説明

用紙パッケージ

【課題】用紙の外側をパッケージ材で覆っておき、用紙をプリンタで用いるときにはパッケージ材を折り目線を境に折り返すことで開封して使う用紙パッケージにおいて、プリンタへのセット時にユーザが容易かつ確実に当該折り目線で折り返すことができる構成を提供する。
【解決手段】用紙パッケージは、用紙を収納させるパッケージ材8から当該用紙の一部を露出させた状態で、該パッケージ材8とともに前記プリンタにセットできる構成である。プリンタにセットしたときは、前記用紙の露出部分に当該プリンタのピックアップローラが接触して用紙を送るようになっている。パッケージ材8は、前記プリンタへのセット時に折り目線Aを境に外側に折り曲げられることで前記用紙の一部を露出させる、折曲げ部(底板40の一部と蓋部44)を一体的に有している。前記折り目線Aの中央部には、前記シート状部材の厚み方向に貫通する切込み部Bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重ねられた状態の用紙の外側をパッケージ材で保護するとともに、該パッケージ材とともにプリンタにセットできる、用紙パッケージの構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、積層された状態のプリンタ用紙の外側をパッケージ材で覆った状態の用紙パッケージが知られている。この用紙パッケージは、それを購入したユーザ側でパッケージ材を開封してプリンタにセットして使う構成とされている。
この用紙パッケージの技術は、複数枚の用紙をパッケージ単位でまとめて取り扱うことができるため使い勝手が向上されるとともに、内部の用紙を覆って保護できるために、特に光や熱に弱い感熱紙を用紙として採用する場合に有用である。
【0003】
しかし、前記従来技術の用紙パッケージは、比較的大型(B5サイズ以上の用紙サイズ対応)のプリンタに対応するものであって、単なる段ボール箱で構成されていたが、近年のパーソナルコンピュータの小型化や携帯情報端末(PDA)の普及に伴い、プリンタも、ハンディサイズの小型プリンタの需要が高まってきた。
そして、この種の小型プリンタに用いる小さなサイズの用紙のハンドリング性を向上すべく、この用紙パッケージの構成の一態様として、パッケージ材をシート状部材(例えば、厚紙材)で形成し、開封時にパッケージ材の蓋部の部分を適宜の折り目線を境に折り返すことで用紙の一部を露出させ、この状態でパッケージ材とともにプリンタにセットして用いるものが考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成のパッケージ材は、蓋部の部分を折り返すときに折りが甘いと、プリンタにセットしたときに種々の不具合(例えば、プリンタ側のピックアップ手段による用紙の繰出しがスムーズにできないトラブル)を発生させる場合があるので、前記折り目線でしっかりと折られてからプリンタにセットすることが要請される。
一方、ユーザが用紙パッケージを開封して折り返すことと構成の場合は、すべてのユーザにしっかりと折り目線で折ってもらうことを期待するのは困難である。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、ユーザが容易にかつ確実にしっかりと折り目線で折り返すことができる用紙パッケージを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、プリンタの被印刷媒体としての用紙と、シート状部材を折り曲げることにより箱状に構成され、積層された状態の前記用紙の外側を覆うパッケージ材と、を有し、該パッケージ材から前記用紙の一部を露出させた状態で、該パッケージ材とともに前記プリンタにセットし、このときに、前記用紙の露出部分に前記プリンタのピックアップ手段が接触して用紙を送るように構成した、用紙パッケージであって、前記パッケージ材は、前記プリンタへのセット時に折り目線を境に外側に折り曲げられることで前記用紙の一部を露出させる、折曲げ部を一体的に有しており、前記折り目線には前記シート状部材の厚み方向に貫通する切込み部が設けられているものである。
【0008】
請求項2においては、前記切込み部は、前記折り目線全体の長さの50%以上にわたって設けられているものである。
【0009】
請求項3においては、前記切込み部は前記折り目線の中央側に設けられているものである。
【0010】
請求項4においては、前記パッケージ材には、前記折り目線を境に折り曲げ易くするための折り目加工が施された折り目加工部が設けられ、かつ、当該折り目加工部は、前記切込み部を避けた位置に設けられているものである。
