説明

画像処理システムおよび画像処理方法

【課題】 著作権画像を印刷する際に、必ずしも著作権者の意図を反映した理想的な設定による印刷がなされるとは限らない。
【解決手段】 管理サーバとホストコンピュータおよびプリンタがネットワークを介して接続された画像処理システムである。前記ホストコンピュータが、前記管理サーバより受信した画像データを前記プリンタでユーザが設定した印刷条件を示す印刷パラメータに基づいて印刷する。前記ホストコンピュータにおいて、前記管理サーバから、可視電子透かしが付与された画像データを入力し、前記プリンタに対して設定されている印刷パラメータを検出する。そして、該検出された印刷パラメータを、前記画像データに対して予め定められた限定パラメータと照合し、該照合結果が一致である場合に、前記画像データから前記可視電子透かしを解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理システムおよび画像処理方法に関し、特に、著作権等が付与された画像を理想的な印刷条件で印刷出力する画像処理システムおよび画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワーク技術の普及に伴いデジタルデータの流通が容易に行われるようになった。こうした状況の中、いわゆる著作権付き画像等、価値が高い画像データをデジタルコンテンツとして売買する市場が広がっている。
【0003】
デジタルコンテンツの売買システムとしては例えば、画像の1枚が印刷される度に課金されるシステムが知られている。こうしたシステムにおいて例えばユーザ個人がデジタルコンテンツを購入する方法としては、該ユーザがネットワークを介して直接購入する方法や、印刷業者に印刷を依頼することによって間接的に購入する方法等がある。
【0004】
このようなデジタルコンテンツを売買するシステムにおいては、商品価値の高い画像が商品として扱われ、このような画像に対しては、画家や写真家など著作権者の意図を反映した設定で印刷出力されることが望まれる。例えば、印字解像度,インク,メディア,画像サイズ等々の条件が著作権者の意思に合致しない場合には、作品としての価値が損なわれてしまうことが懸念される。
【0005】
こうした問題に対応するため、ユーザがデジタルコンテンツを購入する際に、該ユーザが使用しているシステム環境が当該デジタルコンテンツを利用するのに十分な程度に整っているか否かをチェックするシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−348613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような、デジタルコンテンツの購入時にユーザシステム環境をチェックするステムにおいても、次のような問題が残されている。すなわち、ユーザが一度デジタルコンテンツを購入すると、その後はどのようにな設定でも印刷可能であり、著作権者が意図しない印刷画像が作成されてしまう可能性があった。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、画像データに対する理想的な印刷条件による印刷を確実に可能とする画像処理システムおよび画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための一例として、本発明の画像処理システムは以下の工程を備える。
【0009】
すなわち、管理サーバとホストコンピュータおよびプリンタがネットワークを介して接続され、前記ホストコンピュータが、前記管理サーバより受信した画像データを前記プリンタでユーザが設定した印刷条件を示す印刷パラメータに基づいて印刷する画像処理システムであって、前記ホストコンピュータにおいて、前記管理サーバから、可視電子透かしが付与された画像データを入力し、前記プリンタに対して設定されている印刷パラメータを検出し、該検出された印刷パラメータを、前記画像データに対して予め定められた限定パラメータと照合し、該照合結果が一致である場合に、前記画像データから前記可視電子透かしを解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の構成により本発明によれば、画像データに対する理想的な印刷条件による印刷が確実に可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0012】
<実施形態1>
本実施形態においては、デジタルコンテンツを売買するシステムにおいて、ユーザが著作権付きのデジタルコンテンツを購入する例について説明する。
【0013】
本実施形態においては、購入対象となるデジタルコンテンツに対して予め可視電子透かしを埋め込んでおき、購入先において所定の印刷条件が満たされた場合に、該可視電子透かしを解除した印刷を許可することを特徴とする。
【0014】
図1は、本実施形態を実現するデジタルコンテンツ管理システムの構成例を示す図である。同図において、600は著作権付きのデジタルコンテンツ(以下、著作権画像と称する)を販売している管理センターにおける管理サーバである。700はユーザが利用するシステム(以下、ユーザシステム)であり、710はユーザが使用するホストPC、720はプリンタである。著作権画像を販売する管理サーバ600とユーザが使用するホストPC710は、インターネット等のネットワークによって接続されている。
