説明

生産システム

【課題】ワークを把持したロボットが複数の処理装置間を順次移動してワークを製品化する生産システムにおいて、ロボットと処理装置との間のワークの授受位置を自動で効率的に取得可能とし、システムのフレキシビリティの向上を図る。
【解決手段】処理装置4は、指向性のある無線の通信部41を備え、ロボット3は、処理装置4の通信部41との間で相互に通信する指向性のある無線の通信部31と、処理装置4上の所定の特徴点42を撮像して位置認識を行う画像処理部(CCDカメラ32a)と、ハンド部33と、を備え、ロボット3は、相互の通信部31,41を用いて処理装置4に対する位置関係を検出し、その検出の後に、画像処理部を用いて特徴点42を認識することにより処理装置4に対する精密な位置関係を検出し、これに基づいてワークの授受位置を取得する。2段階の位置検出により、狭いカメラの撮像範囲で精度良く効率的に位置を取得できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを把持したロボットが複数の処理装置間を順次移動してワークを製品化する生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロボットを移動させる搬送手段を備え、搬送手段によるロボットの移動範囲内に加工、組立、検査などを行う複数の処理装置を配置し、ロボットが部品や仕掛品(総称してワーク)を把持して移動することにより生産工程を実現する生産システムがある。各処理装置は、通常、加工、組立、検査などの単一工程ごとに機能を特化した専用機の構成とされる。さらに、ロボットを含む搬送手段と各処理装置(専用機)とが互いに分かれた構成とされていることにより、生産対象が変更されて工程に変更を加える場合に、処理装置の差し替えや生産システムの組み換えを容易かつフレキシブルに行うことができる。しかしながら、搬送手段によって移動するロボットと処理装置との間のワークの授受を実現するには、ロボットの移動停止位置、ロボットハンドの位置および姿勢を、ミリ単位以下の精度で教示する必要がある。この教示作業は、処理装置の配置換えのたびに行う必要があり、また、人手によると煩雑で時間のかかる作業であるので、生産システムのフレキシビリティを阻害する要因となる。ところで、教示作業の煩雑さを軽減するため、CCDカメラなどの視覚センサを用いてワーク等の画像を取り込み、画像処理によってワーク等の位置座標を取得してロボットに作業を行わせる生産システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。画像処理を用いる方法は、ワーク等の位置座標や姿勢情報の取得に限らず、処理装置の位置検出にも用いることができるので、その検出結果を搬送手段によるロボットの停止位置やロボットの教示点にフィードバックすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−228866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した画像処理だけによって停止位置を検出しようとすると、カメラの撮像範囲と画素数との兼ね合いにより、必ずしも効率的に位置決めできるとは限らず、使い勝手が良くなるとも限らない。例えば、CCDカメラなどの一定の画素数のもとで、処理装置上の位置認識用のマークなどの特徴点をカメラの撮像範囲に含ませるには、カメラの位置、従ってロボットの位置を移動させて特徴点を探索する必要がある。このような探索を、各処理装置ごとに、画像処理に基づいて行えば、たとえ自動で行えるとしても、時間がかかりすぎることは問題である。
