説明

用紙セット装置及び用紙セット方法

【課題】 実際に取り付けられる検出器の検出位置が設計上の検出位置と一致していない場合でも、用紙をストッパで規定される一定の範囲の位置に常に正しくセットすることができる用紙搬送装置及び用紙搬送方法を提供する。
【解決手段】 挿入口から挿入される用紙を紙経路に沿って搬送する搬送ローラと、紙経路に配置され、用紙の挿入位置を規定するストッパと、ストッパよりも挿入口側に配置され、用紙の先端を検出する検出器と、検出器の検出に応じて、用紙をストッパで規定される一定の範囲の位置にセットするべく搬送ローラを駆動制御する制御部と、を備えた用紙搬送装置において、検出器の設計上の検出位置と実際上の検出位置のズレ量を記憶する記憶部を設け、制御部は、記憶部に記憶されたズレ量を加味して搬送ローラを駆動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単票用紙の用紙セット装置に関し、特に、単票用紙の頭出しズレ量を補正制御することが可能な用紙セット装置及び用紙セット方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケット等における商品等の販売時の処理(POS処理)においては、現金やカード以外にパーソナルチェック(以下、単に「チェック」という)が用いられる場合もある。このチェックの表面には、カスタマーアカウントやチェックのシリアル番号等のデータが磁気インク文字認識(MICR:Magnetic Ink Character Recognition)文字を用いて記載されている。パーソナルチェックを用いる場合には、データを照会することによって、チェックの有効・無効が確認できるようになっている。
【0003】
このチェック処理のためには、MICR文字読み取り用の磁気ヘッドと裏書き印刷用の印刷ヘッドとを備えた装置(複合プリンタ)が開発されている。この種のプリンタは、通常、単票用紙上の印刷位置を決めるために、挿入口の近くに、単票用紙の挿入時の“ど当たり”となるフォームストッパを備えている。このフォームストッパで規定される一定の範囲の位置に単票用紙が挿入されると単票用紙を検出して、搬送ローラ等の紙送り手段で単票用紙を把持して紙経路上を自動的に紙送りするようになっている。
【0004】
ところで、このような複合プリンタにおいて、単票用紙の挿入の仕方はオペレータによって様々である。例えば、単票用紙を、その側端をプリンタに設けたガイドに沿わせながらフォームストッパに向けて挿入する際に、フォームストッパのかなり手前の位置にセットしたり、あるいはフォームストッパを大きく越えた奥の位置まで挿入したりして、フォームストッパで規定される一定の範囲の位置に単票用紙がセットされないことがある。また、オペレータによっては、単票用紙を手放すタイミングが分からずに単票用紙を持ち続けることもある。
【0005】
従来、このような問題に対処するために、複合プリンタにおいては、フォームストッパの手前に反射型フォトセンサを備え、このセンサにより単票用紙の有無を判断して単票用紙の頭出し制御を行うものがある。この種の複合プリンタでは、この頭出し制御を行うことにより、オペレータに単票用紙を手放すように注意を促すと共に単票用紙をフォームストッパで規定される一定の範囲の位置にセットする。
【0006】
以下、この従来の頭出し制御について、具体例を挙げて説明する。
【0007】
図5は、実際に取り付けられたTOF(Top of Form)検出器(用紙の先端を検出する検出器)の検出位置(真TOF位置)が、設計者が意図したTOF検出器の検出位置(物理TOF位置)であるフォームストッパのΔ手前にある場合の従来の頭出し動作を説明する図であり、図6は、従来の頭出し制御のシーケンスを示す図である。なお、図5では、図面に向かって上側を奥とし、図面に向かって下側を手前としている。以下において、単票用紙を奥に送るのを正方向に送るといい、手前に送るのを逆方向に送るという。
【0008】
以下、図5を参照しつつ、図6に沿って説明する。
【0009】
