産業用ロボット
【課題】アームを支持する支持部材を上下方向へ移動可能に支持する柱状部材を備えている場合であっても、比較的簡易な構成で、搬入される搬送対象物の位置ずれを抑制しつつその傾きを適切に補正することが可能な産業用ロボットを提供する。
【解決手段】産業用ロボット1は、搬送対象物が搭載されるハンド3と、ハンド3が連結されるアーム4と、アーム4を支持する支持部材6と、支持部材6を上下方向へ移動可能に支持する柱状部材7と、基台8と、柱状部材7の下端を支持するとともに基台8に対して回動可能な旋回部材9と、基台8に対して柱状部材7を上下方向に直交する所定方向へ相対移動させる移動機構10とを備えている。
【解決手段】産業用ロボット1は、搬送対象物が搭載されるハンド3と、ハンド3が連結されるアーム4と、アーム4を支持する支持部材6と、支持部材6を上下方向へ移動可能に支持する柱状部材7と、基台8と、柱状部材7の下端を支持するとともに基台8に対して回動可能な旋回部材9と、基台8に対して柱状部材7を上下方向に直交する所定方向へ相対移動させる移動機構10とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の搬送対象物を搬送する産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ用のガラス基板を搬送する産業用ロボットとして、ガラス基板が搭載される2個のハンドと、2個のハンドのそれぞれを保持する2本のアームとを有するいわゆるダブルアーム型のロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のロボットは、アームの基端側を回動可能に支持する支持部材と、支持部材を上下方向へ移動可能に支持するコラムとを備えている。このロボットでは、アームは、第1のアームと第2のアームとから構成されている。また、コラムの下端は、基台に回動可能に支持されており、この基台は、ベース部材に支持されている。基台は、ベース部材に対して水平方向へ直線状に移動可能となっている。このロボットは、ハンドが所定の方向を向いた状態で直線状に動くようにアームを伸縮させて、ガラス基板を搬送する。
【0003】
特許文献1に記載のロボット等によって搬送されるガラス基板は、このガラス基板が収納されるカセット等の収納部の中で、ガラス基板の搬出方向に対して傾いていたり、位置がずれていることがある。そこで、傾いていたり、位置がずれている状態で収納部に収納されるガラス基板の傾きや位置ずれを補正して、所定の作業位置へガラス基板を搬送するためのハンドの位置合わせ方法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。この特許文献2に記載の位置合わせ方法を特許文献1に記載のロボットに適用すれば、傾いていたり、位置がずれている状態で収納部に収納されるガラス基板の傾きや位置ずれを補正して、作業位置へガラス基板を搬入することが可能である。
【0004】
たとえば、特許文献1に記載のロボットにおいて、収納部に収納されたガラス基板の傾きがハンドに設けられたセンサによって検出された場合に、収納部から搬出されて作業位置へ搬入されるガラス基板の傾きが補正されるように、ベース部材に対して基台を所定方向へ移動させるとともに、コラムを基台に対して所定量、旋回させ、この状態で、アームを伸縮させて、収納部からガラス基板を搬出した後に、基台を逆方向へ移動させるとともにコラムを逆方向へ旋回させて、ガラス基板の傾きを補正してから、ガラス基板を作業位置へ搬入すれば、傾いた状態で収納部に収納されるガラス基板の傾きを補正して、作業位置へガラス基板を搬送することが可能である。また、このようにして、ガラス基板を搬送すれば、作業位置へ搬入されるガラス基板の、ベース部材に対する基台の移動方向における位置ずれを抑制することができる。なお、収納部からガラス基板を搬出した後にガラス基板の傾きを補正してガラス基板を作業位置へ搬入することも可能である。
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の位置合わせ方法を用いて、ガラス基板の傾きや位置ずれを補正する場合には、ベース部材に対して基台が水平方向へ移動可能となっていなければならないため、ロボットが大型化する。また、たとえば、ベース部材に対する基台の移動方向へハンドが直線状に動いて、ガラス基板を搬送する場合には、ガラス基板の傾きを補正することは可能であっても、ベース部材に対する基台の移動方向に直交する方向でのガラス基板の位置ずれを抑制することが困難になる場合がある。たとえば、ガラス基板を搬出する際またはガラス基板を搬入する際のいずれか一方において、ベース部材に対する基台の移動方向に直交する方向にハンドが直線状に動く場合には、このハンドの移動方向において、ベース部材に対する基台の移動方向の位置ずれを見越してガラス基板を搬送すれば位置ずれの補正は可能であるが、ハンド上でガラス基板をずらして搬送することになるため、補正量を充分に確保できない。また、ガラス基板を搬出する際およびガラス基板を搬入する際の両者において、ベース部材に対する基台の移動方向へハンドが直線状に動く場合には、ガラス基板の位置ずれの補正は不可能になる。一方で、従来、これらの問題を解消することが可能なロボットも知られている(たとえば、特許文献3参照)。
【0006】
特許文献3に記載のロボットは、基台の上面に固定された固定ベース部と、固定ベース部に対して上下方向に動作する上下アームと、上下アームに対して旋回自在な旋回アームと、旋回アームに固定された第1のアームベース部と、第1のアームベース部に対して水平方向に直線状に移動する第1の直動アームと、第1の直動アームに固定された第2のアームベース部と、第1の直動アームと直交する方向に直線状に移動する第2の直動アームと、第2の直動アームに固定されるハンドとを備えている。このロボットでは、旋回アームと第2のアームベース部との間に第1のアームベース部および第1の直動アームが配置されているため、上述の問題を解消して、作業位置へ搬入される搬送対象物の位置ずれを抑制しつつその傾きを補正することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3973048号公報
【特許文献2】特開2003−117862号公報
【特許文献3】特開2004−196438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のロボットのようにアームを支持する支持部材を上下方向へ移動可能に支持するコラムを有するロボットに、特許文献3に記載の構成をそのまま適用する場合には、以下の問題が生じる。すなわち、支持部材を支持するコラムを有するロボットに特許文献3に記載の構成をそのまま適用する場合には、アームと支持部材との間に、特許文献3に記載の第1のアームベース部および第1の直動アームに相当する構成を配置する必要があるが、たとえば、ロボットがダブルアーム型のロボットである場合には、第1のアームベース部および第1の直動アームに相当する構成が2個必要となり、ロボットの構成が複雑になる。また、アームと支持部材との間に、第1のアームベース部および第1の直動アームに相当する構成を配置する場合には、第1の直動アームに相当する構成が直線状に移動したときのアームとコラムとの干渉を防止する必要があるため、第1の直動アームに相当する構成の移動量が制限されるおそれがある。したがって、支持部材を支持するコラムを有するロボットに特許文献3に記載の構成をそのまま適用すると、ガラス基板の傾きによっては、その傾きを適切に補正することが困難になるおそれがある。
【0009】
そこで、本発明の課題は、アームを支持する支持部材を上下方向へ移動可能に支持する柱状部材を備えている場合であっても、比較的簡易な構成で、搬入される搬送対象物の位置ずれを抑制しつつその傾きを適切に補正することが可能な産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットは、搬送対象物が搭載されるハンドと、ハンドが連結されるアームと、アームを支持する支持部材と、支持部材を上下方向へ移動可能に支持する柱状部材と、基台と、柱状部材の下端を支持するとともに基台に対して回動可能な旋回部材と、基台に対して柱状部材を上下方向に直交する所定方向へ相対移動させる移動機構とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の産業用ロボットは、基台に対して柱状部材を上下方向に直交する所定方向へ相対移動させる移動機構を備えている。そのため、搬送対象物の傾きが検出されたときには、基台に対して柱状部材を相対移動させるとともに基台に対して旋回部材を回動させれば、搬入される搬送対象物の位置ずれを抑制しつつその傾きを補正することが可能になる。すなわち、基台を水平方向へ移動させるための機構を備えていなくても、搬入される搬送対象物の位置ずれを抑制しつつその傾きを補正することが可能になる。
【0012】