【0005】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成により、ロボットの移動順路に沿って配置された処理装置に対するワークの授受位置を自動で効率的に取得でき、システムのフレキシビリティの向上を実現できる生産システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、本発明の生産システムは、搬送手段によって移動するロボットがワークを把持して複数の処理装置間を順次移動すると共に処理装置に対してワークの授受を行い、各処理装置がワークに処理を行ってワークを製品にする生産システムにおいて、処理装置は、指向性のある無線の通信手段を備え、ロボットは、処理装置の通信手段との間で相互に通信する指向性のある無線の通信手段と、処理装置上の所定の特徴点を撮像して位置認識を行う画像処理手段とを備え、ロボットは、相互の通信手段を用いて処理装置に対する位置関係を検出し、その検出の後に、画像処理手段を用いて特徴点を認識することにより処理装置に対する精密な位置関係を検出し、これに基づいてワークの授受位置を取得することを特徴とする。
【0007】
この生産システムにおいて、各処理装置の通信手段は、隣接する処理装置の間隔が狭いほど指向性が狭いことが好ましい。
【0008】
この生産システムにおいて、ロボットは、相互の通信手段を用いて授受位置を取得する際に、通信手段を用いて通信対象の処理装置の種類情報を取得することが好ましい。
【0009】
この生産システムにおいて、取得された授受位置および種類情報を表示する表示装置を備えることが好ましい。
【0010】
この生産システムにおいて、相互の通信手段は、ロボットと各処理装置との間の制御用の通信に用いられることが好ましい。
【0011】
この生産システムにおいて、ロボットは、予め各処理装置ごとに設定された制御プログラムを備えており、予め設定された工程順に処理装置間を移動し、各処理装置に対して制御用の通信を行うと共に制御プログラムに基づいてワークの授受を含む動作を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の生産システムによれば、ロボットと処理装置の間の位置関係の検出を、無線の通信手段を用いて行った後、画像処理手段を用いてより精密に行うので、処理装置上の特徴点を画像で探索する時間を短縮でき、ワークの授受位置を自動で効率的に取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る生産システムについてのブロック構成図。
【図2】(a)は同システムの一部を具体例で示す平面図、(b)は同側面図。
【図3】(a)はロボットが位置検出のため処理装置に接近している状態を示す平面図、(b)はロボットが処理装置に正対している状態を示す平面図、(c)はロボットが処理装置から離れた状態を示す平面図。
【図4】(a)はロボットが処理装置に正対している状態を示す平面図、(b)はロボットが画像処理手段を用いて処理装置の特徴点を認識する様子を示す平面図。
【図5】ロボットが処理装置に対するワークの授受位置を相互の通信手段を用いて取得するために行う処理のフローチャート。
【図6】同システムの変形例における処理装置の平面図。
【図7】(a)は第2の実施形態に係る生産システムのロボットと処理装置との間の通信の様子を示す側面図、(b)は同通信の内容を説明するための図。
【図8】同システムの第1の変形例を示す平面図。
【図9】同システムの第2の変形例におけるロボットと処理装置との間の通信の内容を説明するための図。
【図10】同システムの第3の変形例を示すブロック構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る生産システムについて、図面を参照して説明する。図1乃至図5は第1の実施形態に係る生産システムを示す。参照された図は、後述の説明において適宜参照される。生産システム1は、図1、図2に示すように、搬送装置2(搬送手段)と、搬送装置2によって移動するロボット3と、ワーク(部品、仕掛部品、製品などの処理対象の総称)に対して処理を行う複数の処理装置4と、を備えている。搬送装置2は、制御部20と、記憶部21と、搬送機構22と、を備えている。制御部20は、所定のプログラムおよびロボット3からの制御信号に基づいて、搬送機構22を制御してロボット3の移動および停止を制御する。記憶部21は、ロボット3の現在位置やロボット3の動作情報などを記憶する。搬送機構22は、ロボット3をガイドするガイドレール22aと、不図示の駆動部とを備え、これらにより、ロボット3をガイドレール22aに沿って、必要な位置精度のもとで、一定距離ごとに前進、停止、または、後退させる。
