説明

環状金属コード、無端金属ベルト及び環状金属コードの製造方法

【課題】破断強度に優れ、且つ製造が容易な環状金属コード、無端金属ベルト及び環状金属コードの製造方法を提供する。
【解決手段】金属素線5,6を複数本撚り合わせてなる第1,第2のストランド材1,2により、環状に形成された環状コア部3と、環状コア部3に対して螺旋状に複数周巻き付けられ環状コア部3の外周面を覆う外層部4とを有する環状金属コードC1を形成する。環状金属コードC1の周囲に被覆用接着材を塗布して接着固化させることにより、環状金属コードC1の周囲を、弾性を有する被覆材からなる外層被覆10によって覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状金属コード、無端金属ベルト及び環状金属コードの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無端金属ベルトの一種として、例えば特許文献1に記載されているように、圧延帯材を曲げ、両端を溶接して円筒状としたものを所定の幅に切断してなる、断面が矩形状のものが知られている。
【0003】
また、例えば特許文献2に記載されているように、芯材に金属コードを用いた無端ベルトが知られている。芯材となる金属コードは、中心コアとなる少なくとも1本のフィラメントと、中心コアを取り巻く複数本のフィラメントとを備えている。
【特許文献1】特開2003−236610号公報
【特許文献2】特開平4−307146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の無端金属ベルトは、断面が矩形状であるため捩れに弱く、破断が生じ易い。また、特許文献2に記載の金属コードを無端金属ベルトに適用する場合には、金属コードの両端部を結合して環状にする必要がある。金属コードの両端部を結合する方法としては、金属コードの両端部を突き合わせて結合する方法と、金属コードを構成するフィラメント毎に両端部をそれぞれ結合する方法とが考えられる。金属コードの両端部を突き合わせて結合する方法では、周方向の一箇所に結合部が集中することとなるため、金属コードの完全破断が生じやすくなる。一方、フィラメント毎に両端部を結合する方法では、フィラメントの端部を解撚してから結合し、結合後にフィラメントの端部を再び撚り合わせなければならないので、結合部と他の部分とで撚りの状態が異なり、結合部の機械的強度が低下するおそれがある。その結果、金属コードの破断が生じやすくなる。また、フィラメント毎に両端部を結合する方法では、結合にかかる工程が煩雑となり、製造が困難となってしまう。
【0005】
そこで、本発明の目的は、破断が生じにくく、且つ製造が容易な環状金属コード、無端金属ベルト及び環状金属コードの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明に係る環状金属コードは、金属素線を複数本撚り合わせてなるストランド材により、環状に形成された環状コア部と、前記環状コア部に対して螺旋状に複数周巻き付けられ前記環状コア部の外周面を覆う外層部と、が形成された環状金属コードであって、前記外層部の少なくとも一部が、弾性を有する被覆材からなる外層被覆により覆われていることを特徴としている。
【0007】
このように、外層部の少なくとも一部が弾性を有する被覆材からなる外層被覆によって覆われているので、環状金属コードを破断強度及び耐疲労性に優れた丈夫なものとすることができる。また、外層被覆によってストランド材同士がばらけるような不具合をなくすことができるとともに外層被覆が緩衝材となることにより、例えば、小さな曲率半径にて曲げを受けるプーリ等との接触箇所においても、外層被覆によって環状金属コードが接触する相手側の部材との摩擦抵抗が大きくなるため、滑りを抑えて摩耗を極力なくすことができるとともに良好な動力伝達効率を得ることができる。
【0008】
好ましくは、少なくとも前記外層部の巻き付け始端部と巻き付け終端部との結合部を含むその周辺が外層被覆により覆われている。これにより、外層部の巻き付け始端部と巻き付け終端部との結合部を強固に補強することができ、さらには、ストランド材を構成する金属素線がばらけるような不具合をなくすことができる。
【0009】
好ましくは、前記外層被覆における環状の外周側半面に、少なくとも1箇所の非被覆部を有している。これにより、非被覆部から内部へ潤滑剤を円滑に浸透させることができ、環状コア部と外層部との間、外層部を構成するストランド材同士の間及び各ストランド材を構成する各金属素線同士の間におけるフレッチング摩耗による強度低下及び疲労による寿命短縮を抑えることができる。
【0010】
好ましくは、前記外層被覆における環状の外周側半面に、環状方向の全周にわたる非被覆部が、断面における周方向の少なくとも1箇所に設けられている。これにより、非被覆部を全周にわたって形成したことにより、非被覆部から内部へ潤滑剤を円滑に浸透させることができるとともに、各金属素線同士の間におけるフレッチング摩耗による強度低下及び疲労による寿命短縮を抑えつつ、全周にわたる剛性の均一化を図ることができる。
【0011】
好ましくは、前記外層被覆における環状の外周側半面が、環状方向の全周にわたって非被覆部とされている。すなわち、外層被覆が環状の内周側半面のみに設けられている。これにより、外層被覆を設けることによる剛性の増加を極力抑えつつストランド材を一体化させることができる。
【0012】
好ましくは、前記外層被覆における環状の内周側半面に、少なくとも1箇所の非被覆部を有している。これにより、環状の内周側半面の非被覆部から内部へ潤滑剤を円滑に浸透させることができる。
【0013】
好ましくは、前記外層部の全周面かつ全長にわたって、前記外層被覆に覆われた被覆部と前記外層被覆のない非被覆部とが交互に形成されている。これにより、非被覆部である露出箇所から内部へ潤滑剤を円滑に浸透させることができ、環状コア部と外層部との間、外層部を構成するストランド材同士の間及び各ストランド材を構成する各金属素線同士の間における摩擦による強度低下及び疲労による寿命短縮を抑えることができる。
【0014】
好ましくは、前記非被覆部よりも前記被覆部が長くされている。つまり、非被覆部は内部へ潤滑剤が浸透するのに必要な最低限の長さとして被覆部を極力長くすることができ、補強効果を高めることができるとともに、長寿命化を図ることができる。
【0015】
好ましくは、前記外層部の環状方向における少なくとも1箇所に前記非被覆部を有する。これにより、環状方向の少なくとも1箇所に設けた非被覆部から内部へ潤滑剤を浸透させることができる。また、非被覆部を極力少なくすることができ、外層被覆による補強効果を高めることができるとともに、長寿命化を図ることができる。
【0016】
好ましくは、前記環状コア部の外周面に、被覆用接着剤を固化させた接着固化部と、被覆用接着剤のない非接着固化部とが交互に形成されている。これにより、環状コア部自体を接着固化部によって補強することができ、環状金属コードの強度を高めることができる。また、非接着固化部を設けたので、この非接着固化部から環状コア部の内部へ潤滑剤を円滑に浸透させることができ、環状コア部となるストランド材を構成する各金属素線同士の間における摩擦による強度低下及び疲労による寿命短縮を抑えることができる。
【0017】
好ましくは、前記外層部における前記外層被覆のない前記非被覆部と、前記環状コア部における被覆用接着剤のない非接着固化部とが、環状方向における異なる位置に配置されている。このように、非被覆部及び非接着固化部の位置が環状方向にずらされているので、これら非被覆部及び非接着固化部を設けることによる補強効果の低下を極力抑えることができる。
【0018】
好ましくは、前記被覆用接着剤は、その固化後の物性のうち、硬度(JIS−A)が22〜60、伸びが110〜500%である。このように、硬度(JIS−A)が22〜60、伸びが110〜500%である被覆用接着剤を用いることにより、柔軟性及び適度な伸びを確保しつつ高い補強効果を得ることができる。
【0019】
好ましくは、前記外層被覆は、その固化後の物性のうち、硬度(JIS−A)が22〜60、伸びが110〜500%である。このように、硬度(JIS−A)が22〜60、伸びが110〜500%である材質の外層被覆を用いることにより、柔軟性及び適度な伸びを確保しつつ高い補強効果を得ることができる。
【0020】
好ましくは、前記外層被覆は、ゴムからなる。これにより、ゴムによって所定の箇所に外層被覆を形成することにより、容易に補強することができる。また、ゴムからなる外層被覆によって環状金属コードが接触する相手側の部材との摩擦抵抗が大きくなるため、動力伝達ベルトとして用いて好適なものとすることができる。
【0021】
好ましくは、前記外層被覆を構成するゴムは、金属とゴムとを接着する金属ゴム用接着剤によって前記外層部に接着されている。これにより、ゴムと外層部のストランド材とを確実に固着させることができ、補強効果を高めることができる。
【0022】
好ましくは、外層被覆を構成するゴムは、8MPa以下の加硫圧力にて加硫されている。これにより、環状金属コード内部へのゴムの入り込みを抑えて潤滑剤を良好に浸透させることができ、環状コア部と外層部との間、外層部を構成するストランド材同士の間及び各ストランド材を構成する各金属素線同士の間におけるフレッチング摩耗による強度低下及び疲労による寿命短縮を抑えることができる。
但し、環状金属コードが潤滑剤を使用しない環境下で使用される場合は、むしろ積極的に環状金属コード内部までゴムが侵入する加硫圧力とする方が好ましい。
【0023】
また、上記課題を解決することのできる本発明に係る無端金属ベルトは、上記本発明に係る環状金属コードを備えていることを特徴としている。上述の環状金属コードを用いることによって、破断強度及び耐疲労性に優れ、且つ製造が容易な無端金属ベルトを得ることができる。
【0024】
また、上記課題を解決することのできる本発明に係る上記環状金属コードの製造方法は、前記環状金属コードの前記外層被覆を設けない箇所にマスキングテープを貼り付け、前記環状金属コードの外周面に被覆用接着剤を塗布し、この被覆用接着剤の固化後に前記マスキングテープを除去することを特徴としている。
このように、環状金属コードにおける外層被覆を設けない箇所にマスキングテープを貼り付け、環状金属コードの外周面に被覆用接着剤を塗布し、この被覆用接着剤の固化後に前記マスキングテープを除去することにより、被覆用接着剤からなる外層被覆によって覆われ、丈夫でしかもストランド材がばらけるような不具合がなく、さらに、潤滑剤の浸透が円滑な環状金属コードを容易に製造することができる。