【0011】
請求項5においては、前記切込み部は、前記パッケージ材の当該切込み部を挟んで一側に位置する部分と、他側に位置する部分とが、当該切込み部で互いに接するように形成されているものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0013】
〔プリンタの構成〕
まず、サーマル記録装置としてのプリンタ1の概略構造を、図1〜図4を参照しながら説明する。
図1はプリンタの斜視図、図2は側面断面図である。図3は用紙収容部に用紙をセットした状態を示した側面断面図である。図4は用紙分離部および印刷機構部の詳細を示した断面拡大図である。
【0014】
プリンタ1は図1に示すように、平面視で長方形状(A6〜A7サイズ程度の用紙を収容可能な大きさ)とされ、かつ、厚みが略2cmあるいはそれ以下となる、コンパクトな構成とされている。
プリンタ1の本体ケース2は、枠体3の下面を下カバー4で覆うとともに、上面の一部を上カバー5で覆って形成されている。
【0015】
枠体3の上面側のうち前記上カバー5で覆われた箇所を除いた残りの部分には、図2に示すように用紙収容部(給紙部)6が形成される。この用紙収容部6には、A6〜A7サイズのカットシート状の感熱紙(被印刷媒体。以下「用紙」と称する)7をパッケージ材8の内部に複数枚収納した用紙パッケージ9を、図3に示すように収容可能としている。
前記用紙収容部6の上方は蓋体10にて覆われ、この蓋体10は図2に示すように回動自在とされる。本体ケース2側には図示しないロック機構が設けられており、前述のように用紙収容部6に用紙パッケージ9をセットした状態で、図3に示すように蓋体10を閉じてロックできるようになっている。
【0016】
用紙収容部6の一側の端部には、用紙分離部11としてのピックアップローラ(ピックアップ手段)12および分離ブロック13等が配置されている。また、上カバー5の下方には、後に詳述する印刷機構部14としてのサーマルヘッド15、プラテンローラ16、ペーパーガイド17が配置される。
【0017】
用紙分離部11を説明する。
図4に示すように、前記用紙収容部6の、前記印刷機構部14に近い側の端部には、ピックアップローラ12と分離ブロック13とが設けられている。前記蓋体10の用紙収容部6側を向く内面には、押圧板(ピックアップ押圧手段)18が回動自在に支持されている。
この押圧板18と蓋体10との間には付勢バネ19が介在され、押圧板18に対し、該押圧板18を下方へ回動させる向きの付勢力を常時作用させている。
【0018】
用紙パッケージ9は、印字面を下側へ向けながら積層された状態で内部に収納されている用紙7のうち、最も下側に位置する用紙7の下面をパッケージ材8から一部露出させた状態で、用紙収容部6にセットされる。そして、前記蓋体10を閉じてロックした際には、前述の付勢バネ19により下方へ付勢される押圧板18がパッケージ材8を介して、用紙7の用紙搬送方向先頭側の領域を押圧する。この結果、用紙7の前記露出した部分はピックアップローラ12に接触して、適宜の力で圧接される。
【0019】
前記ピックアップローラ12に近接させて分離ブロック13が設けられ、この分離ブロック13は、ピックアップローラ12の用紙送り出し方向に対して傾斜した分離案内面13aを備えている。
【0020】
この構成でピックアップローラ12が回転駆動することにより、該ピックアップローラ12に接触する最下層の用紙7に搬送力が加えられる。そして、前記分離ブロック13の分離案内面13aの分離作用とあいまって、最下層に位置する一枚の用紙7のみが分離されて送り出される。
【0021】
印刷機構部14を説明する。
分離ブロック13に隣接してプラテンローラ16が回転自在に設けられ、その外周面に近接させてペーパーガイド17が配置される。
図4の拡大図に示すように、このペーパーガイド17には、前記プラテンローラ16の外周面に沿うように、凹湾曲状の摺接面17aが形成されている。該ペーパーガイド17と本体ケース2との間には押圧コイルバネ20が設けられており、前記摺接面17aをプラテンローラ16の外周面に向けて付勢するようになっている。
【0022】
この構成において、前述の用紙分離部11で分離された用紙7は、ピックアップローラ12により搬送されて、分離ブロック13の下端と、用紙の向きをプラテンローラ16側へ向けるためのガイド板21の間を通過する。
用紙7はこのガイド板21により案内され、プラテンローラ16の下面側から、該プラテンローラ16とペーパーガイド17との間に送られる。そして用紙7は、プラテンローラ16の外周面とペーパーガイド17の摺接面17aとの間で保持されつつ、プラテンローラ16の回転駆動により横向き「U」字状に反転されながら搬送され、印字面を上側に向けながらプラテンローラ16の上面側に至る。
