正極集電体(21A)の両面又は片面に塗布し乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層(21B)を形成し正極(21)を作製する。続いて、例えば、正極集電体(21B)に正極リード(11)を、例えば超音波溶接又はスポット溶接により接合する。
【0113】
また、例えば、負極活物質と結着剤とを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させることにより負極合剤スラリーを作製する。次いで、この負極合剤スラリーを負極集電体(22A)の両面又は片面に塗布し乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層(22B)を形成し、負極(22)を作製する。続いて、負極集電体(22A)に負極リード(12)を、例えば超音波溶接又はスポット溶接により接合する。
【0114】
次いで、正極(21)と負極(22)とをセパレータ(23)を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ(24)を接着して巻回電極体(20)を形成する。
次いで、この巻回電極体(20)を外装部材(31)で挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材(31)の内部に収納する。続いて、前記電解質組成物を電解液として外装部材(31)の内部に注入する。
電解質組成物を注入したのち、外装部材(31)の開口部を真空雰囲気下で熱融着等により密閉させ電池を組み立てる。その際、正極リード(11)及び負極リード(12)と外装部材(31)との間には密着フィルム(32)を挿入することが好ましい。このようにして、フィルム状の外装部材の内部に正極及び負極と共に前記電解質組成物質を備えたリチウムイオン電池が製造される。
【0115】
4.2 リチウム金属電池(リチウム金属一次、二次電池)
(リチウム金属一次、二次電池の作製)
本発明の電解質組成物は、前述のようなリチウムイオン二次電池の他に、リチウム金属電池に用いることもできる。前記電解質組成物を用いたリチウム金属電池も、本発明に包含される。リチウム金属電池に用いられる電解質組成物及びその好ましい態様は、前述したリチウムイオン電池用電解質組成物と同じである。
リチウム金属電池は、例えば次のような方法によって作製することができる。
【0116】
正極には、通常、二酸化マンガンを活物質とする正極を使用することができる。具体的には、活物質である二酸化マンガンと、導電助剤と、バインダーとを含有する正極合剤層を、正極集電体の片面又は両面に形成した構成の正極等を使用することができる。導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、鱗片状黒鉛、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、繊維状炭素等が用いられ、バインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンラバー等が用いられる。
【0117】
二酸化マンガン正極の作製にあたっては、例えば、二酸化マンガンと導電助剤とバインダーとを混合して調製した正極合剤を水又は有機溶剤に分散させてペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を調製し、その正極合剤含有組成物を集電体に塗布し、乾燥した後、加圧成形する方法が好適に採用できる。
【0118】
正極集電体には、ステンレス鋼製のものを使用することが好ましい。具体的には、例えば、SUS316、SUS430、SUS444等のステンレス鋼製の金属箔、エキスパンドメタル、平織り金網等が使用できる。正極集電体の厚みは、例えば、約5〜200μmであることが好ましい。
【0119】
負極には、リチウム(金属リチウム)、又はリチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−ビスマス、リチウム−インジウム、リチウム−ガリウム、リチウム−インジウム−ガリウム等のリチウム合金で構成されるものを用いることが好ましい。具体的には、これらのリチウム又はリチウム合金を、集電体に圧着して負極としてもよい。リチウム合金の場合、リチウムの含有量が約90質量%以上であることが好ましい。また、リチウムとリチウム合金とを併用して負極を構成してもよい。負極に係るリチウムやリチウム合金を含有する負極剤層の厚みは、例えば、約20〜200μmであることが好ましい。
【0120】
負極集電体としては、銅製又は銅合金製の金属箔、金属網等が好適に使用できる。負極集電体の厚みは、例えば、約5〜50μmであることが好ましい。
【0121】
本発明のリチウム金属電池におけるセパレータとしては、従来公知のリチウム金属電池で使用されているセパレータ、すなわち、微孔性樹脂フィルムからなるセパレータ、樹脂不織布からなるセパレータ等が使用できる。その材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンの他、耐熱用として、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)等のフッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。また、前記材質の微孔性フィルムと不織布とを複数積層するか、又は微孔性フィルム同士や不織布同士を複数積層することによって構成される複層構造のセパレータを用いることにより、高温環境下で使用する場合の信頼性を高めることもできる。
【0122】
セパレータの厚みは、例えば、約10〜500μmであることが好ましい。また、セパレータの空孔率は、好ましくは約20%以上90%以下である。
【0123】
電池の組み立てはリチウムイオン電池と同様にして行うことができる。通常、正極と負極とをセパレータを介して積層して巻回し、最外周部に保護テープを接着して巻回電極体を形成する。次いで、この巻回体を外装部材で挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材の内部に収納する。続いて、前記電解質組成物を電解液として外装部材の内部に注入する。前記電解質組成物を注入したのち、外装部材の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密閉し電池を組み立てる。このように、外装部材の内部に正極及び負極と共に前記電解質組成物を備えるリチウム金属電池が製造される。
【0124】
前記ではラミネートタイプの電池形態について説明しているが、本発明のリチウムイオン電池及びリチウム金属電池の形態はそれに限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、後述する実施例では、正極及び負極を巻回する場合について説明したが、正極と負極とを複数積層するようにしてもよく、また、折り畳むようにしてもよい。更に、本発明は、円筒型、角型、コイン型、ボタン型等の形状を有する電池にも適用することができる。