【0025】
また、上記課題を解決することのできる本発明に係る上記環状金属コードの製造方法は、前記環状金属コードの前記外層被覆を設けない箇所にマスキングテープを貼り付け、前記環状金属コードの外周面に生ゴムを貼り付け、加圧加硫処理を施した後に前記マスキングテープを除去することを特徴としている。
このように、環状金属コードにおける外層被覆を設けない箇所にマスキングテープを貼り付け、環状金属コードの外周面に生ゴムを貼り付け、加圧加硫処理を施した後に前記マスキングテープを除去することにより、ゴムからなる外層被覆によって覆われ、丈夫でしかもストランド材がばらけるような不具合がなく、さらに、潤滑剤の浸透が円滑な環状金属コードを容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、破断強度及び耐疲労性に優れ、且つ製造が容易な環状金属コード、無端金属ベルト及び環状金属コードの製造方法を提供することができる。したがって、本発明の環状金属コード及び無端金属ベルトを産業機械に用いれば、当該産業機械を耐久性に優れたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0028】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る環状金属コードについて図面を参照しつつ説明する。図1は、第1実施形態に係る環状金属コードの斜視図、図2は、第1実施形態に係る環状金属コードの外層被覆を施す前の斜視図、図3は、第1実施形態に係る環状金属コードを示す径方向の断面斜視図であり、図4は、第1実施形態に係る環状金属コードが備える環状コア部に第2のストランド材を1周巻き付けた様子を示す斜視図である。図5(a)は、第1実施形態に係る環状金属コードを示す径方向の断面図であり、図5(b)は、第1実施形態に係る環状金属コードの側面図である。図6は、第1実施形態に係る環状金属コードの一部を示す拡大斜視図である。
【0029】
図1に示すように、環状金属コードC1は、その外周側が外層被覆10によって覆われている。この外層被覆10は、弾性を有する被覆材である被覆用接着剤を接着固化させることにより形成されている。
そして、この環状金属コードC1は、外層被覆10が施されていない非被覆部10Aを有している。この非被覆部10Aは、外層被覆10における環状の外周側半面にて、環状方向の全周にわたってスリット状に形成されている。
【0030】
この外層被覆10を形成する被覆用接着剤は、耐熱性及び耐油性に優れた、例えば、シリコンゴム系の弾性を有する接着剤が使用されており、その固化後の物性のうちの硬度(JIS−A)が22〜60、伸びが110〜500%である。例えば、外層被覆10の被覆用接着剤として、シリコーン接着シール剤であるスリーボンド1222B(株式会社スリーボンド製)を使用できる。これは、耐熱性・耐寒性・対候性・耐久性・耐摩耗性を有しているとともに、速乾・速硬化性のシール剤であり、外層被覆10として好適である。また、スリーボンド1222Bの硬度(JIS−A)は27であり、伸びは450%である。
【0031】
図2及び図3に示されるように、環状金属コードC1は、環状コア部3と、環状コア部3の外周面を覆う外層部4とを備えるものである。
【0032】
環状コア部3は、第1のストランド材1の両端を結合することによって形成される。そのため、環状コア部3は、図4に示されるように、結合部分3aを有している。第1実施形態では、第1のストランド材1の両端は溶接によって結合されている。溶接で結合した場合には、他の方法で結合した場合と比較して結合部分の増径が生じにくい。そのため、結合部分においても第2のストランド材2の巻き付けがスムーズな環状コア部3を得ることができる。
【0033】
第1のストランド材1は、図5(a)に示されるように、第1の金属素線5を複数本撚り合わせたものである。第1実施形態においては、第1のストランド材1は、図3に示されるように、1本の第1の金属素線5を中心とし、この第1の金属素線5の外周面に6本の第1の金属素線5をS撚りに巻き付けたものである。このように、第1のストランド材1は幾何学的に安定した7本撚りであるため、丈夫で破断が生じにくいものとなっている。
【0034】
第1の金属素線5は合金鋼であり、材質として、C:0.08〜0.27質量%、Si:0.30〜2.00質量%、Mn:0.50〜2.00質量%、Cr:0.20〜2.00質量%を含んでいる。また、Mo:0.01〜1.00質量%、Ni:0.10〜2.00質量%、Co:0.10〜2.00質量%、及びW:0.01〜1.00質量%のうち少なくとも何れか1種類を含有している。更に、Al、Nb、Ti、及びVをそれぞれ0.001〜0.10質量%の範囲で少なくとも何れか1種類含有し、残部がFe及び不可避的に混入してくる不純物からなっている。このような材料からなる第1の金属素線5を第1のストランド材1に用いているため、第1のストランド材1は溶接性が良好で、且つ耐熱性に優れたものとなっている。なお、第1の金属素線5の材質は、前記のものに限られない。
【0035】
第1の金属素線5は、0.06〜0.40mmといった直径を有している。第1の金属素線5の直径が0.06mmよりも大きいので、第1のストランド材1に適度な剛性を持たせることができるとともに、耐疲労性を向上させることができる。また、環状コア部3を形成する第1のストランド材1は、環状金属コードC1の断面中心に位置するため、環状金属コードC1を曲げた状態で第2のストランド材2と比較して応力が小さくなる。そのため、第1の金属素線5の直径を0.06〜0.40mmの範囲内で第2の金属素線6より大径として剛性を高めることができる。また、第1の金属素線5の直径が0.40mmよりも小さいので、第1のストランド材1の剛性が過度に大きくならず、環状金属コードC1を繰り返し応力による疲労破断が生じにくいものとすることができる。
【0036】
外層部4は、環状コア部3を軸芯として第2のストランド材2を巻き付けることにより形成される。第2のストランド材2は、図5(a)に示されるように、第2の金属素線6を複数本撚り合わせたものである。
【0037】
第2の金属素線6は、材料として0.60質量%以上のCを含む高炭素鋼を用いる。0.60質量%以上のCを含む材料を選定することで、第2の金属素線6をより破断強度に優れた鋼線とすることができる。なお、第2の金属素線6は、第1の金属素線5と同質の材料からなっていてもよいが、溶接接合をしない第2の金属素線6には、0.60質量%以上のCを含む材料を用いることがより好ましい。なお、第2の金属素線6の材質は、前記のものに限られない。
【0038】
第2の金属素線6の直径は、0.06〜0.30mmといった直径を有している。これにより、第2のストランド材2に適度な剛性を持たせることができるとともに、耐疲労性を向上させることができる。そのため、環状コア部3に対する第2のストランド材2の巻き付けが容易となり、且つ第2のストランド材2の巻き緩みが生じにくくなる。なお、より好ましくは、第2の金属素線6の直径は、0.06〜0.22mmである。
【0039】
第1実施形態において、第2のストランド材2は、図3に示されるように、第2の金属素線6の外周面に6本の第2の金属素線6をS撚りに巻き付けたものである。つまり、第2のストランド材2は幾何学的に安定した7本撚りであるため、丈夫で破断が生じにくいものとなっている。
【0040】
第2のストランド材2は、環状コア部3に対して複数周にわたって巻き付けられると共に、図3及び図4に示されるように、螺旋状に巻き付けられる。第2のストランド材2は、捩れが無いように巻き付けられる。捩れ無く巻き付けることによって、第2のストランド材2の巻き緩みを抑制することができる。
【0041】
第1実施形態において、第2のストランド材2は環状コア部3の外周面に沿って6周巻き付けられている。第2のストランド材2は第1のストランド材1により形成した環状コア部3と略同一の直径を有しているので、環状コア部3の外周面には、第2のストランド材2が実質的に隙間無く巻き付けられる。よって、外層部4が環状コア部3を密に覆うこととなる。環状金属コードC1の断面は、図5(a)に示されるように、環状コア部3である第1のストランド材1の周りに6つの第2のストランド材2が配列された形状となる。この断面形状は、第1のストランド材1あるいは第2のストランド材2を7本撚りした場合の断面形状と同一である。このように、環状金属コードC1は幾何学的に安定した構造を有しているため、破断強度及び耐疲労性に優れ、且つ径方向の変形に耐え得るものとなっている。
【0042】
第2のストランド材2は、図4に示されるように、環状コア部3の外周面にZ撚りに巻き付けられる。第1のストランド材1及び第2のストランド材2自体はS撚りで形成されているため、環状金属コードC1はS撚りとZ撚りとが混在したものとなる。よって、捩れにくく、表面外観に凹凸の少ない環状金属コードC1を得ることができる。
【0043】
また、第2のストランド材2は、環状コア部3の中心軸に対して所定の巻き付け角度で巻き付けられている。このため、第2のストランド材2が乱れなく巻かれ、表面状態が略均一な環状金属コードC1を得ることができる。第1実施形態においては、図5(b)に示されるように、X方向、すなわち環状コア部3の中心軸が延びる方向、に対する第2のストランド材2の巻き付け角度θは、4.5〜13.8度となっている。巻き付け角度θを4.5度より大きくすることで、第2のストランド材2の巻き緩みが生じにくくなる。巻き付け角度θを13.8度より小さくすることで、第2のストランド材2の伸度が過度に大きくなることを防ぐことができる。つまり、第2のストランド材2の巻き付け角度θを4.5〜13.8度とすることで、適度な伸度を有し、且つ曲げやすい環状金属コードC1を得ることができる。このような環状金属コードC1を、例えば後述する無段変速機の無端金属ベルトに用いた場合、駆動側プーリと被駆動側プーリとの間の動力伝達を精度よく行なうことができる。
【0044】
図6に示されるように、第2のストランド材2の巻き付け始端部2aと巻き付け終端部2bとは、互いに溶接によって結合されている。
そして、この第2のストランド材2の巻き付け始端部2aと巻き付け終端部2bとの接合部7を含む部分が外層被覆10によって覆われている。
【0045】
