説明

生体信号処理装置用プローブ装置

【課題】本発明は、計測のためのセッティングに要する手間を軽減しつつ、生体光計測及び脳波計測の両方を行うことができる生体信号処理装置用プローブ装置を得ることを目的とするものである。
【解決手段】ホルダ1は、被検体の頭部に装着される。ホルダ1には、複数の照射用光ファイバ2aと、複数の受光用光ファイバ2bとが互いに間隔をおいて配置されている。また、ホルダ1には、脳波計測用の複数の脳波計電極4が電極用ばね5を介して取り付けられている。各脳波計電極4は、互いに隣接する照射用光ファイバ2aと受光用光ファイバ2bとの中間に配置されている。電極用ばね5は、脳波計電極4が被検体の頭部に押し当てられることにより圧縮される。このとき、電極用ばね5の復元力により、脳波計電極4は被検体の頭部に押し付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体(被検者)の頭部に装着され、生体信号処理に用いられる情報を得るための生体信号処理装置用プローブ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆる光トポグラフィの技術により大脳の血液量の変化を計測する生体光計測装置においては、被検体の頭部にプローブ装置が装着される。このプローブ装置には、検査光照射用の複数の光ファイバと反射光受光用の複数の光ファイバとが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
また、脳機能の診断のためには、生体光計測装置による計測データに加えて、脳波計測装置による脳波形の計測データが用いられることがあった。脳波計測装置による脳波計測においては、複数の電極が頭部に装着される。
【0003】
【特許文献1】特開2002−11012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような生体光計測装置のプローブ装置においては、多くの光ファイバを頭部の所定の位置に配置する必要があり、また計測の妨げとなる頭髪を光ファイバ毎に掻き分ける等の作業が必要であり、計測開始までの準備に多くの手間を要していた。また、脳波計測装置による脳波計測も行う場合には、多くの電極を頭部に配置する手間がさらに加わり、計測のためのセッティングに要する手間を軽減することが求められている。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、計測のためのセッティングに要する手間を軽減しつつ、生体光計測及び脳波計測の両方を行うことができる生体信号処理装置用プローブ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る生体信号処理装置用プローブ装置は、被検体に装着されるホルダ、ホルダに取り付けられ、生体光計測用の検査光を被検体に照射する照射用光ファイバ、照射用光ファイバに対して間隔をおいてホルダに取り付けられ、被検体からの検査光の反射光を受光する受光用光ファイバ、及び照射用光ファイバと受光用光ファイバとの中間でホルダに取り付けられ、被検体に接触される脳波計電極を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の生体信号処理装置用プローブ装置は、共通のホルダに照射用及び受光用光ファイバと脳波計電極とを取り付け、かつ脳波計電極を照射用光ファイバと受光用光ファイバとの中間でホルダに取り付けたので、計測のためのセッティングに要する手間を軽減しつつ、生体光計測及び脳波計測の両方を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による生体信号処理装置用プローブ装置を示す断面斜視図であり、図1ではホルダ1の一部を切断して示している。図において、ホルダ1は、被検体(生体)の頭部に装着される。ホルダ1には、例えば遠赤外光等の検査光を頭部に照射する複数の照射用光ファイバ2aと、検査光の反射光を受光する複数の受光用光ファイバ2bとが互いに間隔をおいて配置されている。各照射用光ファイバ2aは、互いに隣接する受光用光ファイバ2bの中間に配置されている。図1では、1個の照射用光ファイバ2a及び2個の受光用光ファイバ2bのみを示したが、実際には、複数の照射用光ファイバ2a及び複数の受光用光ファイバ2bが格子状に配置されている。
【0010】
