説明

生分解性樹脂積層発泡シート、折箱用周側枠材及び折箱

【課題】竹串や楊枝などの鋭利な先端が突き刺さり難い表面を備え、かつ耐衝撃性にも優れた折箱を作製可能な生分解性樹脂積層発泡シート該積層発泡シートを用いて作製された折箱用周側枠材、該折箱用周側枠材を用いて作製された折箱の提供。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂発泡シートからなる発泡基材シートの一方または両方の面に、生分解性樹脂フィルムを積層してなり、突刺強度が7.0N以上であることを特徴とする生分解性樹脂積層発泡シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡シートに生分解性樹脂フィルムを積層してなる生分解性樹脂積層発泡シート及び該積層発泡シートを用いて作製された折箱用周側枠材および該折箱用周側枠材を用いて作製された折箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、弁当容器等に使用されている折箱として、帯状の熱可塑性樹脂発泡シートからなり、折り曲げ用の複数のV溝加工や底板嵌合用の溝加工を施してなる周側枠体を用い、この周側枠体のV溝を折り曲げ、底板を嵌合して箱状に組み立てて周側枠体の両端部を接合して構成された折箱が提供されている。
前記周側枠体は、押出発泡法によって発泡シートを製造する際に押出発泡時の樹脂温度や冷却エアーの温度等を適宜調整することによって、V溝加工後に残ったシート表層部の機械強度を向上させた熱可塑性樹脂発泡シートを用いて製造されたものが知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
特許文献1(特開平6−297537号公報)には、 密度が0.05〜0.2g/cm、厚みが2〜10mmのスチレン系樹脂押出発泡シートであって、静的熱機械測定による少なくとも片面表層部の押出方向の最大収縮率が3%以上、シートの他方の片面からシート厚みの0.5mmを残して角度90°のVカットを入れた時のシートの引っ張り被断強さが14kgf/5cm以上であり、且つ上記Vカット面の表面硬度が70以下であることを特徴とするスチレン系樹脂押出発泡シートが開示されている。
特許文献2(特開2005−232300号公報)には、V溝加工した際に残されるシート表層部の引張強度が6.5〜9.0MPaの範囲内であり、かつシート表層部の密度が0.13〜0.17g/cmの範囲内であることを特徴とする折箱用ポリスチレン系樹脂発泡シートが開示されている。
【0004】
また、前記周側枠体の機械強度及び外観美麗性を向上させるために、熱可塑性樹脂発泡シートの一方または両方の面に熱可塑性樹脂フィルムを積層した熱可塑性樹脂積層発泡シートを用いることも提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
特許文献3には、発泡スチレンシートを主材料とする外箱内に、薄手のプラスチックシートを加工してなる仕切枠を収納してなる弁当箱であって、前記外箱は、矩形状の底部、及び、その四辺にそれぞれ接続され、前記底部から外側斜め上方へ立ち上げられた台形状の四つの側部からなる容器本体と、当該容器本体の上縁部の外周に取り付けられた枠部材とによって構成されていることを特徴とする弁当箱が開示されている。この特許文献3の図3には、発泡スチレンシート6の両面にプラスチックフィルム7a,7bを貼付してなる外箱材が示されている。
【0005】
また、折箱ではなく一体成形で作られた食品包装用の容器において、生分解性樹脂フィルムを剥離可能に設けた容器が提案されている。 s
特許文献4(特開2002−187241号公報)には、熱可塑性樹脂の基材シートと、生分解性樹脂フィルムとを積層してなり、両者のはく離強度が50〜500[g/15mm幅]であることを特徴とする生分解性樹脂フィルム積層体、並びに該生分解性樹脂フィルム積層体を、生分解性樹脂フィルムが容器の内側となるように成形してなることを特徴とする容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−297537号公報
【特許文献2】特開2005−232300号公報
【特許文献3】実用新案登録第3140522号公報
【特許文献4】特開2002−187241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した特許文献1〜4記載の従来技術には、次のような問題があった。
特許文献1,2に開示された折箱は、押出成形時に表層部の機械特性を改善したポリスチレン系樹脂発泡シートを用いて形成されており、得られる折箱の内表面はポリスチレン系樹脂からなるものなので、この折箱の内表面は軟らかく、竹串や楊枝などの鋭利な先端が突き刺さり易いという問題があった。
【0008】
また、特許文献3には発泡スチレンシート6の両面にプラスチックフィルム7a,7bを貼付した板材からなる外箱が示されているが、このプラスチックフィルムの材質や厚み、機械強度などの詳細に関しては全く記載がない。この外箱は、その中に薄手のプラスチックシートを加工してなる仕切枠を収納し、食品はこの仕切枠内に収納する構成であることから、仕切枠内に竹串や楊枝などを含む食品を収納しても、その鋭利な先端が外箱に突き刺さることはなく、外箱表面の強度については考慮する必要はなかった。
【0009】
また、特許文献4に記載された生分解性樹脂フィルム積層体は、基材シートに生分解性樹脂フィルムを剥離可能に弱接着してなり、該積層体を加熱して成形型に挟んで押圧し容器形状とする熱成形法によって容器を製造するためのものなので、この積層体を裁断したり、V溝加工を施して周側枠体を作製しようとしても、基材シートから生分解性樹脂フィルムが簡単に剥離してしまい、周側枠体の作製は非常に困難である。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、竹串や楊枝などの鋭利な先端が突き刺さり難い表面を備え、かつ耐衝撃性にも優れた折箱を作製可能な生分解性樹脂積層発泡シート該積層発泡シートを用いて作製された折箱用周側枠材、該折箱用周側枠材を用いて作製された折箱の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡シートからなる発泡基材シートの一方または両方の面に、生分解性樹脂フィルムを積層してなり、突刺強度が7.0N以上であることを特徴とする生分解性樹脂積層発泡シートを提供する。