先ず、TOF検出器とBOF(Bottom of Form)検出器(BOF検出器は、図5には示されていないが、TOF検出器より手前(挿入口側)に配置され、用紙の後端を検出する検出器である。詳細は、TOF検出器と共に後述する)の両方が用紙を検出しているか否かを判断する(ステップST1)。TOF検出器とBOF検出器の両方共に用紙を検出していない場合には、“TOF,BOF両方紙あり”が“NO”となって、ステップST1に戻る。このケースの場合には、オペレータに“用紙を挿入して下さい”というメッセージを表示するなどして、オペレータに単票用紙の挿入を促すようにしてもよい。
【0010】
一方、TOF検出器とBOF検出器の両方共に用紙を検出している場合には、“TOF,BOF両方紙あり”が“YES”となって、プラテンを閉じ(ステップST2)、所定時間(例えば、100msec)待った(ステップST3)後、用紙をγmm(例えば、6mm)正方向に送る(ステップST4、図5の丸数字1参照)。続いて、さらに所定時間(例えば、500msec)待った(ステップST5)後、用紙を今度は逆方向にγmm送る(ステップST6、図5の丸数字2参照)と共に更にδ(例えば、3mm)逆方向に送る(ステップST7、図5の丸数字3参照)。その後、また所定時間(例えば、200msec)の待ち(ステップST8)の後、TOF検出器が用紙を検出しているか否かを判断する(ステップST9)。
【0011】
TOF検出器が用紙を検出している場合には、“TOF紙あり”が“YES”となって、用紙を更にδ逆方向に送る(ステップST7)と共に所定時間の待ち(ステップST8)の後、ステップST9を再度実行する。このケースは、オペレータが単票用紙をフォームストッパを大きく越えた奥の位置まで挿入した場合に生じうる。一方、TOF検出器が用紙を検出していない場合には、“TOF紙あり”が“NO”となって、今度は用紙をδ正方向に送る(ステップST10、図5の丸数字4参照)。これにより、単票用紙がフォームストッパで規定される一定の範囲の位置(フォームストッパからΔ以内の手前の位置)にセットされた状態になるので、所定の印字が開始される(ステップST11)。
【0012】
このような頭出し動作によって、オペレータに単票用紙を手放すように促すことができるという効果だけでなく、最後に用紙を正方向送りすることによりバックラッシュ(歯車のガタ)を詰めておくので、紙送り開始をスムーズに行うことができるという効果がある。
【0013】
なお、先に説明した頭出し制御のシーケンスでは、“TOF紙あり”か否かの判断(ステップST9)をδ逆送り(ステップST7)単位に行うようになっているが、その理由は次のとおりである。
【0014】
反射型フォトセンサを用いた場合、TOF検出器による紙ありか否かの判断には、所定時間(例えば、200 msec)の時間を要する。このため、紙送りモータの1Step毎にTOF検出器の確認を行うと、頭出し動作だけで長い時間を要することになる(例えば、紙送りモータによる1Step当たりの送りが0.1764mmであるとすると、3mm送るのに、約3.4 secかかることになる)。一般に業務用途で用いられるプリンタは、迅速な対応を求めているので、頭出し動作をより短時間で行うことが望まれる。そのためには、紙送りモータの1Step毎にTOF検出器の確認を行うのではなく、複数Step毎にTOF検出器の確認を行うようにするのが良い。本例では、17Step毎にTOF検出器の確認を行うようにした。0.1764mm×17は約3mmである。これにより、顧客の要望に十分応えることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、先に説明した例は、真TOF位置が物理TOF位置と一致していることが前提となっている。
【0016】
しかしながら、反射型フォトセンサは、部品毎の感度のバラツキが大きく、また、工場における検出器の取付位置のバラツキ等も重なるので、実際上は、実際にセンサが用紙を検出する位置である真TOF位置が物理TOF位置からズレてしまうことが多い。特に、真TOF位置が物理TOF位置の手前に大きくズレた場合には、従来の頭出し制御のシーケンスでは、用紙の頭出し位置が正しい範囲の位置からはみ出してしまうことがある。
【0017】
