説明

生分解性を有する水環境応答型ポリマーを含む水崩壊性組成物および水崩壊性成形体

【課題】本発明の課題は、実用性のある水環境応答性および実用上十分な架橋強度を有する新規な生分解性ポリマーを含む水崩壊性組成物および水崩壊性成形体を提供すること。
【解決手段】本発明に用いる生分解性ポリマーは、特定の脂肪族ポリオキシアルキレン部を含有するユニットと、特定の脂肪族ポリアルキレンカーボネートとを構成単位として含むことを特徴とする。このように、脂肪族ポリオキシアルキレン部を含有する脂肪族ポリマーをベースポリマーとし、該ポリマーと相溶性のない脂肪族ポリアルキレンカーボネート部分で高分子間を強固に架橋することにより、実用性のある水環境応答性および実用上十分な架橋強度を有する生分解性ブロック共重合体を含む水崩壊性組成物および水崩壊性成形体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族ポリオキシアルキレン部を含有するユニットと、脂肪族ポリアルキレンカーボネートユニットとを構成単位として含む生分解性ブロック共重合体を含有する水崩壊性組成物および該組成物を用いた水崩壊性成形体に関する。さらに詳しくは、水環境応答性の制御が可能な生分解性ブロック共重合体を含有する水崩壊性組成物および水崩壊性成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンや芳香族ポリエステル等は、一般的に優れた成形性および機械特性を有し、繊維、フィルムまたはプラスチック等として大量に使用されている。しかし、これら高分子は自然環境下では分解されないことから、近年、高分子廃棄物の増加と共に環境問題が顕在化している。そのため、微生物等により自然環境下で分解される生分解性ポリマーの開発が注目されている。生分解性ポリマーの中でも特に水環境応答性を有するポリマーはその使用環境において、廃棄後に自然環境下で分解されることは極めて有用である。
【0003】
ここで、本明細書における「水環境応答性」とは、ヒドロゲル形成性および/または水崩壊性である。「ヒドロゲル」とは、有限の水膨潤体、すなわち吸収体のことを示し、一般的には、水溶媒和性を有する線状の親水性ポリマーに、架橋により三次元網目構造性を持たせて不溶化することにより得られることが知られている。また「水崩壊性」とは、大量の水と接触することにより膨潤または崩壊する性質を示す。水環境応答性を制御することにより、おむつ、女性用ナプキン、失禁用製品のような使い捨て吸収性物品であって、水で流して捨てることができる、いわゆるフラッシャブル材料を得ることが可能となる。
【0004】
従来、ヒドロゲルとしてポリビニルアルコール系およびポリアクリル酸塩系のポリマーがよく知られている。しかしながら、これらのポリマーは化学結合による架橋であるため、水崩壊性を付与することは困難であった。そこで、水環境応答性を制御するために、疎水−親水相互作用による擬架橋部を形成する方法が提案されている(たとえば、特許文献1および2参照)。また、生分解性とするため、疎水部分に脂肪族ポリエステルを用いた生分解性ポリマーが開発されている(たとえば、特許文献3〜7参照)。
【0005】
しかしながら、脂肪族ポリエステル程度の疎水成分では、水環境における疎水結合力が不十分であった。そのため、薬物伝送のための薬剤放出制御剤や治療用フィルムなどの医療用途等に限定され、工業的に適用範囲の大きな製品、例えばフラッシャブル材料等に要求される実用的な架橋強度を得ることはできなかった。また、用途に応じて、要求される水環境適応性の吸水性および水崩壊性のいずれか一方または両方を満たすようにコントロールすることは困難であった。
【0006】
従来、吸水性、水崩壊性または生分解性の熱可塑性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール系のポリマー(たとえば、特許文献8および9参照)が知られている。しかしながら、ポリビニルアルコール系ポリマーは水溶性であるため、その使用用途によっては、例えば、撥水剤コーティング等が必要であったり、吸収量が十分でなかったり、吸収時の強度が小さかったり、水を吸収した時の強度が低下したり、表面が吸湿して溶解したり、べたついたりする等の問題があった。
【特許文献1】特公平3−32568号公報
【特許文献2】特開平10−298261号公報
【特許文献3】特開平9−100343号公報
【特許文献4】特開平9−272732号公報
【特許文献5】特表2000−500803号公報
【特許文献6】特表2002−525404号公報
【特許文献7】特表2002−513055号公報
【特許文献8】特開2002−284954号公報
【特許文献9】特開平4−208155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、実用性のある水環境応答性および実用上十分な架橋強度を有する新規な生分解性ポリマーを含む水崩壊性組成物および水崩壊性成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、脂肪族ポリオキシアルキレン部を有する脂肪族ポリマーをベースポリマーとし、該ポリマーと相溶性のない脂肪族ポリアルキレンカーボネートを架橋部分とすることにより、実用性のある水環境応答性を有する生分解性の新規ポリマーが得られ、該ポリマーを含む水崩壊性組成物および水崩壊性成形体が上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る水崩壊性組成物は下記一般式(1)で表される脂肪族ポリオキシアルキレン部を含有するユニット(P)と、下記一般式(2)で表される脂肪族ポリアルキレンカーボネートユニット(Q)とを構成単位として含む生分解性ブロック共重合体を含有することを特徴とする。
【0010】
【化2】

【0011】
[式(1)および(2)中、mおよびnはそれぞれ1以上の整数であり、かつ、m+n≧3を満たし、kは0または1であり、Aは数平均分子量300〜20,000の脂肪族ポリオキシアルキレンジオール由来の構成単位であり、Bは全炭素数が1〜18の脂肪族炭化水素基であり、Eは全炭素数が1〜18の脂肪族炭化水素基である。]
本発明には上記水崩壊性組成物を用いた水崩壊性成形体を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、実用性のある水環境応答性を有し、かつ、それをコントロールすることが可能であり、実用上十分な架橋強度を有するとともに、自然環境への影響が小さい生分解性ポリマーを用いた水崩壊性組成物および水崩壊性成形体が得られる。本発明のポリマーは、生分解可能であり、該ポリマーを含む水崩壊性組成物は吸収性材料または水崩壊性材料、さらには吸収性および水崩壊性の両方を有するため工業的に極めて価値がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る水崩壊性組成物は後述する生分解性ブロック共重合体を含有する。
