説明

生物剤検出装置のためのダブル・アウトレット・パイロライザー

【課題】 効率的にアウトレット・ラインの目詰まりを低減することができる、再現性の高い生物剤検出装置を提供する。
【解決手段】 空気中の生物剤の存在を検出する化学生物学的検出装置。該装置は空気がそこを通ってパイロライザー中に取り込まれるインレットと、空気から抽出される粒子試料を収集する熱分解管を有する。該パイロライザーは、該空気をパイロライザー内に吸引する排気ラインと、試料を同定するための質量分析計に、熱分解管中に収集される空気から溶離される気体を送る試料ラインをさらに備える。熱分解管に試料が収集された後、試料は分析される。少滴のメチル化試薬が試料に添加される。試料がいずれかの生物剤を含む場合、メチル化試薬は有機物質をより揮発性に誘導する。次いで、試料は熱分解され、溶離された気体試料は、生物剤の同定のために試料ラインを介して質量分析計に取り込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年7月9日出願の米国特許仮出願第60/586,663号を優先権とする出願である。
【0002】
本発明は、概して、空気中に存在する生物剤を検出するのに使用されるダブル・アウトレット・パイロライザーに関する。
【背景技術】
【0003】
化学生物質量分析計II(CBMSII)は、空気中に存在する生物剤を二段階工程を利用して検出する。試料の収集の間、第1のポンプが1分当たり1リットルの空気をインレットを介してパイロライザー(熱分解装置(pyrolyzer))内に吸引する。パイロライザーに取り込まれた空気は、風塵、繊維、泥などの二次的な粒子を含み、さらに炭疽菌の芽胞やバクテリア、その他の生物剤(兵器)を含む粒子を含む場合がある。エアロゾル化された粒子は、パイロライザーの石英チューブ(熱分解管)の底に衝突する。熱分解管に収集されない空気と残りの粒子はアウトレットを通って排出される。
【0004】
試料の同定中、熱分解管に収集された粒子試料は、いずれの生物剤であるか確認するために分析される。メタノールに溶解された水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などの少滴のメチル化試薬を、皮下注射針(hypodermic needle)によって熱分解管中の粒子試料に添加する。一例において、皮下注射針はステンレス鋼製である。試料がいずれかの生物剤を含有する場合、メチル化試薬は有機物質をより揮発性となるよう誘導体化する。例えば、生物剤の細胞壁中の脂肪酸はメチル化脂肪酸エステル(FAME)を生じる。
【0005】
熱分解管中の試料は次いで、加熱(熱分解)によって沸騰し、生物剤中のFAME及びその他の低沸点の分子フラグメントが除去される。第2のポンプが、1分当たり1ミリリットルの気体分子をアウトレットを介して吸引し、生物剤の分析と同定のために質量分析計へ送り込む。生物剤は、固有の脂肪酸と分子フラグメントの混合物を有し、それはバイオマーカーとして知られる。試料中にいずれかの生物剤が存在する場合、質量分析計により、存在するバイオマーカーのそれぞれの質量ピークを示す質量スペクトルが生じる。バイオマーカーのパターンは、空気中の試料中にある生物剤を同定するために、既知の生物剤によって作成されたバイオマーカーの、事前にプログラムされたリストと比較される。
【0006】
パイロライザーは、試料収集中のパイロライザーからの排気と、試料分析中の質量分析計へ送られる気体分子の両方のためにシングル・アウトレット・ラインを採用する。アウトレット・ラインは、内壁を化学物質に対して不活性とするコーティング(例えば、シリコスチール(SilicoSteel(登録商標)))を有する、加熱されるステンレス鋼の管である。
【0007】
熱分解中に放出される気体量は、非常に少ない(典型的には1ミリリットル)。アウトレットラインの直径は、気体分子量を最小限に抑え、かつ気体分子を質量分析器へ迅速に送るために比較的小さくなくてはならない。しかしながら、アウトレット・ラインの直径が小さい(1ミリメートル以下)と、排気に高濃度の環境ダストや繊維含有物が含まれる場合に、アウトレット・ラインが目詰まりする傾向が増大する。
【0008】