【0012】
本発明の生分解性樹脂積層発泡シートにおいて、前記発泡基材シートは、密度が0.035〜0.105g/cmの範囲であることが好ましい。
【0013】
本発明の生分解性樹脂積層発泡シートにおいて、該積層発泡シートの質量に占める前記生分解性樹脂フィルムの質量比が25質量%以上であることが好ましい。
【0014】
本発明の生分解性樹脂積層発泡シートにおいて、前記生分解性樹脂フィルムは、ポリ乳酸系樹脂からなるものであることが好ましい。
【0015】
本発明の生分解性樹脂積層発泡シートにおいて、前記発泡基材シートが連続気泡率40%以上の吸水性発泡シートからなる構成としてもよい。
【0016】
前記吸水性発泡シートが、連続気泡率が40%以上の第1発泡体層と、連続気泡率が30%以下の第2発泡体層とが積層されてなる構成としてもよい。
【0017】
本発明の生分解性樹脂積層発泡シートにおいて、前記発泡基材シートと前記生分解性樹脂フィルムとが、イソシアネート系硬化剤を含む接着剤によって接着された構成としてもよい。
【0018】
本発明の生分解性樹脂積層発泡シートにおいて、前記発泡基材シートに生分解性樹脂が50質量%未満含まれている構成としてもよい。
【0019】
また本発明は、前記生分解性樹脂積層発泡シートを長矩形に裁断し、複数の折り曲げ用のV溝を形成してなり、該V溝を折り曲げて折箱を構成可能な折箱用周側枠材を提供する。
【0020】
本発明の折箱用周側枠材において、長手方向に沿って底板嵌合用の溝が設けられていてもよい。
【0021】
また本発明は、前記折箱用周側枠材を折曲加工し、その両端部を接合して形成された折箱を提供する。
【0022】
また本発明は、前記折箱用周側枠材を折曲加工し、底板を嵌合して前記折箱用周側枠材の両端部を接合して形成された折箱を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の生分解性樹脂積層発泡シートは、ポリスチレン系樹脂発泡シートからなる発泡基材シートの一方または両方の面に、生分解性樹脂フィルムを積層してなり、突刺強度が7.0N以上であるものなので、この生分解性樹脂積層発泡シートを用いて作られた折箱は、鋭利な先端に対する突き刺し耐性に優れ、竹串や楊枝などを含む食品を収納した場合であっても、竹串や楊枝の先端が折箱内壁に突き刺さることを防止できる。
また本発明の生分解性樹脂積層発泡シートは、耐衝撃性にも優れており、これを用いて作製した折箱は、落下などの衝撃によっても割れ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の生分解性樹脂積層発泡シートの実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の折箱用周側枠材の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の折箱の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(生分解性樹脂積層発泡シート)
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の生分解性樹脂積層発泡シートの実施形態を示す断面図である。
この生分解性樹脂積層発泡シート1は、ポリスチレン系樹脂発泡シートからなる発泡基材シート2の両方の面に、生分解性樹脂フィルム3a,3bを積層してなり、突刺強度が7.0N以上であることを特徴としている。
【0026】
前記発泡基材シート2は、押出機などの樹脂供給手段にポリスチレン系樹脂、及び発泡核剤などの添加剤を入れて加熱溶融し、さらに発泡剤を添加して混練し、発泡剤含有樹脂を樹脂供給手段の先端に取り付けたダイのスリットから押し出し、発泡させた後に冷却する押出発泡法によって製造される。
【0027】
前記発泡基材シート2は、密度が0.035〜0.105g/cmの範囲であることが好ましい。前記発泡基材シート2の密度が前記範囲内であれば、軽量で、生分解性樹脂フィルム3a,3bを積層した状態で突刺強度および耐衝撃性に優れた生分解性樹脂積層発泡シート1を得ることができる。なお、発泡基材シート2の密度とは、下記の密度測定方法によって測定された密度を言う。
【0028】
<密度測定方法>
50cm以上(半硬質及び軟質材料の場合は100cm以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えないように切断し、その質量及び体積を測定し、次式により全体密度を算出した。
密度(g/cm)=試験片質量(g)/試験片体積(cm
ただし、測定用試験片は、成形後72時間以上経過した試料から切り取り、23℃±2℃・50RH%±5RH%、または27℃±2℃・65RH%±5RH%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
【0029】
前記発泡基材シート2の製造に用いるポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体等が挙げられ、スチレンを50質量%以上含有するポリスチレン系樹脂が好ましく、ポリスチレンがより好ましい。また、前記ポリスチレン系樹脂としては、前記スチレンモノマーを主成分とする、前記スチレン系モノマーとこのスチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体であってもよく、このようなビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性モノマーなどが挙げられる。
【0030】