【0023】
プラテンローラ16の上面側に位置する前記サーマルヘッド15は、発熱体部15aを有している。該サーマルヘッド15は回動軸15bまわりに回動可能に設けられて、前記発熱体部15aがプラテンローラ16の上面に接離可能とされている。
なお、このようにサーマルヘッド15を回動自在に構成したのは、前記プラテンローラ16とペーパーガイド17との間で用紙7が詰まった場合におけるジャム紙除去作業において、サーマルヘッド15が作業の邪魔にならないようにするためである。
サーマルヘッド15には捩りコイルバネタイプのスプリング22の一端が係止されて、該サーマルヘッド15の発熱体部15aがプラテンローラ16上面に近接する方向の付勢力を常時加えている。
この構成で、前述のように印字面を上側に向けながらプラテンローラ16により送られてくる用紙の上面にサーマルヘッド15の発熱体部15aが接触し、この接触する箇所において用紙7に印字がなされる。
【0024】
サーマルヘッド15はラインヘッド型とされ、搬送されてくる感熱型の用紙7に対し、該用紙7の搬送方向に直交する方向に延びるライン毎に、任意の文字や画像を印刷することができる。一本のラインにつき印刷する際の印刷幅は、印刷対象の用紙7の幅に略等しく設定されている。
このようにサーマルヘッド15を印刷ヘッドとして用いるのは、被印刷媒体として感熱紙を用いることで、インクやインクリボンなどの消耗品が不要とできるほか、インクの供給のための機構などを省略でき、プリンタ1をコンパクトに構成できるからである。
感熱紙として、本実施形態では、サーマルヘッド15の加熱により発色する発色層を受像層としてその一側の面に形成した、いわゆる感熱発色タイプのものを使用している。ただし、それに限られるものではなく、例えば、加熱により穿孔される穿孔層を基材層上に積層して受像層としたもの(感熱穿孔タイプ)を用いても構わない。また、感熱紙のみならず、熱転写方式やそれ以外の用紙を用いることも可能である。
【0025】
前記分離ブロック13には、プラテンローラ16の用紙送り出し方向に対して傾斜した排紙ガイド面13bが形成されている。
この構成において、サーマルヘッド15の発熱体部15aにより印字がなされた後の用紙7は、この排紙ガイド面13bにより案内されて、図1の鎖線に示すように、本体ケース2の上カバー5と前記蓋体10とがなす隙間から、蓋体10の上側へ排紙される。
【0026】
〔用紙パッケージの構成〕
次に、本実施形態において、プリンタ1にセットされる用紙パッケージ9について説明する。
図5は用紙パッケージの斜視図、図6はパッケージ材の展開図である。用紙パッケージを製造する工程は、図7〜図11に順を追って示されている。
【0027】
用紙パッケージ9は図5に示すように、例えばA6〜A7サイズ程度の小サイズのカットシート状の感熱紙が、パッケージ材8の内部に、複数枚(例えば、50枚程度)積層されて収納される構成となっている。ユーザはこの図5の状態で販売されている用紙パッケージを購入し、後述する工程を行って内部の用紙を露出させてから、プリンタ1の用紙収容部6にパッケージ材8とともにセットするように構成されている。
【0028】
上記のパッケージ材8は、平板状の厚紙材(シート状部材)を折り曲げて箱状に組み立てたものである。厚紙材を折り曲げる前の状態が図6に示され、該厚紙材の形状は、用紙7とほぼ同一形状(長方形)とした底部40の周囲に、第一外装部41、第二外装部42、舌部43、蓋部44がそれぞれ一体的に形成されたものとなっている。なお、図6で細い鎖線で示されているのは折り目加工(スジ入れ加工)が施されている部分であって、当該折り目で厚紙材を折り曲げ易くして組立て時の便宜を図っている。
底部40にはプリンタセット用切込み31が、舌部43には蓋固定用切込み32・舌固定用切込み33が、第一外装部41には外装固定用切込み34がそれぞれ形成され、パッケージ材8の一部部分を差し込むことができるようになっている。詳細は後述する。
【0029】
〔用紙パッケージの製造工程〕
まず、用紙パッケージ9を製造する工程を以下に説明する。
図6の状態の厚紙材は、先ず図7に示すように、その舌部43が底部40の上側に位置するように180°折り曲げられる。次に図8に示すように、当該舌部43の上に重ねるようにして第一外装部41が折り曲げられ、その先端に設けられている差込部39が、舌部43に形成された舌固定用切込み33に差し込まれる。更に図9に示すように、該第一外装部41の上に重ねるようにして第二外装部42が折り曲げられ、その先端に設けられた差込部35が、第一外装部41に設けられた外装固定用切込み34に差し込まれる。