【0015】
ロボット3は、制御部30と、通信部41との間で相互に通信する指向性のある無線の通信部31(通信手段)と、画像に基づいて位置認識を行う画像処理部32(画像処理手段)と、ワークを把持するハンド部33と、を備えている。ハンド部33は、2つの垂直回転軸と、各回点軸回りに回転自在で上下方向に上昇下降自在とされている2つのアームと、アームの自由端側に設けられたワーク把持部33a、およびCCDカメラ32aと、を備えている。ハンド部33は、制御部30が、所定のプログラムおよび各処理装置4や搬送装置2からの制御信号に基づいて、不図示の駆動部を制御することによって、制御される。生産システム1において、ロボット3は、ワークを把持して搬送装置2によって処理装置4間を順次移動すると共に処理装置4に対してワーク(不図示)の授受を行い、各処理装置4がワークに処理を行ってワークが製品化される。
【0016】
処理装置4は、ロボット3とワークを授受するためのワーク載置台4aと、ワークに対して処理を行う処理部40と、指向性のある無線の通信部41(通信手段)と、装置本体の所定の上面に配置された位置認識用のマークなどの特徴点42と、を備えている。処理部40は、加工、組立、検査などのいずれか単一の工程に機能を特化してワークに対して処理を行う部分であり、ワーク載置台4aに載置されたワークを受け取ると共に、処理を行ったワークをワーク載置台4aに戻して載置する。ロボット3、処理装置4の各通信部31,41の無線信号送受信部は、それぞれの指向性に基づいて水平面内における送受信角度範囲α,βを有している。平面視で送受信角度範囲α,βが重なっている間は、ロボット3と処理装置4と間の相互通信が可能であり、重なりがない場合は相互通信不可である。通常は、αとβは同じ大きさに設定するが、互いに異なる大きさとしてもよい。無線信号の媒体として、例えば、赤外線や電波を用いることができる。特徴点42は、処理装置4内の各部、例えば、ワーク授受に用いるワーク載置台4a、の空間位置を決定付けるための座標系の原点および座標系の向きを規定するものであり、位置や向きを画像処理によって認識できるパターンや形状によって設定されている。
【0017】
次に、ワークの授受位置取得について説明する。授受位置の取得は、図3に示す如く通信部31,41を用いて大まかな位置精度で行う段階と、図4に示す如く画像処理部32および特徴点42を用いて精密な位置精度で行う段階の2段階で行われる。通信部31,41は、ロボット3側に装備された通信部31の呼びかけに対して、処理装置4側に装備された通信部41が応答するように設定しておく。ロボット3は、図3(a)(b)(c)に示すように、搬送装置2によってガイドレール22aに沿う矢印xの方向に移動される。その移動の間に、ロボット3と処理装置4の互いの送受信角度範囲α,βが、重なっていない状態から、重なっている状態を経て、再び、重なっていない状態へと変化する。
【0018】
そこで、ロボット3は、搬送装置2によって一定間隔のステップ送りで移動し、停止した位置で処理装置4側の通信部41からの応答の有無を確認する。ロボット3がある処理装置4に対して接近し、相互の通信部31,41の送受信可能エリアに入った場合、応答が確認できる。その後、ロボット3と処理装置4が最接近した後、徐々に離れ、送受信可能エリアから外れた時点で、応答がなくなる。この移動の間に、通信部31が通信部41から受ける受信信号の強度は、送受信角度範囲α,βが最大重なりを有する図3(b)の状態でピークを持つ。このピークを持つ位置(x0とする)が、大まかな位置精度のワークの授受位置として取得される。位置x0は、搬送装置2の記憶部21に記憶される。通信部31が、通信部41からの受信信号の強度を見ないで、受信信号の有無だけを見ている場合には、受信信号が初めてあった位置x1と受信信号がなくなる直前の位置x2の中間位置を位置x0とすればよい。また、通信部31,41間の通信は、ロボット3が停止することなく連続移動中に行うようにしてもよい。
【0019】
