説明

生体分子標識用複素環FRET色素カセット並びにDNA配列決定での使用

蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)カセット及びそれらの対応ジデオキシヌクレオチドターミネーターをDNA配列決定用の効率的な試薬とするための設計及び合成における適当な官能化複素環分子の開発。様々な複素環系から誘導される本発明のFRETカセット/ターミネーターは生体分子の汎用標識に使用することができ、高感度シグナルを発生する。これらの製造法、エネルギー移動効率、さらに特にDNAシークエンシング反応における標識としての使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範な分子生物学及びDNA配列決定用途に対して核酸及びタンパク質の標識に使用できる新規複素環FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)カセットに関する。
【0002】
ハイスループット遺伝子配列決定の現在の一般的慣行は、一般則として、Forster共鳴エネルギー移動(FRET)機構に基づいて4種類の異なる標識を有するエネルギー移動(ET)色素ターミネーターを用い、ドナーの励起波長で励起し、4種類の個々の核酸塩基にコンジュゲートした4種類のアクセプターの波長で発光を測定することによって配列を読み取る。
【0003】
しかし、現在入手し得るETターミネーターセットは輝度が低いという難点を有する。こうした低い輝度は、ドナーに吸収されたエネルギーのアクセプターへの移動及びアクセプターの発光波長での再発光が非効率的であることに起因する。こうした非効率性はドナーとアクセプター及び塩基を結合して色素ターミネーターを形成するのに用いられている構造的連結が最適でないことによる。
【0004】
FRET効率は主に、関与する色素の相対的な双極子-誘起双極子配向に依存する。色素がコアリンカー分子に共有結合する官能基の配向によって、色素の相対的な双極子−双極子配向が決まる。蛍光色素及び生物学的に重要な分子との共有結合を形成するのに適した官能基を有する複素環式及び脂環式分子は、官能基を3次元に配向させて、結合する基を一定の位置に規定するので、カセットコアとして役立つ。効率の高いFRET色素カセットを誘導しそれらを高感度DNA配列決定ターミネーターに変換するため、様々な構造及び環の大きさを有する複素環系がコアカセット分子として選択されてきた。
【0005】
本発明では、現在入手可能なターミネーターよりも輝度の高い色素標識カセット及び対応ターミネーターの新規セットを提供する。。本発明の色素ターミネーターセットは輝度が向上し、それに応じてSN比が向上しているので、さらに広範な種類のDNAテンプレートの配列決定が可能となる。本発明で開示するコア分子としてピペリジン又はピペラジンアミノ酸の形態の新規蛍光団/リンカーの組合せによって、高輝度のET色素が構築できるようになる。本発明で開示する複素環FRETカセットは、核酸、タンパク質、炭水化物その他の生体分子の標識に使用できる。
【背景技術】
【0006】
最近、生体試料中の成分の標識及び検出用に多数の蛍光色素が開発されている。一般に、検出限界を下げるには、これらの蛍光色素は高い吸光係数と量子収率を有していなければならない。
【0007】
Forster共鳴エネルギー移動(FRET)機構に基づいてストークスシフトを拡大しかつ多様にするために開発され、混合物中の異なる標識を有する試料の同時検出に使用されている色素の1種はET(エネルギー移動)色素である。これらのET色素はドナー蛍光団とアクセプター蛍光団、さらにはそれらを目的生体分子と結合させる機能をもつ標識からなる複雑な分子構造を含む。ドナー蛍光団の励起によってドナーに吸収されたエネルギーはForster共鳴エネルギー移動(FRET)機構でアクセプター蛍光団に移動し、蛍光を発する。単一のドナーに対して異なるアクセプターを用いて1セットのET色素群を形成すれば、そのセットが単一のドナー周波数で励起されたときにアクセプターの種類に応じて異なる発光が観察できる。これらの異なる発光を定量することによって、これらの色素を目的の生体分子に結合させたときの混合物の各成分を容易に解析することができる。これらのET色素セットは現在のハイスループット遺伝子配列決定法論の根幹をなす。
【0008】
従前、様々な組合せの二元蛍光団色素が報告されている。Mathies他の「Probes Labelled with Energy Transfer Coupled Dyes」と題する米国特許第5688648号、「Universal spacer/energy transfer dyes」と題する米国特許第5728528号及び「Methods of sequencing and detection using energy transfer labels with cyanine dyes as donor chromophores」と題する米国特許第6150107号(それらの図面も含めた開示内容全体を援用によって本明細書の内容に組み込む。)には、ドナー色素分子とアクセプター色素分子の対を有する蛍光標識のセットが開示されており、標識は配列決定用核酸骨格に結合させることができる。ドナー色素とアクセプター色素を離隔するためのスペーサーとして核酸塩基又は脱塩基糖単位が用いられている。ドナー色素からアクセプター色素への効率的エネルギー移動に最適な距離は約6〜10塩基であることが判明している。異なる蛍光標識を用いて核酸混合物中の核酸を同定・検出する方法も開示されており、蛍光部分はシアニン色素及びキサンテン類のような群から選択される。蛍光標識は1対の蛍光団を含んでおり、その一方の蛍光団ドナーは蛍光団アクセプターの吸収と重複する発光スペクトルを有していて、励起側から他方へのエネルギーの移動が起こる。
【0009】
Waggoner他の「Fluorescent labeling complexes with large stokes shift formed by coupling together cyanine and other fluorochromes capable of resonance energy transfer」と題する米国特許第6008373号(その図面も含めた開示内容全体を援用によって本明細書の内容に組み込む。)には、第1の吸収及び発光スペクトルを有する第1の蛍光色素と第2の吸光及び発光スペクトルを有する第2の蛍光色素とを含む複合体が開示されている。蛍光色素間のリンカー基はアルキル鎖である。色素の蛍光性によって、それらを配列決定及び核酸の検出に使用することができる。
【0010】
Lee他の「Energy transfer dyes with enhanced fluorescence」と題する米国特許第5863727号(その図面も含めた開示内容全体を援用によって本明細書の内容に組み込む。)には、ドナー及びアクセプター色素が色素間のリンカーで離隔されたエネルギー移動色素が開示されている。色素間の好ましいリンカーは4−アミノメチル安息香酸である(Nucleic Acids Research,1997,25(14),2816−2822)。このリンカーに基づくエネルギー移動ターミネーターDNA配列決定キットはApplied Biosystems社(米国カリフォルニア州フォスターシティ)から入手可能であり、Big Dyeターミネーターキットとして市販されている。
【0011】
