生体認証装置および方法
【課題】撮像された画像における、血管像の濃淡の違いを認証に用いる情報として抽出し、一枚の画像からより多くの生体情報を取得する。
【解決手段】生体から取得される血管パターンの特徴情報を用いて個人の認証を行うために用いられる個人認証装置であって、前記生体における認証対象となる領域を撮像する撮像部と、前記撮像された画像を認証画像として取得する演算部とを備え、前記演算部は前記認証画像から血管パターンを抽出し、当該血管パターンの濃淡の度合いを前記特徴情報として取得する。
【解決手段】生体から取得される血管パターンの特徴情報を用いて個人の認証を行うために用いられる個人認証装置であって、前記生体における認証対象となる領域を撮像する撮像部と、前記撮像された画像を認証画像として取得する演算部とを備え、前記演算部は前記認証画像から血管パターンを抽出し、当該血管パターンの濃淡の度合いを前記特徴情報として取得する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の生体情報、特に指静脈パターンを利用して個人を識別する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
個人情報や財産を安全に管理するためのセキュリティ技術に対する関心が高まる中、特に人間の生体情報を用いたバイオメトリクス認証が注目されている。
従来のバイオメトリクス認証技術として、指紋、虹彩、音声、顔、手の甲の静脈又は指静脈を用いる認証方式が知られている。特に、生体に照射した赤外光の血液中のヘモグロビンによる吸収を利用した静脈認証技術は、指に光を当てるだけで認証ができるため心理的抵抗感が低く、また生体の内部情報を利用しているため耐偽造性に優れるという特長を持つ。
【0003】
静脈認証は、様々な分野での応用が期待されており、入退や勤怠管理の分野では、複数拠点にまたがった大規模1―N認証のニーズが高まっている。また、金融分野においては、例えば指をかざすだけでカードの提示なしに買い物ができる、手ぶら決済での活用が注目されている。このような用途においては、数万から数百万人規模のユーザを正確に見分ける必要があり、今までの指静脈認証の水準を超える、高い精度が要求される。
【0004】
特許文献1には、認証に用いる指を複数本とすることで、一本で用いるときに比べ認証精度を向上させる方法が開示されている。また特許文献2には、複数のレンズを用いて画像を撮像し、血管の三次元構造を認証に用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-035560号公報
【特許文献2】特開2010-39534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、血管パターン画像を複数取得することで認証に用いる生体情報を増大させることは、演算処理や記憶媒体にとって大きな負荷となり得る。さらに生体情報を増大させることは、外光や認証を行う生体のコンディション等による環境変化により、本人一致率を低下させてしまうことも問題となり得る。また、複数の画像を取得して血管の三次元立体構造を形成することも、レンズアレイや複数の撮像装置等が必要となり部品数が多く、コスト増大やコンパクト化の妨げの原因となる可能性がある。さらに、不安定な3次元方向の血管情報や認証時の位置ずれ等が原因となり、本人一致率を低下させてしまうといった問題もある。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みて、血管画像抽出装置や個人認証装置において、撮像された画像における、血管像の濃淡の違いを認証に用いる情報として抽出し、一枚の画像からより多くの生体情報を取得することを第一の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一例としては、生体から取得される血管パターンの特徴情報を用いて個人の認証を行うために用いられる個人認証装置であって、 前記生体における認証対象となる領域を撮像する撮像部と、 前記撮像された画像を認証画像として取得する演算部とを備え、前記演算部は前記認証画像から血管パターンを抽出し、当該血管パターンの濃淡の度合いを前記特徴情報として取得することを特徴とする個人認証装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、撮像された血管パターンの濃淡の違いを用いて、一枚の画像からより多くの生体情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を実施する認証装置の一例。
【図2】本発明を実施する認証装置のシステム構成例。
【図3】本発明を実施する認証装置のシステム構成例。
【図4】本発明を実現する登録処理のフローチャートの一例。
【図5】一致率と出現頻度の関係図。
【図6】画質評価値と識別性評価値の関係図。
【図7】圧力値の変動における画質評価値の変動の一例。
【図8】本発明を実現する登録処理のフローチャートの一例。
【図9】本発明を実現する認証処理のフローチャートの一例。
【図10】指置きガイド部に弾性部材を備えた認証装置の構成例。
【図11】指置きガイド部及び指先ガイド部に弾性部材を備えた認証装置の構成例。
【図12】指置きガイド部と指先ガイド部が連動して沈み込む認証装置の構成例。
【図13】距離センサを備えた認証装置の構成例。
【図14】圧迫位置を撮像部から遠ざける認証装置の構成例。
【図15】指を正しい提示状態へガイドする登録画面の一例。
【図16】本発明を実現する認証処理のブロック図の一例。
【図17】輝度起伏情報の表現方法の一例。
【図18】認証に用いる指画像と特徴点および特徴量の一例。
【図19】血管が交差した場合の一例。
【図20】特徴点の基準点からの位置関係による血管識別の説明図。
【図21】光量制御を行う認証装置の構成例。
【図22】光量調節処理のフローチャートの一例。
【図23】光量調節処理におけるヒストグラムおよび血管画像の変化の一例。
【図24】遮光手段を設けた認証装置の一例。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。尚、本願実施例においては特に指の静脈認証装置について説明するが、図3に示すように掌等その他の生体を用いる個人認証装置であっても適応可能である。また、血管画像を抽出する装置である血管画像抽出装置においても本発明を適用できることは云うまでも無い。
【0012】
画像の濃淡から認証に用いる特徴情報を抽出するためには、より多くの血管情報が撮像されることが重要となる。しかしながら、例えば認証に使用する情報を登録した時と、後に改めて認証照合を行う時とでは、提示された生体部位の装置への押しつけの仕方や提示の仕方や外光量の違いなど、その時々での生体の環境変化により、再現性が不十分となることが問題である。
【0013】
本実施例では、このような問題に鑑みて、より精度の高い血管形状および血管の濃淡の情報を取得するための形態について説明する。
【0014】
図1は本発明を実現する個人認証装置の一例であり、図2は図1の個人認証装置の構成の概略図である。
【0015】
利用者は認証時に指1を認証装置2に提示する。このとき指1の先端は指先ガイド部5に置かれ、指1の根元側は指置きガイド部6に置かれる。指1が装置に提示されると図示しないタッチセンサ等の検知手段を用いて指を検知し、認証処理が開始される。指の検知には距離センサや温度センサなどその他のセンサを用いてもよい。
【0016】
認証装置2は側面からの断面図である。指置きガイド部6および指先ガイド部5の下部にそれぞれ提示する指の圧力検知を行う圧力検知部7−1、7−2を設ける。また、指置きガイド部6と圧力検知部7−2との間にばね等の弾性部材8を挟み込み、該指置きガイド部6は指との接触による圧力で下方に沈み込む。弾性部材8は、コイルバネや板バネ、ゴム部材など、圧力を緩和するものであれば何れでも良い。詳細は後述するが、この沈み込みによりガイド部へかけられる圧力を低減させることができる。尚、沈み込む方向は下方でなくても、押圧を低減させる方向であれば何れの方向でもよい。また、圧力検知部7−1,圧力検知部7−2の何れか一方のみを用いる形態でもよい。
【0017】
実施する装置が卓状のものであれば、生体が指をガイド部に載置する際、一般的に指は生体側の斜め上方からガイド部に押圧をかけて載置される。そのため弾性部材8が装置に対して真上方向からの圧力を緩和するように配置されていた場合、弾性部材8が緩和する圧力は垂直成分のみに留まり、水平成分の圧力を軽減させることができない可能性がある。
【0018】
本実施例において弾性部材8は図2及び図3のように、生体が装置に指を提示する際の進行方向からの押圧を緩和するよう、装置上方に対して生体側に斜め向きに配置されている。この形態により、弾性部材8はより大きな指からの圧力を受けることができるため、真上方向からの圧力を緩和する配置よりも、押圧をより緩和することができる。
認証は次の手順で実行される。光源3より指1の背側から赤外光が照射される。光は指1を透過し、指の認証対象領域が提示される指提示部9を通過し、赤外波長光のみ透過させる光学フィルタ10を透過して撮像装置4に到達する。光は撮像装置4により電気信号に変換され、画像入力部11を介し画像としてコンピュータ12に取り込まれる。取り込まれた画像は一度メモリ14に蓄えられる。そして、事前に登録されている指静脈画像(登録データ)を記憶装置15よりメモリ14に格納し、メモリ14に格納されたプログラムによりCPU16は登録画像と入力された画像との照合を行う。
【0019】
照合処理では比較する2枚の画像間の相関の値を算出し、その値に応じて登録されている画像と一致するかを判定する。この結果に応じて個人を認証し、正しく認証された場合は該認証システムの制御対象に対して認証時の処理を行う。また、指置きガイド部6および指先ガイド部5の下部に設けられた圧力検知部7−1,7−2が指を押し付けたときの圧力を検知し、検知された圧力値を用いて演算を行い、演算結果に基づいて表示部17またはスピーカー18を用いて利用者に圧力値を緩めたり、圧力値の変動を抑えたりするように促すことができる。表示部としてはディスプレイ、液晶、LEDランプなどを用いることができる。またスピーカー18から発する音としては音声、ビープ音などがある。
【0020】
認証のモードとして、全登録画像を対象に照合を行う1−N認証と、事前に利用者本人を識別するためにID番号を入力したり、ICカードをカードリーダーに提示し、ID番号やIC内のID情報に対応した登録画像のみを対象に照合を行う1−1認証のモードを設け、1−N認証モードでは指を装置に提示した直後に認証が開始されるが、1−1認証では入力手段19を用いてID番号を入力した後に指を提示し、認証を行う。
【0021】
また、CPUやメモリ、記憶装置、表示部等は、認証装置2とは別の端末等に格納しておくことも可能であることは言うまでもない。
【0022】
従来の個人認証装置では、利用者が指を再現よく提示できるようにするため、認証装置に指の位置を固定するためのガイド部を設置している。このガイド部に指を提示することで、撮影される静脈の画像の再現性が高くなり、高精度な認証が可能である。しかし、指を提示するときのガイド部と指の接触状態によっては、圧迫を受けて血流が止まり、血管パターンが部分的に欠落する可能性がある。さらに、指を反り返した状態で提示すると指の表皮の緊張によって血管が圧迫されて血管パターンが欠落する可能性もある。指を装置へ強く押し付けたり、反り返したりした状態で登録すると、血管パターンが欠損し、本来持っている血管パターンよりも情報が不足した状態で画像が登録されてしまう。また、押し付け圧力値や指の反り返りの程度は指の提示のたびに変化し、獲得される血管パターンが安定しないため、認証時の再現性が低下する。
【0023】
したがって、指静脈認証の高精度化のためには、指の押し付けや指の反り返り等による血管パターン欠損のない、全ての血管パターンを含む画像を登録すること、そして、認証時において提示する認証指の再現性を高めることが必要である。再現性を高めるために、ガイド部によって指の提示位置を固定しつつ、認証に用いる部分は装置に触れないようにし、血管パターンの欠損が生じないようにしている。
【0024】
