説明

生ごみ処理装置

【課題】高エネルギー消費タイプと低エネルギー消費タイプの2種類の脱臭装置を用い、これらを臭気濃度に応じて使い分けることにより、脱臭のための省エネルギー化を可能にし、生ごみの処理コストを低減し得るようにした生ごみ処理装置を提供する。
【解決手段】排気通路13の第1の分岐路13A中に加熱ヒーター41と白金触媒42を用いた第1の脱臭装置38を配設し、第2の分岐路13Bに活性炭を用いた第2の脱臭装置39を配設する。第1、第2の分岐路13A,13Bの分岐部に三方弁37を設け、臭気の密度が高い高発酵、高分解期は、第1の脱臭装置38によって排気通路13内を通る空気中に含まれている悪臭成分を取り除き、臭気の密度が低い低発酵、低分解期以降は第2の脱臭装置39によって悪臭成分を取り除く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の代謝能力を利用して生ごみ中の有機物を水と炭酸ガスに発酵分解する生ごみ処理装置に関し、特に微生物が発酵中生物分解している間に発生する悪臭成分を除去し、悪臭が装置外部に拡散しないようにした生ごみ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般家庭、食堂、料理屋などから出る生ごみを処理する生ごみ処理装置は、従来から種々のタイプのものが提案され実用化されている(例えば、特許文献1〜4等参照)。
【特許文献1】特開平8−215663号公報
【特許文献2】特開平4−4084号公報
【特許文献3】特開平8−173943号公報
【特許文献4】特開平9−85214号公報
【0003】
特開平8−215663号公報に開示された生ごみ処理装置は、加熱ヒーターによって生ごみを加熱、乾燥することにより水分を蒸発させ減量化するものである。
【0004】
特開平4−4084号公報、特開平8−173943号公報および特開平9−85214号公報に開示された生ごみ処理装置は、微生物の代謝能力を利用して生ごみ中の有機物を水と炭酸ガスに発酵分解することにより減量化するものである。
【0005】
この他、生ごみの処理方式としては、高温加熱して炭化させる方式、焼却する方式、埋め立てる方式、メタン発酵させて分解処理する方式等も知られている。
【0006】
生ごみ処理装置による生ごみの処理過程、特に加熱処理したり微生物によって水と炭酸ガスに発酵分解すると、その過程において臭気(硫黄系ガス、有機性ガス、アンモニア等)が発生する。この臭気は、生ごみ自体に含まれている物質の蒸発、酸化、分解、成分どうしの化学反応等によって生成されるもので、例えばアンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル、有機酸、窒素化合物などの様々な悪臭成分である。したがって、このような臭気を生ごみ処理装置の排気口からそのまま外部に排出すると、その濃度によっては人体にきわめて不快な悪臭が拡散され、生ごみの処理に携わる者ばかりか装置設置場所付近に居住する者にも不快感を与える。また、処理した後の残渣にも臭いが残っているため、残渣を装置から回収したときに悪臭が拡散するおそれがある。このため、臭気を取り除き、悪臭が装置の外部に拡散しないように何らかの対策を講じる必要がある。
【0007】
例えば、前記特開平8−215663号公報に開示された生ごみ処理装置は、厨芥の乾燥終了末期または乾燥終了直後に、乾燥装置内の厨芥の近辺に脱臭剤または吸湿剤を厨芥収納容器内に投入することにより臭気を取り除くようにしている。脱臭剤としては、活性炭、活性炭繊維のような物理的吸着剤を用いている。また、厨芥収納容器内において厨芥から生じる悪臭成分を含んだ水蒸気については、冷却凝縮して凝縮水溶器に回収しているが、凝縮しきれなかった水蒸気に対しては排気パイプ中に設けた脱臭装置によって悪臭成分を取り除いた後、装置外部に排出している。この脱臭装置としては、物理的吸着剤に比べて脱臭能力が高い白金触媒を用いている。