このように、外層部4は、第2のストランド材2を環状コア部3に巻き付けた後に、第2のストランド材2の巻き付け始端部2aと巻き付け終端部2bとを溶接して結合することによって形成されている。
【0046】
続いて、環状金属コードC1の製造方法について説明する。図7は、環状金属コードC1を製造するための製造装置の一例を示す斜視図である。
この製造装置M1は、環状コア部3を周方向に回転させるドライビングユニット40と、リール51に巻かれた第2のストランド材2を環状コア部3の巻き付け部に供給する第2のストランド材2のサプライ部50とを有する。
【0047】
上記第2のストランド材2のサプライ部50は、所定位置に固定されている。
ドライビングユニット40は、弓形の保持アーム41に設置され、駆動モータと連結された、環状コア部3を周方向に回転させる2つのピンチローラ42a,42bを有する。
【0048】
上記保持アーム41には、環状コア部3の回転方向と逆方向に位置する第2のストランド材2の供給側に、環状コア部3の周囲を囲むクランプユニット43を設けている。このクランプユニット43は、2個のローラ43a,43bからなり、環状コア部3の横方向の振れを防止し、安定した周方向回転を維持し、第2のストランド材2の巻き付け点の位置決めを行い、高い巻き付け性を得ている。なお、この例では環状コア部3を垂直にして横振れを抑えて、周方向に回転させている。
【0049】
上記2個のローラ43a,43bからなるクランプユニット43は、環状コア部3の横方向の振れを防止し、最終仕上げコード径でも環状コア部3の周囲を囲んで、安定した周方向回転を維持し、第2のストランド材2の撚り口として、巻き付け点を固定する機能を持たせればよいので、溝形状は特に拘らず、コ字形の溝形状のほか、円弧状の溝形状、V字形の溝形状でもよい。
【0050】
上記保持アーム41は、クランプユニット43の部分を支点にして、回転円盤61とクランクシャフト62からなる揺動機構60によって振り子運動するように、スタンド44に揺動可能に設置されている。
保持アーム41に保持された環状コア部3は、振り子運動の周期の一端で、図8の実線で示すように、リール51が、環状コア部3の輪の外に位置し、環状コア部3の振り子運動の周期の他端で、図9の実線で示すように、環状コア部3の輪の中に位置するように、スイングする。
【0051】
第2のストランド材2のサプライ部50には、前後一対の対向するカセットスタンド52が、保持アーム41に保持された環状コア部3の振り子運動を妨げない距離をおいて水平に設置され、カセットスタンド52の先端に、環状コア部3の面を挟んで対向するリール受け渡し機構が設けられている。
【0052】
サプライ部50は、第2のストランド材2を巻き取ったリール51と、このリール51の外径より少し大きい径で、且つ少なくともリール内幅に相当する円筒形状の外周壁を有するカセット53とからなる。リール51は、ストランド材1の巻き面全体を被うようにカセット53内に回転可能に収容され、所謂カートリッジ化されている。カセット53の外周壁には、巻き出し穴が形成され、この巻き出し穴から第2のストランド材2が環状コア部3の巻き付け点のクランプユニット43に向かって引き出されている。第2のストランド材2は、予め調整されたコイル径でリール51に巻かれており、サプライ部50のカセット53内にセットされている。
【0053】
前記一対のカセットスタンド52の先端の対向位置には、それぞれカセット53を抜き差し自在に装着することができるガイドロッドと、一方のガイドロッドに装着されたカセット53を他方のガイドロッドに移し替える受け渡し機構とが設置されている。この受け渡し機構は、エアーシリンダによってロッドを出入りさせ、カセット53の中心部を押すことにより、一方のガイドロッドに装着されたカセット53を他方のガイドロッドに移し替えることができる。
【0054】
このような構成を有する製造装置M1を用いた場合、環状金属コードC1は以下の工程を経て製造される。
【0055】
図10に示すように、第1のストランド材1を環状に湾曲させ、その始端部と終端部とを溶接して結合し、環状コア部3を形成する。
【0056】
次に、第2のストランド材2の巻き付け始端を、粘着テープ等を用いて環状コア部3に仮止めする。仮止め後、環状コア部3を製造装置M1のドライビングユニット40にセットし、この環状コア部3を周方向に回転させて、第2のストランド材2の環状コア部3への巻き付けを開始する。
【0057】
環状コア部3を周方向に回転させ、Z巻きの場合は、第2のストランド材2を巻いたリール51が環状コア部3の面に対して左側に位置し、図8に実線で示すリール51が環状コア部3の輪の外に位置する状態から、環状コア部3を、クランプユニット43を支点にして、図9に実線で示すリール51が環状コア部3の輪の中に入る位置まで、環状コア部3を振り子運動させ、カセットスタンド52の先端に設けてあるエアーシリンダにより、リール51を環状コア部3の面に対して直角に移動させ、他方のカセットスタンド52のガイドロッドにカセット53を移し替えると、巻き付けが半巻き行われる。その後、図9に実線で示すリール51が環状コア部3の輪の中に位置する状態から、環状コア部3を、クランプユニット43を支点にして、図8に実線で示すリール51が環状コア部3の輪の外に出る位置まで、環状コア部3を振り子運動させ、環状コア部3の輪の外で、再びエアーシリンダによりカセット53とともにリール51を環状コア面に対して直角に移動させると、1巻き付けが完了する。このような動作を繰り返すことにより、外層部4となる第2のストランド材2は環状コア部3の外周面に螺旋状に巻き付けられることとなる。
【0058】
リール51は、所定位置で環状コア部3のコア面を横断往復し、環状コア部3は、第2のストランド材2の巻き付け点となるクランプユニット43を支点にして、振り子運動するので、リール51から第2のストランド材2の巻き付け点までの距離がほぼ一定に保たれ、巻き付けの際に、リール51から引き出される第2のストランド材2が緩んだりせず、一定の張力下で第2のストランド材2が環状コア部3に巻き付けられる。
【0059】
第2のストランド材2を巻いたリール51の移動軌跡と、振り子運動する環状コア部3の移動軌跡とを図示すると、図11のようになる。
即ち、リール51が、環状コア部3の外側の図11(a)に示す位置にある状態から、図11(b)に示す環状コア部3の輪の中にリール51が位置する状態まで環状コア部3を振り子運動させ、この図11(b)に示す位置で、リール51を図11(c)に示す環状コア部3の反対面に移し替え、次いで、環状コア部3の反対面にリール51がある状態で、図11(c)に示す位置から図11(d)に示す環状コア部3の輪の外にリール51が位置する状態まで、環状コア部3を振り子運動させ、リール51を環状コア部3の反対面から元の面の始点位置(図11の(a)の位置)に戻すというサイクルを繰り返す。このように、本実施形態では、図11の(a)→(b)→(c)→(d)→(a)のように、リール51に対して、環状コア部3を振り子移動させ、図11の(b)→(c)、(d)→(a)のように、環状コア部3のコア面に対してリール51を直角移動させることにより、第2のストランド材2を環状コア部3の周囲に螺旋状に巻き付けている。
【0060】
第2のストランド材2の巻き付け終了後、図6に示されるように、第2のストランド材2の巻き付け始端部2aと巻き付け終端部2bとを溶接して接合する。これにより、第2のストランド材2からなる外層部4を得ることができる。
【0061】
第2のストランド材2の巻き付け始端部2aと巻き付け終端部2bとを接合部7にて溶接した後、上述の環状コア部3及び外層部4に低温焼鈍処理を施す。より具体的には、真空中又は減圧雰囲気中にアルゴンを導入した圧力室内で、環状コア部3及び外層部4に対して熱処理を施す。熱処理する際の温度は、70〜380℃である。これにより、第1の金属素線5及び第2の金属素線6の内部歪みを除去することができ、歪みのない環状金属コードC1を得ることができる。
【0062】
その後、上記環状金属コードC1における非被覆部10Aを形成すべく環状の外周側半面における環状方向の全周にわたって、例えば、粘着テープあるいは軟金属板テープなどのマスキングテープを貼り付ける。
そして、この環状金属コードC1の外周面に被覆用接着剤を塗布し、この被覆用接着剤の固化後に、マスキングテープを除去する。
このようにすると、環状金属コードC1は、その外周側が外層被覆10によって覆われ、外層被覆10には、環状の外周側半面における環状方向の全周にわたってスリット状の非被覆部10Aが形成される。
【0063】
このような環状金属コードC1を、例えば後述する無段変速機の無端金属ベルトに用いた場合、蛇行せずに回転する無端金属ベルトを得ることができる。蛇行せずに回転する無端金属ベルトは、周囲の部品と接触して磨耗することが無いため、長期間にわたって高性能を維持することができる。
【0064】
以上のように、第1実施形態では、弾性を有する被覆材からなる外層被覆10によって覆われているので、環状金属コードC1を破断強度及び耐疲労性に優れた丈夫なものとすることができる。また、外層被覆10によって第1のストランド材1及び第2のストランド材2がばらけるような不具合をなくすことができるとともに外層被覆10が緩衝材となることにより、例えば、小さな曲率半径にて曲げを受けるプーリ等との接触箇所においても、外層被覆10によって環状金属コードC1が接触する相手側の部材との摩擦抵抗が大きくなるため、滑りを抑えて摩耗を極力なくすことができるとともに良好な動力伝達効率を得ることができ、動力伝達ベルトとして用いて好適なものとすることができる。
しかも、被覆用接着材を所定の箇所に塗布して接着固化させることにより、極めて容易に外層被覆10を形成して補強することができる。
【0065】
また、外層被覆10における環状の外周側半面に、少なくとも1箇所の非被覆部10Aを有しているので、非被覆部10Aから内部へ潤滑剤を円滑に浸透させることができ、環状コア部3と外層部4との間、外層部4を構成する第2のストランド材2同士の間及び各ストランド材1,2を構成する各金属素線5,6同士の間におけるフレッチング摩耗による強度低下及び疲労による寿命短縮を抑えることができる。
【0066】
また、外層被覆10における環状の外周側半面に、環状方向の全周にわたる非被覆部10Aが、外層部4の断面における周方向の少なくとも1箇所に設けられているので、非被覆部10Aから内部へ潤滑剤を円滑に浸透させることができるとともに、各ストランド材1,2同士の間におけるフレッチング摩耗による強度低下及び疲労による寿命短縮を抑えつつ、環状方向の全周にわたる剛性の均一化を図ることができる。