【0125】
また、前記では、電解質組成物をそのまま電解液として電池に用いる場合について説明したが、液状の電解質組成物を上述した高分子化合物等の保持体に保持させて、いわゆるゲル状とするようにしてもよい。
【0126】
リチウムイオン電池及びリチウム金属電池の製造において前記電解質組成物を適用する方法及び手順は、上述したものに限定されるものではない。上述したように正極、負極及びセパレータを有する発電要素をまず組立て、前記電解質組成物を注液してもよく、また、正極又は負極に前記電解質組成物を含浸(場合によっては含浸後ゲル化)後、発電要素を組み立ててもよい。注液法としては、常圧で注液してもよく、真空含浸方法、加圧含浸方法を使用してもよい。
【0127】
ゲル状の電解質組成物を電池に使用する場合は、例えば、上述したように正極、負極及びセパレータを有する発電要素をまず組立て、電解質組成物を外装部材の内部に注液した後に高分子化合物を添加してゲル状としてもよい。また、高分子化合物の原料である重合性の化合物と重合開始剤とを電解質組成物に添加し、外装部材内部に電解質組成物を注液後に該化合物を重合させて電解質組成物をゲル状としてもよい。また、電解質組成物と高分子化合物を混合したものを電極に塗布した後に、発電要素を組み立ててもよい。
【0128】
5.光電変換装置
本発明の電解質組成物は、光電変換装置用の電解質組成物として好適なものである。電解質組成物は、好ましくは、液状の電解質組成物(電解液)である。光電変換装置としては、光電変換素子、光化学電池(好ましくは半導体を用いる光化学電池)等が好適である。前記電解質組成物を用いた光電変換装置用電解質組成物も、本発明に包含される。前記電解質組成物を用いた光電変換素子、光化学電池等の光電変換装置も、本発明に包含される。
【0129】
5.1光電変換素子
(光電変換装置用電解質組成物)
前記電解質組成物を光電変換素子に用いる場合、電解質組成物は前記一般式(1)で表わされる環状第4級アンモニウム塩以外の塩1種又は2種以上を含んでいてもよい。一般式(1)で表わされる環状第4級アンモニウム塩以外の塩としては、ヨウ素塩が好ましい。一般式(1)で表わされる環状第4級アンモニウム塩以外のヨウ素塩として、例えば第四級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩又はホスホニウム塩等のヨウ素塩等が挙げられる。
【0130】
前記電解質組成物を光電変換素子に用いる場合、前記一般式(1)で表わされる環状第4級アンモニウム塩は、ヨウ素塩であることが好ましい。例えば、一般式(1)で表わされる環状第4級アンモニウム塩がヨウ素塩である場合、電解質組成物は更にヨウ素塩以外の塩を含有していてもよい。また、ヨウ化物イオンを含む前記一般式(1)で表わされる環状第4級アンモニウム塩と、他のアニオンを含む前記一般式(1)で表わされる環状第4級アンモニウム塩又は前記一般式(1)で表わされる化合物以外で他のアニオン、例えばハロゲン(Cl、Br等)、N(CFSO、N(CFCFSO、N(FSO、C(CFSO、BF、BPh、PF、ClO、R−COO、R−SO、SCN等を含む第四級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩又はホスホニウム塩等を併用してもよい。前記R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜12の直鎖のアルキル基を表す。
【0131】
前記電解質組成物を光電変換素子や光化学電池に用いる場合、電解質組成物は通常、可逆的な酸化還元対を含有する。このような酸化還元対としてはI/I系、Br/Br系、キノン/ハイドロキノン系、金属錯体などが挙げられる。このような酸化還元対は従来公知の方法によって得ることができる。例えばI/I系の酸化還元対は、前記一般式(1)においてXがヨウ化物イオンの場合、前記一般式(1)で表わされるヨウ化物にヨウ素を溶解することによって得ることができる。前記一般式(1)においてXがヨウ化物イオン以外の場合、前記一般式(1)で表わされる環状第4級アンモニウム塩に、ヨウ化物(金属ヨウ化物、4級アンモニウム塩のヨウ素塩など)とヨウ素を溶解することによって、I/I系の酸化還元対を含む電解質組成物を得ることができる。いずれの場合においても、ヨウ化物とヨウ素とのモル比は、好ましくは約100:1〜2:1、更に好ましくは約50:1〜5:1である。
【0132】
光電変換装置用電解質組成物における一般式(1)で表わされる環状第4級アンモニウム塩の含有量は、通常、液状の電解質組成物に対して約0.1〜5mol/Lであることが好ましく、約0.5〜2mol/Lであることがより好ましい。このような範囲であると、本発明の効果をより充分に奏することができるため好ましい。
【0133】
前記電解質組成物は、前述したように溶媒を含んでいてもよい。電解質組成物の溶媒含有量は、通常、組成物全体の約50質量%以下、好ましくは約30質量%以下、更に好ましくは約10質量%以下である。
【0134】
溶媒としては、低粘度でイオン移動度が高いか、高誘電率で有効キャリアー濃度を高めることができるか、又はその両方であるために優れたイオン伝導性を発現できるものが好ましい。このような溶媒としてカーボネート化合物(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、複素環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン等)、エーテル化合物(ジオキサン、ジエチルエーテル等)、鎖状エーテル類(エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ビスシアノエチルエーテル等)、エステル類(カルボン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等)、非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等)、水等が挙げられる。これらの溶媒は二種以上を混合して用いてもよい。
【0135】
前記電解質組成物は、上述したように、高分子化合物(ポリマー)添加、オイルゲル化剤添加、多官能モノマー類の重合、ポリマーの架橋反応等の手法によりゲル化(固体化)させて使用してもよい。このため光電変換素子用電解質組成物は、前述した高分子化合物、オイルゲル化剤、多官能モノマー、重合開始剤等を含んでいてもよい。
【0136】
高分子化合物添加によりゲル化させる場合、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン等を添加してゲル化させることができる。
多官能モノマー類の重合によって電解質組成物をゲル化してゲル電解質とする場合、ゲル電解質の製造方法は、電解質組成物に多官能モノマー類、重合開始剤、及び溶媒を加えた溶液を調製し、該溶液を用いてキャスト法、塗布法、浸漬法、含浸法等の方法により電極上に電解質層を形成し、その後多官能モノマーのラジカル重合によってゲル化させる方法が好ましい。ゲル状の電解質組成物の製造方法は、前述したものと同様であり、多官能モノマー等も前述したものと同様である。
