説明

画像データを取得するシステム及び方法

オブジェクトを検査するコンピュータ断層撮影システムについて開示されている。そのコンピュータ断層撮影システムは、第1X線管と、第2X線管と、第1X線検出ユニットと、第2X線検出ユニットを有する。好適には、第1X線検出ユニットは、第1X線管により出射された放射線を、検査中にオブジェクトを透過した後に検出することにより第1データ集合を取得するように適合され、第2X線検出ユニットは、第2X線管により出射された放射線を、検査中に前記オブジェクトにより散乱された後に検出することにより設定される第2データ集合を取得するように適合される。そのシステムは、手荷物検査の分野に対する特定のアプリケーションを有する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データを取得するX線装置及び方法に関し、手荷物検査及び医用スキャンの分野におけるアプリケーションについてのコヒーレント散乱コンピュータ断層撮影装置への特定のアプリケーションを有する。
【背景技術】
【0002】
物理オブジェクトの画像を生成するシステムは、幾つかの技術分野において広く行き渡っている。特定の商業的関心がある一領域は、多くのシナリオにおいて用いることができる迅速な手荷物スキャナの領域であるが、特にしばしば、航空用手荷物をスキャンするために用いられる領域である。特定の商業的関心がある他の領域は、医用スキャナの分野である。既に知られていて、広く行き渡っているコンピュータ断層撮影(CT)装置以外に、所謂、散乱コンピュータ断層撮影装置の比較的新しい分野が進展してきている。
【0003】
例えば、国際公開第2006/027756号パンフレットにおいて、例えば、10乃至150keVの範囲内の特定のエネルギーにある物体とX線光子との相互作用については、光電子吸収及び散乱により表現できることが開示されている。2つの異なる散乱の種類、即ち、一方の非コヒーレント散乱又はコンプトン散乱と、他方のコヒーレント散乱又はレイリー散乱と、が存在する。コンプトン散乱は角度に伴ってゆっくり変化する一方、レイリー散乱は、前方に強く方向付けられ、各々の材料の種類に特徴的な明確に区別できる構造を有する。更に、コヒーレントX線散乱は、半導体産業において物質の分子構造を分析するときに、X線結晶学又はX線回折において用いられる一般的な技術又はツールである。得られる分子構造関数は、材料の“指紋”を提供し、良好な識別を可能にする。例えば、プラスチック爆弾を、害のない食料品と見分けることが可能である。
【0004】
医用使用及び手荷物検査のために、散乱ではなく透過性放射線の減衰が、一般に、市販されているコンピュータ断層撮影(CT)スキャナ及びC字型システムで用いられている。それらのシステムは、従来のX線撮影における試料のX線画像を単に提供するのではなく、試料の異なる位置における試料のX線吸収特性を、測定されたX線から計算する種々の計算技術を用いている。
【0005】
コヒーレント散乱コンピュータ断層撮影(CSCT)はかなり有望な技術であるが、手荷物検査の分野にそれを適用するとき、課題が存在している。例えば、そのようなアプリケーションは、スループット、ダークアラーム及び結果に関連して厳しい要求を出している。
【0006】
このように、従来のCT/CSCTシステム及び方法論に関する改善の要請が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2006/027756号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の特徴に従って、第1X線管、第2X線管、第1X線検出ユニット及び第2X線検出ユニットを有する、オブジェクトを検査するコンピュータ断層撮影システムであって、第1X線検出ユニットは、検査中にオブジェクトを透過した後に、第1X線管により出射された放射線を検出することによって第1データ集合を取得するように適合され、第2検出ユニットは、検査中にオブジェクトにより散乱された後に、第2X線管により出射された放射線を検出することによって第2データ集合を取得するように適合され、第1X線管、第2X線管、第1X線検出ユニット及び第2X線検出ユニットは検査中にオブジェクトの周囲を回転可能であり、そして、第1X線管、第2X線管、第1X線検出ユニット及び第2X線検出ユニットは共通軸の周囲を回転可能である、コンピュータ断層撮影システムを提供する。
【0009】
