説明

生分解性発泡体

【課題】構造的堅固さ、強度、柔軟性及び生分解性を含む、優れた特性の組み合わせを与える生分解性ポリマーを含む発泡体を提供する
【解決手段】a.ポリサッカライド、発泡剤、所望により可塑剤、所望により架橋剤、所望によりゲル形成イオン、所望により一つ以上の添加剤、及び水を含む水性分散物から湿潤発泡体を形成し、b.水性分散物からの発泡体を、所望により機械攪拌によって、混合し、c.湿潤発泡体を成形又は形状化しそして所望により架橋発泡体を形成し、そしてd.所望により空気乾燥によって、発泡体を乾燥して乾燥発泡体を形成しそして所望によりさらに乾燥した発泡体を成形、形状化又は圧縮することによって、連続細孔ネットワーク及び細孔をもつ乾燥した吸収性発泡体を形成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオポリマーからなる生分解性発泡体、バイオポリマーを含む複合体、発泡体、複合体の製造方法及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオポリマーから製造される発泡体は公知でそして創傷処置、組織再生、組織工学及び細胞固定等々を含む多くの用途での使用が知られている。キトサン発泡体は、局所的及び内部創傷の両方の治療での使用が知られている。ポリマーの抗菌的及び生粘着的性質はまた、発泡体が組織表面に粘着することが望まれるその他の用途に加えてそれを創傷治療のための好適なポリマーとさせている。細胞固定、又は細胞成長のためのマトリックスとして、抗−粘着剤として、徐放系として使用するために今日利用可能な製品の多くはコラーゲンのような哺乳類の生成物からつくられている。これらを哺乳類でない物質及び高純度の物質から作られる製品で置き換えることが望まれている。
【0003】
ヒアルロン酸又はヒアルロン酸塩は哺乳類器官内の天然成分でありそしてヒアルロニダーゼによって酵素的に生分解する。ヒアルロン酸ナトリウムは肌、関節、眼及び高等動物の器官や組織の外部細胞マトリックス内に見出される豊富なグリコサアミノグリカンである。動物由来でないHAはストレプトコッカスズーエピデミカスから発酵させられる。
【0004】
特許文献1は、可溶性ポリサッカライドを含む水溶液を調製しそして機械的に溶液を発泡させることからなるポリサッカライドの形成方法を開示している。発泡体はガスを導入することによってつくられる。発泡体は形成の後で空気乾燥されるが、しかしながらこれは内部領域の崩壊に発泡体を導く。
【0005】
【特許文献1】USP6,840,777(Eagles)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、構造的堅固さ、強度、柔軟性及び生分解性を含む、優れた特性の組み合わせを与える生分解性ポリマーを含む発泡体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
我々は、特定の方法で製造されそして酵素的に生分解性のポリマーを含む発泡体は、構造的堅固さ、強度、柔軟性及び生分解性を含む、優れた特性の組み合わせを与えることを見出した。
【0008】
本発明は、a.ポリサッカライド、発泡剤、所望により可塑剤、所望により架橋剤、所望によりゲル形成イオン、所望により一つ以上の添加剤、及び水を含む水性分散物から湿潤発泡体を形成し、b.発泡体を水性分散物から、所望により機械攪拌によって混合し、c.湿潤発泡体を成形又は形状化しそして所望により架橋発泡体を形成し、そしてd.所望により空気乾燥によって発泡体を乾燥して乾燥発泡体を形成しそして所望によりさらに乾燥した発泡体を成形、形状化又は圧縮することによって、連続細孔ネットワーク及び細孔をもつ乾燥した吸収性発泡体を形成する方法を提供する。
【0009】
本発明はまた、a.ポリサッカライド、発泡剤、ゲル形成イオン、所望により可塑剤、所望によりpH変性剤、所望により一つ以上の添加剤、及び水を含む水性分散物を形成し、b.水性分散物から発泡体を調製し、そしてc.発泡体を乾燥して細孔とゲル形成イオンを含む乾燥連続細孔発泡体を形成することによって、連続細孔ネットワーク及びゲル形成イオンをもつ乾燥した吸収性発泡体を形成する方法であって、添加されるゲル形成イオンの量がポリサッカライドのゲル化サイトの25%以下を飽和させることを特徴とする方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、a)ポリサッカライド、発泡剤、ポリサッカライドをゲル化しない少なくとも一つのゲル形成イオン、所望により可塑剤、所望によりpH変性剤、所望により一つ以上の添加剤、及び水を含む水性分散物を形成し、b)水性分散物から発泡体を形成し、そしてc)発泡体を乾燥して連続細孔及び引き続き添加されるポリサッカライド溶液のゲル化に好適なゲル形成イオンを含む乾燥発泡体を形成することによって、連続細孔及び引き続き添加されるポリサッカライド溶液のゲル化に好適なゲル形成イオンを含む乾燥した吸収性発泡体を形成する方法を提供する。
【0011】
好ましい態様においては、本発明は、a)酵素的に生分解性なバイオポリマー又はポリサッカライド及び発泡剤及び所望により一つ以上のゲル形成イオン、可塑剤、架橋剤及びpH変性剤を含む水性分散物を調製し、b)水性分散物から、発泡体、好ましくは湿潤発泡体を形成、調製又は所望により機械攪拌によって混合し、c)所望により発泡体を成形又は形状化しそして所望により架橋した発泡体を形成し、そしてd)発泡体を乾燥して連続細孔を含む乾燥発泡体を形成することによって、連続細孔ネットワーク及び細孔をもつ乾燥した吸収性発泡体を形成する方法を提供する。
【0012】
“酵素的に生分解性のバイオポリマー”とは、哺乳類中で酵素作用の結果としてインヴィヴォで分解することのできるバイオポリマーを意味する。
好適には、発泡体は空気乾燥によって乾燥される。乾燥した発泡体は、所望により乾燥の過程又は後で成形、形状化又は圧縮される。
【0013】
好ましくは、発泡体は、酵素的に生分解可能なポリサッカライド、ゲル形成イオン、発泡剤、及び所望により一つ以上の可塑剤、架橋剤及びpH変性剤を含む水性分散物を形成し、調製し又は混合しそして発泡体を乾燥して細孔を含む乾燥した連続細孔発泡体を形成させることによって形成される。
【0014】
本発明で使用するのに好適なゲル形成イオンは一価及び多価イオン、好ましくは二価及び/又は三価イオン、又はイオンの混合物を含む。ゲル形成イオンが酵素的に生分解性バイオポリマーとゲルを形成できることが本発明の必要事項である。イオンが特定のバイオポリマーと可溶性塩を形成する場合は、これらのイオンは一般には、そのバイオポリマーとゲル又は発泡体をつくるのに好適とは見做されない。好適なゲル形成イオンは正又は負に帯電しておりそして一価又は多価である。例としては、例えば、カルシウム(2+)、バリウム(2+)、ストロンチウム(2+)、鉄(2+)、亜鉛(2+)、銅(2+)、及びアルミニウム(3+)を包含する。好ましいカチオンは二価の金属カチオンであり、より好ましくはカルシウム(2+)カチオンである。カチオンは、もしそれが可溶性塩を与えるなら特定のバイオポリマーに対する好適なゲル形成イオンとしては見做されないが、しかしながら、もしそれが別のポリマーと可溶性塩を形成しなかったならばそのポリマーには好適である。酵素的に生分解可能なバイオポリマー塩が正に帯電するところでは、例えば、キトサン、負に帯電するゲル形成イオンは、例えば燐酸塩が使用される。
【0015】
所望のゲル形成イオン又はゲル形成イオンの混合物を与える塩又は塩の組み合わせがゲル形成イオンとして使用される。ゲル形成イオンは、調製過程又は発泡体への引き続く添加で、もし適用可能ならポリサッカライドとの液体添加前に発泡体内に取り込まれる。ポリサッカライド発泡体のための典型的な洗浄溶液は、約30mMから約200mM、より好ましくは50から100mMの塩化カルシウム、塩化バリウム、又は塩化ストロンチウムのような水溶性ゲル化塩を含んでいる。好適には、ゲル化速度は、それらがゆっくり溶解するpH条件下でわずかに溶解する塩を使用することによって、又は金属封鎖剤と組み合わせてゲル形成イオンを使用することによって、ゲル化を遅らせるためにコントロールすることができる。洗浄又は浸漬が複合体の性質を変性するために使用でき、そこでは追加のゲル形成イオンは複合体を強化又は堅くするためにそしてまた細胞増殖を制御するために添加され、一方、金属封鎖剤又は非−ゲル形成イオンのような他の処理は複合体を弱める又は溶解するために使用される。
