説明

画像信号制御装置、電気光学装置及びこれを有する電子機器並びに表示方法

【課題】 表示輝度を低下させることにより焼きつきを防止すると同時に、表示輝度の低
下によるコントラストの低下の影響を除去して表示品質も良好に確保し得る画像信号制御
装置を提供する。
【解決手段】 画像信号に基づき静止画像であることを検出した場合には、前記画像信号
のピーク輝度を低減させるとともに、前記静止画像を表す前記画像信号の平均階調値が基
準値eよりも高い領域では前記平均階調値の増加に伴いガンマ値を動画像の場合の曲線c
の値よりも増加させ、前記平均階調値が前記基準値eよりも低い領域では前記平均階調値
の減少に伴い前記ガンマ値を前記曲線cの場合よりも減少させる曲線dに基づいてガンマ
値を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像信号制御装置、電気光学装置及びこれを有する電子機器並びに表示方法に
関し、特にCRT、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称す。)乃至有機EL
ディスプレイ等において静止画像の表示に伴い焼きつきの問題を発生する場合に適用して
有用なものである。
【背景技術】
【0002】
CRT、PDP乃至有機ELディスプレイといった表示装置においては静止画像等を表
示させたときに焼きつきの問題を発生する。例えば、有機発光ダイオード素子(OLED
(Organic Light Emitting Diode)素子と称す。)をマトリクス状に配設して構成し
た有機ELディスプレイでは、静止画像を表示した場合には各OLED素子の劣化速度が
異なってくるため、OLED素子間の劣化の差が焼きつき現象として顕在化する。
【0003】
この焼きつきを低減させるため、静止画像を表示している間、人の視覚に変化が分から
ないような速度で表示輝度を低下させる手法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−306026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の如く、静止画像を表示している間、表示輝度を低下させる手法は、確かに焼きつ
き抑制の効果はあるが、表示輝度を低下させることに起因して画像のコントラストが低下
し、結果として表示品位を低下させるという新たな問題を生起する。
【0006】
本発明は、上記従来技術に鑑み、表示輝度を低下させることにより焼きつきを防止する
と同時に、表示輝度の低下によるコントラストの低下の影響を除去して表示品質も良好に
確保し得る画像信号制御装置、電気光学装置及びこれを有する電子機器並びに表示方法を
提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、焼きつき防止のため表示輝度を低下させると同
時に、画像のガンマ特性を変化させている。ガンマ特性は通常γ=2.2の値を用いるが
、これを画像に合わせて変化させる。この結果、図1に示すように、静止画像の平均階調
値が高い場合、ガンマ値を増加すると高階調側のコントラストが良くなり、視認性が向上
する。一方、平均階調値が低い場合、ガンマ値を低下すると、低階調側のコントラストが
良くなり、視認性が向上する。
【0008】
このように、輝度減少によるコントラスト低下をガンマ特性の変化により補完して表示
品位の低下を防止する。
【0009】
1) そこで、本発明の第1の態様に係る画像信号制御装置は、
画像信号に基づき表示部で表示される表示画像が静止画像であるか動画像であるかを判
定する画像判定手段と、
この画像判定手段が静止画像であることを検出した場合には静止画像モードを選択する
モード選択手段と、
このモード選択手段が静止画像モードを選択した場合には、前記表示画像のピーク輝度
を低減させるように制御するピーク輝度設定手段と、
前記モード選択手段が静止画像モードを選択した場合には、前記静止画像を表す前記画
像信号の平均階調値が基準平均階調値よりも高い領域では前記平均階調値の増加に伴い前
記画像信号のガンマ値を動画像の場合よりも増加させ、前記平均階調値が前記基準平均階
調値よりも低い領域では前記平均階調値の減少に伴い前記ガンマ値を動画像の場合よりも
減少させるガンマ特性設定手段とを有する輝度/ガンマ特性制御手段を備えたことを特徴
とする。
本態様によれば、静止画像の表示モードで発生する焼きつきを低減することができると
同時に、ピーク輝度を低下させながらも、ガンマ特性を変化させることで表示画像のコン
トラストを保ち、表示品位の低減を防止することができる。
また、平均輝度が高い画像においては、ピーク輝度を下げるとともに、ガンマ値も増加
させるため、より消費電力の低減の効果が期待でき、ひいては長寿命化の効果も期待でき