本実施例における、認証に用いる登録データを登録処理するまでの一例を図4のフローチャートを用いて説明する。初めにステップS100にて装置に指が提示されたことを検知し、ステップS110で撮影された血管画像から初期画質評価値を計算する。画質評価値は、例えば、線分を強調するエッジ強調フィルタやマッチドフィルタを用いる方法、線成分を追跡することで線パターンを抽出する方法、画像の断面プロファイルにおける輝度値の局所的なくぼみ位置を抽出する方法などを用いて血管画素とそれ以外の画素に二値化して得られる血管パターンの含有率や、血管の屈曲領域や分岐領域といった特異性の高い領域の含有率などが挙げられる。この血管パターンの含有率は、血管画像を二値化して血管とそれ以外に分けた後に、画像中の全画素数に対する血管画素の比率で表すことができる。また、特異性の高い領域の含有率は、血管画像を血管が屈曲や分岐している特異な領域とそれ以外の領域に二値化した場合、画像中の全画素数と特異領域の画素数の比率で表すことができる。
【0025】
次にステップS120で表示部17などを通じて提示している指の圧力を緩めるように促し、ステップS130で再び画質評価値を計算する。そして、ステップS140において、圧力を緩める前後での画質評価値の増減量を計算し、画質評価値が増加した場合は更に圧力を緩めるように指示し、画質評価値が増加しなくなった場合はステップS150において、圧力値が変動しなくなったかどうかを調べる。圧力値が変動し、安定しない場合はステップS160において圧力値の変動を抑えるために指を静止させるように指示し、ステップS170において再び画質評価値を計算する。圧力値が変動しなくなった場合は、ステップS180において、画質評価値が閾値THを上回るかどうかを調べる。閾値THを下回る場合はステップS190において、別指の提示を指示し、上回る場合は、ステップS200で認証時に用いる登録データとして登録する。
【0026】
指提示検知には圧力センサを利用する他、温度センサや、距離センサ、光ドップラーを利用した血流センサなどを用いることで、生体判定を行いつつ、指の提示を検知することができる。
【0027】
画質評価値の閾値THの決定方法として、例えば、事前に大量の血管画像データベースが用意できるのであれば、このデータベースと識別性評価値を利用して画質評価値の閾値を決定することができる。識別性評価値は、ある指の静脈画像について、同一指と別の指の静脈画像とをどの程度精度良く区別することができるかを表す指標である。例えば、ある指の静脈画像を少なくとも1枚以上の同一指とそれ以外の別指静脈画像からなるN枚のデータベースと照合させるとする。
【0028】
図5(a)、(b)はある指1と指2をデータベースと照合したときの一致率を横軸、一致率の出現頻度を縦軸で表したグラフである。指1は血管パターンの再現性が高く、血管パターンが安定して取得できているとすると、同一指同士の一致率は高くなる。更に、指1は平均的な別指との一致率が低いとすると、指1は同一指と別指との一致率の間に大きな差が生じるため、識別性が高いということになる。逆に、指2は同一指同士の一致率が低く、平均的な別指との一致率が高いため、指2は同一指と別指との一致率の差が小さくなり、識別性が低いということになる。
【0029】
したがって、識別性評価値は具体的には、別指との一致率の平均が低いほど、識別性評価値が高くなるように決定する方法や、同一指との一致率と別指との一致率の平均の差の大きさを識別性評価値にする方法などがある。縦軸を識別性評価値、横軸を画質評価値としてデータベース内の全登録データをプロットすると識別性評価値の高い画像は血管の量が多く、血管が屈曲や分岐している特異領域も多く含むため、画質評価値も高くなり、図6のように右肩上がりに分布する。この分布から、どの程度の画質評価値であれば、同一指同士の一致度が高く別指同士の一致度が低くなるのか、つまり高い識別性を維持できるのかを統計的に知ることができる。確保しておきたい識別性評価値に対応する画質評価値を閾値として設定することで、新規に血管画像を登録する場合には、実際に認証実験を行うことなく、血管画像の画質評価値を計算し、閾値を超えた血管画像を登録するだけで、識別性の高い血管画像を登録することができる。
【0030】
指を装置に押し付けることによる血管パターンの欠損が発生している場合、利用者が圧力を緩めていくにつれて各圧力にて撮像される画像から抽出される血管パターンが増加していくため、それに伴い図7のグラフのように画質評価値も増加していく。もし、圧力値を考慮せず特徴量が予め設定しておいた値を超えた場合に血管画像の識別性能が保証されるとし、登録可能と判定する場合、図7(a)のグラフの圧力値2aで指を提示し続けても登録することができる。あるいは、圧力を緩めた後の画像の画質評価値と、圧力を緩める前以前の画像の画質評価値とを比較し、所定の変化率より低くなった場合を、識別性能の保障される登録可能値としてもよい。所定の変化率は例えば、事前実験において圧力を緩めて指を静止した状態に移行させる過程における画質評価値の変化率の最小値を多数の被験者について測定し、この変化率の最小値が最も大きい被験者の変化率を所定の変化率とすることができる。また、提示する人ごとに所定の変化率を決定することもできる。
【0031】
実際には圧力値2aでは血管パターンの欠損が発生しており、圧力値1aまで力を緩めなければ押し付けによる血管パターンの欠損をすべて解消することができない。利用者に画質評価値の増加がなくなるまで圧力を緩めさせることにより、指が持っている血管パターンの量によらず、指ごとに押し付けによる血管パターン欠損のない安定した血管画像を獲得することができる。
【0032】
特に、登録後に認証の基準となり、最も信憑性の高いデータであることが求められる登録データにおいては、図7(a)における圧力値1cよりも小さい圧力値であれば血管パターンの欠損がほぼ最小に等しい状態、つまり画質評価値が最大となるため、圧力値1cよりも小さい圧力値にて登録することが望ましい。圧力値1cは例えば、2フレーム前またはそれ以上前のフレームから圧力値が減少し続けているにも関わらず画像評価値が増加しなくなったときの圧力値として決定することができる。
【0033】
さらに、図7(a)のグラフにおける圧力値3aで指を提示したときの血管パターン欠損による画質評価値不足と、図7(b)のグラフにおける圧力値1bのように圧力を緩めた状態での画質評価値不足を区別することができる。したがって、血管パターン欠損による画質評価値不足に対しては圧力を緩めるように促すことで、画質評価値を増加させて登録可能な画像を作成し、圧力を緩めた状態でも画質評価値不足となるような元々血管パターンの少ない指に対しては、別指の再提示を促すなどの対処をすることで登録画像の識別性を高める。
【0034】
登録時に圧力値も記憶装置5に記録しておくことにより、1−1認証の場合は、表示部17等を通じて登録時と同じ圧力で指を提示するように促すことで再現性を向上させることができる。
【0035】
実施例1において、さらに認証精度を向上させる手段として、指が生体に接触し、指からの圧力と画質評価値との間に相関性が生じていることを保障するための接触検知手段を設けることが有効となる。詳細を実施例2にて説明する。
【実施例2】
【0036】
実施例1において、さらに接触検知手段を有した場合について、図8のフローチャートを用いて説明する。初めに、ステップS200において指の提示を検知し、ステップS210の画質評価値計算を行う。次に、ステップS220において画質評価値が閾値THを上回るかどうか調べ、上回る場合はステップS230において登録を行い、下回る場合は、ステップS240において、圧力値が閾値TH2を下回るかどうか調べる。圧力値の閾値TH2の決定法については上記の画質評価値の閾値THの一例と同様に、縦軸を識別性評価値、横軸を登録時の圧力値として、データベース内の全登録データをプロットし、統計的に識別性評価値が維持できる登録時の圧力値を決定することができる。閾値TH2を上回る場合は、ステップS250において圧力を緩めるように表示部17などで指示し、下回る場合はステップS260、S270において指の接触検知を行う。指が装置に触れていない場合はステップS280において装置に触れるように指示を行い、指が触れている場合はステップS290において別指の提示を指示する。
【0037】
指の接触検知について、指の装置に対する押し付けをなくし、画質評価値を増加させるために圧力を緩めるように指示するが、人によっては装置から手を離してしまう場合がある。この状態では血管パターンを安定して抽出できないだけでなく、画質評価値がかえって低くなり、登録できる程度の血管パターンを持っている指であっても、別指の提示を指示してしまう可能性がある。したがって、指浮き検知を行うことにより、圧力を緩めた状態で、かつ指を装置に触れた状態を維持することができるため、正確に別指の提示を指示するガイダンスを行うことが可能である。指浮きの検知手段としては圧力センサの出力値を用いるほか、距離センサや、画像処理を用いることができる。画像処理による指浮き検知は、指の輪郭の変化により検知する方法、血管パターンの変形により検知する方法などが考えられる。
【0038】
実施例1および2では、登録データを認証するまでのステップの一例を示したが、本発明は登録データと照合を行う認証データの精度を判定する際に用いることも可能である。一例を実施例3に示す。
【実施例3】
【0039】
本発明における認証処理の一例を図9を用いて説明する。まず、ステップS400において提示された指を検知し、ステップS410において初期画質評価値を計算する。次にステップS420において登録画像との照合を行う。1−N認証の場合は、N個の登録画像全てと照合を行い、1−1認証の場合は特定の一枚の登録画像と照合を行う。ステップS430において入力された血管画像と登録画像が一致するかどうかを判定し、一致する場合はステップS440において認証後の処理を行う。一致しない場合はステップS450において圧力を緩めるように指示し、ステップS460において再び画質評価値を計算する。ステップS470において画質評価値が増加しなくなったかを判断し、増加しなくなった場合は再び登録画像との照合を行う。
指置きガイド部6が弾性部材8の作用で下方へ沈み込むことにより、指にかかる圧力が緩和され、血管パターンの欠損が抑制できる。また指置きガイド部6が沈み込む方向は垂直でなくともよい。指先に向かう斜め前方へ沈み込むようにした場合、図10(a)のように指の根元が最初に指置きガイド部に触れたときは指が反り返っていても、図10(b)のように指置きガイド部が斜め前方に沈み込むことにより、垂直に沈み込む場合よりも指が曲がりやすくなり、反り返りによる血管パターンの欠損を防止することができる。また、弾性部材8は指先ガイド部と圧力検知部の間に挟み込んでもよい。図11(a)、(b)のように、指先ガイド部が指根元側の斜め下方に沈み込むことによって、より一層指が曲がりやすくなり、反り返りが起こりにくくなる。また、上述したように生体が装置に指を提示する際の進行方向からの押圧を緩和させることができることも、装置上方に対して生体側に斜め向きに配置されることにより得られる効果である。
【0040】
多数の被験者を集めて事前実験を行い、最も多い登録時の圧力値などを弾性部材8が沈み込み始める圧力値に設定し、利用者になるべく弾性部材8が沈み込まないように利用するように促すことで、登録中および認証中に特別な指示を必要とせずに、特定の圧力状態に誘導することができるため、再現性が向上する。あるいは、弾性部材8が沈み込む限界位置を多くの指において、反り返りも過剰な曲げも発生しなかった適正な位置に設定することで、最適な指の状態が再現しやすくなる。また、上記の適正位置よりも深く沈み込ませようとすると弾性部材8の反発力が変化し、適正位置より沈み込みにくくすることもできる。
【0041】
また、図12(a)、(b)のように指先ガイド部5と指置きガイド部6が連動して沈み込むようにしてもよい。
【0042】
図2の静脈認証装置は弾性部材8を用いなくてもよい。弾性部材8を利用しない場合は、指の反り返りが発生しやすくなる。しかし、弾性部材8以外の手段で指の反り返りを検知することができる。例えば、距離センサ等の距離検知部21を利用することで指とセンサの距離を測定することにより、指の反り返りを検知することができる。図13(a)、(b)のように指の腹側または背側の指の長軸方向に伸びる直線上における3点以上の距離測定点22−1、22−2、・・・、22−Nと距離センサ間の距離を測り、平面の物体を置いたときの測定距離とのずれから、指の反りや曲がりの状態、指浮きを検出することができる。距離センサとしては光学式や超音波式等を用いることができる。