なお、真TOF位置が物理TOF位置の奥にズレた場合、あるいは、真TOF位置が物理TOF位置の手前にズレたとしても、そのズレの量が小さい場合には、従来の頭出し制御のシーケンスによって、用紙の頭出し位置を常に正しい範囲の位置にすることができる。しかしながら、真TOF位置が物理TOF位置の手前に大きくズレた場合には、大きな問題が生じる。これについて、具体例を挙げて説明する。
【0018】
図7は、物理TOF位置がフォームストッパのΔ手前にあり、一方、真TOF位置が物理TOF位置のαmm以上手前にある場合の従来の頭出し動作を説明する図である。なお、図7では、真TOF位置がフォームストッパのδ以上手前にあるものとして示してある。この理由は、この後の説明から明らかである。
【0019】
以下、先の例と同様に、図7を参照しつつ、図6に沿って説明する。
【0020】
先ず、TOF検出器とBOF検出器の両方が用紙を検出しているか否かを判断する(ステップST1)。TOF検出器とBOF検出器の両方共に用紙を検出していない場合には、“TOF,BOF両方紙あり”が“NO”となって、ステップST1に戻る。TOF検出器とBOF検出器の両方共に用紙を検出している場合には、“TOF,BOF両方紙あり”が“YES”となって、プラテンを閉じ(ステップST2)、所定時間の待ち(ステップST3)の後、用紙をγmm正方向に送る(ステップST4、図7の丸数字1参照)。続いて、所定時間の待ち(ステップST5)の後、今度は用紙をγmm逆方向に送る(ステップST6、図7の丸数字2参照)と共に更にδ逆方向に送る(ステップST7、図7の丸数字3参照)。その後、所定時間の待ちの後、TOF検出器が用紙を検出しているか否かを判断する(ステップST9)。
【0021】
ここでステップST7の処理の後、単票用紙の先端が図7の物理TOF位置と真TOF位置の間にあるものとすると、“TOF紙あり”が“YES”となるので、用紙を更に3mm逆方向に送ることになる(ステップST7、図7の丸数字4参照)。そして、所定時間の待ち(ステップST8)の後、TOF検出器が用紙を検出しているか否かの判断を再度実行する(ステップST9)が、今度はTOF検出器が用紙を検出しないので、“TOF紙あり”が“NO”となって、用紙をδ正方向に送る(ステップST10、図7の丸数字5参照)。続けて所定の印字が開始される(ステップST11)。
【0022】
図7は、オペレータが単票用紙の先端がフォームストッパの位置に丁度挿入した場合の例(単票用紙の先端がフォームストッパに略当接した状態)を示しているが、先に説明したように、この例の場合には、2回の3mm逆方向送りに対して、1回の正方向送りが行われるだけなので、単票用紙は、物理TOF位置と真TOF位置の間にセットされ、結局、フォームストッパで規定される一定の範囲の位置にセットされないことになる。このまま印字が開始されると、単票用紙は、想定しているよりも上方から印刷が開始され、単票用紙上の正しい印刷位置に印字されないことは明らかである。
【0023】
ところで、図7の例は、従来の頭出し制御のシーケンスでは、単票用紙がフォームストッパで規定される一定の範囲の位置にセットされない例であるが、この例は、真TOF位置が物理TOF位置の手前に大きくズレた場合には、従来の頭出し制御のシーケンスでは、どのような状況であっても、単票用紙をフォームストッパで規定される一定の範囲の位置にセットすることができないということを意味しているのではない。例えば、真TOF位置が、フォームストッパのδ+Δδ(δが3.0mmの場合には、例えば3.1mm手前)にあるとしても、オペレータが単票用紙をフォームストッパの0.5mm手前の位置に挿入した場合には、1回目の3mm逆方向送りによって、“TOF紙あり”が“NO”となり、続けて、用紙の3mm正方向送りが行われる結果、単票用紙は、フォームストッパの0.5mmの手前の位置にセットされることになるが、この位置がフォームストッパで規定される一定の範囲の位置であることは明らかである。
【0024】
以上説明したように、真TOF位置が物理TOF位置の手前に大きくズレた場合には、従来の頭出し制御では、単票用紙がフォームストッパで規定される一定の範囲の位置に正しくセットされたり、あるいは正しくセットされなかったりするという問題点がある。
【0025】
