説明

生物学的作用物質、化学的作用物質および放射線学的作用物質の調査方法

有害物質、例えば化学的作用物質、生物学的作用物質および放射線学的作用物質の調査方法を提供する。前記方法は標本領域から収集された物質から得られた試料について、化学的作用物質、生物学的作用物質または放射線学的作用物質の存在を分析することを含む。前記標本領域は少なくとも1つの収集地点を含み、そこから前記物質を調査に無関係な、既存の操作において収集する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にテロリズム行為または事故により放出される、潜在的に有害な作用物質の存在の監視、例えば自国の防衛および安全のための監視に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は2003年4月2日に出願した米国仮出願第60/459,941号に対する米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張する。この出願を本明細書に援用する。
【0003】
ある地域でのテロリストの攻撃による有害物質の早期検出および発症前検出は、罹患率および死亡率に関するそのような攻撃の結果を大きく変えることができる。早期検出の中心は、多くの人々が集まり、または往来する空間を日常的に抽出する方法を考案することである。例えば、ニューヨークなどの街においては、これらの空間には街路、公園、地下鉄、飛行場、仕事場、観光に関連した目印(landmark)が含まれる。現代の不確かな時代において、生物、化学または核攻撃の発生地を特定することが可能な、定期的で、高感度かつ特異的な、高度の予測値を備えた調査が求められている。
【0004】
モップ掃除、拭き取り、真空吸引(掃除機)、強制空気による方法を含む種々の試料採取方法、例えば、Teshale, E.H.等のEmergency Sampling for Spores of Bacillus anthracis, Emer. Infec. Dis., Vol.8, No.10に参照される方法が知られている。1991年の湾岸戦争の期間、米国および連合国軍は、生物学的作用物質、化学的作用物質、および放射線学的作用物質を検出するのにいくつかの異なる方法を試験した。これらの試験は、一般に公的に利用できるものではない。今日まで、人々が集まる街路、歩道、および他の公的地域の調査についての「大規模」な方法は提案されていない。
【0005】
米国公開特許出願第2002/0193967号('967)は、自己診断および自己治療に関する情報を収集する方法を開示している。これに対し、本発明は、'967法に関する病気の原因となる根本的物質を監視する、より積極的な取り組みを提供する。
【0006】
米国公開特許出願第2002/0169386号は、行動時間薬理学的経皮送達システム(behavioral chronopharmacological transdermal delivery system)を備えたデュアルモニタリング/測定装置を開示している。本発明は大都市域に対して、より煩わしくない調査システムを提供する。
【0007】
以下に検討するように、標的とする物質、即ち、生物学的作用物質、化学的作用物質および/または放射線学的作用物質を分析する装置および方法を教示する多くの参照文献が存在する。例えば、米国公開特許出願第2002/0197631号は、生物試料を処理するための多重区画装置を開示する。米国公開特許出願第2002/0168657号は、まれにしか起きない事象の検出システムであって、試料が特定波長での光子を発光する蛍光プローブに曝されているか、標識されている検出システムを開示する。米国公開特許出願第2002/0081569号は、液体試料中の粒子を迅速に同定する方法および試薬を開示している。
【特許文献1】米国公開特許出願第2002/0193967号
【特許文献2】米国公開特許出願第2002/0169386号
【特許文献3】米国公開特許出願第2002/0197631号
【特許文献4】米国公開特許出願第2002/0168657号
【特許文献5】米国公開特許出願第2002/0081569号
【特許文献6】米国特許第5968515号
【特許文献7】米国特許第6525314号
【特許文献8】米国特許第4565787号
【特許文献9】米国特許第6372424号
【特許文献10】米国特許第4683195号
【特許文献11】米国特許第4683202号
【特許文献12】米国特許第4965188号
【特許文献13】米国特許第4800159号
【特許文献14】米国特許第6287769号
【特許文献15】米国特許出願第2004/0034203号
【特許文献16】米国特許出願第2004/0046963号
【特許文献17】米国特許第6395504号
【特許文献18】米国特許第4656143号
【特許文献19】米国特許第4426579号
【特許文献20】米国特許第3886553号
【特許文献21】米国特許第4229740号
【特許文献22】米国特許第4799062号
【非特許文献1】Teshale, E.H.らのEmergency Sampling for Spores of Bacillus anthracis, Emer. Infec. Dis., Vol.8, No.10
【非特許文献2】Mathews van Holde, Biochemistry (Benjamin/Cummings Publishing Co., Inc.) 205-212 (1990年)
【非特許文献3】Swiss Institute of Bioinformatics のwww.expasy.com
【非特許文献4】European Molecular Biology Laboratoryのwww.mann.embl-heidelberg.de
【非特許文献5】Gill, I.ら,"Bioencapsulation within systhetic polymers (Part 2): non-sol. gel protein polymer biocomposites", Trends in Biotechnology, 18: 469-479(2000年)
【非特許文献6】LeJeune, K.ら, "Covalent Binding of a Nerve Agent Hydrolyzing Enzyme within polyurethane foams", Biotechnology and Bioengineering; 51, 450-457 (1996年)
【非特許文献7】Z. Barakら, "Bioencapsulation and delivery to mosquito larvae of Bacillus thuringiensis H14 toxicity by Tetrahymena pyriformis, J. Invertebrate Pathol., 58(3): 455-57 (1991年11月)
【非特許文献8】Z. Barakら, "Protozoan-enhanced toxicity of Bacillus thuringiensis var israelensis delta-endotoxin against Aedes aegypti larvae" J. Invertebrate Pathol., 63(3): 244-248 (1994年5月)
【非特許文献9】Manasherobら, Germination, Growth, and Sporulation of Bacillus thuringiensis subsp. israelensis in excreted food vacuoles of the protozoan Tetrahymena pyriformis, Appl. Environ. Mircrobial., 64(5): 1750-1758 (1998年5月)
【非特許文献10】Manasherobら, Raising activity of Bacillus thuringiensis var israelensis against Anopheles stephensi larvae by encapsulation in Tetrahymena pyriformis (Hymenostomatida: Tetrahymenidae) J. Am. Mosq. Control Assoc. 12(4): 627-31 (1996年12月)
【非特許文献11】Ben Dovら, Spores of Bacillus thuringiensis serovar israelensis as tracers for ingestion rates by Tetrahymena pyriformis, J. Invertebr. Pathol., 63(2): 220-222 (1994年3月)
【非特許文献12】Zaritskyら, Digestibility by and pathogenicity of the protozoa Tetrahymena pyriformis to larvae of Aedes aegypti, J. Invertebr. Pathol., 59(3): 332-334 (1992年5月)
【非特許文献13】J. Environ. Health, Anthrax -CDC Review, 2003年10月; 66(3) 42;
【非特許文献14】Butlerら, Collaboration Between Public Health and Law Enforcement: New Paradigms and Partnerships for Bioterrorism Response and Planning, Emerg. Infec. Disease, 8(10): 1152-1156 (2002年10月)
【非特許文献15】Hoffmaster AFら, Evaluation and validation of a real-time polymerase chain reaction assay for rapid identification of Bacillus anthracis, Emerg Infect Dis., Vol. 8,2002年10月(URL: http://www.cdc.gov/ncidod/EID/vol8no10/02-0393.htmから入手可能)
【非特許文献16】URL: http://www.cdc.gov/ncidod/EID/vol8no10/02-0393.htm
【非特許文献17】http://www.ph.ucla.edu/epi/snow/snowbook.html.で閲覧可能な、On the Mode of Communication of Cholera, John Snow, 1855年
【非特許文献18】Sexenaら, "A UV tolerant mutant of Bacillus thuringiensis subsp. kurstaki producing melanin", Current Microbiology, 44: 25-30 (2002年)