また、本発明では、移動機構は、基台に対して柱状部材を相対移動させるため、たとえば、産業用ロボットがダブルアーム型のロボットであっても2個の移動機構を配置する必要がない。したがって、産業用ロボットの構成を簡素化することが可能になる。また、本発明では、支持部材にアームが支持されており、移動機構は、支持部材を支持する柱状部材を基台に対して相対移動させるため、柱状部材が基台に対して相対移動する際に、柱状部材とアームとが干渉するおそれがない。したがって、柱状部材の移動量を確保することが可能になり、搬入される搬送対象物の傾きが大きくても搬送対象物の傾きを適切に補正することが可能になる。
【0013】
このように、本発明では、アームを支持する支持部材を上下方向へ移動可能に支持する柱状部材を産業用ロボットが備えている場合であっても、比較的簡易な構成で、搬入される搬送対象物の位置ずれを抑制しつつその傾きを適切に補正することが可能になる。また、本発明では、搬送対象物が傾いてはいないが位置ずれを起こしている場合には、移動機構によって、基台に対して柱状部材を移動させることで、この位置ずれを補正することが可能になる。また、本発明では、移動機構によって、基台に対して柱状部材を移動させることで、産業用ロボットの設置誤差や組立誤差を補正することが可能になる。
【0014】
本発明において、たとえば、旋回部材は、基台から柱状部材に向かって延びる細長いブロック状に形成されるとともに、基台に回動可能に保持される第1旋回部と、柱状部材の下端が固定される第2旋回部とを備え、移動機構は、第1旋回部と第2旋回部との間に配置され、第2旋回部は、第1旋回部に対して直線状に相対移動可能となっている。
【0015】
この場合には、支持部材は、柱状部材から旋回部材と略平行に延びるように形成される細長いブロック状のアーム支持部を備え、アーム支持部の基端側は、柱状部材側に配置され、アームは、アーム支持部の先端側に支持されていることが好ましい。このように構成すると、第2旋回部、柱状部材、支持部材、アームおよびハンド等によって構成される構造体の重心の下側に移動機構を配置することが可能になる。したがって、移動機構に過剰な外力が作用するのを抑制することが可能になる。
【0016】
また、この場合には、移動機構は、上下方向から見たときにアーム支持部の長手方向において、柱状部材とアームの基端との間に配置されていることが好ましい。このように構成すると、デッドスペースとなりやすい柱状部材とアームの基端との間に移動機構を配置することが可能になる。したがって、産業用ロボットが移動機構を備えている場合であっても、産業用ロボットを小型化することが可能になる。
【0017】
本発明において、移動機構は、柱状部材の下端と旋回部材との間に配置されても良い。
【0018】
本発明において、移動機構は、たとえば、モータと、モータの出力軸に連結されるネジ部材と、ネジ部材のオネジ部に螺合するメネジ部を有するナット部材と、リニアガイドとを備えている。
【0019】
本発明において、産業用ロボットは、上下方向に直交する所定方向へ基台を移動させる水平移動機構を備えていても良い。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の産業用ロボットでは、アームを支持する支持部材を上下方向へ移動可能に支持する柱状部材を備えている場合であっても、比較的簡易な構成で、搬入される搬送対象物の位置ずれを抑制しつつその傾きを適切に補正することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットの平面図である。
【図2】図1のE−E方向から産業用ロボットを示す側面図である。
【図3】図1のF−F方向から産業用ロボットを示す正面図である。
【図4】図2に示す移動機構およびその周辺部の構成を説明するための平面図である。
【図5】図4のG−G方向から移動機構およびその周辺部の構成を説明するための図である。
【図6】図4のH部の拡大図である。
【図7】図6のJ−J方向から移動機構を説明するための図である。
【図8】図1に示す基板が傾いた状態で収納されているときの産業用ロボットの動作を説明するための平面図である。
【図9】本発明の他の実施の形態にかかる移動機構の配置を説明するための図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図10】本発明の他の実施の形態にかかる移動機構の配置を説明するための図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図11】本発明の他の実施の形態にかかる移動機構の配置を説明するための平面図である。
【図12】本発明の他の実施の形態にかかる旋回部材の構成を説明するための平面図である。
【図13】本発明の他の実施の形態にかかる産業用ロボットの平面図である。
【図14】本発明の他の実施の形態にかかる産業用ロボットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
(産業用ロボットの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1の平面図である。図2は、図1のE−E方向から産業用ロボット1を示す側面図である。図3は、図1のF−F方向から産業用ロボット1を示す正面図である。なお、以下の説明では、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とする。本形態では、Z方向が上下方向と一致する。また、以下の説明では、X方向を前後方向、Y方向を左右方向とする。
【0024】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、搬送対象物である液晶ディスプレイ用のガラス基板2(以下、「基板2」とする。)を搬送するための搬送用の多関節型ロボットである。図1〜図3に示すように、ロボット1は、基板2が搭載される2個のハンド3と、2個のハンド3のそれぞれが先端側に連結される2本のアーム4と、2本のアーム4を支持する本体部5とを備えている。本体部5は、2本のアーム4の基端側を支持する支持部材6と、支持部材6を上下方向へ移動可能に支持する柱状部材7と、本体部5の下端部分を構成する基台8と、柱状部材7の下端を支持するとともに基台8に対して回動可能な旋回部材9と、基台8に対して柱状部材7を水平方向へ相対移動させる移動機構10とを備えている。
【0025】
なお、本形態において、基板2の位置ずれとは、所定の基準位置に正しい姿勢で配置されたときの基板2に対して、前後方向および/または左右方向に基板2が平行にずれている状態をいう。また、基板2の傾きとは、所定の基準位置に正しい姿勢で配置されたときの基板2の中心O(図1参照)と中心Oは一致しているが、中心Oを中心にして基板2が所定角度傾いている状態をいう。
【0026】
ハンド3の基端側は、アーム4の先端側に回動可能に連結されている。このハンド3には、上述の特許文献2に記載の産業用ロボットと同様に、所定の収納位置に収納された基板2の傾き(具体的には、前後方向等の基板2の搬出方向に対する基板2の傾き)を検出するためのセンサ(図示省略)が取り付けられている。なお、上述の特許文献2に記載の産業用ロボットと同様に、支持部材6には、基板2の端面を検出するためのエッジセンサが取り付けられている。また、基板2の傾きを検出するためのセンサは、ロボット1に取り付けられる以外に、基板2の収納位置に取り付けられる場合もある。
【0027】
アーム4は、第1アーム部13と第2アーム部14との2個のアーム部を備えている。第1アーム部13の基端側は、支持部材6の先端側に回動可能に支持されている。第2アーム部14の基端側は、第1アーム部13の先端側に回動可能に支持されている。第2アーム部14の先端側には、ハンド3の基端側が回動可能に支持されている。本形態のロボット1は、本体部5に対してアーム4を伸縮させるための駆動用モータ(図示省略)を備えており、この駆動用モータが起動すると、ハンド3が所定方向を向いた状態で直線状に動くように、アーム4が伸縮する。
【0028】
支持部材6は、支持部材6の基端側部分を構成する昇降部15と、2本のアーム4のそれぞれを支持する2個のアーム支持部16とを備えている。昇降部15は、柱状部材7に上下動可能に保持されている。アーム支持部16は、ハンド3の移動方向に直交する方向を長手方向とする細長い扁平なブロック状に形成されている。2個のアーム支持部16の基端は、昇降部15に固定されている。アーム支持部16の先端側には、第2アーム部14の基端側が回動可能に保持されている。本形態では、2個のハンド3、2本のアーム4および2個のアーム支持部16が上下方向に重なるように配置されている。すなわち、本形態のロボット1は、ダブルアーム型のロボットである。
【0029】
柱状部材7は、旋回部材9に固定される第1柱部17と、昇降部15を上下方向へ移動可能に保持する第2柱部18とを備えている。第2柱部18は、第1柱部17に対して上下方向へ移動可能となっている。
【0030】
旋回部材9は、基台8から柱状部材7に向かって延びる細長い扁平なブロック状に形成されている。この旋回部材9は、図1に示すように、アーム支持部16と略平行に配置されている。すなわち、旋回部材9は、アーム支持部16と略平行に延びるように形成されている。なお、本形態では、旋回部材9の長手方向は、アーム支持部16の長手方向に対してわずかに傾いている。具体的には、柱状部材7から基台8に向かうにしたがって、アーム支持部16と旋回部材9との距離が近づくように、旋回部材9の長手方向は、アーム支持部16の長手方向に対してわずかに傾いている。そのため、本形態では、アーム4が縮んだ状態で旋回するロボット1の旋回半径を小さくすることが可能である。