以上の結果、図10のような箱体が形作られる。図10に示すようにこの箱体は長方形状に構成され、かつ、その長手方向一側が開放されている。
【0030】
そして図10に示すように、重ねられた状態の用紙7が、前記厚紙材の底部40と舌部43との間に差し込むように、箱体の開放側から挿入される。
なお、用紙7を挿入する際には、用紙7の感熱面(印字面)が前記底部40側を向くように、予めその向きが定められる。これは、後に用紙パッケージ9をプリンタにセットし、当該用紙7がプリンタの印刷機構部14に送られるときに、前記サーマルヘッド15側に用紙7の感熱面が向くようにするためである。
【0031】
用紙7を挿入した後は図11に示すように、前記蓋部44を上方へ折り返して、その先端の突起38を、舌部43に形成されている該蓋固定用切込み32に差し込む。これにより、前記箱体の開放側が蓋部44により覆われた状態で固定される。
【0032】
以上により図5に示す用紙パッケージ9が完成するが、本実施形態においては、前述した用紙パッケージ9の製造作業はメーカ側で行い、プリンタ1を使用するユーザとしては、この図5の状態で販売されている用紙パッケージ9を購入し、当該用紙パッケージ9に対し以下に示す簡単な作業を施した上で、プリンタ1にセットして使用することになる。
【0033】
〔用紙パッケージのプリンタへのセット作業〕
次に、図5の状態の用紙パッケージ9をプリンタにセットするための作業の流れを、図12R>2以降を参照して説明する。図12〜図16には、当該作業の様子が順を追って示されている。
【0034】
最初に、ユーザは図5の状態の用紙パッケージ9の蓋部44の突起38を蓋固定用切込み32から抜き取って、図12に示すように蓋部44を開く。
その上で図13に示すように、第一外装部41・第二外装部42のそれぞれに形成されている切取部45に指を掛けて、当該切取部45を切り離す。この二つの切取部45は図6に示すように、パッケージ材8のいずれも外装部(41または42)から底部40に跨った部分に形成されている。なお、切取部45の切離し作業を容易とすべく、図6等に示すように、パッケージ材8には当該切取部45の輪郭に沿ってミシン目加工46が施されている。
【0035】
この切取部45の切離し作業によって、前記底部40の用紙搬送方向先頭側の一部を、図6R>6に符号Aで示す折り目線を境に、蓋部44とともに下方(外側)へ折り返すことができるようになる。なお本実施形態においては、この底部40の用紙搬送方向先頭側の一部と、蓋部44とが、本発明の折曲げ部に相当する部分である。
図6に示すように、折り目線Aの部分には、切込み部Bや折り目加工部Cが設けられている。これについての詳細は後述する。
【0036】
ユーザは蓋部44および底部40を折り目線Aを境に外側へ折り返した上で(図14)、その先端に形成されている突起38を、パッケージ材8の底部40に図6のように形成されているプリンタセット用切込み31に差し込む(図15)。
以上により、蓋部44が開いた状態で固定され、内部の用紙7の一部がパッケージ材8から露出される。
【0037】
次いで図16のように、この状態の用紙パッケージ9をプリンタ1の用紙収容部6にセットする。この結果、パッケージ材8内で積層されているうち最下層の用紙7の、パッケージ材8から露出されている部分が、ピックアップローラ12の上面に接触する。従って、この状態でピックアップローラ12を回転駆動させることにより、用紙7を繰り出して搬送できることになる。
【0038】
この後に蓋体10を閉じた状態が図3および図4に示され、このときは前記舌部43は、用紙7をピックアップローラ12に押し当てるための押圧板18と、用紙7との間に位置する。
【0039】
このようにして用紙7は用紙パッケージ9の形でプリンタ1にセットされ、用紙7が一枚ずつ繰り出されて無くなったときは、残ったパッケージ材8はプリンタ1から取り出されて廃棄されることになる。
この構成は、プリンタ1で多くの枚数を印刷したとしても、前記ピックアップローラ12や分離ブロック13の用紙分離性能が低下しない点で有用である。即ち、仮に用紙7が前記押圧板18に舌部43を介さず直接接触する構成とすると、プリンタ1の継続使用により押圧板18が摩耗して用紙7との間の摩擦力が低下し、分離作用が低下して用紙7を複数枚同時に送ってしまう現象(重送)が発生し易くなってしまう。この点本実施形態の構成では、用紙7が直接接触するのは舌部43であり、用紙7を所定の枚数使い切る毎に舌部43はパッケージ材8ごと新しいものに交換されることになるから、長年の使用により舌部43・用紙7間の摩擦力が低下してしまうことがなく、常に良好な分離作用が営まれて重送などの用紙搬送トラブルが防止される。