【0137】
前述のモノマーは、通常、一般的な高分子合成法であるラジカル重合によって重合することができる。本発明で使用するゲル状の電解質組成物形成用モノマーは、通常、加熱、光又は電子線によって、又は電気化学的にラジカル重合させることができるものである。特に色素の分解が起こり難いことや、均一な重合が可能であることから加熱によってラジカル重合させるのが好ましい。この場合、好ましく使用できる重合開始剤は、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系開始剤;ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオクトエート等の過酸化物系開始剤等である。重合開始剤の好ましい添加量は、好ましくはモノマー総量に対し約0.01〜20質量%であり、より好ましくは約0.1〜10質量%である。
【0138】
本発明では、電解質組成物にt−ブチルピリジン、2−ピコリン、2,6−ルチジン等の塩基性化合物を添加してもよい。
【0139】
(光電変換素子の作製)
光電変換素子として、例えば、導電層と感光層とからなる光電極、電荷輸送層及び対極を有する光電変換素子において、前記電荷輸送層が前記電解質組成物を含有する光電変換素子等が好ましい。
【0140】
図5は、本発明の一例である光電変換素子及び光化学電池の構造の一例を示す図である。
本発明の光電変換素子(46)は、導電層(41)及び感光層(42)を有する光電極、電荷輸送層(43)及び対極(44)を有し、電荷輸送層(43)に前記本発明の電解質組成物を含有する。好ましくは図5に示すように、導電層(41)と感光層(42)とを有する光電極、電荷輸送層(43)、及び対極導電層(44)がこの順に積層され、感光層(42)が色素によって増感された半導体微粒子と当該半導体微粒子の間の空隙に充填された電解質とから構成されている光電変換素子である。電解質は、電荷輸送層(43)に用いる材料と同じ成分からなることが好ましい。また光電変換素子に強度を付与するために、導電層(41)側及び/又は対極導電層(44)側に基板を設けてもよい。以下、本明細書では、導電層(41)及び任意に設ける基板からなる層を「導電性支持体」、対極導電層(44)及び任意に設ける基板からなる層を「対極」と呼ぶ。スペーサー(45)を介して、光電極と対極とを積層することにより形成した隙間に電荷輸送層(43)を形成してもよい。スペーサーとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができる。この光電変換素子を外部回路に接続して仕事をさせるようにしたものが光化学電池である。なお、導電層(41)、対極導電層(44)、及び基板は、それぞれ透明導電層、透明対極導電層、及び透明基板であってもよい。
【0141】
図5に示す本発明の一態様の光電変換素子(46)において、色素により増感された半導体微粒子を含む感光層(42)に入射した光は色素等を励起し、励起された色素等中の高エネルギーの電子が半導体微粒子の伝導帯に渡され、更に拡散により導電層(41)に到達する。このとき色素等の分子は酸化体となっている。光化学電池においては、導電層(41)中の電子が外部回路で仕事をしながら対極導電層(44)及び電荷輸送層(43)を経て色素等の酸化体に戻り、色素が再生する。感光層(42)は負極として働く。以下各層について詳細に説明する。
【0142】
(A)導電性支持体
導電性支持体は、通常、(i)導電層の単層又は(ii)導電層及び基板の2層からなる。強度や密封性が十分に保たれるような導電層を使用すれば、基板は必ずしも必要でない。
【0143】
(i)の場合、導電層として金属のように十分な強度が得られ、且つ導電性があるものを導電性支持体として用いることが好ましい。
(ii)の場合、通常、導電剤を含有する導電層を感光層側に有する基板を使用することができる。好ましい導電剤としては、金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、二酸化スズにフッ素をドープしたもの等)等が挙げられる。導電層の厚さは、0.02〜10μm程度が好ましい。
【0144】
導電性支持体は、表面抵抗が低い程よい。表面抵抗は、好ましくは約100Ω/□以下であり、より好ましくは約40Ω/□以下である。表面抵抗の下限に特に制限はないが、通常0.1Ω/□程度である。
【0145】
導電性支持体側から光を照射する場合には、導電性支持体は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは、通常、光透過率が約10%以上であることを意味する。光透過率は、好ましくは約50%以上、より好ましくは約70%以上である。
【0146】
透明導電性支持体としては、ガラス又はプラスチック等の透明基板の表面に導電性金属酸化物からなる透明導電層を塗布又は蒸着等により形成したものが好ましい。中でもフッ素をドーピングした二酸化スズからなる導電層を低コストのソーダ石灰フロートガラスでできた透明基板上に堆積した導電性ガラス等が好ましい。また低コストでフレキシブルな光電変換素子又は太陽電池とするには、透明ポリマーフィルムに導電層を設けたものを用いることが好ましい。透明ポリマーフィルムの材料としては、例えば、テトラアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエステルスルホン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン等が使用可能である。
【0147】
透明導電性支持体の抵抗を下げる目的で、透明基板上にアルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属材料又はカーボンからなるリードを設け、その上にフッ素をドープした酸化スズ、ITO膜等からなる透明導電層を設けることができる。金属リードを透明基板上に設ける方法としては蒸着、スパッタリング、スクリーン印刷、電解メッキ、無電解メッキ等が挙げられる。
【0148】
(B)感光層
本発明の光電変換素子において、感光層は、色素によって増感された微粒子半導体を含有することが好ましい。半導体はいわゆる感光体として作用し、光を吸収して電荷分離を行い電子と正孔を生ずる。色素増感された半導体微粒子においては、光吸収及びこれによる電子及び正孔の発生は主として色素で起こり、半導体微粒子はこの電子を受け取り伝達する役割を担う。
【0149】
(B−1)半導体微粒子
半導体微粒子としてはシリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、III−V系化合物半導体、金属カルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)、ペロブスカイト構造を有する化合物(例えばチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等)等が使用できる。本発明で使用する半導体微粒子は、金属カルコゲニド微粒子からなるもの等が好ましい。
【0150】