る。
【0010】
2) 本発明の第2の態様に係る画像信号制御装置は、
上記第1の態様において、
前記画像判定手段は、先行するフレームの画像信号の輝度ヒストグラムと現フレームの
画像信号の輝度ヒストグラムとの比較において静止画像であるか動画像であるかを判定す
るものであることを特徴とする。
本態様によれば、静止画像であるか否かの判定を容易に行うことができる。この結果、
前記第1の態様に係る発明の効果を良好に得ることができる。
【0011】
3) 本発明の第3の態様に係る画像信号制御装置は、
上記第1又は第2の態様において、
前記ガンマ値の増減は、ピーク輝度の低減量と関連付けて行うようにしたことを特徴と
する。
本態様によれば、ガンマ値を最も適切に制御することができる。
【0012】
4) 本発明の第4の態様に係る画像信号制御装置は、
上記第1乃至第3の態様の何れか一つにおいて、
ガンマ特性設定手段は、前記画像信号の各階調毎の度数分布を表す輝度ヒストグラムが
平坦な場合や、単一のピークを持たない場合には、前記ガンマ値を予め定めた固定値に設
定するものであることを特徴とする。
本態様によれば、輝度ヒストグラムが平坦な場合や、単一のピークを持たない場合でも
適切なガンマ値とすることができる。
【0013】
5) 本発明の第5の態様に係る画像信号制御装置は、
上記第1乃至第4の態様の何れか一つにおいて、
前記ピーク輝度は、前記表示部を形成する発光素子の発光デューティの制御により制御
するものであることを特徴とする。
本態様によれば、表示部を形成する発光素子の発光デューティの制御により容易且つ良
好にピーク輝度を制御することができる。
【0014】
6) 本発明の第6の態様に係る電気光学装置は、
複数の発光素子をマトリクス状に配設してなる表示部に供給する画像信号を生成する画
像信号制御装置として前記第1乃至第5の態様の何れか一つに記載する画像信号制御装置
を有することを特徴とする。
本態様によれば,静止画像表示時の焼きつきを防止すると同時に、画像のコントラスト
も良好なものとした電気光学装置を得ることができる。
【0015】
7) 本発明の第7の態様に係る電子機器は、
画像を表示する表示手段として上記第6の態様に記載する電気光学装置を備えたことを
特徴とする。
本態様によれば,静止画像表示時の焼きつきを防止すると同時に、画像のコントラスト
も良好なものとした電子機器を得ることができる。
【0016】
8) 本発明の第8の態様に係る表示方法は、
複数の発光素子をマトリクス状に配設してなる表示部に静止画像を表示する際には、そ
のピーク輝度を低減させるとともに、前記静止画像の平均輝度に基づき、平均輝度が高い
場合にはガンマ特性の値を増加させ、平均輝度が低い場合にはガンマ特性の値を低下させ
ることを特徴とする。
本態様によれば、静止画像の表示モードで発生する焼きつきを低減することができると
同時に、ピーク輝度を低下させながらも、ガンマ特性を変化させることで表示画像のコン
トラストを保ち、表示品位の低減を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、本実施の形態の説明
は例示であり、本発明の構成は以下の説明に限定されない。
【0018】
図2は本発明の実施の形態に係る電気光学装置Iの概略構成を示すブロック図である。
同図に示すように、電気光学装置Iは、画素領域A、走査線駆動回路100、データ線駆
動回路200、制御回路300及び電源回路500を備える。これらのうち、画素領域A
には、X方向と平行にm本の走査線101及びm本の発光制御線102が形成され、さら
にX方向と直交するY方向と平行にn本のデータ線103が形成されている。そして、走
査線101とデータ線103との各交差点に対応してOLED素子を含む画素回路400
が各々設けられている。各画素回路400には、電源電圧Vddが電源線Lを介して供給
される。
【0019】
走査線駆動回路100は、複数の走査線101を順次選択するための走査信号Y1、Y
2、Y3、・・・、Ymを生成すると共に発光制御信号Vg1、Vg2、Vg3、・・・
、Vgmを生成する。走査信号Y1〜Ym及び発光制御信号Vg1〜VgmはY転送開始
パルスDYをYクロック信号YCLKに同期して順次転送することにより生成される。発
光制御信号Vg1、Vg2、Vg3、・・・、Vgmは、各発光制御線102を介して各
画素回路400に各々供給される。
【0020】
図3に走査信号Y1〜Ymと発光制御信号Vg1〜Vgmのタイミングチャートの一例
を示す。走査信号Y1は、1垂直走査期間(1F)の最初のタイミングから、1水平走査
期間(1H)に相当する幅のパルスであって、1行目の走査線101に供給される。以降