[生分解性ブロック共重合体]
本発明に用いる生分解性共重合体は下記一般式(1)で表される脂肪族ポリオキシアルキレン部を含有するユニット(P)と、下記一般式(2)で表される脂肪族ポリアルキレンカーボネートユニット(Q)とを構成単位として含む。
【0014】
【化3】

【0015】
[式(1)および(2)中、mおよびnはそれぞれ1以上の整数であり、かつ、m+n≧3を満たし、kは0または1であり、Aは数平均分子量300〜20,000の脂肪族ポリオキシアルキレンジオール由来の構成単位であり、Bは全炭素数が1〜18の脂肪族炭化水素基であり、Eは全炭素数が1〜18の脂肪族炭化水素基である。]
本発明における脂肪族ポリオキシアルキレン部Aを有するユニット(P)は、脂肪族ポリオキシアルキレンに由来する構成単位、または脂肪族ポリオキシアルキレン部Aと脂肪族ジカルボン酸由来のユニットとからなる脂肪族ポリエステルに由来する構成単位である。
【0016】
脂肪族ポリオキシアルキレン部Aを有する脂肪族ポリエステルは、たとえば、両末端に1級の水酸基を有するポリアルキレングリコールと脂肪族ジカルボン酸もしくはその無水物とのポリエステル化反応により製造可能である。脂肪族ポリオキシアルキレン部Aを有する脂肪族ポリエステルとしては両末端に水酸基を有するものが好ましい。
【0017】
脂肪族ポリオキシアルキレン部は、J.Ferment.Technol.,53,757(1975年)に記載されているように、酸化還元酵素により酸化分解を受けて生分
解することが知られている。また、エステル結合も、エステラーゼと総称される加水分解酵素により、生分解性を有することが広く知られており、脂肪族ポリエステル系ポリマーが生分解性材料として広く検討されている所以でもある。従って、本発明で用いられる脂肪族ポリオキシアルキレン部を含有するユニット(P)も生分解性を有する。
【0018】
上記ユニット(P)に含有される脂肪族ポリアルキレングリコールとしては、親水性を有しているものが好ましく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングルコール、ポリテトラメチレングリコール等を挙げることができる。特に親水性および生分解性の観点からポリエチレングリコールが好ましい。また、その分子量は、数平均分子量が300〜20,000、好ましくは400〜10,000、さらに好ましくは500〜6,000の範囲である。
【0019】
上記脂肪族ジカルボン酸由来のユニットは、炭素数が1〜18、好ましくは2〜10の脂肪族炭化水素基を有する脂肪族ジカルボン酸に由来する。好ましい脂肪族ジカルボン酸としては、たとえば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸およびセバシン酸を挙げることができる。ポリエステル化の反応に際しては、これら脂肪族ジカルボン酸の無水物を使用しても何ら差し支えない。
【0020】
ポリエステル化反応は公知公用の方法を用いることができる。たとえば、触媒として、チタニウムイソプロポキシド、チタニウムイソブトキシド、チタニウムオキシアセチルアセトネート等のチタンの有機化合物の存在下、共沸溶媒を用いる方法や減圧下加熱する方法等により、生成水を取り除きながら反応させることが効率的である。
【0021】
具体的には、第一段階として、原料ポリアルキレングリコールおよび脂肪族ジカルボン酸を、Dean-Stark装置(水分離器)を取り付けた反応器を用いて、触媒存在下
、ジエチルベンゼン等の共沸溶媒で還流し、生成水を取り除きながらポリエステル化の反応を行う。原料が消失した後、第二段階として、溶媒を留去し、減圧下さらに温度を上げて生成水を取り除きながら反応を継続することにより高分子量化が可能である。この際の原料のポリアルキレングリコールの水酸基量と脂肪族ジカルボン酸の酸量との比は、得られる脂肪族ポリエステルの分子量に大きく影響する。
【0022】
得られる脂肪族ポリエステルは、少なくとも一方、好ましくは両方の末端が水酸基であることが好ましい。脂肪族ポリエステルの少なくとも一方を水酸基とするための水酸基量/カルボン酸量比は、好ましくは1.05〜1.50、さらに好ましくは1.10〜1.30の範囲である。水酸基量/カルボン酸量比が1.05より小さいと未反応のカルボン酸基が残存するため、後工程でのブロック共重合に悪影響を及ぼすことがあり、1.50より大きいと得られる脂肪族ポリエステルの分子量が低くなり、吸水性や強度の低下等、水環境応答性への悪影響が予想される。
【0023】
次に、本発明における脂肪族ポリアルキレンカーボネートユニット(Q)は、脂肪族ポリアルキレンカーボネート由来の構成単位である。好ましい脂肪族ポリアルキレンカーボネートとしては、ポリエチレンカーボネートおよびポリプロピレンカーボネートが挙げられる。脂肪族ポリアルキレンカーボネートに関しては、Polymer Bulletin,42,419(1999年)に記載されているように、その生分解性が既に報告されている。
【0024】
脂肪族ポリアルキレンカーボネートの製造方法としては公知公用の方法を用いることができる。たとえば、特開平3-28227号公報に記載されているように、亜鉛系触媒の
存在下、炭酸ガスとエポキシドとの共重合により製造することができる。触媒を分離した精製後の脂肪族ポリアルキレンカーボネートの両末端は1級の水酸基である。
【0025】
本発明では、脂肪族ポリアルキレンカーボネートブロックの分散性を向上させるため、脂肪族ポリアルキレンカーボネートは低分子量であること、具体的には、数平均分子量が50,000以下、好ましくは300〜30,000であることが望ましい。しかしながら、上記合成反応で得られる脂肪族ポリアルキレンカーボネートは、一般的には100,000以上の高分子量である。そこで、脂肪族ポリアルキレンカーボネートが、塩基触媒下、加水分解を受けて低分子量化(分解)することを利用し、合成した脂肪族ポリアルキレンカーボネートを必要に応じて加水分解により低分子量化させた後、ブロック共重合に供することも可能である。
【0026】
脂肪族ポリオキシアルキレン部を含有するユニット(P)と脂肪族ポリアルキレンカーボネートユニット(Q)との構成比は、重量比で表すと、ユニット(P)100に対してユニット(Q)は、好ましくは1〜1000、さらに好ましくは3〜900である。
【0027】
本発明では、脂肪族ポリオキシアルキレン部を含有するユニット(P)と脂肪族ポリアルキレンカーボネートユニット(Q)とを含んでなる生分解性共重合体に、連鎖延長剤(S)由来のユニットが含まれていてもよい。前記連鎖延長剤(S)は、ユニット(P)およびユニット(Q)に対し、同種または異種の高分子鎖同士を連結して高分子鎖を延長させるものであれば特に限定されないが、水酸基と反応する官能基を複数有するものが好ましい。また、前記水酸基と連鎖延長剤(S)との連結結合が、エステル結合、カーボネート結合またはウレタン結合となるものが好ましい。