金属カルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ又はタンタルの酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン又はビスマスの硫化物;カドミウム又は鉛のセレン化物;カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物;ガリウム−ヒ素又は銅−インジウムのセレン化物;銅−インジウムの硫化物等が挙げられる。
【0151】
本発明に用いる半導体は、好ましくはSi、TiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、ZnS、PbS、Bi、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS又はCuInSeである。より好ましくはTiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、PbS、CdSe、InP、GaAs、CuInS又はCuInSeであり、さらに好ましくはTiO又はNbであり、最も好ましくはTiOである。
本発明で用いる半導体は単結晶でも多結晶でもよい。
【0152】
半導体微粒子の粒径は、一般にnm〜μmのオーダーである。本発明において、微粒子の投影面積を円に換算したときの直径から求めた一次粒子平均粒径は、約5〜200nmであることが好ましく、約8〜100nmであることがより好ましい。
粒径分布の異なる2種類以上の微粒子を混合してもよい。
【0153】
(B−2)半導体微粒子層
半導体微粒子を導電性支持体上に塗布する際には、半導体微粒子の分散液又はコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法に加え、ゾル−ゲル法等を使用することができる。
半導体微粒子層の形成方法は特に限定されないが、光電変換素子の量産化、半導体微粒子分散液又はコロイド溶液の物性、導電性支持体の融通性等を考慮すると、湿式製膜方法が好ましい。湿式製膜方法としては塗布法及び印刷法が代表的である。
【0154】
半導体微粒子の分散液を作製する方法としては、ゾル−ゲル法、乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法等が挙げられる。
【0155】
分散媒としては、水又は各種の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が使用可能である。分散する際には、分散助剤としてポリマー、界面活性剤、酸、キレート剤(アセチルアセトン)等を必要に応じて用いてもよい。
【0156】
塗布方法としては、ローラ法、ディップ法、キャスト法、エアーナイフ法、ブレード法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン等の印刷等が利用できる。以上の方法の中から、分散液の粘度や塗付厚さ等に応じて好ましい塗付方法を選択すればよい。
【0157】
半導体微粒子層は単層であってもよく、多層であってもよい。例えば、粒径の異なる半導体微粒子分散液を多層塗布したり、異なる種類の半導体微粒子(又は異なるバインダー、添加剤等)を含有する層を多層塗布したりすることもできる。一度の塗布では膜厚が不足する場合にも、多層塗布は有効である。また、多層塗布する場合は、同時に多数の層を塗布してもよく、数回から十数回順次重ね塗りしてもよい。順次重ね塗りする場合には、スクリーン印刷法、スプレー法等が好ましく使用できる。
【0158】
一般に、半導体微粒子層の厚さ(感光層の厚さと同じ)が厚くなるほど、単位投影面積当たりの色素担持量が増えるため光の捕獲率が高くなるが、生成した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。従って、半導体微粒子層の好ましい厚さは約0.1〜100μmである。特に、光化学電池に用いる場合、半導体微粒子層の厚さは約1〜30μmであることが好ましく、約2〜25μmであることがより好ましい。支持体1m当たりの半導体微粒子塗布量は、約0.5〜400gとすることが好ましく、約5〜100gとすることがより好ましい。半導体微粒子を導電性支持体に塗布した後、半導体微粒子同士を電子的に接触させると共に塗膜強度や支持体との密着性を向上させるために、加熱処理(焼成)を施すのが好ましい。加熱温度は約40℃以上700℃未満とすることが好ましく、約100℃以上600℃以下とするのがより好ましい。また、加熱時間は10分〜10時間程度とすればよい。
【0159】
加熱処理後、半導体微粒子の表面積を増大させるため、又は半導体微粒子近傍の純度を高め色素から半導体微粒子への電子注入効率を高めるために、例えば四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキ処理、三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理等を施してもよい。
【0160】
半導体微粒子は、多くの色素を吸着することができるように大きな表面積を有することが好ましい。半導体微粒子を支持体上に塗布した状態での表面積は、投影面積に対して約10倍以上であるのが好ましく、約100倍以上であるのがより好ましい。上限は特に制限はないが、通常1000倍程度である。
【0161】
(B−3)色素
感光層に使用する色素には、種々の金属錯体色素、有機色素等を用いることができる。光電変換の波長域をできるだけ広くし、且つ変換効率を上げるために、二種類以上の色素を混合して用いてもよい。また、光源の波長域と強度分布に合わせて、混合する色素とその混合割合を選択すればよい。
【0162】
本発明で用いる色素は、半導体微粒子表面に対する適当な結合基(interlocking group)を有するものが好ましい。好ましい結合基としては−COOH基、−SOH基、シアノ基、−P(O)(OH)基、−OP(O)(OH)基、並びにオキシム、ジオキシム、ヒドロキシキノリン、サリチレート、α−ケトエノレートのようなキレート化基が挙げられる。中でも−COOH基、−P(O)(OH)基、−OP(O)(OH)基等が特に好ましい。これらの結合基はアルカリ金属等と塩を形成していてもよく、分子内塩を形成していてもよい。
【0163】
本発明で使用する色素としては、増感の効果や耐久性の点から金属錯体色素を用いることが好ましい。該金属錯体の金属原子は、ルテニウム(Ru)が好ましい。
本発明で用いるルテニウム錯体色素は、下記一般式(6)
【0164】
(A)pRu(B−a)(B−b)(B−c) (6)
【0165】
(式中、Aは、Cl、SCN、HO、Br、I、CN、NCO及びSeCNからなる群から選ばれる配位子を表す。pは0〜2の整数であり、好ましくは2である。B−a、B−b及びB−cは、それぞれ独立して含窒素複素環を含有する有機配位子、例えば2,2´−ビピリジル−4,4´−ジカルボキシラト等を表す。)で示されるものが好ましい。B−a、B−b及びB−cは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0166】
