説明

生もの洗浄水等の汚水処理システム

【課題】本発明の課題は、有機物を多量に含む生もの洗浄水等の汚水を直接凝集剤を用いて固液分離することで浄化槽による処理負担を大幅に軽減するシステムにおいて、凝集反応をより効果的に行い、スカム層の発生を無くし固液二層分離を実現させると共に、連続運転が可能なシステムを提供することにある。
【解決手段】本発明の汚水処理システムは、原水に直接無機系凝集剤と有機系凝集剤を混入し固液分離させた後、液体を浄化槽へ送って処理し、固体を汚泥として処理する汚水処理システムであって、原水を移送する上流側から無機系凝集剤を注入して凝集反応を行わせる第1の処理手段と、PH調整剤を注入してPH調整を行わせる第2の処理手段と、有機系凝集剤を注入して凝集反応を行わせる第3の処理手段とが順次配備され、原水移送、各処理ステップそして多段の処理ステップ間の移送が連続運転でなされるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屠畜場や精肉処理施設や魚介類の加工施設のような生ものを扱う施設において大量に排出される洗浄水等の有機物を含んだ汚水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
家畜を潰して解体処理する屠畜場や、海産物を洗浄処理する処理場あるいは農産物を洗浄する洗浄処理場などから排出される大量の処理水(原水)は、そのまま排水路へ排出することはできず、一般には浄化槽によって浄化処理されてそれぞれの地域の排出基準を満たす状態にして排水路等へ排出している。畜産物を解体処理し食肉や皮革等を得る所謂屠畜場では、例えば、成豚1頭を解体処理するに当たり、約1tの洗浄水が必要とされる。食肉、骨、内臓、皮等が分別取得され、洗浄水には血液や脂肪分、毛、臓器廃棄物や腸内汚物そして肉洗浄油といったものが混入されて排出される。この多量の汚水原液(以下原水という)は畜舎から出る屎尿処理とほぼ同様の方法で処理される。すなわち、原水槽に貯留して、そこからポンプにより固液分離装置に供給して糞等の固形分と液分に分離してそれぞれを処理する方法が採られている。従来の活性汚泥法による汚水処理装置に採用されている振動篩方式及び傾斜スクリーン方式の固液分離システムは、ホッパー状の汚水受けの傾斜開口部に傾斜状の網目スクリーンを配置してなり、傾斜スクリーンの上部に糞尿を含む原水をポンプにより供給して、網目スクリーンに沿って落下させることにより、液分はスクリーンの網目より落下しホッパー状の汚水受けから濾液槽に一旦ためてから、曝気槽等の次処理工程に送られる。一方、固形分はスクリーンに沿って流れてスクリーンの下端部から固形分収納ピッチに落下して堆積される。曝気槽では、エアレータにより曝気が行なわれて汚水中の汚泥物が活性汚泥微生物により分解される。曝気槽には一般には固定式のエアレータが設けられ、このエアレータにより微細な気泡を尿汚水に吹き込むことにより槽内を一定流速で攪拌して槽内の溶存酸素濃度を一定にし、活性汚泥微生物を培養して汚水処理をするのであるが、各自治体が定める排水基準を満たすまで約1週間かけて処理する。処理水が大量となれば施設も大きなものが必要となり、このことが施設の新設や拡張を困難にしている。
【0003】
この様な状況に鑑み、本出願人は先に特許文献1「有機物を含む汚水処理方法」の発明を提示した。この発明は従来の大がかりな浄化処理設備を要する廃水処理を抜本的に改革するため、種々の試みの中で原水をまず最初に固形物を除去する固液分離を行い、分離液に対して曝気処理を施すという固定観念を捨て、原水に直接凝集剤を投下して固液を分離してしまうことを提案するものであった。すなわち、ステップ1で原水貯留槽に細かくされた古紙を投入し、攪拌する。古紙が均一に混合されたならステップ2としてポリ硫酸第二鉄を投入して攪拌する。ステップ3として10ppm以上の有機凝集剤を加えてから攪拌し、凝集反応を行わせる。凝集反応が完結した後、ステップ4として攪拌を停止して放置する。すると上層にスカム層が、中間層に水が、そして下層に沈殿固形物と分離されるので、ステップ5では中間層の水を二次槽に排出させる。この二次槽の水は解体処理の際に食肉洗浄以外の洗浄水として再利用することができる。ステップ6で原水貯留槽に残った上層のスカム層と下層の沈殿固形物とを一緒にして汚泥槽に排出させる。ここで処理をすべき原水が他にあるかを判断し、ある場合にはステップ7に進み、次のバッチの原水を原水貯留槽に導入し再度ステップ1からの作業を繰り返す。原水処理作業を終えた段階でステップ8に進み二次槽の水は二次処理のため他の処理槽に移して二次処理を行い排出基準を満たす処理を行う。ステップ9で処理水を排水路に放出して作業を終了する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように特許文献文献1の有機物を含む汚水処理方法は、原水にポリ硫酸第二鉄を加えて攪拌させることにより、一次反応を行わせ、しかる後有機凝集剤を加えることにより、上層スカム層と中間層の水と下層の固形沈殿物とに綺麗に分離させることができ、その状態に於ける中間層の液体はそのままで、BOD、COD、SS値においてほぼ排出基準を満たすまでの清浄度が得られる。しかもその反応時間は1時間以内通常は30分程度で済むことから、従来大量に排出される洗浄液を何日間もかけて処理する大規模な処理施設は不要となり、コンパクトな処理槽で対応することが出来るという画期的な効果を奏するものであるが、バッチ式の処理動作であるため、自動運転がし難く人手を要するものであった。また、凝集反応の結果として固液分離の際には沈殿した汚泥層と液層とスカム層の三層形態で分離するため、中間層の液体を排出させた後汚泥層とスカム層を重ねて固形物を排出するというプロセスを経る必要があった。
