説明

田植機

【課題】土壌条件や植深をリアルタイムで取得できる田植機を提供する。
【解決手段】田植機は、土壌反力検出装置27と、植付爪22を備えた植付部と、土壌反力検出装置27の出力に基づいて苗の植深を算出する制御部と、を備えている。土壌反力検出装置27は、植付爪22に生じる土壌反力を検出する。また土壌反力検出装置27は、植付爪22の近傍に配置されるプローブ29と、ロードセル28とを備える。前記プローブ29は、植付爪22の長手方向と平行に配置された棒状部材であり、その一端側は植付爪22の先端と同じ方向を向くとともに、他端側はロードセル28の荷重検出面に当接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、田植機による苗の植付け深さを正確に制御するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
田植機において、植付部を上下に昇降制御する構成が公知である(例えば特許文献1)。
【0003】
植付部を上下に昇降制御する目的の一つは、苗の植付け深さを一定に保つことにある。即ち、地面の凹凸、車体のピッチング/ローリング挙動等によって、地面と植付部との距離は常時変動する。従って、仮に植付部の位置が固定されていると、苗の植付け深さがバラバラになるためきれいな植え付けができないばかりでなく、場合によっては浮苗などの不具合が発生し得る。これを防ぐため、地面に追従させて植付部を上下に昇降制御することにより、苗の植付け深さを一定に保つのである。
【0004】
従来の田植機は、特許文献1が開示しているように、植付部が備えるフロートの揺動角度に基づいて、植付部を昇降制御していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−212059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、植付部によって苗が植え付けられる深さは、圃場の条件(例えば土壌の硬さなど)の影響を受ける。しかしながら、特許文献1のようにフロート揺動角に基づいて植付部を昇降する従来の構成は、圃場条件の変化に対応することができない。このため、従来の田植機で所望の植付け深さを得ようとした場合、土壌条件に応じてオペレータが設定を細かく調整する必要があった。しかし、当該調整作業には経験と勘が必要であり、所望の植付け深さで苗を植え付けることができない場合も多々あったのである。
【0007】
そこで、各種制御パラメータ等を、土壌条件に応じて自動的に調整することができれば好適であると考えられる。しかし、従来の田植機では、車体を走行させながらリアルタイムで土壌の状態を検出することができなかったため、土壌条件に応じた自動調整は、困難ないし不可能である。
【0008】
土壌の状態を検出する装置として、コーンペネトロメータ等の計測器が知られているが、これは人間が目盛を読みとらなければならないうえ、測定にもある程度の時間を要するので、植付部の昇降制御にリアルタイムで用いることができない。更にいえば、このコーンペネトロメータは、水田などの比較的やわらかい土壌の状態を測定するには不向きである。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、土壌条件や植深をリアルタイムで取得できる田植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の観点によれば、以下の構成の田植機が提供される。即ち、この田植機は、植付部が地面から受ける反力を検出する土壌反力検出装置を有する。前記土壌反力検出装置は、突入体と、回転位相検出部と、反力検出部と、を備える。前記突入体は、回転駆動されることによりその先端が所定のループ状の軌跡を描いて地面に突き刺さる。前記回転位相検出部は、前記突入体の回転位相を検出する。前記反力検出部は、前記突入体が地面から受ける反力である土壌反力を検出する。
【0012】
このように突入体を地面に突入させ、その反力を検出することにより、土壌反力を検出することができる。また、突入体の先端を地面に突入させる構成により、ある一点に生じる土壌反力を検出できるので、フロートのように広い面積で土壌に接触する構成に比べて、精度良く土壌反力を検出することができる。また突入体の回転位相を取得することにより、突入体が地面から反力を受けたタイミングを取得することができる。
【0013】
上記の田植機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この田植機は、前記植付部が備える植付爪の近傍に配置される前記突入体としてのプローブと、前記反力検出部としてのロードセルと、を備える。前記プローブは、前記植付爪の長手方向と平行に配置された棒状部材であり、その一端側は前記植付爪の先端と同じ方向を向くとともに、他端側は前記ロードセルの荷重検出面に当接している。
【0014】
土壌反力検出装置をこのように構成することで、プローブは植付爪とともに回転し、植付爪と同じタイミングで地面に衝突するので、植付爪が実際に土壌から受ける反力と近い土壌反力を得ることができる。しかも、プローブ等を植付爪とは別体とするので、植付爪による植付には影響を与えることがない。
【0015】
上記の田植機は、以下のように構成することもできる。即ち、前記突入体は、前記植付部が備える植付爪である。前記反力検出部は、前記植付爪に取り付けられた応力検出装置として構成される。
【0016】
これにより、植付爪が土壌から受ける土壌反力を検出することができる。
【0017】
上記の田植機において、前記土壌反力検出装置は、前記植付部の左右方向中央部近傍に配置されることが好ましい。
【0018】
これにより、土壌反力検出装置の検出値がローリングの影響を受けにくくなる。
【0019】
上記の田植機において、前記土壌反力検出装置は、前記植付部の左右方向両端部近傍に配置しても良い。
【0020】
これにより、土壌反力検出装置の検出値に基づいて、ローリングによる植付部の左右傾き量を検出することができる。
【0021】
上記の田植機は、前記土壌反力と、前記突入体の回転位相と、に基づいて苗の植付け深さを算出する算出部を備えることが好ましい。
【0022】