Kumar他の「Energy Transfer Dyes」と題する国際公開第00/13026号(その図面も含めた開示内容全体を援用によって本明細書の内容に組み込む。)には、エネルギー移動色素、その調製及び生体系における標識としての使用が開示されている。色素は好ましくはカセットの形態であり、それらを各種生体物質に結合させることができる。ドナー色素、アクセプター色素及びジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸はすべて芳香族アミノ酸構造に基づく三官能性リンカーに結合する(Tetrahedron Letters,2000,41,8867−8871)。これらの構造に基づくエネルギー移動ターミネーターキットはAmersham Biosciences社(米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)からDNA配列決定用のDYEnamic ETターミネーターキットとして市販されている。
【0012】
Kumar他の「Charge−modified nucleic adids terminators」と題する国際公開第01/19841号(その図面も含めた開示内容全体を援用によって本明細書の内容に組み込む。)には、リンカーアームに正電荷又は負電荷を導入した単一のエネルギー移動色素標識ターミネーターが開示されている。これらのターミネーターは、色素標識ジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸の分解で形成される「色素斑」を全く含まないDNAシークエンシングバンドを得るのに有用である。荷電ターミネーターの使用によって、これらの分解生成物は配列情報の後方(正電荷ターミネーター)又は前方(負電荷ターミネーター)に移動させることができる(Finn et al.,Nucleic Acids Research,2002,30(13),2877−2885)。
【0013】
現在入手可能なET色素ターミネーターセットは概して輝度が低いという難点を有する。このような低い輝度は、ドナーに吸収されたエネルギーのアクセプターへの移動及びアクセプターの発光波長での再発光が非効率的であることに起因する。こうした非効率性はドナーとアクセプター及び塩基を結合して色素ターミネーターを形成するのに用いられている構造的連結が最適でないことによる。そこで、最大輝度が得られるようなエネルギー移動色素カセットの構築及びその生体分子との結合をさらに改善するニーズが依然として存在している。
【特許文献1】米国特許5688648号明細書
【特許文献2】米国特許5728528号明細書
【特許文献3】米国特許6150107号明細書
【特許文献4】米国特許6008373号明細書
【特許文献5】米国特許5863727号明細書
【特許文献6】国際公開第00/13026号パンフレット
【特許文献7】国際公開第01/19841号パンフレット
【非特許文献1】Nucleic Acids Research,1997,25(14),2816−2822
【非特許文献2】Tetrahedron Letters,2000,41,8867−8871
【非特許文献3】Finn et al.,Nucleic Acids Research,2002,30(13),2877−2885
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、輝度が高くDNAポリメラーゼの基質となるエネルギー移動色素及び標識ヌクレオチドを提供する。エネルギー移動色素はピペリジン及びピペラジンのような複素環リンカー構造をコア分子として用いてドナー及びアクセプター色素を結合させる。例えばピペリジニル−1,1−アミノカルボン酸の場合、ドナー色素は二級窒素原子に結合し、アクセプター色素はアミノ基に結合する。分子のカルボン酸残基を用いて、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドその他の生体分子を結合させる。ドナー及びアクセプター色素の結合位置は入れ替えることもできる。
【0015】
本発明は、本発明の複素環リンカーから誘導される4種類のターミネーターセットも提供する。ターミネーターセットは、フルオロセイン(FAM)又はローダミン110(R110)をドナー色素として含み、ローダミン110(R110)、ローダミン6G(R6G)、テトラメチルローダミン(TAMRA)及びローダミンX(ROX)又はシアニン色素をアクセプター色素として含む。このターミネーターセットはDNA配列決定用に最適化される。キット中の標識ヌクレオチドターミネーターは既存のキットよりも輝度が高く、均一なバンドを与える。これらの製造方法及びDNA配列決定における使用についても本発明で開示する。
【0016】
本発明の複素環FRET色素の組成及びその製造方法並びにヌクレオシド、ヌクレオチド(一、二又は三リン酸)又はオリゴヌクレオチドのような生体分子にそれらを結合させる方法についても開示する。
【0017】
太字で示す符号及び文字はスキーム及び実施例に示す化合物の番号を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
FRETの効率は数多くの因子に依存する。Forster理論(Joseph R. Lakowicz, “Principles of Fluorescence Spectroscopy” 2nd Edition, Chapter 13, Kluwer Academic Plenum Publishers, New York, Boston, Durdrecht, London, Moscow 1999)によれば、その主な因子は以下の通りである。
1)ドナーの発光スペクトルとアクセプターの吸収スペクトルの重なり、
2)ドナーとアクセプターの間隔、及び、
3)ドナーの双極子とアクセプターの双極子の空間的配向。
【0019】
実際には、問題ははるかに複雑である。ドナーとアクセプター間の特異的な相互作用によって消光が起こる場合があり、ドナー発光が全く存在しないときでもアクセプターからの発光がほとんど認められないことがある。さらに、ドナーがどの程度消光されるかはアクセプターに移動するエネルギーとはほとんど関係なく、観察される発光量ともほとんど関係ない。今回、これらの色素ターミネーターに関する実際のET過程を説明するための数学的処理を開発したので、以下これらについて説明する。かかる数学的処理には、以下に挙げる3つの実験的に測定可能なパラメーターが最も重要である。
1)PQEQ(ドナーの消光率%)、これは以下の通り定義される。
PQEQ=(1−発光ドナー/アクセプター対のドナー/発光アクセプター非存在下での同量のドナー)×100%
2)PAEE(アクセプター発光効率%)、
PAEE=(ドナーアクセプター対のアクセプターの発光効率)/(ドナー非存在下でのアクセプターの発光効率)×100%、及び
3)PET(エネルギー移動率%)、
PET=ドナーの量子収率×[(ドナー励起波長で励起したアクセプターの発光効率)/(アクセプター非存在下でのドナーの発光効率)]。
【0020】
上記のPETは、実際には、ドナー励起波長で励起し、アクセプター発光波長で発光を測定したときのドナー/アクセプター対の量子収率となる。
【0021】
上述の方法論は1個のドナーと3個以上のアクセプターからなるET構築体にも拡張できる。
【0022】
さらに、これらの数値から、ET過程全体を通しての光子の流れを示すフローダイアグラムを構築できる。一例として、現在DNAシークエンシング反応に使用されている4種類のET色素ターミネーターのセット(Kumar他の国際公開第00/13026号、Nampalli et.al., Tetrahedron Letters 2000,41,8867)に関する数値を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
【化1】