各光ファイバ2a,2bは、光ファイバ取付具3によりホルダ1に取り付けられている。光ファイバ取付具3には、ファイバ用ばね(図示せず)が内蔵されている。ファイバ用ばねは、光ファイバ2a,2bが被検体の頭部に押し当てられることにより圧縮される。このとき、ファイバ用ばねの復元力により、光ファイバ2a,2bの先端部は被検体の頭部に押し付けられる。
【0011】
ホルダ1には、脳波計測用の複数の脳波計電極4が弾性体としての電極用ばね5を介して取り付けられている。各脳波計電極4は、互いに隣接する照射用光ファイバ2aと受光用光ファイバ2bとの中間に配置されている。さらに詳細には、各脳波計電極4は、互いに隣接する照射用光ファイバ2aと受光用光ファイバ2bとを結ぶ線分の中心又はほぼ中心に配置されている。電極用ばね5は、脳波計電極4が被検体の頭部に押し当てられることにより圧縮される。このとき、電極用ばね5の復元力により、脳波計電極4は被検体の頭部に押し付けられる。
【0012】
次に、動作について説明する。ホルダ1を被検体の頭部に装着することにより、照射用光ファイバ2a、受光用光ファイバ2b及び脳波計電極4が同時に被検体の頭部に装着される。そして、適正な計測が行えるように、照射用光ファイバ2a、受光用光ファイバ2b及び脳波計電極4と被検体の頭部との接触状態が調整される。この後、照射用光ファイバ2aを介して被検体の頭部に検査光が照射される。被検体の頭部からの検査光の反射光は、受光用光ファイバ2bにより受光され、生体光計測装置本体(図示せず)に送られる。生体光計測装置本体では、受光用光ファイバ2bにより送られた反射光から、生体内の生理的変化が計測される。一方、脳波計電極4からの出力信号は、リード線13(図5参照)を介して脳波計測装置本体(図示せず)に送られる。これにより、脳波計測装置本体では、被検体の脳波が計測される。
【0013】
このような生体信号処理装置用プローブ装置によれば、照射用光ファイバ2a、受光用光ファイバ2b及び脳波計電極4が共通のホルダ1に取り付けられているので、計測のためのセッティングに要する手間を軽減しつつ、生体光計測及び脳波計測の両方を行うことができる。また、生体光計測装置では、照射用光ファイバ2aと受光用光ファイバ2bとの中間位置の脳機能が計測されるが、この例では照射用光ファイバ2aと受光用光ファイバ2bとの中間に脳波計電極4が配置されているので、生体光計測装置による計測位置と脳波計測装置による計測位置とをほぼ一致させることができ、生体光計測装置と脳波計測装置とを組み合わせた全体の計測精度を向上させることができる。
【0014】
さらに、この例では、脳波計電極4が電極用ばね5を介してホルダ1に取り付けられているので、脳波計電極4を被検体の頭部にしっかりと接触させることができ、脳波を安定して計測することができる。
【0015】
実施の形態2.
次に、図2はこの発明の実施の形態2による生体信号処理装置用プローブ装置を示す断面斜視図である。図において、各ファイバ取付具3には、可視光を反射する材料からなるファイバ用反射部材6が貼り付けられている。また、ホルダ1の脳波計電極4の取付位置には、可視光を反射する材料からなる電極用反射部材7が貼り付けられている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0016】
このような生体信号処理装置用プローブ装置では、二次元で撮影できるCCDカメラ等の撮影装置によりホルダ1を撮影することにより、ファイバ用反射部材6及び電極用反射部材7の互いの相対的な位置を求める。これにより、照射用光ファイバ2a、受光用光ファイバ2b及び脳波計電極4の計測位置を、個々に実測することなく、容易に把握することができる。従って、計測のためのセッティングに要する手間を軽減することができる。
【0017】
なお、複数の撮影装置で互いに異なる角度からホルダ1を撮影することにより、照射用光ファイバ2a、受光用光ファイバ2b及び脳波計電極4の三次元的な計測位置を把握するようにしてもよい。
また、ファイバ用反射部材6と電極用反射部材7とを、互いに異なる色としたり、互いに異なる形状としたりして、容易に識別できるようしてもよい。
さらに、照射用光ファイバ2aに対応したファイバ用反射部材6と受光用光ファイバ2bに対応したファイバ用反射部材6とを、互いに異なる色としたり、互いに異なる形状としたりして、容易に識別できるようしてもよい。
【0018】
実施の形態3.