(B−4)半導体微粒子への色素の吸着
半導体微粒子に色素を吸着させるためには、色素の溶液中によく乾燥した半導体微粒子層を有する導電性支持体を浸漬する方法、又は色素の溶液を半導体微粒子層に塗布する方法を用いることができる。前者の方法では、浸漬法、ローラ法、エアーナイフ法等が使用可能である。なお、浸漬法の場合、色素の吸着は室温で行ってもよいし、特開平7−249790号公報に記載されているように加熱還流して行ってもよい。また、後者の方法では、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等の塗布方法や、凸版、オフセット、グラビア、スクリーン印刷等の印刷方法が利用できる。
【0167】
色素の溶液に用いる溶媒は、色素の溶解性に応じて適宜選択でき、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等)、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ジメチルスルホキシド、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド等)、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭酸エステル類(炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等)、ケトン類(アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン等)、炭化水素(へキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン等)、これらの混合溶媒等が使用できる。
【0168】
色素の吸着方法は、色素の溶液の粘度、塗布量、導電性支持体の材質、塗布速度等に応じて適宜選択すればよい。量産化の観点からは、塗布後の色素吸着に要する時間をなるべく短くすることが好ましい。
【0169】
未吸着の色素の存在は素子性能の外乱になるため、吸着後速やかに洗浄により除去することが好ましい。洗浄は、アセトニトリル等の極性溶剤やアルコール系溶剤等の有機溶媒を用いて行うことが好ましい。また、色素の吸着量を増大させるために吸着前に加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理の後に半導体微粒子表面に水が吸着するのを抑制するために、常温に戻さず約40〜80℃で素早く色素を吸着させることが好ましい。
【0170】
色素の全使用量は、導電性支持体の単位表面積(1m)当たり約0.01〜100mmolとすることが好ましい。また、色素の半導体微粒子に対する吸着量は、十分な増感効果を得るためには半導体微粒子1g当たり約0.01〜1mmolであることが好ましい。色素の吸着量が前記範囲であると、十分な増感効果が得られる。また、色素が半導体微粒子から浮遊しにくいため、増感効果の低減を抑制できる。
【0171】
光電変換の波長域をできるだけ広くするとともに変換効率を上げるために、2種類以上の色素を混合して使用してもよい。この場合、光源の波長域と強度分布に応じて、適宜混合する色素及びその混合割合を選択することが好ましい。
【0172】
会合のような色素同士の相互作用を低減する目的で、無色の疎水性化合物を半導体微粒子に共吸着させてもよい。共吸着させる疎水性化合物としては、カルボキシル基を有するステロイド化合物(例えばケノデオキシコール酸)等が挙げられる。また、紫外線吸収剤を併用してもよい。
【0173】
余分な色素の除去を促進する目的で、色素を吸着した後にアミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。アミン類としてはピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。これらが液体の場合はそのまま用いてもよく、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0174】
(C)電荷輸送層
電荷輸送層は、色素の酸化体に電子を補充する機能を有する層である。電荷輸送層に前記本発明の電解質組成物を用いるが、更に固体電解質や正孔(ホール)輸送材料を併用することもできる。
【0175】
本発明の電解質組成物からなる電荷輸送層を形成する方法は特に限定されず、例えば、キャスト法、塗布法、浸漬法等により感光層上に電解質組成物の溶液を塗布する方法、光電極と対極を有するセルを作製しその隙間に電解質組成物を注入する方法等が挙げられる。
【0176】
塗布法によって電荷輸送層を形成する場合、通常、溶融塩等を含む電解質組成物の溶液に塗布性改良剤(レベリング剤等)等の添加剤を添加して、これをスピンコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法、多層同時塗布方法等の方法により感光層上に塗布し、その後必要に応じて加熱すればよい。加熱する場合の加熱温度は、色素の耐熱温度等により適当に選択すればよいが、通常約10〜150℃であるのが好ましく、約10〜100℃であるのがより好ましい。加熱時間は加熱温度等にもよるが、通常、5分〜72時間程度である。
【0177】
好ましい態様によれば、感光層(42)中の空隙を完全に埋める量より多い電解質組成物の溶液を塗布するので、図5に示すように得られる電解質の層は、実質的に導電性支持体の導電層(41)との境界から対極導電層(44)との境界までの間に存在する。ここで、色素増感半導体を含む感光層(42)との境界から対極(44)との境界までの間に存在する電解質の層を電荷輸送層(43)とすると、その厚さは約0.001〜200μmであることが好ましい。電荷輸送層(43)の厚さが前記範囲であると、感光層中の半導体微粒子が対極導電層(44)に接触することがなく、また電荷の移動距離が長くなりすぎないため、素子の抵抗を小さくすることができる。電荷輸送層(43)の厚さは、約0.1〜100μmであることがより好ましく、約0.1〜50μmであることが特に好ましい。
【0178】
また、感光層(42)+電荷輸送層(43)の厚さ(実質的に電解質組成物からなる層の厚さに等しい)は約0.1〜300μmであることが好ましく、約1〜130μmであることがより好ましく、約2〜75μmであることが特に好ましい。
【0179】
酸化還元対を生成させるために、電解質組成物に例えばヨウ素等を導入する場合、前記電解質組成物にヨウ素等を添加する方法や、電荷輸送層を形成した支持体をヨウ素等と共に密閉容器内に置き、電荷輸送層を構成する電解質組成物中に拡散させる手法等が使用できる。また、対極にヨウ素等を塗布又は蒸着し、光電変換素子を組み立てたときに電荷輸送層中に導入することも可能である。
電荷輸送層中の水分は、約10,000ppm以下であるのが好ましく、より好ましくは約2,000ppm以下であり、特に好ましくは約100ppm以下である。
【0180】
(D)対極
