説明

生化学分析装置

【課題】 白色LEDを用いながらも、正確に検体の定量分析を行う。
【解決手段】 生化学分析装置2は、搬送トレイ6、測光部20を備える。搬送トレイ6は、スライド3を保持して搬送する。測光部20は、LEDユニット21、フォトダイオード29を備える。LEDユニット21は、カン30の底板30aに、白色LEDチップ31、青色LEDチップ32、緑色LEDチップ33が120°ピッチで同心円状に組み付けられている。青色LEDチップ32は、約400nmを波長ピークとする波長領域の青色光を照射する。緑色LEDチップ33は、約505nmを波長ピークとする波長領域の緑色光を照射する。フィルタホイール24に、第1〜第7バンドパスフィルタ41〜47を組み付ける。第1〜第7バンドパスフィルタ41〜47は、それぞれ異なる波長領域の光を透過する。モータ25の駆動により、フィルタホイール24を回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物質を含む分析素子の定量分析を行う生化学分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液等の試料(検体)の定量分析(検査)を行い、患者の健康状態を診断することは広く一般に知られている。その検査方法としては、試薬層上に血液を点着した分析素子としての化学分析スライド(以下、スライドと称する)を所定時間恒温保持した後に、光源からスライドに測定光を照射し、スライドからの反射光量を測定して、血液の検査を行っている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、近年、医療分野において、開業医、専門医の診察室、病棟及び外来患者向け診療所などの「患者にちかいところ」で行われるポイントオブケア検査(Point Of Care Testing:POCT)が注目されてきている。この検査は、中央検査室で集中且つ大量に検体を測定することで処理されている従来からの病院での通常の検査に比べて、患者が検査を受けに行ったり、検体を検査に送ったりする必要がなく、患者の近くで検査が行われることにより、検査結果を即座に医師が判断し、迅速な処置を施したり、治療の過程や予後のモニタリングを行うことができるという利点がある。また、検体の運搬や設備にかかるコストが少なくて済む他に、検体量も少なくて済み、患者負担の軽減も図ることができる等の利点がある。例えば、このPOCT対応装置として、糖尿病患者の血糖モニター検査を始めとして色々な検査機器が開発されている。
【0004】
例えば、本出願人は、富士ドライケム3500(商品名)等の卓上型の生化学分析装置を開発し提供している。この卓上型の生化学分析装置では、例えば、27種類の生化学・免疫項目や、3種類の電解質分析項目を備えており、多項目の検査が可能である反面、大型化してしまい、どこでも利用することができるというレベルには普及していない。そこで、このような医療環境の変化に応じて、従来からの高機能大量処理対応の生化学分析装置の他に、少量処理であるが医療現場において患者の近くで迅速に検査が可能なハンディタイプ(ポータブルタイプ)の生化学分析装置の開発が望まれていた。
【0005】
ハンディタイプの生化学分析装置の開発においては、例えば、スライドの装填部、インキュベータ、測光部等をそれぞれコンパクト化し、且つ軽量化する必要がある。さらに、ハンディタイプの生化学分析装置では、電源として電池等の内部電源を用いるため、上記した各部における消費電力を軽減する必要がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1の化学分析装置における測定部構造では、光源としてタングステンランプを用いており、タングステンランプは、消費電力が多い、発熱量が多い、短波長側(400nm近辺)の光量が得にくい、寿命が短い等の問題があった。そこで、光源として、ランプに比べて消費電力の少ないLEDを用いることが提案されている(例えば、特許文献2)。
【0007】
また、特許文献3の窒化物半導体LEDでは、窒化物半導体よりなる緑色LEDに対し、特定の短波長領域をカットする光学フィルタを設けることにより、半値幅を狭くして色純度を上げ、さらには、青色LEDに対し、特定の長波長領域をカットする光学フィルタを設けることにより、半値幅を狭くして色純度を上げている。
【特許文献1】特開昭64−18047号公報
【特許文献2】特開2004−151099号公報
