生体光計測装置
【課題】 注目する生理信号の正確な評価をするためには、関連する生理信号の相互作用を定量的に解析できる技術を開発し、注目する変数以外のパワーを排除する必要がある。
【解決手段】 複数変動間の関係を解析する手段として、有向コヒーレンス(DC)解析および偏有向コヒーレンス (PDC)解析を用い、周波数ごとにスペクトル解析の分野で知られるパワーの移動として求める。
【解決手段】 複数変動間の関係を解析する手段として、有向コヒーレンス(DC)解析および偏有向コヒーレンス (PDC)解析を用い、周波数ごとにスペクトル解析の分野で知られるパワーの移動として求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に光を照射して生体血流(例えば脳)に起因する生体内部情報を取得する生体光計測装置に関する。計測の際に生じる生理信号の相互作用を定量的に解析し、生理信号間のパワーの流れを把握し、他の生理信号が及ぼす影響評価、影響排除することを可能とする技術である。
【背景技術】
【0002】
被検体頭部に光を照射し、被検体頭部を透過し脳血流の影響を反映した生体内部情報を計測する生体光計測装置が知られている(例えば特許文献2)。この生体光計測装置を用いて脳活動計測を行う際には、一般に被験者に対して10秒から30秒程度脳を刺激するための課題を与える。これは十分な脳活動を誘発し、計測可能な脳活動状態の変化とするために必要な時間であり、ここで得られる脳活動信号の周波数帯域は、約0.03〜0.1Hzであることが知られている。
また当該装置による脳活動の計測結果において、生体内部情報の計測により得られる計測信号(以下、光信号とする)には、目的の応答信号のほかに、雑音信号が含まれることが知られている。
ここで雑音信号を生じさせる原因としては、血圧、心拍、脈拍などが生体揺らぎノイズとして雑音信号となることが知られている。
【0003】
この雑音信号による影響を低減するために、従来、脳の活動が同一課題に対して同一の応答を示すことを前提としてそれ以外の信号を除去する加算平均や、応答信号と雑音信号とが異なる周波数帯域に存在することを前提として、所定の周波数以上もしくは所定の周波数以下の帯域をカットすることにより他の生理信号から影響の多い周波数を除去するバンドパス・フィルタを用いた雑音信号低減技術が知られている。
【0004】
しかし、実際の脳の活動は、同一課題であっても同一の応答を示すとは限らず、加算平均による信号処理が必ずしもうまくいくわけではない。加算平均による信号処理が効果的であったとしても、加算するための信号計測に多くの時間を要してしまう。
上記の加算平均やバンドパスフィルタを用いた処理は複数の雑音信号に対する処理であるが、特定の原因による雑音信号に特化した処理も検討されている。
【0005】
例えば、脈拍の影響による雑音信号(脈拍雑音信号)は、周波数の特定が容易なことから、バンドカット・フィルタによる低減も可能である。
また、耳などの部位で計測した脈拍信号を元に光計測信号に含まれる脈拍雑音信号を低減したり(特許文献3)、光計測信号自身から、脈拍雑音信号を抽出し、その影響を低減する手法も考案されている(非特許文献1)。
【0006】
さらに、光信号に含まれる雑音信号の中に、約0.1Hzの周波数帯域をもつ不規則なものがある。これは、低周波揺らぎ信号、或いはMayer波と呼ばれる、生体が元々持っている揺らぎ信号の一種である。
【0007】
Mayer波については、これまで多くの研究が成されてきており、血圧、心拍の変動の関与が示されているが、その発生機序の詳細は未だ明らかではない。
なお上記、特許文献1は脈拍信号を用い、差分により雑音を取り除くものであり、Mayer波雑音成分は脈拍信号から単純に求められないので、脈拍信号の差分では取り除けない。
【0008】
また、脳活動信号の周波数帯域は、約0.03〜0.1Hzであることは上述したが、Mayer波雑音信号の周波数帯域は、脳活動信号の周波数帯域に非常に近いことも知られている。このため、バンドパス・フィルタ、バンドカット・フィルタなどによるMayer波雑音信号の低減は困難である。また、低周波揺らぎ信号は非周期的な不規則な変化も含むため、単純な周波数フィルタリングでの低減は困難である。そのため、注目する生理信号が同帯域にパワーを持つ場合でもカットしてしまうことになる。
【0009】
そこで、生体雑音信号の低減をするため特許文献1には、移動エントロピーを用いて注目する生理信号が他の生理信号から受ける影響をモデル化した関数重みづけを行い、他の変数から受ける影響を除去する情報移動解析を用いた生体雑音除去技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−116037号公報
【特許文献2】特開平9−135825号公報
【特許文献3】特開2004−173751号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Maria Angela Franceschiniほか、NeuroImage 21 (2004) 372 386
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1による情報移動解析による雑音除去方法では、解析方法が非線形解析である特性上、計算時間が指数関数的に増加し、4変数以上の多変数解析は困難である。
また、注目する生理信号が、生体雑音信号となる第二の生理信号から受ける影響を仮想モデル化した関数で影響を排除しているため、正確に第二の生理信号からの影響を除くことはできなかった。
さらに、注目する生理信号に対し、第二の生理信号が直接に影響を及ぼしているか、それとも第三の生理信号の間接的経路を経て影響を受けているかという、生理信号間のパワーの詳細な流れを知ることはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、被験者の生体内部の血行動態を計測するため、被験者に光を照射する一つまたは複数の光照射部と、この照射光が生体の中を経由または生体内で反射されてでてきた光を検出する一つまたは複数の光検出部と、脈拍、または呼吸、血圧、体温のいずれか一つまたは複数組を計測する生理信号計測部と、光検出部により得られた光信号と、生理信号との関係を有向コヒーレンス解析及び偏有向コヒーレンス解析による線形解析により解析する手段と、得られた関係を元に光信号から生体雑音信号を分離する手段とにより構成される。
【発明の効果】
【0014】
上記によれば、線形解析であるが故に多数計測間の関係解析に用いることができ、従来よりも算出速度の速い解析手法の提供が可能となり、さらには生理信号の相互作用を定量的に解析し、生理信号間のパワーの流れを詳細に知ることができる。
これにより,注目する生理信号に対し、他の生理信号が及ぼす影響を評価し影響を排除することが可能となる。また、注目する生理信号に対し、特定の生理信号を媒介して影響を及ぼすパワーのみを選択もしくは排除することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施例の構成を示す概略図である。
【図2】光信号、血圧信号、心拍信号の表示例である。横軸は時間(秒)であり縦軸は信号強度をあらわし、平均0、分散1となるように規格化している。
【図3】DC解析結果かられる各生体信号間でのパワーの移動を示す表示例である。
【図4】PDC解析結果かられる各生体信号間でのパワーの移動を示す表示例である。
【図5】OTの持つパワーに注目した場合のパワーの移動の表示例である。
【図6】DC解析を用いたOT、HR、BPの三信号間のパワーの移動解析結果である。
【図7】PDC解析を用いたOT、HR、BPの三信号間のパワーの移動解析結果である。
【図8】HRの持つパワーの源とその伝搬経路の表示を示す図である。
【図9】BPの持つパワーの源とその伝搬経路の表示を示す図である。
【図10】OTの持つパワーの源とその伝搬経路の表示を示す図である。
【図11】フィルター例を示す図である。
【図12】経路選択、雑音除去を選択的に実施させるための画面例である。
【図13】経路選択、雑音除去を選択的に実施させるための画面表示フロー例である。
【図14】本文中説明で用いる表1DC解析結果、表2PDC解析結果、表3modified PDC解析結果を示す表である。
【図15】本文中で用いる数式[数1]〜[数3]を示す。
【図16】本文中で用いる数式[数4]〜[数7]を示す。
【図17】本文中で用いる数式[数8]〜[数11]を示す。
【図18】本文中で用いる数式[数12]〜[数15]を示す。
