説明

生体認証装置及び生体認証システム

【課題】
指静脈認証では、撮像する指が僅かに回転しただけでも撮像される指静脈画像は大きく変化してしまい、画像の再現性が重要な認証装置において問題となる。そこで、指の微妙な回転による画像の変化(バラツキ)を許容できる生体認証装置を提供する。
【解決手段】
生体認証装置にセットした掌の左右で高低差を付けるように掌支持台座を可動させ、掌に高低差を与えることで、撮像領域にセットした指に微量の回転を意図的に与えることができる構造とする。指に微量の回転を意図的に与えた状態の指静脈画像を登録、認証の際に利用して照合結果を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は個人認証を行う生体認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関等で本人確認を行う生体認証技術として、静脈や指紋を利用した技術が数多く開発されている。その中で、特に指静脈認証技術は認証精度、セキュリティの面で高い信頼を得て、数多くの製品が市場に流通している。
【0003】
その指静脈認証技術の一例として、特許文献1には、掌や認証する指の隣り合う指を平面で支える構造とし、指の長軸方向を軸とした指の回転を防止することで登録時と認証時の指静脈画像のバラツキを少なくし、実用レベルの高い認証精度を確保している指静脈認証装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−99493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
指静脈認証装置は、指静脈画像の再現性が認証率に大きく関わる装置であるが、指の静脈自体は立体(3次元)構造であるのに対し、認証に使用される指静脈画像は平面(2次元)であるため、認証対象の指が指の長軸方向を軸として僅かに回転しただけでも撮像される指静脈画像は大きく変化してしまい、画像の再現性が重要な認証装置において問題となる。
【0006】
特許文献1の生体認証装置においては、掌や、認証する指の隣り合う指を平面で支える構造とすることで、前述した指長軸方向を軸とした指の回転を抑えて、取得する指静脈画像のバラツキを安定させる効果を有している。
【0007】
しかし、上記技術を用いたとしても、登録時及び認証時にセットした指の状態は、指及び掌をセットする位置や力加減の違いなどにより、微量なりとも基準に対して右又は左に回転してしまうことが多く、この微量な回転による画像の変化が原因で本人認証ができなくなる可能性もあり、さらに高い認証精度を確保する必要がある。
【0008】
本発明は、指静脈画像の登録、認証の際に起こる指の微妙な回転による画像の変化(バラツキ)を許容できる、より安定した認証精度を実現する生体認証装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
指をセットした状態の時に掌を支える台座を持つ指静脈認証装置において、セットした指の長軸を中心とした左右で任意の高低差を付けるように可動する構造を備える。
【0010】
ここでいう高低差を付ける構造として、掌を支える台座の一部あるいは全体を上下させる構造、又は掌を支える台座の一部あるいは全体を、セットした指の長軸方向を軸として、任意の角度、左右に回転させることで高低差を作る構造を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、指静脈画像の登録、認証の際に起こる指の微妙な回転による指静脈画像の変化(バラツキ)を許容できる、より安定した認証精度を実現する生体認証装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明に好適な実施の形態を、図1から図16を参照して詳細に説明する。なお、これらは本発明の一実施例を示すものであり、機能や構成その他を制限するものではない。
【0013】
最初に、生体認証装置(指静脈認証装置)の構成について説明する。図1は生体認証装置の外観図を示し、図2は生体認証装置の内部構造を示す斜視図を示す。
【0014】