位置x0が取得されると、図4(a)に示すように、ロボット3は、搬送装置2によって位置x0の場所に戻される。すると、ロボット3は、図4(b)に示すように、ハンド部33を動作させて、位置x0からの所定の距離と方向とに基づいて、CCDカメラ32aを特徴点42の位置に移動させ、特徴点42を撮像する。ロボット3の画像処理部32は、撮像された画像を処理して、特徴点42の位置座標と角度とを求め、精密な位置精度および角度精度におけるワークの授受位置、または授受位置を決める基準位置、または同等位置とする。搬送装置2は、求められた特徴点42の位置座標と角度とを、生産システム1に設定された座標系(グローバル座標系)によって表現して記憶部21に記憶する。
【0020】
次に、図5のフローチャートにより、システム全体の処理装置4に対するワークの授受位置取得のための位置x0の取得処理について説明する。このような処理は、生産計画の変更によって、生産システム1における処理装置4の配置換えを行った後に、最初に生産システム1を動作させる場合などに行われる。授受位置取得の対象となる処理装置4が、ロボット3の移動経路であるガイドレール22aに沿って配置されており、その配置の一端から多端に向けて、位置取得の処理を順次行うものとする。搬送装置2は、ロボット3をガイドレール22aの一端側から他端側に向けて一定間隔のステップ送りで一定間隔づつ移動させる(S1)。搬送装置2の制御部20は、ロボット3が搬送装置2の終端、すなわちガイドレール22aの他端側に達したか否かを判断し(S2)、達していない場合(S2でNo)、処理装置4からの応答の有無を判断する(S3)。なお、制御部20は、処理装置4からの応答の有無に関する情報をロボット3の通信部31から逐次受け取る。処理装置4からの応答があり(S3でYes)、かつ、その応答がその処理装置4から初めてであれば(S4でYes)、ロボット3の現在位置を位置x1として記憶し(S6)、初めてなければ(S4でNo)、現在位置を位置x2として記憶する(S7)。ステップ(S6)または(S7)の後、処理はステップ(S1)に戻される。ここで、位置x1は、ロボット3が図3(a)の状態から更に移動した送受信角度範囲α,βの重なり開始の位置(一方の端、位置x1)である。また、位置x2は位置x1から図3(c)の状態の位置近くまでの範囲における位置であって、最終的に送受信角度範囲α,βの重なりがなくなる位置(他方の端、位置x2)となる。
【0021】
ステップ(S3)において処理装置4からの応答がなく(S3でNo)、かつ、直前のステップ送り位置で処理装置4からの応答がなかった場合(S5でNo)、処理はステップ(S1)に戻される。なお、処理装置4からの応答がない状態は、ロボット3が、1つの処理装置4から隣の処理装置4に移動している状態である。また、直前のステップ送り位置で処理装置4からの応答があった場合(S5でYes)、位置x1,x2の中間位置を処理装置4の最接近位置x0として記憶する(S8)。つまり、通信部41からの応答が確認できた範囲の中間の位置が、処理装置4に最接近した場所と推定される。ステップ(S2)において、ロボット3が搬送装置2の終端、すなわちガイドレール22aの他端側に達したと判断された場合(S2でYes)、位置取得処理を終了する。この時点で、各処理装置4についての位置x0の情報が搬送装置2の記憶部21に記憶されていることになる。なお、画像処理部32による精密な授受位置の取得は、一連の位置x0の取得後にまとめて順次行ってもよく、各位置x0の取得ごとに行ってもよい。
【0022】
本実施形態の生産システム1によれば、各処理装置4の大まかな位置x0を取得し、この最接近した位置x0で画像処理部32を用いるので、比較的狭いカメラの撮像範囲に、処理装置4上の認識マークなどの特徴点42が含まれるようにすることができる。従って、処理装置4上の特徴点を探索する時間を短縮でき、ワークの授受位置を自動で効率的に取得できる。このことにより、処理装置4のロボット3を含めた搬送装置2に対する相対的な位置関係が変わっても、位置関係の変更量を容易に検出でき、搬送装置2やロボット3の処理装置4に対する教示点(基準点)を決定して、短時間でシステム運用を開始できる。すなわち、本生産システム1は、生産計画の変更に対して柔軟に対応できるフレキシブルな生産システムとなっている。なお、教示点(基準点)は、特徴点42の位置そのものとしてもよく、これを座標変換した別の3次元空間点の位置としてもよい。