即ち、突出体に生じた土壌反力と、その発生タイミングにより、苗が植え付けられる深さを推定することができる。
【0023】
上記の田植機において、前記算出部は、前記土壌反力に基づいて、土壌粘着力、土壌硬度、土中の夾雑物、及び苗に関する情報のうち少なくとも何れか1つを取得することが好ましい。
【0024】
このように、土壌反力に基づいて、土壌の状態に関する各種の情報を取得することができる。また、土壌反力検出装置が苗マットからの反力を検出できるように構成しておけば、苗の状態を検出することもできる。
【0025】
上記の田植機において、前記算出部は、前記土壌反力に基づいて各種情報を取得又は算出する際に、車速及び植付株数に応じた補正を行うことが好ましい。
【0026】
即ち、植付爪の駆動速度等によって土壌反力の検出値も変化する。そこで、車速や植付株数を考慮して土壌反力を補正することにより、当該土壌反力に基づいて精度の良い情報を取得することができる。
【0027】
上記の田植機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この田植機は、車体のピッチング角度を検出する傾斜センサを備える。前記算出部は、前記傾斜センサで取得したピッチング角度に応じて前記植付け深さを補正する。
【0028】
これにより、植付け深さをより高精度に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る田植機の全体的な構成を示す側面図。
【図2】田植機の平面図。
【図3】植付爪の回転軌跡を示す側面図。
【図4】土壌反力検出装置の平面図。
【図5】(a)土壌反力検出装置の出力波形の例を示すグラフ。(b)回転位相検出部及び下死点検出部図が出力する信号を示すグラフ。
【図6】第2実施形態に係る田植機の植付爪近傍の様子を示す側面図。
【図7】第2実施形態の田植機の平面図。
【図8】(a)第2実施形態に係る土壌反力検出装置の出力波形の例を示すグラフ。(b)第2実施形態に係る回転位相検出部及が出力する信号を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る乗用型の田植機1の側面図である。
【0031】
田植機1は、車体2と、当該車体2の後方に配置された植付部3と、から構成されている。
【0032】
車体2は、左右一対の前輪4と、左右一対の後輪5を備えている。また、車体2は、その前後方向で前輪4と後輪5の間に運転座席6を備えている。運転座席6の近傍には、車体2の操向操作を行うためのステアリングハンドル7、車体2の走行速度を調節するための変速ペダル8、その他各種の操作具が配置されている。
【0033】
また、車体2は、図略の制御部を備えている。制御部は例えばマイクロコントローラからなり、田植機1の各部に備えられたセンサ等の信号に基づいて、田植機1の各構成を制御するように構成されている。
【0034】
また運転座席6の周囲には、苗の植付け深さを設定するための図略の植深調整レバー(植付け深さ設定具)が配置されている。オペレータは、植深調整レバーを操作することにより、苗の植付け深さを設定することができる。また、植深調整レバーの近傍には、当該植深調整レバーの操作位置を検出することができるポジションスイッチ(設定検出部)が設けられている。ポジションスイッチによって検出された植深調整レバーの操作位置は、制御部に出力される。以下の説明において、オペレータによって設定された苗の植付け深さを、目標植深とよぶ。
【0035】
また、車体2において、運転座席6の下方にはエンジン10が、当該エンジン10の前方にはミッションケース11が、それぞれ配置されている。一方、車体2の後方には、植付部3を取り付けるための昇降リンク機構12、エンジン10の駆動力を植付部3に出力するためのPTO軸13、植付部3を昇降駆動するための昇降シリンダ14等が配置される。
【0036】
前記植付部3は、植付センターケース15と、植付ベベルケース24と、苗載台17と、を備えている。
【0037】
植付センターケース15内には図略の駆動軸が配設されており、当該駆動軸には前記PTO軸13からの駆動力が入力されている。図2に示すように、本実施形態の田植機は植付ベベルケース24を3つ有している。前記植付ベベルケース24は車体前後方向に沿って配置されており、かつ車体左右方向に並んで配置されている。各植付ベベルケース24内には、図略の駆動軸が配設されており、植付センターケース15からの駆動力が入力されている。
【0038】
各植付ベベルケース24の左右には、それぞれ植付ユニット20が取り付けられている。従って、本実施形態の田植機1は、植付ユニット20を6つ有する6条植えの田植機として構成されている。各植付ユニット20は、回転ケース21に2つの植付爪22を備えるロータリ式植付装置として構成されている。植付ベベルケース24に入力された駆動力は、回転ケース21を回転駆動する。
【0039】
ロータリ式植付装置の構成は公知であるので詳細な説明は省略するが、回転ケース21を回転駆動することにより、植付爪22の先端部が図3に示すようなループ状の軌跡を描きながら上下に駆動されるように構成されている。植付爪22の先端部は、上から下に向かって動くときに、後述の苗載台17に載せられた苗マット25の下端から1株分の苗26を掻き取り、当該苗26の根元を保持したまま下方に動いて地面に植え込むように構成されている。
【0040】
なお本明細書において、植付爪22の先端の下死点から地面までの距離(植付爪22の先端が地面に入り込む距離)のことを、苗を植え付ける深さという意味で「植深」と呼ぶ。
【0041】
苗載台17は、前記植付ベベルケース24の上方に配置されている。この苗載台17は、図略のガイドレール上を車体左右方向に往復摺動可能に支持されている。そして、植付部3は、苗マットの左右幅の範囲内で苗載台17を左右に往復駆動する図略の横送り機構を備えている。これにより、苗載台17に載せた苗マットを、植付ユニット20に対して左右に相対運動させることができる。また、苗載台17は、苗マットを、下方に向かって(即ち、植付ユニット20側に向かって)間欠的に送る苗送りベルト(縦送り機構)を備えている。以上の構成で、横送り機構と縦送り機構とを適切に連動させることにより、各植付ユニット20に対して苗を順次供給し、連続的に植付けを行うことができる。