【0015】
管理サーバ600は、販売対象となる複数の著作権画像を有している。具体的には、著作権画像ごとに、その実質的な画像データ601のみならず、該画像の印刷時に設定されるべき、著作権者の意図に応じた理想的な印刷パラメータを示す限定パラメータ情報602を保持している。この限定パラメータ情報602は、対応する画像データ601に添付された形式すなわち同一ファイルとして保持されていても良いし、別ファイルとして保持されていても良い。管理サーバ600はさらに、著作権画像を販売する際に該画像データ601に添付する可視電子透かし情報603を有している。
ユーザがホストPC710において、管理サーバ600が提供する著作権画像から所望のものを購入すると、管理サーバ600からホストPC710に対して対象となる著作権画像711がダウンロードされる。このとき著作権画像711としては、実質的な画像データ601に対して、可視透かし情報603が埋め込まれ、さらに該著作権画像に対する限定パラメータ情報602が添付された形式で送信される。
【0016】
ホストPC710では、上記のように購入してダウンロードした著作権画像711をプリンタ720から印刷出力することができるが、本実施形態ではその場合の印刷パラメータ設定に応じて、可視電子透かしを解除するか否かが決定される。
【0017】
図2Aはおよび図2Bはそれぞれ、本実施形態における可視電子透かし埋め込み前および後の著作権画像例を示したものである。すなわち、図2Aが著作権画像の実質的な画像データ601によって示されるオリジナル画像であり、図2Bによれば、該オリジナル画像としての人物像の背景に、可視透かし情報603によって示される「Sample」の文字が埋め込まれている。この図2Bに示す画像が、ホストPC710にダウンロードされた著作権画像711に相当する。
【0018】
ホストPC710で購入された著作権画像711には、上述したように著作権者の意図を反映するための印刷パラメータを示す限定パラメータ情報602が添付されている。その具体的な内容(印刷パラメータ設定)は以下に示す通りであるとする。
【0019】
・画像サイズ:A1〜B0
・メディア:フォト光沢紙
・インク:顔料
・プリンタ解像度:1200dpi以上
・印刷品質設定:高画質
なお、これらの設定例は一例にすぎず、本発明になんら制限を加えるものではない。また、著作権者の意図した設定にすべき要素であって、印刷時にその判断が可能であれば、どのような要素を本発明における限定パラメータ602としても良い。
【0020】
本実施形態では、ホストPC710で購入した著作権画像711がプリンタ720から出力される際に設定されている印刷パラメータが、限定パラメータ情報602で示される内容に全て合致した場合に、可視電子透かしを解除する。すなわち本実施形態では、プリンタ720において上記全ての印刷パラメータ設定が整っていた場合にのみ、可視電子透かしを解除した印刷が可能となる。なお、プリンタ720に対して設定すべき印刷パラメータは、例えば管理サーバ600から著作権画像の画像ファイルとは異なる他の形式で、ホストPC710を介してユーザに提供されるものとする。
【0021】
図3は、本実施形態における著作権画像711の印刷処理を示すフローチャートである。ホストPC710は、管理サーバ600から購入した著作権画像711についての印刷が指示されると、以下に示すようにプリンタ720における印刷パラメータ設定を確認し、該確認結果に応じた印刷を行う。
【0022】
まずステップS201において画像サイズのパラメータを確認し、これがA1〜B0のサイズに適合していればステップS202に進む。するとステップS202ではメディア種類のパラメータを確認し、これがフォト光沢紙であればステップS203に進む。そしてステップS203ではインク種類のパラメータを確認し、これが顔料であればステップS204に進む。そしてステップS204ではプリンタ解像度のパラメータを確認し、これが1200dpi以上であればステップS205に進む。そしてステップS205では印刷品質設定のパラメータを確認し、これが高画質設定であればステップS206に進む。
【0023】
ステップS206においてホストPC710は、図2Bのように埋め込まれた可視電子透かしを解除する。なお、画像データ601に対する可視電子透かし情報603の解除方法については周知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。そしてステップS207で印刷処理を実行することにより、プリンタ720において図2Aに示す著作権画像が理想的な高画質で印刷出力される。
【0024】
一方、ステップS201〜S205のいずれかにおいて、各条件に適合していないと判定された場合には、そのままステップS207に進んで印刷処理を実行する。これにより、ホストPC710において可視電子透かしが解除されることなく、プリンタ720からは図2Bに示す可視電子透かしが埋め込まれた画像が印刷出力される。
【0025】