但し、白金触媒の場合は、酸化活性をもつ温度(300〜400℃)にまで排気を加熱して使用する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特開平8−215663号公報に開示されている生ごみ処理装置は、排気パイプに白金触媒からなる脱臭装置を配設し、これによって生ごみの処理開始から終了までの間、排気パイプを通って装置外部に排出される悪臭成分を脱臭するようにしているので、装置のランニングコストが嵩むという問題があった。すなわち、白金触媒の場合は、脱臭能力が高いものの、通常脱臭効果を高めるために電気やガスによって酸化活性をもつ温度以上に昇温(例えば、300℃〜400℃程度)させて使用する必要があるため、高エネルギー消費タイプの脱臭装置といえる。一方、生ごみの処理中において悪臭は、加熱乾燥中(微生物による場合は発酵分解中)において大量に発生し、加熱乾燥(微生物の場合は発酵分解)が終了すると減少するため、生ごみ処理の全期間にわたって白金触媒を用いて脱臭すると、臭気濃度が一定値以下に低くなると臭気の発生に見合ったエネルギー以上に余分なエネルギーを消費することになり、生ごみの処理コストが高くなる。
【0009】
そこで、このような問題を解決するための対策の1つとして、白金触媒の代わりに吸着剤(活性炭等)や光触媒(酸化チタン等)を用いることが考えられる。吸着剤や光触媒の場合は、白金触媒のように所定温度以上に加熱して使用する必要がなく常温で使用できることから、低エネルギー消費タイプの脱臭装置といえる。しかしながら、吸着剤や光触媒は、白金触媒に比べて脱臭能力が八分の一程度と低いため、悪臭が大量に発生する高臭気時に用いられる脱臭装置としては不向きである。
【0010】
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、高エネルギー消費タイプと低エネルギー消費タイプの2種類の脱臭装置を用い、これらを臭気濃度の状況に応じて使い分けることにより、脱臭のための省エネルギー化を可能にし、生ごみの処理コストを低減し得るようにした生ごみ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために第1の発明は、生ごみ処理槽内において微生物の代謝能力を利用して生ごみに含まれている有機物を水と炭酸ガスに発酵分解し、前記生ごみ処理槽内の前記分解物質と生ごみに含まれている水分を含んだ空気を排気通路を経て装置本体の外部に排出する生ごみ処理装置において、前記排気通路中に加熱昇温のための高エネルギーを要する脱臭能力の高い第1の脱臭装置と、低エネルギーで前記第1の脱臭装置より脱臭能力が低い第2の脱臭装置とを配設し、高臭気時においては少なくとも前記第1の脱臭装置により前記排気通路を通って装置外部に排出される臭気を脱臭し、低臭気時においては前記第2の脱臭装置のみにより前記排気通路を通って装置外部に排出される臭気を脱臭するようにしたものである。
【0012】
第2の発明は、第1の脱臭装置として白金触媒を用い、第2の脱臭装置として吸着剤または光触媒を用いたものである。
【0013】
第3の発明は、排気通路に第1の脱臭装置が配設される第1の分岐路と、第2の脱臭装置が配設される第2の分岐路を設け、前記第1の分岐路と前記第2の分岐路の分岐部に、これらの分岐路を切り替える切替手段を設けたものである。
【0014】
第4の発明は、生ごみ処理槽内の生ごみと菌床との混合物の温度を検出する温度センサを備え、この温度センサの検出信号に基づいて第1の脱臭装置の使用、不使用状態を切り替えるようにしたものである。
【0015】
第5の発明は、生ごみ処理槽内の生ごみと菌床との混合物の水分率を検出する水分率センサを備え、この水分率センサの検出信号に基づいて第1の脱臭装置の使用、不使用状態を切り替えるようにしたものである。
【0016】
第6の発明は、生ごみ処理槽内の臭気濃度を検出する臭気センサを備え、この臭気センサの検出信号に基づいて第1の脱臭装置の使用、不使用状態を切り替えるようにしたものである。
【0017】
第7の発明は、生ごみ処理槽内の生ごみと菌床との混合物の重量を検出する重量センサを備え、この重量センサの検出信号に基づいて第1の脱臭装置の使用、不使用状態を切り替えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0018】