【0042】
植付センターケース15には、前記昇降リンク機構12が連結されている。この昇降リンク機構12は、トップリンク18、ロワーリンク19等からなる平行リンク構造から構成されており、ロワーリンク19に連結された昇降シリンダ14を駆動することにより、植付センターケース15を上下に昇降駆動可能に構成されている(これにより、植付部3全体を上下に昇降することができる)。
【0043】
昇降シリンダ14の駆動は、制御部によって制御される。制御部は、昇降シリンダ14を駆動して、植付部3を地面の凹凸に追従させて上下に昇降し、オペレータによって設定された目標植深で苗を植え付けることができるように制御を行う。
【0044】
前述のように、従来の田植機はフロートの揺動角に基づいて植付部3を昇降制御していたので、土壌条件の影響を受け易く、植深を一定に保つことが困難であった。そこで本実施形態の田植機1は、植付爪22が土壌から受ける反力(土壌反力)を測定する土壌反力検出装置27を備え、この土壌反力に基づいて、植付部3を昇降制御するように構成されている。以下、詳細に説明する。
【0045】
従来の田植機は、特許文献1が開示するように、土壌表面に接触して揺動するフロートをそなえており、このフロートの揺動角をフロートセンサで検出するように構成していた。しかし、フロートは地面の表面に接触しているのみであるから、土壌表面の様子(凸凹の状態など)はフロートセンサの出力によってあるていど推測はできるものの、土壌の状態を検出することはできない。
【0046】
また、フロートは土壌からの力を受けて揺動するので、フロートセンサの出力は、ある意味で土壌から受けた反力を示していると考えることもできる。しかし、フロートは、ある程度広い面積で地面に接触するように構成されているので、フロートが土壌から受ける反力は分散されてしまい、精度の良い検出はできない。
【0047】
以上のように、従来の田植機では、土壌反力を精度良く検出することはできなかった。
【0048】
そこで本実施形態の田植機が備える土壌反力検出装置は、その先端を土壌に突入させる突入体と、当該突入体が土壌から受ける反力を検出する反力検出部と、からなるものである。突入体を地面に突入させ、その反力を検出することにより、土壌表面だけでなく土壌内部の様子も検知することができる。また、突入体の先端を地面に突入させる構成により、ある一点(突入体の先端)に生じる土壌反力を検出できるので、フロートのように広い面積で土壌に接触する構成に比べて、精度良く土壌反力を検出することができる。
【0049】
ただし、突入体を地面に突入させただけでは、土壌反力を一回検出することができるのみである。しかも突入体を地面に突入させたままの状態では、田植機を走行させたときに突入体が地面を引き摺られてしまう。
【0050】
そこで本願発明者らは、突入体を回転駆動することにより、当該突入体の先端が所定のループ状の軌跡を描いて地面に突入するように構成することで、本願発明を完成させた。
【0051】
即ち、突入体の先端がループ状の軌跡を描いて回転駆動されることにより、当該先端が何度も地面に突入するので、そのたびに土壌反力を検出することができる。更に、前記軌跡を適切に設定することにより、田植機を走行させても突入体が地面を引き摺られることがない。
【0052】
このように構成された土壌反力検出装置によれば、田植機を走行させながら、土壌反力を精度良くリアルタイムで取得することができる。さらに、回転駆動される突入体の回転位相を検出する位相検出部を設けることにより、土壌反力を受けたタイミングを検出できるので、土壌の状態を検出することができる。
【0053】
次に、上記のアイディアを具体化した本実施形態の土壌反力検出装置27について説明する。土壌反力検出装置27は、植付爪22の近傍に配置され、植付爪22と一体的に回転運動するロードセル28及びプローブ29を備える。
【0054】
ロードセル(反力検出部)28は、荷重検出面に掛かる荷重を検出して、当該荷重に応じた検出信号を出力する公知の構成である。ロードセル28の検出信号は、制御部に出力される。なお前述のように、土壌反力検出装置27は植付爪とともに回転運動するので、ロードセル28から制御部に対する信号はスリップリングを介して出力される。
【0055】
プローブ(突入体)29は棒状部材であり、その長手方向が植付爪22の長手方向と略平行になるように配置されている。また、プローブ29の先端は、植付爪22と同じ方向を向いており、かつ、地面からの高さが植付爪22の先端とほぼ同じになるように配置されている。プローブ29がこのように配置されているので、回転ケース21が回転駆動されると、プローブ29の先端と植付爪22の先端は、同時にほぼ同じループ状の軌跡を動くことになる。また、プローブ29の他端はロードセル28の荷重検出面に当接している。この構成により、プローブ29の先端に力が加わると、その力がロードセル28によって検出され、当該検出結果が制御部へと出力される。
【0056】
以上のように構成された土壌反力検出装置27において、プローブ29は、植付爪22とほぼ同時に地面に刺さる。従って、植付爪22が土壌から受ける反力(土壌反力)とほぼ同じ荷重がロードセル28で検出される。このように、上記土壌反力検出装置27によって、植付爪22が土壌から受ける反力(土壌反力)を検出することができる。
【0057】
また本実施形態の土壌反力検出装置27は、植付爪22とは別体として設けられている。従って、植付爪22による植付動作が土壌反力検出装置27によって阻害されるおそれはない。
【0058】
また、土壌反力検出装置27は、プローブ29の回転位相(即ち植付爪22の回転位相)を検出する回転位相検出部を備えている。具体的には、植付ベベルケース24内の駆動軸に、当該駆動軸の回転位相を検出するための回転位相検出部(図略)が設けられている。回転位相検出部が検出した結果は、制御部へと出力される。これにより、制御部は植付爪22の回転位相を取得することができる。
【0059】
回転位相検出部は例えばアブソリュート型ロータリエンコーダとしても良いが、本実施形態では安価なピックアップセンサを採用している。ただし、ピックアップセンサは回転数に応じたパルス信号を出力するだけであるので、当該ピックアップセンサの出力だけでは植付爪22の回転位相を正確に検出できない。そこで、本実施形態の田植機1では、植付爪22の下死点を検出する下死点検出部を、植付ベベルケース24内の駆動軸に設けている。この下死点検出部は、植付爪22の先端が下死点に達したときに、パルス信号を制御部に出力するように構成されている。