【0025】
例示として、例えば化合物(4F)を用いて光子のフローダイアグラムを構築できる。
【0026】
【化2】

【0027】
ダイアグラムの作成は比較的簡単である。化合物(4F)のPQEQが99%に等しいので、ドナー(FAM)に吸収された光子100個のうちドナーによって再発光されるものは1個にすぎない。PETは0.19に等しいが、これは、ドナーに吸収された光子100個当たり、光子19個がアクセプター(ROX)から発光されることを意味する。PAEEは0.35であるので、その遊離状態におけるROXの量子収率がFAMに対して1.0であると仮定すると、ROXアクセプターから光子19個を発光させるには19/0.35、つまり54個の光子のインプットが必要となる。従って、蛍光以外の過程でアクセプター(ROX)が失った光子の数は35(=54−19)となる。すると、光子の保存則から、ドナーFAMから無放射過程で失われた光子の数は45(=100−1−54)となるはずである。
【0028】
表1に示すものよりも輝度の向上した色素ターミネーターセットを求めて鋭意検討した結果、ピペリジニル−1,1−アミノカルボン酸に基づく新規なET色素を発見した。ピペリジン核の環窒素(NH)をドナー色素(フルオロセイン)との結合に用いる。ピペリジンの1位のアミノ基をアクセプター色素(ローダミン110、ローダミン6G、テトラメチルローダミン、ローダミン−X、Cy5等)との結合に用い、ヌクレオシド三リン酸、オリゴヌクレオチド、タンパク質のような生体分子を活性化カルボン酸に結合させる。ET色素カセット及びこの構造体から誘導されるターミネーターは輝度が高く、そのジデオキシヌクレオチドはDNAポリメラーゼの良好な基質である。
【0029】
したがって、本発明は、次式のエネルギー移動色素を提供する。
【0030】
【化3】