【0031】
また、旋回部材9は、基台8に回動可能に保持される第1旋回部20と、柱状部材7の下端が固定される第2旋回部21とを備えており、第1旋回部20の先端側と第2旋回部21の基端側とが連結されている。また、第1旋回部20の基端側は、基台8に連結され、第2旋回部21の先端側には、第1柱部17の下端が固定されている。第2旋回部21は、第1旋回部20に対して、アーム支持部16の長手方向と平行な方向(すなわち、ハンド3の移動方向に直交する方向)に直線状に相対移動可能となっている。なお、第1旋回部20および第2旋回部21は、中空状に形成されている。
【0032】
移動機構10は、図2に示すように、第1旋回部20と第2旋回部21との間に配置されている。すなわち、移動機構10は、第1旋回部20と第2旋回部21との連結部に配置されている。以下、移動機構10およびその周辺部の構成について説明する。
【0033】
なお、上述のように、第2柱部18は、第1柱部17に対して上下方向へ移動可能となっており、また、昇降部15は、第2柱部18に対して上下方向へ移動可能となっている。すなわち、ロボット1は、第2柱部18および昇降部15を昇降させる昇降機構(図示省略)を備えている。また、旋回部材9は、基台8に対して回動可能となっている。すなわち、ロボット1は、旋回部材9を回動させる旋回機構(図示省略)を備えている。
【0034】
(移動機構およびその周辺部の構成)
図4は、図2に示す移動機構10およびその周辺部の構成を説明するための平面図である。図5は、図4のG−G方向から移動機構10およびその周辺部の構成を説明するための図である。図6は、図4のH部の拡大図である。図7は、図6のJ−J方向から移動機構10を説明するための図である。
【0035】
図5に示すように、第2旋回部21は、側面から見たときの形状が2回折れ曲がった階段状となるように形成されており、第1柱部17の下端が固定される固定部21aと、第1旋回部20に連結される連結部21bとを備えている。固定部21aと連結部21bとは、互いに略平行に配置されるとともに、連結部21bは、固定部21aよりも上側に配置されている。また、連結部21bは、第1旋回部20の先端側と上下方向で重なっている。具体的には、連結部21bは、第1旋回部20の先端側の上側に配置されている。また、固定部21aは、第1旋回部20と略同じ高さに配置されている。
【0036】
移動機構10は、図4に示すように、上下方向から見たときに、アーム支持部16の長手方向において、アーム4の基端側を支持するアーム支持部16の先端側と柱状部材7との間に配置されている。すなわち、移動機構10は、上下方向から見たときに、アーム支持部16の長手方向において、アーム4の基端と柱状部材7との間に配置されている。また、移動機構10は、駆動源となる回転型のモータ25と、モータ25の出力軸に連結されるネジ部材としてのボールネジ26と、ボールネジ26のオネジ部に螺合するメネジ部を有するナット部材27と、リニアガイド28とを備えている。
【0037】
モータ25は、図5に示すように、第2旋回部21の連結部21bの内部に配置されている。また、モータ25は、連結部21bの内部に固定されている。モータ25の出力軸には、減速機29が取り付けられている。減速機29の出力軸には、カップリング30を介してボールネジ26が取り付けられている。すなわち、ボールネジ26は、減速機29およびカップリング30を介してモータ25の出力軸に連結されている。また、ボールネジ26は、第2旋回部21に固定される軸受31に回転可能に支持されている。ナット部材27は、図5に示すように、ブラケット32に固定されており、連結部21bの内部に配置されている。ブラケット32は、第1旋回部20の先端側の上面に固定されている。
【0038】
リニアガイド28は、ガイドレール33と、ガイドレール33に係合するとともにガイドレール33に沿ってスライドするガイドブロック34とを備えている。図7に示すように、ガイドレール33は、第1旋回部20の先端側の上面に固定されている。ガイドブロック34は、第2旋回部21の連結部21bの下面に固定されている。リニアガイド28は、図6に示すように、上下方向から見たときに、モータ25、ボールネジ26およびナット部材27等の両側に配置されている。
【0039】
移動機構10では、モータ25が起動すると、ボールネジ26が回転して、図4の二点鎖線で示すように、第1旋回部20に対して、第2旋回部21がアーム支持部16の長手方向へ移動する。
【0040】
(産業用ロボットの概略動作)
図8は、図1に示す基板2が傾いた状態で収納されているときの産業用ロボット1の動作を説明するための平面図である。
【0041】
以上のように構成されたロボット1では、第1柱部17に対して第2柱部18が上下動するとともに、第2柱部18に対して支持部材6がハンド3およびアーム4等と一緒に上下動する。また、本体部5に対してアーム4が伸縮する。具体的には、ハンド3が所定方向を向いた状態で直線状に動くようにアーム4が伸縮する。さらに、基台8に対して旋回部材9が回動する。これらの動作の組合せによって、ロボット1は、基板2が収納される収納位置から基板2に所定の作業が行われる作業位置へ基板2を搬送する。
【0042】
ここで、本形態では、ロボット1は、収納位置に収納された基板2を搬出する際に、まず、ハンド3を伸縮させて、ハンド3に設けられたセンサによって、基板2の搬出方向に対する基板2の傾きを検出する。この基板2の傾き検出動作で、基板2の傾きが検出されなければ(あるいは、基板2の傾きが規定値以下であれば)、ロボット1は、再び、ハンド3を伸縮させて、収納位置から基板2を搬出し、搬出した基板2を所定の作業位置へ搬入する。このとき、収納位置で基板2を搭載する際のロボット1の状態は、図8の二点鎖線で示す状態となる。すなわち、このときには、ハンド3は、基板2の搬出方向と略平行になっている。
【0043】
一方、基板2の傾き検出動作で、基板2の傾きが検出されると(あるいは、検出された基板2の傾きが規定値を超えていると)、基板2の搬出方向に略直交する方向での基板2の位置ずれを抑制しつつ基板2の傾きを補正するため、ロボット1は、基台8に対して旋回部材9を所定量、回動させるとともに、モータ25を起動させて、第1旋回部20に対して第2旋回部21をアーム支持部16の長手方向へ移動させる。すなわち、基台8に対して柱状部材7をアーム支持部16の長手方向へ移動させる。その後、ロボット1は、ハンド3を伸縮させて、収納位置から基板2を搬出する。このとき、収納位置で基板2を搭載する際のロボット1の状態は、図5の実線で示す状態となる。すなわち、このときには、ハンド3は、基板2の搬出方向に対して、基板2の傾きと同程度傾いている。また、ロボット1は、基板2を搬出した後に、モータ25を起動させて、先程の移動方向と逆方向へ第2旋回部21を移動させるとともに先程の回動方向と逆方向へ旋回部材9を所定量、回動させる。その後、ロボット1は、ハンド3を伸縮させて、基板2を作業位置へ搬入する。
【0044】
このように、本形態では、基板2の傾きに応じて基台8に対して旋回部材9を所定量、回動させるとともに、第1旋回部20に対して第2旋回部21を移動させた状態で、収納位置から基板2を搬出し、その後、旋回部材9を逆方向へ所定量、回動させるとともに、第2旋回部21を逆方向へ移動させてから、基板2を作業位置へ搬入するため、収納位置に収納された基板2の傾きは、基板2の搬出方向に直交する方向における基板2の位置ずれが抑制された状態で作業位置へ搬入される際に補正される。なお、基板2の傾き検出動作によって、基板2の傾きが検出された場合に、基台8に対して旋回部材9を回動させ、また、第1旋回部20に対して第2旋回部21を移動させながら、アーム4を伸縮させても良い。
【0045】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のロボット1は、基台8に対して柱状部材7をハンド3の移動方向に直交する方向へ相対移動させる移動機構10を備えている。そのため、基板2の傾きが検出されたときには、基台8に対して柱状部材7を相対移動させるとともに基台8に対して旋回部材9を回動させれば、搬入される基板2の位置ずれを抑制しつつその傾きを補正することが可能になる。すなわち、基台8を水平方向へ移動させるための機構を備えていなくても、搬入される基板2の位置ずれを抑制しつつその傾きを補正することが可能になる。
【0046】
また、本形態では、移動機構10は、基台8に対して柱状部材7を相対移動させるため、ロボット1がダブルアーム型のロボットであっても2個の移動機構10を配置する必要がない。したがって、ロボット1の構成を簡素化することが可能になる。また、本形態では、支持部材6にアーム4が支持されており、移動機構10は、支持部材6を支持する柱状部材7を基台8に対して相対移動させるため、柱状部材7が基台8に対して相対移動する際に、柱状部材7とアーム4とが干渉するおそれがない。したがって、本形態では、柱状部材7の移動量を確保することが可能になり、搬入される基板2の傾きが大きくても基板2の傾きを適切に補正することが可能になる。