【0005】
本発明の課題は、有機物を多量に含む生もの洗浄水等の汚水を直接凝集剤を用いて固液分離することで浄化槽による処理負担を大幅に軽減するシステムにおいて、上記の問題点を解決し、凝集反応をより効果的に行い、スカム層の発生を無くし固液二層分離を実現させると共に、連続運転が可能なシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の汚水処理システムは、原水に直接無機系凝集剤と有機系凝集剤を混入し固液分離させた後、液体を浄化槽へ送って処理し、固体を汚泥として処理する汚水処理システムであって、原水を移送する上流側から無機系凝集剤を注入して凝集反応を行わせる第1の処理手段と、PH調整剤を注入してPH調整を行わせる第2の処理手段と、有機系凝集剤を注入して凝集反応を行わせる第3の処理手段とが順次配備され、原水移送、各処理ステップそして多段の処理ステップ間の移送が連続運転でなされることを特徴とする。
本発明の汚水処理システムの第1の形態は、原水を移送する上流側から無機系凝集剤を注入する供給部を備えた第1の処理槽と、PH調整剤を注入する供給部を備えた第2の処理槽と、有機系凝集剤を注入する供給部を備えた第3の処理槽とが順次配備され、上流側槽の処理液の上澄み液を次段の槽に送る配管と、各槽には攪拌機が配置されたものとした。
本発明の汚水処理システムの第2の形態は、原水を移送するパイプに上流側から無機系凝集剤を注入する供給部と、攪拌機と、PH調整剤を注入する供給部と、攪拌機と、有機系凝集剤を注入する供給部と、攪拌機とが順次配備されたパイプ反応部を備え、該パイプ反応部において凝集反応がなされるようにした。
この第2の形態において、パイプ反応部には、加速用の縮径部の下流側に攪拌機として回転羽根が配置されたパイプを攪拌ユニットとして、該攪拌ユニットが適宜の箇所に組込まれてる構成を採用する。
【0007】
本発明の汚水処理システムにおける固液分離部は、上方位置に凝集反応部からの供給口と浄化槽に連結された液体排出口とを、下方にはホッパー形態の固形分排出口とを備えた静止タンクからなるものとした。また、凝集反応部からの供給管の径より3〜4倍の径の筒状体を静止タンク内に配置すると共に、該筒状体の下方には端部と間隙を空けて邪魔板を配置するようにし、凝集反応部からの供給口は前記筒状体に結合されるようにした。
【0008】
本発明の汚水処理システムにおける汚泥処理部は、静止タンクから供給される汚泥を脱水処理する汚泥槽と、該汚泥槽の汚泥をおが屑が敷き詰められた発酵槽に移送する手段と、槽内を移動しながら攪拌する縦型Wスクリュー攪拌機を備えた発酵槽とからなり、発酵槽に移送された汚泥の大部分を水蒸気と炭酸ガスに変換させて処理するようにした。
また、汚泥を脱水処理する汚泥槽は水分透過素材の底部におが屑やモミガラを敷き詰めた層を形成したもの、あるいは、汚泥を脱水処理する汚泥槽は底部に排水管を敷き詰め、当該排水管を覆うようにおが屑やモミガラを敷き詰めた層を形成したものとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の汚水処理システムは、原水に直接無機系凝集剤と有機系凝集剤を混入し固液分離させた後、液体を浄化槽へ送って処理し、固体を汚泥として処理する汚水処理システムであって、原水を移送する上流側から無機系凝集剤を注入して凝集反応を行わせる第1の処理手段と、PH調整剤を注入してPH調整を行わせる第2の処理手段と、有機系凝集剤を注入して凝集反応を行わせる第3の処理手段とが順次配備された構成を採用し、従来のようなバッチ処理ではなく、原水を原水槽から第1の処理手段へ連続供給し、各処理ステップそして多段の処理手段間の移送が連続運転でなされるものであるから、人手を掛けない自動運転が可能となる。また、連続処理であるため、従来のバッチ処理のような大きなタンクも必要が無く、コンパクトな設備で処理できる。しかも浄化槽へ送る液体は従来の固液分離液とは比べものにならないほど浄化が進んでおり、その結果、浄化槽における処理時間は一週間にも及ぶ長時間を要したものが1時間以内通常は30分程度と格段に短縮され、広い浄化槽用地を必要としなくなるという特段の効果を奏する。
【0010】
本発明の汚水処理システムの第2の形態は、パイプ内で移送される過程で反応がなされるため、処理液が空気と触れる機会が無くスカム層となる軽い固形物が形成され難い。したがって、次段の固液分離部では固液二層の分離形態となって、分離作業が容易となる。
また、上記パイプ反応部には、第1段の凝集反応、次のPH調整、そして、第2段の凝集反応と、それぞれに攪拌動作が必要であるから、加速用の縮径部の下流側に回転羽根が配置されたパイプを攪拌機構のユニットとして適宜の必要箇所に組込まれる形態を採用すれば、コスト的にも有利にパイプ反応部を提供することができる。
【0011】
