説明

用紙搬送装置、画像読取装置、及び画像形成装置

【課題】画像読取装置の原稿搬送経路には、原稿読取りセンサに対向して、スプリングで付勢される原稿押え部材が設けられ、搬送される原稿を原稿読取りセンサに押え付けて原稿を読取っていたが、搬送される原稿に張力を与えると、原稿と原稿読取りセンサが密着せずに読み取り不良が発生する問題があった。
【解決手段】所定の搬送経路に沿って原稿を搬送する第1の反送部材(115、116)と、第1の搬送部材よりも搬送方向下流側に配置される第2の搬送部材(117、118)と、これら間の搬送経路に沿って配置され、原稿をガイドする読取面下ガイド124と、読取面下ガイド124に原稿を押し付ける原稿押え板121と、第1の搬送部材と第2の搬送部材との間で生じる原稿の張力に応じて、原稿押え板121に対して付勢力を付与する付勢補助板123とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、複合機、ファクシミリ等に関し、特にこれ等の装置の用紙搬送装置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機等の画像読取装置の原稿搬送経路には、原稿読取りセンサに対向して、スプリングで付勢される原稿押え部材が設けられ、搬送される原稿を原稿読取りセンサに押え付けて原稿を読取っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2009―44521号公報(段落0021〜0024、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば原稿押え部材の上流と下流に配置された搬送ローラによって、原稿に、弛み防止のための張力を発生させた場合、この張力によって、スプリングによって付勢された原稿押え部材が押し上げられ、原稿と原稿読取りセンサが密着せずに読み取り不良が発生していた。
本発明の目的は、これらの問題点を解消し、張力の発生如何に拘わらず、安定して原稿の読取りが行える、用紙搬送装置、画像読取装置、及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による用紙搬送装置は、
所定の搬送経路に沿って用紙を搬送する第1の搬送部材と、前記第1の搬送部材よりも搬送方向下流側に配置され、前記搬送経路に沿って前記用紙を搬送する第2の搬送部材と、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材との間の前記搬送経路に沿って配置され、前記用紙をガイドする用紙ガイドと、前記用紙ガイドに前記用紙を押し付ける用紙押し付け部材と、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材との間で生じる前記用紙の張力に応じて、前記用紙押し付け部材に対して、該用紙押し付け部材が前記用紙ガイドに前記用紙を押し付ける付勢力を付与する付勢補助部材と
を有することを特徴とする。
【0006】
本発明による画像読取装置は、
所定の搬送経路に沿って読取り原稿を搬送する第1の搬送部材と、前記第1の搬送部材よりも搬送方向下流側に配置され、前記搬送経路に沿って前記読取り原稿搬送する第2の搬送部材と、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材との間の前記搬送経路に設定される原稿読み取り位置にて前記読取り原稿を読み取る原稿読取り部と、前記原稿読取り位置で、用紙ガイドに前記読取り原稿を押し付ける用紙押し付け部材と、記前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材との間で生じる前記読取り原稿の張力に応じて、前記用紙押し付け部材に対して、該用紙押し付け部材が前記用紙ガイドに前記用紙を押し付ける付勢力を付与する付勢補助部材と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、搬送される用紙に張力が発生した場合、その張力を利用して用紙押し付け部材への付勢力を付与するため、張力が発生した場合にも用紙が用紙ガイドから離れるのを防止できると共に、張力が発生していないときの、用紙押し付け部材への付勢力を必要最低限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による画像読取装置を備えた画像形成装置の外観斜視図である。