【非特許文献19】Saxenaら, Current Microbiology 44: 25-39 (2002年)
【非特許文献20】Dulmageら, J. Invertebrate Pathology 15: 15-20 (1970年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
当業者は、上述の発明、以下に述べる参照文献、および類似の技術等の、本発明に従って用いることのできる様々な組合せを直ちに認識する。しかし、放出するために調製され、または放出された有害物質の存在を検出するための、費用対効果が高く系統的な方法が必要とされている。このような方法は、例えば原子力発電所からの放射線物質の事故による漏出について早期警報を発することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
有害物質、例えば化学的作用物質、生物学的作用物質および放射線学的作用物質の調査方法を提供する。本方法は標本領域の選択、標本領域からの試料の採取、および試料についての化学的作用物質、生物学的作用物質または放射線学的作用物質の分析を含む。標本領域は、他の理由、例えば通常の廃棄物収集サービスのために収集した物質の収集に指定された領域であってもよい。別の実施態様においては、収集をより系統的に、例えば予め定められた、跡をたどることが可能な経路(ルート)において行う。予め定められた、跡をたどることが可能な経路は、中心位置に合流していてもよい。
【0010】
別の実施態様においては、試料は、標本領域からの物質の収集に用いる容器または手段を清掃または洗浄することにより得られる破片または流体からなり、試料からの化学的作用物質、生物学的作用物質または放射線学的作用物質の存在または非存在に基づく結果を判定し、結果を報告する。同様に、物質の収集が、主に他の目的、例えば市の公衆衛生によるものであってもよい。
【0011】
さらに別の実施態様は、予め定められた、跡をたどることが可能な経路、中心位置に集中する予め定められた、跡をたどることが可能な経路を通って、定期的かつ系統的に物質を収集する標本領域を選択すること;標本領域から試料を選択すること、本試料は、標本領域からの物質の収集に用いる容器を清掃または洗浄することにより得られる破片または流体からなる;試料について化学的作用物質、生物学的作用物質または放射線学的作用物質の存在を、例えば分子分析、PCR、放射線検出技術、分光分析、またはRIAを用いて分析すること;分析にもとづいて、試料中の特定の作用物質の存在を示す結果を判定すること;および、その結果を報告することを含む。報告は、結果に基づく個別の応答、例えば汚染源を特定するために汚染された領域(ホットスポット)を注意深く探索すること、を導くことができる。
【0012】
さらに別の実施態様は、テトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformis)を環境中に、または収集された物質中に導入し、バチルス属の胞子(Bacillus spore)を取り込み且つ濃縮させる、すなわちバイオカプセル化させる。テトラヒメナは、本発明の他の実施態様と結合して用いることもできる。
【0013】
さらに別の実施態様は、本発明の調査システムを試験するために、炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)のモデルとしての役目を果たす土壌細菌バチルススリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)メラニンを含有する土壌細菌株を使用することを含む。
【0014】
有害物質の監視に既存の収集サービスを利用し、したがって別の収集設備のネットワークの構築を必要としない本発明の種々の実施態様からは、明確な利益が得られる。事実、廃物やゴミの収集、および街路清掃サービスは、都市の人間の居住するすべての場所を網羅する。専用の試料収集ネットワークによる網羅をこの程度に達成するためには、巨額の出費を要する。本発明では、かかる出費が不必要である。
【0015】
〔詳細な説明〕
本発明の実施態様は、有害物質の存在を監視するために、既存の手続きおよびインフラストラクチャーを巧みに利用している。特に、全ての地域、例えば郡、市、または大建造物(空港、列車、またはバスターミナル等)におけるゴミ、破片、または微粒子物質についての収集は、系統的に行われるか、行うことができる。収集されたゴミからの試料を試験することにより、有害物質の高濃度の地域を特定することができる。当局がかかる範囲を特定すれば、有害物質の発生源を同定するための探索に着手できる。この方法を用いることにより、専用の試料収集設備への投資を必要とせずに、これらの種類の作用物質に対する監視力が大きく増大する。有害物質の探索が必要な場合は、すでに「ホット」と同定した地域に焦点を合わせるため、監視効果も大きく向上させることができる。
【0016】
図1は、調査システム(10)の一実施態様を示す。標本領域を選択する。標本領域は規定された領域であり、そこからは収集された物質が系統的に入手され、それにより収集された物質の採取場所が特定できるか、または判る。調査に無関係な日常的な計画によって収集された物質からの試料を分析する。結果を判定し、標的とする作用物質の存在、または相対的もしくは絶対的な量を示す。分析結果に基づいて、ホットスポットまたは降下地域を推定する。ホットスポットが必要程度の確かさにおいて確定されると、調査システムは、分析結果に基づく特定の応答、例えば、汚染除去または隔離手段の実施、を発表する。
【0017】
監視される有害物質は、兵器に用いられる生物物質、化学物質および放射線物質を含む。公衆を脅迫する活動がこのような物質を地域環境中に放出し、したがって地域環境の廃物またはゴミを汚染する可能性が高い。テロリストがこのような兵器を準備または移送する場合、適切な格納設備はテロリストの手に入らないと考えられるため、上記の放出は有害物質の実際の送達に先立って起こると思われる。
【0018】
本発明の別の実施態様においては、生物医学研究施設、化学プラント、または原子力発電所からの放出などの公共の供給源からの事故による有害物質の放出を監視する。陽性の分析結果は、安全違反(または違法な漏出)を示す。
【0019】
このように、本発明の一実施態様は、化学的作用物質または生物学的作用物質に対する監視能力に関する。本発明の他の実施態様は、放射線学的作用物質に対する監視能力に関する。本発明は、テロリストの実行し得る行為、またはNGO(非政府組織)、民族国家、または独立した個人による他の攻撃的行為を監視することができる。本発明の他の使用は、事業および公共機関での放射性有害物質、化学有害物質または生物有害物質の誤った廃棄を監視することである(例えば、種々の病院における標準的廃物搬出容器を試験する)。別の実施態様は、西ナイルウイルスなどの自然発生を制御することについて行われる。
【0020】
(定義)
有害物質は、生物に対する有害な効果または望ましくない効果(吸引、吸収、摂取、または他の遭遇をした場合に死ぬことを含む)の原因となり得る実在物である。本明細書において用いる場合、有害物質という用語は、それ自体が有害または望ましくないものではないが、他の有害物質のモデルとしての役目を果たす物質(例えば、炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)のモデルとして用いられる非病原性の土壌細菌バチルススリンギエンシス(Bacillus thuringiensis))も含む。
【0021】
標的とする作用物質は、種々の分析技術を用いて検出する試料中の特定の有害物質であり、即ち、それらは検出の標的とされる。本発明に従って利用される技術に留意し、標的とする作用物質は、生物を脅かす全てのまたは実質的にすべての有害な物質を含みうる。
【0022】
化学的作用物質は、一般に化学合成によって調製され、または天然資源から抽出される物質であり、それらは吸引、吸収、摂取または他の遭遇をした場合に、生物に対し有害な効果または望ましくない効果の原因となり得る物質である。これらの作用物質は、急性毒物、催奇形物質、神経性ガス(例えばサリンおよびVX)、発癌性物質、びらん剤(例えばマスタードガスおよびルイサイト)、窒息剤(例えばホスフェン(phosphene))、血液作用物質(例えばシアン化水素)、ナパーム等を含む。上述のリストは例示であって、それらに限定されるものではない。
【0023】
生物学的作用物質は有機体およびウイルス、あるいはそれらから合成されまたは誘導される実体物を含み、吸引、吸収、摂取または他の遭遇をした場合に、生物に対し有害な効果または望ましくない効果の原因となり得る物質である。これらは、病原細菌(サルモネラ、ペスト、炭疽菌、脳炎、髄膜炎、ツラレミア(tularemia)等)、ウイルス(天然痘、ポリオ、西ナイル、エボラ、VHF(ウイルス性出血熱)等)、真核生物病原体(アメーバ、旋毛虫等)、毒素またはタンパク質(リシン、ボツリヌス毒素、プリオン等)または寄生虫(リーシュマニア(Leishmania)、トリパノソーマ(trypanosome)、糸状虫(filariae)、クリプトスポリジウム(cryptosporidium)等)を含む。上述のリストは例示であって、それらに限定されるものではない。当業者には理解できるとおり、天然物の抽出物である化学的作用物質と、有機体により生成された分子である生物学的作用物質との間には重複がある。本発明の目的には、これらの作用物質は両方のカテゴリーに分類される。
【0024】
放射線学的作用物質は、核兵器、および放射線散布装置もしくは兵器(例えば、汚い爆弾(ダーティーボム))を含む。生物に放射線の危険を加えることを目的とする全ての手段は、放射線学的作用物質と考えられる。
【0025】
試料は、収集された物質(例えば選別、洗浄、溶媒抽出、圧縮および液体収集(liquor collection)または他の技術により)から得られ、又は収集された物質と現在もしくは以前に関連のある流体または固体物質である。試料は収集された物質それ自体からなるものであってもよい(例えば有害物質としての紙片の直接分析)。
【0026】
収集された物質は、家庭または産業のゴミまたは廃物;公共ゴミ;庭ゴミ;再生可能な生産物;くず;廃棄物;あるいはすでに個人の物品でないもの、または個人の所有地もしくは個人に指定された空間内に貯蔵物されていないものを含む。収集された物質は、特定の場所の外気もしくはその他の環境流体を構成していてもよい。
【0027】
標本領域は、そこから系統的に収集された物質が得られ、そうして収集された物質が得られた場所が特定されうるか又は場所が知られる規定の領域である。
【0028】
予め定められた、跡をたどることができる経路で物質を収集する場合、確立された手順またはパターンに基づいて、収集の相対的順序を確認することができる。
【0029】
予め定められたパターンによって物質を収集する場合、標本領域は、日、週、月、または他の時間間隔について知られている。
