説明

産業機器の通信用信号線の配線構造

【課題】通信性能に影響を及ぼすことなく、プリント配線板上において通信用信号線およびそれに関係する構成が占有する面積を削減する。
【解決手段】第1の通信に用いられる配線パターンLa1〜La4と第2の通信に用いられる配線パターンLb1〜Lb4とは、交互に並行した状態でプリント配線板1上にレイアウトされる。グランド電位に固定されるガードパターンLg1、Lg2は、それぞれ配線パターンLa1、Lb1と並行した状態でレイアウトされる。MCU2は、メモリ3と第1の通信を行う場合、端子PB1〜PB4に0Vの電位を付与することで配線パターンLb1〜Lb4の電位をグランド電位に固定する。また、MCU2は、メモリ4と第2の通信を行う場合、端子PA1〜PB4に0Vの電位を付与することで配線パターンLa1〜La4の電位をグランド電位に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機器のプリント配線板に搭載される電子部品同士の間で行われる通信に用いられる通信用信号線の配線構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プログラマブルコントローラやロボット制御装置などの産業機器に用いられる電子部品(例えばマイコン、メモリなど)は、それら電子部品同士の間で種々のデータのやり取りを行うために通信が行われるようになっている。各電子部品が互いに同一のプリント配線板に搭載される場合、プリント配線板上にレイアウトされた複数の配線パターン(信号線)を介して上記通信が行われる。また、各電子部品が互いに別のプリント配線板に搭載される場合、上記配線パターンに加えて、コネクタおよび複数のケーブル(信号線)を介して上記通信が行われる。これらの通信に用いられる信号線の周囲には、その信号線を取り囲むようにグランド電位(安定した基準電位)を持つ信号線が配置される。これにより、通信用の信号線から放射されるノイズが外部回路に影響を及ぼすことや、外部のノイズが通信用の信号線に影響を及ぼすことを抑制している。すなわち、このような通信用の信号線については、EMC(Electromagnetic Compatibility)対策が施された配線構造が採用されている。
【0003】
上記したEMC対策のため、プリント配線板上にレイアウトされるそれぞれの配線パターンの両側には、グランド電位を持つガードパターンがレイアウトされることになる。従って、通信に用いる配線パターンの数がn本だとすると、ガードパターンはn+1本必要となる。また、通常、この種のプリント配線板は多層基板が用いられることが多く、その場合、ガードパターンはビアを介してグランド電位を持つ内層に接続する必要がある。通常、このビアは、配線パターンに比べて大きな面積を必要とする。このような事情から、通信用の信号線を設けるためにプリント配線板上に所定の面積が必要となる。
【0004】
産業機器に用いられるプリント配線板は、その産業機器に対する小型化の要望を受けて、同様に小型化されることが望まれている。しかし、EMC対策のためのガードパターンを、実際に通信に用いる配線パターンよりも多くの数だけ設ける必要があるとともに、ガードパターンを内層に接続するためのビアを設ける必要があるため、その小型化を十分に実現することができなかった。
【0005】
一方、特許文献1には、バス配線に対するガードパターンを、電子部品(LSI)の端子から直接引き出すことで、ガードパターンをグランド電位に接続するためのビアを削減する技術が開示されている。また、このガードパターンが接続されるLSIの端子は、LSIが基板に搭載された後は使用されないテスト用端子とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−160530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の技術を用いた場合、通信に係る配線等の面積は、各ガードパターンを内層に接続するためのビアの面積分しか削減できない。しかも、通常、LSIが有するテスト用端子の数は極めて少ない。例えば、100個の端子を備えたLSIの場合であっても、そのうちの2〜3個だけがテスト用端子となっている。