【0060】
次に、土壌反力検出装置27の検出結果に基づく植深の算出について説明する。
【0061】
植付爪22が図3のようなループ状の軌跡を描いて回転駆動されるとき、土壌反力検出装置27からは図5(a)のグラフに示すような検出波形が出力される。即ち、まず、植付爪22が苗マット25から苗26をかき取ったときに、その衝撃が反力として検出される。次に、かき取った苗を保持した植付爪22が下に向かって動き、当該植付爪22の先端が地面に衝突する。このとき植付爪22は地面から反力を受けるので、土壌反力検出装置27が出力する検出波形が立ち上がり、植付爪22が下死点に到達するまで土壌反力が増大していく。植付爪22が下死点を過ぎると、検出される土壌反力は減少に転じる。そして苗26を地面に植え終えた植付爪22は地面から引き抜かれるが、このときは地面の粘着力により引っぱり力(マイナスの反力)が検出される。
【0062】
制御部は、土壌反力検出装置27が出力した土壌反力の検出波形と、植付爪22の回転位相と、に基づいて、苗の植深を算出する。即ち、制御部は、前記回転位相検出部及び下死点検出部の出力を参照して、土壌反力の立ち上がりタイミング時における植付爪22の回転位相を取得する。即ち制御部は、図5(b)に示すように、土壌反力が立ち上がったとき(植付爪22の先端が地面に衝突したとき)から、下死点検出部がパルスを出力するまで(植付爪22の先端が下死点に達するまで)の間に回転位相検出部(ピックアップセンサ)が出力したパルスの数を数える。
【0063】
これにより、植付爪22の先端が地面に衝突した点と、下死点と、の位相差Δθを取得することができる。植付爪22の先端の移動軌跡は既知であるから、位相差Δθに基づいて、植付爪22によって苗が地面に植えられる深さ(植深)を算出することができる。以上のようにして、制御部は、検出した土壌反力に基づいて植深値を算出する。このように、制御部が土壌反力及び回転位相に基づいて植深値を算出しているので、当該制御部は算出部であると言うことができる。
【0064】
そして制御部は、算出した植深値に基づいて昇降制御を行う。即ち、オペレータによって設定された目標植深値に対して、制御部が算出した植深値が小さい場合(植え付けが浅過ぎる場合)、当該制御部は、昇降シリンダを駆動して植付部3を下降させる。一方、目標植深値に対して、制御部が算出した植深値が大きい場合(植え付けが深過ぎる場合)、当該制御部は、昇降シリンダを駆動して植付部3を上昇させる。上記制御は、PID制御等によって実現することができる。
【0065】
以上の制御により、土壌条件によらず、植深が一定になるように植付部を上下昇降することができる。なお、従来の田植機は、植深値を測定する手段を有していなかったので、上記のような制御を行うことはできない。本実施形態の田植機は、土壌反力に基づいて植深値を測定できるので、上記のような制御が可能となっているのである。実際に測定された植深値に基づいて植付部を昇降制御するので、土壌条件(土の硬さなど)が変化したとしても、植深値を一定に保つように制御することができる。従って、従来の田植機のように、土壌条件に応じてオペレータが設定を細かく調整する必要もない。
【0066】
次に、制御部が算出する植深値の補正方法について説明する。
【0067】
即ち、実際の植付作業において、田植機1の車体は常にピッチング挙動を繰り返している。土壌反力検出装置27の検出値は、当該ピッチング挙動の影響を受けるので、ピッチング角に応じた補正を行わなければ、正確な植深値を得ることができない。例えば、車体がヘッドアップ(車体が前上がり状態になること)した場合、機体後部に位置する植付爪22は、地面に押し入れられる方向に移動する。従って、実際の苗の植付け深さは、土壌反力に基づいて算出した植深値よりも深くなっている場合がある。
【0068】
そこで本実施形態では、ピッチ角を検出するための傾斜センサ31を、車体前後方向で中央近傍に備えている。傾斜センサ31が検出したピッチ角は、制御部に入力される。傾斜センサ31と植付爪22の位置関係は既知なので、傾斜センサ31が検出したピッチ角に基づいて、車体ピッチングによって植付爪22が移動した量を算出することができる。そこで制御部は、傾斜センサ31によって検出した車体のピッチ角と、傾斜センサ31と植付爪22との位置関係と、に基づいて、土壌反力に基づいて算出した植深値を補正する。これにより、ピッチングによらず正確な植深値を得ることができる。
【0069】
なお、植深値の検出に影響を与える車体の挙動としては、ピッチングの他にもローリングがある。図2に示すように、本実施形態の田植機1では、土壌反力検出装置27を、車体左右方向で中央近傍の植付爪22に備えている。即ち、車体左右方向で中央の植付爪22は、車体がローリング挙動を示した場合であっても上下に移動しにくい。従って、上記のように土壌反力検出装置27を配置することにより、制御部が算出する植深値がローリングの影響を受けにくくなる。従って、本実施形態の田植機1においては、算出した植深値をローリング補正しなくてもよい。
【0070】
また、植付爪22の動きが速いと、苗の植付が浅くなる傾向がある。従って、植付爪22の動きが速いときには、実際に苗が植え付けられた深さは、土壌反力に基づいて算出した植深値に比べて浅くなり易い。ここで、車速が速く設定されているほど、植付爪22も早く駆動される。また、植付株数(所定距離あたりに苗を植え付ける回数)が多く設定されているほど、植付爪22を早く駆動しなければならない。
【0071】
そこで制御部は、車速が速く、又は植付株数が多く設定された場合には、土壌反力に基づいて算出した植深値を浅くするように補正する。これにより、車速や植付株数などの条件によらず、安定した植深計測結果を得ることができる。
【0072】
以上、土壌反発力に基づいて植深を算出する構成について説明したが、本実施形態の田植機1は、これに加えて、土壌反力に基づいて更に追加の情報を取得するように構成されている。
【0073】