また、圧力検知部7−1及び圧力検知部7−2は装置全体の下部に設けてもよい。圧力検知を指置きガイド部6と指先ガイド部5と装置下部の三か所に設けることで、装置全体にかかる圧力の内訳を知ることができる。したがって、登録時に圧力の内訳についても記録しておくことで1−1認証に際して再現性をより高めることができる。
【0043】
圧力を緩めるようにガイダンスしたとしても、指と装置が接触する以上少なからず圧迫が生じるため、血管パターンが欠損することがある。そのため、図14(a)よりも図14(b)のように指置きガイド部6および指先ガイド部5の指との接触位置を撮影装置4から遠ざけるように配置することで、押し付けによる血管パターン欠損の影響を低減する。
【0044】
図15は登録時に利用者の指の提示状態を表示し、正しい提示状態へガイドを行う登録画面の一例である。登録時は利用者のほとんどが認証装置に習熟していないため、指の提示方法をガイドする必要がある。指1の提示状態をモニタなどの表示部17に映し出し、利用者はこの表示部17を見ながら、ガイダンスに従い、指の提示状態を変化させる。
【0045】
表示部17に映し出される情報としては、圧力検知部7の出力値、画質評価値、指浮きの検知情報、指の曲がりの程度、指の反り返りの程度、弾性部材8の沈み込みの程度などである。指の提示状態に応じて、表示部17に映しだす情報をリアルタイムに切り替える。
【0046】
例えば、押し付けによる圧力が大きすぎる場合は、圧力値を表すインジケータと指を強く押し付けた状態のイメージ図またはアニメーションなどを併せて表示し、押し付けの圧力を緩めてください、などのガイダンス文を表示部17に表示する。指浮き、指の曲がり、指の反り返り、弾性部材8の沈み込みがある場合は、それぞれの状態のイメージ図またはアニメーションなどによって指の浮いた状態、指が曲がった状態、指が反り返った状態、弾性部材8が沈み込む状態を表現し、指を浮かせないでください、曲げないでください、反らさないでください、などのガイダンス文とともに表示部17に表示する。
これらの情報をもとに、利用者は指をどのように提示すれば良いかを知ることができる。
【0047】
また、正しく指の置き方を修正しているかどうかについて、インジケータを見ながら即時に確認することができる。利用者が画面のガイダンスに従い、正しく登録作業を行うことで、登録時に管理者が立ち会っていても発見しにくい、指の押し付けや指の浮きなどによる血管パターン欠損、血管パターン変化の問題を解消することができる。
【0048】
本発明における登録処理においては利用者が指示通りに指を提示したとしても、画質評価値が低い場合は別の指の提示を促すことがある。したがって、人によっては複数の指を提示することが考えられる。新たに提示した二本目以降の指の血管画像が最初の指よりも画質評価値が高くなるとも限らないため、複数の指の提示を促した場合は、撮影した血管画像の中でも最も画質評価値が高い指を登録する。また、全ての登録者に複数の指を提示するように促し、複数の指の中で最も血管画像の画質評価値が高い指を登録してもよい。全ての指の血管画像を登録しておいて、認証時に最も画質評価値の高い指を提示するように指示してもよい。
【0049】
このように画質評価値および圧力制御によって、より鮮明な血管パターンを撮像し、血管の情報をより多く抽出することで、血管の濃淡による情報をより精度よく抽出することができる。
【実施例4】
【0050】
実施例4では、認証用の画像として取得された画像の血管パターンの濃淡から特徴情報を抽出する手段について説明する。
【0051】
特徴点マッチング方式を利用した認証処理手順の一実施例について、図16の認証装置の処理ブロックを用いて説明する。初めにメモリ14に格納されている血管画像31を入力として、ステップS500で指の提示を検知する処理を行う。指の提示が検知されると、ステップS510において最も鮮明な血管画像が得られるように光源3の光量が調整される。これには、画像の平均輝度値を常に監視し、その値に応じて光量をフィードバック制御する手法、指静脈パターンの画像に対しパターンの鮮明度を判定する評価関数を施し、その結果を最適化するような光量調節を実施する手法、などを用いることができる。
【0052】
静脈パターンの鮮明度判定の例としては、抽出する血管量が多くなればなるほどパターンが鮮明であるとするように評価関数を決定することができる。
【0053】
次に、ステップS520の前処理を行う。撮影された血管画像は指表面の荒れや、しわなどの血管以外のノイズを多く含み、必ずしも血管が鮮明に映し出されている訳ではない。そこで、血管のみを強調し、ノイズを抑制する処理が必要である。前処理としては、エッジ保持平滑化フィルタリングやアンシャープマスキングなどの手法を用いることができる。前処理後、ステップS530において血管が強調された画像から直接、特徴点51を検出する。図17(a),(b)はある血管画像上の3点41−1、41−2、41−3と、この3点をつなぐ直線上の輝度プロファイルのイメージ図を表している。
【0054】
特徴点の検出は、例えば、図17(a)のような血管画像上における直線上の3点以上の輝度値の高低差により表現できる曲率や角度、2点間の輝度の差分により表現できる勾配などの輝度の起伏を利用する。以下、当該輝度の差分による情報を輝度起伏情報と称して説明する。図18(a)のような一枚の血管の濃淡画像から輝度の起伏形状が安定、かつ特異的である血管中の分岐点や屈曲点を輝度勾配や、輝度曲率などを用いることによって検出する。その後、ステップS540で検出した特徴点51から特徴量を抽出する。輝度勾配や輝度曲率等を特徴点51の周辺の輝度起伏情報として特徴量化する方法、特徴点51の周辺の輝度起伏情報と特徴点周りの血管の血流方向を併せて特徴量化する方法などを用いることができる。特徴点51の周辺の輝度起伏情報を特徴量化する方法の一例としては、特徴点51を中心とするD画素×D画素の正方形領域を3×3の9領域に分割し、領域ごとに作成した8方向の輝度方向ヒストグラム(図16(b))を特徴量とする方法がある。ひとつの特徴点の持つ特徴量は特徴点51の位置情報および72次元の輝度起伏情報となる。9領域それぞれの輝度勾配ヒストグラムは、各領域の中心に位置する基準画素52を基準として距離dだけ離れた8方向それぞれの参照画素53との輝度値の差分を勾配として計算することにより得る。
【0055】
最後に、ステップS550の特徴量照合処理を行う。登録画像の全特徴点と照合画像の全特徴点を総当たりで比較していき対応付けを行う。最も特徴量の近い特徴点同士の特徴量の類似度が予め設定した閾値を上回る場合に対応付けを行う。登録画像と照合画像の全特徴点数と対応付けられた特徴点数の比率を一致率とし、一致率が事前に設定した閾値を上回る場合に、両画像の指が同一人物であると判定する。
【0056】
登録画像と入力画像の特徴点の対応付けによって得られる各対応点と対となる座標の位置関係を利用することで照合する画像間での正確な位置合わせを行うことができる。画像平面上での回転移動や平行移動だけでなく、三次元的な幾何歪みを補正し、位置合わせを行った後に、テンプレートマッチング方式などの特徴点マッチング以外の手法によって照合を行うことにより、特徴点マッチング方式またはテンプレートマッチング方式を単体で用いて照合するよりも同じ指の静脈画像の一致率を高めることができる。
【0057】
指を提示する際の自由度が大きく、使い勝手のよい高い利便性を備えた認証装置では、指の位置ずれやロールが発生しやすく、提示する指の再現性が低くなってしまう。したがって、テンプレートマッチング方式などの血管の有無のみを表す血管パターンを用いた照合方法では、指の提示位置のずれが大きくなると、照合する画像間で一致する領域が狭まり、個人を識別するための情報が不足し、認証精度が低下してしまう。したがって、照合する画像間の一致する領域が狭い場合でも、血管の有無のみを表す血管パターンなどの従来の情報よりも多くの情報を利用することにより、認証精度を高く維持することができる。
【0058】
図19(a)と(b)のような2本の血管が交差している2つの血管画像は、血管とそれ以外を2値で表す血管パターンでは同一な血管として判断し、区別ができない。しかし、輝度起伏による濃淡の深さ情報を用いることによって、交差する2本の血管の前後関係を把握することができ、図19(a)と(b)は異なる血管として区別することが可能である。従って、図19(a)においては、5点61a、62a、63a、64a、65aのうち同じ血管上にある63a、61a、65aの3点が近い輝度となり、その後方を走っている血管上の62a、64aの2点が近い輝度となる。図19(b)においては、2本の血管の前後が逆になるため、62b、61b、64bの3点が近い輝度、63b、65bの2点が近い輝度になるという特徴を持つ。そのため、血管が交差している領域は他の領域に比べ特異性が高く、より多くの特徴情報を有しているため識別性も高い。したがって、血管の交差領域を多く含む指を優先して登録し、照合の際は交差領域の特徴量に大きく重みづけをした上で照合し、交差領域の特徴量を優先的に照合していくことにより、認証精度の高精度化と認証の高速化の両方を実現できる。また、血管の情報だけでなく、指の表面に存在する指紋やしわ等の情報を併せて特徴量とすることで、より識別性を高めることができる。例えば、上記の手法を用いて血管上の分岐点や屈曲点から特徴点を検出した後、特徴点の周辺の血管の輝度勾配情報だけでなく、特徴点の検出位置に対応する指表面上の点の周辺における指表面の指紋情報としわ情報を特徴量とする方法などが考えられる。
さらに、抽出した特徴点を比較し、各特徴点が血管パターンの奥行き方向について、各特徴点の位置関係を識別することができる。
【0059】
たとえば、図20(a)に示すような2種類の血管について、それぞれの血管上に同じ特徴情報を有する特徴点A〜Bが存在していたとする。このような場合、二つの血管のAとA、BとB、CとCの特徴情報をそれぞれ比較しただけでは、二つの血管は同一の血管であると判断されてしまう。そこで、図20(b)のように、画像の輝度に所定の基準値を設け、当該輝度と各特徴点の輝度とを比較することにより、各特徴点どうしの輝度値の関係、つまりは画像平面に撮像された血管の奥行き方向の形状に関する情報を取得することができ,図20(a)における2本の血管を識別することが可能となる。
【0060】
さらに、光源の照射強度や光源の位置等に依存せず、常に同じ位置に検出される特徴的な点を静脈画像の血管上から輝度起伏情報(最小曲率など)を利用して複数抽出し、抽出した特徴点同士をつなげながら血管パターンの輝度起伏構造を再構築することが可能となる。
【0061】
この再構築した奥行き方向の血管形状を、二次元でのテンプレートマッチングと同様に認証に用いることで、特徴情報の一つ一つを比較する場合に比べて、格段に演算負荷を軽減させることが可能となる。
【0062】
また、再構築した血管形状は奥行き情報の安定している特徴点から生成されているため、撮像された画像から直接的に三次元立体構造を構築する場合と比較して、安定かつ認証精度の高い血管パターンとすることができる。
再構築の際には、輝度が極端に明るい/暗い領域の輝度起伏を所望の明るさの輝度起伏状態を推定し、補正することで、光源の照射強度の変化に対応することができる。
また、光源の位置が異なれば、静脈画像の全体的な輝度傾斜が変化するが、この輝度傾斜から指と光源の相対的な位置を推定し、輝度傾斜が平たんになるように補正することで、光源の位置の変化に対応することができる。
本実施例において説明した特徴点マッチング方式による指静脈認証方法を方式Aとし、従来のテンプレートマッチング方式を用いた認証方式などを方式Bとした場合、方式AとBの認証結果を統合して、最終的な認証結果とすることで、より高い認証精度を実現することができる。
【0063】
実施例4の処理を単独にて行うことも可能であるが、実施例1にて説明した画質評価値を用いて、撮像された画像に実施例1の処理を行い、十分な血管パターンが撮像されていると判断された画像を認証画像として用いることにより、認証に用いる画像を構成する画素の輝度差がより鮮明となり、より精度の高い輝度起伏情報を得ることで認証精度を向上させることができる。
