説明

生体サンプル判別装置

【課題】 第1の流路に緩衝剤を注入した後に、第2の流路に充填した生体サンプルを定量し、定量した生体サンプルを第1の流路で電気泳動させる生体サンプル判別装置において、定量部での生体サンプルの定量ミスを未然に検出する。
【解決手段】 緩衝剤は緩衝剤の注入口123より注入し、緩衝剤の注入部113を満たす。生体サンプルの注入口124より生体サンプルを注入し、生体サンプルの注入部114を満たす。ついでプレートを回転させ第1の流路116には緩衝剤を、第2の流路117に生体サンプルを充填する。その後に生体サンプルが定量部120にのみ残存させて定量する。このとき生体サンプルが、定量部にのみ存在することを光学検出ユニットにより検出し、きちんと定量できたことを確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAやタンパクなど、生体サンプルを緩衝剤中で移動させ、その輸送反応を検出して生体サンプルを判別する生体サンプル判別装置に関するものであり、特に生体サンプルがきちんと流路に満たされていることを確認するのに好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
従来の生体サンプル判別技術としては、キャプラリーと呼ばれるガラス管に緩衝剤や生体サンプルを充填して行うものがある。これは吸引あるいは加圧ポンプを使用し、まず容器の中にある前記緩衝剤を前記キャピラリーの中に充填し、次に別の容器にある生体サンプルの一定量分を、ポンプで吸引あるいは加圧しキャピラリーの中に順次詰めていく。
【0003】
キャピラリーの中に充填を行った後、キャピラリーの両側を緩衝剤の容器に浸けてその容器には電圧が印加できるように電極がついており、電極に電圧を印加することで、キャピラリーの中に電圧が印加されて緩衝剤中を生体サンプルが移動する。キャピラリーの一部には光が照射してあり、キャピラリーを挟んで反対側には光量を検出している光検出器が取り付けてある。
【0004】
生体サンプルが緩衝剤の中を移動し、キャピラリーに光を照射している部分を通過するときに得られる光量の増減を検出して生体サンプルの輸送反応を判定している。(例えば、特許文献1参照。)
上記の技術は、吸引あるいは加圧ポンプや緩衝剤・生体サンプルを入れる容器等装置が大掛かりになり取り扱いも不便であるため、より操作の簡単な技術の開発が進められている。たとえば、キャピラリーのかわりにアクリルなどのプレートに微小な溝をつけ流路とし、プレートを回転させ遠心力を用いて前記流路の中に緩衝剤を充填し生体サンプルを定量化して、流路の両側に電極をあて電圧を印加することで、この中を生体サンプルが移動することで起こる輸送反応を光学検出器で検出して判別するものがある。(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−283141号公報
【特許文献2】国際公開第2005/64339号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の緩衝剤が注入される第1の流路と、該第1の流路と一部を共通にして生体サンプルが注入される第2の流路とを有するプレートレートを用いた装置にあっては、緩衝剤を第1の流路に充填した後に、第2の流路に生体サンプルを充填して、電気泳動に必要な所定量の生体サンプルを定量するのであるが、必ずしもきちんと定量が行えないことがある。
【0006】
つまり定量部に生体サンプルを充填できず、定量部が空のままであったり、第1の流路に生体サンプルが次々と流れ込んで定量部に所定量の生体サンプルを保持できなかったりした場合には、生体サンプルをきちんと定量できないため、電気泳動を行うことすらできず、輸送反応を検出できないという問題がある。
【0007】
生体サンプルが第1の流路に流れ込むという問題は、緩衝剤が第1の流路にきちんと満たされていない場合に生じやすく、第2の流路から定量部を通して第1の流路へ生体サンプルが次々と流れ込んでしまうのである。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、正確な電気泳動ができるように、緩衝剤を第1の流路に満たしたのち、第2の流路に生体サンプルを導入した直後に、定量すべき部分に、一定量の生体サンプルが注入されたかどうか、光学的に検出するようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の生体サンプル判別装置は、緩衝剤が流入する第1の流路と、その流路の一部に、第1の流路とその一部を共通とし、一定量の生体サンプルを保持する定量部を含み、定量部を含む流路に前記生体サンプルが流入される第2の流路と、を有する流路のパターンが形成されたプレートを備えるとともに、このプレートの第1の流路に緩衝剤を充填させた後に、この定量部を含む第2の流路に生体サンプルを充填させる充填ユニットと、定量部に存在する生体サンプルを緩衝剤中で移動させ、この緩衝剤中を移動する生体サンプルを判別する判別ユニットとを備える生体サンプル判別装置において、さらに、定量部に対して光照射する発光部と、前記定量部からの光を受光する受光部とからなる光学ユニットを備え、第2の流路に生体サンプルを充填させて、生体サンプルの定量動作を行った後に、定量部に生体サンプルが存在するか否かを、光学ユニットで検出するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の生体サンプル判別装置によれば、生体サンプルをきちんと定量できたかどうかを、電気泳動を行う前に判別することができる。