説明

生産設備および生産システム

【課題】トレーサビリティのための管理システムを有さずに、生産した物品をトレースすることが可能な生産設備及び生産システムを提供する。
【解決手段】入力物品に対して作業を実行して出力物品を生産する生産設備において、少なくとも入力物品のユニークな情報を取得する物品情報入力手段4と、入力物品に対して作業動作を制御および実行して出力物品を生産するとともに、出力物品にユニークな情報を付与する設備制御手段5と、少なくとも出力物品に付与されたユニークな情報を出力する物品情報出力手段6と、少なくとも物品情報入力手段4によって取得した入力物品のユニークな情報と設備制御手段5によって付与された出力物品のユニークな情報とを記録する物品情報記録部7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象物品に対して所定作業を行う生産設備、および生産設備を複数組み合わせた生産システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
加工や組立などを行う生産設備において、製品や部品に不良品が発生した際に原因を把握、分析するために、生産設備によって生産した製品/部品の製造記録を残し、後からトレースすることを可能にする機能を持たせることが従来から行われている。
例えば、特許文献1の工程管理装置は、農産物の1つまたはパックごとにIDを紐つけるとともにこのIDに生産地、生産時期(出荷時期)などの情報を付加しており、IDから情報を逆トレースすることで農産物の出所を確認することができるものである。
しかし、特許文献1の工程管理装置は、多量の農産物について全てにIDを結びつける必要があり、また、それらの情報を全て記録するには記録設備があまりに巨大になるとともに、情報管理が困難となると考えられる。
【0003】
また、特許文献2の物品管理システムは、物品に「仮想箱番号=電子タグ」を紐つけるとともに、生産工程が変わる毎に人手により入力指示を行い、各工程についての情報とその人手による入力を行った時刻を記録するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3961782号公報
【特許文献2】特開2007−25938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば特許文献2のような従来の物品管理システムは、生産設備の他にトレーサビリティのための管理システムが別途必要となり、作業内容の変更および作業順番の変更がある度に、人手をかけて作業単位指示を編集および加工しなければならず、また、トレーサビリティのための管理システム用のプログラムについても修正が必要となるという課題があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、トレーサビリティのための管理システムを有さずに、生産した物品をトレースすることが可能な生産設備及び生産システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明に係る生産設備は、入力物品に対して作業を実行して出力物品を生産する生産設備において、少なくとも前記入力物品のユニークな情報を取得する物品情報入力手段と、前記入力物品に対して作業動作を制御および実行して出力物品を生産するとともに、前記出力物品にユニークな情報を付与する設備制御手段と、少なくとも前記設備制御手段によって出力物品に付与されたユニークな情報を出力する物品情報出力手段と、少なくとも前記物品情報入力手段によって取得した入力物品のユニークな情報と前記設備制御手段によって出力物品に付与されたユニークな情報と前記設備制御手段により実行された作業に関する付加情報とを記録する物品情報記録手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、この発明に係る生産設備は、自生産設備との間で前記入力物品の授受を行う他の生産設備との接続を検出する入力接続検出手段を備え、前記物品情報入力手段は、前記入力接続検出手段が検出した他の生産設備との間で前記物品情報入力手段によって取得された入力物品のユニークな情報を授受することを特徴とする。
【0009】
また、この発明に係る生産設備は、自生産設備との間で前記出力物品の授受を行う他の生産設備との接続を検出する出力接続検出手段を備え、前記物品情報出力手段は、前記出力接続検出手段が検出した他の生産設備との間で前記設備制御手段によって出力物品に付与されたユニークな情報を授受することを特徴とする。
【0010】