生体認証装置100は、指静脈画像を撮像するため、利用者が指をかざす位置を示す撮像領域101と、指に近赤外光を照射するLED(発光ダイオード)などで構成された光源部を複数実装した光源照射部102、指を撮像領域101にかざす際に掌を支える掌支持台座(掌支持部)104、指静脈画像を撮像する撮像部(カメラ)105、撮像したデータの処理や通信などを制御する制御部(制御基板)106、撮像部105や制御部106などのデバイスを覆うケース103、モーターなどで構成され、掌支持台座104の形状を変化させるように掌支持台座104を駆動する駆動部107により構成する。なお、図1及び図2に示すように、1対の光源照射部102と掌支持台座104が平面状のケース103から突出する構成となっている。
【0015】
図3は指静脈画像を取得するため、利用者が生体認証装置100の撮像領域101に指をかざした状態を示している。なお、ここでは生体認証装置100の制御部106が各動作を制御するものとする。利用者は掌支持台座104に掌を置き、掌を固定した状態で撮像領域101に指をかざす。この指に対し、制御部106は光源照射部102により側面から近赤外光を照射する。そして、指の腹側から出た光を干渉フィルタ(図示しない)を透過させた上で、撮像部105により撮像する。掌支持台座104を用いて掌を固定させることにより、安定した画像を取得することができる。
【0016】
本発明では、この掌支持台座104について、セットした指の長軸を中心とした左右で任意の高低差を付けるように可動させることができる構造を特徴としている。本発明の実施形態の例として2通りの構造を示す。
【0017】
掌支持台座104の一部又は全体を上下させる第1の構造について、図4から図6を用いて説明する。また、掌支持台座104の一部又は全体を、セットした指の長軸方向を軸として、任意の角度分左右に回転させる第2の構造について、図7から図9を用いて説明する。
【0018】
第1の構造(図4〜図6)は、掌支持台座104を左右方向に3分割し、左から右へ向かって掌支持台座104−A、掌支持台座104−B、掌支持台座104−Cとする。駆動部107により、これら3分割された掌支持台座104−A、104−B、104−Cの垂直方向の位置を独立して上下に変動させる構造を持つ。掌支持台座104−A、104−B、104−Cはそれぞれ左側掌支持台座、中央掌支持台座、右側掌支持台座ともいう。
【0019】
図4では、掌支持台座104の左右を同じ高さにしている。この掌支持台座104−A、掌支持台座104−B、掌支持台座104−Cがケース103から突出している部分の高さを基本の高さH1とする。
【0020】
図5では、掌支持台座104の左側が右側よりも高い構成にしている。駆動部107により駆動することで、掌支持台座104−AをH1よりも高い位置H2に移動させ、掌支持台座104−BはH1のままで、掌支持台座104−CをH1よりも低い位置H0に駆動している。なお、図5においては、H0=0mとしている。
【0021】
また、図6では、掌支持台座104の右側が左側よりも高い構成にしている。駆動部107により駆動することで、掌支持台座104−AをH1よりも低い位置H0に駆動し、掌支持台座104−BはH1のままで、掌支持台座104−CをH1よりも高い位置H2に駆動している。なお、図6においても、H0=0mとしている。
【0022】
ここで、分割する数は3つとしているがいくつに設定してもよいし、掌支持台座104−A、B、Cの高さもそれぞれ任意に変更することが可能である。また、本実施例のように必ずしも掌支持台座の両側のうち一方を高く他方を低くしなくても良い。例えば、掌支持台座104−A、104−BはH1のままで掌支持台座104−CをH2に設定する構成や、支持台座104−A、104−BはH1のままで掌支持台座104−CをH0に設定する構成としても同等の効果を得られる。
【0023】
第2の構造(図7〜図9)は、図7の掌支持台座の左右を同じ高さの状態から、図8、図9の掌支持台座の左右一方のみが高い状態に変化させるため、掌支持台座104−Dが指長軸方向を軸として回転可動する構造である。
【0024】
図7では、掌支持台座104−Dの左右を同じ高さにしている。生体認証装置100の左右に示す矢印のように、掌支持台座104−Dが回転可能である。
【0025】
図8では、掌支持台座104−Dの左側が右側よりも高い構成にしている。また、図9では、掌支持台座104−Dの右側が左側よりも高い構成にしている。駆動部107により駆動することで、このような変形が可能となる。なお、ケース103に対する掌支持台座104の角度は任意に変更可能である。
【0026】