また、ポリスチレン系樹脂が主成分であれば、他の樹脂を添加してもよく、添加する樹脂としては、例えば、該積層発泡シートを用いて作製される折箱用周側枠材及び折箱の耐衝撃性を向上させるために、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三次元共重合体などのジエン系のゴム状重合体を添加したゴム変性ポリスチレン系樹脂、いわゆるハイインパクトポリスチレンが挙げられる。あるいは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などが挙げられる。また、原料となるポリスチレン系樹脂としては、市販されている通常のポリスチレン系樹脂、懸濁重合法などの方法で新たに作製したポリスチレン系樹脂などの、リサイクル原料でないポリスチレン系樹脂を使用できる他、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体を再生処理して得られたリサイクル原料を使用することができる。このリサイクル原料としては、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体、例えば、魚箱、家電緩衝材、食品包装用トレーなどを回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したリサイクル原料を用いることができる。また、使用することができるリサイクル原料は、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体を再生処理して得られたもの以外にも、家電製品(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど)や事務用機器(例えば、複写機、ファクシミリ、プリンターなど)から分別回収された非発泡のポリスチレン系樹脂成形体を粉砕し、溶融混練してリペレットしたものを用いることができる。
【0031】
前記発泡基材シート2の製造に用いる発泡剤としては、二酸化窒素、炭酸ガス、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、及びこれらの2種以上混合して使用され、これらの中でも、n−ブタン、i−ブタンが好ましい。ブタン等の炭化水素発泡剤を用いる場合、その添加量はポリスチレン系樹脂100質量部に対して1〜10質量部の範囲内とすることが好ましく、2〜8質量部の範囲内とすることがより好ましい。
【0032】
前記発泡基材シート2の製造に用いる前記発泡核剤としては、タルク、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸カルシウム、クレー、クエン酸等が挙げられ、これらの中でもタルクがより好ましい。前記発泡核剤の添加量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して1〜8質量部の範囲内とすることが好ましく、2〜6質量部の範囲内とすることがより好ましい。
【0033】
なお、前記発泡基材シート2には、所望の性質を有する容器用周影響を与えない程度の添加剤、例えば着色剤、難燃剤、滑剤(炭化水素、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石鹸、シリコーン油、低分子ポリエチレン等のワックス等)、展着剤(流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ポリブテン等)、分散剤等が添加されてもよい。
【0034】
前記発泡基材シート2に積層される生分解性樹脂フィルム3a,3bとしては、従来公知の種々の、生分解性を有する樹脂で形成されたフィルムがいずれも使用可能である。かかる生分解性を有する樹脂としては、例えばポリ乳酸(東セロ社製の商品名パルグリーンLCなど)、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸との直鎖状ポリエステル(ICI社製の商品名バイオポールなど)、ポリエーテル、ポリアクリル酸、エチレン・一酸化炭素共重合体、脂肪族ポリエステル・ポリアミド共重合体、脂肪族ポリエステル・ポリオレフィン共重合体、脂肪族ポリエステル・芳香族ポリエステル共重合体(BASF社製の商品名エコフレックスなど)、脂肪族ポリエステル・ポリエーテル共重合体、澱粉と変性ポリビニルアルコールとのポリマーアロイ(ノバモント社製の商品名マタービーなど)、澱粉とポリエチレンのポリマーアロイ(アンパセット社製の商品名ポリグレードIIなど)、コハク酸エステル(昭和高分子株式会社製の商品名ビオノーレなど)等が挙げられる。これらの中でも、ポリ乳酸(PLA)フィルムが好ましい。
【0035】
生分解性樹脂フィルム3a,3bの厚みはこれに限定されないが、10〜100μmであるのが好ましい。厚みが10μm未満では、容器の形状に成形する際の伸び量が不足して、成形時に破断するおそれがある。またはく離する際に破れやすくなって、分別回収の作業性が低下するおそれもある。一方、厚みがこの範囲を超えてもそれ以上の効果が得られない上、生分解性樹脂は汎用樹脂に比べて高価であるため、折箱のコストアップに繋がるおそれがある。なお生分解性樹脂フィルムの厚みは、上記の範囲内でもとくに15〜40μm程度であるのが好ましく、20〜35μm程度がより好ましい。
【0036】
生分解性樹脂フィルム3a,3bの引張強度は90〜200MPaの範囲が好ましく、100〜150MPaの範囲がより好ましい。
また、生分解性樹脂フィルム3a,3bの破断点伸率は40〜90%の範囲が好ましく、55〜85%の範囲がより好ましい。
【0037】
生分解性樹脂フィルム3a,3bは、接着剤を介して発泡基材シート2に接着されている。この接着剤としては、例えばアクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤などが挙げられる。また、主に天然化合物からなる生分解性粘着剤を使用することもできる。生分解性粘着剤としては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム等の生分解性を有するゴム成分をベース剤として、そこにロジン系、もしくはテルペン系などの天然系の粘着付与剤を添加したものが挙げられる。ロジン系の粘着付与剤としてはロジン、およびその誘導体(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、ロジンエステルなど)が挙げられる。またテルペン系の粘着付与剤としてはテルペン、およびその誘導体(α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、ジペンテン樹脂、およびこれらの水添物など)が挙げられる。