【図19】本文中で用いる数式[数16]〜[数19]を示す。
【図20】本文中で用いる数式[数20]〜[数22]を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例1)
以下実施例として、具体的な装置構成を図1に示す。
装置構成としては、被験者の頭部の一部または全体に装着する生体光計測用プローブ110、生体光計測用プローブ110に連結した光ファイバー113により、光照射部101より生体に光を照射し、生体光計測用プローブ110に連結した光ファイバー114により、生体内を通過した光を検出する光検出部102と、この検出結果を記録する記憶部103を有する。ここで記憶部103に記録される信号を、以下「光信号」とする。
【0017】
また被験者である生体の一部、例えば腕に血圧計測用のカフ111、指に血圧計測カフ112を取り付け可能に構成されている。カフはどちらか片方のみを用いてもよく、腕や指に限らず足、首、頭部などに取りつけることも可能である。
この心拍・血圧計測装置104内の制御演算部により、カフをコントロールし、カフから得られる信号を処理し、結果を記憶部105に記録する。記憶部105に記録される生体信号を、以下「心拍信号」「血圧信号」とする。ここで、記憶部103及び105はそれぞれ別体としたが、一つの記憶部であっても良いことは云うまでもない。
また、ここでは心拍・血圧計測装置は光信号を計測する装置とは別体であることを想定しているが、一体構成として、心拍・血圧計測の装置制御等を光信号を計測する装置の制御部で制御することも可能である。
【0018】
また、検出部102及び心拍・血圧計測装置104の計測タイミングは同期部106により時間的に同期させることができる。ここで得られた光信号と生体信号を関係演算部107により解析する。得られる光信号と生体信号は時間的に同期したものであることが好ましいが、同期していないものについても時間遅延を考慮した演算を別途関係演算部107により行うことも可能である。
【0019】
計測結果の例として、図2に検出部102で得られた光信号201、心拍・血圧計測装置104で得られた血圧信号202、心拍信号203の計測結果を示す。横軸は時間(秒)であり縦軸は信号強度を表している。
【0020】
次に、関係演算部107により、検出部102、心拍・血圧計測装置104で取得された光信号201、血圧信号202、心拍信号203の相互に及ぼす影響について解析する。
光信号201、血圧信号202、心拍信号203の関係は複雑に関係しあう複数の生体指標であるが、健常状態の生体では線形性が保たれていることが多く、線形解析法で光信号201、血圧信号202、心拍信号203の相互に及ぼす影響を調べることができる。
この関係の線形性に注目して本実施例においては、パワースペクトル解析のパワー解析を基にした線形解析法である有向コヒーレンス解析(以下DC解析と称する)、偏有向コヒーレンス解析(以下PDC解析と称する)を用いた線形解析を行うこととする。当該解析は関係演算部107によって実行される。
【0021】
ここでDC解析は、ある変動が他の変動からパワーをどの程度受け取っているかを調べることができ、PDC解析は、ある変動が他の変動にどの程度パワーを与えているかを評価できる。DC解析結果から、注目する生理信号の持つパワーの源を図3のように表示することができる。
例えば、Optical Topography301 (以下OTと称する)の持つパワーに注目した場合、OT自身の過去の変動のパワーからの影響304に加え、外部からの影響305、306を加えたものが観測されるOTのパワーとなる。
【0022】
さらに、PDC解析結果から、注目する生理信号の持つパワーの与える先を図4のように表示することができる。例えば、OTの持つパワーに注目した場合、OT自身への影響404、Heart Rate(以下HRと称する)への影響408、Blood Pressure(以下BPと称する)への影響412にパワーを与えていることがわかる。
【0023】
関係演算部107における上記二つの解析結果をもとに図示しない画像処理部がOT・HR・BP相互のパワーの流れを表示部110に表示させる。この表示例(図5、図12)のように視覚的にパワーの詳細な流れを調べることができるようになる。
このパワーの流れを用いることにより、後述する方法により特定の生理信号が及ぼす影響のみを排除することができるようになる。
【0024】
これにより従来、互いに他の生体信号に及ぼす影響を知るに留まり、どのような経路を経て注目する生体信号に対して影響を及ぼしているかを知ることができなかったが、DC解析、PDC解析から算出した結果から得られる各要因間でのパワーを計算することにより、注目する生体信号に対して、他の生体信号が及ぼす影響の経路を知ることができるようになる。
【0025】
ここで図5の表示例は、OTのパワーの流れを示したもので、501、502、503は直接注目する生理信号OTに流れ込むパワーの流れを示しており、503、504、505、506、507、508、509は他の変数を媒介して注目する生理信号に対して影響を与えている。それぞれは注目する生理信号が持つパワーの割合、もしくはパーセンテージで表せられる。この表示は、フーリエ変換(後述する)で求めた全ての周波数で作成することができる。
注目する生理信号は図中に2つ表示され、同じ生理信号間のパワーの流れは、注目する生理信号が作成したパワーであることを示している。これは、表示部109により表示される。
【0026】
光信号、血圧信号、心拍信号間での情報の流れの程度がそれぞれの矢印の方向と大きさと、光信号マーク301、血圧信号マーク303、心拍信号マーク302で示される(心拍信号から光信号へのパワー移動の程度304、光信号から心拍信号へのパワー移動の程度305、心拍信号から血圧信号へのパワー移動の程度306、血圧信号から心拍信号へのパワー移動の程度307、血圧信号から光信号へのパワー移動の程度308、光信号から血圧信号へのパワー移動の程度309)。この表示例は一例であって、矢印の大きさでパワーの流れの程度を示しているが、%表示等の数値的表示も可能であることは云うまでもない。
【0027】
この表示は、一定期間の平均的なものであっても、各時刻における変化を連続的に表示するものであってもよい。この表示形態は図示しないキーボード、指示手段等の入力装置を介して設定できるようにする。
また、一定の幅を持つ周波数帯域の平均値を用いてもよい。得られたパワーの流れを用いて、分離演算部108により図15に示す[数2]のように生体雑音信号SBNの与える影響を評価する。
ここでは、関数(S計測信号)は、注目する生理信号を指し、この場合BP、OT、HRがある。(S間接BP)はOTを通り伝達する経路と、HRを通り伝達する経路がある。同様に、(a4S間接HR)、(a5S間接OT)についても言える。 この場合、3生理信号を用いて解析を行っているが、4変数以上に計測生理信号数を増やせば、右辺の項は直接経路を示す項と間接経路を示す項が増加する。この結果をもとに、計測信号(S計測信号)に含まれる様々な信号のうち、計測に不要であるパワーを低減することができるようになった。つまり、計測信号(S計測信号)に対し図15に示す[数3]を用いてフーリエ変換を行い、計測信号が持つ周波数別パワーを求め、それぞれの周波数に含まれる不要パワーをPDC・DC解析を用いて求めた割合で引く。
【0028】
その後、図16に示す[数4]により逆フーリエ変換を行うことにより、注目する純粋な計測信号を求めることができる。
ただし[数3]、[数4]ではなく、他のフーリエ変換の式や他の逆フーリエ変換の式を用いてパワーを計算してもよい。
この解析を用いて、注目する生理信号の持つパワーのうち、注目する経路を通ったパワーのみを表示することが可能となり、バンドパス・フィルタ、バンドカット・フィルタなどのように一律的に決められた周波数以上・以下の帯域をカットするのではなく、他の生理信号から影響のみを排除することが可能となる。
【0029】
心拍・血圧計測装置の組み合わせの他に、呼吸、体温、のどの動き等の生体信号を組み合わせて用いてもよい。心拍計測に、光トポグラフィ装置の光照射・検出機構を共用してもよいことは云うまでもない。また、光トポグラフィ計測信号に含まれる心拍成分を抽出し、心拍信号としてもよい。
【0030】
上記によれば、従来の単純なフィルタリングでは取り除くことができない低周波揺らぎ信号の影響のみを効果的に取り除くことができるようになる。