このため、テスト用端子の数と同数のビアを削減する特許文献1記載の技術を用いたのでは、通信に係る配線等の面積をほとんど削減することができない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、通信性能に影響を及ぼすことなく、プリント配線板上において通信用信号線およびそれに関係する構成が占有する面積を削減することができる産業機器の通信用信号線の配線構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の手段によれば、産業機器のプリント配線板に搭載される電子部品同士の間で行われる通信に用いられる通信用信号線は、第1の通信を行うための複数の第1の通信と、第2の通信を行うための複数の第2の通信線とを含んでいる。第1の通信が行われる際には第1の通信線には通信用の信号が付与されるが、第2の通信線には信号が付与されない。また、第2の通信線が行われる際には第2の通信線には通信用の信号が付与されるが、第1の通信線には信号が付与されない。本手段では、このような点に着目し、第1の通信線および第2の通信線を、以下のように、信号が付与されない期間(非通信動作期間)にガードパターンとして機能させるようにしている。
【0010】
すなわち、第1の通信線および第2の通信線は、少なくとも一部が交互に並行した状態でプリント配線板上に配線パターンとして形成されている。そして、安定電位を持つガードパターンは、これら配線パターンのうち最も外側に形成された配線パターンと少なくとも一部が並行した状態でプリント配線板上に形成されている。このような構成において、第1の通信が行われる期間中、第2の電位固定手段は、信号が付与されていない第2の通信線の電位を安定電位に固定する。また、第1の電位固定手段は、第1の通信線の電位を固定しない。これにより、第1の通信を行うための通信用の信号が伝送されている複数の第1の通信線のそれぞれの両側には、安定電位を持つ第2の通信線または安定電位を持つガードパターンのいずれかが配置された状態となる。
【0011】
一方、第2の通信が行われる期間中、第1の電位固定手段は、信号が付与されていない第1の通信線の電位を安定電位に固定する。また、第2の電位固定手段は、第2の通信線の電位を固定しない。これにより、第2の通信を行うための通信用の信号が伝送されている複数の第2の通信線のそれぞれの両側には、安定電位を持つ第1の通信線または安定電位を持つガードパターンのいずれかが配置された状態となる。
【0012】
このような構成によれば、常に安定電位に固定されたガードパターンは、配線パターンの最も外側の両隣に配置するだけでよいため、その数は2本でよい。すなわち、従来技術では通信線の数+1本必要であったガードパターンの本数を大幅に削減することができる。また、第1の通信および第2の通信が行われる際には、通信用の信号が伝送される通信線の周囲を取り囲むように安定電位を持つ通信線またはガードパターンのいずれかが配置された状態となるので、従来と同等のEMC対策が施された状態となる。すなわち、第1の通信および第2の通信を行う際、第1の通信線および第2の通信線に対し外部からのノイズが重畳することを抑制できるとともに、第1の通信線および第2の通信線からノイズが放射されることを抑制できる。従って、本手段によれば、通信性能に影響を及ぼすことなく、プリント配線板上において通信用信号線およびそれに関係する構成が占有する面積を大幅に削減することができる。
【0013】
上記構成におけるプリント配線板が複数の単位プリント配線板から構成され、第1の通信および第2の通信を行う電子部品のうち一方の電子部品と他方の電子部品とが、互いに異なる単位プリント配線板に搭載されている場合には、請求項2記載の手段を採用できる。請求項2記載の手段によれば、一方の電子部品と他方の電子部品との間において、複数の第1の通信線は、第1のコネクタおよび複数のケーブルからなる第1のケーブル群を介して接続される。また、複数の第2の通信線は、第2のコネクタおよび複数のケーブルからなる第2のケーブル群を介して接続される。第1のケーブル群および第2のケーブル群は、第1の通信線に接続されたケーブルと第2の通信線に接続されたケーブルとがそれぞれ螺旋状に組み合わされている。
【0014】
このような構成により、第1の通信が行われる際には、単位プリント配線板間において第1の通信線を接続するためのケーブルの周囲を取り囲むように安定電位に固定された第2の通信線を接続するためのケーブルが配置された状態となる。また、第2の通信が行われる際には、単位プリント配線板間において第2の通信線を接続するためのケーブルを取り囲むように安定電位に固定された第1の通信線を接続するためのケーブルが配置された状態となる。従って、本手段によれば、互いに異なる単位プリント配線板に搭載された電子部品間で第1の通信および第2の通信を行う場合であっても、請求項1と同様の作用および効果が得られる。