【図2】図1の画像形成装置をX軸のマイナス側からみた側面図(一部が断面図)である。
【図3】図1の画像形成装置1をY軸のプラス側からみた正面図である。
【図4】図1のA−A線で切る、スキャナ部に配置されたADF部を含むスキャナ部の一部領域の断面を示す要部断面図であり、図2に示したスキャナ部の断面部分の拡大図に相当する。
【図5】(a)は、ADFロワフレーム、ADFアッパーフレーム、原稿トレイ、及びADFガイドカバーが一体的に回動してADF部の内部を現した状態を示す外観図であり、(b)は、点線で囲んだ部分の部分拡大図である。
【図6】本発明による実施の形態1の媒体搬送装置の動作を説明するための動作説明図である。
【図7】図6の原稿押え板回転軸を通るB−B線で切る断面を示す要部断面図である。
【図8】原稿押え板と付勢補助板とを組み合わせた状態で示す外観斜視図であり、図6に示す矢印Cの方向から観た図に相当する。
【図9】本発明に基づく実施の形態2の媒体搬送装置の動作を説明するための動作説明図である。
【図10】図9の原稿押え板回転軸を通るK−K線で切る断面を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明による画像読取装置を備えた画像形成装置1の外観斜視図であり、図2は、図1の画像形成装置1をX軸のマイナス側からみた側面図(一部が断面図)であり、図3は、画像形成装置1をY軸のプラス側からみた正面図である。
【0010】
これらの各図に示すように、画像読取装置に相当するスキャナ部101は、プリンタ部102の上部に配置され、これらは図示されない構造物で一体構造となっている。図2に示すように、スキャナ部101には、画像入力するための読取り原稿を搬送するための原稿搬送部であるADF(Auto Document Feeder:自動紙送り装置)部103が配置され、図2の側面図では、このADF部103を含むスキャナ部101の一部領域を断面図で現してその部分の内部構造を示している。
【0011】
図3の正面図には、プリンタ部102の要部構成が概略的に示されている。同図に示すように、プリンタ部102には、記録紙を収納する記録紙収納部201、記録紙を搬送する、記録紙給紙ローラ202、第1レジストローラ203、及び第2レジストーラ204、トナー潜像画像形成と転写を行う印刷プロセス部205、トナーを記録紙に定着させる定着器206、トナーが定着した記録紙を搬送、排出する、第1イジェクトローラ207と第2イジェクトローラ208、そして排出記録紙210を受ける記録紙スタック部209が配設されている。
【0012】
このプリンタ部102では、操作パネル部104に配設された図示されないコピー操作等のキーが押下されると、記録紙を搬送する上記した各ローラが、図示されない制御部からの印刷指令で駆動する図示されない駆動モータにより回転し、記録紙収納部201から一枚ずつ引き出した記録紙を搬送経路に沿って搬送し、やがて記録紙スタック部209に排出する。その間、記録紙は、印刷プロセス部205を通過する過程で、印刷プロセス部205で形成されたトナー潜像画像が転写され、定着器206を通過する過程で、この転写されたトナー像が定着される。
【0013】
尚、ここでは、プリンタ部102がLED方式の電子写真プリンタで構成されていることを前提に説明しているが、この方式の他に、レーザ方式・インクジェット方式・ドットマトリックスインパクト方式等で印刷を行うように構成してもよい。
【0014】
尚、図1〜図3中のX、Y、Zの各軸は、記録紙が印刷プロセス部205を通過する際の移動方向にX軸をとり、記録紙給紙ローラ202等の各ローラの回転軸方向にY軸をとり、これら両軸と直交する方向にZ軸をとっている。また、後述する他の図においてX、Y、Zの各軸が示される場合、これらの軸方向は、共通する方向を示すものとする。即ち、各図のXYZ軸は、各図の描写部分が、図1に示す画像形成装置1を構成する際の配置方向を示している。