また、脳活動信号の持つ低周波数帯域は脳活動および全身循環系等の影響が考えられることから、除去せず計測することが重要であることに着目し、特に、心拍動の周波数以下の帯域である1Hz以下に揺らぎをもつ生体雑音信号(例えば血圧など)を分離することで脳機能計測における生体雑音信号を効果的に低減することができる。
解析結果は周波数ごとにスペクトル解析の分野で知られるパワーの移動として求めることができる。具体的には、DC解析は、ある変動が他の変動からパワーをどの程度受け取っているかを調べることができ、 PDC解析は、ある変動が他の変動にどの程度パワーを与えているかを評価できる。この二つの解析法は多変数自己回帰(multivariate auto-regressive:MAR)モデルに基づく線形解析法である。
【0031】
ここでMARモデルとは、ひとつの観測量の現在の値をすべての観測量の過去の値の線形和で表すモデルである。DC解析は、注目する変数Yαが他の変数Yβからパワーをどれだけ受け取っているかを評価するもので、上記線形和の係数のフーリエ変換から求められる。PDC解析は変数Yβが注目する変数Yαにパワーをどれだけ与えているかを評価するものであり、これも上記線形和の係数のフーリエ変換から導くことができる。
【0032】
以下、計測データのMARモデルへの当てはめ、多変数自己回帰モデルに基づくスペクトル解析、DC解析およびPDC解析について順を追って詳細に説明する。
[多変数自己回帰モデルの作成]
多変数自己回帰(MAR)モデルとは、定常状態で取得した過去のデータから今後取得されるデータを予想するモデルであり、線形解析の基本的手法の一つである。本実施例では、安静な状態で一定期間計測された生理学的変動データを定常的なデータとして扱った。平均血圧、心拍数、酸素化ヘモグロビン濃度の3つの変数をそれぞれBP、HR、OTと表し、離散化された時刻nにおける対象システムの状態Y(n)を図16に示す[数5]で表す。
またMARモデルでは、Y(n)を図16に示す[数6]で表す。[数7]は、時刻nにおける観測変動の状態が観測変動の過去の状態とノイズの和によって表されることを意味している。pはMARモデルの予想に用いる過去の計測ポイント数であり、最小記述長基準により決定する。
また、W(n) はMARモデルの当てはめ誤差に相当し、互いに独立な白色ガウスノイズを成分とするノイズベクトルであり、図16に示す[数7]で表される。
ここで、A(k)は係数行列であり、図17に示す[数8]で表す。ここでは実験データとモデルとの誤差W(n)を最小になるように最小二乗法を用いて決定した。
以上より、MARモデルの係数A(k)とモデル次数pが求まり、計測データを表すMARモデルを求めることができる。
[パワースペクトル解析]
上記で得られたMARモデル、図17に示す[数8]をフーリエ変換すると図17に示す[数9]となる。係数行列のフーリエ変換A’(f)の要素A’αβは図17に示す[数10]で与えられる。 [数9]を式変形すると、図17に示す[数11]となり、成形フィルタH’を図188に示す[数12]とおくと、図18に示す[数13]と表すことができ、観測変動のフーリエ変換はノイズベクトルに成形フィルタを乗ずることで得られることが分かる。
ここで、成形フィルタH’の各成分は図18に示す[数14]と表される。
次に対角成分がパワースペクトル(自己スペクトル)、非対角成分がクロススペクトルであるスペクトル行列を考える。スペクトル行列S’(f)は、図18に示す[数15]で与えられる。ここで、*は複素共役、Tは転置を意味する。[数13]より図19に示す[数16]と変形することができ、W’*(f) W’TをΛとしてまとめると図19に示す[数17]となる。
【0033】
また、W’(f)の各成分は互いに独立な白色ガウスノイズであることから図19に示す[数18]となり、対角成分以外は0であり、対角成分は周波数に依存しない。
以上より、 [数17]の各項の成分が求まりスペクトル行列S’(f)が求めることができる。
[DC解析およびPDC解析]
前節で述べたパワースペクトルから、観測された変動の特定周波数成分がいずれの変数からパワーの寄与を受けているかが解析可能であり、以下の手順でDCを求めることができる。
【0034】
変数YαのパワースペクトルSααは、変数Yαが他変数および、自分自身から受け取ったパワーの総和であり、図19に示す[数19]で求められる。
DCは、変数Yαの持っているパワーの総和に対する、他の変数Yβより与えられたパワーの割合を示していることから図20に示す[数20]と定義できる。
【0035】
γαβ(f)は、変数Yαのパワーのうち、どの程度のパワーを変数Yβから受け取っているかを表している。パワーのやり取りが複雑であって途中に他の変数が介在してもよい。
【0036】
一方、PDC解析では、ある変数Yβが変数Yαにパワーをどれだけ与えているかを評価する。ここで、図20に示す[数21]とおくとPDCは、図20に示す[数22]で定義される。
【0037】
π’αβ(f)は変数Yβのパワーのうち、どの程度のパワーを変数Yαに与えているかを表し、パワーのやり取りが直接的なものだけを考慮する。
[解析例]
次に、光信号201、血圧信号202、心拍信号203の関係について以上の解析方法を用いて解析を行う。解析は関係演算部107で行われ、図示しない画像処理装置において画像処理され表示部109に以下のように表示される。ここでは仮に0.04〜0.15Hzの平均のパワーの解析を行う。DC解析は、ある変動が他の変動からパワーをどの程度受け取っているかを調べることができる。解析結果を図6に表し、0.04〜0.15Hzの平均のパワーを図14中の表1に示す。
表1は行方向に足し合わせると100%となり、Receiveのパワーがどの生体信号から受けているかを知ることができる。
【0038】
PDC解析は、ある変動が他の変動にどの程度パワーを与えているかを評価できる。
ここで解析結果を図7に表し、0.04〜0.15Hzの平均のパワーを図14中の表2に示す。表2は列方向に足し合わせると100%となり、Sourceのパワーがどこへ移動しているかを知ることができる。この二つの解析結果をもとに詳細なパワーの流れを調べることができるようになり、他の生理信号が及ぼす影響のみを排除することができるようになる。
【0039】
次に表2から、注目する変数の受け取るパワーの総量を100%として、注目する変数に対し、他の変数から直接移動するパワーの割合を再計算した。例えば、OTに注目した場合はBPから85%、HRから56%、OTから100%受け取り、総量が241%となる。この総計を100%として、BPからOT、HRからOTのように、注目変数に直接流入するパワー移動量を求め、その結果を修正偏有向コヒーレンス(Modified PDC)として、図14中の表3に示す。
【0040】
DC解析は注目する変数のパワーの源を知ることができ、媒介する変数があってもパワーの源を求めることができる。一方、PDC解析はパワー移動の始点となる変数から次に伝達される変数との関係性を評価できる。Modified PDCは注目する変数に直接的にパワーを与える変数との関係性を評価できる。DCとModified PDCの結果を組み合わせることにより、パワーの中継先を考慮したパワーの流れを知ることができるようになる。未知数が多く不定方程式となる場合は、計測した生理信号の関係を仮定し値を代入する。
この結果をもとに作成したパワーの流れは、以下の図8、図9、図10のようになる。ここで、図10から注目するOT変動の持つ0.04〜0.15Hzのパワーは外部からの影響はBPから25%、HR20%であり、合計45%受けていることがわかる。そこで、0.04〜0.15Hzのパワーの45%を低減して再表示をすると、図11の1101のOTデータから1102のように外部の影響を排除することができる。
【0041】
ここでの例は、0.04〜0.15Hzのパワーの平均を求めたものであるが、平均を行わずすべての周波数で同様に排除することも可能となる。
上述した内容で算出された生体雑音信号SBNを、図15で示す[数1]に基づいて光信号SOTから差し引くことで、生体雑音信号による影響を低減した光信号SPを得ることが可能となる。
【0042】
次に、図12、図13を用いて具体的な表示形態例及び表示方法について説明をする。
図12は表示内容選択部1208(1301)でOTを選択し、表示部109に表示をした一例である。表示内容選択部1208で表示する生体信号を選択し、記憶部103もしくは、記憶部105に保存されているデータを関係演算部107(1302)もしくは分離演算部108(1302)で読み出し、画像処理部により時系列データを1206(1309)に表示し、パワーの流れを1202(1309)に表示する。
