説明

生理学的液体、特に血液のための遠心分離機

生理学的液体、特に血液のためのこの遠心分離機は、剛性の使い捨て遠心分離室(1)に分離すべき液体を連続的に供給するための固定された導管(3)と、最も低い密度を呈する少なくとも1つの分離成分を連続的に抽出するためにこの分離成分の濃縮領域中にその流入開口部が位置している固定された流出導管(9)と、これらの導管(3,9)は前記室(1)の固定部分(4)と連動しており、前記室(1)の回転誘導手段(21)と、これらの誘導手段(21)により定義される回転軸線周りでの前記室の駆動手段(20)とを含む。この分離機は、最も高い密度を呈する少なくとも1つの分離成分を連続的に抽出するためにこの分離成分の濃縮領域中にその流入開口部が位置している第2の固定された流出導管(8)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理学的液体、特に血液のための遠心分離機に関し、この遠心分離機は、剛性の使い捨て遠心分離室に分離すべき液体を連続的に供給するための固定された導管と、分離成分を連続的に抽出するために分離成分の2つの濃縮領域中にそれぞれの流入開口部が位置している2つの固定された流出導管と、これらの固定された導管は前記室の固定部分と連動しており、前記室の回転誘導手段と、前記室の底部と連動する軸方向連結部材と係合する駆動、支持および誘導手段と、該駆動、支持および誘導手段に対する前記室の固定部分の位置決め手段とを含む。
【背景技術】
【0002】
遠心室が使い捨て部材によって構成され、半連続的に動作するこのタイプの分離機はすでに知られている。その結果、分離機の利点の評価において検討される要素中、その分離性能に加え、処理された血液の平均流量および消耗品のコストが2つの重要な要因になる。性能に関しては、溶血および活性化の割合がもう1つの重要な要因であり、これは特に、血液成分、とりわけ赤血球および血小板に加えられる力、ならびにこれらの成分を他の血液成分から分離するための力をこれらの成分が受ける期間によって変わる。この期間が低減されればされるほど、溶血の割合がより減少する。従って、比較的強い力が短期間に加えられ得るのに対して、ずっと小さい力がより長い時間にわたり加えられた場合、その力は、より高い割合の溶血を引き起こす。その結果、知られている遠心室は、比較的大きい容積を有し、遠心室中での血構成分の滞留時間を増大させ、従って溶血の割合を増大させる。
【0003】
消耗品のコストは、とりわけその容積に関連し、この容積は、分離設備の外形寸法、従ってそのコストも直接的に決定する。
【0004】
及ぼされる力は、分離室の回転速度および半径に依存する。
【0005】
多くの場合、現行の分離機は、比較的大きい直径の遠心ボウルまたはキュベットを利用し、この直径は、ボウルまたはキュベットの軸方向寸法よりも大きいことが非常に多い。
【0006】
半連続的に動作するいくつかの血漿瀉血用遠心分離機は、米国特許第4,300,717号に開示される原理を利用しており、遠心ボウルはベル状体により形成されており、分離中の血液の流れは中央コアとベル状体の側壁との間に生じ、赤血球はベル状体とコアとの間に保持されるのに対して、血漿は、ベル状体の頂部に位置する出口から排出される。
【0007】
欧州特許第0608519号において、この同じ原理が用いられたが、中央コアが省かれている。
【0008】
上述の分離機において、遠心ボウルは、正確に誘導されておらず、その結果、回転シールは、気密性を保証できるだけでなく、回転軸線周りで10分の数mmになり得る遠心室の偏心も補償できるように設計されなければならない。赤血球が遠心ボウル中に蓄えられる半連続的に動作するシステムという背景の下では、この偏心は許容できる。
【0009】
連続動作する分離機のうち、大部分は、分離すべき血液の供給およびその分離成分の排出のために可撓性チューブを利用している。とくに、米国特許第5,750,025号、米国特許第5,350,514号または米国特許第5,628,915号を挙げることができる。2つのケースでは、使い捨て分離室は、剛性の回転支持体上に導入されることを目的とする可撓性バッグにより形成される。複数の可撓性導管を備えたそのようなバッグをこの支持体上に設置することは、長くかつ微妙な操作である。