生体認証装置100の掌支持台座104−A、B、C(第1の構造)、掌支持台座104−D(第2の構造)に上述のような可動構造を備えることにより、以下の効果が得られるようになる。
【0027】
生体認証装置100に指をセットし、図5及び図8のように掌支持台座の左側を右側よりも高い構成にして撮像することで、図4及び図7の時に撮像できる指静脈画像に対して、指が、指長軸方向を軸として右回転した状態での指静脈画像を撮像できる。
【0028】
また、図6及び図9のように掌支持台座の右側を左側よりも高い構成にして撮像することで、図4及び図7の時に撮像できる指静脈画像に対して、指長軸方向を軸として指が左回転した状態での指静脈画像を撮像できる。
【0029】
よって、生体認証する指1本に対して、複数のパターンの指静脈画像が撮像できることになり、登録時の複数の画像と、認証時の複数の画像で組み合わせて照合を行うことができるようになる。
【0030】
ここでは、指を右回転させた可動状態の図8、指を左回転させた可動状態の図9、の各々1通りの状態を示しているが、掌支持台座104の可動範囲を段階的に可動できる構造とすることで、可動状態のパターンを増やし、撮像する指静脈画像を増やしてもよい。
【0031】
また、ここまでは駆動部107を用いた例にて説明したが、駆動部107を備えずに、利用者により掌支持台座104に力を加えられることによって掌支持台座104が可動する構造としてもよい。
【0032】
駆動部107を用いる場合には生体認証装置100が指静脈画像を取得したことを認識して、次の掌支持台座104の形態を変更する。例えば、掌支持台座104の左右を同じ高さにした状態で指静脈画像を取得したことをきっかけに、制御部106が自動的に駆動部107を用いて掌支持台座104の左側を右側よりも高い状態へと変更させる。これにより、係員による調整作業が無くとも指の傾きが異なる複数種類の指静脈画像を取得できる。
【0033】
一方、駆動部107を用いずに、利用者から加えられた力により掌支持台座104の形態を変更する場合には、確実に掌支持台座104に高低差がついた状態に変形させるため表示部(ATM(自動取引装置)であればタッチパネル、窓口システムであれば利用者向けモニター)に案内を出す構成や係員がそばにいて利用者に指示を出す構成にする。
【0034】
また、第1の構造及び第2の構造において、掌支持台座104が任意の高低差がついた位置まで達した時に反応するスイッチ又はセンサーを有する構造とし、掌支持台座104の変形作業が完了したことを知らせる手段を付加してもよい。
【0035】
次に、図10〜図16を用いて、生体情報と登録してから生体認証を行うまでの過程について詳細に説明する。ここではICカード内に指静脈画像(生体情報)を記憶しておき、ICカード内で認証処理を行う例で説明するが、生体情報の記憶する場所はICカードに制限するものではなく金融機関のサーバに指静脈画像を記憶しても良い。また、ここではICカード内で生体認証を行う例で説明するが、生体認証を行う場所はICカードに制限するものではなく金融機関のサーバやATMで生体認証を行っても良い。
【0036】
なお、第1の構造(図4から図6)と第2の構造(図7から図9)では、構造は異なるが基本的な構造は共通するので、ここでは第1の構造を例に挙げて説明する。
【0037】
図10は本発明を適用した生体認証装置100の使用例を示す。[登録1]及び[認証1]は、図4の掌支持台座104の左右を同じ高さにした生体認証装置100に指をかざした状態を示している。[登録2]及び[認証2]は、図5の掌支持台座104の左側を右側よりも高くした生体認証装置100に指をかざした状態を示している。[登録3]及び[認証3]は、図6の掌支持台座104の右側を左側よりも高くした生体認証装置100に指をかざした状態を示している。
【0038】
[登録1]〜[認証3]までのそれぞれの上側の四角で囲った内部には、撮像領域101における指の断面図を示している。[登録1]及び[認証1]では、左右が同じ高さの掌支持台座104に掌を固定しているため、指が傾いていない状態で指静脈画像の取得が可能である。[登録2]及び[認証2]では、左側が右側よりも高い掌支持台座104に掌を固定しているため、指が右側に傾いた状態で指静脈画像を取得することになる。[登録3]及び[認証3]では、右側が左側よりも高い掌支持台座104に掌を固定しているため、指が左側に傾いた状態で指静脈画像を取得することになる。
【0039】