【0028】
連結結合がエステル基となるものとしては、たとえば、
二塩化オキサリル、二塩化スクシニル、二塩化アジポイル、二塩化セバコイル、二塩化ドデカンジオイル等の分子内に2つの酸クロリド基を有する連結剤;
N,N’-サクシルビスカプロラクタム、N,N’-アジピルビスブチロラクタム、N,N’-スベリルビスカプロラクタム、N,N’-サクシルビスピペリドン、N,N’-アジピ
ルビスピペリドン等のN,N’-アシルビスラクタム化合物;
コハク酸ジフェニル、グルタル酸ジフェニル、アジピン酸ジフェニル、セバシン酸ジフェニル等の脂肪族ジカルボン酸ジアリールエステル
などが挙げられる。
【0029】
連結結合がカーボネート結合となるものとしては、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。
【0030】
連結結合がウレタン結合となるものとしては、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。ウレタン反応の場合は必要に応じて、触媒としてジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)等の一般的なウレタン反応触媒を用いることもで
きる。
【0031】
上記連鎖延長剤(C)で、末端水酸基を有する脂肪族ポリオキシアルキレンもしくは脂肪族ポリエステルと、末端水酸基を有する脂肪族ポリアルキレンカーボネートとを結合させる際に、その連鎖延長剤(C)の官能基量と総水酸基量との比(官能基量/総水酸基量)は、生成するブロック共重合体の分子量に影響する。前記の比が1.0に近いほど高分子量のものが得られる。機械的強度や分散性向上の面から1.0に近い条件で連結させることが好ましい。
【0032】
ブロック共重体の各ユニットと連鎖延長剤(C)との重量比は、各ユニットの数平均分子量や組成比に応じて異なるが、各ユニット総重量100に対して連鎖延長剤(C)の量は好ましくは0.5〜50である。あまりにも連鎖延長剤(C)の量が多すぎるとブロック共重合体の水環境応答性が低下する。
【0033】
本発明に係る生分解性ブロック共重合体は、下記一般式(3)で表される脂肪族ポリオキシアルキレン部を含有するジオール(R)と、下記一般式(4)で表される脂肪族ポリアルキレンカーボネート(T)とを連鎖延長剤(S)で連結することによって製造することができる。
【0034】
【化4】

【0035】
[式(3)および(4)中、mおよびnはそれぞれ1以上の整数であり、かつ、m+n≧3を満たし、kは0または1であり、Aは数平均分子量300〜20,000の脂肪族ポリオキシアルキレンジオール由来の構成単位であり、Bは全炭素数が1〜18の脂肪族炭化水素基であり、Eは全炭素数が1〜18の脂肪族炭化水素基である。]
末端水酸基を有する脂肪族ポリオキシアルキレン部を含有し、両末端が水酸基であるジオール(R)と、末端水酸基を有する脂肪族ポリアルキレンカーボネート(T)とを連鎖延長剤(C)で連結する反応について具体的に説明する。例えば、分子内に2つの酸クロリド基を有する二塩化オキサリル等の連鎖延長剤を用いる場合、攪拌棒を付けた丸底フラスコに各ユニットを入れ、加熱下攪拌して予め混合させた後、シリンジ等で二塩化オキサリルを注入する。反応は窒素気流下で行い、発生する塩化水素を取り除きながら反応を継続する。この際、連結反応に不活性であれば、各ユニットを共に溶解するトルエン等の溶媒を用いても差し支えない。反応終了後は冷却して反応器内からポリマーを取り出すが、ポリマーは吸湿性を有しているので、必要であれば窒素ボックス等を用い、乾燥条件下でポリマーを取り扱う。
【0036】
本発明の生分解性ブロック共重合体の構成物である脂肪族ポリアルキレンカーボネートユニット(Q)は、脂肪族ポリオキシアルキレン部を含有するユニット(P)と相溶性を持たないため、高分子間でユニット(Q)が集合または融着し、物理架橋を形成する。
【0037】
生分解性ブロック共重合体の水環境応答性における吸水性に関しては、吸水部分である
脂肪族ポリオキシアルキレン部の分子量および共重合体中における含有度、さらに物理架橋の架橋度により決定される。この際、物理架橋の架橋度は、ユニット(Q)の共重合体中における含有度およびユニット(Q)の分子量に依存する。また、水崩壊性に関しては物理架橋の架橋度により決定される。
【0038】
本発明で示す実用的な架橋強度とは、ポリビニルアルコール系やポリアクリル酸塩系ポリマー架橋体の架橋部分である共有結合に匹敵する架橋強度である。前記ポリマーは実用的な架橋強度を有しているので、工業的なヒドロゲルとしてよく知られているが、水崩壊性および生分解性を示さない。共有結合による架橋では水崩壊性および生分解性を持たせることができないので、共有結合によらない架橋構造を有するヒドロゲルとして、疎水−親水相互作用により擬架橋部を形成させる方法が知られている。この方法によれば大量の水による水崩壊性を持たせることが可能である。一般的には、ハイドロフォーブと称する一価疎水基の特定の集群を、水溶性ポリマー骨格に導入する手法がよく用いられる。
【0039】
特公平3-32568号公報によると、前記ハイドロフォーブによる疎水結合の強さは
、溶媒である水と会合した疎水基とのそれぞれのモル容量間の大きな相違、ならびに各溶解度間の大きな差異が存在する場合において、強固な疎水会合が可能となる。従って、最も好ましいハイドロフォーブは、特開平10-298261号公報に記載されているよう
に、アルキル、アリール、アラルキルの炭化水素基であり、長鎖状でかつ分岐状の疎水基がより効果的である。しかしながら、このようなハイドロフォーブは生分解性を有していないため、解決策として生分解性の脂肪族ポリエステルを疎水成分とする検討も行われているが、脂肪族ポリエステルでは、ハイドロフォーブとしての疎水性を与えることは非常に困難であり、疎水結合力が不十分であるため、実用的な架橋強度は達成できない。
【0040】
本発明で用いる生分解性ブロック共重合体は、脂肪族ポリアルキレンカーボネートユニット(Q)が、脂肪族ポリオキシアルキレン部を含有するユニット(P)と相溶性を持たないことを利用し、分子間で脂肪族ポリアルキレンカーボネートユニット(Q)が集合または融着して架橋部を形成する。架橋部を引き離すためにはポリマーそのものを引き裂く力が必要となるため、強力な架橋強度を与えることが可能となる。
【0041】
[水崩壊性組成物]