【0030】
街路清掃車(street sweeper)は、街路、歩道、フロア、プロムナード、通路、停車場、または人々が集まるその他の場所からゴミを清掃および/または収集する機械である。街路清掃車は、街路掃除人、および公共輸送ターミナル等の建物内で使用される、より小さなもしくは改良型のものを含むフロアバッファ(floor buffer)等のそれに類似する装置を具現化したものである。
【0031】
分析は、標的とする作用物質の存在を検出するのに十分な特異性および感度を有する生物、化学、または物理試験である。標的とする作用物質の存在は、「陽性」または「陰性」の試験結果により判定するか、または、正常なレベルとの比較により存在を特定することができる。正常なレベルは定量されたバックグラウンドノイズを含んでもよいし、第2の試料領域からの標的とする作用物質のレベルとの比較により判定してもよい。
【0032】
収集の完全性は、試料を収集し、維持し、および処理するときに、試料が汚染され、廃棄され、あるいは調査システムの正常な機能を妨げるように操作される可能性を最小限にするように保たれる。収集の完全性は、例えば分析過程の管理を周到にすることにより保つことができる。
【0033】
(標本領域)
本発明の調査システムの実施態様は、既存および通常のインフラストラクチャーを利用しており、したがって、どの大都市域へも移出可能である。標本領域は物質を収集する領域内から選択する。試料の均一な調製を容易にするため、収集された物質を中心位置(central location)に移送、即ち、材料の収集を中心位置に集中、してもよい。典型的な物質は、予め定められたパターンで収集され、あるいは予め定められた、跡をたどることが可能な経路によっても収集される。
【0034】
本発明の別の実施態様においては、中心位置に集中する前の予め定められたパターンで物質を収集し、および試料を得る。この実施態様は、標本領域に包含される地域からホットスポットの正確な位置を、より迅速かつ的確に特定する能力をもたらす。このように、予め定められたパターンは、中心地点において試験するための物質収集を必ずしも含まない。物質収集が中心地点で行われたとしても、収集パターンまたはルートの知識は、目的の作用物質の濃度勾配と標本領域内のホットスポットを位置付けるパターンまたはルートとの相関を可能にする。ホットスポットは、当業者に公知の他の手段によっても位置付けることができる。
【0035】
街路清掃車、手押し車(鉄道/バスのターミナル、空港ターミナル、および大建造物複合体で使用される)、庭ゴミ収集、再生努力、および産業用バキュームトラックを含む物質収集の種々の手段は本発明の範囲内である。特定領域又は経路から物質を収集する駅(ステーショナリーユニット)を使用してもよい。これらの駅には、貯蔵所、リサイクル用容器、及び下水溝の格子が含まれる。
【0036】
本発明の標本領域内における物質の日常的な収集は、単なる監視のために多くの地点を訪れなければならないのに比べて大きな利点をもたらす。既存の操作の一部として試料採取を組み込むことは、自治体、および納税者のための節約となる。
【0037】
本発明の範囲内に種々の状況が存在し、中でも環境サンプリングは、多くの人々が横切る地域からの破片の収集を集中化し、および/または既存のインフラストラクチャーを利用することを含む種々の相乗効果の利益を有する。例えば、試料は自治体のゴミルートまたは私的ゴミルートによる最終または中間の収集地点から得ることができる。建物、地下鉄、および通路からのゴミ収集容器は、初期警報調査システムに含めることが可能である。空気のサンプリング、特に換気装置の取り入れまたは排出域の通常のフィルタ等の集中化したポイントからのサンプリングは、公共建物、地下鉄等の密閉された空間における試料採取に有効であり、本発明の範囲内である。同様に、収集方法に関係しない収集ポイントの集中化の概念は、仕事の負荷を大きく低減し、既存のインフラストラクチャーを利用している。
【0038】
(洗浄および試料の単離)
標本領域から選択される試料は、標的とする作用物質が存在する場合は標的とする作用物質を含有する媒体中にある。しばしば、液体試料を入手することが望ましい。このような試料は洗浄工程からの既存の液体流から一定量を採取することにより得ることができる。当業者は、本発明に従って手段を洗浄することができ、または多くの人々が通る地域から破片を集中して収集することに何らかの形で使用される手段それ自体から液体試料を得ることができることを直ちに理解するであろう。
【0039】
洗浄工程は、例えば収集プロセスに含まれる機械の機構を洗浄することを含むことができる。本発明の一実施態様においては、街路清掃車のブラシおよび収集容器を濯ぐ。ブラシまたは収集容器を濯いだ排出水流から一定量を採取する。この一定量は標的とする作用物質、例えば炭疽菌の胞子を含みうる。
【0040】
かかる洗浄が定期的に行われる地域、または予め定められたパターンで収集された液体とつながりのある地域において、商業的に入手可能な自動サンプリング装置(例えば、Hoskin Scientific, Vancouver, BC)を配置することができる。この方法において、最小限の人的労力および地域資源により試料を単離することができる。
【0041】
別の実施態様においては、分析された試料は、収集された物質と連絡している(つながりのある)水または他の液体溶液、例えば洗浄液から取り出される。例えば、試料は破片の収集に用いられる液体媒体から得ることができる。例えば床洗浄機を通してリサイクルされる液体洗浄液から試料を得る。このように、試料採取した水は、直接収集された物質と相互作用するか、または収集した物質をかつてもしくは現在含有する構造体と相互作用している可能性がある。例えば、ゴミ容器は廃棄するときに洗浄することができ、有害な化学的作用物質または生物学的作用物質の存在について濯ぎ液を分析することができる。しかしながら、本発明は水によるサンプリングに制限されない。本発明によれば、監視する標的とする作用物質および作用物質の存在を判定するために選択した分析技術に応じて、いかなる液体または固体も分析することができる。
【0042】
洗浄工程は、利便性、洗浄操作に用いる液体の溶媒としての力、液体の同伴能力、封入化、または標的とする作用物質との関わり、または特別のアッセイ技術を含めた種々の要因に基づいて、適切な媒体中の試料を得るのに適する工程であってよい。本発明の他の実施態様においては、標的とする作用物質はすでに適切な溶媒中にあり、洗浄工程、または当業者に公知の他の同様の方法を必要としない。
【0043】
さらに、分析技術の進歩により、手持ち式の十分に小さな装置を用いて、生物学的作用物質を含む有害物質の監視が可能である。これらの装置は収集容器と連絡して設置することができる。かかる技術を用い、収集された物質が、例えば街路清掃車の貯蔵機構に入るのを精査することができる。さらに、収集された物質が、従来の収集容器、例えばゴミの収納器に入ることを、またはこれらの物質がゴミ圧縮機に入るのを精査することができる。本発明に従って用いられるこのような技術は、専用の試料収集および現場から離れた分析の両方を必要としない。
【0044】
(分析(アッセイ)技術)
特別の分析技術に限定されるものではないが、化学的作用物質、生物学的作用物質または核作用物質の検出は、本発明の有効な実施にとって重要である。検出の有効性の評価は、特異性、感度、および陽性予測値として統計学的に規定される。検出分析法には、許容レベルに対する擬陽性率および擬陰性率を低下させるための十分な信頼性および感度、並びに、攻撃に用いられる可能性のある作用物質の範囲の試料を試験できることが必要とされる。本発明の実施態様は、2種以上の環境サンプリング方法を含んでもよい。
【0045】
本発明の実施態様は、非常に高い感度および特異性を可能にする方法であるリアルタイムPCR技術を採用する。この方法は、シグナチャーDNAまたはRNA、即ち標的とする作用物質中にあるDNAまたはRNAの特有の断片(フラグメント)の検出に基づいている。環境からの試料は分析を妨害する物質を除去するための処理を行うことができる。泥および阻害物のないDNAまたはRNAを得ることは、有害な作用物質を潜在的に含有する試料からDNAを同定する能力を向上させる。PCRを阻害する汚染物を除去または中和する方法は、本発明に従い、当業者が使用可能である。例えば、試料をポリミキシンなどの抗生物質で処理し、汚染物を除去し、さらに存在する場合には標的とする作用物質の豊富な試料をもたらすことができる。
【0046】
リアルタイムPCRおよび他の分析技術に対する阻害物の例は、テロリストによる事件、または産業事故等のまれな事件の結果によるものではない生物材料である。例えば、糞便、食物、動物の遺骸等の収集物質は、大量の細菌を産生する場合があり、このような物質の存在が炭疽菌等の有害な作用物質を同定する努力を妨げるべきではない。さらに、土、洗剤および広範な種類の化学物質が、DNAまたはRNAの単離および精製を妨害し得る。本発明の実施態様は、試料内から、またはより一般に試料領域内から有害な作用物質を単離および/または増幅するための収集および濃縮技術(例えばバイオカプセル化)を提供する。この努力は、DNAまたはRNAの単離および精製を妨害するバックグラウンドノイズおよび阻害物の大供給源から、標的とする作用物質を区別することを可能にする。
【0047】
特にバックグラウンドの汚染および他の環境細菌、菌類、ウイルス(これらの大部分は依然として同定されなければならない)の生物学的多様性を考慮すると、どの単一のシステムも100%の感度および特異性を提供する見込みがなさそうであるために、本発明は生物学的有害物質に対して免疫測定法およびPCR等の2種以上の異なる分析方法を用いて、標的とする生物学的作用物質を同定することを意図している。質量分析等の単一の測定も化学的または放射線学的有害物質に対して十分な場合がある。
【0048】
洗浄を含む、一般に公知の方法により得られた試料を単離した後、試料をさらに処理および分析することができる。そのすべてを本明細書に援用する米国公開特許出願第2002/0197631号に記載されているように、そのような試料の処理は1つまたは2つ以上の以下の事項:即ち生物組織の均一化、細胞の溶解、固体粒子の分散または溶解、固体材料の液状化、あるいは目的の作用物質を豊富にする他の方法、を含む。しばしば、このような試料調製は、酵素による広範な消化、化学試薬の使用および/または機械的破砕を伴う。試料は、蒸留、界面活性剤の使用、可溶化、または極性または非極性抽出等の技術を使用して処理することもできる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはゲル電気泳動を、標的とする作用物質、例えば試料中の核酸配列および/またはタンパク質の精製または増幅に用いることができる。この処理の目的は、選択した分析技術のために標的とする作用物質(それらが存在すると仮定して)が十分に濃縮された試料を得るためである。処理後、典型的には試料を分析および/または検出操作に供する。例えば、本明細書に援用する米国特許第5968515号を参照されたい。