例えば本実施形態の田植機1において、制御部は、土壌反力に基づいて、土壌硬度を算出するように構成されている。即ち、土壌が硬いほど、植付爪22が土壌から受ける力が大きくなる。従って、植付爪22が土壌に衝突したときの土壌反力の大きさに基づいて、土壌硬度を算出することができる。また、土壌が硬い場合は土壌反力検出装置27が出力する土壌反力の波形が急激に立ち上がり、土壌が軟らかい場合は土壌反力の波形が緩やかに立ち上がる。そこで、本実施形態において、制御部は、土壌反力の大きさと、土壌反力の変化率と、に基づいて、土壌硬度を算出するように構成されている。これにより、より正確な算出結果を得ることができる。
【0074】
また制御部は、検出された土壌反力の変化に基づいて、土中の夾雑物(例えば石のかたまりなど)を検出するように構成されている。即ち、土壌中に夾雑物が存在しない場合、土壌反力検出装置27が出力する出力波形は、図5(a)のようになる。ところが土壌中に夾雑物が存在していると、この出力波形の途中で土壌反力が突然大きくなるなど、特有の波形を示す。そこで制御部は、土壌反力検出装置27の検出波形の変化の割合に基づいて、途中で土壌反力が急激に大きくなっている場合に、土中夾雑物を検出するように構成されている。
【0075】
また前述のように、植付爪22が地面から引き抜かれる際には、土の粘着力(土壌粘着力)によりマイナスの反力が発生する。そこで制御部は、植付爪22が地面から抜かれるときの土壌反力に基づいて、土壌粘着力を算出するように構成されている。
【0076】
また、前述のように、植付爪22が苗をかきとるときにも、反力が検出される。このときの反力の大きさは、苗の状態(苗マットの硬さ、苗マットの乾き等)によって異なる。そこで制御部は、苗のかきとり時に土壌反力検出装置27が検出する反力の大きさに基づいて、苗マットの状態を推定するように構成されている。このように、土壌反力検出装置27は、植付爪が土壌から受ける力以外の力(上記の例では苗マットから受ける力)を検出するために利用することもできる。
【0077】
なお、制御部は、上記のようにして土壌硬度、土中夾雑物の有無、土壌粘着力、苗マットの状態などの情報を算出する際には、車速又は植付株数に応じて土壌反力を補正するように構成されている。即ち、植付爪22が早く動いているほど、当該植付爪22の勢いが強くなるので、植付爪22が地面から受ける反力も大きくなる。そこで、車速が早く設定された場合、又は植付株数が多く設定された場合、制御部は、土壌反力検出装置27で検出された土壌反力が小さくなるように補正したうえで、上記土壌硬度、土中夾雑物の有無、土の粘着力、苗マットの状態などの情報を算出するように構成されている。これにより、車速や植付株数などの条件によらず、正確な情報を取得することができる。
【0078】
以上のように、本発明に係る土壌反力検出装置27によれば、苗の植深値に加え、土壌硬度、土中夾雑物の有無、土の粘着力、苗マットの状態などを検出することができる。これらは、従来では田植機を走行させながらリアルタイムに取得することはできなかった情報である。本発明の構成によれば、植付爪22が回転する毎に上記情報を取得することができる。
【0079】
上記のようにして取得した情報(土壌硬度、土中夾雑物の有無、土の粘着力、苗マットの状態など)は、例えば植付部3の昇降制御などに利用することができる。また田植機1は、上記のようにして取得した情報を表示するための表示部を備えている。これにより、オペレータは、制御部が算出した各種情報をリアルタイムに参照できるので、適切に植付作業を行うことができる。
【0080】
以上で説明したように、本実施形態の土壌反力検出装置27は、突入体と、回転位相検出部と、反力検出部と、を備える。前記突入体は、回転駆動されることによりその先端が所定のループ状の軌跡を描いて地面に突き刺さる。前記回転位相検出部は、前記突入体の回転位相を検出する。前記反力検出部は、前記突入体が地面から受ける反力を検出する。
【0081】
このように突入体を地面に突入させ、その反力を検出することにより、土壌反力を検出することができる。また、突入体の先端を地面に突入させる構成により、ある一点に生じる土壌反力を検出できるので、フロートのように広い面積で土壌に接触する構成に比べて、精度良く土壌反力を検出することができる。また突入体の回転位相を取得することにより、突入体が地面から反力を受けたタイミングを取得することができる。
【0082】
また本実施形態の田植機1は、植付爪22の近傍に配置される突入体としてのプローブ29と、反力検出部としてのロードセル28とを備える。前記プローブ29は、植付爪22の長手方向と平行に配置された棒状部材であり、その一端側は植付爪22の先端と同じ方向を向くとともに、他端側はロードセル28の荷重検出面に当接している。
【0083】
土壌反力検出装置27をこのように構成することで、プローブ29は植付爪22とともに回転し、植付爪22と同じタイミングで地面に衝突するので、植付爪22が実際に土壌から受ける反力と近い土壌反力を得ることができる。しかも、プローブ等を植付爪22とは別体とするので、植付爪22による植付には影響を与えることがない。
【0084】
また本実施形態の田植機1は、土壌反力と、植付爪22の回転位相と、に基づいて苗の植深を算出する制御部とを備えている。
【0085】
即ち、突出体に生じた土壌反力と、その発生タイミングにより、苗が植え付けられる深さを推定することができる。
【0086】
また本実施形態の田植機1において、土壌反力検出装置27は、植付部3の左右方向中央部近傍に配置されている。
【0087】
これにより、土壌反力検出装置27の検出値がローリングの影響を受けにくくなる。
【0088】
また本実施形態の田植機1において、制御部は、土壌反力の立ち上がりタイミングと、植付爪の回転位相と、から苗の植深を算出している。
【0089】
これにより、苗の植深をリアルタイムで取得することができる。
【0090】
また本実施形態の田植機において、制御部は、土壌反力の立ち上がりタイミングと、植付爪22の下死点位置と、から苗の植深を算出している。
【0091】
このように、下死点のタイミングに基づいて植深を算出することができる。
【0092】
また本実施形態の田植機1において、制御部は、土壌反力に基づいて土壌硬度を算出している。
【0093】
このように、土壌反力に基づいて土壌硬度を算出することができる。