【0010】
このタイプの遠心分離機において、遠心分離室の回転がこの室への可撓性導管の固定に与える影響を無効にするために利用されるシステムは、米国特許第3,586,413号に開示されている。このシステムは、一方の端部が速度2ωで回転する遠心分離キュベットの軸線と回転連動するのに対して、オープンループが速度ωで駆動されるのに、第1の端部と共軸な他方の端部が固定されるオープンループを形成することにより、可撓性チューブをそれ自体の軸線周りで速度−ωで回転させ、このようにして可撓性チューブのあらゆるねじれを無効することを可能にする。
【0011】
可撓性チューブと回転部材との間のどのようなシールも省くことを可能にするこの原理は、連続流で動作する多くの遠心分離装置において広く採用されてきた。すなわち、固定された供給および排出チューブを備える遠心分離機と反対に、分離成分は、それらの接線速度の急激な減速を受けず、その結果、溶血のリスクが低減される。
【0012】
しかしながら、遠心分離機における回転部材の速度を考慮して、速度−ωで回転する可撓性チューブは、遠心力により引き起こされる引っ張り応力、−ωで回転するオープンループを形成するチューブの部分の回転に起因する曲げ応力、ならびに上記の曲げに起因する材料中の粘性力により引き起こされる発熱を受ける。ところで、血液の遠心分離の場合、温度は>40°であってはならない。
【0013】
従って遠心分離キュベットの回転速度は制限され、その結果、このキュベットの直径は、分離品質を損なわないようにあまりに小さくすることができない。さらに、キュベットおよび可撓性チューブの駆動機構は、比較的複雑かつ高価である。
【0014】
特開平09−192215号および欧州特許第0297216号において、剛性円錐形遠心分離機も提案されており、分離成分の供給および排出は、キュベットの上部軸方向開口部中に係合された固定導管により実現される。このキュベットは、摩擦によって駆動され、軸方向開口部を備えた駆動ディスクにより誘導され、この開口部中にキュベットの底部から突出する円筒形部材が係合する。ベローズ形状の滑動シールが、固定された導管と円錐形キュベットの頂部との間に配設されている。欧州特許第0297216号がキュベットの上部の誘導装置を全く備えていないのに対して、特開平09−192215号において、キュベットの頂部の円錐形表面に支承されるのは滑動シール保護キャップの縁部である。
【0015】
独国特許第19822191号において、遠心分離キュベットを、摺動リングと連動している3つのローラにより誘導することが提案され、これらのローラのそれぞれの軸線は、キュベットの回転軸線の円錐形誘導表面と平行である。摺動リングは、キュベットの回転軸線と平行な円筒形表面によって誘導される。誘導ローラの軸方向移動は一般に、これらの室の上端の軸方向開口部を貫通する固定された導管と関連した遠心室に対する適切な解決策にならない。さらに、滑動リングと連動するローラを円錐形誘導表面に対して適用されたまま保持するための用意が全くなされておらず、その結果、室の回転は、摺動リングの軸方向移動を引き起こすことがあり、かくして遠心室の正確な誘導を保証しない。
【0016】
従って、現行の解決策は、処理すべき血液が最小限の時間その中に留まり、良好な流量で動作できる、単純でかさばらず、使用が容易で安価な使い捨て遠心分離室と共に作動する分離機の要求に十分に応えることができないことが認められる。
【0017】
このようなわけで、上記の要求に、より十分に応えることができるように、分離機の概念を再検討することが必要になった。
【0018】
本発明の目的は、上記の欠点を、少なくとも部分的に、改善することである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0019】
そのために、本発明は、請求項1に記載の遠心分離機を目的とする。