フィルターモードは経路排除モード選択ボタン1204(1303)と経路選択モード選択ボタン1205(1304)があり、排除したいパワーの流れ、もしくは表示をしたいパワーの流れを指示手段1203でパワー経路表示部1202の実線もしくは点線のパワー移動矢印を選択をする(1305、1307)。ここで指示手段1203はマウス操作による形態を示したが、これに限らず入力手段に備えられるキー操作、タッチパネル等を採用しても良い。
フィルターモードによるフィルター処理は、関係演算部107(1306、1308)もしくは分離演算部108(1306、1308)で処理が行われ、ファイル加工後データは1207(1309)に表示される。
排除モードは、マウスポインタまたは指示手段1203で選択したパワー経路表示1202部の実線もしくは点線のパワー移動を示す矢印のパワーをフィルターし、フィルター後表示部1207に表示をする。
選択モードは、マウスポインタまたは指示手段1203で選択したパワー経路表示部1202の実線もしくは点線のパワー移動を示す矢印のパワーをファイル加工後データ1207に表示をする。
上記によれば、所望とする生体情報を選択もしくは除去することが可能となり、所望の生体信号のパワーの流れを把握でき、当該パワーの流れを考慮した計測結果の表示が可能となる。
【0043】
以上において光計測装置における、複数変動間の関係を解析する手段として、有向コヒーレンス(DC)解析および偏有向コヒーレンス(PDC)解析を用い、周波数ごとにスペクトル解析の分野で知られるパワーの移動として求め、この二つの解析結果を組み合わせることにより、関連する生理信号の相互作用を定量的に評価し、注目する変数以外のパワーを排除する技術について説明し、さらに、パワーの詳細な流れ、特定の経路を伝達し影響を及ぼすパワーのみを排除する技術について説明してきた。
【0044】
これにより、線形解析であるが故に多数計測間の関係解析に用いることができ、従来よりも算出速度の速い解析手法の提供が可能となり、さらには生理信号の相互作用を定量的に解析し、生理信号間のパワーの流れを詳細に知ることができる。
また、複雑な生理信号から生体内部の関係性を可視化することができ、生体内部の機能ネットワークをとらえることが可能となることから、注目する生理信号に対し、他の生理信号が及ぼす影響の評価、影響の排除が可能となり、さらには注目する生理信号に対し、特定の生理信号を媒介して影響を及ぼすパワーのみを排除することを可能となる。
その結果、生体雑音信号による影響を低減することにより信号のS/N比が向上し、計測時間の短縮やより質の高いデータを提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
医療、研究分野における光を用いた脳機能計測において、生体雑音信号による影響を低減することにより信号のS/N比が向上し、計測時間の短縮やより質の高いデータを提供できる。また,注目する生理信号が他の生理信号に及ぼす影響を詳細に調べることができるようになることに加え、注目する生理信号が他の変数から受ける影響を調べることができるようになるため機能的結合の評価等、多数の計測ポイント間での関係を求める研究手法になると期待される。これにより、生理信号の異常に対し、根本的な原因を取り除くための検査手段になる可能性がある。
【符号の説明】
【0046】
101・・光照射部、102・・ 光検出部、103・・ 記憶部、104・・心拍・血圧計測装置105・・ 記憶部、106・・ 動機部、107・・ 関係演算部、108・・ 分離演算部、109・・ 表示部、110・・ 生体光計測用プローブ、111・・ 腕用の血圧計測用のカフ、112・・ 指用の血圧計測カフ、113・・ 光ファイバー 、114・・ 光ファイバー、115・・ バンドパス・フィルタ部、201・・ 光信号202・・ 血圧信号、203・・ 心拍信号、301 光信号マーク、302・・ 血圧信号マーク、303・・ 心拍信号マーク、304・・ 光信号から光信号へのパワー移動の程度、305・・ 心拍信号から光信号へのパワー移動の程度、306・・ 血圧信号から光信号へのパワー移動の程度、307・・心拍信号から心拍信号へのパワー移動の程度、308・・ 血圧信号光信号から心拍信号へのパワー移動の程度、309・・ 血圧信号から心拍信号へのパワー移動の程度、310・・血圧信号から血圧信号へのパワー移動の程度、311・・心拍信号から血圧信号へのパワー移動の程度、312・・光信号から血圧信号へのパワー移動の程度、401・・ 光信号マーク、402・・ 血圧信号マーク、403・・ 心拍信号マーク、404・・ 光信号から光信号へのパワー移動の程度、405・・ 心拍信号から光信号へのパワー移動の程度、406・・ 血圧信号から光信号へのパワー移動の程度、407・・心拍信号から心拍信号へのパワー移動の程度、408・・ 血圧信号光信号から心拍信号へのパワー移動の程度、409・・ 血圧信号から心拍信号へのパワー移動の程度 、410・・ 血圧信号から血圧信号へのパワー移動の程度、411・・心拍信号から血圧信号へのパワー移動の程度、412・・光信号から血圧信号へのパワー移動の程度、501・・ 光信号から光信号へのパワー移動の程度、502・・ 心拍信号から光信号へのパワー移動の程度、503・・ 血圧信号から光信号へのパワー移動の程度、504・・ 光信号から血圧信号を経由し光信号へのパワー移動の程度、505・・光信号から心拍信号を経由し光信号へのパワー移動の程度、506・・心拍信号から血圧信号を経由し光信号へのパワー移動の程度、508・・血圧信号から心拍信号を経由し光信号へのパワー移動の程度、509・・心拍信号から血圧信号を経由し光信号へのパワー移動の程度、1101・・フィルター前光信号、1102・・フィルター後光信号、1201・・モニタもしくはタッチパネル、1202・・経路選択画面、1203・・マウスポインタまたは指示手段、1204・・経路排除モード選択ボタン、1205・・経路選択モード選択ボタン、1206・・生データ、1207・・ファイル加工後データ
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に光を照射して生体血流(例えば脳)に起因する生体内部情報を取得する生体光計測装置に関する。計測の際に生じる生理信号の相互作用を定量的に解析し、生理信号間のパワーの流れを把握し、他の生理信号が及ぼす影響評価、影響排除することを可能とする技術である。
【背景技術】
【0002】
被検体頭部に光を照射し、被検体頭部を透過し脳血流の影響を反映した生体内部情報を計測する生体光計測装置が知られている(例えば特許文献2)。この生体光計測装置を用いて脳活動計測を行う際には、一般に被験者に対して10秒から30秒程度脳を刺激するための課題を与える。これは十分な脳活動を誘発し、計測可能な脳活動状態の変化とするために必要な時間であり、ここで得られる脳活動信号の周波数帯域は、約0.03〜0.1Hzであることが知られている。
また当該装置による脳活動の計測結果において、生体内部情報の計測により得られる計測信号(以下、光信号とする)には、目的の応答信号のほかに、雑音信号が含まれることが知られている。
ここで雑音信号を生じさせる原因としては、血圧、心拍、脈拍などが生体揺らぎノイズとして雑音信号となることが知られている。
【0003】
この雑音信号による影響を低減するために、従来、脳の活動が同一課題に対して同一の応答を示すことを前提としてそれ以外の信号を除去する加算平均や、応答信号と雑音信号とが異なる周波数帯域に存在することを前提として、所定の周波数以上もしくは所定の周波数以下の帯域をカットすることにより他の生理信号から影響の多い周波数を除去するバンドパス・フィルタを用いた雑音信号低減技術が知られている。
【0004】
しかし、実際の脳の活動は、同一課題であっても同一の応答を示すとは限らず、加算平均による信号処理が必ずしもうまくいくわけではない。加算平均による信号処理が効果的であったとしても、加算するための信号計測に多くの時間を要してしまう。
上記の加算平均やバンドパスフィルタを用いた処理は複数の雑音信号に対する処理であるが、特定の原因による雑音信号に特化した処理も検討されている。
【0005】
例えば、脈拍の影響による雑音信号(脈拍雑音信号)は、周波数の特定が容易なことから、バンドカット・フィルタによる低減も可能である。
また、耳などの部位で計測した脈拍信号を元に光計測信号に含まれる脈拍雑音信号を低減したり(特許文献3)、光計測信号自身から、脈拍雑音信号を抽出し、その影響を低減する手法も考案されている(非特許文献1)。