【0049】
(化学的作用物質の分析)
収集された試料中に存在する化学的作用物質は、当業者に公知の方法により測定する。上述のように、標的とする作用物質の検出能を向上させるため、当業者は正確かつ容易に分析される状態の試料、例えば十分に濃縮された試料を得る技術を採用する。もし存在すれば、標的とする作用物質に発色団を導入するための化学的誘導を行うことができる。さらに、例えばクロマトグラフ分離を用いることによって妨害物質を除去することにより、標的とする作用物質の検出能を向上させることができる。
【0050】
本発明の一実施態様は、試料により吸収される可視光または紫外光の量に基づいて標的とする作用物質の存在を判定するために、分光分析技術を用いる。例えば、Mathews van Holde, Biochemistry (Benjamin/Cummings Publishing Co., Inc.) 205-212 (1990)を参照されたい。同様に、分光分析技術は、試料によって吸収された放射線に基づいて標的とする作用物質の存在を判定することができる。
【0051】
標的とする作用物質の存在を判定するための他の技術は質量スペクトル分析である。例えばSequenom, Inc.,のサービスとして利用できる質量スペクトル分析は、試料中に存在する化合物の組成を測定するための分析技術である。四重極マスフィルタを用いる単段式質量分析計においては、試料中の化合物はイオン化され、加速され、かつ集束されて、第1の四重極マスフィルタに入るイオンの流れまたはビームを形成する。第1の四重極マスフィルタまたは唯一の四重極マスフィルタに適用される交流電圧および定電圧の適切な調整により、使用者がフィルタを通して送られるイオン種を選択することが可能になる。フィルタから現れるイオンを検出し、電子増倍管等の公知手段により、電気信号または電流に変換する。これらの電圧の迅速走査により、使用者はさらに試料化合物に対応するイオン種のスペクトルを生成させることができる。
【0052】
当業者は質量分析によって分子情報を得ることができ、種々のスペクトル解釈法およびデータベース検索手段の助けにより、標的とする作用物質の存在および/または相対的レベルを判定することができる。これらの方法および手段の例としては、Swiss Institute of Bioinformatics のwww.expasy.comのウェブサイト、およびEuropean Molecular Biology Laboratoryのwww.mann.embl-heidelberg.deのウェブサイトが挙げられる。質量分析計の装置例は米国特許第6525314号に見ることができる。
【0053】
試薬と接触させたときの標的とする作用物質の沈殿しやすさの知識によっても、標的とする作用物質の存在または非存在を確認することができ、当業者に公知の重量分析技術を用いて標的とする作用物質の相対的な量を定量することができる。
【0054】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は有害な化学的作用物質の存在を確認するためにも用いることができる。米国特許第4565787号に説明されているように、逆相カラムでHPLCを用い、紫外/可視吸収または蛍光に基づいて化学的作用物質の検出を行うことができる。HPLC分析のために他のクロマトグラフの支持を用いることもできる。それに代えて、気相クロマトグラフィー単独または質量スペクトル分析との組合せを用いることができる。この技術は、有害な化学的作用物質(例えばサルファーマスタード)の検出に用いることができる。
【0055】
(生物学的作用物質のアッセイ)
有害な生物学的作用物質は、微生物、ウイルス、またはそれらにより合成され、もしくは誘導されたものを含み、吸引、吸収、摂取またはその他の遭遇をした場合に生物にとって有害または望ましくない影響の原因となり得る。生物学的作用物質は、悪意ある人間により導入されるか、あるいは自然発生または疾病の結果である。この後者の観点からは、試料中の細菌およびウイルスの病原体を検出および同定する方法を記載する米国特許第6372424号等の開示が注目されている。
【0056】
有効な微生物学的作用物質の検出は、試料調製および鋳型DNAを得る処理、特定のDNAプライマーおよびプローブの鋳型を用いるDNAの特定のシグネチャーセグメント(signature segment)の増幅、並びにその結果選択的に増幅されたDNA生成物の検出の特徴的な段階を含有することができる。
【0057】
試料調製方法は、破片収集設備から得られる環境試料からDNAを生成する。当業者ならば本発明の範囲内で使用できる適切なDNA試料を得るための種々の技術が存在することが分かろう。試料の煮沸と同程度に簡単な多くの方法が公開されている。さらに、特定の病原菌に特有の特定のセグメントの増幅を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて行うことができる。例えば、本明細書に援用する米国特許第4683195号、4683202号、4965188号、4800159号および6287769号を参照されたい。
【0058】
広範な種類の既知のおよび将来開発される生物学的作用物質は、検出へ挑戦する努力を要求する。それにもかかわらず、バイオテロリズムの大部分の類似物質が非常に少量の試料から検出することのできるDNAの固有のセグメントを有することにより、高い確実性で特定することができる。例えば、炭疽菌バチルスアントラシスBacillus anthracis(IDI, Quebec, Canada)に対する特異的プライマーおよびプローブは商業的に入手することができる。
【0059】
本発明の一実施態様は、生物学的作用物質、化学的作用物質または他の有害物質、例えばウイルスを複製、収集、および/または濃縮するための担体の使用を含む。例えば、ポリ(グリセリルシリシレート)等のポリマーは、それぞれ本明細書に援用する米国特許出願第2004/0034203号、米国特許出願第2004/0046963号、Gill, I.ら、"Bioencapsulation within systhetic polymers (Part 2): non-sol. gel protein polymer biocomposites", Trends in Biotechnology, 18: 469-479(2000)、およびLeJeune, K.ら、"Covalent Binding of a Nerve Agent Hydrolyzing Enzyme within polyurethane foams", Biotechnology and Bioengineering; 51, 450-457 (1996)に開示されているように、機能性タンパク質の封入に用いることができる。さらに、原生動物等の有機体は、標的とする作用物質を収集し、濃縮するバイオカプセルシステムとしてはたらく。このような努力は、固有のDNAおよびRNAセグメントの相対量を増大させ、かつ/または固有のDNAおよびRNAセグメントを単離し、それによって検出をより容易にする。
【0060】
標的とする作用物質を濃縮するために収集された材料から誘導し、および/または単離することのできるより高級な生命体が担体としてはたらくことも可能である。例えば、蚊および鳥は西ナイルウイルスの担体であり、西ナイルウイルスはこれらの担体内において複製される。本発明の実施態様によれば、かかる担体の使用に好ましい条件は、本発明の標本領域内の標的とする作用物質の存在を最大にするために促進され、かつ/または利用される。例えば、標本領域内の担体の収集を最大にするための街路清掃活動と結合させて殺虫剤を施すことを計画してもよい。担体は収集した物質に添加してもよいし、予め存在してもよく、収集された材料から単離してもよい。
【0061】
担体(例えば、標的とする作用物質をバイオカプセル化するための原生動物)を入れる前に、液体試料をまず処理し、標的とする作用物質と一般に同じ大きさの粒子を単離することができる。これは標的とする作用物質より大きなポアサイズを有するフィルタを用い、比較的大きな粒子を除去することにより達成することができ、次いで標的とする作用物質より小さなポアサイズを有する膜上に残るろ液の一部として標的とする作用物質を蓄積する。試料は、例えば吸引ろ過により膜に導くことができる。標的とする作用物質を含有する試料の一部を大きさに基づいて単離する他の方法自体は、当業者の方法に存在する。
【0062】
標本領域内に担体がない場合、増幅するのに好ましい条件下で担体を試料中に導入することができる。例えば、担体を受け入れる前に、試料をリンガー溶液等の生理食塩水溶液に入れることができる。
【0063】
バイオカプセル化に用いる担体の効果を最適にするか、さもなければ標的とする作用物質からのDNAを増幅するために、試料をさらに処理することができる。例えば試料を処理し、担体が標的とする作用物質を増幅するのを妨害する作用物質を除去することができる。さらに、バイオカプセル化技術を用いる場合、例えば標的とする作用物質に対するカプセル化の機構により優先される細菌を除去して、収集した試料を処理して担体が好む標的とする作用物質以外の物質を除去することができる。例えば試料の加熱、抗菌剤による試料の処理、試料の状態を変えることにより、例えば、緩衝剤を導入してpHを制御するか、目的の微生物に対する親和性の大きさに基づいて担体を選択することによって、標的とする作用物質を濃縮する担体の能力に対する障害を除去することを達成でき、担体によるバイオカプセル化、または標的とする作用物質の濃縮に好ましい環境を提供する。
【0064】