【0047】
このように、本形態では、アーム4を支持する支持部材6を上下方向へ移動可能に支持する柱状部材7をロボット1が備えている場合であっても、比較的簡易な構成で、搬入される基板2の位置ずれを抑制しつつその傾きを適切に補正することが可能になる。また、本形態では、基板2が傾いてはいないが基板2の搬出方向に直交する方向で位置ずれを起こしている場合に、基台8に対して柱状部材7を移動させることで、この位置ずれを補正することが可能になる。また、本形態では、移動機構10によって、基台8に対して柱状部材7を移動させることで、ロボット1の設置誤差や組立誤差を補正することが可能になる。そのため、ロボット1の設置や組立を容易に行うことが可能になる。
【0048】
本形態では、移動機構10は、第1旋回部20と第2旋回部21との間に配置されている。また、柱状部材7から旋回部材9と略平行に延びるように形成されるアーム支持部16の基端側は、柱状部材7側に配置され、アーム4は、アーム支持部16の先端側に支持されている。そのため、第2旋回部21、柱状部材7、支持部材6、アーム4およびハンド3等によって構成される構造体の重心の下側に移動機構10を配置することが可能になる。したがって、リニアガイド28に過剰な外力が作用するのを抑制することが可能になる。
【0049】
本形態では、移動機構10は、上下方向から見たときにアーム支持部16の長手方向において、柱状部材7とアーム4の基端との間に配置されている。そのため、デッドスペースとなりやすい柱状部材7とアーム4の基端との間に、第1旋回部20の基端側と第2旋回部21の連結部21bとを上下方向に重ねて配置するとともに移動機構10を配置することが可能になる。したがって、第1旋回部20の基端側と第2旋回部21の連結部21bとが上下方向に重なるように配置され、また、第1旋回部20と第2旋回部21との間に移動機構10が配置されていても、ロボット1を小型化することが可能になる。
【0050】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0051】
上述した形態では、モータ25は、第2旋回部21の連結部21bの内部に固定され、ナット部材27は、ブラケット32を介して第1旋回部20に固定されている。この他にもたとえば、図9に示すように、第1旋回部20の先端側の内部にモータ25が固定され、第2旋回部21の内部にナット部材27が固定されても良い。
【0052】
上述した形態では、移動機構10は、第1旋回部20と第2旋回部21との間に配置されている。この他にもたとえば、図10に示すように、移動機構10は、柱状部材7の下端(すなわち、第1柱部17の下端)と旋回部材9との間に配置されても良い。すなわち、移動機構10は、柱状部材7と旋回部材9との連結部に配置されても良い。この場合には、第1旋回部20と第2旋回部21との2個の部材によって旋回部材9が構成される必要はなく、旋回部材9は、図10に示すように、1個の部材によって構成される。また、この場合には、たとえば、モータ25が旋回部材9の内部に固定され、ナット部材27が第1柱部17の下端に固定される。また、たとえば、ガイドレール33は、旋回部材9の先端側の上面に固定され、ガイドブロック34は、第1柱部17の下端に固定される。
【0053】
上述した形態では、旋回部材9の長手方向は、アーム支持部16の長手方向に対してわずかに傾いており、第2旋回部21は、第1旋回部20に対してアーム支持部16の長手方向へ直線状に相対移動する。この他にもたとえば、図11に示すように、アーム支持部16の長手方向に対してわずかに傾く旋回部材9の長手方向(矢印Vの方向)へ、第1旋回部20に対して第2旋回部21が相対移動するように、移動機構10が配置されても良い。また、旋回部材9の長手方向以外の方向であって、かつ、ハンド3の移動方向に一致しない方向(たとえば、ハンド3の移動方向に対して所定角度傾く方向)へ第1旋回部20に対して第2旋回部21が相対移動するように、移動機構10が配置されても良い。
【0054】
上述した形態では、旋回部材9の長手方向は、アーム支持部16の長手方向に対してわずかに傾いている。この他にもたとえば、図12に示すように、旋回部材9の第1旋回部20は、上下方向から見たときに、アーム支持部16の長手方向と平行な方向を長手方向とする略長方形状に形成されても良い。この場合には、第2旋回部21は、たとえば、上下方向から見たときの形状が2回折れ曲がった階段状になるように形成されており、連結部21bは、第1旋回部20の先端側の上側に配置されている。なお、旋回部材9の全体の長手方向がアーム支持部16の長手方向と平行になるように、旋回部材9が形成されても良い。
【0055】
上述した形態では、本体部5は、水平方向へ移動可能となっていないが、本体部5は、水平方向へ移動可能となっていても良い。すなわち、ロボット1は、図13、図14に示すように、水平方向(たとえば、左右方向)へ移動可能に基台8を支持するベース部材40と、ベース部材40に対して基台8を水平方向へ移動させる水平移動機構とを備えていても良い。
【0056】
上述した形態では、支持部材6は、アーム支持部16を備えており、アーム4の基端側は、アーム支持部16の先端側に支持されている。この他にもたとえば、支持部材6が昇降部15によって構成されるとともに、アーム4の基端側が昇降部15に支持されても良い。また、上述した形態では、移動機構10は、回転型のモータ25と、ボールネジ26と、ナット部材27とを備えているが、移動機構10は、リニアモータであっても良い。
【0057】
上述した形態では、第1柱部17に対して第2柱部18が上下方向へ移動可能となっている。この他にもたとえば、第1柱部17の所定の位置に第2柱部18が固定されても良い。この場合には、第2柱部18に保持された昇降部15のみが上下方向へ移動する。また、上述した形態では、柱状部材7は、第1柱部17と第2柱部18とを備えているが、柱状部材7は、1個の柱部で構成されても良い。この場合には、この柱部に昇降部15が上下方向へ移動可能に保持される。
【0058】
上述した形態では、アーム4は、第1アーム部13と第2アーム部14との2個のアーム部によって構成されているが、アーム4は、3個以上のアーム部によって構成されても良い。また、上述した形態では、ロボット1は、2個のハンド3および2個のアーム4等を備えるいわゆるダブルアーム型のロボットであるが、ロボット1は、1個のハンド3および1個のアーム4等を備えるシングルアーム型のロボットであっても良い。また、上述した形態では、ロボット1によって搬送される搬送対象物は基板2であるが、ロボット1によって搬送される搬送対象物は、基板2以外の半導体ウエハ等であっても良い。
【符号の説明】
【0059】
1 ロボット(産業用ロボット)
2 基板(ガラス基板、搬送対象物)
3 ハンド
4 アーム
6 支持部材
7 柱状部材
8 基台
9 旋回部材
10 移動機構
16 アーム支持部
20 第1旋回部
21 第2旋回部
25 モータ
26 ボールネジ(ネジ部材)
27 ナット部材
28 リニアガイド
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の搬送対象物を搬送する産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ用のガラス基板を搬送する産業用ロボットとして、ガラス基板が搭載される2個のハンドと、2個のハンドのそれぞれを保持する2本のアームとを有するいわゆるダブルアーム型のロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のロボットは、アームの基端側を回動可能に支持する支持部材と、支持部材を上下方向へ移動可能に支持するコラムとを備えている。このロボットでは、アームは、第1のアームと第2のアームとから構成されている。また、コラムの下端は、基台に回動可能に支持されており、この基台は、ベース部材に支持されている。基台は、ベース部材に対して水平方向へ直線状に移動可能となっている。このロボットは、ハンドが所定の方向を向いた状態で直線状に動くようにアームを伸縮させて、ガラス基板を搬送する。
【0003】
特許文献1に記載のロボット等によって搬送されるガラス基板は、このガラス基板が収納されるカセット等の収納部の中で、ガラス基板の搬出方向に対して傾いていたり、位置がずれていることがある。そこで、傾いていたり、位置がずれている状態で収納部に収納されるガラス基板の傾きや位置ずれを補正して、所定の作業位置へガラス基板を搬送するためのハンドの位置合わせ方法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。この特許文献2に記載の位置合わせ方法を特許文献1に記載のロボットに適用すれば、傾いていたり、位置がずれている状態で収納部に収納されるガラス基板の傾きや位置ずれを補正して、作業位置へガラス基板を搬入することが可能である。
【0004】