対極は、光電変換素子を光化学電池としたときに正極として作用するものである。対極は前記導電性支持体と同様に、導電性材料からなる対極導電層のみから構成されていてもよいし、対極導電層と支持基板から構成されていてもよい。対極導電層に用いる導電性材料としては、金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)等が使用できる。対極に用いる支持基板は、好ましくはガラス基板又はプラスチック基板であり、通常、これに前記導電性材料を塗布又は蒸着して用いる。対極導電層の厚さは特に制限されないが約3nm〜10μmであることが好ましい。特に、対極導電層が金属である場合は、その厚さは約5μm以下であることが好ましく、約5nm〜3μmであることがより好ましい。
【0181】
導電性支持体と対極のいずれか一方又は両方から光を照射してよいので、感光層に光が到達するためには、導電性支持体と対極のうち少なくとも一方が実質的に透明であればよい。発電効率向上の観点からは、導電性支持体を透明にし、光を導電性支持体側から入射させるのが好ましい。この場合、対極は光を反射する性質を有することが好ましい。このような対極の材料としては、例えば、金属や導電性の酸化物を蒸着したガラス又はプラスチック、金属薄膜等が使用できる。
【0182】
対極を設ける手順としては、(イ)電荷輸送層を形成した後でその上に設ける方法と、(ロ)半導体微粒子層の上にスペーサーを介して対極を配置し、その空隙に液状の電解質組成物を充填する方法の2通りある。(イ)の場合、通常、電荷輸送層上に直接導電材を塗布、メッキ又は蒸着(PVD、CVD)するか、電荷輸送層上に導電層を設けた基板の導電層側を貼り付ける。また(ロ)の場合、通常、半導体微粒子層の上にスペーサーを介して対極を組み立てて固定し、得られた組立体の開放端を液状の電解質組成物に浸漬し、毛細管現象又は減圧を利用して半導体微粒子層と対極との空隙に電解質組成物を浸透させる。また、導電性支持体の場合と同様に、特に対極が実質的に透明な場合には、抵抗を下げる目的で金属リードを用いるのが好ましい。なお、好ましい金属リードの材質及び設置方法、金属リード設置による入射光量の低下等は前記導電性支持体の場合と同じである。
【0183】
(E)その他の層
電極として作用する導電性支持体及び対極の一方又は両方に、保護層、反射防止層等の機能性層を設けてもよい。このような機能性層を多層に形成する場合、同時多層塗布法、逐次塗布法等が利用できる。生産性の観点からは同時多層塗布法が好ましい。同時多層塗布法では、生産性及び塗膜の均一性の観点からスライドホッパー法やエクストルージョン法が好ましい。機能性層の形成には、導電性支持体又は対極の材質に応じて蒸着法や貼り付け法等を用いることができる。
【0184】
また、対極と光電極の短絡を防止するため、予め導電性支持体と感光層の間に緻密な半導体の薄膜層を下塗り層として塗設してもよい。下塗り層の材料は好ましくはTiO、SnO、Fe、WO、ZnO及び/又はNbであり、更に好ましくはTiOである。下塗り層は、例えば、スプレーパイロリシス法により塗設することができる。下塗り層の膜厚は約5〜1000nmであることが好ましく、約10〜500nmであることがより好ましい。
【0185】
(F)光電変換素子の内部構造の具体例
光電変換素子の内部構造は目的に合わせ様々な形態が可能である。大きく2つに分ければ、両面から光の入射が可能な構造と片面からのみ可能な構造が可能である。本発明の光電変換素子の内部構造は、導電層に前記一般式(1)で表わされる環状第四級アンモニウム塩を含有する電解質組成物を使用するものであればよく、光電変換素子を用いる用途等に応じて適宜選択すればよい。
【0186】
5.2 光化学電池
前記光電変換素子を用いた光化学電池も、本発明の1つである。
本発明の光化学電池は、前記光電変換素子に外部回路で仕事をさせるようにしたものである。光化学電池は構成物の劣化や内容物の揮散を防止するために、側面をポリマーや接着剤等で密封することが好ましい。導電性支持体及び対極にリードを介して接続される外部回路自体は公知のものでよい。
【0187】
本発明の光電変換素子を光化学電池、いわゆる太陽電池に適用する場合、そのセル内部の構造は基本的に前述した光電変換素子の構造と同じである。
本発明の光化学電池は、色素増感太陽電池であることが好ましい。前記光電変換素子を用いた色素増感太陽電池は、本発明における好ましい実施態様の1つである。
【0188】
5.3 色素増感太陽電池
本発明の色素増感太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは、一般的には金属、セラミック等の支持基板上にセルを形成し、それを充填樹脂や保護ガラス等で覆って構成される、支持基板の反対側から光を取り込む構造を有する。支持基板の材料として強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを形成してその透明支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ又はポッティングタイプのモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池等で用いられる基板一体型モジュール構造等が挙げられる。本発明の光電変換素子を用いた色素増感太陽電池においても、使用目的や使用場所及び環境により、適宜モジュール構造を選択できる。
【0189】
以上詳述したように、前記光電変換素子を用いて、使用目的や使用環境に合わせて様々な形状、機能を持つ太陽電池を製作することができる。
【実施例】
【0190】
以下、本発明の実施形態を、実施例に基づいて説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0191】
(参考例1)
3−ピロリジノール100gをアセトニトリル1000mLに溶解し、4−ジメチルアミノピリジン9.8gを加え攪拌した。これを5℃以下に冷却し、ターシャリブチルピロカーボネート285gのアセトニトリル溶液を滴下した。滴下終了後、室温で12時間攪拌した。得られた反応液を減圧で濃縮し、残渣に塩化メチレン1000mLを加え希釈し、水で洗浄した。溶媒を減圧濃縮し、黄色い粘調な液体213gを得た。
【0192】
次に、得られた液体をジメチルホルムアミド600mLに溶解し、ヨウ化メチル181.8gと酸化銀296.8gを加え30℃以下で2日間攪拌した。これに、ジエチルエーテル600mLを加え濾過し、残渣をさらにジエチルエーテル400mLで洗浄した。ろ液を水で洗浄し、溶媒を減圧で濃縮すると、黄緑色の液体が121.6g得られた。
得られた液体をメタノール200mLに希釈し、塩化水素飽和メタノール500mLに滴下した。室温で気泡の発生がみられなくなるまで約6時間攪拌したのち、減圧で濃縮した。得られた濃縮物をジクロロメタン200mLに溶解し不溶物をろ過し、ろ液を濃縮すると、3−メトキシピロリジンが68.2g得られた。
得られた3−メトキシピロリジンの1H、化学シフトを以下に示す。
HNMR(500MHz,CDCl3):δ1.78(m,1H),1.86(m,1H),2.81(m,2H),3.04(m,2H),3.29(s,3H),3.89(m,1H)
【0193】
(実施例1)
3−メトキシスピロビスピロリジニウムブロミドの合成