前記接着剤としては、イソシアネート系硬化剤を含む接着剤が好ましい。
【0038】
この接着剤は、適当な溶媒に溶解した塗布液を生分解性樹脂フィルム3a,3bの片面にバーコーター、ナイフコーター、ロールコーター等を用いて塗布したのち、溶媒を乾燥、除去することで接着剤層とする。生分解性樹脂フィルム3a,3bに形成される接着剤層の厚みは限定されないが、発泡基材シート2と生分解性樹脂フィルム3a,3bととを均一に、むらなく接着することを考慮すると、1〜20μmであるのが好ましい。なお、前記粘着剤層は、発泡基材シート2の両面側に形成してもよい。
【0039】
前記生分解性樹脂積層発泡シート1は、色や柄等を施すために印刷層や着色層(コーティング、スプレー等による)を設けてもよい。色や柄等を施すには、接着剤層や発泡基材シート2に顔料を配合するか、もしくは発泡基材シート2の表面に着色層を設けるなどして着色を施し、この着色と、生分解性樹脂フィルム3a,3bに設けた印刷層とをあわせて柄模様を形成してもよい。さらに生分解性樹脂フィルム3a,3bに顔料を配合するなどして着色を施してもよい。特に、生分解性樹脂フィルム3a,3bに印刷層や着色層となる接着剤をコートしておき、これを発泡基材シート2に積層する方法が好ましい。
【0040】
前記生分解性樹脂積層発泡シート1を製造するには、発泡基材シート2と、片面に接着剤層を設けた2枚の生分解性樹脂フィルム3a,3bを用意し、2枚の生分解性樹脂フィルム3a,3bの接着剤層側を発泡基材シート2の表面に重ね合わせ、2枚の生分解性樹脂フィルム3a,3b間に発泡基材シート2を挟んだ状態で熱ロールにかけて加熱押圧する。これによって発泡基材シート2と生分解性樹脂フィルム3a,3bとが強固に接着され、生分解性樹脂積層発泡シート1が連続的に製造される。
【0041】
この際、熱ロールの周面には、それぞれ生分解性樹脂フィルム3a,3bとの接着あるいはべたつきを防止するために、あらかじめクロムめっきやフッ素樹脂コーティングなどを施しておくのが好ましい。また、熱ロール間に供給する前の接着剤層を、たとえば赤外線ヒータなどによって、非接触で予熱してもよい。なお、生分解性樹脂積層発泡シート1の他の製造方法としては、発泡基材シート2と生分解性樹脂フィルム3a,3bとの間に、Tダイなどから層状に押し出した溶融状態の接着剤を供給し、重ね合わせて接着剤層を形成すると同時に、発泡基材シート2と生分解性樹脂フィルム3a,3bとを接着する方法も挙げられる。
【0042】
なお、本実施形態にあっては、発泡基材シート2の両面に生分解性樹脂フィルム3a,3bを積層した構成としたが、発泡基材シート2の一方の面のみに生分解性樹脂フィルムを積層してもよいし、あるいは発泡基材シート2の一方の面に生分解性樹脂フィルムを積層し、他方の面に別の樹脂フィルムを積層した構成としてもよい。
発泡基材シート2に積層する別の樹脂フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン系樹脂の非発泡フィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂フィルムが挙げられ、発泡基材シート2に接着剤無しで積層できる点から、ポリスチレン系樹脂の非発泡フィルムが好ましい。
【0043】
この生分解性樹脂積層発泡シート1は、食品包装用の折箱作製用として用いる場合、厚みが1.0〜10.0mmの範囲であることが好ましく、3.0〜7.0mmの範囲であることがより好ましい。厚みを前記範囲に摺ることで、軽量で、かつ機械強度にも優れた折箱を提供することができる。
なお、折箱の用途は食品包装用のみに限定されるものではなく、機械部品の包装用、ギフト用品包装用、家電製品の包装用などに使用することもできる。重量物の収納用途に使用する場合には、前記生分解性樹脂積層発泡シート1の厚みを前記範囲よりも厚くすることが望ましい。
【0044】
この生分解性樹脂積層発泡シート1は、該生分解性樹脂積層発泡シート1の質量に占める生分解性樹脂フィルム3a,3bの質量比(生分解性樹脂の質量比)が25質量%以上であることが好ましい。生分解性樹脂の質量比が25質量%以上であれば、環境負荷が少なく、かつ炭酸ガス排出量の削減が可能となり、地球温暖化防止、化石燃料資源の節約、自然環境保全を図ることができる。因みに、生分解性樹脂の質量比が25質量%以上であれば、日本バイオプラスチック協会が定める識別表示基準に適合したバイオマスプラスチック製品として「バイオマスプラ」の認証を得ることができる。
【0045】
この生分解性樹脂積層発泡シート1は、発泡基材シート2の一方または両方の面に、生分解性樹脂フィルムを積層してなり、突刺強度が7.0N以上である構成としたものなので、この生分解性樹脂積層発泡シート1を用いて作られた折箱は、鋭利な先端に対する突き刺し耐性に優れ、竹串や楊枝などを含む食品を収納した場合であっても、竹串や楊枝の先端が折箱内壁に突き刺さることを防止できる。突刺強度は10.0N以上が好ましく、10.0〜15.0Nの範囲がより好ましい。
突刺強度が7.0N未満であると、鋭利な先端に対する突き刺し耐性が不十分となり、折箱を作製した場合に竹串や楊枝の先端が折箱内壁に突き刺さるおそれがある。
【0046】
(折箱用周側枠材)
図2は、本発明の折箱用周側枠材の実施形態を示す断面図である。
この折箱用周側枠材10は、本発明の生分解性樹脂積層発泡シート1を長矩形に裁断し、複数の折り曲げ用のV溝11を形成してなり、該V溝11を折り曲げて折箱20を構成可能な構成になっている。
【0047】
前記V溝11は、作製する折箱20の形状に応じて角度θを調整する。図2の例示では、図3に示すように平面視四角形の折箱を形成するために、角度θが90度であるV溝11を形成した場合を示しており、平面視形状が他の多角形状(例えば、三角形、五角形、六角形、八角形、菱形、平行四辺形など)とする場合には、その平面視形状を形成するために最適な角度θに設定される。前記V溝11は、ポリスチレン系樹脂発泡シート等の発泡樹脂の加工分野等で従来から用いられている溝加工法および溝加工装置を用いて形成することができる。
【0048】