【0006】
さらに、光信号に含まれる雑音信号の中に、約0.1Hzの周波数帯域をもつ不規則なものがある。これは、低周波揺らぎ信号、或いはMayer波と呼ばれる、生体が元々持っている揺らぎ信号の一種である。
【0007】
Mayer波については、これまで多くの研究が成されてきており、血圧、心拍の変動の関与が示されているが、その発生機序の詳細は未だ明らかではない。
なお上記、特許文献1は脈拍信号を用い、差分により雑音を取り除くものであり、Mayer波雑音成分は脈拍信号から単純に求められないので、脈拍信号の差分では取り除けない。
【0008】
また、脳活動信号の周波数帯域は、約0.03〜0.1Hzであることは上述したが、Mayer波雑音信号の周波数帯域は、脳活動信号の周波数帯域に非常に近いことも知られている。このため、バンドパス・フィルタ、バンドカット・フィルタなどによるMayer波雑音信号の低減は困難である。また、低周波揺らぎ信号は非周期的な不規則な変化も含むため、単純な周波数フィルタリングでの低減は困難である。そのため、注目する生理信号が同帯域にパワーを持つ場合でもカットしてしまうことになる。
【0009】
そこで、生体雑音信号の低減をするため特許文献1には、移動エントロピーを用いて注目する生理信号が他の生理信号から受ける影響をモデル化した関数重みづけを行い、他の変数から受ける影響を除去する情報移動解析を用いた生体雑音除去技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−116037号公報
【特許文献2】特開平9−135825号公報
【特許文献3】特開2004−173751号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Maria Angela Franceschiniほか、NeuroImage 21 (2004) 372 386
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1による情報移動解析による雑音除去方法では、解析方法が非線形解析である特性上、計算時間が指数関数的に増加し、4変数以上の多変数解析は困難である。
また、注目する生理信号が、生体雑音信号となる第二の生理信号から受ける影響を仮想モデル化した関数で影響を排除しているため、正確に第二の生理信号からの影響を除くことはできなかった。
さらに、注目する生理信号に対し、第二の生理信号が直接に影響を及ぼしているか、それとも第三の生理信号の間接的経路を経て影響を受けているかという、生理信号間のパワーの詳細な流れを知ることはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、被験者の生体内部の血行動態を計測するため、被験者に光を照射する一つまたは複数の光照射部と、この照射光が生体の中を経由または生体内で反射されてでてきた光を検出する一つまたは複数の光検出部と、脈拍、または呼吸、血圧、体温のいずれか一つまたは複数組を計測する生理信号計測部と、光検出部により得られた光信号と、生理信号との関係を有向コヒーレンス解析及び偏有向コヒーレンス解析による線形解析により解析する手段と、得られた関係を元に光信号から生体雑音信号を分離する手段とにより構成される。
【発明の効果】
【0014】
上記によれば、線形解析であるが故に多数計測間の関係解析に用いることができ、従来よりも算出速度の速い解析手法の提供が可能となり、さらには生理信号の相互作用を定量的に解析し、生理信号間のパワーの流れを詳細に知ることができる。
これにより,注目する生理信号に対し、他の生理信号が及ぼす影響を評価し影響を排除することが可能となる。また、注目する生理信号に対し、特定の生理信号を媒介して影響を及ぼすパワーのみを選択もしくは排除することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施例の構成を示す概略図である。
【図2】光信号、血圧信号、心拍信号の表示例である。横軸は時間(秒)であり縦軸は信号強度をあらわし、平均0、分散1となるように規格化している。
【図3】DC解析結果かられる各生体信号間でのパワーの移動を示す表示例である。
【図4】PDC解析結果かられる各生体信号間でのパワーの移動を示す表示例である。
【図5】OTの持つパワーに注目した場合のパワーの移動の表示例である。
【図6】DC解析を用いたOT、HR、BPの三信号間のパワーの移動解析結果である。
【図7】PDC解析を用いたOT、HR、BPの三信号間のパワーの移動解析結果である。
【図8】HRの持つパワーの源とその伝搬経路の表示を示す図である。
【図9】BPの持つパワーの源とその伝搬経路の表示を示す図である。
【図10】OTの持つパワーの源とその伝搬経路の表示を示す図である。
【図11】フィルター例を示す図である。
【図12】経路選択、雑音除去を選択的に実施させるための画面例である。
【図13】経路選択、雑音除去を選択的に実施させるための画面表示フロー例である。
【図14】本文中説明で用いる表1DC解析結果、表2PDC解析結果、表3modified PDC解析結果を示す表である。
【図15】本文中で用いる数式[数1]〜[数3]を示す。
【図16】本文中で用いる数式[数4]〜[数7]を示す。
【図17】本文中で用いる数式[数8]〜[数11]を示す。
【図18】本文中で用いる数式[数12]〜[数15]を示す。
【図19】本文中で用いる数式[数16]〜[数19]を示す。
【図20】本文中で用いる数式[数20]〜[数22]を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例1)
以下実施例として、具体的な装置構成を図1に示す。
装置構成としては、被験者の頭部の一部または全体に装着する生体光計測用プローブ110、生体光計測用プローブ110に連結した光ファイバー113により、光照射部101より生体に光を照射し、生体光計測用プローブ110に連結した光ファイバー114により、生体内を通過した光を検出する光検出部102と、この検出結果を記録する記憶部103を有する。ここで記憶部103に記録される信号を、以下「光信号」とする。
【0017】
また被験者である生体の一部、例えば腕に血圧計測用のカフ111、指に血圧計測カフ112を取り付け可能に構成されている。カフはどちらか片方のみを用いてもよく、腕や指に限らず足、首、頭部などに取りつけることも可能である。
この心拍・血圧計測装置104内の制御演算部により、カフをコントロールし、カフから得られる信号を処理し、結果を記憶部105に記録する。記憶部105に記録される生体信号を、以下「心拍信号」「血圧信号」とする。ここで、記憶部103及び105はそれぞれ別体としたが、一つの記憶部であっても良いことは云うまでもない。
また、ここでは心拍・血圧計測装置は光信号を計測する装置とは別体であることを想定しているが、一体構成として、心拍・血圧計測の装置制御等を光信号を計測する装置の制御部で制御することも可能である。
【0018】
また、検出部102及び心拍・血圧計測装置104の計測タイミングは同期部106により時間的に同期させることができる。ここで得られた光信号と生体信号を関係演算部107により解析する。得られる光信号と生体信号は時間的に同期したものであることが好ましいが、同期していないものについても時間遅延を考慮した演算を別途関係演算部107により行うことも可能である。
【0019】
計測結果の例として、図2に検出部102で得られた光信号201、心拍・血圧計測装置104で得られた血圧信号202、心拍信号203の計測結果を示す。横軸は時間(秒)であり縦軸は信号強度を表している。
【0020】
次に、関係演算部107により、検出部102、心拍・血圧計測装置104で取得された光信号201、血圧信号202、心拍信号203の相互に及ぼす影響について解析する。
光信号201、血圧信号202、心拍信号203の関係は複雑に関係しあう複数の生体指標であるが、健常状態の生体では線形性が保たれていることが多く、線形解析法で光信号201、血圧信号202、心拍信号203の相互に及ぼす影響を調べることができる。
この関係の線形性に注目して本実施例においては、パワースペクトル解析のパワー解析を基にした線形解析法である有向コヒーレンス解析(以下DC解析と称する)、偏有向コヒーレンス解析(以下PDC解析と称する)を用いた線形解析を行うこととする。当該解析は関係演算部107によって実行される。