【0040】
〔用紙パッケージを交換する際の作業〕
なお、前記プリンタ1は目的に応じて、単なる感熱紙のほかにも、二枚の用紙を糊付けしてプリンタ1で二枚同時に印字可能とした複写紙や、感熱紙の裏面に粘着剤層を形成してセパレータと貼り合わせ、印字後にセパレータから剥がして貼り付け可能としたラベル紙など、様々な種類の用紙に印字できるようになっている。
従って、用紙パッケージ9の用紙7を全て使い切らないうちに、他の種類の用紙に交換することをユーザが望む場合がある。本実施形態では一つのパッケージ材8の中には一種類のみの用紙を収納する構成となっているため、違う用紙7に交換したい場合は用紙パッケージ9ごと取り換える必要がある。
【0041】
このような場合は、ユーザはプリンタ1の前記蓋体10を開いて、用紙収容部6から用紙パッケージ9を取り外す。その後は図17に示すように、底部40の下側に折り返されていた蓋部44の先端の突起38をプリンタセット用切込み31から引き抜き、図17・図1818の矢印に示すように、前述の折り目線Aを境に、蓋部44を上方へ折り返す。そして、この突起38を蓋固定用切込み32へ差し込むことで、図18に示すように、蓋部44が閉じた状態(パッケージ材8の開放側が再び閉鎖された状態)で固定される。
この図18の状態で用紙7は保管されるが、再び使用するときは前述の作業とは逆に、蓋部44の先端の突起38を蓋固定用切込み32から引き抜き、蓋部44を前記折り目線Aを境に下方へ折り返して該突起38をプリンタセット用切込み31へ差し込めば、プリンタ1にセットできる状態となる。
【0042】
〔折り目線の部分の構成〕
次に、パッケージ材8の、前述のように底部40の一部や蓋部44(即ち、折曲げ部)を折り返す境目となる折り目線Aの構成を、主に図6を参照して説明する。
図6に示すように、この折り目線Aは、前記底部40の用紙搬送方向におけるやや先頭側寄りの位置に、当該搬送方向に直交する直線状に設定されている。この折り目線Aの両端は、前述した切取部45の切取り線であるミシン目加工46の部分に接続している。
そして、この折り目線Aの中央側には、該折り目線Aに重複させて、直線状の切込み部Bが設けられている。この切込み部Bは、前記厚紙材(パッケージ材8)の厚み方向に貫通するように設けられている。
【0043】
この切込み部Bがあることによって折り目線Aが十分に弱化されるので、プリンタ1へのセット作業の際は図16に示すように、折曲げ部(即ち、底部40の一部部分、及び、蓋部44)をしっかりと用紙パッケージ9の下面側に折り曲げた状態で、プリンタ1にセットすることができる。図16には理想的な折曲げ状態が示されており、底部40の下面側に折り返された底部40の一部部分および蓋部44(折曲げ部)が、底部40の下面との間に隙間を有しないようにぴったりと接した状態となっている。
【0044】
以上の構成に対して、折り目線Aの部分に切込み部Bを設けず、単に折り目加工が施されているのみの場合では、図19に示すように、折り目線Aでの折りを戻そうとする復元力(図中太線矢印で示す力)が強く働き易い。特に、本実施形態のようにパッケージ材8の素材が厚紙材である場合は、その厚み如何によっては前記復元力は相当に大きいものとなって、単に折り目加工を折り目線Aの部分に施しただけでは復元力を十分に小さくすることができない。
この底部40部分の復元力は、用紙パッケージ9を図3のようにプリンタ1にセットした状態では、前記押圧板18の下方への押圧に抗して用紙7を相対的に持ち上げ、当該用紙7のピックアップローラ12に対する圧接を弱める方向に働く。従って、この復元力が強いと、前述の用紙分離部11における用紙7の送り出しに悪影響を与え、用紙7がピックアップローラ12に対して滑って送り出せない空送などが発生し易くなる。
【0045】
この点、パッケージ材8を貫通する切込み部Bが折り目線Aに沿って形成されている本実施形態の構成によれば、折り目線Aが十分に弱化されて、前述の復元力は十分に小さくなっている。従って、図16に示すような理想的な折曲げに近い状態でプリンタ1にセットでき、ピックアップローラ12による用紙7の繰り出しがスムーズかつ適切に行われ、前述の空送などの用紙トラブルが防止されるのである。
【0046】
本実施形態においては、前記切込み部Bは、前記折り目線Aの全体の長さの50%以上にわたって設けられている。図6を参照して説明すると、折り目線Aの全体の長さをWA,前記切込み部Bの長さをWとしたときに、W≧0.5Wとなるように切込み部Bの長さが決定されている。