【0023】
(変形例)
図6は第1の実施形態の生産システムの変形例を示す。この生産システムにおける処理装置4の通信部41は、指向性の広狭を調整するための調整装置5を備えており、隣接する処理装置4の間隔が狭いほど指向性が狭くなるように調整することができる。調整装置5は、通信部41の無線通信媒体、例えば赤外線を送受信する素子に対する受発光部の開口を調整する開口調整板である。これにより開口を広げれば広い指向性(送受信角度範囲β1)となり、狭めれば狭い指向性(送受信角度範囲β2)となる。一般に、生産システムの設置面積は小さい方が好ましく、そのために処理装置4の設置間隔は可能な限り狭めることになる。こうした状況で、無線通信部41の送受信可能エリアが広いままでは、接近して隣接する処理装置4の無線通信部41と混信する可能性がある。そこで、調整装置5を用いて、意図的に指向性を狭めて送受信可能エリア(送受信角度範囲)を狭めることにより、混信を防止する。つまり、生産システムの設置面積は小さくすると共に、ロボット3の移動経路に沿って設置する処理装置4の設置間隔(通信部41の送受信部の間隔)に応じて、通信部41の送受信可能エリアを狭めることにより、近接する処理装置との混信を防止できる。
【0024】
(第2の実施形態)
図7(a)(b)は第2の実施形態に係る生産システムを示す。本実施形態において、ロボット3は、図7(a)に示すように、処理装置4との相互の通信部31,41を用いて授受位置を取得する際に、その通信部31,41を用いて通信対象の処理装置4の種類情報を取得し、他は、第1の実施形態と同様である。この生産システムにおける各処理装置4は、専用機として機能を特化した構成を有し、その機能別の種類として、例えば、部品の供給装置、部品の組立装置、部品の加工装置、部品の検査装置などがあり、また、部品毎に部品Aの供給装置などと区別される。相互の通信部31,41としてデジタルI/Oのタイプのものを使用し、双方のそれぞれの出力信号に、例えば、図7(b)示すような機能を割り付け、ロボット3側からの呼びかけに対して処理装置4が自機の種類に応じて各ビットをON/OFFして出力する。これによりロボット3側から大まかな位置x0の検出と共に、通信相手の処理装置4の種類(機種)情報まで取得することができる。この情報取得は、他の時点、例えば、画像処理部32による精密な授受位置の取得の際に行ってもよい。
【0025】
ここで、簡単のため、例えば、図7(b)に示すように、処理装置4の種類が部品Aの供給装置、部品Bの供給装置、組立装置、検査装置の4種類であり、4ビットのデータのいずれか所定のビットを1とすることで処理装置4の種類を指定するものとする。同様に、処理装置4の種類を問い合わせる信号は、4ビットの第1ビットを1とする(ONとする)ことで行うものとする。ロボット3が通信部31を用いて、処理装置4に対して4ビットの出力信号によって「処理装置の種類確認」(第1ビットを1、すなわちONにする)を行うと、処理装置4の通信部41を介してこれを認識する。種類問い合わせ信号を受信した処理装置4は、その装置が「組立装置」であれば、通信部41を用いて、第3ビット(出力信号−3)を1とした4ビット信号を送信し、ロボット3は、通信部31を介して、処理装置4の種類が「組立装置」である旨を認識する。このようなデータ通信の方法は、ここに示した方法に限らず、適宜任意の方法を用いることができる。
【0026】
本実施形態によると、ロボット3が大まかな位置x0の検出を行う際に、通信相手の処理装置4の種類(機種)情報まで取得して、機能を特定することができる。つまり、ロボット3の移動経路に沿って設置された処理装置4の種類と設置順序(位置x0)との情報を、自動で取得することができる。自動で取得することができるとは、処理装置4を配置換えした際に、その配置換えの情報を生産システムに対して人手によって入力する手間が省けることを意味し、これにより、生産システム1のフレキシビリティを向上することができる。
【0027】
(第1の変形例)