本発明の一実施態様においては、試料からのバチルス属(Bacillus)、例えば炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)の胞子をバイオカプセル化するために、原生動物のテトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformis)を試料中に導入する。別の実施態様においては、本発明の調査システムを試験または実施するため、炭疽菌の非病原性の代替物として用いる土壌細菌バチルススリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)の胞子をカプセル化するために、テトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformis)を試料中に導入する。テトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformas)は、Carolina Biological Supply Company(Burlington, NC)から商業的に入手することができる。Z. Barakら、"Bioencapsulation and delivery to mosquito larvae of Bacillus thuringiensis H14 toxicity by Tetrahymena pyriformis, J. Invertebrate Pathol., 58(3): 455-57 (1991年11月); Z. Barakら、"Protozoan-enhanced toxicity of Bacillus thuringiensis var israelensis delta-endotoxin against Aedes aegypti larvae" J. Invertebrate Pathol., 63(3): 244-248 (1994年5月); Manasherobら、Germination, Growth, and Sporulation of Bacillus thuringiensis subsp. israelensis in excreted food vacuoles of the protozoan Tetrahymena pyriformis, Appl. Environ. Mircrobial., 64(5): 1750-1758 (1998年5月); Manasherobら、Raising activity of Bacillus thuringiensis var israelensis against Anopheles stephensi larvae by encapsulation in Tetrahymena pyriformis (Hymenostomatida: Tetrahymenidae) J. Am. Mosq. Control Assoc. 12(4): 627-31 (1996年12月); Ben Dovら、Spores of Bacillus thuringiensis serovar israelensis as tracers for ingestion rates by Tetrahymena pyriformis, J. Invertebr. Pathol., 63(2): 220-222 (1994年3月); Zaritskyら、Digestibility by and pathogenicity of the protozoa Tetrahymena pyriformis to larvae of Aedes aegypti, J. Invertebr. Pathol., 59(3): 332-334 (1992年5月)が開示されている。これらはそれぞれ本明細書に援用する。
【0065】
これらの実施態様のさらなる適用において、加熱した膜、例えば約70℃に加熱した膜を通して試料をろ過してもよい。テトラヒメナによっても摂食される増殖性細菌を、加熱が殺菌する。試料中に存在するこれら増殖性細菌は、テトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformis)中へのバチルス(Bacillus)属の濃縮を阻害しうる。ろ過−加熱プロセスを併せることにより、採用したフィルタのポアサイズより大きな粒子を排除することができ、かつ例えば炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)のバイオカプセル化を妨害する物質を除外することもできる。
【0066】
他の実施態様においては、テトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformis)を導入する前に試料を約70〜80℃の範囲に加温する。試料(例えば細胞懸濁液)を、増殖性細菌を殺菌するだけの時間、例えば10〜20分間加熱、洗浄し、および純粋な培養媒体に、例えば105-6のテトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformis)を懸濁させることができる。テトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformis)は、試料中の炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anshracis)をカプセル化するのに十分な時間試料と接触させておくことができる。本発明のこの側面の種々の実施態様において、テトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformis)は約60〜90分間、試料と接触したまま維持される。
【0067】
他の実施態様においては、破片液体の試料が2つの膜に導入される。第1の膜は加熱することができ、標的とする作用物質より大きな粒子を除外し、増殖性細菌等の細菌を殺菌する。上記第1の膜は、例えば約0.45〜1.2μmのポアサイズを有することができる。第2の膜は標的とする作用物質より小さな粒子が通過するのを許容し、即ち、標的とする作用物質が膜上にろ過されて残る。第2の膜は、例えば約0.2μmのポアサイズを有することができる。膜は無菌の生理的食塩水溶液で濯ぎ、等張性を依然として保っている可溶性の不純物を除去してもよい。
【0068】
テトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformis)を試料に導入する前に、標的とする作用物質に対する親和性を最大にするために十分な時間、テトラヒメナを通常の生理食塩水中に浸すことができる。本発明の一実施態様においては、テトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformis)を約2〜3時間浸す。カプセル化に好ましい溶媒、例えば希釈したリンガー溶液または他の生理的溶媒中に置いた試料に、テトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformis)を入れることができる。代わりにテトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformis)をin situで試料に導入することができる。
【0069】
クリスタルバイオレットまたはメチレンブルー等の生体染色色素をin situで、または担体と分離した溶液中で試料に添加することができる。これは選択的に染色された標的とする作用物質、例えば炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)をもたらし、原生生物培養媒体中で標的とする作用物質を視認することができる。
【0070】
種々の実施態様においては、テトラヒメナピリフォルミス(tetrahymena pyriformis)をそれらの小胞が分泌される前に回収する。これは、通常、炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)が存在する試料と接触してから約90分後に起こる。
【0071】
濃縮されかつ精製された標的とする作用物質(例えば、バチルス属の胞子(Bacillus spore))を含有する担体、例えばテトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformis)は、次に遠心分離、ろ過、走化性、または当業者に公知の他の方法により集めることができる。担体は溶解し、DNAの抽出処理を行う。バチルス属の胞子(Batillus spore)が標的とする作用物質であり、およびテトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformis)が担体である実施態様において、胞子形成過程の結果としてDNAはそれらの表面層の上または近くに含まれる。このような実施態様においては、試料を遠心分離、洗浄、およびフィルタを通過させ、標的とする作用物質と担体とを分離する。フィルタの大きさは当業者が決定することができ、例えば約0.75μm〜約1.0μmの範囲が可能である。
【0072】
種々の実施態様において、調査している標的とする作用物質に特異的なDNAプライマーを、次にリアルタイムPCRにより分析する。例えば、炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)に特有の3つの遺伝子座がCDCにより推奨されており、プライマーおよび反応条件は商業的に入手可能である(例えば、IDI, Quebec, Canada)。炭疽菌のアッセイのためにCDCにより推奨された技術は、J. Environ. Health, Anthrax -CDC Review, 2003年10月; 66(3) 42; Butlerら、Collaboration Between Public Health and Law Enforcement: New Paradigms and Partnerships for Bioterrorism Response and Planning, Emerg. Infec. Disease, 8(10): 1152-1156 (2002年10月); and Hoffmaster AFら、Evaluation and validation of a real-time polymerase chain reaction assay for rapid identification of Bacillus anthracis, Emerg Infect Dis., Vol. 8, 2002年10月に開示されている。URL: http://www.cdc.gov/ncidod/EID/vol8no10/02-0393.htmから入手可能である。これらの参照文献は、その全体を本明細書に援用する。
【0073】
種々の実施態様において、それに続くPCR特有の生成物の検出は、リアルタイムPCR(RTm-PCR)(例えば、Applied Biosystems, Foster City, CA; SmartCycler, Sunnyvale, CA)およびPCRの最終生成物のフラグメントの大きさと質量を分析する質量スペクトル分析(例えば、Sequenom, San Diego, CA)を含む。生物学的作用物質を検出する別の方法は、標的とする作用物質の定量的および定性的判別のためのファージ由来の酵素の使用を含む。第3の方法の一実施態様において、ファージ関連溶解剤を使い捨ての試験システム装置に導入し、次いで標的とする作用物質の存在または非存在を推定するため照度計により分析する。米国特許第6395504号を参照されたい。しかし、今日までRTm-PCRが最高の基準(gold standard)であり、2001年10月の、手紙による大発生では、炭疽菌の胞子(B.anthracis spore)を検出するためにCDCによって用いられた。
【0074】
本発明の一実施態様によれば、試料を上記の標本領域から集め、DNAを抽出し、および試料を2つのロットに分割し、1つをRTm-PCR検出用とし、他の1つを質量スペクトル検出用とする。3番目の試料をファージ酵素検出用に調製してもよい。ロボット実施プラットフォーム並びに1日に2000検体以上処理できる96-および386-穴マイクロタイタープレートを含む、高処理能力のサイクラーを用いることができる。