【0067】
また、外層被覆10として用いる被覆材の固化後の物性のうち、硬度(JIS−A)が22〜60、伸びが110〜500%であるので、柔軟性及び適度な伸びを確保しつつ高い補強効果を得ることができる。
ここで、被覆材の固化後の硬度が高すぎると、環状金属コードC1のしなやかさが失われ、逆に硬度が低すぎると、相手側の部材との接触時に、永久変形を起こしたり、あるいは削り取られるおそれがある。また、適度な伸びがないと、環状金属コードC1の曲げ変形抵抗が増加し、疲労し易くなってしまう。
【0068】
また、前述した環状金属コードC1の製造方法によれば、環状金属コードC1における外層被覆10を設けない非被覆部10Aとなる部分にマスキングテープを貼り付け、環状金属コードC1の外周面に被覆材である被覆用接着剤を塗布し、この被覆用接着剤の固化後にマスキングテープを除去することにより、被覆用接着剤からなる外層被覆10によって覆われ、丈夫でしかも外層部4となる第2のストランド材2がばらけるような不具合がなく、さらに、潤滑剤の浸透が円滑な環状金属コードC1を容易に製造することができる。
【0069】
さらに、第1実施形態では、第1の金属素線5を7本撚り合わせてなる第1のストランド材1に、第2の金属素線6を7本撚り合わせてなる第2のストランド材2を巻き付けるので、環状金属コードC1を丈夫なものとすることができる。
【0070】
また、第1のストランド材1及び第2のストランド材2は別々に結合されるので、第1のストランド材1及び第2のストランド材2をまとめて結合する場合と比べて、環状金属コードC1が完全に破断する可能性を抑制できる。第1のストランド材1から環状コア部3を形成し、かかる環状コア部3を軸芯として第2のストランド材2を巻き付けるため、破断強度の大きい環状金属コードを得ることができる。外層部4を形成する際には、第2のストランド材2を複数本巻き付けるのではなく第2のストランド材2を6周にわたって巻き付けるので、第2のストランド材2は1本あればよい。よって、第2のストランド材2を複数本使用する場合と比べて結合箇所が少なくなるため、環状金属コードC1の破断強度の低下を抑制することができると共に、製造を容易とすることができる。第2のストランド材2の巻き付けは所定の巻き付け角度で行なうので、第2のストランド材2の巻き乱れがなく、表面状態が略均一な環状金属コードC1を得ることができる。このような環状金属コードC1には外からのカが均一に付与されることとなるため、破断強度の低下を抑制することができる。
【0071】
また、第1のストランド材1の結合部分と第2のストランド材2の結合部分とは、環状コア部3の周方向における位置が異なっている。結合部分の位置を互いにずらすことにより、環状コア部3及び外層部4の同時破断が生じにくくなるので、環状金属コードC1の破断強度の低下を抑制することができる。
【0072】
なお、上記実施形態では、外層被覆10の環状の外周側半面における環状方向の全周にわたってスリット状の非被覆部10Aを形成したが、この非被覆部10Aは、外層被覆10の環状の外周側半面における少なくとも1箇所に形成すれば良く、この場合も、この非被覆部10Aから内部へ潤滑剤を浸透させることができる。そして、このようにすると、非被覆部10Aを極力少なくすることができ、外層被覆10による補強効果を高めることができるとともに、長寿命化を図ることができる。
【0073】
ここで、非被覆部10Aの他の形態例を説明する。
図12は、非被覆部10Aの他の形態例を示す断面図である。
【0074】
図12(a)に示すものは、外層被覆10における環状の外周側半面に、複数の非被覆部10Aを、環状方向の少なくとも1箇所あるいは全周にわたって形成したもので、このような構造の環状金属コードC1によれば、非被覆部10Aから内部へ潤滑剤をより円滑に浸透させることができ、環状コア部3と外層部4との間、外層部4を構成する第2のストランド材1同士の間及び各ストランド材1,2を構成する各金属素線5,6同士の間におけるフレッチング摩耗による強度低下及び疲労による寿命短縮を抑えることができる。
【0075】
図12(b)に示すものは、外層被覆10における環状の外周側半面を、環状方向の全周にわたって非被覆部10Aとしたもので、このような構造の環状金属コードC1によれば、非被覆部10Aから内部へ潤滑剤をより円滑に浸透させることができるとともに、外層被覆10を設けることによる剛性の増加を極力抑えつつ各ストランド材1,2を一体化させることができる。
【0076】
図12(c)に示すものは、外層被覆10における環状の内周側半面に、一つの非被覆部10Aを、環状方向の少なくとも1箇所あるいは全周にわたって形成したもので、このような構造の環状金属コードC1によれば、非被覆部10Aから内部へ潤滑剤を環状の内周側からも円滑に浸透させることができ、環状コア部3と外層部4との間、外層部4を構成する第2のストランド材1同士の間及び各ストランド材1,2を構成する各金属素線5,6同士の間におけるフレッチング摩耗による強度低下及び疲労による寿命短縮を抑えることができる。
【0077】
図12(d)に示すものは、外層被覆10における環状の内周側半面に、複数の非被覆部10Aを、環状方向の少なくとも1箇所あるいは全周にわたって形成したもので、このような構造の環状金属コードC1によれば、非被覆部10Aから内部へ潤滑剤を環状の内周側から、より円滑に浸透させることができ、環状コア部3と外層部4との間、外層部4を構成する第2のストランド材1同士の間及び各ストランド材1,2を構成する各金属素線5,6同士の間におけるフレッチング摩耗による強度低下及び疲労による寿命短縮を抑えることができる。
【0078】
図12(e)に示すものは、外層被覆10における環状の外周側半面を、環状方向の全周にわたって非被覆部10Aとし、さらに、外層被覆10における環状の内周側半面に、一つの非被覆部10Aを、環状方向の少なくとも1箇所あるいは全周にわたって形成したもので、このような構造の環状金属コードC1によれば、環状の外周側及びの内周側から内部へ潤滑剤をより円滑に浸透させることができるとともに、外層被覆10を設けることによる剛性の増加を極力抑えつつ各ストランド材1,2を一体化させることができる。
【0079】
次に、上述した構成を有する環状金属コードC1を備える無端金属ベルトの一例について説明する。
図13は本実施形態に係る無端金属ベルトの使用状態を示す模式的な斜視図である。
【0080】
無端金属ベルトB1は、例えば図13に示されるような、精密機器やその他の産業機械で使用されている減速機20用に用いられる。無端金属ベルトB1は、並行して配列された3本の環状金属コードC1からなり、小径の駆動側プーリ22と大径の被駆動側プーリ24との間の動力伝達を担っている。駆動側プーリ22の回転中心には、駆動用モータ26の駆動軸が接続されている。駆動側プーリ22及び被駆動側プーリ24の外周には各環状金属コードC1を安定的に掛け渡すための円周溝が形成され、無端金属ベルトB1を駆動側プーリ22及び被駆動側プーリ24に掛け渡すことにより、駆動側プーリ22の回転力が無端金属ベルトB1を介して被駆動側プーリ24に伝達される。その際、駆動側プーリ22の回転速度は被駆動側プーリ24にて減速され、駆動側プーリ22のトルクは被駆動側プーリ24にて増大される。被駆動側プーリ24は、例えば図示せぬ他のプーリ等に軸接続され、動力を伝達する。
【0081】
環状金属コードC1は、先に述べたように破断強度が非常に大きい。また、環状金属コードC1は、断面が略円形状であるため、断面が矩形状のものと比べて捩れに強い。したがって、無端金属ベルトとして平ベルトを使用する場合と比較して、複数本の環状金属コードC1を用いて構成した無端金属ベルトB1は、耐屈曲性及び耐久性に非常に優れたものとなる。
【0082】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。
例えば、第1実施形態の環状金属コードC1では、外層被覆10を、被覆用接着剤を固化して形成したが、この外層被覆10としては、タイヤあるいはベルト用のゴムであっても良い。
つまり、ゴムによって環状金属コードC1を覆うことにより、環状金属コードC1に外層被覆10を形成しても良い。
【0083】
そして、このように、ゴムによって外層被覆10を形成した場合も、環状金属コードC1の周囲に、ゴムからなる外層被覆10を施すことにより、環状金属コードC1を破断強度及び耐疲労性に優れた丈夫なものとすることができ、外層被覆10によって第1のストランド材1及び第2のストランド材2がばらけるような不具合をなくすことができるとともにゴムからなる外層被覆10が緩衝材となることにより、例えば、小さな曲率半径にて曲げを受けるプーリ等との接触箇所においても、外層被覆10によって環状金属コードC1が接触する相手側の部材との摩擦抵抗が大きくなるため、滑りを抑えて摩耗を極力なくすことができるとともに良好な動力伝達効率を得ることができ、動力伝達ベルトとして用いて好適なものとすることができる。
【0084】
また、このように、外層被覆10をゴムによって形成した場合、このゴムに含まれる硫黄成分が第2のストランド材2のメッキと反応して接着する。
なお、ゴムからなる外層被覆10を金属とゴムとを接着する金属ゴム用接着剤によって外層部4を構成する第2のストランド材2と接着させても良く、この場合、第2のストランド材2におけるメッキが施されていない場合に有効であり、第2のストランド材2へゴムを確実に固着させることができ、補強効果を高めることができる。例えば、金属ゴム用接着剤として、ケムロック(ロード・ファー・イースト・インコーポレイテッド製)を使用できる。
【0085】
また、この外層被覆10を構成するゴムとしては、8MPa以下の加硫圧力にて加硫することが好ましく、このようにすると、内部へのゴムの入り込みを抑えて潤滑剤を良好に浸透させることができ、環状コア部3と外層部4との間、外層部4を構成する第2のストランド材2同士の間及び各ストランド材1,2を構成する各金属素線5,6同士の間における摩擦による強度低下及び疲労による寿命短縮を抑えることができる。
【0086】
ここで、ゴムによる外層被覆10の形成方法について説明する。
まず、環状金属コードC1における非被覆部10Aとなる所定箇所に、例えば、粘着テープあるいは軟金属板テープなどのマスキングテープを貼り付ける。
そして、この環状金属コードC1の外周面に、テープ状の生ゴムを螺旋状に巻き付けることにより貼り付ける。