このため生体サンプルをきちんと定量できていない場合には、以降の分析を中止するなどできるため判別の精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の生体サンプル判別方法の実施形態を図面とともに詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態における生体サンプル判別装置の構成図を示す。
【0012】
図1の生体サンプル判別装置において、生体サンプル判別装置用プレート(以下、単にプレートという)10に緩衝剤と生体サンプルを手動で注入する。
【0013】
プレート10を生体サンプル判別装置にセットし、充填用モータ21でプレート10を回転させることにより、プレート10に注入されている緩衝剤と生体サンプルが、第1の流路に緩衝剤、第2の流路に生体サンプルが充填される(プレート10に形成する流路形状については後述)。
【0014】
生体サンプルを加圧ポンプ52や充填用モータ21を使用して第1の流路と第2の流路が接触している共通部分(以下、定量部)に一定量定量化する。
【0015】
その後、第1の流路と第2の流路が共通する定量部にのみ、生体サンプルが存在するかどうかを光学検出器40で検出し、定量部にのみ存在しない場合は、分析動作を中止し、定量部にのみ存在する場合は、電気泳動用電極32を緩衝剤の流路につけて、電気泳動を行い生体サンプルの輸送反応の分析を開始する。こうすることにより、輸送反応の検出の有無を事前に知ることができる。
【0016】
なお光学的な検出は、生体サンプルの吸光量や、生体サンプルに添加されている蛍光物質の蛍光量、または、生体サンプルに添加されている発光物質の発光量で検出することができる。
【0017】
図2はプレート10の形状と各部の名称を示し、図3はプレート10の緩衝剤と生体サンプルの動きを示している。
【0018】
図3Aにおいて、使用者がプレート10の緩衝剤注入口123に緩衝剤を、生体サンプル注入口124に生体サンプルをそれぞれ注入した後、生体サンプル判別装置にセットする。
【0019】
プレート10を充填用モータ21によって回転すると、図3Bの状態で緩衝剤は緩衝剤注入部113から2つに分かれ第1の流路116aを通り電極挿入部121、122、にいたる。一方の生体サンプルは生体サンプル注入部114から第2の流路117に保持される。
【0020】
そのまま回転を続けることにより図3Cの状態になる。2つに分かれた緩衝剤は電極挿入部121、122から第1の流路116bを通り、第1の流路116と第2の流路117が共通する部分、すなわち定量部120で交わり保持される。生体サンプルはこの状態を保持したままである。
【0021】
次に図3Dでは生体サンプル注入口124に加圧ポンプ52からの空気を送ることで、生体サンプルを第1の流路116と第2の流路117が共通する部分、すなわち定量部120を通り、生体サンプルプール115まで充填する。
【0022】
その後もう一度、充填用モータ21を使ってプレート10を回転することで、図3Eの第1の流路116と第2の流路117が共通する部分、すなわち定量部120にのみ生体サンプルが残る。
【0023】
この直後第1の流路116と第2の流路117が共通する部分を光学検出器40で検出し、きちんと定量部120にのみ生体サンプルが保持された状態、すなわち定量された状態になっているかを検出する。
【0024】
生体サンプルが定量部に存在しない場合は、生体サンプルが第2の定量部にまで流れ込んでいなかったり、定量部以外の第1の流路116に生体サンプルが流れ込んでしまったりして、きちんと定量できていない可能性があるため、分析動作を中止する。
【0025】
なお、本実施の形態では緩衝剤と生体サンプルを注入し、回転動作により充填させる例を説明したが、プレートを回転することなく、生体サンプルの輸送反応を検出し判別する装置において、第1の流路に緩衝剤を充填し、第2の流路に生体サンプルを充填し、第1の流路と第2の流路が共通する部分、すなわち定量部で生体サンプルを定量化した直後に、光学検出器で検出することによって、分析動作の続行・中止を判断することも同様である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明にかかる生体サンプル判別装置は、輸送反応を検出する場合に、事前に生体サンプルの定量部を検出し輸送反応の準備が出来たどうかをみるので、輸送反応の検出の失敗を未然に防ぐことができるものであり、微細な流路を用いた液体試料の判別装置に用いて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態における生体サンプル判別装置の構成図