【0075】
本発明の別の実施態様において、調査システムは、標的とする作用物質を分析するために、放射免疫測定法(RIA)等の免疫測定法を利用する。米国特許第4656143号に説明されているように、RIAは標的とする作用物質の放射標識アナログを含み、放射標識アナログは溶液中でのインキュベーション中に固体相に固定された抗体に、標的とする作用物質と競合して結合する。予め定められた適切なインキュベーション時間の後、固体相を溶液から除き、洗浄し、固体相に結合した放射標識量を測定する。これは、試料中の標的とする作用物質の量の逆の測定値を与える。免疫放射定量測定法(IRMA)では検出シグナルを得るために標識抗体を用いること以外、同様のプロトコルにより行う。「サンドイッチアッセイ」として一般に知られているIRMAの特別のタイプでは、固体相は標的とする作用物質の決定基と結合することのできる抗体を有する。標的とする作用物質の別の決定基に対する第2の標識抗体は、液体成分として提供される。固体相および液体成分を、被分析物を含有すると思われる試料とともにインキュベートする。存在する任意の被分析物は固体相と結合し、標識抗体は標的とする作用物質と結合する。インキュベーションの後、固体相を液体成分から分離し、固体相と結合する標識量を測定する。これにより標的とする作用物質の存在およびその存在量を直接的に示す。
【0076】
個々の生物分子を、免疫測定法、クロマトグラフィー、質量スペクトル分析、および作用物質の存在に対する細胞の応答に基いた生物アッセイにより検出することができる。後者はレポーター遺伝子アッセイ(reporter gene assay)、フォトタイプアッセイ(phototype assay)、遺伝子発現プロファイルアッセイ(機能的ゲノム、例えば核酸マイクロアレイにおける)、およびタンパク質発現アッセイ(機能的タンパク質、例えば2次元ゲルまたはマイクロアレイにおける)を含む。
【0077】
(放射線学的作用物質のアッセイ)
放射線学的作用物質は、核兵器、および放射性物質散布装置または兵器(即ち、汚い爆弾(ダーティーボム))を含む。生物に放射線の危険を与えることを目的とした手段は放射線学的作用物質と考えられる。
【0078】
収集された試料中の放射線学的作用物質の存在は、当業者に公知の方法により判定する。例えば、本発明の実施態様は、放射線の存在を判定するためにアルファ、ベータ、および/またはガンマ線照射技術を用いる。放射性同位元素の原子量特性を検出できる質量スペクトルも用いることができる。
【0079】
米国特許第4426579号に説明されているように、ガイガー・ミューラー(Geiger-Mueller;G-M)管として当技術分野で公知の装置は、本発明による放射線の検出に用いることができる。当業者が理解するように、ガイガー・ミューラー管はG-M管内のカソードに作用する、フォトンからの電子のパルスを生成する。管内の他の原子との相互作用により、G-Mパルスは、最終的に当技術分野で公知の関係による放射線強度の測定値を提供する、平均反復速度を有するランダムパルスの列を生成する。他の放射性同位元素の検出技術としては、シンチレーション試験およびX線フィルム露光を含むが、これらに限定されない。
【0080】
(結果分析およびその後の処置)
標本領域から収集された物質に由来する試料についての、化学的作用物質、生物学的作用物質、または放射線学的作用物質の存在の分析は、作用物質の正常レベル、即ち、バックグラウンドノイズとの比較を含む。言い換えると、標的とする作用物質の存在の判定は、オール・オア・ナッシングの命題である必要はない。電気技術分野との類似性を引用すると、標的とする作用物質の存在の判定は、厳密にデジタルなプロセスとは対照的に、ある実施態様におけるアナログプロセスと考えることができる。
【0081】
例えば、農場の動物廃棄物または他の有機物質等の生物源に由来する、微量の炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)が環境中に通常は存在する。このバックグラウンドノイズが通常存在するため、このような極微量の存在を示す分析は、テロリストの攻撃を示すものではない。このような環境において、炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)等の標的とする作用物質の「正常」レベルをまず確認し、次いで化学的作用物質、生物学的作用物質、または放射線学的作用物質の存在を判定する前に、これらのレベルを現在の出力と比較する。テロリストの攻撃においては、正常なバックグラウンドノイズと比較したときに、現在の分析結果が少なくとも2倍またはそれ以上に上昇していると予測することができる。
【0082】
バックグラウンドノイズを定量することは実際的でないか不可能である。例えば、新しい標的とする作用物質の分析を導入する際には、標的とする作用物質の正常レベルが何であるかを決めるのに十分なデータが存在しない場合がある。これらの環境下では、自治体内の種々の標本領域、またはできれば地理的に様々な地域の標本領域からの出力を比較するのが有用である場合がある。標的とする作用物質のどれだけの量が正常であるかという知識がなくても、類似した性格を有する他の標本領域と比較したときの特定の地域からの分析結果が示す比較的大きな信号に注目することにより、化学的作用物質、生物学的作用物質、または放射線学的作用物質の存在を判定することができる。言い換えれば、汚染の勾配を検出することが異常状態の証拠を提供することになる。
【0083】
さらに、初期の分析結果と比較した、標的とする作用物質のレベルの上昇を検出するのに有用な本発明は、当然のことながら初期の分析結果と比較した標的とする作用物質の減少を検出するのにも用いることができることを理解されたい。例えば、自動化されたゴミ収集により集められた試料は、以前に安全でないと指摘された標本領域、例えば核の事件現場または化学物質の漏出現場において、正常な生活の準備を再開するために安全と判定するのに用いることができる。これらの試料判定は、標的とする作用物質の量を減少させるために、汚染地域において、独立した、または補助的な、特異的な分析であることができる。
【0084】
特定の分析技術が陽性の結果を示すと、直接的に、または上記の検討のように間接的に試料が採取された正確な位置が決定されるはずである。集中化された収集地点を含む実施態様においては、試料が選択される標本領域は、広い地理的地域を包含することができる。上述のように、この配置は標本領域に包含される地域からの試料を得るために、標本領域の採取地点から遠隔地に移動することを回避させる。化学的作用物質、生物学的作用物質、または放射線学的作用物質の存在を示す結果は、標本領域が包含する既知の地域のどこかに望ましくない要素が存在することを示す。予め定められたパターンにおいて、集中化した地点に物質を搬送するとすれば、例えばパターンもしくは経路中の位置に対する収集位置の相関性により、または標本領域中の後の収集の際の経路に沿った特定の収集地点からの試料の選別により、ホットスポットの正確な位置を推定することができる。
【0085】
例えば、特に予め定められた、跡をたどることが可能な経路を採用する実施態様においては、経路と分析された試料との間の物流情報の相関性(例えば、試料ロットの到着時間に基づいて試料がどこで採取されたかを決定する)により、ホットスポットの位置を特定することができる。他のより複雑な数学的モデルは、当業者が、予め定められた、跡をたどることが可能な経路および試料についての特別の要因に基づいてホットスポットの位置を系統的に決定する手段を提供する。
【0086】
本発明の一実施態様において、かかる数学的モデルは三角測量を含む。標本領域により包含される地域を三角形とすることができる。当技術分野で公知のアルゴリズムを使用することにより、高速処理装置の助けを借り、反復アプローチを用いて、標的とする作用物質についての陽性アッセイに関連する物流情報を入力することによってホットスポットの正確な位置を特定することができる。米国特許第3886553号、第4229740号、および第4799062号を含めた種々の特許および参照文献の教示に基づく、種々のその他のアルゴリズムが存在しうる。
【0087】
本発明の他の実施態様は、標的とする作用物質の陽性結果を適切に分析し、ホットスポットまたはドロップゾーンの位置を決定するために、現代の疫学的な追跡技術を利用する。現在の科学界の重大な関心分野である、これらの現代の疫学的方法の基礎は、John Snowの19世紀のロンドンにおけるコレラの大発生についての古典的な研究に見られる。http://www.ph.ucla.edu/epi/snow/snowbook.html.で閲覧可能な、On the Mode of Communication of Cholera, John Snow, 1855を参照されたい。
【0088】
本発明のその他の実施態様においては、試料中に特定の作用物質が存在することを示す陽性の結果が得られると、調査システムが結果を報告する。報告はその作用物質の検出に対する応答を導き出す。例えば、CDCまたは地方、州、および連邦法執行機関は、炭疽菌についての陽性分析プロトコルを満たしたことを自動的に知らされる。適切な詳述された応答が、分析において陽性と同定された特定の作用物質によることを当業者は理解するであろう。
【0089】
(調査システムの実施)
本発明の調査システムは定期的に試験することが望ましい。そのような試験を実施するために危険な物質を導入するのは適さない。本発明の一側面は、有害物質、例えば炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)を含む生物学的作用物質の調査のために非病原性のモデルを開発することを含む。本明細書で使用する場合、有害物質の調査には、試験の目的のための、危険な物質の代わりに用いる非病原性のモデルについての調査を含む。
【0090】
本発明の実施態様において、本発明の調査システムを試験し、最適化するためにバチルス属(Bacillus)の非病原性種、例えばバチルスグロビギBacillus globigiiを炭疽菌(Bacillus anthracis)のモデルとして用いる。
【0091】
本発明の別の実施態様は、炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)のモデルとして提供するため、土壌細菌バチルススリンギエンシス(Bacillus thuringiensis,subsp.kurstaki;Bt-01)を含む非病原性の土壌細菌バチルススリンギエンシス(Bacillus thuringiensis;Bt)の使用からなる。Btは世界中の土壌中に存在するありふれたグラム陽性の、胞子形成細菌である。Btは、広範な多くの昆虫の幼虫に有毒な細胞内タンパク質結晶(cryprotein)を産生し、殺虫剤として使用される。Btの殺虫剤としての使用に従う疫学研究は、ヒト、羊、またはラットの健康に危険または悪影響を与えないことを示している。このように、セレウス菌バチルスセレウス(Bacillus cereus)、枯草菌バチルスサブチリス(Bacillus subtilis)等の他の炭疽菌(Bacillus anthracis)の関連菌と異なり、Btは個体群に悪影響を与えることなく標本領域に導入することができる。