以上説明したように本実施形態によれば、ホストPC710で購入した著作権画像711を印刷する際に、その印刷パラメータ設定が該画像に予め設定されたものとひとつでも異なれば、可視電子透かしが埋め込まれた画像が印刷される。したがって、例えばユーザが正しい設定による印刷を行ったつもりでも、間違った印刷設定があった場合には該誤りに容易に気づくことができる。このように、購入した著作権画像についての適正な印刷結果であるか否かをユーザが容易に判別できるため、著作権者の意図するような高画質印刷を確実に行うことができる。
【0026】
<第2実施形態>
以下、本発明に係る第2実施形態について説明する。第2実施形態におけるシステム構成は上述した第1実施形態と同様であるため、同一符号を参照するとして説明を省略する。第2実施形態においても上述した第1実施形態と同様に、ホストPC710で管理サーバ600から購入した著作権画像711には、画像データ601に対して可視電子透かし603が埋め込まれているが、この可視電子透かしの形式が第1実施形態とは異なる。
【0027】
図4Aはおよび図4Bはそれぞれ、第2実施形態における可視電子透かし埋め込み前および後の著作権画像例を示したものである。図4Bによれば、上述した第1実施形態と同様に、図4Aに示す著作権画像としてのバスの画像の背景に可視電子透かしが埋め込まれているが、この可視電子透かしとして所定の文言が盛り込まれていることが分かる。この所定の文言とは、ホストPC710における現在の印刷環境を著作権者が意図した印刷パラメータに合わせるように注意を喚起する文言である。この文言によって、ユーザはこの画像の印刷時に、プリンタ720に設定すべき印刷パラメータを容易に認識することができる。この図4Bに示す画像が、ホストPC710にダウンロードされた著作権画像711に相当する。
【0028】
ここで、第2実施形態における可視電子透かしとして、下記に示すような文言が可視透かし情報603に設定されているとする。
【0029】
・可視電子透かしA:「A1〜B0のサイズで印刷してください!」
・可視電子透かしB:「フォト光沢紙を使用してください!」
・可視電子透かしC:「顔料インクを使用してください!」
・可視電子透かしD:「解像度1200dpiのプリンタで印刷してください!」
・可視電子透かしE:「印刷品質として高画質を選択してください!」
なお、第2実施形態における限定パラメータ情報602としては、第1実施形態と同様の内容が設定されているとし、上記可視電子透かしの文言はそれぞれ、限定パラメータ602によって示される各印刷パラメータに対応した内容を示している。
【0030】
図5は、第2実施形態における著作権画像711の印刷処理を示すフローチャートである。第2実施形態においても上述した第1実施形態と同様に、ホストPC710において上記全ての印刷設定が整っていた場合にのみ、可視電子透かしを解除した印刷を許可する。
【0031】
ホストPC710は、管理サーバ600から購入した著作権画像711についての印刷が指示されると、以下に示すようにプリンタ720における印刷パラメータ設定を確認する。
【0032】
まずステップS411において画像サイズを確認する。これがA1〜B0のサイズに適合していればステップS412に進んで可視電子透かしAを解除した後、ステップS421に進むが、A1〜B0のサイズに適合していなければそのままステップS421に進む。
【0033】
ステップS421ではメディアの種類を確認し、これがフォト光沢紙であればステップS422に進んで可視電子透かしBを解除した後、ステップS431に進むが、フォト光沢紙でなければそのままステップS431に進む。
【0034】
ステップS431ではインク種類を確認し、これが顔料であればステップS432に進んで可視電子透かしCを解除した後、ステップS441に進むが、顔料でなければそのままステップS441に進む。
【0035】
ステップS441ではプリンタの解像度を確認し、これが1200dpi以上であればステップS442に進んで可視電子透かしDを解除した後、ステップS451に進むが、1200dpi以上でなければそのままステップS451に進む。
【0036】
ステップS451では印刷品質設定を確認し、これが高画質設定であればステップS452に進んで可視電子透かしEを解除した後、ステップS461に進むが、高画質設定でなければそのままステップS461に進む。
【0037】
そしてステップS461で印刷処理を実行することにより、全ての印刷パラメータが合致した場合のみ、図4Aに示す著作権画像が理想的な高画質で印刷出力され、それ以外の場合には少なくとも1つの可視電子透かしが埋め込まれて印刷出力される。
【0038】
ここで図6に、第2実施形態における印刷出力例を示す。同図によれば、図4Aのオリジナル画像に対して全ての可視電子透かしが付与された図4Bの画像と比較すると、可視電子透かしB,C,Dは解除されているものの、可視電子透かしA,Eは解除されずに残っていることが分かる。これはすなわち、図4Aの著作権画像を印刷出力する際に、メディア、インク種類、プリンタ解像度については理想的な印刷パラメータ設定であったが、画像サイズ、印刷品質については理想的な印刷パラメータ設定ではなかったことを示している。
【0039】