この折箱用周側枠材10には、図3に示すように、折箱20の底部となる底板を嵌合するための溝12を長手方向に沿って形成してもよい。
さらに、この折箱用周側枠材10には、折箱に取り付ける仕切板を嵌合するための図示していない溝を幅方向に沿って1つ以上設けてもよい。
【0049】
前記折箱用周側枠材10の好ましい実施形態において、折箱用周側枠材10を構成している発泡基材シート2は、短手方向の平均気泡径(L1)と長手方向の平均気泡径(L2)との比(L1/L2)が1.10〜1.55の範囲となる気泡構造を有することが好ましい。前記比(L1/L2)は、1.21〜1.55の範囲とすることがより好ましく、1.21〜1.45の範囲とすることがさらに好ましい。
【0050】
ここで、折箱用周側枠材10を構成している発泡基材シート2の短手方向の平均気泡径(L1)、長手方向の平均気泡径(L2)とは、以下の測定方法によって算出した値を言う。
<気泡径比(L1/L2)の測定方法>
平均気泡径(L1,L2)は、ASTM D2842−69の試験方法に準拠して測定された平均弦長に基づいて算出されたものをいう。具体的には、折箱用周側枠材をその表面に対して垂直な方向(厚み方向)に切断し、この切断面における厚み方向にほぼ4等分しその厚みの中央部分のほぼ1/2の厚みを走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、S−3000N)を用いて17〜20倍(場合によっては200倍)に拡大して撮影した。
次に、撮影した写真における写真上の長さが60mmで且つ折箱用周側枠材の厚み方向に指向する一直線上にある気泡数から、各気泡の平均弦長(t)を下記式1に基づいて算出した。そして、下記式2により平均気泡径Dを算出した。なお、折箱用周側枠材の層が薄く、長さが60mmの直線を写真上に描くことができない場合は、できるだけ長い長さの直線を写真上に描き、この直線の長さを60mmに換算して平均気泡径Dを算出した。
平均弦長(t)=60/(気泡数×写真の倍率) ・・・式1
平均気泡径D=t/0.616 ・・・式2
この平均気泡径の測定及び算出を、折箱用周側枠材の短手方向と長手方向に沿った切断面でそれぞれ行って(測定箇所数n=6以上)、折箱用周側枠材の短手方向の平均気泡径(L1)、長手方向の平均気泡径(L2)を求め、式3から気泡径比(L1/L2)を算出した。
気泡径比(L1/L2)=L1(μm)÷L2(μm) ・・・式3
【0051】
この折箱用周側枠材10を構成している発泡基材シート2において、短手方向の平均気泡径(L1)と長手方向の平均気泡径(L2)との比(L1/L2)が1.10〜1.55の範囲であれば、気泡が短手方向に長く、長手方向に短い形状になっていることから、長手方向に沿って折箱用周側枠材10を曲げる際に曲げ易く、また曲げを加えた折箱用周側枠材10の表面に小皺や折れが生じにくくなっている。前記比(L1/L2)が1.10未満であると、曲げる際に小皺や折れが生じ易くなり、また前記比(L1/L2)が1.55を超えると、折箱用周側枠材10の弾性率、最大点変位が共に低下し、柔軟性がなくなり、脆くなるため、曲げた際に折れが生じ易くなる。
【0052】
前記折箱用周側枠材10は、押出機などの樹脂供給手段にポリスチレン系樹脂、及び発泡核剤などの添加剤を入れて加熱溶融し、さらに発泡剤を添加して混練し、発泡剤含有樹脂を樹脂供給手段の先端に取り付けたダイのスリットから押し出し、発泡(一次発泡)させた後に冷却する押出発泡法によって発泡基材シート2(以下、一次シートと記す。)を製造し、前述したように片面に接着剤層を形成した2枚の生分解性樹脂フィルム3a,3bを重ね、加熱圧着して製造された前記生分解性樹脂積層発泡シート1を適当な寸法の長矩形状に裁断し、これに折り曲げ用のV溝12や底板嵌合用の溝を形成し、製造することができる。
【0053】
また、短手方向の平均気泡径(L1)と長手方向の平均気泡径(L2)との比(L1/L2)が1.10〜1.55の範囲となる気泡構造を有する折箱用周側枠材10を製造するには、一次シート製造の際、シート表面に対して縦横いずれかの方向に延伸を加えておき、裁断する際には一次シート中の気泡が短手方向に長く、長手方向に短い形状となる向きに一次シートを裁断することが望ましい。前記延伸の量は、短手方向の平均気泡径(L1)と長手方向の平均気泡径(L2)との比(L1/L2)が1.10〜1.55の範囲となるように適宜調整することが望ましい。
【0054】
前記折箱用周側枠材10を製造する方法としては、押出発泡によって一次シートを製造する際、この一次シートが押出方向(MD方向)に延伸されるような張力を加えて冷却、安定化させ、次いで2枚の生分解性樹脂フィルム3a,3bを積層して生分解性樹脂積層発泡シート1を製造し、次いで得られた積層発泡シートを加熱して二次発泡させ、目的の厚みと密度を持った積層発泡シート(以下、二次シートと記す。)とし、次いで該二次シートを一定長さの四角形状に裁断し、次いで印刷後の四角形状シートを、元のシートのMD方向が短手方向に、シート表面におけるMD方向と直交する方向(以下、TD方向と記す。)が長手方向になるように、長矩形状に裁断し、折箱用周側枠材10を得る方法が好ましい。
【0055】
前記一次シートを二次発泡する場合の二次発泡量は、厚み方向に1.3倍〜2.5倍の範囲が好適である。1.3倍未満では押圧しても柔らかにならず折り曲げ難く、また2.5倍を越えると表皮の気泡形状が丸くなって気泡の方向性が少なくなり、折り曲げずらくなるので好ましくない。また圧縮して気泡の座屈が少なく折り曲げづらくなる。
【0056】
前記一次シートを二次発泡させるさせるために熱源が使用されるが、この熱源は一般成形用発泡基材シートの成形に使用されているものが使用できる。二次発泡させる時の条件は、160℃〜190℃の雰囲気温度のオーブン内を、22〜30m/min.程度のスピードで通過させることにより、所望とする二次シートを得ることができる。また水蒸気を使用してもよい。
【0057】
この折箱用周側枠材10は、前述した生分解性樹脂積層発泡シート1を長矩形状に裁断し、折り曲げ用のV溝11を設けたものなので、突刺強度が7.0N以上であり、これを用いて作製した折箱20は、竹串や楊枝などを含む食品を収納した場合であっても、竹串や楊枝の先端が折箱内壁に突き刺さることを防止できる。