本発明の水崩壊性組成物は前述の生分解性ブロック共重合体を含んでおり、吸水性を示し、かつ、大量の水中では崩壊性を示すものをいう。また水崩壊性組成物のその他の成分としてはポリエチレングリコール、ビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどの通常の生分解性ポリマーを含んでいてもよく、また本発明の水崩壊性組成物は、目的に応じてさらに各種添加剤含んでいても良い。添加剤としては、例えば、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、離型剤、無機添加剤、結晶核剤、耐電防止剤、顔料、アンチブロッキング剤などが挙げられる。
【0042】
具体的態様としては本発明の水崩壊性組成物を用いたホットメルト接着剤、水系紙塗工用組成物、易剥離性粘着材、熱転写媒体および成形体などが挙げられる。
本発明の水崩壊性組成物を用いたホットメルト接着剤は、衛生材料用、包装用、断熱材用および木工用等様々な用途で用いることが出来る。また本発明のホットメルト接着剤を用いた製品は、該ホットメルト接着剤が水崩壊性を有しているため、製品として使用後、水によって洗浄を行うことにより接着部を解離することができる。
【0043】
本発明の水崩壊性組成物を用いた水系紙塗工用組成物は、紙、金属、プラスチック等の基板上に塗工することにより印刷適性の改良や基盤の保護コーティングが可能になる。また、本発明の水系紙塗工用組成物が塗工された紙等の基盤を回収し、再使用するに際し、水または温水で洗浄することにより水系紙塗工用組成物を取り除くことができるため紙等
の基盤を回収することが容易に可能である。
【0044】
本発明の水崩壊性組成物を用いた易剥離性粘着材は、水崩壊性組成物として生分解性ブロック共重合体に加えて、剥離性調整剤を含むことが好ましい。前記剥離性調整剤としてはスリップ剤、静電気防止剤および撥水剤としての作用を有する成分を用いることができる。本発明の易剥離性粘着材は衛生材の保護シートとして用いることができ、剥離の際に剥離性調整剤を含んでいるため容易に剥離することが可能である。また複雑な形状を保護している場合、易剥離性粘着材が衛生材などの保護を目的とする部材に残る場合があるが、本発明の易剥離性粘着材では洗浄することにより容易に取り除くことができるため保護面を傷つけることがないため好ましい。
【0045】
本発明の水崩壊性組成物を用いた熱転写媒体は、水崩壊性組成物として生分解性ブロック共重合体に加えて、染料および/または顔料を含んでおり、可塑剤をさらに含むことが好ましい。本発明の熱転写媒体は水崩壊性を有するため、フィルム等に転写した後、転写画像を容易に削除することができる。
【0046】
[水崩壊性成形体]
本発明の水崩壊性成形体は前述の生分解性ブロック共重合体を含む水崩壊性組成物から成り、吸水性を示し、かつ、大量の水中では崩壊性を示すものをいう。
【0047】
本発明の水崩壊性成形体は繊維であっても良い。吸水性と水崩壊性を兼ね備えている本発明の水崩壊性繊維は、該繊維を更に加工した不織布、医療用衣服として用いても良い。
該水崩壊性繊維を得る方法としては、公知の紡糸方法が適用され、単独紡糸でも複合紡糸でもよく、特に複合紡糸の形態としては、芯鞘型および並列型複合紡糸が挙げられる。具体的な紡糸方法としては、上記水崩壊性組成物を、押出機を用いて溶融紡糸する溶融紡糸法;上記水崩壊性組成物を溶媒に溶解して溶液とした後、該溶液をノズルから貧溶媒中に吐出させる湿式紡糸法;該溶液をノズルから乾燥気体中に吐出させる乾式紡糸法などが挙げられる。なお、前記溶融紡糸法には、一軸押出機や二軸押出機等の公知の押出機を用いることができる。
【0048】
本発明の繊維は、130℃における熱収縮率が、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下である。熱収縮率が10%以下であると、熱成型加工等での収縮がほとんどなく、製品化が容易であり、また、100℃近い高温環境下にさらされるような使用形態でも、形態保持性に優れる。
【0049】
本発明の水崩壊性成形体は不織布であっても良い。水崩壊性を有する不織布を構成する単繊維または複合繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよく、使用目的により適宜選択できる。また本発明の水崩壊性成形体は該不織布を更に加工した水切り袋、医療用衣服、シートであっても良い。
【0050】
本発明の不織布の製造方法としては、特に制限がなく、公知の方法、例えば、乾式法、スパンボンド法、メルトブロー法、湿式法などが挙げられる。すなわち、上記水崩壊性組成物を上記のような方法で紡糸した後、ウェブと呼ばれる繊維の塊状態を形成し、該ウェブを従来公知の方法により結合することにより得られる。
【0051】
上記ウェブの製造方法としては特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、フラットカード機、ローラカード機、ガーネット機等を用いるカード式や、メルトブロー式などが挙げられる。また、樹脂を紡糸する際、紡糸機のノズルから繊維が出るときに高速空気を吹き付け、気流に直角な穴あきコンベア上に集めてウェブを形成させるスパンボンド式でもよい。
【0052】
上記のようにして得られたウェブから本発明の水崩壊性不織布を得る方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば、針により交絡させるニードルパンチ法、糸により交絡させるステッチボンド法、水流により交絡させるスパンレース法、ジェットボンド法、熱により接着させるサーマルボンド法、接着剤を利用するケミカルボンド法、レジンボンド法などが挙げられる。
【0053】
本発明の水崩壊性成形体はフィルムであっても良い。上述した水崩壊性組成物を公知のフィルムの成膜法、例えばキャスティング法、エキストルージョン法(中でもTダイ法、
インフレーション法)、カレンダー法を用いて成膜することにより水崩壊性を有するフィルムを得ることができる。本発明の水崩壊性成形体は該フィルムを更に加工した包装用フィルム、包装袋、コンポスト袋、レジ袋、ゴミ袋およびシュリンクフィルムであっても良い。
【0054】
特に生ゴミ用のゴミ袋として用いることが好ましい。本発明のゴミ袋は生ゴミをゴミ袋へ捨てる程度の水分では崩壊せずに、回収後、崩壊させることにより生ゴミと一緒に生ゴミの資源化処理することが可能となり好ましい。
【0055】
現在、環境保護の観点から生ゴミの資源化(例えばバイオガス、液肥としての資源化)が検討されているが、通常は各家庭で生ゴミを他のゴミとは別の容器に回収し、数件〜数十件の家庭が利用する集積場所に設置された大型の容器に移し、回収、資源化を行っているが、大型の容器に移す際には生ゴミが有する臭気が問題となっている。本発明のフィルムを用いて作成したゴミ袋を用いた場合には水崩壊性、生分解性を有しているためゴミ袋を同時に回収し、資源化することが可能となる。このため臭気等感じることなく回収できるため回収率の向上が期待される。
【0056】