したがって、本発明の目的は、真TOF位置が物理TOF位置の手前に大きくズレた場合でも、状況によらずに、単票用紙をフォームストッパで規定される一定の範囲の位置に常に正しくセットできるようにした用紙搬送装置及び用紙搬送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の目的は、以下の構成により達成される。
(1) 挿入口から挿入される用紙を紙経路に沿って搬送する搬送手段と、
前記紙経路に配置され、前記用紙の挿入位置を規定するフォームストッパと、
前記フォームストッパよりも前記挿入口側に配置され、前記用紙の先端を検出する反射型のフォトセンサと、
前記フォトセンサの検出に応じて、前記用紙を前記フォームストッパ近傍位置にセットするべく前記搬送手段を駆動制御する制御部と、を備えた用紙セット装置において、
前記フォトセンサの設計上の検出位置と真の検出位置とのズレ量を記憶する記憶部を設け、前記制御部は、前記記憶部に記憶されたズレ量を基に前記搬送手段を駆動制御することを特徴とする用紙セット装置。
(2) 前記制御部は、前記用紙がフォームストッパに配置されたことを前記フォトセンサが検出すると、前記用紙をクランプするとともに前記フォームストッパを搬送路上から取り除き、前記用紙を第1の所定量正方向に搬送し、次いで、前記用紙を前記第1の所定量に前記記憶部に記憶されたズレ量を加えた量を逆方向に搬送すると共に、前記フォトセンサが前記用紙の先端の外れを検出するまで前記用紙を第2の所定量ずつ逆方向に搬送し、前記フォトセンサが前記用紙の先端の外れを検出した場合には、前記用紙を前記第2の所定量に前記記憶部に記憶されたズレ量を加えた量を正方向に搬送するように前記搬送手段を駆動制御することを特徴とする(1)に記載の用紙セット装置。
(3) 前記記憶部を書き換え可能な不揮発性メモリで構成すると共に、該不揮発性メモリに前記ズレ量を算出するプログラムを組み込んだことを特徴とする(1)または(2)に記載の用紙セット装置。
(4) 前記第2の所定量は、前記反射型フォトセンサによる検出時間が安定するまでの時間と前記搬送手段の搬送ステップとから決定されることを特徴とする(1)または(2)に記載の用紙セット装置。
(5) 前記フォームストッパと前記フォトセンサの設計上の検出位置は固定であり、前記設計上の検出位置と前記真の検出位置とのズレ量は、前記フォームストッパから逆方向に所定の用紙を1ステップずつ搬送して、当該所定の用紙の先端の外れが前記フォトセンサによって検出されるまでのステップ数として、前記記憶部に記憶されることを特徴とする(1)乃至(4)の何れか一項に記載の用紙セット装置。
(6) 用紙を第1の所定量正方向に搬送するステップと、
前記用紙を前記第1の所定量に前記記憶部に記憶されたズレ量を加えた量逆方向に搬送すると共に、検出器が前記用紙の先端を検出するまで前記用紙を第2の所定量ずつ逆方向に搬送するステップと、
前記検出器が前記用紙の先端を検出した後、前記用紙を前記第2の所定量に前記記憶部
に記憶されたズレ量を加えた量正方向に搬送するステップと、を備えたことを特徴とする用紙セット方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、実際に取り付けられるフォトセンサの検出位置が設計上の検出位置の手前に大きくズレた場合でも、用紙をフォームストッパで規定される一定の範囲の位置に常に正しくセットすることができる。なお、実際に取り付けられるフォトセンサの検出位置が設計上の検出位置の奥にズレた場合、あるいは、実際に取り付けられる検出器の検出位置が設計上の検出位置の手前に小さくズレた場合のいずれについても、改善後の頭出し制御のシーケンスによって、用紙をフォームストッパで規定される一定の範囲の位置に常に正しくセットすることができることは言うまでない。
【0028】
また、本発明によれば、頭出し制御のシーケンスは、従来の頭出し制御のシーケンスのステップの一部をズレ量を加味するように変更しただけなので、従来の頭出し制御のシーケンスの僅かな修正により改善後の頭出し制御のシーケンスを完成させることができる。
【0029】