また、この発明に係る生産システムは、上記生産設備を複数組み合わせてなるものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明の生産設備によれば、トレーサビリティのための管理システムを有さずに、生産した物品をトレースすることが可能になり、セルやライン機能を構築および再構築する際に管理システムのプログラムの修正等を行う必要がなく、また、トレーサビリティのための処理を要さず、生産のための処理を行うだけでトレーサビリティ機能を持たせることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係る生産設備の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る生産システムの構成を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る生産設備の入力接続検出手段の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る生産設備1a,1b,1cの構成を示すブロック図である。ここで、生産設備1bについて説明すると、入力された部品または部品を加工・組立した製品(以下、これらの物品を「入力物品」と称する)に対して所定作業を実行し、作業後の部品または部品を加工・組立した製品(以下、これらの物品を「出力物品」と称する)を出力する装置であって、入力側の他の生産設備1aとの間の生産ライン接続を検出する入力接続検出手段2bと、出力側の他の生産設備1cとの間の生産ライン接続を検出する出力接続検出手段3bと、少なくとも入力物品のユニークな情報を入力側の他の生産設備1aとの間で授受する物品情報入力手段4bと、入力物品に対して作業動作を制御および実行して出力物品を生産するとともに、出力物品にユニークな情報を付与する設備制御手段5bと、少なくとも出力物品に付与されたユニークな情報を出力する物品情報出力手段6bと、少なくとも物品情報入力手段4bによって取得された入力物品のユニークな情報と設備制御手段5bによって出力物品に付与されたユニークな情報と設備制御手段5により実行された作業に関する付加情報とを記録する物品情報記録手段7bとを備える。
また、生産設備1bの物品情報入力手段4bは入力側の他の生産設備1aの物品情報出力手段6aに、物品情報出力手段6bは出力側の他の生産設備1cの物品情報入力手段4cにアクセス可能であり、物品情報出力手段6a、物品情報入力手段4cが保持する物品情報(入力物品のユニークな情報または出力物品のユニークな情報)を読み書きすることによって生産設備1aおよび1cとの間で物品情報を授受する。
【0014】
なお、図1では生産設備1bに接続する入力側の他の生産設備として生産設備1aと出力側の他の生産設備として1cを図示しているが、入出力側ともに複数の生産設備を接続可能である。また、これら生産設備1a,1b,1cは同一の構成であるが、説明上呼び分けるために入力側の他の生産設備1aの各手段の符号に「a」を付し、出力側の他の生産設備1bの各手段の符号に「c」を付す。
【0015】
図2は、生産システム(セル)の一例を示す図であり、複数の生産設備が隣接して配置されている。生産設備としては、入力物品を供給して出力物品とする部品供給装置10、入力物品を搬送および組立などを行って出力物品とするロボット11、入力物品を加工して出力物品とする半田コテなどの専用作業装置12などがある。図2に示された生産システムでは、部品供給装置10とロボット11、およびロボット11と専用作業装置12が接続され、生産ラインになっている。
【0016】
この生産ラインでは、部品供給装置10が隣接するロボット11へ物品を供給する作業を行い、このとき、部品供給装置10は供給した物品にユニークな情報を付与し、少なくともそのユニークな情報と物品の供給作業に関する付加情報とを記録するとともに、供給した物品に付与したユニークな情報をロボット11へ出力する。
【0017】
次に、ロボット11が隣接する専用作業装置12へ物品を搬送する作業を行い、このとき、ロボット11は搬送した物品にユニークな情報を付与し、少なくともそのユニークな情報と物品の搬送作業に関する付加情報と部品供給装置10により入力された入力物品のユニークな情報を記録するとともに、搬送した物品に付与したユニークな情報を専用作業装置12に出力する。
【0018】
さらに、専用作業装置12が隣接するロボット11から搬送された物品の半田付け作業を行い、このとき、専用作業装置12は半田付けした物品にユニークな情報を付与し、少なくともそのユニークな情報と物品の半田付け作業に関する付加情報とロボット11により入力された入力物品のユニークな情報を記録するとともに、半田付けした物品に付与したユニークな情報を出力する。
【0019】
次に、生産設備1の詳細を説明する。
図1に示すように、入力接続検出手段2bは、生産ラインで入力物品の授受を行う対象となる入力側の生産設備1aとの間の接続を検出し、個体識別および位置特定を行う。