【0020】
この遠心分離機の利点は、固定された導管を用いて連続流で動作することであり、このことは、赤血球および血小板が遠心室から導管に入る際に赤血球および血小板にあまりに急激な減速をかけないように、接線力がある一定の限界を越えない限り許容できる。
【0021】
以前に述べたように、赤血球または血小板が受ける力は、溶血または活性化の唯一の要因ではない。これらの血液成分が、低いとしても力を受ける期間が、溶血または活性化のもう1つの要因である。
【0022】
このような理由により、好ましくは、本発明の目的である分離機は、使い捨てタイプの遠心室の正確な誘導を可能にする。このタイプの室は、剛性プラスチック材料製でなければならない。「剛性」は、分離機の駆動および誘導手段により直接的に駆動および誘導されることができ、室が受ける遠心力に耐え得ることを意味する。そのような室の正確な誘導を達成できるためには、プラスチック材料の固有の収縮および成形型の公差に起因する誤差に極力依存しないようにする必要がある。すなわち、すべてのプラスチック材料は、その冷却時に収縮を受け、その結果、収縮は部品の寸法に比例するので、大きい直径で加工すればするほど、誤差が増大することが分かっている。
【0023】
遠心室の連続供給および排出のために固定された導管を用いる場合に、もう1つの要因が考慮されるべきである。固定された供給および排出部分と室の遠心回部分との間に摩擦シールを有する室を利用しなければならない。従って、発熱を低減するために極力小さい直径で加工するのが有利である。シールの唯一の機能が気密性の保証であって、固定された供給および排出導管を備えた従来の遠心室の場合のようには、誘導の不正確さに起因する誤差がもはやない限り、シールが受けなければならないプレストレスを最小限に低減することも可能になる。
【0024】
遠心分離機における遠心室の正確な誘導により、連続流分離の場合、遠心室の壁上の非常に薄い厚さの液体で動作すること、従って液体の滞留時間を減少させることが可能になり、かくして血液成分が分離力を受ける期間、従って溶血および血小板の活性化のリスクが低減される。
【0025】
遠心室の2つの軸方向誘導装置間の軸方向距離が好ましくは大きいだけに、この誘導は、ますます正確であろう。従って、好ましくは、遠心室の直径の低減および遠心室のより高速な回転を有益に想定することができる。これは、遠心室を、一方では単に駆動モータのシャフトに寄りかかっているその底部を介した、他方では、誘導ローラと係合する、遠心室の直径よりもかなり小さい直径のその上部誘導表面を介した遠心室の軸方向誘導により可能になる。この正確な誘導および小さい直径の使用により、回転シールのレベルでの発熱を低減することが可能になる。遠心室の直径は、有利には小さくすることができる。なぜならば、遠心室がより高速で回転できるからである。その結果、その容積、従ってその価格は、遠心分離機の寸法および外形寸法と同様に大きく減少し得る。
【0026】
固定された導管を備える遠心室および遠心室の正確な誘導に基づく新規な概念により、、可撓性の回転導管を備えるでこのタイプの通常の分離機よりもずっとかさばらない連続流式遠心分離機を案出することが可能になることが上記から分かる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
添付の図面は、本発明による離機の1つの実施形態を、概略的かつ例として示す。
【0028】
本発明による装置を利用することを目的とし、図1に概略的に例示される遠心分離機のハウジングは、管状の2つの細長い遠心分離室1、2を含む。第1の管状遠心分離室1は、遠心分離室1の固定された軸方向の流入および流出部材4に接続された供給導管3を含む。この供給導管3は、生理学的液体、特に血液の連続的な流れを保証するために互いに位相を180°ずらされた2つのポンプ6および7を含むポンプ装置5に連結されている。空気検出器10が供給導管3に沿って設置されている。
【0029】