また、本発明によれば、実際の取り付けられる検出器の検出位置と設計上の検出位置とのズレ量を装置単体で求めることができる。具体的な、設計上の検出位置と真の検出位置とのズレ量は、フォームストッパとフォトセンサの設計上の検出位置は固定である場合、、前記フォームストッパから逆方向に所定の用紙を1ステップずつ搬送して、当該所定の用紙の先端の外れが前記フォトセンサによって検出されるまでのステップ数を記憶部に記憶することにより求めることができる。
【0030】
なお、前記第2の所定量は、前記反射型フォトセンサによる検出時間が安定するまでの時間と前記搬送手段の搬送ステップとから決定すればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係る用紙セット装置及び用紙セット方法の一実施形態について、複合プリンタを例に挙げ、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
図1は、複合プリンタ1の外観を示す斜視図であり、図2は、複合プリンタの概略構成を紙経路に沿って示す断面図である。
【0033】
図1及び図2に示すように、本実施形態の複合プリンタ1は、上面にテーブル3が形成された略直方体状のベース部2と、このベース部2の略中央部分に取り付けられた上部カバー4とを有する。ベース部2と上部カバー4との間に設けられた隙間には、紙経路11及びチェック等の単票用紙5の挿入口10が設けられている。挿入口10は、紙経路11に沿った方向(X方向)から単票用紙5を挿入できるようになっている。
【0034】
本実施形態の複合プリンタ1には、さらに、テーブル3の図面に向かって右側にローカル操作を行う操作パネル6が設けられると共に、ベース部2には電源スイッチ7が設けられている。また、複合プリンタ1には、操作パネル6の指示や制御プログラムに従って複合プリンタ1の各機能を制御するCPU20が設けられている。このCPU20は制御プログラムや各種の設定値等を記憶可能なROM21と、MICRデータや印刷データの一時記憶用のRAM23とを備えている。ROM21は、EPROM、フラッシュROM等の書き換え可能な不揮発性メモリで構成されている。
【0035】
また、本実施形態の複合プリンタ1は、ホストとなるパーソナルコンピュータ(以下、PCと称する。)40あるいはPOS端末等の機器とインターフェースケーブル42あるいは赤外線インターフェース等によって接続されており、ホストとの間で印刷データや制御情報等を送受信できるようになっている。複合プリンタ1は、PC40などのホスト上で稼働するアプリケーションプログラムから制御コマンドや印刷データを送信して制御することも可能である。
【0036】
図2に詳しく示すように、本実施形態の複合プリンタ1には、ベース部2及び上部カバー4によって挿入口10が構成されており、この挿入口10には水平に延びる紙経路11が連通している。挿入口10には、挿入(手前)側から排紙(奥)側に向かって、単票用紙5の後端を検出可能な反射型フォトセンサからなるBOF検出器25、紙送りローラ12及び紙押さえローラ13を備えた紙送り装置14、プラテン15、単票用紙5の先端を検出可能な反射型フォトセンサからなるTOF検出器24、挿入口10に挿入された単票用紙5の先端が当たって当該単票用紙5の挿入位置を規定可能な開閉式のフォームストッパ16がこの順序で配列されている。また、プラテン15に対向するように印刷ヘッド18が配置されている。
【0037】
また、本実施形態の複合プリンタ1は、プラテン15を上下動させるプラテン駆動機構30を備えており、これにより、プラテン15が印刷ヘッド18の側に押し出されて単票用紙5が印刷可能な状態になる。プラテン駆動機構30は、バネ31によってプラテン15を上方に押し上げるように機能するプラテンフレーム32と、このプラテンフレーム32の傾斜部32aに当接してプラテンフレーム32の上下動を制御するプラテン開閉軸33と、プラテン開閉軸33の位置を動かす開閉ソレノイド34を備えている。開閉ソレノイド34によってプラテン開閉軸33が図面の左右方向に動くとプラテンフレーム32が下側及び上側に動くので、プラテン15を挿入口10に連通する紙経路内に出し入れすることができる。また、プラテンフレーム32と連動して、搬送手段である紙送り装置14を構成する紙押さえローラ13と紙送りローラ12とで単票用紙5を挟み込み、紙送り装置14によって単票用紙5を搬送できる稼働状態になる。このように、複合プリンタ1は、プラテン15の開閉に連動して紙送り装置14が非稼働状態及び稼働状態になる。