【0015】
図4は、図1のA−A線で切る、スキャナ部101に配置されたADF部103を含むスキャナ部101の一部領域の断面を示す要部断面図であり、図2に示したスキャナ部101の断面部分の拡大図に相当する。
【0016】
スキャナベースフレーム111内には、図示されない構造で可動に保持された読取りセンサ112が設けられている。読取りセンサ112の上部には読取面ガラス125が配置され、読取りセンサ112は、スキャナベースフレーム111と読取面ガラスl25とで密閉された状態になり、スキャナベース部130を形成している。スキャナベース部130の上部には、ADF部103が配置されている。
【0017】
ADF部103の内部において、ADFベースフレーム113上には、スキャンピンチローラ116、イジェクトピンチローラ118、及び透明な素材で形成された読取面下ガイド124が配置されている。このADFベースフレーム113の上方には、ADFベースフレーム113及びADFガイドカバー120と読取り原稿の搬送経路を形成するADFロワフレーム119及びADFアッパーフレーム126が配置されている。
【0018】
これらのADFロワフレーム119、ADFアッパーフレーム126には、搬送経路の上流側から順に、原稿トレイ128に載置された読取り原稿129を一枚ずつ搬送経路に送出するADFローラ114、スキャンピンチローラ116と共働(挟持)して読取り原稿129を搬送する原稿搬送用のスキャンローラ115、読取り原稿129をガイドする読取面下ガイド124と対向する位置に配置された原稿押え板121、ADFロワフレーム119と原稿押え板121との間に架けられて原稿押え板121を読取面下ガイド124に押し付ける原稿押えスプリング122、後述するように、読取り原稿129の張力に応じて変動する付勢補助板123、及びイジェクトピンチローラ118と共働(挟持)して読取り原稿129を搬送する原稿搬送用のイジェクトローラ117が配置されている。
【0019】
この搬送経路を搬送される読取り原稿129が読取面下ガイド124を通過するとき、読取り原稿129の画像が、透明な読取面下ガイド124を介して読取りセンサ112によって読み込まれる。
【0020】
尚、原稿押え板121は用紙押し付け部材に相当し、付勢補助板123は付勢補助部材に相当し、読取面下ガイド124は用紙ガイドに相当し、スキャンローラ115及びスキャンピンチローラ116は第1の搬送部材に相当し、イジェクトローラ117及びイジェクトピンチローラ118は第2の搬送部材に相当する。
【0021】
原稿押え板121は、コイルスプリングである原稿押えスプリング122により読取面下ガイド124側に押下されて当接し、後述するように読取り原稿129が原稿押え板121と読取面下ガイド124間に搬送される際には、読取り原稿129が常に読取面下ガイド124と密着して読取りセンサ112との距離が一定になるように保っている。また、ADFガイドカバー120は、上記した各部材の外観カバー兼原稿ガイドとして配置され、読取り原稿129を載置する原稿トレイ128、上記した各部材と共にADF部103を構成している。
【0022】
また、ADFロワフレーム119、ADFアッパーフレーム126、原稿トレイ128、及びADFガイドカバー120は、図示しない回動軸中心に、ADFベースフレーム113に対して一体的に回動可能に保持されている。図5(a)は、ADFロワフレーム119、ADFアッパーフレーム126、原稿トレイ128、及びADFガイドカバー120が一体的に回動してADF部103の内部を現した状態を示し、図5(b)は、点線で囲んだ部分の部分拡大図である。同図に示すように、ADFベースフレーム113には、スキャンピンチローラ116、イジェクトピンチローラ118等が配置され、ADFロワフレーム119には、イジェクトローラ117、原稿押え板121、付勢補助板123等が配置されている。
【0023】