【0094】
また本実施形態の田植機1において、制御部は、植付爪22の土挿入時における土壌反力の大きさ及び変化率から、土壌硬度を算出している。
【0095】
これにより、より精度良く土壌硬度を取得することができる。
【0096】
また本実施形態の田植機1において、制御部は、土壌反力に基づいて、土中の夾雑物の検出を行っている。
【0097】
このように、土壌反力に基づいて夾雑物を検出することができる。
【0098】
また本実施形態の田植機1において、制御部は、植付爪22の土挿入時における土壌反力の変化の割合に基づいて夾雑物の検出を行っている。
【0099】
これにより、精度良く土中夾雑物を検出することができる。
【0100】
また本実施形態の田植機1において、制御部は、植付爪22が土から抜かれるときにおける土壌反力検出装置27の出力に基づいて、土壌粘着力を算出している。
【0101】
これにより、リアルタイムで土壌粘着力を取得することができる。
【0102】
また本実施形態の田植機1において、制御部は、植付爪22が苗をかきとる時に土壌反力検出装置27が出力する検出値に基づいて、当該苗に関する情報を取得している。
【0103】
このように、土壌反力検出装置27は、植付爪22が苗から受ける反力を測定するためにも利用することができる。そして、取得された反力に基づいて、苗の硬さ、苗の乾き、といった情報を取得することができる。
【0104】
また本実施形態の田植機1において、制御部は、土壌反力に基づいて各種情報を取得又は算出する際に、車速及び植付株数に応じた補正を行っている。
【0105】
即ち、植付爪22の駆動速度等によって土壌反力の検出値も変化する。そこで、車速や植付株数を考慮して土壌反力を補正することにより、当該土壌反力に基づいて精度の良い情報を取得することができる。
【0106】
また本実施形態の田植機1において、車速が早く設定された場合、又は植付株数が多く設定された場合、制御部は、算出する植深が浅くなるように補正を行っている。
【0107】
即ち、車速が早く設定された場合や、植付株数が多く設定された場合、植深の算出値が実際の値よりも深くなるので、これを補正することにより、条件によらず安定した計測結果を得ることができる。
【0108】
また本実施形態の田植機1は、車体のピッチング角度を検出する傾斜センサ31を備える。制御部は、傾斜センサ31で取得したピッチング角度に応じて植深を補正する。
【0109】
これにより、植深をより高精度に算出することができる。
【0110】
また本実施形態の田植機1は、苗の植深をオペレータが設定するための植深調整レバーを備える。制御部は、オペレータが設定した植深と、土壌反力に基づいて算出した植深と、の差に基づいて、植付部の昇降制御を行う。
【0111】
即ち、従来の田植機は、植深を検出する手段がなかったので、植深を正確に制御することができなかった。この点、本発明の田植機は植深を検出することができるので、上記のように構成することで、オペレータが意図した植深を正確に実現することができる。
【0112】
また本実施形態の田植機1は、植深調整レバーの操作量を検出するポジションスイッチを備えている。
【0113】
これにより、オペレータが設定した目標植深を取得して、制御に利用することができる。
【0114】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態と同一又は類似する構成については、第1実施形態と同一の符号を要素名に付して、説明は省略する。
【0115】
本実施形態の田植機において、土壌反力検出装置は歪みゲージ(応力検出装置)271として構成されている。図6に示すように、この歪みゲージ271は、植付爪22に直接貼り付けられている。この歪みゲージ271により、地面から受けた反力によって植付爪22に発生した応力を検出することができる。即ち、植付爪22が地面から受けた土壌反力を、歪みゲージ271によって検出することができる。歪みゲージは小型かつ軽量であるから、植付爪22による植付動作を阻害するおそれも少ない。なおこの構成の土壌反力検出装置の場合、植付爪22を突入体、歪みゲージを反力検出部として把握することができる。
【0116】
また本実施形態では、土壌反力検出装置271は、図7に示すように、車体左右方向両端の植付爪22に設けられている。これによると、植付部3がローリング挙動を示したときに、左右の土壌反力検出装置271で検出される土壌反力が異なる。そこで制御部は、左右の土壌反力検出装置271で検出された土壌反力に基づいて、植付部3のローリング角(左右傾き量)を算出するように構成されている。このように、土壌反力検出装置271の検出結果を、ローリング角の算出に利用することができる。
【0117】
また上記第1実施形態では、植付爪22の回転位相を正確に求めるために下死点検出部を備えていたが、本実施形態ではこれを省略し、苗をかき取るときに土壌反力検出装置27が出力する反力に基づいて、植付爪22の回転位相を求めるように構成されている。即ち、本実施形態の制御部は、図8に示すように、苗をかきとるときの反力を検出したタイミング(植付爪22の先端が苗マットに衝突したとき)から、土壌反力の立ち上がりタイミングまでの間に回転位相検出部(ピックアップセンサ)が出力するパルスの数を測定する。これにより、植付爪22の先端が苗マットに衝突した点と、植付爪22の先端が地面に衝突した点と、の位相差Δθ1を取得することができる。一方、植付爪22の先端が苗マットに衝突する点と、下死点と、の位相差Δθ2は既知である。従って、植付爪22の先端が地面に衝突した点と、下死点と、の位相差を、Δθ2−Δθ1によって求めることができる。位相差Δθ2−Δθ1に基づいて、植付爪22によって苗が地面に植えられる深さ(植深)を算出することができる。以上のようにして、制御部は、下死点検出部を設けなくても、土壌反力に基づいて植深値を算出することができる。
【0118】
ところで上記第1実施形態では、土壌反力検出装置27を設けることにより、植深値を算出し、当該植深値に基づいて昇降制御することが可能であることを説明した。土壌反力に基づく植深値は、植付爪22が苗を植え付ける毎に算出される。言い換えると、土壌反力に基づいて算出される植深値は、離散的にしか得ることができない。従って、第1実施形態のように植深値を利用して植付部の昇降制御を行う場合、当該昇降制御に遅れが発生する場合がある。