密度が異なる、生理学的液体の2つの成分の連続的流出を可能にするために、2つの流出導管8および9が、固定された軸方向の部材4と接続されている。血液の場合、流出導管8は、濃縮された赤血球RBCの流出を目的とし、導管9は、多血小板血漿PRPの流出を目的とする。この流出導管9は、バルブ11を備え、2つの枝管9a、9bに分かれる。枝管9aは、濃厚血小板を回収するために用いられ、バルブ12によって制御される。バルブ11および12は、室1から室2にPRPを通過させるか、濃厚血小板を室2から流出枝管9aに移すかの排他的OR論理で作動する。枝管9bは、2つのポンプ14および15を含むポンプ装置13にPRPを導くために使用され、これらのポンプは、位相を180°ずらされており、第2の管状遠心分離室2の固定された軸方向の部材17に接続された供給導管16を介して第2の管状遠心分離室2への連続的供給を保証するために使用される。貧血小板血漿PPPのための流出導管24も、固定された軸方向の部材17に接続されている。
【0030】
図2は、管状遠心分離室1の駆動および誘導の態様を表す。管状遠心分離室の駆動および誘導部材の全体は、サイレントブロック(silentbloc)タイプの防振サスペンション19により遠心分離機のケーシングに接続された同じ支持材18上に位置する。支持材18は垂直壁部を有し、この壁部の下端は、駆動モータ20が固定されている支持水平アーム18aで終端している。このモータ20の駆動軸20aは、管状遠心分離室1の底部の下方に突出する小さい管状部材1a中に設けられた軸方向凹部と相補的な、Torx(登録商標)輪郭のような、多角形状を呈する。モータ20の駆動軸と管状部材1aとの連結は、遠心分離室1のこの端部の極めて正確な誘導を保証するために非常に高い精度で実現されなければならない。
【0031】
管状遠心分離室1の上端は、管状遠心分離室1の直径よりもかなり小さい直径の円筒形の軸方向誘導部材1bを備え、その上面が突出している。この部材1bの円筒形面は、特に図3において見られる3つのセンタリングローラ21と係合することを目的とする。これらのローラ21のうちの1つは、アーム22と連動し、このアームの一端は、支持材18の上部水平部分18bに枢着されている。このアーム22は、図3を参照すれば、このアームを時計回り方向に回転させようとするトルクをこのアームに伝えることを目的とするばね(図示せず)または他の適切な手段の力を受け、その結果、このアームは、軸方向誘導円筒形部材1bの円筒形面に対し弾性的に当接し、管状遠心分離室は、アームを時計回りと反対方向に枢動させることにより、支持材18への設置および取り外しを行うことができる。アームに関連したばねの過剰なプレストレスを持つことを回避するために、アームのローラ21が円筒形の軸方向誘導部材1bの円筒形表面に当接する位置に対応するアーム22の角位置のロック装置が設けられる。
【0032】
円筒形の軸方向誘導部材1bと管状室1の上端との間の範囲は、センタリングローラ21と協働して、モータ20の駆動軸と管状室1の底部下方に突出する管状部材1aの軸方向凹部との切り離しを防止する軸方向止め具として用いられる。
【0033】
有利には、3つのローラのそれぞれの回転軸を通る、管状遠心分離室1の回転軸と共軸な円に接するそれぞれの平面において、誘導ローラ21の回転軸を、ローラの回転方向に応じて選ばれる方向に数度、すなわち<2°傾斜させることも可能であり、その場合、ローラは、管状室1に下向きの力をもたらす。
【0034】
管状遠心分離室の固定された軸方向の流入および流出部材4のセンタリングおよび取り付け用弾性部材23は、支持材18の水平上部18bと連動している。この部材23は、半円形の2つの対称的な弾性分岐を有し、これらの分岐は各々、外側に向けて曲げられた部分で終端しており、この曲げられた部分は、固定された軸方向の流入および流出部材4を弾性分岐の間に側方から導入する際に、これらの弾性分岐を互いに離間することを可能にする力をこれらの弾性分岐に伝えることを目的とする。
【0035】