【0016】
アルギネートゲルは、回収剤、例えばクエン酸塩水溶液、EDTA又はヘキサメタフォスフェートの添加によって溶解できる。生体細胞で使用するための洗浄処理は等浸透圧でなければならない。複合体の性質は従って所望のとおりに誂えられる。
【0017】
ゲル形成イオンは、発泡体ポリマー及び/又は可溶性ポリサッカライドとゲルを形成することができる。ゲル形成イオンは、発泡体と可溶性ポリサッカライド間の結合を形成する。好ましくは、発泡体中の“ゲル形成イオン”はポリサッカライドに与えられそして発泡体中に、ポリサッカライドのゲル化サイトの少なくともいくつかが発泡体に液体成分を接触させることによって占有されるようなレベルで存在する。好適には、ゲル形成イオンは、十分なゲル形成イオンが、添加されるべきポリサッカライド中のゲル化サイトの少なくともいくつかを占有するために存在している限りは、ゲル形成イオンを結びつけるために発泡体のサイトに対して化学量論レベルで発泡体中に存在する。
【0018】
好ましい態様においては、ゲル形成イオンは発泡体中に存在しそして発泡体の製造過程で、又は形成された後で、しかし望ましくはゲル化した発泡体複合物を形成するためにさらなるポリサッカライドの添加の前に発泡体中に取り込まれる。好ましくは、ゲル形成イオンは、発泡体中に引き続き添加されるポリサッカライドとゲルを形成するために好適である。好適には、添加されるゲル形成イオンの量は、ポリサッカライドのゲル化サイトの200%まで、例えばサイトの25%以下まで飽和する。
【0019】
本発明の発泡体は連続細孔ネットワークをもっている。好適には、連続細孔ネットワーク中の細孔は5から1000ミクロン、好ましくは25から500ミクロンである。発泡体は、好ましくは、その細孔中にポリサッカライドを含む添加された液体成分を吸収できる。発泡体に添加された液体成分、例えば、ポリサッカライド溶液の発泡体内での移動を可能にする及び/又は吸収できる液体の体積を増加させるために、好適には発泡体は少なくとも一つの表面に連続細孔をもちそして望ましくは少なくとも一部の内部結合した細孔をもつ。発泡体は好適には、膨潤性で好ましくは液体、例えば生理水溶液又はポリサッカライド溶液をその重量の30倍、好ましくはその重量の1から20倍吸収する。発泡体は細孔サイズの均一な又は不均一な分布をもつことができる。全ての細孔が液体成分を吸収することを要求されるわけではない。
【0020】
酵素的に生分解可能なバイオポリマーは好ましくはポリサッカライド、好ましくはキトサン及びヒアルロン酸から選択される。酵素的に生分解可能なバイオポリマーを使用することによって、本発明に従った発泡体及びその発泡体からなる複合体は、生粘着剤として創傷処置において及び人体又は動物体内のその他の用途において有利に使用できる。酵素的生分解は、製品がその機能を果たしそしてそれから分解によって体内から取り除かれるような方法で発泡体を設計することを可能にする。その本来の性質によって又は発泡体が使用される環境に好適な酵素が存在しないことによって、酵素的に生分解しないバイオポリマーは、その他のメカニズム、例えばそれらが排出されるレベルまで加水分解によって分解する。
【0021】
特に好ましい態様においては、バイオポリマーはキトサンからなる。キトサンは、β−(1→4)−結合した2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノーズ(GlcNAc)及び2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコピラノーズ(GlcN)からなる線状ポリサッカライドである。キトサンはキチンのN−脱アセチル化した誘導体で、それは全体がほとんどβ−(1→4)−結合した2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノーズ(GlcNAc)から構成されている。市販のキトサンは、キチンのアルカリN−脱アセチル化によってつくられる。不溶性化合物の除去と結びつけた不均一系脱アセチル化プロセスは、ポリマー鎖に沿って、GlcNAcとGlcN−単位のランダム分布をもったキトサン生成物を生じさせる。キトサン中のアミノ基は、約6.5のpKa値をもちそしてこの値以下のpHで、遊離のアミノ基はプロトン化して溶液中に溶解したキトサン塩は正電荷を運ぶことになる。従って、キトサンは負に帯電した成分と反応し、キトサンの正電荷密度の直接関数となる。
【0022】
有利なことに、キトサンのカチオン的性質は、生理粘着的性質を与える。さらに、キトサンは、血の固まりの形成においてそして治癒過程のフィブリンレベルを減少させて傷跡組織の形成を減少させる、それらの負電荷を与える効果によって赤血球細胞を沈殿させる。キトサンは、リゾチーム及び哺乳類の身体、例えば人体中で生ずる他の関連する酵素によって分解する。使用する場合、本発明の発泡体中のキトサンは、哺乳類の唾液、涙、血清及び腸液内のリゾチームによって分解する。キトサン発泡体をもつ複合体は、創傷処置において、生粘着剤としてそして人体又は動物の体内でのその他の用途において有利に使用される。
【0023】
キトサンは、存在する細胞、例えば粘液性表面及び表皮としての皮膚間の緊密な結合を開くことが知られているので、本発明は特に薬剤及びワクチン運搬用途に有用である。キトサン発泡体はまた、細胞固定のためのマトリックスとして、抗−粘着性の足場として及び徐放系として使用される。キトサン発泡体は、細胞/組織培養(インヴィトロ)用途又は組織として細胞成長に好適なマトリックスを与えることができる。
【0024】
酵素的生分解は、製品がその機能を果たしそしてそれから分解によって体内から取り除かれるような方法で発泡体を設計することを可能にする。キトサンの分解生成物は、哺乳類中で毒性のないグルコサミン及びN−アセチルグルコサミンである。リゾチームによる移植されたキトサン発泡体の生分解速度は、アセチル化が酵素的分解からポリマーを保護するので、キトサンの脱アセチル化度を変えることによって変性することができる。高い脱アセチル化度をもったキトサンはまた、正電荷の保護効果によって、酸加水分解によるランダムな解重合により耐性がある。
【0025】
本発明で使用するのに適したキトサンは、キトサン塩基、水溶性キトサン塩又は変性キトサンの形態である。キトサン塩基は溶解させるために、希酸、例えば1wt%の酢酸を必要とする。キトサンは酸性pHで水性媒体に可溶性で、そこではポリサッカライドは高度に正電荷に帯電する。モノマー単位のランダム分布と40%と60%の間の脱アセチル化(DA)度をもった高分子量キトサンは中性pHで可溶性である。キトサンは高いpH−値でのDAの減少で溶解度が増加することが示される。また、60%以上のDAでキトサンを解重合することによって、中性pH−値でのそれらの水溶性は増加させることができる。
【0026】
一般に、キトサンは溶解のために酸性環境を必要とする、適切な酸にキトサンを溶解させることによって、キトサン塩が乾燥によって得られる。好適なキトサン塩としては、塩化キトサン、キトサングルタメート、キトサンラクテート、キトサンマレエート、キトサンマレート、キトサンマロネート、キトサンサクシネート、キトサンフォーメート、キトサンアスパルテート、キトサンアセテート、キトサンプロピオネート、キトサンナイトレート、キトサンニコチネート、及びキトサンアジペートを包含する。例えば、キトサングルタメートは、キトサンをグルタミン酸に溶解させることによってグルタメート塩形態に変換されたキトサンである。グルタミン酸はGlcN単位数に対して化学量論量で存在する。塩化キトサンはGlcN単位数に対して化学量論量の塩化水素を含む。
【0027】
キトサンの塩は一般に水溶性で、そしてキトサン塩の1%溶液のpHは典型的には4と6の間である。キトサンの機能的な性質は、脱アセチル化度及び分子量及び分子量分布によって影響を受ける。好適には、アセチル化度は40%から100%、好ましくは50%から100%の範囲である。或る態様においては、アセチル化度は好ましくは80から99%、より好ましくは80から95%である。好適な分子量は10kDaから1000kDaの範囲である。