【特許文献3】特開平8−250767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2の拡散反射率読み取りヘッドでは、光源としてLEDを用いているが、単色LEDとフィルタとの構成のため、多波長(400、505、540、577、600、625、650nm)の測定が困難であるという問題があった。また、特許文献3の窒化物半導体LEDでは、発光ピークを移動させるとともに、色純度を上げることはできるが、光量を得ることができない波長があるため、この窒化物半導体LEDを光源として生化学分析装置に用いた場合にも、正確に検体の検査を行うことができないという問題があった。
【0009】
さらに、大型の生化学分析装置と同等の測定数27項目のスペックをもつためには、本来上記した7波長の光を照射する7種類のLEDが必要であるが、7種類それぞれのLEDを製造することは難しく、特注品となりコストも非常に高くなる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ランプに比べて消費電力の少ない白色LEDを用いながらも、正確に検体の検査を行うことができる生化学分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の生化学分析装置は、被測定物質を含む分析素子に測定光を照射する光源と、前記分析素子からの反射光または透過光の光量を測定する測定手段とを備え、前記測定手段の測定結果に基づいて前記被測定物質の定量分析を行う生化学分析装置において、前記光源は、白色光を照射する白色LEDと、前記白色LEDで不足する領域光を照射する補足LEDとを備えたことを特徴とする。
【0012】
なお、前記補足LEDは、460nm以下の波長の光を照射する第1補足LEDと、505nm周辺の波長の光を照射する第2補足LEDとから構成されることが好ましく、これら補足LEDは、青色光を照射する青色LEDと緑色光を照射する緑色LEDとから構成されることがさらに好ましい。
【0013】
また、前記光源と前記分析素子との間、または、前記分析素子と前記測定手段との間に設けられ、前記光源から照射された光、前記反射光及び透過光のいずれか1つのうちの特定の波長領域の光を透過するフィルタを備えることが好ましい。
【0014】
さらに、前記フィルタを、それぞれが異なる波長領域の光を透過するように複数設け、前記光源から照射された光、前記反射光及び透過光のいずれか1つの光軸に、前記複数のフィルタを選択的にセットするフィルタ切替手段を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の生化学分析装置によれば、被測定物質を含む分析素子に測定光を照射する光源と、前記分析素子からの反射光または透過光の光量を測定する測定手段とを備え、測定手段の測定結果に基づいて被測定物質の定量分析を行い、光源は、白色光を照射する白色LEDと、白色LEDで不足する領域光を照射する補足LEDとを備えたから、ランプに比べて消費電力の少ない白色LEDを用いながらも、正確に被測定物質の定量分析を行うことができる。特に、一般的で安価な白色LEDと入手し易いフィルタとで7波長のうちの例えば5波長(540、577、600、625、650nm)をカバーし、任意の波長を得て、その他(400、505nm)の光については他の安価なLEDで補うことにより、特注品の高価なLEDを使用することなく、広く一般的に用いられるLEDの使用が可能になる。したがって、多項目のスペックを有する光源を安価に提供することができる。
【0016】
また、補足LEDは、460nm以下の波長の光を照射する第1補足LEDと、505nm周辺の波長の光を照射する第2補足LEDとから構成されるから、より一層確実に、補足LEDにより、白色LEDで不足する領域光を照射することができる。
【0017】
さらに、光源と分析素子との間、または、分析素子と測定手段との間に設けられ、光源から照射された光、反射光及び透過光のいずれか1つのうちの特定の波長領域の光を透過するフィルタを備えるから、特定の波長領域の光による被測定物質の定量分析を行うことができ、より一層正確に被測定物質の定量分析を行うことができる。
【0018】