【0015】
さらに、第1のコネクタおよび第2のコネクタは、それぞれの長辺が隣接する状態で単位プリント配線板上に配置されている。このため、第1のコネクタに接続される第1のケーブル群の各ケーブルと、第2のコネクタに接続される第2のケーブル群の各ケーブルとを各コネクタの付近から螺旋状に組み合わせることが可能となる。従って、螺旋状に組み合わせた部分を極力多くすることができるため、ケーブル部分において耐ノイズ性能が低下することを抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すプリント配線板の概略構成図
【図2】第1の通信を行う際におけるMCUのポート設定を示すフローチャート
【図3】第2の通信を行う際におけるMCUのポート設定を示すフローチャート
【図4】本発明の第2の実施形態を示す図1相当図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1〜図3を参照しながら説明する。
図1は、電子部品が搭載されたプリント配線板の概略構成を示している。図1に示すプリント配線板1は、1枚の多層プリント配線板として構成され、例えばプログラマブルコントローラ、ロボットコントローラなどの産業機器に搭載されるものである。図1に示すように、プリント配線板1上には、MCU(Micro-Control Unit)2、メモリ3およびメモリ4(いずれも電子部品に相当)が搭載されている。MCU2は、いわゆるワンチップマイコンであり、CPU、各種周辺回路などを備えている。メモリ3、4は、例えばSRAM(Static RAM)、DRAM(Dynamic RAM)、EEPROM(Electrical Erasable Programmable ROM)などである。これらMCU2、メモリ3、4は、いずれもQFP(Quad Flat Package)のパッケージを持つICとして構成されている。
【0018】
MCU2の端子PA1、PA2、PA3、PA4は、配線パターンLa1、La2、La3、La4を介してメモリ3の端子Pa1、Pa2、Pa3、Pa4にそれぞれ接続されている。MCU2の端子PB1、PB2、PB3、PB4は、配線パターンLb1、Lb2、Lb3、Lb4を介してメモリ4の端子Pb1、Pb2、Pb3、Pb4にそれぞれ接続されている。配線パターンLa1〜La4およびLb4は、いずれもプリント配線板1のMCU2等が搭載された面(部品面、外層)に形成されている。配線パターンLb1〜Lb3において、MCU2の端子PB1〜PB3からメモリ3の近傍まで延びた部分およびメモリ4の端子Pb1〜Pb3に接続される部分は部品面に形成されている。一方、配線パターンLb1〜Lb3において、メモリ3の近傍からメモリ4の近傍に至るまでの部分は、プリント配線板1の上記部品面とは反対側の面(はんだ面、外層)に形成されている。また、配線パターンLb1〜Lb3は、ビアV1、V2を介してはんだ面と部品面との間で接続されている。
【0019】
配線パターンLa1〜La4およびLb1〜Lb4のうち、最も外側に位置する配線パターンLa1、Lb4のそれぞれの外側には、ガードパターンLg1、Lg2が形成されている。ガードパターンLg1、Lg2は、いずれもプリント配線板1の部品面に形成されている。ガードパターンLg1、Lg2は、プリント配線板1の基準電位となるグランド電位(0V)を持つ導体部分に接続されるものであり、例えばビアV3を介してグランド電位を持つ内層パターン(図示せず)に接続されている。これにより、ガードパターンLg1、Lg2は、常にグランド電位(安定電位)に固定されている。なお、配線パターンLa1〜La4、Lb1〜Lb4およびガードパターンLg1、Lg2は、例えば銅などの導体により構成されている。
【0020】
MCU2は、メモリ3との間で第1の通信を行うことでデータの送受信を行う。この第1の通信は、パラレル通信であり、4本の配線パターンLa1〜La4を通じて4ビットのデータのやり取りが行われる。すなわち、配線パターンLa1〜La4は、通信用信号線であり、複数の第1の通信線に相当する。また、MCU2は、メモリ4との間で第2の通信を行うことでデータの送受信を行う。この第2の通信は、パラレル通信であり、4本の配線パターンLb1〜Lb4を通じて4ビットのデータのやり取りが行われる。すなわち、配線パターンLb1〜Lb4は、通信用信号線であり、複数の第2の通信線に相当する。