微生物による生ごみの発酵分解中は、発生する発酵熱により温度が高くなり、水分および臭気(ガス)の発生が多く、生ごみの重量の軽減率が大きい。そして、発酵が終了すると温度が低くなり、水分および臭気の発生が少なくなり、生ごみの重量の軽減率が小さくなる。そこで、本発明は、発酵分解が活発で臭気の濃度が高い時期(高臭気時)には脱臭能力が高い第1の脱臭装置を用いて臭気を除去し、発酵末期以降で次の生ごみの投入までの臭気の濃度が低い時期(低臭気時)においては脱臭能力が低い第2の脱臭装置のみを用いて臭気を除去するようにした。このように第1、第2の脱臭装置を臭気濃度に応じて切り替えて使用すると、第1の脱臭装置を菌床投入から菌床取り替えまでの全期間にわたって用いる必要がなく、加熱昇温のためのエネルギー(電気、ガス等)の消費量を節約することができ、省エネルギー型の生ごみ処理装置を提供することができる。
また、本発明は菌床投入から菌床取り替えまでの全期間にわたって脱臭しているので、悪臭が装置外部に拡散するのを防止することができる。
【0019】
白金触媒は、活性温度(300〜400℃)にまで昇温して使用する必要があるため、高エネルギー消費タイプの脱臭装置を構成する。一方、活性炭は常温にて使用することができるため、加熱昇温のためのエネルギーを必要としない。光触媒は、触媒機能を発揮するために蛍光灯等の照明装置を用いて紫外線を照射する必要がある。照明装置としては、蛍光灯などを用いることができるので、白金触媒に比べて照明装置によるエネルギーの消費量が少ない。
第1、第2の脱臭装置の切り替えは、生ごみと菌床との混合物の温度、水分、重量あるいは臭気濃度をセンサによって検出し、その検出信号に基づいて行う。
なお、臭気(ガス)を除去する方法としては、吸着、分解、酸化、洗浄等があるが、本発明はこれら全てを含む広い用語として「脱臭」を用いている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る生ごみ処理装置の一実施の形態を示す外観斜視図、図2は同装置の側断面図、図3は同装置の内部を示す平面図、図4は排気通路と脱臭装置の斜視図、図5は同脱臭装置のブロック図、図6は発酵期間、温度および微生物の関係を示す図、図7は混合物の温度、重量、水分率、臭気濃度、高臭気時、低臭気時、高エネルギー脱臭時期および低エネルギー脱臭時期を示す図である。図1〜図4において、全体を符号1で示す生ごみ処理装置は、微生物の代謝能力を利用して生ごみ2中の有機物を水と炭酸ガスに発酵分解することにより、生ごみ2を減容減量化させる生ごみ処理装置で、床面に設置されたキャスター付きの装置本体3を備えている。
【0021】
前記装置本体3は、横長箱型に形成された外ケース3Aと、内ケース3Bとで構成され、また内ケース3Bの内部には生ごみ処理槽4が組み込まれている。外ケース3Aは、上板の中央に形成された生ごみ投入口5と、左側板に形成された吸気口6を有し、内部上方には生ごみ処理装置1全体を制御する制御部7が設けられている。前記投入口5は、開閉自在な投入口蓋8によって通常気密に閉塞されている。なお、外ケース3Aと内ケース3Bの間の空間は、グラスウールなどの断熱材が充填されることにより断熱空間を形成している。
【0022】
前記内ケース3Bは、内部に水10を収納しており、この水10を生ごみ2の処理時にヒーター11によって加熱し所定の温度(40〜50℃)に保持することにより温水ジャケットとして用いられる。内ケース3Bの下部には、温水10の温度を検出する温度センサ12が取付けられている。
【0023】
前記生ごみ処理槽4は、上方に開放する断面U字状の処理槽からなり、前記内ケース3B内に下部を水(温水)10に浸漬させた状態で収納されており、内部が前記投入口5、吸気口6および排気通路13に連通している。また、生ごみ処理槽4の内部には、生ごみの処理時に投入された生ごみ2と菌床14とを撹拌、混合する撹拌羽根15が設けられている。
【0024】
前記菌床14は、保水性のよい母材に生ごみ2中の有機物を発酵分解する好気性の微生物と種菌を発育させたものである。菌床14の母材は、生ごみ2の発酵に必要な酸素を供給する役割と、水分を調整する役割を有するもので、例えば、水質系のチップ、おが屑、籾殻、椰子殻等が用いられる。特に、椰子殻の場合は、その中果皮から繊維束を分離して圧縮成形したもの(ココピート:商標名)を用いると、保水性、通気性に優れ、吸水時に元に復元し易く、また初期pHが高く(=6.5)、微生物の生育し易い環境を保持するための母材として好適である。