アウトレット・ライン内側の不活性コーティングは、熱分解中に生成される気体分子の輸送には有効であるが、排気されるエアロゾル粒子の輸送に対しては効果的ではない。ガラス状の不活性コーティングは絶縁体であり、静電気の蓄積を生じさせるため、エアロゾル粒子が不活性コーティングにくっついてしまう。時間が経つにつれ、アウトレット・ラインの内側を覆う粒子は、気体分子を質量分析計へ輸送するアウトレット・ラインの効率を低減する化学的に活性な部位を形成する。アウトレット・ラインは又、活性部位を除去するために、メタノールと水で定期的に洗い流すことができ、及び/又は1ヶ月ごとに交換することもできる。しかしながら、いずれの場合も手間がかかる上に費用もかかる。
【0009】
さらに、メチル化試薬は強塩基性であるため、時間が経つにつれて不活性コーティングを破壊して、アウトレット・ラインのバイオマーカーを質量分析計へ輸送する効率を低減させる可能性がある。これを防ぐため、アウトレット・ラインは月ごとに交換されるのが普通である。
【0010】
従来における、メチル化試薬溶液を供給する鋼鉄製の皮下注射針も又、欠点を有する。1つには、針が、一定量計量されたメチル化試薬溶液の送出において信頼性がないため、その結果として実験の再現性に欠けることである。パイロライザーの壁を介して針に(試薬を)供給する圧縮管継手は針に熱を伝えるため、針がメタノールの沸点より高い温度に上昇し、それによりメチル化試薬溶液が気化して針を通過してしまう。さらに、熱サイクルの反復によって、針が「老化」することが判明した。ステンレス鋼合金中のニッケルは、熱分解中にFAMEの表面を活性化し、その分解に触媒作用を及ぼす可能性がある。
【0011】
従って、より効率的にアウトレット・ラインの目詰まりを低減することができ、さらには、上述のような従来技術におけるその他の欠点を克服することが可能なダブル・アウトレット・パイロライザー(dual outlet pyrolyzer)が必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、空気中の炭疽菌などの生物兵器を含む生物剤を検出するためのパイロライザーにおいて、効率的にアウトレット・ラインの目詰まりを低減することができるパイロライザーを備えた、再現性の高い生物剤検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
パイロライザーは、空気中の生物剤を検出するシステムの一部である。パイロライザーは、空気から粒子を抽出し、それら粒子をメチル化試薬で誘導体化する。パイロライザーは、最終的に誘導体化された生成物とその他の分子フラグメントを加熱して、生物戦剤の存在を示す化学物質(バイオマーカー)の存在を検出する質量分析計で分析することができる気体混合物を生成する。パイロライザーは、インレット、並びに2つのアウトレットライン、即ち、試料収集中にパイロライザー内へ取り込まれた空気を排気するための排気ラインと、試料同定中に質量分析計へ試料を供給するための試料ラインとを備える。
【0014】
各アウトレットは要求された機能を果たすよう最適化される。排気ラインと試料ラインとを分離することにより、バイオマーカーが質量分析器へ輸送されるのを妨害する活性部位を生成する可能性のあるような、粒子が試料ラインに入り込むことによるその側壁への焼き付きを防ぐ。
【0015】
試料収集中、試料ポンプは、インレットを介して空気をパイロライザー内へ吸引し、また、エアロゾル化された粒子が、パイロライザーの石英チューブ(熱分解管)の底に衝突する。熱分解管に収集されない空気とエアロゾル粒子は排気ラインを介して熱分解管から排出される。排気ラインは、導電性であり、静電荷の蓄積を防ぐためにアースされ、かつ粒子及び繊維による目詰まりを防ぐために大きな径を有する。
【0016】
粒子試料の収集後、少滴のメチル化試薬を熱分解管内の粒子試料に添加する。メチル化試薬は試薬ラインを介して試料に添加される。試薬ラインは、石英のキャピラリーチューブである。試料が生物剤を含む場合、メチル化試薬により、有機物質は誘導体化されてより揮発性となる。例えば、細菌剤(bacterial agent)の細胞壁中の脂肪酸はメチル化脂肪酸エステル(FAME)を生じる。試料は、次いで熱分解又は加熱されて、気体分子が生じる。
【0017】
気体分子は、次に同定のために試料ポンプによって試料ラインを通って質量分析計内へ取り込まれる。試料ラインはステンレス鋼であって不活性コーティングを有するか、あるいは石英のキャピラリーチューブライナーであり、適時に溶離された気体をパイロライザーから質量分析計へ輸送するために小さい径を有する。質量分析計は、試料中の生物剤を同定する。排気ラインの径は、空気中の繊維による目詰まりを防ぎ、かつより高い流速が得られるよう、試料ラインの径よりも大きい。