また、フィルタを、それぞれが異なる波長領域の光を透過するように複数設け、光源から照射された光、反射光及び透過光のいずれか1つの光軸に、複数のフィルタを選択的にセットするフィルタ切替手段を備えるから、複数の異なる波長領域の測定光により、被測定物質の定量分析を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明を実施したポータブルタイプの生化学分析装置(以下、本分析装置と称する)2を示す斜視図である。本分析装置2は、分析素子としてのスライド3に点着された検体(被測定物質)の定量分析(検査)を行うものであり、上カバー4、下カバー5、搬送トレイ(以下、トレイと称する)6を備える。トレイ6は、スライド3を保持して搬送するものである。トレイ6は、前後方向に移動可能に設けられている。図1(A)は、トレイ6がスライド3の測光を行う測光位置に位置する状態を示し、図1(B)は、トレイ6が手前方向に移動されてスライド3をセットするセット位置に位置する状態を示す。トレイ6は、図1(A)に示す測光位置と、セット位置よりも手前側に移動されてスライド3を排出口9に排出する排出位置(図4(B)参照)との間で移動可能に設けられている。なお、以降では、手前方向を前方向と呼び、奥方向を後方向と呼ぶことにする。
【0020】
上カバー4の内部には、インキュベータ8が設けられている。インキュベータ8は、ヒータ等を備え、スライド3を予め設定された時間恒温保持する。下カバー5の前面には、分析を行った後のスライド3を排出する排出口9が形成されている。下カバー5の左側面には、本分析装置2と操作装置10とを電気的に接続するための接続孔5aが形成されている。操作装置10には、市販の携帯情報端末(PDA)が用いられ、メモリカード等を介して種々の分析項目用のアプリケーションがインストールされている。このアプリケーションを起動することで、各種の分析項目に対応した処理手順に基づき分析処理が行われる。操作装置10には、表示部11と操作部12とが設けられており、接続ケーブル13のコネクタ14を接続孔5aに挿入することにより、本分析装置2に接続される。表示部11には、操作者に操作を促す旨の表示や、スライド3に点着した検体の分析結果などが表示される。操作者は、表示部11の表示に基づいて操作部12を操作することにより、各種処理を行うことができる。下カバー5の内部には、内部電源が組み込まれている。内部電源には、4本の単三電池が用いられる。この内部電源により、インキュベータ8、後述する位置検出センサ18、LEDユニット21、モータ25、フォトダイオード29、制御基板50等が駆動される。
【0021】
図2に示すように、スライド3は、多層フィルム15と、この多層フィルム15を保持する保持枠16とから構成される。保持枠16には、点着領域を制限する円孔16aが形成されている。多層フィルム15は、下から順に、透明支持体、反応層、反射層、展開層が積層されて構成されている。反応層は、ドライ状態の試薬によって構成されている。スライド3に検体が点着されると、検体は、展開層で均一に展開されて反射層を通過した後、反応層の試薬と反応して発色する。発色濃度は、検体中の検査対象物質の量に比例したものとなる。検体は、全血、血清、血漿、尿等である。
【0022】
図3及び図4に示すように、下カバー5の内部には、トレイ6を移動可能に保持するための搬送レール17が設けられている。搬送レール17の略中央部には、スライド3を支持する支持レール部17aが2本形成されている。トレイ6は、操作者がトレイ6を移動させる際の把手となる把手部6aと、矩形状の保持板6bとを備える。把手部6aは、操作者が持ちやすいような形状で形成されている。
【0023】
保持板6bには、スライド3が嵌め込まれるスライド開口6cが形成されている。このスライド開口6cは、スライド3のサイズよりも若干大きいサイズとされている。トレイ6を搬送レール17に取り付け、トレイ6を図4(A)に示すようなスライド3をセットするセット位置まで移動すると、スライド開口6cから、2本の支持レール部17aが露出する状態となる。スライド3をスライド開口6cに嵌め込むと、スライド3の側部が保持板6bに保持され、スライド3の下面3aが支持レール部17aの上端に支持される状態となる。これにより、スライド3と搬送レール17との間には空気層が形成される。また、支持レール部17aの上端の幅は狭くされているため、スライド3と支持レール部17aとの接触面積は非常に小さい。図4(B)に示すように、支持レール部17aは、トレイ6を排出位置まで移動させたときには、スライド開口6cから露出しない長さで形成されている。これにより、トレイ6を排出位置まで移動させると、スライド3は、支持レール部17aにより支持されていない状態となり、排出口9に排出される。
【0024】
搬送レール17の左右の端部には、トレイ6の位置を検出する位置検出センサ18が設けられている。位置検出センサ18は、制御基板50のCPU51に接続されており、トレイ6の位置検出信号をCPU51に送る(図11参照)。
【0025】