【0092】
本発明の別の実施態様においては、メラニンを産生する土壌細菌バチルススリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)の特有のUV耐性株(Bt-m)を炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)の代わりに使用する。Bt-mは2つのマーカー遺伝子--cryおよびmel遺伝子を含む。3から4個のcryタンパク質遺伝子を含む他のBt株と比較して、Bt-mはただ1つのcryタンパク質遺伝子を含む。cry遺伝子およびmel遺伝子は特異的なプライマーを用いてリアルタイムPCRにより同定することができる。Bt-mにより産生される暗褐色の色素は固有のフェノタイプの性質も示す。
【0093】
Bt-mはBt-01を254 nmのUVに曝すことによって得ることができ、ブレイン・ハート・インフュージョン(BHI)媒体(BD, Franklin Lakes, NJから入手可能)等の容易に入手可能な媒体を用い、実験室で発酵によって培養することができる。所望する大きさのBt-m胞子を、澱粉、ベントナイトラクトース、カゼイン等の種々の希釈剤、粘着剤および展着剤を使用して得ることができる。本明細書に援用するSexenaら、"A UV tolerant mutant of Bacillus thuringiensis subsp. kurstaki producing melanin", Current Microbiology, 44: 25-30 (2002) を参照されたい。
【0094】
Cryマーカー遺伝子は、(配列番号:1) 5'-GATGGAGGTAACCCATGGAGGAA-3'、および(配列番号:2) 5'-CTGGAGCTCAMTCMACTAAATTGGATAC-3' プライマー、およびユニバーサル(配列番号:3) 5'-CATGATTCATGGGCAGATAAAC-3'、および(配列番号:4) 5'-TTGTGACACTTCTGCTTCCCATT-3' プライマーを用いるPCR増幅により抽出されたDNAから同定される。Melマーカー遺伝子は、(配列番号:5) 5'-CCGGAATTCGTTTAGTACTTTCAGGGGTGTCT-3'、および(配列番号:6) 5'-CCGTGAGCTCCTGCAGTGCGGATSCGGTTGTTA-3' プライマーを用いて同定することができる。
【0095】
検出能力を増大させるため、Bt-m試料を一連のろ過工程を行うことにより、および約70〜80℃で約10〜20分間のヒートショック(大部分のグラム陰性菌を除去するため)により富化させることができる。代理の胞子はまた、本発明の調査システムの試験で使用するBt株中の緑色蛍光タンパク質(GFP)等の他の遺伝子マーカーをクローニングすることにより、さらに特異的に作製することができる。本発明の調査システムは、最適化され、試験の目的に応じて所望するレベルの識別を容易に行うことができる。
【0096】
Bt-mは公共の場所に富化した状態または前富化状態で散布することができる。Bt-mはランダムに散布するか、または選択した場所に導入することができる。Bt-mの検出は、例えば上述したプライマーを用いてリアルタイムPCRにより行うことができる。これらの胞子によるメラニンの生成は、例えば無菌BHIプレート上に試料をプレートすることにより判定することができる。
【0097】
〔実施例〕
本発明は以下の実施例により、よりよく理解することができるが、それらは本発明を説明するものであり、限定するものではない。
【0098】
(実施例1)
調査システムは、機械的な街路清掃機を用いて市街路からの破片を毎日機械的に収集する各トラックからの試料を評価する。毎朝、約500台の清掃車がニューヨーク市の衛生局の50以上の収集ステーションの1つを出発する。各清掃車は破片収集のための個別かつ予め定められた経路をもち、午前11時30分までには収集したゴミを空にするためステーションに戻る。空になった清掃車の収集容器を水スプレーで濯ぐ。この濯ぎによる一定量の液体は、明らかな検出およびDNAまたはRNAのシグネチャー配列(signature sequence)による同定が可能な十分な濃度の有害物質を含有する。分散パターンが、清掃車のルートと、2台以上の清掃車に存在する濃度を判定することによって生成され、攻撃の中心位置は分散パターンから推定する。次に汚染除去および生物学的封じ込め努力を目的として、確認のための試料採取およびより詳細な試料採取を行う。
【0099】
(実施例2)
試料を市街路からの破片の収集により収集された廃棄物の液体部分から採取することを除いて、実施例1の調査システムの条件を繰り返す。
【0100】
(実施例3)
調査システムは、米連邦裁判所からの廃棄された破片を収集する各ゴミ容器からの試料を評価する。予め定められた計画に従い、特定の地域からのゴミ収集容器を中心位置に運び、排出し、濯ぐ。濯いだ後、業務に戻る前に収集容器から水試料を採取し、炭疽菌(anthrax)の存在を分析する。次に確認の試料採取およびより詳細な試料採取を、汚染の除去および生物学的封じ込めを目的として行う。炭疽菌(anthrax)の存在を報告する場合、換気システムと接続している調査システムは、空気の循環を止め、裁判所内またはどこかの有害な作用物質の存在を確認するため、バイオハザードユニットを急送する。
【0101】
(実施例4)
土壌細菌バチルススリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)を炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)のモデルとして使用する。非病原性のバチルス(Bacillus)属を、早期検出および調査システムを試験するため、自治体全体に配置する。一般に、数グラムの適量のバチルス(Bacillus)を標本領域内の様々な場所、例えば街路清掃機がそれらのルートの一部として清掃する場所に配置する。本発明を実施する技術者には試験を知らせず、「発生」に対する彼等の応答を、品質管理を目的として記録する。このような試験は、本発明による炭疽菌(anthrax)検出のための試料採取、試料調製、および分析技術の精緻化をもたらす。
【0102】
(実施例5)
各地の大都市において、いくつかの組織が都市の美化を目的として手作業によるゴミの除去に携わっている。しばしば、このような活動は、電車、バス、フェリー、鉄道の駅、地下鉄の駅、および大量輸送の他の手段に焦点を絞っている。収集される品目は、たばこの吸いさし、飲料容器、食べかけの食物、身の回り用品、およびB型肝炎またはC型肝炎または天然痘などの有害物質を含有する可能性のあるその他のゴミを含む。これらの物質は、予め定められた計画に従って、廃棄用の中心地域に運ばれる。これらの物質からの拭き取り法(swab technique)によって試料を入手し、RTm-PCRを用いて炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)を分析する。
【0103】
(実施例6)
日々の巡回の後、街路清掃チャンバのチャンバから100 mLの液体を集め、炭疽菌を分析する。大きな粒子は1.2μMの多孔膜(Milipore Corp., Billerica, MA)を用いた吸引ろ過により液体から除かれる。1.2μMの多孔膜は70℃で低温殺菌し、増殖性の細菌を殺菌する。溶出液を別のチャンバに通し、0.22μMの膜でろ過する。0.22μMの膜を無菌の生理食塩水溶液で濯ぎ、可溶性の土、タンパク質および他の汚染物質を除く。0.22〜1.2μMの大きさの粒子を含有する得られたろ液を、約1mLの1/4力価のリンガー溶液に分散し、約70℃に10〜20分間加熱し、大部分の増殖性細菌および原生生物細胞を殺菌(低温殺菌)する。クリスタルバイオレットまたはメチレンブルーなどの生体染色色素を1mLの溶液に加え、試料中に存在するバチルス属の胞子(Bacillus spore)を選択的に染色する。1分後、細胞分散液を濯ぎ、約105-6のテトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformis)原生動物の純粋培養を含む、原生動物培養媒体中に分散させる。テトラヒメナ(Tetrahymena)は細胞分散液と接触後、約60分後から90分以内に遠心分離、ろ過、または走化性により集め、および米疾病対策センター(Center for Disease Control)により確立されたパラメータに従ったDNAの抽出のための溶解および処理を施す(Hoffmaster AFら、Evaluation and validation of a real-time polymerase chain reaction assay for rapid identification of Bacillus anthracis, Emerg Infect Dis., Vol. 8, 2002年10月.(URL: http://www.cdc.gov/ncidod/EID/vol8no10/02-0393.htmから入手可能)を参照されたい)。
【0104】
(実施例7)
鉄道の駅のフロアは機械的な床清掃機(例えば、フロアバッファ、Wilkco.com Inc., Casa Grand, AZから入手可能)で定期的に掃除する。機械的な床清掃機は、機械を通して再利用される液体洗浄溶液を使用する。液体洗浄溶液を廃棄する前に、試料を集め、実施例6に開示した分析技術により炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)をアッセイする。
【0105】
(実施例8)
土壌細菌バチルススリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)メラニン(Bt-m)は、Bt-01を254 nmのUVに繰り返し曝した後で単離した(本明細書に援用するSaxenaら、Current Microbiology 44: 25-39 (2002)を参照されたい)。Bt-mの細胞は、回転式振盪培養機中、250rpmにおいておよびNBS発酵槽、28℃、ブレイン・ハート・インフュージョン(BHI)媒体(BD, Franklin Lakes, NJ)中で育生した。胞子は48〜72時間後に放出され、顕微鏡観察により確認した。胞子形成の程度、即ち、熱ショック(70℃で10分間)後のコロニー形成単位(CFU)数対総生存数の比が90〜95%に達したとき、このバイオマスを収穫する。
【0106】
Bt-mは、本明細書に援用するDulmageら、J. Invertebrate Pathology 15: 15-20 (1970)、に記載されている方法に従い、ラクトース-アセトンを用いた沈殿によりバイオマスから単離する。Bt-mは凍結乾燥によっても単離する。培養体の純度は、例えば顕微鏡観察および12%SDS-PAGE Cryタンパク質分析により決定することができる。