ADF部103の原稿搬送スピードは、スキャンローラ115の周速度Vs及びイジェクトローラ117の周速度Veで決まるが、スキャンローラ115及びイジェクトローラ117の外形寸法等のバラツキで同一とならないのが常である。通常スキャンローラ115とイジェクトローラ117間で読取り原稿129にたるみが生じると、スキャンローラ115から原稿が離間した際に、たるみが解消するまでの間、読取り部での原稿が一時的に停滞する状態が発生することから、原稿のたるみが生じぬようスキャンローラ115の周速度Vsとイジェクトローラ117の周速度Veの関係が、Vs≦Veとなるようローラの寸法及び公差を設定している。
【0024】
図6は、本発明による実施の形態1の媒体搬送装置の動作を説明するための動作説明図であって、図4における原稿押え板121の周囲の構成を拡大した部分拡大図に相当する。図7は、図6の原稿押え板回転軸156を通るB−B線で切る断面を示す要部断面図である。図8は、原稿押え板121と付勢補助板123とを組み合わせた状態で示す外観斜視図であり、図6に示す矢印Cの方向から観た図に相当する。
【0025】
尚、図6の動作説明図では、構成を明確にするため、原稿押え板121と一体的に構成されて一体的に回動する部材を網掛け表示し、付勢補助板123と一体的に構成されて一体的に回動する部材を斜線表示している。
【0026】
図6に示すように原稿押え板121は、長手方向の両端部において、その原稿押え板回転軸156(図7参照)が、ADFロワフレーム119に形成された回転軸穴151(図7参照)と嵌合し、回動可能に取り付けられている。原稿押え板121には、原稿押え板回転軸156と同軸上に付勢補助板回転軸157(図7参照)が設けられており、付勢補助板123に設けられた付勢補助板回転穴158(図7)と嵌合し回動可能に取り付けられている。従って、原稿押え板121と付勢補助板123とは、各々が同軸上で回動可能に配置されている。
【0027】
原稿押え板121は、前記したようにADFロワフレーム119との間に架けられた原稿押さえスプリング122によって、その原稿接触面165が読取面下ガイド124に付勢されており、付勢補助板123は、自重によりその当接部123aが原稿押え板121の押え板当接面160で当接して相互の位置関係を保っている。このとき、原稿押え板121の原稿接触面165と付勢補助板123の付勢補助板原稿接触面164が隣接して、ほぼ連続した面となるように形成され、付勢補助板原稿接触面164は、読取り原稿129の搬送状況により接触と離間を繰り返す。
【0028】
更に付勢補助板123には、回動によって原稿押え板121の原稿接触面165の背面部を押圧する付勢作用部153が、付勢弾性部152を介して配設されているが、付勢補助板123の当接部123aが原稿押え板121の押え板当接面160に当接している状態では、原稿押え板121との間に所定の距離を保って離間している。
【0029】
ここでは付勢弾性部152が付勢補助板123と一体成型された構造となっているが、弾性機能を有する部材であれば、板バネ、ソリッドゴム、発泡ゴム、フィルム等でも構成が可能で、付勢弾性部152の厚み幅、長さ等の形状や配置数量は各機器の設計にゆだねられ制限は無い。
【0030】
ADFロワフレーム119にはリミッタ穴155(穴のみ点線で示す)が設けられており、原稿押え板121に設けられたリミッタ154と嵌合し、原稿押え板121の上下方向移動範囲を規制している。また、原稿押え板121は、原稿押え板回転軸156の垂直軸を基準に原稿走行方向上流側に読取位置範囲159を設け、この範囲と対向する部分を読取りセンサ112(図4)の読取位置として設定している。
【0031】
またここでは、本発明による媒体搬送装置を、CCD(Charge Coupled Device)センサと光学レンズを用いたユニットで構成した読取りセンサ112で原稿を読み取る際の搬送手段として採用した例を示したが、CIS(Contact Image Sensor)、他の画像読取手段、濃度センサや反射型センサ等の光反射型センサ、更には高精度な用紙画像認識が必要な場合にも、媒体搬送手段として採用することが出来る。
【0032】
以上の構成において、図1〜図8を参照しながら原稿搬送動作について説明する。
【0033】
