説明

画像処理システム

【課題】撮影装置から画像表示装置間に送信する画像データ量を低減させ、しかも、画像表示装置において侵入者等の異物の検知が容易に行えるようにする。
【解決手段】 画像処理システムであって、撮影装置20と、撮影装置と無線通信可能に接続された画像表示装置10からなり、撮影装置20はカメラで撮影した画像から異物画像を切り出す手段と、撮影画像における異物画像の位置情報を取得する手段と、切り出した画像を前記位置情報と共に画像表示装置に送信する手段とを有し、画像表示装置10は、前記切り出した異物画像と前記位置情報を受信する手段と、受信した異物画像を前記位置情報に基づき、画像蓄積手段に予め蓄積した異物のない背景画像に重ね合わせて表示する画像表示装置を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理システムに関し、とくに監視カメラの映像を画像表示装置に送信して表示するための画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、防犯などの目的で監視カメラが広く用いられている。この監視カメラは、カメラの設置位置から有線又は無線でセンタに送信され、センタでは送信されて来る画像を監視しながら、例えば人の出入りや不法侵入者の有無等の監視を行っている(特許文献1参照)。
ところで、監視カメラは設置場所の制約から商用電源に接続できないことが多く、その場合は内蔵した電池により撮影した映像の送信等を行う。
そのため、省電力型とならざるを得ず伝送速度の遅い通信方式を使用することになるため、画像データを送信する場合、転送完了までに時間がかかるという問題がある。
【0003】
そこで、送信速度が遅いことに対応するため、送信する画像データの容量を減らす方法を採ることができるが、そのためには、送信する画素数を落としたり、画像圧縮する必要がある、しかし、その場合には、画像が粗くなるという別の問題が生じる。
そこで、画像データを小サイズにして撮影側で“枠”などのマーキング処理を施し、受信側で検出対象物をクローズアップする方法があるが、その場合でも画像データサイズを大幅に小さくすることはできない。
因みに、上記特許文献1に記載された転送式セキュリティシステムでは、画像送信回線の負担を減らすために、ビデオカメラで撮影した映像に一定の変化が生じた場合のみ、外部通信端末に送信する方法を採っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−367059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、監視カメラを備えた撮影装置と画像表示装置とから成る画像処理システムにおいて、撮影装置から画像表示装置間に送信する画像データ量を低減させ、しかも、画像表示装置において侵入者等の異物の検知が容易に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、撮影装置と、撮影装置と無線通信可能に接続された画像表示装置からなり、撮影装置はカメラで撮影した画像から異物画像を切り出す手段と、撮影画像における異物画像の位置情報を取得する手段と、切り出した画像を前記位置情報と共に画像表示装置に送信する通信部とを有し、画像表示装置は、前記切り出した異物画像と前記位置情報を受信する通信部と、受信した異物画像を前記位置情報に基づき、画像保存部に予め保存した異物のない背景画像に重ね合わせて表示する画像表示部を有することを特徴とする画像処理システムである。
請求項2の発明は、請求項1に記載された画像処理システムにおいて、前記画像表示装置が前記背景画像をセピア又はモノクロ処理する手段を有することを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載された画像処理システムにおいて、前記撮影装置は、異物を検知する手段と、異物を検知したとき撮影装置を作動する撮影装置制御部と、撮影した画像を圧縮する画像圧縮手段とを有し、前記異物を検知する手段の不作動時に撮影した異物なし画像を前記画像圧縮手段で圧縮して前記画像表示装置に送信し、前記画像表示装置は受信した前記画像を撮影画像保存部に前記背景画像として保存することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、撮影装置から画像表示装置へ送信するデータ量を大幅に低減しつつ、しかも異物などの監視対象画像を背景画像に対して明瞭に識別できるようにして表示することができる。
したがって、撮影装置における電池の消費量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理システム全体の構成図である。