本発明の汚水処理システムの固液分離部は上方位置に凝集反応部からの供給口と浄化槽に連結された液体排出口とを、下方にはホッパー形態の固形分排出口とを備えた静止タンクからなるものを採用したことにより、凝集反応部からの連続的に供給される固液混合体を静止タンクにおいて固体・液体の二層に分離することができ、最下層に沈降した濃縮固形分を次工程の汚泥処理部へ、上層液を次工程の浄化槽へそれぞれ連続動作として供給することができる。更に、凝集反応部からの供給管の径より3〜4倍の径の筒状体を静止タンク内に配置すると共に、該筒状体の下方には端部と間隙を空けて邪魔板を配置するようにし、凝集反応部からの供給口は前記筒状体に結合されるように構成すれば、固液混合体の流れを筒状体内で凝集反応部からの供給管内に比べてゆっくりした流れとすることにより、フラッグをより大きなものに成長させることができ、静止タンク内での固体・液体の二層分離を効果的に行わせることができる。
【0012】
本発明の汚水処理システムの汚泥処理部は、静止タンクから供給される汚泥を脱水処理する汚泥槽と、該汚泥槽の汚泥をおが屑が敷き詰められた発酵槽に移送する手段と、槽内を移動しながら攪拌する縦型Wスクリュー攪拌機を備えた発酵槽とからなるので、分離された固形分に含まれる水分をまず汚泥槽で脱水し、より脱水が進んだ汚泥を発酵槽に移送することができる。そして、その発酵槽はオガコすなわち、おが屑、樹皮、籾殻といった有機廃棄物が敷き詰められて床となっており、移動機構に取り付けられた縦型Wスクリュー攪拌機によってオガコと汚泥の混合を行うと共に、上下層の切り返し機能を備えているので、発酵を効果的に行うことができ、供給された汚泥の大部分を水蒸気と炭酸ガスに変換させて処理することができる。また、汚泥を脱水処理する汚泥槽が水分透過素材の底部におが屑とモミガラを敷き詰めた層を形成したものを採用することにより、汚泥中の水分を効果的に脱水し、おが屑やモミガラに吸収させた水分は水分透過素材の底部を通して滴下させたり、底部に敷き詰めた排水管から排水させることでおが屑やモミガラの吸水機能を持続させることができる。
この様に本発明の汚水処理システムは、直接原水に無機凝集剤と有機凝集剤を混入し固液分離させた後、液体を浄化槽へ送って処理し、固体を汚泥として処理する汚水処理システムをバッチ動作ではなく、連続運転で稼動させることが可能となり、自動化された汚水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る汚水処理システムの全体構成を示す図である。
【図2】本発明に係る汚水処理システムのパイプ方式反応部の詳細図である。
【図3】パイプ反応部に使用される攪拌ユニットの詳細図である。
【図4】本発明に係る汚水処理システムの多段タンク方式反応部の側面図である。
【図5】本発明に係る汚水処理システムの多段タンク方式反応部の平面図である。
【図6】本発明システムにおける固液分離用静止タンクの詳細図である。
【図7】本発明に係る汚水処理システムの汚泥処理部の詳細図である。
【図8】本発明の汚水処理方式における凝集過程毎のサンプルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は原水に直接ポリ硫酸第二鉄(以下ポリ鉄と略称する。)のような無機系凝集剤を混入し、第一段の凝集反応を起させた後、アニオン系、カチオン系又はノニオン系のいずれかの有機高分子凝集剤を混入して第二段の凝集反応を起させ、固液分離させた後、液体を浄化槽へ送って処理し、固体を汚泥として処理する特許文献1に提示された方式の汚水処理システムである。この方式のメリットは凝集反応によって上層スカム層と中間層の水と下層の固形沈殿物とに綺麗に分離させることができ、その状態に於ける中間層の液体はそのままで、BOD、COD、SS値においてほぼ排出基準を満たすまでの清浄度が得られることにより、その後の必要とされる浄化槽における曝気処理の時間が飛躍的に短縮される点にある。従来はタンク内に導入された原水等被処理液に凝集剤を投入、攪拌することによって起こる凝集反応を二回に分けて実行し、しかる後静止状態として三層分離をさせて中間層の水抜き、最後に固形物の排出を行う一連の作業をバッチ式に行っていた。本発明の最も大きな特徴は、タンク内でバッチ式に凝集反応を起させるのではなく、原水を移送するパイプに上流側から無機系凝集剤を注入する供給部と、攪拌機と、PH調整剤を注入する供給部と、攪拌機と、有機系凝集剤を注入する供給部と、攪拌機とが順次配備されたパイプ反応部、又はタンク内を処理液が連続して流れる形態の多段タンク反応部を備え、処理液が連続して流れる反応部において凝集反応がなされる点にある。すなわち、被処理液が移送される過程で第一段の凝集反応と第二段の凝集反応を順次起させるようにして連続処理を可能にした点にある。
【0015】
図1に本発明に係る「生もの洗浄水等の汚水処理システム」の全体構成図を示す。ここに示したものは、豚等家畜の解体処理を行う屠畜場における汚水処理を想定したものである。処理工程は原水が集められる原水槽1、凝集反応が行われるパイプ方式の反応部2A、固液分離がなされる静止タンク3、液体が後処理される浄化槽4、固体分が蓄積され脱水処理される汚泥槽5、汚泥を分解処理する発酵槽6とが配備され、各工程が順次連続動作で処理が進められる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0016】