操作パネル104(図2)より、コピーや原稿スキャン操作等のキーが押下されると、ADF部103は、図示されない制御部から原稿読取指令を受け、図示されない駆動モータでADFローラ114、スキャンローラ115、及びイジェクトローラ117を駆動し、前記した搬送経路に沿って読取り原稿129を搬送する。読取りセンサ112は、読取り原稿129が読取位置範囲159(図6)に達すると、逐次読取り原稿129の画像を読取り、その画像データを制御部に転送する。
【0034】
その際、読取位置範囲159の上下流側に配置した、スキャンローラ115の周速度Vsとイジェクトローラ117の周速度Veの関係がVs≦Veとなっていることから、スキャンローラ115とイジェクトローラ117との間を走行する読取り原稿129は、その走行経路が、長い原稿ほど図6に実線で示す矢印Eの位置から弛みが減少する側に移動し、やがて付勢補助板123の付勢補助板原稿接触面164に当接して張力を発生し、付勢補助板123を押圧して矢印G方向に回動する。
【0035】
一方、付勢補助板123は、この回動によって付勢作用部153が原稿押え板121に当接し、更に付勢弾性部152に撓みを生じさせ、その撓みによって原稿押え板121へ付勢力を与える。この時、読取り原稿129は、この付勢による反作用と、付勢補助板原稿接触面164に当接して発生する張力とがつり合う走行経路、例えば図6に一点鎖線で示す矢印Fの走行経路まで付勢補助板123を矢印G方向に回動した走行経路で搬送されることになる。
【0036】
従って、原稿押え板121は、前記したように、原稿押えスプリング122によって読取面下ガイド124側に付勢されるのに加えて、その補助として、読取り原稿129の張力に応じて変化する付勢作用部153からの付勢力を受けて読取り原稿129を読取面下ガイド124側に押し付ける。これにより、原稿押え板121は、読取り原稿129の張力が増して、上方に押し上げられようとするとき、補助としての付勢作用部153から受ける付勢力が増してこれを打ち消す力を受けるため、読取り原稿129の張力変動の影響が抑制され、読取り原稿129と読取面下ガイド124との密着を保ち続ける。
【0037】
原稿押え板121が受ける付勢作用部153からの補助的な押圧力は、これによって読取り原稿129の走行を妨げない範囲の適切な力が得られるように付勢弾性部152の弾性力が調節されるものである。
【0038】
読取り原稿129の後端がスキャンローラ115から離間すると、スキャンローラ115とイジェクトローラ117間で発生する張力がなくなるため、読取り原稿129の走行経路は矢印Fの位置から矢印Eの位置に戻る。これによって、付勢弾性部152の撓みがなくなり、付勢作用部153が原稿押え板121から離間した状態となるため、原稿押え板121は、原稿押えスプリング122のみによって読取面下ガイド124側に付勢され、読取り原稿129と読取面下ガイド124との密着を保ち続ける。
【0039】
以上の動作により、原稿押え板121は、補助的に読取り原稿129の張力に応じた付勢力受けて、読取り原稿129を読取面下ガイド124側に押し付けるため、固定的に設定される原稿押えスプリング122による付勢力を、原稿の厚さ等によって変動する張力を考慮しない状態での必要最低限の強さに設定することができる。
【0040】
以上のように、本実施の形態の媒体搬送装置によれば、搬送中の読取り原稿に強い張力が発生しても原稿押え板121が押し上げられることなく、読取り原稿129と読取面下ガイド124との密着を保ち続けることが可能となる。更に、原稿押えスプリング122による付勢力を、原稿の張力の影響を考慮しない状態での必要最低限の強さに設定できるため、読取り原稿が、原稿押え板121と読取面下ガイド124との間に進入する際の負荷を軽減できる。これにより、薄くて腰の弱い読取り媒体が送られた場合にも進入を妨げることなく、安定した搬送が可能となり、ADF装置としての媒体対応能力が向上する。更に、原稿押え板121と付勢補助板123の隙間をゼロに出来るため、強いカール癖の有る原稿なども、隙間への引掛りによるジャム等を発生させること無く、安定した搬送が可能となる。
【0041】
実施の形態2.