【0018】
本発明のこれら並びにその他の特徴は、以下の説明並びに図面から十分に良く理解されよう。
【0019】
本発明の種々の特徴並びに利点は、以下の現時点で最も好ましい実施態様についての詳細な説明から、当業者等には明らかであろう。その詳細な説明に関連する図面を以下で簡単に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1と図2は、試料空気中の炭疽剤、又はその他の生物兵器などの生物剤(兵器(biological agent))の存在を検出するのに使用される本発明のパイロライザー20を図示する。パイロライザー20は、ボディ部22を備え、ボディ部22はそこを通って延在する通路24を有する。空気はインレット26を通ってボディ部22に入り、アウトレット28を通ってボディ部から出る。通路24はインレット26からアウトレット28に向かって先細りしている。パイロライザー20のボディ部22に取り付けられたカラー29によって、ボディ部22は他の構造体に取り付けることが可能となる。ボディ部22は、以下で説明するパイロライザー・ボディ30内に収容される。パイロライザー20は、パイロライザー20内に取り込まれた空気試料を収集する熱分解管32をさらに備える。熱分解管32を取り囲むチューブシール34は、熱分解管32とパイロライザー・ボディ30の間を密閉する。インレット26を介してパイロライザー20内に取り込まれた空気は、排気アウトレット35を通って排出される。排気ライン36が排気アウトレット35に連結されている。排気ライン36の内側表面は、繊維が排気ライン36に架橋して塞ぐのを防ぐために、入念に磨かれており、かつ丸みが付けられている。排気ライン36に配置された排気ポンプ42は、パイロライザー20のインレット26の内部を減圧してその中へ空気を吸引する。
【0021】
熱分解(加熱器)段階中に熱分解管32で生成された気体の試料は、試料アウトレット37を通って質量分析計40へと移動し、試料中の生物剤が同定される。試料ライン38は試料アウトレット37を質量分析計に連結させている。試料ポンプ44は試料ライン38を介してパイロライザー20から試料気体を吸引する。試料ポンプ44が試料ライン38と接続する箇所では「T」字接続が形成されている。気体試料は、試料ライン38を通過する際、一部が分析のために質量分析計40に入る。パイロライザー・ボディ30は、排気ライン36と試料ライン38を支持する。
【0022】
試料収集の間、排気ポンプ42は、大気中に排気するために排気ライン36を介して1分当たり1リットルの空気を送出する。これにより、パイロライザーのチューブの内部が低圧となり、パイロライザー20のインレットから空気試料が入り、パイロライザー20の通路24内へその空気試料が取り込まれる。内部において先細りとなっている通路24により、通路24を通る空気流の速度が増大する。アウトレット28において通路24から出てくる高速の空気は熱分解管32の底部に向かう。空気に運ばれる細菌剤、バクテリアあるいは芽胞を含むダスト粒子は、熱分解管32の底部に衝突してその表面にくっつく。試料収集に間、排気ポンプ42は作動されており、かつ試料ポンプ44は作動停止されている。試料収集の継続時間は、ソフトウェアでプログラムすることができる。一例では、試料は1分から5分間収集される。どのくらいの時間試料を収集するかは当業者には既知であろう。試料収集完了後、制御装置46が排気ポンプ42を停止する。
【0023】
排気アウトレット35と排気ライン36は、ステンレス鋼などの導電性材料からなり、かつコーティングされていない。導電性は、エアロゾルダストと繊維が壁部に付着しないように静電気の蓄積を防止するのに必要であり、それにより排気アウトレット35と排気ライン36の目詰まりを防ぐことができる。排気粒子が排気ライン36にくっついても、排気ライン36が同定されるべき試料を質量分析計40に輸送するのに使用されないため、質量分析計40の分析能は悪影響を受けない。
【0024】