【0025】
好気性の微生物としては、20〜75℃の各温度で活性を示す複数種の菌類、具体的には中温(20〜40℃)、高温(55〜75℃)で増殖する糸状菌、放線菌、細菌等が用いられる。これらの菌類は、生ごみ2と菌床14との混合物の温度条件によって増殖時期が異なり、混合物の温度が低いと増殖が不活発となりごみ処理効率を低下させる。このため、前記制御部7は、内ケース3B内の温水10の温度を混合物中の微生物が増殖、活性化し易い最適な温度(例えば、約35〜45℃)となるように制御している。
【0026】
前記微生物による生ごみ2の分解過程は、大きく分けると図6に示すように処理開始初期の糖分解期と、中期の結合組織分解期および後期の繊維分解期の三期に分けることができ、糖分解期と、中期の結合組織分解期および後期の繊維分解期の前半までが生ごみ2中のタンパク質、単糖類などの易分解性有機物が主分解される高発酵、高分解期で、さらに分解が進みセルロースなどの難分解性の有機物が主に分解される低発酵、低分解期である。このうち、糖分解期においては糸状菌が活発に増殖して生ごみ2中の糖を分解し、結合組織分解期においては放線菌が活発に増速して生ごみ2中のセルロース等の高分子を分解し、繊維分解期においては細菌が繊維を分解する。なお、細菌は処理開始から終了までの全工程中において活発に増殖し生ごみ2を分解する。
【0027】
前記種菌は、糸状菌、放線菌および細菌の最初の増殖を促進させ、生ごみ2の安定した処理を速やかに開始させるために用いられる菌である。
【0028】
微生物による生ごみ2の処理が開始されると、生ごみ2の発酵分解中は生ごみ2中の有機物が水と炭酸ガスに分解されるので、図7に示すように生ごみ2と菌床14との混合物の温度、混合物中の水分率、混合物の重量、生ごみ処理槽4内の臭気濃度が大きく変化する。すなわち、生ごみ2の温度上昇は、その投入量にもよるが、通常は生ごみ2を投入した直後から5〜6時間以内に生ごみ2と菌床14との混合物の温度が投入前の温度と比べて最大で30℃近く上昇し、65℃以上になる。この温度上昇が継続し、ピークを迎えると下降して元の温度に戻るまで5〜6時間程度要する。この期間は発酵分解が活発に行なわれている期間で、図6に示した高発酵、高分解期と略一致している。さらに、2時間程度ゆっくりした分解(低発酵、低分解)が行われるため、発酵分解期間(生ごみの処理期間)の総時間は7〜8時間である。生ごみ2は、発酵分解されることにより次の投入までに投入量に対して約90〜95%減量される。生ごみ2の投入量が多い場合は、温度が高く規定時間を超えても高い温度状態を維持し、反対に投入量が少ないときは、温度上昇が上記温度よりも低くなる。
【0029】
生ごみ2と菌床14との混合物中の水分率および重量は、それぞれ高発酵、高分解期の開始から低発酵、低分解期に至るまで時間の経過に比例して略直線的に減少する。臭気濃度は温度変化と位相遅れをもった山形のカーブを描き、臭気濃度が高い高臭気時が生ごみ2の高発酵、高分解期と略一致し、臭気濃度が低い低臭気時が低発酵、低分解期と略一致している。なお、混合物の水分率は、混合物が均一になるまで時間がかかり、次の生ごみ2の投入時には略同じ量にまで戻る。
【0030】
生ごみ2の高発酵、高分解な時期と低発酵、低分解な時期は、生ごみ2の種類、投入量、微生物の種類等によって異なる。また、発酵分解は開始から終了まで連続して行われているため、その時期を厳密に定めることはできない。したがって、本発明においては、混合物の温度、水分率、重量または臭気濃度をセンサによって検出し、その値が予め定めた所定の値になると高発酵、高分解期が終了したと判断し、後述する脱臭装置の切替時期としている。例えば、混合物の温度により高発酵、高分解期の終了を判断する場合は、生ごみ2の処理開始より数時間(5〜6時間)経過し、投入時の混合物の温度T1 ℃に対してT1 +α(但し、α=2〜5℃程度)にまで下降したことを温度センサ21が検知すると、生ごみ2の高発酵、高分解期が終了して低発酵、低分解期となり、高臭気から低臭気になったと判断する。