3−メトキシピロリジン68.2gを2−プロパノール650mLに溶解した。これに、室温で炭酸カリウム171.3g及び1,4−ジブロモブタン120.6gを加え、混合物を3時間加熱還流した。
得られた反応液を濾過し、2−プロパノール500mLで洗浄した。ろ液を減圧で濃縮し残渣にジクロロメタン200mLを加え希釈し、水で目的物を抽出した。得られた水溶液を減圧で濃縮し、乾燥し、黄色い液体を得た。これを2−プロパノールに溶解しアセトンを加えて放置すると無色からやや黄色い結晶として目的物3−メトキシスピロビスピロリジニウムブロミドが114.7g(収率97.9%)得られた。
得られた3−メトキシスピロビスピロリジニウムブロミドの1H、化学シフトを以下に示す。
HNMR(500MHz,MeOH):δ2.15(m,1H),2.28(m,1H),2.48(m,1H),3.25(s,3H),3.56(m,4H),3.65(m,2H),3.69(m,2H),4.20(m,1H)
【0194】
(実施例2)
3−メトキシスピロビスピロリジニウムテトラフルオロボレートの合成
3−メトキシスピロビスピロリジニウムブロミド47.23gをテフロン(登録商標)容器に秤取り、メタノール400mLで希釈した。これに、42%ホウフッ化水素酸59.5gを加え、窒素を吹き込みながら130℃で加熱濃縮した。重量変化がなくなるまで、メタノール希釈と濃縮を繰り返した。得られた液状物をジクロロメタンに溶解しアルミナカラムを通し、溶出液を濃縮し、乾燥すると無色の液体として目的物3−メトキシスピロビスピロリジニウムテトラフルオロボレートが40.0g(収率82.3%)得られた。
得られた3−メトキシスピロビスピロリジニウムテトラフルオロボレートの1H、化学シフトを以下に示す。
HNMR(500MHz,MeOH):δ2.15(m,1H),2.28(m,1H),2.47(m,1H),3.28(s,3H),3.55(m,8H),4.19(m,1H)
【0195】
(実施例3)
3−メトキシスピロビスピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドの合成
3−メトキシスピロビスピロリジニウムブロミド47.23gを300mLコニカルビーカーに秤取り、蒸留水100mLに希釈した。これに、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド577.4gを加え3時間攪拌した。二層に分離した液を分液し、下層をとった。上層にはジクロロメタン50mLを加え抽出し、下層と合わせた。合わせたジクロロメタン溶液を蒸留水50mLで洗浄し濃縮し、乾燥すると無色の液体として目的物3−メトキシスピロビスピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドが73.8g(収率84.5%)得られた。
得られた3−メトキシスピロビスピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドの1H、化学シフトを以下に示す。
HNMR(500MHz,MeOH):δ2.15(m,1H),2.28(m,1H),2.47(m,1H),3.28(s,3H),3.55(m,8H),4.19(m,1H)
【0196】
(実施例4)
3−メトキシスピロビスピロリジニウムトリフルオロアセテートの合成
3−メトキシスピロビスピロリジニウムブロミド10.5gを蒸留水100mLに希釈し5℃に冷却した。これに、酸化銀5.3gを加え5時間攪拌した。濾過しろ液を5℃以下に冷却し、トリフルオロ酢酸4gを滴下した。反応液を減圧濃縮し、乾燥すると無色の液体として目的物トリフルオロアセテート塩が9g(75%)得られた。
得られたトリフルオロアセテート塩の1H、化学シフトを以下に示す。
HNMR(500MHz,MeOH):δ2.15(m,1H),2.28(m,1H),2.47(m,1H),3.28(s,3H),3.55(m,8H),4.19(m,1H)
【0197】
(実施例5)
3−ヒドロキシスピロビスピロリジニウムブロミドの合成
3−ピロリジノール25gを2−プロパノール250mLに溶解した。これに、室温で炭酸カリウム39.7g及び1,4−ジブロモブタン62.9gを加え、混合物を24時間加熱還流した。
反応液を濾過し、2−プロパノール500mLで洗浄した。ろ液を減圧で濃縮し、残渣にジクロロメタン200mLを加え希釈し、水で目的物を抽出した。得られた水溶液を減圧で濃縮し、乾燥し、褐色の液状物を得た。これを2−プロパノールに溶解し、アセトンを加えて放置すると、無色からやや黄色い結晶として目的物3−ヒドロキシスピロビスピロリジニウムブロミドが30g(収率47%)得られた。
得られた3−ヒドロキシスピロビスピロリジニウムブロミドの1H、化学シフトを以下に示す。
HNMR(500MHz,MeOH):δ2.17(m,1H),2.25(m,4H),2.56(m,1H),3.70(m,8H),4.69(m,1H)
【0198】
(実施例6)
3−ヒドロキシスピロビスピロリジニウムテトラフルオロボレートの合成
3−ヒドロキシスピロビスピロリジニウムブロミド10gをテフロン(登録商標)容器に秤取り、蒸留水30mLで希釈した。これに、ホウフッ化水素酸銀25gを加え、攪拌した。得られた溶液を濾過し、ろ液を濃縮すると、液状物が得られた。得られた液状物をジクロロメタンに溶解し、アルミナカラムを通し、溶出液を濃縮し乾燥すると、無色からやや黄色い液体として目的物3−ヒドロキシスピロビスピロリジニウムテトラフルオロボレートが50g(収率48.5%)得られた。
得られた3−ヒドロキシスピロビスピロリジニウムテトラフルオロボレートの1H、化学シフトを以下に示す。
HNMR(500MHz,MeOH):δ2.17(m,1H),2.25(m,4H),2.56(m,1H),3.70(m,8H),4.69(m,1H)
【0199】
(実施例7)
3−ヒドロキシスピロビスピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドの合成
3−ヒドロキシスピロビスピロリジニウムブロミド11.3gを50mLコニカルビーカーに秤取り蒸留水20mLに希釈した。これに、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド14.6gを加え3時間攪拌した。二層に分離した液を分液し、下層をとった。上層にはジクロロメタン50mLを加え抽出し、下層と合わせた。合わせたジクロロメタン溶液を、濃縮し乾燥すると、やや黄色い液体として目的物3−ヒドロキシスピロビスピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドが7.2g(収率33.6%)得られた。
得られた3−ヒドロキシスピロビスピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドの1H、化学シフトを以下に示す。
HNMR(500MHz,MeOH):δ2.17(m,1H),2.25(m,4H),2.56(m,1H),3.70(m,8H),4.69(m,1H)
【0200】
(実施例8)