第2段階において、熱分解管32内の試料中の生物剤が分析され、同定される。メタノールに溶解された0.015から0.0015モルの水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などの、少滴(1から2ミクロリットル)のメチル化試薬が、試薬供給源48から試薬ライン54を介して熱分解管32内の試料に添加される。試薬ライン54も又、パイロライザー・ボディ30で支持されている。試料が生物剤を含む場合、メチル化試薬が有機物質を変性してそれらをより揮発性にする。例えば、細菌剤の細胞壁中の脂肪酸はメチル化脂肪酸エステル(FAME)を生じる。
【0025】
試薬ライン54は、溶融石英の真っ直ぐなキャピラリーチューブであり、おおよそ150ミクロメートルの内径を有する。石英キャピラリーチューブは、強塩基のメチル化試薬に耐性を有する不活性材料であり、かつ熱サイクルの影響を受けない。比較的大きな内径は、コンダクタンスを低減させ、運搬速度を増大させる。これにより、メチル化試薬がパイロライザー・ボディ30を介して熱分解管32へ移動する際の、メチル化試薬溶液と高温のキャピラリーの壁との間の接触時間が減少する。試薬ライン54は熱分解管32の底部内へ真っ直ぐ延びている。試薬供給源48から供給されるメチル化試薬滴の大きさは、一定かつ再現性を有する。
【0026】
パイロライザー20中の試薬ライン54の入口部分に設けられた断熱層56は、試薬ライン54への熱流を低減する。断熱層56は、圧縮管継手58をパイロライザー・ボディ30に連絡させる、熱的インピーダンスを有する薄壁のステンレス鋼チューブ(約0.79375mm(約1/32インチ(約1/32’’)の径))の部分である。パイロライザー・ボディ30は高温(約230℃)であるが、断熱層56は、圧縮管継手58を低温に保つ。圧縮管継手58は、パイロライザー・ボディ30の入口点において、試薬ライン54を封鎖し、かつ試薬ライン54に熱が伝達されるのを防ぐために、加熱されない(大気温度)箇所に熱的に連結される。そのため、圧縮管継手58は、65℃、即ちメタノールの沸点より低い温度に保たれる。温度センサ60は、パイロライザー・ボディ30の温度を検出する。温度センサ60が、パイロライザー・ボディ30の温度が230℃以下に低下していることを検出した場合、ヒーター(図示せず)が加熱することによって、パイロライザー・ボディ30の温度を230℃に保つ。
【0027】
収集後、熱分解管32内の試料は加熱器50により熱分解、即ち、加熱されて気体分子となる。試料は約5秒〜20秒間熱分解することができる。しかしながら、当業者であれば、熱分解管32内に収集された試料をどのくらいの時間熱分解すればよいかは承知しているであろう。制御装置46は、熱分解管32中の試料を質量分析計40へ誘導するよう試料ポンプ44を作動させる。試料ポンプ44は熱分解管32中の気体分子を、分析のため、試料ライン38を介して1分当たり1ミリリットルずつ質量分析計40内へ吸引する。
【0028】
試料ライン38は、溶融石英のキャピラリーチューブライニングを有する加熱されたステンレス鋼チューブである。ステンレス鋼チューブは、脆弱な石英キャピラリーチューブライニングを機械的に保護する。石英ライニングは化学的に不活性であり、そのためメチル化試薬溶液に対して耐性を有し、かつ熱分解管32の上方の頭隙内、又は熱分解管32の内側を下がった箇所へ、アウトレット37を介して延在している。FAME(メチル化脂肪酸エステル)は、熱分解管32の底部において概して溶離されており、熱分解管32の底部からのFAMEの試料は、精度を向上させるためにより濃縮された試料を提供するよう取り出すことができる。試料ライン38の径は、比較的速く試料を質量分析計40へ送るよう小さい。好ましくは、試料ライン38の内径は約0.1524mm(約0.006インチ)である。素早く取り外し可能なアクセスカバーにより、石英ライニングを容易に除去し、交換できる。あるいは又、試料ライン38は、内径が約1.016mm(約0.04インチ)のシリコスチール(SilicoSteel(登録商標))のコーティングを有する。
【0029】
各特定の生物剤は、パイロライザー20で処理されると、生物剤を固有に同定するメチル化脂肪酸エステル(FAME)及びその他の有機分子フラグメントなどの化学物質(バイオマーカー)の混合物を含有するガス混合物を生成する。質量分析計40は、検出される各生物剤のためのバイオマーカーの事前にプログラムされたリストを備える。試料中にいずれかの生物剤が存在する場合、質量分析計40は、その中にプログラムされたバイオマーカーのパターンのリストで比較することにより、その生物剤を識別する。一致するものが見つかった後、質量分析計40は関連する生物剤を同定する。