この構成によれば、十分に折り目線Aの部分が弱化されるので、前述の復元力はより低減され、用紙7の空送などのトラブルを十分に回避することができる。
【0047】
更には本実施形態では図6に示すように、前記切込み部Bは前記折り目線A方向の中央側に設けられており、折り目線Aの両端部には切込み部Bは設けられていない。
こうすることで、前述の底部40の一部あるいは蓋部44の部分を前記折り目線Aを境に折り曲げる作業(図14あるいは図17に示すような作業)の際に、例えばユーザが誤って蓋部44を捩じるような力を加えたとしても、切込み部Bが折り目線Aの端部側にないので、折り目線Aが当該切込み部Bから千切れて蓋部44が切り離されてしまうことが防止される。また、前述の切取部45の切離し作業(図13に示した作業)において、ユーザが切取部45をミシン目加工46に沿って勢い良く破り取ったような場合でも、折り目線Aの部分が切込み部Bから千切れて蓋部44が切り離されてしまうことは防止される。
本実施形態において折り目線Aが千切れて蓋部44が切り離されてしまうと、もはや図18R>8のように使用途中の用紙パッケージ9を蓋をして保管することができなくなってしまう。本実施形態では切込み部Bの形成位置を上述とすることにより、上記のような不都合な事態を回避できる点で有用である。
【0048】
なお、前記折り目線Aにおいては、前記切込み部Bのほかに、当該折り目線Aを境に折り曲げやすくするための折り目加工を施した、折り目加工部Cが設けられている(図6)。この折り目加工部Cは折り目線Aの両端側に、当該折り目線Aに沿うように直線状に設けられている。
この構成によれば、底部40の一部および蓋部44を前記折り目線Aを境に正確かつ綺麗に折り曲げることができる。また、前述のパッケージ材8の復元力はこの折り目加工部Cによってより一層低減され、用紙7の空送トラブルの発生はより確実に防止される。
【0049】
そして、前記折り目加工部Cは、折り目線Aの両端部、即ち、中央側に設けられた前記切込み部Bを避けた位置に設けられており、折り目加工部Cは切込み部Bと重複しないようになっている。
これは、以下のような事情による。即ち、本実施形態のパッケージ材8は通例のトムソン加工により形成されるものであって、図6に示すパッケージ材8の外郭線形状や、前述の切込み(31〜34,切込み部Bも含む)、および前述のミシン目加工46に相当する形状の刃をベース板に設置したもので、厚紙材をプレスし打ち抜いて製造される。また、図6R>6の二点鎖線で示す折り目加工の部分(前記折り目加工部Cを含む)も、先のやや丸い刃を前記ベース板に設置して当該ベース板で前記厚紙材をプレスすることで形成することができる。
従って、折り目加工部Cを施してある部分に更に重ねて切込み部Bを形成した場合は、当該切込み部B部分にバリが出易いのである。
【0050】
ここで、図7〜図9までに示すパッケージ材8の組立て作業における折曲げ向きに当該パッケージ材8を折り曲げ易くするには、図6の状態のパッケージ材8に対し、図中下側からトムソン加工の刃を当てる必要がある。従って仮に、そのような折り目加工部Cの上に重ねて切込み部Bを設けた場合(特に、その切込み部Bの刃も図6の図中下側から当てて形成した場合)、当該切込み部Bのバリは図6の底部40の上側に突出することになる。
この底部40の上側というのは、図16等で明らかであるように、箱状に組み立てたパッケージ材8の内面側であって、用紙7の印字面(感熱面)が位置する部分である。このような部分(図16の符号Aの部分)にバリのような突出物がある場合、印字面を引っ掻く形となって用紙7を傷つけ、印字品質に悪影響を与えるおそれがある。また、プリンタ1にセットされた用紙7が搬送される際にバリが引っ掛かって抵抗を生じ、用紙の詰まり等のトラブルが発生する事態も考えられる。
このような観点から、本実施形態においては、前記折り目加工部Cは前記切込み部Bが形成されている部分を避けた位置に設けて、バリの発生を防止しているのである。
【0051】
なお、前記切込み部Bは幅のない切込みとして形成しており、図6に示すように、前記パッケージ材8の当該切込み部Bを挟んで一側に位置する部分D1と、他側に位置する部分D2とが、該切込み部Bで互いに接するように形成されている。
これにより、パッケージ材8を前記折り目線Aを介して折り曲げない状態(即ち、用紙パッケージ9が未開封の新品である図5の状態、あるいは、用紙パッケージ9を中途まで使用した後保管している図18の状態)では、パッケージ材8の切込み部Bの部分がぴったりと閉じられるので遮光性に優れ、当該切込み部Bから光が内部に射し込まないようになっている。また、パッケージ材内部の用紙7を保護する効果も、殆ど妨げられることなく奏されることになる。