図9は、本発明に基づく実施の形態2の媒体搬送装置の動作を説明するための動作説明図であって、図4における原稿押え板121の周囲の構成を拡大した部分拡大図に相当する。但し、後述するように拡大部分における構成が異なる。図10は、図9の原稿押え板回転軸156を通るK−K線で切る断面を示す要部断面図である。
【0042】
本実施の形態の媒体搬送装置が、前記した図6に示す実施の形態1の媒体搬送装置と主に異なる点は、原稿押えスプリング122、リミッタ154(図6)が除かれたのに対して、トーションスプリング161、付勢補助板ストッパ162、及び付勢補助板リミッタ163(図9)が新たに配設された点である。
【0043】
従って、この媒体搬送装置を採用する画像形成装置1が、前記した実施の形態1の画像形成装置1(図1)と共通する部分には同符号を付して、或いは図面を省いて説明を省略し、異なる点を重点的に説明する。尚、本実施の形態の画像形成装置の要部構成は、上記した相違点以外において図1に示す実施の形態1の画像形成装置1の要部構成と共通するため、必要に応じて図1〜図5を参照する。
【0044】
図9、図10に示すように、原稿押え板回転軸156と同軸上の付勢補助板回転軸257(図10参照)は、付勢補助板123の付勢補助板回転穴158(図10)を貫通して内部側に延在している。この延在部分には弾性部材としてのトーションスプリング161が配設され、トーションスプリング161の両腕部は、一方が原稿押え板221に、他方が付勢補助板123に各々当接している。これにより、このトーションスプリング161は、原稿押え板221の押え板当接面160に、所定の押圧力が発生した状態で付勢補助板123の当接部123aが当接するように作用する。従って、自由状態において、原稿押え板221と付勢補助板123とは、ADFロワフレーム119に形成された回転軸穴151を中心に、一体的に回動する。
【0045】
この自由状態では、自重による付勢力により、原稿押え板221の原稿接触面165が読取面下ガイド124に当接した状態を保っている。以後、このときの原稿押え板221及び付勢補助板123の状態を、初期状態と称す場合がある。
【0046】
付勢補助板123には付勢補助板ストッパ162を設け、ADFロワフレーム119には付勢補助板リミッタ163を設けている。これらはリミッタ手段を構成し、互いが当接することにより付勢補助板123の矢印M方向への回動を規制するものであるが、付勢補助板ストッパ162と付勢補助板リミッタ163とは、原稿押え板221及び付勢補助板123が上記した初期状態にあるとき、隙間hが生ずるように構成されている。言い換えると、リミッタ手段によって、M方向の回動が規制される回動位置において、原稿押え板221の原稿接触面165と読取面下ガイド124との間には所定の隙間が形成される。
【0047】
尚、ここでは、押え板当接面160での押圧力の付与に、トーションスプリング161を用いた例を説明したが、これに限定されるものではなく、他部材においても同様に押圧力が付与できる構成であれば適用が可能である。
【0048】
以上の構成において、図9、図10を参照しながら原稿搬送動作について説明する。
原稿押え板221及び付勢補助板123が初期状態にあるとき、搬送されてくる読取り原稿129が原稿押え板221と読取面下ガイド124との間に進入すると、原稿押え板221は上方に押し上げられる。このとき、原稿押え板221と付勢補助板123は、トーションスプリング161による押圧力で当接したまま一体的に矢印M方向に回動し、付勢補助板ストッパ162と付勢補助板リミッタ163との隙間hは減少する。尚、このときの回動が、付勢補助板ストッパ162が付勢補助板リミッタ163に当接しない範囲であった場合、この時原稿押え板221に進入した読取り原稿129は、便宜上、見かけ厚さが隙間h以下である、と表現する。
【0049】
従って、原稿押え板221に進入してくる原稿129が、薄いものやカール癖がないものであって、見かけ厚さが隙間h以下のものであれば、原稿押え板221による、読取面下ガイド124への付勢力は自重のみとなる。このときの自重による付勢力は、原稿押え板221及び付勢補助板123がトーションスプリング161によって一体的に作用するため、これら全体の重心と回転軸156の位置関係によって決まるが、進入負荷が小さくて薄い読取り原稿であっても原稿押え板221に進入できる程度の弱い付勢力となるように設定されているものとする。
【0050】