【0038】
さらに、プラテン開閉軸33は、フォームストッパ16を旋回可能に支持するストッパフレーム35の傾斜部35aにも当接しており、この傾斜部35aはプラテンフレーム32の傾斜部32aと逆向きに傾いている。このため、プラテン開閉軸33の動きによって、プラテン15が上方に突出するのと同時に、フォームストッパ16は下方に沈み、紙経路11を開放する。このようにして、単票用紙5を印刷する準備が終了し、紙送りローラ12によって適当な位置まで単票用紙5を紙送りして、さらに、不図示の駆動機構によって印刷ヘッド18を紙送り方向と直交する走査方向に動かして単票用紙5上の所定の位置に印刷を行う。
【0039】
複合プリンタ1では、フォームストッパ16を基準としたTOF検出器24の設計上の検出位置は固定であるが、TOF検出器24が検出位置についてばらつきの発生しやすい反射型フォトセンサで構成されているため、TOF検出器24による実際の検出位置(真TOF位置)が、必ずしも、設計者の意図した検出位置(物理TOF位置)と一致するとは限らない。例えば、TOF検出器24の真TOF位置が物理TOF位置の手前に大きくズレた場合には、従来の頭出し制御では、単票用紙がフォームストッパ16で規定される一定の範囲の位置にセットされないことが生じうる。
【0040】
そこで、本実施形態の複合プリンタ1では、物理TOF位置と真TOF位置のズレ量をあらかじめ把握しておき、このズレ量を利用して、用紙の送り量を補正するようにしている。
【0041】
ズレ量を利用しての頭出し制御について説明する前に、ズレ量の求め方について説明する。
【0042】
先ず、腰の強い用紙を複合プリンタ1の挿入口10から挿入してフォームストッパ16に当接させる。これは、腰の弱いチェック等の単票用紙では、フォームストッパ16への当接感が掴めず、フォームストッパのかなり手前の位置にセットしたり、あるいはフォームストッパを大きく越えた奥の位置まで挿入したりすることがあるためである。用紙をフォームストッパ16に当接させた後、複合プリンタに次のステップを実行させる。
(a)紙送りモータを1Step刻みで逆方向に送りながら、“TOF紙あり”か否かを判断する。
(b)“TOF紙あり”が“NO”になった時点のStep数nを求める。
(c)Step数nと1Step当たりの送り量(例えば、0.1764mm)を掛け算する。これにより、TOF検出器24の真TOF位置がフォームストッパ16からどのくらい手前にあるかが判明する。これをβ(図3のβ参照)とする。
(d)物理TOF位置と真TOF位置のズレ量α(図3のα参照)を、α=β−1.3mmとして求める。
(e)求めたαをROM21に記憶する。
上記ステップ(a)〜(e)は、複合プリンタに特種モードを設けて、工場出荷時に行われる。
【0043】
すなわち、本実施形態では、TOF検出器24の設計上の検出位置と真の検出位置とのズレ量を、フォームストッパ16から逆方向に所定の用紙を1ステップずつ搬送して、この用紙の先端の外れがTOF検出器16によって検出されるまでのステップ数を記憶部であるROM21に記憶することにより、ズレ量を複合プリンタ1が把握するように構成されている。
【0044】
なお、書き換え可能な不揮発性メモリで構成されるROM21にα算出モードのプログラムを組み込み、操作パネル6によりその操作の指示を可能にしておけば、特別な装置を用いることなく、複合プリンタ単体でαを求めることが可能になる。このようにすることにより、仮に、工場出荷時にαを正しく求められなかった場合でも、複合プリンタの設置現場において、正しいαを求め、ROM21に記憶させることができる。
【0045】
次に、このようにして求めたαを用紙送りの補正値として用いた頭出し制御について、具体例を挙げて説明する。なお、真TOF位置が物理TOF位置の奥にある場合には、αはマイナスの値になるが、このことは、頭出し制御に何らの問題も生じさせない。
【0046】
図3は、本発明に係る頭出し動作を説明する図であり、図4は、本発明に係る頭出し制御のシーケンスを示す図である。
【0047】