この効果は本実施形態のように、用紙7として光や熱に弱い感熱紙を用いた場合であって、パッケージ材8のうち当該感熱紙の感熱面を覆う部分である底部40に前述の切込み部Bを設けた場合に特に有用である。
【0052】
〔変形例〕
次に、折り目線Aに切込み部Bを設けて弱化させる構成のバリエーション(変形例1〜4)を、図20を参照して説明する。なお図20には、折り目線Aの部分のみを抜き出して図示しており、他の構成は図6と同様である。
【0053】
変形例1に示すのは、切込み部Bの中央部(半円をなしている部分)は折り目線Aに重複させないが、切込み部Bの両端側の一部のみを折り目線Aに重複するように構成したものである。これによっても、パッケージ材8の復元力を低下させて、用紙の空送を防止することができる。
変形例2に示すのは、切込み部Bを「コ」字状に構成し、その両端部を折り目線Aに直角をなして接続させるようにしたものである。これによっても、パッケージ材8の復元力を低下させて、用紙の空送を防止することができる。
変形例3に示すのは、切込み部Bを、カット部とアンカット部が交互に現れるミシン目状に構成したものである(即ち、切込み部Bが間欠的に複数現れている)。これによっても、パッケージ材8の復元力を低下させ、用紙の空送を防止可能である。
変形例4に示すのは、切込み部Bを折り目線Aの両端側に一つずつ形成したものである。この構成は、若干折り目線Aの部分が切込み部Bを起点に千切れ易くなることになるが、パッケージ材8の復元力を低下させるという目的自体は達成し得る。
【0054】
前記変形例1または2の構成においては、前記切込み部Bの長さWとしては、切込み部Bの折り目線A方向の幅を採用すればよい。即ち、この幅Wが前述の折り目線Aの全体の長さWの50%以上であることが、折曲げの容易さあるいは用紙7の空送の発生防止の観点から望ましいことになる。
前記変形例3または4の構成においては、前記切込み部Bの長さとしては、それぞれの切込み部B(カット部)の長さの和を採用すればよい。即ち、切込み部Bの長さの総和ΣWが前述の折り目線Aの全体の長さWの50%以上であることが、同様に望ましいことになる。
【0055】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0056】
即ち、請求項1に示すように、プリンタの被印刷媒体としての用紙と、シート状部材を折り曲げることにより箱状に構成され、積層された状態の前記用紙の外側を覆うパッケージ材と、を有し、該パッケージ材から前記用紙の一部を露出させた状態で、該パッケージ材とともに前記プリンタにセットし、このときに、前記用紙の露出部分に前記プリンタのピックアップ手段が接触して用紙を送るように構成した、用紙パッケージであって、前記パッケージ材は、前記プリンタへのセット時に折り目線を境に外側に折り曲げられることで前記用紙の一部を露出させる、折曲げ部を一体的に有しており、前記折り目線には前記シート状部材の厚み方向に貫通する切込み部が設けられているので、
切込みにより、折曲げ部をしっかりと外側に折り曲げた状態(折曲げ部の折りを戻そうとするパッケージ材の復元力が小さくなっている状態)でプリンタにセットすることができる。折曲げ部の前記復元力は用紙とピックアップ手段との圧接を弱める方向に働くので、当該復元力が低減される本発明の構成によれば、ピックアップ手段によるピックアップが適切に行われることが確保され、空送などの用紙トラブルが防止される。
【0057】
請求項2に示すように、前記切込み部は、前記折り目線全体の長さの50%以上にわたって設けられているので、
折曲げ部の折曲げが、より容易となる。また、パッケージ材の復元力が一層小さくなるので、装置側でピックアップを適切に行えないトラブルをより一層確実に防止できる。
【0058】
請求項3に示すように、前記切込み部は前記折り目線の中央側に設けられているので、
前記切込みが両端部に設けられていない構成であるので、切込みから折り目線が千切れて折曲げ部が切り離されてしまうことが防止される。この結果、用紙パッケージの折曲げ部を含めた一体的な取扱いが可能であるので、用紙パッケージ使用時の取扱いが便利である。
【0059】
請求項4に示すように、前記パッケージ材には、前記折り目線を境に折り曲げ易くするための折り目加工が施された折り目加工部が設けられ、かつ、当該折り目加工部は、前記切込み部を避けた位置に設けられているので、
折り目加工の部分に切込みを形成しないので、切込み部分にパッケージ材のバリが出ることを防止できる。従って、突出するバリ部分が用紙を引っ掻く形となって傷つけたり、突出するバリ部分が用紙をピックアップ手段から離間させる形となってピックアップ手段のピックアップに悪影響を与える不具合も防止される。