【0064】
輝度起伏情報をより多く、より正確に取得するためには、光源から照射される光量をより精密に制御することが有効であり、認証精度をさらに向上させることができる。また実施例1及び2にて示した画質評価値を抽出する上でも、光量がより適切に制御されることにより鮮明な血管パターン画像および精度の高い含有率とすることが可能である。光量を適切に制御する方法の一例を実施例5に示す。
【実施例5】
【0065】
本実施例は図21のように提示する指の上部を開放的にし、利用者に圧迫感を感じさせない装置形状である。装置の制約上、指先の斜め前方に配置した二つの光源で指全体を照射する。
【0066】
光源からの照射光量が大きく、白飛びなどの輝度飽和が生じる場合、輝度飽和領域は起伏情報が失われているため、輝度起伏を用いる認証方式においては輝度飽和の存在は望ましくない。しかし、照射強度が弱く、光量が不足すると、輝度むらが生じ、血管画像が全体的に暗くなり、鮮明な血管画像が得られない。したがって、特に、輝度起伏を利用する認証方式に対しては、輝度飽和がなく、輝度むらもない鮮明な血管画像の取得が望ましい。実施例4における輝度起伏情報を多く、かつ正確に取得することにもこのような制御が有効となる。
【0067】
図22は二段階光量調節のフローチャートの一例である。まず初めにステップS600において初期光量を点灯する。次にステップS610、S620において複数の光源3の光量比率を初期光量の比率で固定して照射強度を変化させ、最適照射強度を決定する。最適照射強度とは、ある光量比率の下での輝度飽和が発生しない限界まで明るくした照射強度を表す。初期光量の光量比率の決め方は例えば、予め複数の指に対して光量制御実験を行い、最も多くの指で最適として設定された光量比率を選択するなどの方法で決定することができる。光量比率を固定して照射強度を変えると、血管画像の輝度ヒストグラムは形状を保持したままシフトする(図23(a)における状態1から状態2への推移)。一度、ある適当な照射強度で照射することにより、照射強度とヒストグラムの位置の相関を求め、最適照射強度を推定することができる。次に、ステップS630において最適照射強度のもとで、予め決定しておいた数パターンの異なる光量比率で複数光源を点灯させ、ステップS640において画像全体が一様に明るくなるように最適光量比率を決定する。最適光量比率は、輝度ヒストグラムのまとまりの良さを示す指標に基づき決定する。例えば、指標を輝度分散とした場合、分散が小さくなるにつれてヒストグラムは平均輝度からの裾野が小さくなるため、分散が最小となる光量比率を最適光量比率とする(図23(b)における状態2から状態3への推移)。
【0068】
図21の装置構造における光源の配置では、指根元側を照射しようとする指根元光源の照射範囲71と指先側を照射しようとする指先光源の照射範囲72が重なり合う領域73が存在し、その領域は指の太さや長さによって変化する。そのため、各光源を独立に制御した場合、輝度飽和領域や、光量不足による暗い領域ができ、輝度むらが発生してしまうことがある。したがって、輝度飽和の発生しない最適照射強度および指全体をむらなく一様に明るくする最適光量比率を同時に決定する必要がある。
【0069】
最初に最適照射強度と最適光量比率のどちらか一方を決定してから、もう一方を決定する二段階の光量制御方式を行うことで指の太さや長さによらず、輝度むらや輝度飽和のない鮮明な血管画像を獲得することが可能となる。本実施例においては、最適照射強度を求めてから、最適照射強度のもとで最適光量比率を求めたが、最適光量比率を求めてから、最適光量比率のもとで最適照射強度を求めてもよい。また、必ずしも二段階を経て光量調節を行う必要はなく、照射強度と光量比率を同時に変化させて最適照射強度と最適光量比率を決定し、光量調節を行ってもよい。
【0070】
本実施例は、実施例1から4に示した方法等と組み合わせれば、より精度の高い画質評価値及び輝度起伏情報を得ることができ、より高い認証精度を得ることができるが、本実施例のみによる単独の手法として実施することも可能である。
【0071】
本実施例を実施するにあたり、複数の光源の各間に照射範囲の重なりを防止する遮光部を設けることで、より精度が高く効率的な光高度及び光量比率を設定することが可能である。一例として実施例6に示す。
【実施例6】
【0072】
図24(a)は、複数光源の照射範囲の重なりを防止するための遮光部81を設けた個人認証装置の入力インターフェースの一構成例である。図24(a)、(b)、(c)は入力インターフェースの側面図である。
【0073】
図21のように2光源の照射範囲が重なってしまう場合、図24(a)のように指根元側を照射する光源の照射光の一部を遮光部81が遮ることにより、照射範囲の重なりがなくなり、光源同士の相互関係を考慮する必要がなくなるため、複数光源を独立に制御することが可能になる。
しかし、図24(b)のように遮光部81を設置したために、指の大きさによっては指全体に照射範囲が行き渡らない場合がある。そこで、図24(c)のように遮光部81を可動式にすることによって、指の大きさの個人差に対応し、指全体を明るく照射することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
血管パターンを用いた個人認証装置、血管パターン抽出装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1・・・指、2・・・認証装置、3・・・光源、4・・・撮像部、5・・・指先ガイド部、6・・・指置きガイド部、7・・・圧力検知部、8・・・弾性部材、9・・・指提示部、10・・・遮光フィルタ、11・・・画像入力部、12・・・コンピュータ、13・・・インターフェース、14・・・メモリ、15・・・記憶装置、16・・・CPU、17・・・表示部、18・・・スピーカー、19・・・入力部 、21・・・距離検知部、22・・・距離測定点、41・・・血管画像中の画素、31・・・血管画像、51・・・特徴点、52・・・基準画素、53・・・参照画素、71・・・指根元光源の照射範囲、72・・・指先光源の照射範囲、73・・・光量の重なり領域、81・・・遮光部
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の生体情報、特に指静脈パターンを利用して個人を識別する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
個人情報や財産を安全に管理するためのセキュリティ技術に対する関心が高まる中、特に人間の生体情報を用いたバイオメトリクス認証が注目されている。
従来のバイオメトリクス認証技術として、指紋、虹彩、音声、顔、手の甲の静脈又は指静脈を用いる認証方式が知られている。特に、生体に照射した赤外光の血液中のヘモグロビンによる吸収を利用した静脈認証技術は、指に光を当てるだけで認証ができるため心理的抵抗感が低く、また生体の内部情報を利用しているため耐偽造性に優れるという特長を持つ。
【0003】
静脈認証は、様々な分野での応用が期待されており、入退や勤怠管理の分野では、複数拠点にまたがった大規模1―N認証のニーズが高まっている。また、金融分野においては、例えば指をかざすだけでカードの提示なしに買い物ができる、手ぶら決済での活用が注目されている。このような用途においては、数万から数百万人規模のユーザを正確に見分ける必要があり、今までの指静脈認証の水準を超える、高い精度が要求される。
【0004】
特許文献1には、認証に用いる指を複数本とすることで、一本で用いるときに比べ認証精度を向上させる方法が開示されている。また特許文献2には、複数のレンズを用いて画像を撮像し、血管の三次元構造を認証に用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-035560号公報
【特許文献2】特開2010-39534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、血管パターン画像を複数取得することで認証に用いる生体情報を増大させることは、演算処理や記憶媒体にとって大きな負荷となり得る。さらに生体情報を増大させることは、外光や認証を行う生体のコンディション等による環境変化により、本人一致率を低下させてしまうことも問題となり得る。また、複数の画像を取得して血管の三次元立体構造を形成することも、レンズアレイや複数の撮像装置等が必要となり部品数が多く、コスト増大やコンパクト化の妨げの原因となる可能性がある。さらに、不安定な3次元方向の血管情報や認証時の位置ずれ等が原因となり、本人一致率を低下させてしまうといった問題もある。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みて、血管画像抽出装置や個人認証装置において、撮像された画像における、血管像の濃淡の違いを認証に用いる情報として抽出し、一枚の画像からより多くの生体情報を取得することを第一の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一例としては、生体から取得される血管パターンの特徴情報を用いて個人の認証を行うために用いられる個人認証装置であって、 前記生体における認証対象となる領域を撮像する撮像部と、 前記撮像された画像を認証画像として取得する演算部とを備え、前記演算部は前記認証画像から血管パターンを抽出し、当該血管パターンの濃淡の度合いを前記特徴情報として取得することを特徴とする個人認証装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、撮像された血管パターンの濃淡の違いを用いて、一枚の画像からより多くの生体情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を実施する認証装置の一例。
【図2】本発明を実施する認証装置のシステム構成例。
【図3】本発明を実施する認証装置のシステム構成例。
【図4】本発明を実現する登録処理のフローチャートの一例。
【図5】一致率と出現頻度の関係図。
【図6】画質評価値と識別性評価値の関係図。
【図7】圧力値の変動における画質評価値の変動の一例。
【図8】本発明を実現する登録処理のフローチャートの一例。
【図9】本発明を実現する認証処理のフローチャートの一例。
【図10】指置きガイド部に弾性部材を備えた認証装置の構成例。
【図11】指置きガイド部及び指先ガイド部に弾性部材を備えた認証装置の構成例。
【図12】指置きガイド部と指先ガイド部が連動して沈み込む認証装置の構成例。
【図13】距離センサを備えた認証装置の構成例。
【図14】圧迫位置を撮像部から遠ざける認証装置の構成例。
【図15】指を正しい提示状態へガイドする登録画面の一例。
【図16】本発明を実現する認証処理のブロック図の一例。
【図17】輝度起伏情報の表現方法の一例。
【図18】認証に用いる指画像と特徴点および特徴量の一例。
【図19】血管が交差した場合の一例。
【図20】特徴点の基準点からの位置関係による血管識別の説明図。
【図21】光量制御を行う認証装置の構成例。
【図22】光量調節処理のフローチャートの一例。
【図23】光量調節処理におけるヒストグラムおよび血管画像の変化の一例。
【図24】遮光手段を設けた認証装置の一例。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。尚、本願実施例においては特に指の静脈認証装置について説明するが、図3に示すように掌等その他の生体を用いる個人認証装置であっても適応可能である。また、血管画像を抽出する装置である血管画像抽出装置においても本発明を適用できることは云うまでも無い。
【0012】
画像の濃淡から認証に用いる特徴情報を抽出するためには、より多くの血管情報が撮像されることが重要となる。しかしながら、例えば認証に使用する情報を登録した時と、後に改めて認証照合を行う時とでは、提示された生体部位の装置への押しつけの仕方や提示の仕方や外光量の違いなど、その時々での生体の環境変化により、再現性が不十分となることが問題である。
【0013】
本実施例では、このような問題に鑑みて、より精度の高い血管形状および血管の濃淡の情報を取得するための形態について説明する。
【0014】
図1は本発明を実現する個人認証装置の一例であり、図2は図1の個人認証装置の構成の概略図である。
【0015】