【0087】
次いで、このように生ゴムを貼り付けた環状金属コードC1に織布を巻き、加硫缶内に収容し、加硫缶に加圧水蒸気を導入して加圧する。
このようにすると、環状金属コードC1に巻き付けた可塑性を有する生ゴムが加硫され、弾性を有する加硫ゴムとなる。
なお、断面視半円弧状の環状溝を有する一対の金型の一方に環状金属コードC1を配置し、その上部に他方の金型を被せた状態にて、この金型を加硫缶内に収納して加圧水蒸気を導入して加圧しても良い。
【0088】
その後、加硫缶から取り出した環状金属コードC1からマスキングテープを除去する。
このようにすると、環状金属コードC1は、その外周側がゴムからなる外層被覆10によって覆われ、また、非被覆部10Aが形成される。
【0089】
そして、上記のように、ゴムからなる外層被覆10を有する環状金属コードC1の製造方法によれば、環状金属コードC1における外層被覆10を設けない非被覆部10Aとなる部分にマスキングテープを貼り付け、環状金属コードC1の外周面に生ゴムを貼り付け、加圧加硫処理を施した後にマスキングテープを除去することにより、ゴムからなる外層被覆10によって覆われ、丈夫でしかも外層部4となる第2のストランド材2がばらけるような不具合がなく、さらに、潤滑剤の浸透が円滑な環状金属コードC1を容易に製造することができる。
【0090】
また、例えば、第1実施形態の環状金属コードC1では、第2のストランド材2を環状コア部3の外周面に沿って6周巻き付ける構成とした。これを、第1のストランド材1と第2のストランド材2との直径が異なる場合には、環状コア部3を大径として7周或いは8周巻き付ける構成としてもよい。
【0091】
また、第1実施形態の環状金属コードC1では、図5(a)に示されるように、環状コア部3の外周面を1層の第2のストランド材2が覆っている。これを、環状コア部3の外周面を複数層の第2のストランド材2が覆うようにしてもよい。例えば、環状コア部3の外周面を2層の第2のストランド材2で覆う場合には、第2のストランド材2を環状コア部3の外周面に6周巻き付けて1層目を形成した後、かかる1層目の外周面に第2のストランド材2を12周巻き付けて2層目を形成することとなる。
【0092】
また、第1実施形態の環状金属コードC1では、第1のストランド材1及び第2のストランド材2をS撚りとし、環状コア部3に対する第2のストランド材2の巻き付けをZ撚りで行なうとしたが、第1のストランド材1及び第2のストランド材2をZ撚りとし、環状コア部3に対する第2のストランド材2の巻き付けをS撚りで行なうとしてもよい。
【0093】
また、第1実施形態の環状金属コードC1は、図5(a)に示されるように、断面が略円形状となっているが、断面を扁平形状としてもよい。この場合、略円形状の環状金属コードC1にプレス等を施して、変形させることとなる。このように環状金属コードC1を扁平形状とすることによって、かかる環状金属コードC1を備える無端金属ベルトB1と、駆動側プーリ12及び被駆動側プーリ14との接触面積を大きくすることができる。その結果、駆動側プーリ12と被駆動側プーリ14との間の動力伝達をより効率よく行なうことができる。なお、扁平率は66%以上であることが好ましい。
【0094】
また、本実施形態の無端金属ベルトB1において、駆動側プーリ12及び被駆動側プーリ14に環状金属コードC1がそれぞれ3本ずつ掛け渡される形態としたが、掛け渡される環状金属コードC1の本数はこれに限られない。求められる耐屈曲性及び耐久性に応じて、環状金属コードC1の本数を調整することが可能である。
【0095】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る環状金属コードについて図面を参照しつつ説明する。なお、第1実施形態に係る環状金属コードは、第1のストランド材及び第2のストランド材から構成したのに対して、第2実施形態に係る環状金属コードは、1本のストランド材から構成した点が異なる他は共通の構造を有するものであり、上記第1実施形態と同一構成及び同一構造部分には、同一符号を付して説明する。
【0096】
図14は第2実施形態に係る環状金属コードの斜視図、図15は、第2実施形態に係る環状金属コードの外層被覆を施す前の斜視図、図16は第2実施形態に係る環状金属コードを示す径方向の断面斜視図である。図17は、第2実施形態に係る環状金属コードが備える環状コア部にストランド材を1周巻き付けた様子を示す斜視図である。図18(a)は、第2実施形態に係る環状金属コードを示す径方向の断面図であり、図18(b)は、第2実施形態に係る環状金属コードの側面図である。図19は、第2実施形態に係る環状金属コードの一部を示す拡大斜視図である。
【0097】
図14に示すように、環状金属コードC2は、その外周側が外層被覆10によって覆われている。この外層被覆10は、第1実施形態と同様の材質及び構成であり、被覆用接着剤を塗布して固化させることにより形成されている。もしくは、第1実施形態に記載したようにゴムによって形成されていても良い。
そして、この環状金属コードC2は、外層被覆10が施されていない非被覆部10Aを有している。この非被覆部10Aは、外層被覆10における環状の外周側半面にて、環状方向の全周にわたってスリット状に形成されている。
【0098】
図15及び図16に示されるように、環状金属コードC2は、環状コア部13と、環状コア部13の外周面を覆う外層部14とを備えるものである。
【0099】
環状コア部13は、図17に示されるように、ストランド材11を所定の径で1周分湾曲させて環状にすることにより形成される。そして、この環状コア部13の周囲の外層部14は、環状コア部13を軸芯として、環状コア部13を構成するストランド材11を引き続き環状コア部13に巻き付けることにより形成される。
【0100】
ストランド材11は、図18(a)に示されるように、金属素線15を複数本撚り合わせたものである。第2実施形態においては、ストランド材11は、図16に示されるように、1本の金属素線15を中心とし、この金属素線15の外周面に6本の金属素線15をS撚りに巻き付けたものである。このように、ストランド材11は幾何学的に安定した7本撚りであるため、丈夫で破断が生じにくいものとなっている。
【0101】
金属素線15は、材料として0.60質量%以上のCを含む高炭素鋼を用いる。0.60質量%以上のCを含む材料を選定することで、金属素線15をより破断強度に優れた鋼線とすることができる。なお、金属素線15の材質は、前記のものに限られない。
【0102】
金属素線15の直径は、0.06mm以上0.40mm以下となっている。ここで、金属素線5の直径が0.06mm以上であるので、ストランド材1の剛性が十分となり、環状コア部13を変形しにくいものとすることができる。また、金属素線15の直径が0.40mm以下であるので、ストランド材1の剛性が適度に大きくならず、環状金属コードC2を繰り出し応力による疲労破断が生じにくいものとすることができる。
【0103】
つまり、このような直径の金属素線15でストランド材11を形成すると、適度な剛性を有するストランド材11を得ることができ、よって、環状コア部13に対するストランド材11の巻き付けが容易となり、且つストランド材11の巻き緩みが生じにくくなる。
【0104】
ストランド材11は、環状コア部13に対して複数周にわたって巻き付けられるとともに、図16及び図17に示されるように、螺旋状に巻き付けられる。ストランド材11は、捩れが無いように巻き付けられる。捩れ無く巻き付けることによって、ストランド材11の巻き緩みを抑制することができる。
【0105】
第2実施形態において、外層部14を構成するストランド材11は環状コア部13の外周面に沿って6周巻き付けられている。環状コア部13に巻き付けるストランド材11は環状コア部13と連続した1本のストランド材11からなり、環状コア部13の外周面には、ストランド材11を6周巻き付けることによって、実質的に隙間無く巻き付けることが可能である。これにより、外層部14が環状コア部13を密に覆うこととなる。環状金属コードC2の断面は、図18(a)に示されるように、環状コア部13であるストランド材11の周りに6つのストランド材11が配列された形状となる。
【0106】
外層部14を構成するストランド材11は、図17に示されるように、環状コア部13の外周面にZ撚りに巻き付けられる。ストランド材11自体はS撚りで形成されているため、環状金属コードC2はS撚り構造とZ撚り構造を組み合わせたものとなる。よって、金属素線15の撚り方向と、環状コア部13に対する外層部14の巻き付け方向とが逆であり、捩れにくく、表面外観に凹凸の少ない環状金属コードC2を得ることができる。
【0107】
また、外層部14を構成するストランド材11は、環状コア部13の中心軸に対して所定の巻き付け角度で巻き付けられている。このため、ストランド材11が乱れなく巻かれ、表面状態が略均一な環状金属コードC2を得ることができる。第2実施形態においては、図17(b)に示されるように、X方向、すなわち環状コア部13の中心軸が延びる方向に対するストランド材11の巻き付け角度θは、4.5度以上13.8度以下となっている。巻き付け角度θを4.5度以上とすることで、ストランド材11の巻き緩みが生じにくくなる。巻き付け角度θを13.8度以下とすることで、ストランド材11の伸度が過度に大きくなることを防ぐことができる。つまり、環状コア部13に巻き付ける外層部14のストランド材11の巻き付け角度θを4.5度以上13.8度以下とすることで、適度な伸度を有し、且つ曲げやすい環状金属コードC2を得ることができる。このような環状金属コードC2を、例えば前記の無端金属ベルトに用いた場合、駆動側プーリと被駆動側プーリとの間の動力伝達を精度よく行なうことができる。
【0108】
図19に示されるように、環状コア部13及び外層部14を構成するストランド材11の巻き付け始端部11aと巻き付け終端部11bとは、互いに溶接によって結合されており、さらに、その結合部17は、接続部材18によって覆われている。
この接続部材18は、コイルバネ状に形成された可撓性に優れたスリーブからなるもので、この接続部材18がストランド材11の両端部である始端部11aと終端部11bとの結合部17の外周を覆うように接着剤によって固定されている。コイルバネ状スリーブからなる接続部材18は、ストランド材11の湾曲形状に合わせて柔軟に変形し、ストランド材11の溶接箇所を保護及び補強する。
【0109】