【0060】
請求項5に示すように、前記切込み部は、前記パッケージ材の当該切込み部を挟んで一側に位置する部分と、他側に位置する部分とが、当該切込み部で互いに接するように形成されているので、
パッケージ材の切込み部分がぴったりと閉じられるので、遮光性に優れる。また、パッケージ材内部の用紙を保護する効果も、殆ど妨げられることがない。この効果は特に、用紙として例えば光や熱に弱い感熱紙を用いた場合等に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンタの全体的な構成を示した斜視図。
【図2】同じく側面断面図。
【図3】プリンタの用紙収容部に用紙をセットした状態を示した側面断面図。
【図4】用紙分離部および印刷機構部の詳細を示した断面拡大図。
【図5】用紙パッケージの斜視図。
【図6】パッケージ材の展開図。
【図7】パッケージ材の舌部を折り曲げる様子を示した図。
【図8】パッケージ材の第一外装部を折り曲げる様子を示した図。
【図9】パッケージ材の第二外装部を折り曲げる様子を示した図。
【図10】用紙をパッケージ材へ挿入する様子を示した図。
【図11】パッケージ材の蓋部を閉じる様子を示した図。
【図12】用紙パッケージをプリンタに使用するために、パッケージ材の蓋部を開く様子を示した図。
【図13】切取部を切り離す様子を示した図。
【図14】蓋部を下方へ折り曲げる様子を示した図。
【図15】蓋部を下面側で固定する様子を示した図。
【図16】用紙パッケージをプリンタにセットする様子を示した図。
【図17】プリンタから取り外した用紙パッケージにおいて、蓋部を上方へ折り返す様子を示した図。
【図18】蓋部を閉じる様子を示した図。
【図19】比較対照例の用紙パッケージにおいて、折曲げ部に復元力が作用する様子を示す図。
【図20】折り目線の部分の構成の四つの変形例を示した図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタの被印刷媒体としての用紙と、
シート状部材を折り曲げることにより箱状に構成され、積層された状態の前記用紙の外側を覆うパッケージ材と、
を有し、
該パッケージ材から前記用紙の一部を露出させた状態で、該パッケージ材とともに前記プリンタにセットし、このときに、前記用紙の露出部分に前記プリンタのピックアップ手段が接触して用紙を送るように構成した、用紙パッケージであって、
前記パッケージ材は、前記プリンタへのセット時に折り目線を境に外側に折り曲げられることで前記用紙の一部を露出させる、折曲げ部を一体的に有しており、
前記折り目線には前記シート状部材の厚み方向に貫通する切込み部が設けられていることを特徴とする、用紙パッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載の用紙パッケージにおいて、
前記切込み部は、前記折り目線全体の長さの50%以上にわたって設けられていることを特徴とする、用紙パッケージ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の用紙パッケージにおいて、前記切込み部は前記折り目線の中央側に設けられていることを特徴とする、用紙パッケージ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までに記載の用紙パッケージにおいて、
前記パッケージ材には、前記折り目線を境に折り曲げ易くするための折り目加工が施された折り目加工部が設けられ、
かつ、当該折り目加工部は、前記切込み部を避けた位置に設けられていることを特徴とする、用紙パッケージ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか一項に記載の用紙パッケージにおいて、
前記切込み部は、前記パッケージ材の当該切込み部を挟んで一側に位置する部分と、他側に位置する部分とが、当該切込み部で互いに接するように形成されていることを特徴とする、用紙パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2004−59225(P2004−59225A)
【公開日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−219293(P2002−219293)
【出願日】平成14年7月29日(2002.7.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】