利用者は認証時に指1を認証装置2に提示する。このとき指1の先端は指先ガイド部5に置かれ、指1の根元側は指置きガイド部6に置かれる。指1が装置に提示されると図示しないタッチセンサ等の検知手段を用いて指を検知し、認証処理が開始される。指の検知には距離センサや温度センサなどその他のセンサを用いてもよい。
【0016】
認証装置2は側面からの断面図である。指置きガイド部6および指先ガイド部5の下部にそれぞれ提示する指の圧力検知を行う圧力検知部7−1、7−2を設ける。また、指置きガイド部6と圧力検知部7−2との間にばね等の弾性部材8を挟み込み、該指置きガイド部6は指との接触による圧力で下方に沈み込む。弾性部材8は、コイルバネや板バネ、ゴム部材など、圧力を緩和するものであれば何れでも良い。詳細は後述するが、この沈み込みによりガイド部へかけられる圧力を低減させることができる。尚、沈み込む方向は下方でなくても、押圧を低減させる方向であれば何れの方向でもよい。また、圧力検知部7−1,圧力検知部7−2の何れか一方のみを用いる形態でもよい。
【0017】
実施する装置が卓状のものであれば、生体が指をガイド部に載置する際、一般的に指は生体側の斜め上方からガイド部に押圧をかけて載置される。そのため弾性部材8が装置に対して真上方向からの圧力を緩和するように配置されていた場合、弾性部材8が緩和する圧力は垂直成分のみに留まり、水平成分の圧力を軽減させることができない可能性がある。
【0018】
本実施例において弾性部材8は図2及び図3のように、生体が装置に指を提示する際の進行方向からの押圧を緩和するよう、装置上方に対して生体側に斜め向きに配置されている。この形態により、弾性部材8はより大きな指からの圧力を受けることができるため、真上方向からの圧力を緩和する配置よりも、押圧をより緩和することができる。
認証は次の手順で実行される。光源3より指1の背側から赤外光が照射される。光は指1を透過し、指の認証対象領域が提示される指提示部9を通過し、赤外波長光のみ透過させる光学フィルタ10を透過して撮像装置4に到達する。光は撮像装置4により電気信号に変換され、画像入力部11を介し画像としてコンピュータ12に取り込まれる。取り込まれた画像は一度メモリ14に蓄えられる。そして、事前に登録されている指静脈画像(登録データ)を記憶装置15よりメモリ14に格納し、メモリ14に格納されたプログラムによりCPU16は登録画像と入力された画像との照合を行う。
【0019】
照合処理では比較する2枚の画像間の相関の値を算出し、その値に応じて登録されている画像と一致するかを判定する。この結果に応じて個人を認証し、正しく認証された場合は該認証システムの制御対象に対して認証時の処理を行う。また、指置きガイド部6および指先ガイド部5の下部に設けられた圧力検知部7−1,7−2が指を押し付けたときの圧力を検知し、検知された圧力値を用いて演算を行い、演算結果に基づいて表示部17またはスピーカー18を用いて利用者に圧力値を緩めたり、圧力値の変動を抑えたりするように促すことができる。表示部としてはディスプレイ、液晶、LEDランプなどを用いることができる。またスピーカー18から発する音としては音声、ビープ音などがある。
【0020】
認証のモードとして、全登録画像を対象に照合を行う1−N認証と、事前に利用者本人を識別するためにID番号を入力したり、ICカードをカードリーダーに提示し、ID番号やIC内のID情報に対応した登録画像のみを対象に照合を行う1−1認証のモードを設け、1−N認証モードでは指を装置に提示した直後に認証が開始されるが、1−1認証では入力手段19を用いてID番号を入力した後に指を提示し、認証を行う。
【0021】
また、CPUやメモリ、記憶装置、表示部等は、認証装置2とは別の端末等に格納しておくことも可能であることは言うまでもない。
【0022】
従来の個人認証装置では、利用者が指を再現よく提示できるようにするため、認証装置に指の位置を固定するためのガイド部を設置している。このガイド部に指を提示することで、撮影される静脈の画像の再現性が高くなり、高精度な認証が可能である。しかし、指を提示するときのガイド部と指の接触状態によっては、圧迫を受けて血流が止まり、血管パターンが部分的に欠落する可能性がある。さらに、指を反り返した状態で提示すると指の表皮の緊張によって血管が圧迫されて血管パターンが欠落する可能性もある。指を装置へ強く押し付けたり、反り返したりした状態で登録すると、血管パターンが欠損し、本来持っている血管パターンよりも情報が不足した状態で画像が登録されてしまう。また、押し付け圧力値や指の反り返りの程度は指の提示のたびに変化し、獲得される血管パターンが安定しないため、認証時の再現性が低下する。
【0023】
したがって、指静脈認証の高精度化のためには、指の押し付けや指の反り返り等による血管パターン欠損のない、全ての血管パターンを含む画像を登録すること、そして、認証時において提示する認証指の再現性を高めることが必要である。再現性を高めるために、ガイド部によって指の提示位置を固定しつつ、認証に用いる部分は装置に触れないようにし、血管パターンの欠損が生じないようにしている。
【0024】
本実施例における、認証に用いる登録データを登録処理するまでの一例を図4のフローチャートを用いて説明する。初めにステップS100にて装置に指が提示されたことを検知し、ステップS110で撮影された血管画像から初期画質評価値を計算する。画質評価値は、例えば、線分を強調するエッジ強調フィルタやマッチドフィルタを用いる方法、線成分を追跡することで線パターンを抽出する方法、画像の断面プロファイルにおける輝度値の局所的なくぼみ位置を抽出する方法などを用いて血管画素とそれ以外の画素に二値化して得られる血管パターンの含有率や、血管の屈曲領域や分岐領域といった特異性の高い領域の含有率などが挙げられる。この血管パターンの含有率は、血管画像を二値化して血管とそれ以外に分けた後に、画像中の全画素数に対する血管画素の比率で表すことができる。また、特異性の高い領域の含有率は、血管画像を血管が屈曲や分岐している特異な領域とそれ以外の領域に二値化した場合、画像中の全画素数と特異領域の画素数の比率で表すことができる。
【0025】
次にステップS120で表示部17などを通じて提示している指の圧力を緩めるように促し、ステップS130で再び画質評価値を計算する。そして、ステップS140において、圧力を緩める前後での画質評価値の増減量を計算し、画質評価値が増加した場合は更に圧力を緩めるように指示し、画質評価値が増加しなくなった場合はステップS150において、圧力値が変動しなくなったかどうかを調べる。圧力値が変動し、安定しない場合はステップS160において圧力値の変動を抑えるために指を静止させるように指示し、ステップS170において再び画質評価値を計算する。圧力値が変動しなくなった場合は、ステップS180において、画質評価値が閾値THを上回るかどうかを調べる。閾値THを下回る場合はステップS190において、別指の提示を指示し、上回る場合は、ステップS200で認証時に用いる登録データとして登録する。
【0026】
指提示検知には圧力センサを利用する他、温度センサや、距離センサ、光ドップラーを利用した血流センサなどを用いることで、生体判定を行いつつ、指の提示を検知することができる。
【0027】
画質評価値の閾値THの決定方法として、例えば、事前に大量の血管画像データベースが用意できるのであれば、このデータベースと識別性評価値を利用して画質評価値の閾値を決定することができる。識別性評価値は、ある指の静脈画像について、同一指と別の指の静脈画像とをどの程度精度良く区別することができるかを表す指標である。例えば、ある指の静脈画像を少なくとも1枚以上の同一指とそれ以外の別指静脈画像からなるN枚のデータベースと照合させるとする。
【0028】
図5(a)、(b)はある指1と指2をデータベースと照合したときの一致率を横軸、一致率の出現頻度を縦軸で表したグラフである。指1は血管パターンの再現性が高く、血管パターンが安定して取得できているとすると、同一指同士の一致率は高くなる。更に、指1は平均的な別指との一致率が低いとすると、指1は同一指と別指との一致率の間に大きな差が生じるため、識別性が高いということになる。逆に、指2は同一指同士の一致率が低く、平均的な別指との一致率が高いため、指2は同一指と別指との一致率の差が小さくなり、識別性が低いということになる。
【0029】
したがって、識別性評価値は具体的には、別指との一致率の平均が低いほど、識別性評価値が高くなるように決定する方法や、同一指との一致率と別指との一致率の平均の差の大きさを識別性評価値にする方法などがある。縦軸を識別性評価値、横軸を画質評価値としてデータベース内の全登録データをプロットすると識別性評価値の高い画像は血管の量が多く、血管が屈曲や分岐している特異領域も多く含むため、画質評価値も高くなり、図6のように右肩上がりに分布する。この分布から、どの程度の画質評価値であれば、同一指同士の一致度が高く別指同士の一致度が低くなるのか、つまり高い識別性を維持できるのかを統計的に知ることができる。確保しておきたい識別性評価値に対応する画質評価値を閾値として設定することで、新規に血管画像を登録する場合には、実際に認証実験を行うことなく、血管画像の画質評価値を計算し、閾値を超えた血管画像を登録するだけで、識別性の高い血管画像を登録することができる。
【0030】
指を装置に押し付けることによる血管パターンの欠損が発生している場合、利用者が圧力を緩めていくにつれて各圧力にて撮像される画像から抽出される血管パターンが増加していくため、それに伴い図7のグラフのように画質評価値も増加していく。もし、圧力値を考慮せず特徴量が予め設定しておいた値を超えた場合に血管画像の識別性能が保証されるとし、登録可能と判定する場合、図7(a)のグラフの圧力値2aで指を提示し続けても登録することができる。あるいは、圧力を緩めた後の画像の画質評価値と、圧力を緩める前以前の画像の画質評価値とを比較し、所定の変化率より低くなった場合を、識別性能の保障される登録可能値としてもよい。所定の変化率は例えば、事前実験において圧力を緩めて指を静止した状態に移行させる過程における画質評価値の変化率の最小値を多数の被験者について測定し、この変化率の最小値が最も大きい被験者の変化率を所定の変化率とすることができる。また、提示する人ごとに所定の変化率を決定することもできる。
【0031】
実際には圧力値2aでは血管パターンの欠損が発生しており、圧力値1aまで力を緩めなければ押し付けによる血管パターンの欠損をすべて解消することができない。利用者に画質評価値の増加がなくなるまで圧力を緩めさせることにより、指が持っている血管パターンの量によらず、指ごとに押し付けによる血管パターン欠損のない安定した血管画像を獲得することができる。
【0032】
特に、登録後に認証の基準となり、最も信憑性の高いデータであることが求められる登録データにおいては、図7(a)における圧力値1cよりも小さい圧力値であれば血管パターンの欠損がほぼ最小に等しい状態、つまり画質評価値が最大となるため、圧力値1cよりも小さい圧力値にて登録することが望ましい。圧力値1cは例えば、2フレーム前またはそれ以上前のフレームから圧力値が減少し続けているにも関わらず画像評価値が増加しなくなったときの圧力値として決定することができる。
【0033】
さらに、図7(a)のグラフにおける圧力値3aで指を提示したときの血管パターン欠損による画質評価値不足と、図7(b)のグラフにおける圧力値1bのように圧力を緩めた状態での画質評価値不足を区別することができる。したがって、血管パターン欠損による画質評価値不足に対しては圧力を緩めるように促すことで、画質評価値を増加させて登録可能な画像を作成し、圧力を緩めた状態でも画質評価値不足となるような元々血管パターンの少ない指に対しては、別指の再提示を促すなどの対処をすることで登録画像の識別性を高める。
【0034】
登録時に圧力値も記憶装置5に記録しておくことにより、1−1認証の場合は、表示部17等を通じて登録時と同じ圧力で指を提示するように促すことで再現性を向上させることができる。
【0035】
実施例1において、さらに認証精度を向上させる手段として、指が生体に接触し、指からの圧力と画質評価値との間に相関性が生じていることを保障するための接触検知手段を設けることが有効となる。詳細を実施例2にて説明する。
【実施例2】
【0036】