原水はまず、原水槽1に集められ、凝集反応を起させるため、次段のパイプ反応部2Aへ移送されるが、前述したように食肉、骨、内臓、皮等が分別取得される過程で、屠畜場から排出される洗浄水には血液や脂肪分、毛、臓器廃棄物や腸内汚物そして肉洗浄油といったものが混入されて排出されるため、この原水槽1には攪拌機構が備えられ、原水は混合状態が均質化されたものとして送り出すようにする。例えば、図2に示されるように攪拌モーターと回転羽からなる攪拌機構11と水中ポンプ12が配備される。ここに示される凝集反応部はパイプ方式のもので、その反応部2Aは蛇行する配管形態が採られているが、これは、無機系凝集剤による第一段階の凝集反応工程、PH調整剤によるPH調整工程、有機系凝集剤による第二段階の凝集反応工程を該パイプ反応部において移送過程で順次行うために必要な流路長は必然的に長くなるため、場所をとらない構成として、また液体の流れ方向を変更することによって攪拌機能を増加させるため蛇行する配管が採用されている。まず、最上流側にポリ鉄など無機系の凝集剤を添加する供給口21が設置され、直ぐ下流側には添加された無機系の凝集剤を原水中に均一分布させるための攪拌機24が配置され均一化がなされる。ポリ鉄を用いた場合、処理水の酸性が強くなるため、次に凝集反応がなされた下流位置に苛性ソーダ等のPH調整剤を添加する供給口22が設置され、直ぐ下流側には添加されたPH調整剤を被処理液中に均一分布させて均一なPH分布にするための攪拌機24が設置される。更に、被処理液が均一に中性となった下流において、アニオン系など有機高分子凝集剤を添加する供給口23が設置され、直ぐ下流側には添加された有機系の凝集剤を原水中に均一分布させるための攪拌機24が設置される。また、流路は所定距離毎に曲管を配置して流れ方向を変えるようにしていることによって更に攪拌機能を増すこととなる。流れるパイプ内で三段階の処理によってなされる凝集反応は、従来のタンク内で三段階の処理を順次行う場合に比べ、固液分離が優れた結果が認められる。それは、被処理液のPHが均一に中性化された状態で有機系凝集剤による凝集反応が行われることと、空気との接触がないためと解される。
【0017】
パイプ反応部2Aの構成としてより好ましい実施形態例を示す。それはパイプ反応部では、無機系の凝集剤を添加するステップと、PH調整剤を添加するステップと、有機系凝集剤を添加するステップとを踏むことになるが、各ステップにおいて添加と攪拌が繰り返される。この攪拌という機能をパイプ内で効率的におこなう攪拌ものとして、図3に示すような攪拌ユニットを提示する。基本的にパイプ形状であって、両端部は接続用のフランジ部24aとなっており、加速用の縮径部24bの下流側に攪拌機として渦流発生用固定羽根24cが配置された管を攪拌ユニットとして、該攪拌ユニットがパイプ反応部2Aの適宜箇所に組込まれてなる。上流に設置された供給部を備えたパイプとフランジ部で結合され、被処理液に添加された添加物がこの攪拌ユニットに導入され、まず縮径部24bにおいて加速され、勢いを増した被処理液が渦流発生用固定羽根24cに噴射される。この固定された羽根によって被処理液の流れは回転力を受け、渦を発生しながら下流へ流れる。その過程で添加物は被処理液中に効果的に均一化して混合される。添加物が無機系凝集剤のときも、PH調整剤のときも、有機系凝集剤であるときも同じ攪拌ユニットを用いることで、コスト的にも低く押さえることができる。
なお、毛、臓器廃棄物といった繊維質を多く含む原水を扱う処理施設においてはこの渦流発生用固定羽根24cに繊維状物質が絡まって流れを阻害する場合があるため、簡単なフィルターを設置するなどによる固体除去の前処理を行うこと、また、渦流発生用固定羽根24cが配置されるパイプ部は開口構造とし、必要に応じて付着物除去が可能な形態とすることが望ましい。
【0018】
屠畜場における原水を試料として本発明の凝集反応による処理方式に沿って各処理段階での試料について状態を観察した結果を図8に示す。試料1は採取した原水、試料2は原水にポリ鉄を1500PPM添加し攪拌したもの、試料3はポリ鉄を1500PPM添加し攪拌した後、PH調整剤(苛性ソーダ)を添加して中性に調整して後高分子凝集剤(ここではアニオン系高分子凝集剤AP517C[商品名、ダイヤニトリクス社製]を使用)を10PPM添加し攪拌したものである。図8の上段に示した写真は各試料を攪拌直後に撮影したもの、下段は2分40秒後に撮影したものである。白黒写真では分からないが、試料1の原水は血液の色素で赤くなっており、原水にポリ鉄添加を添加して第一段の凝集反応をさせた試料2は赤みを帯びた褐色に懸濁しており、試料2にPH調整して後高分子凝集剤を添加し攪拌した試料3は大きなフロックが形成され、攪拌直後はそれが全体に浮遊分布した様相を呈している。この試料3をしばらく静止状態において経過を観察したら、2分40秒後に褐色のフロックは沈殿し、上層には透明度の高い澄んだ水の二層に分離された。このときの写真が図8の下段に示したものである。本発明においては古紙繊維を使用しないため、古紙繊維の空気との接触が無いことから上層に若干の浮遊物が認められるもののスカム層が発生しないことが確認できる。試料1と試料2については時間経過に伴う変化はほとんど見られない。
【0019】
上記の試料3の分離液を布で濾過し分離された液体についての分析結果をもとの原水と比較して示す。計量方法は表に示したJIS規格に従って行った。BODとは生化学的酸素要求量、CODは化学的酸素要求量を示している。
【表1】

表1の結果から、本発明の二段の凝集反応によって処理された液体は生物の住み難さを示すBODについては原水(試料1)が1,800 mg/lであったものが本発明の処理を行った試料3では95 mg/lに激減しているのが確認できる。また、水の汚染度を示すCODについても原水(試料1)が510mg/lであったものが本発明の試料3では37 mg/lに激減しているのが確認できる。窒素含有量については原水(試料1)が100 mg/lであったものが本発明の処理を行った試料3では1/5以下の18mg/lに、燐含有量については原水(試料1)が12 mg/lであったものが1/100の0.12mg/lまで下がっている。