以下、図3を参照しつつ、図4に沿って説明する。
【0048】
従来の頭出し制御と同様に、先ず、TOF検出器24とBOF検出器25の両方が用紙を検出しているか否かを判断する(ステップST1)。TOF検出器24とBOF検出器25の両方共に用紙を検出していない場合には、“TOF,BOF両方紙あり”が“NO”となって、ステップST1に戻る。この場合には、オペレータに“用紙を挿入して下さい”というメッセージを表示するなどして、オペレータに単票用紙の挿入を促すようにしても良いことは、従来の技術の項において説明したとおりである。一方、TOF検出器24とBOF検出器25の両方共に用紙を検出している場合には、“TOF,BOF両方紙あり”が“YES”となって、プラテンを閉じて紙をクランプするとともにフォームストッパ16を搬送路上から退避させて取り除く(ステップST2)。そして、所定時間(例えば、100msec)の待ち(ステップST3)の後、用紙を第1の所定量γ(例えば、6mm)正方向に送る(ステップST4、図3の丸数字1参照)。続いて、所定時間(例えば、500msec)の待ち(ステップST5)の後、ROM21から補正値αを読み出し(ステップST6−1)、用紙を、このαに第1の所定量γを加えた値、則ち、γ+α逆方向に送る(ステップST6−2、図3の丸数字2参照)と共に更に第2の所定量δ(例えば、3mm)逆方向に送る(ステップST7、図3の丸数字3参照)。その後、所定時間(例えば、200msec)の待ち(ステップST8)の後、TOF検出器24が用紙を検出しているか否かを判断する(ステップST9)。
【0049】
TOF検出器24が用紙を検出している場合には、“TOF紙あり”が“YES”となって、用紙を更に第2の所定量δ逆方向に送る(ステップST7)と共に所定時間の待ち(ステップST8)の後、TOF検出器24が用紙を検出しているか否かの判断を再度実行する(ステップST9)。このケースが、オペレータが単票用紙をフォームストッパを大きく越えた奥の位置まで挿入した場合に生じうることは、従来の技術の項で説明したとおりである。一方、TOF検出器24の真の検出位置から用紙が外れることによりTOF検出器24が用紙を検出していない場合、すなわちTOF検出器が用紙外れを検出した場合には、“TOF紙あり”が“NO”となって、先と同じく、ROM21から補正値αを読み出し(ステップST10−1)、用紙を、このαに第2の所定量δを加えた値、則ち、δ+α正方向に送る(ステップST10−2、図3の丸数字5参照)。これにより、真TOF位置が物理TOFの手前のどこにズレたとしても、単票用紙をフォームストッパで規定される一定の範囲の位置にセットした状態にすることができる。その後、所定の印字が開始される(ステップST11)。
【0050】
以上、チェック等の単票用紙を扱う複合プリンタの例を挙げて本発明を説明したが、本発明が、このようなチェック等の単票用紙を扱う複合プリンタの例に限定されないことは明らかである。
【0051】
なお、先の説明では、具体的な数値を挙げたが、この数値は絶対的なものではない。例えば、フォームストッパ16で規制される一定の範囲の位置を例えば1.3mmとしたが、単票用紙の正しい印字位置に印字できる範囲のものであれば、例えば、1.4mmであっても構わない。また、頭出し制御のシーケンスの最初に行われる用紙の正方向及び逆方向の送り量を例えば6mmとしたが、オペレータが単票用紙を挿入したときに、該オペレータに用紙を手放すような心理状態にさせる動きをする範囲のものであれば、例えば、5mmであっても構わない。更に、例えば3mm単位の紙送りも、顧客に待っているという感じを与えない範囲でのものであれば、例えば、2.9mm単位の紙送りにしても構わない。
【0052】
なお、第2の所定量δは、反射型フォトセンサであるTOF検出器24の検出周期に依存して必要とされる検出が安定するまでの時間と紙送りローラ12の搬送ステップとから決定すればよく、特に制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】複合プリンタ1の外観を示す図である。
【図2】複合プリンタの概略構成を紙経路11に沿った各手段の配置を中心に示す図である。