たとえば、特許文献1に記載のロボットにおいて、収納部に収納されたガラス基板の傾きがハンドに設けられたセンサによって検出された場合に、収納部から搬出されて作業位置へ搬入されるガラス基板の傾きが補正されるように、ベース部材に対して基台を所定方向へ移動させるとともに、コラムを基台に対して所定量、旋回させ、この状態で、アームを伸縮させて、収納部からガラス基板を搬出した後に、基台を逆方向へ移動させるとともにコラムを逆方向へ旋回させて、ガラス基板の傾きを補正してから、ガラス基板を作業位置へ搬入すれば、傾いた状態で収納部に収納されるガラス基板の傾きを補正して、作業位置へガラス基板を搬送することが可能である。また、このようにして、ガラス基板を搬送すれば、作業位置へ搬入されるガラス基板の、ベース部材に対する基台の移動方向における位置ずれを抑制することができる。なお、収納部からガラス基板を搬出した後にガラス基板の傾きを補正してガラス基板を作業位置へ搬入することも可能である。
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の位置合わせ方法を用いて、ガラス基板の傾きや位置ずれを補正する場合には、ベース部材に対して基台が水平方向へ移動可能となっていなければならないため、ロボットが大型化する。また、たとえば、ベース部材に対する基台の移動方向へハンドが直線状に動いて、ガラス基板を搬送する場合には、ガラス基板の傾きを補正することは可能であっても、ベース部材に対する基台の移動方向に直交する方向でのガラス基板の位置ずれを抑制することが困難になる場合がある。たとえば、ガラス基板を搬出する際またはガラス基板を搬入する際のいずれか一方において、ベース部材に対する基台の移動方向に直交する方向にハンドが直線状に動く場合には、このハンドの移動方向において、ベース部材に対する基台の移動方向の位置ずれを見越してガラス基板を搬送すれば位置ずれの補正は可能であるが、ハンド上でガラス基板をずらして搬送することになるため、補正量を充分に確保できない。また、ガラス基板を搬出する際およびガラス基板を搬入する際の両者において、ベース部材に対する基台の移動方向へハンドが直線状に動く場合には、ガラス基板の位置ずれの補正は不可能になる。一方で、従来、これらの問題を解消することが可能なロボットも知られている(たとえば、特許文献3参照)。
【0006】
特許文献3に記載のロボットは、基台の上面に固定された固定ベース部と、固定ベース部に対して上下方向に動作する上下アームと、上下アームに対して旋回自在な旋回アームと、旋回アームに固定された第1のアームベース部と、第1のアームベース部に対して水平方向に直線状に移動する第1の直動アームと、第1の直動アームに固定された第2のアームベース部と、第1の直動アームと直交する方向に直線状に移動する第2の直動アームと、第2の直動アームに固定されるハンドとを備えている。このロボットでは、旋回アームと第2のアームベース部との間に第1のアームベース部および第1の直動アームが配置されているため、上述の問題を解消して、作業位置へ搬入される搬送対象物の位置ずれを抑制しつつその傾きを補正することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3973048号公報
【特許文献2】特開2003−117862号公報
【特許文献3】特開2004−196438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のロボットのようにアームを支持する支持部材を上下方向へ移動可能に支持するコラムを有するロボットに、特許文献3に記載の構成をそのまま適用する場合には、以下の問題が生じる。すなわち、支持部材を支持するコラムを有するロボットに特許文献3に記載の構成をそのまま適用する場合には、アームと支持部材との間に、特許文献3に記載の第1のアームベース部および第1の直動アームに相当する構成を配置する必要があるが、たとえば、ロボットがダブルアーム型のロボットである場合には、第1のアームベース部および第1の直動アームに相当する構成が2個必要となり、ロボットの構成が複雑になる。また、アームと支持部材との間に、第1のアームベース部および第1の直動アームに相当する構成を配置する場合には、第1の直動アームに相当する構成が直線状に移動したときのアームとコラムとの干渉を防止する必要があるため、第1の直動アームに相当する構成の移動量が制限されるおそれがある。したがって、支持部材を支持するコラムを有するロボットに特許文献3に記載の構成をそのまま適用すると、ガラス基板の傾きによっては、その傾きを適切に補正することが困難になるおそれがある。
【0009】
そこで、本発明の課題は、アームを支持する支持部材を上下方向へ移動可能に支持する柱状部材を備えている場合であっても、比較的簡易な構成で、搬入される搬送対象物の位置ずれを抑制しつつその傾きを適切に補正することが可能な産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットは、搬送対象物が搭載されるハンドと、ハンドが連結されるアームと、アームを支持する支持部材と、支持部材を上下方向へ移動可能に支持する柱状部材と、基台と、柱状部材の下端を支持するとともに基台に対して回動可能な旋回部材と、基台に対して柱状部材を上下方向に直交する所定方向へ相対移動させる移動機構とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の産業用ロボットは、基台に対して柱状部材を上下方向に直交する所定方向へ相対移動させる移動機構を備えている。そのため、搬送対象物の傾きが検出されたときには、基台に対して柱状部材を相対移動させるとともに基台に対して旋回部材を回動させれば、搬入される搬送対象物の位置ずれを抑制しつつその傾きを補正することが可能になる。すなわち、基台を水平方向へ移動させるための機構を備えていなくても、搬入される搬送対象物の位置ずれを抑制しつつその傾きを補正することが可能になる。
【0012】
また、本発明では、移動機構は、基台に対して柱状部材を相対移動させるため、たとえば、産業用ロボットがダブルアーム型のロボットであっても2個の移動機構を配置する必要がない。したがって、産業用ロボットの構成を簡素化することが可能になる。また、本発明では、支持部材にアームが支持されており、移動機構は、支持部材を支持する柱状部材を基台に対して相対移動させるため、柱状部材が基台に対して相対移動する際に、柱状部材とアームとが干渉するおそれがない。したがって、柱状部材の移動量を確保することが可能になり、搬入される搬送対象物の傾きが大きくても搬送対象物の傾きを適切に補正することが可能になる。
【0013】
このように、本発明では、アームを支持する支持部材を上下方向へ移動可能に支持する柱状部材を産業用ロボットが備えている場合であっても、比較的簡易な構成で、搬入される搬送対象物の位置ずれを抑制しつつその傾きを適切に補正することが可能になる。また、本発明では、搬送対象物が傾いてはいないが位置ずれを起こしている場合には、移動機構によって、基台に対して柱状部材を移動させることで、この位置ずれを補正することが可能になる。また、本発明では、移動機構によって、基台に対して柱状部材を移動させることで、産業用ロボットの設置誤差や組立誤差を補正することが可能になる。
【0014】
本発明において、たとえば、旋回部材は、基台から柱状部材に向かって延びる細長いブロック状に形成されるとともに、基台に回動可能に保持される第1旋回部と、柱状部材の下端が固定される第2旋回部とを備え、移動機構は、第1旋回部と第2旋回部との間に配置され、第2旋回部は、第1旋回部に対して直線状に相対移動可能となっている。
【0015】
この場合には、支持部材は、柱状部材から旋回部材と略平行に延びるように形成される細長いブロック状のアーム支持部を備え、アーム支持部の基端側は、柱状部材側に配置され、アームは、アーム支持部の先端側に支持されていることが好ましい。このように構成すると、第2旋回部、柱状部材、支持部材、アームおよびハンド等によって構成される構造体の重心の下側に移動機構を配置することが可能になる。したがって、移動機構に過剰な外力が作用するのを抑制することが可能になる。
【0016】
また、この場合には、移動機構は、上下方向から見たときにアーム支持部の長手方向において、柱状部材とアームの基端との間に配置されていることが好ましい。このように構成すると、デッドスペースとなりやすい柱状部材とアームの基端との間に移動機構を配置することが可能になる。したがって、産業用ロボットが移動機構を備えている場合であっても、産業用ロボットを小型化することが可能になる。
【0017】
本発明において、移動機構は、柱状部材の下端と旋回部材との間に配置されても良い。
【0018】
本発明において、移動機構は、たとえば、モータと、モータの出力軸に連結されるネジ部材と、ネジ部材のオネジ部に螺合するメネジ部を有するナット部材と、リニアガイドとを備えている。
【0019】
本発明において、産業用ロボットは、上下方向に直交する所定方向へ基台を移動させる水平移動機構を備えていても良い。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の産業用ロボットでは、アームを支持する支持部材を上下方向へ移動可能に支持する柱状部材を備えている場合であっても、比較的簡易な構成で、搬入される搬送対象物の位置ずれを抑制しつつその傾きを適切に補正することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットの平面図である。