以上のように第2実施形態によれば、複数の印刷パラメータが著作権者の意図したものに合致しているか否かをそれぞれ確認して、合致した印刷パラメータについては対応する可視電子透かしを解除する。したがって、全ての印刷パラメータが著作権者の意図に合致した場合にのみ、全ての可視電子透かしが解除されてオリジナル画像を印刷することができる。したがって、例えばユーザが正しい設定による印刷を行ったつもりでも、間違った印刷設定があった場合には該誤りに容易に気づくことができ、さらにその対処方法を容易に知ることができる。すなわち、ユーザは可視電子透かしが含まれた印刷物を一瞥するだけで、オリジナルの高画質画像を印刷出力するために設定すべき印刷パラメータを容易に判断することができる。
【0040】
したがって、ユーザが購入した著作権画像についての理想的な印刷条件を認識していない場合には、敢えて低画質によるドラフト印刷を行って、設定すべき印刷パラメータを知ることもできる。
【0041】
なお、上述した第1および第2実施形態において、可視電子透かしを埋め込む領域は、図2Bや図4Bに示すような背景領域に限定されない。例えば、画像中における重要な領域を秘匿する必要がある場合には、該重要領域(主要領域)に対して可視電子透かしを埋め込むことも有効である。
【0042】
また、図3および図5に示すフローチャートでは、複数のパラメータについて順次確認を行う例を示したが、この順序についてはこの例に限定されず、どのような順序であってもよい。
【0043】
<第3実施形態>
以下、本発明に係る第3実施形態について説明する。
【0044】
上述した第1および第2実施形態においては、購入後にダウンロードした著作権画像に対する理想的な印刷パラメータ情報を、管理データとして該著作権画像に添付する例を示した。しかしながら、このように送信する画像データ内に印刷パラメータ情報を含めてしまうと、新たなパラメータに対して融通がきかなくなってしまう。例えば、既にダウンロードされた著作権画像については、新たに対応可能となったメディアや、より高画質な画像を得ることができるインクが開発された場合等に対応することができない。
【0045】
そこで第3実施形態においては、新たな印刷パラメータに対してより柔軟に対応可能なデジタルコンテンツ管理システムを提供する。図7に、第3実施形態におけるシステム構成例を示す。同図に示す構成は基本的に上述した第1実施形態で示した図1と同様であるため、同一符号を付して詳細な説明は省略する。図7においては、上述した図1に対し、ホストPC710にダウンロードされる著作権画像712のデータ形式が異なる。図1では実質的な画像データ601に対して可視透かし情報603を埋め込み、さらに限定パラメータ情報602を添付した形式で著作権画像711が送信されているが、図7では著作権画像712に限定パラメータ情報602が添付されていない。なお、第3実施形態における可視透かし情報603が示す内容は、上述した第1および第2実施形態のいずれかに示した可視透かしと同様であるとする。
【0046】
さらに、上述した第1および第2実施形態では、ホストPC710において著作権画像711に対する可視電子透かしの解除の可否を判断したが、第3実施形態においてはこの判断を管理サーバ600にて行う。そして管理サーバ600における該判断結果を示す公開キー604をホストPC710に送信することを特徴とする。
【0047】
以下、ホストPC710が管理サーバ600から購入した著作権画像712をプリンタ720で印刷出力する場合の、第3実施形態のコンテンツ管理システムにおける処理シーケンスについて説明する。
【0048】
まず図8に、プリンタ720に設定された印刷パラメータが該著作権画像712に対して予め設定された値に一致し、可視電子透かしが解除された印刷を行う場合の処理シーケンスを示す。
【0049】
まずホストPC710において、ステップS721でユーザから印刷実行命令を受けると、ステップS722でプリンタ720に対してプリンタ情報を要求する。するとプリンタ720では、ステップS731でホストPC710からのプリンタ情報要求を受信すると、ステップS732でプリンタ情報をホストPC710へ送信する。するとホストPC710では、ステップS723ではプリンタ情報を受信し、ステップS724で該プリンタ情報に基づく印刷パラメータ情報を管理サーバ600に送信する。
【0050】
すると管理サーバ600においては、ステップS711で印刷パラメータを受信すると、該印刷パラメータが著作権者の意図した設定と一致しているか否かを判定する。この判定処理は、該著作権画像の限定パラメータ情報602を参照して、上述した第1実施形態で図3に示したフローチャートと同様に、各パラメータごとに逐一行われる。そして全ての印刷パラメータが限定パラメータ情報602の内容に一致した場合に、オリジナル印刷を許可するわけであるが、このとき管理サーバ600はステップS712において、ホストPC710に対して電子透かし解除用の公開キー604を送信する。
【0051】
するとホストPC710は、ステップS725で管理サーバ600から公開キー604を受信すると、ステップS726において、該公開キー604を使用して著作権画像711から可視電子透かしを解除する。すなわち、著作権画像712の画像データ601に埋め込まれた可視電子透かし情報603を無効とする。そしてステップS727において、可視電子透かしが解除された著作権画像711、すなわち画像データ601のみを、プリンタ720に送信する。そしてプリンタ720においては、ステップS733でホストPC710から受信した画像データ601を印刷する。