【0021】
通常、MCU2が備えるCPUは、所定のプログラムに従い直列処理(シリアル処理)を行う。従って、MCU2は、メモリ3との間で第1の通信を介してデータの送受信を行う期間中は、メモリ4との間ではデータの送受信を行わない。また、MCU2は、メモリ4との間で第2の通信を介してデータの送受信を行う期間中は、メモリ3との間ではデータの送受信を行わない。すなわち、第1の通信および第2の通信は、一方が通信動作を行う期間中は、他方は必ず非動作状態となる。このため、第1の通信が行われる際、配線パターンLb1〜Lb4には何ら信号は付与されない。また、第2の通信が行われる際、配線パターンLa1〜La4には何ら信号は付与されない。本実施形態では、このような点に着目し、以下のように、配線パターンLa1〜La4、Lb1〜Lb4およびガードパターンLg1、Lg2のレイアウトを工夫するとともに、MCU2の端子設定を工夫することで、通信動作時におけるEMC対策を施すようにしている。
【0022】
すなわち、第1の通信に用いられる配線パターンLa1〜La4と、第2の通信に用いられる配線パターンLb1〜Lb4とは、それらの大部分において、互いに交互に並行した状態でレイアウトされている。ガードパターンLg1は、配線パターンLa1の一部と並行した状態でレイアウトされている。ガードパターンLg2は、配線パターンLb1の一部と並行した状態でレイアウトされている。
【0023】
図2は、メモリ3と第1の通信を行う際のMCU2における端子PA1〜PA4、PB1〜PB4の設定(ポート設定)を示すフローチャートである。メモリ3と第1の通信を行う際、MCU2のCPUは、図2のステップS1〜S3を順次実行する。ステップS1は、I/Oポート設定であり、端子PA1〜PA4が通信ポートとして設定されるとともに、端子PB1〜PB4が出力ポートとして設定される。ステップS2では、出力ポートに設定された端子PB1〜PB4がLowレベル(0V)の信号を出力する状態に固定される。ステップS3では、端子PA1〜PA4を介して第1の通信用の信号が入出力される。このステップS3は、第1の通信が完了するまで継続され、その後、処理が終了となる。
【0024】
図3は、メモリ4と第2の通信を行う際の図2相当図である。メモリ4と第2の通信を行う際、MCU2のCPUは、図3のステップT1〜T3を順次実行する。ステップT1は、I/Oポート設定であり、端子PA1〜PA4が出力ポートとして設定されるとともに、端子PB1〜PB4が通信ポートとして設定される。ステップT2では、出力ポートに設定された端子PA1〜PA4がLowレベル(0V)の信号を出力する状態に固定される。ステップT3では、端子PB1〜PB4を介して第2の通信用の信号が入出力される。このステップT3は、第2の通信が終了するまで継続され、その後、処理が終了となる。
【0025】
上記した端子PB1〜PB4またはPA1〜PA4から0Vの信号が出力される状態(ステップS2またはステップT2の状態)は、0Vの信号を出力する端子がMCU2のグランド端子(図示せず)に接続された状態に相当する。MCU2のグランド端子は、プリント配線板1のグランド電位を持つ導体部分に接続されている(図示せず)。すなわち、ステップS2は、端子PB1〜PB4に接続される配線パターンLb1〜Lb4の電位をグランド電位に固定する第2の電位固定手段に相当する。また、ステップT2は、端子PA1〜PA4に接続される配線パターンLa1〜La4の電位をグランド電位に固定する第1の電位固定手段に相当する。
【0026】
次に、上記構成の作用および効果について説明する。
MCU2は、メモリ3との間で第1の通信を行う場合、最初にI/Oポート設定を行う(ステップS1)。そして、端子PB1〜PB4に0Vの電位を付与し(ステップS2)、端子PA1〜PA4を介して第1の通信用の信号の入出力を行う(ステップS3)。これにより、MCU2の端子PA1〜PA4と、メモリ3の端子Pa1〜Pa4との間では、配線パターンLa1〜La4を通じて通信用の信号が伝送される。
【0027】
また、このとき、配線パターンLa1〜La4のそれぞれの両側には、端子PB1〜PB4を介して0Vの電位が付与された配線パターンLb1〜Lb4、または常時0Vの電位が付与されたガードパターンLg1、Lg2のいずれかが配置された状態となっている。このように、上記構成によれば、第1の通信を行う際、通信用の信号が伝送されている配線パターンLa1〜La4の周囲を取り囲むように0Vの電位を持つ導体が配置された状態となるため、従来と同程度のEMC対策が施されていることになる。