また、短手方向の平均気泡径(L1)と長手方向の平均気泡径(L2)との比(L1/L2)が1.10〜1.55の範囲となる気泡構造とすることによって、溝加工部分において折れや小皺の発生を防ぐことができる。
【0058】
(折箱)
図3は、本発明の折箱の実施形態を示す図である。
本実施形態の折箱20は、前述した折箱用周側枠材10を、V溝11を折り曲げ加工して折曲部13とし、両端部を接合して構成されている。
なお、図3の例示では、4つのV溝11を90度折り曲げて、平面視四角形状の折箱20を構成した場合を示しているが、折箱20の形状はこれに限定されず、例えば、平面視三角形、五角形、六角形、八角形、菱形、平行四辺形、台形などの種々の形状とすることができる。
【0059】
この折曲部13は、V溝11を形成する際に残した、折箱内側となる生分解性樹脂フィルム3bで繋がっており、V溝11により形成された発泡基材シート2のV溝端面どうしが接触して90度の折曲部13が形成されている。この折曲部13の生分解性樹脂フィルム3bとして、引張強度が100MPa以上であり、かつ破断点伸度が50%以上である生分解性樹脂フィルムを用いることによって、V溝11で折箱用周側枠材10を折り曲げした場合に、90度以上に折り曲げても破断せず、小皺を生じることがなく、外観の良好な折箱20を作製できる。
【0060】
この折箱20は、底板嵌合用の溝12を設けた折箱用周側枠材10を用いた場合を例示しており、図示していない四角形の底板の周縁を前記溝12に嵌合させながら、折箱用周側枠材10を折り曲げて周側部とし、折箱用周側枠材10の両端部を熱融着などの方法によって接合することで、有底箱形の折箱20とする。
【0061】
なお、折箱20に溝12を設けず、底板を用いずに折箱用周側枠材10のV溝11を折り曲げて、その両端を接合して折箱とし、これを外容器として用い、合成樹脂シートを熱成形して作製した内容器を外容器に収納するタイプの折箱とすることもできる。
【0062】
この折箱20は、印刷済みの折箱用周側枠材10を使用して折箱の周側部として使用する場合、漆調、檜、桐等の種々の風合いや艶を持たせたり、細かな文字、模様等のある高級感のある折箱とすることができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例によって本発明の効果を実証するが、以下の実施例は本発明の単なる例示であり、本発明の範囲は以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0064】
[実施例1]
(一次シートの製造)
押出機として内径90mm押出機と115mm押出機が連結されたタンデム押出機を用いた。ポリスチレン樹脂として東洋スチレン社製のHRM−26(商品名)100質量%と、該樹脂100質量部に対し発泡核剤として竹原化学社製のMAX401−2HP(商品名)を4.5質量部、顔料として東洋インキ製造社製の6TSM4MA−188(商品名)を6.8質量部添加した配合原料を前記押出機に供給し、押出機内で最高温度243℃で溶融、混練した後、発泡剤としてブタン(イソ/ノルマル=30/70質量%)を樹脂100質量部に対して3.8質量部添加し、更に混練した。その後、発泡に適した樹脂温度150℃まで冷却した。
さらに、押出機先端部に取り付けた口径128mmφでスリットクリアランス0.942mmに設定されたサーキュラーダイより発泡剤含有樹脂を押出し、発泡させた後、冷却して円筒状発泡シートとした。
続いて、この円筒状発泡シートを左右に設けたカッターで切開して2枚の一次シートとした。それぞれの一次シートは、多段のロール間で延伸を加えながら、巻きロールに巻き取った。この巻き取りの際、一次シートのMD方向に延伸を加えるため、引き取り速度を10m/minとした。得られた一次シートは、厚み2.3mm、密度0.074g/cmであり、短手方向の気泡径(L1)は0.21μm、長手方向の気泡径(L2)は0.20μm、気泡径比(L1/L2)は1.08であった。
【0065】
(生分解性樹脂フィルム)
生分解性樹脂フィルムとしては、ポリ乳酸(PLA)を主成分とする生分解性樹脂フィルム(商品名:パルグリーンLC、東セロ社製、厚み25μm、引裂強度:125Mpa、破断点伸率:65%、密度1.27g/cm)を用いた。
この生分解性樹脂フィルムの片面に、厚み0.1μm程度となるように接着剤(接着性インキ)をコーティングした。
【0066】
(生分解性樹脂積層発泡シート)
得られた一次シートの両側に生分解性樹脂フィルムを配置し、それらを挟んだ状態で熱ロールとニップロールとの間を連続的に通過させ熱圧着させた。そして、約1秒後に、21℃の冷却ロールを通過させて冷却することで、一次シートの両面に生分解性フィルムが積相された生分解性樹脂積層発泡シートを製造した。熱ロールの温度は165℃、一次シートおよび生分解性樹脂フィルムの送り速度は23.0m/min、ニップロールのニップ圧(線圧)は5.0kg/mとした。得られた生分解性樹脂積層発泡シートの質量に占める生分解性樹脂フィルムの質量比は27質量%であった。
なお、質量比は次式によって算出した。
質量比(%)=(生分解性樹脂フィルムの質量/生分解性樹脂積層発泡シートの質量)×100
【0067】
(二次発泡シート積層体)
その後、得られた生分解性樹脂積層発泡シートをトンネル型電熱加熱炉に通し、加熱温度:149℃、長さ3.5m、移動速度:18.0m/minの条件で電熱加熱し、二次発泡させて、厚み3.8mmの二次発泡シート積層体(生分解性樹脂積層発泡シート)を得た。得られた二次発泡シート積層体は、発泡層のみの密度は0.045g/cmであった。得られた二次発泡シート積層体(生分解性樹脂積層発泡シート)の質量に占める生分解性樹脂フィルムの質量比は27質量%であった。
なお、質量比は次式によって算出した。
質量比(%)=(生分解性樹脂フィルムの質量/生分解性樹脂積層発泡シートの質量)×100
この二次発泡シート積層体について、下記の測定方法によって、<突刺試験>、<表面硬度測定>および<落球試験>を行った。その結果を表1に記す。
【0068】
<突刺試験>
得られた二次発泡シート積層体を幅50mm、長さ150mmにカットし、50mmφの円柱状治具にセットした。これを、フィルム面に針が刺さるように治具台にセットした。