上述の断面図を表示部(ATMであればタッチパネル、窓口システムであれば利用者向けモニター)に表示して、利用者に掌及び指が傾いている状態を認識させる構成にしても良い。このとき、上述の撮像部105とは別にカメラを設けて、掌や指の画像を撮影、表示しても良いし、予め指や掌の画像パターンを用意しておき、掌支持台座104の形態から掌及び指の傾きを計算し、それに合わせて用意しておいた指や掌の画像パターンを表示する構成にしても良い。これにより生体認証に不慣れな利用者が正確に指をかざしやすく、また安心感をもって生体認証にのぞむことができる。
【0040】
図10では、[登録1]〜[登録3]の3つの登録パターンと[認証1]〜[認証3]の3つの認証パターンとで得られる画像を後述する図15、16のように適切に組み合わせて生体認証を実行できることを示す。
【0041】
図11は指静脈画像を登録する登録システム(窓口端末1100及び生体認証装置100)の全体構成図を示し、図12は指静脈画像を記憶し生体認証を実行するICカード1200のブロック構成図を示す。
【0042】
図11のように、指静脈画像の登録時には、窓口端末1100にて生体認証装置100の動作を制御し、生体認証装置100内に挿入されたICカード1200内に生体情報を登録しておく。このとき例えば窓口の係員が操作部1102を操作し、表示部1101を見ながら作業を進める。そして、図12に示すICカード1200の記憶部1202に指静脈画像を登録する。
【0043】
ICカード1200は、ICカード1200を制御する制御部1201、指静脈画像などのデータやプログラム等の情報を記憶する記憶部1202、新たに取得した指静脈画像と記憶部1202に予め記憶されていた指静脈画像との照合処理(生体認証処理)を実行する照合部1203を備えている。生体認証時には、ICカード1200の制御部1201がATM(自動取引装置)1300の制御部1401からの命令を受けて照合部1203により照合処理を実行するものであるが、後述する図15、16のフローチャートでは簡略化のため制御部1201の動作に関しては省略して説明するものとする。
【0044】
図13は生体認証装置100を備えたATM1300の斜視図を示し、図14はATM1300のブロック図を示す。
【0045】
図13では、生体認証装置100をATM1300と接続し、ATM1300のカード機構部(カードリーダライタ)1302に挿入されたICカード1200内で指静脈画像の照合を実行する。
【0046】
ATM1300は、利用者に操作案内などを表示し、入力を受け付ける表示入力部(タッチパネル)1301、カードの挿入/排出動作、カードの磁気ストライプ又はICカードに記憶されたデータに対し読み書き、カードエンボス部分のイメージ読み取りなどの機能を有するカード機構部1302、利用者が紙幣の入出金を行う紙幣入出金口1303、硬貨の入出金を行う硬貨入出金口1304、通帳の読み書きを行う通帳機構部1305、上述の生体認証装置100を備える。
【0047】
そしてATM1300は、ATM全体を制御する制御部1401、様々なデータやプログラム等の情報を記憶する記憶部1402、上述の表示入力部1301、カード機構部1302、生体認証装置100、紙幣を収納し、鑑別部により真偽鑑別し、収納箱から紙幣入出金口1303まで搬送する紙幣機構部1403、硬貨を収納し、鑑別部により真偽鑑別し、収納箱から硬貨入出金口1304まで搬送する硬貨機構部1404を備えている。
【0048】
図15は、生体認証のフローチャート(1)である。ここでは指静脈画像を取得して生体認証を実施するたびに指を離させるものとする。例えば生体認証を図10の[認証1]の指静脈画像を取得すると、利用者にいったん生体認証装置100から指を離させ、一通り[登録1]〜[登録3]の画像と照合して、不一致であれば、利用者に生体認証装置100に指を再セットさせ[認証2]の指静脈画像を取得して、[登録1]〜[登録3]の画像と照合する。
【0049】
図10に示す[登録1]、[登録2]、[登録3]の状態で指静脈画像データ(以下、それぞれ[登録1]の指静脈画像、[登録2]の指静脈画像、[登録3]の指静脈画像という)を取得し、ICカード1200内の記憶部1202に予め登録しておく(ステップ1501)。
【0050】