保持板6bの中央部において、スライド開口6cより後方には、円盤状の黒板19Bが設けられている。また、保持板6bの中央部において、黒板19Bより後方には、円盤状の白板19Wが設けられている。白板19W及び黒板19Bは、それぞれ保持板6bの下面から嵌め込まれて保持板6bに固着されている。白板19W及び黒板19Bは、濃度基準板として用いられるものである。トレイ6が移動する際に、白板19W及び黒板19Bが、下カバー5の内部の略中心部に設けられた測光部20(図5参照)の上方に位置するときに、測光部20によって測光が行われる。なお、白板19Wが測光部20の上方に位置する白板測光位置と、黒板19Bが測光部20の上方に位置する黒板測光位置とをトレイ6が通過する際に、図示しないクリック機構によってそれぞれ適度なクリック感が付与される。これにより、白板19W及び黒板19Bからの反射光の測光を容易に行うことができる。
【0026】
図1及び図3では図示は省略したが、下カバー5の内部の略中心部には、測光部20が設けられている。図5に示すように、測光部20は、スライド3に測定光を照射して、スライド3からの反射光の光量を測定するものであり、LEDユニット(光源)21、第1集光レンズ22、第1集光レンズ22を保持する第1鏡筒23、フィルタホイール24、モータ25、第2集光レンズ26、第3集光レンズ27、これらレンズ26,27を保持する第2鏡筒28、2個のフォトダイオード(測定手段)29を備える。なお、フォトダイオード29の個数は2個に限定されることなく、適宜変更可能である。また、スライド3からの反射光の光量を測定する測定手段としては、フォトダイオード29に限定されることなく、光量を測定することができるものであれば、適宜変更可能である。
【0027】
図5及び図6に示すように、LEDユニット21は、有底円筒状に形成された金属製のカン30の底板30aに、白色LEDチップ31、青色LEDチップ(第1補足LED)32、緑色LEDチップ(第2補足LED)33が組み付けられたものである。各LEDチップ31〜33は、120°ピッチで同心円状に組み付けられている。各LEDチップ31〜33には、それぞれ2本の導線34が取り付けられており、一方は、アース用として底板30aに接続され、他方は、リード線35〜37に接続されている。リード線35〜37及びアース線38は、一方の端部が底板30aに取り付けられ、他方の端部が後述する制御基板50に接続されている。カン30の内部には、各LEDチップ31〜33からの光の通路上に保護ガラス39が取り付けられている。なお、図6(A)は正面断面図であり、図6(B)は側面断面図である。
【0028】
LEDユニット21は、図7に示すような波長領域の測定光を照射する。白色LEDチップ31は、図8(A)に示すような波長領域の白色光を照射する。この白色光は、励起光約460nmと蛍光約575nmとを波長ピークとする波長領域の光である。したがって、本分析装置2で27種類の生化学・免疫項目を測定するためには、400nm〜460nmの波長や505nm周辺の波長の光量が少ない光となっている。このため、白色光だけの場合には、スライド3に点着された検体の定量分析を正確に行うことができない。そこで、一般的な青色LEDチップ32により、図8(B)に点線で示すような約400nmを波長ピークとする波長領域の青色光を照射するとともに、一般的な緑色LEDチップ33により、図8(B)に一点鎖線で示すような約505nmを波長ピークとする波長領域の緑色光を照射する。これにより、LEDユニット21から、図7に示すような波長領域の測定光が照射される。
【0029】
図5及び図9に示すように、フィルタホイール24は、円板状に形成されており、同一の角度ピッチで、同心円状に第1〜第7バンドパスフィルタ41〜47が組み付けられている。第1〜第7バンドパスフィルタ41〜47は、特定の波長領域の光をそれぞれ透過するものである。第1バンドパスフィルタ41は400nm周辺の光を、第2バンドパスフィルタ42は505nm周辺の光を、第3バンドパスフィルタ43は540nm周辺の光を、第4バンドパスフィルタ44は577nm周辺の光を、第5バンドパスフィルタ45は600nm周辺の光を、第6バンドパスフィルタ46は625nm周辺の光を、第7バンドパスフィルタ47は650nm周辺の光を透過する。なお、第1〜第7バンドパスフィルタ41〜47で透過する特定の波長領域は、上記した数値に限定されることなく、分析項目等に応じて適宜変更されるものである。
【0030】
図10(A)に示す曲線Aは、第1バンドパスフィルタ41により透過する光の波長領域を示し、曲線Bは、第3バンドパスフィルタ43により透過する光の波長領域を示す。図10(B)に示す曲線Cは、第1バンドパスフィルタ41を透過した測定光の波長領域を示し、曲線Dは、第3バンドパスフィルタ43を透過した測定光の波長領域を示す。
【0031】