実施例1において、さらに接触検知手段を有した場合について、図8のフローチャートを用いて説明する。初めに、ステップS200において指の提示を検知し、ステップS210の画質評価値計算を行う。次に、ステップS220において画質評価値が閾値THを上回るかどうか調べ、上回る場合はステップS230において登録を行い、下回る場合は、ステップS240において、圧力値が閾値TH2を下回るかどうか調べる。圧力値の閾値TH2の決定法については上記の画質評価値の閾値THの一例と同様に、縦軸を識別性評価値、横軸を登録時の圧力値として、データベース内の全登録データをプロットし、統計的に識別性評価値が維持できる登録時の圧力値を決定することができる。閾値TH2を上回る場合は、ステップS250において圧力を緩めるように表示部17などで指示し、下回る場合はステップS260、S270において指の接触検知を行う。指が装置に触れていない場合はステップS280において装置に触れるように指示を行い、指が触れている場合はステップS290において別指の提示を指示する。
【0037】
指の接触検知について、指の装置に対する押し付けをなくし、画質評価値を増加させるために圧力を緩めるように指示するが、人によっては装置から手を離してしまう場合がある。この状態では血管パターンを安定して抽出できないだけでなく、画質評価値がかえって低くなり、登録できる程度の血管パターンを持っている指であっても、別指の提示を指示してしまう可能性がある。したがって、指浮き検知を行うことにより、圧力を緩めた状態で、かつ指を装置に触れた状態を維持することができるため、正確に別指の提示を指示するガイダンスを行うことが可能である。指浮きの検知手段としては圧力センサの出力値を用いるほか、距離センサや、画像処理を用いることができる。画像処理による指浮き検知は、指の輪郭の変化により検知する方法、血管パターンの変形により検知する方法などが考えられる。
【0038】
実施例1および2では、登録データを認証するまでのステップの一例を示したが、本発明は登録データと照合を行う認証データの精度を判定する際に用いることも可能である。一例を実施例3に示す。
【実施例3】
【0039】
本発明における認証処理の一例を図9を用いて説明する。まず、ステップS400において提示された指を検知し、ステップS410において初期画質評価値を計算する。次にステップS420において登録画像との照合を行う。1−N認証の場合は、N個の登録画像全てと照合を行い、1−1認証の場合は特定の一枚の登録画像と照合を行う。ステップS430において入力された血管画像と登録画像が一致するかどうかを判定し、一致する場合はステップS440において認証後の処理を行う。一致しない場合はステップS450において圧力を緩めるように指示し、ステップS460において再び画質評価値を計算する。ステップS470において画質評価値が増加しなくなったかを判断し、増加しなくなった場合は再び登録画像との照合を行う。
指置きガイド部6が弾性部材8の作用で下方へ沈み込むことにより、指にかかる圧力が緩和され、血管パターンの欠損が抑制できる。また指置きガイド部6が沈み込む方向は垂直でなくともよい。指先に向かう斜め前方へ沈み込むようにした場合、図10(a)のように指の根元が最初に指置きガイド部に触れたときは指が反り返っていても、図10(b)のように指置きガイド部が斜め前方に沈み込むことにより、垂直に沈み込む場合よりも指が曲がりやすくなり、反り返りによる血管パターンの欠損を防止することができる。また、弾性部材8は指先ガイド部と圧力検知部の間に挟み込んでもよい。図11(a)、(b)のように、指先ガイド部が指根元側の斜め下方に沈み込むことによって、より一層指が曲がりやすくなり、反り返りが起こりにくくなる。また、上述したように生体が装置に指を提示する際の進行方向からの押圧を緩和させることができることも、装置上方に対して生体側に斜め向きに配置されることにより得られる効果である。
【0040】
多数の被験者を集めて事前実験を行い、最も多い登録時の圧力値などを弾性部材8が沈み込み始める圧力値に設定し、利用者になるべく弾性部材8が沈み込まないように利用するように促すことで、登録中および認証中に特別な指示を必要とせずに、特定の圧力状態に誘導することができるため、再現性が向上する。あるいは、弾性部材8が沈み込む限界位置を多くの指において、反り返りも過剰な曲げも発生しなかった適正な位置に設定することで、最適な指の状態が再現しやすくなる。また、上記の適正位置よりも深く沈み込ませようとすると弾性部材8の反発力が変化し、適正位置より沈み込みにくくすることもできる。
【0041】
また、図12(a)、(b)のように指先ガイド部5と指置きガイド部6が連動して沈み込むようにしてもよい。
【0042】
図2の静脈認証装置は弾性部材8を用いなくてもよい。弾性部材8を利用しない場合は、指の反り返りが発生しやすくなる。しかし、弾性部材8以外の手段で指の反り返りを検知することができる。例えば、距離センサ等の距離検知部21を利用することで指とセンサの距離を測定することにより、指の反り返りを検知することができる。図13(a)、(b)のように指の腹側または背側の指の長軸方向に伸びる直線上における3点以上の距離測定点22−1、22−2、・・・、22−Nと距離センサ間の距離を測り、平面の物体を置いたときの測定距離とのずれから、指の反りや曲がりの状態、指浮きを検出することができる。距離センサとしては光学式や超音波式等を用いることができる。
また、圧力検知部7−1及び圧力検知部7−2は装置全体の下部に設けてもよい。圧力検知を指置きガイド部6と指先ガイド部5と装置下部の三か所に設けることで、装置全体にかかる圧力の内訳を知ることができる。したがって、登録時に圧力の内訳についても記録しておくことで1−1認証に際して再現性をより高めることができる。
【0043】
圧力を緩めるようにガイダンスしたとしても、指と装置が接触する以上少なからず圧迫が生じるため、血管パターンが欠損することがある。そのため、図14(a)よりも図14(b)のように指置きガイド部6および指先ガイド部5の指との接触位置を撮影装置4から遠ざけるように配置することで、押し付けによる血管パターン欠損の影響を低減する。
【0044】
図15は登録時に利用者の指の提示状態を表示し、正しい提示状態へガイドを行う登録画面の一例である。登録時は利用者のほとんどが認証装置に習熟していないため、指の提示方法をガイドする必要がある。指1の提示状態をモニタなどの表示部17に映し出し、利用者はこの表示部17を見ながら、ガイダンスに従い、指の提示状態を変化させる。
【0045】
表示部17に映し出される情報としては、圧力検知部7の出力値、画質評価値、指浮きの検知情報、指の曲がりの程度、指の反り返りの程度、弾性部材8の沈み込みの程度などである。指の提示状態に応じて、表示部17に映しだす情報をリアルタイムに切り替える。
【0046】
例えば、押し付けによる圧力が大きすぎる場合は、圧力値を表すインジケータと指を強く押し付けた状態のイメージ図またはアニメーションなどを併せて表示し、押し付けの圧力を緩めてください、などのガイダンス文を表示部17に表示する。指浮き、指の曲がり、指の反り返り、弾性部材8の沈み込みがある場合は、それぞれの状態のイメージ図またはアニメーションなどによって指の浮いた状態、指が曲がった状態、指が反り返った状態、弾性部材8が沈み込む状態を表現し、指を浮かせないでください、曲げないでください、反らさないでください、などのガイダンス文とともに表示部17に表示する。
これらの情報をもとに、利用者は指をどのように提示すれば良いかを知ることができる。
【0047】
また、正しく指の置き方を修正しているかどうかについて、インジケータを見ながら即時に確認することができる。利用者が画面のガイダンスに従い、正しく登録作業を行うことで、登録時に管理者が立ち会っていても発見しにくい、指の押し付けや指の浮きなどによる血管パターン欠損、血管パターン変化の問題を解消することができる。
【0048】
本発明における登録処理においては利用者が指示通りに指を提示したとしても、画質評価値が低い場合は別の指の提示を促すことがある。したがって、人によっては複数の指を提示することが考えられる。新たに提示した二本目以降の指の血管画像が最初の指よりも画質評価値が高くなるとも限らないため、複数の指の提示を促した場合は、撮影した血管画像の中でも最も画質評価値が高い指を登録する。また、全ての登録者に複数の指を提示するように促し、複数の指の中で最も血管画像の画質評価値が高い指を登録してもよい。全ての指の血管画像を登録しておいて、認証時に最も画質評価値の高い指を提示するように指示してもよい。
【0049】
このように画質評価値および圧力制御によって、より鮮明な血管パターンを撮像し、血管の情報をより多く抽出することで、血管の濃淡による情報をより精度よく抽出することができる。
【実施例4】
【0050】
実施例4では、認証用の画像として取得された画像の血管パターンの濃淡から特徴情報を抽出する手段について説明する。
【0051】
特徴点マッチング方式を利用した認証処理手順の一実施例について、図16の認証装置の処理ブロックを用いて説明する。初めにメモリ14に格納されている血管画像31を入力として、ステップS500で指の提示を検知する処理を行う。指の提示が検知されると、ステップS510において最も鮮明な血管画像が得られるように光源3の光量が調整される。これには、画像の平均輝度値を常に監視し、その値に応じて光量をフィードバック制御する手法、指静脈パターンの画像に対しパターンの鮮明度を判定する評価関数を施し、その結果を最適化するような光量調節を実施する手法、などを用いることができる。
【0052】
静脈パターンの鮮明度判定の例としては、抽出する血管量が多くなればなるほどパターンが鮮明であるとするように評価関数を決定することができる。
【0053】
次に、ステップS520の前処理を行う。撮影された血管画像は指表面の荒れや、しわなどの血管以外のノイズを多く含み、必ずしも血管が鮮明に映し出されている訳ではない。そこで、血管のみを強調し、ノイズを抑制する処理が必要である。前処理としては、エッジ保持平滑化フィルタリングやアンシャープマスキングなどの手法を用いることができる。前処理後、ステップS530において血管が強調された画像から直接、特徴点51を検出する。図17(a),(b)はある血管画像上の3点41−1、41−2、41−3と、この3点をつなぐ直線上の輝度プロファイルのイメージ図を表している。
【0054】
特徴点の検出は、例えば、図17(a)のような血管画像上における直線上の3点以上の輝度値の高低差により表現できる曲率や角度、2点間の輝度の差分により表現できる勾配などの輝度の起伏を利用する。以下、当該輝度の差分による情報を輝度起伏情報と称して説明する。図18(a)のような一枚の血管の濃淡画像から輝度の起伏形状が安定、かつ特異的である血管中の分岐点や屈曲点を輝度勾配や、輝度曲率などを用いることによって検出する。その後、ステップS540で検出した特徴点51から特徴量を抽出する。輝度勾配や輝度曲率等を特徴点51の周辺の輝度起伏情報として特徴量化する方法、特徴点51の周辺の輝度起伏情報と特徴点周りの血管の血流方向を併せて特徴量化する方法などを用いることができる。特徴点51の周辺の輝度起伏情報を特徴量化する方法の一例としては、特徴点51を中心とするD画素×D画素の正方形領域を3×3の9領域に分割し、領域ごとに作成した8方向の輝度方向ヒストグラム(図16(b))を特徴量とする方法がある。ひとつの特徴点の持つ特徴量は特徴点51の位置情報および72次元の輝度起伏情報となる。9領域それぞれの輝度勾配ヒストグラムは、各領域の中心に位置する基準画素52を基準として距離dだけ離れた8方向それぞれの参照画素53との輝度値の差分を勾配として計算することにより得る。
【0055】
最後に、ステップS550の特徴量照合処理を行う。登録画像の全特徴点と照合画像の全特徴点を総当たりで比較していき対応付けを行う。最も特徴量の近い特徴点同士の特徴量の類似度が予め設定した閾値を上回る場合に対応付けを行う。登録画像と照合画像の全特徴点数と対応付けられた特徴点数の比率を一致率とし、一致率が事前に設定した閾値を上回る場合に、両画像の指が同一人物であると判定する。
【0056】