【0052】
次に図9に、プリンタ720に設定された印刷パラメータが該著作権画像712に対して予め設定された値に一致せず、可視電子透かしが解除されないまま印刷を行う場合の処理シーケンスを示す。同図において、管理サーバ600がステップS811でホストPC710からプリンタ720の印刷パラメータを受信するところまでは、上述した図8におけるステップS711までと同様のシーケンスであるため、これ以前のステップについての説明を省略する。
【0053】
この場合、管理サーバ600は、ステップS811でプリンタ720の印刷パラメータを受信すると、該印刷パラメータが著作権者の意図した設定と一致しているか否かを判定する。このとき、少なくとも1つの印刷パラメータが限定パラメータ情報602の内容に一致しなかったために、オリジナル印刷は許可されず、管理サーバ600はステップS812において、ホストPC710に対して電子透かし非解除用の公開キー604を送信する。
【0054】
するとホストPC710は、ステップS825で管理サーバ600から公開キー604を受信すると、ステップS826において可視電子透かしをそのまま印刷する旨をユーザに通知する。そしてユーザがこれを了解した場合に、ステップS827において、可視電子透かしが埋め込まれた著作権画像711、すなわち画像データ601に可視電子透かし情報602が付与されたまま、プリンタ720に送信する。そしてプリンタ720においては、ステップS833でホストPC710から受信した可視透かし付きの著作権画像711を印刷する。なお、ステップS826においてユーザが可視透かし付きの印刷を了解しない場合には、ステップS827以降の印刷処理を行わない。
【0055】
なお、第3実施形態においても上述した第2実施形態と同様に、複数の印刷パラメータについて、その検証および対応する可視電子透かしの解除を個々に行うことも可能である。この場合、印刷パラメータごとの公開鍵を用意する必要がある。
【0056】
以上説明したように第3実施形態によれば、送信する画像データ内に印刷パラメータ情報を含めないことにより、新たな印刷パラメータに対しても、上述した第1または第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0057】
<<変形例>>
上述した第1乃至第3実施形態では、ホストPC710において管理サーバ600から著作権画像を購入した後に印刷する例について説明したが、これらの実施形態を画像を印刷する度に課金するシステムとして実現することも可能である。
【0058】
この場合、全ての印刷パラメータが著作権者の意図したものと一致して可視電子透かしが解除された時点で、課金カウンタをカウントするように構成すればよい。特に第3実施形態の場合は、電子透かし解除用の公開キー604を送信した時点で、課金カウンタをカウントすればよい。
【0059】
このような課金システムにすることによって、管理サーバ600が提供する著作権画像についてのドラフト印刷を行ってから、その購入を検討することも可能となる。すなわち、ホストPC710において管理サーバ600が提供する著作権画像をダウンロードし、プリンタ720で低画質によるドラフト印刷を行う。すると、ドラフト印刷ではいずれかの印刷パラメータが著作権者の意図に合致しないであろうから、可視電子透かしの埋め込まれた画像が印刷出力される。このとき、可視電子透かしは画像中において比較的重要でない領域(図2Bまたは図4Bの背景領域)に埋め込まれているため、ユーザはドラフト印刷物においても該画像の重要領域(主要領域)を詳細に検討して、購入の可否を決定することができる。
【0060】
また、上述した第1乃至第3実施形態では、ホストPC710に対してプリンタ720がローカルに接続されている例を示したが、印刷に用いられるプリンタは必ずしもローカルプリンタに限らず、ネットワーク上のプリンタであっても良い。
【0061】
以上、本発明に係る各実施形態および変形例について説明した。このように本発明によれば、著作権者の意図を反映した設定で印刷した画像については、可視電子透かしを解除して印刷することができる。また、著作権者の意図を反映していない設定で印刷した画像については、可視電子透かしが入った状態で印刷される。こうした制御により、作品として価値の高い画像は、著作権者の意図を反映した設定で印刷される。また、印刷業者などで印刷が行われる場合にも、故意にせよ誤りにせよ、異なる印刷設定で印刷されることを防ぐことができる。
【0062】
また、ドラフト画像を印刷したい場合には、明示的にドラフト画像であることが認識可能なように印刷が行われる。つまり、メディアに印刷されたドラフト画像をサンプルとして、購入の判断に用いることができる。このようなサンプル印刷の必要性は、ディスプレイの画面上で見た印象とメディア上に形成された画像の印象が異なる点にある。こうしたサンプル印刷を可能とすることは、特に高価なメディアを使用する場合や、大判プリンタでの印刷が行われるような場合に有効である。
【0063】
また、本発明を利用すれば次のようなシステムも構築可能である。ある特殊なメディアで印刷を行った場合のみに可視電子透かしが解除されるデジタルコンテンツを作成し、これを安価もしくは無料で配布する。ユーザはそのデジタルコンテンツを通常通り印刷すると可視電子透かしが入った状態で印刷することになる。すなわち、可視電子透かしを解除して印刷するためには特殊なメディアを購入する必要があり、このような新しいビジネスモデルを構築することも可能である。