水分率の場合は、混合物の水分率がβ%(例えば、10%)にまで下がったことを水分率センサ22が検知すると高発酵、高分解期が終了したと判断する。重量の場合は、混合物の重量が投入直前の重量に投入した生ごみの重量のγ%(例えば、10%)を加えた量までに下がったことを重量センサ(ロードセル)23が検知すると高発酵、高分解期が終了したと判断する。臭気濃度の場合は、生ごみ処理槽4内の臭気濃度がρ%(例えば、10%)にまで下がったことを臭気センサ24が検知すると、高発酵、高分解期が終了したと判断する。なお、T1、β、γ、ρの値はその都度変更して制御部7に設定してもよい。
【0031】
温度センサ21、水分率センサ22および臭気センサ24は生ごみ処理槽4の内壁に取付けられ、重量センサ23は装置本体3の下部に取付けられている。そして、これらセンサの検出信号は前記制御部7に送られる。なお、水分率センサ23は、生ごみ2と菌床14との混合物中の水分量による熱伝導率と比熱との違いによる熱応答性の差を検出することにより混合物の水分率を測定する。重量センサ24は、生ごみ2と菌床14を投入した直後のこれらの混合物の重量と、処理中における混合物の重量を検出する。
【0032】
微生物による生ごみ2の分解を促進する環境条件は、生ごみ2と菌床14との混合物の温度が40〜60℃、水分率が20〜50%(重量水分率)、酸素濃度が10%程度、さらには微アルカリ性(pH6.0〜8.0)とされる。これらのパラメータはいずれも微生物の菌相、生育数に直接影響するものである。したがって、微生物を利用したごみ処理装置1においては、温度、水分の制御と必要酸素量の供給を的確に行う必要がある。このため、制御部7では、水分率センサ22からの検知信号によって水分率が一定範囲内の値になるように排気ファン35によって前記排気通路13から装置外部に排出される空気の排出量を制御し微生物の活性を増大させることにより、微生物による生ごみ2の分解性能を高めるようにしている。
【0033】
前記撹拌羽根15は、両端部が生ごみ処理槽4の両側板によって回転自在に軸支された回転軸27と、この回転軸27に取付けられた複数枚の羽根28とを備えている。前記回転軸27は、一端が撹拌用モータ29の出力軸30にチェーン31とスプロケット32a,32bを介して連結されている。撹拌用モータ29は減速歯車機構付きのモータで、前記内ケース3Bの後方で外ケース3Aとの間の断熱空間に配設されており、生ごみ2の処理時に前記撹拌羽根15を間欠的に回転(2〜3rpm程度)させる。撹拌羽根15は、撹拌用モータ29によって駆動されることにより、生ごみ処理槽4内に投入された生ごみ2と菌床14とを撹拌、混合すると同時に、これらの混合物に新鮮な空気を供給することにより、微生物の活動を活発化させる。このように撹拌羽根15によって生ごみ2と菌床14を撹拌、混合すると、生ごみ2中の有機物は好気的に発酵し、一定の時間が経過して発酵が終了すると無害な粉粒状物となって発酵熱が発生しなくなり、混合物の温度が温水ジャケットの温度にまで下がる。なお、撹拌用モータ29としては、撹拌羽根15を一方向に回転させるものに限らず、一定時間毎に回転方向が切り替わるものであってもよい。
【0034】
前記生ごみ処理装置1の前記排気通路13は、外ケース3Aの背面板と内ケース3Bの背面板との間に形成した断熱空間内に設けられており、一端が生ごみ処理槽4の背面上部に形成した排気口33に接続され、他端が排気筒34に接続されている。また、排気通路13は、図4および図5に示すように前記排気ファン35の直後で2つに分岐した通路、すなわち第1、第2の分岐路13A,13Bを有し、これらの分岐路13A,13Bに脱臭装置36が設けられている。
【0035】
前記排気ファン35は、第1、第2の分岐路13A,13Bよりも上流側に設けられており、通電によって作動すると生ごみ処理槽4および排気通路13内の水分と炭酸ガスを含んだ空気を吸引して排気筒34から装置外部に排出する。排気ファン35の駆動によって生ごみ処理槽4内の炭酸ガスや水分を含んだ空気を装置外部に排出すると、生ごみ処理槽4の内部は負圧になり、新鮮な外気が吸気口6より生ごみ処理槽4内に流入する。
【0036】