【0030】
排気ライン36を通る流量は、試料ライン38を通る流量の概ね1,000倍(排気ライン36を通る流量が1分当たり1リットルであるのに対し、試料ライン38を通る流量は1分当たり1ミリリットル)である。本発明の排気ライン36は、試料ライン38と比較して排気ライン36を通る排気の大きな流量に適合するよう、試料ライン38の径より大きな径を有する。排気ライン36は、エアロゾル試料の輸送と収集専用であり、かつ試料ライン38は熱分解中に生成される気体の輸送専用である。従って、従来技術のモード切替弁は必要とされない。試料ライン38とは独立して排気ライン36を設けることにより、試料ライン38が揮発性の低いガス状生成物に汚染される危険性を有することなく、高温(500℃)に加熱される熱分解管32の焼出し(洗浄)が可能となる。焼出しの間、排気ポンプ42は作動されており、試料ライン38にガスが入るのを防ぐため、試料ポンプ44は作動停止されている。
【0031】
本発明のパイロライザー20は、炭疽菌などの生物兵器に使用される生物剤を検出するのに使用することができる。しかしながら、その他の生物剤も検出することができることは理解されたい。質量分析計40で同定可能な脂肪酸や他の化学物質の固有パターンを有するいずれの物質でも、検出かつ同定可能である。
【0032】
前出の説明は、単に本発明の原理を代表するものである。上述の説明に照らして本発明の多くの修正並びに変更が可能である。本発明の好ましい実施態様を開示したが、当業者であれば、本発明の範囲内におけるある種の変更は可能であることは認めるであろう。従って、具体的に上で説明した以外に関しては、特許請求の範囲内において本発明を実施することができることは理解すべきである。こうした理由から、本発明の真の範囲と内容を確認するために特許請求の範囲を検討すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明のダブル・アウトレット・パイロライザーの概略的な透視図である。
【図2】図2は、本発明のダブル・アウトレット・パイロライザーの概略的な断面正面図である。
【符号の説明】
【0034】
20…パイロライザー
24…通路
26…インレット
32…熱分解管
35…排気アウトレット
36…排気ライン
38…試料ライン
48…試料供給源
50…加熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子試料を収集しかつ処理するための管を備えるパイロライザーと、
該粒子試料を含む空気を該パイロライザー内に取り込むために該管と流体的に連絡するインレットと、
該パイロライザーから該空気を排気するために排気管と流体的に連絡する第1のアウトレットと、
質量分析計と流体的に連絡する第2のアウトレットであって、該管中で収集されかつ処理される該粒子試料から溶離される気体分子が分析のためにそこを介して該質量分析計に取り込まれる、第2のアウトレット、
を含んでなることを特徴とする生物剤検出装置。
【請求項2】
前記空気を、前記インレットを介して前記パイロライザー内に吸引し、かつ前記第1のアウトレットを介して前記パイロライザーから排出する第1のポンプと、
前記気体分子を前記管から前記質量分析計内に吸引する第2のポンプ、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1記載の検出装置。
【請求項3】
前記管内への前記粒子試料の収集中、前記第1のポンプが作動し、かつ前記第2のポンプが作動停止することを特徴とする、請求項2記載の検出装置。
【請求項4】
前記管からの前記気体分子が前記第2のアウトレットを介して前記質量分析計内へ取り込まれる際に、前記第1のポンプは作動停止し、かつ前記第2のポンプは作動することを特徴とする、請求項2記載の検出装置。
【請求項5】
前記第1のポンプと前記第2のポンプを作動、あるいは作動停止するための制御装置をさらに備えることを特徴とする、請求項2記載の検出装置。
【請求項6】
前記第1のアウトレットを前記排気管に相互接続する第1のラインと、前記第2のアウトレットを前記質量分析計に相互接続する第2のラインをさらに含み、該第1のラインは該第2のラインよりも大きな径を有することを特徴とする、請求項2記載の検出装置。
【請求項7】