【0031】
式中、Dはキサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素からなる群から選択されるドナー色素であり、
はH、C−C20アルキニルアミン、アルキノール、アルケンアミン、アルキルアミン、ケト及びチオールからなる群から選択される官能基であって、この基を介してDが共有結合しており、
、R、R及びRは独立にH、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、チオ、ニトロ、アミノ又はアルキルアミノ基を表し、
はC−C20アルキニルアミン、アルキノール、アルケンアミン、アルキルアミン、ケト及びチオールからなる群から選択されるアミンであって、この基を介してAが共有結合しており、
Xはアルデヒド、酸、酸クロライド、エステル、ヒドロキシメチル、CHO−メシレート、CHO−トリフレート、メルカプトメチレン、ホスホルアミダイトであるか、或いはアミン、チオール、ヒドロキシ又はハロアセチル含有生体分子と共有結合を形成し得る反応性基であり、又はX=LBであって、Lは生体分子Bと共有結合を形成し得るカルボン酸、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、酸クロライド、マレイミド、ヒドラジド又はスルホニルクロライドから構成される官能基であり、Bは、ヌクレオシド、ヌクレオシド−一リン酸、二リン酸もしくは三リン酸、チオリン酸、アルケニル置換もしくはアルキニルアミノ置換ジデオキシヌクレオシド三リン酸、デオキシヌクレオシド三リン酸、ヌクレオシド三リン酸、アミノ酸、タンパク質又は修飾オリゴヌクレオチドからなる群から選択される生体分子であり、
Aはキサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素からなる群から選択されるアクセプター色素であり、
AとDの位置は互いに交換可能である。
【0032】
別の態様では、本発明は、エネルギー移動色素カセット及び以下の構造の対応ジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸、それらの製造法及びDNA配列決定における使用法を提供する。
【0033】
【化4】

【0034】
式中、アクセプター色素は、キサンチン群の色素、ローダミン色素又はシアニン色素から選択され、
BASEはシトシン、チミン、ウラシル、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノプリン、7−デアザプリン、7−デアザ−8−アザプリンその他の修飾複素環塩基から選択され、nは0〜3である。
【0035】
アクセプター色素及びドナー色素はピペリジン−1,1−アミノカルボン酸の環窒素又は一級アミノ基のいずれかに互いに交換可能に結合させることができる。
【0036】
標識用ET色素カセットは、その他同様の複素環式アミノ酸からも製造でき、その例を以下に示す。
【0037】
【化5】

【0038】
上記のすべての複素環式FRETカセットにおいて、ドナー色素(D)には、カルボキシフルオロセイン(FAM)、Cy3、ローダミングリーン(R110)の5及び6−位置異性体が包含され、アクセプター色素(A)には、5−カルボキシローダミン(R110)、6−カルボキシローダミン、5−カルボキシローダミン6G(R6G又はREG)、6−カルボキシローダミン6G、N,N,N′,N′−テトラメチル−5−カルボキシローダミン(TAMRA)、N,N,N′,N′−テトラメチル−6−カルボキシローダミン、5−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、6−カルボキシ−X−ローダミン、1−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−5,5′−ジスルホナト−カルボシアニン(Cy3)、1−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−4,5,4′、5′−(1,3−ジスルホナト)ジベンゾ−カルボシアニン(Cy3.5)、1−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−5、5′−ジスルホナト)ジベンゾ−ジカルボシアニン(Cy5)、1−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−4,5,4′、5′−(1,3−ジスルホナト)ジベンゾ−ジカルボシアニン(Cy5.5)、1−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−5,5′−(1,3−ジスルホナト)トリカルボシアニン(Cy7)又は関連色素の5及び6−異性体が包含され、アクセプター色素Aはドナー色素Dからエネルギーを受け取ることができるものである。
【0039】
FAM、R110、REG、TAMRA及びROXはApplied Biosciences社(米国カリフォルニア州フォスターシティ)の商標であり、Cy3、Cy3.5.Cy5、Cy5.5及びCy7はAmersham Biosciences社(米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)の商標である。
【0040】
さらに、本発明はFRETカセット(上記参照)を包含するが、これらは環系に窒素原子を有し、A及びBに対する連結基を1,2−位又は1,3−位に有する。なお、これらの系は1又は2個のキラル中心を有しており、これらのキラル中心がA、B及びDの相対的配向に影響を及ぼしてエネルギー移動効率(輝度又は量子収率)に影響を与える。
【0041】
色素とジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸の間に様々なリンカーを有する単一色素標識ターミネーターを多数合成し、それらの輝度(PET)を488nmの励起で測定した。単一色素標識ターミネーターの輝度を、本発明のエネルギー移動色素標識ターミネーター及び従前開示されたターミネーターと比較した。ピペリジン由来ターミネーターの合成は図1に示す通り行なった。例えば、実施例1に示すように、N−FMOC−ピペリジニル−1,1−アミノカルボン酸(1)を保護フルオロセイン−5−カルボン酸クロライド(3)と反応させ、フルオロセイン標識ピペリジニル−1,1−アミノカルボン酸(4)を得た。アクセプター色素(NHSエステル形)をピペリジンで脱保護した後、アミノ基に結合させた。最後に、酸を対応活性エステルへと活性化した後、適切に連結したプロパルギルアミノ−ddNTPと反応させてピペリジンリンカー由来エネルギー移動色素ターミネーターを得た。また、N−t−Boc−ピペリジニル−1,1−カルボン酸メチルエステルを用いて、本発明の単一及びET色素カセットを合成することもできる。
【0042】
単一色素標識ジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸(ターミネーター)及び本発明で合成したエネルギー移動ターミネーターすべてについてエネルギー移動効率(PET)を測定した。色素ターミネーターはすべて488nmで励起し、発光は個々の発光波長で測定した。結果を以下の表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
表2に記載の色素ターミネーターの分子構造を以下に示す。
【0045】
【化6】