実施例2で製造した3−メトキシスピロビスピロリジニウムテトラフルオロボレート(以下、3−メトキシスピロビスピロリジニウムテトラフルオロボレート1という。)を用いて、以下の方法により電気二重層キャパシタを作製して、長期信頼性試験(耐久性試験)を行った。比較としてスピロビスピロリジニウムテトラフルオロボレート(以下、SBP2という。)を用いた。結果を図6に示す。
【0201】
(電極)
分極性電極として、ジャパンゴアテックス社製 B80(商品名、比表面積 1500m/g)を使用した。
【0202】
(電極電位制御した電気二重層キャパシタの作製)
電極2枚を、セルロース製セパレータを介して対向、配置させた素子をアルミラミネート製の外装ケースに収納した後、電解液を注液して封止して図1に示すラミネート型電気二重層キャパシタを作製した。正負極端子は、それぞれの電極からアルミリード板を用いて、外装ケースの外に取り出した。
【0203】
(評価方法)
25℃に設定された恒温槽内にて、2.7Vの定電圧充電を24時間行い0.0Vまで放電しエージング処理をした。長期信頼性試験(耐久性試験)においては、60℃に設定した恒温槽内にて、電圧2.7Vで所定時間印加し続けることによりフローティング試験を行った。静電容量は、25℃に設定された恒温槽内にて、2.7Vの定電圧充電を30分間行い、2.0mA/cmにて所定電圧まで放電を行い、その電圧勾配より求めた。
【0204】
前記で製造した電気二重層キャパシタを用いて、前記の方法により、静電容量の経時変化を測定した。放電開始時(0時)の静電容量を100%とした場合の容量変化率(静電容量維持率(%))の経時変化を、表1及び図6に示す。図6中、点線は、SBP2を用いた電気二重層キャパシタにおける容量変化率であり、実線は、3−メトキシスピロビスピロリジニウムテトラフルオロボレート1を用いた電気二重層キャパシタにおける容量変化率である。
【0205】
【表1】

【0206】
図6に示されるように、実施例2で製造された3−メトキシスピロビスピロリジニウムテトラフルオロボレート1を用いた電気二重層キャパシタは、SBP2を用いた比較の電気二重層キャパシタと比べて、静電容量維持率が高かった。1000時間後の3−メトキシスピロビスピロリジニウムテトラフルオロボレート1を用いた電気二重層キャパシタは、比較の電気二重層キャパシタと比べて、容量低下が約20%も少なかった。
このように、表1及び図6の結果から、3−メトキシスピロビスピロジニウムテトラフルオロボレート1を用いた電気二重層キャパシタは、SBP2を用いたものより長期安定性(耐電気分解性、耐久性)に優れることがわかった。また、前記結果から、本発明の3位に置換基を有する環状第四級アンモニウム塩は安定性に優れ、電気二重層キャパシタ、リチウム電池(リチウムイオン電池及びリチウム金属電池)、光電変換装置等の電気化学デバイスの電解質としても好適であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0207】
本発明は、安定性に優れた電解質組成物等として電気化学デバイス等の分野で有用である。
【符号の説明】
【0208】
1 アルミタブ
2 ラミネート
3 電極
4 セパレータ
11 正極リード
12 負極リード
20 巻回電極体
21 正極
21A 正極集電体
21B 正極活物質層
22 負極
22A 負極集電体
22B 負極活物質層
23 セパレータ
24 保護テープ
31 外装部材
32 密着フィルム
41 導電層(導電性支持体)
42 感光層(色素で増感された半導体微粒子層)
43 電荷輸送層(電解質組成物)
44 対極導電層(対極)
45 スペーサー
46 光電変換素子(光化学電池)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシメチル基又は炭素数1〜4のアルコキシエチル基を示し、また、RとRとが環を形成していてもよい。mは、1又は2を表す。Xは、アニオンを示す。)で表わされる3位に置換基を有する環状第四級アンモニウム塩。
【請求項2】
前記一般式(1)で表わされる化合物が、RとRとにより形成される環と、3位に置換基を有する環とから形成されるスピロ構造を有する下記一般式(2)
【化2】

(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。m及びnは、同一又は異なって、1又は2を示す。X-は、アニオンを示す。)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項1に記載の環状第四級アンモニウム塩。
【請求項3】
nが1であることを特徴とする請求項2に記載の環状第四級アンモニウム塩。
【請求項4】
mが1であることを特徴とする請求項2又は3に記載の環状第四級アンモニウム塩。
【請求項5】
nが1であり、mが1であり、且つRが水素原子であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の環状第四級アンモニウム塩。
【請求項6】
nが1であり、mが1であり、且つRが炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の環状第四級アンモニウム塩。
【請求項7】
が、メチル基又はエチル基であることを特徴とする請求項2〜4及び6のいずれか一項に記載の環状第四級アンモニウム塩。
【請求項8】
環状第四級アンモニウム塩が、一般式(1)においてRがメチル基であり、Rがエチル基であり、且つmが1である3−アルコキシピロリジニウム塩である請求項1に記載の環状第四級アンモニウム塩。
【請求項9】
が、BF、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、AlCl、AlCl、PF、AsF、N(CFSO、N(CSO、N(FSO、CFSO、CHSO、CHCO、CFCOO、NO、CFBF、CBF又はN(CN)である請求項1〜8のいずれか一項に記載の環状第四級アンモニウム塩。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の環状アンモニウム塩を含有する電解質組成物。
【請求項11】
電気化学デバイスに用いられるものである請求項10に記載の電解質組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の電解質組成物を用いた電気二重層キャパシタ。
【請求項13】
請求項11に記載の電解質組成物を用いたリチウムイオン電池又はリチウム金属電池。
【請求項14】
請求項11に記載の電解質組成物を用いた光電変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−56897(P2012−56897A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202373(P2010−202373)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000206901)大塚化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】