【0028】
好適な変性キトサンは、キトサンに結合した共有結合基、例えばペプチド結合したキトサンを含む。変性キトサンは、架橋能力、溶解度、例えば特定の細胞、薬剤又はペプチドに結合する能力の生分解速度のようなキトサンの性質又は機能性を加え、変性し又は変えるための変性キトサン中の基及びそれらの濃度を選択することによって誂えることができる。
【0029】
さらに好ましいバイオポリマーは、ヒアルロン酸(HA)、それらの塩及び変性ヒアルロン酸塩を含む。非−動物源からのヒアルロン酸は本発明で使用するのに好ましい。ヒアルロン酸は、β−(1,4)−結合したD−グルクロネート(D)及びβ−(1,3)−N−アセチル−D−グルコサミン(N)から構成される線状コポリマーである。ヒアルロネート(ヒアルロン酸塩)のコイル状構造は、水中でその重量のほぼ1000倍を捕捉することができる。これらの特性は分子に物理化学的性質と明白な生物学的機能を与えそして薬剤運搬、組織工学及び粘性補助における生体適合性で生物相互作用物質のための建設ブロックとして使用するのが望ましい。
【0030】
好適な変性ヒアルロネートは、ヒアルロネートに共有結合した基を含むものを包含しそして例えばペプチド結合したヒアルロネートを含む。好ましい変性ヒアルロネートは好適には、D及びNモノマー単位上の共有結合的に変性したカルボキシル基及び/又はヒドロキシル基をそれぞれもっている。変性ヒアルロネートは、架橋能力、溶解度、例えば特定の細胞、薬剤又はペプチドに結合する能力の生分解速度のようなヒアルロネートの性質又は機能性を加え、変性し又は変えるための変性ヒアルロネート中の基及びそれらの濃度を選択することによって誂えることができる。
【0031】
ヒアルロン酸は、組織結合治癒及び傷跡のない胎児の創傷治癒の初期段階で重要な役割を果たしそして細胞固定、付着、及び増殖を調節すると考えられそして組織工学及び組織再生用途で特に有用である。
【0032】
発泡剤は、好ましくは、人体又は動物体内で、例えば創傷処置に、生粘着剤としてそして人体又は動物体内のその他の用途で使用できるように生物学的に許容できるものである。好ましい態様においては、発泡剤は、発泡体の崩壊に耐性のある湿潤発泡体を好適に生み出すポリマー発泡体からなる。発泡剤は、単一物質であるか又は発泡を助ける物質の混合物である。生物学的に許容できるものでない発泡剤は、一般的には、医療用途での使用のための発泡体で使用するのには好適ではない。特に好ましい態様においては、発泡体は実質上、非−ポリマー界面活性剤及びその他の生物学的に許容できない発泡剤を含まない。
【0033】
ヒドロコロイドのようなポリマー発泡剤は、それらが一般に界面活性剤よりも得られた発泡体から漏れ出さないために、一般的には生物学的用途に好ましい。好ましいヒドロコロイドの例としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、アルブミン及びプロピレングリコールアルギネートのようなグリコールアルギネートを包含する。或る用途に対しては、発泡剤に加えて、追加のサッカライド、例えばカルボキシメチルセルロースのようなセルロース誘導体を添加するのが有利である。ポリマー発泡剤は好ましくは水溶性で均一な発泡体が製造される。特に好ましい水溶性発泡剤は、それらが、発泡体中に細かな細孔を生ずる小さな泡を生み出すので、アルブミン及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0034】
高レベルのカルシウムを含む乾燥した架橋発泡体が水に浸漬されるとき、発泡体構造は典型的には、発泡体の高レベルの架橋によって破壊しない。しかしながら、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのような水溶性発泡剤を含む、発泡体中の可溶性成分は発泡体から拡散して滲みだす。この発泡剤のロスは、使用条件下で溶解しない発泡剤の使用によって、例えば創傷処置用途において減少するか又は防止される。体温でゲルを生成する発泡剤、例えばメチルセルロースは35℃以上でゲルを生成する。発泡体が体温で使用されるような用途で発泡剤としてメチルセルロースを含む発泡体を使用するときは、メチルセルロースは、ゲル化した状態で存在しそして発泡体中に残りそして発泡体の湿潤強度に寄与する。
【0035】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなポリマー発泡剤が使用されるとき、水性分散物中のポリマー発泡剤の濃度は、典型的には約0.5wt%から約6wt%、好ましくは約1wt%から約4wt%、より好ましくは約1.5wt%から約2wt%である。これは、発泡体中に存在する水及び如何なる添加剤も除外して、ポリマー発泡剤を約3wt%から約37wt%、好ましくは約6wt%から25wt%、より好ましくは約6%から約12.5wt%含む発泡体を生み出す。
【0036】
酵素的に生分解可能なポリマー発泡体は水和後に溶解するように調製されるか、又は発泡体は架橋によって水和されたとき構造的に堅固であるように調製できる。例えば、非−架橋キトサン発泡体は、キトサン塩(プロタサンアップCLのような)を水又は塩溶液中に溶解させることによって調製できる。湿潤発泡体は、酵素的に生分解可能なポリマーの水溶液を、可塑剤例えばグリセリン及び/又はソルビトール又は発泡剤例えばヒドロキシメチルセルロース及びアルブミンのような他の成分と一緒に通気するためにミキサー、例えば、ワイヤーブラシを備えたキッチンエイドミキサーを使用して調製できる。発泡体の細孔構造は、発泡剤及び室温又は高い温度で例えばオーブン中で発泡体を乾燥することによって凍結した構造によって安定化される。発泡体はまた凍結乾燥技術によって調製される。
【0037】
発泡体は架橋されていてもよい。架橋はバイオポリマーにイオン成分を添加することによって、又は共有結合架橋剤を使用することによって達成される。発泡体中のバイオポリマーはイオン的に又は共有結合的に架橋可能であるが、しかし架橋可能である必要はない。もし、発泡体が、発泡体への可溶性ポリサッカライドの添加によって複合体をつくるために使用されるならば、好適には、発泡体又は発泡体成分、例えばゲル形成イオンは可溶性ポリサッカライドと架橋可能である。架橋はバイオポリマーにイオン成分を添加することによって、又は共有結合架橋剤を使用することによって達成される。イオンの水溶液はバイオポリマー発泡体に添加されキャースト前に好適には通気される。イオン成分の添加は好適にはゲルを形成させそしてこれがキャーストされる。代替としては、イオン成分は、乾燥前に、発泡体が、例えばスプレーによって成形型にキャースト(投入)された後で、好適に湿潤発泡体に添加される。
【0038】
正に帯電したバイオポリマーが使用される場合は、例えばキトサンが、負に帯電したイオン成分、例えばトリフォスフェート又はクエン酸ナトリウムが架橋を起こすために使用される。好ましい態様においては、混合工程の前に、β−グリセロフォスフェートが正に帯電した湿潤溶液中のバイオポリマーに添加されそしてゲル化は温度を上昇させることによって成形後に起こる。モリブデートのような他の多価イオンはキトサン発泡体を架橋させるのに使用される。非特許文献1に開示されている架橋剤もまたキトサン発泡体を製造するのに有用である。
【0039】
酵素的に生分解可能なポリマーの架橋は文献公知の共有結合架橋剤、例えばエポキシドを使用して達成される。
所望のときは、バイオポリマーフィルムもまた裏打ち材料として発泡体上にキャーストされる。
【0040】
好適な可塑剤及びその他の添加剤は特許文献2に記載されているもの、その開示はここでは参照として取り込まれている、を含む。好適なpH変性剤は発泡体の性質、例えばキトサンは正電荷でヒアルロネートは負電荷、に従って選択される。
【0041】