本発明の第2の特徴に従って、検査中にオブジェクトの画像データを取得する方法であって、第1X線管、第2X線管、第1X線検出ユニット及び第2X線検出ユニットを有するコンピュータ断層撮影システムを用いる、方法であり、第1X線検出ユニットは、検査中にオブジェクトを透過した後に、第1X線管により出射された放射線を検出することによって第1データ集合を取得するように適合され、第2検出ユニットは、検査中にオブジェクトにより散乱された後に、第2X線管により出射された放射線を検出することによって第2データ集合を取得するように適合され、第1X線管、第2X線管、第1X線検出ユニット及び第2X線検出ユニットは検査中にオブジェクトの周囲を回転可能であり、そして、第1X線管、第2X線管、第1X線検出ユニット及び第2X線検出ユニットは共通軸の周囲を回転可能である、方法を提供する。その方法は、第1検出ユニットにより検査中にオブジェクトを表す第1データ集合を取得するステップと、第2検出ユニットにより検査中にオブジェクトを表す第2データ集合を取得するステップと、を有する。
【0010】
本発明の更なる特徴に従って、コンピュータ読み出し可能媒体であって、検査中にオブジェクトの画像データを取得するプログラムが記憶され、処理器により実行されているときに、そのプログラムは、前記処理器が本発明の方法の特徴を実行するようにする、コンピュータ読み出し可能媒体を提供する。
【0011】
本発明の更なる特徴に従って、検査中にオブジェクトの画像データを取得するコンピュータプログラムであって、処理器により実行されているときに、そのプログラムは、前記処理器が本発明の方法の特徴を実行するようにする、コンピュータ読み出し可能媒体を提供する。
【0012】
実施形態においては、単独のガントリにおいて2つのX線管及び2つのX線検出ユニットを有するコンピュータ断層撮影システムであって、1つのX線管及び1つのX線検出ユニットはCT測定のために用いられ、第2X線管及び第2X線検出ユニットは散乱の検出のために用いられる、コンピュータ断層撮影システムを提供する。2つのX線管を有するそのようなシステムは、手荷物内の同様なスライスを検出するように、2つの異なるスキャナ(即ち、2つのX線管及び対応する2つのX線検出器)の独立した調整を可能にする。更に、第1スキャナ、即ち、所謂、前スキャナから、コンベアベルトを介して第2スキャナに手荷物を移動させることは、2つのスキャンユニットを有するコンピュータ断層撮影システムに供給されるときには、必要なく、移動中にその手荷物内の複数のオブジェクトの異なる方向付けが生じることを有利に回避することができる。特に、2つの異なるX線管、即ち、特定の異なるX線検出ユニット及び/又は検出原理に調整される2つのX線管を用いることが可能である。この調整は、例えば、エネルギースペクトル及び/又は放射線強度に関連することが可能である。
【0013】
2つの異なるX線管を用いることは、1つのX線管のみと2つの検出ユニットを有するコンピュータ断層撮影システムにおいて有利であり、それは、標準的なX線検出器及びコヒーレント散乱コンピュータ断層撮影検出ユニットであることが可能であり、なぜなら、第1スキャンユニット、例えば、標準的なCTスキャンシステム、及び第2スキャンユニット、例えば、コヒーレント散乱コンピュータ断層撮影システムについての2つの独立した構成は、スペクトル、パワー、コリメーション及び散乱角に関する干渉を伴うことなく、独立して最適化されることが可能である。
【0014】
これはまた、例えば、一次ビームのコリメーションに関して、それらの構成の各々を簡単化することが可能である。回折散乱ユニットにおける代表的な散乱角は1°乃至5°の範囲内にある。CT管はタングステン陽極のスペクトルを有することが可能である一方、加速電圧は、2kW乃至3kWの範囲内の代表的な電力により、149kV乃至180kVの範囲内にあることが可能である。更に、2mmのアルミニウムフィルタ及び0.5mm乃至1mmの銅フィルタを使用することが可能である。コリメーションは、使用される検出器ユニットに依存して、ファンビーム又はコーンビームを生成するように適合されることが可能である。放射線源の焦点は、横方向及び縦方向のそれぞれが約数mmであることが可能である。これは、単独のガントリに同様に配置することにより確保されるが、また、2つ以上のガントリ又は支持要素における対応する配置により、又はそれらの支持要素の対応する制御により確保されることが可能である。
【0015】
下において、本発明の上記の特徴についての更なる実施形態について説明されている。
【0016】
コンピュータ断層撮影システムの実施形態においては、第1X線検出ユニットは複数の検出器ユニットを有し、及び/又は第2X線検出ユニットは複数の検出器ユニットを有する。
【0017】