次に、図3はこの発明の実施の形態3による生体信号処理装置用プローブ装置の要部を示す斜視図、図4は図3の光ファイバの先端部を示す底面図である。図において、照射用光ファイバ2a及び受光用光ファイバ2bの先端部は、例えば銅又は黄銅等の導電性の材料からなるスリーブ部材8により囲繞されている。スリーブ部材8は、照射用光ファイバ2a及び受光用光ファイバ2bの先端部に固定されている。
【0019】
スリーブ部材8と光ファイバ2a,2bとの間には、導電性の液体が含浸された液体保持部材9が充填されている。導電性の液体としては、例えば生理食塩水が用いられる。液体保持部材9としては、例えばスポンジ等の多孔質部材が用いられる。脳波計電極10は、スリーブ部材8及び液体保持部材9を有している。また、脳波計電極10は、リード線を介して脳波計測装置本体に接続されている。光ファイバ2a,2bは、ファイバ取付具3によりホルダ1(図1参照)に取り付けられている。
【0020】
このような生体信号処理装置用プローブ装置によれば、生体光計測用の光ファイバ2a,2bの先端部に脳波計電極10を一体に設けたので、光ファイバ2a,2bを被検体の頭部に接触させることにより、脳波計電極10も同時に被検体の頭部に接触させることができ、計測のためのセッティングに要する手間を軽減することができる。
【0021】
実施の形態4.
次に、図5はこの発明の実施の形態4による生体信号処理装置用プローブ装置を示す側面図である。図において、紐状(又はネット状)のホルダ11は、被検体の頭部に装着される。ホルダ11には、複数の照射用光ファイバ2a、複数の受光用光ファイバ2b、及び複数の脳波計電極4が取り付けられている。各光ファイバ2a,2bは、ファイバ取付具12によりホルダ11に取り付けられている。ファイバ取付具12には、ホルダ11を構成する紐を通すためのスリット(図示せず)が設けられている。即ち、ファイバ取付具12は、ホルダ11の紐をスリットに通すことによりホルダ11に取り付けられている。各脳波計電極4は、互いに隣接する照射用光ファイバ2aと受光用光ファイバ2bとの中間に配置されている。また、各脳波計電極4は、リード線13を介して脳波計測装置本体に接続されている。
【0022】
このような生体信号処理装置用プローブ装置では、脳波計電極4装着用のホルダ11の紐に光ファイバ2a,2bを取り付けられるようにしたので、計測のためのセッティングに要する手間を軽減しつつ、生体光計測及び脳波計測の両方を行うことができる。
【0023】
実施の形態5.
次に、図6はこの発明の実施の形態5による生体信号処理装置用プローブ装置を示す側面図である。図において、照射用光ファイバ2a及び受光用光ファイバ2bは、ファイバ取付具14によりホルダ11に取り付けられている。ファイバ取付具14のホルダ11への取付構造は、脳波計電極4のホルダ11への取付構造と同様になっている。
【0024】
このように、脳波計電極4及び光ファイバ2a,2bのホルダ11への取付構造を互いに同じにすることにより、全体の構造を簡単にすることができ、計測のためのセッティングに要する手間を軽減することができる。
【0025】
実施の形態6.
次に、図7はこの発明の実施の形態6による生体信号処理装置用プローブ装置を示す側面図、図8は図7の要部を示す底面図である。図において、照射用光ファイバ2a及び受光用光ファイバ2bは、ゲル状のファイバ用ホルダ(保護ゲル)15にファイバ取付具16を介して取り付けられている。ゲル状のファイバ用ホルダ15は、被検体の頭部の少なくとも一部を面で覆うものである。
【0026】
脳波計電極4は、電極用ホルダとしての紐状(又はネット状)のホルダ11に取り付けられている。ファイバ用ホルダ15には、脳波計電極4に係合する電極係合部として、脳波計電極4の側面部を囲繞する複数の電極囲繞部15aが設けられている。また、各電極囲繞部15aには、紐状のホルダ11を逃がす複数のスリット15bが設けられている。
【0027】
このような生体信号処理装置用プローブ装置では、照射用光ファイバ2a及び受光用光ファイバ2bは、ファイバ用ホルダ15に予め取り付けられている。また、脳波計電極4は、紐状のホルダ11に取り付けられている。光ファイバ2a,2b及び脳波計電極4を被検体の頭部に配置する場合、まず紐状のホルダ11を頭部に装着し、その上から紐状のホルダ11を覆うようにファイバ用ホルダ15を頭部に装着する。このとき、電極囲繞部15aに脳波計電極4を嵌合する。
【0028】