そしてテンシロン万能試験機(エーアンドディー社製、RTG−1310)を用い、最大点荷重(N)、最大点変位(mm)を測定した。
測定条件は下記の通りとした(測定サンプル数N=15)。
・治具寸法:50mmφ、高さ50mmの円柱状
・針:長さ7mm、直径1mmの針
・圧縮速度:50mm/min
・突刺距離:5mm
・針とサンプルとの距離:3mm
最大点荷重(N)、最大点変位(mm)、汎用試験機データ処理システム(エーアンドディー社製、MSAT0002RTF/RTG)のプログラム中にサンプルの厚み、幅、長さを入力して自動的に計算処理されたデータとして得た。
そして、得られた最大点荷重(N)を突刺強度(N)とした。
(判定基準)
◎:きわめて良好:突刺強度が10.0N以上であり、きわめて良好な突き刺し耐性がある。
○:良好 :突刺強度が7.0N以上であり、良好な突き刺し耐性がある。
×:不良 :突刺強度が7.0N未満であり、容易に突き刺さり不良である。
【0069】
<表面硬度測定>
得られた二次発泡シート積層体を幅50mm、長さ550mmの短冊状にカットし、両端から10mm置きに測定した(N=5)。測定はフィルム面を測定した。
測定機器としては、ゴム硬度計用低圧荷重器(アスカー社製、CL−150)を使用して測定した。
【0070】
<落球試験>
得られた二次発泡シート積層体を幅50mm、長さ540mmの短冊状にカットし、長手方向の両端から90mm内側の地点と長さ方向の丁度中心の位置との計3箇所を測定地点とした。
測定機器としては落球試験機(カネテツ工業社製、KANETEC)を用いて測定した。治具台に長さ方向が横方向になるようにセットした。このとき、治具間の中心地点に短冊状にカットした積層体の測定位置がくるようにセットした。また、球が落ちる面にフィルム面がくるようにセットした。
測定条件は下記の通りとした。
・高さ:1000mm
・球質量:500g
・治具間距離:100mm
(判定基準)
短冊状の積層体一つにつき3箇所落球試験を実施し、一箇所でも「割れ」が発生したものについては不良(×)とし、一箇所も割れが発生しなかったものを良好(○)とした。
【0071】
[実施例2]
生分解性樹脂フィルムの厚みを15μm(商品名:パルグリーンLC、東セロ社製、厚み15μm、引裂強度:97Mpa、破断点伸率:49%、密度1.27g/cm)としたこと以外は、実施例1と同様にして二次発泡シート積層体(生分解性樹脂積層発泡シート)を作製した。得られた二次発泡シート積層体(生分解性樹脂積層発泡シート)の質量に占める生分解性樹脂フィルムの質量比は18質量%であった。結果を表1に記す。
【0072】
[比較例1]
生分解性樹脂フィルムに代えて、厚み25μmのポリスチレン樹脂フィルム(商品名:OPSフィルムGM、旭化成社製、厚み25μm、引裂強度:72Mpa、破断点伸率:5%、密度1.05g/cm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして二次発泡シート積層体を作製した。得られた二次発泡シート積層体の質量に占めるポリスチレン樹脂フィルムの質量比は24質量%であった。結果を表1に記す。
【0073】
[比較例2]
生分解性樹脂フィルムに代えて、厚み15μmのポリスチレン樹脂フィルム(商品名:OPSフィルムGM、旭化成社製、厚み15μm、引裂強度:65Mpa、破断点伸率:4%、密度1.05g/cm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして二次発泡シート積層体を作製した。得られた二次発泡シート積層体の質量に占めるポリスチレン樹脂フィルムの質量比は16質量%であった。結果を表1に記す。
【0074】
【表1】

【0075】
表1の結果より、本発明に係る実施例1,2は、ポリスチレン系樹脂発泡シートにポリスチレン系樹脂フィルムを積層した比較例1,2に比べ、突刺強度が高くなり、また落球試験の結果も良好であった。
【0076】
[実施例3]
(吸水性発泡シートの製造)
吸水性第1発泡体用に、ポリスチレン樹脂(大日本インキ化学工業社製「XC−515」、メルトマスフローレイト1.3g/10分)78.9質量%、スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物(旭化成社製「SS9000」)15.8質量%、高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製「HJ565W」、密度0.968g/cm、メルトマスフローレイト5.0g/10分)5.3質量%を含む混合樹脂組成物100質量部に対し、界面活性剤として商品名「エレストマスターS−520」(花王社製、アルキルスルホン酸系界面活性剤20質量%含有ポリスチレン樹脂マスターバッチ)を10質量部、気泡調整剤としてタルク0.6質量部を混合した混合原料を、内径115mmの第一押出機と、内径150mmの第二押出機が連結されたタンデム押出機の第一押出機のホッパーに供給した。押出機のシリンダー温度は最高220℃とし、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)3.5質量部を圧入、混練して、第二押出機にて発泡性溶融混合物を冷却し、樹脂温度を161℃に調整して、150kg/hrの押出量で合流金型に流入した。
一方、第2発泡体用として、ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製「HRM−12」、メルトマスフローレイト5.5g/10分)100質量部に対し、気泡調整剤としてタルク0 .7質量部を混合した混合物を、内径115mmの単軸押出機のホッパーに供給し、押出機のシリンダー温度は最高230℃とし、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)4.0質量部を圧入、混練、冷却して、発泡性溶融混合物の樹脂温度を154℃に調整して、100kg/hrの押出量で合流金型に流入した。
合流金型で合流された樹脂は、口径175mmの環状金型に注入され、厚み0.45mm のスリットより円筒形状に押出され、口径670mmの冷却用マンドレルに沿わせて引き取り、マンドレル後部に取り付けた2枚のカッターで円筒状の発泡体を切開して上下2枚の積層発泡シートを得た。スリットから出た直後の発泡体の内および外にエアーを吹付けて発泡体表面を冷却した。得られた吸水性発泡シートの厚みは2.8mm、密度は0.063g/cmであった。また吸水性発泡シートの連続気泡率は52%であった。ここで、連続気泡率は、下記測定方法によって測定した値である。