例えば、第1X線検出ユニットは、複数の検出器要素を統合することにより形成されることが可能である一方、第2X線検出ユニットは、エネルギー分解検出器要素により構成されることが可能である。第1X線管及び第1X線検出ユニットは、標準的なコンピュータ断層撮影(CT)を実行するように適合されることが可能である第1スキャンシステムを構成することが可能である一方、第2X線管及び第2X線検出ユニットは、コヒーレント散乱コンピュータ断層撮影を実行するように適合されることが可能である第2スキャンシステムを構成する、従って、所謂、CSCTスキャナを構成することが可能である。好適には、CSCTのために用いられるX線管は、所謂、高電力管であり、即ち、標準的なCTについてのX線管により必要とされる放射線強度より高い放射線強度を示す。本明細書においては、用語“標準的なCT”は、検査中のオブジェクトを透過する放射線を検出するように適合されたスキャンユニットを有するCTを、即ち、X線管及び対応するX線検出ユニットが、それらの間に検査中のオブジェクトを有して、互いに対向するように備えられているシステムを、表すように用いられている。
【0018】
スキャンシステム又はスキャンユニットがCSCTとして構成されている上記の実施形態においては、対応するX線検出ユニットは、好適には、放射線の直接経路に対してオフセットを好適に備えていて、その直接経路はオブジェクトを透過し、そのオフセットは、検査中にオブジェクトを透過することにより減衰される直接放射線というより、むしろ散乱放射線を検出するように、回転軸の方向にある。
【0019】
本発明の実施形態により提供されているような2つのX線管の組み合わせ、即ち、標準的なCTのために適合された1つのX線管とCSCTのために適合された1つのX線管との組み合わせは、1つのX線管が両方のスキャンユニットのために用いられる従来のCTシステムに比べて、特に有利であり、なぜなら、そのような従来のシステムは、一般に、固定されたファンビームコリメータを有し、高スループットのアプリケーションを実際には探索しない単独のスライスCTのみを実行することが、通常、できるためである。しかしながら、この従来の技術に従って、(螺旋状の)CTスキャンにより可能性のある脅威をみつけた後、その手荷物は、疑わしい領域を再び調査するために、戻るように搬送される必要があり、そのことは、一方で、スループットを低減し、他方で、画像の適合及び/又は領域の特定化がより困難にされるように、この搬送により、オブジェクト又はオブジェクトにおける領域が再方向付けされる可能性があるという課題を課す。
【0020】
本発明の実施形態により提案しているように、各々が特定のアプリケーションに対して調整され、2つの異なるX線管を用いることにより、従来のシステムのこの不利点は克服されることが可能である。更に、2つの異なるX線管を用いることにより、異なるコリメーション、即ち、CTに適合された1つのコリメーション及びCSCTに適合された1つのコリメーションの適合された1つの両方に調整することが可能であり、ここでは、CTとCSCTは、一般に異なっている。従って、本発明の実施形態に従って、可動式の一次ビーム検出器を備えることをしないことが可能である。また、異なる最適なX線スペクトル、及びCTシステム及びCSCTシステムについての電力の要求は、2つのX線管を用いることにより容易に考慮されることが可能である。更に、形状の制限、例えば、2つのX線検出ユニットのかなり近接した取り付けは、1つのみのX線管を有するシステムにおいてスキャン検出器を取り付けるようにするが、それは、本発明が提案するように2つの異なるX線管を用いることにより克服することが可能である。
【0021】
更に、2つの調整された検出ユニット及び高電力X線管は、CTスキャンユニット及びCSCTスキャンユニットの全ての組み合わせにおいて既に必要であり、それ故、第2X線管のみが付加的負荷をもたらすが、本発明に従って、CTにより導入される付加的負荷は、格別に高いというのではない。
【0022】
他の実施形態に従って、コンピュータ断層撮影システムは、電圧発生器が第1X線管を動作させるように電力を供給するように適合され、第2X線管を動作させるように電力を供給するように更に適合された高電圧発生器を更に有する。この実施形態においては、それら2つのX線管は同じ電圧発生器を共有し、それ故、付加的負荷は最小化され、その結果、ガントリに対する何れの付加的負荷は軽減され、ガントリにはより高い品質が与えられるという有利点がもたらされる。
【0023】
他の実施形態に従って、コンピュータ断層撮影システムはガントリを有し、第1X線管、第2X線管、第1X線検出ユニット及び第2X線検出ユニットがそのガントリに備えられている。即ち、両方のスキャナが同じガントリに備えられ、そのことは、2つのスキャナ及び2つのスキャンユニットの座標系が互いに対して固定され、それ故、対応するスキャナにより再構成される画像の適合性が、互いに対して容易に高くなる。更に、CTシステムの複雑さ、及びCTシステムの制御の複雑さを単純化することが可能である。
【0024】
代替として、共通軸の周囲の回転はまた、2つ以上のガントリ又は支持要素における対応する構成及びそれらの支持要素の対応する制御を与えることにより、安全性を確保することが可能である。
【0025】