例えば、生産設備1aに個体識別ID(バーコード、マーク、模様など)を持たせるとともに、入力接続検出手段2bをセンサおよび画像処理などで構成し、入力側に隣接する生産設備1aの個体識別IDを検出し、接続を判断する。
また例えば、入力接続検出手段2bを近接センサ、レーザ変位計、画像処理カメラ等のセンサで構成し、隣接する生産設備1aの相対位置を検出し、生産設備1aの位置および距離などの検出情報に基づいて接続を判定するとともに個体識別を行う。
また例えば、入力接続検出手段2bを記憶装置で構成し、生産システムを構築する際に生産設備1bに入力側に接続させる他の生産設備1aの識別情報および位置情報などを予め設定しておいてもよい。
【0020】
また例えば、入力接続検出手段2bを物理的な通信端子で構成し、どの方向に設けた通信端子に入力側の他の生産設備1aが接続されたかによって生産設備1aの位置を判定するとともに、通信によって個体識別を行う。入力接続検出手段2bを通信端子で構成した場合の接続検出方法を図3に示す。同一構成の生産設備1a,1b,1c,1dは、通信端子の接続が容易になるように外観形状、作業台の高さなどを統一しておく。図3(a)に示すように、生産設備1bには、物品の搬送を行う方向の側面に他の生産設備1a,1c,1dと組み合うような凸部20,21および凹部22を設ける。そして、これら凸部20,21と凹部22にそれぞれ通信端子を配置する。同様に、生産設備1a,1c,1dにも凹部23,24、凸部25を設け、それぞれ通信端子を配置する。通信の種類としては、Ethernet(登録商標)、USB(Universal Serial Bus)、近距離無線通信などを用いる。
【0021】
生産システム構築時には、図3(b)に示すように生産設備1bの凸部20と生産設備1aの凹部23の通信端子同士を接続し、生産設備1a,1bの入力接続検出手段2a,2b(不図示)間で通信することにより、生産設備1bはどの通信端子に接続されたかによって相手の生産設備1aの相対位置を判定し、また通信路を使って互いの設備情報などを交換することでどのような種類の設備が接続されたか個体認識する。生産設備1bは同様に、凸部21と凹部24の通信端子同士を接続し、凹部22と凸部25の通信端子同士を接続して、各生産設備1c,1dの相対位置および種類を検出する。
また、出力接続検出手段3は、検出する対象が出力物品の授受を行う出力側の生産設備との間の接続である点以外は入力接続検出手段2と同じである。
【0022】
物品情報入力手段4bは、図1に示すように、入力側の他の生産設備1aの物品情報出力手段6aとの間で通信を行う通信インタフェースであり、入力接続検出手段2bが検出した入力側の生産設備1aとの間で少なくとも入力物品のユニークな情報を生産設備1aとの間で授受する。
【0023】
また、物品情報出力手段6bも物品情報入力手段4と同様に、図1に示すように、出力側の他の生産設備1cの物品情報入力手段4cとの間で通信を行う通信インタフェースであり、出力接続検出手段3bが検出した出力側の生産設備1cとの間で少なくとも出力物品のユニークな情報を生産設備1cとの間で授受する。
【0024】
なお、入力物品のユニークな情報および出力物品のユニークな情報の形式を予め規格化しておくことで汎用的な通信プログラムを用意できるので、物品情報入力手段4および物品情報出力手段6の通信インタフェースも予め定義できる。また、通信インタフェースを予め定義しておくので、同種の通信インタフェースを実装した他の生産設備1aとの間で接続して通信が可能である。さらに、同種の通信インタフェースを実装した他の生産システムの生産設備との間で接続して通信が可能である。
【0025】
物品情報記録手段7は、少なくとも、物品情報入力手段4により取得された入力物品のユニークな情報と、設備制御手段5により付与された出力物品のユニークな情報と出力物品の生産時に実行された作業に関する付加情報を記録するものであり、HDDなどの記憶媒体である。各生産設備はそれぞれ物品情報記録手段7を備えており、各々作業を行う毎に備えている物品情報記録手段7に、少なくとも入力物品のユニークな情報と出力物品のユニークな情報と出力物品の生産時に実行された作業に関する付加情報を記録する。
なお、物品情報記録手段7に記録される付加情報としては、例えば、その作業が実行された日時、作業時に設定したパラメータの値・気温や湿度などの条件等の情報が挙げられる。
【0026】
設備制御手段5は、自生産設備1の作業を制御するPLC(Programmable Logic Controller)、ロボットコントローラなどである。この設備制御手段5は、入力物品に対して動作開始、停止、動作方法などを判断し、予め与えられた動作プログラムに従って作業を実行して出力物品を生産する。また、生産した出力物品にユニークな情報を与え、入力物品のユニークな情報、出力物品のユニークな情報および生産時の作業に関する付加情報を物品情報記録手段7へ出力する。