図8は第2の実施形態の第1の変形例を示す。この第1の変形例の生産システム1は、取得された授受位置および種類情報を表示する表示装置6を備えるものであり、他は、第2の実施形態と同様である。表示装置6には、通信部31,41および画像処理部32を用いて取得された、処理装置4ごとのワーク授受位置と、装置の種類とが、取得された順番に表示される。表示装置6の表示は、ロボット3の移動経路に沿って設置された処理装置4の順番であり、また、設置された順番に生産工程が設定されていることから、生産システム1の作業者Mは、表示装置6の表示を見て、実体と計画との乖離の有無や不具合などを確認できる。なお、図8には、ガイドレール22aの両側に処理装置4が配置された例を示している。この場合、ロボット3は、例えば、右側の処理装置4に対してワークの授受を行いつつ、矢印x方向に移動し、右側の処理装置4がなくなった時点で、左側に向きを変え、左側の処理装置4に対してワークの授受を行いつつ、矢印x方向とは逆向きに移動する。ロボット3の向きの変更は、搬送装置2が、例えば、ターンテーブルを用いて行ったり、ロボット3が自ら回転して行ったりすることができる。
【0028】
(第2の変形例)
図9は第2の実施形態の第2の変形例を示す。この第2の変形例の生産システム1は、相互の通信部31,41が、ロボット3と各処理装置4との間の制御用の通信に用いられるものである。処理装置4の制御用の信号は、例えば、部品投入完了の出力や作業完了の入力などである。通信部31,41は、デジタルI/Oのタイプのものであり、双方のそれぞれのビット化された出力信号に、図9に示すような機能を割り付け、ロボット3と処理装置4との相互の状態に応じて所定のビットをON/OFF(1または0)とする。これにより、ロボット3と処理装置4との間の通信のワイヤレス化を実現できるので、生産計画の変更に伴う生産システム1のレイアウト変更、ロボット3や処理装置4の増設や減設、配置換えなどに柔軟に対応することができる。
【0029】
(第3の変形例)
図10は第2の実施形態の第3の変形例を示す。第3の変形例の生産システム1は、ロボット3が、予め各処理装置4ごとに設定された制御プログラムD0を備えて処理装置4間を移動し、各処理装置4に対して制御用の通信を行うと共に制御プログラムD0に基づいてワークの授受を含む動作を行うものである。搬送装置2は、ロボット3を介して、通信部31,41および画像処理部32を用いて取得した処理装置のデータD1を記憶部21に記憶している。処理装置のデータD1には、各処理装置4の装置種類、その設置順序、および設置位置の情報が含まれている。ロボット3は、制御プログラムD0を制御部30に備えて、搬送装置2の制御部20からの指示に基づいて、制御プログラムD0に従って、処理装置4に対する動作を行う。制御プログラムD0は、教示点データ、例えばワーク載置台4aに関する位置データ、動作順序、例えばワークを予め上下反転して処理装置4に渡したり受け取ったワークを回転したりする動作の順序、および処理装置4における原点と姿勢のデータなどに基づく。
【0030】
以上の構成のもとで、搬送装置2の制御部20は、処理装置4の順番に従って、データD1から該当する処理装置4のデータを呼び出し、そのデータに基づいて、ロボット3を処理対象の処理装置4まで移動させ停止させた後、ロボット3に動作の実行を指示する。ロボット3は、プログラムD0から処理対象の処理装置4に対する制御プログラムを選択し、そのプログラムに基づいて、処理装置4に対するワークの授受等の動作を行う。ロボット3は、処理装置4における処理が終了すると、搬送装置2の制御部20に、終了通知を行う。その後、搬送装置2の制御部20は、再度、データD1からデータ呼び出しを行い、以下、全ての処理装置4に対する処理が終了するまで、例えば、データD1から呼び出すデータがなくなるまで、同様の処理を繰り返す。このような一連の処理が終了すると、生産システム1における全工程が一巡され、1つの製品が生産される。その後、ロボット3は、搬送装置2によって、最初の処理を行う処理装置4に戻され、次の製品の生産が開始される。
【0031】