、このパルスを順次シフトして、2、3、・・・、m行目の走査線101の各々に走査信
号Y2、Y3、・・・、Ymとして供給する。一般的にi(iは、1≦i≦mを満たす整
数)行目の走査線101に供給される走査信号YiがHレベルになると、当該走査線10
1が選択されたことを示す。また、発光制御信号Vg1、Vg2、Vg3、・・・、Vg
mとしては、例えば、走査信号Y1、Y2、Y3、・・・、Ymの論理レベルを反転した
信号を用いる。
【0021】
データ線駆動回路200は、出力階調データDoutに基づいて、選択された走査線1
01に位置する画素回路400の各々に対しその階調を表す電流信号Idata1、Idata2、
Idata3、Idata4、・・・、Idatanを供給する。すなわち、本例においては、階調信号は
階調輝度を指示する電流信号Idata1、Idata2、Idata3、Idata4、・・・、Idatanとし
て与えられ、j(jは、1≦j≦nを満たす整数)列目のデータ線にはIdatajが供給され
る。
【0022】
制御回路300は、Yクロック信号YCLK、Xクロック信号XCLK、X転送開始パ
ルスDX、Y転送開始パルスDY等の各種の制御信号を生成してこれらを走査線駆動回路
100及びデータ線駆動回路200へ出力する。また、制御回路300は、外部から供給
される入力階調データDinにガンマ補正等の画像処理を施して出力階調データDout
を生成する。この出力階調データDoutは、例えば8ビットの階調成分を所定の配列で
並べたものである。
【0023】
次に、画素回路400について説明する。図4に、画素回路400の回路図を示す。同
図に示す画素回路400は、i行j列目に対応するものであり、電源電圧Vddが供給さ
れる。画素回路400は、4個のTFT401〜404と、容量素子410と、OLED
素子420とを備える。TFT401〜404の製造プロセスでは、レーザーアニールシ
ョットを利用してガラス基板の上にポリシリコン層が形成される。また、OLED素子4
20は、陽極と陰極との間に発光層が挟持されている。そして、OLED素子420は、
順方向電流に応じた輝度で発光する。発光層には、発光色に応じた有機EL(Electrolum
inescence)材料が用いられる。発光層の製造プロセスでは、インクジェット方式のヘッ
ドから有機EL材料を液滴として吐出し、これを乾燥させている。
【0024】
駆動トランジスタであるTFT401はpチャネル型、スイッチングトランジスタであ
るTFT402〜404はnチャネル型である。TFT401のソース電極は電源線Lに
接続される一方、そのドレイン電極はTFT403のドレイン電極、TFT404のドレ
イン電極及びTFT402のソース電極にそれぞれ接続される。
【0025】
容量素子410の一端はTFT401のソース電極に接続される一方、その他端は、T
FT401のゲート電極及びTFT402のドレイン電極にそれぞれ接続される。TFT
403のゲート電極は走査線101に接続され、そのソース電極は、データ線103に接
続される。また、TFT402のゲート電極は走査線101に接続される。一方、TFT
404のゲート電極は発光制御線102に接続され、そのソース電極はOLED素子42
0の陽極に接続される。TFT404のゲート電極には、発光制御線102を介して発光
制御信号Vgiが供給される。なお、OLED素子420の陰極は、画素回路400のす
べてに対して共通の電極であり、電源におけるGND電位となっている。
【0026】
このような構成において、走査信号YiがHレベルになると、nチャネル型TFT40
2がオン状態となるので、TFT401は、ゲート電極とドレイン電極とが互いに接続さ
れたダイオードとして機能する。走査信号YiがHレベルになると、nチャネル型TFT
403も、TFT402と同様にオン状態となる。この結果、データ線駆動回路200の
電流Idataが、電源線L→TFT401→TFT403→データ線103という経路で流
れるとともに、そのときに、TFT401のゲート電極の電位に応じた電荷が容量素子4
10に蓄積される。
【0027】
走査信号YiがLレベルになると、TFT403、402はともにオフ状態となる。こ
のとき、TFT401のゲート電極における入力インピーダンスは極めて高いので、容量
素子410における電荷の蓄積状態は変化しない。TFT401のゲート・ソース間電圧
は、電流Idatajが流れたときの電圧に保持される。また、走査信号YiがLレベルにな
ると、発光制御信号VgiがHレベルとなる。このため、TFT404がオンし、TFT
401のソース・ドレイン間には、そのゲート電圧に応じた注入電流Ioledが流れる。詳
細には、この電流は、電源線L→TFT401→TFT404→OLED素子420とい
う経路で流れる。