【図2】画像表示装置の機能ブロック図である。
【図3】撮影装置の機能ブロック図である。
【図4】本画像処理システムにおけるリセット後の初回の起動時と一定時間経過時における撮影装置側と、画像表示装置側との処理手順を示すフロー図である。
【図5】本画像処理システムにおける警戒動作中における撮影装置側と、画像表示装置側との処理手順を示すフロー図である。
【図6】図5のフロー図における「侵入者の居る画像と、侵入者のいない画像を比較する処理と、両画像において異なる部分を切り取って切り取り画像を形成する処理を説明するフロー図である。
【図7】異物画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の画像処理システムは、撮影装置で撮影した画像から必要な部分(異物画像部分)のみを切り取り、そのデータのみを転送することで監視画像としての機能を維持しつつ送信データ容量を低減することを目的になされたものであって、カメラで撮影した現場画像を受信側である画像表示装置に送信し、その撮影画像保存装置に予め現場画像の背景画面を登録しておく。その背景画面をセピアまたはモノクロ画像にして上記切り出した異物画像部分を画像を重ね合わせることで、異物画像を視覚的にクローズアップするようにしたものである。
また、セピア又はモノクロ処理にすることで撮影環境・時間による明るさなどの違いを無くすことができるため、背景画像は環境に影響されず使用することが可能である。
【0010】
以下、本発明の画像処理システムの実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像処理システム全体の構成図である。
本画像処理システムは、撮影装置20と画像表示装置10とから成り、撮影装置20は、カメラ22により設置現場の画像(静止画像)を撮影し、これを無線通信手段(有線通信手段でもよい)により画像表示装置10に送信し、画像表示装置側でカメラ22が撮影した静止画像を表示するようになっている。
【0011】
図2は画像表示装置の機能ブロック図である。
画像表示装置(コントローラ)10は、無線通信制御部12と画像表示制御部14とからなり、無線通信制御部12は、無線通信部121と、デコード部122と、データ整合性確認部123と、計算部124と、画像データ処理部125と、撮影画像保存部126とからなっている。
無線通信部121は撮影装置20との間で無線通信を行いかつ同装置から送信された画像データを受信する。デコード部122は、撮影装置20で送信にあたりエンコードした画像データをデコードする。
データ整合性確認部123は、受信データと自身が保持する処理済み画像データとの整合性を確認する。
画像データ処理部125は、受信した画像データに対して後述するような各種の処理を行う。
撮影画像保存部126は、画像データ処理部125で処理した画像データを保存する、記憶装置である。
計算部124は、無線通信制御部12における計算などの処理及びその他の制御を行うCPU(MPU)からなっている。
【0012】
画像表示制御部14は、画像表示部141とユーザインターフェース142とを備える。画像表示部141は、無線通信部121で受信した撮影装置20の撮影画像を表示する例えばLC(liquid crystal)、やEL(Electroluminescence)などを用いた表示装置を備えている。ユーザインターフェース142は、画像表示部141による対話型の入力装置であり、ユーザは、これを用いて例えば、受信画像のセピア又はモノクロ処理、受信画像の貼付処理等を指示する。
【0013】
図3は、撮影装置20の機能ブロック図である。
撮影装置20は、例えばCCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary
Metal Oxide Semiconductor)などの固体撮像素子を備えた電子スチルカメラ22であって、カメラ22の近傍に設置されたセンサ24と、画像撮影部210及び無線通信制御部220とからなっている。
画像撮影部210は、カメラ22で撮影された画像データをコード化する画像エンコード部211と、カメラ22の作動を制御するカメラ制御部213と、例えば人感センサ24のON/OFFを制御すると共に、人感センサ24からの感知信号を受信してカメラ制御部213にその信号を送るセンサ制御部215と、撮影した画像を保存する撮影画像保存部212と、直前の画像と比較して差分を抽出するため前後の画像を比較する画像比較部214とからなっている。