このように、可撓性に優れたコイルバネ状スリーブからなる接続部材18を用いてストランド材11の始端部11aと終端部11bとを結合することにより、環状コア部13側のストランド材11の始端部11aと、この始端部11aに対して傾斜した外層部14のストランド材11の終端部11bとの結合部17を、その形状に合わせて良好に覆った状態に取り付けることができ、これにより、このストランド材11の始端部11aと終端部11bとの結合部17を良好に保護することができる。また、接続部材18は結合部17におけるストランド材11の変形を阻害しないため、結合部17とその他の箇所とのストランド材11の可撓性を同等にでき、環状金属コードC2の機械的特性を全周に亘って略均一にすることができる。
【0110】
また、この始端部11aと終端部11bとの結合部17は、環状金属コードC2の円弧に対して、その円弧の内周側及び外周側を除く、両側部側の一方に配置されている。これにより、環状金属コードC2がその径方向に変形しても、この結合部17に作用する負荷の低減を図ることができ、結合部17における破断を抑制できる。
【0111】
このように、環状金属コードC2は、環状コア部13を構成するストランド材11に外層部14を構成するストランド材11を巻き付けた後に、接続部材18を用いてストランド材11の始端部11aと終端部11bとを結合することによって形成されている。
【0112】
なお、第2実施形態の結合部17に接続部材18を設けず、溶接のみの接続構造としてもよい。また、第1実施形態の結合部7に第2実施形態の接続部材18を設けてもよい。何れにせよ、ストランド材11の結合部は、外層被覆10によって覆われて保護されるため、環状金属コードとして要求される強度を確保できる。
【0113】
続いて、環状金属コードC2の製造方法について説明する。製造装置としては、第1実施形態と同様に図7から図9に示したものを使用できる。
まず、図20に示すように、1本のストランド材11の始端側を環状に湾曲させ、環状コア部13を形成する。
【0114】
次いで、始端部11a近傍部分における2本分のストランド材11が重なる部分を、粘着テープ、紐あるいはスプリング等を巻き付けることによって仮止めする。
仮止め後、環状コア部13を製造装置M1(図7から図9参照)のドライビングユニット40にセットし、この環状コア部13を周方向に回転させて、ストランド材11の環状コア部13への巻き付けを開始する。
【0115】
ストランド材11の巻き付けは、第1実施形態と同様、図11に示されるように行われ、外層部14となるストランド材11は環状コア部13の外周面に螺旋状に巻き付けられることとなる。
【0116】
ストランド材11の巻き付け終了後、ストランド材11の巻き付け終端部11bを接続部材18に挿通させるとともに始端部11a近傍部分の仮止めを取り外し、始端部11aと終端部11bとを溶接して結合する。次いで、始端部11aと終端部11bとの結合部17に接着剤を塗布し、結合部17を覆う位置まで接続部材18をスライドさせる。このようにすると、図19に示されるように、接着剤によって接続部材18が結合部17に固定され、結合部17が接続部材18によって保護され、結合箇所における破断が抑制される。
【0117】
ここで、ストランド材11は、環状コア部13側の始端部11aに対して外周層14側の終端部が傾斜されるため、結合部17が多少湾曲するが、接続部材18はコイルバネ状スリーブからなる可撓性に優れたものであるので、接続部材18を結合部17へ容易に装着することができる。
そして、上記のように、環状コア部13にストランド材11を巻き付けて始端部11aと終端部11bとを結合することにより、環状コア部13の周囲に外層部14を設けることができる。
【0118】
接続部材18を用いて始端部11a及び終端部11bを結合した後、上述の環状コア部13及び外層部14に第1実施形態と同様に低温焼鈍処理を施す。これにより、金属素線15の内部歪みを除去することができ、歪みのない環状金属コードC2を得ることができる。
【0119】
その後、第1実施形態と同様に、非被覆部10Aとなる所定箇所にマスキングテープを貼り付け、環状金属コードC2の外周面に被覆用接着剤を塗布し、この被覆用接着剤の固化後に、マスキングテープを除去する。
これにより、環状金属コードC2は、その外周側が外層被覆10によって覆われ、環状の外周側半面に、周方向へわたって非被覆部10Aが形成される。
【0120】
このような環状金属コードC2を、例えば前記の無端金属ベルトに用いた場合、蛇行せずに回転する無端金属ベルトを得ることができる。蛇行せずに回転する無端金属ベルトは、周囲の部品と接触して磨耗することが無いため、長期間にわたって高性能を維持することができる。
【0121】
以上のように、第2実施形態の場合も、弾性を有する被覆材からなる外層被覆10によって覆われているので、環状金属コードC2を破断強度及び耐疲労性に優れた丈夫なものとすることができる。また、外層被覆10によってストランド材11がばらけるような不具合をなくすことができるとともに外層被覆10が緩衝材となることにより、例えば、小さな曲率半径にて曲げを受けるプーリ等との接触箇所においても、外層被覆10によって環状金属コードC2が接触する相手側の部材との摩擦抵抗が大きくなるため、滑りを抑えて摩耗を極力なくすことができるとともに良好な動力伝達効率を得ることができ、動力伝達ベルトとして用いて好適なものとすることができる。
しかも、被覆用接着材を所定の箇所に塗布して接着固化させることにより、極めて容易に外層被覆10を形成して補強することができる。
【0122】
また、外層被覆10における環状の外周側半面に、非被覆部10Aを有しているので、非被覆部10Aから内部へ潤滑剤を円滑に浸透させることができ、環状コア部3と外層部4との間、各ストランド材11の間及び各ストランド材11を構成する各金属素線15同士の間におけるフレッチング摩耗による強度低下及び疲労による寿命短縮を抑えることができる。
【0123】
また、環状方向の全周にわたって非被覆部10Aが形成されているので、非被覆部10Aから内部へ潤滑剤を円滑に浸透させることができるとともに、各ストランド材11同士の間におけるフレッチング摩耗による強度低下及び疲労による寿命短縮を抑えつつ、環状方向の全周にわたる剛性の均一化を図ることができる。
【0124】
また、外層被覆10として用いる被覆材の固化後の物性のうち、硬度(JIS−A)が22〜60、伸びが110〜500%であるので、柔軟性及び適度な伸びを確保しつつ高い補強効果を得ることができる。
ここで、被覆材の固化後の硬度が高すぎると、環状金属コードC2のしなやかさが失われ、逆に硬度が低すぎると、相手側の部材との接触時に、永久変形を起こしたり、あるいは削り取られるおそれがある。また、適度な伸びがないと、環状金属コードC2の曲げ変形抵抗が増加し、疲労し易くなってしまう。
【0125】
また、前述した環状金属コードC2の製造方法によれば、環状金属コードC2における外層被覆10を設けない非被覆部10Aとなる部分にマスキングテープを貼り付け、環状金属コードC2の外周面に被覆材である被覆用接着剤を塗布し、この被覆用接着剤の固化後にマスキングテープを除去することにより、被覆用接着剤からなる外層被覆10によって覆われ、丈夫でしかも外層部4となるストランド材11がばらけるような不具合がなく、さらに、潤滑剤の浸透が円滑な環状金属コードC2を容易に製造することができる。
【0126】
また、第2実施形態では、金属素線15を7本撚り合わせてなるストランド材11により、環状コア部13と、この環状コア部13に対して螺旋状に複数周巻き付けられて環状コア部13の外周面を覆う外層部14とが形成され、環状コア部13と外層部14が連続したストランド材11で形成されているので、環状金属コードC2を丈夫なものとすることができ、従来のように複数のストランド材を周方向の一箇所でまとめて結合する場合と比べて、環状金属コードC2が完全に破断する可能性を抑制できる。つまり、ストランド材11から環状コア部13を形成し、かかる環状コア部13を軸芯として連続してストランド材11を巻き付けるため、破断強度の大きい環状金属コードを得ることができる。さらに、環状金属コードC2にかかる外力を連続した環状コア部13と外層部14により受けることができるため、付与された外力を環状金属コードC2全体で分散させて局所的に負荷が集中することを回避できる。
【0127】
しかも、外層部14を形成する際には、ストランド材11を複数本巻き付けるのではなく環状コア部13を構成するストランド材11を引き続き6周にわたって巻き付けるので、ストランド材11は1本あればよく、よって、ストランド材11を複数本使用する場合と比べて結合箇所が少なくなるため、環状金属コードC2の破断強度の低下を抑制することができるとともに、製造を容易とすることができる。また、外層部14のストランド材11の巻き付けは所定の巻き付け角度で行なうので、ストランド材11の巻き乱れがなく、表面状態が略均一な環状金属コードC2を得ることができる。このような環状金属コードC2には外からの力が均一に付与されることとなるため、破断強度の低下を抑制することができる。
【0128】
なお、上記第2実施形態でも、外層被覆10の環状の外周側半面における環状方向の全周にわたってスリット状の非被覆部10Aを形成したが、この非被覆部10Aは、外層被覆10の環状の外周側半面における少なくとも1箇所に形成すれば良く、この場合も、この非被覆部10Aから内部へ潤滑剤を浸透させることができる。そして、このようにすると、非被覆部10Aを極力少なくすることができ、外層被覆10による補強効果を高めることができるとともに、長寿命化を図ることができる。
【0129】
また、第2実施形態でも、第1実施形態において説明した図12に示した非被覆部の形態を採り得ることが可能であり、その場合、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0130】
また、第2実施形態に係る環状金属コードC2も図13に示した無端金属ベルトに用いることができる。
そして、この環状金属コードC2を用いた無端金属ベルトによれば、先に述べたように、環状金属コードC2の破断強度が非常に大きいので、耐屈曲性及び耐久性に非常に優れたものとなる。
【0131】
なお、第2実施形態に係る環状金属コードC2の場合も、上記の実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。
例えば、第2実施形態の環状金属コードC2においても、外層被覆10を、タイヤあるいはベルト用のゴムから形成しても良い。