【0028】
ここで、OLED素子420に流れる注入電流Ioledは、TFT401のゲート・ソー
ス間電圧で定まるが、その電圧は、Hレベルの走査信号Yiによって電流Idatajがデー
タ線103に流れたときに、容量素子410によって保持された電圧である。このため、
発光制御信号VgiがHレベルになったときに、OLED素子420に流れる注入電流I
oledは、直前に流れた電流Idatajに略一致する。このように画素回路400は、電流Id
ataによって発光輝度を規定することから、電流プログラム方式の回路である。
【0029】
本形態は入力階調データDinにガンマ補正等の画像処理を施して出力階調データDo
utを生成する制御回路300に関するものである。
【0030】
図5は制御回路300を抽出して詳細に示すブロック線図である。同図に示すように、
当該制御回路300は表示制御部301と輝度/ガンマ特性制御部302とからなる。
【0031】
表示制御部301は、外部から供給される入力階調データDinに所定の画像処理を施
して出力階調データDoutを形成するとともに、Yクロック信号YCLK、Xクロック
信号XCLK、X転送開始パルスDX、Y転送開始パルスDY等の各種の制御信号を生成
してこれらを走査線駆動回路100及びデータ線駆動回路200(図2参照。)へ出力す
る。
【0032】
一方、輝度/ガンマ特性制御部302は、動画像又は静止画像のそれぞれの場合におい
て平均階調値に応じた最適なピーク輝度及びガンマ値に制御するためのピーク輝度制御信
号S1、S2及びガンマ特性制御信号S3、S4を形成して表示制御部301に供給する
。ここで、ピーク輝度制御信号S1及びガンマ特性制御信号S3は、表示画像が動画像で
ある場合の制御信号であり、ピーク輝度制御信号S2及びガンマ特性制御信号S4は、表
示画像が静止画像である場合の制御信号である。
【0033】
上記ピーク輝度制御信号S1、S2及びガンマ特性制御信号S3、S4を形成するため
輝度/ガンマ特性制御部302は、ヒストグラム検出部302a、平均階調値演算部30
2b、メモリ302c、ヒストグラム比較部302d、モード選択部302e、ピーク輝
度設定部302f,302g及びガンマ特性設定部302h,302iを有している。
【0034】
ヒストグラム検出部302aは入力画像信号に基づく所定フレーム(通常1フレーム)
分の入力階調データDinの各階調毎の度数分布を検出する。平均階調値演算部302b
はヒストグラム検出部302aが検出した度数分布の平均値を演算する。メモリ302c
はヒストグラム検出部302aが検出した度数分布に関する所定フレーム(通常1フレー
ム)分のデータを記憶する。ヒストグラム比較部302dは、メモリ302cが記憶して
いる先行するフレームの前記度数分布とリアルタイムで取り込んだ度数分布とを比較する
ことにより前記入力階調データDinで表す画像信号が動画像のものであるか、静止画像
のものであるかを判定している。この判定は、例えば先行するフレームと現フレームにお
ける各階調毎に度数分布の差を取り、この差が所定の閾値を超える場合を動画像、前記閾
値以下の場合を静止画像と認識させることにより容易に行い得る。
【0035】
動画像と静止画像との判定方法は他にも種々存在する。例えば、1)入力画像信号のデ
ータを、例えば1フレーム毎に比較するもの、2)画像信号をフーリエ変換して判定する
もの、3)動画像の速度を検出するもの、4)動画像そのものではなく、動画像の移動量
或いは動きベクトルを検出するもの等が考えられる。
【0036】
前記ヒストグラム比較部302dでの判定結果は、モード選択部302eに供給される
。モード選択部302eでは動画像、静止画像の何れであるかに応じて平均階調値演算部
302bの出力データである平均階調値を表すデータをピーク輝度設定部302f、30
2gの何れかに供給する。すなわち、動画像の場合にはピーク輝度設定部302fに、静
止画像の場合にはピーク輝度設定部302gに前記平均階調値を表すデータを供給する。
【0037】
上記ピーク輝度設定部302fは、供給された平均階調値に応じた動画像の場合のピー
ク輝度を設定するためのピーク輝度制御信号S1を表示制御部301に供給する。同様に
、ピーク輝度設定部302gは、静止画像の場合のピーク輝度を設定するためのピーク輝
度制御信号S2を表示制御部301に供給する。ガンマ特性設定部302hは、ピーク輝
度設定部302fを介して供給される平均階調値に応じた動画像の場合のガンマ値を設定
するためのガンマ特性制御信号S3を表示制御部301に供給する。同様に、ガンマ特性
設定部302iは、静止画像の場合のガンマ値を設定するためのガンマ特性制御信号S4
を表示制御部301に供給する。
【0038】