【0021】
ここでDC解析は、ある変動が他の変動からパワーをどの程度受け取っているかを調べることができ、PDC解析は、ある変動が他の変動にどの程度パワーを与えているかを評価できる。DC解析結果から、注目する生理信号の持つパワーの源を図3のように表示することができる。
例えば、Optical Topography301 (以下OTと称する)の持つパワーに注目した場合、OT自身の過去の変動のパワーからの影響304に加え、外部からの影響305、306を加えたものが観測されるOTのパワーとなる。
【0022】
さらに、PDC解析結果から、注目する生理信号の持つパワーの与える先を図4のように表示することができる。例えば、OTの持つパワーに注目した場合、OT自身への影響404、Heart Rate(以下HRと称する)への影響408、Blood Pressure(以下BPと称する)への影響412にパワーを与えていることがわかる。
【0023】
関係演算部107における上記二つの解析結果をもとに図示しない画像処理部がOT・HR・BP相互のパワーの流れを表示部110に表示させる。この表示例(図5、図12)のように視覚的にパワーの詳細な流れを調べることができるようになる。
このパワーの流れを用いることにより、後述する方法により特定の生理信号が及ぼす影響のみを排除することができるようになる。
【0024】
これにより従来、互いに他の生体信号に及ぼす影響を知るに留まり、どのような経路を経て注目する生体信号に対して影響を及ぼしているかを知ることができなかったが、DC解析、PDC解析から算出した結果から得られる各要因間でのパワーを計算することにより、注目する生体信号に対して、他の生体信号が及ぼす影響の経路を知ることができるようになる。
【0025】
ここで図5の表示例は、OTのパワーの流れを示したもので、501、502、503は直接注目する生理信号OTに流れ込むパワーの流れを示しており、503、504、505、506、507、508、509は他の変数を媒介して注目する生理信号に対して影響を与えている。それぞれは注目する生理信号が持つパワーの割合、もしくはパーセンテージで表せられる。この表示は、フーリエ変換(後述する)で求めた全ての周波数で作成することができる。
注目する生理信号は図中に2つ表示され、同じ生理信号間のパワーの流れは、注目する生理信号が作成したパワーであることを示している。これは、表示部109により表示される。
【0026】
光信号、血圧信号、心拍信号間での情報の流れの程度がそれぞれの矢印の方向と大きさと、光信号マーク301、血圧信号マーク303、心拍信号マーク302で示される(心拍信号から光信号へのパワー移動の程度304、光信号から心拍信号へのパワー移動の程度305、心拍信号から血圧信号へのパワー移動の程度306、血圧信号から心拍信号へのパワー移動の程度307、血圧信号から光信号へのパワー移動の程度308、光信号から血圧信号へのパワー移動の程度309)。この表示例は一例であって、矢印の大きさでパワーの流れの程度を示しているが、%表示等の数値的表示も可能であることは云うまでもない。
【0027】
この表示は、一定期間の平均的なものであっても、各時刻における変化を連続的に表示するものであってもよい。この表示形態は図示しないキーボード、指示手段等の入力装置を介して設定できるようにする。
また、一定の幅を持つ周波数帯域の平均値を用いてもよい。得られたパワーの流れを用いて、分離演算部108により図15に示す[数2]のように生体雑音信号SBNの与える影響を評価する。
ここでは、関数(S計測信号)は、注目する生理信号を指し、この場合BP、OT、HRがある。(S間接BP)はOTを通り伝達する経路と、HRを通り伝達する経路がある。同様に、(a4S間接HR)、(a5S間接OT)についても言える。 この場合、3生理信号を用いて解析を行っているが、4変数以上に計測生理信号数を増やせば、右辺の項は直接経路を示す項と間接経路を示す項が増加する。この結果をもとに、計測信号(S計測信号)に含まれる様々な信号のうち、計測に不要であるパワーを低減することができるようになった。つまり、計測信号(S計測信号)に対し図15に示す[数3]を用いてフーリエ変換を行い、計測信号が持つ周波数別パワーを求め、それぞれの周波数に含まれる不要パワーをPDC・DC解析を用いて求めた割合で引く。
【0028】
その後、図16に示す[数4]により逆フーリエ変換を行うことにより、注目する純粋な計測信号を求めることができる。
ただし[数3]、[数4]ではなく、他のフーリエ変換の式や他の逆フーリエ変換の式を用いてパワーを計算してもよい。
この解析を用いて、注目する生理信号の持つパワーのうち、注目する経路を通ったパワーのみを表示することが可能となり、バンドパス・フィルタ、バンドカット・フィルタなどのように一律的に決められた周波数以上・以下の帯域をカットするのではなく、他の生理信号から影響のみを排除することが可能となる。
【0029】
心拍・血圧計測装置の組み合わせの他に、呼吸、体温、のどの動き等の生体信号を組み合わせて用いてもよい。心拍計測に、光トポグラフィ装置の光照射・検出機構を共用してもよいことは云うまでもない。また、光トポグラフィ計測信号に含まれる心拍成分を抽出し、心拍信号としてもよい。
【0030】
上記によれば、従来の単純なフィルタリングでは取り除くことができない低周波揺らぎ信号の影響のみを効果的に取り除くことができるようになる。
また、脳活動信号の持つ低周波数帯域は脳活動および全身循環系等の影響が考えられることから、除去せず計測することが重要であることに着目し、特に、心拍動の周波数以下の帯域である1Hz以下に揺らぎをもつ生体雑音信号(例えば血圧など)を分離することで脳機能計測における生体雑音信号を効果的に低減することができる。
解析結果は周波数ごとにスペクトル解析の分野で知られるパワーの移動として求めることができる。具体的には、DC解析は、ある変動が他の変動からパワーをどの程度受け取っているかを調べることができ、 PDC解析は、ある変動が他の変動にどの程度パワーを与えているかを評価できる。この二つの解析法は多変数自己回帰(multivariate auto-regressive:MAR)モデルに基づく線形解析法である。
【0031】
ここでMARモデルとは、ひとつの観測量の現在の値をすべての観測量の過去の値の線形和で表すモデルである。DC解析は、注目する変数Yαが他の変数Yβからパワーをどれだけ受け取っているかを評価するもので、上記線形和の係数のフーリエ変換から求められる。PDC解析は変数Yβが注目する変数Yαにパワーをどれだけ与えているかを評価するものであり、これも上記線形和の係数のフーリエ変換から導くことができる。
【0032】
以下、計測データのMARモデルへの当てはめ、多変数自己回帰モデルに基づくスペクトル解析、DC解析およびPDC解析について順を追って詳細に説明する。
[多変数自己回帰モデルの作成]
多変数自己回帰(MAR)モデルとは、定常状態で取得した過去のデータから今後取得されるデータを予想するモデルであり、線形解析の基本的手法の一つである。本実施例では、安静な状態で一定期間計測された生理学的変動データを定常的なデータとして扱った。平均血圧、心拍数、酸素化ヘモグロビン濃度の3つの変数をそれぞれBP、HR、OTと表し、離散化された時刻nにおける対象システムの状態Y(n)を図16に示す[数5]で表す。
またMARモデルでは、Y(n)を図16に示す[数6]で表す。[数7]は、時刻nにおける観測変動の状態が観測変動の過去の状態とノイズの和によって表されることを意味している。pはMARモデルの予想に用いる過去の計測ポイント数であり、最小記述長基準により決定する。
また、W(n) はMARモデルの当てはめ誤差に相当し、互いに独立な白色ガウスノイズを成分とするノイズベクトルであり、図16に示す[数7]で表される。
ここで、A(k)は係数行列であり、図17に示す[数8]で表す。ここでは実験データとモデルとの誤差W(n)を最小になるように最小二乗法を用いて決定した。
以上より、MARモデルの係数A(k)とモデル次数pが求まり、計測データを表すMARモデルを求めることができる。
[パワースペクトル解析]
上記で得られたMARモデル、図17に示す[数8]をフーリエ変換すると図17に示す[数9]となる。係数行列のフーリエ変換A’(f)の要素A’αβは図17に示す[数10]で与えられる。 [数9]を式変形すると、図17に示す[数11]となり、成形フィルタH’を図188に示す[数12]とおくと、図18に示す[数13]と表すことができ、観測変動のフーリエ変換はノイズベクトルに成形フィルタを乗ずることで得られることが分かる。