無線通信制御部220は、無線通信部221と、無線送信用データにエンコードするエンコード部222と、計算部223とからなっている。
【0014】
以下、本発明の実施形態の画像処理システムにおける画像処理について図4、図5のフロー図を参照して説明する。
図4は、本画像処理システムにおけるリセット後の初回の起動時と一定時間経過時における撮影装置20側と、画像表示装置10側との処理手順を示すフロー図である。
初回の起動時に、画像表示装置10は、その無線通信部121により撮影装置20側に対して定時送信コマンドを送信して送信を要請する(S101)。これに対し、撮影装置20は定時送信コマンドを受信すると(S102)、カメラ22で設置現場の画像を撮影し(S103)、無線通信部221により撮影した全画像を、例えばJPEG(Joint Photographic Experts Group)方式による高圧縮「低画質」のものにして送信する(S104)。
画像表示装置10は、撮影装置から送信された現場の全画像を受信すると(S105)、この画像をセピア又はモノクロ画像処理して(S106)、これを背景データとして撮影画像保存部126に格納する(S107)。
【0015】
図5は、本画像処理システムにおける警戒動作中における撮影装置20側と、画像表示装置10側との処理手順を示すフロー図である。
稼働中の撮影装置20は、そのセンサ制御部215がセンサ(人感センサ)24からの侵入者検知コマンドを受信すると(S201)、カメラ制御部213を介してカメラ22を作動して侵入者を撮影する(S202)。
撮影が終わると、侵入者検知コマンドが停止するのを待ち(S203)、侵入者が検知領域から出た段階で(S203、Yes)、撮影装置20は再びカメラ22を作動して侵入者のいない画像を撮影する(S204)。ここで、撮影装置20の画像比較部214は、侵入者が写った画像と侵入者が写っていない侵入者無し画像を比較し(S205)、後述する処理手順で両画像において異なる部分を切り取って切り取り画像(比較画像)を作成する(S206)。続いて、この切り取り画像を送信し(S207)、後述のように切り取り画像の頂点の座標を送信する(S208)。
【0016】
他方、画像表示装置10は、切り取り画像を受信する(S209)と共に切り取り画像の頂点座標を受信し(S210)、計算部124により上記頂点座標を参照してこの切り取り画像と前記背景データとして撮影画像保存部126に格納した画像とを重ね合わせる処理を行い(S211)、さらに必要に応じて強調表示加工を施して(S212)、この処理を終了し、処理済みの画像は、画像表示部141に表示する。
【0017】
図6は、図5のフロー図における、侵入者が写った画像と、侵入者無し画像を比較する処理(S205)と、両画像において異なる部分を切り取って切り取り画像を形成する処理(S206)を説明するフロー図である。
この処理では、まず、侵入者が写った画像の平均化処理を行う、即ち比較処理負担を減らすために、画像の8ピクセル(画素)について平均化フィルタにより平均化処理を行い(S301)、その平均色を求め(S302)、その8画素を平均色に置き換えて平均化を行う(S303)。この処理を画像の全ブロックについて終了するまで行う(S304)、終了したときは(S304、Yes)、次に、ステップS204で撮影した侵入者無し画像についても、同様に画像の平均化処理、即ち画像の8ピクセル(画素)についても同様に平均化処理を行い(S305)、その平均色を求め(S306)、その8画素を平均色に置き換えて平均化を行う(S307)。
【0018】
この処理を画像の全画素について終了するまで行い(S308)、終了したときは(S308、Yes)、次に、平均化処理画像同士の比較処理を行う(S309)。
侵入者が写った画像と侵入者無し画像の平均化処理画像のそれぞれの部分を8×8画素単位で比較し、その差が閾値よりも大きな部分(S310、Yes)を黒ピクセルに(S311)、また閾値よりも小さな部分(S310,No)を白ピクセルに(S312)置き換えて2値化する処理を画像の全ブロックについて終了するまで行う(S313)。全ブロックについて上記2値化処理が終了したときは(S313、Yes)、2値化した比較画像を膨張させた後収縮する(S314)。つまり、本来の一つの領域が2つ以上の領域にラベリングされないように、2値の比較画像を2値フィルタに入れて膨張処理を行ない、近接画素の近接部分を継ぎ、収縮処理を最適な面積になるまで行なう。
【0019】