前記脱臭装置36は、排気ファン35によって装置外部に排出される炭酸ガスや水分を含まれている空気中の臭気を脱臭するもので、三方弁37、第1、第2の脱臭装置38,39および熱交換器40を備えている。
【0037】
前記三方弁37は、前記第1、第2の分岐路13A,13Bの分岐部に設けられており、生ごみ2の発酵が一定時間経過して臭気濃度が高い値から所定の低い値まで低下すると、制御部7からの信号によって切り替えられる。すなわち、高臭気な高発酵、高分解期においては第1の分岐路13Aを開放状態に保持して生ごみ処理槽4内で発生した水分や炭酸ガスや臭気を含んだ空気を第1の脱臭装置38に導き、低臭気な低発酵、低分解期においては三方弁37の切替えによって第1の分岐路13Aを閉塞して第2の分岐路13Bを開放することにより水分、炭酸ガス、臭気等を含んだ空気を第2の脱臭装置39に導くようにしている。
【0038】
前記第1の脱臭装置38は、加熱ヒーター41と白金触媒42とで構成され、第1の分岐路13Aに設けられている。前記加熱ヒーター41は、白金触媒42による脱臭効果を高めるために生ごみ2の高発酵、高分解期に通電されることにより、第1の分岐路13Aから送られてくる炭酸ガスや水分や臭気を含んだ空気を所定の温度(300〜400℃)に加熱し白金触媒42に導く。
【0039】
前記第2の脱臭装置39は、活性炭、ゼオライト等の吸着材(脱臭剤)や光触媒(例えば、酸化チタン)からなり、第2の分岐路13Bに設けられている。したがって、第1の脱臭装置38と第2の脱臭装置39は、第1、第2の分岐路13A,13Bに並列に組み込まれており、三方弁37によって第1、第2の分岐路13A,13Bが切替えられることにより選択的に用いられるものである。なお、本実施の形態では、第2の脱臭装置39として熱エネルギーを必要としない活性炭を用いた例を示している。
【0040】
前記熱交換器40は、第1の脱臭装置38の下流側に位置するように第1の分岐路13Aの下流側に設けられており、白金触媒42を通過したガスを熱交換しエネルギー(熱)の有効活用を図っている。
【0041】
次に、生ごみ処理装置1の生ごみ処理動作について説明する。
投入口蓋8を開いて予め生ごみ処理槽4に所定量の菌床14を投入し、ヒーター11に通電して内ケース3B内の水10を加熱し、微生物の生育に最適な温度の温水(40℃程度)にする。このため、菌床14も温水10と同程度の温度に昇温される。さらに、生ごみ2を生ごみ処理槽4内に投入し、投入口蓋8を閉じる。投入口蓋8を閉じるとリミットスイッチSWが生ごみ2の投入を検知し、その信号を制御部7に送る。制御部7は、リミットスイッチSWからの検知信号によって生ごみ2の処理を開始させる。これにより、撹拌用モータ29が駆動して撹拌羽根15を回転させ、生ごみ2と菌床14を撹拌、混合する。また、排気ファン35が作動して生ごみ処理槽4内の空気および発酵分解によって発生する炭酸ガス、臭気等を装置外部に排気する。さらに、三方弁37が作動して第1の分岐路13Aを開状態、第2の分岐路13Bを閉状態に切り替え、通電によって加熱ヒーター41が第1の分岐路13Aに導かれる炭酸ガスや臭気を含んだ空気を300〜400℃に加熱する。
【0042】
撹拌羽根15によって生ごみ2と菌床14を撹拌、混合すると、3〜4時間後には微生物が増殖、活性化して好気発酵が行われており、この間は生ごみ2に含まれている有機質が分解され、水分と炭酸ガスが大量に発生する。同時に有機質成分に含まれているアンモニア等の悪臭成分も大量に発生するため悪臭を放つ。高発酵、高分解が終了すると、生ごみ2を発酵分解していた微生物は生ごみ2中の栄養源となる糖、脂肪、タンパク質、でんぷん質、セルロースなどが分解してなくなるため、増殖、活性化することができず休眠状態に入り、臭気が減少する(低発酵、低分解)。
【0043】
生ごみ2の高発酵、高分解期において、生ごみ処理槽4内の水分や炭酸ガスを含んだ空気は、排気ファン35の作動により排気通路13および排気筒34を通って装置の外部に排出される。このとき、水分や炭酸ガスや臭気を含んだ空気は、第1の分岐路13Aを通ることにより加熱ヒーター41によって300〜400℃に加熱され、白金触媒42を通過する際、空気中に含まれている悪臭成分が白金触媒42により低温度(300〜400℃)で無臭の炭酸ガスや水などに分解され取り除かれる。そして、無臭な炭酸ガスは熱交換器40によって熱交換された後、排気筒34から装置外部に排出される。それ故、周囲に悪臭が拡散し不快感を与えることはない。