【0119】
この点、従来の田植機は、フロートセンサによってフロートの揺動角を検出し、当該揺動角に基づいて昇降制御を行っていた。このフロートの揺動角は連続的に検出することが可能である。しかしながら、前述のように、フロートの揺動角に基づく昇降制御では、植深値を一定に保つように制御することが難しかった。
【0120】
そこでこの実施形態では、植深値と、フロートの揺動角と、を相補的に用いることで、制御遅れを防止して、かつ植深を一定に保つことができるように構成している。
【0121】
本実施形態の田植機は、図6に示すように、土壌反力検出装置271に加えて、フロート16と、フロートセンサ34と、を備えている。このフロート16及びフロートセンサ34の構成は従来の田植機と同様であるが、簡単に説明する。
【0122】
前記フロート16は、3本の植付ベベルケース24それぞれの下方に設けられる。このフロート16は、その下面が地面に接触することができるように配置されている。これにより、地面をならして、植え付けをきれいに行うことができる。
【0123】
フロート16は、揺動支点32を中心に回動可能に構成されている。また、フロート16は、揺動支点32よりも前方の位置において、押圧部材33によって下向きに付勢されている。即ち、フロート16の前端部分が、地面に対して押し付けられるように力が加えられている。このように構成されているので、植付部3が地面から離れるほど、フロート16が前下がりの姿勢となる。即ち、植付部3の高さ(地面から距離)に応じて、フロート16の角度が変化する。
【0124】
側面視において、フロート16の下面から植付爪22の下死点までの距離を、爪出量と呼ぶ。爪出量は、苗の植深に影響する重要なパラメータの1つである。本実施形態の田植機1は、オペレータが爪出量を調整するための爪出量レバーを備えている。この爪出量レバーを調整することにより、フロートの揺動支点32を上下に移動させることができるように構成されている。これにより、爪出量を変更することができる。また、爪出量は、フロート16の角度によっても異なる。従って、植付部3の高さを調整することにより、爪出量を調整することができる。
【0125】
複数のフロート16のうち少なくとも何れか一つには、当該フロート16の揺動角(フロート角)を検出するフロートセンサ34が設けられている。このフロートセンサ34は、例えばポテンショメータとして構成されている。フロートセンサ34の検出値は、制御部に出力される。
【0126】
制御部は、フロートセンサ34が検出したフロート角に基づいて、植付部3の昇降制御を行う。即ち、フロート角の目標値に比べてフロート16が前上がりになっている場合、地面に対して植付部3が高過ぎるということであるから、制御部は、植付部3を下降させる。一方、フロート角の目標値に比べてフロート16が前下がりになっている場合には、地面に対して植付部3が低過ぎるということであるから、制御部は、植付部3を上昇させる。なお、この制御は特許文献1等に記載されているように公知であり、例えばPID制御によって実現することができる。
【0127】
以上で説明したフロート揺動角に基づく昇降制御は、従来の田植機でも行われていた。しかし前述のように、フロート揺動角のみに基づく昇降制御では、所望の植深で苗を植え付けることができない。そこで本実施形態の田植機において、制御部は、土壌反力検出装置271の検出結果から算出した植深値に基づいて、昇降制御の目標値や制御ゲイン等を変更するように構成している。
【0128】
即ち、オペレータが設定した目標植深値に対して、制御部が算出した植深値が小さい場合(植え付けが浅過ぎる場合)、当該制御部は、フロート角の目標値を前上がり側へと変更する。これにより、植付部3の位置が下がり気味に制御されるようになるので、爪出量が大きくなり、苗を深く植えることができるようになる。
【0129】
なお、苗の植え付けが浅過ぎる場合、浮苗の危険がある。そこで制御部は、苗の植え付けが浅過ぎると判断した場合、昇降制御の制御ゲインを変更して、当該昇降制御を敏感側へと調整する(例えば微分ゲインを大きくする)。これにより、浮苗を防ぐことができる。
【0130】
一方、目標植深値に対して、制御部が算出した植深値が大きい場合(植え付けが深過ぎる場合)、当該制御部は、フロート角の目標値を前上がり側へと変更する。これにより、植付部3の位置が上がり気味に制御されるようになるので、爪出量が小さくなり、苗を浅く植えることができるようになる。
【0131】
なお、苗の植え付けが深い場合、浮苗の危険はない。このような場合は、ハンチング防止等の観点から、植付部の昇降制御はあまり敏感に行わない方が良い。そこで制御部は、苗の植え付けが深いと判断した場合、昇降制御の制御ゲインを変更して、当該昇降制御を鈍感側へと調整する(例えば微分ゲインを小さくする)。これにより、ハンチングを防ぐことができる。
【0132】
以上のように、本実施形態の田植機1は、従来の田植機同様にフロート角に基づいて植付部3の昇降制御を行っているが、当該制御パラメータ等を植深値によって補正することにより、所望の植深で苗を植え付けることができる。
【0133】
以上で説明したように、本実施形態の田植機1において、突入体は植付爪22であり、反力検出部は、取り付けられた歪みゲージ271として構成されている。
【0134】
これにより、植付爪が土壌から受ける土壌反力を検出することができる。しかもひずみゲージは小型かつ軽量であるから、反力検出装部を植付爪に取り付けたとしても植付への影響は少ない。
【0135】
また本実施形態の田植機1において、土壌反力検出装置271は、植付部3の左右方向両端部近傍に配置されている。
【0136】
これにより、土壌反力検出装置271の検出値に基づいて、ローリングによる植付部3の左右傾き量を検出することができる。
【0137】
また本実施形態の田植機1において、制御部は、土壌反力の立ち上がりタイミングと、植付爪22が苗をかきとる時に土壌反力検出装置271が出力する検出値と、を基準として、苗の植深を算出している。
【0138】
このように、苗のかき取り時の反力を基準として、植深を算出することもできる。
【0139】