次に、生体認証を実行するため、ATM1300の制御部1401は図10に示す[認証1]の状態(生体認証装置100の掌支持台座104に高低差のない状態)で指静脈画像(以下、[認証1]の指静脈画像という)を撮像部105により撮像する(ステップ1502)。そして、撮像した指静脈画像をICカード1200の照合部1203へ送信する。
【0051】
ATM1300の制御部1401は、照合部1203により、生体認証装置100から受信した[認証1]の指静脈画像と、ICカード1200の記憶部1202に記憶している[登録1]、[登録2]、[登録3]の指静脈画像とを順番にそれぞれ照合処理を実行させる(ステップ1503)。すなわち、1番目に[認証1]の指静脈画像と[登録1]の指静脈画像とを比較し、2番目に[認証1]の指静脈画像と[登録2]の指静脈画像とを比較し、3番目に[認証1]の指静脈画像と[登録3]の指静脈画像とを比較し照合して一致するか否かを判断する(ステップ1504)。ここで、上記1〜3番目の比較において、2つの画像の一致度がいずれか一つの組み合わせでも閾値以上の値を示していれば認証成功とし、それ以外の場合(いずれの組み合わせでも閾値未満の値を示す)は認証失敗とする。
【0052】
照合の結果が認証成功であった場合、ATM1300の制御部1401は、利用者が希望する取引を実施する。すなわち支払取引のときには紙幣機構部1403、硬貨機構部1404を用いて利用者が希望する金額の紙幣、硬貨を出金する(ステップ1505)。
【0053】
一方、照合の結果が認証失敗であった場合、駆動部107を用いて掌支持台座104を左側が右側よりも高い形態へと変形させる。また、表示入力部1301に指を再セットする旨の案内を表示する。そして、利用者がその案内に応じて撮像領域101に指をかざすと、ATM1300の制御部1401は図10に示す[認証2]の状態(生体認証装置の掌支持部で左側が高くなっている状態)で指静脈画像(以下、[認証2]の指静脈画像という)を撮像部105により撮像する(ステップ1506)。そして、撮像した指静脈画像をICカード1200の照合部1203へ送信する。
【0054】
ATM1300の制御部1401は、照合部1203により、生体認証装置100から受信した[認証2]の指静脈画像と、記憶部に記憶している[登録1]、[登録2]、[登録3]の指静脈画像とを順番にそれぞれ照合する(ステップ1507)。
【0055】
ステップ1504と同様にして、[認証2]の画像が予め記憶部1202に記憶していた画像と一致するか否か照合する(ステップ1508)。
【0056】
ステップ1508で、照合の結果が認証成功であった場合には上述のステップ1505へと進み、照合の結果が認証失敗の場合、駆動部107を用いて掌支持台座104を右側が左側よりも高い形態へと変形させる。また、表示入力部1301に指を再セットする旨の案内を表示する。そして、利用者がその案内に応じて撮像領域101に指をかざすと、ATM1300の制御部1401は図10に示す[認証3]の状態(生体認証装置の掌支持部で右側が高くなっている状態)で指静脈画像(以下、[認証3]の指静脈画像という)を撮像部105により撮像する(ステップ1509)。そして、撮像した指静脈画像をICカード1200の照合部1203へ送信する。
【0057】
ATM1300の制御部1401は、生体認証装置100から受信した[認証3]の指静脈画像と、記憶部に記憶している[登録1]、[登録2]、[登録3]の指静脈画像とを順番にそれぞれ照合する(ステップ1510)。
【0058】
ステップ1504と同様にして、[認証3]の指静脈画像が予め記憶部1202に記憶していた画像と一致するか否か照合する(ステップ1511)。
【0059】
ステップ1511で、照合の結果が認証成功であった場合には上述のステップ1505へと進み、照合の結果が認証失敗の場合、ATM1300の制御部1401はその旨を表示入力部1301に表示する(ステップ1512)。
【0060】
上述の運用方法とすることで、登録時の[登録1]、[登録2]、[登録3]の状態と、認証時の[認証1]、[認証2]、[認証3]の状態の指静脈画像とで組み合わせて照合を行うことが可能となり、どれか1つの組み合わせが一致すれば認証成功というプログラム設定をすることが可能となる。
【0061】
なお、このフローでは認証時に、[登録1]の指静脈画像から[登録3]の指静脈画像の順に照合を行っているが、この順番を利用者ごとの希望や金融機関の設定に応じて変更することや、利用者毎の照合しやすさの傾向に応じて変更するようにしても良い。さらに、[登録2]及び「認証2」における掌支持台座104の左側部分の高さと、[登録3]及び「認証3」における掌支持台座104の右側部分の高さとを、一致させず利用者毎の照合しやすさの傾向に応じて変更することも可能である。これにより利便性や認証率の向上を図ることができる。