ここで、成形フィルタH’の各成分は図18に示す[数14]と表される。
次に対角成分がパワースペクトル(自己スペクトル)、非対角成分がクロススペクトルであるスペクトル行列を考える。スペクトル行列S’(f)は、図18に示す[数15]で与えられる。ここで、*は複素共役、Tは転置を意味する。[数13]より図19に示す[数16]と変形することができ、W’*(f) W’TをΛとしてまとめると図19に示す[数17]となる。
【0033】
また、W’(f)の各成分は互いに独立な白色ガウスノイズであることから図19に示す[数18]となり、対角成分以外は0であり、対角成分は周波数に依存しない。
以上より、 [数17]の各項の成分が求まりスペクトル行列S’(f)が求めることができる。
[DC解析およびPDC解析]
前節で述べたパワースペクトルから、観測された変動の特定周波数成分がいずれの変数からパワーの寄与を受けているかが解析可能であり、以下の手順でDCを求めることができる。
【0034】
変数YαのパワースペクトルSααは、変数Yαが他変数および、自分自身から受け取ったパワーの総和であり、図19に示す[数19]で求められる。
DCは、変数Yαの持っているパワーの総和に対する、他の変数Yβより与えられたパワーの割合を示していることから図20に示す[数20]と定義できる。
【0035】
γαβ(f)は、変数Yαのパワーのうち、どの程度のパワーを変数Yβから受け取っているかを表している。パワーのやり取りが複雑であって途中に他の変数が介在してもよい。
【0036】
一方、PDC解析では、ある変数Yβが変数Yαにパワーをどれだけ与えているかを評価する。ここで、図20に示す[数21]とおくとPDCは、図20に示す[数22]で定義される。
【0037】
π’αβ(f)は変数Yβのパワーのうち、どの程度のパワーを変数Yαに与えているかを表し、パワーのやり取りが直接的なものだけを考慮する。
[解析例]
次に、光信号201、血圧信号202、心拍信号203の関係について以上の解析方法を用いて解析を行う。解析は関係演算部107で行われ、図示しない画像処理装置において画像処理され表示部109に以下のように表示される。ここでは仮に0.04〜0.15Hzの平均のパワーの解析を行う。DC解析は、ある変動が他の変動からパワーをどの程度受け取っているかを調べることができる。解析結果を図6に表し、0.04〜0.15Hzの平均のパワーを図14中の表1に示す。
表1は行方向に足し合わせると100%となり、Receiveのパワーがどの生体信号から受けているかを知ることができる。
【0038】
PDC解析は、ある変動が他の変動にどの程度パワーを与えているかを評価できる。
ここで解析結果を図7に表し、0.04〜0.15Hzの平均のパワーを図14中の表2に示す。表2は列方向に足し合わせると100%となり、Sourceのパワーがどこへ移動しているかを知ることができる。この二つの解析結果をもとに詳細なパワーの流れを調べることができるようになり、他の生理信号が及ぼす影響のみを排除することができるようになる。
【0039】
次に表2から、注目する変数の受け取るパワーの総量を100%として、注目する変数に対し、他の変数から直接移動するパワーの割合を再計算した。例えば、OTに注目した場合はBPから85%、HRから56%、OTから100%受け取り、総量が241%となる。この総計を100%として、BPからOT、HRからOTのように、注目変数に直接流入するパワー移動量を求め、その結果を修正偏有向コヒーレンス(Modified PDC)として、図14中の表3に示す。
【0040】
DC解析は注目する変数のパワーの源を知ることができ、媒介する変数があってもパワーの源を求めることができる。一方、PDC解析はパワー移動の始点となる変数から次に伝達される変数との関係性を評価できる。Modified PDCは注目する変数に直接的にパワーを与える変数との関係性を評価できる。DCとModified PDCの結果を組み合わせることにより、パワーの中継先を考慮したパワーの流れを知ることができるようになる。未知数が多く不定方程式となる場合は、計測した生理信号の関係を仮定し値を代入する。
この結果をもとに作成したパワーの流れは、以下の図8、図9、図10のようになる。ここで、図10から注目するOT変動の持つ0.04〜0.15Hzのパワーは外部からの影響はBPから25%、HR20%であり、合計45%受けていることがわかる。そこで、0.04〜0.15Hzのパワーの45%を低減して再表示をすると、図11の1101のOTデータから1102のように外部の影響を排除することができる。
【0041】
ここでの例は、0.04〜0.15Hzのパワーの平均を求めたものであるが、平均を行わずすべての周波数で同様に排除することも可能となる。
上述した内容で算出された生体雑音信号SBNを、図15で示す[数1]に基づいて光信号SOTから差し引くことで、生体雑音信号による影響を低減した光信号SPを得ることが可能となる。
【0042】
次に、図12、図13を用いて具体的な表示形態例及び表示方法について説明をする。
図12は表示内容選択部1208(1301)でOTを選択し、表示部109に表示をした一例である。表示内容選択部1208で表示する生体信号を選択し、記憶部103もしくは、記憶部105に保存されているデータを関係演算部107(1302)もしくは分離演算部108(1302)で読み出し、画像処理部により時系列データを1206(1309)に表示し、パワーの流れを1202(1309)に表示する。
フィルターモードは経路排除モード選択ボタン1204(1303)と経路選択モード選択ボタン1205(1304)があり、排除したいパワーの流れ、もしくは表示をしたいパワーの流れを指示手段1203でパワー経路表示部1202の実線もしくは点線のパワー移動矢印を選択をする(1305、1307)。ここで指示手段1203はマウス操作による形態を示したが、これに限らず入力手段に備えられるキー操作、タッチパネル等を採用しても良い。
フィルターモードによるフィルター処理は、関係演算部107(1306、1308)もしくは分離演算部108(1306、1308)で処理が行われ、ファイル加工後データは1207(1309)に表示される。
排除モードは、マウスポインタまたは指示手段1203で選択したパワー経路表示1202部の実線もしくは点線のパワー移動を示す矢印のパワーをフィルターし、フィルター後表示部1207に表示をする。
選択モードは、マウスポインタまたは指示手段1203で選択したパワー経路表示部1202の実線もしくは点線のパワー移動を示す矢印のパワーをファイル加工後データ1207に表示をする。
上記によれば、所望とする生体情報を選択もしくは除去することが可能となり、所望の生体信号のパワーの流れを把握でき、当該パワーの流れを考慮した計測結果の表示が可能となる。
【0043】
以上において光計測装置における、複数変動間の関係を解析する手段として、有向コヒーレンス(DC)解析および偏有向コヒーレンス(PDC)解析を用い、周波数ごとにスペクトル解析の分野で知られるパワーの移動として求め、この二つの解析結果を組み合わせることにより、関連する生理信号の相互作用を定量的に評価し、注目する変数以外のパワーを排除する技術について説明し、さらに、パワーの詳細な流れ、特定の経路を伝達し影響を及ぼすパワーのみを排除する技術について説明してきた。
【0044】
これにより、線形解析であるが故に多数計測間の関係解析に用いることができ、従来よりも算出速度の速い解析手法の提供が可能となり、さらには生理信号の相互作用を定量的に解析し、生理信号間のパワーの流れを詳細に知ることができる。
また、複雑な生理信号から生体内部の関係性を可視化することができ、生体内部の機能ネットワークをとらえることが可能となることから、注目する生理信号に対し、他の生理信号が及ぼす影響の評価、影響の排除が可能となり、さらには注目する生理信号に対し、特定の生理信号を媒介して影響を及ぼすパワーのみを排除することを可能となる。
その結果、生体雑音信号による影響を低減することにより信号のS/N比が向上し、計測時間の短縮やより質の高いデータを提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