続いて、比較画像にラベリングを施して(S315)異物画像を得、図7に示すように、面積が一定以上の異物画像の外接矩形の対角線上の頂点A、Bの座標(x、y)(即ち、図示例では頂点A(80,50)、B(180,30)を計算部223で計算して(S316)、その座標から切り出す範囲を決める。切り出す範囲が決まった段階で画像の切り出し処理を開始する(S317)。ここでは、異物面積が一定値以上であれば(S318、Yes)、画像の切り出しを行い(S319)、図7中の異物(a)、(b)の枠内に示す異物のように異物面積が一定値未満であれば(S319、No)、画像の切り出しは行わない。以上の処理をラベリングした画像の数だけ行い(S320)、ラベリングした全ての画像について上記処理を終了したとき(S320、Yes)、この処理を終了する。
【0020】
なお、画像表示装置においては、切り出した画像をセピア又はモノクロの背景画像に乗せて表示することで侵入者が強調され、侵入者をピックアップして表示する効果が得られるが、切り出した画像の高周波成分をカットする処理を施すことで、エッジのないつまり継ぎ目が目立たない自然の画像に近い画像にすることもできる。
また、本実施形態において、ユーザーが切り出し画像ではなく、画像全体を要求する場合に限り、全体画像を画像表示装置に送信することも勿論可能である。
【0021】
以上、本発明の上記実施形態において、カメラ22のリンク切れ確認コマンド(画像表示装置からの定時送信コマンド)を受信したときに現在持っている画像(即ち撮影画像保存部212に保存した最新画像)を画像表示装置(コントローラ)10へ送信(転送)するが、画像表示装置10から送信される送信要求コマンドに応じて随時撮影した画像を送信してもよく、送信画像は何時のものでもよい。勿論真夜中の画像でもよく、その画像データを、例えば、JPEG方式で高圧縮「低画質」して送信する。
なお、背景画像に貼り付ける画像、つまり切り取った異物画像については、高圧縮処理を行わずに鮮明な画像データのまま送信することもできる。この場合、侵入者を鮮明に表示することができるので、防犯対策上有利であり、しかも、撮影画像全体を送信する場合に比して送信負担を大幅に削減でき、電池の消費量も抑制することができる。
【符号の説明】
【0022】
10・・・画像表示装置(コントローラ)、12・・・無線通信制御部、14・・・画像表示制御部、121・・・無線通信部、122・・・デコード部、123・・・データ整合性確認部、124・・・計算部、125・・・画像データ処理部、126・・・撮影画像保存部、141・・・画像表示部、142・・・ユーザーインターフェース、20・・・撮影装置、22・・・カメラ、24・・・センサ、210・・・画像撮影部、211・・・画像エンコード部、212・・・撮影画像保存部、213・・・カメラ制御部、214・・・画像比較部、215・・・センサ制御部、220・・・無線通信制御部、221・・・無線通信部、222・・・エンコード部、223・・・計算部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影装置と、撮影装置と無線通信可能に接続された画像表示装置からなり、
撮影装置はカメラで撮影した画像から異物画像を切り出す手段と、撮影画像における異物画像の位置情報を取得する手段と、切り出した画像を前記位置情報と共に画像表示装置に送信する通信部とを有し、画像表示装置は、前記切り出した異物画像と前記位置情報を受信する通信部と、受信した異物画像を前記位置情報に基づき、画像保存部に予め保存した異物のない背景画像に重ね合わせて表示する画像表示部を有することを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載された画像処理システムにおいて、
前記画像表示装置が前記背景画像をセピア又はモノクロ処理する手段を有することを特徴とする画像処理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された画像処理システムにおいて、
前記撮影装置は、異物を検知する手段と、異物を検知したとき撮影装置を作動する手段と、撮影した画像を圧縮する画像圧縮手段とを有し、前記異物を検知する手段の不作動時に撮影した異物なし画像を前記画像圧縮手段で圧縮して前記画像表示装置に送信し、前記画像表示装置は受信した前記画像を撮影画像保存部に前記背景画像として保存することを特徴とする画像処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−233178(P2010−233178A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81444(P2009−81444)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】