本発明は特に生物医学用途で使用するのに適している。これらの用途は薬剤運搬又は局所的適用を含み、又は例えば組織成長、組織再生又は創傷用途のための外部使用用又は移植又は内部創傷処置のような内部使用用である。バイオポリマーはその用途に応じて異なったレベルの純度で使用される。超純度キトサン及びアルギネート材料は生体適合性で、哺乳類、好ましくは人間への移植を可能にするのに十分な純度をもっている。
【0042】
本発明はさらに、発泡体組成物の組み合わせ、例えば乾燥又は湿潤バイオポリマー発泡体を湿潤ゲル化アルギネート発泡体に添加しそれから乾燥することによって得られる例えば、酵素的に生分解可能なバイオポリマーに固定したアルギネート発泡体を含む。アルギネート発泡体/バイオポリマー発泡体構造は好適には機械的性質のような改善された性質を与える。好ましい態様においては、キトサン発泡体及びゲル化したアルギネート発泡体を含む複合体は生物医学用途で使用するために細胞を運ぶために使用される。
【0043】
本発明に従った発泡体は柔軟で、所望の形状に切断して圧縮することができる。発泡体の性質は、取り込まれた空気の量、バイオポリマーの種類、分子量及びバイオポリマーの組成、濃度、架橋及び非−架橋の量、及び発泡体厚みを含む多くのパラメーターによって変化させることができる。発泡体で使用されるバイオポリマーは生体適合性である。架橋の量及び細孔度を変えることによって、発泡体の堅固さ及び発泡体の分解はコントロールでき、それは発泡体を多くの用途で有用にする。
【0044】
好ましい態様においては、発泡体は、発泡体の連続細孔構造の細孔に吸収される、引き続き添加されたポリサッカライド溶液をゲル化させるのに好適な、添加されたゲル形成イオンを含む。ゲル形成イオンは一価又は多価イオン、典型的には二価及び/又は三価イオン、又は添加されたポリサッカライド溶液中のポリサッカライドをゲル化できるイオンの混合物を含む。特定のポリサッカライドのためのゲル形成イオンは文献公知である。アルギネートの場合、好適な多価カチオンとしては、例えば、カルシウム(2+)、バリウム(2+)、ストロンチウム(2+)、鉄(2+)、亜鉛(2+)、銅(2+)、及びアルミニウム(3+)を包含する。好ましいカチオンは二価の金属カチオンであり、より好ましくはカルシウム(2+)カチオンである。添加されるゲル形成イオンは発泡体の製造過程で、適切な塩溶液を使用することによって取り込まれるか、又は発泡体の製造過程又は製造に引き続き、例えば塩溶液のスプレー又は浸漬によって添加される。
【0045】
更なる観点においては、本発明は、例えば、本発明に従った殺菌乾燥発泡体内のゲルで固定された細胞、薬剤又は粒子をもつ殺菌複合体の製造方法を提供する。複合体は、好適には、ゲル化サイト及び液体成分を形成するための細胞、薬剤及び微粒子のような機能性成分をもつ可溶性ポリサッカライドを含むポリサッカライド溶液(殺菌アルギネート溶液のような)を混合し、液体成分を、取り込まれたゲル形成イオンを含む連続細孔ネットワークと細孔をもつ本発明に従った発泡体(殺菌乾燥キトサン発泡体のような)に添加し、そして可溶性ポリサッカライドのゲル化サイトをゲル化イオンと反応させて、細孔内の細胞、薬剤又は微粒子を固定するゲルを形成させることによって形成される。
【0046】
好適には、発泡体、複合体又は複合体を含む部材は、好ましくはガンマー線照射、電子線、酸化エチレン、オートクレーブ処理又は液体成分の添加前に発泡体をアルコールと接触させること、又はNOxガスと接触させること、水素ガスプラズマ殺菌によって殺菌される。殺菌は、それが複合体に逆作用する場合又は機能性成分が複合体中に含まれる場合は、採用されるべきではない。
【0047】
殺菌した複合体の用途は、インヴィトロ又はインヴィヴォ組織培養用途に対する細胞固定及び/又は細胞増殖、創傷治療のための、又はインヴィヴォの抗−粘着層としての細胞治療及び人工器官、徐放性のためにインヴィヴォで使用される運搬系を包含する。エンドトキシンの低含量及び裏付けられた安全プロフィールをもつ超純粋ポリサッカライドは発泡体のために又は可溶性ポリサッカライドとして、又は両方のために、生きている動物又は人に移植するためにどんな構造が意図されているかに依るが、適切なものとして使用される。エンドトキシンの低含量とは、エンドトキシン含量が、例えば、USのF.D.Aで移植可能な部材のために推奨しているエンドトキシン含量を超えてはならないことを意味している。最近制定されたガイドラインは、部材が、患者に対して350エンドトキシン単位(EU)以上を放出しないことを定めている。低いエンドトキシン含量、例えば350EU/g以下、好ましくは100EU/g以下をもつ超純粋ポリサッカライドが、発泡体のために、或いは可溶性ポリサッカライドとして、又は両方が適切なものとして、生きている動物及び人に移植することが意図されている構造が何かによって、使用される。例えば、アルギネートが、人体への移植用に使用されるときは、アルギネートは好適には100EU/g以下のエンドトキシン含量をもつ。好ましい態様においては、複合体は10EU/g以下のエンドトキシン含量をもつ。
【0048】
複合体中に固定された細胞は動物に移植され、そこではゲルは免疫障壁として作用しそして免疫系による検知を妨げ、それによって異種移植を可能にしている。この種の人工器官を使用するとき、細胞が移植された複合体からはみ出さずそして免疫系に晒されるようになることが重要なので、動物細胞が移植を望まれるとき、ストロンチウムがゲル形成イオンとして好適に使用できる。複合体は又、例えば、癌研究のために、動物中の細胞、腫瘍及び組織の異種移植を確立するために使用される。複合体中の小鳥のランガーハンのような多細胞集合体の固定は動物又は人間に免疫拒絶なしで該多細胞集合体を移植可能にしそしてそのような移植された細胞集合体は、例えば、インシュリンを生成する人工器官として機能する。
【0049】
細胞培養は多くの生体物質、例えば、酵素、ホルモン、免疫生体(モノクロナル抗体、インターロイキン、リンフォカインのような)及び抗癌剤を作り出すのに使用できる。細胞は、合計細胞数を増加させるために、本発明に従った複合体中で培養できる。例えば、患者から単離された細胞は、合計細胞数を増加させるために、本発明の複合体中で培養でき、細胞はそれから複合体から取り戻すことができそして組織工学用途で使用することができる。本発明に従った複合体中の細胞培養はまた組織のような構造体を生み出すための細胞分離及び成長を探求し、特徴づけ、特定するために使用することができる。例えば、細胞は外部ストレスによって影響を受けそして複合体(ゲル/発泡体)材料の弾性の変性は遺伝子表現に影響する。
【0050】
本発明に従った発泡体及び複合体は、組織間の癒着を防止するために、人体及び動物の身体の治療に使用される。外科的干渉は組織、例えば筋肉間、筋肉と腱又は神経又はその他の組織間の癒着又は共成長を引き起こす。この望ましくない組織成長を防止するために、抗−粘着層が、筋肉間、筋肉と腱又は神経間に挿入され、創傷をカバーしそして治癒プロセス過程における手術後の癒着形成を防止する。
【0051】
本発明の発泡体及び複合体は、例えば複合体中のヒアルロネート発泡体及び細胞成長と抗−粘着層への浸入を遅らせるか防止しこのようにして治癒過程の組織間の癒着を避ける材料の選択によって抗−粘着層として使用するために処方される。発泡体は好適には、創傷治癒として(架橋イオンの量、ポリマーの種類、ポリマー濃度を適切に変えることによって)生分解性材料から加工されそして分解するか又は身体から排出される。
【0052】
処方の性質にも依るが、発泡体又は複合体は種々の期間で分解し、これによって薬剤又は組織再生剤のような固定された物質を放出する。本発明の好ましい使用は、有機又は無機材料が複合体内で固定されそして組織再生の足場として作用することができる。そのような一つの例は、発泡体内のゲル中へのヒドロキシアパタイトの取り込みでありそしてそれから発泡体又は発泡体/ゲル複合体中に骨の再生を引き起こすために骨欠陥に移植されるか付着させられる。別のそのような例としては、複合体内へのケモタクチック又は細胞引き付け物質の取り込みであり、引き続き組織再生を促進するために組織の損傷部分に複合体が移植されるケースである。
【0053】