なお、屠畜場から出される原水の状態はその時々の現場状況によって異なり、BODについては通常は2,000 mg/l 程度であるが、2,500mg/l まで上がる場合もある。
【0020】
千葉県が定めている排出基準は旧江戸川河口から富津岬までの海域と、印旛沼、手賀沼等の第1種水域、富津岬から須崎灯台までの第2水域、そして第1,2以外の海域の第3水域に分けて基準が決められているが、ここに参考のため、第1水域の排水基準を表2に示す。基準は排水量によって異なり、また、新設の設備には厳しい基準が課せられている。
【表2】

この表2の排出基準からみて、本発明の処理方式では浄化槽へ送る前の初段処理において、すでに排水基準に近い値になっていることが分かる。従来方式では原水から固体分を除去した液体を浄化槽に送って処理するため、その際の、BOD値は試料1の原水の場合、1,800 mg/lであり、この状態から浄化槽処理を開始する処理負担と、本発明の方式の95 mg/lから処理して基準値に持っていく負担とでは雲泥の差があることが理解できるであろう。浄化槽処理の時間を大幅に短縮できることにより、施設のコンパクト化と処理能力の向上が可能となる。
【0021】
次に、本発明の汚水処理システムの連続運転が可能な凝集反応部として、多段タンク方式のものを提示する。図4はこの方式の1実施形態の側面図、図5はその平面図である。反応部2Bは、図4、図5に示されるように原水を移送する上流側から無機系凝集剤による凝集反応を行わせる第1の処理槽25と、PH調整剤によるPH調整を行う第2の処理槽26と、有機系凝集剤による凝集反応を行わせる第3の処理槽27とが順次配備され、ここに示す例では更にもう一段有機系凝集剤による凝集反応を行わせる第4の処理槽28と貯留槽29が配備されている。最後の凝集反応となる有機系凝集剤による処理は二段階の処理が効率的であるためこの構成を採用した。処理水の移送はバッチではなく流動する過程で連続して反応を進めるため、上流側タンクの上積み液が下流側タンクに自然に流れるように段差がとられて配置されている。
【0022】
原水槽1から水中ポンプ12によって原水が給送されてくる配管25aの途中にポリ鉄など無機系の凝集剤を添加する供給口21が設置され、当該配管の先端部25bは第1の処理槽25の下層部で開口するようになっている。該先端部25bの先に設けられた邪魔板2dは原水を横方向に拡散させるためのものである。第1の処理槽25の下層部には攪拌機24が設けられ、給送途中に混入されたポリ鉄など無機系の凝集剤を原水中に均一分布させるとともに、凝集反応を促進させる。この形態例で用いる攪拌機24は攪拌モーター24mと回転翼24nとを備えたもので、該回転翼24nの回転駆動によって処理液を攪拌するものである。処理液は凝集反応を進めながら上層方向に移送され、第2の処理槽26と接する第1の処理槽25の上層壁部に設けられ排水口25cから次段の第2の処理槽26へ送られる。この移送は配管26aによってなされ、前記排水口25cから第1の処理槽25の上積み液を取り込み、途中に苛性ソーダ等のPH調整剤を添加する供給口22が設置され、当該配管の先端部26bは第2の処理槽26の下層部で開口するようになっている。第2の処理槽26の構造は先の第1の処理槽25とほぼ同様で、邪魔板2dと、攪拌モーター24mと回転翼24nとを備えた攪拌機24が設けられ、第3の処理槽27へその上積み液を排出する排水口26cが設置されている。この第2の処理槽26における攪拌機24は添加されたPH調整剤を被処理液中に均一分布させてタンク内の処理液を均一なPH分布にするための機能を果たす。
【0023】
ここで均一に中性となった被処理液は次段の第3の処理槽27へ送られる。この移送は配管27aによってなされ、前記排水口26cから第2の処理槽26の上積み液を取り込み、途中にアニオン系など有機高分子凝集剤を添加する供給口23が設置され、当該配管の先端部27bは第3の処理槽27の下層部で開口するようになっている。第3の処理槽27の構造も先の第1、第2の処理槽25、26とほぼ同様で、邪魔板2dと、攪拌モーター24mと回転翼24nとを備えた攪拌機24が設けられ、第4の処理槽28へその上積み液を排出する排水口27cが設置されている。この第3の処理槽27における攪拌機24は添加された有機高分子凝集剤を被処理液中に均一分布させるとともに、凝集反応を促進させるための機能を果たす。第4の処理槽28の構造は第3の処理槽27とほぼ同様で、配管28aによって前記排水口27cから第3の処理槽27の上積み液を取り込み、途中にアニオン系など有機高分子凝集剤を添加する供給口23が設置され、当該配管の先端部28bは第4の処理槽28の下層部で開口するようになっており、邪魔板2dと、攪拌モーター24mと回転翼24nとを備えた攪拌機24が設けられ、第4の処理槽28における攪拌機24も添加された有機高分子凝集剤を被処理液中に均一分布させるとともに、凝集反応を促進させるための機能を果たす。異なる点は先の排水口25c排水口26c排水口27cが開閉式のシャッターが設置されているのに対し、この排水口28cは常に開放された形態であり、配管なしに貯留槽29に直接流出する形態となっている点である。貯留槽29に溜められた処理液は排出ポンプ29aによって該貯留槽29の下層液を静止タンク3へ移送する。