本発明の水崩壊性成形体は保護フィルムであっても良い。本発明の保護フィルムはヘルメットのシールド部分や、スキーなどに用いられるスポーツ用ゴーグルのレンズ部分に装着または貼り付けて用いられ、水、泥、油などが付着して視界を遮る場合にこれを剥ぎ取り視界を確保する目的で使用される。本発明の保護フィルムは水崩壊性があるため仮に自然環境中に散乱した場合であっても土壌中、水中で水崩壊するため好ましい。
【0057】
本発明の水崩壊性成形体は通気性を有する多孔フィルムであっても良い。上述した生分解性ブロック共重合体を含む水崩壊性組成物をエキストルージョン法等、好ましくはTダ
イ法を用いて成膜し、その後延伸することにより、多孔フィルムを得ることができる。多孔フィルムを得るためには、水崩壊性組成物の一部として微粉状充填剤(無機質微粉体および/または有機質微粉体)を含有することが好ましい。
【0058】
本発明の水崩壊性成形体は農園芸資材であっても良い。農園芸資材としては、マルチフィルム、育苗ポット、農園芸テープ、果実栽培袋、杭、薫蒸シート、ビニールハウス用フィルム等が挙げられる。例えば育苗ポットとして用いた場合にはその水崩壊性を調整することにより苗を育成している段階および流通段階では充分な強度を有し、土壌に埋設後に分解させることが可能であり、苗を育成後土壌埋没前に育苗ポットを取り外す手間をなくすことが可能となる。
【0059】
本発明の水崩壊性成形体は農薬用包装材であっても良い。詳しくはそのまま水田等へ投入できる、農薬原体または製剤を封入した袋状ないしボトル状等の包装材として用いる。従来用いられてきた包装材は農薬を入れた後にヒートシールにより接着して袋にしていたが、本発明の水崩壊性成型体は表面を水でぬらして張り合わせるだけで接着性が発現するので、非加熱包装が可能であり、特に熱により変性しやすい農薬を包装する際などは、熱
をかけることなく包装することができるため有用である。また、農薬用包装材は袋状だけでなく、使用方法に応じた様々な形に成形可能である。
【0060】
本発明の水崩壊性成形体はペット汚物処理材であっても良い。ペット汚物処理剤としては、ペット汚物回収袋やペット用シートに用いる不織布、フィルム、シートなどが挙げられる。例えばペット汚物回収袋として用いた場合には、その水崩壊性によりペットの汚物を入れた後そのままトイレに流すことができるため好ましい。
【0061】
本発明の水崩壊性成形体は徐放性薬剤、具体的には徐放性を有する医薬、農薬、動物用薬品、肥料であっても良い。本発明の水崩壊性成形体を徐放性薬剤として医薬や動物用薬品などに用いた場合、一般に生体内の水によって徐徐に分解し、それに伴い、長時間安定した量の薬効成分を放出することができる。また本発明の水崩壊性成形体を農薬や肥料などに用いた場合、地中の水分等によって任意の時間で水崩壊性成形体を分解させることにより、任意の時間で薬剤を放出することが可能である。
【0062】
本発明の水崩壊性成形体は電気機器の筐体であっても良い。具体的にはパソコンや家電製品の筐体として用いることができる。通常の電気機器はその使用の際に乾燥雰囲気であることが好まれるが、本発明の水崩壊性成形体は吸水性があるため、電気機器の筐体として用いることにより筐体内部を低湿度に保つことができる。
【0063】
本発明の水崩壊性成形体は加工助剤、具体的には樹脂成形時の中子であっても良い。本発明の水崩壊性成形体を樹脂成形時の中子として用いた場合、成形後に水で洗浄することによって、水崩壊性成形体を容易に取り除くことが出来るため、様々な形状の樹脂成形体を容易に作成することができる。
【0064】
本発明の水崩壊性成形体は湿潤シートであっても良い。詳しくは人体の清拭やトイレ等の器物の清拭に使用される汚れ拭き取り用の湿潤シート(ウェットワイプスともいう)として用いることができる。本発明の水崩壊性成形体は吸水性があるため、様々な薬液を含有する湿潤シートとすることができ、更に大量の水によって水崩壊性があるため、使用後にトイレなどに流すことが可能であるため、汚れ拭き取り用の湿潤シートとして好適に用いることができる。
【0065】
本発明の水崩壊性成形体は酸吸収剤であってもよい。酸吸収剤は、水中でアルカリ性を示す塩を混合した水崩壊性組成物を成形することにより得られる。酸吸収剤を排水管などに装填することで、酸を吸収し、中和することができるため、排水処理用途などに用いることができる。本発明の水崩壊性成形体は自然界ヘ拡散した場合であっても生分解性を有するため環境への負荷が少なく好ましい。水中でアルカリ性を示す塩としては、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウムなどが好ましい。これらの塩は一種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。水崩壊性組成物全体を100重量部とすると、混合する塩の割合は、好ましくは0.1〜30重量部、さらに好ましくは0.5〜20重量部である。水中でアルカリ性を示す塩を混合した水崩壊性組成物を得る方法としては溶融混練法などの公知の方法を用いることができる。
【0066】
本発明の水崩壊性成形体はアルカリ吸収剤であってもよい。アルカリ吸収剤は、水中で酸性を示す塩を混合した水崩壊性組成物を成形することにより得られる。アルカリ吸収剤を排水管などに装填することで、アルカリを吸収し、中和することができるため、排水処理用途などに用いることができる。本発明の水崩壊性成形体は自然界ヘ拡散した場合であっても生分解性を有するため環境への負荷が少なく好ましい。水中で酸性を示す塩としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムなどが好ましい。これらの塩は一種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。水崩壊性組成物全体を100重量部とする
と、混合する塩の割合は、好ましくは0.1〜30重量部、さらに好ましくは0.5〜20重量部である。水中で酸性を示す塩を混合した水崩壊性組成物を得る方法としては溶融混練法などの公知の方法を用いることができる。
【0067】
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0068】
<製造例1> 脂肪族ポリオキシアルキレン部を含有する両末端が水酸基であるポリエステル(R-1)の合成
Dean-Stark装置(水分離器)を取り付けた3000mlの攪拌棒付丸底フラ
スコに、無水コハク酸90.40g(0.904mol)、分子量1000の関東化学(株)製「ポリエチレングリコール1000」990.10g(0.990mol)、触媒としてチタニウムイソプロポキシド1.63gを入れた。これに共沸溶媒としてジエチルベンゼン800mlを加え、8時間還流した。次に、溶媒を減圧下留去し、5mmHgの減圧下、200℃で5時間攪拌し、ポリエステル化反応を行った。冷却後、得られたポリエステルをGPC測定(溶離液DMF、標準ポリエチレンオキシドから校正曲線を作成)した結果、重量平均分子量は22,000であり、数平均分子量は12,000であった。また、末端水酸基価は9.55KOHmg/g、酸価は1.27KOHmg/gであった。