【0062】
また、データ容量の制限等により記憶部1202に[登録1]〜[登録3]までの3つの指静脈画像を登録できない場合には、[登録1]〜[登録3]のうち1つ又は2つだけを登録する形態にして良い。その場合には図15のフローよりも認証率は低下するが、従来の運用よりは高い認証率を期待できる。
【0063】
また、認証時のパターンを[認証1]〜[認証3]までの3つ全てを実行せずに、[認証1]〜[認証3]のうち1つ又は2つだけを実行する形態にして良い。この場合であっても、対応する掌支持部の生体認証装置での登録パターンがあれば認証が可能である(例えば[認証1]〜[認証3]のうち[認証2]のみを実行した場合でも、記憶部に予め[登録2]の指静脈画像があれば生体認証は成功となる)。
【0064】
図16は、生体認証のフローチャート(2)である。ここでは生体認証装置100から指を離させずに連続して3種類の指静脈画像を取得してしまい、その後連続して生体認証を実施する。例えば[認証1]〜[認証3]の指静脈画像を取得し終えてから、[認証1]の指静脈画像と[登録1]〜[登録3]の指静脈画像と照合、[認証2]の指静脈画像と[登録1]〜[登録3]の指静脈画像と照合を実行する。
【0065】
図10に示す[登録1]、[登録2]、[登録3]の状態で指静脈画像データを取得し、ICカード1200内の記憶部1202に予め登録しておく(ステップ1601)。
【0066】
次に、生体認証を実行するため、駆動部107を用いることで必要に応じて掌支持台座104を変形させつつ、ATM1300の制御部1401は図10に示す[認証1]の状態(生体認証装置100の掌支持台座104に高低差のない状態)、[認証2]の状態(生体認証装置100の掌支持台座104で左側が高くなっている状態)、[認証3]の状態(生体認証装置100の掌支持台座104で右側が高くなっている状態)で指静脈画像(以下それぞれ、[認証1]、[認証2]、[認証3]の指静脈画像という)を撮像部105により撮像する(ステップ1602)。そして、撮像した3つの指静脈画像をICカード1200の照合部1203へ送信する。
【0067】
ATM1300の制御部1401は、照合部1203により、生体認証装置100から受信した[認証1]の指静脈画像と、ICカード1200の記憶部1202に記憶している[登録1]、[登録2]、[登録3]の指静脈画像とを順番にそれぞれ照合処理を実行させる(ステップ1603)。すなわち、1番目に[認証1]の指静脈画像と[登録1]の指静脈画像とを比較し、2番目に[認証1]の指静脈画像と[登録2]の指静脈画像とを比較し、3番目に[認証1]の指静脈画像と[登録3]の指静脈画像とを比較し照合して一致するか否かを判断する(ステップ1604)。ここで、上記1〜3番目の比較において、2つの画像の一致度がいずれか一つの組み合わせでも閾値以上の値を示していれば認証成功とし、それ以外の場合(いずれの組み合わせでも閾値未満の値を示す)は認証失敗とする。
【0068】
照合の結果が認証成功であった場合、ATM1300の制御部1401は、利用者が希望する取引を実施する。すなわち支払取引のときには紙幣機構部1403、硬貨機構部1404を用いて利用者が希望する金額の紙幣、硬貨を出金する(ステップ1605)。
【0069】
一方、照合の結果が認証失敗であった場合、ATM1300の制御部1401は、照合部1203により、生体認証装置100から受信した[認証2]の指静脈画像と、記憶部に記憶している[登録1]、[登録2]、[登録3]の指静脈画像とを順番にそれぞれ照合する(ステップ1606)。
【0070】
ステップ1604と同様にして、[認証2]の画像が予め記憶部1202に記憶していた画像と一致するか否か照合する(ステップ1607)。
【0071】
ステップ1607で、照合の結果が認証成功であった場合には上述のステップ1605へと進み、照合の結果が認証失敗の場合、ATM1300の制御部1401は、生体認証装置100から受信した[認証3]の指静脈画像と、記憶部に記憶している[登録1]、[登録2]、[登録3]の指静脈画像とを順番にそれぞれ照合する(ステップ1608)。
【0072】