【図2】図1のE−E方向から産業用ロボットを示す側面図である。
【図3】図1のF−F方向から産業用ロボットを示す正面図である。
【図4】図2に示す移動機構およびその周辺部の構成を説明するための平面図である。
【図5】図4のG−G方向から移動機構およびその周辺部の構成を説明するための図である。
【図6】図4のH部の拡大図である。
【図7】図6のJ−J方向から移動機構を説明するための図である。
【図8】図1に示す基板が傾いた状態で収納されているときの産業用ロボットの動作を説明するための平面図である。
【図9】本発明の他の実施の形態にかかる移動機構の配置を説明するための図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図10】本発明の他の実施の形態にかかる移動機構の配置を説明するための図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図11】本発明の他の実施の形態にかかる移動機構の配置を説明するための平面図である。
【図12】本発明の他の実施の形態にかかる旋回部材の構成を説明するための平面図である。
【図13】本発明の他の実施の形態にかかる産業用ロボットの平面図である。
【図14】本発明の他の実施の形態にかかる産業用ロボットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
(産業用ロボットの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1の平面図である。図2は、図1のE−E方向から産業用ロボット1を示す側面図である。図3は、図1のF−F方向から産業用ロボット1を示す正面図である。なお、以下の説明では、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とする。本形態では、Z方向が上下方向と一致する。また、以下の説明では、X方向を前後方向、Y方向を左右方向とする。
【0024】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、搬送対象物である液晶ディスプレイ用のガラス基板2(以下、「基板2」とする。)を搬送するための搬送用の多関節型ロボットである。図1〜図3に示すように、ロボット1は、基板2が搭載される2個のハンド3と、2個のハンド3のそれぞれが先端側に連結される2本のアーム4と、2本のアーム4を支持する本体部5とを備えている。本体部5は、2本のアーム4の基端側を支持する支持部材6と、支持部材6を上下方向へ移動可能に支持する柱状部材7と、本体部5の下端部分を構成する基台8と、柱状部材7の下端を支持するとともに基台8に対して回動可能な旋回部材9と、基台8に対して柱状部材7を水平方向へ相対移動させる移動機構10とを備えている。
【0025】
なお、本形態において、基板2の位置ずれとは、所定の基準位置に正しい姿勢で配置されたときの基板2に対して、前後方向および/または左右方向に基板2が平行にずれている状態をいう。また、基板2の傾きとは、所定の基準位置に正しい姿勢で配置されたときの基板2の中心O(図1参照)と中心Oは一致しているが、中心Oを中心にして基板2が所定角度傾いている状態をいう。
【0026】
ハンド3の基端側は、アーム4の先端側に回動可能に連結されている。このハンド3には、上述の特許文献2に記載の産業用ロボットと同様に、所定の収納位置に収納された基板2の傾き(具体的には、前後方向等の基板2の搬出方向に対する基板2の傾き)を検出するためのセンサ(図示省略)が取り付けられている。なお、上述の特許文献2に記載の産業用ロボットと同様に、支持部材6には、基板2の端面を検出するためのエッジセンサが取り付けられている。また、基板2の傾きを検出するためのセンサは、ロボット1に取り付けられる以外に、基板2の収納位置に取り付けられる場合もある。
【0027】
アーム4は、第1アーム部13と第2アーム部14との2個のアーム部を備えている。第1アーム部13の基端側は、支持部材6の先端側に回動可能に支持されている。第2アーム部14の基端側は、第1アーム部13の先端側に回動可能に支持されている。第2アーム部14の先端側には、ハンド3の基端側が回動可能に支持されている。本形態のロボット1は、本体部5に対してアーム4を伸縮させるための駆動用モータ(図示省略)を備えており、この駆動用モータが起動すると、ハンド3が所定方向を向いた状態で直線状に動くように、アーム4が伸縮する。
【0028】
支持部材6は、支持部材6の基端側部分を構成する昇降部15と、2本のアーム4のそれぞれを支持する2個のアーム支持部16とを備えている。昇降部15は、柱状部材7に上下動可能に保持されている。アーム支持部16は、ハンド3の移動方向に直交する方向を長手方向とする細長い扁平なブロック状に形成されている。2個のアーム支持部16の基端は、昇降部15に固定されている。アーム支持部16の先端側には、第2アーム部14の基端側が回動可能に保持されている。本形態では、2個のハンド3、2本のアーム4および2個のアーム支持部16が上下方向に重なるように配置されている。すなわち、本形態のロボット1は、ダブルアーム型のロボットである。
【0029】
柱状部材7は、旋回部材9に固定される第1柱部17と、昇降部15を上下方向へ移動可能に保持する第2柱部18とを備えている。第2柱部18は、第1柱部17に対して上下方向へ移動可能となっている。
【0030】
旋回部材9は、基台8から柱状部材7に向かって延びる細長い扁平なブロック状に形成されている。この旋回部材9は、図1に示すように、アーム支持部16と略平行に配置されている。すなわち、旋回部材9は、アーム支持部16と略平行に延びるように形成されている。なお、本形態では、旋回部材9の長手方向は、アーム支持部16の長手方向に対してわずかに傾いている。具体的には、柱状部材7から基台8に向かうにしたがって、アーム支持部16と旋回部材9との距離が近づくように、旋回部材9の長手方向は、アーム支持部16の長手方向に対してわずかに傾いている。そのため、本形態では、アーム4が縮んだ状態で旋回するロボット1の旋回半径を小さくすることが可能である。
【0031】
また、旋回部材9は、基台8に回動可能に保持される第1旋回部20と、柱状部材7の下端が固定される第2旋回部21とを備えており、第1旋回部20の先端側と第2旋回部21の基端側とが連結されている。また、第1旋回部20の基端側は、基台8に連結され、第2旋回部21の先端側には、第1柱部17の下端が固定されている。第2旋回部21は、第1旋回部20に対して、アーム支持部16の長手方向と平行な方向(すなわち、ハンド3の移動方向に直交する方向)に直線状に相対移動可能となっている。なお、第1旋回部20および第2旋回部21は、中空状に形成されている。
【0032】
移動機構10は、図2に示すように、第1旋回部20と第2旋回部21との間に配置されている。すなわち、移動機構10は、第1旋回部20と第2旋回部21との連結部に配置されている。以下、移動機構10およびその周辺部の構成について説明する。
【0033】
なお、上述のように、第2柱部18は、第1柱部17に対して上下方向へ移動可能となっており、また、昇降部15は、第2柱部18に対して上下方向へ移動可能となっている。すなわち、ロボット1は、第2柱部18および昇降部15を昇降させる昇降機構(図示省略)を備えている。また、旋回部材9は、基台8に対して回動可能となっている。すなわち、ロボット1は、旋回部材9を回動させる旋回機構(図示省略)を備えている。
【0034】
(移動機構およびその周辺部の構成)
図4は、図2に示す移動機構10およびその周辺部の構成を説明するための平面図である。図5は、図4のG−G方向から移動機構10およびその周辺部の構成を説明するための図である。図6は、図4のH部の拡大図である。図7は、図6のJ−J方向から移動機構10を説明するための図である。
【0035】
図5に示すように、第2旋回部21は、側面から見たときの形状が2回折れ曲がった階段状となるように形成されており、第1柱部17の下端が固定される固定部21aと、第1旋回部20に連結される連結部21bとを備えている。固定部21aと連結部21bとは、互いに略平行に配置されるとともに、連結部21bは、固定部21aよりも上側に配置されている。また、連結部21bは、第1旋回部20の先端側と上下方向で重なっている。具体的には、連結部21bは、第1旋回部20の先端側の上側に配置されている。また、固定部21aは、第1旋回部20と略同じ高さに配置されている。
【0036】
移動機構10は、図4に示すように、上下方向から見たときに、アーム支持部16の長手方向において、アーム4の基端側を支持するアーム支持部16の先端側と柱状部材7との間に配置されている。すなわち、移動機構10は、上下方向から見たときに、アーム支持部16の長手方向において、アーム4の基端と柱状部材7との間に配置されている。また、移動機構10は、駆動源となる回転型のモータ25と、モータ25の出力軸に連結されるネジ部材としてのボールネジ26と、ボールネジ26のオネジ部に螺合するメネジ部を有するナット部材27と、リニアガイド28とを備えている。