【0024】
以上のように、多段タンク方式の凝集反応部2Bは、各処理槽の下層部に処理液が供給され、攪拌機によって攪拌されつつ反応を促進し、上層方向に移送され、その上積み液が次段のタンクへ給送される形態となっており、原水槽1から供給された原水が連続した流れとして各タンクを経由する過程で凝集反応が行われるものである。第1の処理槽25と第2の処理槽26との隔壁下層部、第3の処理槽27と第4の処理槽28との隔壁下層部、第4の処理槽28と貯留槽29との隔壁下層部には平常時は閉じられているダンパー2e及び第2の処理槽26と貯留槽29の底部には排出弁2fが配置されている。これは点検やメンテナンスの際など、処理液を排出してタンク内を空にするためのもので、ダンパー2eを開放して隔壁を連通させ、溜まっている処理液を排出弁2fから外部へ排出させるためのものである。
先のパイプ方式では、毛、臓器廃棄物といった繊維質を多く含む原水を扱う処理施設においては渦流発生用固定羽根24cに繊維状物質が絡まって流れを阻害する場合があることを述べたが、この多段タンク方式のものは、繊維質を多く含む原水であってもつまりを生じるような箇所はなく、固体除去の前処理を行う必要がないというメリット、メンテナンスが容易であるというメリットがある。反面、設備としては先のパイプ方式より若干設置スペースを要するというデメリットもある。
【0025】
次に、固液分離を行う静止タンク3について説明する。静止タンク3はほぼ筒状で下方部分はホッパーのようにロート形状に形成されている。反応部2で凝集反応が施された処理液は静止タンク3へ連続的に給送される。この際の処理液は凝集されたフロックが液中に混合された状態、すなわち図8の上段に示された試料3の状態と考えてよい。静止タンク3内には既に給送されていた処理液が貯められており、そこに、順次反応部2からの処理液が加えられる。静止タンク3内の処理液はフロックが沈殿して下層を形成し、液体は上層となって固液が二層に分離される。静止タンク3内の上積み液が浄化槽4へ給送され、次段の浄化槽処理が施され、最下層に沈殿した固形物(汚泥)はロート部を経て汚泥槽5に移送され、次段の固形物処理が施される。静止タンク3は図6のAに示すように反応部2から給送される処理液が供給口31から連続的に静止タンク3へ給送される。上積み液は静止タンク3の上方に配置された液体排出口32から浄化槽4へ、移送されるがその際にゴミ等の浮遊物が混入しないようにゴミ取りダンパー33が取り付けられる。浄化槽4は特に図示しないが従来の浄化槽と何ら変わるものではない。ただ、本発明の処理方式では処理負担が少ないため従来より小規模な設備で足りることとなる。また、下方のホッパー形態のロート部には固形物排出口34とそのすぐ下流側に排出装置35が設置され、最下層に沈殿した汚泥を汚泥槽5に移送する。
【0026】
静止タンク3のより好ましい実施形態を図6のBに示す。この実施形態では凝集反応部からの供給管の径より3〜4倍の径の筒状体36を静止タンク内に配置すると共に、該筒状体36の下方には端部と間隙を空けて邪魔板37を配置するようにし、下端開口部には数cmの間隙を開けて邪魔板37が取り付けられ、凝集反応部からの供給口31は前記筒状体36の上方位置に結合されるようにした。実寸法では反応部2からの供給管の直径は75〜100φが用いられるのでこの筒状体36の直径は300φ程度が適当である。凝集されたフロックが液中に混合された状態の処理液は3〜4倍の径の筒状体36に供給されるので、この筒状体36に入ると供給管内のときより被処理液の流速が急に遅くなる。そこでゆっくり流れ下端部に到達するまでにフロックはより成長し大きくなる。下端部では邪魔板37に当たり、周囲の間隙から静止タンク3の既に給送されていた処理液が貯められているところに順次反応部2からの処理液が加えられる。この実施形態では筒状体36の下端部に到達するまでにフロックはより成長し大きくなっているので、固形分の沈殿は速やかになされ、固液二層分離が効果的になされることとなる。
【0027】
次に、液体と分離された固形分である汚泥の処理について説明する。汚泥処理部は図7に示すように静止タンク3から供給される汚泥を脱水処理する汚泥槽5と、該汚泥槽5の汚泥をおが屑が敷き詰められた発酵槽に移送する手段7と、槽内を移動しながら攪拌する縦型Wスクリュー攪拌機を備えたオガコ発酵槽6とからなる。オガコ発酵槽6に移送された汚泥の大部分は微生物の力によって発酵され、水蒸気と炭酸ガスに分解させて処理する。水蒸気は発酵熱によって大気中に蒸発し、炭酸ガスも大気中に発散される。固形物排出口34から排出装置35によって給送されてくる汚泥は固形物といってもその成分の大部分は水分である。したがって、発酵槽に移送する前にこの汚泥槽5で相当分の水分を脱水しておく処理を行うようにした。汚泥を脱水処理する汚泥槽5は水分透過素材の底部51におが屑とモミガラを敷き詰めた層52を形成すると共に、少なくとも2槽に区分するようにした。静止タンク3からの汚泥が供給される槽と次段のオガコ発酵槽6へ汚泥を移送する槽とを別にするためである。汚泥が供給される側の槽では静止タンク3から連続的に供給される汚泥を蓄積する過程で汚泥の水分が底部51に敷き詰められたおが屑やモミガラによって脱水作用を受ける。おが屑やモミガラが吸い取った水分は水分透過素材の底部51を通して下方に滴下する。滴下した水分は集められ、原水槽1に戻される。次段のオガコ発酵槽6へ汚泥を移送する側の槽ではおが屑やモミガラを敷き詰めた層52に接した部分の汚泥が脱水され、固化が進んだ状態となっているので、この部分の汚泥をスクリュウコンベアー等の移送手段7を用いてオガコ発酵槽6へ汚泥を移送する。すると、その上にあった汚泥がおが屑やモミガラを敷き詰めた層52と接するようになり、ここで脱水が進められる。順次上層の汚泥が下降しオガコ発酵槽6への汚泥移送を完了する。この時点で静止タンク3からの汚泥が供給される槽と次段のオガコ発酵槽6へ汚泥を移送する槽を切換える。