【0064】
<他の実施形態>
以上、実施形態例を詳述したが、本発明は例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記憶媒体(記録媒体)等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インタフェース機器、撮像装置、webアプリケーション等)から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0065】
尚本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータが該供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。なお、この場合のプログラムとは、実施形態において図に示したフローチャートに対応したプログラムである。
【0066】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0067】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であっても良い。
【0068】
プログラムを供給するための記録媒体としては、以下に示す媒体がある。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD-ROM、CD-R、CD-RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD-ROM,DVD-R)などである。
【0069】
プログラムの供給方法としては、以下に示す方法も可能である。すなわち、クライアントコンピュータのブラウザからインターネットのホームページに接続し、そこから本発明のコンピュータプログラムそのもの(又は圧縮され自動インストール機能を含むファイル)をハードディスク等の記録媒体にダウンロードする。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0070】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD-ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせることも可能である。すなわち該ユーザは、その鍵情報を使用することによって暗号化されたプログラムを実行し、コンピュータにインストールさせることができる。
【0071】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される。さらに、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0072】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、実行されることによっても、前述した実施形態の機能が実現される。すなわち、該プログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る一実施形態におけるデジタルコンテンツ管理システムの構成例を示す図である。
【図2A】本実施例における著作権画像の一例を示す図である。
【図2B】本実施例における著作権画像に対して可視電子透かしを埋め込んだ例を示す図である。
【図3】本実施形態における著作権画像の印刷処理を示すフローチャートである。
【図4A】第2実施例における著作権画像の一例を示す図である。
【図4B】第2実施形態における著作権画像に対して可視電子透かしを埋め込んだ例を示す図である。
【図5】第2実施例における著作権画像の印刷処理を示すフローチャートである。
【図6】第2実施例における著作権画像の印刷例を示す図である。
【図7】第3実施例におけるデジタルコンテンツ管理システムの構成例を示す図である。
【図8】第3実施例において印刷パラメータが一致した場合の処理シーケンスを示す図である。
【図9】第3実施例において印刷パラメータが一致しなかった場合の処理シーケンスを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理サーバとホストコンピュータおよびプリンタがネットワークを介して接続され、前記ホストコンピュータが、前記管理サーバより受信した画像データを前記プリンタでユーザが設定した印刷条件を示す印刷パラメータに基づいて印刷する画像処理システムであって、前記ホストコンピュータにおいて、
前記管理サーバから、可視電子透かしが付与された画像データを入力し、
前記プリンタに対して設定されている印刷パラメータを検出し、
該検出された印刷パラメータを、前記画像データに対して予め定められた限定パラメータと照合し、
該照合結果が一致である場合に、前記画像データから前記可視電子透かしを解除する
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
前記ホストコンピュータにおいては、
前記可視電子透かしおよび前記限定パラメータを含む画像データを入力し、