つまり、ゴムによって環状金属コードC2を覆うことにより、環状金属コードC2に外層被覆10を形成しても良い。ゴムによって外層被覆10を形成した場合も、第1実施形態で説明したように、環状金属コードC2を破断強度及び耐疲労性に優れた丈夫なものとすることができる。
【0132】
なお、上記実施形態の環状金属コードC2では、環状コア部13を形成する際に、ストランド材11の一端側に余長部を形成して仮止めすることにより、この余長部によって外層部14の一部を構成させるようにしても良い。
【0133】
また、第2実施形態の環状金属コードC2では、図18(a)に示されるように、環状コア部13の外周面を1層のストランド材11が覆っている。これを、環状コア部13の外周面を複数層のストランド材11が覆うようにしてもよい。例えば、環状コア部13の外周面を2層のストランド材11で覆う場合には、ストランド材11を環状コア部13の外周面に6周巻き付けて1層目を形成した後、かかる1層目の外周面にストランド材11を12周巻き付けて2層目を形成することとなる。なお、2層目に相当する12周の巻き付け方向は、1層目に相当する6周の巻き付け方向とは逆方向とすることが好ましい。このような巻き付け方向とすることは、良好な巻き付け性を得、凹凸の少ない外面を得る上で重要である。
【0134】
また、第2実施形態の環状金属コードC2では、ストランド材11をS撚りとし、環状コア部13に対する外層部14のストランド材11の巻き付けをZ撚りで行なう構成としたが、ストランド材11をZ撚りとし、環状コア部13に対する外層部14のストランド材11の巻き付けをS撚りで行なう構成としてもよい。
【0135】
また、第2実施形態の環状金属コードC2は、図18(a)に示されるように、断面が略円形状となっているが、第1実施形態で説明したように、断面を扁平形状としてもよい。
【0136】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る環状金属コードについて図面を参照しつつ説明する。
図21に示すように、第3実施形態に係る環状金属コードC3は、第1実施形態に係る環状金属コードC1と同様の環状コア部3及び外層部4を有し、第1実施形態とは異なる形態で外層部4の外周側に外層被覆10が設けられている。この環状金属コードC3では、外層被覆によって覆われた被覆部10と外層被覆がない外層部4の露出箇所である非被覆部10Aとが交互に形成されている。この外層被覆を有する被覆部10は、第1,第2実施形態と同様の被覆用接着剤を塗布して固化させることにより形成されている。もしくは、被覆部10は第1,第2実施形態と同様のゴムによって形成されている。
外層被覆によって覆われた被覆部10は、非被覆部10Aよりも長くされており、少なくとも外層部4の巻き付け始端部と巻き付け終端部との結合部7(図6参照)を含むその周辺が外層被覆によって覆われている。
【0137】
環状コア部3には、その外周面に、被覆用接着剤を固化させた接着固化部を設けても良い。接着固化部を設けた場合には、接着固化部と、被覆用接着剤のない非接着固化部とが交互に形成される。また、環状コア部3における接着固化部は、非接着固化部よりも長くされ、外層部4における外層被覆のない非被覆部10Aと、環状コア部3における被覆用接着剤のない非接着固化部とが、周方向の異なる位置に配置されると良い。
この環状コア部3に接着固化部を形成する被覆用接着剤は、外層被覆を形成する被覆用接着剤と同様のものを使用できる。
【0138】
環状コア部3は、第1実施形態と同様の構成であり、第1のストランド材1の両端を結合することによって形成される。
外層部4も、第1実施形態と同様の構成であり、環状コア部3を軸芯として第2のストランド材2を巻き付けることにより形成される。
【0139】
環状金属コードC3の製造方法も、被覆部10と非被覆部10Aの形態が異なる以外は環状金属コードC1の製造方法と同様である。
なお、環状コア部3に接着固化部を設ける場合には、環状コア部3の外周面の所定位置に被覆用接着剤を塗布して固化させることにより、被覆用接着剤が固化された接着固化部と被覆用接着剤のない非接着固化部とを交互に形成する。
【0140】
環状金属コードC3を、例えば前記無端金属ベルトB1(図13参照)に用いた場合、蛇行せずに回転する無端金属ベルトを得ることができる。蛇行せずに回転する無端金属ベルトは、周囲の部品と接触して磨耗することが無いため、長期間にわたって高性能を維持することができる。
【0141】
第3実施形態では、外層被覆によって外層部4を構成する第2のストランド材2の巻き付け始端部2aと巻き付け終端部2bとの結合部7を含むその周辺を覆ったので、環状金属コードC3を丈夫なものとすることができ、特に、外層部4を構成する第2のストランド材2の巻き付け始端部2aと巻き付け終端部2bとの結合部7を強固に補強することができ、さらには、第2のストランド材2を構成する第2の金属素線6がばらけるような不具合をなくすことができる。
【0142】
しかも、外層部4の全周面かつ全長にわたって、外層被覆に覆われた被覆部10と外層被覆のない非被覆部10Aとを交互に形成したので、非被覆部10Aから内部へ機械油等の潤滑剤を円滑に浸透させることができ、環状コア部3と外層部4との間、外層部4を構成する第2のストランド材2同士の間及び各ストランド材1,2を構成する各金属素線5,6同士の間における摩擦による強度低下及び疲労による寿命短縮を抑えることができる。
しかも、非被覆部10Aよりも被覆部10を長くし、非被覆部10Aは内部へ潤滑剤が浸透するのに必要な最低限の長さとして被覆部10を極力長くすることができ、補強効果を高めることができるとともに、長寿命化を図ることができる。
【0143】
なお、非被覆部10Aは、外層部4の周方向における少なくとも1箇所に設ければ良く、この場合も、この非被覆部10Aから内部へ潤滑剤を浸透させることができる。そして、このようにすると、非被覆部10Aを極力少なくすることができ、外層被覆による補強効果を高めることができるとともに、長寿命化を図ることができる。
【0144】
また、環状コア部3の外周面に、被覆用接着剤を固化させた接着固化部と、被覆用接着剤のない非接着固化部とを交互に形成すれば、環状コア部3自体を接着固化部によって補強することができ、環状金属コードC3の強度を高めることができる。また、非接着固化部を設けることで、この非接着固化部から環状コア部3の内部へ潤滑剤を円滑に浸透させることができ、環状コア部3となる第1のストランド材1を構成する第1の金属素線5同士の間における摩擦による強度低下及び疲労による寿命短縮を抑えることができる。
しかも、外層被覆の非被覆部10A及び環状コア部3における非接着固化部の位置を周方向にずらすことで、これら非被覆部10A及び非接着固化部を設けることによる補強効果の低下を極力抑えることができる。
【0145】
また、環状金属コードC3の製造方法によれば、第1実施形態と同様の工程で被覆用接着剤またはゴムからなる外層被覆を形成でき、丈夫でしかも外層部4となる第2のストランド材2を構成する各金属素線6がばらけるような不具合のない環状金属コードC3を容易に製造することができる。
【0146】
また、第3実施形態に係る環状金属コードC3は、第1実施形態において説明した様々な形態を採ることが可能であり、それらは第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0147】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る環状金属コードについて図面を参照しつつ説明する。
図21に示すように、第4実施形態に係る環状金属コードC4は、第2実施形態に係る環状金属コードC2と同様の環状コア部13及び外層部14を有し、第2実施形態とは異なる形態で外層部14の外周側に外層被覆10が設けられている。この環状金属コードC4は、外層被覆によって覆われた被覆部10と外層被覆がない外層部14の露出箇所である非被覆部10Aとが交互に形成されている。この外層被覆を有する被覆部10は、第1〜第3実施形態と同様の被覆用接着剤を塗布して固化させることにより形成されている。もしくは、被覆部10は第1〜第3実施形態と同様のゴムによって形成されている。
このように、第3実施形態に係る環状金属コードC3は、第1のストランド材及び第2のストランド材から構成したのに対して、第4実施形態に係る環状金属コードC4は、1本のストランド材から構成した点が異なる他は共通の構造を有するものである。
【0148】
環状金属コードC4の製造方法も、被覆部10と非被覆部10Aの形態が異なる以外は環状金属コードC2の製造方法と同様である。
なお、環状コア部13に接着固化部を設ける場合には、環状コア部13の外周面の所定位置に被覆用接着剤を塗布して固化させることにより、被覆用接着剤が固化された接着固化部と被覆用接着剤のない非接着固化部とを交互に形成する。
【0149】
環状金属コードC4を、例えば前記の無端金属ベルトB1(図13参照)に用いた場合、蛇行せずに回転する無端金属ベルトを得ることができる。蛇行せずに回転する無端金属ベルトは、周囲の部品と接触して磨耗することが無いため、長期間にわたって高性能を維持することができる。
【0150】
第4実施形態の場合も、外層被覆によって外層部14を構成するストランド材11の巻き付け始端部11aと巻き付け終端部11bとの結合部17(図19参照)を含むその周辺を覆っており、それにより環状金属コードC4を丈夫なものとすることができる。特に、外層部14を構成するストランド材11の巻き付け始端部11aと巻き付け終端部11bとの結合部17を強固に補強することができ、さらには、ストランド材11を構成する金属素線15がばらけるような不具合をなくすことができる。
【0151】
また、外層部14の全周面かつ全長にわたって、外層被覆に覆われた被覆部10と外層被覆のない非被覆部10Aとを交互に形成したので、非被覆部10Aから内部へ潤滑剤を円滑に浸透させることができ、環状コア部13と外層部14との間、外層部14を構成するストランド材11同士の間及び各ストランド材11を構成する各金属素線15同士の間における摩擦による強度低下及び疲労による寿命短縮を抑えることができる。
しかも、非被覆部10Aよりも被覆部10を長くしたので、非被覆部10Aは内部へ潤滑剤が浸透するのに必要な最低限の長さとして被覆部10を極力長くすることができ、補強効果を高めることができるとともに、長寿命化を図ることができる。
【0152】