このように、ゲル状のファイバ用ホルダ15で外周部を覆うことにより、被検体が寝たままの状態で計測を行う際に、被検体が寝返りをうった場合などに、光ファイバ2a,2b及び脳波計電極4の位置ずれを防止することができる。特に、この例では、脳波計電極4を囲繞する電極囲繞部15aを設けたので、ファイバ用ホルダ15に直接取り付けられた光ファイバ2a,2bだけでなく、紐状のホルダ11に取り付けられた脳波計電極4の位置ずれもより確実に防止することができる。従って、計測のためのセッティングに要する手間を軽減しつつ、生体光計測及び脳波計測の両方を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施の形態1による生体信号処理装置用プローブ装置を示す断面斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態2による生体信号処理装置用プローブ装置を示す断面斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態3による生体信号処理装置用プローブ装置の要部を示す斜視図である。
【図4】図3の光ファイバの先端部を示す底面図である。
【図5】この発明の実施の形態4による生体信号処理装置用プローブ装置を示す側面図である。
【図6】この発明の実施の形態5による生体信号処理装置用プローブ装置を示す側面図である。
【図7】この発明の実施の形態6による生体信号処理装置用プローブ装置を示す側面図である。
【図8】図7の要部を示す底面図である。
【符号の説明】
【0030】
1,11 ホルダ、2a 照射用光ファイバ、2b 受光用光ファイバ、4,10 脳波計電極、6 ファイバ用反射部材、7 電極用反射部材、8 スリーブ部材、9 液体保持部材、15 ファイバ用ホルダ、15a 電極囲繞部(電極係合部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に装着されるホルダ、
上記ホルダに取り付けられ、生体光計測用の検査光を上記被検体に照射する照射用光ファイバ、
上記照射用光ファイバに対して間隔をおいて上記ホルダに取り付けられ、上記被検体からの上記検査光の反射光を受光する受光用光ファイバ、及び
上記照射用光ファイバと上記受光用光ファイバとの中間で上記ホルダに取り付けられ、上記被検体に接触される脳波計電極
を備えていることを特徴とする生体信号処理装置用プローブ装置。
【請求項2】
被検体に装着されるホルダ、
上記ホルダに互いに間隔をおいて取り付けられ、生体光計測用の検査光を上記被検体に照射する複数の照射用光ファイバ、
上記照射用光ファイバに対して間隔をおいて上記ホルダに取り付けられ、上記被検体からの上記検査光の反射光を受光する複数の受光用光ファイバ、及び
上記ホルダに取り付けられ、上記被検体に接触される複数の脳波計電極
を備え、上記ホルダには、可視光を反射する材料からなり、上記照射用光ファイバ、上記受光用光ファイバ及び上記脳波計電極の取付位置を示すファイバ用反射部材及び電極用反射部材が設けられていることを特徴とする生体信号処理装置用プローブ装置。
【請求項3】
上記脳波計電極は、弾性体を介して上記ホルダに取り付けられており、上記ホルダを上記被検体に装着した際に上記弾性体が圧縮され、上記脳波計電極が上記被検体に押し付けられるようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の生体信号処理装置用プローブ装置。
【請求項4】
被検体に装着されるホルダ、
上記ホルダに取り付けられ、生体光計測用の検査光を上記被検体に照射する照射用光ファイバ、
上記ホルダに取り付けられ、上記被検体からの上記検査光の反射光を受光する受光用光ファイバ、及び
上記照射用光ファイバ及び上記受光用光ファイバの少なくともいずれか一方の先端部を囲繞するスリーブ部材と、上記スリーブ部材の内側に設けられ、導電性の液体を保持する液体保持部材とを有し、上記被検体に接触される脳波計電極
を備えていることを特徴とする生体信号処理装置用プローブ装置。
【請求項5】
被検体に装着される電極用ホルダ、
上記電極用ホルダに取り付けられ、上記被検体に接触される脳波計電極、
上記脳波計電極に係合する電極係合部を有し、上記電極用ホルダ上から上記被検体に装着されるゲル状のファイバ用ホルダ、
上記ファイバ用ホルダに取り付けられ、生体光計測用の検査光を上記被検体に照射する照射用光ファイバ、及び
上記ホルダに取り付けられ、上記被検体からの上記検査光の反射光を受光する複数の受光用光ファイバ
を備えていることを特徴とする生体信号処理装置用プローブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−187304(P2006−187304A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−327354(P2003−327354)
【出願日】平成15年9月19日(2003.9.19)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】