【図3】本発明に係る頭出し動作を説明する図である。
【図4】本発明に係る改善後の頭出し制御のシーケンスを示す図である。
【図5】物理TOF位置と真TOF位置が一致している場合の従来の頭出し動作を説明する図である。
【図6】従来の頭出し制御のシーケンスを示す図である。
【図7】物理TOF位置と真TOF位置がズレている場合の従来の頭出し動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0054】
1 複合プリンタ
5 単票用紙
5a MICR文字
10 挿入口
11 紙経路
14 紙送り装置
15 プラテン
16 フォームストッパ
18 印刷ヘッド
20 CPU
21 ROM
23 RAM
24 TOF検出器
25 BOF検出器
30 プラテン駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入口から挿入される用紙を紙経路に沿って搬送する搬送手段と、
前記紙経路に配置され、前記用紙の挿入位置を規定するフォームストッパと、
前記フォームストッパよりも前記挿入口側に配置され、前記用紙の先端を検出する反射型のフォトセンサと、
前記フォトセンサの検出に応じて、前記用紙を前記フォームストッパ近傍位置にセットするべく前記搬送手段を駆動制御する制御部と、を備えた用紙セット装置において、
前記フォトセンサの設計上の検出位置と真の検出位置とのズレ量を記憶する記憶部を設け、前記制御部は、前記記憶部に記憶されたズレ量を基に前記搬送手段を駆動制御することを特徴とする用紙セット装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記用紙がフォームストッパに配置されたことを前記フォトセンサが検出すると、前記用紙をクランプするとともに前記フォームストッパを搬送路上から取り除き、前記用紙を第1の所定量正方向に搬送し、次いで、前記用紙を前記第1の所定量に前記記憶部に記憶されたズレ量を加えた量を逆方向に搬送すると共に、前記フォトセンサが前記用紙の先端の外れを検出するまで前記用紙を第2の所定量ずつ逆方向に搬送し、前記フォトセンサが前記用紙の先端の外れを検出した場合には、前記用紙を前記第2の所定量に前記記憶部に記憶されたズレ量を加えた量を正方向に搬送するように前記搬送手段を駆動制御することを特徴とする請求項1に記載の用紙セット装置。
【請求項3】
前記記憶部を書き換え可能な不揮発性メモリで構成すると共に、該不揮発性メモリに前記ズレ量を算出するプログラムを組み込んだことを特徴とする請求項1または2に記載の用紙セット装置。
【請求項4】
前記第2の所定量は、前記反射型フォトセンサによる検出時間が安定するまでの時間と前記搬送手段の搬送ステップとから決定されることを特徴とする請求項1または2に記載の用紙セット装置。
【請求項5】
前記フォームストッパと前記フォトセンサの設計上の検出位置は固定であり、前記設計上の検出位置と前記真の検出位置とのズレ量は、前記フォームストッパから逆方向に所定の用紙を1ステップずつ搬送して、当該所定の用紙の先端の外れが前記フォトセンサによって検出されるまでのステップ数として、前記記憶部に記憶されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の用紙セット装置。
【請求項6】
用紙を第1の所定量正方向に搬送するステップと、
前記用紙を前記第1の所定量に前記記憶部に記憶されたズレ量を加えた量逆方向に搬送すると共に、検出器が前記用紙の先端を検出するまで前記用紙を第2の所定量ずつ逆方向に搬送するステップと、
前記検出器が前記用紙の先端を検出した後、前記用紙を前記第2の所定量に前記記憶部に記憶されたズレ量を加えた量正方向に搬送するステップと、を備えたことを特徴とする用紙セット方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−290530(P2006−290530A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112894(P2005−112894)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】