コンピュータ断層撮影システムの他の実施形態に従って、第1X線管及び第2X線管は、互いに対して移動可能である。特に、その移動は、共通軸方向にあることが可能である。この共通軸は、通常、z方向と呼ばれ、x−y平面に対して実質的に垂直であり、そのx−y平面内でX線管及びX線検出ユニットは回転する。
【0026】
z方向におけるそのようなオフセットを導入するとき、標準的なCTスキャンユニットが第1スキャンユニットとして備えられ、CSCTスキャンユニットが第2スキャンユニットとして備えられ、即ち、検査中のオブジェクトは、先ず、標準のCTスキャンユニットによりスキャンされ、その後、CSCTスキャンユニットによりスキャンされる。そのような構成は、先ず、標準のCTによる高速スキャンが実行され、その後、第1の標準CTスキャンにより特定された疑わしい領域が、第2CSCTスキャンユニットにより更に調査されることが可能である。
【0027】
疑わしいオブジェクトのみが、一般に低いスループットを有するCSCTスキャンユニットにより調査されることが可能であるために、これは高いスループットに繋がる。CTスキャンユニットにより疑わしくないと判定されたオブジェクトについてバイパスを与えることがまた、可能である。z方向に関して互いに対して特定の距離を有するように2つのX線管を位置付けることは、CTスキャンにより見つけられた疑わしい領域が、手荷物の後方に搬送されることなく、連続的なCSCTスキャンにより調査されることが可能であるという有利点に繋がる。このことは、比較的高いスループットを確実にすることが可能である。更に、そのシステムは、調査された疑わしいスライスについて固有の整合性を有することが可能である。2つの異なるシステムによりもたらされる更なる登録は必要ない。
【0028】
コンピュータ断層撮影システムの他の実施形態に従って、移動は、回転に関する径方向にある。この方向は、一般に、円柱座標系における径方向又はr方向と呼ばれている。2つのスキャンユニットの互いに対するそのような径方向の移動を用いることにより、CSCT走査ユニットの一部であるX線管(源)及び対応するX線検出ユニットは、好適には、他のX線管より、回転軸から遠くなるように備えられ、CTスキャンユニットに属すX線検出ユニット、即ち、CSCTスキャンユニットは、CTスキャンユニットより大きい半径を有する円に沿って回転される。このことは、検査中のオブジェクトにより散乱される放射線の経路がオブジェクトとX線検出ユニットとの間においてより長くなるという有利点に繋がり、それ故、CSCT走査ユニットの各分解能が改善され、そのことは改善された再構成画像に繋がる。
【0029】
コンピュータ断層撮影システムの他の実施形態に従って、その移動はΦ方向にある。ここで、Φ方向は円柱座標のΦ方向に関するものであり、即ち、z軸方向、即ち、共通軸方向に対して垂直であり、且つ径方向に対して垂直である。Φ方向における移動は60°乃至120°の範囲内にあり、好適には、その移動は実質的に90°である。90°の移動は、重要度が共通のガントリにかなり一様に分配されるという有利点を有する。
【0030】
他の実施形態に従って、コンピュータ断層撮影システムは、ある領域を通して検査中にオブジェクトが搬送されるように適合されている搬送装置であって、その領域の周囲を、第1X線管、第2X線管、第1X線検出ユニット及び第2X線検出ユニットが回転可能である、搬送装置を有する。そのような搬送装置は、検査中のオブジェクトが置かれているコンベアベルトであることが可能である。搬送用のコンベアベルトを備えることにより、CTスキャンユニットからCSCTスキャンユニットの方に搬送される間、検査中のオブジェクトの方向が変わらす、そのことは、対応する再構成画像の必要なマッチングを簡単化することを可能にすることを確実にすることが可能である。
【0031】
他の実施形態に従って、コンピュータ断層撮影システムは、第1画像データ集合から第1画像を再構成するように適合され、第2画像データ集合から第2画像を再構成するように更に適合されている再構成ユニットを更に有する。再構成ユニットは、単一の再構成ユニットであることが可能であるがまた、2つの別個の再構成ユニット、例えば、標準的なCTにおいて取得された第1画像データ集合から、及び/又は、例えば、CSCTにおいて取得された第2画像データ集合から、検査中のオブジェクトの画像を再構成するように適合された、例えば、2つの処理ユニット又は処理器及び対応するソフトウェアにより構成されることが可能である。
【0032】