なお、非被覆部10Aは、外層部14の周方向における少なくとも1箇所に設ければ良く、この場合も、この非被覆部10Aから内部へ潤滑剤を浸透させることができる。そして、このようにすると、非被覆部10Aを極力少なくすることができ、外層被覆10による補強効果を高めることができるとともに、長寿命化を図ることができる。
【0153】
また、環状コア部13の外周面に、被覆用接着剤を固化させた接着固化部と、被覆用接着剤のない非接着固化部とを交互に形成すれば、環状コア部13自体を接着固化部によって補強することができ、環状金属コードC2の強度を高めることができる。また、非接着固化部を設けることで、この非接着固化部から環状コア部13の内部へ潤滑剤を円滑に浸透させることができ、環状コア部13となるストランド材11を構成する金属素線15同士の間における摩擦による強度低下及び疲労による寿命短縮を抑えることができる。
しかも、外層被覆10の非被覆部10A及び環状コア部13における非接着固化部の位置を周方向にずらすことで、これら非被覆部10A及び非接着固化部を設けることによる補強効果の低下を極力抑えることができる。
【0154】
また、環状金属コードC4の製造方法によれば、第2実施形態と同様の工程で被覆用接着剤またはゴムからなる外層被覆を形成でき、丈夫でしかも外層部14となるストランド材11を構成する各金属素線15がばらけるような不具合のない環状金属コードC2を容易に製造することができる。
【0155】
また、第4実施形態に係る環状金属コードC4は、第2実施形態において説明した様々な形態を採ることが可能であり、それらは第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0156】
また、上記実施形態では、環状金属コードを、減速機において動力を伝達する無端金属ベルトに適用したが、本発明の環状金属コードは、減速機以外で使用される無端金属ベルトにも適用することができる。例えば、プリンタをはじめとする印刷機において紙送りローラ間の動力伝達を担う無端金属ベルト、一軸ロボットの直行駆動を担う無端金属ベルト、X−Yテーブル機構の駆動や三次元のキャリッジ駆動を担う無端金属ベルト、光学機器や検査機、あるいは測定器内において精密駆動を担う無端金属ベルト等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】本発明の第1実施形態に係る環状金属コードの斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る環状金属コードの外層被覆を施す前の斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る環状金属コードを示す径方向の断面斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る環状金属コードに含まれる環状コア部に第2のストランド材を1周巻き付けた様子を示す斜視図である。
【図5】(a)は第1実施形態に係る環状金属コードを示す径方向の断面図であり、(b)は当該環状金属コードの側面図である。
【図6】第1実施形態に係る環状金属コードの一部を示す拡大斜視図である。
【図7】環状金属コードを製造するための製造装置の一例を示す斜視図である。
【図8】環状コア部の振り子運動の周期の一端でリールが環状コア部の輪の外に位置する状態を実線で示し、環状コア部の振り子運動の周期の他端でリールが環状コア部の輪の中に位置する状態を鎖線で示した図7の装置の正面図である。
【図9】図8とは反対に、環状コア部の振り子運動の周期の一端でリールが環状コア部の輪の中に位置する状態を実線で示し、環状コア部の振り子運動の周期の他端でリールが環状コア部の輪の外に位置する状態を鎖線で示した図7の装置の正面図である。
【図10】環状金属コードC1を構成する環状コア部の正面図である。
【図11】環状金属コードを製造する際のリールの移動状態を上面から見たときの概念図である。
【図12】(a)〜(e)は非被覆部の他の形態例を示す断面図である。
【図13】無端金属ベルトの使用状態を示す斜視図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る環状金属コードの斜視図である。
【図15】第2実施形態に係る環状金属コードの外層被覆を施す前の斜視図である。
【図16】第2実施形態に係る環状金属コードを示す径方向の断面斜視図である。
【図17】第2実施形態に係る環状金属コードに含まれる環状コア部にストランド材を1周巻き付けた様子を示す斜視図である。
【図18】(a)は第2実施形態に係る環状金属コードを示す径方向の断面図であり、(b)は当該環状金属コードの側面図である。
【図19】第2実施形態に係る環状金属コードの一部を示す拡大斜視図である。
【図20】第2実施形態に係る環状金属コードの環状コア部を形成する際の概念図である。
【図21】本発明の第3,第4実施形態に係る環状金属コードの斜視図である。
【符号の説明】
【0158】
1…第1のストランド材、2…第2のストランド材、3,13…環状コア部、4,14…外層部、5,6,15…金属素線、10…外層被覆(被覆部)、10A…非被覆部、11…ストランド材、B1…無端金属ベルト、C1,C2,C3,C4…環状金属コード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属素線を複数本撚り合わせてなるストランド材により、環状に形成された環状コア部と、前記環状コア部に対して螺旋状に複数周巻き付けられ前記環状コア部の外周面を覆う外層部と、が形成された環状金属コードであって、
前記外層部の少なくとも一部が、弾性を有する被覆材からなる外層被覆により覆われていることを特徴とする環状金属コード。
【請求項2】
請求項1に記載の環状金属コードであって、
少なくとも前記外層部の巻き付け始端部と巻き付け終端部との結合部を含むその周辺が外層被覆により覆われていることを特徴とする環状金属コード。
【請求項3】
請求項1または2に記載の環状金属コードであって、
前記外層被覆における環状の外周側半面に、少なくとも1箇所の非被覆部を有することを特徴とする環状金属コード。
【請求項4】
請求項1または2に記載の環状金属コードであって、
前記外層被覆における環状の外周側半面に、環状方向の全周にわたる非被覆部が、断面における周方向の少なくとも1箇所に設けられていることを特徴とする環状金属コード。
【請求項5】
請求項1または2に記載の環状金属コードであって、
前記外層被覆における環状の外周側半面が、環状方向の全周にわたって非被覆部とされていることを特徴とする環状金属コード。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の環状金属コードであって、
前記外層被覆における環状の内周側半面に、少なくとも1箇所の非被覆部を有することを特徴とする環状金属コード。
【請求項7】
請求項1または2に記載の環状金属コードであって、
前記外層部の全周面かつ全長にわたって、前記外層被覆に覆われた被覆部と前記外層被覆のない非被覆部とが交互に形成されていることを特徴とする環状金属コード。
【請求項8】
請求項7に記載の環状金属コードであって、
前記非被覆部よりも前記被覆部が長くされていることを特徴とする環状金属コード。
【請求項9】
請求項7または8に記載の環状金属コードであって、
前記外層部の環状方向における少なくとも1箇所に前記非被覆部を有することを特徴とする環状金属コード。
【請求項10】
請求項7から9の何れか1項に記載の環状金属コードであって、
前記環状コア部の外周面に、被覆用接着剤を固化させた接着固化部と、被覆用接着剤のない非接着固化部とが交互に形成されていることを特徴とする環状金属コード。
【請求項11】
請求項10に記載の環状金属コードであって、
前記外層部における前記外層被覆のない前記非被覆部と、前記環状コア部における被覆用接着剤のない非接着固化部とが、環状方向における異なる位置に配置されていることを特徴とする環状金属コード。
【請求項12】
請求項10または11に記載の環状金属コードであって、
前記被覆用接着剤は、その固化後の物性のうち、硬度が22〜60、伸びが110〜500%であることを特徴とする環状金属コード。
【請求項13】
請求項1から12の何れか一項に記載の環状金属コードであって、
前記外層被覆は、その固化後の物性のうち、硬度が22〜60、伸びが110〜500%であることを特徴とする環状金属コード。
【請求項14】
請求項1から13の何れか一項に記載の環状金属コードであって、
前記外層被覆は、ゴムからなることを特徴とする環状金属コード。
【請求項15】
請求項14に記載の環状金属コードであって、
前記外層被覆を構成するゴムは、金属とゴムとを接着する金属ゴム用接着剤によって前記外層部に接着されていることを特徴とする環状金属コード。
【請求項16】
請求項14または15に記載の環状金属コードであって、
前記外層被覆を構成するゴムは、8MPa以下の加硫圧力にて加硫されていることを特徴とする環状金属コード。
【請求項17】
請求項1から16の何れか一項に記載の前記環状金属コードを備えていることを特徴とする無端金属ベルト。
【請求項18】
請求項1から16の何れか一項に記載の環状金属コードを製造する方法であって、
前記環状金属コードの前記外層被覆を設けない箇所にマスキングテープを貼り付け、前記外層部の外周面に被覆用接着剤を塗布し、この被覆用接着剤の固化後に前記マスキングテープを除去することを特徴とする環状金属コードの製造方法。
【請求項19】
請求項1から16の何れか一項に記載の環状金属コードを製造する方法であって、
前記環状金属コードの前記外層被覆を設けない箇所にマスキングテープを貼り付け、前記外層部の外周面に生ゴムを貼り付け、加圧加硫処理を施した後に前記マスキングテープを除去することを特徴とする環状金属コードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−240221(P2008−240221A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148298(P2007−148298)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(302061613)住友電工スチールワイヤー株式会社 (163)
【出願人】(504211429)栃木住友電工株式会社 (50)
【Fターム(参考)】