【0044】
生ごみ2の高発酵、高分解期が終了すると、生ごみ2と菌床14との混合物の温度は低下する。また、発酵に伴い生成される悪臭成分も著しく減少する。混合物の温度を温度センサ21が検出すると、制御部7はその検出信号により高臭気な高発酵、高分解期の状態から低臭気な低発酵、低分解期の状態になったと判断して加熱ヒーター41への通電を停止させるとともに、三方弁37を切替えて第1の分岐路13Aを閉じ、第2の分岐路13Bを開く。これにより、排気通路13内を通る空気は第2の分岐路13Bに導かれ、発酵ガス中に含まれている悪臭成分が第2の脱臭装置39である活性炭によって取り除かれる。この場合、高発酵、高分解期が終了し、低発酵、低分解期になると悪臭成分の生成はきわめて少なくなるため、第1の脱臭装置38を用いる必要がなく、活性炭からなる第2の脱臭装置39のみによって確実に脱臭することができる。したがって、高発酵、高分解期の終了後も排気筒34から排出される空気は略無臭となり、周囲に悪臭を拡散させるようなことはない。
【0045】
このように本発明における生ごみ処理装置1の脱臭装置36は、高臭気な高発酵、高分解期においては脱臭能力の高い白金触媒42からなる第1の脱臭装置38によって生ごみ処理槽4内の空気中に含まれている悪臭成分を取り除き、低臭気な低発酵、低分解期には第1の脱臭装置38の加熱ヒーター41への通電を停止して三方弁37を切り替えることにより、活性炭等の脱臭剤からなる第2の脱臭装置39によって悪臭成分を取り除くようにしたので、生ごみ2の処理期間中、すなわち処理開始から終了の全工程において生ごみ処理槽4内の空気中に含まれている悪臭成分を確実に取り除くことができ、装置外部への拡散を防止することができる。
【0046】
また、加熱ヒーター41に対する通電を高発酵、高分解期だけにしているので、脱臭のためのエネルギーの消費量を節約することができ、省エネルギー型の生ごみ処理装置を提供することができる。
【0047】
図8は脱臭装置の他の実施の形態を示すブロック図である。
この実施の形態は、第1の脱臭装置38、熱交換器40および第2の脱臭装置39を1つの排気通路13に直列に配列することにより、図5に示した第1、第2の分岐路13A,13Bと三方弁37を省略したものである。
【0048】
第1の脱臭装置38は、生ごみ2の高臭気な高発酵、高分解期において加熱ヒーター41に通電されることにより、生ごみ処理槽内の空気中に含まれている悪臭成分を取り除き、高発酵、高分解が終了すると加熱ヒーター41への通電停止によって脱臭を終了する。第2の脱臭装置39は、生ごみ2の高発酵、高分解期において第1の脱臭装置38とともに空気中に含まれている悪臭成分を取り除く。また、高発酵、高分解期が終了して臭気濃度が一定値以下になり第1の脱臭装置38が脱臭しなくなった低発酵、低分解期においても生ごみ2の処理が終了するまで引き続き脱臭する。これは第1、第2の脱臭装置38,39を排気通路13に直列に配設した効果である。
【0049】
このような構造においても、加熱ヒーター41への通電を高臭気な高発酵、高分解期のみとしているのでエネルギーの消費量を節約することができることは明らかであろう。
また、高臭気な高発酵、高分解期は、第1、第2の脱臭装置38,39によって脱臭しているので、より一層脱臭効果を高める利点がある。
【0050】
なお、上記した実施の形態では、生ごみ2と菌床14との混合物の温度を温度センサ21によって検出し、その検出信号によって第1の脱臭装置38の使用、不使用状態の切り替えを行うようにしたが、本発明はこれに何ら特定されるものではなく、混合物中の水分率を検出する水分率センサ22、混合物の重量を検出する重量センサ23または生ごみ処理槽4内の臭気濃度を検出する臭気センサ24のうちのいずれか1つの検出信号に基づいて第1の脱臭装置38の使用、不使用状態を切り替えるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、第2の脱臭装置39として活性炭を用いたが、これに限らず酸化チタン等の光触媒を用いてもよい。この場合は、触媒効果を高めるために蛍光灯等によって紫外線を光触媒に照射すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る生ごみ処理装置の一実施の形態を示す外観斜視図である。