認められるように、管状遠心分離室1の固定および回転部品のすべての位置決めおよび誘導部材は支持材18と連動しており、その結果、精度は支持材18それ自体の精度によって決まり、支持材は、製造が複雑な部品ではないだけに、非常に小さい公差で製造できる。高い精度の保証に寄与する他の要因は、遠心分離室の細長い管形状による、下部ガイドと上部ガイドとの間の比較的長い距離である。最後に、小さい直径の円筒形誘導表面1b上で作用することにより、一方では、機械加工された部品の場合とは反対に、遠心分離室1、2が製造される射出プラスチック材料の、寸法に比例する収縮に起因する誤差を低減し、他方では、真円度誤差を低減することが可能になる。
【0036】
管状遠心分離室のこの誘導精度により、この遠心分離室の側壁上に非常に薄い流れを形成することが可能になる。これにより、室中に滞留する小さい容量の液体を有することが可能になり、このことは、溶血のリスクおよび血小板活性化のリスクを低減することができる要因であり、このリスクは、確かに加えられる力に応じて決まるが、血液成分がこれらの力を受ける時間によっても決まる。かくして、力の閾値を固定することはできない。なぜならば、所与の力について、溶血のリスクは、特定の期間について事実上ゼロであり得るのに対して、同じ力であるが著しくより長い期間については、ずっと大きいことがあり得るからである。
【0037】
好適には、管状遠心分離室は、10〜40mm、好ましくは22mmの直径を有し、5,000〜100,000回転/分の回転速度で駆動され、その結果、液体が受ける接線速度は26m/秒を越えない。管状遠心分離室の軸方向長さは、40〜200mm、好ましくは80mmである。そのようなパラメータにより、管状室内における5〜60秒、好ましくは15秒の液体滞留時間に対応する20〜400ml/分(特に透析について)、好ましくは60ml/分の液体流量を保証することが可能になる。
【0038】
説明されたばかりの遠心分離機と組み合わされることを目的とする管状遠心分離室1の設計をより詳細に今から検討する。管状遠心分離室1の寸法、駆動、位置決めおよび誘導についての上記の記載において説明されたすべてのことが、管状遠心分離室2にも同様にあてはまることをここで明言することができる。それに反して、PPP用の出口24を1つしか有していない後者の管状遠心分離室は、内部の設計が管状室1よりも単純である。
【0039】
図4により例示されるように、管状室1は、互いに溶着されたそれぞれの環状フランジ1c、1dにより終端する2つの部分から作製される。室の内部空間は、この室の本質的に円筒形の壁により画定される。固定された軸方向の流入および流出部材4は、円筒形の軸方向誘導部材1bを通って設けられた軸方向開口部を介してこの管状室1に入り込んでいる。回転駆動される室と連動するこの軸方向開口部と、固定された軸方向の部材4との間の気密は、環状シール25により実現され、この環状シールの1つのセグメントは、この固定された軸方向の流入および流出部材4の円筒形部分に固定されている一方で、もう1つのセグメントは、円筒形の軸方向誘導部材1bの環状空間26内に導入されかつ、円筒形の軸方向誘導部材1bを貫通する軸方向開口部を環状空間26から離間する管状壁27の凸状表面に当接する。この密封は、遠心分離室中に含まれる液体の無菌状態を守るために用いられる。この図4において例示されるように、管状壁27に当接する管状シール27の部分は、密封を確実に行うためにわずかな半径方向変形を受ける。
【0040】
管状シール25が摩擦する直径が小さく、好ましくは、<10mmであり、その結果、発熱が許容できる値に制限されることが認められる。管状遠心分離室について上記で与えられた考え得る寸法によれば、この室の上部および下部のセンタリングおよび誘導手段の間の軸方向距離が、軸方向円筒形部材の直径の5倍を上回ることが認められる。管状室1が誘導される精度および固定された軸方向の流入および流出部材4の相対的位置決めが達成できる精度を考慮して、シールは、半連続的フローで動作する従来技術の上記の装置の場合のように、回転する管状室1の同心性欠陥を補償する必要が事実上ない。これは、回転管状シール25の発熱の低減にも寄与し、従って、管状遠心分離室の回転速度を増大させることを可能にする。