医療、研究分野における光を用いた脳機能計測において、生体雑音信号による影響を低減することにより信号のS/N比が向上し、計測時間の短縮やより質の高いデータを提供できる。また,注目する生理信号が他の生理信号に及ぼす影響を詳細に調べることができるようになることに加え、注目する生理信号が他の変数から受ける影響を調べることができるようになるため機能的結合の評価等、多数の計測ポイント間での関係を求める研究手法になると期待される。これにより、生理信号の異常に対し、根本的な原因を取り除くための検査手段になる可能性がある。
【符号の説明】
【0046】
101・・光照射部、102・・ 光検出部、103・・ 記憶部、104・・心拍・血圧計測装置105・・ 記憶部、106・・ 動機部、107・・ 関係演算部、108・・ 分離演算部、109・・ 表示部、110・・ 生体光計測用プローブ、111・・ 腕用の血圧計測用のカフ、112・・ 指用の血圧計測カフ、113・・ 光ファイバー 、114・・ 光ファイバー、115・・ バンドパス・フィルタ部、201・・ 光信号202・・ 血圧信号、203・・ 心拍信号、301 光信号マーク、302・・ 血圧信号マーク、303・・ 心拍信号マーク、304・・ 光信号から光信号へのパワー移動の程度、305・・ 心拍信号から光信号へのパワー移動の程度、306・・ 血圧信号から光信号へのパワー移動の程度、307・・心拍信号から心拍信号へのパワー移動の程度、308・・ 血圧信号光信号から心拍信号へのパワー移動の程度、309・・ 血圧信号から心拍信号へのパワー移動の程度、310・・血圧信号から血圧信号へのパワー移動の程度、311・・心拍信号から血圧信号へのパワー移動の程度、312・・光信号から血圧信号へのパワー移動の程度、401・・ 光信号マーク、402・・ 血圧信号マーク、403・・ 心拍信号マーク、404・・ 光信号から光信号へのパワー移動の程度、405・・ 心拍信号から光信号へのパワー移動の程度、406・・ 血圧信号から光信号へのパワー移動の程度、407・・心拍信号から心拍信号へのパワー移動の程度、408・・ 血圧信号光信号から心拍信号へのパワー移動の程度、409・・ 血圧信号から心拍信号へのパワー移動の程度 、410・・ 血圧信号から血圧信号へのパワー移動の程度、411・・心拍信号から血圧信号へのパワー移動の程度、412・・光信号から血圧信号へのパワー移動の程度、501・・ 光信号から光信号へのパワー移動の程度、502・・ 心拍信号から光信号へのパワー移動の程度、503・・ 血圧信号から光信号へのパワー移動の程度、504・・ 光信号から血圧信号を経由し光信号へのパワー移動の程度、505・・光信号から心拍信号を経由し光信号へのパワー移動の程度、506・・心拍信号から血圧信号を経由し光信号へのパワー移動の程度、508・・血圧信号から心拍信号を経由し光信号へのパワー移動の程度、509・・心拍信号から血圧信号を経由し光信号へのパワー移動の程度、1101・・フィルター前光信号、1102・・フィルター後光信号、1201・・モニタもしくはタッチパネル、1202・・経路選択画面、1203・・マウスポインタまたは指示手段、1204・・経路排除モード選択ボタン、1205・・経路選択モード選択ボタン、1206・・生データ、1207・・ファイル加工後データ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体頭部に光を照射する光照射手段と、前記光照射手段から照射され、前記被検体頭部内を伝播した光を受光する受光手段と、前記被検体の生体信号を検出する生体信号検出手段と、前記受光手段で受光した光の光信号と、前記生体信号検出手段で検出した前記生体信号の関係を線形解析により算出する関係演算部と、前記関係演算部で算出された関係から前記被検体の生体雑音信号を算出し、前記光信号から前記生体雑音信号を分離する分離演算手段とを備え、
前記関係演算部は、有向コヒーレンス解析及び偏有向コヒーレンス解析による線形解析を用いたパワー解析を行うことで前記光信号と前記生体信号の関係を算出することを特徴とする生体光計測装置。
【請求項2】
前記関係演算部で算出された関係を表示する表示部を有することを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
【請求項3】
前記生体信号は前記被検体の血圧、心拍、呼吸、温度、のどの動きのいずれか一または、これらのうちいずれか複数を組み合わせたものであることを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
【請求項4】
前記パワー解析の結果を基に,計測した生体信号間のパワーの受け渡しを前記表示部に表示させる画像処理部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の生体光計測装置。
【請求項5】
前記パワー解析の結果を基に,前記光信号および/または前記生体信号の所定の周波数成分を除去および/または低減することを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
【請求項6】
前記光信号および/または、前記生体雑音信号および/または、前記光信号から前記生体雑音信号を除去した信号を表示する表示部を有することを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
【請求項7】
前記受光手段と前記生体信号検出手段を同期させる同期部を有することを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
【請求項8】
前記生体信号検出手段は、脈波計測部、心拍計測部、または血圧計測部のいずれか一であることを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
【請求項1】
被検体頭部に光を照射する光照射手段と、前記光照射手段から照射され、前記被検体頭部内を伝播した光を受光する受光手段と、前記被検体の生体信号を検出する生体信号検出手段と、前記受光手段で受光した光の光信号と、前記生体信号検出手段で検出した前記生体信号の関係を線形解析により算出する関係演算部と、前記関係演算部で算出された関係から前記被検体の生体雑音信号を算出し、前記光信号から前記生体雑音信号を分離する分離演算手段とを備え、
前記関係演算部は、有向コヒーレンス解析及び偏有向コヒーレンス解析による線形解析を用いたパワー解析を行うことで前記光信号と前記生体信号の関係を算出することを特徴とする生体光計測装置。
【請求項2】
前記関係演算部で算出された関係を表示する表示部を有することを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
【請求項3】
前記生体信号は前記被検体の血圧、心拍、呼吸、温度、のどの動きのいずれか一または、これらのうちいずれか複数を組み合わせたものであることを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
【請求項4】
前記パワー解析の結果を基に,計測した生体信号間のパワーの受け渡しを前記表示部に表示させる画像処理部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の生体光計測装置。
【請求項5】
前記パワー解析の結果を基に,前記光信号および/または前記生体信号の所定の周波数成分を除去および/または低減することを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
【請求項6】
前記光信号および/または、前記生体雑音信号および/または、前記光信号から前記生体雑音信号を除去した信号を表示する表示部を有することを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
【請求項7】
前記受光手段と前記生体信号検出手段を同期させる同期部を有することを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
【請求項8】
前記生体信号検出手段は、脈波計測部、心拍計測部、または血圧計測部のいずれか一であることを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−212038(P2011−212038A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80118(P2010−80118)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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