この第2の変形例の生産システム1においては、ロボット3の移動経路に沿って生産計画に従って作業順に配置された処理装置4に対して、搬送装置2とロボット3とが、各処理装置4の位置と種類とを認識することによって、生産システム1を稼動させることができる。生産システム1の稼動に際し、ロボット3の各処理装置4に対する、部品を取出す、仕掛ワークを投入する/取出すなどの一連の動作の制御プログラムD0を予め準備してロボット3に備えておき、処理装置4をロボット3の移動経路に沿って作業順に設置しておく。すると、処理装置のデータD1が取得された時点で、生産システム1を稼動させるためのプログラムが自動で生成されることになる。これにより、生産計画の変更に伴うシステム変更後の立ち上がりの時間が短縮され、生産システム1のレイアウト変更、ロボット3や処理装置4の増設や減設、配置換えなどに容易かつ柔軟に対応することができる。
【0032】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。CCDカメラ32aの配置位置は、アームの自由端側の位置に限らず、ハンド部33の他の位置や、ハンド部33以外のロボット3の本体側の位置としてもよい。また、特徴点42の配置位置は、処理装置4の装置本体の所定の上面に限らず、画像処理によって処理装置4とのワークの授受位置と関連付けることができる位置であればよい。ロボット3は、1つの生産システム当たりに1台とは限らず、複数台とすることができる。複数台とする場合、各ロボット3の移動範囲と担当する処理装置を適宜に分担すればよい。なお、上記において、位置の取得との記載は、位置情報の取得との意味である。
【符号の説明】
【0033】
1 生産システム
2 搬送装置(搬送手段)
3 ロボット
31 通信部(ロボットの通信手段)
32 画像処理部(ロボットの画像処理手段)
4 処理装置
41 通信部(処理装置の通信手段)
42 マーク(特徴点)
6 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送手段によって移動するロボットがワークを把持して複数の処理装置間を順次移動すると共に処理装置に対してワークの授受を行い、各処理装置がワークに処理を行ってワークを製品にする生産システムにおいて、
前記処理装置は、指向性のある無線の通信手段を備え、
前記ロボットは、前記処理装置の通信手段との間で相互に通信する指向性のある無線の通信手段と、前記処理装置上の所定の特徴点を撮像して位置認識を行う画像処理手段とを備え、
前記ロボットは、前記相互の通信手段を用いて前記処理装置に対する位置関係を検出し、その検出の後に、前記画像処理手段を用いて前記特徴点を認識することにより当該処理装置に対する精密な位置関係を検出し、これに基づいてワークの授受位置を取得することを特徴とする生産システム。
【請求項2】
前記各処理装置の通信手段は、隣接する処理装置の間隔が狭いほど指向性が狭いことを特徴とする請求項1に記載の生産システム。
【請求項3】
前記ロボットは、前記相互の通信手段を用いて前記授受位置を取得する際に、前記通信手段を用いて通信対象の処理装置の種類情報を取得することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生産システム。
【請求項4】
前記取得された授受位置および種類情報を表示する表示装置を備えたことを特徴とする請求項3に記載の生産システム。
【請求項5】
前記相互の通信手段は、前記ロボットと各処理装置との間の制御用の通信に用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の生産システム。
【請求項6】
前記ロボットは、予め各処理装置ごとに設定された制御プログラムを備えており、予め設定された工程順に前記処理装置間を移動し、各処理装置に対して前記制御用の通信を行うと共に前記制御プログラムに基づいてワークの授受を含む動作を行うことを特徴とする請求項5に記載の生産システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−6122(P2012−6122A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145275(P2010−145275)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】