細胞が固定される複合体とゲルの堅さは、ゲルの機械的性質が増殖を調節しそして細胞の種類に基づいて区別が観察されると思われるので、細胞挙動の重要な因子である。細胞が固定されたゲルの堅さ(例えば、弾性率によって特徴付けられる)は、外骨格及び結果として起こる細胞の拡がりから生ずる力の大きさを決定する。ゲルの性質はポリサッカライド濃度、ゲル形成イオンの飽和度、及びゲル形成イオンの種類によって変化する。さらに、ポリサッカライドは、細胞粘着ペプチド配列のような、RGDトリペプチドのような、細胞粘着のためのペプチド配列を加えることによって化学的に変性できる。
【0054】
複合体が、徐放性用途、例えば、薬剤、成長因子、機能性食品、風味剤、芳香剤として使用されるときは、機械的及び化学的性質は所望の環境で適切な放出のために変性することができる。
【0055】
本発明の乾燥発泡体は、重量基準で、一般的には乾燥発泡体の全ての成分重量の40%以下、より特定的には、乾燥発泡体の全ての成分の35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、3%以下、2%以下、1%以下の水含量を含む。
乾燥した吸収発泡体は如何なる液体も、例えば、水、体液、等々を吸収することができる。
【0056】
用語解
アルブミン
牛のアルブミン、フラクションV、約99%(A−3059)(シグマ−アルドリッチケミーGmbH、ドイツ)
CaCl
塩化カルシウム二水和物(1.02382.1000)(メルク KgaA、ダームスタット、ドイツ)
CaCO
ヒューバーカル500エリート、炭酸カルシウム、粒子サイズ〜4.2μm(ヒューバーエンジニアードマテリアルズ、フィンランド)
GDL
グルコノδ−ラクトーン(ロケッテ、イタリー)
グリセリン
グリセリン、Ph.Eur.(VWRプロラボ、ローベン、ベルギー)
ハンクス
【0057】
ハンクのバランス塩溶液;(H8264)(シグマ−アルドリッチケミーGmbH、ドイツ)
HPMC
ファーマコート603、置換タイプ2910、ハイプロメローズ USP、(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)(信越化学株式会社、日本)
NaHPO
燐酸水素二ナトリウム:30427(リーデル−デハーエン、ドイツ)
Na−トリフォスフェート
Na−トリフォスフェートペンタベーシック(T5883−500G)(シグマ−アルドリッチケミーGmbH、ドイツ)
プロノーバアップMVG
アルギン酸ナトリウム、バッチ:701−256−11、粘度(20℃で1wt%水溶液)=385mPas(ノバマトリックス、オスロ、ノルウエー)
プロノーバアップLVG
アルギン酸ナトリウム、バッチ:FP−502−04、粘度(20℃で1wt%水溶液)=50mPas(ノバマトリックス、オスロ、ノルウエー)
プロノーバSLG20
殺菌アルギン酸ナトリウム、バッチ:Ch−B.221105、粘度(20℃で1wt%水溶液)=36mPas(ノバマトリックス、オスロ、ノルウエー)
プロタサンCL210(214)
【0058】
塩化キトサン、バッチ:708−783−01、脱アセチル化:94.5%、pH=5.3、粘度(20℃で1wt%水溶液)=77mPas(ノバマトリックス、オスロ、ノルウエー)
プロタサンアップCL213
超高純度塩化キトサン、バッチ:FP−104−02、粘度(20℃で1wt%水溶液)=74mPas、脱アセチル化率=86%(ノバマトリックス、オスロ、ノルウエー)
ヒアルロン酸ナトリウム
薬品グレード80、バッチ:17053P、分子量:1.08*10g/モル(紀文フードケミファ社用のノバマトリックス、日本)
ソルビトールスペシャル
70%ソルビトール溶液(SPIポリオールズ、USA)
ソルビトール
生化学用のD(−)ソルビトール、乾燥、100%(メルク、KGaA、ドイツ)
【発明の効果】
【0059】
本発明により、構造的堅固さ、強度、柔軟性及び生分解性を含む、優れた特性の組み合わせを与える生分解性ポリマーを含む発泡体が得られる。
実施例
【実施例1】
【0060】
この実施例はキトサン発泡体の製造方法及び密度及び吸収に関するそれらの特性を示す。
4%のキトサン塩を含む水溶液をプロタサンCL210(214)を使用して調製した。77.0gのMQ−水及び14.0gのソルビトール(乾燥)を混合ボウルに添加してボウルをゆっくりと回しながらソルビトールを溶解させた。100gのキトサン溶液、6.0gのグリセリン及び3.0gのHPMCを同じ混合ボウルに添加した。分散物を、均一性を確保するために、ワイヤーブラシを備えたホバートキッチンエイドミキサーで中速で1分間ブレンドした。混合を高速で2.5分間続けた。湿潤密度は0.23g/mlと測定された(100mlの容器を満たすのに必要な湿潤発泡体の重量から決定した)。湿潤発泡体を、テフロンでコートした2mm及び4mm高さの成形型に投入(キャースト)しそしてそれから乾燥オーブン中に80℃でそれぞれ30分及び60分間置いた。
【0061】
別の発泡体を上記の手順によって作成したが、しかし湿潤発泡体は8mm深さの型中で成形した。発泡体を80℃で1時間そしてそれから40℃で3時間乾燥した。
得られた乾燥発泡体は柔軟でソフトで連続細孔ネットワークをもっていた。水を発泡体に添加すると、それは直ちに吸収されそして発泡体はかなり膨張した。水和した発泡体はその形状を維持したが、比較的弱く、湿潤発泡体は片隅からそれを持ち上げて一個のまま移すことはできなかった。水和前に乾燥発泡体を圧縮しても発泡体の吸収速度又は吸収能力に目立った影響を与えることはなかった。
【0062】
吸収能力を測定するために、発泡体片を小刀を使用して3.5cm×3.5cmに切断した。発泡片を秤量しそしてメッシュ(直径0.71mm)上に置きそしてモデル生理溶液としてのハンクのバランス塩溶液をピペットを使用して添加した。過剰の液体を添加すると、発泡体は透明になった。発泡体片からの滴りが認められなくなったときに、湿潤発泡体の重量を測定した。三つの異なった発泡体の乾燥密度と吸収能力を測定し、結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【実施例2】
【0064】
この実施例は、アルギネート発泡体を第一層として、キトサン発泡体を、アルギネート発泡体に付着した第二層として含んで作成された二層発泡体材料を示す。この種の複合体はキトサン発泡体の堅固さ、強度、生分解性及び吸収能力を変性するために使用される。
【0065】
4%アルギネート(プロノーバアップMVG)を含む水溶液を最初に調製することによってアルギネート発泡体を作成した。111.2gのアルギネート溶液を混合ボウルに移した。同じボウルに、6.0gのグリセリン、18.0gのソルビトールスペシャル、3.0gのHPMC、0.85gの炭酸カルシウム(アルギネート中のグルロン残基を125%飽和させるのに十分な)及びMQ−水を添加した。分散物を、均一性を確保するために、ワイヤーブラシを備えたホバートキッチンエイドミキサーで1分30秒中速でブレンドした。2.69gのGDL及び25.0gのMQ−水の新しく混合したGDL溶液を添加する前に混合を高速で7分間続けた。混合を高速で1分間続けると、0.23g/mlの湿潤密度をもった発泡体が生じた。湿潤発泡体を、バーシドライベンチプロテクターを使用して発泡体(Nalgene Nunc international NY,USA)側のポリエチレンで被覆した4mm及び2mmの高さの成形型中に投入しそして室温で、60分間カバーをしないで保存した。
【0066】
湿潤キトサン発泡体を、ゲル化した湿潤アルギネート発泡体の頂部に、2mm及び4mmの層として(型の高さを増すことによって)、それぞれ2mm及び4mm厚みのゲル化したアルギネート発泡体の頂部に添加した。18.0gのソルビトールスペシャルを乾燥ソルビトールの代わりに使用しそして73.0gのMQ−水をこの発泡体のために添加したこと以外は、実施例1に記載されたとおりにしてキトサン発泡体を作成した。中速での混合時間を2分そして高速での混合の3分により、0.22g/mlの湿潤密度をもつ発泡体を生じた。二層発泡体をもつ成形体をそれから乾燥オーブン中80℃で1.5時間乾燥しその後37℃のオーブン中に移し、一昼夜乾燥を続けた。
【0067】