【0107】
染色体およびプラスミドDNAを通常の方法により抽出する。PCR生成物の増幅およびcry遺伝子としてのそれらの大きさの同定は、(配列番号:1) 5'-GATGGAGGTAACCCATGGAGGAA-3'、および(配列番号:2) 5'-CTGGAGCTCAMTCMACTAAATTGGATAC-3' プライマー、およびユニバーサル(配列番号:3) 5'-CATGATTCATGGGCAGATAAAC-3'、および(配列番号:4) 5'-TTGTGACACTTCTGCTTCCCATT-3' プライマーを用いて行う。メラニン遺伝子は、(配列番号:5) 5'-CCGGAATTCGTTTAGTACTTTCAGGGGTGTCT-3'、および(配列番号:6) 5'-CCGTGAGCTCCTGCAGTGCGGATSCGGTTGTTA-3' プライマーを用いて同定する。リアルタイムPCRはCepheid SYBR Green PCRキット(Qiagen, Valencia, Cal.)により行う。
【0108】
(実施例9)
実施例8に記載されている方法によって得られるBt-mを、鉄道の駅に散布する。鉄道の駅のフロアの掃除に用いる機械的な床掃除機のブラシを定期的なメンテナンス計画により、水を用いて洗浄する。管理作業者はBt-mの放出について知らされない。洗浄水からの一定量について実施例8に記載されている技術を用い、CryおよびMelマーカー遺伝子を分析する。
【0109】
本発明は本明細書に記載された特定の実施態様により範囲を限定されない。事実、本明細書に記載した発明に加え、本発明の種々の変形は上記説明および添付の図面により当業者に明らかとなる。かかる変形は添付のクレームの範囲内を目的とする。
【0110】
さらに、すべての値は概略値であり、説明のために提供されたものであることを理解すべきである。
【0111】
特許、特許出願、公開公報、生成物の説明、および手順は本願の全体を通して引用され、それらの開示は、すべての目的についてその全体を本明細書に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の調査システムの実施態様のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本領域から収集された物質から得られた試料について、化学的作用物質、生物学的作用物質または放射線学的作用物質の存在を分析することを含む調査方法であって、前記標本領域が少なくとも1つの収集地点を含み、その地点から前記物質を調査に無関係な、既存の操作において収集する調査方法。
【請求項2】
前記標本領域が街路清掃車の経路を含む、請求項1に記載の調査方法。
【請求項3】
前記物質を予め定められた、跡をたどることが可能な経路で収集する、請求項2に記載の調査方法。
【請求項4】
前記試料について炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)の測定を行い、前記試料中にテトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformis)を入れる、請求項2に記載の調査方法。
【請求項5】
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RTm-PCR)を用いて、前記試料について炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)を分析する、請求項1に記載の調査方法。
【請求項6】
前記試料を街路清掃車から得る、請求項2に記載の調査方法。
【請求項7】
収集容器から試料を入手し、かつ前記試料を分析することを含む、請求項6に記載の調査方法。
【請求項8】
前記収集容器と連絡しているアッセイ装置を配置することを含む、請求項7に記載の調査方法。
【請求項9】
前記街路清掃車からの廃棄物を収集する収集容器を濯ぐことによって前記試料を入手する、請求項7に記載の調査方法。
【請求項10】
水で洗浄した収集容器から前記試料を入手する、請求項1に記載の調査方法。
【請求項11】
前記物質を予め定められたパターンで収集し、かつ中心位置に持っていく、請求項1に記載の調査方法。
【請求項12】
化学的作用物質、生物学的作用物質または放射線学的作用物質の存在の分析が、化学的作用物質、生物学的作用物質または放射線学的作用物質のレベルを、化学的作用物質、生物学的作用物質または放射線学的作用物質の正常なレベルと比較することを含む、請求項1に記載の調査方法。
【請求項13】
化学的作用物質、生物学的作用物質または放射線学的作用物質の前記正常なレベルがバックグラウンドノイズを含んでいる、請求項12に記載の調査方法。
【請求項14】
化学的作用物質、生物学的作用物質または放射線学的作用物質の前記正常なレベルを第2の標本領域から確定する、請求項12に記載の調査方法。
【請求項15】
化学的作用物質、生物学的作用物質または放射線学的作用物質の存在の分析が、それ以前の分析と比較した化学的作用物質、生物学的作用物質または放射線学的作用物質のレベルの増加を検出することを含む、請求項1に記載の調査方法。
【請求項16】
化学的作用物質、生物学的作用物質または放射線学的作用物質の存在の分析が、それ以前の分析と比較した化学的作用物質、生物学的作用物質または放射線学的作用物質のレベルの減少を検出することを含む、請求項1に記載の調査方法。
【請求項17】
化学的作用物質、生物学的作用物質または放射線学的作用物質の存在の分析が、前記試料中にテトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformis)を入れることを含む、請求項1に記載の調査方法。
【請求項18】
前記試料について炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)を分析する、請求項17に記載の調査方法。
【請求項19】
前記試料について土壌細菌バチルススリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)を分析する、請求項17に記載の調査方法。
【請求項20】
前記試料について土壌細菌バチルススリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)を測定する、請求項1に記載の調査方法。
【請求項21】
前記土壌細菌バチルススリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)がUV耐性である、請求項20に記載の調査方法。
【請求項22】
収集の完全性が保たれている、請求項1に記載の調査方法。
【請求項23】
収集容器内から試料を入手しかつ分析することを含む、請求項1に記載の調査方法。
【請求項24】
前記収集容器と連絡している分析装置を配置することを含む、請求項23に記載の調査方法。
【請求項25】
標本領域からの物質の収集に用いる手段を濯ぐことにより得られる破片または流体を含む試料を単離し、前記試料について化学的作用物質、生物学的作用物質または放射線学的作用物質の存在を分析する、調査方法。
【請求項26】
(a) 標本領域からの物質の収集に用いる手段を濯ぐことにより得られる破片または流体を含む試料を標本領域から単離すること(前記標本領域は、予め定めた、跡をたどることのできる経路を通る、定期的、系統的な物質の収集を含み、前記予め定めた、跡をたどることのできる経路は中心位置に合流している)、
(b) 前記試料について化学的作用物質、生物学的作用物質または放射線学的作用物質の存在をPCR技術、放射線検出技術、分光分析技術、または放射免疫測定技術を用いて分析し、
(c) 分析に基づいて結果を判定し、
(d) 結果を報告すること
を含む調査方法。
【請求項27】
収集の完全性が保たれている、請求項26に記載の調査方法。
【請求項28】
物質を調査に無関係な既存の操作により収集する収集地点から試料を得るための試料採取手段と、
標本領域からの試料中の化学的作用物質、生物学的作用物質、または放射線学的作用物質の存在を判定するための分析手段とを含む、化学的作用物質、生物学的作用物質または放射線学的作用物質の調査システム。
【請求項29】
テトラヒメナピリフォルミス(Tetrahymena pyriformis)を試料中に入れること、及び試料についてバチルス属(Bacillus)の胞子の存在を分析すること、を含む、試料中のバチルス属(Bacillus)の胞子の存在を判定する方法。
【請求項30】
バチルス属(Bacillus)の胞子が炭疽菌バチルスアントラシス(Bacillus anthracis)である、請求項29に記載のバチルス属(Bacillus)の胞子の存在を判定する方法。
【請求項31】
前記バチルス属(Bacillus)の胞子が土壌細菌バチルススリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)である、請求項29に記載のバチルス属(Bacillus)の胞子の存在を判定する方法。
【請求項32】
増殖性細菌を殺菌するのに有効な温度で、膜に前記試料を導くステップをさらに含む、請求項29に記載のバチルス属(Bacillus)の胞子の存在を判定する方法。
【請求項33】
増殖性細菌を殺菌するのに有効な温度が約70℃〜約80℃である、請求項32に記載のバチルス属(Bacillus)の胞子の存在を判定する方法。
【請求項34】
バチルス属(Bacillus)の胞子より大きなポアサイズを有する第1の膜、およびバチルス属(Bacillus)の胞子より小さなポアサイズを有する第2の膜に試料を導く、請求項29に記載のバチルス属(Bacillus)の胞子の存在を判定する方法。
【請求項35】
前記第1の膜および/または前記第2の膜が増殖性細菌を殺菌するのに有効な温度である、請求項34に記載のバチルス属(Bacillus)の胞子の存在を判定する方法。
【請求項36】
増殖性細菌を殺菌するのに有効な温度が約70℃〜約80℃である、請求項35に記載のバチルス属(Bacillus)の胞子の存在を判定する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−525168(P2007−525168A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509668(P2006−509668)
【出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/010310
【国際公開番号】WO2004/090501
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(594032322)ニューヨーク・ユニバーシティ (34)
【氏名又は名称原語表記】New York University
【Fターム(参考)】