再構成ユニットは、両方の再構成画像をマッチングさせるようにされに適合されることが可能であるが、マッチングユニットのような付加ユニットにより実行されることが可能である。そのような再構成ユニット及びマッチングユニットについては、従来技術において知られている。適切な再構成アルゴリズムについては、文献“Practical cone−beam algorithms”by L.A.Feldkamp,L.C.Davis,and J.W.Kress,J.Opt.Soc.Am.A6,pp.612−619,1984,“Algorithm for image reconstruction in multi−slice helical CT”,by K.Taguchi,and H.Aradate,Med.Phys.25,pp.550−561,1998及び“A reconstruction algoritm for coherent scatter computed tomography based on filtered back−projectio”,by U.van Stevendaal,J.−P.Schlomka,A.Harding,and M.Grass,Med Phys.30(9),pp.2465−2474,September 2003等に記載されている。
【0033】
他の実施形態においては、コンピュータ断層撮影システムは、第2データ集合が所定の基準に従って取得されるかどうかを判定するように適合されている判定ユニットを更に有する。特に、その判定ユニットは、オブジェクトの領域が、疑わしい、不明確な又は潜在的に危険なアイテムを示しているかどうかを判定するように適合されていることが可能である。その基準は、X線放射線の異なる吸収領域間で区別でき、有機材料及び金属材料を区別できるように、特定の集合であることが可能である。
【0034】
単独のエネルギーのCTにおいては、その分配は、検査中のオブジェクトの領域の再構成された密度又は線形減衰係数に基づいていることが可能である。デュアルエネルギーCTにおけるその分配についてはまた、文献“Multi−energy radiography for non−destructive testing of materials and structures for civil engineering”,by S.Naydenov,in Proceedings of the International Symposium on Non−Destructive Teating in Civil Engineering 2003,ISBN 3−931381,poster contribution p037に記載されている。
【0035】
コンピュータ断層撮影システムの他の実施形態に従って、第2データ集合が、第1スキャンユニットから第2スキャンユニットまで、検査中のオブジェクトの搬送時間により与えられる時間期間より短い時間期間において、所定の基準に従って取得されるようになっているかどうかを判定するように、判定ユニットが適合されている。
【0036】
そのような方法において判定ユニットを適合させることにより、第1スキャンユニットがバッグ内の疑わしい領域を表していない場合に、第2スキャンユニットによるスキャンをスキップする有効な方法を提供することは有効である。
【0037】
他の実施形態においては、提案された手荷物スキャナは、X線管及びCT検出器を有するCT部分と、異なるX線スペクトルを生成するX線管及びエネルギー分解検出器を有するCSCT部分とを有する。全ての構成要素は、単独のガントリに備えられている。それらのX線管及び検出器は又、x−y平面、即ち、ガントリが回転し、それ故、ガントリの回転軸に対して垂直である面において、互いに対して90°の角距離を有することが可能である。更に、それらのX線管はまた、z方向、即ち、回転軸と実質的に一致する方向に関して、互いにある距離及びある径方向距離を有することが可能である。そのようなシステム及び対応する方法は、例えば、標準的なCTのアドオン等の医用分野において、及び明確且つ高速医用特定化のための手荷物アプリケーションにおいて用いられることが可能である。
【0038】
本発明の上記の及び他の特徴については、下の実施形態を参照することにより明らかになり、理解することができるであろう。
【0039】
本発明の実施形態について、以下、単ある例示として、添付図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】エネルギー分解コヒーレント散乱コンピュータ断層撮影についての幾何学的構成の簡略化した模式図である。
【図2】例示としての実施形態に従ったx−y平面における組み合わされたCT/CSCT手荷物スキャナの幾何学的構成の簡略化した模式図である。