【0028】
一方、MCU2は、メモリ4との間で第2の通信を行う場合、最初にI/Oポート設定を行う(ステップT1)。そして、端子PA1〜PA4に0Vの電位を付与し(ステップT2)、端子PB1〜PB4を介して第2の通信用の信号の入出力を行う(ステップT3)。これにより、MCU2の端子PB1〜PB4と、メモリ4の端子Pb1〜Pb4との間では、配線パターンLb1〜Lb4を通じて通信用の信号が伝送される。
【0029】
また、このとき、配線パターンLb1〜Lb4のそれぞれの両側には、端子PA1〜端子PA4を介して0Vの電位が付与された配線パターンLa1〜La4、または常時0Vの電位が付与されたガードパターンLg1、Lg2のいずれかが配置された状態となっている。このように、上記構成によれば、第2の通信を行う際、通信用の信号が伝送されている配線パターンLb1〜Lb4の周囲を取り囲むように0Vの電位を持つ導体が配置された状態となるため、従来と同程度のEMC対策が施されていることになる。
【0030】
上記構成によれば、配線パターンLa1〜La4およびLb1〜Lb4のうち最も外側の配線パターンの両隣にのみ、常にグランド電位(0V)に固定された導体である2つのガードパターンLg1、Lg2が配置される。つまり、ガードパターンはLg1、Lg2の2本あれば問題ない。一方、従来技術においては、上記ガードパターンは、通信用の信号線の数にさらに1本加えた本数だけ必要となる。つまり、従来技術の場合、本実施形態と同様の部品構成で同様の通信を行うのであれば、9本(=8+1本)のガードパターンが必要となる。従って、本実施形態によれば、従来技術と比較して、ガードパターンの数を大幅に削減することができる。さらに、従来技術において、必要となるガードパターンの本数は、通信用の信号線の増加に比例して増加するが、本実施形態では、通信用の信号線の数にかかわらず、ガードパターンは2本でよい。従って、上記した本実施形態により得られるガードパターンの削減効果は、通信用の信号線が増加するほど一層顕著となる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の通信および第2の通信のうちいずれか一方を行う際、このときには使用されない他方の通信に用いる端子を0Vに固定することで上記したノイズ対策を施すようにした。このため、第1の通信および第2の通信の通信性能自体には何ら影響を及ぼすことがない。つまり、本実施形態によれば、第1の通信および第2の通信を行う際、従来技術と同程度の通信性能を確保しつつ、配線パターンLa1〜La4およびLb1〜Lb4に対し外部からのノイズが重畳することを抑制できるとともに、配線パターンLa1〜La4およびLb1〜Lb4からノイズが放射されることを抑制できる。また、本実施形態によれば、常時0Vに固定されるガードパターンの数を従来技術に比べて大幅に削減可能となるため、その分だけ、プリント配線板1上において通信に関係する構成が占有する面積を大幅に削減することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図4を参照しながら説明する。
図4は、第1の実施形態における図1相当図であり、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。図4に示すプリント配線板21は、図1に示した第1の実施形態のプリント配線板1に対し、2つの単位プリント配線板21a、21bから構成されている点が異なっている。単位プリント配線板21a、21bは、いずれも多層プリント配線板として構成されている。また、MCU2は、単位プリント配線板21aに搭載され、メモリ3、4は単位プリント配線板21bに搭載されている。
【0033】
このように、本実施形態では、MCU2とメモリ3、4とが、互いに異なる単位プリント配線板21a、21bに搭載されているため、配線パターンLa1〜La4、Lb1〜Lb4およびガードパターンLg1、Lg2は、各単位プリント配線板21a、21b間において分断された状態となっている。また、本実施形態では、第1の実施形態の構成に加えて、さらに以下の構成を備えている。
【0034】