図5に示すように、フィルタホイール24の中心には、モータ25のシャフト25aが取り付けられており、モータ25の駆動により、フィルタホイール24は回動する。このモータ25の駆動により、第1〜第7バンドパスフィルタ41〜47のうちのいずれ1つを、LEDユニット21の光軸に位置させる。モータ25は、制御基板50のCPU51に接続されており(図11参照)、CPU51により駆動が制御される。本実施形態では、フィルタ切替手段は、フィルタホイール24とモータ25とから構成される。
【0032】
第2集光レンズ26及び第3集光レンズ27は、第2鏡筒28に保持されている。LEDユニット21から照射された測定光は、第1集光レンズ22により集光され、第1〜第7バンドパスフィルタ41〜47のうちのLEDユニット21の光軸に位置するいずれか1つを透過し、第2集光レンズ26、第3集光レンズ27を介してスライド3に入射する。
【0033】
スライド3に入射した測定光は、スライド3で反射され、その散乱反射光がフォトダイオード29に入射する。フォトダイオード29は、スライド3からの散乱反射光を光電変換して測光信号を出力する。フォトダイオード29からの測光信号は、下カバー5の内部に設けられた制御基板50に送られる。この測光信号は、制御基板50のCPU51を介して操作装置10の分析部56に送られる(図11参照)。同様にして、白板19W及び黒板19Bが上述した入射位置に位置するときに、LEDユニット21から照射された測定光による白板19W及び黒板19Bからの散乱反射光をフォトダイオード29で測光する。白板19W及び黒板19Bの測光信号は、制御基板50のCPU51を介して操作装置10の分析部56に送られ、対数変換処理等によって基準光学濃度データとされる。分析部56は、この基準光学濃度データをメモリ57に記憶する。
【0034】
図11に示すように、制御基板50には、CPU51、ドライバ52,53が設けられている。CPU51は、操作装置10からの各種指令や位置検出センサ18からの位置信号に基づき、各ドライバ52,53を駆動して、モータ25、フォトダイオード29、各LED31〜33、インキュベータ8のヒータを制御する。そして、分析項目に対応した第1〜第7バンドパスフィルタ41〜47のうちの1つをLEDユニット21の光軸にセットした後に、トレイ6の移動位置に基づき、白板19W、黒板19B、スライド3を測光し、これをCPU51を介して操作装置10の分析部56に送る。なお、スライド3を測光する前に、インキュベータ8によりスライド3が所定の温度に一定時間保持される。
【0035】
操作装置10の内部には、分析部56、メモリ57が設けられている。分析部56では、白板及び黒板の基準光学濃度に基づいてスライド3の光学濃度の較正を行った後に、このスライド3の光学濃度に基づき予め記憶されている検量線に基づいて、対応する分析項目の成分データを求め、これをメモリ57に検査識別データとともに記憶し、さらに分析結果を表示部11に表示する。メモリ57に記憶された成分データは、検査識別データとともに外部のパソコン等に取り込むことができ、患者の一連の検査結果を時間軸に沿って表示したり、グラフ化したりすることができる。なお、必要に応じてこのような処理アプリケーションを操作装置10に付加することで、操作装置10自体で各種データ管理が可能になる。検量線は、予めスライド3の光学濃度と分析結果の成分データとの関係を関数表現したものであり、スライド3の光学濃度から分析項目の成分を求めることができる。なお、必要に応じてアプリケーションや検量線を書き換えることで、他の各種分析や検査を行うことができる。
【0036】
上記構成による作用について、図12のフローチャートを用いて説明する。本発明の本分析装置2は、手軽に持ち運ぶことができるとともに内部電源のみで駆動するため、自由な場所で手軽に使用することができる。
【0037】
本分析装置2の電源スイッチをONにして操作装置10を本分析装置2に接続すると、操作装置10の表示部11に分析項目の選択メニューが表示され、分析項目を選択することで、この分析項目の処理フローが開始される。先ず、選択された分析項目に対応する第1〜第7バンドパスフィルタ41〜47のうちの1つが選択され、これがLEDユニット21の光軸にセットされる。次に、トレイ6を引き出す旨の指示が表示される。トレイ6をセット位置まで引き出すと、操作装置10の表示部11に、スライド3をセットして検体を点着する旨の指示が表示される。また、インキュベータ8のヒータの予熱が開始される。
【0038】