得られた乾燥発泡体は柔軟でソフトで連続細孔ネットワークをもっていた。アルギネート発泡体部分の細孔は、キトサンから作成された発泡体よりも小さかった。乾燥後二つの発泡体タイプを分離することはできなかった。それぞれの発泡体層は水を急速に吸収し(最初に添加された液滴の吸収時間はキトサン発泡体の場合1秒以下でアルギネート発泡体の場合は約3秒であった)そしてそれらは水和後も付着したまま残った。
【0068】
水和された発泡体の水和されたアルギネート部分は高い引っ張り強度をもっており、一方水和されたキトサン部分は非常に弱かった。水和したキトサン発泡体片は、キトサン発泡体側面を指で押すと壊れるか又はキトサン発泡体は反対(アルギネート)側に押すことによって引き延ばされた。破壊は剥離ではなかった。
【実施例3】
【0069】
この実施例は、キトサン発泡体を生分解性に関してより安定にしそしてより高い湿潤堅固さを与えるキトサン発泡体の架橋方法を記載する。
混合時間を、中速及び高速でそれぞれ1.5分及び4.5分にしたこと以外は、実施例2に記載されたとおりにしてキトサン発泡体を作成した。得られた湿潤発泡体密度は0.20g/mlであった。湿潤発泡体を2mm及び4mm深さの成形型に投入した。それからNa−トリフォスフェートの100mM溶液を、細かな液滴を与えるように調節されたノズルをもつスプレーボトルに充填した。Na−トリフォスフェート溶液を、2mm及び4mmに対してそれぞれ約50ml及び100mlを湿潤発泡体上にスプレーした。湿潤発泡体はスプレーした溶液の幾分かを吸収したので、添加は、各添加の間で1分以内で数回実施した。湿潤発泡体をそれから乾燥オーブン中80℃で、2mm及び4mm型に投入された発泡体に対してそれぞれ1時間及び2時間乾燥した。
【0070】
乾燥発泡体は柔軟でソフトで連続細孔ネットワークをもっていた。発泡体は水を直ちに吸収しそして水和によって変形が少なくそして実施例1の非−架橋のキトサン発泡体よりも強かった。
【実施例4】
【0071】
この実施例は、カルシウムイオンを含むキトサン発泡体の調製を記載する。キトサン発泡体中に固定されたカルシウムは、乾燥キトサン発泡体によってそれが吸収されたときに、アルギネート溶液のゲル化をインシツで誘発する。そのような構造体は、細胞固定のための又は固定された薬剤、酵素、ホルモン、等々の徐放性を与えるための生物学的用途において有用である。
【0072】
キトサン発泡体は、2.35gのMQ−水を2.35gのCaCl・2HO(80mM)で置き換えたこと以外は、実施例2と同じ量及び成分を含んで作成された。0.20g/mlの湿潤密度をもった湿潤発泡体が、中速及び高速で、それぞれ1.5分及び6分混合することによって作成された。湿潤発泡体を、前に記載したように2mm及び4mm高さの成形型中に投入した。それからそれらを乾燥オーブン中に80℃で1.5時間置いた。乾燥発泡体はソフトで且つ柔軟で連続細孔ネットワーク及び0.039±0.001g/mlの乾燥密度をもっていた。発泡体は水を直ちに吸収しそして実施例1と同じ厚みの発泡体と同様な湿潤堅固さをもっていた。この発泡体は、実施例1からの発泡体と比較してこの発泡体にハンクの溶液を添加したとき、膨張は少なかった。この発泡体のハンクの溶液の吸収容量は16.8±1.9g/g発泡体(三つのサンプルの平均値±SD)であると測定された。この発泡体の細孔は実施例1からの4mm厚みの発泡体よりも幾分大きく、これは、溶液のイオン的強さのためにキトサンの低下した粘度により合体がより進んだことを示している。
【0073】
4mm高さのトレーで成形された発泡体から、コルクボーラーを使用して発泡体ディスクを2.1cmの直径で打ち抜いた。乾燥発泡体ディスクを、ボーリンCVO120高解像度レオメーター上の鋸歯状プレート(PP25)間に置いた。それから、1%アルギネート(プロノーバアップLVG)溶液の500μlをピペットを使用して添加した。発泡体ディスク中のカルシウム含量は、添加したアルギネートのゲル化残基を96%飽和させるのに十分である。1分後に、アルギネート溶液は吸収されそして発泡体はほぼ完全に水和している。上方プレートを1.000mmの隙間に下げそして弾性率、G’の測定を開始した。振動数、歪及び温度はそれぞれ1Hz、0.001及び20℃に設定した。結果を表2に示す。
【0074】
【表2】

【0075】
アルギネート溶液を添加された発泡体ディスクの高いG’値及び添加後数分の過程のG’の増加は、キトサン発泡体から添加されたアルギネート溶液へのゲル形成イオンの寄与を確証している。
【実施例5】
【0076】
この実施例は、ゲル化イオンを含むキトサン発泡体がインシツで外部的に添加されたキトサン溶液のゲル化を引き起こす能力をもっていることを示す。
実施例3で示された4mm高さの成形型に投入された発泡体から、コルクボーラーを使用して発泡体ディスク(直径=2.1cm)を打ち抜いた。発泡体ディスクをそれから前の実施例で使用したのと同じレオメーター上の鋸歯状プレート上に置いた。ディスクにMQ−水又は1.0%のキトサン(プロタサンアップCL213)のいずれかの過剰溶液を添加した。上方プレート(PP25)を500μmの隙間に下げそして応力掃引を、適用せん断応力0.5Paから50Paで実施した。
【0077】
溶液添加の約3分後に振動測定を開始した。振動数は1Hzに設定した。それぞれの発泡体パッチに対して2回掃引を実施した。線状粘弾性領域で読み取られた弾性率、G’(G’lin)及び位相角を表3に示す。
【0078】
【表3】

【0079】
弾性率と位相角の両方に基づくと、表の結果はキトサン溶液添加後の発泡体のよりゲル的な性質を示している。
【実施例6】
【0080】
この実施例は、混合時間とキトサン発泡体中に取り込まれた空気の量が、異なった発泡体の性質にどのような影響を与えるかを示す。
異なった発泡体密度を得るために異なった混合時間を使用したこと以外は、実施例1に記載されたようにして、キトサン発泡体を調製した。湿潤発泡体を作るための全ての発泡体成分を中速で1.5分間混合した。高速での混合を1分間続けると0.45g/mlの湿潤密度を得た。発泡体の約半分を4mm及び2mm高さの型に投入した。それから残りの発泡体を高速でさらに1分間混合した。得られた湿潤密度は0.29g/mlで発泡体の残りは上記のように投入した。高速での混合時間が第一段階で45秒そして第二段階で4分と45秒にしたこと以外は、上記と同様な手順を繰り返した。湿潤密度は、それぞれ0.52g/ml及び0.18g/mlであった。最も高い湿潤密度をもった二つの発泡体は型に面する表面でつくられた薄いフィルムを得た。これは、発泡体が底近くでよりゆっくり乾燥するときの細孔の合体による。乾燥発泡体密度は、4mm高さの型に投入された発泡体からコルクボーラーを使用して直径1cmをもつディスクを打ち抜きそしてそれらを秤量することによって決定された。異なった発泡体の密度とノギスによって測定された厚みを表4に示す。発泡体は、適用応力範囲が0.5Paから18Pa、そして各発泡体片に対して3回の掃引を実施したこと以外は実施例5に記載されたのと同じレオメーター設定でのその弾性率、G’によって特徴付けられた。結果を表4に示すが、それは直径1cmをもつ三つの異なった発泡体の最後の二つの掃引の平均値を示している。発泡体を2mlのハンクの溶液に約5分間保持してそれからそれらをレオメーターに移した。乾燥発泡体の引っ張り強度を、SMSテキスチャーアナライザー及びA/TGテンサイルグリップを使用して測定した。発泡体を破壊するまで0.5mm/sで引っ張るのに必要な力及び破壊したときの最大力と引っ張った距離を表4に示す。
【0081】
発泡体片を、端から1cmのところで、長さ3.15cm、端部で1.75cm幅そして中心で1.25cm幅の寸法で、小刀を使用して骨形状に切断した。発泡体の中間でグリップに触れないところで破壊を確保するために発泡体をこの形状で切断した。発泡体片の各端部のほぼ0.3cmをグリップにそれを固定するために使用した。
【0082】
【表4】

【0083】
表は、最も高い密度をもつ発泡体が合体によって最も崩壊することを示している。発泡体は湿潤密度を増加させることによって細孔サイズを増加させることもまた観察された。引っ張り強度及び弾性率は、空気の量を増加させると低下した。また、破壊する前に引き延ばされる材料長さとして示される材料の弾性は湿潤密度の低下によって低下する。三つの濃密でない材料はほぼ同じ弾性をもっていた。