表示制御部301では、動画像モードの場合、ピーク輝度制御信号S1に基づき動画像
に合わせた表示ピーク輝度となるように画素領域A(図2参照。)の輝度を制御する。こ
の場合のピーク輝度の制御は、従来知られている全ての方法を適用して行うことができる
。例えば、OLED素子420(図4参照。)の発光デューティを制御する、出力階調デ
ータDoutを介して電流Idata(図4参照。)を制御する、電源電圧Vdd(図2参照
。)を制御する等が考えられる。
【0039】
一方、静止画像モードの場合には、ピーク輝度制御信号S2に基づき静止画像に合わせ
た表示ピーク輝度となるように制御する。すなわち、静止画像モードの場合には、動画像
モードに対して一定量低減したピーク輝度を設定しておき、その輝度になるように動画像
の場合と同様に制御する。この結果、入力階調データDinの平均階調値が同じ場合でも
、静止画像の場合のピーク輝度は動画像の場合よりも相対的に低減される。このことによ
りOLED素子420(図4参照。)の劣化による画素領域Aの焼きつきを有効に防止し
得る。この点は従来と同様である。
【0040】
さらに、表示制御部301では、動画像モードの場合、ガンマ特性制御信号S3に基づ
き出力階調データDoutのガンマ値を変更する制御を行うとともに、静止画像モードの
場合にも、ガンマ特性制御信号S4に基づき出力階調データDoutのガンマ値を変更す
る制御を行う。ここで、ガンマ特性を変更する手法に特に制限はないが、LUT(Look U
p Table)を用い、入力階調データDinに対応して出力階調データDoutを変換する
方式が好適である。これはガンマ値の変更ルールを予めテーブル化して記憶しておくもの
である。このLUT方式は表示制御部301に設けてある。したがって、本形態に係るガ
ンマ特性制御信号S3、S4は各平均階調値毎に形成してあるLUTにおける特定のテー
ブル値を選択する選択信号として機能する。このように本形態では、静止画像モードにな
った場合、ピーク輝度のみならず、ガンマ値も適切に変更するように制御する。
【0041】
図6に平均階調値とピーク輝度との関係を示す。同図中の曲線aが動画像の場合の平均
階調値とピーク輝度との関係で、曲線bが静止画像の場合の平均階調値とピーク輝度との
関係を示している。同図に示すように、平均階調値が大きい程、ピーク輝度を低く設定す
るとともに、静止画像の場合が動画像の場合よりもより低くピーク輝度を設定してある。
【0042】
そこで、静止画像モードとなった場合、図5に示すピーク輝度設定部302gでは、平
均階調値演算部302bで算出した平均階調値に応じた曲線a上の点におけるピーク輝度
から同平均階調値に応じた曲線b上の点におけるピーク輝度に徐々に移行するようにピー
ク輝度制御信号S2で表示制御部301を介して前記ピーク輝度を制御する。
【0043】
図7には平均階調値とガンマ値との関係を示す。同図中の曲線cが動画像の場合の平均
階調値とガンマ値との関係で、曲線dが静止画像の場合の平均階調値とガンマ値との関係
を示している。
【0044】
一方、図8乃至図10は入力階調データDinのヒストグラム分布を示すグラフで、図
8は低階調値側にヒストグラム分布が偏移している場合、図9は高階調値側にヒストグラ
ム分布が偏移している場合、図10はヒストグラム分布が平坦な場合をそれぞれ示してい
る。
【0045】
動画像の場合、図8に示すように低階調値側にヒストグラムが存在する場合はガンマ値
を低めに設定し、図9に示すように高階調値側にヒストグラムが存在する場合はガンマ値
を高めに設定するとともに、図10に示すようにヒストグラムが平坦な場合、もしくはヒ
ストグラムが単一のピークでない場合はガンマ値を一定の値(例えば2.2)に設定する。
すなわち、図8及び図9に示すようにヒストグラムのピークが低階調値乃至高階調値側に
顕著に偏在する場合には、前記平均階調値をそのまま利用してガンマ値を曲線cに基づき
設定するが、ヒストグラムが平坦な場合、もしくはヒストグラムが単一のピークでない場
合には、前記平均階調値の如何にかかわらず一定の値(例えば2.2)のガンマ値を設定す
るようになっている。ここで、ヒストグラムのピークが低階調値乃至高階調値側に顕著に
偏在する場合であるか否かを検出するには、例えばヒストグラムにおける度数のピーク値
が所定の閾値を超えるか否かを検出すれば良い。前記ピーク値が所定の閾値を超える場合
が偏在する場合であり、閾値以下の場合が平坦乃至単一ピークでない場合である。
【0046】
一方、静止画像の場合、平均階調値が基準値eよりも大きい領域では前記平均階調値の
増加に伴い動画像の場合よりもガンマ値を増加させ、前記平均階調値が基準値eよりも小
さい領域では前記平均階調値の減少に伴い動画像の場合よりもガンマ値を減少させる。
【0047】