【0077】
<連続気泡率測定方法>
得られた吸水性発泡シートの独立気泡率(%)及び連続気泡率(%)は下記の通り算出される。
独立気泡率= 100×{空気比較式比重計での発泡体の測定体積−(発泡体の質量/ 樹脂の密度)}/発泡体の見掛け体積
連続気泡率= 100×(発泡体の見掛け体積−空気比較式比重計での発泡体の測定体積)/発泡体の見掛け体積
なお、独立気泡率= 100−(連続気泡率+樹脂分の占める比率)である。
【0078】
前記の通り作製した吸水性発泡シートを発泡基材シートとして用い、それ以外は実施例1と同様にして、二次発泡シート積層体を作製した。
得られた二次発泡シート積層体について、実施例1の場合と同様に<突刺試験>、<表面硬度測定>および<落球試験>を行った。その結果を表2に記す。
【0079】
[実施例4]
生分解性樹脂フィルムの片面に、厚み0.1μm程度となるようにイソシアネート系硬化剤を含む接着剤(接着性インキ)をコーティングしたこと以外は、実施例1と同様にして二次発泡シート積層体を作製した。得られた二次発泡シート積層体の質量に占める生分解性樹脂フィルムの質量比は27質量%であった。
得られた二次発泡シート積層体について、実施例1の場合と同様に<突刺試験>、<表面硬度測定>および<落球試験>を行った。その結果を表2に記す。
【0080】
[実施例5]
ポリスチレン樹脂として東洋スチレン社製のHRM−26(商品名)75質量%、ポリ乳酸樹脂としてユニチカ社製「テラマック」(商品名)25質量%との混合樹脂を発泡基材シートの樹脂原料として用いたこと以外は、実施例2と同様にして、二次発泡シート積層体を作製した。
得られた二次発泡シート積層体について、実施例1の場合と同様に<突刺試験>、<表面硬度測定>および<落球試験>を行った。その結果を表2に記す。
【0081】
【表2】

【0082】
表2の結果から、実施例3〜5についても実施例1,2と同様に、ポリスチレン系樹脂発泡シートにポリスチレン系樹脂フィルムを積層した比較例1,2に比べ、突刺強度が高くなり、また落球試験の結果も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡シートに生分解性樹脂フィルムを積層してなる生分解性樹脂積層発泡シート及び該積層発泡シートを用いて作製された折箱用周側枠材および該折箱用周側枠材を用いて作製された折箱に関する。
【符号の説明】
【0084】
1…生分解性樹脂積層発泡シート、2…ポリスチレン系樹脂発泡シート、3a,3b…生分解性樹脂フィルム、10…折箱用周側枠材、11…V溝、12…溝、13…折曲部、20…折箱。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂発泡シートからなる発泡基材シートの一方または両方の面に、生分解性樹脂フィルムを積層してなり、突刺強度が7.0N以上であることを特徴とする生分解性樹脂積層発泡シート。
【請求項2】
前記発泡基材シートは、密度が0.035〜0.105g/cmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の生分解性樹脂積層発泡シート。
【請求項3】
生分解性樹脂積層発泡シートの質量に占める前記生分解性樹脂フィルムの質量比が25質量%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性樹脂積層発泡シート。
【請求項4】
前記生分解性樹脂フィルムは、ポリ乳酸系樹脂からなるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の生分解性樹脂積層発泡シート。
【請求項5】
前記発泡基材シートが連続気泡率40%以上の吸水性発泡シートからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の生分解性樹脂積層発泡シート。
【請求項6】
前記吸水性発泡シートが、連続気泡率が40%以上の第1発泡体層と、連続気泡率が30%以下の第2発泡体層とが積層されてなることを特徴とする請求項5に記載の生分解性樹脂積層発泡シート。
【請求項7】
前記発泡基材シートと前記生分解性樹脂フィルムとが、イソシアネート系硬化剤を含む接着剤によって接着されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の生分解性樹脂積層発泡シート。
【請求項8】
前記発泡基材シートに生分解性樹脂が50質量%未満含まれていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の生分解性樹脂積層発泡シート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の生分解性樹脂積層発泡シートを長矩形に裁断し、複数の折り曲げ用のV溝を形成してなり、該V溝を折り曲げて折箱を構成可能であることを特徴とする折箱用周側枠材。
【請求項10】
長手方向に沿って底板嵌合用の溝が設けられていることを特徴とする請求項9に記載の折箱用周側枠材。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の折箱用周側枠材を折曲加工し、その両端部を接合して形成されたことを特徴とする折箱。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の折箱用周側枠材を折曲加工し、底板を嵌合して前記折箱用周側枠材の両端部を接合して形成されたことを特徴とする折箱。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−30571(P2012−30571A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40062(P2011−40062)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】