ステップ1604と同様にして、[認証3]の指静脈画像が予め記憶部1202に記憶していた画像と一致するか否か照合する(ステップ1609)。
【0073】
ステップ1609で、照合の結果が認証成功であった場合には上述のステップ1605へと進み、照合の結果が認証失敗の場合、ATM1300の制御部1401はその旨を表示入力部1301に表示する(ステップ1610)。
【0074】
生体認証のフローチャート(1)では、[認証1]で生体認証を行ったときに成功したと仮定した場合(ステップ1504でYESとなり認証成功)には[認証2]や[認証3]の指静脈画像を取得する処理(生体認証のフローチャート(2)のステップ1602に相当)が必要ない分だけ、生体認証のフローチャート(2)よりも認証にかかる時間が短くなる利点がある。また、[認証1]で生体認証が失敗し[認証2]で初めて生体認証が成功したと仮定した場合(ステップ1508でYESとなり認証成功)には[認証3]の指静脈画像を取得する処理(生体認証のフローチャート(2)のステップ1602に相当)が必要ない分だけ、生体認証のフローチャート(2)よりも認証にかかる時間が短くなる利点がある。
【0075】
一方、生体認証のフローチャート(2)では、[認証1]や[認証2]で生体認証が失敗し[認証3]で初めて生体認証が成功すると仮定した場合に、生体認証のフローチャート(1)と比べて、利用者に指の再セットを案内する処理がなく、取得した指静脈画像を送信する処理の回数が少ないため、生体認証のフローチャート(1)よりも認証時間が短くなる利点がある。
【0076】
従来の生体認証装置を用いた生体認証では、登録時に高低差のない掌支持台座に掌をのせて取得した指静脈画像しか登録しておらず、認証時にも高低差のない掌支持台座に掌をのせて取得した指静脈画像しか撮像せず、照合の組み合わせは1通りしか実行できないため指静脈情報を登録した本人が生体認証装置に指をかざしたとしても、登録時あるいは認証時に指が回転している等の原因により照合の結果が失敗となってしまう場合が多かった。
【0077】
本発明を実施することにより、予め指を回転させて取得した指静脈画像を登録及び認証に使用することで、掌支持台座が高低差のない状態で固定された生体認証装置による運用の場合に比べて、登録時と認証時での差異が小さい指静脈画像を照合させることができ、認証成功率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】生体認証装置の外観図。
【図2】生体認証装置の内部構造を示す斜視図。
【図3】生体認証装置に指をかざした状態を示す外観図。
【図4】掌支持台座の左右を同じ高さにした、上下可動形態の生体認証装置の外観図。
【図5】掌支持台座の左側を右側よりも高くした、上下可動形態の生体認証装置の外観図。
【図6】掌支持台座の右側を左側よりも高くした、上下可動形態の生体認証装置の外観図。
【図7】掌支持台座の左右を同じ高さにした、回転可動形態の生体認証装置の外観図。
【図8】掌支持台座の左側を右側よりも高くした、回転可動形態の生体認証装置の外観図。
【図9】掌支持台座の右側を左側よりも高くした、回転可動形態の生体認証装置の外観図。
【図10】本発明を適用した生体認証装置の使用例の図。
【図11】登録システムの全体構成図。
【図12】ICカードのブロック図。
【図13】生体認証装置を備えたATMの斜視図。
【図14】生体認証装置を備えたATMのブロック図。
【図15】生体認証のフローチャート(1)。
【図16】生体認証のフローチャート(2)。
【符号の説明】
【0079】
100…生体認証装置、101…撮像領域、102…光源照射部、103…ケース、104…掌支持台座、105…撮像部、106…制御部(生体認証装置の制御部)、107…駆動部、1100…窓口端末、1101…表示部、1102…操作部、1200…ICカード、1201…制御部(ICカードの制御部)、1202…記憶部(ICカードの記憶部)、1203…照合部、1300…ATM、1301…表示入力部、1302…カード機構部、1303…紙幣入出金口、1304…硬貨入出金口、1305…通帳機構部、1401…制御部(ATMの制御部)、1402…記憶部(ATMの記憶部)、1403…紙幣機構部、1404…硬貨機構部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指に対して側面から光を照射する照射部と、
前記照射部により光を照射された指を撮像する撮像部と、