【実施例7】
【0084】
この実施例は、前の実施例で使用したものに代えて発泡剤を使用した発泡体の調製を記載する。
発泡剤として、アルブミン水溶液(0.25g/ml)でHPMCを置き換えたこと以外は、実施例1に記載されたのと同じ成分をもつキトサン発泡体を作成した。キトサン溶液と可塑剤の量は実施例1と同じであり、このブレンド物に75.0gのMQ−水と5.0gのアルブミン溶液を添加した。混合を中速で1分間始めてそして高速で6分間続けた。それから2mlのアルブミン溶液を添加し混合を高速で2分間続けた。2mlのアルブミン溶液の添加と2分間の混合を、19mlのアルブミン溶液が添加されるまでさらに6回繰り返した。得られた発泡体は0.34g/mlの湿潤密度をもっていた。2mm及び4mm高さの型中で乾燥された発泡体を80℃で、それぞれ1時間及び2時間乾燥した。
【0085】
4mm高さの型中に投入された発泡体の乾燥密度は、実施例6に記載されたように、21.3mg/cm±0.2mg/cmと測定された。実施例6に記載されたように測定された、破壊前に引き延ばされた距離によって記載される引っ張り強度と弾性はそれぞれ104g±5g及び33.4mm±0.8mmであった。
【実施例8】
【0086】
この実施例は、カルシウムイオンを取り込んだヒアルロン酸(HA)の調製を記載する。外部から添加されたアルギネート溶液のゲル化を引き起こすためのこれらのイオンを与える発泡体能力も又示される。
【0087】
2.5%HAを含む水溶液を調製しそして脇に置いた。49.65gのMQ−水、2.35gの塩化カルシウム二水和物及び10.5gのソルビトール(乾燥)を混合ボウルに添加しそしてボウルをゆっくり回転させながら乾燥成分を溶解させた。130gのHA溶液、4.5gのグリセリン及び3.0gのHPMCを同じ混合ボウルに添加した。分散物を、ワイヤーブラシを備えたホバートキッチンエイドミキサーで、均一性を確保するために中速度で2分間ブレンドした。高速で3分50秒混合を続けた。湿潤密度は0.21g/mlと測定された(100ml容器を満たすのに必要な湿潤発泡体の重量から決定された)。湿潤発泡体を、テフロンで被覆された2mm及び4mm高さの成形型に投入しそれから乾燥オーブン中で80℃で50分間置いた。
【0088】
4mm高さの型に投入された発泡体から、コルクボーラーを使用して、発泡体ディスク(直径=2.1cm)を打ち抜いた。1.0%及び0.5%のアルギネート溶液を、プロノーバSLG20(バッチ:221105)からMQ−水を添加することによって調製した。乾燥発泡体ディスクを、ボーリンCVO120高解像度レオメーター上の鋸歯状プレート(PP25)間に置いた。それから、アルギネート溶液の350μlをピペットを使用して添加した。発泡体ディスク中のカルシウム含量は、1.0%及び0.5%溶液に対して、添加したアルギネートのゲル化残基をそれぞれ124%及び248%飽和させるのに十分である。1分後、アルギネート溶液は吸収されそして発泡体は完全に水和されたものに近くなっている。上方のプレートをそれから500μmの隙間に下げそして弾性率、G’の測定を開始した。振動数、歪及び温度は、それぞれ1Hz、0.001及び20℃に設定された。結果を表5に示す。
【0089】
【表5】

【0090】
アルギネート溶液添加後の数分の過程のG’の増加は、ゲル化イオンを与えること及びゲル化反応が開始されたことを確証する。三つの溶液間のG’値の差異は、ゲルが作り出されること及び最も強いゲルは最も濃縮されたアルギネート溶液から作り出されることを確証する。
【実施例9】
【0091】
この実施例は、フォスフェートイオンを取り込んだヒアルロン酸(HA)の調製を記載する。外部から添加されたキトサン溶液のゲル化を引き起こすためのこれらのイオンを与える発泡体能力も又示される。
【0092】
HA発泡体は、カルシウム源が2.27gのNaHPOで置き換えられそして使用した水の量が49.7gであったこと以外は、実施例8に記載されたようにしてつくった。高速での混合時間は3分で0.17g/mlの湿潤密度を与えた。2mm及び4mm型に投入された発泡体を、乾燥オーブン中に80℃で、それぞれ45分及び75分間保持した。
【0093】
実施例Aに記載されたようなレオロジー測定用の同じパラメーターが使用された。水及び1%キトサン溶液が過剰量で添加された。弾性率、G’、及び位相角を記載する値は、表6に示される値を平準化した。
【0094】
【表6】

【0095】
結果は、キトサン溶液を添加された発泡体は、MQ−水を添加された発泡体よりゲル状挙動を示しより堅いことを示している。
【0096】
【特許文献2】WO2005023323(Gaserod)
【非特許文献1】Berger et al.(2004)“Structure and interaction in covalently and ionically crosslinked chitosan hydrogels for biomedical applications”,European Journal of Phaemaceutics,57,19−34
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の発泡体及び複合体は、生物医学、薬学、パーソナルケア、及び工業用途において特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ポリサッカライド、発泡剤、所望により可塑剤、所望により架橋剤、所望によりゲル形成イオン、所望により一つ以上の添加剤、及び水を含む水性分散物から湿潤発泡体を形成し、b.水性分散物からの発泡体を、所望により機械攪拌によって、混合し、c.湿潤発泡体を成形又は形状化しそして所望により架橋発泡体を形成し、そしてd.所望により空気乾燥によって、発泡体を乾燥して乾燥発泡体を形成しそして所望によりさらに乾燥した発泡体を成形、形状化又は圧縮することによって、連続細孔ネットワーク及び細孔をもつ乾燥した吸収性発泡体を形成する方法。
【請求項2】
e.ポリサッカライド、発泡剤、ゲル形成イオン、所望により可塑剤、所望によりpH変性剤、所望により一つ以上の添加剤、及び水を含む水性分散物を形成し、f.水性分散物から発泡体を調製し、そしてg.発泡体を乾燥して細孔とゲル形成イオンを含む乾燥連続細孔発泡体を形成することによって、連続細孔ネットワーク及びゲル形成イオンをもつ乾燥した吸収性発泡体を形成する方法であって、添加されるゲル形成イオンの量がポリサッカライドのゲル化サイトの25%以下を飽和させることを特徴とする方法。
【請求項3】
a)ポリサッカライド、発泡剤、ポリサッカライドをゲル化しない少なくとも一つのゲル形成イオン、所望により可塑剤、所望によりpH変性剤、所望により一つ以上の添加剤、及び水を含む水性分散物を形成し、b)水性分散物から発泡体を形成し、そしてc)発泡体を乾燥して連続細孔及び引き続き添加されるポリサッカライド溶液のゲル化に好適なゲル形成イオンを含む乾燥発泡体を形成することによって、連続細孔及び引き続き添加されるポリサッカライド溶液のゲル化に好適なゲル形成イオンを含む乾燥した吸収性発泡体を形成する方法。
【請求項4】
a)酵素的に生分解性のバイオポリマー又はポリサッカライド及び発泡剤及び所望により一つ以上のゲル形成イオン、可塑剤、架橋剤及びpH変性剤を含む水性分散物を調製し、b)水性分散物から、発泡体、好ましくは湿潤発泡体を形成、調製又は所望により機械攪拌によって混合し、c)所望により発泡体を成形又は形状化しそして所望により架橋した発泡体を形成し、そしてd)発泡体を乾燥して連続細孔を含む乾燥発泡体を形成することによって、連続細孔ネットワーク及び細孔をもつ乾燥した吸収性発泡体を形成する方法。
【請求項5】
ポリサッカライド又はバイオポリマーがキトサン、変性キトサン、超高純度キトサン、超高純度変性キトサン、ヒアルロン酸塩、超高純度ヒアルロン酸塩、変性ヒアルロン酸塩、変性超高純度ヒアルロン酸塩又はそれらの混合物から選択される請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ポリサッカライド又はバイオポリマーがキトサン、ヒアルロン酸塩又はそれらの混合物である請求項5記載の方法。