【0046】
【化7】

【0047】
本発明の単一色素標識ターミネーター及びエネルギー移動色素標識ターミネーター(上述)を、熱安定性DNAポリメラーゼを用いたDNAシークエンシング反応で試験した。個々の色素標識ターミネーターの有用性を、配列全体の質、輝度及びバンドの均一性に基づいて確認した。これらの規準に基づいて、新しい色素ターミネーターセットを構築した。この新規セットのターミネーターのPETを以下に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
本発明には、試薬並びに上述の蛍光水溶性標識複合体を担体材料と共にインキュベートすることを含む試薬の製造法も包含される。複合体、又は複合体もしくは担体の他の反応基と反応してそれらの間に共有結合を形成する官能基を有する担体材料。担体材料は、ポリマー粒子、ガラスビーズ、セル、抗体、抗原、タンパク質、酵素及びヌクレオチドからなる群から選択され、アミノ、スルヒドリル、カルボニル、カルボキシル又は水酸基のいずれかを含むように誘導体化される。また、担体材料は反応基を含んでいてもよく、本発明の蛍光標識複合体は該反応基と反応して共有結合を形成する上述の官能基のいずれかを含んでいてもよい。
【0050】
別の態様では、本発明の蛍光複合体は、他の化合物と非共有結合で結合させるときは反応基を有する必要がない。例えば、複合体を溶解し、有機溶媒中でポリスチレンのようなポリマー粒子と混合し、乳化重合によって撹拌してもよい。溶媒を蒸発させ、蛍光色素複合体をポリスチレン粒子に吸収させる。
【実施例】
【0051】
以下の実施例で本発明をさらに説明する。これらの実施例は例示を目的としたものであり、特許請求の範囲及び本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、本明細書中の教示内容から明らかなあらゆる変更を包含する。以下に太字で示す符号は、合成における符号を付した各種の化合物を示す。
【0052】
実施例1
ピペリジンリンカーから誘導したターミネーターの合成(FAM−ピペリジン−ROX−X−ddNTPs)
【0053】
【化8】

【0054】
4−N−(ジピバロイルフルオロセイン−5−カルボニル)−N−FMOC−ピペリジニル−1,1−アミノカルボン酸(4)
N−FMOC−ピペリジニル−1、1−アミノカルボン酸1(0.4g、1.0mmol)を無水ピリジン(10ml)との共蒸発によって乾燥させた。乾燥した基質を塩化メチレン(5ml)とピリジン(5ml)の混液中に溶解した。反応フラスコを氷浴中で冷却し、ジピバロイル−5−カルボキシフルオレセイン酸クロライド3(1.25ml、ジピバロイル−5−カルボキシフルオレセイン2を塩化メチレン中DMF存在下シュウ酸クロライドで処理して調製)の塩化メチレン(10ml)溶液を加えた。反応混合物を0〜5℃で2時間撹拌し、放置して室温まで温めた。反応を一晩継続し、水(0.5ml)の添加によって奪活した。反応混合物をクロロホルム(100ml)で希釈し、水(50ml)で洗浄した。有機層を乾燥させ(硫酸ナトリウム)、蒸発させた。残渣をトルエンと共蒸発し、塩化メチレン中0〜5%メタノール勾配を溶出液として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。
【0055】
4−N−(フルオレセイン−5−カルボニル)ピペリジニル−1、1−アミノカルボン酸(5)
THF(15ml)中の化合物4(150mg)の溶液にピペリジン(5ml)を添加し、混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固し、残渣を塩化メチレン中0〜100%メタノール勾配を溶出液として用いたカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0056】
4−N−(フルオレセイン−5−カルボニル)−N−ROX−ピペリジニル−1、1−アミノカルボン酸(6)
化合物5(20mg)とROX−NHSエステルの混合物を、乾燥DMF(15ml)との共蒸発によって乾燥させた。次いで無水DMSO(5ml)に溶解し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.5ml)を添加し、反応混合物を室温で6.5時間撹拌した。反応混合物を、塩化メチレン中で充填したシリカゲルカラムにかけた。生成物を、塩化メチレン中0〜100%メタノール、次いでメタノール中1%トリフルオロ酢酸を用いて溶出した。生成物を含む画分を蒸発させ、残渣をトルエンと共蒸発させた。残渣をさらに、Q−Sepharoseカラムで精製した。溶出液は、40%アセトニトリル含有0.1N重炭酸トリエチルアンモニウム〜40%アセトニトリル含有1N重炭酸トリエチルアンモニウムであった。生成物を含む画分を回収して蒸発させ、化合物6を得た。
【0057】
5−FAM−ピペリジン−ROX−11−ddCTP(10)
化合物6(10mg、0.01mmol)を乾燥DMF(8ml)との共蒸発によって乾燥させた。次いで乾燥DMF(3ml)に溶解し、DMF(1ml)中のジスクシンイミジルカーボネート(18mg)の溶液を添加した。反応フラスコを−60℃に冷却し、DMF(1ml)中のDMAP(9mg)溶液を滴下した。10分後、反応混合物の温度を−30℃に上げ、pH9.5のNaHCO/NaCO緩衝液(8ml)中11−ddCTP(0.3mmol)の溶液を添加した。反応混合物の温度を室温まで上げて、反応を3時間続けた。反応混合物を直接、50%メタノール−クロロホルム中で充填したシリカゲルカラムにかけた。カラムをメタノールで洗浄し、生成物をイソプロパノールと水酸化アンモニウムと水(6:3:1)の混液で溶出した。生成物を含む画分を回収して蒸発させて濃縮し、0.4μフィルターで濾過し、Q−Sepharoseカラムにかけた。生成物を40%アセトニトリル含有0.1N重炭酸トリエチルアンモニウム〜40%アセトニトリル含有1N重炭酸トリエチルアンモニウムの勾配で溶出した。純粋な生成物を含む適当な画分を回収して蒸発させた。残渣をメタノール(5×30ml)と共蒸発して化合物10を得た。
【0058】
5−FAM−ピペリジニル−ROX−18−dCTP(11)
FAM−ピペリジニル−ROXのETカセット6(4mg、0.004mmol)を無水DMF(2ml)に溶解した。全8mgのDSC(0.03mmol、8当量)を添加した。混合物を撹拌して−60℃に冷却し、この温度でDSC(2.4mg)の無水DMF溶液(1ml)を滴下した。15分後に、NHSエステルに完全に転化されていることがTLCで確認された。反応混合物の温度を−30℃に上げ、18−ddCTP(1当量)の緩衝液(0.1M NaCO−NaHCO、pH8.5)を添加した。次いで、反応混合物を室温まで温め、さらに3時間撹拌した。所望生成物11を、化合物10について説明した通りQ−Sepharoseカラムで精製した。
【0059】
実施例2
FAM−ピペリジン−TAMRA−X−ddNTPs−の合成
【0060】
【化9】