【図2】同装置に用いる生体サンプル判別用プレートの要部拡大平面図
【図3A】同プレートにおける緩衝剤と生体サンプルの流路内の動きを説明する平面図
【図3B】同プレートにおける緩衝剤と生体サンプルの流路内の動きを説明する平面図
【図3C】同プレートにおける緩衝剤と生体サンプルの流路内の動きを説明する平面図
【図3D】同プレートにおける緩衝剤と生体サンプルの流路内の動きを説明する平面図
【図3E】同プレートにおける緩衝剤と生体サンプルの流路内の動きを説明する平面図
【符号の説明】
【0028】
10 プレート
20 充填ユニット
21 充填用モータ
21a プレート受け部
22 プレートトレイ
23 プレート確認センサ
30 検出ユニット
31 嵌合ピン
32 電気泳動用電極
32a,32b 電極
33 ヒータ
34 加圧部
36 クランパ
37 天井板
38 低速回転モータ
39,142 サーミスタ
40 光学検出部
41c 圧電素子
42 距離測定部
50 昇降ステージ
51 上下動モータ
52 加圧ポンプ部
53 ポンプチューブ
54 装置内温度検出センサ
55 ヒータ温度検出センサ
60 筺体
61 扉
62 電源スイッチ
63 LED
64 冷却ファン
65a,65b ゴム脚
66 高圧電源
67 装置電源
68 制御基板
69a 邪魔板
100 生体サンプル判別装置
110 パターン
111 第1の電極部
112 第2の電極部
113 緩衝剤の注入部
114 生体サンプルの注入部
115 サンプルプール
116 第1の流路
116a 内周流路
116b 外周流路
117 第2の流路
118 第1の電極待機孔
119 第2の電極待機孔
121,122 電極挿入口
123 緩衝剤の注入口
124 生体サンプルの注入口
131,132,135 空気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝剤が流入する第1の流路と、その流路の一部に、前記第1の流路とその一部を共通とし、一定量の生体サンプルを保持する定量部を含み、前記定量部を含む流路に前記生体サンプルが流入される第2の流路と、を有する流路のパターンが形成されたプレートを備えるとともに、
前記プレートの第1の流路に緩衝剤を充填させた後に、前記定量部を含む前記第2の流路に前記生体サンプルを充填させる充填ユニットと、前記定量部に存在するサンプルを、前記緩衝剤中で移動させ、緩衝剤中を移動する前記生体サンプルを判別する判別ユニットとを備える生体サンプル判別装置において、
前記装置は、さらに、前記定量部に対して光照射する発光部と、前記定量部からの光を受光する受光部とからなる光学ユニットを備え、
前記第2の流路に前記生体サンプルを充填させて、生体サンプルの定量を行った後に、前記定量部に生体サンプルが存在するか否かを、前記光学ユニットで検出するようにしたことを特徴とする生体サンプル判別装置。
【請求項2】
前記充填ユニットは、前記プレートの第1の流路に緩衝剤を充填させ、前記定量部を含む前記第2の流路に前記生体サンプルを充填させた後、前記第2の流路の定量部に一定量の生体サンプルを残存させて、前記緩衝剤に生体サンプルを一定量だけ添加するものであることを特徴とする請求項1記載の生体サンプル判別装置。
【請求項3】
生体サンプルが、定量部に存在しない場合は、以降の分析動作を中止するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の生体サンプル判別装置。
【請求項4】
充填ユニットにて、前記第2の流路の定量部に一定量の生体サンプルを残存させて、定量部にのみ残存しているか否かを検出し、生体サンプルが定量部以外にも存在している場合には、以降の分析動作を中止するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の生体サンプル判別装置。
【請求項5】
前記生体サンプルが前記定量部にのみあることを、前記生体サンプルの吸光量で確認することを特徴とする請求項1に記載の生体サンプル判別装置。
【請求項6】
前記生体サンプルが前記定量部にのみあることを、前記生体サンプルに添加されている蛍光物質の蛍光量で確認することを特徴とする請求項1に記載の生体サンプル判別装置。
【請求項7】
前記生体サンプルが前記定量部にのみあることを、前記生体サンプルに添加されている発光物質の発光量で確認することを特徴とする請求項1に記載の生体サンプル判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【公開番号】特開2008−164434(P2008−164434A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354297(P2006−354297)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】