【図3】例示としての実施形態に従ったx−z平面における組み合わされたCT/CSCT手荷物スキャナの幾何学的構成の簡略化した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、エネルギー分解コヒーレント散乱コンピュータ断層撮影のための幾何学的構成の模式図である。CTシステム100は、ファンビームコリメータ102を有するX線管101を有する。そのX線管は、線103で模式的に示されている放射線を出射する。検査中のオブジェクト、例えば、スーツケース又は他の手荷物が、放射線方向に模式的に示されている。X線管が出射する放射線は、一部が検査中のオブジェクト104を通り、その放射線の一部105は、オブジェクトにより減衰され、複数の検出要素を有するCT検出ユニット106に入射する。出射された放射線の第2部分は、オブジェクト104により散乱され、その散乱された部分は、線107で模式的に示されている。この散乱された部分は、コヒーレント散乱コンピュータ断層撮影(CSCT)検出器ユニット108に入射する。CSCT検出器ユニット108は、所謂、ID散乱コリメータ109を有する。更に、CT/CSCTシステムの回転軸は、線110で示されている。作動中、シングルライン検出ユニット又はマルチライン検出ユニットであることが可能であるCT検出ユニット106は、直接、透過する放射線を検出する一方、CSCT検出器ユニット108は、オブジェクトによりコヒーレントに散乱さえた放射線を検出するように、出射された放射線に対するオフセットを位置付け、そしてエネルギー分解検出要素を有することが可能である。作動中、ファン平面方向から外れた小さい発散を有する狭いファンビーム又はフォーカシングされたファンビームはオブジェクトを貫通し、ファン平面から外れた方向に散乱された放射線及び透過された放射線は検出される。
【0042】
図2は、例示としての実施形態に従った、組み合わされたCT/CSCT手荷物スキャナ200の簡略化された模式的なスキャナの幾何学的構成を示している。図2は、回転軸、即ち、z軸方向に対して垂直なCT/CSCTシステムの断面を示し、それ故、図2はx−y平面における断面を表し、対応する座標系が矢印201及び202により模式的に示されている。CT/CSCTシステム200は、第1X線管203及び対応するX線検出ユニット204を有し、それらはそれぞれ、放射線を出射するように及び放射線を検出するように適合され、その放射線は検査中にオブジェクトを透過し、そのオブジェクトは円205で模式的に示されている。CT/CSCTシステム200は更に、第2X線管206及び第2X線検出ユニット207を有し、それらはそれぞれ、放射線を出射するように及び放射線を検出するように適合され、その放射線は検査中にオブジェクトにより散乱される。第2X線検出ユニット207は、散乱された放射線を検出するように、z軸方向に対して中心を外して備えられている。2つのスキャンユニットの対応する視野は、ライン208及び209のそれぞれとして模式的に示されている。更に、第2X線管206により出射され、検査中にオブジェクトにより散乱される放射線は、参照番号210で示されている。図2から理解できるように、2つのスキャンユニット、即ち、2つのX線管及び対応する2つの検出ユニットは、互いに対して約90°の角距離を有する。好適には、両方のスキャンユニットは、単独のガントリに備えられている。
【0043】
図3は、組み合わされたCT/CSCT手荷物スキャナ300の簡略化された模式的なスキャナの幾何学的構成を示し、図3は、x座標301及びz座標302により模式的に示されているx−z平面におけるスキャナを示している。CT/CSCTシステム300は、検査中にオブジェクトを透過する放射線を出射するように及び検出するようにそれぞれ適合されている、第1X線管303及び対応するX線検出ユニット304を有する。CT/CSCTシステム300は更に、検査中にオブジェクトにより散乱される放射線を出射するように及び検出するようにそれぞれ適合されている、第2X線管306及び第2X線検出ユニット307を有する。第2X線検出ユニット307は、散乱された放射線を検出するように、z軸方向に対して中心を外して備えられている。2つのスキャンユニットの対応する視野は、ライン308及び309のそれぞれとして模式的に示されている。図3に示しているように、それら2つのスキャンユニット、即ち、2つのX線管及び2つの対応する検出ユニットは、z軸方向において互いに対するオフセット及び径方向に関して互いに対するオフセットを有する。しかしながら、両方のスキャンユニットは、好適には、単独のガントリに備えられている。異なるオフセット全て、即ち、z軸方向、径方向及びΦ方向におけるオフセット全てが、独立に選択されることが可能である。作動中、検査中のオブジェクトは、先ず、標準のCTスキャンユニットによりスキャンされ、その後、CSCTスキャンユニットによりスキャンされる。
【0044】
要約すると、本発明の一特徴は、各々がX線管及びX線検出ユニットを有する2つのスキャンユニットを有する、組み合わされたコンピュータ断層撮影システムであって、第1スキャンユニットは標準の又は透過性のコンピュータ断層撮影を実行するように適合され、第2スキャンユニットはコヒーレント散乱コンピュータ断層撮影を実行するように適合された、コンピュータ断層撮影システムを提供することであることが理解できる。そのような組み合わされたコンピュータ断層撮影システムは、手荷物検査用アプリケーションの場合に、及び組織の分子構造を変える疾病の検出のための医用アプリケーションにおいて、物質を特定するために用いられることが可能である。