操作者は、スライド3をトレイ6にセットして検体を点着した後に、トレイ6を押し込むと、その移動途中で、白板19W及び黒板19Bが順に測光部20によって測光される。白板19W及び黒板19Bには、LEDユニット21から照射され、上述したように選択された第1〜第7バンドパスフィルタ41〜47のうちの1つを透過した測定光が照射される。このとき、LEDユニット21から照射される測定光は、白色LEDチップ31により照射された白色光に、青色LEDチップ32、緑色LEDチップ33から照射された青色光、緑色光が補充された光であるため、第1〜第7バンドパスフィルタ41〜47のいずれを用いても、十分な光量を得ることができる。これら白板19W及び黒板19Bの測光信号は、制御基板50のCPU51を介して操作装置10の分析部56に送られ、対数変換処理によって基準光学濃度データとされる。
【0039】
トレイ6が押し込まれて測光位置に移動すると、スライド3が測光部20の上方に位置する。ここで、インキュベータ8により、スライド3を所定時間恒温保持すると、スライド3の反応層が、検査対象物質の量に対応した濃度で発色する。
【0040】
恒温状態を所定時間保った後、スライド3が測光部20によって測光される。この測光信号は、CPU51を介して分析部56に送られ、測定光学濃度データとされる。分析部56では、この測定光学濃度データを白板19W及び黒板19Bによる基準光学濃度データに基づき較正し、この較正データに基づき検量線から分析項目の例えば成分データを得る。この成分データは、メモリ57に検査識別データとともに格納される他に、操作装置10の表示部11に表示される。
【0041】
トレイ6を引き出して排出位置に移動させると、測定後のスライド3を排出口9から排出することができる。測定を継続する場合には、トレイ6をセット位置に移動させ、上述した動作を繰り返す。測定を終了する場合には、トレイ6を押し込んで、電源スイッチをOFFにする。
【0042】
このように、LEDユニット21から照射される測定光を、白色LEDチップ31により照射された白色光に、青色LEDチップ32から照射された青色光及び緑色LEDチップ33から照射された緑色光が補充された光にすることにより、各分析項目で必要な波長領域の光を十分な光度で得ることができ、ランプ(例えば、タングステンランプ)に比べて消費電力の少ないLEDユニット21を用いながらも、白板19W及び黒板19Bからの反射光の測光による基準光学濃度データと、スライド3からの反射光の測光による測定光学濃度データとを、正確なものにすることができる。これにより、生化学分析を精度よく行うことができる。さらに、ランプに比べて消費電力の少ないLEDユニット21を用いることにより、電源として電池を用いることができ、しかも、ポータブルタイプの本分析装置2の使用可能時間を長くすることができる。また、特注品のLEDを用いることなく、市販されている一般的な各LEDチップ31〜33を用いることができ、LEDによる光源を安価に製造することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、ポータブルタイプの本分析装置2に適用したが、これに限定されることなく、卓上タイプや据え置きタイプの生化学分析装置に適用してもよい。この場合にも、消費電力を抑えることができる。
【0044】
また、本実施形態では、補足LEDとして、青色LEDチップ32及び緑色LEDチップ33を設け、青色LEDチップ32により、約400nmを波長ピークとする波長領域の青色光を照射するとともに、緑色LEDチップ33により、約505nmを波長ピークとする波長領域の緑色光を照射したが、これに限定されることなく、補足LEDとしては、白色LEDチップ31で不足する領域光を照射するものであればよい。
【0045】
さらに、本実施形態では、各LEDチップ31〜33を、120°ピッチで同心円状に組み付けたが、これに限定されることなく、図13に示すように、最も使用される波長領域の光を照射する白色LEDチップ31を、底板30aの中心に配置し、その左側に青色LEDチップ32を、右側に緑色LEDチップ33を配置するようにしてもよい。各LEDチップ32,33は、白色LEDチップ31から同距離の位置に配置することが好ましい。なお、各LEDチップ32,33を配置する位置は、白色LEDチップ32の左右に限定されることなく、白色LEDチップ32を挟み込む位置であればよく、上下や斜めに配置するようにしてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、スライド3で反射した反射光をフォトダイオード29で測定したが、スライド3を透過した透過光をフォトダイオード29で測定する透過タイプの生化学分析装置に本発明を実施してもよい。
【0047】