【0028】
汚泥を脱水処理する汚泥槽5の変形例を示す。上記の例ではおが屑やモミガラが吸い取った水分は水分透過素材の底部51を通して下方に滴下する形態であったが、ここに紹介する例は底部に排水管53を井桁状若しくは蛇行形態で敷き詰め、当該排水管53を覆うようにおが屑やモミガラを敷き詰めた層を形成したものである。この排水管53には孔が多数穿設されており、そこからおが屑やモミガラが吸い取った水分を排出する。この排水管53の水は集められ、原水槽1に戻される。汚泥槽5を少なくとも2槽に区分するようにし、静止タンク3からの汚泥が供給される槽と次段のオガコ発酵槽6へ汚泥を移送する槽とを別にして切換え使用する点は先の例と同様である。
【0029】
最後に、汚泥の最終処理を行うオガコ発酵槽6について説明する。このオガコ発酵槽6の基本的機能は前述したように微生物の力によって発酵させ、水蒸気と炭酸ガスに分解させて処理するというものである。機構的には本出願人が先に提示した特許文献2の「おが屑畜舎整床システム」(特許第4032064号)とほぼ同様の構成が採用できる。すなわち、特許文献2の発明であるおが屑畜舎整床システムは、畜舎の床材として敷き詰められた厚さ80〜150cmのオガコの上下層を切り返す縦方向スクリューと、該縦方向スクリューを回転駆動させる機構と、該縦方向スクリューをオガコが敷き詰められた領域内で移動させる機構と、該縦方向スクリューに取り付けた家畜追い立て手段とを備えるようにしたもので、これは被処理物が汚泥ではなく、家畜の糞尿であり、この処理スペースが専用の処理槽ではなく、畜舎そのものである点で相違するが、オガコが深く敷き詰められたスペースにオガコの上下層を切り返す縦方向スクリューと、該縦方向スクリューを回転駆動させる機構と、該縦方向スクリューをオガコが敷き詰められた領域内で移動させる機構とを備え、被処理物をオガコと混合し微生物の力によって発酵させ、水蒸気と炭酸ガスに分解させて処理するものという点で同様である。また、本発明のシステムに係るオガコ発酵槽6はオガコの下層部には給気管が配設され、該給気管開口部から空気が供給されるようにするのが好ましい。さらに、オガコの上下層を切り返す縦方向スクリューを少なくとも2本を備えるようにするのが好ましい。
【0030】
発明のシステムに係るオガコ発酵槽6は、図7に示されるように縦方向スクリューを少なくとも2本セットしたスクリュー攪拌機61を備え、このスクリュー攪拌機61は3m程度の深さにオガコが敷き詰められた槽内で移動するように配備される。移動させる機構の標準的な機構は、オガコ発酵槽6の両側壁部に沿って配置された第1の固定レール62と、該第1のレール62上を走行する走行部材63と、両側壁部の該走行部材63間に梁渡された第2のレール64と、該第2のレール64上を走行する走行駆動部65とからなり、該走行駆動部65には前記縦方向スクリュー61を回転駆動させる機構が収納されると共に前記縦方向スクリュー61が垂下する形態で取り付けられたものを提示する。この移動機構は、走行部材63が第1の固定レール62上をステップ状に駆動し、走行駆動部65は連続往復駆動するものであって、前記走行部材のステップ幅と前記走行駆動部65の連続駆動速度は制御機構の下で設定された値で自動運転されるようにした。そして、より好適な態様として、走行部材のステップ駆動幅は、オガコの温度に対応して設定されるものとした。
【0031】
図7に示した本発明のシステムに係るオガコ発酵槽6の例では汚泥槽5から移送された汚泥は汚泥散布車71によって、オガコ上に散布するようにしている。汚泥散布車71は前記スクリュー攪拌機の走行駆動部65と同じ第2のレール64上を走行するものとしたが、走行駆動部65と汚泥散布車71を一体構造としてもよい。
本発明のシステムに係るオガコ発酵槽6は、上記のように敷き詰められた厚さ300cm程度のオガコの上下層を回転駆動させる機構を備えた縦方向スクリューで攪拌切り返しを行うものであるから、オガコを余所へ搬送することなくその位置で上下層の切り返しが実行できる。そして、該縦方向スクリューをオガコが敷き詰められた領域内で移動させる機構を備えているので、オガコが敷き詰められた領域の隅々まで移動して切り返しの作業が行える。微生物による発熱発酵が処理スペース全体で進められ、分解された水分の蒸発を促進する。
【0032】
また、本発明に係るオガコ発酵槽6は、好ましい形態としてオガコの下層部には給気管が配設され、該給気管開口部から空気が供給されるようにしたので、微生物による発酵作用が促進され、汚泥の分解がより効率的に行われる。汚泥の大部分は水蒸気と炭酸ガスとなって大気中に放出されるが残留有機物はオガコ中に残留蓄積される。1年程度の長期使用の後、オガコと残留有機物は新しいオガコと入れ替えられ、取り出されて堆肥として使用される。