【0069】
<製造例2> 両末端が水酸基である脂肪族ポリアルキレンカーボネート(PEC S-2)の合成
特開平3-28227号明細書に従い、下記の方法で両末端が水酸基であるポリエチレ
ンカーボネート(PEC S-1)を合成し、得られたPEC S-1をオリゴマー化して
脂肪族ポリアルキレンカーボネート(PEC S-2)を合成した。
【0070】
(1)触媒調製
市販の酸化亜鉛10.4g、グルタル酸16.3g、硫化亜鉛0.25gおよびジオキサン23.1gを、直径15.8mmのステンレス製ボール30個および直径19mmのステンレス製ボール30個が収容された内容積500mlのステンレス製ボールミル内筒に仕込み、遊星ボールミルにて加速度3.5Gで9時間粉砕接触させた。得られた接触処理物を150℃、3hrで減圧乾燥させて、亜鉛含有触媒を得た。
【0071】
(2)重合
内容積3000ccのオートクレーブに、89ppmの水分を含有する893.90gの1,3-ジオキソラン、上記亜鉛含有触媒2.40gおよびエチレンオキサイド219
.00gを仕込み、室温にて炭酸ガスを圧力1.5MPaとなるよう加えた。その後、80 ℃まで昇温し、2時間重合を行った。昇温直後には、2.7MPaまで圧力は上昇し
たが、反応とともに炭酸ガスが消費され圧力は降下した。重合終了後、オートクレーブを冷却した後、脱圧し、重合液を取り出した。重合液は、ポリマーが完全に溶解した状態であった。取り出したポリマー溶液を、孔径1ミクロンのフィルターにより濾過し、固体である亜鉛含有触媒を除去し、濾液を乾燥してポリマーを得た。ポリマーの収量は217.70gであった。また、得られたポリエチレンカーボネート(PEC S-1)のGPC
測定による数平均分子量は48,000であった。
【0072】
得られたポリエチレンカーボネート(PEC S-1)を塩基触媒下、加水分解により
オリゴマー化を行った。具体的には、2000mlの攪拌棒付丸底フラスコに、上記ポリエチレンカーボネート(PEC S−1)78.56g、触媒として炭酸ナトリウム水溶液1.75g、水175mlおよび1,3-ジオキソラン700mlを入れ、70℃で7
時間攪拌した。放冷後、触媒中和量の硫酸を加え、ジオキソランを減圧留去した。得られた反応物を分液ロートに入れ、塩化メチレン400mlで2回抽出した。得られた油層を水200mlで6回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、塩化メチレンをロータリーエバポレーターで減圧留去した。得られたポリエチレンカーボネートオリゴマー(PEC
S-2)は27.50gであった。GPC測定の結果、オリゴマー(PEC S-2)の数平均分子量は5200に減少していた。13C-NMRにより、水酸基隣接炭素量と主鎖
中の炭素量とを求め、末端水酸基量を算出した結果、0.36mmol/gであった。
【実施例1】
【0073】
ブロック共重合体(1)の合成
100mlの攪拌棒付丸底フラスコに、製造例1で製造したポリエステル(P-1)2
7.30g、製造例2で製造したオリゴマー(PEC S-2)3.00g(重量比9:
1)、溶媒としてトルエン30mlを加え90℃で混合した。これに連鎖延長剤としてヘキサメチレンジイソシアネート0.46g(2.75mmol)をシリンジで加え、さらに触媒としてジブチル錫ジラウレートを50mgをシリンジで装入した。90℃で4時間攪拌した。後に熱プレスによるフィルム化を行うため、酸化防止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール0.30gを加えて混合した後、トルエンを減圧留去
することで、ブロック共重合体(1)30.60gを得た。得られたポリマーの重量平均分子量は136,000、数平均分子量は49,000であった。
【実施例2】
【0074】
ブロック共重合体(2)の合成
100mlの攪拌棒付丸底フラスコに製造例1で製造したポリエステル(P-1)24
.37g、製造例2で製造したオリゴマー(PEC S-2)6.18g(重量比8:2
)、溶媒としてトルエン30mlを加え90℃で混合した。これに連鎖延長剤としてヘキサメチレンジイソシアネート0.48g(2.87mmol)をシリンジで加え、さらに触媒としてジブチル錫ジラウレートを50mgをシリンジで装入した。90℃で4時間攪拌した。酸化防止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを0.30
g加えて混合した後、トルエンを減圧留去することで、ブロック共重合体(2)30.90gを得た。得られたポリマーの重量平均分子量は126,500、数平均分子量は44,000であった。
【実施例3】
【0075】
ブロック共重合体(3)の合成
100mlの攪拌棒付丸底フラスコに製造例1で製造したポリエステル(P-1)21
.37g、製造例2で製造したオリゴマー(PEC S-2)9.09g(重量比7:3
)、溶媒としてトルエン30mlを加え90℃で混合した。これに連鎖延長剤としてヘキサメチレンジイソシアネート0.51g(3.00mmol)をシリンジで加え、さらに触媒としてジブチル錫ジラウレートを50mgをシリンジで装入した。90℃で4時間攪拌した。酸化防止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを0.30
g加えて混合した後、トルエンを減圧留去することで、ブロック共重合体(3)31.00gを得た。得られたポリマーの重量平均分子量は92,000、数平均分子量は34,000であった。
【実施例4】
【0076】
ブロック共重合体(4)の合成
100mlの攪拌棒付丸底フラスコに製造例1で製造したポリエステル(P-1)15
.35g、製造例2で製造したオリゴマー(PEC S−2)15.09g(重量比5:5)、溶媒としてトルエン30mlを加え90℃で混合した。これに連鎖延長剤としてヘキサメチレンジイソシアネート0.72g(4.31mmol)をシリンジで加え、さら
に触媒としてジブチル錫ジラウレート50mgをシリンジで装入した。90℃で4時間攪拌した。酸化防止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを0.30
g加えて混合した後、トルエンを減圧留去することで、ブロック共重合体(4)31.10gを得た。得られたポリマーの重量平均分子量は82,000、数平均分子量は23,000であった。
【0077】
<製造例3> 両末端が水酸基である脂肪族ポリアルキレンカーボネート(PEC S-3)の合成