【0041】
固定された軸方向の流入および流出部材4は管状部分3aを備え、この管状部分は、この固定された軸方向要素と接続された供給導管3を管状遠心分離室1の底部近傍まで延設して、分離されるべき血液または他の生理学的液体をそこに導く。
【0042】
固定された軸方向の流入および流出部材4に接続された流出導管8および9は各々、軸方向セグメント8a、9aをそれぞれ備え、この軸方向セグメントは、管状室内に入り込み、管状遠心分離室1の上端近傍に位置する固定された軸方向の流入および流出部材4の部分に通じている。これらの流出導管8a、9a各々の流入端部は、円形スロットで形成される。これらのスロットの各々は、固定された軸方向の流入および流出部材4と連動する2つのディスク28、29および30、31の間にそれぞれ設けられる。
【0043】
この例では、ディスク28、29の縁部と室1の側壁との間の半径方向距離は、ディスク30、31の縁部とこの同じ側壁と間の半径方向距離を下回る。この配置により、赤血球RBCより密度が低い多血小板血漿PRPは、ポンプ装置13(図1)により流出導管9中に吸引されるのに対して、赤血球は、遠心力により液体中に生成される圧力勾配により流出導管8中に吸引される。
【0044】
認められるように、ディスク28〜31が位置するPRPおよびRBCの流出領域に位置する管状遠心分離室1の部分の直径は、PRPおよびRBCの分離流出を容易にするためにPRPおよびRBCの層のそれぞれの厚さを増大させるように、この管状室1の残部の直径よりも若干大きい。
【0045】
隣接するディスク29と30との間にデッドスペースが設けてある。このデッドスペースは、密度がRBCの密度と血小板の密度との間にあるがサイズがRBCおよび血小板のサイズよりも非常に大きい白血球を捕集する役割を有する。ディスク30は、血漿から白血球を分離し、ディスク29および30の間のデッドスペースにおいて白血球しか捕集しないことを可能にするフィルタ30aを含む。
【0046】
図5により例示される管状遠心分離室の第2の実施形態は、主として障壁32の存在により図4のものと異なる。この障壁は、ディスク30および31の間に設けられたPRPの円形流入開口部に面して位置する円筒形部分32aを備える環状形を呈する。この円筒形部分32aの直径は、RBCおよびPRPにより形成される層間の境界面の直径にほぼ対応する、ディスク28、29の縁部を室1の側壁から隔てている空間中に位置するように選ばれる。この円筒形部分32aの2つの端部は、平坦リング32b、32cにより終端する。平坦リング32bが円筒形部分32aの外側に延びているのに対して、平坦リング32cは、この円筒形部分32aの内側に延びている。外側平坦リング32bは、環状フランジ1dの凹部に収容され、2つの環状フランジ1cおよび1dの間に挟持される。この外側平坦リング32bはまた、RBCの通過を可能にするために複数の開口部32dによって貫通されている。
【0047】
この障壁32には果たすべき3つの役割がある。1つの役割は、流入開口部のレベルにおいて吸引により引き起こされた渦がRBCおよびPRPを再混合するおそれを回避するように、ディスク30および31の間に位置するPRPの円形吸入開口部とRBCとの間に物理障壁を作り出すことである。第2の役割は、血漿と同じ直径上でRBCを集めることができるようにすることであり、これにより溶血が減少される。その理由は、RBCの流出開口部を形成するディスク30、31の縁部がRBC層中により浅く浸漬しているからである。なぜならば、すべてのディスク28〜31が同じ直径だからである。最後に、第3の役割は、白血球を障壁32の円筒形部分32a中に少なくとも部分的に留めることである。
【0048】
この第2の実施形態によるこの管状遠心分離室1の残部は、説明されたばかりの第1の実施形態と事実上同様である。ディスク29および30の間の白血球を捕集するために、図4のフィルタ29aに類似した白血球除去フィルタを同様に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】1つの実施形態の正面図である。