また本実施形態の田植機1において、制御部は、オペレータが設定した目標植深と、土壌反力に基づいて算出した植深と、の差に基づいて、昇降制御のためのパラメータを調整している。
【0140】
この構成により、従来は圃場条件に合わせて手動で感度調整を行っていたものを、自動で感度調整を行うことができる。
【0141】
以上に本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記の構成は以下のように変更することができる。
【0142】
土壌反力検出装置は、必ずしも植付爪22と一体回転する構成でなくても良い。例えば、植付爪22とは別に回転駆動される回転体を設け、当該回転体によって回転駆動されることにより所定のループ状の軌道を描いて地面に突入する突入体を設ける。この突入体に生じる反力を検出することにより、土壌反力を検出することができる。また、この突入体の回転位相を検出するように構成すれば、上記実施形態の土壌反力検出装置と同等の機能を実現することができる。
【0143】
応力検出装置は、歪みゲージに限らず、植付爪22に発生した応力を検出することができる構成であれば良い。
【0144】
また、反力検出部は、植付爪22へ回転駆動力を伝達するための伝動軸に発生するトルクを測定することで土壌反力を検出する構成であっても良い。即ち、植付爪が地面から反力を受けると、植付爪に駆動を伝達するための伝動軸にトルクが加わる。従って、植付爪まで駆動を伝達する伝動軸の所定箇所のトルク変動を見ることにより、植付爪が土壌から受けた反力の大きさを求めることができる。なお、このトルク変動は、例えば伝動軸にピックアップセンサ(またはロータリエンコーダ)等を設けることにより検出することができる。
【0145】
図面では、植付ユニット20が備える2つの植付爪22のうち、一方にのみ土壌反力検出装置を取り付けているが、両方の植付爪22に土壌反力検出装置を取り付けても良い。この場合、土壌反力の情報を二倍の密度で取得することができるので、より細かく制御を行うことができる。
【0146】
ピッチングによる植深の補正は、傾斜センサ31に代えて角速度センサを利用しても良い。この構成によれば、ピッチング角に加えて、ピッチングの角速度の測定値を得ることができる。
【0147】
また、ピッチング角に応じて植深値を補正する際に、車速を考慮して補正を行えばより好適である。即ち、傾斜センサ31は、鉛直方向に対する傾きを検出するように構成されているので、車体が加速しているとピッチング角が正確な値からズレてしまう。そこで、車速に応じて、傾斜センサ31で検出されたピッチング角を補正することにより、より高精度な計測が可能になる。
【0148】
目標植深を設定するための設定操作具は、レバーに限らない。例えば、ダイヤル状の部材によって、目標植深を設定するように構成しても良い。
【0149】
上記実施形態では、回転位相検出部及び下死点検出部を、植付ベベルケース内に配置するものとしたが、駆動源から植付爪に至るまでの駆動伝達経路であればどこに配置しても良い。例えば、植付センターケース内に回転位相検出部を配置することもできる。
【符号の説明】
【0150】
1 田植機
3 植付部
21 回転ケース
22 植付爪
27 土壌反力検出装置
28 ロードセル
29 プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付部が地面から受ける反力を検出する土壌反力検出装置を有し、
前記土壌反力検出装置は、
回転駆動されることによりその先端が所定のループ状の軌跡を描いて地面に突き刺さる突入体と、
前記突入体の回転位相を検出する回転位相検出部と、
前記突入体が地面から受ける反力である土壌反力を検出する反力検出部と、
を備えることを特徴とする田植機。
【請求項2】
請求項1に記載の田植機であって、
前記植付部が備える植付爪の近傍に配置される前記突入体としてのプローブと、
前記反力検出部としてのロードセルと、
を備え、
前記プローブは、前記植付爪の長手方向と平行に配置された棒状部材であり、その一端側は前記植付爪の先端と同じ方向を向くとともに、他端側は前記ロードセルの荷重検出面に当接していることを特徴とする田植機。
【請求項3】
請求項1に記載の田植機であって、
前記突入体は、前記植付部が備える植付爪であり、
前記反力検出部は、前記植付爪に取り付けられた応力検出装置として構成されていることを特徴とする田植機。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の田植機であって、
前記土壌反力検出装置は、前記植付部の左右方向中央部近傍に配置されることを特徴とする田植機。
【請求項5】
請求項1から3までの何れか一項に記載の田植機であって、
前記土壌反力検出装置は、前記植付部の左右方向両端部近傍に配置されることを特徴とする田植機。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の田植機であって、
前記土壌反力と、前記突入体の回転位相と、に基づいて苗の植付け深さを算出する算出部を備えることを特徴とする田植機。
【請求項7】
請求項6に記載の田植機であって、
前記算出部は、前記土壌反力に基づいて、土壌粘着力、土壌硬度、土中の夾雑物、及び苗に関する情報のうち少なくとも何れか1つを取得することを特徴とする田植機。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の田植機であって、
前記算出部は、前記土壌反力に基づいて各種情報を取得又は算出する際に、車速及び植付株数に応じた補正を行うことを特徴とする田植機。
【請求項9】
請求項6から8までの何れか一項に記載の田植機であって、
車体のピッチング角度を検出する傾斜センサを備え、
前記算出部は、前記傾斜センサで取得したピッチング角度に応じて前記植付け深さを補正することを特徴とする田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−249615(P2012−249615A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126683(P2011−126683)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】