さらに、本実施形態では、フィルタホイール24に第1〜第7バンドパスフィルタ41〜47を組み付けたが、バンドパスフィルタの枚数は限定されることなく、分析項目の増減に応じて適宜変更されるものである。
【0048】
また、本実施形態では、フィルタホイール24を、LEDユニット21とスライド3との間に設け、第1〜第7バンドパスフィルタ41〜47により特定の波長のみをスライド3に照射するようにしたが、フィルタホイール24を、スライド3とフォトダイオード29との間に設け、第1〜第7バンドパスフィルタ41〜47により、スライド3で反射した反射光のうちの特定の波長のみフォトダイオード29に入射させるようにしてもよい。
【0049】
さらに、本実施形態では、PDAである操作装置10を用いて、表示部11、操作部12、分析部56を構成したが、これに代えて、表示部、操作部、分析部を本分析装置2に一体的に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明を実施したポータブルタイプの生化学分析装置と操作装置とを示す斜視図である。
【図2】スライドを示す斜視図である。
【図3】下カバーと搬送トレイとを示す斜視図である。
【図4】下カバーと搬送トレイとを示す平面図である。
【図5】測光部を示す側面図である。
【図6】LEDユニットを示す正面図及び側面図である。
【図7】LEDユニットから照射される測定光の波長領域を示すグラフである。
【図8】白色LEDチップから照射される白色光と青色LEDチップから照射される青色光と緑色LEDチップから照射される緑色光との波長領域を示すグラフである。
【図9】フィルタホイールと第1〜第7バンドパスフィルタとを示す正面図である。
【図10】第1バンドパスフィルタと第3バンドパスフィルタにより透過する光の波長領域と、第1バンドパスフィルタと第3バンドパスフィルタとを透過した測定光の波長領域とを示すグラフである。
【図11】生化学分析装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図12】各処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】白色LEDチップの左右に青色LEDチップ及び緑色LEDチップを配置した実施形態のLEDユニットを示す正面図である。
【符号の説明】
【0051】
2 生化学分析装置
3 スライド(分析素子)
6 搬送トレイ
6a 把手部
6b 保持板
6c スライド開口
10 操作装置
11 表示部
12 操作部
17 搬送レール
17a 支持レール部
20 測光部
21 LEDユニット(光源)
24 フィルタホイール
25 モータ
29 フォトダイオード(測定手段)
30 カン
30a 底板
31 白色LEDチップ
32 青色LEDチップ(第1補足LED)
33 緑色LEDチップ(第2補足LED)
41〜47 第1〜第7バンドパスフィルタ
50 制御基板
51 CPU
56 分析部
57 メモリ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物質を含む分析素子に測定光を照射する光源と、前記分析素子からの反射光または透過光の光量を測定する測定手段とを備え、前記測定手段の測定結果に基づいて前記被測定物質の定量分析を行う生化学分析装置において、
前記光源は、白色光を照射する白色LEDと、前記白色LEDで不足する領域光を照射する補足LEDとを備えたことを特徴とする生化学分析装置。
【請求項2】
前記補足LEDは、460nm以下の波長の光を照射する第1補足LEDと、505nm周辺の波長の光を照射する第2補足LEDとから構成されることを特徴とする請求項1記載の生化学分析装置。
【請求項3】
前記光源と前記分析素子との間、または、前記分析素子と前記測定手段との間に設けられ、前記光源から照射された光、前記反射光及び透過光のいずれか1つのうちの特定の波長領域の光を透過するフィルタを備えたことを特徴とする請求項1または2記載の生化学分析装置。
【請求項4】
前記フィルタを、それぞれが異なる波長領域の光を透過するように複数設け、
前記光源から照射された光、前記反射光及び透過光のいずれか1つの光軸に、前記複数のフィルタを選択的にセットするフィルタ切替手段を備えたことを特徴とする請求項3記載の生化学分析装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−98229(P2006−98229A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285158(P2004−285158)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】