製造例2で合成したポリエチレンカーボネート(PEC S-1)を用い、塩基触媒下
、加水分解によりオリゴマー化を行った。2000mlの攪拌棒付丸底フラスコに、上記ポリエチレンカーボネート(PEC S-1)100.99g、触媒として炭酸ナトリウ
ム水溶液1.70g、水180mlおよび1,3-ジオキソラン820mlを入れ、60
℃で6時間攪拌した。放冷後、触媒中和量の硫酸を加え、ジオキソランを減圧留去した。得られた反応物を分液ロートに入れ、塩化メチレン400mlで2回抽出した。得られた油層を水200mlで6回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、塩化メチレンをロータリーエバポレーターで減圧留去した。得られたポリエチレンカーボネートオリゴマー(PEC S-3)は77.86gであった。GPC測定の結果、オリゴマー(PEC S-3)の数平均分子量は10,800に減少していた。13C-NMRにより、水酸基隣接炭
素量および主鎖中の炭素量を求め、末端水酸基量を算出した結果、0.20mmol/gであった。
【実施例5】
【0078】
ブロック共重合体(5)の合成
100mlの攪拌棒付丸底フラスコに、製造例1で製造したポリエステル(P-1)2
7.03g、製造例3で製造したオリゴマー(PEC S-3)3.12g(重量比9:
1)、溶媒としてトルエン30mlを加え90℃で混合した。これに連鎖延長剤としてヘキサメチレンジイソシアネート0.35g(2.11mmol)をシリンジで加え、さらに触媒としてジブチル錫ジラウレートを50mgをシリンジで装入した。90℃で4時間攪拌した。酸化防止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを0.3
0g加えて混合した後、トルエンを減圧留去することで、ブロック共重合体(5)30.40gを得た。得られたポリマーの重量平均分子量は87,000、数平均分子量は33,000であった。
【実施例6】
【0079】
ブロック共重合体(6)の合成
100mlの攪拌棒付丸底フラスコに、製造例1で製造したポリエステル(P-1)2
4.70g、製造例3で製造したオリゴマー(PEC S-3)6.14g(重量比8:
2)、溶媒としてトルエン30mlを加え90℃で混合した。これに連鎖延長剤としてヘキサメチレンジイソシアネート0.37g(2.19mmol)をシリンジで加え、さらに触媒としてジブチル錫ジラウレートを50mgをシリンジで装入した。90℃で4時間攪拌した。酸化防止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを0.3
0g加えて混合した後、トルエンを減圧留去することで、ブロック共重合体(6)30.80gを得た。得られたポリマーの重量平均分子量は116,000、数平均分子量は41,000であった。
【実施例7】
【0080】
ブロック共重合体(7)の合成
100mlの攪拌棒付丸底フラスコに、製造例1で製造したポリエステル(P-1)2
1.66g、製造例3で製造したオリゴマー(PEC S-3)9.31g(重量比7:
3)、溶媒としてトルエン30mlを加え90℃で混合した。これに連鎖延長剤としてヘ
キサメチレンジイソシアネート0.37g(2.19mmol)をシリンジで加え、さらに触媒としてジブチル錫ジラウレートを50mgをシリンジで装入した。90℃で4時間攪拌した。酸化防止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを0.3
0g加えて混合した後、トルエンを減圧留去することで、ブロック共重合体(7)31.00gを得た。得られたポリマーの重量平均分子量は107,000、数平均分子量は34,000であった。
【実施例8】
【0081】
ブロック共重合体(8)の合成
100mlの攪拌棒付丸底フラスコに、製造例1で製造したポリエステル(P-1)1
8.54g、製造例3で製造したオリゴマー(PEC S-3)18.68g(重量比5
:5)、溶媒としてトルエン30mlを加え90℃で混合した。これに連鎖延長剤としてヘキサメチレンジイソシアネート0.49g(2.89mmol)をシリンジで加え、さらに触媒としてジブチル錫ジラウレートを50mgをシリンジで装入した。90℃で4時間攪拌した。酸化防止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを0.
30g加えて混合した後、トルエンを減圧留去することで、ブロック共重合体(8)36.11gを得た。得られたポリマーの重量平均分子量は83,000、数平均分子量は21,000であった。
【実施例9】
【0082】
ブロック共重合体(9)の合成
100mlの攪拌棒付丸底フラスコに、製造例1で製造したポリエステル(P-1)2
4.27g、製造例2で製造したオリゴマー(PEC S-2)6.15g(重量比8:
2)、溶媒としてトルエン30mlを加え90℃で混合した。これに連鎖延長剤として二塩化アジポイル0.56g(3.05mmol)をシリンジで装入した。90℃で5時間攪拌後、酸化防止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを0.30
g加えて混合した後、トルエンを減圧留去することで、重合体(9)30.30gを得た。得られたポリマーの重量平均分子量は54,000であった。
【実施例10】
【0083】
ブロック共重合体(10)の合成
200mlの攪拌棒付丸底フラスコに、市販のポリエチレングリコール(MERCK社製「#20000」、分子量20,000)100.00gを仕込み、5mmHgの減圧下、150℃で3時間攪拌し乾燥した。得られた乾燥ポリエチレングリコールの末端水酸基価は5.95KOHmg/gであった。次に、100mlの攪拌棒付丸底フラスコに、前記乾燥ポリエチレングリコール40.20gおよび製造例3で製造したオリゴマー(PEC S-3)10.07g(重量比8:2)を仕込み、溶媒としてトルエン50mlを
加え90℃で混合した。これに連鎖延長剤としてヘキサメチレンジイソシアネート0.52g(3.09mmol)をシリンジで加え、さらに触媒としてジブチル錫ジラウレートを50mgをシリンジで装入した。90℃で4時間攪拌した。酸化防止剤として2,6-
ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを0.30g加えて混合した後、トルエンを減圧留去することで、ブロック共重合体(10)50.30gを得た。得られたポリマーの重量平均分子量は150,000、数平均分子量は18,000であった。
【実施例11】
【0084】
ブロック共重合体(11)の合成
100mlの攪拌棒付丸底フラスコに、実施例10の乾燥ポリエチレングリコール(分子量:20,000、末端水酸基価:5.95KOHmg/g)35.32gおよび製造例3で製造したオリゴマー(PEC S-3)15.01g(重量比7:3)を仕込み、