前記印刷パラメータを前記画像データに含まれる前記限定パラメータと照合する
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理システム。
【請求項3】
管理サーバとホストコンピュータおよびプリンタがネットワークを介して接続され、前記ホストコンピュータが、前記管理サーバより受信した画像データをユーザが設定した印刷条件を示す印刷パラメータに基づいて前記プリンタで印刷する画像処理システムであって、
前記ホストコンピュータにおいて、
前記管理サーバから可視電子透かしが付与された画像データを入力し、
前記プリンタに対して設定されている印刷パラメータを検出し、
該検出された印刷パラメータを前記管理サーバに送信し、
前記管理サーバにおいて、
前記ホストコンピュータから受信した印刷パラメータを前記画像データに対して予め定められた限定パラメータと照合し、
該照合結果が一致である場合に、前記ホストコンピュータへ前記可視電子透かし解除用の公開鍵を送信し、
前記ホストコンピュータにおいて、
前記管理サーバから受信した公開鍵を用いて前記画像データから前記可視電子透かしを解除する
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項4】
前記管理サーバにおいては、前記印刷パラメータを前記管理サーバ内に保持されている前記限定パラメータと照合することを特徴とする請求項3記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記印刷パラメータおよび前記限定パラメータは、互いに共通する複数種類の印刷条件を有し、
前記ホストコンピュータにおいては、印刷条件毎に対応した可視電子透かしが付与された画像データを入力し、
前記照合結果が一致である印刷条件毎に、前記可視電子透かしを解除することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記ホストコンピュータにおいては、
前記プリンタに対して印刷設定情報を要求し、
該要求に対して前記プリンタから返信された印刷設定情報に基づいて、前記印刷パラメータを検出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項7】
前記管理サーバにおいてはさらに、
前記画像データから前記可視電子透かしが解除された際に課金することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項8】
前記管理サーバにおいてはさらに、
前記公開鍵が送信された際に課金することを特徴とする請求項3または4記載の画像処理システム。
【請求項9】
前記可視電子透かしは、前記画像データ中の主要でない領域に埋め込まれていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項10】
前記可視電子透かしは、前記画像データ中の主要をなす領域に埋め込まれていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項11】
前記可視電子透かしは、前記限定パラメータの内容を示唆することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項12】
前記入力ステップにおいては、著作権付きの画像データを入力することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項13】
ユーザが設定した印刷条件を示す印刷パラメータに基づいて画像データの印刷を行う画像処理方法であって、
可視電子透かしが付与された画像データを入力する入力ステップと、
前記印刷パラメータを検出するパラメータ検出ステップと、
該検出された印刷パラメータを、前記画像データに対して予め定められた限定パラメータと照合する照合ステップと、
該照合結果が一致である場合に、前記画像データから前記可視電子透かしを解除する透かし解除ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
前記印刷パラメータおよび前記限定パラメータは、互いに共通する複数種類の印刷条件を有し、
前記入力ステップにおいて入力された画像データは、印刷条件毎に対応した可視電子透かしが付与されており、
前記透かし解除ステップにおいては、前記照合結果が一致である印刷条件毎に、前記可視電子透かしを解除することを特徴とする請求項13記載の画像処理方法。
【請求項15】
ホストコンピュータ上で実行されることにより、該ホストコンピュータを請求項1乃至12のいずれかに記載された画像処理システムにおけるホストコンピュータとして動作するように制御することを特徴とするプログラム。
【請求項16】
請求項15記載のプログラムを記録したことを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−3955(P2008−3955A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174452(P2006−174452)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】