すなわち、単位プリント配線板21aには、上面から見た形状が長方形となっているコネクタ22、23が搭載されている。これらコネクタ22、23は、それぞれの長辺が隣接する状態で配置されている。コネクタ22(第1のコネクタに相当)は、4つの端子を有するものであり、各端子はそれぞれ配線パターンLa1〜La4と接続されている。コネクタ23(第2のコネクタに相当)は、4つの端子を有するものであり、各端子はそれぞれ配線パターンLb1〜Lb4と接続されている。一方、単位プリント配線板21bには、コネクタ22、23と同様の構成を有するコネクタ24、25が搭載されている。コネクタ24(第1のコネクタに相当)の各端子は、それぞれ配線パターンLa1〜La4に接続されている。コネクタ25(第2のコネクタに相当)の各端子は、それぞれ配線パターンLb1〜Lb4に接続されている。
【0035】
コネクタ22の各端子およびコネクタ24の各端子間は、それぞれ第1のケーブル群26により接続されている。第1のケーブル群26は、4本のケーブル26a〜26dから構成されている。コネクタ23の各端子およびコネクタ25の各端子間は、それぞれ第2のケーブル群27により接続されている。第2のケーブル群27は、4本のケーブル27a〜27dから構成されている。第1のケーブル群26および第2のケーブル群27は、配線パターンLa1〜La4に接続されたケーブルと、配線パターンLb1〜Lb4に接続されたケーブルとがそれぞれ螺旋状に組み合わされている。すなわち、第1のケーブル群26および第2のケーブル群27は、ケーブル26a、27aのペア、ケーブル26b、27bのペア、ケーブル26c、27cのペア、およびケーブル26d、27dのペアがそれぞれ螺旋状になった、いわゆるツイストペアケーブルとして構成されている。
【0036】
上記構成によれば、第1の通信が行われる際には、単位プリント配線板21a、21b間において、安定電位に固定された配線パターンLb1〜Lb4に接続されたケーブル27a〜27dが、第1の通信のための信号が伝送される配線パターンLa1〜La4に接続されたケーブル26a〜26dの周囲を取り囲むように配置された状態となる。また、第2の通信が行われる際には、単位プリント配線板21a、21b間において、安定電位に固定された配線パターンLa1〜La4に接続されたケーブル26a〜26dが、第2の通信のための信号が伝送される配線パターンLb1〜Lb4に接続されるケーブル27a〜27dを取り囲むように配置された状態となる。従って、上記構成によれば、互いに異なる単位プリント配線板21a、21bに搭載されたMCU2とメモリ3、4との間で第1の通信および第2の通信を行う場合でも、第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。
【0037】
さらに、コネクタ22、23は、それぞれの長辺が隣接した状態で単位プリント配線板21a上に配置されている。また、コネクタ24、25は、それぞれの長辺が隣接した状態で単位プリント配線板21b上に配置されている。このため、コネクタ22、24に接続される第1のケーブル群26の各ケーブル26a〜26dと、コネクタ23、25に接続される第2のケーブル群27の各ケーブル27a〜27dとを各コネクタの付近から螺旋状に組み合わせることが可能となる。従って、螺旋状に組み合わせた部分を極力多くすることができるため、ケーブル部分において耐ノイズ性能が低下することを抑止できる。
【0038】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、次のような変形または拡張が可能である。
第1の通信および第2の通信を行う電子部品としては、MCU2、メモリ3、4以外であってもよく、例えばDSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、各種システムLSI、ロジックICなど、通信を行う機能を有するものであればよい。
通信用信号線の本数は、4本に限らず、2本以上であれば何本でも構わない。また、第1の通信および第2の通信としては、パラレル通信に限らず、一方が通信動作中のときに他方の通信線の電位を安定電位に固定可能なものであればよく、シリアル通信であってもよい。
上記各実施形態では、MCU2とメモリ3との間で第1の通信を行い、MCU2とメモリ4との間で第2の通信を行う場合について説明したが、本発明は、電子部品同士の間で第1の通信および第2の通信を行う場合であれば適用可能である。例えば、本発明は、2つの電子部品(例えばMCUとシステムLSI)同士の間で、第1の通信および第2の通信を行う構成であっても適用可能である。
【0039】