そこで、図5に示すガンマ特性設定部302iでは、平均階調値演算部302bで算出
した平均階調値に基づき曲線cに設定したこの曲線c上の点(動画像の最後のガンマ値を
与える点)におけるガンマ値から同平均階調値における曲線d上の点のガンマ値に徐々に
移行するようにガンマ特性制御信号S4で表示制御部301のLUTを適宜選択して出力
階調データDoutのガンマ値を制御する。
【0048】
かくして、静止画像が表示されているときは、表示ピーク輝度の低下に伴い、ガンマ特
性を曲線dに示す値に徐々に変化させ、表示画像の映像のコントラストを保つ。このとき
のガンマ値の変化量は、ピーク輝度に関連付けて各平均階調値毎に設定する。このことに
よりガンマ値をピーク輝度に関連付けて最適なものとすることができる。
【0049】
動画像の場合の制御の態様は従来と同様であるが、静止画像の場合、本形態では、上述
の如き手順で決定するピーク輝度及びガンマ値をピーク輝度制御信号S2及びガンマ特性
制御信号S4として、毎フレーム毎に表示制御部301に供給する。ここで、ピーク輝度
は、例えば発光デューティ値により制御する。発光デューティ幅と輝度の関係は線形であ
る。この発光デューティ幅をピーク輝度制御信号として送出する。一方、ガンマ値は予め
用意した適合するLUTパターンを選択することにより設定する。ここで、前記ガンマ値
の増減を、ピーク輝度の低減量と関連付けて設定しておけばガンマ値を最も適切に制御す
ることができる。
【0050】
かかる本形態によれば、静止画像の表示モードで発生する焼きつきを低減することがで
きると同時に、ピーク輝度を低下させながらも、ガンマ特性を変化させることで表示画像
のコントラストを保ち、表示品位の低減を防止することができる。
【0051】
また、平均階調値が高い画像においては、ピーク輝度を下げるとともに、ガンマ特性も
増加させるため、より消費電力の低減の効果が期待でき、ひいては長寿命化の効果も期待
できる。
【0052】
<応用例>
次に、上述した実施の形態に係る電気光学装置Iを適用した電子機器について説明する
。図11に、電気光学装置Iを適用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示
す。パーソナルコンピュータ2000は、表示ユニットとしての電気光学装置Iと本体部
2010を備える。本体部2010には、電源スイッチ2001及びキーボード2002
が設けられている。この電気光学装置IはOLED素子420を用いるので、視野角が広
く見易い画面を表示できる。
【0053】
図12に、電気光学装置Iを適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は
、複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002、並びに表示ユニットとして
の電気光学装置Iを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電気光
学装置Iに表示される画面がスクロールされる。
【0054】
図13に、電気光学装置Iを適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assis
tants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001及び電源ス
イッチ4002、並びに表示ユニットとしての電気光学装置Iを備える。電源スイッチ4
002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が電気光学装置Iに表
示される。
【0055】
さらに、フィールドエミッション素子(FED)、表面電動型エミッション素子(SE
D)、弾道電子放出素子(BSD)等の自発光素子を用いた表示装置にも好適に適用し得
る。
【0056】
なお、電気光学装置Iが適用される電子機器としては、図11乃至図13に示すものの
他、液晶テレビ、カーナビゲーション装置、テレビ電話等などが挙げられる。そして、こ
れらの各種電子機器の表示部として、前述した電気光学装置が適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の原理を説明するための特性図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電気光学装置を示すブロック図である。
【図3】図2における走査信号と発光制御信号のタイミングチャートである。
【図4】図2に示す電気光学装置における画素回路を示す回路図である。
【図5】図2における制御回路300を抽出して詳細に示すブロック線図である。
【図6】平均階調値とピーク輝度との関係を示すグラフである。