指をセットした状態の時、左右方向に高低差を付けるように掌を支える掌支持部とを有することを特徴とする生体認証装置。
【請求項2】
請求項1記載の生体認証装置であって、
前記掌支持部は、左右方向に複数の掌支持部に分かれて構成し、当該複数の掌支持部の位置がそれぞれ上下に変動することで、高低差を付けることを特徴とする生体認証装置。
【請求項3】
請求項1記載の生体認証装置であって、
前記掌支持部は、左右方向に、左側掌支持部、中央掌支持部、右側掌支持部の3つに分かれて構成し、前記左側掌支持部及び前記右側掌支持部の位置が上下に変動することで、高低差を付けることを特徴とする生体認証装置。
【請求項4】
請求項1記載の生体認証装置であって、
前記掌支持部は、セットした指の長軸方向を軸として当該掌支持部を回転することで、高低差を付けることを特徴とする生体認証装置。
【請求項5】
指に対して側面から光を照射する照射部と、
前記照射部により光を照射された指を撮像する撮像部と、
掌を支え、かつ左右方向に高低差を設けることを可能にする掌支持部と、
前記掌支持部を高低差のない状態に設定して掌を支えて前記撮像部により撮像した第1の指静脈画像と、前記掌支持部を高低差のある状態に設定して掌を支えて前記撮像部により撮像した第2の指静脈画像と、を予め記憶する記憶部と、
前記掌支持部を高低差のない状態に設定して掌を支えて前記撮像部により撮像した指静脈画像と、前記記憶部に記憶された第1の指静脈画像及び/又は第2の指静脈画像とを照合する制御部とを有することを特徴とする生体認証システム。
【請求項6】
請求項5記載の生体認証システムであって、
前記制御部は、前記掌支持部を高低差のない状態に設定して掌を支えて前記撮像部により撮像した指静脈画像と、前記記憶部に記憶された第1の指静脈画像及び/又は第2の指静脈画像との照合の結果、照合失敗であったとき、前記掌支持部を高低差のある状態に設定して掌を支えて前記撮像部により撮像した指静脈画像を取得し、前記記憶部に記憶された第1の指静脈画像及び/又は第2の指静脈画像との再照合を実施することを特徴とする生体認証システム。
【請求項7】
指に対して側面から光を照射する照射部と、
前記照射部により光を照射された指を撮像する撮像部と、
掌を支え、かつ左右方向に高低差を設けることを可能にする掌支持部と、
前記掌支持部を高低差のない第1の状態に設定して掌を支えて前記撮像部により撮像した第1の指静脈画像と、前記掌支持部の左側が右側よりも高い第2の状態に設定して掌を支えて前記撮像部により撮像した第2の指静脈画像と、前記掌支持部の右側が左側よりも高い第3の状態に設定して掌を支えて前記撮像部により撮像した第3の指静脈画像とを予め記憶する記憶部と、
前記掌支持部を前記第1の状態に設定して掌を支えて前記撮像部により撮像した指静脈画像と、前記記憶部に記憶された第1の指静脈画像、第2の指静脈画像及び/又は第3の指静脈画像とを照合する制御部とを有することを特徴とする生体認証システム。
【請求項8】
請求項7記載の生体認証システムであって、
前記制御部は、前記掌支持部を前記第1の状態に設定して掌を支えて前記撮像部により撮像した指静脈画像と、前記記憶部に記憶された第1の指静脈画像、第2の指静脈画像及び/又は第3の指静脈画像との照合の結果、照合失敗であったとき、前記掌支持部を前記第2の状態又は第3の状態に設定して掌を支えて前記撮像部により撮像した指静脈画像を取得し、前記記憶部に記憶された第1の指静脈画像、第2の指静脈画像及び/又は第3の指静脈画像との再照合を実施することを特徴とする生体認証システム。
【請求項9】
請求項7又は8記載の生体認証システムであって、
前記第2の状態における前記掌支持部の左側の高さ、及び前記第3の状態における前記掌支持部の右側の高さは、変更可能であることを特徴とする生体認証システム。
【請求項10】
請求項5乃至9記載の生体認証システムであって、
前記記憶部及び前記制御部はICカードに備えることを特徴とする生体認証システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−75899(P2009−75899A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244638(P2007−244638)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】