【図2】同装置の側断面図である。
【図3】同装置の内部を示す平面図である。
【図4】排気通路と脱臭装置の斜視図である。
【図5】同脱臭装置のブロック図である。
【図6】発酵期間、温度および微生物の関係を示す図である。
【図7】混合物の温度、重量、水分率、臭気濃度、高臭気時、低臭気時、高エネルギー脱臭時期および低エネルギー脱臭時期を示す図である。
【図8】脱臭装置の他の実施の形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0053】
1…生ごみ処理装置、2…生ごみ、3…装置本体、4…生ごみ処理槽、13…排気通路、13A…第1の分岐路、13B…第2の分岐路、14…菌床、21…温度センサ、22…水分率センサ、23…重量センサ、24…臭気センサ、35…排気ファン、36…脱臭装置、37…三方弁、38…第1の脱臭装置、39…第2の脱臭装置、40…熱交換器、41…加熱ヒーター、42…白金触媒。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ごみ処理槽内において微生物の代謝能力を利用して生ごみに含まれている有機物を水と炭酸ガスに発酵分解し、前記生ごみ処理槽内の前記分解物質と生ごみに含まれている水分を含んだ空気を排気通路を経て装置本体の外部に排出する生ごみ処理装置において、
前記排気通路中に加熱昇温のための高エネルギーを要する脱臭能力の高い第1の脱臭装置と、低エネルギーで前記第1の脱臭装置より脱臭能力が低い第2の脱臭装置とを配設し、高臭気時においては少なくとも前記第1の脱臭装置により前記排気通路を通って装置外部に排出される臭気を脱臭し、低臭気時においては前記第2の脱臭装置のみにより前記排気通路を通って装置外部に排出される臭気を脱臭するようにしたことを特徴とする生ごみ処理装置。
【請求項2】
第1の脱臭装置として白金触媒を用い、第2の脱臭装置として吸着剤または光触媒を用いたことを特徴とする請求項1記載の生ごみ処理装置。
【請求項3】
排気通路に第1の脱臭装置が配設される第1の分岐路と、第2の脱臭装置が配設される第2の分岐路とを設け、前記第1の分岐路と前記第2の分岐路との分岐部に、これらの分岐路を切り替える切替手段を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の生ごみ処理装置。
【請求項4】
生ごみ処理槽内の生ごみと菌床との混合物の温度を検出する温度センサを備え、この温度センサの検出信号に基づいて第1の脱臭装置の使用、不使用状態を切り替えることを特徴とする請求項1,2,3のうちのいずれか1つに記載の生ごみ処理装置。
【請求項5】
生ごみ処理槽内の生ごみと菌床との混合物の水分率を検出する水分率センサを備え、この水分率センサの検出信号に基づいて第1の脱臭装置の使用、不使用状態を切り替えることを特徴とする請求項1,2,3のうちのいずれか1つに記載の生ごみ処理装置。
【請求項6】
生ごみ処理槽内の臭気濃度を検出する臭気センサを備え、この臭気センサの検出信号に基づいて第1の脱臭装置の使用、不使用状態を切り替えることを特徴とする請求項1,2,3のうちのいずれか1つに記載の生ごみ処理装置。
【請求項7】
生ごみ処理槽内の生ごみと菌床との混合物の重量を検出する重量センサを備え、この重量センサの検出信号に基づいて第1の脱臭装置の使用、不使用状態を切り替えることを特徴とする請求項1,2,3のうちのいずれか1つに記載の生ごみ処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−26491(P2006−26491A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206881(P2004−206881)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】