前記第1のポンプは前記第1のラインと動作可能に連結され、かつ前記第2のポンプは前記第2のラインと動作可能に連結されることを特徴とする、請求項6記載の検出装置。
【請求項8】
前記第2のラインが石英ライニングを有するステンレス鋼管であることを特徴とする、請求項6記載の検出装置。
【請求項9】
前記装置がメチル化試薬を含む試薬供給源をさらに含み、該メチル化試薬は、前記管中に収集される前記粒子試料を揮発性の熱分解生成物に誘導体化するために、試薬ラインを介して該試料に添加されることを特徴とする、請求項1記載の検出装置。
【請求項10】
前記揮発性の熱分解生成物を前記気体分子に熱分解するための加熱器をさらに備えることを特徴とする、請求項9記載の検出装置。
【請求項11】
前記試薬ラインが石英であることを特徴とする請求項9記載の検出装置。
【請求項12】
前記試薬ラインが、前記メチル化試薬を前記管の底の前記粒子試料に正確に送るために、前記管の底と位置合わせされることを特徴とする請求項9記載の検出装置。
【請求項13】
前記試薬ラインは、前記メチル化試薬が前記試薬ラインを通って流れる際に、前記パイロライザーから前記メチル化試薬への伝熱を最小限に抑える断熱層を備えることを特徴とする、請求項9記載の検出装置。
【請求項14】
前記空気が二次的粒子及び生物剤を含むことを特徴とする、請求項1記載の検出装置。
【請求項15】
粒子試料を収集しかつ処理するための管を備えるパイロライザーと、
該粒子試料中の生物剤を同定するための質量分析計と、
該粒子試料を含む空気を該パイロライザー内に取り込むために該管と流体的に連絡するインレットと、
該パイロライザーから該空気を排気するために排気管と流体的に連絡する第1のアウトレットと、
該質量分析計と流体的に連絡する第2のアウトレットであって、該管中で収集されかつ処理される該粒子試料から溶離される気体分子が分析のためにそこを介して該質量分析計に取り込まれる、第2のアウトレットと、
メチル化試薬を含む試薬供給源であって、該メチル化試薬は、前記管中に収集される前記粒子試料を揮発性の熱分解生成物に誘導体化するために試薬ラインを介して該試料に添加される、試薬供給源と、
誘導体化される前記粒子試料を熱分解する加熱器と、
前記空気を、前記インレットを介して前記パイロライザー内に吸引し、かつ前記第1のアウトレットを介して前記パイロライザーから排出する第1のポンプと、及び
前記気体分子を前記管から前記質量分析計内に吸引する第2のポンプ、
を含んでなることを特徴とする生物剤検出装置。
【請求項16】
前記第1のポンプが、前記第1のラインと動作可能に連結され、かつ前記第2のポンプが前記第2のラインと動作可能に連結されることを特徴とする、請求項15記載の検出装置。
【請求項17】
前記第1のアウトレットを前記排気管に相互接続する第1のラインと、前記第2のアウトレットを前記質量分析計に相互接続する第2のラインをさらに備え、該第1のラインは該第2のラインよりも大きな径を有することを特徴とする、請求項15記載の検出装置。
【請求項18】
前記第2のラインが石英ライニングを有するステンレス鋼管であることを特徴とする、請求項17記載の検出装置。
【請求項19】
前記メチル化試薬が、前記試薬供給源から試薬ラインを介して前記管中に収集される前記試料に添加され、かつ該試薬ラインは石英からなることを特徴とする、請求項15記載の検出装置。
【請求項20】
パイロライザーの管と連絡するインレットを介して該パイロライザー中に空気を吸引することと、
排気管と流体的に連絡する該パイロライザーの第1のアウトレットを介して該空気を排気することと、
前記管中に粒子試料を収集することと、
該管中の該粒子試料を誘導体化するために、該管中の該粒子試料にメチル化試薬を添加することと、
気体分子を生成するために該粒子試料を熱分解することと、
該気体分子を質量分析計と流体的に連絡する第2のアウトレットを介して、該質量分析計中に吸引すること、及び
該粒子試料中のいずれかの生物剤を同定すること、
を含んでなることを特徴とする、生物剤を検出する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−38845(P2006−38845A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−201146(P2005−201146)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】