【0061】
4−N−(フルオロセイン−5−カルボニル)−N−TAMRA−ピペリジニル−1、1−アミノカルボン酸(9)
化合物5(24mg、0.048mmol)を無水DMSO(5mL)に溶解し、撹拌溶液に室温でDIPEA(0.1mL、0.58mmol、12当量)を添加し、次いでTAMRA−NHSエステル(30mg、0.57mmol、1.2当量)を添加した。反応混合物を一晩撹拌し、所望生成物9(60%)を、化合物6について説明した通りQ−Sepharoseカラムを用いて単離した。
【0062】
5−FAM−ピペリジニル−TAMRA−11−ddATP(7)及び5−FAM−ピペリジニル−TAMRA−18−ddATP(8)
8当量のDSC、5当量のDMAP及び1当量の11−又は18−ddATPを用いて3.8μmoleスケールで化合物9から化合物7及び8を、化合物10について説明したのと同様の反応条件を用いて合成した。
【0063】
実施例3
FAM−ピペリジン−R110−X−ddNTP及びFAM−ピペリジン−R6G−X−ddNTPの合成
5−FAM−ピペリジニル−R110−11−ddGTP(15)
化合物7と同様の手順で化合物5から化合物14を介してターミネーター15を合成し精製した。
【0064】
【化10】

【0065】
実施例4
ピペリジン由来単一色素(ドナー色素としてR110)カセットの合成
ピペリジニル−R110カセット合成(19)
【0066】
【化11】

【0067】
TFA−5−R110酸17(0.2g、0.35mmol)を乾燥DMF(10ml)との共蒸発によって乾燥させた。乾燥材料を無水THF(6ml)に溶解した。反応フラスコを氷浴中で冷却し、DMF1滴と次いでオキサリルクロライド(0.25ml、0.5mmol)を5分かけて添加した。反応を15分間氷浴中で継続し、室温まで温めた。2時間後室温で蒸発乾固し、乾燥塩化メチレン(10ml)と共蒸発させ、高真空で1.5時間乾燥させ、化合物18を得た。
【0068】
FMOC−ピペリジン1誘導体(0.14g)を乾燥ピリジン(10ml)との共蒸発によって乾燥させた。次いでピリジン(3ml)に溶解し、塩化メチレン(5ml)と無水アセトニトリル(1ml)の混液中の酸クロライド(18)溶液を0℃で滴下した。反応混合物を0℃で3時間撹拌し、室温まで温めた。反応混合物を室温で15時間撹拌した後、水(1ml)を添加し反応を奪活した。反応混合物を塩化メチレンで希釈し、水洗した。有機層を乾燥させ(硫酸ナトリウム)、蒸発させ、トルエンと共蒸発させた。最後に、生成物を0〜8%メタノール−塩化メチレンを溶出液として用いてシリカゲルクロマトグラフィで精製した。所望生成物を含む適当な画分をプールして蒸発させ、化合物19を得た。化合物19は、化合物20を介して化合物21に転化でき、R110−ピペリジン−ローダミンETカセットとその対応ターミネーターを得た。
【0069】
エネルギー移動率(PET)に関するFRETの効率を、複素環FRET−カセット及びターミネーターのフルオロセインとローダミン色素について1×TBE、8M尿素中でフルオロメーター(Photon Technology International社製)で測定し、単一色素標識ターミネーターと比較した。プロットしたグラフから、本発明のFRETカセット及びターミネーターが増大したPET増加を示すことが明らかである。スペーサー長の長いターミネーター(11)は、ROX−11−ddCTP(単一色素標識ターミネーター)よりも55倍高いPETを示し、市販の4Fよりも3.2倍高いPETを示したが、短いスペーサーのターミネーター(10)は4Fよりも2.1倍高いPETを示した。次のターミネーターのFAM−ピペリジン−TMR−18−ddATP(8)は、その吸収スペクトルとの重なりがかなり離れているのでその蛍光増強が望ましいが、単一色素標識ターミネーターに比べて41倍高いPETを示し、市販の4Fに比べて2.5倍高いPETを示した。
【0070】
FAM−ピペリジン−Cy5−X−ddNTPs−の合成
【0071】
【化12】