【図7】平均階調値とガンマ値との関係を示すグラフである。
【図8】平均階調値のヒストグラム分布を示すグラフ(低階調値側に分布)である。
【図9】平均階調値のヒストグラム分布を示すグラフ(高階調値側に分布)である。
【図10】平均階調値のヒストグラム分布を示すグラフ(平坦分布)である。
【図11】電気光学装置を適用したパーソナルコンピュータを示す斜視図である。
【図12】電気光学装置を適用した携帯電話機の構成を示す斜視図である。
【図13】電気光学装置を適用した携帯情報端末の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
100 走査線駆動回路、101 走査線、102 発光制御線、103 データ線、
200 データ線駆動回路、300 制御回路、301 表示制御部、302 ガンマ特
性制御部、302a ヒストグラム検出部、302b 平均階調値演算部、302c メ
モリ、302d ヒストグラム比較部、302e モード選択部、302f,302g
ピーク輝度設定部、302h,302i ガンマ特性設定部、A 画素領域、DX 転送
開始パルス、DY 転送開始パルス、Din 入力階調データ、Dout 出力階調デー
タ、I 電気光学装置、a,b,c,d, 曲線、e 基準値


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に基づき表示部で表示される表示画像が静止画像であるか動画像であるかを判
定する画像判定手段と、
この画像判定手段が静止画像であることを検出した場合には静止画像モードを選択する
モード選択手段と、
このモード選択手段が静止画像モードを選択した場合には、前記表示画像のピーク輝度
を低減させるように制御するピーク輝度設定手段と、
前記モード選択手段が静止画像モードを選択した場合には、前記静止画像を表す前記画
像信号の平均階調値が基準平均階調値よりも高い領域では前記平均階調値の増加に伴い前
記画像信号のガンマ値を動画像の場合よりも増加させ、前記平均階調値が前記基準平均階
調値よりも低い領域では前記平均階調値の減少に伴い前記ガンマ値を動画像の場合よりも
減少させるガンマ特性設定手段とを有する輝度/ガンマ特性制御手段を備えたことを特徴
とする画像信号制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記画像判定手段は、先行するフレームの画像信号の輝度ヒストグラムと現フレームの
画像信号の輝度ヒストグラムとの比較において静止画像であるか動画像であるかを判定す
るものであることを特徴とする画像信号制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記ガンマ値の増減は、ピーク輝度の低減量と関連付けて行うようにしたことを特徴と
する画像信号制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一つにおいて、
ガンマ特性設定手段は、前記画像信号の各階調毎の度数分布を表す輝度ヒストグラムが
平坦な場合や、単一のピークを持たない場合には、前記ガンマ値を予め定めた固定値に設
定するものであることを特徴とする画像信号制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一つにおいて、
前記ピーク輝度は、前記表示部を形成する発光素子の発光デューティの制御により制御
するものであることを特徴とする画像信号制御装置。
【請求項6】
複数の発光素子をマトリクス状に配設してなる表示部に供給する画像信号を生成する画
像信号制御装置として前記請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載する画像信号制御装
置を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
画像を表示する表示手段として請求項6に記載する電気光学装置を備えたことを特徴と
する電子機器。
【請求項8】
複数の発光素子をマトリクス状に配設してなる表示部に静止画像を表示する際には、そ
のピーク輝度を低減させるとともに、前記静止画像の平均輝度に基づき、平均輝度が高い
場合にはガンマ値を増加させ、平均輝度が低い場合にはガンマ値を低下させることを特徴
とする表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−350173(P2006−350173A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178966(P2005−178966)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】