【0037】
モータ25は、図5に示すように、第2旋回部21の連結部21bの内部に配置されている。また、モータ25は、連結部21bの内部に固定されている。モータ25の出力軸には、減速機29が取り付けられている。減速機29の出力軸には、カップリング30を介してボールネジ26が取り付けられている。すなわち、ボールネジ26は、減速機29およびカップリング30を介してモータ25の出力軸に連結されている。また、ボールネジ26は、第2旋回部21に固定される軸受31に回転可能に支持されている。ナット部材27は、図5に示すように、ブラケット32に固定されており、連結部21bの内部に配置されている。ブラケット32は、第1旋回部20の先端側の上面に固定されている。
【0038】
リニアガイド28は、ガイドレール33と、ガイドレール33に係合するとともにガイドレール33に沿ってスライドするガイドブロック34とを備えている。図7に示すように、ガイドレール33は、第1旋回部20の先端側の上面に固定されている。ガイドブロック34は、第2旋回部21の連結部21bの下面に固定されている。リニアガイド28は、図6に示すように、上下方向から見たときに、モータ25、ボールネジ26およびナット部材27等の両側に配置されている。
【0039】
移動機構10では、モータ25が起動すると、ボールネジ26が回転して、図4の二点鎖線で示すように、第1旋回部20に対して、第2旋回部21がアーム支持部16の長手方向へ移動する。
【0040】
(産業用ロボットの概略動作)
図8は、図1に示す基板2が傾いた状態で収納されているときの産業用ロボット1の動作を説明するための平面図である。
【0041】
以上のように構成されたロボット1では、第1柱部17に対して第2柱部18が上下動するとともに、第2柱部18に対して支持部材6がハンド3およびアーム4等と一緒に上下動する。また、本体部5に対してアーム4が伸縮する。具体的には、ハンド3が所定方向を向いた状態で直線状に動くようにアーム4が伸縮する。さらに、基台8に対して旋回部材9が回動する。これらの動作の組合せによって、ロボット1は、基板2が収納される収納位置から基板2に所定の作業が行われる作業位置へ基板2を搬送する。
【0042】
ここで、本形態では、ロボット1は、収納位置に収納された基板2を搬出する際に、まず、ハンド3を伸縮させて、ハンド3に設けられたセンサによって、基板2の搬出方向に対する基板2の傾きを検出する。この基板2の傾き検出動作で、基板2の傾きが検出されなければ(あるいは、基板2の傾きが規定値以下であれば)、ロボット1は、再び、ハンド3を伸縮させて、収納位置から基板2を搬出し、搬出した基板2を所定の作業位置へ搬入する。このとき、収納位置で基板2を搭載する際のロボット1の状態は、図8の二点鎖線で示す状態となる。すなわち、このときには、ハンド3は、基板2の搬出方向と略平行になっている。
【0043】
一方、基板2の傾き検出動作で、基板2の傾きが検出されると(あるいは、検出された基板2の傾きが規定値を超えていると)、基板2の搬出方向に略直交する方向での基板2の位置ずれを抑制しつつ基板2の傾きを補正するため、ロボット1は、基台8に対して旋回部材9を所定量、回動させるとともに、モータ25を起動させて、第1旋回部20に対して第2旋回部21をアーム支持部16の長手方向へ移動させる。すなわち、基台8に対して柱状部材7をアーム支持部16の長手方向へ移動させる。その後、ロボット1は、ハンド3を伸縮させて、収納位置から基板2を搬出する。このとき、収納位置で基板2を搭載する際のロボット1の状態は、図5の実線で示す状態となる。すなわち、このときには、ハンド3は、基板2の搬出方向に対して、基板2の傾きと同程度傾いている。また、ロボット1は、基板2を搬出した後に、モータ25を起動させて、先程の移動方向と逆方向へ第2旋回部21を移動させるとともに先程の回動方向と逆方向へ旋回部材9を所定量、回動させる。その後、ロボット1は、ハンド3を伸縮させて、基板2を作業位置へ搬入する。
【0044】
このように、本形態では、基板2の傾きに応じて基台8に対して旋回部材9を所定量、回動させるとともに、第1旋回部20に対して第2旋回部21を移動させた状態で、収納位置から基板2を搬出し、その後、旋回部材9を逆方向へ所定量、回動させるとともに、第2旋回部21を逆方向へ移動させてから、基板2を作業位置へ搬入するため、収納位置に収納された基板2の傾きは、基板2の搬出方向に直交する方向における基板2の位置ずれが抑制された状態で作業位置へ搬入される際に補正される。なお、基板2の傾き検出動作によって、基板2の傾きが検出された場合に、基台8に対して旋回部材9を回動させ、また、第1旋回部20に対して第2旋回部21を移動させながら、アーム4を伸縮させても良い。
【0045】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のロボット1は、基台8に対して柱状部材7をハンド3の移動方向に直交する方向へ相対移動させる移動機構10を備えている。そのため、基板2の傾きが検出されたときには、基台8に対して柱状部材7を相対移動させるとともに基台8に対して旋回部材9を回動させれば、搬入される基板2の位置ずれを抑制しつつその傾きを補正することが可能になる。すなわち、基台8を水平方向へ移動させるための機構を備えていなくても、搬入される基板2の位置ずれを抑制しつつその傾きを補正することが可能になる。
【0046】
また、本形態では、移動機構10は、基台8に対して柱状部材7を相対移動させるため、ロボット1がダブルアーム型のロボットであっても2個の移動機構10を配置する必要がない。したがって、ロボット1の構成を簡素化することが可能になる。また、本形態では、支持部材6にアーム4が支持されており、移動機構10は、支持部材6を支持する柱状部材7を基台8に対して相対移動させるため、柱状部材7が基台8に対して相対移動する際に、柱状部材7とアーム4とが干渉するおそれがない。したがって、本形態では、柱状部材7の移動量を確保することが可能になり、搬入される基板2の傾きが大きくても基板2の傾きを適切に補正することが可能になる。
【0047】
このように、本形態では、アーム4を支持する支持部材6を上下方向へ移動可能に支持する柱状部材7をロボット1が備えている場合であっても、比較的簡易な構成で、搬入される基板2の位置ずれを抑制しつつその傾きを適切に補正することが可能になる。また、本形態では、基板2が傾いてはいないが基板2の搬出方向に直交する方向で位置ずれを起こしている場合に、基台8に対して柱状部材7を移動させることで、この位置ずれを補正することが可能になる。また、本形態では、移動機構10によって、基台8に対して柱状部材7を移動させることで、ロボット1の設置誤差や組立誤差を補正することが可能になる。そのため、ロボット1の設置や組立を容易に行うことが可能になる。
【0048】
本形態では、移動機構10は、第1旋回部20と第2旋回部21との間に配置されている。また、柱状部材7から旋回部材9と略平行に延びるように形成されるアーム支持部16の基端側は、柱状部材7側に配置され、アーム4は、アーム支持部16の先端側に支持されている。そのため、第2旋回部21、柱状部材7、支持部材6、アーム4およびハンド3等によって構成される構造体の重心の下側に移動機構10を配置することが可能になる。したがって、リニアガイド28に過剰な外力が作用するのを抑制することが可能になる。
【0049】
本形態では、移動機構10は、上下方向から見たときにアーム支持部16の長手方向において、柱状部材7とアーム4の基端との間に配置されている。そのため、デッドスペースとなりやすい柱状部材7とアーム4の基端との間に、第1旋回部20の基端側と第2旋回部21の連結部21bとを上下方向に重ねて配置するとともに移動機構10を配置することが可能になる。したがって、第1旋回部20の基端側と第2旋回部21の連結部21bとが上下方向に重なるように配置され、また、第1旋回部20と第2旋回部21との間に移動機構10が配置されていても、ロボット1を小型化することが可能になる。
【0050】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0051】
上述した形態では、モータ25は、第2旋回部21の連結部21bの内部に固定され、ナット部材27は、ブラケット32を介して第1旋回部20に固定されている。この他にもたとえば、図9に示すように、第1旋回部20の先端側の内部にモータ25が固定され、第2旋回部21の内部にナット部材27が固定されても良い。
【0052】
上述した形態では、移動機構10は、第1旋回部20と第2旋回部21との間に配置されている。この他にもたとえば、図10に示すように、移動機構10は、柱状部材7の下端(すなわち、第1柱部17の下端)と旋回部材9との間に配置されても良い。すなわち、移動機構10は、柱状部材7と旋回部材9との連結部に配置されても良い。この場合には、第1旋回部20と第2旋回部21との2個の部材によって旋回部材9が構成される必要はなく、旋回部材9は、図10に示すように、1個の部材によって構成される。また、この場合には、たとえば、モータ25が旋回部材9の内部に固定され、ナット部材27が第1柱部17の下端に固定される。また、たとえば、ガイドレール33は、旋回部材9の先端側の上面に固定され、ガイドブロック34は、第1柱部17の下端に固定される。