一方、原稿押え板221に進入してくる読取り原稿129が、厚いものやカール癖が大きいものであって、見かけ厚さが隙間hより大きい場合、付勢補助板ストッパ162は、付勢補助板リミッタ163に当接し、その時点で付勢補助板123の矢印M方向への回動を停止するが、原稿押え板221は、このときの読取り原稿129の見かけ厚さに応じて、更に矢印M方向に回動することになる。その結果、押え板当接面160での原稿押え板221と付勢補助板123との当接が解除されると同時に、押え板当接面160に発生していたトーションスプリング161による押圧力が、原稿押え板221を読取面下ガイド124に押し付ける力となり、更に原稿押え板221の矢印M方向に回動が進むにつれてその力は増加する。
【0051】
本実施の形態の媒体搬送装置は、前記した図6に示す実施の形態1の媒体搬送装置と同様に、付勢補助板123に付勢弾性部152を備え、図4に示すスキャンローラ115とスキャンピンチローラ116間を走行する読取り原稿129に発生する張力に応じて発生する補助的な付勢力を原稿押え板221に加える構成を有するものであるが、それらの構成及び作用は、前記した実施の形態1で説明した通りのものであるので、ここでの説明は省略する。
【0052】
以上の動作によって、原稿押え板221は、搬送される読取り原稿129の見かけ厚さが隙間h以下の薄い媒体であった場合には、進入負荷を小さくして原稿押え板221と読取面下ガイド124間への進入を容易にし、搬送される読取り原稿129の見かけ厚さが隙間hより大きくて、厚い或いはカール壁の大きい媒体であった場合には、付勢作用部153によって付与される、読取り原稿129の張力による前記した補助的な付勢力が得られない段階においても、トーションスプリング161による押圧力によって媒体を読取面下ガイド124に押し付けるように作用する。しかもその押圧力は、見かけ厚さが厚いほど大きくなるように作用する。
【0053】
以上のように、本実施の形態の媒体搬送装置によれば、搬送される読取り原稿が、薄い或いはカール癖の無い剛性の低い読取り原稿の場合、進入負荷を極限まで小さくして原稿押え板221と読取面下ガイド124間への進入を容易にし、厚い或いはカール癖の大きい剛性の高い原読取り原稿の場合、原稿押え板221が、見かけ厚さに応じた押圧力で読取り原稿を読取面下ガイド124に押し付けるため、読取り原稿129の張力による補助的な付勢力がまだ得られない原稿進入時等の段階においても、原稿押え板121浮上を確実に防止しできる。このため、種々の厚さ、及びカール癖の読取り原稿を使用した場合にも、読取画像品質の向上が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
前記した各実施の形態では、媒体搬送装置を有する複合機を例に説明したが、本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等、原稿や媒体搬送時に張力が発生する機器において媒体の姿勢制御を必要とする装置であれば、何れの装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 画像形成装置、 101 スキャナ部、 102 プリンタ部、 103 ADF部、 104 操作パネル部、 111 スキャナベースフレーム、 112 読取りセンサ、 113 ADFベースフレーム、 114 ADFローラ、 115 スキャンローラ、 116 スキャンピンチローラ、 117 イジェクトローラ、 118 イジェクトピンチローラ、 119 ADFロワフレーム、 120 ADFガイドカバー、 121 原稿押え板、 122 原稿押えスプリング、 123 付勢補助板、 124 読取面下ガイド、 125 読取面ガラス、 126 ADFアッパーフレーム、 128 原稿トレイ、 129 読取り原稿、 130 スキャナベース部、 151 回転軸穴、 152 付勢弾性部、 153 付勢作用部、 154 リミッタ、 155 リミッタ穴、 156 原稿押え板回転軸、 157 付勢補助板回転軸、 158 付勢補助板回転穴、 159 読取位置範囲、 160 押え板当接面、 161 トーションスプリング、 162 付勢補助板ストッパ、 163 付勢補助板リミッタ、 164 付勢補助板原稿接触面、 165 原稿接触面、 201 記録紙収納部、 202 記録紙給紙ローラ、 203 第1レジストローラ、 204 第2レジストーラ、 205 印刷プロセス部、 206 定着器、 207 第1イジェクトローラ、 208 第2イジェクトローラ、 209 記録紙スタック部、 210 排出記録紙、 221 原稿押え板、 257 付勢補助板回転軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送経路に沿って用紙を搬送する第1の搬送部材と、
前記第1の搬送部材よりも搬送方向下流側に配置され、前記搬送経路に沿って前記用紙を搬送する第2の搬送部材と、
前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材との間の前記搬送経路に沿って配置され、前記用紙をガイドする用紙ガイドと、