【0045】
本明細書の記載を読むことにより、他の変形及び修正について、当業者は理解することができるであろう。そのような変形及び修正は、X線装置、手荷物検査及び医用スキャンの技術において既知であり、上記の特徴の代わりに又は上記の特徴に付加して用いられることが可能である、同等の他の特徴を含むことが可能である。
【0046】
同時提出の特許請求の範囲は特定の特徴の組み合わせの方に導いているが、本発明の開示されている範囲はまた、何れかの請求項に記載している同様の発明に関係しているか否かに拘わらず、及び本発明が軽減しているような同様の技術的課題の何れか又は全てを軽減するか否かに拘わらず、明示的に又は暗示的に本明細書で開示している特徴の何れかの新規な特徴又は何れかの新規な特徴の組み合わせを包含するものである。
【0047】
別個の実施形態に関連して記載している特徴はまた、単独の実施形態に組み合わして提供されることが可能である。逆に、手短にいうと、単独の実施形態に関連して記載している種々の特徴はまた、別個に又は何れかの適切な準組み合わせにおいて提供されることが可能である。
【0048】
出願者は、ここで、新しい請求項が上記の特徴及び/又は上記の特徴の組み合わせに対して、本出願の又は本出願からもたらされる更なる出願の手続の間に、案出されることが可能であることを特記しておく。
【0049】
用語“を有する”は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数表現は複数の存在を排除するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクトを検査するコンピュータ断層撮影システムであって:
第1X線管;
第2X線管;
第1X線検出ユニット;及び
第2X線検出ユニット;
を有する、コンピュータ断層撮影システムであり、
前記第1X線検出ユニットは、前記第1X線管により出射された放射線を、検査中に前記オブジェクトを透過した後に検出することにより第1データ集合を取得するように適合され;
前記第2X線検出ユニットは、前記第2X線管により出射された放射線を、検査中に前記オブジェクトにより散乱された後に検出することにより設定される第2データ集合を取得するように適合され;
前記第1X線管、前記第2X線管、前記第1X線検出ユニット及び前記第2X線検出ユニットは、検査中に前記オブジェクトの周囲で回転可能であるように適合されていて;そして
前記第1X線管、前記第2X線管、前記第1X線検出ユニット及び前記第2X線検出ユニットは、共通軸の周囲で回転可能であるように適合されている;
コンピュータ断層撮影システム。
【請求項2】
請求項1に記載のコンピュータ断層撮影システムであって:
前記第1X線検出ユニットは複数の検出器要素を有する;
コンピュータ断層撮影システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコンピュータ断層撮影システムであって:
前記第2X線検出ユニットは複数の検出器要素を有する;
コンピュータ断層撮影システム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のコンピュータ断層撮影システムであって:
高電圧発生器であって、該高電圧発生器は、前記第1X線管を動作させるように電力を供給するように適合され、前記高電圧発生器は、前記第2X線管を動作させるように電力を供給するように更に適合されている、高電圧発生器;
を更に有する、コンピュータ断層撮影システム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のコンピュータ断層撮影システムであって:
ガントリであって、前記第1X線管、前記第2X線管、前記第1X線検出ユニット及び前記第2検出ユニットが前記ガントリに備えられている、ガントリ;
を更に有する、コンピュータ断層撮影システム。
【請求項6】
請求項5に記載のコンピュータ断層撮影システムであって:
前記第1X線管及び前記第2X線管は互いに対して移動可能である;
コンピュータ断層撮影システム。
【請求項7】
請求項6に記載のコンピュータ断層撮影システムであって:
前記移動可能性は前記共通軸方向にある;
コンピュータ断層撮影システム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のコンピュータ断層撮影システムであって:
前記移動可能性はΦ方向にある;
コンピュータ断層撮影システム。
【請求項9】
請求項8に記載のコンピュータ断層撮影システムであって:
前記Φ方向における前記移動可能性は60°乃至120°の範囲内にある;
コンピュータ断層撮影システム。
【請求項10】
請求項6乃至9の何れか一項に記載のコンピュータ断層撮影システムであって:
前記移動可能性は前記回転に関する径方向にある;
コンピュータ断層撮影システム。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載のコンピュータ断層撮影システムであって:
ある領域を検査中に前記オブジェクトを搬送する搬送装置であって、前記領域の周囲を、前記第1X線管、前記第2X線管、前記第1X線検出ユニット及び前記第2検出ユニットが回転可能である、搬送装置;
を更に有する、コンピュータ断層撮影システム。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載のコンピュータ断層撮影システムであって:
前記第1データ集合からの第1画像及び前記第2データ集合からの第2画像を再構成するように適合されている再構成ユニット;
を更に有する、コンピュータ断層撮影システム。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項に記載のコンピュータ断層撮影システムであって:
前記第2データ集合が所定の基準に従って取得されるかどうかを判定するように適合された判定ユニット;
を更に有する、コンピュータ断層撮影システム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータ断層撮影システムであって:
前記判定ユニットは、第1スキャンユニット及び第2スキャンユニットから調査中の前記オブジェクトの搬送時間により与えられる時間期間より短い時間期間に、前記第2データ集合が所定の基準に従って取得されたかどうかを判定するように更に適合されている;
コンピュータ断層撮影システム。
【請求項15】
第1X線管、第2X線管、第1X線検出ユニット及び第2X線検出ユニットを有するコンピュータ断層撮影システムを用いて、検査中にオブジェクトの画像データを取得する方法であって、 前記第1X線検出ユニットは、前記第1X線管により出射された放射線を、検査中に前記オブジェクトを透過した後に検出することにより第1データ集合を取得するように適合され、前記第2X線検出ユニットは、前記第2X線管により出射された放射線を、検査中に前記オブジェクトにより散乱された後に検出することにより設定される第2データ集合を取得するように適合され、前記第1X線管、前記第2X線管、前記第1X線検出ユニット及び前記第2X線検出ユニットは、検査中に前記オブジェクトの周囲で回転可能であり、そして、前記第1X線管、前記第2X線管、前記第1X線検出ユニット及び前記第2X線検出ユニットは、共通軸の周囲で回転可能である、方法であり;
前記第1検出ユニットにより、検査中に前記オブジェクトを表す第1データ集合を取得する段階;及び
前記第2検出ユニットにより、検査中に前記オブジェクトを表す第2データ集合を取得する段階;
を有する方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって:
前記第2データ集合が所定の基準に従って取得されたかどうかを判定する段階;
を更に有する、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって:
、第1スキャンユニット及び第2スキャンユニットから調査中の前記オブジェクトの搬送時間により与えられる時間期間より短い時間期間に、前記第2データ集合が所定の基準に従って取得されたかどうかを判定する段階;
を更に有する、方法。
【請求項18】
コンピュータ読み出し可能媒体であって、該コンピュータ読み出し可能媒体内に又は該コンピュータ読み出し可能媒体に、検査中のオブジェクトの画像データを取得するコンピュータプログラムが供給され、該コンピュータプログラムは請求項15乃至17の何れか一項に記載の方法を実行する、コンピュータ読み出し可能媒体。
【請求項19】
検査中のオブジェクトの画像データを取得するコンピュータプログラムであって、請求項15乃至17の何れか一項に記載の方法を実行する、コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−500552(P2010−500552A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523419(P2009−523419)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053110
【国際公開番号】WO2008/018020
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】