溶媒として1,3−ジオキソラン50mlを加え90℃で混合した。これに連鎖延長剤と
してヘキサメチレンジイソシアネート0.53g(3.17mmol)をシリンジで加え、さらに触媒としてジブチル錫ジラウレートを50mgをシリンジで装入した。90℃で4時間攪拌した。酸化防止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを
0.30g加えて混合した後、溶媒を減圧留去することで、ブロック共重合体(11)48.30gを得た。得られたポリマーの重量平均分子量は233,000、数平均分子量は76,000であった。
【実施例12】
【0085】
ブロック共重合体(12)の合成
100mlの攪拌棒付丸底フラスコに、実施例10の乾燥ポリエチレングリコール(分子量:20000、末端水酸基価:5.95KOHmg/g)25.34gおよび製造例3で製造したオリゴマー(PEC S-3)25.03g(重量比5:5)を仕込み、溶
媒として1,3−ジオキソラン50mlを加え90℃で混合した。これに連鎖延長剤としてヘキサメチレンジイソシアネート0.57g(3.41mmol)をシリンジで加え、さらに触媒としてジブチル錫ジラウレートを50mgをシリンジで装入した。90℃で4時間攪拌した。酸化防止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを0
.30g加えて混合した後、溶媒を減圧留去することで、ブロック共重合体(11)48.40gを得た。得られたポリマーの重量平均分子量は117,000、数平均分子量は48,000であった。
【0086】
(吸水量の測定)
上記合成したブロック共重合体(1)〜(12)をそれぞれ80℃で熱プレスし、一辺5cmの正方形で厚さ300μmのフィルムを作製した。このフィルムを、水を張った500mlのビーカーに入れ、一定時間ごとにフィルムを取り出して、表面に付着した水をふき取った後、重量を測定し、ポリマー中に吸水した水の量を測定した。吸水量の測定はフィルムが崩壊するまで行い、最終的に吸水した水の重量を、最初のフィルムの重量に対する吸収量(重量%)とした。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
表1に示すように、ポリエチレンカーボネート(PEC)を含有させることで架橋により不溶化し、吸水性ポリマーとなることが判明した。また、PECオリゴマー含量やPECオリゴマーの分子量等のポリマー組成の変化により、ブロック共重合体の吸水性を制御することができる。
【0089】
(水崩壊性の測定)
合成したブロック共重合体(1)〜(12)をそれぞれ80℃で熱プレスし、一辺5cmの正方形で厚さ300μmのフィルムを作製した。300mlのビーカーに水300mlを入れ、攪拌機で200rpmで攪拌した。各ブロック共重合体のフィルムを投入し、目視でフィルムが崩壊するまでの時間を最大48時間まで測定した。48時間以内にフィルムが崩壊しなかったものは崩壊せずとした。結果を表2に示す。
【0090】
【表2】

【0091】
表2に示すように、本発明に用いるブロック共重合体は、大量の水中で崩壊するフラッシャブル性を有しており、また、ポリマー組成の変化により水崩壊性を制御することができる。
【0092】
ブロック共重合体(2)、(3)、(4)、(7)および(9)〜(12)は実用上十分な水崩壊性および吸収性を有しており、該ブロック共重合体を含有する水崩壊性組成物は、水崩壊性を有するホットメルト接着剤、水系紙塗工用組成物、易剥離性粘着材、熱転写媒体、繊維、不織布、フィルム、保護フィルム、多孔フィルム、農園芸資材、農薬用包装材、ペット汚物処理材、徐放性薬剤、電気機器の筐体、加工助剤、湿潤シート、酸吸収剤、アルカリ吸収剤として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される脂肪族ポリオキシアルキレン部を含有するユニット(P)と、下記一般式(2)で表される脂肪族ポリアルキレンカーボネートユニット(Q)とを構成単位として含むことを特徴とする生分解性ブロック共重合体を含有する水崩壊性組成物。
【化1】

[式(1)および(2)中、mおよびnはそれぞれ1以上の整数であり、かつ、m+n≧3を満たし、kは0または1であり、Aは数平均分子量300〜20,000の脂肪族ポリオキシアルキレンジオール由来の構成単位であり、Bは全炭素数が1〜18の脂肪族炭化水素基であり、Eは全炭素数が1〜18の脂肪族炭化水素基である。]
【請求項2】
請求項1記載の水崩壊性組成物を用いた水崩壊性成形体。
【請求項3】
請求項1記載の水崩壊性組成物を用いたホットメルト接着剤。
【請求項4】
請求項1記載の水崩壊性組成物を用いた水系紙塗工用組成物。
【請求項5】
請求項1記載の水崩壊性組成物を用いた易剥離性粘着材。
【請求項6】
請求項1記載の水崩壊性組成物を用いた熱転写媒体。
【請求項7】
請求項2記載の水崩壊性成形体が繊維であることを特徴とする水崩壊性成形体。
【請求項8】
請求項2記載の水崩壊性成形体が不織布であることを特徴とする水崩壊性成形体。
【請求項9】
請求項2記載の水崩壊性成形体がフィルムであることを特徴とする水崩壊性成形体。
【請求項10】
請求項2記載の水崩壊性成形体が保護フィルムであることを特徴とする水崩壊性成形体。
【請求項11】
請求項2記載の水崩壊性成形体が多孔フィルムであることを特徴とする水崩壊性成形体。
【請求項12】
請求項2記載の水崩壊性成形体が農園芸資材であることを特徴とする水崩壊性成形体。
【請求項13】
請求項2記載の水崩壊性成形体が農薬用包装材であることを特徴とする水崩壊性成形体。
【請求項14】
請求項2記載の水崩壊性成形体がペット汚物処理剤であることを特徴とする水崩壊性成形体。
【請求項15】
請求項2記載の水崩壊性成形体が徐放性薬剤であることを特徴とする水崩壊性成形体。
【請求項16】
請求項2記載の水崩壊性成形体が電子機器の筐体であることを特徴とする水崩壊性成形体。
【請求項17】
請求項2記載の水崩壊性成形体が加工助剤であることを特徴とする水崩壊性成形体。
【請求項18】
請求項2記載の水崩壊性成形体が湿潤シートであることを特徴とする水崩壊性成形体。
【請求項19】
請求項2記載の水崩壊性成形体が酸吸収剤であることを特徴とする水崩壊性成形体。
【請求項20】
請求項2記載の水崩壊性成形体がアルカリ吸収剤であることを特徴とする水崩壊性成形体。

【公開番号】特開2008−24849(P2008−24849A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199934(P2006−199934)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】