登録画像と入力画像の特徴点の対応付けによって得られる各対応点と対となる座標の位置関係を利用することで照合する画像間での正確な位置合わせを行うことができる。画像平面上での回転移動や平行移動だけでなく、三次元的な幾何歪みを補正し、位置合わせを行った後に、テンプレートマッチング方式などの特徴点マッチング以外の手法によって照合を行うことにより、特徴点マッチング方式またはテンプレートマッチング方式を単体で用いて照合するよりも同じ指の静脈画像の一致率を高めることができる。
【0057】
指を提示する際の自由度が大きく、使い勝手のよい高い利便性を備えた認証装置では、指の位置ずれやロールが発生しやすく、提示する指の再現性が低くなってしまう。したがって、テンプレートマッチング方式などの血管の有無のみを表す血管パターンを用いた照合方法では、指の提示位置のずれが大きくなると、照合する画像間で一致する領域が狭まり、個人を識別するための情報が不足し、認証精度が低下してしまう。したがって、照合する画像間の一致する領域が狭い場合でも、血管の有無のみを表す血管パターンなどの従来の情報よりも多くの情報を利用することにより、認証精度を高く維持することができる。
【0058】
図19(a)と(b)のような2本の血管が交差している2つの血管画像は、血管とそれ以外を2値で表す血管パターンでは同一な血管として判断し、区別ができない。しかし、輝度起伏による濃淡の深さ情報を用いることによって、交差する2本の血管の前後関係を把握することができ、図19(a)と(b)は異なる血管として区別することが可能である。従って、図19(a)においては、5点61a、62a、63a、64a、65aのうち同じ血管上にある63a、61a、65aの3点が近い輝度となり、その後方を走っている血管上の62a、64aの2点が近い輝度となる。図19(b)においては、2本の血管の前後が逆になるため、62b、61b、64bの3点が近い輝度、63b、65bの2点が近い輝度になるという特徴を持つ。そのため、血管が交差している領域は他の領域に比べ特異性が高く、より多くの特徴情報を有しているため識別性も高い。したがって、血管の交差領域を多く含む指を優先して登録し、照合の際は交差領域の特徴量に大きく重みづけをした上で照合し、交差領域の特徴量を優先的に照合していくことにより、認証精度の高精度化と認証の高速化の両方を実現できる。また、血管の情報だけでなく、指の表面に存在する指紋やしわ等の情報を併せて特徴量とすることで、より識別性を高めることができる。例えば、上記の手法を用いて血管上の分岐点や屈曲点から特徴点を検出した後、特徴点の周辺の血管の輝度勾配情報だけでなく、特徴点の検出位置に対応する指表面上の点の周辺における指表面の指紋情報としわ情報を特徴量とする方法などが考えられる。
さらに、抽出した特徴点を比較し、各特徴点が血管パターンの奥行き方向について、各特徴点の位置関係を識別することができる。
【0059】
たとえば、図20(a)に示すような2種類の血管について、それぞれの血管上に同じ特徴情報を有する特徴点A〜Bが存在していたとする。このような場合、二つの血管のAとA、BとB、CとCの特徴情報をそれぞれ比較しただけでは、二つの血管は同一の血管であると判断されてしまう。そこで、図20(b)のように、画像の輝度に所定の基準値を設け、当該輝度と各特徴点の輝度とを比較することにより、各特徴点どうしの輝度値の関係、つまりは画像平面に撮像された血管の奥行き方向の形状に関する情報を取得することができ,図20(a)における2本の血管を識別することが可能となる。
【0060】
さらに、光源の照射強度や光源の位置等に依存せず、常に同じ位置に検出される特徴的な点を静脈画像の血管上から輝度起伏情報(最小曲率など)を利用して複数抽出し、抽出した特徴点同士をつなげながら血管パターンの輝度起伏構造を再構築することが可能となる。
【0061】
この再構築した奥行き方向の血管形状を、二次元でのテンプレートマッチングと同様に認証に用いることで、特徴情報の一つ一つを比較する場合に比べて、格段に演算負荷を軽減させることが可能となる。
【0062】
また、再構築した血管形状は奥行き情報の安定している特徴点から生成されているため、撮像された画像から直接的に三次元立体構造を構築する場合と比較して、安定かつ認証精度の高い血管パターンとすることができる。
再構築の際には、輝度が極端に明るい/暗い領域の輝度起伏を所望の明るさの輝度起伏状態を推定し、補正することで、光源の照射強度の変化に対応することができる。
また、光源の位置が異なれば、静脈画像の全体的な輝度傾斜が変化するが、この輝度傾斜から指と光源の相対的な位置を推定し、輝度傾斜が平たんになるように補正することで、光源の位置の変化に対応することができる。
本実施例において説明した特徴点マッチング方式による指静脈認証方法を方式Aとし、従来のテンプレートマッチング方式を用いた認証方式などを方式Bとした場合、方式AとBの認証結果を統合して、最終的な認証結果とすることで、より高い認証精度を実現することができる。
【0063】
実施例4の処理を単独にて行うことも可能であるが、実施例1にて説明した画質評価値を用いて、撮像された画像に実施例1の処理を行い、十分な血管パターンが撮像されていると判断された画像を認証画像として用いることにより、認証に用いる画像を構成する画素の輝度差がより鮮明となり、より精度の高い輝度起伏情報を得ることで認証精度を向上させることができる。
【0064】
輝度起伏情報をより多く、より正確に取得するためには、光源から照射される光量をより精密に制御することが有効であり、認証精度をさらに向上させることができる。また実施例1及び2にて示した画質評価値を抽出する上でも、光量がより適切に制御されることにより鮮明な血管パターン画像および精度の高い含有率とすることが可能である。光量を適切に制御する方法の一例を実施例5に示す。
【実施例5】
【0065】
本実施例は図21のように提示する指の上部を開放的にし、利用者に圧迫感を感じさせない装置形状である。装置の制約上、指先の斜め前方に配置した二つの光源で指全体を照射する。
【0066】
光源からの照射光量が大きく、白飛びなどの輝度飽和が生じる場合、輝度飽和領域は起伏情報が失われているため、輝度起伏を用いる認証方式においては輝度飽和の存在は望ましくない。しかし、照射強度が弱く、光量が不足すると、輝度むらが生じ、血管画像が全体的に暗くなり、鮮明な血管画像が得られない。したがって、特に、輝度起伏を利用する認証方式に対しては、輝度飽和がなく、輝度むらもない鮮明な血管画像の取得が望ましい。実施例4における輝度起伏情報を多く、かつ正確に取得することにもこのような制御が有効となる。
【0067】
図22は二段階光量調節のフローチャートの一例である。まず初めにステップS600において初期光量を点灯する。次にステップS610、S620において複数の光源3の光量比率を初期光量の比率で固定して照射強度を変化させ、最適照射強度を決定する。最適照射強度とは、ある光量比率の下での輝度飽和が発生しない限界まで明るくした照射強度を表す。初期光量の光量比率の決め方は例えば、予め複数の指に対して光量制御実験を行い、最も多くの指で最適として設定された光量比率を選択するなどの方法で決定することができる。光量比率を固定して照射強度を変えると、血管画像の輝度ヒストグラムは形状を保持したままシフトする(図23(a)における状態1から状態2への推移)。一度、ある適当な照射強度で照射することにより、照射強度とヒストグラムの位置の相関を求め、最適照射強度を推定することができる。次に、ステップS630において最適照射強度のもとで、予め決定しておいた数パターンの異なる光量比率で複数光源を点灯させ、ステップS640において画像全体が一様に明るくなるように最適光量比率を決定する。最適光量比率は、輝度ヒストグラムのまとまりの良さを示す指標に基づき決定する。例えば、指標を輝度分散とした場合、分散が小さくなるにつれてヒストグラムは平均輝度からの裾野が小さくなるため、分散が最小となる光量比率を最適光量比率とする(図23(b)における状態2から状態3への推移)。
【0068】
図21の装置構造における光源の配置では、指根元側を照射しようとする指根元光源の照射範囲71と指先側を照射しようとする指先光源の照射範囲72が重なり合う領域73が存在し、その領域は指の太さや長さによって変化する。そのため、各光源を独立に制御した場合、輝度飽和領域や、光量不足による暗い領域ができ、輝度むらが発生してしまうことがある。したがって、輝度飽和の発生しない最適照射強度および指全体をむらなく一様に明るくする最適光量比率を同時に決定する必要がある。
【0069】
最初に最適照射強度と最適光量比率のどちらか一方を決定してから、もう一方を決定する二段階の光量制御方式を行うことで指の太さや長さによらず、輝度むらや輝度飽和のない鮮明な血管画像を獲得することが可能となる。本実施例においては、最適照射強度を求めてから、最適照射強度のもとで最適光量比率を求めたが、最適光量比率を求めてから、最適光量比率のもとで最適照射強度を求めてもよい。また、必ずしも二段階を経て光量調節を行う必要はなく、照射強度と光量比率を同時に変化させて最適照射強度と最適光量比率を決定し、光量調節を行ってもよい。
【0070】
本実施例は、実施例1から4に示した方法等と組み合わせれば、より精度の高い画質評価値及び輝度起伏情報を得ることができ、より高い認証精度を得ることができるが、本実施例のみによる単独の手法として実施することも可能である。
【0071】
本実施例を実施するにあたり、複数の光源の各間に照射範囲の重なりを防止する遮光部を設けることで、より精度が高く効率的な光高度及び光量比率を設定することが可能である。一例として実施例6に示す。
【実施例6】
【0072】
図24(a)は、複数光源の照射範囲の重なりを防止するための遮光部81を設けた個人認証装置の入力インターフェースの一構成例である。図24(a)、(b)、(c)は入力インターフェースの側面図である。
【0073】
図21のように2光源の照射範囲が重なってしまう場合、図24(a)のように指根元側を照射する光源の照射光の一部を遮光部81が遮ることにより、照射範囲の重なりがなくなり、光源同士の相互関係を考慮する必要がなくなるため、複数光源を独立に制御することが可能になる。
しかし、図24(b)のように遮光部81を設置したために、指の大きさによっては指全体に照射範囲が行き渡らない場合がある。そこで、図24(c)のように遮光部81を可動式にすることによって、指の大きさの個人差に対応し、指全体を明るく照射することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
血管パターンを用いた個人認証装置、血管パターン抽出装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1・・・指、2・・・認証装置、3・・・光源、4・・・撮像部、5・・・指先ガイド部、6・・・指置きガイド部、7・・・圧力検知部、8・・・弾性部材、9・・・指提示部、10・・・遮光フィルタ、11・・・画像入力部、12・・・コンピュータ、13・・・インターフェース、14・・・メモリ、15・・・記憶装置、16・・・CPU、17・・・表示部、18・・・スピーカー、19・・・入力部 、21・・・距離検知部、22・・・距離測定点、41・・・血管画像中の画素、31・・・血管画像、51・・・特徴点、52・・・基準画素、53・・・参照画素、71・・・指根元光源の照射範囲、72・・・指先光源の照射範囲、73・・・光量の重なり領域、81・・・遮光部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体から取得される血管パターンの特徴情報を用いて個人の認証を行う個人認証装置であって、
前記生体における認証対象となる領域を撮像する撮像部と、
前記撮像された画像を認証画像として取得する演算部と、
を備え、
前記演算部は、
前記認証画像から血管パターンを抽出し、当該血管パターンの濃淡の度合いを前記特徴情報として取得することを特徴とする個人認証装置。
【請求項2】
前記演算部は、
前記血管パターン上の所定の特徴を有する点を前記特徴情報を生成するための特徴点として取得し、
前記特徴点と前記特徴点の近傍における複数の画素との前記濃淡の度合いをそれぞれ演算し、
前記複数の濃淡の度合いを前記特徴点の有する特徴情報として取得することを特徴とする請求項1記載の個人認証装置。
【請求項3】
生体から取得される血管パターンの特徴情報を用いて個人の認証を行う個人認証装置であって、