プリント配線板1、21としては、多層のものに限らずともよく、例えば両面のプリント配線板であってもよい。その場合、ガードパターンLg1、Lg2は、ビアV3を介してはんだ面においてプリント配線板の基準電位となるグランド電位を持つ導体部分に接続すればよい。ガードパターンLg1、Lg2の電位および非動作時の配線パターンLa1〜La4、Lb1〜Lb4の電位は、電位の変動が少ない安定電位であればよい。ただし、これらの電位レベルが高いと耐ノイズ性能が低下する可能性があるため、出来る限り低い電位が望ましい。
上記各実施形態では、MCU2のポート設定(図2のステップS2、図3のステップT2)により、第1の電位固定手段および第2の電位固定手段としての機能を実現したが、これに限らずともよい。例えば、第1の通信を行う期間中に配線パターンLb1〜Lb4の電位を0Vに固定する電位付与回路をMCU2の外部に設けることにより第2の電位固定手段を実現してもよい。また、第2の通信を行う期間中に配線パターンLa1〜La4の電位を0Vに固定する電位付与回路をMCU2の外部に設けることにより第1の電位固定手段を実現してもよい。
【符号の説明】
【0040】
図面中、1はプリント配線板、2はMCU(電子部品)、3、4はメモリ(電子部品)、La1〜La4は配線パターン(通信用信号線、第1の通信線)、Lb1〜Lb4は配線パターン(通信用信号線、第2の通信線)、Lg1、Lg2はガードパターン、21はプリント配線板、21a、21bは単位プリント配線板、22、24はコネクタ(第1のコネクタ)、23、25はコネクタ(第2のコネクタ)、26は第1のケーブル群、27は第2のケーブル群、26a〜26d、27a〜27dはケーブルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機器のプリント配線板に搭載される電子部品同士の間で行われる通信に用いられる通信用信号線の配線構造であって、
前記通信用信号線は、第1の通信を前記電子部品同士の間で行うための複数の第1の通信線と、第2の通信を前記電子部品同士の間で行うための複数の第2の通信線とを含み、
前記第1の通信線と前記第2の通信線とは、少なくとも一部が交互に並行した状態で前記プリント配線板上に配線パターンとして形成され、
前記第1の通信線および前記第2の通信線の配線パターンのうち最も外側に形成された配線パターンと少なくとも一部が並行した状態で前記プリント配線板上に形成され、安定電位を持つガードパターンと、
前記第1の通信線の電位を前記安定電位に固定可能な第1の電位固定手段と、
前記第2の通信線の電位を前記安定電位に固定可能な第2の電位固定手段とを備え、
前記第1の通信は、前記第2の電位固定手段により前記第2の通信線の電位を固定するとともに、前記第1の電位固定手段により前記第1の通信線の電位を固定しない状態で実行され、
前記第2の通信は、前記第1の電位固定手段により前記第1の通信線の電位を固定するとともに、前記第2の電位固定手段により前記第2の通信線の電位を固定しない状態で実行されることを特徴とする産業機器の通信用信号線の配線構造。
【請求項2】
前記プリント配線板は、複数の単位プリント配線板から構成され、
前記第1の通信および前記第2の通信を行う前記電子部品のうち、一方の電子部品と他方の電子部品とは互いに異なる前記単位プリント配線板に搭載され、
前記複数の第1の通信線が接続される第1のコネクタと、
前記複数の第2の通信線が接続される第2のコネクタと、
前記第1のコネクタに接続され、前記一方の電子部品と前記他方の電子部品との間で、前記複数の第1の通信線をそれぞれ接続するための複数のケーブルからなる第1のケーブル群と、
前記第2のコネクタに接続され、前記一方の電子部品と前記他方の電子部品との間で、前記複数の第2の通信線をそれぞれ接続するための複数のケーブルからなる第2のケーブル群とを備え、
前記第1のコネクタおよび前記第2のコネクタは、それぞれの長辺が隣接する状態で前記単位プリント配線板上に配置され、
前記第1のケーブル群および前記第2のケーブル群は、前記第1の通信線に接続されたケーブルと前記第2の通信線に接続されたケーブルとがそれぞれ螺旋状に組み合わされていることを特徴とする請求項1記載の産業機器の通信用信号線の配線構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−187803(P2011−187803A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53027(P2010−53027)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】