また、本発明のおが屑畜舎整床システムは、好ましい形態としてオガコの上下層を切り返す縦方向スクリューを少なくとも2本を備えるようにしたので、単に下層のオガコが空気中まで持ち上げられ上層に堆積されるだけでなく、複数のスクリューによって運び上げられるオガコ同士が互いに干渉して粉砕・攪拌作用を相乗させることになり、微生物による発酵をより促進させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この明細書では、本発明の「生もの洗浄水等の汚水処理システム」を屠畜場の原水を処理するシステムとして説明してきたが、本発明はこれに限定されず、他の精肉処理施設や魚介類の加工施設のような生ものを扱う施設において大量に排出される洗浄水等の有機物を含んだ汚水処理システムに適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 原水槽 11 攪拌機構
12 水中ポンプ
2A パイプ反応部 2B 多段タンク反応部
2d 邪魔板 2e ダンパー
2f 排水弁
21 無機系凝集剤供給部 22 PH調整剤供給部
23 有機系凝集剤供給部 24 攪拌機
24m 攪拌モーター 24n 回転翼
25 第1の処理槽 26 第2の処理槽
27 第3の処理槽 28 第4の処理槽
29 貯留槽 25a, 26b, 27c, 28d 給送配管
25b, 26b, 27b, 28b 先端部開口 25c, 26c, 27c, 28c 排水口
3 静止タンク 31 供給口
32 液体排出口 33 ゴミ取りダンパー
34 固形物排出口 35 排出装置
36 筒状体 37 邪魔板
4 浄化槽 5 汚泥槽
51 透水性底部 52 オガコ
53 排水管 6 オガコ発酵槽
61 縦方向スクリュー 62 第1のレール
63 走行車 64 第2のレール
65 走行駆動部 7 汚泥移送手段
71 汚泥散布車
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】特開2005−319448号公報 「有機物を含む汚水処理方法」 平成17年11月17日公開
【特許文献2】特開2007−49933号公報 「おが屑畜舎整床システム」 平成19年3月1日公開

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水に直接無機系凝集剤と有機系凝集剤を混入し固液分離させた後、液体を浄化槽へ送って処理し、固体を汚泥として処理する汚水処理システムであって、原水を移送する上流側から無機系凝集剤を注入して凝集反応を行わせる第1の処理手段と、PH調整剤を注入してPH調整を行わせる第2の処理手段と、有機系凝集剤を注入して凝集反応を行わせる第3の処理手段とが順次配備され、原水移送、各処理ステップそして多段の処理ステップ間の移送が連続運転でなされることを特徴とする汚水処理システム。
【請求項2】
原水を移送する上流側から無機系凝集剤を注入する供給部を備えた第1の処理槽と、PH調整剤を注入する供給部を備えた第2の処理槽と、有機系凝集剤を注入する供給部を備えた第3の処理槽とが順次配備され、上流側槽の処理液の上澄み液を次段の槽に送る配管と、各槽には攪拌機が配置されたものである請求項1に記載の汚水処理システム。
【請求項3】
原水を移送するパイプに上流側から無機系凝集剤を注入する供給部と、攪拌機と、PH調整剤を注入する供給部と、攪拌機と、有機系凝集剤を注入する供給部と、攪拌機とが順次配備されたパイプ反応部を備え、該パイプ反応部において凝集反応がなされることを特徴とする請求項1に記載の汚水処理システム。
【請求項4】
パイプ反応部には、加速用の縮径部の下流側に攪拌機として回転羽根が配置されたパイプを攪拌ユニットとして、該攪拌ユニットが適宜の箇所に組込まれてなる請求項3に記載の汚水処理システム。
【請求項5】
固液分離部は上方位置に凝集反応部からの供給口と浄化槽に連結された液体排出口とを、下方にはホッパー形態の固形分排出口とを備えた静止タンクからなることを特徴とする請求項1乃至4のいすれかに記載の汚水処理システム。
【請求項6】
反応部からの供給管の径より3〜4倍の径の筒状体を静止タンク内に配置すると共に、該筒状体の下方には端部と間隙を空けて邪魔板を配置するようにし、凝集反応部からの供給口は前記筒状体に結合されるようにした請求項5に記載の汚水処理システム。
【請求項7】
汚泥処理部は静止タンクから供給される汚泥を脱水処理する汚泥槽と、該汚泥槽の汚泥をおが屑が敷き詰められた発酵槽に移送する手段と、槽内を移動しながら攪拌する縦型Wスクリュー攪拌機を備えた発酵槽とからなり、発酵槽に移送された汚泥の大部分を水蒸気と炭酸ガスに変換させて処理することを特徴とする請求項5または6に記載の汚水処理システム。
【請求項8】
汚泥を脱水処理する汚泥槽は水分透過素材の底部におが屑やモミガラを敷き詰めた層を形成したものである請求項7に記載の汚水処理システム。
【請求項9】
汚泥を脱水処理する汚泥槽は底部に排水管を敷き詰め、当該排水管を覆うようにおが屑やモミガラを敷き詰めた層を形成したものである請求項7に記載の汚水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−291778(P2009−291778A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67361(P2009−67361)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(502231454)アイケイ商事株式会社 (8)
【Fターム(参考)】