前記生体における認証対象となる領域を撮像する撮像部と、
前記撮像された画像を認証画像として取得する演算部と、
を備え、
前記演算部は、
前記認証に用いる画像を形成する複数の画素のそれぞれの輝度に基づいて、前記血管パターン上の所定の特徴を有する点を前記特徴情報を生成するための特徴点として取得し、
前記特徴点と当該所定の画素の近傍における複数の画素との間の輝度差の度合いをそれぞれ演算し、
前記複数の輝度差の度合いを前記特徴点の有する特徴情報として取得することを特徴とする個人認証装置。
【請求項4】
前記近傍の画素は、前記特徴点から等距離の画素であることを特徴とする請求項2または3記載の個人認証装置。
【請求項5】
前記演算部は、
複数の血管が交差する点に位置する前記特徴点を優先して取得することを特徴とする請求項2または3に記載の個人認証装置。
【請求項6】
前記演算部は、
予め記憶された前記特徴情報を有する登録画像と、前記認証画像とを照合することを特徴とする請求項1または3記載の個人認証装置。
【請求項7】
前記演算部は、
前記認証画像における前記特徴点の有する特徴情報と、前記登録画像における特徴点の有する特徴情報とを用いて、前記認証画像と前記登録画像の位置合わせを行うことを特徴とする請求項6記載個人認証装置。
【請求項8】
前記特徴点が複数あって、
前記演算部は、
前記複数の特徴点のそれぞれの輝度を、前記認証画像を形成する平面に対して垂直方向の前記血管パターンの形状に由来する奥行き情報として取得し、
前記奥行き情報から、前記垂直方向における前記複数の特徴点のそれぞれの相対関係に基づく情報を抽出し、
前記複数の特徴点の有する特徴情報としてそれぞれ取得することを特徴とする請求項2または3記載の個人認証装置。
【請求項9】
前記演算部は、
前記奥行き情報から、前記血管パターンの前記垂直方向の形状を取得し、
前記認証に用いる画像の平面方向における前記血管パターンの形状と、前記垂直方向の血管パターンの形状とを用いて認証を行うことを特徴とする請求項3記載の個人認証装置。
【請求項10】
前記演算部は、
前記撮像された画像を構成する複数の画素における、前記血管パターンの画像を構成する画素の割合に基づく画質評価値を演算し、
前記画質評価値が所定の値以上である場合、前記撮像された画像を前記認証画像として取得することを特徴とすることを特徴とする請求項1または3記載の個人認証装置。
【請求項11】
前記画質評価値は、前記撮像された画像を構成する全画素における、前記血管パターンを構成する画像の含有率であることを特徴とする請求項10記載の個人認証装置。
【請求項12】
前記演算部は、前記演算部の演算結果を表示する表示部を備えることを特徴とする請求項10記載の個人認証装置。
【請求項13】
前記演算部は、前記画質評価値が前記所定の値より低い場合、前記認証対象となる領域を他の領域に変更するように前記生体に促す指示を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項12記載の個人認証装置。
【請求項14】
さらに前記認証対象となる領域以外の部位を支持するガイド部と、
前記ガイド部にかけられた前記提生体からの圧力を検知する圧力検知部と、
を有し、
前記演算部は、
前記生体からの圧力の値を演算し、
前記画質評価値が所定の値より低い場合、前記圧力を低くするよう前記生体に対して促す指示を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項12記載の個人認証装置。
【請求項15】
前記演算部は、前記画質評価値が所定の値より低い場合、または前記圧力が所定の値より高い場合に警告音を発する警告部を有することを特徴とする請求項14記載の個人認証装置。
【請求項16】
前記演算部は、
前記画質評価値が第一の所定の値以上の値であり、且つ前記圧力検知部で検知された前記生体からの圧力の値が第二の所定の値以下の値である場合に、前記画像を認証に用いる情報として取得することを特徴とする請求項14記載の個人認証装置。
【請求項17】
さらに前記部位の前記提示ガイド部への接触または非接触を検知する接触検知部を有し、
前記演算部は、
前記接触検知部にて前記生体が前記ガイド部に非接触であると判別された場合、前記生体に指を接触させるよう促す指示を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項14記載の個人認証装置。
【請求項18】
前記ガイド部は、前記圧力によって稼動することを特徴とする請求項14記載の個人認証装置。
【請求項19】
前記ガイド部は、前記圧力を緩和する弾性部材を有し、
前記弾性部材は、前記個人認証装置の接地面に対する垂直方向から、認証を行う前記生体が存在する方向に斜行して設置されていることを特徴とする請求項18記載の個人認証装置。
【請求項20】
個人の認証を行うべく、生体から取得される血管パターンの特徴情報を有する画像を取得する演算装置であって、
前記画像を形成する複数の画素のそれぞれの輝度に基づいて、前記血管パターン上の所定の特徴を有する点を前記特徴情報を生成するための特徴点として取得し、
前記特徴点と当該所定の画素の近傍における複数の画素との間の輝度差の度合いをそれぞれ演算し、
前記複数の輝度差の度合いを前記特徴点の有する特徴情報として取得することを特徴とする演算装置。
【請求項1】
生体から取得される血管パターンの特徴情報を用いて個人の認証を行う個人認証装置であって、
前記生体における認証対象となる領域を撮像する撮像部と、
前記撮像された画像を認証画像として取得する演算部と、
を備え、
前記演算部は、
前記認証画像から血管パターンを抽出し、当該血管パターンの濃淡の度合いを前記特徴情報として取得することを特徴とする個人認証装置。
【請求項2】
前記演算部は、
前記血管パターン上の所定の特徴を有する点を前記特徴情報を生成するための特徴点として取得し、
前記特徴点と前記特徴点の近傍における複数の画素との前記濃淡の度合いをそれぞれ演算し、
前記複数の濃淡の度合いを前記特徴点の有する特徴情報として取得することを特徴とする請求項1記載の個人認証装置。
【請求項3】
生体から取得される血管パターンの特徴情報を用いて個人の認証を行う個人認証装置であって、
前記生体における認証対象となる領域を撮像する撮像部と、
前記撮像された画像を認証画像として取得する演算部と、
を備え、
前記演算部は、
前記認証に用いる画像を形成する複数の画素のそれぞれの輝度に基づいて、前記血管パターン上の所定の特徴を有する点を前記特徴情報を生成するための特徴点として取得し、
前記特徴点と当該所定の画素の近傍における複数の画素との間の輝度差の度合いをそれぞれ演算し、
前記複数の輝度差の度合いを前記特徴点の有する特徴情報として取得することを特徴とする個人認証装置。
【請求項4】
前記近傍の画素は、前記特徴点から等距離の画素であることを特徴とする請求項2または3記載の個人認証装置。
【請求項5】
前記演算部は、
複数の血管が交差する点に位置する前記特徴点を優先して取得することを特徴とする請求項2または3に記載の個人認証装置。
【請求項6】
前記演算部は、
予め記憶された前記特徴情報を有する登録画像と、前記認証画像とを照合することを特徴とする請求項1または3記載の個人認証装置。
【請求項7】
前記演算部は、
前記認証画像における前記特徴点の有する特徴情報と、前記登録画像における特徴点の有する特徴情報とを用いて、前記認証画像と前記登録画像の位置合わせを行うことを特徴とする請求項6記載個人認証装置。
【請求項8】
前記特徴点が複数あって、
前記演算部は、
前記複数の特徴点のそれぞれの輝度を、前記認証画像を形成する平面に対して垂直方向の前記血管パターンの形状に由来する奥行き情報として取得し、
前記奥行き情報から、前記垂直方向における前記複数の特徴点のそれぞれの相対関係に基づく情報を抽出し、
前記複数の特徴点の有する特徴情報としてそれぞれ取得することを特徴とする請求項2または3記載の個人認証装置。
【請求項9】
前記演算部は、
前記奥行き情報から、前記血管パターンの前記垂直方向の形状を取得し、
前記認証に用いる画像の平面方向における前記血管パターンの形状と、前記垂直方向の血管パターンの形状とを用いて認証を行うことを特徴とする請求項3記載の個人認証装置。
【請求項10】
前記演算部は、
前記撮像された画像を構成する複数の画素における、前記血管パターンの画像を構成する画素の割合に基づく画質評価値を演算し、
前記画質評価値が所定の値以上である場合、前記撮像された画像を前記認証画像として取得することを特徴とすることを特徴とする請求項1または3記載の個人認証装置。
【請求項11】
前記画質評価値は、前記撮像された画像を構成する全画素における、前記血管パターンを構成する画像の含有率であることを特徴とする請求項10記載の個人認証装置。
【請求項12】
前記演算部は、前記演算部の演算結果を表示する表示部を備えることを特徴とする請求項10記載の個人認証装置。
【請求項13】
前記演算部は、前記画質評価値が前記所定の値より低い場合、前記認証対象となる領域を他の領域に変更するように前記生体に促す指示を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項12記載の個人認証装置。
【請求項14】
さらに前記認証対象となる領域以外の部位を支持するガイド部と、
前記ガイド部にかけられた前記提生体からの圧力を検知する圧力検知部と、
を有し、
前記演算部は、
前記生体からの圧力の値を演算し、
前記画質評価値が所定の値より低い場合、前記圧力を低くするよう前記生体に対して促す指示を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項12記載の個人認証装置。
【請求項15】
前記演算部は、前記画質評価値が所定の値より低い場合、または前記圧力が所定の値より高い場合に警告音を発する警告部を有することを特徴とする請求項14記載の個人認証装置。
【請求項16】
前記演算部は、
前記画質評価値が第一の所定の値以上の値であり、且つ前記圧力検知部で検知された前記生体からの圧力の値が第二の所定の値以下の値である場合に、前記画像を認証に用いる情報として取得することを特徴とする請求項14記載の個人認証装置。
【請求項17】
さらに前記部位の前記提示ガイド部への接触または非接触を検知する接触検知部を有し、
前記演算部は、
前記接触検知部にて前記生体が前記ガイド部に非接触であると判別された場合、前記生体に指を接触させるよう促す指示を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項14記載の個人認証装置。
【請求項18】
前記ガイド部は、前記圧力によって稼動することを特徴とする請求項14記載の個人認証装置。
【請求項19】
前記ガイド部は、前記圧力を緩和する弾性部材を有し、
前記弾性部材は、前記個人認証装置の接地面に対する垂直方向から、認証を行う前記生体が存在する方向に斜行して設置されていることを特徴とする請求項18記載の個人認証装置。
【請求項20】
個人の認証を行うべく、生体から取得される血管パターンの特徴情報を有する画像を取得する演算装置であって、
前記画像を形成する複数の画素のそれぞれの輝度に基づいて、前記血管パターン上の所定の特徴を有する点を前記特徴情報を生成するための特徴点として取得し、
前記特徴点と当該所定の画素の近傍における複数の画素との間の輝度差の度合いをそれぞれ演算し、
前記複数の輝度差の度合いを前記特徴点の有する特徴情報として取得することを特徴とする演算装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図22】
【図15】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図22】
【図15】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−98974(P2012−98974A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247000(P2010−247000)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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