【0072】
Cy5をアクセプター色素とするエネルギー移動ターミネーターの合成は実施例1及び実施例2と全く同様に実施できる。ローダミン−NHSエステルに代えてCy5 NHSエステルを用いる。
【0073】
実施例5
単一及びエネルギー移動色素標識ジデオキシヌクレオシド三リン酸を用いたDNA配列決定
M13mp18テンプレートDNAの配列を、標準的な「−40」プライマーを用いて作成した。反応混合物(20μl)は、各200μMのdATP、dCTP及びdTTP、1000μMのdITP、160nMのFAM−18−ddGTP、125nMのR6G−11−ddUTP、95nMのFAM−ピペリジン−TMR−18−ddATP、60nMのFAM−ピペリジン−ROX−18−ddCTP、2pmolの−40プライマー、200ngのM13mp18DNA、20単位のThermo Sequenaseその他の変異DNAポリメラーゼ(Amersham Biosciences)、0.0008単位のThermoplasma acidophilum無機ピロホスファターゼ、50mMのTris−HCl pH8.5、35mMのKCl及び5mMのMgClを含有していた。
【0074】
反応混合物を、95℃で20秒間、50℃で30秒間及び60℃で120秒間の25サイクル、サーモサイクラー中でインキュベートした。サイクル後反応生成物を定法を用いてエタノール沈殿させ、洗浄し、ホルムアミドローディング緩衝液に再懸濁した。試料を、Applied Biosystemsモデル377装置又はMegaBACE 1000(Amersham Biosciences社)にローディングし、結果を標準ソフトウェア法を用いて分析した。
【0075】
上述の本発明の教示に接した当業者はその教示内容に様々な変更を施すことができる。かかる変更は特許請求の範囲に記載された本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】ピペリジンリンカーから誘導されるFRETカセットの合成法及びジデオキシヌクレオチシド−5‘−三リン酸の標識法の概略スキーム。
【図2】リンカー長の異なる様々な濃度のTAMRA標識ddATPを用いたときの800塩基でのシグナル強度のプロット。
【図3】FAM−Phe−TAMRA−11−ddATP(3F)、FAM−ピペリジン−TAMRA−11−ddATP(7)及びFAM−ピペリジン−TAMRA−18−ddATP(8)終止アンプリコンの単色電気泳動図。
【図4】リンカー長の異なる様々な濃度のROX標識ddCTPを用いたときの800塩基でのシグナル強度のプロット。
【図5】FAM−Phe−ROX−11−ddATP(4F)、FAM−ピペリジン−ROX−11−ddATP(10)及びFAM−ピペリジン−ROX−18−ddATP(11)終止アンプリコンの単色電気泳動図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式のエネルギー移動色素標識カセット。
【化1】

式中、Dはキサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素からなる群から選択されるドナー色素であり、
はH、C−C20アルキニルアミン、アルキノール、アルケンアミン、アルキルアミン、ケト及びチオールからなる群から選択される官能基であって、この基を介してDが共有結合しており、
、R、R及びRは独立にH、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、チオ、ニトロ、アミノ又はアルキルアミノ基を表し、
はC−C20アルキニルアミン、アルキノール、アルケンアミン、アルキルアミン、ケト及びチオールからなる群から選択されるアミンであって、この基を介してAが共有結合しており、
Xはアルデヒド、酸、酸クロライド、エステル、ヒドロキシメチル、CHO−メシレート、CHO−トリフレート、メルカプトメチレン、ホスホルアミダイトであるか、或いはアミン、チオール、ヒドロキシ又はハロアセチル含有生体分子と共有結合を形成し得る反応性基であり、
Aはキサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素からなる群から選択されるアクセプター色素であり、
AとDの位置は互いに交換可能である。
【請求項2】
次式のエネルギー移動色素標識化合物。
【化2】

式中、D、L、L、R、R、R、R及びAは請求項1で定義した通りであり、
は、生体分子Bと共有結合を形成し得るカルボン酸、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、酸クロライド、マレイミド、ヒドラジド又はスルホニルクロライドからなる群から選択される官能基であり、
Bはヌクレオシド、ヌクレオシド−一リン酸、二リン酸もしくは三リン酸、チオリン酸、アルケニル置換又はアルキニルアミノ置換ジデオキシヌクレオシド三リン酸、デオキシヌクレオシド三リン酸、ヌクレオシド三リン酸、アミノ酸、タンパク質又は修飾オリゴヌクレオチドからなる群から選択される生体分子であり、
AとDの位置は互いに交換可能である。
【請求項3】
次式のエネルギー移動色素及び色素標識化合物。
【化3】