前記用紙ガイドに前記用紙を押し付ける用紙押し付け部材と、
前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材との間で生じる前記用紙の張力に応じて、前記用紙押し付け部材に対して、該用紙押し付け部材が前記用紙ガイドに前記用紙を押し付ける付勢力を付与する付勢補助部材と
を有することを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
前記用紙押し付け部材と前記付勢補助部材は、各々が同軸上で回動可能に配置され、前記付勢補助部材は、
前記用紙に対向する用紙対向面と、
前記用紙押し付け部材に対して第1の方向へ回動することにより前記用紙押し付け部材と当接する当接部と、
前記用紙押し付け部材に対して第2の方向に回動することにより前記押し付け部材を押圧する作用部と
を有し、前記用紙対向面が前記用紙の張力を受けることよって前記第2の方向に回動する力が生じるように構成したことを特徴とする請求項1記載の用紙搬送装置。
【請求項3】
前記付勢補助部材は、前記付勢力を調節する弾性部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の用紙搬送装置。
【請求項4】
前記用紙押し付け部材に対し、常時、前記用紙ガイドに前記用紙を押し付ける付勢力を付与する付勢手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の用紙搬送装置。
【請求項5】
前記付勢手段はコイルスプリングであることを特徴とする請求項4記載の用紙搬送装置。
【請求項6】
前記用紙押し付け部材と前記付勢補助部材との間に架けられて、前記付勢補助部材の前記当接部を、前記用紙押し付け部材と当接する方向に付勢する弾性部材と、
前記用紙押し付け部材が前記用紙ガイドから離間する方向に回動するとき、一体的に同方向に回動しようとする前記付勢補助部材の回動を規制するリミッタ手段と
を備えたことを特徴とする請求項2又は3記載の用紙搬送装置。
【請求項7】
前記弾性部材はトーションスプリングであることを特徴とする請求項6記載の用紙搬送装置。
【請求項8】
前記用紙押し付け部材と前記付勢補助部材とは、前記弾性部材によって一体的に回動する自由状態において、自重によって、前記用紙押し付け部材の用紙対向面が前記用紙ガイドに当接することを特徴とする請求項6又は7記載の用紙搬送装置。
【請求項9】
前記付勢補助部材が、前記リミッタ手段によって前記離間する方向の回動が規制される回動位置において、前記用紙押し付け部材の用紙対向面と前記用紙ガイドとの間には所定の隙間が生じるように設定されることを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項記載の用紙搬送装置。
【請求項10】
前記用紙ガイドを透明な素材で形成したことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項記載の用紙搬送装置。
【請求項11】
請求項10記載の用紙搬送装置と、
前記用紙ガイドを介して前記用紙を読み取る読取り部と
を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項12】
所定の搬送経路に沿って読取り原稿を搬送する第1の搬送部材と、
前記第1の搬送部材よりも搬送方向下流側に配置され、前記搬送経路に沿って前記読取り原稿搬送する第2の搬送部材と、
前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材との間の前記搬送経路に設定される原稿読み取り位置にて前記読取り原稿を読み取る原稿読取り部と、
前記原稿読取り位置で、用紙ガイドに前記読取り原稿を押し付ける用紙押し付け部材と、
記前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材との間で生じる前記読取り原稿の張力に応じて、前記用紙押し付け部材に対して、該用紙押し付け部材が前記用紙ガイドに前記用紙を押し付ける付勢力を付与する付勢補助部材と
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の画像読取装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−269862(P2010−269862A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121027(P2009−121027)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】