【図2】図1の部分斜視図である。
【図3】図2を上から見た図である。
【図4】遠心室の第1の実施形態のより大きな縮尺の軸方向部分断面図である。
【図5】遠心室の第2の実施形態の、図4と同様な図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的液体、特に血液のための遠心分離機であって、剛性の使い捨て遠心分離室(1)に分離すべき液体を連続的に供給するための固定された導管(3)と、分離成分を連続的に抽出するために分離成分の2つの濃縮領域中にそれぞれの流入開口部が位置している2つの固定された流出導管(8,9)と、これらの固定された導管(3,8,9)は前記室(1)の固定部分(4)と連動しており、前記室(1)の回転誘導手段(21)と、前記室(1)の底部と連動する軸方向連結部材(1a)と係合する駆動、支持および誘導手段(20a)と、該駆動、支持および誘導手段に対する前記室(1)の固定部分の位置決め手段(23)とを含み、他方で、前記室の上端と連動する前記回転軸線と共軸な円筒形表面と係合する回転誘導手段(21)を含むことを特徴とする、分離機。
【請求項2】
前記遠心室(1)は、チューブ形状であり、10mm〜80mmの直径を有し、前記遠心室が駆動される速度は、前記成分にかかる接線速度が26m/秒を下回るように、3,000〜100,000回転/分である、請求項1に記載の分離機。
【請求項3】
一方で、前記室(1)の底部と連動する軸方向連結部材(1a)と係合するように成型された、前記室(1)の回転軸線と共軸な、駆動、支持および誘導軸(20a)を備え、他方で、前記室(1)の上端と連動する円筒形表面(1b)と係合するために、前記回転軸線周りに、該回転軸線から等距離に配分された少なくとも3つの誘導回転ローラ(21)を備え、該誘導回転ローラ(21)の1つが前記室(1)の導入および取り外しを可能にするために、前記回転軸線から離間され得るように取り付けられている、請求項1又は請求項2に記載の遠心分離機。
【請求項4】
回転誘導ローラ(21)が係合する円筒形表面(1b)は、遠心室の直径よりもかなり小さい直径を有する、請求項3に記載の分離機。
【請求項5】
前記室の底部に向けられた、前記室の上端と連動する前記回転軸線と共軸な回転表面と係合するための前記回転誘導手段(21)の側面は、前記室の軸方向移動の自由度を制限するための前記室(1)の支持部に隣接している、請求項1に記載の分離機。
【請求項6】
少なくとも1つの前記誘導シリンダ(21)の枢軸が、前記室(1)の回転軸線上に中心を置かれた円に接する面内で<2°の傾斜を呈する、請求項3に記載の分離機。
【請求項7】
前記駆動軸(20a)の駆動および誘導末端と、前記誘導シリンダ(21)との間の軸方向距離が、誘導シリンダ(21)を前記遠心室(1)の回転軸線から離間する距離の少なくとも5倍である、請求項1に記載の分離機。
【請求項8】
前記駆動、支持および誘導手段(20a)ならびに前記回転誘導手段(21)が、防振サスペンション(19)を介して分離機のフレームに連結された共通支持材(18)と連動する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の分離機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−528065(P2008−528065A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551528(P2007−551528)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000048
【国際公開番号】WO2006/079237
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(507248804)
【Fターム(参考)】