式中、D、L、L、A、L及びBは請求項2で定義した通りであり、
ZはH、アルキレン、アルキル、アリル又はそれらの組合せであり、
AとDの位置は互いに交換可能である。
【請求項4】
Bがアルケニル置換又はアルキニルアミノ置換ヌクレオシド三リン酸又はオリゴヌクレオチドである、請求項2又は請求項3記載のエネルギー移動色素標識化合物。
【請求項5】
Bがアルケニル置換又はアルキニルアミノ置換ジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸である、請求項2又は請求項3記載のエネルギー移動色素標識化合物。
【請求項6】
がピリミジンのC5位に、又はアルキニル、アルケニルもしくは飽和側鎖を介して7−デアザプリンのC7位に結合している、請求項2又は請求項3記載のエネルギー移動色素標識化合物。
【請求項7】
D及びAが、5−カルボキシローダミン、6−カルボキシローダミン、5−カルボキシローダミン6G、6−カルボキシローダミン6G、N,N,N′,N′−テトラメチル−5−カルボキシローダミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−6−カルボキシローダミン、5−カルボキシ−X−ローダミン、6−カルボキシ−X−ローダミン、1−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−5,5′−ジスルホナト−カルボシアニン、1−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−4,5,4′、5′−(1,3−ジスルホナト)ジベンゾ−カルボシアニン、1−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−5、5′−ジスルホナト)ジベンゾ−ジカルボシアニン、1−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−4,5,4′、5′−(1,3−ジスルホナト)ジベンゾ−ジカルボシアニン、1−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−5,5′−(1,3−ジスルホナト)トリカルボシアニン又は関連色素からなる群から選択され、アクセプター色素Aが、ドナー色素Dからエネルギーを受け取ることができる、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のエネルギー移動色素標識化合物。
【請求項8】
DNA分子のヌクレオチド塩基配列を決定する方法であって、
DNA分子に該DNAとハイブリダイズし得るプライマー分子をアニールしたものを、熱安定DNAポリメラーゼと請求項2又は請求項3記載の化合物を含む容器中でインキュベートし、
上記インキュベーション反応のDNA生成物をサイズ分離し、もってDNA分子のヌクレオチド塩基配列の少なくとも一部を決定できるようにする
ことを含んでなる方法。
【請求項9】
請求項2又は請求項3の化合物とDNAポリメラーゼとを備えるDNA分析用キット。
【請求項10】
次式の化合物。
【化4】

式中、Aは請求項1記載のアクセプター色素であり、
BASEはシトシン、チミン、ウラシル、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノプリン、7−デアザプリン、7−デアザ−8−アザプリン及びこれらの同族体からなる群から選択され、
nは0〜3である。
【請求項11】
請求項10記載の化合物を備えるDNA配列決定用キット。
【請求項12】
DNAポリメラーゼをさらに備える請求項11記載のキット。
【請求項13】
請求項10記載の1種以上の化合物のヌクレオシド部分を含むデオキシリボ核酸配列。
【請求項14】
DNA分子のヌクレオチド塩基配列を決定する方法であって、
a)DNA分子に該DNA分子とハイブリダイズし得るプライマー分子をアニールしたものを、熱安定DNAポリメラーゼと請求項10記載の化合物を含む容器中でインキュベートし、
b)上記インキュベーション反応のDNA生成物をサイズ分離し、もってDNA分子のヌクレオチド塩基配列の少なくとも一部を決定できるようにする
ことを含んでなる方法。
【請求項15】
次式で表される請求項10記載の化合物。
【化5】

式中、BASEはアデニン、7−デアザ−アデニン、グアニン、7−デアザ−グアニン、ウラシル、シトシン、ヒポキサンチン及び7−デアザ−ヒポキサンチンからなる群から選択される。
【請求項16】
次式で表される請求項10記載の化合物。
【化6】

式中、BASEはアデニン、7−デアザ−アデニン、グアニン、7−デアザ−グアニン、ウラシル、シトシン、ヒポキサンチン及び7−デアザ−ヒポキサンチンからなる群から選択される。
【請求項17】
次式で表される請求項10記載の化合物。
【化7】

式中、BASEはアデニン、7−デアザ−アデニン、グアニン、7−デアザ−グアニン、ウラシル、シトシン、ヒポキサンチン及び7−デアザ−ヒポキサンチンからなる群から選択される。
【請求項18】
次式で表される請求項10記載の化合物。
【化8】

式中、BASEはアデニン、7−デアザ−アデニン、グアニン、7−デアザ−グアニン、ウラシル、シトシン、ヒポキサンチン及び7−デアザ−ヒポキサンチンからなる群から選択される。
【請求項19】
次式で表される請求項10記載の化合物。
【化9】

式中、BASEはアデニン、7−デアザ−アデニン、グアニン、7−デアザ−グアニン、ウラシル、シトシン、ヒポキサンチン及び7−デアザ−ヒポキサンチンからなる群から選択される。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−511581(P2006−511581A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563814(P2004−563814)
【出願日】平成15年12月17日(2003.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/040573
【国際公開番号】WO2004/059011
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(598041463)アマシャム・バイオサイエンス・コーポレイション (43)
【氏名又は名称原語表記】Amersham Biosciences Corp
【住所又は居所原語表記】800 Centennial Avenue, P.O.Box 1327,Piscataway,New Jersey 08855−1327,United States of America
【Fターム(参考)】