【0053】
上述した形態では、旋回部材9の長手方向は、アーム支持部16の長手方向に対してわずかに傾いており、第2旋回部21は、第1旋回部20に対してアーム支持部16の長手方向へ直線状に相対移動する。この他にもたとえば、図11に示すように、アーム支持部16の長手方向に対してわずかに傾く旋回部材9の長手方向(矢印Vの方向)へ、第1旋回部20に対して第2旋回部21が相対移動するように、移動機構10が配置されても良い。また、旋回部材9の長手方向以外の方向であって、かつ、ハンド3の移動方向に一致しない方向(たとえば、ハンド3の移動方向に対して所定角度傾く方向)へ第1旋回部20に対して第2旋回部21が相対移動するように、移動機構10が配置されても良い。
【0054】
上述した形態では、旋回部材9の長手方向は、アーム支持部16の長手方向に対してわずかに傾いている。この他にもたとえば、図12に示すように、旋回部材9の第1旋回部20は、上下方向から見たときに、アーム支持部16の長手方向と平行な方向を長手方向とする略長方形状に形成されても良い。この場合には、第2旋回部21は、たとえば、上下方向から見たときの形状が2回折れ曲がった階段状になるように形成されており、連結部21bは、第1旋回部20の先端側の上側に配置されている。なお、旋回部材9の全体の長手方向がアーム支持部16の長手方向と平行になるように、旋回部材9が形成されても良い。
【0055】
上述した形態では、本体部5は、水平方向へ移動可能となっていないが、本体部5は、水平方向へ移動可能となっていても良い。すなわち、ロボット1は、図13、図14に示すように、水平方向(たとえば、左右方向)へ移動可能に基台8を支持するベース部材40と、ベース部材40に対して基台8を水平方向へ移動させる水平移動機構とを備えていても良い。
【0056】
上述した形態では、支持部材6は、アーム支持部16を備えており、アーム4の基端側は、アーム支持部16の先端側に支持されている。この他にもたとえば、支持部材6が昇降部15によって構成されるとともに、アーム4の基端側が昇降部15に支持されても良い。また、上述した形態では、移動機構10は、回転型のモータ25と、ボールネジ26と、ナット部材27とを備えているが、移動機構10は、リニアモータであっても良い。
【0057】
上述した形態では、第1柱部17に対して第2柱部18が上下方向へ移動可能となっている。この他にもたとえば、第1柱部17の所定の位置に第2柱部18が固定されても良い。この場合には、第2柱部18に保持された昇降部15のみが上下方向へ移動する。また、上述した形態では、柱状部材7は、第1柱部17と第2柱部18とを備えているが、柱状部材7は、1個の柱部で構成されても良い。この場合には、この柱部に昇降部15が上下方向へ移動可能に保持される。
【0058】
上述した形態では、アーム4は、第1アーム部13と第2アーム部14との2個のアーム部によって構成されているが、アーム4は、3個以上のアーム部によって構成されても良い。また、上述した形態では、ロボット1は、2個のハンド3および2個のアーム4等を備えるいわゆるダブルアーム型のロボットであるが、ロボット1は、1個のハンド3および1個のアーム4等を備えるシングルアーム型のロボットであっても良い。また、上述した形態では、ロボット1によって搬送される搬送対象物は基板2であるが、ロボット1によって搬送される搬送対象物は、基板2以外の半導体ウエハ等であっても良い。
【符号の説明】
【0059】
1 ロボット(産業用ロボット)
2 基板(ガラス基板、搬送対象物)
3 ハンド
4 アーム
6 支持部材
7 柱状部材
8 基台
9 旋回部材
10 移動機構
16 アーム支持部
20 第1旋回部
21 第2旋回部
25 モータ
26 ボールネジ(ネジ部材)
27 ナット部材
28 リニアガイド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物が搭載されるハンドと、前記ハンドが連結されるアームと、前記アームを支持する支持部材と、前記支持部材を上下方向へ移動可能に支持する柱状部材と、基台と、前記柱状部材の下端を支持するとともに前記基台に対して回動可能な旋回部材と、前記基台に対して前記柱状部材を上下方向に直交する所定方向へ相対移動させる移動機構とを備えることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記旋回部材は、前記基台から前記柱状部材に向かって延びる細長いブロック状に形成されるとともに、前記基台に回動可能に保持される第1旋回部と、前記柱状部材の下端が固定される第2旋回部とを備え、
前記移動機構は、前記第1旋回部と前記第2旋回部との間に配置され、
前記第2旋回部は、前記第1旋回部に対して直線状に相対移動可能となっていることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記支持部材は、前記柱状部材から前記旋回部材と略平行に延びるように形成される細長いブロック状のアーム支持部を備え、
前記アーム支持部の基端側は、前記柱状部材側に配置され、
前記アームは、前記アーム支持部の先端側に支持されていることを特徴とする請求項2記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記移動機構は、上下方向から見たときに前記アーム支持部の長手方向において、前記柱状部材と前記アームの基端との間に配置されていることを特徴とする請求項3記載の産業用ロボット。
【請求項5】
前記移動機構は、前記柱状部材の下端と前記旋回部材との間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項6】
前記移動機構は、モータと、前記モータの出力軸に連結されるネジ部材と、前記ネジ部材のオネジ部に螺合するメネジ部を有するナット部材と、リニアガイドとを備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の産業用ロボット。
【請求項7】
上下方向に直交する所定方向へ前記基台を移動させる水平移動機構を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の産業用ロボット。
【請求項1】
搬送対象物が搭載されるハンドと、前記ハンドが連結されるアームと、前記アームを支持する支持部材と、前記支持部材を上下方向へ移動可能に支持する柱状部材と、基台と、前記柱状部材の下端を支持するとともに前記基台に対して回動可能な旋回部材と、前記基台に対して前記柱状部材を上下方向に直交する所定方向へ相対移動させる移動機構とを備えることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記旋回部材は、前記基台から前記柱状部材に向かって延びる細長いブロック状に形成されるとともに、前記基台に回動可能に保持される第1旋回部と、前記柱状部材の下端が固定される第2旋回部とを備え、
前記移動機構は、前記第1旋回部と前記第2旋回部との間に配置され、
前記第2旋回部は、前記第1旋回部に対して直線状に相対移動可能となっていることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記支持部材は、前記柱状部材から前記旋回部材と略平行に延びるように形成される細長いブロック状のアーム支持部を備え、
前記アーム支持部の基端側は、前記柱状部材側に配置され、
前記アームは、前記アーム支持部の先端側に支持されていることを特徴とする請求項2記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記移動機構は、上下方向から見たときに前記アーム支持部の長手方向において、前記柱状部材と前記アームの基端との間に配置されていることを特徴とする請求項3記載の産業用ロボット。
【請求項5】
前記移動機構は、前記柱状部材の下端と前記旋回部材との間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項6】
前記移動機構は、モータと、前記モータの出力軸に連結されるネジ部材と、前記ネジ部材のオネジ部に螺合するメネジ部を有するナット部材と、リニアガイドとを備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の産業用ロボット。
【請求項7】
上下方向に直交する所定方向へ前記基台を移動させる水平移動機構を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の産業用ロボット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−20382(P2012−20382A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161235(P2010−161235)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】
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