【0027】
以上より、実施の形態1に係る生産設備1は、入力物品に対して作業を実行して出力物品を生産する生産設備において、少なくとも入力物品のユニークな情報を取得する物品情報入力手段4と、入力物品に対して作業動作を制御および実行して出力物品を生産するとともに、出力物品にユニークな情報を付与する設備制御手段5と、少なくとも出力物品に付与されたユニークな情報を出力する物品情報出力手段6と、少なくとも物品情報入力手段4によって取得した入力物品のユニークな情報と設備制御手段5によって付与された出力物品のユニークな情報と設備制御手段5により実行された作業に関する付加情報を記録する物品情報記録手段7とを備えるように構成したので、トレーサビリティのための管理システムを有さずに、生産した物品をトレースすることが可能になり、セルやライン機能を構築および再構築する際に管理システムのプログラムの修正等をする必要がなく、また、トレーサビリティのための処理を要さず、生産のための処理を行うだけでトレーサビリティ機能を持たせることが可能になる。
【0028】
また、実施の形態1によれば、自生産設備1との間で入力物品の授受を行う他の生産設備との接続を検出する入力接続検出手段2を備え、物品情報入力手段4は、入力接続検出手段2が検出した他の生産設備との間で少なくとも入力物品のユニークな情報を授受する構成にしたので、生産ラインの構築、生産設備1の切り離しまたは組み替えを行った場合に新たな入力側の接続を自動的に検出して物品情報の授受を行うことができ、柔軟性を向上できる。
【0029】
また、実施の形態1によれば、自生産設備1との間で出力物品の授受を行う他の生産設備との接続を検出する出力接続検出手段3を備え、物品情報出力手段6は、出力接続検出手段3が検出した他の生産設備との間で出力物品のユニークな情報を授受する構成にしたので、生産ラインの構築、生産設備1の切り離しまたは組み替えを行った場合に新たな出力側の接続を自動的に検出して物品情報の授受を行うことができ、柔軟性を向上できる。
【0030】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1,1a,1b,1c,1d 生産設備
2,2a,2b,2c 入力接続検出手段
3,3a,3b,3c 出力接続検出手段
4,4a,4b,4c 物品情報入力手段
5,5a,5b,5c 設備制御手段
6,6a,6b,6c 物品情報出力手段
7,7a,7b,7c 物品情報記録手段
10 部品供給装置
11 ロボット
12 専用作業装置
20,21,25 凸部
22,23,24 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力物品に対して作業を実行して出力物品を生産する生産設備において、
少なくとも前記入力物品のユニークな情報を取得する物品情報入力手段と、
前記入力物品に対して作業動作を制御および実行して出力物品を生産するとともに、前記出力物品にユニークな情報を付与する設備制御手段と、
少なくとも前記設備制御手段によって出力物品に付与されたユニークな情報を出力する物品情報出力手段と、
少なくとも前記物品情報入力手段によって取得した入力物品のユニークな情報と前記設備制御手段によって出力物品に付与されたユニークな情報と前記設備制御手段により実行された作業に関する付加情報とを記録する物品情報記録部と
を備えることを特徴とする生産設備。
【請求項2】
自生産設備との間で前記入力物品の授受を行う他の生産設備との接続を検出する入力接続検出手段を備え、
前記物品情報入力手段は、前記入力接続検出手段が検出した他の生産設備との間で前記物品情報入力手段によって取得された入力物品のユニークな情報を授受することを特徴とする請求項1記載の生産設備。
【請求項3】
自生産設備との間で前記出力物品の授受を行う他の生産設備との接続を検出する出力接続検出手段を備え、
前記物品情報出力手段は、前記出力接続検出手段が検出した他の生産設備との間で前記設備制御手段によって出力物品に付与されたユニークな情報を授受することを特徴とする請求項1記載の生産設備。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか1項記載の生産設備を複数組み合わせてなる生産システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−27954(P2013−27954A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165579(P2011−165579)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】