【請求項7】
ポリサッカライド又はバイオポリマーが、40%から100%の脱アセチル化度をもつキトサンからなる請求項5記載の方法。
【請求項8】
ポリサッカライド又はバイオポリマーが少なくとも10kDaの分子量をもつキトサンからなる請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
キトサンが10kDaから1000kDaの範囲の分子量をもつ請求項8記載の方法。
【請求項10】
発泡剤がポリマー発泡剤からなる請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
発泡剤が人体又は動物体内で使用するのに生理学的に許容できる発泡剤からなる請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
発泡剤が、実質上非−ポリマー界面活性剤を含まない、人体又は動物体内で使用するのに生理学的に許容できるポリマー発泡剤からなる請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
発泡剤がヒドロキシプロピルメチルセルロース及びアルブミンから選択される請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
発泡体を架橋させることからなる請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
架橋がイオン性又は共有結合性である請求項14記載の方法。
【請求項16】
ゲル形成イオンがその製造過程で又はそれに引き続き添加され、該ゲル形成イオンが、引き続き添加されたポリサッカライド溶液でゲルを形成できる請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ゲル形成イオンを含む発泡体にポリサッカライド溶液を添加して発泡体の細孔内にゲルを形成する工程をさらに含む請求項16記載の方法。
【請求項18】
i)キトサン、変性キトサン、超高純度キトサン、超高純度変性キトサン、ヒアルロン酸塩、超高純度ヒアルロン酸塩、変性ヒアルロン酸塩、変性超高純度ヒアルロン酸塩又はそれらの混合物から選択される、酵素的に生分解性のバイオポリマー、及びii)生理学的に許容できるポリマー発泡剤からなる連続細孔ネットワークをもつ吸収性乾燥発泡体。
【請求項19】
引き続き添加されたポリサッカライド、好ましくはキトサン又はアルギネート溶液をゲル化させるのに十分なゲル形成剤を含む請求項18記載の発泡体。
【請求項20】
ポリマー発泡剤がヒドロキシプロピルメチルセルロース及びアルブミン、及び所望により一つ以上のポリマー発泡剤から選択される請求項18又は19記載の発泡体。
【請求項21】
酵素的に生分解性である請求項18から20のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項22】
アルコール処理、酸化エチレン、ガンマー線照射、電子線、NOx又はオートクレーブ処理によって殺菌されている請求項18から21のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項23】
乾燥した吸収性発泡体構造が凍結乾燥によって製造される請求項18から22のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項24】
吸収体構造がバイオポリマー繊維を紡糸しそしてそれから編み込み又は織り込み又は層状化してフェルトを形成することによって製造される請求項18から23のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項25】
吸収体構造がバイオポリマーの織布又は不織布である請求項18から24のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項26】
複数の層からなり、少なくとも一層は連続細孔ネットワークからなりそして添加したポリサッカライド溶液のゲル化を引き起こすのに好適なゲル形成イオンを含む請求項18から25のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項27】
一層が、キトサン、変性キトサン、超高純度キトサン、超高純度変性キトサン、ヒアルロン酸塩、超高純度ヒアルロン酸塩、変性ヒアルロン酸塩、変性超高純度ヒアルロン酸塩又はそれらの混合物を含み、そしてアルギネート発泡体からなる第二層に付着している請求項18から26のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項28】
請求項18から27のいずれか一項に記載の吸収性発泡体からなり、発泡体がカルシウム、バリウム及びストロンチウムイオン又はそれらの混合物及びポリサッカライドゲルから選択されたゲル形成イオンからなる複合体。
【請求項29】
ポリサッカライドゲルがアルギネート、ペクチン、カラギーナン、変性アルギネート、ペプチド結合したアルギネート、又は混合物からなる請求項28記載の複合体。
【請求項30】
インヴィトロの組織培養用途又はインヴィヴォの組織工学用途用の細胞固定及び/又は細胞増殖のためのマトリックスとしての請求項18から27のいずれか一項に記載の発泡体又は請求項28又は29のいずれか一項に記載の複合体の使用。
【請求項31】
発泡体又は複合体が、人体又は動物の体内に、活性剤のインヴィヴォ又は局所的な徐放性を与えるための薬剤をさらに含む請求項18から27のいずれか一項に記載の発泡体又は請求項28又は29のいずれか一項に記載の複合体の使用。
【請求項32】
インヴィヴォ又は局所的な創傷処置を与えるための創傷処置における請求項18から27のいずれか一項に記載の発泡体又は請求項28又は29のいずれか一項に記載の複合体の使用。
【請求項33】
抗菌障壁としての、請求項18から27のいずれか一項に記載の発泡体又は請求項28又は29のいずれか一項に記載の複合体の使用。
【請求項34】
止血剤としての、請求項18から27のいずれか一項に記載の発泡体又は請求項28又は29のいずれか一項に記載の複合体の使用。
【請求項35】
インヴィトロの組織培養用途、インヴィヴォの組織工学用途用の細胞固定及び/又は細胞増殖のためのマトリックスとしての請求項18から27のいずれか一項に記載の発泡体又は請求項28又は29のいずれか一項に記載の複合体の使用。
【請求項36】
請求項18から27のいずれか一項に記載の発泡体又は請求項28又は29のいずれか一項に記載の複合体からなり、発泡体又は複合体がストロンチウムイオン及び細胞を含む、細胞増殖の阻害方法。
【請求項37】
請求項18から27のいずれか一項に記載の発泡体を組織に固定することによって、該組織に請求項28又は29のいずれか一項に記載の複合体を取り付ける方法であって、該発泡体が連続細孔及びゲル形成イオンをもち、そして可溶性ポリサッカライドを含む液体を添加しそしてポリサッカライドをゲル形成イオンと反応させることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項18から27のいずれか一項に記載の発泡体又は請求項28又は29のいずれか一項に記載の複合体を組織に適用して、組織と隣接した組織間に障壁を与えることからなる、組織と隣接する組織の癒着を防止する方法。

【公表番号】特表2009−528437(P2009−528437A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557415(P2008−557415)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/005435
【国際公開番号】WO2007/103208
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504369661)エフエムシー バイオポリマー エイエス (14)
【出願人】(391022452)エフ エム シー コーポレーション (74)
【氏名又は名称原語表記】FMC CORPORATION
【Fターム(参考)】